(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024016755
(43)【公開日】2024-02-07
(54)【発明の名称】離型フィルム及び半導体パッケージの製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 27/00 20060101AFI20240131BHJP
H01L 23/28 20060101ALI20240131BHJP
H01L 21/56 20060101ALI20240131BHJP
B32B 3/30 20060101ALI20240131BHJP
C09J 7/40 20180101ALI20240131BHJP
B05D 5/08 20060101ALI20240131BHJP
【FI】
B32B27/00 L
H01L23/28 Z
H01L21/56 T
B32B3/30
C09J7/40
B05D5/08 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022119101
(22)【出願日】2022-07-26
(71)【出願人】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田村 遼
(72)【発明者】
【氏名】中村 弘司
(72)【発明者】
【氏名】藪下 諭
(72)【発明者】
【氏名】谷口 徹弥
(72)【発明者】
【氏名】佐久間 和則
【テーマコード(参考)】
4D075
4F100
4J004
4M109
5F061
【Fターム(参考)】
4D075CA07
4D075CB21
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4F100AK01A
4F100AK25A
4F100AK27A
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5F061BA01
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5F061EA02
(57)【要約】
【課題】半導体パッケージ表面の光沢度を効果的に低下可能な離型フィルム、及びこの離型フィルムを用いる半導体パッケージの製造方法を提供する。
【解決手段】離型層と基材層とを含み、前記離型層が2種以上のポリマーを含み、前記離型層の表面は凹凸形状を有し、(1)~(4)の少なくとも1つを満たす離型フィルムである。(1)離型層の表面を平面観察したときの表面に占める凹部の割合が50面積%以下である。成形品に離型層の凹凸形状を転写したときの、(2)離型層の表面の算術平均粗さ(Ra)に対する成形品の表面の算術平均粗さ(Ra)の百分率(転写率)が100%以上、(3)成形品の表面の光沢度(20°)が8.0以下、である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
離型層と基材層とを含み、
前記離型層が2種以上のポリマーを含み、前記離型層の表面は凹凸形状を有し、
前記離型層の表面を平面観察したときの前記表面に占める凹部の割合が、50面積%以下である離型フィルム。
【請求項2】
離型層と基材層とを含み、
前記離型層が2種以上のポリマーを含み、前記離型層の表面は凹凸形状を有し、
前記離型層の表面の算術平均粗さ(Ra)に対する、成形品に前記離型層の凹凸形状を転写したときの前記成形品の表面の算術平均粗さ(Ra)の百分率である転写率が100%以上である離型フィルム。
【請求項3】
離型層と基材層とを含み、
前記離型層が2種以上のポリマーを含み、前記離型層の表面は凹凸形状を有し、
成形品に前記離型層の凹凸形状を転写したときの前記成形品の表面の光沢度(20°)が8.0以下である離型フィルム。
【請求項4】
前記ポリマーの少なくとも1種はニトリル基含有(メタ)アクリルポリマーである請求項1に記載の離型フィルム。
【請求項5】
前記離型層の表面の凹凸についてラマン分光測定を行った際に、凸部の少なくとも一部と凹部の少なくとも一部とにおいてそれぞれ異なるピーク強度を示す請求項1に記載の離型フィルム。
【請求項6】
前記離型層の表面の凸部における前記ポリマーの成分比率と凹部における前記ポリマーの成分比率とが異なる請求項1に記載の離型フィルム。
【請求項7】
前記凸部におけるニトリル基含有(メタ)アクリルポリマーの質量基準での含有量は、前記凹部におけるニトリル基含有(メタ)アクリルポリマーの質量基準での含有量よりも多い請求項6に記載の離型フィルム。
【請求項8】
前記ポリマーの少なくとも2種において、SP値の差が0.3以上である請求項1に記載の離型フィルム。
【請求項9】
前記ポリマーの少なくとも1種は、(メタ)アクリロニトリルモノマーに由来する構成単位を含むポリマーであり、
前記ポリマーの少なくとも2種において、(メタ)アクリロニトリルモノマーに由来する構成単位の占める割合の差が1質量%以上である請求項1に記載の離型フィルム。
【請求項10】
前記離型層において最も含有量の多いポリマーの含有率が、前記ポリマーの総含有量に対して95質量%以下である請求項1に記載の離型フィルム。
【請求項11】
前記基材層が、ポリエステルフィルムである請求項1に記載の離型フィルム。
【請求項12】
前記離型層の厚みが1μm~50μmである、請求項1に記載の離型フィルム。
【請求項13】
前記離型フィルムが、トランスファーモールド又はコンプレッションモールドに用いられる、請求項1に記載の離型フィルム。
【請求項14】
請求項1~請求項13のいずれか1項に記載の離型フィルムを用いて、トランスファーモールド工程又はコンプレッションモールド工程を行う、半導体パッケージの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、離型フィルム及び半導体パッケージの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体チップは通常、外気からの遮蔽及び保護のため樹脂で封止され、パッケージと呼ばれる成形品として基板上に実装される。成形品は、樹脂を含む封止材を金型に注入することで作製される。金型には複数のキャビティが設けられ、封止材の流路としてのランナーを介して複数のキャビティが連結されている。そして、成形品が金型から離型しやすいよう、金型の構造、封止樹脂への離型剤の添加等の工夫がなされている。
【0003】
一方、パッケージの小型化、多ピン化等の要請から、Ball Grid Array(BGA)方式、Quad Flat Non-leaded(QFN)方式、ウエハレベルChip Size Package(WL-CSP)方式等のパッケージ方式が増加している。QFN方式では、スタンドオフの確保及び端子部での封止材によるバリの発生の防止の点から、またBGA方式及びWL-CSP方式では、金型からのパッケージの離型性の向上の点から、金型の内側に金型に沿わせて樹脂製の離型フィルムを配置し、その内部に封止材を注入して成形することが行われている(例えば、特許文献1参照)。離型フィルムを使用して成形する方法を、「フィルムアシスト成形法」という。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の離型フィルムを使用すると、成形したパッケージ表面に封止材のフロー跡が残る場合があり、外観が低下する場合がある。フロー跡の低減のために、離型フィルムの離型層にフィラを添加すること等の方策が考えられる。しかしながら、このような方策では十分でなく、フロー跡のさらなる低減が求められている状況である。パッケージ表面のフロー跡の低減には、パッケージ表面の光沢度を低下させることが有効である。
【0006】
このような事情に鑑み、本開示は、半導体パッケージ表面の光沢度を効果的に低下可能な離型フィルム、及びこの離型フィルムを用いる半導体パッケージの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための手段には、以下の実施態様が含まれる。
<1> 離型層と基材層とを含み、
前記離型層が2種以上のポリマーを含み、前記離型層の表面は凹凸形状を有し、
前記離型層の表面を平面観察したときの前記表面に占める凹部の割合が、50面積%以下である離型フィルム。
<2> 離型層と基材層とを含み、
前記離型層が2種以上のポリマーを含み、前記離型層の表面は凹凸形状を有し、
前記離型層の表面の算術平均粗さ(Ra)に対する、成形品に前記離型層の凹凸形状を転写したときの前記成形品の表面の算術平均粗さ(Ra)の百分率である転写率が100%以上である離型フィルム。
<3> 離型層と基材層とを含み、
前記離型層が2種以上のポリマーを含み、前記離型層の表面は凹凸形状を有し、
成形品に前記離型層の凹凸形状を転写したときの前記成形品の表面の光沢度(20°)が8.0以下である離型フィルム。
<4> 前記ポリマーの少なくとも1種はニトリル基含有(メタ)アクリルポリマーである<1>~<3>のいずれか1項に記載の離型フィルム。
<5> 前記離型層の表面の凹凸についてラマン分光測定を行った際に、凸部の少なくとも一部と凹部の少なくとも一部とにおいてそれぞれ異なるピーク強度を示す<1>~<4>のいずれか1項に記載の離型フィルム。
<6> 前記離型層の表面の凸部における前記ポリマーの成分比率と凹部における前記ポリマーの成分比率とが異なる<1>~<5>のいずれか1項に記載の離型フィルム。
<7> 前記凸部におけるニトリル基含有(メタ)アクリルポリマーの質量基準での含有量は、前記凹部におけるニトリル基含有(メタ)アクリルポリマーの質量基準での含有量よりも多い<6>に記載の離型フィルム。
<8> 前記ポリマーの少なくとも2種において、SP値の差が0.3以上である<1>~<7>のいずれか1項に記載の離型フィルム。
<9> 前記ポリマーの少なくとも1種は、(メタ)アクリロニトリルモノマーに由来する構成単位を含むポリマーであり、
前記ポリマーの少なくとも2種において、(メタ)アクリロニトリルモノマーに由来する構成単位の占める割合の差が1質量%以上である<1>~<8>のいずれか1項に記載の離型フィルム。
<10> 前記離型層において最も含有量の多いポリマーの含有率が、前記ポリマーの総含有量に対して95質量%以下である<1>~<9>のいずれか1項に記載の離型フィルム。
<11> 前記基材層が、ポリエステルフィルムである<1>~<10>のいずれか1項に記載の離型フィルム。
<12> 前記離型層の厚みが1μm~50μmである、<1>~<11>のいずれか1項に記載の離型フィルム。
<13> 前記離型フィルムが、トランスファーモールド又はコンプレッションモールドに用いられる、<1>~<12>のいずれか1項に記載の離型フィルム。
<14> <1>~<13>のいずれか1項に記載の離型フィルムを用いて、トランスファーモールド工程又はコンプレッションモールド工程を行う、半導体パッケージの製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、半導体パッケージ表面の光沢度を効果的に低下可能な離型フィルム、及びこの離型フィルムを用いる半導体パッケージの製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】離型フィルムの構成を示す概略断面図である。
【
図2】離型層の表面のレーザー顕微鏡による写真及び解析グラフである。
【
図3】
図2のサンプルG2における非連続相(凸部)と連続相(凹部)について顕微ラマン分光法により成分分析したスペクトル結果である。
【
図4】
図2のサンプルG3における非連続相(凸部)と連続相(凹部)について顕微ラマン分光法により成分分析したスペクトル結果である。
【
図5】離型フィルムの破断伸び率の測定に用いる試験片の形状を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示を実施するための形態について詳細に説明する。但し、本開示は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の実施形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合を除き、必須ではない。数値及びその範囲についても同様であり、本開示を制限するものではない。
【0011】
本開示において「工程」との語には、他の工程から独立した工程に加え、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の目的が達成されれば、当該工程も含まれる。
本開示において「~」を用いて示された数値範囲には、「~」の前後に記載される数値がそれぞれ最小値及び最大値として含まれる。
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において、各成分には、該当する物質が複数種含まれていてもよい。組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合、各成分の含有率又は含有量は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計の含有率又は含有量を意味する。
本開示において「層」との語には、当該層が存在する領域を観察したときに、当該領域の全体に形成されている場合に加え、当該領域の一部にのみ形成されている場合も含まれる。
【0012】
本開示において離型フィルム又は離型フィルムを構成する各層の厚みは、公知の手法で測定できる。例えば、ダイヤルゲージ等を用いて測定してもよく、離型フィルムの断面画像から測定してもよい。あるいは、層を構成する材料を溶剤等を用いて除去し、除去前後の質量、材料の密度、層の面積等から算出してもよい。層の厚みが一定でない場合は、任意の5点で測定した値の算術平均値を層の厚みとする。
本開示において「(メタ)アクリル」はアクリル及びメタクリルのいずれか一方又は両方を意味し、「(メタ)アクリレート」はアクリレート及びメタクリレートのいずれか一方又は両方を意味し、「(メタ)アクリロイル」はアクリロイル及びメタアクリロイルのいずれか一方又は両方を意味する。
本開示において図面を参照して実施形態を説明する場合、当該実施形態の構成は図面に示された構成に限定されない。また、各図における部材の大きさは概念的なものであり、部材間の大きさの相対的な関係はこれに限定されない。
【0013】
<離型フィルム>
本開示の離型フィルムは、離型層と基材層とを含み、前記離型層が2種以上のポリマーを含み、前記離型層の表面は凹凸形状を有し、下記(1)~(3)の少なくとも1つを満たす離型フィルムである。
(1)離型層の表面を平面観察したときの前記表面に占める凹部の割合が、50面積%以下である。
(2)離型層の表面の算術平均粗さ(Ra)に対する、成形品に離型層の凹凸形状を転写したときの成形品の表面の算術平均粗さ(Ra)の百分率である転写率が100%以上である。
(3)成形品に離型層の凹凸形状を転写したときの成形品の表面の光沢度(20°)が8.0以下である。
上記構成を採る本開示の離型フィルムは、成形された半導体パッケージ表面の光沢度を効果的に低下することが可能となる。この理由は明らかではないが、以下のように推察される。なお、本開示の離型フィルムは、以下の推察によって何ら限定されない。
【0014】
本開示の離型フィルムは、離型層が2種以上のポリマーを含むことで、離型層の表面に凹凸形状を形成する。例えば、離型層がポリマーの成分比率の異なる複数種の領域を有することで、一の領域では、ポリマーどうしが凝集し密度が高くなって部分的に盛り上がり、離型層の表面に凹凸形状を形成させることができる。そして、離型層の表面は凹凸形状を有し、凸部における前記ポリマーの成分比率と凹部における前記ポリマーの成分比率とが異なるものとすることができる。これにより、本開示の離型フィルムは、離型層にフィラを添加せずとも離型フィルムの表面に凹凸を生じさせることができる。
【0015】
本開示において「ポリマー」とは、有機フィラを含まない高分子量成分をいう。ここで有機フィラとは、離型層形成用組成物の調整に使用されうる有機溶媒(例えば、トルエン、メチルエチルケトン、及び酢酸エチル)に不溶性又は難溶性である。ここで、有機溶媒に不溶性又は難溶性とは、JIS K6769(2013)に準拠するゲル分率試験において、トルエン等の有機溶媒中に樹脂粒子を分散して50℃で24時間保持した後のゲル分率が97質量%以上であることをいう。
本開示において「ポリマーの種類が異なる」とは、構成するモノマーの種類が異なる、又は構成するモノマーの種類は同じであるが、少なくとも一種のモノマーに由来する構成単位の含有率が1質量%以上異なることをいう。
【0016】
ポリマーの成分比率が異なる複数の領域を形成する具体的な手法の一つとして、SP値の差が0.3以上の2種以上のポリマーを用いることが好ましい。SP値の差が0.3以上のポリマーは相溶性が低いため互いに分離しつつ、同種のポリマーどうしが凝集し、離型層の表面に凹凸形状を形成しやすい傾向にある。特に、ポリマーの少なくとも1種がニトリル基含有(メタ)アクリルポリマーであると、ニトリル基含有(メタ)アクリルポリマーどうしが凝集して凸部を形成しやすい傾向にある。
【0017】
また、凸部と凹部とにおいてラマン分光測定を行った際に、前記凸部の少なくとも一部と前記凹部の少なくとも一部とにおいてそれぞれ異なるピーク強度を示すことが好ましい。凸部の少なくとも一部と凹部の少なくとも一部とにおいてラマン分光測定を行った際にそれぞれ異なるピーク強度を示す、とは、少なくとも一部の凸部と少なくとも一部の凹部とにおけるラマン分光測定を行った際にそれぞれ異なるピーク強度を示すことであればよい。凸部を複数有する場合のそれぞれの凸部どうしは、ピーク強度は同一であっても異なっていてもよい。凹部を複数有する場合のそれぞれの凹部どうしは、ピーク強度が同一であっても異なっていてもよい。
本開示において「ラマン分光測定を行った際に異なるピーク強度を示す」とは、ラマン分光測定により得られるラマンスペクトルにおいて、ある一の位置に現出するピークの強度が異なることをいい、ある一の位置におけるピークの有無の相違もピーク強度が異なることに包含される。
【0018】
従来の離型フィルムでは、離型層にフィラを添加して離型層の表面に凹凸を生じさせて半導体パッケージ表面の封止材のフロー跡を低減している。このような従来の離型フィルムでは、離型層の表面からフィラが突出した形状となっていることから、凹部の底部はフィラ添加前の離型層表面に相当するため、凹部の底部は平坦である。半導体パッケージ表面の封止成形品に離型層表面の凹凸形状が転写されるため、半導体パッケージ表面に形成された凸部の頂点が平坦となる。そのため、平坦な頂点を有する凸部が形成された半導体パッケージ表面では、光沢度が十分に低下しない。
【0019】
これに対して、本開示の離型フィルムは、離型層が2種以上のポリマーにより離型層の表面に凹凸形状を形成し、かつ離型層表面に占める凹部の割合が50面積%以下であるため、凹部の底部は先尖化する。この理由は明らかではないが、同種のポリマーどうしが凝集し収縮して引っ張られるように窪みを形成していることが推測される。本開示の離型フィルム表面の形状が転写された半導体パッケージ表面では、凸部の頂点が先尖化し、半導体パッケージ表面の光沢度が効果的に低減する。
なお、本開示の離型フィルムは、凹部の底部が鋭角に切り込まれているものに限定されず、鈍角であってもよく、曲面であってもよく、凹部の底部が部分的に平坦であってもよい。凹部の形状は、これらの組み合わせで形成されていてもよい。また、複数存在する凹部のうち、一部の凹部の底部は平坦であってもよい。
【0020】
したがって、離型層が2種以上のポリマーを含むことで、離型フィルムの離型層の凹凸形状を成形品に転写したときに、(2)離型層の表面の算術平均粗さ(Ra)に対する、成形品の表面の算術平均粗さ(Ra)の百分率である転写率が100%以上であり、(3)成形品の表面の光沢度(20°)が8.0以下、とすることが可能である。
【0021】
さらに、本開示の離型フィルムではフィラを添加しなくとも表面に凹凸形状を形成し得るため、フィラの脱落といった不具合の発生を抑えることも可能である。また、従来の離型フィルムでは、フィラを起点に離型層が破断しやすいが、本開示の離型フィルムでは離型層の破断を抑えることも可能である。そして、離型層の伸び性にも優れる。離型層の伸び性に優れ、離型フィルムの金型への追従性に優れる。また、離型層の破断が抑えられると、破断した箇所で封止材が金型に接触することが抑えられ、成形物の金型からの取り出し性に優れる。
【0022】
本開示の離型フィルムでは、フィラを添加しなくとも表面に凹凸形状を形成し得るため、明確な界面が確認されない凸部を形成することも可能である。明確な界面が確認されない凸部とは、レーザー顕微鏡で観察した際に、フィラを添加した場合のような粒子界面が確認されないことをいう。
【0023】
本開示の離型フィルムの一例として、
図1に離型フィルムの断面構成を概略的に示す。
図1に示すように、離型フィルム30は、基材層10と離型層20を含む。離型フィルム30はその他の層を有していてもよい。その他の層としては、第2離型層、アンカリング向上層、帯電防止層、着色層等が挙げられる。
【0024】
[離型層]
離型層は少なくとも2種のポリマーを含有する。
離型層に含まれる少なくとも2種のポリマーは、SP値の差が0.3以上であることが好ましく、0.5以上であることがより好ましく、0.8以上であることがさらに好ましい。前記SP値の差の上限値は特に制限されないが、5.0以下であることが好ましく、4.0以下であることがより好ましく、3.0以下であることがさらに好ましい。
【0025】
本開示において、離型層に含まれるポリマーが2種類の場合、SP値の差とは、各ポリマー間のSP値の差をいう。離型層に含まれるポリマーが3種類以上の場合、SP値の差とは、離型層に含まれるポリマーのうちの最もSP値の高いポリマーと最もSP値の低いポリマーとの間のSP値の差をいう。
【0026】
SP値は、化学構造式の部分構造単位から導かれる溶解度パラメータであり、Fedors法により求めた値である。
【0027】
ポリマーの種類は特に制限されず、離型層の粘着性、離型性、耐熱性等を考慮して選択することが好ましい。具体的には、ポリマーは、(メタ)アクリロイルモノマーに由来する構成単位を有する(メタ)アクリルポリマー、シリコーン、ウレタンポリマー等が挙げられる。ポリマーの少なくとも1種は(メタ)アクリルポリマーであることが好ましく、2種以上の(メタ)アクリルポリマーを用いることがより好ましい。
【0028】
全ポリマー中の(メタ)アクリルポリマーの占める割合は、20質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましく、60質量%以上であることがさらに好ましく、80質量%以上、85質量%以上、90質量%以上、95質量%以上であってもよい。上限値は特に限定されず、当該割合は、100質量%であってもよく、95質量%以下であってもよく、90質量%以下、85質量%以下であってもよい。
【0029】
(メタ)アクリルポリマーは、単独重合体であっても共重合体であってもよく、単独重合体と共重合体とを併用してもよい。(メタ)アクリルポリマーの少なくとも1種は共重合体であることが好ましい。共重合体は、官能基を有さないモノマーAに由来する構成単位を含んでもよく、官能基を有するモノマーBに由来する構成単位を含んでもよい。
【0030】
モノマーAは、ガラス転移温度(Tg)が比較的低い(例えば、-20℃以下)モノマーであることが好ましい。なお、Tgが比較的低いモノマーとは、そのモノマーで単独重合体を合成したときのガラス転移温度が比較的低いモノマーをいう。モノマーAとしては、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸エチル、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。共重合体は、モノマーAに由来する構成単位を1種単独で含んでいても、2種以上の組み合わせで含んでいてもよい。
【0031】
共重合体がモノマーAに由来する構成単位を含む場合、共重合体におけるモノマーAに由来する構成単位の総含有率は、50質量%超であることが好ましく、55質量%以上であることがより好ましく、60質量%以上であることがさらに好ましい。また、当該総含有率は、99質量%以下であることが好ましく、98質量%以下であることがより好ましく、97質量%以下であることがさらに好ましい。
【0032】
少なくとも1種のポリマーは、官能基を有するモノマーBに由来する構成単位を含む共重合体であることが好ましい。官能基としては、カルボン酸基、水酸基、アミド基、ニトリル基等が挙げられる。官能基は、架橋性官能基であっても、非架橋性官能基であってもよい。架橋性官能基としては、カルボン酸基、水酸基、アミド基等が挙げられ、非架橋性官能基としてはニトリル基等が挙げられる。共重合体は、モノマーBに由来する構成単位を、1種単独で含んでいても、2種以上の組み合わせで含んでいてもよい。少なくとも1種のポリマーは、ニトリル基含有(メタ)アクリルポリマーであることがより好ましい。
【0033】
架橋性官能基を有する架橋型ポリマーは、少なくとも一部が架橋されて、離型フィルムに含まれていてもよい。本開示では、2種以上のポリマーが架橋されている場合も、離型フィルムが2種以上のポリマーを含む形態に包含される。
【0034】
ポリマーが架橋されている場合には、架橋点の結合の分解を経ることで、架橋前のポリマーを分析又は推定することが可能である。例えば、ポリマーが水酸基を有し、架橋剤としてイソシアネート化合物を用いた場合には、ウレタン結合を形成して架橋することが推測され、ウレタン結合はピリジンにより選択的に分解することが可能である。
【0035】
架橋型ポリマーは、架橋型(メタ)アクリルポリマーであることが好ましく、架橋型(メタ)アクリル共重合体であることが好ましい。
【0036】
架橋性官能基を有するモノマーB1としては、(メタ)アクリル酸、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。非架橋性官能基を有するモノマーB2としては、(メタ)アクリロニトリル等が挙げられる。
【0037】
少なくとも1種のポリマーは、モノマーB1に由来する構成単位の総含有率が、0.1質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましく、1.0質量%以上であることがさらに好ましい。また、当該総含有率は、30質量%以下であることが好ましく、25質量%以下であることがより好ましく、20質量%以下であることがさらに好ましい。
【0038】
少なくとも1種のポリマーは、モノマーB2に由来する構成単位の総含有率が、1質量%以上であることが好ましく、3質量%以上であることがより好ましく、5質量%以上であることがさらに好ましい。また、当該含有率は、55質量%以下であることが好ましく、50質量%以下であることがより好ましく、45質量%以下であることがさらに好ましい。
【0039】
ポリマーのうち少なくとも1種は、ニトリル基を有するモノマーに由来する構成単位を含む共重合体であることが好ましく、(メタ)アクリロニトリルモノマーに由来する構成単位を含む共重合体であることがより好ましい。併用するポリマーは、ニトリル基を有するモノマーに由来する構成単位を含まない単独重合体であってもよく、ニトリル基を有するモノマーに由来する構成単位を含まない共重合体であってもよい。
【0040】
ニトリル基を有するモノマーに由来する構成単位を含む共重合体における、ニトリル基を有するモノマーに由来する構成単位の含有率は、1質量%以上であることが好ましく、3質量%以上であることがより好ましく、5質量%以上であることがさらに好ましい。また、当該含有率は、55質量%以下であることが好ましく、50質量%以下であることがより好ましく、45質量%以下であることがさらに好ましい。
【0041】
ニトリル基を有するモノマーに由来する構成単位を含む共重合体における、モノマーAに由来する構成単位の総含有率は、35質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましく、50質量%以上であることがさらに好ましい。また、当該総含有率は、94質量%以下であることが好ましく、92質量%以下であることがより好ましく、90質量%以下であることがさらに好ましい。
【0042】
ニトリル基を有するモノマーに由来する構成単位を含む共重合体における、モノマーB1に由来する構成単位の総含有率は、0.1質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましく、1.0質量%以上であることがさらに好ましい。また、当該総含有率は、30質量%以下であることが好ましく、25質量%以下であることがより好ましく、20質量%以下であることがさらに好ましい。
【0043】
ニトリル基を有するモノマーに由来する構成単位を含まない共重合体における、モノマーAに由来する構成単位の総含有率は、70質量%以上であることが好ましく、75質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましい。また、当該総含有率は、99質量%以下であることが好ましく、98質量%以下であることがより好ましく、97質量%以下であることがさらに好ましい。
【0044】
ニトリル基を有するモノマーに由来する構成単位を含まない共重合体における、モノマーB1に由来する構成単位の総含有率は、0.1質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましく、1.0質量%以上であることがさらに好ましい。また、当該総含有率は、30質量%以下であることが好ましく、25質量%以下であることがより好ましく、20質量%以下であることがさらに好ましい。
【0045】
ポリマーの少なくとも2種において、(メタ)アクリロニトリルモノマーに由来する構成単位の占める割合の差は、1質量%以上であることが好ましく、3質量%以上であることがより好ましく、5質量%以上であることがさらに好ましい。(メタ)アクリロニトリルモノマーに由来する構成単位の占める割合の差の上限値は特に制限されないが、55質量%以下であることが好ましく、50質量%以下であることがより好ましく、45質量%以下であることがさらに好ましい。
【0046】
2種の(メタ)アクリルポリマーの好ましい組み合わせとしては、例えば下記(I)及び(II)が挙げられ、(I)が好ましい。
(I)ニトリル基含有(メタ)アクリルポリマーと、ニトリル基を含まない(メタ)アクリルポリマーとの組み合わせ
(II)2種ともニトリル基含有(メタ)アクリルポリマーであり、(メタ)アクリロニトリルモノマーに由来する構成単位の含有率が互いに異なる。
【0047】
ポリマーの数平均分子量(Mn)は、例えば1.0×103以上であってよく、1×104以上であってよい。また、例えば1.0×106以下であってよく、5.0×105以下であってよい。
ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、例えば1.0×103以上であってよく、1.0×104以上であってよい。また、例えば5.0×106以下であってよく、1.0×106以下であってよい。
ポリマーのMn及びMwは、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)を用いた通常の方法により測定される。
【0048】
離型層において最も含有量の多いポリマーの含有率は、ポリマーの総含有量に対して95質量%以下であることが好ましく、90質量%以下であることがより好ましく、85質量%以下であることがさらに好ましい。最も含有量の多いポリマーの含有率が95質量%以下であると、離型フィルムの表面に凹凸が形成されやすい傾向にある。
【0049】
ポリマーが架橋型ポリマーの場合には、架橋剤を用いることが好ましい。架橋剤としては、イソシアネート化合物、メラミン化合物、エポキシ化合物等の公知の架橋剤が挙げられる。また、緩やかに広がった網目状構造を形成する観点から、架橋剤は3官能、4官能等の多官能架橋剤であることがより好ましい。
【0050】
イソシアネート架橋剤は特に制限されず、公知のイソシアネート基を有する化合物(イソシアネート化合物)から選択できる。反応性の観点からは、2官能イソシアネート化合物(2個のイソシアネート基を有する化合物)及び多官能イソシアネート(3個以上のイソシアネート基を有する化合物)が好ましく、多官能イソシアネート化合物がより好ましい。
【0051】
2官能イソシアネート化合物としては、脂肪族ジイソシアネート化合物、脂環式ジイソアネート化合物、芳香族ジイソシアネート化合物、これらのジイソシアネート化合物のカルボジイミド変性物、これらのジイソシアネート化合物を分子中に有する高分子化合物等が挙げられる。
【0052】
脂肪族ジイソシアネート化合物としては、1,5-ペンタメチレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMHDI)、リジンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアナートメチル(NBDI)等が挙げられる。
【0053】
脂環式ジイソシアネート化合物としては、トランスシクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、H6-XDI(水添XDI)、H12-MDI(水添MDI)等が挙げられる。
【0054】
芳香族ジイソシアネート化合物としては、ダイマー酸ジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート(2,4-TDI)、2,6-トリレンジイソシアネート(2,6-TDI)、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4’-MDI)、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(2,4’-MDI)、1,4-フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリデンジイソシアネート(TMXDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)、1,5-ナフタレンジイソシアネート(NDI)等が挙げられる。
【0055】
多官能イソシアネート化合物としては、2官能イソシアネート化合物の三量体、2官能イソシアネート化合物の三量体を分子中に有する高分子化合物等が挙げられる。
2官能イソシアネート化合物の三量体としては、2官能イソシアネート化合物のイソシアヌレート体、2官能イソシアネート化合物のアダクト体、2官能イソシアネート化合物のビウレット体等が挙げられる。
【0056】
離型層に含まれる架橋剤の含有量は、例えば、離型層に含まれるポリマーの固形分100質量部に対して0.1質量部~50質量部であってもよく、1質量部~40質量部であってもよい。
【0057】
離型層は、必要に応じて、アンカリング向上剤、架橋促進剤、着色剤、帯電防止剤等を含んでいてもよい。例えば、離型層が帯電防止剤を含むことにより、剥離する際に放電が生じにくく、電子部品の静電破壊が抑制される。
【0058】
離型層の表面の凹凸についてラマン分光測定を行った際に、前記凸部の少なくとも一部と前記凹部の少なくとも一部とにおいてそれぞれ異なるピーク強度を示すことが好ましい。一例として、凸部の少なくとも一部と凹部の少なくとも一部とにおいて、ポリマーの成分比率が異なることが挙げられる。さらに具体的な一例としては、凸部の少なくとも一部と凹部の少なくとも一部とにおいて、ニトリル基含有(メタ)アクリルポリマーの含有量が異なることが好ましい。また、異なるピーク強度を示すピークが、ニトリル基に由来するピークであることが好ましい。
【0059】
ぞれぞれの凹凸部におけるラマン分光測定は、ラマン分光装置を用いる。ラマン分光装置として、例えば、Thermo Fischer Scientific製の「DXR2xi」を用い、下記条件で測定を行う。
・波長:532nm
・出力:10mW
・露光時間:0.05秒
・スキャン回数:1000回
・アパーチャー:25μmピンホール
・対物レンズ:100倍
【0060】
ぞれぞれの凹凸部における成分比率は、レーザーを照射した箇所について1点ずつラマン分光法にてスペクトルを得ることで測定される。例えば、離型層を構成する特定の成分(例えばニトリル基)についてラマンスペクトルのピークを予め同定しておき、その信号強度に基づいて、一の箇所と他の一の箇所とでの特定の成分の相対的な含有量を確認する。
【0061】
離型層において、少なくとも一の領域はニトリル基含有(メタ)アクリルポリマーを含むことが好ましく、他の一の領域では、ニトリル基含有(メタ)アクリルポリマーを含んでいても、含まなくてもよい。離型層の表面に凹凸を創出させやすくする観点からは、他の一の領域では、ニトリル基含有(メタ)アクリルポリマーを含まないことが好ましい。なお、一の領域でニトリル基含有(メタ)アクリルポリマーを含まないか否かは、その領域について後述する顕微ラマン分光法で成分分析を行ったときに、ニトリル基に対応するスペクトルピークが検出されないことで確認することができる。
【0062】
それぞれの領域は、離型層の表面を平面観察したときに、層内が相分離状態を呈して連続相及び非連続相が形成されていてもよい。連続相と非連続相の面積比率は、離型層に含有されるポリマーの配合比率によって調整することができる。離型層中の含有比率が少ないポリマーは非連続相に含まれ、含有比率の多いポリマーは連続相に含まれる。
【0063】
また、離型層の表面が凹凸形状を有し、凸部の少なくとも一部におけるポリマーの成分比率と凹部の少なくとも一部におけるポリマーの成分比率とが異なることが好ましい。一例として、凸部の少なくとも一部と凹部の少なくとも一部とで、ニトリル基含有(メタ)アクリルポリマーの質量基準での含有量が異なり、凸部の少なくとも一部の方が凹部の少なくとも一部よりもニトリル基含有(メタ)アクリルポリマーの質量基準での含有量が多いことが好ましい。
【0064】
図2は、離型層の表面のレーザー顕微鏡による写真及び解析グラフである。レーザー顕微鏡として株式会社キーエンス製の「VK-X3000」を用い、50倍の対物レンズにより観察を行っている。
図2では上述のレーザー顕微鏡を用いているが、離型層の表面は他のレーザー顕微鏡を用いてもよい。
【0065】
図2において、サンプルG1はフィラを含む従来の離型層であり、サンプルG2及びG3はニトリル基含有(メタ)アクリルポリマー(ポリマーA)とニトリル基を有さない(メタ)アクリルポリマー(ポリマーB)とを併用した本開示に係る離型層である。サンプルG2は、全ポリマー中のポリマーAの含有率が15質量%であり、ポリマーBの含有率が85質量%である。サンプルG3は、全ポリマー中のポリマーAが85質量%であり、ポリマーBの含有率が15質量%である。
【0066】
図2の1段目及び2段目は離型層の表面を平面観察したときの平面写真であり、3段目は2段目の写真において矢印で示した直線での表面の凹凸形状を解析した断面曲線である。
図2に示されるように、サンプルG2及びG3では、離型層は複数の領域が形成されている。
【0067】
サンプルG2は全ポリマー中のニトリル基含有(メタ)アクリルポリマーの含有率が半分未満であり、この場合には全面に占める凸部の領域が半分未満である。他方、サンプルG3は全ポリマー中のニトリル基含有(メタ)アクリルポリマーの含有率が半分を超えており、この場合には、全面に占める凸部の領域が半分を超えている。このことから、凸部は凹部に比べてニトリル基含有(メタ)アクリルポリマーの含有率が多くなっていることがわかる。
なお、
図2に示されるように、従来のサンプルG1ではフィラが凝集しているため、凸部の形状、大きさ等の均一性が低いことがわかる。
【0068】
サンプルG2は全面に占める凹部の領域が大半である。他方、サンプルG3は、全面に占める凹部の領域が50面積%以下である。したがって、サンプルG3は本開示の離型フィルムである。
【0069】
図2の断面曲線に示されるように、本開示の離型フィルムであるサンプルG3は、従来のフィラを添加したサンプルG1に比べて、凹部の底部が先尖化している。よって、本開示の離型フィルムを用いて成形したパッケージ表面は、光沢度が効果的に低減することがわかる。
【0070】
本開示の離型フィルムは、離型層の表面を平面観察したときの表面に占める凹部の割合は、50面積%以下であることが好ましく、45面積%以下であることがより好ましく、40面積%以下であることがさらに好ましい。離型層の表面における凹部の占める割合は、次の方法により測定する。
【0071】
離型フィルムの表面を光学顕微鏡にて400倍で撮影する。撮影した画像の明るさのコントラストの違いから凹部と凸部の範囲を区分けする。区分けした凹部と凸部の各面積を比較する。凹部と凸部は同時位置で測定した三次元画像により判断することができる。この測定には、デジタルマイクロスコープ(例えば、キーエンス株式会社製、VHX-7000)等の装置を用いることができ、画像処理にて凹部の占める割合を算出することができる。画像処理装置を用いることができない場合には、上記で撮影した画像について、凹部と凸部とを個別に判断し、区分けして、面積を求めてもよい。面積を求める際には、区分けした画像を切り出して、重量により比較し求めてもよい。
【0072】
離型層の表面を平面観察したときに、凹部の最大径は30μm以下であることが好ましい。離型層が離型性を奏すれば、凹部の最大径の下限値は特に制限されない。
【0073】
凹部の最大径は、光学顕微鏡にて400倍における1視野で観察したときに、最も大きな直径を有する凹部について直径を測定し得た値である。
【0074】
光学-顕微鏡にて離型層の表面を平面観察したときに、凹部の円形度は0.7以上であることが好ましく、0.8以上であることがより好ましい。「円形度」は、下記式で求められる値であり、粒子形状の複雑さを示す指標である。円形度が1に近いほど粒子形状が真円に近いことを意味する。
円形度=4π×(面積)÷(周囲長)2
【0075】
凹部の円形度は、光学顕微鏡にて観察したときに、10個の凸部について円形度を測定し、その算術平均値である。凸部の円形度は、必要に応じて公知の画像解析手段を用いて算出することができる。
【0076】
図2のサンプルG1に示すように、フィラを添加する従来の離型フィルムの場合には、フィラ同士が凝集しやすく凹部の円形度が低くなりやすい。特に、離型層の表面における凹部の占める割合を低くするためにフィラを多く添加すると、フィラ同士はより凝集しやすくなり、凹部の円形度はさらに低くなりやすい。
【0077】
なお、サンプルG2及びG3におけるポリマーの配合比率と凸部の占める割合との関係から、凸部は凹部に比べてニトリル基含有(メタ)アクリルポリマーの含有率が多くなっていることが推測される。また、
図2に示されるように、従来のサンプルG1ではフィラが凝集しているため、凸部の形状、大きさ等の均一性が低いことがわかる。
【0078】
図3は、
図2のサンプルG2における非連続相(凸部)と連続相(凹部)について顕微ラマン分光法により成分分析したスペクトル結果である。ここで非連続相とは観察面において占める面積が少ない領域をいい、連続相とは観察面において占める面積が多い領域をいう。
【0079】
図3に示されるように、非連続相(凸部)ではニトリル基に由来するピークが検出されているのに対して、連続相(凹部)ではニトリル基に由来するピークが検出されていない。この結果から、非連続相(凸部)と連続相(凹部)とでは、ポリマーの成分比率が異なっていることがわかる。また、凸部の方が凹部よりもニトリル基含有(メタ)アクリルポリマーの含有量が多いことがわかる。
【0080】
図4は、
図2のサンプルG3における凸部(連続相)と凹部(非連続相)について顕微ラマン分光法により成分分析したスペクトル結果である。凸部ではニトリル基に由来するピークが検出されているのに対して、凹部ではニトリル基に由来するピークが検出されていない。この結果から、凸部と凹部とでは、ポリマーの成分比率が異なっていることがわかる。また、凸部の方が凹部よりもニトリル基含有(メタ)アクリルポリマーの含有量が多いことがわかる。
図4では、全ポリマー中でニトリル基含有(メタ)アクリルポリマーは主成分として含まれていて連続相を形成しているが、この連続相は凸部を形成している。
図3では連続相は凹部を形成しているのに対して
図4では逆転している。しかしながら、
図3及び
図4のいずれの場合も、凸部の方が凹部よりもニトリル基含有(メタ)アクリルポリマーの含有量が多い。
【0081】
離型層の厚みは特に限定されず、1μm以上であることが好ましく、3μm以上であることがより好ましく、5μm以上であることがさらに好ましい。離型層の厚みが1μm以上であると、電子部品に対する粘着力が充分に得られ、封止材の侵入が効果的に抑制される。
離型層の厚みは50μm以下であってもよく、25μm以下であってもよい。離型層の厚みが50μm以下であると、離型層の熱硬化時の熱収縮応力が生じにくく、離型フィルムの平坦性が保持されやすい。また、離型フィルムが導電層を有している場合には、離型層表面の導電層からの距離が遠すぎずに表面抵抗率が低く維持され、電子部品の静電破壊が効果的に抑制される。
離型層の形成しやすさ(塗布性等)、粘着力の確保等を総合的に考慮すると、離型層の厚みは1μm~50μmであることが好ましく、3μm~25μmであることがより好ましい。
【0082】
本開示の実施形態の効果を最大化する観点からは、離型層はフィラを含まないことが好ましいが、フィラを含んでもよい。フィラを用いる場合には、有機フィラ及び無機フィラの少なくとも一方であってよい。フィラの含有率は、例えば、離型層中において1体積%以下、0.5体積%以下、0.1体積%以下であってよい。
離型層におけるフィラの含有率(体積%)は、アルキメデス法によって測定した密度及び樹脂成分及びフィラの比重に基づいて算出することができる。
【0083】
(離型層の破断伸び率)
離型層の破断伸び率は、100%以上であることが好ましく、120%以上であることがより好ましく、150%以上であることがさらに好ましい。離型層の破断伸び率は、例えば、離型層がニトリル基含有(メタ)アクリルポリマーを少なくとも1種含有する場合は、ニトリル基含有(メタ)アクリルポリマーの配合量によって調整することができる。離型層の破断伸び率の上限値は特に限定されず、例えば、800%以下であってもよく、500%以下であってもよく、300%以下であってもよい。
【0084】
離型フィルムの離型層の破断伸び率(%)は下記のようにして測定される。まず、離型フィルムを用いて
図5に示すような形状の試験片を作製する。この試験片の両端を試験機でつかんで引張試験を実施する。測定は170℃の条件下で行い、引張速度は200mm/分とする。試験前のサンプルの標点間距離A(
図5に示す試験片の幅が10mmである部分の長さ:40mm)と離型層が破断したときの標点間距離Bとから、下式により離型層の破断伸び率を算出する。
【0085】
【0086】
離型フィルムの離型層の破断伸び率の測定には、例えば、株式会社オリエンテック製「テンシロン引張試験機 RTA-100型」、株式会社エー・アンド・デイ製「テンシロン万能試験機RTG-1210」又はこれに類似した試験機であって、摘み具を有するものを使用する。
【0087】
(離型層の表面粗さ)
離型層の外表面(基材層と対向する面とは反対側の面)の算術平均粗さ(Ra)は、0.15μm以上であることが好ましく、0.20μm以上であることがより好ましく、0.25μm以上であることがさらに好ましい。算術平均粗さ(Ra)の上限値は特に限定されず、例えば、4.00μm以下であってもよく、3.00μm以下であってもよく、2.00μm以下であってもよい。
【0088】
離型層の外表面の算術平均粗さ(Ra)は、表面粗さ測定装置(例えば、(株)小坂研究所、型番SE-3500)を用いて、触針先端径2μm、送り速さ0.5mm/s及び走査距離8mmの条件で測定した結果を、JIS B0601(2001)又はISO 4287(1997)により解析して得ることができる。
【0089】
離型フィルムは、成形品に離型フィルムの離型層の凹凸形状を転写したときに、離型層の表面の算術平均粗さ(Ra)に対する、成形品の表面の算術平均粗さ(Ra)の百分率(転写率)が100%以上であることが好ましく、103%以上であることがより好ましく、110%以上であることがさらに好ましい。離型フィルムの転写率は、300%以下であることが好ましく、250%以下であることがより好ましく、200%以下であることがさらに好ましい。
【0090】
離型層の外表面の10点平均粗さ(RZ)は、1.00μm以上であることが好ましく、1.50μm以上であることがより好ましく、2.00μm以上であることがさらに好ましい。10点平均粗さ(RZ)の上限値は特に限定されず、例えば、30.00μm以下であってもよく、20.00μm以下であってもよく、10.00μm以下であってもよい。
【0091】
離型層の外表面の10点平均粗さ(RZ)は、表面粗さ測定装置(例えば、(株)小坂研究所、型番SE-3500)を用いて、触針先端径2μm、送り速さ0.5mm/s及び走査距離8mmの条件で測定した結果を、JIS B0601(1994)により解析して得ることができる。
【0092】
離型層の外表面の凹凸の平均間隔(Sm)は、0.30mm以下であることが好ましく、0.25mm以下であることがより好ましく、0.20mm以下であることがさらに好ましい。凹凸の平均間隔(Sm)の下限値は特に限定されず、例えば、0.01mm以上であってもよく、0.02mm以上であってもよく、0.03mm以上であってもよい。
【0093】
離型層の外表面の凹凸の平均間隔(Sm)は、表面粗さ測定装置(例えば、(株)小坂研究所、型番SE-3500)を用いて、触針先端径2μm、送り速さ0.5mm/s及び走査距離8mmの条件で測定した結果を、JIS B0601(1994)により解析して得ることができる。
【0094】
離型層の外表面の粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)は、0.50mm以下であることが好ましく、0.30mm以下であることがより好ましく、0.10mm以下であることがさらに好ましい。RSmの下限値は特に限定されず、例えば、0.01mm以上であってもよく、0.03mm以上であってもよく、0.05mm以上であってもよい。
【0095】
離型層の外表面の粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)は、表面粗さ測定装置(例えば、(株)小坂研究所、型番SE-3500)を用いて、触針先端径2μm、送り速さ0.5mm/s及び走査距離8mmの条件で測定した結果を、JIS B0601(2001)により解析して得ることができる。
【0096】
離型層の外表面の最大高さ(Ry)は、1.0μm以上であることが好ましく、1.5μm以上であることがより好ましく、2.0μm以上であることがさらに好ましい。最大高さ(Ry)の上限値は特に限定されず、例えば、30.0μm以下であってもよく、20.0μm以下であってもよく、10.0μm以下であってもよい。
【0097】
離型層の外表面の最大高さ(Ry)は、表面粗さ測定装置(例えば、(株)小坂研究所、型番SE-3500)を用いて、触針先端径2μm、送り速さ0.5mm/s及び走査距離8mmの条件で測定した結果を、JIS B0601(2001)により解析して得ることができる。
【0098】
離型フィルムは、成形品に離型フィルムの離型層の凹凸形状を転写したときに、成形品の表面の十点平均粗さ(Rz)と最大高さ(Ry)との差が2.00μm以下であることが好ましく、1.50μm以下であることがより好ましく、1.00μm以下であることがさらに好ましい。当該差は、0.30μm以上であることが好ましく、0.40μm以上であることがより好ましく、0.50μm以上であることがさらに好ましい。
【0099】
離型層の外表面の算術平均粗さ(Ra)、10点平均粗さ(RZ)、凹凸の平均間隔(Sm)、凹凸の平均間隔(RSm)、及び最大高さ(Ry)は、離型層に含まれるポリマーの配合比率、離型層の厚み、架橋剤を用いる場合には架橋剤量、触媒を用いる場合には触媒量等により調節することができる。
【0100】
離型層の表面の光沢度(20°)は、28.0以下であることが好ましく、25.0以下であることがより好ましく、20.0以下であることがさらに好ましい。離型層の表面の光沢度(20°)の下限値は特に限定されず、例えば、1.0以上であってもよく、3.0以上であってもよく、5.0上であってもよい。
【0101】
離型層の表面の光沢度(60°)は、44.0以下であることが好ましく、40.0以下であることがより好ましく、35.0以下であることがさらに好ましい。離型層の表面の光沢度(60°)の下限値は特に限定されず、例えば、3.0以上であってもよく、5.0以上であってもよく、10.0以上であってもよい。
【0102】
離型層の表面の光沢度(85°)は、60.0以下であることが好ましく、45.0以下であることがより好ましく、35.0以下であることがさらに好ましい。離型層の表面の光沢度(85°)の下限値は特に限定されず、例えば、1.0以上であってもよく、3.0以上であってもよく、5.0以上であってもよい。
【0103】
光沢度は、グロス測定機を用い、JIS Z 8741(1997)の鏡面光沢度の測定方法に基づき測定する。光沢度(20°)は、入射角20度で測定し、光沢度(60°)は入射角60度で測定し、光沢度(85°)は、入射角85度で測定する。
【0104】
離型フィルムは、成形品に離型フィルムの離型層の凹凸形状を転写したときに、成形品の表面の光沢度(20°)が8.0以下であることが好ましく、5.0以下であることがより好ましく、3.0以下であることがさらに好ましい。成形品の光沢度(20°)の下限値は特に限定されず、例えば、0.3以上であってもよく、0.5以上であってもよく、1.0以上であってもよい。
【0105】
離型フィルムは、成形品に離型フィルムの離型層の凹凸形状を転写したときに、成形品の表面の光沢度(60°)は、30.0以下であることが好ましく、20.0以下であることがより好ましく、15.0以下であることがさらに好ましい。成形品の表面の光沢度(60°)の下限値は特に限定されず、例えば、1.0以上であってもよく、3.0以上であってもよく、5.0以上であってもよい。
【0106】
離型フィルムは、成形品に離型フィルムの離型層の凹凸形状を転写したときに、成形品の表面の光沢度(85°)は、65.0以下であることが好ましく、50.0以下であることがより好ましく、30.0以下であることがさらに好ましい。成形品の表面の光沢度(85°)の下限値は特に限定されず、例えば、1.0以上であってもよく、5.0以上であってもよく、10.0以上であってもよい。
【0107】
[基材層]
基材層としては特に限定されず、当該技術分野で使用されている基材層から適宜選択することができる。金型の形状に対する追従性を向上する観点からは、延伸性に優れる樹脂含有基材層を使用することが好ましい。
基材層は、封止材の成形のための加熱温度(100℃~200℃程度)を考慮して、この加熱温度以上の耐熱性を有することが望ましい。また、離型フィルムを金型に装着する際及び封止材の流動の際にシワ、破れ等の発生を抑制する観点から、加熱時の弾性率、伸び等を考慮して基材層の材料を選択することが好ましい。
【0108】
基材層の材料は、耐熱性及び加熱時の弾性率の観点から、ポリエステル樹脂であることが好ましい。ポリエステル樹脂の例としては、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂及びポリブチレンテレフタレート樹脂並びにこれらの共重合体及び変性樹脂が挙げられる。
【0109】
基材層はシート形状であることが好ましく、ポリエステル樹脂をシート状に成形したものが好ましく、ポリエステルフィルムであることがより好ましく、金型への追従性の観点からは、2軸延伸ポリエステルフィルムであることが好ましい。
【0110】
基材層の厚みは特に限定されず、5μm~200μmであることが好ましく、10μm~100μmであることがより好ましい。厚みが5μm以上であると、取扱い性に優れ、シワが生じ難い傾向にある。厚みが100μm以下であると、成形時の金型への追従性に優れるため、成形された半導体パッケージのシワ等の発生が抑制される傾向にある。
【0111】
[その他の構成]
基材層の材質によっては、金型から離型シートを剥離しやすくするよう設計することが好ましい。例えば、基材層の離型層と接する反対の面、つまり基材層の金型側の面に、梨地加工等の表面加工を施したり、別の離型層(第2離型層)を設けたりしてもよい。第2離型層の材料としては、金型からの剥離性、耐熱性等を満たす材料であれば特に限定せず、上述の離型層(以下「特定離型層」ともいう)と同じ材料を使用してもよい。第2離型層の厚みは特に限定されないが、0.1μm~100μmであることが好ましい。
【0112】
更に、必要に応じて、特定離型層と基材層との間、基材層と第2離型層との間等に、アンカリング向上層、帯電防止層、着色層等を設けてもよい。
【0113】
<離型フィルムの製造方法>
本開示の離型フィルムは、公知の方法により製造することができる。例えば、離型層形成用組成物を基材層に付与し、乾燥することにより、本開示の離型フィルムを製造することができる。離型層形成用組成物は、上述の少なくとも2種のポリマーを含み、さらにその他の樹脂成分、及び所望により添加されるその他の成分を含んでいてもよい。
【0114】
[離型層形成用組成物の調製]
離型層形成用組成物の調製方法は特に制限されず、公知の組成物調製方法を使用することができる。離型層形成用組成物の調製に使用する溶媒は特に限定されず、ポリマーを溶解可能である有機溶媒であることが好ましい。有機溶媒としては、トルエン、メチルエチルケトン、酢酸エチル等が挙げられる。
【0115】
[付与及び乾燥]
離型層形成用組成物を基材層に付与する方法は特に限定されず、ロールコート法、バーコート、キスコート等の公知の塗布方法を使用することができる。離型層形成用組成物の付与量は、乾燥後に形成される組成物層の厚みが目的の離型層の厚み(例えば、1μm~50μm)に近くなるよう適宜調整することが好ましい。
付与された離型層形成用組成物を乾燥する方法は特に限定されず、公知の乾燥方法を使用することができる。例えば、50℃~150℃で0.1分~60分乾燥させる方法でもよい。
【0116】
<離型フィルムの用途>
本開示の離型フィルムは、例えば、半導体チップを封止材で封止する際に用いる。本開示の離型フィルムは、トランスファーモールド又はコンプレッションモールドに用いられることが好ましい。
【0117】
本開示の離型フィルムを用いることにより、半導体パッケージへの損傷を抑えつつ金型から半導体パッケージ(成形品)を容易に取り出すことが可能である。また、本開示の離型フィルムを用いることにより、半導体パッケージ(成形品)の表面において封止材の光沢度が効果的に低下し、フロー跡が抑制され、外観の均一性に優れる。
【0118】
<半導体パッケージの製造方法>
本開示の半導体パッケージの製造方法では、本発明の離型フィルムを用いて、トランスファーモールド工程又はコンプレッションモールド工程を行う。
【0119】
半導体パッケージの製造方法では、まず、成形装置の金型に前述の本開示の離型フィルムを配置し、離型フィルムを金型の形状に追従させる。離型フィルムを金型の形状に追従させる方法としては、真空吸着等が挙げられる。
【0120】
そして、離型フィルムを追従させた金型内にて半導体チップを封止材で封止する。金型内に半導体チップと離型フィルムとを配置した状態で、半導体チップを封止材で封止することで半導体パッケージを製造することができる。半導体パッケージの製造後、金型を開放して成形された半導体パッケージを取り出す。
【0121】
本開示の半導体パッケージの製造方法では、本開示の離型フィルムを用いるため、半導体パッケージの表面において封止材の光沢度が効果的に低下し、フロー跡が抑制され、外観の均一性に優れる半導体パッケージを得ることができる。
【0122】
上記方法において使用される半導体チップとしては、例えば、半導体素子、コンデンサ、端子等が挙げられる。上記方法において使用する封止材の種類は特に制限されず、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂等を含む樹脂組成物が挙げられる。
【0123】
半導体パッケージの表面は、離型フィルムの表面の凹凸形状が転写され、その転写率が100%以上であることが好ましく、103%以上であることがより好ましく、110%以上であることがさらに好ましい。離型フィルムの転写率は、300%以下であることが好ましく、250%以下であることがより好ましく、200%以下であることがさらに好ましい。
ここでいう転写率は、上述の離型フィルムで説明した転写率と同義である。
【0124】
半導体パッケージの表面の算術平均粗さ(Ra)は、0.15μm以上であることが好ましく、0.20μm以上であることがより好ましく、0.25μm以上であることがさらに好ましい。半導体パッケージの表面の算術平均粗さ(Ra)の上限値は特に限定されず、例えば、4.00μm以下であってもよく、3.00μm以下であってもよく、2.00μm以下であってもよい。
半導体パッケージの表面の算術平均粗さ(Ra)は、離型層の表面の算術平均粗さ(Ra)と同様の方法で測定を行う。
【0125】
半導体パッケージの表面の10点平均粗さ(RZ)は、1.00μm以上であることが好ましく、2.00μm以上であることがより好ましく、3.80μm以上であることがさらに好ましい。半導体パッケージの表面の10点平均粗さ(RZ)の上限値は特に限定されず、例えば、30.00μm以下であってもよく、20.00μm以下であってもよく、10.00μm以下であってもよい。
半導体パッケージの表面の10点平均粗さ(RZ)は、離型層の表面の10点平均粗さ(RZ)と同様の方法で測定を行う。
【0126】
半導体パッケージの表面の凹凸の平均間隔(Sm)は、0.30mm以下であることが好ましく、0.25mm以下であることがより好ましく、0.20mm以下であることがさらに好ましい。半導体パッケージの表面の凹凸の平均間隔(Sm)の上限値は特に限定されず、例えば、0.01mm以上であってもよく、0.02mm以上であってもよく、0.03mm以上であってもよい。
半導体パッケージの表面の凹凸の平均間隔(Sm)は、離型層の表面の凹凸の平均間隔(Sm)と同様の方法で測定を行う。
【0127】
半導体パッケージの表面の粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)は、0.12mm以下であることが好ましく、0.10mm以下であることがより好ましく、0.80mm以下であることがさらに好ましい。半導体パッケージの表面の粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)の下限値は特に限定されず、例えば、0.01mm以上であってもよく、0.03mm以上であってもよく、0.05mm以上であってもよい。
半導体パッケージの表面の粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)は、離型層の表面の粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)と同様の方法で測定を行う。
【0128】
半導体パッケージの表面の最大高さ(Ry)は、1.0μm以上であることが好ましく、2.0μm以上であることがより好ましく、5.2μm以上であることがさらに好ましい。半導体パッケージの表面の最大高さ(Ry)の上限値は特に限定されず、例えば、30.0μm以下であってもよく、20.0μm以下であってもよく、10.0μm以下であってもよい。 半導体パッケージの表面の最大高さ(Ry)は、離型層の表面の最大高さ(Ry)と同様の方法で測定を行う。
【0129】
半導体パッケージ(成形品)の表面の十点平均粗さ(Rz)と最大高さ(Ry)との差は3.00μm以下であることが好ましく、2.50μm以下であることがより好ましく、2.00μm以下であることがさらに好ましい。当該差は、0.50μm以上であることが好ましく、1.00μm以上であることがより好ましく、1.50μm以上であることがさらに好ましい。
【0130】
半導体パッケージの表面の光沢度(20°)は、8.0以下であることが好ましく、5.0以下であることがより好ましく、3.0以下であることがさらに好ましい。半導体パッケージの表面の光沢度(20°)の下限値は特に限定されず、例えば、0.3以上であってもよく、0.5以上であってもよく、1.0以上であってもよい。
【0131】
半導体パッケージの表面の光沢度(60°)は、30.0以下であることが好ましく、20.0以下であることがより好ましく、15.0以下であることがさらに好ましい。半導体パッケージの表面の光沢度(60°)の下限値は特に限定されず、例えば、1.0以上であってもよく、3.0以上であってもよく、5.0以上であってもよい。
【0132】
半導体パッケージの表面の光沢度(85°)は、65.0以下であることが好ましく、50.0以下であることがより好ましく、30.0以下であることがさらに好ましい。半導体パッケージの表面の光沢度(85°)の下限値は特に限定されず、例えば、1.0以上であってもよく、5.0以上であってもよく、10.0以上であってもよい。
【0133】
半導体パッケージの表面の光沢度は、離型層の表面の光沢度と同様の方法で測定する。
【実施例0134】
以下、実施例を参照して本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
【0135】
(樹脂A及び樹脂Bの合成)
下記表1に示すモノマーを表1に示す配合量(質量部)用い、溶液重合により共重合させ樹脂A及び樹脂Bを得た。
得られた樹脂A及び樹脂Bについて、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)において標準ポリスチレン換算により数平均分子量Mnと重量平均分子量Mwを測定した。
得られた樹脂A及び樹脂BについてのSP値を表1に示す。
【0136】
【0137】
表1中のモノマーは以下を表す。
・BA:アクリル酸ブチル
・4-HBA:アクリル酸4-ヒドロキシブチル
・2-HEMA:メタクリル酸2-ヒドロキシエチル
・AN:アクリル酸ニトリル
【0138】
<実施例1>
樹脂A(30質量部)と樹脂B(70質量部)の合計配合量100質量部に対し、架橋剤としての2官能・3官能ポリイソシアネート混合物20質量部を加えたものをトルエンに添加して固形分15質量%のトルエン溶液とし、離型層形成用組成物を調製した。
基材層として、厚みが38μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(ユニチカ(株):S-38)を用い、コロナ処理した。その後、基材層の片面に、ロールコータを用いて、乾燥後の平均厚みが5μmになるように離型層形成用組成物を塗布及び乾燥して離型層を形成し、離型フィルムを得た。
【0139】
<実施例2~7>
樹脂と架橋剤の種類及び添加量を表2のように変更した以外は、実施例1と同様にして離型フィルムを得た。表2中の樹脂、架橋剤、及びフィラの数値は、配合量(質量部)を表す。
【0140】
<比較例1>
樹脂A(100質量部)に対し、架橋剤を20質量部とし、フィラとしてポリメチルメタクリレート粒子(平均粒子径3μm)を10質量部使用したこと以外は、実施例1と同様にして、離型フィルムを作製した。
【0141】
<比較例2、3>
フィラ量を表2のように変更した以外は、比較例1と同様にして、離型フィルムを作製した。
【0142】
<評価試験>
(離型層の表面状態の測定)
上述の方法により、離型フィルムの離型層の該表面における凹部の割合(面積%)をキーエンス株式会社製デジタルマイクロスコープVHX-7000を用いて、画像処理により求めた。
また、離型フィルムの離型層の該表面における算術平均粗さ(Ra)、10点平均粗さ(RZ)、凹凸の平均間隔(Sm)、粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)、及び最大高さ(Ry)を測定した。測定には株式会社小坂研究所製「表面粗さ測定器SE―3500」を使用した。結果を表2に示す。
【0143】
(離型層の光沢度)
上述の方法により、離型フィルムの離型層の表面の光沢度(20°、60°及び85°)を測定した。結果を表2に示す。
【0144】
(成形品の表面粗さ)
離型フィルムの離型層側に封止材(昭和電工マテリアルズ(株):商品名「CEL-9750ZHF10」)が当たるよう離型フィルムを配置して、油圧プレスを用いた加熱加圧により、温度180℃、硬化時間5分にて封止材の成形品を作製した。その後、封止材の成形品から離型フィルムを剥がし、得られた封止材の成形品の表面について、離型層の表面粗さと同様の方法により、算術平均粗さ(Ra)、10点平均粗さ(RZ)、凹凸の平均間隔(Sm)、粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)、及び最大高さ(Ry))を測定した。結果を表2に示す。
【0145】
(成形品の光沢度)
上述の方法により、成形品の表面の光沢度(20°、60°及び85°)を測定した。結果を表2に示す。
【0146】
(転写率)
上述の方法により得られた離型フィルムの表面の算術平均粗さ(Ra)と、成形品の表面の算術平均粗さ(Ra)を用いて転写率を求めた。結果を表2に示す。
【0147】
【0148】
表2の結果に示すように、実施例1~7の離型フィルムは、比較例1~3の離型フィルムに比べて、光沢度が効果的に低下しており、フロー跡の低減効果に優れることがわかる。