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特開2024-167757原料ガスを供給する方法、原料ガスを供給する装置、及び基板に成膜を行う装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024167757
(43)【公開日】2024-12-04
(54)【発明の名称】原料ガスを供給する方法、原料ガスを供給する装置、及び基板に成膜を行う装置
(51)【国際特許分類】
   C23C 16/448 20060101AFI20241127BHJP
【FI】
C23C16/448
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023084041
(22)【出願日】2023-05-22
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002756
【氏名又は名称】弁理士法人弥生特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】板谷 剛司
【テーマコード(参考)】
4K030
【Fターム(参考)】
4K030AA12
4K030AA14
4K030BA01
4K030EA01
4K030HA15
4K030JA16
4K030JA20
4K030KA02
4K030KA25
4K030KA39
(57)【要約】
【課題】 原料を加熱する温度とキャリアガス供給量との相関からヒータに供給する電力を制御することで、所望する成膜レートが得られるように原料ガスを供給すること。
【解決手段】原料ガスを供給する方法は、固体原料を収容した原料容器に設けられたヒータに対して電力を供給し、前記原料容器内を加熱することにより前記固体原料を昇華させる工程と、前記ヒータにより加熱されている前記原料容器内にキャリアガスを供給し、前記昇華させた原料と混合して、基板が配置された消費区域に原料ガスとして供給する工程と、前記固体原料の残量と対応関係を有する指標値を求める工程と、を含み、前記固体原料を昇華させる工程の実施にあたり、予め設定された前記指標値と、前記ヒータに対して供給する電力との対応関係に基づき、前記実施の際における前記指標値に対応する電力を前記ヒータに供給する。
【選択図】図9A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料ガスを供給する方法において、
固体原料を収容した原料容器に設けられたヒータに対して電力を供給し、前記原料容器内を加熱することにより前記固体原料を昇華させる工程と、
前記ヒータにより加熱されている前記原料容器内にキャリアガスを供給し、前記昇華させた原料と混合して、基板が配置された消費区域に原料ガスとして供給する工程と、
前記固体原料の残量と対応関係を有する指標値を求める工程と、を含み、
前記固体原料を昇華させる工程の実施にあたり、予め設定された前記指標値と、前記ヒータに対して供給する電力との対応関係に基づき、前記実施の際における前記指標値に対応する電力を前記ヒータに供給する、方法。
【請求項2】
前記指標値は、前記原料容器内に供給されたキャリアガスの供給量を積算した積算供給量である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記積算供給量を求める工程では、規定量の前記固体原料を収容した原料容器の使用開始から、前記固体原料の残量が予め設定された下限値に達するまでの期間に亘って前記キャリアガスの供給量を積算する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記キャリアガスの積算供給量と、前記ヒータに対して供給する電力との対応関係は、前記消費区域に供給される前記原料ガス中の原料の単位時間あたりの供給量が予め設定された値となるように設定されている、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記原料容器内には、上下方向に向けて互いに間隔を開けて複数段の原料保持トレイが設けられ、各々の前記原料保持トレイに前記固体原料が保持され、前記原料容器内に供給された前記キャリアガスは、これらの原料保持トレイ上を通過することにより、前記昇華した原料と混合される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ヒータは、前記原料容器の互いに異なる位置に複数設けられ、各々の前記ヒータに対して前記指標値と、当該ヒータに対して供給する電力との対応関係が設定されている、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
原料ガスを供給する装置において、
固体原料を収容し、当該固体原料を加熱するためのヒータを備えた原料容器と、
前記ヒータに電力を供給するための電力供給部と、
前記原料容器にキャリアガスを供給するためのキャリアガス導入路と、
前記固体原料の残量と対応関係を有する指標値を求める指標値算出部と、
前記原料容器にて得られた原料ガスを、基板が配置された消費区域に供給するための原料ガス流路と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、前記ヒータに対して電力を供給し、前記原料容器内を加熱することにより前記固体原料を昇華させる処理ステップと、前記ヒータにより加熱されている前記原料容器内に前記キャリアガスを供給し、前記昇華させた原料と混合して、原料ガスとして前記消費区域に供給する処理ステップと、前記指標値を求める処理ステップと、を実行するための制御信号を出力するように構成され、前記固体原料を昇華させる処理ステップの実施にあたり、予め設定された前記指標値と、前記ヒータに対して供給する電力との対応関係に基づき、前記実施の際における前記指標値に対応する電力を前記ヒータに供給する、装置。
【請求項8】
前記指標値算出部は、前記指標値として、前記キャリアガス供給部から供給されるキャリアガスの供給量を積算した積算供給量を求める供給量積算部である、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記積算供給量を求める処理ステップでは、規定量の固体原料を収容した原料容器の使用開始から、前記固体原料の残量が予め設定された下限値に達するまでの期間に亘って前記キャリアガスの供給量を積算する、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記キャリアガスの積算供給量と、前記ヒータに対して供給する電力との対応関係は、前記消費区域に供給される前記原料ガス中の原料の単位時間あたりの供給量が予め設定された値となるように設定されている、請求項8に記載の装置。
【請求項11】
前記原料容器内には、上下方向に向けて互いに間隔を開けて複数段の原料保持トレイが設けられ、各々の前記原料保持トレイに前記固体原料が保持され、前記原料容器内に供給された前記キャリアガスは、これらの原料保持トレイ上を通過することにより、前記昇華した原料と混合される、請求項7に記載の装置。
【請求項12】
前記ヒータは、前記原料容器の互いに異なる位置に複数設けられ、各々の前記ヒータに対して前記指標値と、当該ヒータに対して供給する電力との対応関係が設定されている、請求項7に記載の装置。
【請求項13】
基板に成膜を行う装置であって、
請求項7ないし12のいずれか一つに記載の原料ガス供給装置と、
前記消費区域であり、前記基板を配置するための載置台が設けられた処理容器と、
を備え、
前記制御部は、前記基板を前記載置台に配置し、前記原料ガス供給装置から前記処理容器に供給された前記原料ガスによって前記基板に対して成膜する処理ステップを実行するための制御信号を出力するように構成される、装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、原料ガスを供給する方法、原料ガスを供給する装置、及び基板に成膜を行う装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばCVDにより、基板上に金属膜などを成膜する場合に、固体の原料から得られる原料ガスを用いることがある。具体例を挙げると、原料容器に収容された固体原料を加熱して昇華させ、キャリアガス源から供給されたキャリアガスと混合して原料ガスを得た後、基板を収容した処理容器に当該原料ガスを供給することにより成膜が行われる。
【0003】
特許文献1においては、処理ガス供給路内のガス圧力を圧力計で測定して原料ガスの流量を算出することが記載されている。そして、算出した原料ガス流量がレシピに応じた設定流量と異なる場合には、温度制御プログラムによって原料容器の温度を調整して原料ガスの流量を調整して所望する膜厚にする制御方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-240119号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、原料を加熱する温度とキャリアガス供給量との相関からヒータに供給する電力を制御することで、所望する成膜レートが得られるように原料ガスを供給する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の原料ガスを供給する方法は、
固体原料を収容した原料容器に設けられたヒータに対して電力を供給し、前記原料容器内を加熱することにより前記固体原料を昇華させる工程と、
前記ヒータにより加熱されている前記原料容器内にキャリアガスを供給し、前記昇華させた原料と混合して、基板が配置された消費区域に原料ガスとして供給する工程と、
前記固体原料の残量と対応関係を有する指標値を求める工程と、を含み、
前記固体原料を昇華させる工程の実施にあたり、予め設定された前記指標値と、前記ヒータに対して供給する電力との対応関係に基づき、前記実施の際における前記指標値に対応する電力を前記ヒータに供給する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、原料を加熱する温度とキャリアガス供給量との相関からヒータに供給する電力を制御することで、所望する成膜レートが得られるように原料ガスを供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の実施形態に係る基板処理システムを示す平面図である。
図2】前記基板処理システムのRu成膜処理モジュールを示す縦断側面図である。
図3】前記Ru成膜処理モジュールに併設された原料ガス供給装置を示す縦断側面図である。
図4】比較形態における前記原料ガス供給装置を示すブロック図である。
図5】前記比較形態の原料ガス供給方法による成膜レートの変化を示すグラフである。
図6】前記原料ガス供給方法による各ヒータへの供給電力の変化を示すグラフである。
図7】前記実施形態における原料ガス供給装置の電気的構成を示すブロック図である。
図8】前記原料ガス供給装置の作用を示す作用図である。
図9A】前記実施形態における原料ガス供給方法による側部ヒータへの供給電力の変化を示すグラフである。
図9B】前記原料ガス供給方法による底部ヒータへの供給電力の変化を示すグラフである。
図9C】前記原料ガス供給方法による上部ヒータへの供給電力の変化を示すグラフである。
図10】前記原料ガス供給方法による成膜レートの変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1に示す基板処理システム1は、ウエハWに対してバリアメタルとしてのTiN(窒化チタン)膜及びRu(ルテニウム)膜を成膜する成膜処理を行うように構成されている。基板処理システム1は、当該成膜の前処理である酸化膜除去工程と、TiN膜及びRu膜の成膜工程とを行う複数の処理モジュール101、102、103、104を備えたマルチチャンバーシステムとして構成されている。酸化膜除去工程を行う2種類の処理モジュール101、102のうち、COR処理モジュール101では、金属下地(例えば後述するSi層)の表面に形成された酸化膜を変質させて反応生成物にするためのCOR(Chemical Oxide Removal)工程を行う。そしてPHT処理モジュール102では、当該反応生成物を昇華させるためのPHT(Post Heat Treatment)工程を行う。TiN成膜処理モジュール103ではTiN膜成膜工程を行い、Ru成膜処理モジュール104ではRu膜成膜工程を行う。
【0010】
なお、TiN膜などのバリアメタルを形成せずに、金属下地に対して直接、Ru膜を成膜する場合は、COR工程、PHT工程を実施する代わりに、Ar(アルゴン)ガスプラズマやHガスプラズマにより酸化膜の除去を行ってもよい。この場合には、基板処理システム1には、COR処理モジュール101、PHT処理モジュール102に代えて、酸化膜除去用のプラズマ処理モジュールが設けられる。
【0011】
図1の説明に戻ると、各処理モジュール101~104の他に基板処理システム1は、ローダーモジュール61、ロードロックモジュール62、第1、第2真空搬送モジュール63、64及び接続モジュール65を備えている。
【0012】
図1に示すように、ローダーモジュール61、ロードロックモジュール62、第1真空搬送モジュール63、接続モジュール65、第2真空搬送モジュール64は、この順に直線状に前後方向に並んで設けられている。以下の基板処理システム1に関する説明では、ローダーモジュール61が位置する側を前方側、第2真空搬送モジュール64が位置する側を後方側とする。
【0013】
ローダーモジュール61は、内部が大気圧である筐体と、筐体内に設けられるウエハWの搬送機構61aと、ロードポート68と、を備えている。ロードポート68は本例では4つ、上記の筐体の前方側に左右に並んで設けられている。各ロードポート68にはFOUP(Front Opening Unified Pod)と呼ばれる、ウエハWを格納する搬送容器Cが載置される。上記の搬送機構61aは例えば左右に移動可能な多関節アームによって構成されており、各ロードポート68上の搬送容器Cと、各ロードロックモジュール62との間でウエハWを搬送可能である。
【0014】
ロードロックモジュール62については、本例では3つ、前方側から見て左右に並んで設けられている。各ロードロックモジュール62はそれぞれ筐体を備えており、当該筐体は、その前方側、後方側それぞれ設けられた不図示のゲートバルブを介してローダーモジュール61、第1真空搬送モジュール63に接続されている。そして、筐体の前方側及び後方側のゲートバルブが閉じた状態で、大気圧と真空圧力との間で当該筐体内の圧力を変更自在となっている。また、上記の筐体内には当該ウエハWが載置されるステージが設けられており、当該ステージは、当該ロードロックモジュール62に各々アクセスする上記の搬送機構61a及び後述の真空搬送機構69に対して、ウエハWを受け渡し可能に構成されている。
【0015】
第1、第2真空搬送モジュール63、64は、同様に構成されており、夫々筐体63a、64aと、筐体63a、64a内に設けられた真空搬送機構69と、を備えている。筐体63a、64aには排気管の一端が接続され、当該排気管を介して接続された排気機構によって筐体63a、64a内は、真空雰囲気に保たれる。排気機構は、例えばターボ分子ポンプである。
【0016】
接続モジュール65は、本例では2つ左右に並んで設けられている。それぞれの接続モジュール65は、筐体を備え、当該筐体は各真空搬送モジュール63、64の筐体63a、64aに接続されている。上記の排気機構による排気によって、接続モジュール65の筐体内も筐体63a、64a内と同じ圧力の真空雰囲気とされる。そして、接続モジュール65の筐体内にはウエハWが載置されると共に、後述の真空搬送機構69との間で当該ウエハWを受け渡し可能に構成されたステージが設けられている。
【0017】
手前側から見て、第1真空搬送モジュール63の筐体63aの手前側における左右両側には、COR処理モジュール101及びPHT処理モジュール102がそれぞれゲートバルブG1を介して接続されている。COR処理モジュール101は左側に配置され、PHT処理モジュール102は右側に配置されている。このようにCOR処理モジュール101、PHT処理モジュール102は、第1真空搬送モジュール63の周りにそれぞれ1基ずつ設けられている。
【0018】
手前側から見て、第1真空搬送モジュール63の筐体63aの奥側における左右両側には、TiN成膜処理モジュール103がそれぞれゲートバルブG1を介して接続されている。このようにTiN成膜処理モジュール103は、第1真空搬送モジュール63の周りに2基設けられている。これら処理モジュール101~103と、ロードロックモジュール62との間におけるウエハWを受け渡しは、例えば前後左右に移動可能な多関節アームによって構成された真空搬送機構69によって行われる。真空搬送機構69は、これら処理モジュール101~103と接続モジュール65との間や、これら処理モジュール101~103間におけるウエハWの受け渡しについても同様に行う。
【0019】
手前側から見て第2真空搬送モジュール64の筐体64aの左右両側には、前後に並んで配置された2つのRu成膜処理モジュール104がそれぞれゲートバルブG1を介して接続されている。Ru成膜処理モジュール104と接続モジュール65との間におけるウエハWを受け渡しは、例えば第2真空搬送モジュール64の真空搬送機構69によって行われる。このようにRu成膜処理モジュール104は、第2真空搬送モジュール64の周りに4基設けられている。
【0020】
以上のような処理モジュール101~104を代表して図2に示したRu成膜処理モジュール104のように、各処理モジュール101~104は、内部が真空雰囲気となるように排気される処理容器41と、処理容器41内に設けられてウエハWを載置するように設けられた基板載置台42と、をそれぞれ備え、各処理工程は処理容器41内で行われる。
【0021】
基板処理システム1はコンピュータである制御部200を備えており、この制御部200は、プログラムを備えている。プログラムには、既述したウエハWの処理工程及びウエハWの搬送工程を実施するための命令(ステップ)が組み込まれている。このプログラムは、記憶媒体、例えばコンパクトディスク、ハードディスク、DVD、不揮発性メモリ等に格納され、記憶媒体から読み出されて制御部200にインストールされる。
【0022】
制御部200は、当該プログラムにより基板処理システム1の各部に制御信号を出力し、各部の動作を制御する。具体的には処理モジュール101~104の動作、ゲートバルブG1などの開閉、搬送機構61aや真空搬送機構69の動作、排気機構の動作、ロードロックモジュール62内の圧力の切替えなどの動作が制御される。上記の処理モジュール101~104の動作の制御には、具体的に例えば後述するヒータ等への電力供給によるウエハWの温度制御、各ガスの処理容器41内への給断の制御などである。
【0023】
ここで、基板処理システム1におけるウエハWの搬送経路について説明する。ウエハWは先ず、搬送容器C→ローダーモジュール61→ロードロックモジュール62→第1真空搬送モジュール63→COR処理モジュール101の順で搬送される。そして、COR処理モジュール101でCOR工程が行われたウエハWは、COR処理モジュール101→第1真空搬送モジュール63→PHT処理モジュール102の順で搬送される。
【0024】
そして、PHT処理モジュール102でPHT工程が行われたウエハWは、PHT処理モジュール102→第1真空搬送モジュール63→TiN成膜処理モジュール103の順で搬送される。TiN成膜処理モジュール103でTiN膜成膜工程が行われたウエハWは、TiN成膜処理モジュール103→第1真空搬送モジュール63→接続モジュール65→第2真空搬送モジュール64→Ru成膜処理モジュール104の順で搬送される。Ru成膜処理モジュール104でRu膜成膜工程が行われたウエハWは、Ru成膜処理モジュール104→第2真空搬送モジュール64→接続モジュール65→第1真空搬送モジュール63→ロードロックモジュール62→ローダーモジュール61の順で搬送されて、搬送容器Cに戻される。
【0025】
個別の図示は省略するが、先ずCOR処理モジュール101、PHT処理モジュール102、及びTiN成膜処理モジュール103について簡単に触れておく。これら処理モジュール101~103は、処理容器と、処理容器内に配置された基板載置台と、基板載置台に設けられた基板用ヒータと、各種ガス供給機構と、をそれぞれ備えている。
【0026】
COR処理モジュール101の基板用ヒータは、例えば基板載置部内に形成された管路に温調用流体を循環供給することによって、載置台に配置されるウエハWを60℃以上の加熱温度に加熱するように構成される。またCOR処理モジュール101は、ガス供給機構として、酸化膜を変質させるためのHF(フッ化水素)ガス、NH(アンモニア)ガス、及び不活性ガスの混合ガスを供給するように構成された混合ガス供給機構を備えている。混合ガス供給機構は、処理容器に設けられたシャワーヘッドに各種ガスを供給するように構成されている。
【0027】
PHT処理モジュール102の基板用ヒータは、例えば抵抗熱を利用するものであって、COR処理におけるウエハWの温度よりも高い温度に加熱するように構成される。またPHT処理モジュール102のガス供給機構である不活性ガス供給部は、例えばシャワーヘッドを介さずに、処理容器に直接、不活性ガスであるN(窒素)ガスを供給するように構成されている。不活性ガスの供給によって、処理容器内で昇華した反応生成物を速やかにパージでき、かつ処理容器内の圧力の調整を行うことができる。
【0028】
TiN成膜処理モジュール103は、例えばサーマル式の原子層堆積法(ALD、Atomic Layer Deposition)によってTiN成膜を行う。TiN成膜処理モジュール103における基板用ヒータは、例えばウエハWを700℃~1000℃に加熱する。そしてガス供給機構は、TiN膜の原料を含む原料ガスと、原料ガスと反応する反応ガスとを、例えばパージガスの供給を介して交互に処理容器に供給するように構成されている。例えば、原料ガスはTiCl(四塩化チタン)ガスであり、反応ガスはNH(アンモニア)ガスである。
【0029】
以下、図2を用いてRu成膜処理モジュール104の構成を説明する。図2は、Ru成膜処理モジュール104を示す縦断側面図である。Ru成膜処理モジュール104は、ウエハWの表面にRu(CO)12ガス(以後、DCRガスということがある)を含有する原料ガスを連続的に供給し、熱CVD法によりRu膜を成膜する。既述の処理容器41は、上面及び下面が開口する略円筒状の容器である。処理容器41内にはウエハWを略水平に保持するための基板載置台42が設けられている。そして処理容器41には、不図示のNガス供給部が接続されて処理容器41内にNガスを適宜供給するように構成されている。
【0030】
また処理容器41の下面側の開口には、底蓋部41aが設けられ、底蓋部41aには、排気口を介して真空排気路43が接続されている。真空排気路43の下流側には、処理容器41内の気体の真空排気を実行するように構成される、例えば真空ポンプよりなる真空排気部44が設けられる。真空排気路43の処理容器41と真空排気部44との間には、圧力調節弁として例えば不図示のAPCバルブが介設されている。APCバルブは、処理容器41に接続された圧力測定部P2にて処理容器41内の圧力を計測した結果に基づいて、開閉動作が制御される。
【0031】
処理容器41の側面には、第2真空搬送モジュール64との間でウエハWの搬入出を行うための搬入出口が形成され、この搬入出口はゲートバルブG1により開閉自在に構成されている。既述の基板載置台42は、例えば、窒化アルミニウムや石英により構成され、内部には、ウエハWを加熱するための抵抗発熱体から成る基板用ヒータが埋設されている。当該基板用ヒータは、不図示の電源部から電力が供給されることにより発熱し、基板載置台42上に載置されたウエハWを例えば100℃~250℃の範囲内の温度に加熱する。
【0032】
そして基板載置台42の下面中央には、下方に向けて伸びる支持部45が接続されている。支持部45は、底蓋部41aを貫通して配置されている。基板載置台42には、上面に出没自在に基板載置台42を貫通するように設けられた不図示の受け渡しピンが例えば三本形成されている。このように基板載置台42に設けられた受け渡しピンは、真空搬送機構69との間でウエハWの受け渡しを行い、ウエハWを基板載置台42に載置する。
【0033】
処理容器41の上面側の開口には、例えば耐熱性のある絶縁部材を介してシャワーヘッド50が気密に取り付けられている。シャワーヘッド50は、基板載置台42に配置されたウエハWと対向する位置に配置されている。そしてシャワーヘッド50は、例えば円筒状の筐体51と、筐体51の内部に設けられて原料ガスを拡散させるための拡散室52と、を備えている。筐体51の上面部には、後述のガス供給機構58が接続されて原料ガスが供給されるガス供給孔53が形成されている。そして筐体51の下面部には、供給された原料ガスをウエハWに向けて放出するための多数の吐出孔54が形成されている。
【0034】
拡散室52には、当該拡散室52を上下方向に3つの空間に区画するように互いに間隔を開けて拡散板55、56が設けられている。拡散板55、56は、原料ガスの流路を構成する複数の貫通孔55a、56aがそれぞれ形成されている。拡散板56の各貫通孔56aは、筐体51の下面部に形成された吐出孔54に対向しないように位置をずらして配置されている。また、拡散板55の各貫通孔55aについても、拡散板56の貫通孔56aに対向しないように位置をずらして配置されている。各拡散板55、56に対して上述のように貫通孔55a、56aを配置することによって、原料ガスが貫通孔55a、56a及び吐出孔54を一直線に吹き抜けることを避け、シャワーヘッド50を構成する筐体51内に原料ガスを十分に分散させつつ、各吐出孔54から原料ガスを均一に放出させることができる。
【0035】
ガス供給機構58は、ガス供給路59と、当該ガス供給路59の上流側に設けられて原料ガスを供給するための原料ガス供給源10と、を備えている。ガス供給路59の下流端部は、シャワーヘッド50の上面に設けられたガス供給孔53に接続されている。ガス供給路59における原料ガス供給源10の下流側には、バルブV1、V2が設けられている。バルブV1、V2のうち、下流側に配置されたバルブV1は、例えばシャットバルブであり、処理容器41に対する原料ガスの給断動作を実行する。
【0036】
一方、バルブV2は、原料ガス供給源10内の原料ガスを外部へ払いだす動作を実行するためのものである。ガス供給路59におけるバルブV1とバルブV2との間には、当該箇所を流れる原料ガスの圧力を計測する圧力測定部P1が接続されている。さらにガス供給路59におけるバルブV1とバルブV2との間には、バルブV6が設けられた排気路60が接続されている。排気路60は、下流側端部が真空排気部44に接続され、処理容器41を介さずに、真空排気部44へ向けて直接、原料ガスを排出することができるように構成されている。またガス供給路59及び排気路60には、不図示の加熱部が設けられ、加熱部は、バルブV1、V2、V6を含むガス供給路59及び排気路60全体を加熱する。これにより、原料ガスが再固化し、バルブV1、V2、V6を含むガス供給路59及び排気路60に付着することを抑制できる。
【0037】
ここで既述の制御部200は、Ru成膜処理モジュール104におけるRu膜成膜工程を制御する機能も備えている。制御部200は、記憶部201と、各成膜工程を実行するためのプログラムとを備えており、Ru成膜処理モジュール104内の各構成を動作させる。具体的に制御部200は、後述する原料ガス供給工程を実行するためのプログラムを備え、ガス供給機構58の各構成を動作させる。
【0038】
以下、本開示に係るRu成膜処理モジュール104の原料ガス供給源10について図3を用いて詳述する。図3は、原料ガス供給源10を示す縦断側面図であり、後述する温度センサTCa、TCb、TCcや電力供給部21a、21b、21cの図示を省略している。原料ガス供給源10は、原料ガスに含まれるDCRガスを生成するための固体原料Sが収納された原料容器11と、固体原料Sを加熱するために原料容器11に設けられた複数のヒータ12と、キャリアガス供給部13と、を備えている。固体原料Sは、例えば粒状に形成された固体のRu(CO)12である。
【0039】
キャリアガス供給部13は、キャリアガスとして例えばCO(一酸化炭素)ガスを原料容器11に供給するように構成されている。COガスは、固体のRu(CO)12の分解を抑制し、再固化し易いDCRガスによるRu膜の成膜速度の加速を抑制する作用があるため、DCRガスに対して予め設定された流量比で供給されることが好ましい。キャリアガス供給部13は、COガスの供給源13aと、当該供給源13aと原料容器11との間を接続する導入路13bと、導入路13bに設けられた流量制御部13cと、を備える。
【0040】
流量制御部13cは、COガスの流量メータを備え、COガスの供給量を測定する測定部に相当する。供給路13bは、例えば流量制御部13cの下流側において2つに分岐し、一方の下流側端部は、バルブV3を介して原料容器11に接続され、他方の下流側端部は、バルブV4を介してガス供給路59におけるバルブV2の下流側に接続されている。この構成により、キャリアガス供給部13は、原料容器11にキャリアガスを供給する流路と、原料容器11をバイパスしてガス供給路59に直接、キャリアガスを供給する流路とを切り替えられるように構成されている。
【0041】
原料容器11は、略円筒形状を有し、上端部において開口する本体部14と、本体部14の上端部に対して着脱可能かつ気密に取り付けられる上蓋15と、を備えている。上蓋15は、原料容器11の上面を構成し、略円盤形状を有する。そして上蓋15の中央側には、原料容器11内で生成された原料ガスをガス供給路59に吐出するための原料ガス吐出口15aが形成されている。また上蓋15の側端側には、COガスを原料容器11に供給するためのキャリアガス供給口15bが形成されている。キャリアガス供給口15bの流路断面積は、原料ガス吐出口15aの流路断面積より小さい。
【0042】
本体部14は、原料容器11の底面を構成する底部14aと、原料容器11の側面を構成する側部14bとを含んでいる。底部14aは円盤形状を有し、側部14bの下端部よりも外側に拡径している。側部14bの上端部は、外側に拡径してフランジを構成し、同じ径を有する上蓋15を着脱可能に取り付けるように構成されている。原料容器11は、上蓋15を取り外すと、本体部14の内部空間を上方に開放することが可能な構成となっている。
【0043】
原料容器11の内部空間には、粒状の固体原料S保持するための原料載置部16が配置されている。原料載置部16は、上蓋15の下面から下方に向けて突出するように形成されている。尚、原料ガス供給源10に対する上下方向は、鉛直方向と同一であり、上下方向における寸法を高さや深さということがある。原料載置部16の高さは、本体部14の内部空間の深さと概ね同一である。また原料載置部16は、上蓋15を本体部14に取り付けることで、原料容器11内に収容される。この場合において、原料載置部16の下面は、本体部14の底部14aに接する様に配置される。そして原料載置部16は、上蓋15から本体部14を外して上方に引き上げることで、原料載置部16は本体部14の内部空間から取り外され、適宜固体原料を補充できる。
【0044】
原料載置部16は、原料容器11の内部空間より直径が小さい略円筒形状に構成されている。そして原料載置部16は、例えば上下方向に沿って互いに間隔を開けて配置された複数段、例えば6段のトレイ部17によって構成されている。トレイ部17は、本実施の形態の原料保持トレイに相当する。これらトレイ部17は、相互に概ね同一な円環形状に構成され、それぞれ上下方向に沿って伸びた円筒状の中央流路18の周りに配置されている。中央流路18は、上蓋15の原料ガス吐出口15aの直下域に配置され、原料ガス吐出口15aと概ね同一の流路断面積を有する。
【0045】
具体的にトレイ部17は、水平方向に配置された環状の底部17aと、底部17aの内側に設けられた内側突部17bと、上蓋15の下面から下方側へ向けて延びるように形成され、底部17aの外周を保持する円筒状の外側壁部17cとによって構成されている。内側突部17bは、底部17aから上方に向けて突出するように設けられている。このような底部17a、内側突部17b及び外側壁部17cによって、各トレイ部17は上方に向けて開口した環状の凹みを構成している。当該環状の凹み内には、トレイ部17からの落下を防ぎつつ安定した状態で多数の粒状の固体原料Sを保持できる。また上下方向に間隔を開けて配置された各トレイ部17の上方側の空間は固体原料Sを昇華させてDCRガスを生成すると共に、COガスと混合して原料ガスを得る原料ガス発生空間SPを構成している。各原料ガス発生空間SPは、相互に概ね同一の容積を有する。
【0046】
また各トレイ部17の内周側に形成された内側突部17bは、上段側のトレイ部17や上蓋15との間に環状の間隙17dを形成している。各原料ガス発生空間SPは、これらの間隙17dを介して中央流路18と繋がっている。一方、円筒状に形成された最上段の外側壁部17cの上端部は、上蓋15の下面に接続されている。即ち各トレイ部17は、外側壁部17cを介して上蓋15から吊り下げられるように設けられている。また最上段のトレイ部17を囲む外側壁部17cは、それよりも下方側の領域の外側壁部17cよりも内側に配置されている。そして外側壁部17cの各原料ガス発生空間SPに対応する領域には、内側から外側に向けて貫通する複数のキャリアガス流入孔17eが形成されている。複数のキャリアガス流入孔17eは、環状の外側壁部17cにおいて同一の角度間隔、例えば30℃の間隔で均一に形成されている。
【0047】
既述のように原料載置部16は、その下面である底部17aが本体部14の底部14aに接する様に配置される。また、円筒状の外側壁部17cの外側面と、本体部14の内側面との間には、筒状のキャリアガス流路19が形成される。キャリアガス流路19の上端部は、キャリアガス供給口15bに連通している。キャリアガス流路19の径方向の幅は、上端部である最上段のトレイ部17の外側壁部17cにおいて、それよりも下方側の領域より大きく構成されている。
【0048】
既述のように原料容器11には複数のヒータ12が設けられ、個別に述べると、底部14aに取り付けられる底部ヒータ12aと、側部14bに取り付けられる側部ヒータ12bと、上蓋15に取り付けられる上部ヒータ12cと、を備えている。各ヒータ12a~12cは、それぞれ後述する電力供給部21a~21cによってから電力が供給される。底部ヒータ12aは、例えば1本の線状の抵抗発熱体により構成され、底部14aの径方向に沿って埋設されている。
【0049】
側部ヒータ12b、上部ヒータ12cは、例えばシート状の抵抗発熱体より構成されている。側部ヒータ12bは、側部14bの外側面の全域を覆うように配置され、上部ヒータ12cは、上蓋15の上面の全域を覆うように配置されている。上蓋15の中央側には、ガス供給路59の上流側端部を構成する継ぎ手が気密に取り付けられ、ガス供給路59が原料ガス吐出口15aを介して中央流路18に連結されている。また上蓋15の側端側には、導入路13bの下流側端部を構成する継ぎ手が気密に取り付けられ、導入路13bがキャリアガス供給口15bを介してキャリアガス流路19に連結されている。上部ヒータ12cには、これら原料ガス吐出口15a、キャリアガス供給口15bに対応する開口が形成されている。
【0050】
これらのヒータ12(12a~12c)は、原料容器11を加熱して原料容器11内に収容された固体原料Sを予め設定された温度に加熱することで昇華させてDCRガスを生成する。このように、固体原料Sの温度を間接的に制御するにあたって、各ヒータ12a~12cには電力を供給する電力供給部21a~21cが接続され、原料容器11の各ヒータ12a~12cに対応させて、図7に示すような温度センサTCa、TCb、TCcが設けられている。温度センサTCa、TCb、TCcは、それぞれ底部14a、側部14b、上蓋15の温度を測定するように取り付けられている。
【0051】
電力供給部21a、21b、21cは、それぞれのヒータ12a、12b、12cに対して、調節された電力を供給するように構成されている。電力供給部21a~21c及び温度センサTCa~TCcは、既述の制御部200に接続されている。制御部200は、底部14a、側部14b、上蓋15の温度を夫々の設定温度に調節するように電力供給部21a~21cを動作させる。また、当該制御部200は、原料ガス供給工程における各種制御を行う。また制御部200は、予め設定されたCOガスの供給流量を流すように流量制御部13cを動作させる。
【0052】
以上に説明した構成を備える原料ガス供給源10は、本実施の形態の「原料ガスを供給する装置」に相当し、原料ガス供給源10を備えたRu成膜処理モジュール104は、本実施の形態の「基板に成膜を行う装置」に相当する。
【0053】
ここで、本開示の原料ガス供給方法を説明する前に、当該方法と対比される、一般的なフィードバック制御を採用した比較形態の原料ガス供給方法について説明する。
【0054】
図4図6を用いて比較形態の原料ガス供給工程について説明する。図4は、比較形態における原料ガス供給源を示すブロック図であり、供給路13bの分岐した下流側端部の図示を一部省略している。図5は、比較形態の原料ガス供給工程における固体原料の残量に対するRu膜成膜レート(単位時間当たりに成膜されるRu膜厚)の変化を示すグラフであり、図6は、同工程における固体原料の残量に対する各ヒータ12a、12b、12cに供給される電力Wa、Wb、Wcの変化を示すグラフである。
【0055】
比較形態の原料ガス供給方法において、制御部200は、温度センサTCa、TCb、TCcの各測定値に基づき、底部14a、側部14b、上蓋15の温度がそれぞれの設定温度に近づくように電力供給部21a~21cから各ヒータ12へ供給する電力を増減するフィードバック制御を行う。当該原料ガス供給方法では、原料容器11(底部14a、側部14b、上蓋15)を介して固体原料Sを加熱することで固体原料Sを昇華させ、DCRガスを発生させる。底部14a、側部14b、上蓋15の各温度設定値は、予備実験などにより、所定のCOガス供給流量の条件下で、Ru膜の成膜レートが一定となるように設定する。
【0056】
しかしながら、上述の条件でフィードバック制御を行いながら原料ガス供給を行うと、図5に示すように、成膜工程が進み、原料容器11内の固体原料Sの残量が減るに従い、Ru膜の成膜レートが低下していく場合があることが分かった。そこで、Ru膜の成膜レートが低下していく場合に、各ヒータ12a~12cに供給される電力を確認したところ、温度設定値を変更していないにも関わらず、Ru膜の成膜レートの低下に合わせて供給電力も低下していく傾向があることが分かった。
【0057】
上述のような現象が発生する理由を推定すると、固体原料Sが昇華し、残量が減るに従って原料容器11と固体原料Sとの合計の熱容量は減少する。このため、原料容器11を構成する底部14a、側部14b、上蓋15の温度を既述の温度設定値に維持するために必要な熱量も減少し、各ヒータ12a~12cに供給される電力も低下していく。ところが、各ヒータ12a~12cに供給される電力が低下すると、底部14a、側部14b、上蓋15の温度が温度設定値に維持されていても、トレイ部17に保持されている固体原料Sの表面では温度センサTCa、TCb、TCcの検出値よりも温度の低下が大きくなっているのではないかと考えられる。この結果、固体原料Sからの昇華量の低下によりDCRガス濃度が下がり、成膜レートの低下を引き起こしているのではないかと考えられる。これらの現象を鑑みて本開示の原料ガス供給方法においては、原料ガスの残量の減少と共に低下する各ヒータ12への供給電力を上方補正することで、成膜レートを調整する。
【0058】
以下、本開示における原料ガス供給工程における動作について図7図10を用いて詳述する。図7は、本開示の原料ガス供給源を示すブロック図である。図8は、本開示の原料ガス供給工程における作用図である。図8においてはCOガスの流れを実線で示し、COガスと固体原料Sの昇華によるDCRガスとの混合ガスである原料ガスの流れを破線で示す。図7及び図8は、供給路13bの分岐した下流側端部の図示を一部省略している。図9A図9Cは、同工程における固体原料の残量に対する各ヒータの電力の変化を示すグラフであり、図10は、同工程における固体原料の残量に対するRu膜成膜レートの変化を示すグラフである。
【0059】
当該原料ガス供給工程を行うにあたって、予備試験によって原料ガス供給工程における各ヒータ12への電力供給レシピを作成する。具体的には、固体原料Sの残量の変化に伴って、各残量において成膜レートR1を維持するために必要なヒータ12への供給電力レシピを作成する。例えば、ウエハWに原料ガスの供給を開始するRu膜成膜開始時において、原料容器11には初めに例えば初期残量M1=2500[g]の固体原料Sが収容される。原料容器11内の圧力、及び単位時間当たりのCOガスの供給量は、一定値であってもよく、固体原料Sの残量の変化に応じて変化させてもよい。圧力は、例えば40[mTorr]~150[mTorr]程度とする場合を例示できる。一方、原料容器11に対しては固定した設定温度を設けず、供給電力に応じた成り行きとする。従って、温度センサTCa、TCb、TCcは、底部14a、側部14b、上蓋15の温度のモニタリング用となる。なお、目標の成膜レートR1を、設定成膜レートR1ということもある。
【0060】
図7に示す本開示の原料ガス供給工程においては、例えば処理容器41へのウエハW搬入後に、ヒータ12への電力の供給を開始すると共に、バルブV1、V4を閉状態にし、バルブV2、V3、V6を開状態にする。キャリアガス供給部13の流量制御部13cは、予め設定された設定流量で、所定の温度(例えば80℃)に加熱されたCOガスの供給を開始する。次いで真空排気部44は、真空排気動作を行い、ガス供給路59を介して、例えば原料容器11内にキャリアガスを流す。そして各ヒータ12a~12cには、電力供給部21a~21cによって調節された電力が供給されて、原料容器11及び固体原料Sが加熱される。
【0061】
そして原料容器11の温度が一定となる頃合いに、バルブV6を閉状態とする一方、バルブV1を開状態にして原料ガス供給源10から処理容器41に原料ガスの供給を開始する。キャリアガス供給部13は、Ru膜の成膜処理中、つまり、バルブV1が開状態とされてから閉状態とされるまでの間、一定流量で原料容器11内に供給し続ける。またRu膜の成膜中においては、原料容器11、ガス供給路59、排気路60及び処理容器41の温度は、少なくとも原料ガスが再固化しないように、上記所定の温度で一定になるように既述の加熱部によって常時加熱される。
【0062】
以下、原料ガスの生成過程について説明する。図8において実線で示すように、先ず導入路13bから供給されたCOガスは、キャリアガス供給口15bを介してキャリアガス流路19に流入する。筒形状のキャリアガス流路19は、上端部よりも下方側の領域において径方向の幅が狭くなっている。このため、当該上端部に流入したCOガスは、そのまま下方に直進することが抑制されて周方向に流れ、上端部の全周から下方に流れる。そしてキャリアガス流路19の全周において下方に流れるCOガスは、原料載置部16の外側面に開口する複数のキャリアガス流入孔17eに流入する。
【0063】
各キャリアガス流入孔17eに流入したCOガスは、上下に配列された各トレイ部17の原料ガス発生空間SPに30℃間隔の全方位から供給される。そしてCOガスは、原料ガス発生空間SPにおいて径方向における中心方向及び周方向に向けて拡散され、環状に配置された固体原料Sの上を流通する。これにより、原料容器11内で加熱された固体原料Sが昇華して得られたDCRガスとCOガスとが原料ガス発生空間SPにおいて混合され、濃度が均一化された原料ガスが得られる。「DCRガス」は特許請求の範囲における「原料ガス中の原料」に相当する。
【0064】
生成された原料ガスは、環状の各原料ガス発生空間SPにおいて各間隙17dに向けて流れ、各間隙17dから中央流路18に流入する。中央流路18に流入したDCRガスは、中央流路18を上方に向けて流れ、原料ガス吐出口15aを通じてガス供給路59をシャワーヘッド50に向けて流れる。そしてシャワーヘッド50に流入したCOガスは、ウエハWの表面に対して面均一になるように処理容器41に放出される。そしてウエハWには、表面に対して均一に、概ね設定成膜レートR1でRu膜が成膜される。この観点で、Ru成膜処理モジュール104の処理容器41は、本実施の形態における原料ガスの消費区域に相当する。そして本開示においては、固体原料が減少してもこの設定成膜レートR1を維持してRu膜の成膜を行うため、原料ガスを一定量で供給するように固体原料の残量の減少と共に低下する各ヒータ12への供給電力を制御する。
【0065】
ここで既述の予備試験においては、初めに初期残量M1の固体原料Sが収容された状態で、設定成膜レートR1を実現可能な電力を各ヒータ12に供給する。図5図6を用いて説明したように、初期残量M1の状態において、設定成膜レートR1を実現可能な各ヒータ12a、12b、12cへの供給電力Wa1、Wb1、Wc1は、予め把握されている。そして、このまま順次、予備試験におけるウエハWへの成膜を継続していくと、成膜レートRが変化する。例えば、各ヒータ12への供給電力Wa1、Wb1、Wc1を変化させずに成膜を継続すると、成膜レートRは、設定成膜レートR1よりも大きくなる。
【0066】
そこで、各ヒータ12への供給電力を順次、低下させながら成膜を行い、現時点において設定成膜レートR1が得られる各ヒータ12への供給電力Wa2、Wb2、Wc2を特定する。供給電力Wa2、Wb2、Wc2を特定したら、その時点における固体原料Sの残量M2を測定する。しかる後、上述の動作を繰り返すと、図9A図9Cに示すように、設定成膜レートR1を実現するにあたって、原料容器11内の固体原料Sの残量Mと、各ヒータ12への供給電力Wa’、Wb’、Wc’との対応関係が得られる。
【0067】
ここで図9A図9C中には、図6を用いて説明した、比較形態における供給電力Wa、Wb、Wcの変化を破線で示してある。これらの図における破線(比較形態)と実線(本開示)の供給電力を比較すると、原料容器11内の固体原料Sの減少に応じて、各ヒータ12への供給電力を増加させるオフセット補正が行われていると言える。
【0068】
一方、実際の成膜処理においては、固体原料Sの残量Mを経時的に測定することができない場合がある。しかしながら、定常的に設定成膜レートR1が維持されているのであれば、固体原料Sの消費速度、及び原料ガス中のDCRガスの濃度は一定である。そうすると、キャリアガス供給部13の流量制御部13cから原料容器11に供給されるキャリアガスの積算供給量X[L(標準状態)]を把握しておけば、固体原料Sの消費量Nが分かる。そして、固体原料Sの初期残量M1から消費量Nを差し引けば、その時点における残量Mを知ることができる。従って、図9A図9Cの固体原料Sの残量Mと、各ヒータ12への供給電力Wa’、Wb’、Wc’との対応関係は、キャリアガスの積算供給量Xとの対応関係に書き直すことができる。
【0069】
そこで、制御部200の記憶部201内には、図9A図9Cのキャリアガスの積算供給量Xと各ヒータ12への供給電力Wa’、Wb’、Wc’との対応関係をテーブルとして記憶しておく。そして、ウエハWの成膜に伴って増加するキャリアガスの積算供給量Xに基づき、その積算供給量Xに対応する供給電力Wa’、Wb’、Wc’を各ヒータ12へと供給する構成となっている。
【0070】
以上に説明した原料ガス供給工程を含む一連の処理を行う基板処理システム1による動作について、図1図2を参照して説明する。基板処理システム1での一連の処理を開始するにあたり、ウエハWの表面には、事前に行われたエッチング工程において配線層を形成するための複数の凹部が形成されている。当該凹部は、例えばSi(シリコン)層に到達するように設けられており、ウエハWを搬送する際に大気雰囲気と接触することによってその底部にはSi層が自然酸化されたシリコン酸化膜が形成されている。
【0071】
このようなウエハWを、図1に示すロードロックモジュール62から第1真空搬送モジュール63内の真空搬送機構69が受け取ると、COR処理モジュール101に向けてウエハWを搬送する。
【0072】
COR処理モジュール101では、予め真空排気部によって処理容器内が真空雰囲気になるように調圧されている。COR処理モジュール101のゲートバルブG1を開き、真空搬送機構69によってウエハWを搬入口から処理容器内に進入させる。そして基板載置台にウエハWを受け渡し、真空搬送機構69を処理容器から退出させてゲートバルブG1を閉じる。COR工程におけるレシピの設定に合わせて処理容器内の圧力調節及び温度調整を行う。次いで、COR工程用のHFガスとNHガスとの混合ガスを処理容器41に供給する。これにより、シリコン酸化膜を変質させ反応生成物を形成することができる。
【0073】
COR工程が終了すると、反応生成物が形成されたウエハWを、搬入時と逆の手順でCOR処理モジュール101から搬出する。そしてPHT処理モジュール102にウエハWを搬送する。しかる後、COR処理モジュール101への搬入時と同様の手順でPHT処理モジュール102にウエハWを搬入し、PHT工程を行う。PHT工程におけるレシピに合わせて処理容器内の圧力調節及び温度調節を行い、不活性ガスを供給し、ウエハWを熱処理する。熱処理されたウエハWの反応生成物は昇華して、シリコン酸化膜が除去され、凹部の底部において酸化されていないSi層が露出した状態となる。
【0074】
PHT工程の終了後、シリコン酸化膜が除去されたウエハWを、PHT処理モジュール102から搬出し、TiN成膜処理モジュール103に同様に搬入し、TiN膜成膜工程を行う。TiN膜成膜工程におけるレシピに合わせて処理容器内の圧力調節及び温度調節を行い、原料ガスと反応ガスとを交互に供給し、凹部内にTiN膜を形成する。PHT処理モジュール102からTiN成膜処理モジュール103にウエハWが搬送される際に、真空雰囲気の搬送路である第1真空搬送モジュール63を介して搬送されるため、ウエハWは大気雰囲気に晒されない。したがって、凹部内に露出したSi層の表面が大気雰囲気によって再び酸化することを抑制できる。
【0075】
TiN膜成膜工程の終了後、凹部内にTiN膜が形成されたウエハWを、TiN成膜処理モジュール103から搬出し、Ru成膜処理モジュール104に同様に搬入する。TiN成膜工程モジュール103からRu成膜処理モジュール104にウエハWが搬送される際に、真空雰囲気の搬送路である第1真空搬送モジュール63、第2の真空搬送モジュール64及び接続モジュール65を介して搬送するため、TiN膜が形成されたウエハWを大気雰囲気に晒さずに搬送できる。
【0076】
このようなRu成膜処理モジュール104に搬入されたウエハWに対してRu膜成膜工程を行う。ウエハWの搬入前にRu成膜処理モジュール104においては、バルブV1が閉状態とされている状態において、不図示のNガス供給部から処理容器41内にNガスが直接供給され、圧力測定部P2での測定結果に基づいて真空排気路43に設けられたAPCバルブの開度が調整される。これにより、処理容器41内が所定の圧力(例えば7~10[Torr])の真空雰囲気にされる。
【0077】
この状態で、処理容器41のウエハWの搬出入口に設けられたゲートバルブG1が開かれ、第2真空搬送モジュール64から上記搬出入口を介してウエハWを保持した真空搬送機構69が、処理容器41内に挿入される。そして、ウエハWが、前述の待機位置に位置する基板載置台42の上方に搬送される。次いで上昇した支持ピン(図示せず)の上にウエハWが受け渡され、その後、真空搬送機構69は処理容器41から抜き出され、上記ゲートバルブG1が閉じられる。それと共に、上記支持ピンの下降が行われ、基板載置台42上にウエハWが載置される。
【0078】
次いで、基板載置台42に設けられたヒータによってウエハWが所定の温度(例えば120~250℃)まで加熱される。ウエハWの温度が上記所定の温度に到達すると、真空排気路43のAPCバルブの開度が調整され、処理容器41内が所定の圧力(例えば5[mTorr]~100[mTorr])へ減圧される。処理容器41内の減圧が完了すると、ガス供給機構58によって処理容器41内に原料ガス供給が開始されるように、原料ガス供給源10による原料ガス供給工程が行われる。
【0079】
一方、制御部200は、規定量である初期残量M1の固体原料Sを収容した原料容器11の使用を開始してから固体原料Sの残量が予め設定された下限値に達するまでの期間に亘って、順次、ウエハWの処理を行う。その結果、原料容器11に供給されたキャリアガスの積算供給量Xを把握している(積算供給量を求める工程)。そして、図9A図9Cに示す対応関係に基づき、各ヒータ12に対しては、現時点におけるキャリアガスの積算供給量Xに対応した供給電力Wa’、Wb’、Wc’が供給された状態となっている。この結果、原料容器11内で加熱された固体原料Sが昇華し(固体原料を昇華させる工程)、昇華して得られた原料であるDCRガスとキャリアガスであるCOガスとが混合された原料ガスとして原料容器11から流出する(原料ガスとして供給する工程)。これと共に、ガス供給路59側のバルブV1が開状態とされ、バルブV2の開度が調整されると、シャワーヘッド50を介して処理容器41内に原料ガスが供給され、ウエハW上にCVD(Chemical Vapor Deposition)によるRu膜の成膜が開始される。
【0080】
既述のように各ヒータ12への供給電力Wa’、Wb’、Wc’は、原料容器11内の固体原料Sの残量が変化しても、設定成膜レートR1を維持することができる値となるように調整される。このため、Ru成膜処理モジュール104にて順次、成膜処理が行われる各ウエハWに対しては、DCRガスの濃度が均一な原料ガスが供給され、設定成膜レートR1の条件下にて、面間で安定してRu膜を成膜することができる。各ウエハWの成膜処理中においても、キャリアガスの積算供給量Xの増大に従い、随時、各ヒータ12への供給電力Wa’、Wb’、Wc’を調整してもよい。また、次のウエハWの成膜を開始するまでに、それまでのキャリアガスの積算供給量Xに基づき各ヒータ12への供給電力Wa’、Wb’、Wc’を設定し、ウエハWの処理期間中は当該供給電力を固定する、間歇的な供給電力調整を行ってもよい。
【0081】
Ru膜形成が完了すると、バルブV1が閉状態にされ、上記と逆の手順で、ウエハWが処理容器41から搬出され、ロードロックモジュール62に搬入され、ローダーモジュール61を介して搬送容器Cに戻される。
【0082】
以上のように本開示によれば、所望する成膜レートが得られるように原料ガスを供給することができる。即ち、原料容器11内の固体原料Sの残量Mが変化しても、設定成膜レートR1が維持されるように、各ヒータ12へ供給する電力を予備実験などによって把握しておく。そして、原料容器11内の固体原料Sの残量Mを推定する指標となるキャリアガスの積算供給量Xに対して、上記の供給電力を対応付ける。そして、ウエハWへの成膜処理に際しては、この対応関係に基づいて各ヒータ12a~12cに電力を供給する。これにより、固体原料Sの残量Mが変化することに伴う熱容量の変化の影響を低減し、設定成膜レートR1での安定した成膜を実現できる。また、本開示の対応関係を用いた供給電力の調整によれば、固体原料Sの残量がゼロ程度まで設定成膜レートR1(具体的には、設定成膜レートR1を含む許容範囲内)に制御しながら、原料ガスを供給し続けることができる。このため、固体原料Sを補充、交換するための固体原料Sの交換周期を長くすることができる。
【0083】
この動作において本開示では、キャリアガスの供給を一定流量で連続的に行っているが、必須の要件では無い。例えばALD(Atomic Layer Deposition)のように成膜処理中に断続的にキャリアガスを供給したり、成膜処理中にキャリアガスの流量を変化させて供給してもよい。この場合でも、キャリアガス供給部13の流量制御部13cや例えば導入路13bに新たに設けた流量計測器などによって適宜積算供給量を把握できる。但し、キャリアガスの流量を変化させる場合には、原料ガス中のDCRガスの濃度が変化してしまうことを避けるため、図9A図9Cに示す対応関係は、後述するように、キャリアガス流量に応じたものに変更する必要がある。
【0084】
そして当該動作においては、本開示のように当該電力を供給する際に参照する積算供給量は、原料ガス供給工程の際に計測されることは必須では無い。例えば、本開示のようにキャリアガスの供給量が単位時間あたり一定など予め設定される場合は、原料ガス供給工程の際に逐次積算供給量を取得しなくても事前に予測可能である。このため、キャリアガスの積算供給量を計測せずに例えば予測された積算供給量に基づいて各ヒータ12へ供給する電力を調節してもよい。
【0085】
また、多数のウエハWについて繰り返し同じ成膜工程を行う場合は、事前予測やウエハW毎にキャリアガスの積算供給量を計測して把握しなくても同様に電力調整が可能である。具体的には、ウエハW毎に積算供給量を把握しなくても、その前に成膜されたウエハWと同様に電力を供給してもよい。また、本開示のように積算供給量の計測及び供給電力の調整を一定間隔で定期的に行うことは必須の要件ではなく、間歇的に計測してもよく、給断を繰り返すようなキャリアガス供給パターンの場合においては前回のキャリアガス供給の終了時点に計測してもよい。そして本開示のように当該計測及び供給電力の調整は、一対一で対応させて実行されることは必須ではなく、計測または供給電力の調節が多く実行されてもよい。
【0086】
そして、このキャリアガスの積算供給流量と供給電力との対応関係は、例えばキャリアガスの単位時間当たりの供給流量が変われば当該対応関係が変化する。このため、キャリアガスの供給流量を変化させる場合には、各々の供給流量に対応した対応関係を取得しておく。そして、これら複数の異なる流量で取得した複数の対応関係(テーブル)を制御部200の記憶部201に記憶させておくと良い。これにより、制御部200は、キャリアガスの流量を変更した場合に、ヒータ12への供給電力の調整に使用する対応関係を切り替え、適切な供給電力を実行することができる。
【0087】
また、当該対応関係は、例えば固体原料Sの初期残量M1や固体原料Sの形態、キャリアガスの種類、設定成膜レートR1、レシピ、及び他の設定値等に関する多様な条件について取得してもよい。例えば設定成膜レートR1を一例とすると、異なる設定成膜レートRx(x=1、2、3、…)の対応関係を取得すれば、成膜工程において適宜成膜レートを調整することもできる。また、異なる対応関係を複数取得できれば、例えば数値処理によってこれらの対応関係を内挿や外挿することで適宜補間して利用することもできる。
【0088】
また上述の実施形態における供給電力の調整は、固体原料Sの残量を示す指標値としてキャリアガスの積算供給量を用い、当該積算供給量とヒータ12への供給電力との対応関係に基づいて行っているが、指標値の例はこれに限定されない。例えば固体原料Sを収容した原料容器11の重量を、固体原料Sの残量を示す指標値としてもよい。この場合は、予め取得しておいた、固体原料Sを収容した原料容器11の重量と、供給電力との対応関係に基づいて供給電力が調整される。
【0089】
以上のような供給電力の調整によって設定成膜レートR1に調整される実際の成膜レートは、当然に一定値に制御されることに限られず、例えば成膜処理後の膜厚を管理値内に納められる程度に、許容範囲内で制御されていればよい。また、供給電力の調整は、対応関係による供給電力Wa’~Wc’に対して例えば±10%の範囲で調整することが好ましい。そして供給電力の調整は、図9A図9Cに示すように電力の値を連続的に変化させることに限られず、一定値で階段状に変化させてもよい。また、供給電力の調整は、電力供給の給断を適宜行うことで、電力の値を変化させることと同様に熱量を変化させて原料容器11に供給するように調整してもよい。
【0090】
以上のような対応関係を用いた供給電力の調整は、本開示のようにヒータ12a~12cの全てについて行うことが好ましいが、例えば上部ヒータ12cなど一部のヒータ12について行わなくてもよい。ヒータ12は、本開示のように底部14a、側部14b、上蓋15の各部分に夫々設けていなくてもよく、例えば原料容器11の下部側に1つのヒータ12を設けていてもよい。そして各ヒータ12に対応して温度センサTCa~TCcを設けていなくてもよく、例えばいずれか1つのヒータ12に対応して温度センサを設けて原料容器11の温度をモニタリングしてもよい。また、当該供給電力の調整においては、原料容器11内は排気路60を介して真空排気部44によって減圧されているが、当該減圧は必須ではなく、例えば正圧であってもよい。
【0091】
原料ガスは、DCRガスとCOガスとの混合ガスに限らず、ウエハWに成膜する膜の原料を含むガスと、当該ガスに合わせて選択されたキャリアガスとの混合ガスを適宜選択できる。具体的には、固体原料の昇華によるガスとして、AlN(窒化アルミニウム)膜の原料を含むAlCl(塩化アルミニウム)ガスや、W(タングステン)膜の原料を含むWCl(塩化タングステン)等でもよく、この場合には反応ガスが処理容器41に供給される。そして、キャリアガスは、COガス以外にNガスなどの不活性ガスでもよい。
【0092】
なお、今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の特許請求の範囲及びその趣旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更及び組み合わせがなされてもよい。
【符号の説明】
【0093】
S 固体原料
W ウエハ
Wa’ 電力供給量
Wb’ 電力供給量
Wc’ 電力供給量
X 積算供給量
11 原料容器
12 ヒータ
41 処理容器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図9C
図10