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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024167560
(43)【公開日】2024-12-04
(54)【発明の名称】化合物、添加剤及び潤滑油組成物
(51)【国際特許分類】
   C07C 69/40 20060101AFI20241127BHJP
   C10M 129/40 20060101ALI20241127BHJP
   C10M 133/06 20060101ALI20241127BHJP
   C10M 133/16 20060101ALI20241127BHJP
   C10M 135/22 20060101ALI20241127BHJP
   C07C 211/03 20060101ALI20241127BHJP
   C07C 215/12 20060101ALI20241127BHJP
   C07C 211/21 20060101ALI20241127BHJP
   C07C 215/24 20060101ALI20241127BHJP
   C10N 30/00 20060101ALN20241127BHJP
   C10N 40/06 20060101ALN20241127BHJP
   C10N 40/08 20060101ALN20241127BHJP
   C10N 40/25 20060101ALN20241127BHJP
   C10N 40/04 20060101ALN20241127BHJP
【FI】
C07C69/40 CSP
C10M129/40
C10M133/06
C10M133/16
C10M135/22
C07C211/03
C07C215/12
C07C211/21
C07C215/24
C10N30:00 Z
C10N40:06
C10N40:08
C10N40:25
C10N40:04
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023083727
(22)【出願日】2023-05-22
(71)【出願人】
【識別番号】000183646
【氏名又は名称】出光興産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100114409
【弁理士】
【氏名又は名称】古橋 伸茂
(74)【代理人】
【識別番号】100128761
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 恭子
(74)【代理人】
【識別番号】100194423
【弁理士】
【氏名又は名称】植竹 友紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100158481
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 俊秀
(74)【代理人】
【識別番号】100217663
【弁理士】
【氏名又は名称】末広 尚也
(72)【発明者】
【氏名】高嶋 頼由
【テーマコード(参考)】
4H006
4H104
【Fターム(参考)】
4H006AA01
4H006AA03
4H006AB60
4H006BN10
4H006BP10
4H006BS10
4H104BA02A
4H104BA04A
4H104BA07A
4H104BA08A
4H104BB08A
4H104BB17C
4H104BB23A
4H104BB24A
4H104BB41A
4H104BE02C
4H104BE11C
4H104BG12C
4H104CA04A
4H104CB14A
4H104DA02A
4H104LA03
4H104PA02
4H104PA03
4H104PA04
4H104PA42
4H104PA44
(57)【要約】      (修正有)
【課題】優れた摩擦低減効果及び耐摩耗性を有する潤滑油組成物を調製し得る新規化合物、及び当該化合物を含有する新規な添加剤を提供すること。
【解決手段】下記一般式(1)で表される化合物。

【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される化合物。
【化1】
(式中、
は、炭素数8~24のアルキル基又は炭素数8~24のアルケニル基を表し、
は、単結合、又は、-N(-R)-で表される基、-C(=O)N(-R)-で表される基(Rは、水素原子、又は、炭素数1~24のアルキル基、炭素数1~24のアルケニル基、及び炭素数1~24のヒドロキシアルキル基から選択される基である)、カルボニル基(-C(=O)-)、スルフィド基(-S-)及びエーテル基(-O-)から選択される基を表し、
は、炭素数2~4のアルキレンオキシド付加物を表し、
nは、Gが単結合又はエーテル基(-O-)の場合、1~10の整数であり、Gが-N(-R)-で表される基、-C(=O)N(-R)-で表される基(Rは、水素原子、又は、炭素数1~24のアルキル基、炭素数1~24のアルケニル基、及び炭素数1~24のヒドロキシアルキル基から選択される基である)、カルボニル基(-C(=O)-)、及びスルフィド基(-S-)から選択される基の場合、0~10の整数であり、
は、カルボニル基(-C(=O)-)、エステル基(-C(=O)O-)、及び-C(=O)N(-R)-で表される基(Rは、水素原子、又は、炭素数1~24のアルキル基、炭素数1~24のアルケニル基、及び炭素数1~24のヒドロキシアルキル基から選択される基である)から選択される基を表し、
は、炭素数1~4のアルキレン基を表し、
は、水素原子又は有機アンモニウムを表す。)
【請求項2】
前記一般式(1)において、
が、炭素数10~22のアルキル基又は炭素数10~22のアルケニル基を表す、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記一般式(1)において、
が、-N(-R)-で表される基、-C(=O)N(-R)-で表される基(Rは、水素原子、又は、炭素数4~20のアルキル基、炭素数4~20のアルケニル基、及び炭素数1~12のヒドロキシアルキル基から選択される基である)、カルボニル基(-C(=O)-)、スルフィド基(-S-)及びエーテル基(-O-)から選択される基を表す、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項4】
前記一般式(1)において、
が、炭素数2~3のアルキレンオキシド付加物を表す、請求項1~3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
前記一般式(1)において、
nが、Gが単結合又はエーテル基(-O-)の場合、1~8の整数であり、Gが-N(-R)-で表される基、-C(=O)N(-R)-で表される基(Rは、水素原子、又は、炭素数1~24のアルキル基、炭素数1~24のアルケニル基、及び炭素数1~24のヒドロキシアルキル基から選択される基である)、カルボニル基(-C(=O)-)、及びスルフィド基(-S-)から選択される基の場合、0~8の整数である、請求項1~4のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
前記一般式(1)において、
が、カルボニル基(-C(=O)-)、エステル基(-C(=O)O-)及び-C(=O)N(-R)-で表される基(Rは、水素原子、又は、炭素数4~20のアルキル基、炭素数4~20のアルケニル基、及び炭素数1~12のヒドロキシアルキル基から選択される基である)から選択される基を表す、請求項1~5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
前記一般式(1)において、
が、炭素数2~4のアルキレン基を表す、請求項1~6のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項8】
前記一般式(1)において、
が、水素原子、炭素数1~24のアルキルアンモニウム、又は炭素数1~24のアルケニルアンモニウムを表す、請求項1~7のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の化合物を含む、添加剤。
【請求項10】
基油及び請求項9に記載の添加剤を含む、潤滑油組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、摩擦低減効果及び耐摩耗性を付与できる化合物、当該化合物を含有する添加剤及び潤滑油組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、石油資源の有効活用及びCOの排出削減の観点から、自動車等の車両の省燃費化が強く求められている。そのため、自動車等の車両のエンジンに用いられる潤滑油組成物に対しても、省燃費化への要求が強くなってきている。自動車等の車両の省燃費性を向上させる対策として、具体的には、例えば、潤滑油組成物の低粘度化や、摩擦低減特性の更なる向上が検討されている。
グリセロールモノオレエート(GMO)は、特許文献1~5に記載のとおり、エンジン用の潤滑油組成物中で摩擦改質剤として機能することが周知である。
また、特許文献6には、モノエステルカルボン酸塩とエステル化合物との組成物が、耐摩耗性、摩擦低減性、耐金属腐食性に優れていることが報告されているが、摩擦低減効果が不十分である。他に、特許文献7にも、モノエステルカルボン酸塩が耐摩耗性と腐食性に優れることが報告されているが、摩擦低減効果は不明である。
さらに、特許文献8には、モノエステルカルボン酸塩と硫黄系極圧剤の組成物が、耐摩耗性と腐食性に優れることが報告されているが、摩擦低減効果は不明である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第5,885,942号明細書
【特許文献2】米国特許第5,866,520号明細書
【特許文献3】米国特許第5,114,603号明細書
【特許文献4】米国特許第4,957,651号明細書
【特許文献5】米国特許第4,683,069号明細書
【特許文献6】国際公開2020/184568号
【特許文献7】国際公開2020/184570号
【特許文献8】特開2022-45295号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1~8に記載の摩擦調整剤を含む潤滑油組成物は、内燃機関用の潤滑油組成物として、摩擦低減特性及び省燃費性能の観点から十分では無い。そのため、従来の構造を刷新する付加価値の高い新規添加剤の開発が求められている。
本発明は、以上の問題点を鑑みてなされたものであり、優れた摩擦低減効果及び耐摩耗性を有する潤滑油組成物を調製し得る新規化合物、及び当該化合物を含有する新規な添加剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、鋭意検討の結果、式(1)で表される化合物(以下、「式(1)化合物」ともいう)を合成し、当該化合物を添加剤に用いることで、当該添加剤を含有する潤滑油組成物に優れた摩擦低減効果及び耐摩耗性が付与されることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち本発明は、次のとおりである。
[1]
下記一般式(1)で表される化合物。
【化1】
(式中、
は、炭素数8~24のアルキル基又は炭素数8~24のアルケニル基を表し、
は、単結合、又は、-N(-R)-で表される基、-C(=O)N(-R)-で表される基(Rは、水素原子、又は、炭素数1~24のアルキル基、炭素数1~24のアルケニル基、及び炭素数1~24のヒドロキシアルキル基から選択される基である)、カルボニル基(-C(=O)-)、スルフィド基(-S-)及びエーテル基(-O-)から選択される基を表し、
は、炭素数2~4のアルキレンオキシド付加物を表し、
nは、Gが単結合又はエーテル基(-O-)の場合、1~10の整数であり、Gが-N(-R)-で表される基、-C(=O)N(-R)-で表される基(Rは、水素原子、又は、炭素数1~24のアルキル基、炭素数1~24のアルケニル基、及び炭素数1~24のヒドロキシアルキル基から選択される基である)、カルボニル基(-C(=O)-)、及びスルフィド基(-S-)から選択される基の場合、0~10の整数であり、
は、カルボニル基(-C(=O)-)、エステル基(-C(=O)O-)、及び-C(=O)N(-R)-で表される基(Rは、水素原子、又は、炭素数1~24のアルキル基、炭素数1~24のアルケニル基、及び炭素数1~24のヒドロキシアルキル基から選択される基である)から選択される基を表し、
は、炭素数1~4のアルキレン基を表し、
は、水素原子又は有機アンモニウムを表す。)
[2]
前記一般式(1)において、
が、炭素数10~22のアルキル基又は炭素数10~22のアルケニル基を表す、[1]に記載の化合物。
[3]
前記一般式(1)において、
が、-N(-R)-で表される基、-C(=O)N(-R)-で表される基(Rは、水素原子、又は、炭素数4~20のアルキル基、炭素数4~20のアルケニル基、及び炭素数1~12のヒドロキシアルキル基から選択される基である)、カルボニル基(-C(=O)-)、スルフィド基(-S-)及びエーテル基(-O-)から選択される基を表す、[1]又は[2]に記載の化合物。
[4]
前記一般式(1)において、
が、炭素数2~3のアルキレンオキシド付加物を表す、[1]~[3]のいずれか一項に記載の化合物。
[5]
前記一般式(1)において、
nが、Gが単結合又はエーテル基(-O-)の場合、1~8の整数であり、Gが-N(-R)-で表される基、-C(=O)N(-R)-で表される基(Rは、水素原子、又は、炭素数1~24のアルキル基、炭素数1~24のアルケニル基、及び炭素数1~24のヒドロキシアルキル基から選択される基である)、カルボニル基(-C(=O)-)、及びスルフィド基(-S-)から選択される基の場合、0~8の整数である、[1]~[4]のいずれか一項に記載の化合物。
[6]
前記一般式(1)において、
が、カルボニル基(-C(=O)-)、エステル基(-C(=O)O-)及び-C(=O)N(-R)-で表される基(Rは、水素原子、又は、炭素数4~20のアルキル基、炭素数4~20のアルケニル基、及び炭素数1~12のヒドロキシアルキル基から選択される基である)から選択される基を表す、[1]~[5]のいずれか一項に記載の化合物。
[7]
前記一般式(1)において、
が、炭素数2~4のアルキレン基を表す、[1]~[6]のいずれか一項に記載の化合物。
[8]
前記一般式(1)において、
が、水素原子、炭素数1~24のアルキルアンモニウム、又は炭素数1~24のアルケニルアンモニウムを表す、[1]~[7]のいずれか一項に記載の化合物。
[9]
[1]~[8]のいずれか一項に記載の化合物を含む、添加剤。
[10]
基油及び[9]に記載の添加剤を含む、潤滑油組成物。
【発明の効果】
【0006】
本発明の好適な一態様は、優れた摩擦低減効果及び耐摩耗性を付与できる化合物を提供する。また、本発明の好適な一態様は、優れた摩擦低減効果及び耐摩耗性を有する潤滑油組成物を調製し得る添加剤を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本明細書に記載された数値範囲については、上限値及び下限値を任意に組み合わせることができる。例えば、数値範囲として「好ましくは30~100、より好ましくは40~80」と記載されている場合、「30~80」との範囲や「40~100」との範囲も、本明細書に記載された数値範囲に含まれる。また、例えば、数値範囲として「好ましくは30以上、より好ましくは40以上であり、また、好ましくは100以下、より好ましくは80以下である」と記載されている場合、「30~80」との範囲や「40~100」との範囲も、本明細書に記載された数値範囲に含まれる。
加えて、本明細書に記載された数値範囲として、例えば「60~100」との記載は、「60以上(60又は60超)、100以下(100又は100未満)」という範囲であることを意味する。
さらに、本明細書に記載された上限値及び下限値の規定において、それぞれの選択肢の中から適宜選択して、任意に組み合わせて、下限値~上限値の数値範囲を規定することができる。
加えて、本明細書に記載された好ましい態様として記載の各種要件は複数組み合わせることができる。
【0008】
〔式(1)化合物〕
本発明は、下記一般式(1)で表される、摩擦低減効果及び耐摩耗性を付与できる化合物を提供する。以下に詳述するように、本発明の式(1)化合物は、炭素数8~24のアルキル基又は炭素数8~24のアルケニル基を表すRに隣接するG、G、及びGのうち、少なくともG及びG(好ましくはG、G、及びG)に、極性原子である酸素原子、窒素原子及び硫黄原子から選択される少なくとも1つを含有することで、金属への吸着性が向上し、前記アルキル基又は前記アルケニル基が金属摩擦面に入り込み易くなる結果、摩擦低減効果を向上させることができる。さらに、本発明の式(1)化合物は、上記の極性原子をG、G、及び/又はGに含有することに伴う油溶性の低下を改善すべく、Gとして、所定のアルキレン基を導入している。これにより、本発明の式(1)化合物は、好適な油溶性を備えつつ、当該化合物を含有する対象に優れた摩擦低減効果及び耐摩耗性を付与することができる。
【化2】
【0009】
前記一般式(1)において、Rは、直鎖又は分岐鎖のアルキル基又は直鎖又は分岐鎖のアルケニル基を表す。
として選択し得る前記アルキル基又はアルケニル基の炭素数は、好ましくは8~24、より好ましくは10~22、更に好ましくは12~20、特に好ましくは12~18である。Rの炭素数が8以上であれば、優れた摩擦低減効果及び耐摩耗性を付与することができ、炭素数が24以下であれば、室温で固化することなく油溶性を維持できる。
【0010】
として選択し得る前記アルキル基として、具体的には、例えば、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、ヘンイコシル基、ドコシル基、トリコシル基、テトラコシル基等が挙げられる。なお、これらの基には、構造異性体も含まれる。
【0011】
として選択し得る前記アルケニル基として、具体的には、例えば、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基(オレイル基)、ノナデセニル基、イコセニル基、ヘンイコセニル基、ドコセニル基、トリコセニル基、テトラコセニル基等が挙げられる。なお、これらの基には、構造異性体も含まれる。
【0012】
前記一般式(1)において、Gは、単結合、又は、以下の部分構造式を有する、-N(-R)-で表される基、-C(=O)N(-R)-で表される基(Rは、水素原子、又は、炭素数1~24のアルキル基、炭素数1~24のアルケニル基、及び炭素数1~24のヒドロキシアルキル基から選択される基である)、カルボニル基(-C(=O)-)、スルフィド基(-S-)及びエーテル基(-O-)から選択される基を表す。
【化3】
【0013】
前記一般式(1)において、Gは、直鎖又は分岐鎖のアルキレンオキシド付加物を表し、その炭素数は、好ましくは2~4、より好ましくは2~3、更に好ましくは2である。
【0014】
として選択し得る前記アルキレンオキシド付加物として、具体的には、例えば、エチレンオキシド付加物、プロピレンオキシド付加物、ブチレンオキシド付加物等が挙げられ、エチレンオキシド付加物又はプロピレンオキシド付加物であることが好ましく、エチレンオキシド付加物であることがより好ましい。なお、これらの基には、構造異性体も含まれる。
【0015】
前記一般式(1)において、nは、Gが単結合又はエーテル基(-O-)の場合、1~10の整数であり、Gが-N(-R)-で表される基、-C(=O)N(-R)-で表される基(Rは、水素原子、又は、炭素数1~24のアルキル基、炭素数1~24のアルケニル基、及び炭素数1~24のヒドロキシアルキル基から選択される基である)、カルボニル基(-C(=O)-)、及びスルフィド基(-S-)から選択される基の場合、0~10の整数である。
本発明の一態様において、nは、Gが単結合又はエーテル基(-O-)の場合、好ましくは1~10であるが、より好ましくは1~9、更に好ましくは1~8、より更に好ましくは2~8である。
本発明の一態様において、nは、Gが-N(-R)-で表される基、-C(=O)N(-R)-で表される基(Rは、水素原子、又は、炭素数1~24のアルキル基、炭素数1~24のアルケニル基、及び炭素数1~24のヒドロキシアルキル基から選択される基である)、カルボニル基(-C(=O)-)、及びスルフィド基(-S-)から選択される基の場合、好ましくは0~10であるが、より好ましくは0~8、更に好ましくは0~6、より更に好ましくは0又は1である。
【0016】
前記一般式(1)において、Gは、カルボニル基(-C(=O)-)、エステル基(-C(=O)O-)及び-C(=O)N(-R)-で表される基(Rは、水素原子、又は、炭素数1~24のアルキル基、炭素数1~24のアルケニル基、及び炭素数1~24のヒドロキシアルキル基から選択される基である)から選択される基を表す。
本発明の一態様において、Gは、カルボニル基(-C(=O)-)であることが好ましい。
【0017】
前記一般式(1)において、G及びGのRは、水素原子、又は、炭素数1~24のアルキル基、炭素数1~24のアルケニル基、及び炭素数1~24のヒドロキシアルキル基から選択される基を表す。
として選択し得る前記アルキル基又はアルケニル基は、直鎖又は分岐鎖のアルキル基又は直鎖又は分岐鎖のアルケニル基であり、その炭素数は、好ましくは1~24、より好ましくは4~20、更に好ましくは8~16である。
【0018】
として選択し得る前記アルキル基として、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基等のプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基等のブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、ヘンイコシル基、ドコシル基、トリコシル基、テトラコシル基等が挙げられる。なお、これらの基には、構造異性体も含まれる。
【0019】
として選択し得る前記アルケニル基として、具体的には、例えば、ビニル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基等が挙げられる。なお、これらの基には、構造異性体も含まれる。
【0020】
として選択し得る前記ヒドロキシアルキル基の炭素数は、好ましくは1~24、より好ましくは1~12、更に好ましくは2~8、より更に好ましくは2~4である。
【0021】
前記一般式(1)において、Gは、直鎖又は分岐鎖のアルキレン基を表し、その炭素数は、好ましくは1~4、より好ましくは2~4、更に好ましくは2~3、より更に好ましくは2である。
として選択し得る前記アルキレン基としては、例えば、メチレン基、1,1-エチレン基、1,2-エチレン基、1,3-プロピレン、1,2-プロピレン、2,2-プロピレン等の各種プロピレン基、各種ブチレン基等が挙げられる。なお、これらの基には、構造異性体も含まれる。
【0022】
前記一般式(1)において、Gは、水素原子又は有機アンモニウムを表す。
【0023】
として選択し得る前記有機アンモニウムは、窒素原子に直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基が結合した第一級、第二級、第三級又は第四級アンモニウムカチオンが挙げられる。第二級、第三級又は第四級アンモニウムカチオンに結合する複数の前記アルキル基又はアルケニル基は、同一であってもよく、異なっていてもよい。また、前記アルキル基又はアルケニル基の炭素数は、好ましくは1~24であり、より好ましくは4~22であり、更に好ましくは8~18である。なお、アルキル基又はアルケニル基の具体例は、Rについて述べたものと同じ基が挙げられる。Gとして有機アンモニウムを選択することで、より高い油溶性及び摩擦低減効果を付与することができる。
【0024】
本発明の一態様の式(1)化合物は、前記一般式(1)において、
が、炭素数12~18のアルキル基又は炭素数12~18のアルケニル基を表し、
が、-N(-R)-で表される基(Rは、水素原子、又は、炭素数8~16のアルキル基、炭素数8~16のアルケニル基、及び炭素数2~4のヒドロキシアルキル基から選択される基である)、スルフィド基(-S-)及びエーテル基(-O-)から選択される基を表し、
が、炭素数2~3のアルキレンオキシド付加物を表し、
nが、Gがエーテル基(-O-)の場合は、1~8の整数であり、Gが-N(-R)-で表される基(Rは、水素原子、又は、炭素数8~16のアルキル基、炭素数8~16のアルケニル基、及び炭素数2~4のヒドロキシアルキル基から選択される基である)、及びスルフィド基(-S-)から選択される基の場合は、0~8の整数であり、
が、カルボニル基(-C(=O)-)を表し、
が、炭素数2~4のアルキレン基を表し、
が、水素原子、炭素数8~18のアルキルアンモニウム、又は炭素数8~18のアルケニルアンモニウムを表す。
【0025】
本発明の一態様の式(1)化合物は、前記一般式(1)において、
が、オクタデシル基、ヘキサデシル基、テトラデシル基、ドデシル基、及びオクタデセニル基(オレイル基)から選択される基を表し、
が、-N(-R)-で表される基(Rはドデシル基である)及びエーテル基(-O-)から選択される基を表し、
が、エチレンオキシド付加物を表し、
nが、Gがエーテル基(-O-)の場合は、2、4、又は7の整数であり、-N(-R)-で表される基(Rはドデシル基である)の場合は、0、2、4又は7の整数であり、
が、カルボニル基(-C(=O)-)を表し、
が、エチレン基を表し、
が、N,N-ジメチルドデシルアンモニウム、N,N-ジメチルテトラデシルアンモニウム、N,N-ジメチルヘキサデシルアンモニウム、及びN,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)オレイルアンモニウムから選択されるアルキルアンモニウム又はアルケニルアンモニウムを表す。
【0026】
〔式(1)化合物の合成方法〕
式(1)化合物の製造方法は、特に限定されるものではないが、例えば、二塩基酸(例えば、マレイン酸、フマル酸、コハク酸、アジピン酸等)、もしくは酸無水物(例えば、無水コハク酸等)と、アルコール化合物(例えば、ドデカノール、オクタデカノール、オレイルアルコール等)を60~180℃にて、エステル化反応させることにより、カルボン酸化合物(Gが水素原子である)を合成することができる。
更に、このカルボン酸化合物(Gが水素原子である)とアミン化合物(例えば、N,N-ジメチルドデカン等)を、20~80℃で中和反応にて合成することで、式(1)化合物が合成できる。
【0027】
〔添加剤〕
本発明は、本発明の式(1)化合物を含む添加剤(添加剤組成物)も提供する。本発明の一態様において、前記添加剤中に含まれる式(1)化合物の含有量は、特に制限されるものではないが、優れた摩擦低減効果及び耐摩耗性を発揮する添加剤とする観点から、前記添加剤の全量(100質量%)基準で、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは80質量%以上であり、更に好ましくは90質量%以上であり、100質量%であってもよい。
【0028】
〔潤滑油組成物〕
本発明は、式(1)で表される化合物又は式(1)化合物を含む添加剤を含有する潤滑油組成物を提供する。
本発明の一態様の潤滑油組成物に含まれる式(1)化合物の含有量は、優れた摩擦低減効果及び耐摩耗性を有する潤滑油組成物とする観点から、前記潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは0.01~30質量%、より好ましくは0.5~25質量%、更に好ましくは1~25質量%である。
本発明の一態様の潤滑油組成物に含まれる前記添加剤の含有量は、優れた摩擦低減効果及び耐摩耗性を有する潤滑油組成物とする観点から、前記潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは0.01~30質量%、より好ましくは0.5~25質量%、更に好ましくは1~25質量%である。
【0029】
以下、本発明の一態様の潤滑油組成物に含まれる各成分について説明する。
【0030】
<基油>
本発明の一態様の潤滑油組成物に用いる基油としては、特に制限はなく、従来、潤滑油の基油として使用されている鉱油及び合成油の中から任意のものを適宜選択して用いることができる。
鉱油としては、例えば、原油を常圧蒸留して得られる常圧残油を減圧蒸留して得られた潤滑油留分を、溶剤脱れき処理;溶剤抽出又は水素化分解の少なくとも1種の処理;溶剤脱ろう又は接触脱ろうの少なくとも1種の脱ろう処理;水素化精製処理;等のうちの1種以上の処理、好ましくは全ての処理を行って精製した油、鉱油系ワックスを異性化することによって製造される油、又はGTLプロセスにおける残渣WAX(ガストゥリキッド ワックス)を水素化異性化脱ろうすることによって製造されるGTL基油等が挙げられる。
合成油としては、例えば、ポリブテン、α-オレフィン単独重合体、エチレン-α-オレフィン共重合体等の共重合体などのポリα-オレフィン;ポリオールエステル、二塩基酸エステル、リン酸エステル等の各種のエステル;ポリフェニルエーテル等の各種のエーテル;ポリグリコール;アルキルベンゼン;アルキルナフタレン等が挙げられる。
これらの基油は、前述したものから1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なお、式(1)化合物を合成する際に用いる溶剤として上記に挙げた基油を用いた場合であって、当該溶剤として用いた基油が、そのまま、潤滑油組成物に添加された場合、当該溶剤として用いた基油は、潤滑油組成物が含む基油の1種とみなすことができる。
同様に、後述する粘度指数向上剤が希釈剤として基油を含む場合であって、当該希釈剤として用いた基油が、そのまま、潤滑油組成物に添加された場合、当該希釈剤として用いた基油も、潤滑油組成物が含む基油の1種とみなすことができる。
【0031】
<その他成分>
本発明の一態様である潤滑油組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、式(1)化合物、式(1)化合物を含む添加剤及び基油以外のその他成分を、更に含有したものであってもよい。
その他成分としては、本発明の添加剤以外の一般的に用いられる潤滑油用添加剤が挙げられ、当該潤滑油用添加剤としては、例えば、金属系清浄剤、耐摩耗剤、無灰系分散剤、粘度指数向上剤、極圧剤、流動点降下剤、酸化防止剤、消泡剤、界面活性剤、抗乳化剤、摩擦調整剤、油性向上剤、防錆剤及び金属不活性化剤からなる群から選ばれる1種以上が挙げられる。
これらの潤滑油用添加剤は、それぞれ、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0032】
これらの本発明の添加剤以外の潤滑油用添加剤のそれぞれの含有量は、本発明の効果を損なわない範囲内で、適宜調整することができる。本発明の添加剤以外の潤滑油用添加剤のそれぞれの含有量としては、例えば、潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは0.001~15質量%、より好ましくは0.005~10質量%、更に好ましくは0.01~8質量%である。
また、本発明の一態様の潤滑油組成物において、本発明の添加剤以外の潤滑油用添加剤を含有する場合、その合計含有量は、潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは0質量%超30質量%以下、より好ましくは0.001~25質量%、更に好ましくは0.001~20質量%、より更に好ましくは0.001~15質量%である。
【0033】
<金属系清浄剤>
金属系清浄剤としては、金属スルホネート、金属サリシレート、及び金属フェネート等の金属塩が挙げられる。また、当該金属塩を構成する金属原子としては、アルカリ金属及びアルカリ土類金属から選ばれる金属原子が好ましく、ナトリウム、カルシウム、又はマグネシウムがより好ましい。金属系清浄剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、本発明の一態様で用いる金属系清浄剤としては、中性金属系清浄剤であってもよく、過塩基性金属系清浄剤であってもよい。
【0034】
<耐摩耗剤>
耐摩耗剤としては、例えば、ジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZnDTP)、リン酸亜鉛、ジスルフィド類、硫化オレフィン類、硫化油脂類、硫化エステル類、チオカーボネート類、チオカーバメート類、ポリサルファイド類等の硫黄含有化合物;亜リン酸エステル類、リン酸エステル類、ホスホン酸エステル類、及びこれらのアミン塩又は金属塩等のリン含有化合物;チオ亜リン酸エステル類、チオリン酸エステル類、チオホスホン酸エステル類、及びこれらのアミン塩又は金属塩等の硫黄及びリン含有耐摩耗剤が挙げられる。
これらの中でも、ジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZnDTP)が好ましい。
なお、前記耐摩耗剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。2種以上用いる場合の好適な合計含有量も、前述した含有量と同じである。
【0035】
<無灰系分散剤>
無灰系分散剤としては、非ホウ素変性コハク酸イミド及びホウ素変性コハク酸イミドから選択される1種以上を用いることができる。無灰系分散剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0036】
<粘度指数向上剤>
粘度指数向上剤としては、例えば、非分散型ポリアルキル(メタ)アクリレート、分散型ポリアルキル(メタ)アクリレート等のPMA系;オレフィン系共重合体(例えば、エチレン-プロピレン共重合体など)、分散型オレフィン系共重合体等のOCP系;スチレン系共重合体(例えば、スチレン-ジエン共重合体、スチレン-イソプレン共重合体など)などが挙げられる。
これらの粘度指数向上剤は、好ましくは、質量平均分子量(Mw)が5,000以上2,000,000以下であり、PMA系の場合、好ましくは20,000以上、より好ましくは2,000,000以上であり、また、好ましくは1,500,000以下、より好ましくは1,200,000以下である。また、OCP系の場合、好ましくは10,000以上、より好ましくは20,000以上であり、また、好ましくは800,000以下、より好ましくは500,000以下である。これらの粘度指数向上剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0037】
<極圧剤>
極圧剤としては、例えば、スルフィド類、スルフォキシド類、スルフォン類、チオホスフィネート類等の硫黄系極圧剤、塩素化炭化水素等のハロゲン系極圧剤、有機金属系極圧剤等が挙げられる。また、上述の耐摩耗剤の内、極圧剤としての機能を有する化合物を用いることもできる。
本発明の一態様において、これらの極圧剤は、単独で又は2種以上を併用してもよい。
本発明の一態様の潤滑油組成物において、その他成分として、極圧剤を含有する場合、極圧剤の含有量は、当該潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは0.1~10質量%である。
【0038】
<酸化防止剤>
酸化防止剤としては、従来潤滑油の酸化防止剤として使用されている公知の酸化防止剤の中から、任意のものを適宜選択して用いることができ、例えば、アミン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、モリブデン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、リン系酸化防止剤等が挙げられる。
アミン系酸化防止剤としては、例えば、ジフェニルアミン、炭素数3~20のアルキル基を有するアルキル化ジフェニルアミン等のジフェニルアミン系酸化防止剤;α-ナフチルアミン、フェニル-α-ナフチルアミン、炭素数3~20のアルキル基を有する置換フェニル-α-ナフチルアミン等のナフチルアミン系酸化防止剤;等が挙げられる。
フェノール系酸化防止剤としては、例えば、2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-エチルフェノール、イソオクチル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート等のモノフェノール系酸化防止剤;4,4’-メチレンビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-tert-ブチルフェノール)等のジフェノール系酸化防止剤;ヒンダードフェノール系酸化防止剤;等を挙げられる。
モリブデン系酸化防止剤としては、例えば、三酸化モリブデン及び/又はモリブデン酸とアミン化合物とを反応させてなるモリブデンアミン錯体等が挙げられる。
硫黄系酸化防止剤としては、例えば、ジラウリル-3,3’-チオジプロピオネイト等が挙げられる。
リン系酸化防止剤としては、例えば、ホスファイト等が挙げられる。
本発明の一態様において、これらの酸化防止剤は単独で又は2種以上を任意に組合せて含有させることができ、好ましくはフェノール系酸化防止剤及び/又はアミン系酸化防止剤である。
【0039】
<流動点降下剤>
流動点降下剤としては、例えば、エチレン-酢酸ビニル共重合体、塩素化パラフィンとナフタレンとの縮合物、塩素化パラフィンとフェノールとの縮合物、ポリメタクリレート系(PMA系;ポリアルキル(メタ)アクリレート等)、ポリビニルアセテート、ポリブテン、ポリアルキルスチレン等が挙げられ、ポリメタクリレート系が好ましく用いられる。これらの流動点降下剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0040】
<消泡剤>
消泡剤としては、例えば、ジメチルポリシロキサン等のシリコーン油、フルオロシリコーン油及びフルオロアルキルエーテル等が挙げられる。これら消泡剤は、単独で又は2種以上を組合せて用いてもよい。
【0041】
<界面活性剤又は乳化剤>
界面活性剤又は抗乳化剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル及びポリオキシエチレンアルキルナフチルエーテル等のポリアルキレングリコール系非イオン性界面活性剤等が挙げられる。これら界面活性剤又は抗乳化剤は、単独で又は2種以上を任意に組合せて含有させることができる。
【0042】
<摩擦調整剤>
摩擦調整剤としては、例えば、ジチオカルバミン酸モリブデン(MoDTC)、ジチオリン酸モリブデン(MoDTP)、モリブテン酸のアミン塩等のモリブデン系摩擦調整剤;リン酸エステル、亜リン酸エステル、リン酸エステルアミン塩等が挙げられる。
【0043】
<油性向上剤>
油性向上剤としては、ステアリン酸、オレイン酸等の脂肪族飽和又は不飽和モノカルボン酸;ダイマー酸、水添ダイマー酸等の重合脂肪酸;リシノレイン酸、12-ヒドロキシステアリン酸等のヒドロキシ脂肪酸;ラウリルアルコール、オレイルアルコール等の脂肪族飽和又は不飽和モノアルコール;ステアリルアミン、オレイルアミン等の脂肪族飽和又は不飽和モノアミン;ラウリン酸アミド、オレイン酸アミド等の脂肪族飽和又は不飽和モノカルボン酸アミド;グリセリン、ソルビトール等の多価アルコールと脂肪族飽和又は不飽和モノカルボン酸との部分エステル;等が挙げられる。
【0044】
<防錆剤>
防錆剤としては、例えば、脂肪酸、アルケニルコハク酸ハーフエステル、脂肪酸セッケン、アルキルスルホン酸塩、多価アルコール脂肪酸エステル、脂肪酸アミン、酸化パラフィン、アルキルポリオキシエチレンエーテル等が挙げられる。
【0045】
<金属不活化剤>
金属不活性剤は、金属イオン捕捉剤と同様、金属の触媒作用により過酸化物が増幅することを抑制するものであり、ベンゾトリアゾール系化合物、トリルトリアゾール系化合物、チアジアゾール系化合物、イミダゾール系化合物、ピリミジン系化合物等、ヘテロ原子を有し、かつキレート形成能のある化合物が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0046】
〔潤滑油組成物の製造方法〕
本発明の一態様は、前述した本発明の一態様である式(1)化合物又は式(1)化合物を含有する添加剤と、基油とを配合する工程を含む、潤滑油組成物の製造方法を提供する。また、当該製造方法では、必要に応じて、前述した<その他成分>を更に配合してもよい。
当該製造方法では、式(1)化合物又は式(1)化合物を含有する添加剤及び基油、並びに必要に応じて添加されるその他成分は、いかなる方法で配合されてもよく、その手法は限定されない。
【0047】
〔潤滑油組成物の用途〕
前述のとおり、本発明の一態様である式(1)化合物は、当該化合物を含有する対象に優れた耐摩耗性及び摩擦低減効果を付与できるものである。
そのため、当該式(1)化合物を含む、本発明の一態様の潤滑油組成物は、例えば、ギア油(マニュアルトランスミッション油、デファレンシャル油等)、自動変速機油(オートマチックトランスミッション油等)、無段変速機油(ベルトCVT油、トロイダルCVT油等)、パワーステアリング油、ショックアブソーバー油、及び電動モーター油等の駆動系油;ガソリンエンジン用、ディーゼルエンジン用、及びガスエンジン用等の内燃機関(エンジン)用油;金属加工油;油圧作動油;タービン油;圧縮機油;流体軸受け油;転がり軸受油;等をはじめ各種の用途に好適に使用でき、これら各用途で使用される装置に充填し、当該装置に係る各部品間を潤滑する潤滑油として好適に使用することができる。
また、これらの中でも、前述した特性から、例えば、二輪車、四輪車等の自動車、電車、船舶、及び飛行機等の輸送機器、発電機、及び各種工作機器等に搭載されるギア、自動変速機、無段変速機、ショックアブソーバー、パワーステアリング、電動モーター等の駆動系機器用潤滑油;ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン、ガスエンジン等の内燃機関用潤滑油;としてより好適に使用することができる。金属加工油を用いて加工する被加工材としては、特に制限は無いが、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム合金、銅、銅合金、鉄、鉄鋼、炭素鋼、鋳鉄、チタン、チタン合金、合金鋼、ニッケル基合金、ニオブ合金、タンタル合金、モリブデン合金、タングステン合金、ステンレス鋼、及び高マンガン鋼からなる群より選ばれる金属からなる被加工材が特に好適である。また、被加工材の加工としては、例えば、切削加工、研削加工、打抜き加工、研摩、絞り加工、抽伸加工、圧延加工等が挙げられる。
【0048】
〔潤滑油組成物を用いる潤滑方法〕
本発明の一態様の潤滑油組成物を用いる潤滑方法としては、好ましくは、前記潤滑油組成物を、前述した各用途で使用される装置に充填し、当該各装置に係る各部品間を潤滑する方法が挙げられる。
そして、本発明の一態様の潤滑油組成物を用いる潤滑方法としては、より好ましくは、前記潤滑油組成物を、例えば、二輪車、四輪車等の自動車、電車、船舶、及び飛行機等の輸送機器、発電機、並びに各種工作機器等に搭載されるギア、自動変速機、無段変速機、ショックアブソーバー、パワーステアリング、電動モーター等の駆動系機器;ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン、ガスエンジン等の内燃機関;等に充填し、前記駆動系機器にかかわる各部品間、又は前記内燃機関に係る各部品間を潤滑する方法が挙げられる。
【0049】
〔潤滑油組成物を用いる駆動系機器〕
本発明の他の実施形態としては、前記潤滑油組成物を用いた駆動系機器が挙げられ、好ましくは前記潤滑油組成物を駆動系油として用いた駆動系機器である。当該駆動系機器としては、例えば、二輪車、四輪車等の自動車、電車、船舶、及び飛行機等の輸送機器、発電機、並びに各種工作機器等に搭載されるギア、自動変速機、無段変速機、ショックアブソーバー、パワーステアリング、電動モーター等が挙げられる。
【0050】
〔潤滑油組成物を用いる内燃機関〕
本発明の他の実施形態としては、前記潤滑油組成物を用いた内燃機関が挙げられ、好ましくは前記潤滑油組成物をエンジン油として用いた内燃機関(エンジン)である。当該内燃機関としては、例えば、二輪車、四輪車等の自動車、電車、船舶、及び飛行機等の輸送機器に搭載されるガソリンエンジン、ディーゼルエンジン、ガスエンジン等が挙げられる。
【実施例0051】
次に、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。なお、各実施例及び各比較例で用いた各原料並びに各実施例及び各比較例の化合物、潤滑油組成物の各物性の測定は、以下に示す要領に従って求めたものである。
【0052】
<摩擦摩耗試験>
ボール・オン・ディスク型の高速往復動摩擦試験機TE77(Phoenix Tribology社製)を用いて、試験プレートと試験球との間に試験油を導入し、下記の条件にて、試験球を動かして試験を行い、荷重50Nにおける摩擦係数を測定した。
また、摩耗痕は、50Nから200Nまで荷重を50Nずつ段階的に上げていった試験後の試験球の縦方向の摩耗痕径及び横方向の摩耗痕径を測定し、下記式により摩耗痕径の平均値を算出した。
[摩耗痕径(平均値)の算出式]
(摩耗痕径(縦方向)+摩耗痕径(横方向))/2=摩耗痕径(平均値)
[試験条件]
・試験プレート 材質:SUJ2、形状:長さ58mm×幅38mm×厚さ3.9mm
・試験球 材質:SUJ2、直径10mm
・給油条件:油浴、油量3mL
・荷重:50N(300秒間),100N(300秒),150N(300秒),
200N(300秒)
・温度:100℃
・振幅:9mm
・振動数:10Hz
【0053】
<添加剤の合成>
(実施例1)
1口200mlフラスコに、 無水コハク酸5.00g(0.05モル)、ポリエチレンオキシド(4モル)ステアリルエーテル(NIKKOL BS-4) 22.34g(0.05モル)を仕込み、120℃にて2時間加熱撹拌した。60℃まで冷却し、N,N-ジメチルヘキサデシルアミン13.48g(0.05モル)を加え、60℃にて2時間加熱撹拌し、表1の化合物E1を39.8g(収率98%)得た。
【0054】
(実施例2)
ポリエチレンオキシド(4モル)ステアリルエーテル(NIKKOL BS-4)の代わりに、ポリエチレンオキシド(2モル)オレイルエーテルを用い、実施例1と同様に反応を行い、表1の化合物E2を得た。
【0055】
(実施例3)
ポリエチレンオキシド(4モル)ステアリルエーテル(NIKKOL BS-4)の代わりに、ポリエチレンオキシド(2モル)ステアリルエーテルを用い、実施例1と同様に反応を行い、表1の化合物E3を得た。
【0056】
(実施例4)
ポリエチレンオキシド(4モル)ステアリルエーテル(NIKKOL BS-4)の代わりに、ポリエチレンオキシド(2モル)ステアリルエーテルを用い、N,N-ジメチルヘキサデシルアンの代わりにオレイルアミンを用い、実施例1と同様に反応を行い、表1の化合物E4を得た。
【0057】
(実施例5)
N,N-ジメチルヘキサデシルアンの代わりにN,N-ジメチルドデシルアンを用い、実施例1と同様に反応を行い、表1の化合物E5を得た。
【0058】
(実施例6)
ポリエチレンオキシド(4モル)ステアリルエーテル(NIKKOL BS-4)の代わりに、ポリエチレンオキシド(2モル)オレイルエーテルを用い、N,N-ジメチルヘキサデシルアンの代わりにN,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)オクタデシルアミンを用い、表1の化合物E6を得た。
【0059】
(実施例7)
ポリエチレンオキシド(4モル)ステアリルエーテル(NIKKOL BS-4)の代わりに、ポリエチレンオキシド(7モル)オレイルエーテル(NIKKOL BO-7V)を用い、N,N-ジメチルヘキサデシルアンの代わりにN,N-ジメチルドデシルアミンを用い、表1の化合物E7を得た。
【0060】
(実施例8)
ポリエチレンオキシド(4モル)ステアリルエーテル(NIKKOL BS-4)の代わりに、ポリエチレンオキシド(7モル)オレイルエーテル(NIKKOL BO-7V)を用い、実施例1と同様に反応を行い、表1の化合物E8を得た。
【0061】
(実施例9)
ポリエチレンオキシド(4モル)ステアリルエーテル(NIKKOL BS-4)の代わりに、ポリエチレンオキシド(7モル)オレイルエーテル(NIKKOL BO-7V)を用い、N,N-ジメチルヘキサデシルアミンの代わりに、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)オクタデシルアミンを用い実施例1と同様に反応を行い、表1の化合物E9を得た。
【0062】
(実施例10)
ポリエチレンオキシド(4モル)ステアリルエーテル(NIKKOL BS-4)の代わりに、オレイルアミンを用い、N,N-ジメチルヘキサデシルアンの代わりにN,N-ジメチルドデシルアミンを用い、
実施例1と同様に反応を行い、表1の化合物E10を得た。
【0063】
(実施例11)
ポリエチレンオキシド(4モル)ステアリルエーテル(NIKKOL BS-4)の代わりに、N-メチルオクタデシルアミンを用い、N,N-ジメチルヘキサデシルアンの代わりにN,N-ジメチルドデシルアミンを用い、実施例1と同様に反応を行い、表1の化合物E11を得た。
【0064】
(実施例12)
ポリエチレンオキシド(4モル)ステアリルエーテル(NIKKOL BS-4)の代わりに、N,N-ジドデシルアミンを用い、N,N-ジメチルヘキサデシルアンの代わりにN,N-ジメチルドデシルアミンを用い、実施例1と同様に反応を行い、表1の化合物E12を得た。
【0065】
(実施例13)
ポリエチレンオキシド(4モル)ステアリルエーテル(NIKKOL BS-4)の代わりに、オレイルアミンを用い、実施例1と同様に反応を行い、表1の化合物E13を得た。
【0066】
(実施例14)
ポリエチレンオキシド(4モル)ステアリルエーテル(NIKKOL BS-4)の代わりに、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)オレイルアミンを用い、実施例1と同様に反応を行い、表1の化合物E14を得た。
【0067】
(実施例15)
ポリエチレンオキシド(4モル)ステアリルエーテル(NIKKOL BS-4)の代わりに、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)オレイルアミンを用い、実施例1と同様に反応を行い、表1の化合物E15を得た。
【0068】
(実施例16)
1口300mlフラスコに、 無水コハク酸18.01g(0.180モル)、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)オクタデシルアミン 64.37g(0.180モル)を仕込み、120℃にて2時間加熱撹拌した。表1の化合物E16を80.1g(収率97%)得た。
【0069】
(実施例17)
1口300mlフラスコに、 無水コハク酸18.01g(0.180モル)、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)オレイルアミン 64.01g(0.180モル)を仕込み、120℃にて2時間加熱撹拌した。表1の化合物E17を79.7g(収率97%)を得た。
【0070】
(実施例18)
ポリエチレンオキシド(4モル)ステアリルエーテル(NIKKOL BS-4)の代わりに、1-ドデカンチオールを用い実施例1と同様に反応を行い、N,N-ジメチルヘキサデシルアンの代わりにN,N-ジメチルドデシルアミンを用い、表1の化合物E18を得た。
【0071】
(比較例1)
オレイン酸は、東京化成工業社製を使用した。
(比較例2)
グリセロールモノオレートは、東京化成工業社製を使用した。
(比較例3)
1口300mlフラスコに、 無水コハク酸10.01g(0.100モル)、オレイルアルコール 26.85g(0.100モル)を仕込み、120℃にて2時間加熱撹拌した。60℃まで冷却し、N,N-ジメチルドデシルアミン21.34g(0.1モル)を加え、60℃にて2時間加熱撹拌し、表1の化合物C3を57.0g(収率98%)を得た。
【0072】
<潤滑油組成物の調製>
実施例1~18及び比較例1~3で合成又は用意した添加剤と以下に示す基油とを混合して、摩擦摩耗試験に供する潤滑油組成物を調製した。すべての潤滑油組成物は、基油を99.5質量%、各実施例又は各比較例の添加剤を0.5質量%含有するものであり、その他の添加剤を含有しないものであった。摩擦摩耗試験の結果を表3に示す。
当該摩擦摩耗試験において、荷重50Nにおける摩擦係数が0.045以下であり、かつ、摩耗幅が435μm以下のものを合格と判定した。
なお、表1に、実施例1~18(E1~18)及び比較例1~3(C1~3)の化合物名を示した。また、表2には、表1における実施例1~18(E1~18)の各化合物について、式(1)との対応関係を示した。
【0073】
<基油>
・鉱油:100℃動粘度=17.6mm/s、粘度指数=125のAPI基油カテゴリーのグループIIIに分類される鉱油。
【0074】
【表1】
【表2-1】
【表2-2】
【表3】
【0075】
表3から明らかなように、実施例1~18は、比較例1~3と比べ、実用領域の低荷重領域(50N)で、潤滑油組成物を低摩擦係数化することができ、かつ潤滑油組成物に優れた耐摩耗性を付与することができた。一方、比較例1~3は、磨耗幅及び摩擦係数の両方又は何れか一方が合格基準に達さなかった。