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特開2024-16751ポリケトン化合物、感光性樹脂組成物、ドライフィルム、硬化物及び電子部品
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  • 特開-ポリケトン化合物、感光性樹脂組成物、ドライフィルム、硬化物及び電子部品 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024016751
(43)【公開日】2024-02-07
(54)【発明の名称】ポリケトン化合物、感光性樹脂組成物、ドライフィルム、硬化物及び電子部品
(51)【国際特許分類】
   C08G 67/00 20060101AFI20240131BHJP
   G03F 7/023 20060101ALI20240131BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20240131BHJP
【FI】
C08G67/00
G03F7/023
G03F7/004 512
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022119088
(22)【出願日】2022-07-26
(71)【出願人】
【識別番号】591021305
【氏名又は名称】太陽ホールディングス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504409543
【氏名又は名称】国立大学法人秋田大学
(74)【代理人】
【識別番号】100105315
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 温
(74)【代理人】
【識別番号】100132137
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 謙一郎
(72)【発明者】
【氏名】行森 大貴
(72)【発明者】
【氏名】井上 豪
(72)【発明者】
【氏名】石川 信広
(72)【発明者】
【氏名】緒方 寿幸
(72)【発明者】
【氏名】國土 萌衣
(72)【発明者】
【氏名】松本 和也
(72)【発明者】
【氏名】寺境 光俊
【テーマコード(参考)】
2H225
4J005
【Fターム(参考)】
2H225AF05P
2H225AM61P
2H225AM93P
2H225AN39P
2H225AN42P
2H225CA12
2H225CB05
2H225CC03
2H225CC21
4J005AB00
(57)【要約】      (修正有)
【課題】より優れた耐熱性、機械強度を有し、感光性材料として用いた場合に、優れた解像性を有するポリケトン化合物を提供する。
【解決手段】本発明の一態様は、ポリケトン化合物である。当該ポリケトン化合物は、下記式(1)の繰り返し単位を含む。

(X、Yは、単結合、酸素原子又は2価の有機基である)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)の繰り返し構造を含むことを特徴とする、ポリケトン化合物。
【化1】
(X、Yは、互いに独立に、単結合、酸素原子又は2価の有機基である)
【請求項2】
前記Xは、単結合であることを特徴とする、請求項1に記載のポリケトン化合物。
【請求項3】
前記Yは、炭素数が20以下の、芳香環を含む2価の有機基であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のポリケトン化合物。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のポリケトン化合物と、光酸発生剤とを含む感光性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項4に記載の感光性樹脂組成物により形成された樹脂層を備えることを特徴とする、ドライフィルム。
【請求項6】
請求項4に記載の感光性樹脂組成物により形成されることを特徴とする、硬化物。
【請求項7】
請求項6に記載の硬化物を有することを特徴とする、電子部品。
【請求項8】
請求項5に記載のドライフィルムの樹脂層により形成されることを特徴とする、硬化物。
【請求項9】
請求項8に記載の硬化物を有することを特徴とする、電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリケトン化合物、感光性樹脂組成物、ドライフィルム、硬化物及び電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体素子においては、高機能化や小型化の要求に伴い、バッファーコート膜やウエハレベルパッケージの再配線層用絶縁膜に、より微細なパターンを有する硬化膜を形成すること(解像性)が求められている。これら絶縁膜や硬化膜は、永久膜として用いられることから、その絶縁性、高耐熱性、機械強度等に優れた特性を有することも求められている。しかしながら、解像性と、絶縁性、耐熱性、機械強度等とを両立できる感光性材料は、いまだ限られており、新たな感光性材料への要求が高まっている。
【0003】
一般に、芳香族ポリケトンは、優れた耐熱性と機械特性を有しており、エンジニアリングプラスチックとして利用されている。特許文献1には、特定の構造を有する芳香族ポリケトンが優れた耐熱分解性及び高い透明性に加え、高いTg及び優れた靱性を有する硬化物を形成可能であることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-168270号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の芳香族ポリケトンは、優れた耐熱性と機械特性とを有していることが開示されているが、感光性材料として用いた場合のパターニングの可能性や解像性については何ら評価されていない。さらに、特許文献1の実施例において合成されたポリケトンは、光酸発生剤などを加えて感光性材料とする際に必要な水酸基を含んでおらず、水酸基(特にフェノール性水酸基)を含むポリケトンの効果については何ら開示されていない。このため、特許文献1のポリケトンは、解像性が悪く、パターニングできないおそれがあった。
【0006】
そこで本開示の目的は、感光性材料として用いた場合に、優れた解像性を有するポリケトン化合物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、特定の構造を有するポリケトン化合物が、感光性材料として用いられた場合に前記課題を解決することができることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本開示技術の一態様によれば、
下記式(1)の繰り返し構造を含むことを特徴とする、ポリケトン化合物を提供することができる。
【化1】
(X、Yは、互いに独立に、単結合、酸素原子又は2価の有機基である。)
前記Xは、単結合であることが好ましい。
前記Yは、炭素数が20以下の、芳香環を含む2価の有機基であることが好ましい。
本開示技術の別の一態様によれば、ポリケトン化合物と、光酸発生剤とを含む感光性樹脂組成物を提供することができる。
本開示技術の別の一態様によれば、前記感光性樹脂組成物により形成された樹脂層を備えることを特徴とする、ドライフィルムを提供することができる。
本開示技術の別の一態様によれば、前記感光性樹脂組成物又は前記ドライフィルムの樹脂層により形成されることを特徴とする、硬化物を提供することができる。
本開示技術の別の一態様によれば、前記硬化物を有することを特徴とする、電子部品を提供することができる。
【発明の効果】
【0008】
本開示技術によれば、感光性材料として用いた場合に、優れた解像性を有するポリケトン化合物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例1のポリケトン化合物のH-NMRスペクトルである。
図2】実施例2のポリケトン化合物のH-NMRスペクトルである。
図3】比較例1のポリケトン化合物のH-NMRスペクトルである。
図4】比較例2のポリケトン化合物のH-NMRスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示技術の実施形態について、詳細に説明する。なお、本明細書中、数値範囲の説明における「a~b」との表記は、特に断らない限り、a以上b以下であることを表す。
【0011】
<<ポリケトン化合物>>
本開示のポリケトン化合物は、下記式(1)の繰り返し構造を含み、好ましくは下記式(1)’の繰り返し構造を含む。
【化2】
(X、Yは、単結合、酸素原子又は2価の有機基である)
【0012】
【化3】
(X、Yは、単結合、酸素原子又は2価の有機基である)
【0013】
Xは、単結合、酸素原子又は2価の有機基である。2価の有機基としては、特に限定されず、直鎖状、分岐鎖状、環状のものとすることができる。2価の有機基としては、炭化水素基又はエーテル結合を含む2価の有機基が好ましい。また、2価の有機基は無置換のものであってもよいが、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素などのハロゲン原子で置換されたものでもよい。また、Xは、単結合、酸素原子又は炭素数10以下の2価の有機基が好ましく、単結合、酸素原子又は炭素数5以下の2価の有機基がより好ましく、単結合がさらに好ましい。Xがかかる構造を有する場合には、より優れた耐熱性と機械強度とを有し、感光性材料として用いた場合に、優れた解像性を有するポリケトン化合物を得ることができる。
【0014】
Yは、単結合、酸素原子又は2価の有機基であり、2価の有機基としては、特に限定されず、直鎖状、分岐鎖状、環状のものとすることができる。2価の有機基は、無置換のものであってもよいが、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素などのハロゲン原子で置換されたものでもよい。また、Yは単結合、酸素原子又は炭素数20以下の2価の有機基が好ましく、炭素数20以下の、芳香環を含む2価の有機基がより好ましい。Yがかかる構造を有する場合には、より優れた耐熱性と機械強度とを有し、感光性材料として用いた場合に、優れた解像性を有するポリケトン化合物を得ることができる。
【0015】
ポリケトン化合物の例としては、下記式(2)又は下記式(3)の繰り返し構造を有するポリケトン化合物がより優れた耐熱性と機械強度とを有し、感光性材料として用いた場合に、優れた解像性を有する点で好ましく用いられる。
【化4】
【0016】
【化5】
【0017】
ポリケトン化合物の重量平均分子量(Mw)は、用途によって自由に選択することができるが、例えば、感光性材料に用いる場合には、Mwを2,000~50,000とすることができる。
ポリケトン化合物の数平均分子量(Mn)も、用途によって自由に選択することができるが、例えば、感光性材料に用いる場合には、Mnを1,000~30,000とすることができる。
ポリケトン化合物の分子量分散度(PDI)は、用途によって自由に選択することができるが、例えば、感光性材料に用いる場合には、1.5~4.0とすることができる。
本明細書において、重量平均分子量及び数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定し、標準ポリスチレンで換算した数値である。
また、本明細書において、分子量分散度(PDI)は下記式(4)により算出される。
PDI=Mw/Mn・・・(4)
【0018】
<<ポリケトン化合物の製造方法>>
本開示のポリケトン化合物の製造方法は、特に限定されないが、例えば、下記式(5)の構造を有する芳香族モノマーと、下記式(6)の構造を有するジカルボン酸とを、酸性溶媒中において縮合反応を用いる方法を挙げることができる。
【0019】
【化6】
【0020】
【化7】
【0021】
炭素数20以下の、芳香環を含む2価の有機基を有するジカルボン酸としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、4,6-ジメチルイソフタル酸、4,4'-ビフェニルジカルボン酸、ベンゾフェノン-4,4’-ジカルボン酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-スチルベンジカルボン酸、4-(カルボキシメチル)安息香酸、4-メチルフタル酸、4,4’-ジカルボキシジフェニルエーテル、エチレングリコールビス(4-カルボキシフェニル)エーテル、1,6-ビス(4-カルボキシフェノキシ)ヘキサン等を挙げることができる。これらは、単独で、又は、複数を任意の比率で組み合わせて用いることができる。これらのうちテレフタル酸、4,4’-ジカルボキシジフェニルエーテルが好ましく用いられる。
【0022】
酸性溶媒は、塩化アルミニウムの有機溶媒溶液、トリフルオロアルカンスルホン酸、ポリリン酸及び五酸化二リンと有機スルホン酸との混合物を用いることができる。これらのうち、トリフルオロアルカンスルホン酸が好ましく、トリフルオロメタンスルホン酸がより好ましく用いられる。
【0023】
酸性溶媒の配合量は、特に限定されず、上記式(5)の芳香族モノマー及び上記式(6)のジカルボン酸が溶解できればよく、例えば、上記式(6)のジカルボン酸の配合量1質量部に対して、5~100質量部とすることができる。
【0024】
ポリケトン化合物は、反応容器において上記式(5)の芳香族モノマー及び上記式(6)のジカルボン酸を酸性溶媒に溶解させ、大気雰囲気下又は窒素、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気下で、10~100℃に温度調整し、1~72時間攪拌することで作製することができる。反応終了後、反応容器にポリケトン化合物に対する貧溶媒(例えば、水)をそそぎ、ポリケトン化合物を含む混合物を析出させ、ろ過などして収集、乾燥させる(例えば、25℃環境下で真空乾燥法を用いて3時間程度乾燥を行う)。得られた混合物を容器中の溶媒(例えば、N,N-ジメチルアセトアミド)に溶解させた後、ポリケトン化合物に対する貧溶媒(例えば、2-プロパノール)をそそぎ、ポリケトン化合物を析出、ろ過し、ポリケトン化合物を収集する。その後、乾燥(例えば、80℃環境下で真空乾燥法を用いて12時間程度乾燥)してポリケトン化合物を得ることができる。
【0025】
<<ポリケトン化合物の用途>>
本開示のポリケトン化合物は、光酸発生剤と配合して、感光性樹脂組成物として用いることができる。得られた感光性樹脂組成物は、表示装置、半導体素子、電子部品、光学部品、建築材料等の形成材料として好適に用いることができる。半導体素子の形成材料としては、例えば、レジスト材料、バッファーコート膜、絶縁膜が挙げられる。また、電子部品の形成材料として、例えば、プリント配線板、層間絶縁膜、配線被覆膜等が挙げられる。
【0026】
<感光性樹脂組成物>
ポリケトン化合物は、光酸発生剤と配合して感光性樹脂組成物として用いることができる。
光酸発生剤としては、紫外線や可視光等の光照射により酸を発生する化合物であれば特に限定されず、例えば、ナフトキノンジアジド化合物、ジアリールスルホニウム塩、トリアリールスルホニウム塩、ジアルキルフェナシルスルホニウム塩、ジアリールヨードニウム塩、アリールジアゾニウム塩、芳香族テトラカルボン酸エステル、芳香族スルホン酸エステル、ニトロベンジルエステル、芳香族N-オキシイミドスルフォネート、芳香族スルファミド、ベンゾキノンジアゾスルホン酸エステル等を挙げることができる。これらは単独で、又は、複数を任意の比率で組み合わせて用いることができる。光酸発生剤は、溶解阻害剤であることが好ましく、ナフトキノンジアジド化合物であることが好ましい。
【0027】
ナフトキノンジアジド化合物としては、例えば、トリス(4-ヒドロキシフェニル)-1-エチル-4-イソプロピルベンゼンのナフトキノンジアジド付加物(例えば、三宝化学研究所社製のTKF-520、TKF-528、TKF-420、TKF-428)や、テトラヒドロキシベンゾフェノンのナフトキノンジアジド付加物(例えば、三宝化学研究所社製のBS550、BS570、BS599)等を使用することができる。ここで、ナフトキノンジアジドの付加は、例えば、o-キノンジアジドスルホニルクロリド類を、ヒドロキシ化合物やアミノ化合物と反応させればよい。これらは単独で、又は、複数を任意の比率で組み合わせて用いることができる。
【0028】
光酸発生剤の配合量は、感光性樹脂組成物の全質量を100質量%とした場合に、3~20質量%とすることができる。
【0029】
感光性樹脂組成物は、ポリケトン化合物と、光酸発生剤を溶剤に溶解させ攪拌することで作製することができる。
【0030】
溶剤としては、特に限定されず、例えば、酢酸-2-メトキシ-1-メチルエチル(PGMEA)、シクロヘキサノン、γ-ブチロラクトン、乳酸エチル、酢酸ブチル、酢酸ベンジル、エトキシエチルプロピオネート、3-メチルメトキシプロピオネート、N-メチル-2-ピロリドン、N-シクロヘキシル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホリルアミド、テトラメチレンスルホン、ジエチルケトン、ジイソブチルケトン、メチルアミルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、キシレン、メシチレン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、クメン、ジイソプロピルベンゼン、ヘキシルベンゼン、アニソール、ジグライム、ジメチルスルホキシド、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロベンゼン等が挙げられる。これらは、単独で、又は、複数を任意の比率での組み合わせて用いることができる。
【0031】
感光性樹脂組成物は、本開示技術の効果を損なわない限りにおいて、その他の成分を含むことができる。その他の成分としては、感光性樹脂組成物に含むことのできる公知のものを用いることができ、例えば、架橋剤、密着剤、界面活性剤、可塑剤、熱酸発生剤、増感剤、レベリング剤、着色剤、繊維、微粒子、塩基性化合物、等を挙げることができ、中でもフェノール性水酸基と反応し得るエポキシ基やメチロール基を有する化合物を架橋剤として用いることが望ましい。
【0032】
<ドライフィルム>
感光性樹脂組成物は、基材上に塗布し樹脂層を形成することで、ドライフィルムを形成することができる。また、樹脂層の保護のため、さらに樹脂層の表面に保護フィルムを積層してもよい。
【0033】
基材は、特に限定されないが、例えば、銅箔等の金属箔、ポリイミドフィルム、ポリエステルフィルム、ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム等のフィルムを挙げることができる。
【0034】
保護フィルムは、特に限定されないが、ポリエチレンフィルム、ポリテトラフルオロエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、紙等を用いることができる。保護フィルムは、保護フィルムと樹脂層の密着力が、基材と樹脂層の密着力よりも低くなるものを選択することが好ましい。保護フィルムと樹脂層の密着力を、基材と樹脂層の密着力よりも低くするため、保護フィルムの表面に剥離処理を施したものを用いることができる。
【0035】
樹脂層の厚さは、特に限定されないが、用途に応じて、1~150μmとすることができる。樹脂層は、例えば、基材上に感光性樹脂組成物を塗布し、コンマコーター、ブレードコーター、リップコーター、ロッドコーター、スクイズコーター、リバースコーター、トランスファロールコーター、グラビアコーター又はスプレーコーター等を用い、樹脂層の厚さを調整し、乾燥させることで得ることができる。
【0036】
<硬化物>
本開示の硬化物は、本開示の感光性樹脂組成物又はドライフィルムの樹脂層を硬化させたものである。硬化物としては、パターニングされた硬化物であってもよい。パターニングされた硬化物の製造方法の例として、以下の方法を挙げることができる。
【0037】
(乾燥塗膜形成工程)
乾燥塗膜形成工程は、本開示の感光性樹脂組成物を基板上に塗布し塗膜を形成し、その後乾燥させる工程である。乾燥塗膜形成工程は、ドライフィルムの樹脂層を基板上に転写することで基板上に乾燥塗膜を形成することも可能である。
【0038】
感光性樹脂組成物の基板上への塗布方法は、特に限定されず、例えば、スピンコーター、バーコーター、ブレードコーター、カーテンコーター、スクリーン印刷機等を用いて塗布する方法、スプレーコーターで噴霧塗布する方法、インクジェット法等を挙げることができる。
【0039】
塗膜の乾燥方法は、特に限定されず、例えば、風乾、オーブン又はホットプレートによる加熱乾燥、真空乾燥等が挙げられる。加熱乾燥を行う場合の条件は、例えば、加熱温度70~140℃、乾燥時間1~30分である。
【0040】
ドライフィルムの樹脂層の基材上への転写は、真空ラミネーター等を用いて、加圧及び加熱下で行うことが好ましい。加熱温度としては、例えば、60~100℃とすることができる。
【0041】
基板は、特に限定されず、例えば、回路形成されたプリント配線板、フレキシブルプリント配線板、半導体素子が形成されたウエハとすることができる。
【0042】
(露光工程)
露光工程は、乾燥塗膜形成工程において形成された乾燥塗膜に対し、所望するパターン形成が可能なフォトマスクを介して放射線を照射することにより、露光部の光酸発生剤を感光させ、活性種を発生させる工程である。パターニングが不要の場合にはフォトマスクを介す必要はない。また、直接描画装置を用いて、直接レーザーでパターンを描画してもよい。
【0043】
放射線の波長としては、光酸発生剤が活性化できる波長のものが用いられ、微細化されたパターニングを行うためには、最大波長が410nm以下のものが好ましい。照射エネルギーは、形成した乾燥塗膜の厚さ、光酸発生剤の吸収波長等により調整することができ、例えば、10~1000mJ/cmとすることができる。露光光源としては、高圧水銀灯ランプ、超高圧水銀灯ランプ、メタルハライドランプ、水銀ショートアークランプ、KRFレーザー等を用いることができる。
【0044】
(現像工程)
現像工程は、露光した乾燥塗膜を現像液により処理し、露光部を現像液に溶解、除去することによって、パターン塗膜を得る工程である。現像方法としては、公知の方法を用いることができ、例えば、回転スプレー法、パドル法、超音波処理を伴う浸せき法等を挙げることができる。
【0045】
現像液は、公知のものを用いることができ、例えば、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、アンモニア水等の無機アルカリ類、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等の有機アミン類、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド等の四級アンモニウム塩類等の水溶液を挙げることができる。必要に応じて、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等の水溶性有機溶媒や界面活性剤を添加することができる。
【0046】
現像液による処理の後、必要に応じて塗膜をリンス液により洗浄してパターン塗膜を得ることができる。リンス液は、特に限定されず、純水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等が挙げられる。これらは、単独で、又は、複数を任意の比率で組み合わせて用いることができる。
【0047】
(現像後加熱工程)
現像後加熱工程は、現像工程で形成されたパターン塗膜を加熱して、パターン塗膜の硬化を完了し、硬化パターン塗膜(硬化物)を得る工程であり、組成成分に架橋剤となるエポキシ基やメチロール基を有する化合物を用いた場合には、ポリケトンのフェノール性水酸基と架橋反応することで、硬化物の熱特性や機械特性等を向上することができる。加熱温度は、150~200℃、加熱時間は、1~120分とすることができる。加熱は、ホットプレートやイナートオーブン等の公知の方法で行うことができ、窒素雰囲気下にて加熱することが望ましい。
【実施例0048】
本発明を、実施例を用いてより詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0049】
以下のとおりポリケトン化合物を作製した。
【0050】
<合成例1:実施例1のポリケトン化合物>
トリフルオロメタンスルホン酸(0.45ml)に4,4’-ジカルボキシジフェニルエーテル(ODBA;0.078g、0.30mmol)及び2,2’-ジヒドロキシビフェニル(DHBP;0.077g、0.36mmol)を溶解させ、40℃で24時間攪拌した。混合物を水に注ぎ、得られた沈殿物をろ過により回収した。25℃環境下で3時間の真空乾燥をした後、得られたポリマーをN,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)に溶解させた。2-プロパノールに注ぎ、得られた沈殿物をろ過により回収した。80℃で12時間の真空乾燥を行い実施例1のポリケトン化合物を得た。
実施例1のポリケトン化合物の構造は、H-NMR分析により構造を確認した。測定したH-NMR分析のスペクトルを図1に示した。
実施例1のポリケトン化合物は、重量平均分子量(Mw)が30,600、数平均分子量(Mn)が13,300、分子量分散度(PDI)が2.3であった。
【0051】
下記は実施例1のポリケトン化合物の構造式である。
【化8】
【0052】
下記は4,4’-ジカルボキシジフェニルエーテル(ODBA)の構造式である。
【化9】
【0053】
下記は2,2’-ジヒドロキシビフェニル(DHBP)の構造式である。
【化10】
【0054】
<合成例2:実施例2のポリケトン化合物>
トリフルオロメタンスルホン酸(0.45ml)にテレフタル酸(TP;0.050g、0.30mmol)及び2,2’-ジヒドロキシビフェニル(DHBP;0.077g、0.36mmol)を溶解させ、40℃で24時間攪拌した。混合物を水に注ぎ、得られた沈殿物をろ過により回収した。25℃環境下で3時間の真空乾燥をした後、得られたポリマーをN,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)に溶解させた。2-プロパノールに注ぎ、得られた沈殿物をろ過により回収した。80℃で12時間の真空乾燥を行い実施例2のポリケトン化合物を得た。
実施例2のポリケトン化合物の構造は、H-NMR分析により構造を確認した。測定したH-NMR分析のスペクトルを図2に示した。
ポリケトン化合物は、重量平均分子量(Mw)が4,900、数平均分子量(Mn)が1,810、分子量分散度(PDI)が2.7であった。
【0055】
下記は実施例2のポリケトン化合物の構造式である。
【化11】
【0056】
下記はテレフタル酸(TP)の構造式である。
【化12】
【0057】
<合成例3:比較例1のポリケトン化合物>
トリフルオロメタンスルホン酸(0.45ml)に4,4’-ジカルボキシジフェニルエーテル(ODBA;0.078g、0.30mmol)及び2,2’-ジメトキシビフェニル(DMB;0.077g、0.36mmol)を溶解させ、40℃で24時間攪拌した。混合物を水に注ぎ、得られた沈殿物をろ過により回収した。25℃環境下で3時間の真空乾燥をした後、得られたポリマーをN,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)に溶解させた。2-プロパノールに注ぎ、得られた沈殿物をろ過により回収した。80℃で12時間の真空乾燥を行い比較例1のポリケトン化合物を得た。
比較例1のポリケトン化合物の構造は、H-NMR分析により構造を確認した。測定したH-NMR分析のスペクトルを図3に示した。
比較例1のポリケトン化合物は、重量平均分子量(Mw)が30,600、数平均分子量(Mn)が13,300、分子量分散度(PDI)が2.3であった。
【0058】
下記は比較例1のポリケトン化合物の構造式である。
【化13】
【0059】
下記は2,2’-ジメトキシビフェニル(DMB)の構造式である。
【化14】
【0060】
<合成例4:比較例2のポリケトン化合物>
トリフルオロメタンスルホン酸(0.45ml)にテレフタル酸(TP;0.050g、0.30mmol)及び2,2’-ジメトキシビフェニル(DMB;0.077g、0.36mmol)を溶解させ、40℃で24時間攪拌した。混合物を水に注ぎ、得られた沈殿物をろ過により回収した。25℃環境下で3時間の真空乾燥をした後、得られたポリマーをN,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)に溶解させた。2-プロパノールに注ぎ、得られた沈殿物をろ過により回収した。80℃で12時間の真空乾燥を行い比較例2のポリケトン化合物を得た。
比較例2のポリケトン化合物の構造は、H-NMR分析により構造を確認した。測定したH-NMR分析のスペクトルを図4に示した。
比較例2のポリケトン化合物は、重量平均分子量(Mw)が4,900、数平均分子量(Mn)が1,810、分子量分散度(PDI)が2.7であった。
【0061】
下記は比較例2のポリケトン化合物の構造式である。

【化15】
【0062】
<感光性樹脂組成物の調製>
得られた各実施例及び比較例のポリケトン化合物各100質量部と、光酸発生剤(三宝化学研究所社製TKF-428)20質量部を溶媒に溶解させ、溶媒にてワニス中の不揮発成分の濃度が20質量%となるように溶解、調整することで、各実施例及び比較例の感光性樹脂組成物のワニスを得た。なお溶媒として、実施例1及び比較例1のポリケトンにはPGMEAを用い、実施例2及び比較例2のポリケトン化合物にはシクロヘキサノンを用いた。
【0063】
<評価>
得られた各実施例及び比較例のワニスを用いて以下の評価を行った。
【0064】
(解像性評価)
各実施例及び比較例のワニスをシリコンウエハ上にスピンコーターを用いて硬化後の膜厚が3.0μmとなるように塗布し、ホットプレートを用いて110℃、3分乾燥させ、各実施例及び比較例の感光性樹脂組成物の乾燥塗膜を得た。この乾燥塗膜にコンタクト露光装置(光源:高圧水銀灯ランプ)を用い、L/Sが2μm/2μmのテストパターンを露光した。その後、2.38%TMAH水溶液を用いて、60秒間現像し純水でリンスを行い、各実施例及び比較例の感光性樹脂組成物のパターンを有する試料を得た。なお、各実施例及び比較例の感光性樹脂組成物における露光条件(露光量及びフォーカス)は、各実施例及び比較例の感光性樹脂組成物ごとに最も解像性が良くなる条件を選択して行った。
得られた各実施例及び比較例の試料を、パターンの長手方向に垂直な断面が観察できるように切断した。パターンの切断面を、走査型電子顕微鏡(観察倍率は10,000倍)を用いて観察し、2μm/2μm(L/S)のテストパターンが正常に形成できているか評価した。
その結果、実施例1及び2のポリケトン化合物を用いた感光性樹脂組成物では正常にパターンが形成でき、優れた解像性を示したが、比較例1及び2のポリケトン化合物を用いた感光性樹脂組成物ではパターン形成、解像性が得られなかった
図1
図2
図3
図4