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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168042
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】加工装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/677 20060101AFI20241128BHJP
   B65G 49/07 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
H01L21/68 B
B65G49/07 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023084430
(22)【出願日】2023-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【弁理士】
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(74)【代理人】
【識別番号】100189773
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 英哲
(74)【代理人】
【識別番号】100184055
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 貴之
(74)【代理人】
【識別番号】100185959
【弁理士】
【氏名又は名称】今藤 敏和
(72)【発明者】
【氏名】中塚 敦
【テーマコード(参考)】
5F131
【Fターム(参考)】
5F131AA02
5F131AA03
5F131BA52
5F131CA07
5F131DA02
5F131DA22
5F131DA42
5F131DB22
(57)【要約】
【課題】ウェーハを適切に保持テーブルで吸引保持する。
【解決手段】保持テーブルと、該ウェーハを該保持テーブルに搬送する搬送ユニットと、を備えた加工装置であって、該搬送ユニットは、アームと、該アームに昇降可能に支持されたプレート部と、昇降可能に該プレート部に支持された外周可動部と、該プレート部の下面に配設された第1パッキンと、該外周可動部の下面に配設された第2パッキンと、を備え、該アームを下降させることにより、該ウェーハを該保持テーブルに押し付け、該ウェーハの上面に該第1パッキンを押し付け、該ウェーハの外側において該保持テーブルに該第2パッキンを押し付け、該第1パッキンと、該プレート部と、該外周可動部と、該第2パッキンと、で囲まれた環状空間を形成でき、該環状空間を吸引して減圧することにより、該プレート部に作用する大気圧で該プレート部を下降させ、該ウェーハを該保持テーブルで吸引保持できる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
保持面を有し、該保持面に載るウェーハを吸引保持する保持テーブルと、
該保持テーブルで吸引保持された該ウェーハを加工する加工ユニットと、
該ウェーハを該保持テーブルに搬送する搬送ユニットと、を備えた加工装置であって、
該搬送ユニットは、
該ウェーハの中央部分を上方から吸引保持する吸引パッドと、
該吸引パッドが下端に設けられたシャフトと、
該シャフトを先端部で昇降可能に支持するアームと、
該アームを昇降させる昇降ユニットと、
該アームに昇降可能に支持され、該シャフトが通された貫通孔を中央に有するプレート部と、
該プレート部を外側から囲み、昇降可能に該プレート部に支持された外周可動部と、
該プレート部の下面に環状に配設され、該ウェーハの上面に環状に接触できる第1パッキンと、
該外周可動部の下面に環状に配設され、該ウェーハを外周側から囲める第2パッキンと、を備え、
該昇降ユニットによって該アームを下降させることにより、該吸引パッドで保持された該ウェーハを該保持テーブルの該保持面に押し付け、該ウェーハの上面に該第1パッキンを押し付け、該ウェーハの外側において該保持テーブルの該保持面に該第2パッキンを押し付け、該保持面と、該第1パッキンと、該プレート部と、該外周可動部と、該第2パッキンと、で囲まれた環状空間を形成でき、
該保持面を通じて該保持テーブルで該環状空間を吸引して減圧することにより、該プレート部に作用する大気圧で該プレート部を下降させ、該第1パッキンにより該ウェーハを該保持面に押し付け、該保持面に押し付けられた該ウェーハを該保持テーブルで吸引保持できる加工装置。
【請求項2】
該外周可動部は、伸縮部材を介して該プレート部に接続されていることを特徴とした請求項1記載の加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェーハを加工する加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器に搭載されるデバイスチップは、例えば、半導体で構成されたウェーハを分割することで形成される。ウェーハの表面に互いに交差する複数の分割予定ラインを設定し、分割予定ラインにより区画される各領域にIC等のデバイスを形成し、ウェーハを分割予定ラインに沿って分割すると、個々のデバイスチップを作製できる。
【0003】
ウェーハの分割には、例えば、円環状の切削ブレードが装着された切削装置が使用される。切削装置は、切削ブレードでウェーハを分割予定ラインに沿って切削してウェーハを分割する。または、ウェーハの分割には、ウェーハにレーザビームを照射するレーザ加工装置が使用される。レーザ加工装置は、分割予定ラインに沿ってウェーハにレーザビームを照射してウェーハをレーザ加工する。
【0004】
近年、電子機器の小型化の傾向が著しく、電子機器に搭載されるデバイスチップに対する小型化及び薄型化への要求も高まっている。そこで、薄型のデバイスチップを製造するために、半導体ウェーハを分割する前に、研削装置により半導体ウェーハが研削され、所定の厚さに薄化される。
【0005】
切削装置、レーザ加工装置、研削装置等の加工装置は、ウェーハを吸引保持できる保持テーブル(チャックテーブル)と、保持テーブルの上方に配設された加工ユニットと、を備える。保持テーブルの主要な上面は保持面となっており、保持テーブルは保持面に負圧を作用できる。保持テーブルの保持面にウェーハを載せ、保持面からウェーハに負圧を作用させると、保持テーブルでウェーハを吸引保持できる。
【0006】
加工装置が研削装置である場合、加工ユニット(研削ユニット)は、鉛直方向に概略沿ったスピンドルと、スピンドルの上端に接続されたスピンドルモータと、スピンドルの下端に装着された研削ホイールと、を備える。研削ホイールは、保持テーブルの保持面に対面する下面に、円環状に配列された研削砥石を備える。研削ホイールを回転させながら研削砥石をウェーハの上面に接触させると、ウェーハが上面から研削される。
【0007】
ところで、ウェーハの表面に成膜された各種の層に起因して、または、ウェーハに実施された処理に起因して、ウェーハには大きな反りが生じることがある。反りの生じたウェーハを保持テーブルに載せてウェーハを保持テーブルで吸引保持しようとすると、保持面とウェーハの間に大きな隙間が生じ、この隙間から保持テーブルの負圧がリークする。そのため、ウェーハを保持テーブルで適切に吸引保持できず、加工装置でウェーハを加工できないとの問題が生じる。
【0008】
そこで、ウェーハを保持テーブルに搬送する搬送ユニットにより上方からウェーハを保持面に押し付けることで、反りの大きいウェーハの反りを低減してウェーハを吸引保持できる加工装置が開発された(特許文献1,2参照)。特に特許文献2に記載の技術では、ウェーハの外周付近に環状空間を形成しこの環状空間を減圧することにより、大気圧を利用してウェーハを搬送ユニットで上方から保持面に強力に押し付ける。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2015-98073号公報
【特許文献2】特開2020-185650号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
この環状空間は、搬送ユニットの下面に設けられた内外2つのパッキンと、搬送ユニットの下面と、保持テーブルの保持面と、で囲まれた領域に形成される。より詳細には、内側のパッキン(第1パッキン)はウェーハの上面に接し、外側のパッキン(第2パッキン)はウェーハの外で保持テーブルの保持面に接する。
【0011】
ここで、ウェーハが大きな厚みを有する場合、第1パッキンが比較的高い位置でウェーハに接触する。また、ウェーハが大きな厚みを有さなくても、ウェーハが極めて大きな反りを有する場合にも、第1パッキンが比較的高い位置でウェーハに接触する。これらの場合、第2パッキンの高さも比較的高くなり、結果として第2パッキンの下端が保持テーブルの保持面に接触できないことがある。第2パッキンと保持面の間に隙間が生じると負圧がこの隙間から漏れ、環状空間を減圧できなくなる。
【0012】
搬送ユニットで機械的にウェーハを下方に押圧することでこの隙間をある程度低減することも可能ではあるが、この隙間を完全に塞ぐことができない場合もある。そのため、搬送ユニットでウェーハを保持面に向けて強力に押圧できず、ウェーハを保持テーブルで吸引保持できなくなるとの問題が生じる。
【0013】
また、ウェーハが大きな厚みや反りを有さない場合においても、保持テーブルの保持面と、ウェーハの上面と、には必ず段差が生じる。そして、この段差はウェーハの厚みにより変化するため一定とはならず、外側のパッキン(第2パッキン)が保持テーブルの保持面との間に働かせる密閉力も一定とはならない。そのため、従来は、この密閉力が低くなる場合を想定して、環状空間の吸引条件には過剰な条件値を設定しなければならなかった。過剰な吸引条件で加工装置を作動させると、加工装置の作動効率が低下する。
【0014】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、反りを有するウェーハを適切に保持テーブルで吸引保持できる加工装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の一態様によると、保持面を有し、該保持面に載るウェーハを吸引保持する保持テーブルと、該保持テーブルで吸引保持された該ウェーハを加工する加工ユニットと、該ウェーハを該保持テーブルに搬送する搬送ユニットと、を備えた加工装置であって、該搬送ユニットは、該ウェーハの中央部分を上方から吸引保持する吸引パッドと、該吸引パッドが下端に設けられたシャフトと、該シャフトを先端部で昇降可能に支持するアームと、該アームを昇降させる昇降ユニットと、該アームに昇降可能に支持され、該シャフトが通された貫通孔を中央に有するプレート部と、該プレート部を外側から囲み、昇降可能に該プレート部に支持された外周可動部と、該プレート部の下面に環状に配設され、該ウェーハの上面に環状に接触できる第1パッキンと、該外周可動部の下面に環状に配設され、該ウェーハを外周側から囲める第2パッキンと、を備え、該昇降ユニットによって該アームを下降させることにより、該吸引パッドで保持された該ウェーハを該保持テーブルの該保持面に押し付け、該ウェーハの上面に該第1パッキンを押し付け、該ウェーハの外側において該保持テーブルの該保持面に該第2パッキンを押し付け、該保持面と、該第1パッキンと、該プレート部と、該外周可動部と、該第2パッキンと、で囲まれた環状空間を形成でき、該保持面を通じて該保持テーブルで該環状空間を吸引して減圧することにより、該プレート部に作用する大気圧で該プレート部を下降させ、該第1パッキンにより該ウェーハを該保持面に押し付け、該保持面に押し付けられた該ウェーハを該保持テーブルで吸引保持できる加工装置が提供される。
【0016】
好ましくは、該外周可動部は、伸縮部材を介して該プレート部に接続されている。
【発明の効果】
【0017】
本発明の一態様に係る加工装置では、搬送ユニットは、アームに昇降可能に支持されたプレート部と、プレート部を外側から囲み昇降可能にプレート部に支持された外周可動部と、を備える。また、プレート部の下面に環状に配設され、ウェーハに接触できる第1パッキンと、外周可動部の下面に環状に配設されウェーハを外周側から囲める第2パッキンと、を備える。すなわち、第2パッキンを備える外周可動部は、第1パッキンを備えるプレート部に対して昇降可能である。
【0018】
この構成によると、ウェーハが厚い場合でも、ウェーハの反りが極めて大きい場合でも、昇降ユニットによってアームを下降させることにより、ウェーハの上面に第1パッキンを押し付け、ウェーハの外側において保持テーブルの保持面に第2パッキンを押し付けられる。これは、ウェーハの厚みに対応して外周可動部がプレート部に対して昇降できることに起因している。
【0019】
より詳細には、ウェーハが厚い場合や反りが極めて大きい場合では、ウェーハの上面に第1パッキンが接触するときに第2パッキンが保持面に接触できるように、予めプレート部に対して外周可動部を下降させておくことができる。また、ウェーハが薄い場合等では、先に第2パッキンが保持面に接触した後、第1パッキンがウェーハの上面に接触するまでプレート部が下降する間、第2パッキンが過剰な力を受けることなく外周可動部が高さを変えずに留まることができる。
【0020】
そのため、保持面と、第1パッキンと、プレート部と、外周可動部と、第2パッキンと、で囲まれた環状空間を適切に形成できる。そして、保持テーブルで環状空間を吸引して減圧することによりプレート部に作用する大気圧で該プレート部を下降させ、第1パッキンによりウェーハを保持面に押し付け、保持面に押し付けられたウェーハを保持テーブルで吸引保持できる。
【0021】
また、第1パッキンとは独立して第2パッキンが昇降可能であるため、第2パッキンと保持テーブルの保持面との密着力は、ウェーハの厚みによる影響を受けにくくなる。そのため、環状空間を十分に吸引するために必要となる吸引条件の強度を低減でき、加工装置の稼働効率が良好となる。
【0022】
したがって、本発明により、反りを有するウェーハを適切に保持テーブルで吸引保持できる加工装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】加工装置を模式的に示す斜視図である。
図2】保持テーブルと、ウェーハを搬送する搬送ユニットと、を模式的に示す断面図である。
図3】ウェーハを保持テーブルに接触させた搬送ユニットを模式的に示す断面図である。
図4】反りが修正されたウェーハと、搬送ユニットと、保持テーブルと、を模式的に示す断面図である。
図5】環状空間が大気開放された時点におけるウェーハと、搬送ユニットと、保持テーブルと、を模式的に示す断面図である。
図6】環状空間が大気圧に戻された時点におけるウェーハと、搬送ユニットと、保持テーブルと、を模式的に示す断面図である。
図7】保持テーブル上から移動する搬送ユニットを模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明に係る実施形態について図面を参照して説明する。本実施形態に係る加工装置は、反りを有するウェーハを搬送ユニットで保持テーブルに搬送して、保持テーブルでウェーハを吸引保持する。まず、加工装置で加工される被加工物となるウェーハについて説明する。図1には、ウェーハ1を模式的に示す斜視図が含まれている。図2から図7には、ウェーハ1を模式的に示す断面図が含まれている。
【0025】
被加工物は、例えば、Si(シリコン)、SiC(シリコンカーバイド)、GaN(ガリウムナイトライド)、GaAs(ヒ化ガリウム)、若しくは、その他の半導体等の材料でなるウェーハである。または、サファイア、ガラス、石英等の材料からなる略円板状の基板、または、矩形状の基板等である。該ガラスは、例えば、アルカリガラス、無アルカリガラス、ソーダ石灰ガラス、鉛ガラス、ホウケイ酸ガラス、石英ガラス等である。
【0026】
ウェーハ1の表面1aには、IC(Integrated Circuit)、LSI(Large Scale Integration)等の複数のデバイス(不図示)が形成される。そして、ウェーハ1をデバイス毎に分割すると、個々のデバイスチップを形成できる。ウェーハ1を分割する前に、ウェーハ1を研削して薄化しておくと、その後にウェーハ1を分割することで薄型のデバイスチップを形成できる。ただし、ウェーハ1の表面1aにはデバイスが形成されていなくてもよい。
【0027】
ウェーハ1の表面1aには、それぞれ特定のパターン形状を有する各種の薄膜が成膜される。絶縁膜、導電膜、半導体膜等の各種の薄膜の組み合わせにより、デバイスを構成する素子、電極、配線層等が形成される。ウェーハ1の表面1aに成膜された各種の層に起因して、または、ウェーハ1に実施された各種の処理に起因して、ウェーハ1には大きな反りが生じることがある。
【0028】
本実施形態に係る加工装置は、例えば、反りが生じたウェーハ1を裏面1b側から研削して薄化する研削装置である。以下、本実施形態に係る加工装置が研削装置である場合を例に説明する。しかしながら、本実施形態に係る加工装置は研削装置に限定されない。次に、図1を用いて研削装置(加工装置)2について説明する。図1は、研削装置2を模式的に示す斜視図である。
【0029】
研削装置2では、ウェーハ1の裏面1b側が上方に露出された状態で該裏面1bが研削される。ウェーハ1の表面1aに予めデバイスが形成されている場合、ウェーハ1を研削する際に表面1a側を保護するために、ウェーハ1の表面1a側にはテープ状の保護部材3が貼着される。
【0030】
保護部材3は、例えば、基材層と、該基材層の上に形成された糊層と、を備える。ウェーハ1の裏面1b側を研削する際、ウェーハ1の表面1a側が後述の保持テーブル8に支持される。このとき、表面1aと、保持テーブル8の保持面8aと、が直接接触していると、ウェーハ1の研削時に表面1aに形成されているデバイスに損傷が生じる場合がある。そこで、ウェーハ1の表面1a側に保護部材3を貼着しておく。なお、図1以外の図面では、保護部材3が省略されている。
【0031】
ウェーハ1は、例えば、複数のウェーハ1を収容できるカセット28a,28bに収容されて運搬され、研削装置2に搬入される。研削装置2は、各構成要素を支持する基台4を備える。基台4の前端にはカセット載置台26a,26bが固定されている。
【0032】
例えば、カセット載置台26a上には研削前のウェーハ1を収容したカセット28aが載置され、カセット載置台26b上には研削が終了したウェーハ1を収容するためのカセット28bが載置される。または、カセット載置台26aに載せられたカセット28aに収容された複数のウェーハ1が次々に研削されてカセット28aに戻され、次に、カセット載置台26bに載せられたカセット28bに収容された複数のウェーハ1が次々に研削されてカセット28bに戻される。
【0033】
基台4上のカセット載置台26a,26bに隣接した位置には、搬送ロボット30が据え付けられている。搬送ロボット30は、カセット載置台26a,26bに載せられたカセット28a,28bからウェーハ1を搬出し、基台4上の搬送ロボット30に隣接した位置に設けられた位置決めテーブル32にウェーハ1を搬送する。
【0034】
位置決めテーブル32は、環状に並ぶ複数の位置決めピンを有する。位置決めテーブル32は、中央の載置領域にウェーハ1が載置された際、それぞれの位置決めピンを径方向内向きに連動させて移動させることにより、ウェーハ1を予定された位置に位置付ける。
【0035】
基台4の上面の位置決めテーブル32に隣接した位置には、搬送ユニット(ローディングアーム)34と、搬送ユニット(アンローディングアーム)36と、が設けられる。位置決めテーブル32により予定された位置に位置付けられたウェーハ1は、搬送ユニット(ローディングアーム)34により搬送される。搬送ユニット(ローディングアーム)34について、詳細は後述する。
【0036】
基台4の中央上面には、円板状のターンテーブル6が水平面内において回転可能に設けられている。ターンテーブル6の上面には、例えば、円周方向に互いに120度離間した3個の保持テーブル(チャックテーブル)8が備えられている。ターンテーブル6を回転させると、各保持テーブル8を移動できる。
【0037】
図2等には、保持テーブル8を模式的に示す断面図が含まれている。各保持テーブル8は、一端が吸引源9aと接続された吸引路8dを内部に有し、吸引路8dの他端が保持テーブル8上の保持面8aに接続されている。吸引路8dには、吸引源9aと保持面8aの接続状態を切り替え可能なバルブ9bが設けられている。バルブ9bは、例えば、ソレノイドバルブである。ただし、バルブ9bはこれに限定されない。
【0038】
保持面8aは、例えば、多孔質部材8cの上面と、多孔質部材8cを上方に露出させつつ収容する枠体8bの上面と、により構成される。保持テーブル8は、保持面8a上にウェーハ1が載せられた際にバルブ9bを作動させて吸引源9aと保持面8aを接続させ、多孔質部材8cを通じて負圧をウェーハ1に作用させることでウェーハ1を吸引保持できる。
【0039】
ただし、反りが生じたウェーハ1を保持テーブル8の保持面8aに載せると、ウェーハ1と保持面8aの間に隙間が生じる。そのため、吸引源9aが発生させた負圧をウェーハ1に作用させようとしたときにこの隙間から負圧が漏れるため、そのままでは保持テーブル8でウェーハ1を吸引保持しにくい。そこで、後に詳述する通り、ウェーハ1を保持テーブル8で吸引保持する際に搬送ユニット34を利用する。
【0040】
保持テーブル8は、ターンテーブル6の上面に回転可能に固定されている。保持テーブル8にはターンテーブル6上に固定されたテーブル回転モータ(不図示)が接続されている。テーブル回転モータを作動させると、保持テーブル8が保持面8aに交差するテーブル回転軸の周りに回転する。
【0041】
図1に戻り研削装置(加工装置)2の説明を続ける。保持テーブル8へのウェーハ1の搬出入は、図1に示すターンテーブル6の搬入・搬出領域6aで実施される。搬入・搬出領域6aでは、搬送ユニット(ローディングアーム)34によりウェーハ1を保持テーブル8に搬入できるとともに、ウェーハ1を搬送ユニット(アンローディングアーム)36により保持テーブル8から搬出できる。
【0042】
ウェーハ1の研削を実施する際、搬入・搬出領域6aに位置付けられた保持テーブル8に搬送ユニット34によりウェーハ1を搬入した後、ターンテーブル6を回転させて、該保持テーブル8を次の粗研削領域6bに移動させる。
【0043】
基台4の後方側上面のターンテーブル6の外側には、粗研削領域6bに位置付けられた保持テーブル8に保持されたウェーハ1の裏面1b側を粗研削する第1の研削ユニット10aが配されている。第1の研削ユニット10aによりウェーハ1の粗研削が実施された後、ターンテーブル6を回転させて、保持テーブル8を粗研削領域6bに隣接する仕上げ研削領域6cに移動させる。
【0044】
基台4の後方側上面のターンテーブル6の外側には、仕上げ研削領域6cに位置付けられた保持テーブル8に保持されたウェーハ1の裏面1b側を仕上げ研削する第2の研削ユニット10bが配されている。第2の研削ユニット10bでは、ウェーハ1が仕上げ研削される。第2の研削ユニット10bによりウェーハ1の仕上げ研削が実施された後、ターンテーブル6を回転させて、保持テーブル8を搬入・搬出領域6aに戻し、搬送ユニット(アンローディングアーム)36によりウェーハ1を保持テーブル8から搬出する。
【0045】
基台4の上面の搬送ユニット(アンローディングアーム)36と、搬送ロボット30と、の近傍には、研削されたウェーハ1を洗浄及び乾燥するスピンナ洗浄装置38が配設されている。そして、スピンナ洗浄装置38により洗浄及び乾燥されたウェーハ1は、搬送ロボット30によりスピンナ洗浄装置38から搬送され、カセット載置台26a,26bに載置されたカセット28a,28bに収容される。
【0046】
図1により、研削装置2についてさらに説明する。基台4の後部にはコラム22aが立設されている。コラム22aの前面には、第1の研削ユニット10aを鉛直方向に沿って移動可能に支持する研削送りユニット24aが配設されている。研削送りユニット24aは、例えば、ボールねじと、このボールねじに螺合するナットを裏面に有する昇降プレートと、昇降プレートがスライド可能に装着されたレールと、を含むボールねじ式の移動ユニットである。昇降プレートの前面には、第1の研削ユニット10aが固定されている。
【0047】
第1の研削ユニット10aは、鉛直方向に沿って伸長するスピンドル14aと、該スピンドル14aの上端に接続されたスピンドルモータ12aと、を備える。スピンドル14aの下端には、円板状のホイールマウント16aが配設されている。該ホイールマウント16a下面には、円盤状の研削ホイール18aが装着されている。研削ホイール18aの下面には、円環状に配設された複数の研削砥石20aが固定されている。
【0048】
スピンドルモータ12aを作動させると、研削ホイール18aの下面に垂直なホイール回転軸の周りに、すなわち、周方向に研削ホイール18aが回転する。
【0049】
粗研削領域6bにおいてウェーハ1を研削する際には、まず、ホイール回転軸の周りに研削ホイール18aを回転させて研削砥石20aを環状軌道に沿って移動させるともに、保持テーブル8をテーブル回転軸の周りに回転させる。そして、研削送りユニット24aを作動させて第1の研削ユニット10aを下降させ、研削砥石20aを保持テーブル8に保持されたウェーハ1の裏面1bに接触させる。すると、ウェーハ1が裏面1b側から研削される。
【0050】
研削砥石20aは、例えば、ダイヤモンド等でなる砥粒が結合材中に分散されて形成されている。研削砥石20aのウェーハ1に接触する接触面には砥粒が適度に結合材から露出しており、露出した砥粒がウェーハ1に接触することでウェーハ1が研削される。
【0051】
また、コラム22bの前面には、第2の研削ユニット10bを鉛直方向に沿って移動可能に支持する研削送りユニット24bが配設されている。研削送りユニット24bは、研削送りユニット24aと同様に構成される。また、第2の研削ユニット10bは、第1の研削ユニット10aと同様に、鉛直方向に沿って伸長するスピンドル14bと、スピンドル14bの上端に接続されたスピンドルモータ12bと、を備える。
【0052】
スピンドル14bの下端には、円板状のホイールマウント16bが配設され、ホイールマウント16b下面には研削ホイール18bが固定されている。研削ホイール18bの下面には、円環状に配設された複数の研削砥石20bが装着されている。また、第2の研削ユニット10bにおいても、スピンドルモータ12bを作動させると、研削ホイール18bが下面に垂直なホイール回転軸の周りに回転する。
【0053】
仕上げ研削領域6cにおいてウェーハ1を研削する際には、研削ホイール18bを回転させて研削砥石20bを環状軌道に沿って移動させるとともに、保持テーブル8を回転させる。そして、研削送りユニット24bを作動させて第2の研削ユニット10bを下降させ、研削砥石20bを保持テーブル8に保持されたウェーハ1の裏面1bに接触させる。すると、ウェーハ1が裏面1b側から研削される。
【0054】
第1の研削ユニット10aを使用したウェーハ1の研削では、研削送りユニット24aによる研削送りを比較的速い速度で実施してウェーハ1を粗研削する。第1の研削ユニット10aによる粗研削では、研削装置2で研削されて除去されるウェーハ1の厚さの大部分が効率的に除去される。
【0055】
第2の研削ユニット10bを使用したウェーハ1の研削では、研削送りユニット24bによる研削送りを比較的低い速度で実施してウェーハ1を仕上げ研削する。第2の研削ユニット10bによる仕上げ研削では、ウェーハ1が予定された仕上げ厚さに高精度に研削される。
【0056】
基台4の上面の粗研削領域6bの近傍には、第1の研削ユニット10aにより粗研削されているウェーハ1の厚さを測定する第1の厚さ測定ユニット40が配設されている。第1の厚さ測定ユニット40は、例えば、接触式の厚さ測定ユニットである。ただし、第1の厚さ測定ユニット40は、接触式の厚さ測定ユニットに限定されず、他の方式の厚さ測器であってもよい。
【0057】
基台4の上面の仕上げ研削領域6cの近傍には、第2の研削ユニット10bにより仕上げ研削されているウェーハ1の厚さを測定する非接触式の第2の厚さ測定ユニット42が配設されている。第2の厚さ測定ユニット42は、例えば、ウェーハ1の裏面1bにレーザビームを照射して反射された該レーザビームを検出することで、ウェーハ1の裏面1bの高さを測定するレーザ厚さ測定ユニット(分光干渉レーザ変位計)である。ただし、第2の厚さ測定ユニット42はこれに限定されない。
【0058】
研削装置2は、さらに、研削装置2の各構成要素を制御するコントローラ(制御ユニット)44を備える。コントローラ44は、ターンテーブル6、保持テーブル8、研削送りユニット24a,24b、研削ユニット10a,10b、厚さ測定ユニット40,42等を制御する。さらに、コントローラ44は、搬送ロボット30、位置決めテーブル32、搬送ユニット(ローディングアーム)34、搬送ユニット(アンローディングアーム)36、スピンナ洗浄装置38等を制御する。
【0059】
コントローラ(制御ユニット)44は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等の処理装置と、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等の主記憶装置と、HDD、SSD、フラッシュメモリ等の補助記憶装置と、を含むコンピュータによって構成されている。補助記憶装置に記憶されるソフトウェアに従い処理装置等を動作させることによって、コントローラ44の機能が実現される。
【0060】
本実施形態に係る加工装置(研削装置2)は、搬送ユニット(ローディングアーム)34を利用して反りが生じたウェーハ1を保持テーブル8で吸引保持する。そして、保持テーブル8で吸引保持されたウェーハ1を第1の研削ユニット(加工ユニット)24aと、第2の研削ユニット(加工ユニット)24bと、で加工する。次に、保持テーブル8によるウェーハ1の吸引保持を補助する搬送ユニット(ローディングアーム)34について説明する。
【0061】
まず、搬送ユニット34の概要について説明する。図2は、ウェーハ1を搬送する搬送ユニット34を模式的に示す断面図である。搬送ユニット34は、ウェーハ1の中央部分を上方から吸引保持する吸引パッド60と、吸引パッド60が下端に設けられたシャフト56と、シャフト56を先端部50で昇降可能に支持するアーム48と、を備える。
【0062】
さらに、搬送ユニット34は、アーム48を昇降させる昇降ユニット46(図1参照)を備える。搬送ユニット34は、昇降ユニット46でアーム48を昇降できるとともに、アーム48を回転させることでアーム48を半径とする円弧状の軌道に沿ってアーム48の先端部50を移動できる。特に、搬送ユニット34は、位置決めテーブル32と、搬入・搬出領域6aに位置付けられた保持テーブル8と、の間で先端部50を移動できる。
【0063】
搬送ユニット34は、位置決めテーブル32に置かれたウェーハ1に上方から吸引パッド60を接触させ、ウェーハ1を吸引保持する。その後、先端部50を保持テーブル8の上方に移動させ、ウェーハ1を保持テーブル8の保持面8aに押し付ける。そして、保持テーブル8によるウェーハ1の吸引保持が実施された後、搬送ユニット34は吸引パッド60を介したウェーハ1の吸引保持を解除し、先端部50を保持テーブル8の上方から移動させる。
【0064】
次に、搬送ユニット34の各部の構造及び機能について詳述する。以下に説明する搬送ユニット34の各構成要素の材質に特に制限はなく、特に説明を付さない限り、ステンレス鋼等の金属材料や硬質の樹脂材料等により構成される。
【0065】
アーム48は、研削装置2の基台4の上面に沿った方向(水平方向)に沿って伸長している。アーム48の先端に位置する先端部50は、板状、または、円盤状の構造物であり、上下に貫通した貫通孔52を中央に備える。この貫通孔52には、吸引パッド60が下端に設けられたシャフト56が通されている。シャフト56は、先端部50(貫通孔52)に対して昇降可能である。
【0066】
貫通孔52の上方においてシャフト56の上端には、ヘッド部58が固定されている。ヘッド部58は、貫通孔52を通過できない大きさ及び形状を有し、シャフト56の落下を防止する機能を有する。換言すると、シャフト56は、ヘッド部58が先端部50の上面に接触した状態からさらに下降できない。この状態からシャフト56が貫通孔52に対して上昇すると、ヘッド部58が先端部50から離れて上昇する。
【0067】
シャフト56の周囲には、コイルスプリング等で構成される弾性部材118が配設されている。換言すると、弾性部材118であるコイルスプリングの中央には、シャフト56が通されている。弾性部材118の上端は、アーム48の先端部50の下面に接触する。また、弾性部材118の下端は、シャフト56に固定された環状の固定板116に接触する。
【0068】
弾性部材118は、アーム48の先端部50と、固定板116と、を互いに離れる方向に向けて付勢する。シャフト56が上昇すると、弾性部材118がアーム48の先端部50と、固定板116と、の間で収縮され、弾性力(復元力)が増す。すなわち、弾性部材118は、シャフト56をアーム48の先端部50に対して下降させるように付勢する機能を有する。
【0069】
シャフト56の内部には、シャフト56を上下に貫通した連通路62が形成されている。連通路62の先端(下端)は吸引パッド60に通じている。吸引パッド60は、連通路62に通じた無数の細孔を備えるスポンジ状の構造を備える柔らかい部材である。連通路62の基端(上端)はヘッド部58の上面に通じており、通気路64が接続される。通気路64は分岐しており、バルブ68を介して吸引源66に接続されるとともに、バルブ72を介して供給源70に接続される。バルブ68,72は、例えば、ソレノイドバルブである。ただし、バルブ68,72はこれに限定されない。
【0070】
吸引源66は気体を吸引する機能を有し、例えば、真空ポンプやエジェクタ等で構成される。また、供給源70は、空気や窒素ガス等の気体を供給する機能を有し、例えば、ガスボンベやコンプレッサ等で構成される。また、吸引源66及び供給源70は、研削装置(加工装置)2が設置された工場等に設けられた設備でもよい。
【0071】
バルブ68を作動させて通気路64を介して連通路62に吸引源66を接続すると、吸引パッド60に接触するウェーハ1に負圧を作用できる。これにより、搬送ユニット34は、ウェーハ1を吸引保持できる。また、バルブ72を作動させて通気路64を介して連通路62に供給源70に接続すると、吸引パッド60に接触するウェーハ1に気体を吹き付けられる。これにより、搬送ユニット34はウェーハ1から吸引パッド60を分離できる。ただし、供給源70は省略されてもよい。
【0072】
アーム48の先端部50の貫通孔52の周囲には、複数の別の貫通孔54が形成されている。この貫通孔54には、下端にプレート部74が接続された複数のシャフト80がそれぞれ通されている。シャフト80は、貫通孔54に対して昇降可能である。
【0073】
貫通孔54の上方においてシャフト80の上端には、ヘッド部82が固定されている。ヘッド部82は、貫通孔54を通過できない大きさ及び形状を有し、シャフト80の落下を防止する機能を有する。換言すると、貫通孔54の内側で昇降できるシャフト80は、ヘッド部82が先端部50の上面に接触した状態からさらに下降できない。この状態からシャフト80が貫通孔54に対して上昇すると、ヘッド部82が先端部50から離れて上昇する。
【0074】
シャフト80の周囲には、コイルスプリング等で構成される弾性部材120が配設されている。換言すると、弾性部材120であるコイルスプリングの中央には、シャフト80が通されている。弾性部材120の上端は、アーム48の先端部50の下面に接触する。また、弾性部材120の下端は、プレート部74(上側プレート76)に接触する。
【0075】
弾性部材120は、アーム48の先端部50と、プレート部74(上側プレート76)と、を互いに離れる方向に向けて付勢する。シャフト80が上昇すると、弾性部材120がアーム48の先端部50と、プレート部74(上側プレート76)と、の間で収縮され、弾性力(復元力)が増す。すなわち、弾性部材120は、シャフト80をアーム48の先端部50に対して下降させるように付勢する機能を有する。
【0076】
搬送ユニット34は、アーム48に昇降可能に支持され、シャフト56が通された貫通孔84a,84bを中央に有するプレート部74を備える。プレート部74は、例えば、上側プレート76と、下側プレート78と、により構成される。上側プレート76の上面には、複数のシャフト80が固定されている。プレート部74は、シャフト80を介してアーム48の先端部50に昇降可能に支持されている。
【0077】
プレート部74は、ウェーハ1と同様の平面形状を有する。すなわち、ウェーハ1が矩形状であれば、プレート部74も同様の大きさの矩形状とされる。また、ウェーハ1が円板状であれば、プレート部74も同様の大きさの円板状とされる。
【0078】
プレート部74の上側プレート76には、複数の貫通孔86が形成されている。この貫通孔86には、下側プレート78が下端に設けられた複数のシャフト88がそれぞれ通されている。シャフト88は、貫通孔86に対して昇降可能である。シャフト88の下端は、貫通孔86の下方において下側プレート78の上面に固定されている。
【0079】
貫通孔86の上方においてシャフト88の上端には、ヘッド部90が固定されている。シャフト88の周囲には、コイルスプリング等で構成される弾性部材122が配設されている。換言すると、弾性部材122であるコイルスプリングの中央には、シャフト88が通されている。弾性部材122の上端は、ヘッド部90の下面に接触する。また、弾性部材122の下端は、上側プレート76の上面に接触する。
【0080】
弾性部材122は、上側プレート76と、下側プレート78と、を互いに近づける方向に向けて付勢する。シャフト88が上側プレート76(貫通孔86)に対して下降すると、弾性部材122がヘッド部90の下面と、上側プレート76の上面と、の間で収縮され弾性力(復元力)が増す。すなわち、弾性部材122は、シャフト88を上側プレート76(貫通孔86)に対して上昇させるように付勢する機能を有する。
【0081】
プレート部74の上側プレート76の上面外周には、プレート部74の外側に張り出した複数の接続部92が設けられている。プレート部74よりも外側の各接続部92の下面には、それぞれ、コイルスプリング等で構成された伸縮部材94の上端が取り付けられている。なお、伸縮部材94はコイルスプリングに限定されず、エアシリンダにより構成されてもよい。
【0082】
伸縮部材94の下端には、プレート部74を外側から囲む枠状の外周可動部96が接続されている。換言すると、外周可動部96は、伸縮部材94を介してプレート部74に接続されている。
【0083】
外周可動部96に上下方向に向いた力がかかると、伸縮部材94が伸縮してプレート部74に対して昇降する。したがって、外周可動部96は、伸縮部材94を通して昇降可能にプレート部74に支持されている。
【0084】
搬送ユニット34は、プレート部74(下側プレート78)の下面に環状に配設され、ウェーハ1の上面(裏面1b)に環状に接触できる第1パッキン98を備える。さらに、搬送ユニット34は、外周可動部96の下面に環状に配設され、ウェーハ1を外周側から囲める第2パッキン100を備える。第1パッキン98及び第2パッキン100は、例えば、ゴム等の弾性部材により構成されたOリングである。ただし、第1パッキン98及び第2パッキン100は、Oリングに限定されない。
【0085】
本実施形態に係る研削装置(加工装置)2では、第2パッキン100が固定された外周可動部96は、第1パッキン98が固定されたプレート部74に対して昇降可能である。そのため、本実施形態に係る研削装置(加工装置)2では、第1パッキン98及び第2パッキン100の相対的な高さを変更可能である。
【0086】
外周可動部96と、プレート部74と、の隙間には環状の第3パッキン102が配されている。換言すると、外周可動部96と、プレート部74と、の間の環状の隙間は、第3パッキン102により塞がれている。第3パッキン102は、外周可動部96の内周面と、プレート部74の外周面と、の一方に固定されてもよく、どちらにも固定されていなくてもよい。
【0087】
例えば、外周可動部96の内周面には、第3パッキン102を昇降可能に収容する収容溝104が形成されてもよい。収容溝104は第3パッキン102の高さを超える幅を有し、第3パッキン102は収容溝104の内部で昇降可能である。第3パッキン102が昇降しても、第3パッキン102は外周可動部96と、プレート部74と、の間の環状の隙間を塞ぎ続ける。
【0088】
外周可動部96のプレート部74に対する高さは、外周可動部96にかかる重力、伸縮部材94に生じる復元力、第2パッキン100が保持テーブル8に接触したときに保持テーブル8から受ける反作用、第3パッキン102との間に働く摩擦力等により決まる。外周可動部96は、これらの力、及び、その他の力により昇降する。
【0089】
プレート部74の下側プレート78の下面の第1パッキン98の外側には、複数の開口108が形成されている。下側プレート78の内部には、それぞれ一端が開口108に通じた複数の連通路106が形成されている。各連通路106は、下側プレート78の上面に設けられた複数の開口110にそれぞれ通じている。
【0090】
上側プレート76の下面には、下側プレート78の開口110に向けて伸長した複数の弁棒112と、それぞれの弁棒112の下端に設けられた弁体114と、を備える。連通路106には、弁体114の形状に対応した弁座(シート)として機能する構造が設けられている。
【0091】
上側プレート76及び下側プレート78の距離が十分に近いとき、弁体114が開口110から連通路106に進入し、連通路106を塞ぐ。すなわち、連通路106を通じた気体の往来が遮断される。上側プレート76が下側プレート78から相対的に上昇すると、弁体114が上昇して連通路106を開放し、連通路106を通じた気体の往来が可能となる。
【0092】
次に、このように構成された搬送ユニット34で反りが生じたウェーハ1を保持テーブル8の保持面8aに搬送し、保持テーブル8によるウェーハ1の吸引保持を搬送ユニット34で支援する研削装置(加工装置)2の動作について説明する。研削装置2の下記動作は、例えば、コントローラ44がプログラムに従って各構成要素を制御することにより実現される。
【0093】
図2には、ウェーハ1の搬送作業中の搬送ユニット34を模式的に示す断面図が含まれている。ウェーハ1を搬送する際、研削装置(加工装置)2は、吸引パッド60をウェーハ1の上面(裏面1b)の中央部に接触させる。そして、バルブ68を作動させて通気路64を通して吸引源66を連通路62に接続し、吸引パッド60からウェーハ1に負圧を作用させ、吸引パッド60でウェーハ1を吸引保持する。
【0094】
昇降ユニット46を作動させてアーム48を上昇させ、アーム48を回転させると、ウェーハ1を搬送できる。搬送ユニット34は、図2に示すようにウェーハ1を保持テーブル8の上方に移動させる。
【0095】
次に、研削装置(加工装置)2は、昇降ユニット46によってアーム48を下降させることにより、吸引パッド60で保持されたウェーハ1を保持テーブル8の保持面8aに接触させ、押し付ける。図3には、搬送ユニット34がウェーハ1を保持テーブル8の保持面8aに押し付ける様子が模式的に示されている。次に、この過程をより詳細に説明する。
【0096】
アーム48を下降させると、ウェーハ1の下面(表面1a)が保持テーブル8の保持面8aに接触する。その後さらにアーム48を下降させると、ウェーハ1からの反作用を受けてシャフト56が下降しなくなる一方で、アーム48の先端部50が下降する。そのため、先端部50がシャフト56に対して下降するとともに、プレート部74及び外周可動部96がシャフト56に対して下降する。
【0097】
すると、プレート部74(下側プレート78)の下面に設けられた第1パッキン98が反りの生じたウェーハ1の上面(裏面1b)に接触する。また、外周可動部96の下面に設けられた第2パッキン100が保持テーブル8の保持面8a(枠体8bの上面)に接触する。搬送ユニット34は、さらにアーム48を下降させることで、ウェーハ1の上面(裏面1b)に第1パッキン98を押し付け、ウェーハ1の外側において保持テーブル8の保持面8aの上面に第2パッキン100を押し付ける。
【0098】
これにより、図3に示すように、研削装置(加工装置)2は、保持面8aと、第1パッキン98と、プレート部74(下側プレート78)と、外周可動部96と、第2パッキン100と、で囲まれ閉じられた環状空間124を形成できる。この閉じられた環状空間124の形成には、第3パッキン102も寄与する。
【0099】
次に、研削装置(加工装置)2は、この環状空間124を吸引して減圧する。環状空間124の減圧には、例えば、保持テーブル8が使用される。図4には、保持テーブル8が環状空間124を減圧する様子が模式的に示されている。環状空間124を減圧する際、バルブ9bを作動させて吸引源9aを吸引路8dに接続する。すると、多孔質部材8cを通して環状空間124が吸引され、環状空間124が減圧される。換言すると、研削装置2は、保持面8aを通じて保持テーブル8で環状空間124を吸引して減圧する。
【0100】
研削装置(加工装置)2は、環状空間124を減圧することにより、プレート部74に作用する大気圧でプレート部74を下降させ、第1パッキン98によりウェーハ1を保持面8aに押し付ける。すると、反りが生じたウェーハ1の反りが低減するようにウェーハ1が変形し、ウェーハ1と保持面8aの間の隙間が小さくなる。
【0101】
ウェーハ1と保持面8aの間の隙間が小さくなると、この隙間からの負圧の漏れも小さくなる。そのため、保持テーブル8によるウェーハ1の吸引保持が可能となる。すなわち、研削装置(加工装置)2は、保持面8aに押し付けられたウェーハ1を保持テーブル8で吸引保持する。
【0102】
その後、研削装置(加工装置)2は、搬送ユニット34によるウェーハ1の吸引保持を解除し、保持テーブル8上から移動する。すなわち、搬送ユニット34からウェーハ1を分離する。このときに、まず環状空間124を大気開放して減圧を解除する。図5には、環状空間124が大気開放される様子が模式的に示されている。以下、この過程について詳述する。
【0103】
保持テーブル8によるウェーハ1の吸引保持がされた後、バルブ68を作動させて吸引源66と連通路62の接続を解除し、搬送ユニット34の吸引パッド60によるウェーハ1の吸引保持を解除する。その後、バルブ72を作動させて供給源70と連通路62を接続してもよい。この場合、供給源70から空気、または、乾燥窒素等の気体が吸引パッド60に供給され、吸引パッド60からウェーハ1に向けて気体が噴出される。これにより、吸引パッド60とウェーハ1の分離が促進される。
【0104】
次に、昇降ユニット46によりアーム48が上昇される。すると、シャフト80を介してプレート部74の上側プレート76が引き上げられる。その一方で、環状空間124が減圧されているため、プレート部74の下側プレート78には大気圧に起因する下方に向いた力がかかり続ける。そのため、下側プレート78は上昇しない。または、下側プレート78は、上側プレート76の上昇量よりも小さな上昇量で上昇する。その結果、上側プレート76と下側プレート78が離れる。
【0105】
このとき、弁棒112を介して上側プレート76に接続された弁体114が上昇し、下側プレート78の連通路106を開く。すると、連通路106を介して環状空間124が大気開放され、環状空間124の圧力が上昇する。環状空間124の圧力が大気圧に戻される等して十分に上昇すると、収縮していた弾性部材122が生じる復元力により、下側プレート78と上側プレート76が近づけられる。
【0106】
図6には、上側プレート76と下側プレート78が再び近づいた状態が模式的に示されている。上側プレート76と下側プレート78が近付くと、弁体114が下側プレート78の連通路106を再び塞ぐ。その後、アーム48をさらに上昇させると、プレート部74が引き上げられ、第1パッキン98がウェーハ1から離れるとともに第2パッキン100が保持テーブル8の保持面8aから離れる。これにより、環状空間124が開放される。
【0107】
その後、昇降ユニット46によりさらにアーム48を上昇させると、アーム48の先端部50の上面がシャフト56のヘッド部58に当たり、シャフト56が引き上げられる。図7には、シャフト56が引き上げられた状態が模式的に示されている。シャフト56が引き上げられると、吸引パッド60がウェーハ1から離される。これにより、搬送ユニット34によるウェーハ1の保持テーブル8への搬送が完了する。
【0108】
以上に説明する通り、本実施形態に係る加工装置では、第2パッキン100を支持する外周可動部96が第1パッキン98を支持する第1パッキン98に対して昇降可能である。すなわち、第1パッキン98及び第2パッキン100は、互いに対して昇降可能である。換言すると、第2パッキン100が第1パッキン98から独立して昇降できる。
【0109】
本実施形態に係る加工装置に依らず、第1パッキン98及び第2パッキン100が互いに対して高さが変更できない場合、ウェーハ1の厚みや反りの大きさ次第では環状空間124を適切に形成できないことがある。例えば、ウェーハ1が大きな厚み、または、大きな反りを有する場合、第1パッキン98が比較的高い位置でウェーハ1に接触するため、第2パッキン100も比較的高くなり、結果として第2パッキン100の下端が保持テーブル8の保持面8aに接触できないことがある。
【0110】
第2パッキン100と保持面8aの間に隙間が生じると環状空間124を減圧できなくなるため、大気圧を利用して搬送ユニット34でウェーハ1を保持面8aに向けて押圧できない。そのため、反りの大きなウェーハ1の反りを低減できず、ウェーハ1を保持テーブル8で吸引保持できなくなるとの問題が生じる。
【0111】
ウェーハ1が大きな厚み等を有さない場合においても、保持テーブル8の保持面8aと、ウェーハ1の上面と、には必ず段差が生じる。そして、この段差はウェーハ1の厚みにより変化するため一定とはならず、第2パッキン100が保持テーブル8の保持面8aとの間に働かせる密閉力も一定とはならない。そのため、この密閉力が低くなる場合を想定して、環状空間124の吸引条件に過剰な条件値を設定しなければならない。
【0112】
これに対して、本実施形態に係る加工装置では、第2パッキン100を備える外周可動部96は、第1パッキン98を備えるプレート部74に対して昇降可能である。この構成によると、ウェーハ1が厚い場合等でも、ウェーハ1の厚みに対応して外周可動部96がプレート部74に対して昇降でき、第2パッキン100が保持面8aに接触するまで外周可動部96が下降できる。
【0113】
そのため、環状空間124を形成できる。そして、保持テーブル8で環状空間124を吸引して減圧することによりプレート部74に作用する大気圧でプレート部74を下降させ、第1パッキン98によりウェーハ1を保持面8aに押し付けられる。これにより、ウェーハ1の反りが低減され、ウェーハ1を保持テーブル8で吸引保持できる。
【0114】
また、第1パッキン98とは独立して第2パッキン100が下降可能であるため、第2パッキン100と保持テーブル8の保持面8aとの密着力は、ウェーハ1の厚みによる影響を受けにくくなる。そのため、環状空間124を十分に吸引するために必要となる吸引条件の強度を低減でき、加工装置の稼働効率が良好となる。
【0115】
なお、上記実施形態では、加工装置がウェーハ1を裏面1b側から研削して薄化する研削装置2である場合を例に説明した。しかしながら、本発明の一態様はこれに限定されない。すなわち、本発明の一態様に係る加工装置はこれに限定されない。
【0116】
例えば、本発明の一態様に係る加工装置は、円環状の切削ブレードを備え、保持テーブル8で吸引保持されたウェーハ1を切削ブレードで切削する切削装置でもよい。または、本発明の一態様に係る加工装置は、円板状の研磨パッドを備え、保持テーブル8で吸引保持されたウェーハ1を研磨パッドで研磨する研磨装置でもよい。または、本発明の一態様に係る加工装置は、保持テーブル8で吸引保持されたウェーハ1にレーザビームを照射してレーザ加工するレーザ加工装置でもよい。
【0117】
換言すると、本発明の一態様に係る加工装置は、ウェーハ1を保持テーブル8で吸引保持して加工する加工装置である。いずれの加工装置においても、厚さによらず反りを有したウェーハ1を適切に保持テーブル8で保持できる。また、ウェーハ1が反りを有さない場合においても、ウェーハ1を効率的に保持テーブル8で保持できる。
【0118】
また、上記実施形態では、搬送ユニット(ローディングアーム)34が有する構造及び機能により保持テーブル8によるウェーハ1の吸引保持を補助する場合について説明したが、本発明の一態様に係る加工装置はこれに限定されない。例えば、上述の搬送ユニット(ローディングアーム)34の有する構造及び機能と同様の構造及び機能を搬送ユニット(アンローディングアーム)36、または、その他の搬送ユニットが備えてもよい。
【0119】
上記実施形態に係る構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。
【符号の説明】
【0120】
1 ウェーハ
1a 表面
1b 裏面
3 保護部材
2 研削装置
4 基台
6 ターンテーブル
6a 搬出領域
6b 粗研削領域
6c 仕上げ研削領域
8 保持テーブル
8a 保持面
8b 枠体
8c 多孔質部材
8d 吸引路
9a 吸引源
9b バルブ
10a,10b 研削ユニット
12a,12b スピンドルモータ
14a,14b スピンドル
16a,16b ホイールマウント
18a,18b 研削ホイール
20a,20b 研削砥石
22a,22b コラム
24a,24b 研削送りユニット
26a,26b カセット載置台
28a,28b カセット
30 搬送ロボット
32 位置決めテーブル
34 搬送ユニット(ローディングアーム)
36 搬送ユニット(アンローディングアーム)
38 スピンナ洗浄装置
40,42 厚さ測定ユニット
44 コントローラ(制御ユニット)
46 昇降ユニット
48 アーム
50 先端部
52,54 貫通孔
56 シャフト
58 ヘッド部
60 吸引パッド
62 連通路
64 通気路
66 吸引源
68 バルブ
70 供給源
72 バルブ
74 プレート部
76 上側プレート
78 下側プレート
80 シャフト
82 ヘッド部
84a,84b 貫通孔
86 貫通孔
88 シャフト
90 ヘッド部
92 接続部
94 伸縮部材
96 外周可動部
98 第1パッキン
100 第2パッキン
102 第3パッキン
104 収容溝
106 連通路
108,110 開口
112 弁棒
114 弁体
116 固定板
118,120,122 弾性部材
124 環状空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7