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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024167801
(43)【公開日】2024-12-04
(54)【発明の名称】成膜装置及び成膜方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/24 20060101AFI20241127BHJP
   C23C 14/04 20060101ALI20241127BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20241127BHJP
   H01L 21/68 20060101ALI20241127BHJP
【FI】
C23C14/24 G
C23C14/04 A
H01L21/68 N
H01L21/68 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023084139
(22)【出願日】2023-05-22
(71)【出願人】
【識別番号】591065413
【氏名又は名称】キヤノントッキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】市原 正浩
(72)【発明者】
【氏名】長岡 健
【テーマコード(参考)】
4K029
5F131
【Fターム(参考)】
4K029CA01
4K029DA03
4K029HA02
4K029HA03
4K029HA04
5F131AA03
5F131AA10
5F131AA21
5F131AA23
5F131AA32
5F131AA33
5F131AA34
5F131BA03
5F131BA04
5F131BB04
5F131BB05
5F131CA24
5F131DA02
5F131DA32
5F131DA33
5F131DA36
5F131DA42
5F131DB52
5F131DB76
5F131EA03
5F131EA22
5F131EA23
5F131EA24
5F131EB11
5F131EB31
5F131EB33
5F131EB36
5F131EB37
5F131EB63
5F131EB82
(57)【要約】
【課題】マスクの材質によらず、基板とマスクの密着性を向上可能な技術を提供する。
【解決手段】成膜装置は、基板にパターンを成膜するための開口部が形成されたパターン部と、パターン部よりも厚いフレーム部と、を有するマスクと、フレーム部を押圧する押圧部材と、押圧部材を付勢する付勢ユニットと、を備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板にパターンを成膜するための開口部が形成されたパターン部と、前記パターン部よりも厚いフレーム部と、を有するマスクと、
前記フレーム部を押圧する押圧部材と、
前記押圧部材を付勢する付勢手段と、
を備えることを特徴とする成膜装置。
【請求項2】
前記フレーム部には、前記基板に接触する第1の面、及び、前記第1の面の反対側の第2の面のうち、少なくとも一方の面に凹部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の成膜装置。
【請求項3】
前記押圧部材は前記付勢手段の付勢により前記フレーム部を前記基板に向かって押圧することを特徴とする請求項1に記載の成膜装置。
【請求項4】
前記フレーム部は、前記マスクの平面視において、前記基板からチップが切り出される切り出し線に合わせた位置に複数形成されていることを特徴とする請求項1に記載の成膜装置。
【請求項5】
前記フレーム部は、前記マスクの平面視において、前記パターン部の配置方向に沿って複数形成されている特徴とする請求項1に記載の成膜装置。
【請求項6】
前記フレーム部は、前記マスクの平面視において、前記パターン部の第1の配置方向に沿って複数形成され、前記第1の配置方向に対して交差する第2の配置方向に沿って複数形成されていることを特徴とする請求項5に記載の成膜装置。
【請求項7】
前記フレーム部は、前記マスクの周縁部に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の成膜装置。
【請求項8】
前記付勢手段は、
一対の支持部材と、
前記支持部材の下端部に形成され、前記押圧部材を載置する爪部と、
前記支持部材を昇降させるアクチュエータと、を備え、
前記アクチュエータにより前記支持部材を上昇させることにより、前記爪部は前記押圧部材に付勢力を付与することを特徴とする請求項1に記載の成膜装置。
【請求項9】
基板にパターンを成膜するための開口部が形成されたパターン部と、前記パターン部よりも厚いフレーム部と、を有するマスクと、前記フレーム部を押圧する押圧部材と、前記押圧部材を付勢する付勢手段と、を備える成膜装置の成膜方法であって、
前記基板に前記マスクを接触させた状態で、前記付勢手段の付勢力により前記フレーム部を押圧して、前記基板と前記パターン部とを密着させる押圧工程と、
前記基板と前記パターン部とを密着させた状態で、前記マスクを介して前記基板に対して蒸着物質を放出する蒸着工程と、
を有することを特徴とする成膜方法。
【請求項10】
前記押圧工程では、
前記フレーム部を押圧することにより、前記フレーム部の凹部を変位させ、
前記凹部の変位により、前記基板に接触する前記フレーム部の第1の面側の側面に圧縮力を発生させ、前記第1の面の反対側の第2の面側の側面に引張り力を発生させ、
前記パターン部に対して、前記圧縮力に応じた引張り力を発生させることを特徴とする請求項9に記載の成膜方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に成膜する技術に関し、成膜装置及び成膜方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基板とマスクとのアライメントを行い、その後、マスクを介して基板に対して蒸着物質を蒸着し、成膜する技術が知られている。成膜は、アライメントが行われた基板とマスクとを互いに密着した状態で行われる。基板とマスクとを密着させるために、磁力を利用した技術が知られている。例えば、基板をマスクとマグネットプレートとの間に配置してマスクとマグネットプレートとの間の磁力により基板とマスクとが密着する(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019―099910号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
鉄製などのマスクのようにマスクが磁性体であれば、磁力を利用して基板とマスクとを密着させることができるが、シリコンなど、マスクが非磁性体の場合、磁力を利用することは困難である。
【0005】
本発明は、マスクの材質によらず、基板とマスクの密着性を向上可能な技術を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様の成膜装置は、基板にパターンを成膜するための開口部が形成されたパターン部と、前記パターン部よりも厚いフレーム部と、を有するマスクと、
前記フレーム部を押圧する押圧部材と、
前記押圧部材を付勢する付勢手段と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、マスクの材質によらず、基板とマスクの密着性を向上可能な技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】電子デバイスの製造ラインの一部の模式図。
図2】本発明の一実施形態に係る成膜装置の概略図。
図3】基板及びマスクの斜視図。
図4】(A)は図3のA-A線断面図、(B)は(A)のB部におけるフレーム部102を拡大した図、(C)はフレーム部の面が基板に接触した状態を例示する図、(D)は荷重がフレーム部に作用した状態を例示する図。
図5】(A)及び(B)は図2の成膜装置の動作説明図。
図6】(A)及び(B)は図2の成膜装置の動作説明図。
図7】(A)及び(B)は図2の成膜装置の動作説明図。
図8】(A)及び(B)は図2の成膜装置の動作説明図。
図9】(A)及び(B)は図2の成膜装置の動作説明図。
図10】フレーム部に形成されている凹部の変形例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0010】
<第一実施形態>
<電子デバイスの製造ライン>
図1は、本発明の成膜装置が適用可能な電子デバイスの製造ライン100の構成の一部を示す模式図である。各図において、矢印X及びYは互いに直交する水平方向を示し、矢印Zは上下方向(重力方向)を示す。図1の製造ラインは、例えば、有機EL表示装置の発光素子の製造に用いられる。製造ライン100は、平面視で八角形の形状を有する搬送室120を備える。搬送室120には搬送路110から基板101が搬入され、また、成膜済みの基板101は搬送室120から搬送路111へ搬出される。
【0011】
搬送室120の周囲には、基板101に対する成膜処理が行われる複数の成膜装置1が配置されている。各成膜装置1には搬送室130が隣接して配置されている。平面視で八角形の形状を有する搬送室130の周囲には、マスク102が収納される格納室140が配置されている。
【0012】
搬送室120には、基板101を搬送する搬送ロボット121(搬送ユニット)が配置されている。本実施形態の搬送ロボット121は、水平多関節型のロボットであり、そのハンド部に基板101を水平姿勢で搭載して搬送する。搬送ロボット121は、搬送路110から搬入される基板101を成膜装置1へ搬送する搬入動作と、成膜装置1で成膜済みの基板101を成膜室1から搬送路111へ搬送する搬出動作とを行う。
【0013】
各搬送室130には、マスク102を搬送する搬送ロボット131(ユニット)が配置されている。本実施形態の搬送ロボット131は、水平多関節型のロボットであり、そのハンド部にマスク102を水平姿勢で搭載して搬送する。搬送ロボット131は、格納室140から成膜装置1へマスク102を搬送する動作、成膜装置1から格納室140へマスク102を搬送する動作を行う。
【0014】
<成膜装置>
図2は本発明の一実施形態に係る成膜装置1の概略図である。成膜装置1は、基板101に蒸着物質を成膜する装置であり、マスク102を用いて所定のパターンの蒸着物質の薄膜を形成する。成膜装置1で成膜が行われる基板101の材質は、ガラス、樹脂、金属等の材料を適宜選択可能である。特に本実施形態では、基板101は、例えば、TFT(Thin Film Transistor)が形成されたガラス基板や半導体素子が形成されたシリコンウエハである。
【0015】
蒸着物質としては、有機材料、無機材料(金属、金属酸化物など)などの物質である。成膜装置1は、例えば表示装置(フラットパネルディスプレイなど)や薄膜太陽電池、有機光電変換素子(有機薄膜撮像素子)等の電子デバイスや、光学部材等を製造する製造装置に適用可能であり、特に、有機ELパネルを製造する製造装置に適用可能である。以下の説明においては成膜装置1が真空蒸着によって基板101に成膜を行う例について説明するが、本発明はこれに限定はされず、スパッタやCVD等の各種成膜方法を適用可能である。
【0016】
成膜装置1は、箱型の真空チャンバ2を有する。真空チャンバ2の内部空間は、真空雰囲気か、窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気に維持されている。本実施形態では、真空チャンバ2は不図示の真空ポンプに接続されている。真空チャンバ2の内部空間には、蒸着ユニット10が配置されている。蒸着ユニット10は、蒸着物資を上方に放出する蒸着源を備える。蒸着ユニット10の上方には蒸着物質の放出の規制と規制解除を行うシャッタ10aが配置されている。シャッタ10aは不図示の開閉機構により開閉される。図2はシャッタ10aが閉状態の場合を示しており、蒸着ユニット10による蒸着物質の放出が規制される。蒸着ユニット10の上方には、また、防着板2aが配置されている。防着板2aは、真空チャンバ2の内部空間の上部に配置される以下の構成に、蒸着物質が不必要に付着することを防止する。
【0017】
真空チャンバ2の内部空間には、基板101を水平姿勢で支持する基板支持プレート3が設けられている。本実施形態の場合、基板支持プレート3は静電チャックであり、その下面に静電気力により基板101を吸着し、保持する。基板支持プレート3上には冷却プレート4が固定されている。冷却プレート4は例えば水冷機構等を備えており、基板支持プレート3を介して成膜時に基板101を冷却する。
【0018】
マスク102は、基板101にパターンを成膜するための開口部が形成されたパターン部102bと、パターン部102bよりも厚いフレーム部102aと、を有する。押圧部材105は、フレーム部102aを押圧する部材である。成膜時に、押圧部材105がフレーム部102aをZ方向に押圧することにより、フレーム部102aに変形が生じる。フレーム部102aに変形を生じさせる力はパターン部102bにX方向の引張り力として作用する。パターン部102bにX方向の引張り力が作用することにより、パターン部102bは撓みにくくなり、マスク102と基板101との密着性を向上させることができる。フレーム部102aに作用する荷重と変形、及びパターン部102bに作用する荷重に関する説明は、図4(A)~図4(D)を参照して後に詳細に説明する。
【0019】
成膜装置1は、成膜時にマスク102のフレーム部102aを押圧する押圧部材105を支持し、押圧部材105を付勢する付勢ユニット6を備える。付勢ユニット6は、複数の支持部材6aと、複数の支持部材6aの下端部に形成され、押圧部材105を載置する爪部F1と、複数の支持部材6aを昇降させるアクチュエータ6bと、を備える。付勢ユニット6は、アクチュエータ6bにより、複数の支持部材6aを上昇させることにより、爪部F1は押圧部材105に付勢力を付与する。付勢ユニット6は、本実施形態の場合、搬送ロボット121と基板支持プレート3との間の基板101の移載動作も行うことが可能である。
【0020】
付勢ユニット6は、X方向に離間した一対の支持部材6aを備える。また、複数の支持部材6aとして、Y方向に離間した一対の支持部材6aを備えてもよい。各支持部材6aは対応するアクチュエータ6bによりZ方向に昇降される。本実施形態ではアクチュエータ6bを支持部材6a毎に設けたが、一対の支持部材6aを一つのアクチュエータ6bで昇降してもよい。アクチュエータ6bは例えば電動シリンダや、電動ボールねじ機構である。支持部材6aは、その下端部に爪部F1が形成されている。
【0021】
押圧部材105は、フレーム部102aに沿った方向(Y方向:紙面に対して垂直な方向)に延設された部材である。押圧部材105は、爪部F1上に載置される。基板101の搬入及び搬出時において、基板101の周縁部が押圧部材105に載置される。また、マスク102の搬入及び搬出時において、マスク102は、その周縁部であるフレーム部102aが押圧部材105に載置され、成膜時において、マスク102は押圧部材105により押圧される。
【0022】
一対の支持部材6aは同期的に昇降され、アクチュエータ6bにより支持部材6aを上昇させることにより、爪部F1は押圧部材105にZ方向の付勢力を付与する。押圧部材105は、付与された付勢力に基づいて、フレーム部102aを押圧する。本実施形態において、付勢ユニット6は、一対の支持部材6a、アクチュエータ6b及び爪部F1を有する。
【0023】
成膜装置1は、基板101とマスク102とのアライメントを行うアライメントユニット8(アライメント装置)を備える。アライメントユニット8は、駆動機構80と、複数の計測ユニットSRとを備える。駆動機構80は、距離調整ユニット81と、支持軸82と、架台83と、位置調整ユニット84と、を備える。
【0024】
距離調整ユニット81は、支持軸82をZ方向に昇降する機構であり、例えば、電動シリンダや、電動ボールねじ機構を備える。支持軸82の下端部には冷却プレート4が固定されている。基板支持プレート3は、支持部4aを介してZ方向に変位可能に冷却プレート4に吊り下げられている。支持軸82の昇降によって、冷却プレート4を介して基板支持プレート3が昇降される。基板支持プレート3を昇降することで、基板101とマスク102との距離を調整し、基板支持プレート3に支持された基板101とマスク102とを基板101の厚み方向(Z方向)に接近及び離隔(離間)させる。換言すれば、距離調整ユニット81は、基板101とマスク102とを重ね合わせる方向に接近させたり、その逆方向に離隔させたりする。なお、距離調整ユニット81によって調整する「距離」はいわゆる垂直距離(又は鉛直距離)であり、距離調整ユニット81は、基板101の垂直位置を調整するユニットであるとも言える。距離調整ユニット81は、架台83を介して位置調整ユニット84に搭載されている。
【0025】
位置調整ユニット84は、基板支持プレート3をX-Y平面上で変位することにより、マスク102に対する基板101の相対位置を調整する。すなわち、位置調整ユニット84は、マスク102と基板101の水平位置を調整するユニットであるとも言える。位置調整ユニット84は、基板支持プレート3をX方向、Y方向及びZ方向の軸周りの回転方向(θ方向)に変位することができる。本実施形態では、マスク102の位置を固定し、基板101を変位してこれらの相対位置を調整するが、マスク102を変位させて調整してもよく、或いは、基板101とマスク102の双方を変位させてもよい。
【0026】
位置調整ユニット84は、固定プレート20aと、可動プレート20bとを備える。固定プレート84aと、可動プレート84bは矩形の枠状のプレートであり、固定プレート84aは真空チャンバ2の上壁部20上に固定されている。固定プレート20aと、可動プレート20bとの間には、固定プレート20aに対して可動プレート20bをX方向、Y方向、及び、Z方向の軸周りの回転方向に変位させるアクチュエータが設けられている。
【0027】
可動プレート84b上には、フレーム状の架台83が搭載されており、架台83には距離調整ユニット81が支持されている。可動プレート84bが変位すると、架台83及び距離調整ユニット81が一体的に変位する。これにより基板101をX方向、Y方向、及び、Z方向の軸周りの回転方向に変位させることができる。上壁部20には、支持軸82、支持部材6a及び7aが通過する開口部が形成されている。これらの開口部は不図示のシール部材(ベローズ等)によってシールされ、真空チャンバ2内の気密性が維持される。
【0028】
計測ユニットSRは、基板101とマスク102の位置ずれを計測する。本実施形態の計測ユニットSRは画像を撮像する撮像装置(カメラ)である。計測ユニットSRは、上壁部20に配置され、真空チャンバ2内の画像を撮像可能である。基板101とマスク102にはそれぞれアライメントマーク(不図示)が形成されている。計測ユニットSRは、基板101とマスク102の各アライメントマークを撮影する。各アライメントマークの位置により基板101とマスク102との位置ずれ量を演算し、位置調整ユニット84によって位置ずれ量を解消するように基板101とマスク102との相対位置を調整する。
【0029】
制御装置9は、成膜装置1の全体を制御する。制御装置9は、処理部90、記憶部91、入出力インタフェース(I/O)92及び通信部93を備える。処理部90は、CPUに代表されるプロセッサであり、記憶部91に記憶されたプログラムを実行して成膜装置1を制御する。記憶部91は、ROM、RAM、HDD等の記憶デバイスであり、処理部90が実行するプログラムの他、各種の制御情報を記憶する。I/O92は、処理部90と外部デバイスとの間の信号を送受信するインタフェースである。通信部93は通信回線を介して上位装置又は他の制御装置等と通信を行う通信デバイスである。
【0030】
<基板及びマスクの構成例>
図3は基板101、及びマスク102の例を示す。基板101は円形のシリコンウエハであり、成膜等の後、複数のチップ101aが基板101から切り出し線101bに沿って切り出される。マスク102は基板101と同様に円形の部材であり、各チップ101aに対応したパターン部102bと、パターン部102bの周囲のフレーム部102aとを含む。パターン部102bには、基板101に蒸着される蒸着物質が通過する複数の開口部(貫通孔)102cが形成されており、開口部102cの配置によって基板101上の成膜パターンが規定される。
【0031】
図4(A)は、図3のA-A線断面図であり、マスク102は、基板101にパターンを成膜するための開口部102cが形成されたパターン部102bと、パターン部102bよりも厚いフレーム部102aと、を有する。図4(A)に示すように、フレーム部102aはパターン部102bに比べて相対的に厚肉の厚肉部であり、パターン部102bは相対的に薄肉の薄肉部であり、フレーム部102aはパターン部102bよりも剛性が高い。
【0032】
マスク102は例えばシリコン(Si)等の非磁性材料からなる。なお、マスク102の材料は、非磁性材料に限られず、磁性材料であってもよい。マスク102としてシリコンウエハを用いることで、半導体製造技術の応用により、より微細で精密な開口部102cを形成することができる。
【0033】
図4(B)は、図4(A)のB部におけるフレーム部102aを拡大した図である。フレーム部102aの面102eは、基板101に接触する面(以下、第1の面ともいう)であり、面102e(第1の面)の反対側に面102f(以下、第2の面ともいう)が形成されている。
【0034】
図4(B)に示すように、フレーム部102aの面102f(第2の面)には、凹部102dが形成されている。フレーム部102aのうち、凹部102dが形成されていない部分の厚さをTH1とし、凹部102dが形成されている部分の厚さをTH2とする。図4(B)に示すように、凹部102dが形成されていない部分は、凹部102dが形成されている部分に比べて相対的に厚肉であり(TH1>TH2)、剛性が高い。
【0035】
図4(C)は、フレーム部102aの面102e(第1の面)が基板101に接触した状態を例示する図である。図4(C)に示す状態では、面102e(第1の面)は基板101に密着した状態であるが、パターン部102bは基板101に密着していない状態である。
【0036】
図4(D)は、荷重P1がフレーム部102aに作用した状態を例示する図である。荷重P1は、マスク102の面102f(第2の面)に作用して、面102e(第1の面)を基板101に押圧(圧縮)する方向に作用する荷重であり、付勢ユニット6により付与された付勢力である。
【0037】
荷重P1が作用して、フレーム部102aを押圧することにより、フレーム部102aの凹部102dには、付勢力(荷重P1)が作用する方向に対して逆方向の変位δが発生する。凹部102dの変位により、基板101に接触するフレーム部102aの面102e側(第1の面側)の側面には圧縮力F2が発生し、第1の面の反対側の面102f側(第2の面側)の側面には引張り力を発生する。パターン部102bには、圧縮力F2に応じた引張り力F4が発生する。
【0038】
すなわち、フレーム部102aを荷重P1で押圧して、剛性の低い凹部102dに変位δを発生させることにより、パターン部102bに対して、圧縮力F2に応じた引張り力F4を作用させることができる。パターン部102bに対して、引張り力F4を作用させることにより、パターン部102bは撓みにくくなり、マスク102と基板101との密着性を向上させることができる。
【0039】
図4(A)~図4(D)に示した例は、図3のA-A線断面の構造を例示したものであるが、図3のC-C線断面においても同様である。
【0040】
フレーム部102aは、マスク102の周縁部に形成されている。マスク102の平面視(XY平面)において、フレーム部102aは、基板101からチップ101aが切り出される切り出し線101bに合わせた位置に複数形成されている。また、フレーム部102aは、マスク102の平面視(XY平面)において、パターン部102bの配置(配置方向)に沿って複数形成されている。フレーム部102aは、マスク102の平面視(XY平面)において、パターン部102bの第1の配置方向(例えば、X方向)に沿って複数形成され、第1の配置方向に対して交差する第2の配置方向(例えば、Y方向)に沿って複数形成されている。
【0041】
マスク102の面内において、フレーム部102aは、例えば、第1の配置方向及び第2の方向に対して交差する格子状に形成され、フレーム部102aは、Z方向に対して、パターン部102bに比べて高い剛性を有する。第1の配置方向(X方向)に沿って形成されている複数のフレーム部102aが荷重P1により押圧され、第2の配置方向(Y方向)に沿って形成されている複数のフレーム部102aが荷重P1により押圧されることにより、マスク102に形成されている複数のパターン部102bに、図4(D)で説明したような引張り力F4を全体的に発生させることができる。これにより、複数のパターン部102bは撓みにくくなり、マスク102と基板101との密着性を向上させることができる。
【0042】
凹部102dが形成される面は、面102f(第2の面)に限られず、フレーム部102aには、基板101に接触する面102e(第1の面)、及び面102e(第1の面)の反対側の面102f(第2の面)のうち、少なくともいずれか一方の面に凹部102dが形成されていればよい。また、凹部102dが形成される位置や形状や数は、図4(A)~図4(D)に示した例に限られず、種々の変形が可能である。例えば、凹部102dが形成される面、凹部102dの曲率、凹部の幅や深さ等は種々の変形が可能である。
【0043】
図10(A)~図10(D)は、凹部102が形成される位置や形状や数の変形例を示す図である。図10(A)~図10(D)に示すように、フレーム部102aには、基板101に接触する面102e(第1の面)、及び、面102e(第1の面)の反対側の面102f(第2の面)のうち、少なくとも一方の面に凹部が形成されている。
【0044】
図10(A)は、フレーム部102aにおいて、面102e(第1の面)に凹部102hが形成され、面102f(第2の面)に凹部102iが形成されている例である。に凹部102iの深さ(DP2)は、凹部102hの深さ(DP1)に比べて、深く形成されている(DP2>DP1)。なお、深さの大小関係は図10(A)の例に限られず、大小関係は逆であってもよい。
【0045】
フレーム部102aのうち、凹部102h、102iが形成されていない部分は、凹部102h、102iが形成されている部分に比べて相対的に厚肉であり、剛性が高い。凹部102h、102iが形成されている部分は相対的に剛性が低く、付勢ユニット6(により付与された付勢力により、図4(D)で示したような変位δがフレーム部102aに生じる。
【0046】
図4(B)や図10(A)では、所定の曲率で形成された凹部102d、102h、102iの例を示したが、これらの例に限られず、例えば、図10(B)に示すように、直線状に凹部102jを形成してもよい。この場合も図10(A)と同様に、フレーム部102aのうち、凹部102jが形成されていない部分は、凹部102jが形成されている部分に比べて相対的に厚肉であり、剛性が高い。凹部102jが形成されている部分は相対的に剛性が低く、付勢ユニット6により付与された付勢力により、図4(D)で示したような変位δがフレーム部102aに生じる。
【0047】
図10(C)は、面102e(第1の面)に直線状の凹部102kが一箇所形成され、面102f(第2の面)に直線状の凹部102mが複数(例えば、2箇所)形成された例を示す図である。また、図10(D)は、面102e(第1の面)に直線状の凹部102kが複数(例えば、2箇所)形成され、面102f(第2の面)に直線状の凹部102mが一箇所形成された例を示す図である。図10(C)、及び図10(D)に示すように、フレーム部102aに形成されている凹部の位置や形状や数によらず、凹部が形成されていない部分は、凹部が形成されている部分に比べて相対的に厚肉であり、剛性が高い。凹部102k、102m、102n、102pが形成されている部分は相対的に剛性が低く、付勢ユニット6により付与された付勢力により、図4(D)で示したような変位δがフレーム部102aに生じる。
【0048】
図4(D)や図10(A)~図10(D)に示したフレーム部102aにおいて、凹部の深さを深くするほど、剛性は相対的に低下するため、フレーム部102aにおける変位δを大きくすることができる。これにより、パターン部102bに対する引張り力F4を大きくすることができ、マスク102と基板101との密着性を向上させることができる。
【0049】
<制御例>
制御装置9の処理部90が実行する成膜装置1の制御例について説明する。図5(A)~図9(B)は成膜装置1の動作説明図であり、基板101の搬入から、成膜し、搬出するまでの例を示す。
【0050】
図5(A)は基板101を真空チャンバ2内に搬入した状態を示す。基板101は搬送ロボット121により基板支持プレート3の下方に搬送される。基板支持プレート3の下面の基板吸着面3aは水平である。次に付勢ユニット6によって搬送ロボット121から基板支持プレート3へ基板101を移載する。図5(B)はその動作を示している。支持部材6aを上昇することにより、基板101の周縁が押圧部材105に載置され、基板101は搬送ロボット121から上昇し、かつ、基板支持プレート3の基板吸着面3aに押し付けられる。基板支持プレート3の静電チャックを作動して基板101を吸着し、保持する。
【0051】
続いてマスク102を真空チャンバ2内に搬入する。図6(A)はマスク102を真空チャンバ2内に搬入した状態を示す。マスク102は搬送ロボット131によって格納室140から真空チャンバ2内に搬入される。マスク102は基板101の真下に位置する。次にマスク102を搬送ロボット131から付勢ユニット6に移載し、アライメント位置に位置させる。図6(B)はその動作を示している。支持部材6aを上昇することにより、マスク102の周縁が押圧部材105に載置され、マスク102は搬送ロボット131から上昇する。マスク102は支持部材6aに支持された状態となり、かつ、更に上昇することでアライメント位置に位置する。本実施形態ではマスク102を上昇してアライメント位置に位置させるが、基板101を降下して基板101をアライメント位置に位置させる構成でもよい。
【0052】
次にアライメント動作を行う。図7(A)に示すように計測ユニットSRにより、基板101のアライメントマークとマスク102のアライメントマークの相対位置が計測される。計測結果(基板101とマスク102の位置ずれ量)が許容範囲内であればアライメント動作を終了する。計測結果が許容範囲外であれば、計測結果に基づいて位置ずれ量を許容範囲内に収めるための制御量(基板101の変位量)が設定される。
【0053】
「位置ずれ量」とは、位置ずれの距離と方向(X、Y、θ)で定義される。設定された制御量に基づいて、図7(B)に示すように位置調整ユニット84が作動される。これにより、基板支持プレート3がX-Y平面上で変位され、マスク102に対する基板101の相対位置が調整される。
【0054】
計測結果が許容範囲内であるか否かの判定は、例えば、アライメントマーク間の距離をそれぞれ算出し、その距離の平均値や二乗和を、予め設定された閾値と比較することで行うことができる。
【0055】
相対位置の調整後、再度、計測ユニットSRにより、基板101のアライメントマークとマスク102のアライメントマークの相対位置が計測される。計測結果が許容範囲内であればアライメント動作を終了する。計測結果が許容範囲外であれば、マスク102に対する基板101の相対位置が再度調整される。以降、計測結果が許容範囲内となるまで、計測と相対位置調整が繰り返される。
【0056】
次に、成膜動作を行う。まず、基板101をマスク102と重ね合わせる。図8(A)はその動作を示している。基板支持プレート3を降下させると、基板101はマスク102上に載置され、基板101は基板101の被処理面の全体がマスク102と接触する。基板101とマスク102とが接触した状態で、アクチュエータ6bにより支持部材6aを上昇させることにより、爪部F1は押圧部材105にZ方向の付勢力を付与する。押圧部材105は、付与された付勢力に基づいて、フレーム部102aを押圧する。
【0057】
基板101にマスク102を接触させた状態で、付勢ユニット6の付勢力によりフレーム部102aを押圧して、基板101とパターン部102bとを密着させる。図4(D)で説明したように、フレーム部102aを付勢力(荷重P1)で押圧し、剛性の低い凹部102dに変位δを発生させることにより、パターン部102bに対して、圧縮力F2に応じた引張り力F4を作用させることができる。パターン部102bに対して、引張り力F4を作用させることにより、パターン部102bは撓みにくくなり、マスク102と基板101との密着性を向上させることができる。マスク102の材質は、非磁性体であってもよく、磁性体であってもよい本実施形態を適用することができる。本実施形態によれば、マスクの材質によらず、基板とマスクの密着性を向上することができる。
【0058】
以上により成膜の準備が整い、次に図8(B)に示すように、シャッタ10aを開状態とし、蒸着ユニット10から蒸着物質を放出する。基板101とパターン部102bとを密着させた状態で、マスク102を介して基板101に対して蒸着物質を放出する。蒸着物質はマスク102を介して基板101に蒸着される。
【0059】
こうした成膜が完了すると、マスク102及び基板101をそれぞれ搬出する動作を行う。図9(A)はマスク102を搬出する動作を示している。まず、冷却プレート4及び基板支持プレート3を上昇し、基板101とマスク102とが離間される。搬送ロボット131のハンド部をマスク102の下方に進入させた後、付勢ユニット6の支持部材6aを降下して、マスク102を支持部材6aから搬送ロボット131へ移載する。搬送ロボット131はマスク102を格納室140へ搬送する。
【0060】
続いて成膜済みの基板101を搬出する。付勢ユニット6の支持部材6aを上昇して、基板101を押圧部材105によって下側から支持する。基板101に対する基板支持プレート3の吸着を解除して基板101が支持部材6aに移載される。搬送ロボット121のハンド部を基板101の下方に進入させた後、図9(B)に示すように付勢ユニット6の支持部材6aを降下して、基板101を支持部材6aから搬送ロボット121へ移載する。搬送ロボット121は基板101を搬送路111へ搬送する。以上により基板101の搬入から、成膜し、搬出するまでの動作が完了する。
【0061】
<他の実施形態>
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【0062】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0063】
1:成膜装置、8:アライメントユニット、10:蒸着ユニット、101:基板、102:マスク、102a:フレーム部、102b:パターン部、105:押圧部材、6:付勢ユニット、6a:支持部材、6b:アクチュエータ、F1:爪部
図1
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