(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024167606
(43)【公開日】2024-12-04
(54)【発明の名称】加工装置
(51)【国際特許分類】
B23K 26/08 20140101AFI20241127BHJP
B24B 47/20 20060101ALI20241127BHJP
B24B 41/06 20120101ALI20241127BHJP
B24B 27/06 20060101ALI20241127BHJP
B24B 49/12 20060101ALI20241127BHJP
B23Q 17/10 20060101ALI20241127BHJP
B23Q 17/24 20060101ALI20241127BHJP
B28D 5/04 20060101ALI20241127BHJP
B28D 7/00 20060101ALI20241127BHJP
H01L 21/301 20060101ALI20241127BHJP
B23K 26/53 20140101ALN20241127BHJP
【FI】
B23K26/08 Z
B24B47/20
B24B41/06 Z
B24B27/06 M
B24B49/12
B23Q17/10
B23Q17/24 Z
B28D5/04 A
B28D7/00
H01L21/78 B
B23K26/53
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023083804
(22)【出願日】2023-05-22
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【弁理士】
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(74)【代理人】
【識別番号】100189773
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 英哲
(74)【代理人】
【識別番号】100184055
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 貴之
(74)【代理人】
【識別番号】100185959
【弁理士】
【氏名又は名称】今藤 敏和
(72)【発明者】
【氏名】水本 由達
【テーマコード(参考)】
3C029
3C034
3C069
3C158
4E168
5F063
【Fターム(参考)】
3C029EE02
3C029EE20
3C034AA01
3C034BB73
3C034BB93
3C034CA15
3C034CA22
3C034CB14
3C034DD18
3C069AA03
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3C069EA01
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3C158AB04
3C158AB06
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3C158CB06
3C158DA17
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5F063AA28
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5F063FF57
(57)【要約】
【課題】加工不良の発生を抑制することが可能な加工装置を提供する。
【解決手段】被加工物を保持する保持ユニットと、保持ユニットによって保持された被加工物に光を照射する光照射ユニットと、保持ユニットと光照射ユニットとを相対的に移動させる移動ユニットと、被加工物に光が照射されている間における保持ユニットと光照射ユニットとの相対的な移動速度が所定の許容範囲内であるか否かを判定するコントローラと、を備える加工装置。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を保持する保持ユニットと、
該保持ユニットによって保持された該被加工物に光を照射する光照射ユニットと、
該保持ユニットと該光照射ユニットとを相対的に移動させる移動ユニットと、
該被加工物に該光が照射されている間における該保持ユニットと該光照射ユニットとの相対的な移動速度が所定の許容範囲内であるか否かを判定するコントローラと、を備えることを特徴とする加工装置。
【請求項2】
該光照射ユニットは、該被加工物にレーザービームを照射して該被加工物を加工するレーザー照射ユニットと、該被加工物に検出光を照射して該被加工物を検出する検出ユニットと、を備え、
該コントローラは、該被加工物に該レーザービーム又は該検出光が照射されている間における該保持ユニットと該レーザー照射ユニット又は該検出ユニットとの相対的な移動速度が所定の許容範囲内であるか否かを判定することを特徴とする請求項1に記載の加工装置。
【請求項3】
該光照射ユニットは、該被加工物に検出光を照射し、該検出光の反射光に基づいて該被加工物の高さ位置を検出する検出ユニットを備え、
該該コントローラは、該被加工物に該検出光が照射されている間における該保持ユニットと該検出ユニットとの相対的な移動速度が所定の許容範囲内であるか否かを判定することを特徴とする請求項1に記載の加工装置。
【請求項4】
該コントローラは、該移動速度が該許容範囲外であると判定された場合に、該光照射ユニットから該被加工物への該光の照射を停止させることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工物を加工する加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
デバイスチップの製造プロセスでは、格子状に配列された複数のストリート(分割予定ライン)によって区画された複数の領域にそれぞれデバイスが形成されたウェーハが用いられる。このウェーハをストリートに沿って分割して個片化することにより、デバイスを備えるデバイスチップが製造される。デバイスチップは、携帯電話、パーソナルコンピュータ等の様々な電子機器に組み込まれる。
【0003】
ウェーハの分割には、環状の切削ブレードで被加工物を切削する切削装置が用いられる。また、近年では、レーザー加工装置を用いたレーザー加工によってウェーハを分割するプロセスの開発も進められている。レーザー加工装置は、ウェーハを保持する保持ユニット(保持テーブル)と、保持ユニットによって保持されたウェーハにレーザービームを照射するレーザー照射ユニットとを備える。
【0004】
例えば、ウェーハにレーザービームを照射することにより、ウェーハの内部に分割起点として機能する改質層が形成される。具体的には、ウェーハを保持ユニットで保持し、ウェーハに対して透過性を有するパルス発振のレーザービームをウェーハの内部で集光させつつ、保持ユニットとレーザービームとをストリートに沿って相対的に移動させる(加工送り)。これにより、パルス発振のレーザービームがストリートに沿って照射され、ウェーハの内部に複数の改質領域がストリートに沿って所定の間隔で形成される。また、改質領域の形成時には、改質領域からウェーハの厚さ方向に沿って伸展するクラックが形成されることもある。
【0005】
上記のレーザー加工を施すことにより、複数の改質領域及び各改質領域から伸展するクラックによって構成される改質層がストリートに沿って形成される。ウェーハの改質層が形成された領域は、他の領域よりも脆くなる。そのため、改質層が形成されたウェーハに外力を付与すると、改質層が分割起点として機能し、ウェーハがストリートに沿って分割される(特許文献1参照)。
【0006】
なお、ウェーハにレーザービームが照射されている間に加工送り速度が大きく変動すると、改質領域の間隔にばらつきが生じ、改質層がウェーハの分割起点として適切に機能しなくなるおそれがある。そこで、レーザー加工装置でウェーハにレーザー加工を施す場合には、加工送り速度が所定の許容範囲内に収まるように調節される(特許文献2参照)。
【0007】
また、ウェーハに形成される各改質領域の深さ(ウェーハの上面からの距離)にばらつきがある場合にも、改質層の分割起点としての機能が損なわれるおそれがある。そこで、レーザービームのウェーハへの照射前又は照射中に、ウェーハの上面の高さ位置を測定し、ウェーハの上面の高さ位置に基づいてレーザービームの集光点の高さ位置を補正することにより、各改質領域の深さを揃える手法が用いられることがある(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004-179302号公報
【特許文献2】特開2012-146723号公報
【特許文献3】特開2020-163430号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記のように、ウェーハ等の被加工物を加工する加工装置には、レーザービームを照射するレーザー照射ユニット、被加工物に検出光を照射して被加工物の上面の高さ位置を検出する検出ユニット等、被加工物に光を照射する光照射ユニットが搭載されることがある。また、被加工物に加工、検出等の処理を施す際には、被加工物を保持ユニットによって保持し、光照射ユニットから被加工物に光を照射しつつ、保持ユニットと光照射ユニットとを移動ユニットによって相対的に移動させる加工送りが実施されることがある。
【0010】
しかしながら、加工装置において何らかの異常(移動ユニットの損傷、加工送り速度の設定ミス等)が発生すると、保持ユニットと光照射ユニットとの相対的な移動速度(加工送り速度)が予期せず変動し、所定の許容範囲から外れてしまうことがある。このような加工送りの異常が生じた状態で被加工物の加工が続行されると、加工不良が発生するおそれがある。
【0011】
例えば、レーザー照射ユニットから被加工物にレーザービームを照射して改質層を形成する際に加工送りの異常が発生すると、被加工物の内部に形成される複数の改質領域の間隔にばらつきが生じる。また、検出ユニットから被加工物に検出光を照射して被加工物の上面の高さ位置を測定する際に加工送りの異常が発生すると、高さ位置の検出地点に誤差が生じる。この状態で被加工物の加工が続行されると、被加工物に意図しない加工が施され、加工不良が発生するおそれがある。
【0012】
本発明は、かかる問題に鑑みてなされたものであり、加工不良の発生を抑制することが可能な加工装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一態様によれば、被加工物を保持する保持ユニットと、該保持ユニットによって保持された該被加工物に光を照射する光照射ユニットと、該保持ユニットと該光照射ユニットとを相対的に移動させる移動ユニットと、該被加工物に該光が照射されている間における該保持ユニットと該光照射ユニットとの相対的な移動速度が所定の許容範囲内であるか否かを判定するコントローラと、を備える加工装置が提供される。
【0014】
なお、好ましくは、該光照射ユニットは、該被加工物にレーザービームを照射して該被加工物を加工するレーザー照射ユニットと、該被加工物に検出光を照射して該被加工物を検出する検出ユニットと、を備え、該コントローラは、該被加工物に該レーザービーム又は該検出光が照射されている間における該保持ユニットと該レーザー照射ユニット又は該検出ユニットとの相対的な移動速度が所定の許容範囲内であるか否かを判定する。また、好ましくは、該光照射ユニットは、該被加工物に検出光を照射し、該検出光の反射光に基づいて該被加工物の高さ位置を検出する検出ユニットを備え、該該コントローラは、該被加工物に該検出光が照射されている間における該保持ユニットと該検出ユニットとの相対的な移動速度が所定の許容範囲内であるか否かを判定する。さらに、好ましくは、該コントローラは、該移動速度が該許容範囲外であると判定された場合に、該光照射ユニットから該被加工物への該光の照射を停止させる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一態様に係る加工装置では、光照射ユニットから被加工物に光が照射されている間における保持ユニットと光照射ユニットとの相対的な移動速度(加工送り速度)が所定の許容範囲内であるか否かが判定される。これにより、加工送り速度が異常な状態で被加工物の加工や検出が続行されることを回避でき、加工不良の発生が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図5】
図5(A)は加工送りの序盤における保持ユニット及び光照射ユニットを示す一部断面正面図であり、
図5(B)は被加工物へのレーザービーム及び検出光の照射中における保持ユニット及び光照射ユニットを示す一部断面正面図であり、
図5(C)は加工送りの終盤における保持ユニット及び光照射ユニットを示す一部断面正面図である。
【
図6】
図6(A)は加工送り速度が正常である場合の検出信号の強度及び加工送り速度の時間経過を示すグラフであり、
図6(B)は加工送り速度が異常である場合の検出信号の強度及び加工送り速度の時間経過を示すグラフである。
【
図7】光照射ユニットの変形例を示す模式図である。
【
図8】加工送り中における保持ユニット及び光照射ユニットを示す一部断面正面図である。
【
図9】
図9(A)は加工送り速度が正常である場合の検出信号の強度及び加工送り速度の時間経過を示すグラフであり、
図9(B)は加工送り速度が異常である場合の検出信号の強度及び加工送り速度の時間経過を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(実施形態1)
以下、添付図面を参照して本発明の一態様に係る実施形態を説明する。まず、本実施形態に係る加工装置の構成例について説明する。
図1は、被加工物11にレーザー加工を施すレーザー加工装置2を示す斜視図である。なお、
図1において、X軸方向(加工送り方向、第1水平方向、左右方向)とY軸方向(割り出し送り方向、第2水平方向、前後方向)とは、互いに垂直な方向である。また、Z軸方向(上下方向、高さ方向、鉛直方向)は、X軸方向及びY軸方向と垂直な方向である。
【0018】
レーザー加工装置2は、レーザー加工装置2を構成する各構成要素を支持する基台4を備える。基台4の上面は水平面(XY平面)と概ね平行な平坦面であり、基台4の上面上には移動ユニット(移動機構)6が設けられている。移動ユニット6は、Y軸移動ユニット(Y軸移動機構)8とX軸移動ユニット(X軸移動機構)18とを備える。
【0019】
Y軸移動ユニット8は、基台4の上面上にY軸方向に沿って配置された一対のY軸ガイドレール10を備える。一対のY軸ガイドレール10には、平板状のY軸移動テーブル12がY軸ガイドレール10に沿ってスライド可能に装着されている。
【0020】
Y軸移動テーブル12の裏面(下面)側には、ナット部(不図示)が設けられている。このナット部には、一対のY軸ガイドレール10の間にY軸方向に沿って配置されたY軸ボールねじ14が螺合されている。また、Y軸ボールねじ14の端部にはY軸パルスモータ16が連結されている。Y軸パルスモータ16でY軸ボールねじ14を回転させると、Y軸移動テーブル12がY軸ガイドレール10に沿ってY軸方向に移動する。
【0021】
X軸移動ユニット18は、Y軸移動テーブル12の表面(上面)側にX軸方向に沿って配置された一対のX軸ガイドレール20を備える。一対のX軸ガイドレール20には、平板状のX軸移動テーブル22がX軸ガイドレール20に沿ってスライド可能に装着されている。
【0022】
X軸移動テーブル22の裏面(下面)側には、ナット部(不図示)が設けられている。このナット部には、一対のX軸ガイドレール20の間にX軸方向に沿って配置されたX軸ボールねじ24が螺合されている。また、X軸ボールねじ24の端部にはX軸パルスモータ26が連結されている。X軸パルスモータ26でX軸ボールねじ24を回転させると、X軸移動テーブル22がX軸ガイドレール20に沿ってX軸方向に移動する。
【0023】
移動ユニット6には、保持ユニット28が連結されている。保持ユニット28は、X軸移動テーブル22の表面(上面)上に設置され、レーザー加工装置2によるレーザー加工の対象物である被加工物11を保持する。
【0024】
図2は、被加工物11を示す斜視図である。例えば被加工物11は、単結晶シリコン等の半導体材料でなる円盤状のウェーハであり、互いに概ね平行な表面(第1面)11a及び裏面(第2面)11bを備える。
【0025】
被加工物11は、互いに交差するように格子状に配列された複数のストリート(分割予定ライン)13によって、複数の矩形状の領域に区画されている。ストリート13によって区画された複数の領域の表面11a側にはそれぞれ、IC(Integrated Circuit)、LSI(Large Scale Integration)、LED(Light Emitting Diode)、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)デバイス等のデバイス15が形成されている。
【0026】
ただし、被加工物11の種類、材質、形状、構造、大きさ等に制限はない。例えば被加工物11は、シリコン以外の半導体(GaAs、InP、GaN、SiC等)、サファイア、ガラス、セラミックス、樹脂、金属等でなる基板(ウェーハ)であってもよい。また、デバイス15の種類、数、形状、構造、大きさ、配置等にも制限はなく、被加工物11にはデバイス15が形成されていなくてもよい。
【0027】
被加工物11をレーザー加工装置2(
図1参照)で加工する際には、被加工物11の取り扱い(搬送、保持等)の便宜のため、被加工物11が環状のフレーム17によって支持される。フレーム17は、SUS(ステンレス鋼)等の金属でなり、フレーム17の中央部にはフレーム17を厚さ方向に貫通する円形の開口17aが設けられている。なお、開口17aの直径は被加工物11の直径よりも大きい。
【0028】
被加工物11及びフレーム17には、円形のシート19が固定される。例えばシート19として、円形に形成されたフィルム状の基材と、基材上に設けられた粘着層(糊層)とを含むテープが用いられる。基材は、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタラート等の樹脂でなる。粘着層は、エポキシ系、アクリル系、又はゴム系の接着剤等でなる。なお、粘着層は紫外線硬化性樹脂であってもよい。また、シート19は、粘着層を備えず被加工物11に熱圧着可能な熱圧着シートであってもよい。
【0029】
被加工物11がフレーム17の開口17aの内側に配置された状態で、シート19の中央部が被加工物11の裏面11b側に貼付され、シート19の外周部がフレーム17に貼付される。これにより、被加工物11がシート19を介してフレーム17によって支持される。
【0030】
図1に示すように、例えば保持ユニット28は、被加工物11を下側から支持する保持テーブル(チャックテーブル)によって構成される。保持ユニット28の上面は、水平面(XY平面)と概ね平行な平坦面であり、被加工物11を保持する保持面28aを構成している。保持面28aは、保持ユニット28の内部に形成された流路(不図示)、バルブ(不図示)等を介して、エジェクタ等の吸引源(不図示)に接続されている。
【0031】
また、保持ユニット28は、フレーム17を把持して固定する複数のクランプ30を備える。複数のクランプ30は、保持面28aの周囲に設けられ、保持面28aの外周縁に沿って概ね等間隔に配列されている。
【0032】
Y軸移動テーブル12をY軸方向に沿って移動させると、保持ユニット28がY軸方向に沿って移動する。また、X軸移動テーブル22をX軸方向に沿って移動させると、保持ユニット28がX軸方向に沿って移動する。さらに、保持ユニット28には、保持ユニット28をZ軸方向と概ね平行な回転軸の周りで回転させるモータ等の回転駆動源(不図示)が連結されている。
【0033】
基台4の後端部(移動ユニット6及び保持ユニット28の後方)には、直方体状の支持構造32が設けられている。支持構造32は、基台4の上面から上方に突出するように形成され、支持構造32の表面(前面)はXZ平面に沿って配置されている。支持構造32には、支持構造32の表面から前方に突出する柱状の支持部材34が接続されている。
【0034】
また、レーザー加工装置2は、被加工物11に光を照射する光照射ユニット36を備える。光照射ユニット36は、被加工物11に所定の処理(加工、検出等)を施すための光を、支持部材34の先端部から保持ユニット28の保持面28aに向かって照射する。例えば光照射ユニット36は、被加工物11にレーザービームを照射してレーザー加工を施す加工ユニット(レーザー照射ユニット)、被加工物11に検出用の光を照射して被加工物11を検出する検出ユニット等を備える。光照射ユニット36の構成及び機能の具体例については後述する(
図3等参照)。
【0035】
また、支持部材34の先端部には、撮像ユニット38が設けられている。撮像ユニット38は、CCD(Charged-Coupled Devices)センサ、CMOS(Complementary Metal-Oxide-Semiconductor)センサ等のイメージセンサを備え、保持ユニット28によって保持された被加工物11等を撮像する。撮像ユニット38の種類に制限はなく、可視光カメラや赤外線カメラを用いることができる。例えば、撮像ユニット38で被加工物11を撮像することによって取得された画像に基づいて、被加工物11と光照射ユニット36との位置合わせが行われる。
【0036】
なお、支持部材34は、支持部材34をZ軸方向に沿って移動させるZ軸移動ユニット(不図示)を介して支持構造32に接続されていてもよい。例えば、支持構造32の前面側にボールねじ式の移動機構がZ軸移動ユニットとして設置される。この場合、Z軸移動ユニットで支持部材34をZ軸方向に沿って移動(昇降)させることにより、光照射ユニット36から照射される光の集光点の高さ位置の調節や撮像ユニット38のピント合わせを行うことができる。
【0037】
また、レーザー加工装置2は、表示ユニット(表示部、表示装置)40及び報知ユニット(報知部、報知装置)42を備える。表示ユニット40は、レーザー加工装置2に関する情報を表示する。また、報知ユニット42は、レーザー加工装置2に関する情報をオペレーターに報知する。
【0038】
表示ユニット40は、各種のディスプレイによって構成できる。例えば、表示ユニット40としてタッチパネル式のディスプレイが用いられる。この場合、表示ユニット40にはレーザー加工装置2に情報を入力するための操作画面が表示され、オペレーターは表示ユニット40のタッチ操作によってレーザー加工装置2に情報を入力できる。すなわち、表示ユニット40は、レーザー加工装置2に各種の情報を入力するための入力ユニット(入力部、入力装置)としても機能し、ユーザーインターフェースとして用いられる。ただし、入力ユニットは、表示ユニット40とは別途独立して設けられたマウス、キーボード、受信器等の電子機器であってもよい。
【0039】
報知ユニット42は、例えば表示灯(警告灯)によって構成され、レーザー加工装置2で異常が発生した際に点灯又は点滅してオペレーターに異常を通知する。ただし、報知ユニット42の種類に制限はない。例えば報知ユニット42は、音又は音声でオペレーターに情報を通知するスピーカーであってもよいし、所定の情報を有線又は無線で外部に送信する送信器であってもよい。
【0040】
さらに、レーザー加工装置2は、レーザー加工装置2を制御するコントローラ(制御ユニット、制御部、制御装置)44を備える。コントローラ44は、レーザー加工装置2を構成する各構成要素(移動ユニット6、保持ユニット28、光照射ユニット36、撮像ユニット38、表示ユニット40、報知ユニット42等)に接続されている。コントローラ44は、レーザー加工装置2の各構成要素に制御信号を出力することにより、各構成要素の動作を制御し、レーザー加工装置2を稼働させる。
【0041】
例えば、コントローラ44はコンピュータによって構成される。具体的には、コントローラ44は、レーザー加工装置2の稼働に必要な演算等の処理を実行する処理部と、レーザー加工装置2の稼働に用いられる各種の情報(データ、プログラム等)を記憶する記憶部とを備える。処理部は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサを含んで構成される。また、記憶物は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等のメモリを含んで構成される。
【0042】
次に、被加工物11に光を照射する光照射ユニット36の詳細について説明する。
図3は、光照射ユニット36を示す模式図である。例えば光照射ユニット36は、被加工物11にレーザービーム52を照射して被加工物11を加工するレーザー照射ユニット50と、被加工物11に検出光(照射光)72を照射して被加工物11を検出する検出ユニット70とを備える。レーザービーム52及び検出光72が、光照射ユニット36から照射される光に相当する。
【0043】
レーザー照射ユニット50は、YAGレーザー、YVO4レーザー、YLFレーザー等のレーザー発振器54と、レーザー発振器54から出射したパルス発振のレーザービーム52を保持ユニット28によって保持された被加工物11へと導く光学系56とを備える。光学系56は、複数の光学素子を含んで構成され、レーザービーム52の進行方向、形状、集光点等を制御する。
【0044】
例えば光学系56は、レーザービーム52を透過させるダイクロイックミラー58と、レーザービーム52を反射させる反射ミラー60と、レーザービーム52を集光させる集光器62とを備える。集光器62は、凸レンズ等の集光レンズ64を備え、レーザー照射ユニット50が備えるレーザー加工ヘッド66に収容されている。
【0045】
レーザー発振器54から出射したレーザービーム52は、ダイクロイックミラー58を透過して反射ミラー60で反射した後、集光器62に入射する。そして、レーザービーム52は、集光レンズ64によって所定の位置で集光され、被加工物11に照射される。これにより、被加工物11に所定のレーザー加工が施される。
【0046】
また、レーザー照射ユニット50は、レーザービーム52の集光点の高さ位置(Z軸方向における位置)を調節する調節機構68を備える。例えば調節機構68は、ボイスコイルモータ、リニアモータ等の駆動源を備えるアクチュエータであり、集光器62をZ軸方向に沿って移動させる。コントローラ44(
図1参照)から調節機構68に制御信号を入力して調節機構68を作動させることにより、集光器62が昇降し、レーザービーム52の集光点の高さ位置が調節される。
【0047】
検出ユニット70は、例えば被加工物11の高さ位置を検出する高さ検出ユニットである。具体的には、検出ユニット70は、検出光72を照射する光源74と、光源74から出射した検出光72が入射する偏光ビームスプリッタ(PBS)76とを備える。光源74は、例えば波長700nmの可視光を検出光72として偏光ビームスプリッタ76に向かって照射する。光源74から出射した検出光72は、偏光ビームスプリッタ76を透過してダイクロイックミラー58に到達する。
【0048】
そして、検出光72は、ダイクロイックミラー58及び反射ミラー60で反射して集光器62に入射する。すなわち、ダイクロイックミラー58は、レーザービーム52が透過し、且つ、検出光72が反射するように構成されている。集光器62に入射した検出光72は、集光レンズ64によって所定の位置で集光され、被加工物11に照射される。
【0049】
被加工物11に検出光72が照射されると、検出光72が被加工物11の表面11a(上面)で反射し、反射光(戻り光)72´が集光器62に入射する。そして、反射光72´は、集光レンズ64を通過し、反射ミラー60、ダイクロイックミラー58、及び偏光ビームスプリッタ76で反射する。
【0050】
また、検出ユニット70は、偏光ビームスプリッタ76で反射した反射光72´を透過させるバンドパスフィルタ78と、バンドパスフィルタ78を通過した反射光72´が入射する偏光ビームスプリッタ(PBS)80とを備える。例えば、検出光72の波長が波長700nmである場合には、波長が680nm以上720nm以下の光を通過させることが可能なバンドパスフィルタ78が用いられる。そして、バンドパスフィルタ78を通過した反射光72´は、偏光ビームスプリッタ80によって透過光72´aと反射光72´bとに分岐される。
【0051】
さらに、検出ユニット70は、偏光ビームスプリッタ80を透過した透過光72´aを集光する集光レンズ82と、集光レンズ82によって集光された透過光72´aを受光する受光素子84とを備える。受光素子84は、受光した透過光72´aを電圧に変換し、透過光72´aの強度(受光量)に対応する信号をコントローラ44(
図1参照)に出力する。
【0052】
また、検出ユニット70は、偏光ビームスプリッタ80で反射した反射光72´bを集光する集光レンズ86と、集光レンズ86によって集光された反射光72´bが入射するマスク88と、マスク88を通過した反射光72´bを受光する受光素子90とを備える。マスク88は、反射光72´bのスポット径と同等の幅を有するスリット88aを備える。また、受光素子90は、受光した反射光72´bを電圧に変換し、反射光72´bの強度(受光量)に対応する信号をコントローラ44(
図1参照)に出力する。
【0053】
検出ユニット70によって被加工物11の高さ位置を検出する際は、光源74から出射した検出光72が、偏光ビームスプリッタ76を透過してダイクロイックミラー58及び反射ミラー60で反射し、集光器62に入射する。そして、検出光72は集光レンズ64によって集光され、被加工物11の表面11a側(上面側)に照射される。
【0054】
検出光72の集光点は、被加工物11の表面11aのよりも僅かに上方(例えば、被加工物11の表面11aよりも20μm程度上方)に位置付けられる。なお、被加工物11の厚さにばらつきがあると、保持ユニット28によって保持された被加工物11の表面11aの高さ位置にもばらつきが生じる。そのため、検出光72の集光点は、被加工物11の厚さのばらつきを考慮して常に被加工物11の表面11aよりも上方に位置付けられるように設定される。
【0055】
被加工物11に検出光72が照射されると、検出光72が被加工物11の表面11aで反射し、反射光72´が集光器62に入射する。そして、反射光72´は、反射ミラー60、ダイクロイックミラー58、及び偏光ビームスプリッタ76で反射してバンドパスフィルタ78を通過し、偏光ビームスプリッタ80によって透過光72´aと反射光72´bとに分岐される。
【0056】
偏光ビームスプリッタ80を透過した透過光72´aは、集光レンズ82によって集光され、受光素子84によって受光される。そして、受光素子84が受光した透過光72´aの強度Daが、コントローラ44(
図1参照)に出力される。なお、光源74から照射される検出光72の光量が変動しない限り、透過光72´aの強度Daは一定に維持される。
【0057】
一方、偏光ビームスプリッタ80で反射した反射光72´bは、集光レンズ86によって集光されつつマスク88のスリット88aを通過し、受光素子90によって受光される。そして、受光素子90によって受光された反射光72´bの強度Dbが、コントローラ44(
図1参照)に出力される。
【0058】
ここで、検出光72が照射されている被加工物11の表面11aの高さ位置が変化すると、被加工物11の表面11aにおける検出光72の断面積が変動し、マスク88に照射される反射光72´bの断面積も変動する。その結果、マスク88のスリット88aを通過する反射光72´bの光量が変化し、受光素子90によって受光される反射光72´bの強度Dbも変化する。
【0059】
具体的には、被加工物11の表面11aの位置が高くなるほど、マスク88のスリット88aを通過する反射光72´bの光量が増加し、受光素子90によって受光される反射光72´bの強度Dbが大きくなる。一方、被加工物11の表面11aの位置が低くなるほど、マスク88のスリット88aを通過する反射光72´bの光量が減少し、受光素子90によって受光される反射光72´bの強度Dbが小さくなる。すなわち、受光素子90によって受光される反射光72´bの強度Dbは、被加工物11の表面11aの高さ位置に依存する。
【0060】
そして、コントローラ44(
図1参照)は、透過光72´aの強度Daと反射光72´bの強度Dbとに基づいて、被加工物11の表面11aの高さ位置を特定する。例えばコントローラ44は、透過光72´aの強度Daと反射光72´bの強度Dbとの比に相当する強度比Da/Dbを算出する。また、コントローラ44には、予め実験に基づいて取得された、強度比Da/Dbと被加工物11の表面11aの高さ位置との対応関係を示す参照情報(マップ、テーブル、関数等)が記憶されている。そして、コントローラ44は、算出された強度比Da/Dbを参照情報に当てはめることにより、被加工物11の表面11aの高さ位置を特定する。ただし、被加工物11の表面11aの高さ位置の特定方法に制限はなく、適宜変更できる。
【0061】
上記のように、検出ユニット70によって被加工物11の高さ位置が検出される。これにより、被加工物11に照射されるレーザービーム52の集光点の高さ位置を、被加工物11の高さ位置に応じて補正することが可能になる。
【0062】
次に、上記の光照射ユニット36を備えたレーザー加工装置2によって被加工物11にレーザー加工を施す被加工物の加工方法の具体例について説明する。レーザー加工装置2による被加工物11の加工は、コントローラ44(
図1参照)によって制御される。
【0063】
図4は、コントローラ44を示すブロック図である。コントローラ44は、被加工物11の加工等に必要な処理を実行する処理部100と、被加工物11の加工等に関する各種の情報(データ、プログラム等)を記憶する記憶部(メモリ)110とを含む。なお、
図4には、コントローラ44の機能的な構成を示すブロックに加えて、保持ユニット28、保持ユニット28によって保持された被加工物11、光照射ユニット36を模式的に図示している。
【0064】
本実施形態では、検出ユニット70によって被加工物11の高さ位置を検出しつつ、被加工物11にレーザービーム52を照射して被加工物11を加工する。具体的には、被加工物11に検出光72を照射して被加工物11の表面11aの高さ位置を検出し、被加工物11の表面11aの高さ位置に基づいてレーザービーム52の集光点の高さ位置を補正しながらレーザービーム52を被加工物11に照射する。これにより、被加工物11の表面11aに対するレーザービーム52の集光点の高さ位置のばらつきを低減することができる。
【0065】
レーザービーム52の照射条件は、被加工物11に施されるレーザー加工の内容に応じて適宜設定される。例えば、被加工物11をストリート13(
図2参照)に沿って分割する場合には、被加工物11のレーザービーム52が照射された領域が多光子吸収によって改質(変質)されるように、レーザービーム52の照射条件が設定される。
【0066】
具体的には、レーザービーム52の波長は、少なくともレーザービーム52の一部が被加工物11を透過するように設定される。すなわち、被加工物11に対して透過性を有するレーザービーム52が用いられる。また、レーザービーム52の他の照射条件も、被加工物11が適切に改質されるように適宜設定される。例えば、被加工物11が単結晶シリコンウェーハである場合には、レーザービーム52の照射条件は以下のように設定できる。
波長 :1064nm
平均出力 :1W
繰り返し周波数:100kHz
加工送り速度 :800mm/s
【0067】
レーザー加工装置2で被加工物11を加工する際は、まず、被加工物11が保持ユニット28によって保持される。例えば被加工物11は、表面11a側が上方に露出し、裏面11b側(シート19側)が保持面28aに対面するように、保持ユニット28上に配置される。また、フレーム17(
図2参照)が複数のクランプ30(
図1参照)によって固定される。この状態で、保持面28aに吸引源の吸引力(負圧)を作用させると、被加工物11がシート19を介して保持ユニット28によって吸引保持される。
【0068】
次に、保持ユニット28が回転し、所定のストリート13(
図2参照)の長さ方向がX軸方向と平行になるように保持ユニット28の角度が調節される。また、所定のストリート13とレーザービーム52及び検出光72の集光点とのY軸方向における位置が一致するように、保持ユニット28のY軸方向における位置が移動ユニット6によって調整される。さらに、レーザービーム52の集光点が被加工物11の表面11aより下方で且つ裏面11bよりも上方に位置付けられるとともに、検出光72の集光点が被加工物11の表面11aの検出に適した高さ位置に位置付けられる。
【0069】
そして、レーザー加工ヘッド66からレーザービーム52及び検出光72を照射しつつ、移動ユニット6によって保持ユニット28をX軸方向(加工送り方向)に沿って移動させる。なお、移動ユニット6には、移動ユニット6を駆動させるドライバ46が接続されている。例えばドライバ46は、移動ユニット6のY軸パルスモータ16及びX軸パルスモータ26(
図1参照)を制御するモータドライバによって構成され、コントローラ44から入力される制御信号に基づいて保持ユニット28のX軸方向及びY軸方向における移動量及び移動速度を制御する。
【0070】
保持ユニット28をX軸方向に沿って移動させると、保持ユニット28とレーザー照射ユニット50及び検出ユニット70とがX軸方向に沿って相対的に移動し(加工送り)、レーザービーム52及び検出光72が所定のストリート13に沿って被加工物11に照射される。このときの保持ユニット28とレーザー照射ユニット50及び検出ユニット70との相対的な移動速度が、加工送り速度に相当する。
【0071】
レーザービーム52は、パルス発振のレーザービームであり、被加工物11の内部で集光した状態でX軸方向に沿って走査される。その結果、被加工物11の内部が多光子吸収によって改質(変質)され、被加工物11の内部には複数の改質領域が所定の間隔で形成される。また、各改質領域から被加工物11の厚さ方向に沿って進展するクラックが形成される。その結果、複数の改質領域及びクラックによって構成される改質層が、被加工物11の内部にストリート13に沿って形成される。
【0072】
被加工物11の改質層が形成された領域は、被加工物11の他の領域よりも脆くなる。そのため、改質層が形成された被加工物11に外力を付与すると、被加工物11が改質層を起点として破断し、ストリート13に沿って分割される。すなわち、改質層は分割起点(分割のきっかけ)として機能する。
【0073】
また、被加工物11には、検出光72がレーザービーム52とともに所定のストリート13に沿って照射される。被加工物11に検出光72が照射されると、前述の通り検出ユニット70の受光素子84,90(
図3参照)からコントローラ44に強度Da,Dbが入力され、コントローラ44は検出光72が照射されている地点における被加工物11の表面11aの高さ位置を算出する。
【0074】
そして、コントローラ44は、算出された被加工物11の表面11aの高さ位置に基づいて調節機構68(
図3参照)を制御し、被加工物11の表面11aとレーザービーム52の集光点とのZ軸方向における距離が一定に保たれるように、レーザービーム52の集光点の高さ位置をリアルタイムで調節する。すなわち、被加工物11の表面11aの変位分だけレーザービーム52の高さ位置が昇降する。これにより、被加工物11の内部に形成される改質領域の深さ(被加工物11の厚さ方向における位置)のばらつきが低減される。
【0075】
なお、加工送り速度は、被加工物11に対するレーザービーム52及び検出光72の移動速度(走査速度)が所定の許容範囲内に収まるように設定される。具体的には、まず、レーザービーム52及び検出光72の集光点が被加工物11の外側に位置付けられている状態で、保持ユニット28が移動を開始して加速する。そして、レーザービーム52及び検出光72が被加工物11に照射されている間は、加工送り速度が所定の許容範囲内に収まるように維持される。その後、レーザービーム52及び検出光72の集光点が再び被加工物11の外側に位置付けられると、保持ユニット28が減速して停止する。
【0076】
図5(A)は、加工送りの序盤における保持ユニット28及び光照射ユニット36を示す一部断面正面図である。加工送りの開始時には、レーザービーム52及び検出光72の集光点が被加工物11の一端(
図5(A)における左端)の外側に位置付けられた状態で、保持ユニット28が加速する。これにより、加工送り速度が増加しつつ被加工物11の一端がレーザービーム52及び検出光72に近づく。
【0077】
図5(B)は、被加工物11へのレーザービーム52及び検出光72の照射中における保持ユニット28及び光照射ユニット36を示す一部断面正面図である。加工送りが進行すると、レーザービーム52及び検出光72が照射されている領域に被加工物11が到達し、被加工物11の表面11a側にレーザービーム52及び検出光72がストリート13(
図2参照)に沿って照射される。
【0078】
被加工物11にレーザービーム52が照射されると、被加工物11の内部に改質層がストリート13に沿って形成される。また、被加工物11に検出光72が照射されると、被加工物11の表面11aの高さ位置が検出され、レーザービーム52の集光点の高さ位置が被加工物11の表面11aの高さ位置に基づいて補正される。
【0079】
なお、レーザービーム52及び検出光72が被加工物11に照射されている間は、加工送り速度(保持ユニット28の移動速度)が概ね一定に維持される。これにより、被加工物11の内部に複数の改質領域が概ね等間隔に形成される。また、被加工物11の表面11aの高さ位置が検出される地点も概ね等間隔になる。
【0080】
図5(C)は、加工送りの終盤における保持ユニット28及び光照射ユニット36を示す一部断面正面図である。加工送りがさらに進行すると、レーザービーム52及び検出光72が被加工物11の他端(
図5(C)における右端)まで照射され、被加工物11がレーザービーム52及び検出光72から離れる。そして、レーザービーム52及び検出光72の集光点が被加工物11の他端の外側に位置付けられた状態で、保持ユニット28が減速、停止する。
【0081】
その後、同様の手順を繰り返すことにより、他のストリート13に沿ってレーザービーム52及び検出光72が照射される。このとき、保持ユニット28の往路と復路とで被加工物11にレーザービーム52及び検出光72をストリート13に沿って照射することにより、加工効率を向上させることができる。
【0082】
全てのストリート13に沿ってレーザービーム52及び検出光72が照射されると、改質層が各ストリート13に沿って格子状に形成された被加工物11が得られる。そして、改質層が形成された被加工物11に外力を付与すると、被加工物11が改質層を起点として破断し、ストリート13(
図2参照)に沿って分割される。これにより、デバイス15(
図2参照)をそれぞれ備える複数のチップ(デバイスチップ)が製造される。
【0083】
上記のように、保持ユニット28の加速及び減速はレーザービーム52及び検出光72が被加工物11に照射されていない期間に行われ(
図5(A)及び
図5(C)参照)、レーザービーム52及び検出光72が被加工物11に照射されている間(
図5(B)参照)は加工送り速度が所定の範囲内に収まるように制御される。しかしながら、レーザー加工装置2において何らかの異常(移動ユニット6の損傷、加工送り速度の設定ミス等)が発生すると、加工送り速度が予期せず変動し、所定の許容範囲から外れてしまうことがある。このような加工送りの異常が生じた状態で被加工物11の加工が続行されると、加工不良が発生するおそれがある。
【0084】
そこで、本実施形態に係るレーザー加工装置2では、光照射ユニット36から被加工物に光が照射されている間において、加工送り速度が所定の許容範囲内であるか否かの判定が行われる。これにより、加工送りの異常が速やかに検知され、加工不良の発生が抑制される。
【0085】
加工送り速度の判定は、
図4に示すコントローラ44の処理部100によって実行される。具体的には、処理部100は、加工送り速度を検出する速度検出部102と、被加工物11を検出する被加工物検出部104と、加工送り速度の適否を判定する判定部106と、判定部106による判定の結果に基づいて光照射ユニット36を制御する作動制御部108とを含む。
【0086】
速度検出部102は、レーザー加工装置2の構成要素から入力される信号に基づいて、加工送り速度を検出する。例えば速度検出部102は、移動ユニット6を駆動するドライバ46に接続されている。被加工物11にレーザービーム52及び検出光72が照射される際には、ドライバ46が移動ユニット6に制御信号を出力し、保持ユニット28をX軸方向に沿って所定の加工送り速度で移動させる。また、ドライバ46は、保持ユニット28の移動速度に対応する信号(速度信号)を速度検出部102へ逐次的に出力する。
【0087】
速度検出部102は、ドライバ46から入力された速度信号に基づいて加工送り速度を特定する。これにより、加工送り速度がリアルタイムで検出、監視される。ただし、速度検出部102は、ドライバ46から入力される速度信号以外の情報に基づいて加工送り速度を算出してもよい。
【0088】
被加工物検出部104は、被加工物11が検出ユニット70によって検出されているか否かを判定する。具体的には、検出ユニット70は、検出光72が被加工物11に照射されているか否かに対応する信号(検出信号)を被加工物検出部104に出力する。そして、被加工物検出部104は、検出信号の強度に基づいて、検出ユニット70による被加工物11の検出の有無を判定する。
【0089】
具体的には、検出光72が被加工物11に照射されている場合(
図5(B)参照)と照射されていない場合(
図5(A)及び
図5(C)参照)とでは、検出ユニット70の受光素子84,90(
図3参照)によって検出される透過光72´aの強度Da及び反射光72´bの強度Dbに差異が生じる。そのため、例えば被加工物検出部104は、強度Da又は強度Dbと予め設定された基準値(閾値)とを比較することにより、検出ユニット70によって被加工物11が検出されているか否かを判定できる。
【0090】
なお、本実施形態では、レーザービーム52と検出光72とが共通の光軸に沿って被加工物11に照射され、平面視で被加工物11の同一地点においてレーザービーム52の照射と被加工物11の検出とが同時進行で行われる。そのため、検出ユニット70によって被加工物11が検出されている期間は、被加工物11にレーザービーム52が照射されている期間に相当する。
【0091】
判定部106には、速度検出部102によって特定された加工送り速度と、被加工物検出部104による判定の結果(被加工物11の検出の有無)とが入力される。また、記憶部110には、加工送り速度の許容範囲を画定する基準値(上限値及び/又は下限値)が予め記憶されている。
【0092】
被加工物検出部104から判定部106に被加工物11が検出されている旨(被加工物11に検出光72が照射されている旨)を示す信号が入力されると、判定部106は、速度検出部102から入力された加工送り速度と記憶部110に記憶されている基準値とを比較する。そして、判定部106は、加工送り速度が許容範囲内である場合には正常と判定し、加工送り速度が許容範囲外である場合には異常と判定する。
【0093】
図6(A)は加工送り速度が正常である場合の検出信号の強度及び加工送り速度の時間経過を示すグラフであり、
図6(B)は加工送り速度が異常である場合の検出信号の強度及び加工送り速度の時間経過を示すグラフである。加工送りが開始して保持ユニット28が加速し(
図5(A)参照)、被加工物11の一端が検出光72に到達すると、検出信号の強度が上昇する(時刻t
11)。そして、検出光72が被加工物11に照射されている間は(
図5(B)参照)、検出信号の強度が概ね一定に維持される。その後、加工送りが進行して被加工物11の他端が検出光72から離れると(
図5(C)参照)、検出信号の強度が減少する(時刻t
12)。すなわち、時刻t
11から時刻t
12までの期間P
1が、検出光72が被加工物11に照射されて被加工物11が検出ユニット70によって検出されている期間に相当する。
【0094】
そして、期間P1における加工送り速度(保持ユニット28の移動速度)と、予め設定された加工送り速度の基準値(閾値)Vrefとが比較される。なお、基準値Vrefは、加工送り速度の許容範囲の下限値に相当する。
【0095】
期間P
1の全期間において加工送り速度が基準値V
ref以上に維持されている場合には(
図6(A)参照)、被加工物11にレーザービーム52及び検出光72が照射されている間において、加工送り速度が一定以上に維持されていることが確認される。この場合、判定部106(
図4参照)は加工送り速度が正常であると判定する。
【0096】
一方、期間P
1に加工送り速度が基準値V
refを下回る期間が含まれる場合には(
図6(B)参照)、被加工物11にレーザービーム52及び検出光72が照射されている間において、加工送り速度が不足していることが確認される。この場合、判定部106(
図4参照)は加工送り速度が異常であると判定する。
【0097】
図4に示す作動制御部108には、判定部106による判定の結果が出力される。判定部106から作動制御部108に加工送りが正常である旨を示す信号(正常信号)が出力されると、作動制御部108は光照射ユニット36に制御信号を出力し、光照射ユニット36による被加工物11の加工及び検出を続行する。一方、判定部106から作動制御部108に加工送りが異常である旨を示す信号(異常信号)が出力されると、作動制御部108は光照射ユニット36に制御信号を出力し、光照射ユニット36から被加工物11への光の照射を停止させる。
【0098】
例えば作動制御部108は、レーザー発振器54(
図3参照)によるレーザーの発振を停止させ、又は、レーザー発振器54から集光器62へのレーザービーム52の照射を遮断する。これにより、レーザー照射ユニット50から被加工物11へのレーザービーム52の照射が停止される。また、作動制御部108は、光源74による検出光72の照射を停止させ、又は、光源74から集光器62への検出光72の照射を遮断する。これにより、検出ユニット70から被加工物11への検出光72の照射が停止される。その結果、レーザー照射ユニット50による被加工物11の誤加工や検出ユニット70による被加工物11の誤検出が防止される。
【0099】
また、作動制御部108は、表示ユニット40及び報知ユニット42に制御信号を出力し、オペレーターに加工送りの異常を通知してもよい。例えば、表示ユニット40(
図1参照)に異常を知らせるメッセージ等の情報が表示されるとともに、報知ユニット42(
図1参照)が点灯又は点滅して異常を報知する。これにより、オペレーターが加工送りの異常を速やかに認知し、加工送りの異常を解消するための適宜の措置(部品の交換、設定の変更等)をとることが可能になる。
【0100】
以上の通り、本実施形態に係るレーザー加工装置2では、光照射ユニット36から被加工物11に光(レーザービーム52、検出光72等)が照射されている間における保持ユニット28と光照射ユニット36との相対的な移動速度(加工送り速度)が所定の許容範囲内であるか否かが判定される。これにより、加工送り速度が異常な状態で被加工物11の加工や検出が続行されることを回避でき、加工不良の発生が抑制される。
【0101】
なお、上記実施形態では、レーザー照射ユニット50による被加工物11の加工と検出ユニット70による被加工物11の高さ位置の検出とが同時進行で行われる例について説明した。ただし、検出ユニット70による被加工物11の高さ位置の検出を実施した後に、レーザー照射ユニット50による被加工物11の加工を実施することもできる。
【0102】
具体的には、まず、検出ユニット70によって被加工物11の表面11aの高さ位置が全てのストリート13(
図2参照)に沿って検出される。このとき、保持ユニット28と検出ユニット70との相対的な移動速度(加工送り速度)が所定の許容範囲内であるか否かが、コントローラ44(
図4参照)によって判定される。そして、検出ユニット70によって検出された被加工物11の表面11aの高さ位置を示す情報(高さ位置情報)が、記憶部110(
図4参照)に記憶される。
【0103】
次に、レーザー照射ユニット50からレーザービーム52が全てのストリート13(
図2参照)に沿って照射される。このとき、記憶部110に記憶されている高さ位置情報に基づいて、レーザービーム52の集光点の高さ位置が補正される。また、保持ユニット28とレーザー照射ユニット50との相対的な移動速度(加工送り速度)が所定の許容範囲内であるか否かが、コントローラ44(
図4参照)によって判定される。
【0104】
その他、本実施形態に係る構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。また、本実施形態は、他の実施形態と適宜組み合わせることができる。
【0105】
(実施形態2)
実施形態1では、レーザービーム52及び検出光72がレーザー加工ヘッド66から共通の光軸に沿って照射される光照射ユニット36について説明した(
図3等参照)。ただし、レーザービーム52と検出光72とは、それぞれ異なるヘッドから独立した光軸に沿って照射されてもよい。
【0106】
図7は、光照射ユニット36の変形例に相当する光照射ユニット36Aを示す模式図である。光照射ユニット36Aは、被加工物11にレーザービーム52Aを照射して被加工物11を加工するレーザー照射ユニット50Aと、被加工物11に検出光(照射光)72A,72Bを照射して被加工物11を検出する一対の検出ユニット70A,70Bとを備える。レーザービーム52A及び検出光72A,72Bが、光照射ユニット36Aから照射される光に相当する。
【0107】
レーザー照射ユニット50Aは、レーザー照射ユニット50(
図3参照)の変形例に相当し、レーザー発振器54から出射したパルス発振のレーザービーム52Aを保持ユニット28によって保持された被加工物11へと導く光学系56Aを備える。なお、光学系56Aの構成は、ダイクロイックミラー58(
図3参照)が省略されている点を除いて、レーザー照射ユニット50の光学系56(
図3参照)と同様である。レーザー発振器54から出射したレーザービーム52Aは、反射ミラー60で反射して集光器62に入射する。そして、レーザービーム52Aは集光レンズ64によって所定の位置で集光され、被加工物11に照射される。
【0108】
検出ユニット70A,70Bはそれぞれ、検出ユニット70(
図3参照)の変形例に相当する。検出ユニット70Aの構成は、偏光ビームスプリッタ76(
図3参照)の代わりに偏光ビームスプリッタ76Aが設けられ、反射ミラー92及び検出ヘッド94Aが追加されている点を除いて、検出ユニット70(
図3参照)と同様である。また、検出ユニット70Bの構成は、検出ユニット70Aと同様である。ただし、
図7では簡略化のため、検出ユニット70Bの構成要素として検出ヘッド94Bのみを図示している。
【0109】
検出ユニット70Aの光源74から出射した検出光72Aは、偏光ビームスプリッタ76A及び反射ミラー92で反射して、検出ヘッド94Aに入射する。そして、検出光72Aは、検出ヘッド94Aに収容されている集光器(不図示)によって集光され、保持ユニット28によって保持されている被加工物11に照射される。
【0110】
被加工物11に検出光72Aが照射されると、検出光72Aが被加工物11の表面11aで反射する。そして、反射光(戻り光)72A´が検出ヘッド94Aに収容されている集光器(不図示)を通過して反射ミラー92で反射し、偏光ビームスプリッタ76Aを透過する。偏光ビームスプリッタ76Aを透過した反射光72A´は、バンドパスフィルタ78を通過し、偏光ビームスプリッタ80によって透過光72A´aと反射光72A´bとに分岐される。
【0111】
偏光ビームスプリッタ80を透過した透過光72A´aは、集光レンズ82によって集光され、受光素子84によって受光される。一方、偏光ビームスプリッタ80で反射した反射光72A´bは、集光レンズ86によって集光されつつマスク88のスリット88aを通過し、受光素子90によって受光される。そして、透過光72A´a及び反射光72A´bの強度に基づいて、被加工物11の表面11aの高さ位置が検出される。
【0112】
検出ユニット70Bも、検出ユニット70Aと同様の機能を有し、検出光72Bの反射光72B´に基づいて被加工物11の表面11aの高さ位置を検出する。なお、上記で詳細な説明を省略した検出ユニット70A,70Bの構成及び機能については、検出ユニット70(
図3参照)と同様である。
【0113】
検出ユニット70Aの検出ヘッド94Aと検出ユニット70Bの検出ヘッド94Bとは、X軸方向においてレーザー加工ヘッド66を挟むように配置されている。そして、レーザービーム52Aの集光点と検出光72A,72Bの集光点とは、Y軸方向における位置が一致するように位置付けられ、平面視においてX軸方向に沿って所定の間隔で配列される。
【0114】
図8は、加工送り中における保持ユニット28及び光照射ユニット36Aを示す一部断面正面図である。被加工物11にレーザー加工を施す際には、被加工物11に検出光72A又は検出光72Bが照射された後にレーザービーム52Aが照射されるように加工送りが行われる。
【0115】
例えば、保持ユニット28が
図8における右から左へ移動する場合には、レーザー加工ヘッド66からレーザービーム52Aが照射されるとともに、検出ユニット70Aの検出ヘッド94Aから検出光72Aが照射される。これにより、被加工物11のストリート13(
図2参照)に沿って検出光72Aとレーザービーム52Aとが順に照射される。なお、
図8では検出ユニット70Bの図示を省略している。
【0116】
上記のように加工送りを実施すると、検出光72Aがレーザービーム52Aに先行して被加工物11に照射される。そして、被加工物11の表面11aの検出光72Aが照射された地点(高さ検出点)における高さ位置が検出された後、レーザービーム52が高さ検出点に照射されるタイミングでレーザービーム52の集光点の高さ位置が調節機構68によって補正される。このように、本実施形態では、被加工物11の表面11aの高さ位置の検出とレーザー加工とが異なるタイミングで行われる。
【0117】
なお、保持ユニット28が逆方向(
図8における左から右)へ移動する場合には、レーザー加工ヘッド66からレーザービーム52Aが照射されるとともに、検出ユニット70Bの検出ヘッド94B(
図7参照)から検出光72Bが照射される。そして、検出光72Bがレーザービーム52Aに先行して被加工物11に照射される。
【0118】
被加工物11にレーザービーム52A及び検出光72A,72Bが照射される際には、コントローラ44の処理部100(
図4参照)によって、加工送り速度が所定の許容範囲内であるか否かが判定される。加工送り速度の適否の判定方法は、以下で説明する事項を除いて、実施形態1と同様である。
【0119】
図9(A)は加工送り速度が正常である場合の検出信号の強度及び加工送り速度の時間経過を示すグラフであり、
図9(B)は加工送り速度が異常である場合の検出信号の強度及び加工送り速度の時間経過を示すグラフである。以下では一例として、保持ユニット28が
図8に示す方向に移動し、検出ユニット70Aによって被加工物11が検出される場合について説明する。ただし、保持ユニット28が逆方向に移動する場合には、検出ユニット70Bによって被加工物11が検出される。
【0120】
加工送りが開始すると、保持ユニット28が加速して被加工物11の一端が検出光72Aに接近する。そして、被加工物11の一端が検出光72Aに到達すると、検出信号の強度が上昇する(時刻t11)。また、時刻t11から所定の時間が経過すると、被加工物11の一端がレーザービーム52Aに到達し、被加工物11にレーザービーム52Aが照射される(時刻t21)。なお、時刻t21は、時刻t11、保持ユニット28の移動速度、及びレーザービーム52Aの集光点と検出光72Aの集光点との距離に基づいて算出できる。
【0121】
その後、加工送り速度が概ね一定に維持された状態で、被加工物11にレーザービーム52A及び検出光72Aがストリート13(
図2参照)に沿って照射される。このとき、検出光72Aがレーザービーム52Aに先行して被加工物11に照射され、被加工物11の表面11aの高さ位置に基づいてレーザービーム52Aの集光点の高さ位置が補正される。
【0122】
加工送りがさらに進行すると、被加工物11の他端が検出光72Aに到達する。そして、被加工物11の他端が検出光72Aから離れると、検出信号の強度が減少する(時刻t
12)。また、時刻t
12から所定の時間が経過すると、被加工物11の他端がレーザービーム52Aに到達し(時刻t
22)、レーザービーム52Aが1本のストリート13(
図2参照)の一端から他端まで走査される。なお、時刻t
22は、時刻t
12、保持ユニット28の移動速度、及びレーザービーム52Aの集光点と検出光72Aの集光点との距離に基づいて算出できる。そして、レーザービーム52A及び検出光72Aの集光点が被加工物11の外側に位置付けられた後、保持ユニット28が減速、停止する。
【0123】
時刻t11から時刻t12までの期間P1は、検出光72Aが被加工物11に照射されている期間、すなわち、被加工物11が検出ユニット70Aによって検出されている期間に相当する。また、時刻t21から時刻t22までの期間P2は、被加工物11にレーザービーム52Aが照射されている期間に相当する。そして、時刻t11から時刻t22までの期間Pが、光照射ユニット36Aから被加工物11に光(レーザービーム52A又は検出光72A)が照射されている期間に相当する。
【0124】
本実施形態では、期間Pにおける加工送り速度(保持ユニット28の移動速度)の適否が判定される。具体的には、コントローラ44の判定部106(
図4参照)が、期間Pにおける加工送り速度と、予め設定された基準値V
refとを比較し、加工送り速度が所定の許容範囲内に維持されているか否かを判定する。
【0125】
期間Pの全期間において加工送り速度が基準値V
ref以上に維持されている場合には(
図9(A)参照)、被加工物11にレーザービーム52A又は検出光72Aが照射されている間において、加工送り速度が一定以上に維持されていることが確認される。この場合、判定部106(
図4参照)は加工送り速度が正常であると判定する。
【0126】
一方、期間Pに加工送り速度が基準値V
refを下回る期間が含まれる場合には(
図9(B)参照)、被加工物11にレーザービーム52A又は検出光72Aが照射されている間において、加工送り速度が不足していることが確認される。この場合、判定部106(
図4参照)は加工送り速度が異常であると判定する。
【0127】
判定部106によって加工送り速度が異常であると判定されると、作動制御部108(
図4参照)は、レーザー照射ユニット50A及び検出ユニット70Aに制御信号を出力し、レーザー照射ユニット50Aからのレーザービーム52Aの照射と検出ユニット70Aからの検出光72Aの照射とを停止させる。これにより、加工送りが異常な状態で被加工物11の加工や検出が続行されることを回避できる。
【0128】
上記のように、レーザービーム52Aの集光点と検出光72A,72Bの集光点とが離れて設定されている場合には、検出光72A又は検出光72Bがレーザービーム52Aに先行して被加工物11に照射される。これにより、被加工物11の表面11aの高さ位置の検出とレーザービーム52Aの集光点の高さ位置の調節との間にタイムラグがあっても、レーザービーム52Aの集光点の高さ位置を適切なタイミングで補正することが可能になる。
【0129】
なお、本実施形態に係る構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。また、本実施形態は、他の実施形態と適宜組み合わせることができる。
【0130】
(実施形態3)
実施形態1及び実施形態2では、加工装置の一例としてレーザー加工装置2(
図1参照)について説明した。ただし、本発明に係る加工装置の種類は、加工送りが実施されるものであれば制限はない。本発明を適用可能な他の加工装置の例としては、切削装置、研削装置等が挙げられる。
【0131】
切削装置は、被加工物を保持する保持ユニットと、被加工物に切削加工を施す加工ユニット(切削ユニット)とを備える。切削ユニットはスピンドルを備えており、スピンドルの先端部には環状の切削ブレードが装着される。被加工物を保持ユニットで保持し、切削ブレードを回転させつつ保持ユニットと切削ブレードとを相対的に移動させることにより(加工送り)、切削ブレードが被加工物に切り込み、被加工物が切削される。
【0132】
研削装置は、被加工物を保持する保持ユニットと、被加工物に研削加工を施す加工ユニット(研削ユニット)とを備える。研削ユニットはスピンドルを備えており、スピンドルの先端部には複数の研削砥石を含む環状の研削ホイールが装着される。被加工物を保持ユニットで保持し、研削ホイールを回転させつつ保持ユニットと研削ホイールとを相対的に移動させることにより(加工送り)、研削砥石が被加工物に接触し、被加工物が研削される。
【0133】
切削装置及び研削装置にも、被加工物に光を照射する光照射ユニットを搭載できる。例えば、被加工物の表面(上面)の高さ位置を検出する検出ユニット(
図3及び
図7参照)が切削装置又は研削装置に搭載される。そして、光照射ユニットから被加工物に光が照射されている間における加工送り速度が所定の許容範囲内であるか否かがコントローラによって判定される。これにより、切削装置及び研削装置においても加工送り速度の適否を監視できる。
【0134】
なお、本実施形態に係る構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。また、本実施形態は、他の実施形態と適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0135】
11 被加工物
11a 表面(第1面)
11b 裏面(第2面)
13 ストリート(分割予定ライン)
15 デバイス
17 フレーム
17a 開口
19 シート
2 レーザー加工装置
4 基台
6 移動ユニット(移動機構)
8 Y軸移動ユニット(Y軸移動機構)
10 Y軸ガイドレール
12 Y軸移動テーブル
14 Y軸ボールねじ
16 Y軸パルスモータ
18 X軸移動ユニット(X軸移動機構)
20 X軸ガイドレール
22 X軸移動テーブル
24 X軸ボールねじ
26 X軸パルスモータ
28 保持ユニット
28a 保持面
30 クランプ
32 支持構造
34 支持部材
36,36A 光照射ユニット
38 撮像ユニット
40 表示ユニット(表示部、表示装置)
42 報知ユニット(報知部、報知装置)
44 コントローラ(制御ユニット、制御部、制御装置)
46 ドライバ
50,50A レーザー照射ユニット
52,52A レーザービーム
54 レーザー発振器
56,56A 光学系
58 ダイクロイックミラー
60 反射ミラー
62 集光器
64 集光レンズ
66 レーザー加工ヘッド
68 調節機構
70,70A,70B 検出ユニット
72,72A,72B 検出光(照射光)
72´,72A´,72B´ 反射光(戻り光)
72´a,72A´a 透過光
72´b,72A´b 反射光
74 光源
76,76A 偏光ビームスプリッタ(PBS)
78 バンドパスフィルタ
80 偏光ビームスプリッタ(PBS)
82 集光レンズ
84 受光素子
86 集光レンズ
88 マスク
88a スリット
90 受光素子
92 反射ミラー
94A,94B 検出ヘッド
100 処理部
102 速度検出部
104 被加工物検出部
106 判定部
108 作動制御部
110 記憶部(メモリ)