(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168044
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】ガラス製造方法、及び成形装置
(51)【国際特許分類】
C03B 5/24 20060101AFI20241128BHJP
C03B 5/235 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
C03B5/24
C03B5/235
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023084433
(22)【出願日】2023-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】岡田 啓
(72)【発明者】
【氏名】大柿 聡
(72)【発明者】
【氏名】魚住 友之
【テーマコード(参考)】
4G014
【Fターム(参考)】
4G014AF00
(57)【要約】
【課題】遮熱板を適切な位置に配置する、技術を提供する。
【解決手段】ガラス製造方法は、ガラス原料を溶解炉の内部で溶解し、溶融ガラスを得ることと、前記溶融ガラスを成形炉の内部で成形することと、を有する。ガラス製造方法は、前記溶解炉または前記成形炉の外側において輻射熱の熱流束を測定することと、前記熱流束の測定結果に基づいて、前記溶解炉または前記成形炉の外側に遮熱板を配置することと、を有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス原料を溶解炉の内部で溶解し、溶融ガラスを得ることと、前記溶融ガラスを成形炉の内部で成形することと、を有するガラス製造方法であって、
前記溶解炉または前記成形炉の外側において輻射熱の熱流束を測定することと、
前記熱流束の測定結果に基づいて、前記溶解炉または前記成形炉の外側に遮熱板を配置することと、
を有する、ガラス製造方法。
【請求項2】
前記成形炉の内部の気体を前記成形炉の外部に排気する排気管が設けられており、
前記熱流束の測定結果に基づいて、前記排気管の周りに前記遮熱板を配置することを有する、請求項1に記載のガラス製造方法。
【請求項3】
溶融ガラスを成形する、成形装置であって、
溶融ガラスを内部に収容する成形炉と、
前記成形炉の内部から前記成形炉の外部に気体を排気する排気管と、
前記排気管の周りに配置される遮熱板と、
を備える、成形装置。
【請求項4】
前記成形炉の外側において輻射熱の熱流束を測定する熱流束計を備え、
前記遮熱板は、前記熱流束の測定結果に基づいて、前記排気管の周りに配置される、請求項3に記載の成形装置。
【請求項5】
前記排気管は、前記成形炉の側壁から突出する水平管と、前記成形炉の外部において前記水平管の先端から上方に延びる鉛直管と、を有し、前記鉛直管の上端に火炎を形成し、
前記遮熱板は、前記火炎の輻射熱を、前記成形炉の前記側壁から遠ざかる方向に向ける第1遮熱板を含む、請求項3又は4に記載の成形装置。
【請求項6】
前記排気管は、前記成形炉の側壁から突出する水平管と、前記成形炉の外部において前記水平管の先端から上方に延びる鉛直管と、を有し、前記鉛直管の上端に火炎を形成し、
前記遮熱板は、前記火炎の輻射熱が下方に向かうのを制限する第2遮熱板を含む、請求項3又は4に記載の成形装置。
【請求項7】
前記排気管は、前記成形炉の側壁から突出する水平管と、前記成形炉の外部において前記水平管の先端から上方に延びる鉛直管と、を有し、
前記遮熱板は、前記鉛直管の外周を取り囲む第3遮熱板を含む、請求項3又は4に記載の成形装置。
【請求項8】
前記遮熱板は、前記成形炉の側壁に対向して配置される第4遮熱板を含む、請求項3又は4に記載の成形装置。
【請求項9】
前記遮熱板と前記成形炉との間には空気層が形成される、請求項3又は4に記載の成形装置。
【請求項10】
前記遮熱板と前記成形炉との間には、前記空気層の厚みを規定するスペーサが設けられる、請求項9に記載の成形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ガラス製造方法、及び成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス製造方法は、ガラス原料を溶解炉の内部で溶解し、溶融ガラスを得ることと、溶融ガラスを成形炉の内部で成形することと、を有する。特許文献1には、溶解炉を含む溶解装置が開示されている。特許文献2及び3には、成形炉を含む成形装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-75069号公報
【特許文献2】特開平11-302024号公報
【特許文献3】特開平11-21137号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
溶解炉及び成形炉は、輻射熱を放射する。溶解炉及び成形炉の外側では、作業者が作業を行うことがある。作業者を輻射熱から保護すべく、溶解炉または成形炉の外部に遮熱板を配置することが考えられる。しかしながら、遮熱板を無駄に配置すると、熱の放出が滞り、装置の損傷又はガラスの品質劣化が生じる恐れがある。
【0005】
本開示の一態様は、遮熱板を適切な位置に配置する、技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係るガラス製造方法は、ガラス原料を溶解炉の内部で溶解し、溶融ガラスを得ることと、前記溶融ガラスを成形炉の内部で成形することと、を有する。ガラス製造方法は、前記溶解炉または前記成形炉の外側において輻射熱の熱流束を測定することと、前記熱流束の測定結果に基づいて、前記溶解炉または前記成形炉の外側に遮熱板を配置することと、を有する。
【発明の効果】
【0007】
本開示の一態様によれば、熱流束の測定結果に基づき遮熱板を配置することで、遮熱板を適切な位置に配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、一実施形態に係るガラス製造装置を示す断面図である。
【
図2】
図2は、
図1のガラス製造装置の具体例を示す断面図である。
【
図3】
図3は、成形装置の一例を示す断面図である。
【
図5】
図5は、遮熱板とスペーサの一例を示す断面図である。
【
図6】
図6は、遮熱板の構造の一例を示す断面図である。
【
図7】
図7は、遮熱板の構造の別の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施形態について図面を参照して説明する。なお、各図面において同一の又は対応する構成には同一の符号を付し、説明を省略することがある。各図面において、X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向は互いに垂直な方向であって、X軸方向及びY軸方向は水平方向、Z軸方向は鉛直方向である。X軸方向がガラスリボンGRの搬送方向であり、Y軸方向がガラスリボンGRの幅方向である。明細書中、数値範囲を示す「~」は、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含むことを意味する。
【0010】
先ず、
図1を参照して、一実施形態に係るガラス製造装置1について説明する。ガラス製造装置1は、例えば、溶解装置2と、成形装置3と、徐冷装置4と、加工装置5と、をこの順番で備える。なお、ガラス製造装置1は、少なくとも溶解装置2と成形装置3とを備えればよい。
【0011】
溶解装置2は、ガラス原料を溶解し、溶融ガラスGを得る。ガラス原料は、複数種類の材料を混ぜて調製される。ガラス原料は、ガラスをリサイクルすべく、ガラスカレットを含んでもよい。ガラス原料は、粉体原料でもよいし、当該粉体原料を造粒した造粒原料でもよい。
【0012】
成形装置3は、溶解装置2で得られた溶融ガラスGを所望の形状のガラス物品に成形する。板状のガラス物品を得る成形方法として、フロート法、フュージョン法、又はロールアウト法等が用いられる。板状のガラス物品は、一般的にガラスリボンと呼ばれる。管状のガラス物品を得る成形方法として、ベロー法、又はダンナー法等が用いられる。
【0013】
徐冷装置4は、成形装置3で成形したガラス物品を徐冷する。徐冷装置4は、例えば、熱処理炉と、熱処理炉の内部においてガラス物品を所望の方向に搬送する搬送ロールとを有する。搬送ロールは、例えば水平方向に間隔をおいて複数配列される。ガラス物品は、熱処理炉の入口から熱処理炉の出口まで搬送される間に、徐冷される。ガラス物品を徐冷すれば、残留歪みを低減できる。
【0014】
加工装置5は、徐冷装置4で徐冷したガラス物品を所望の形状に加工する。加工装置5は、例えば切断装置、研削装置、研磨装置、及びコーティング装置から選ばれる1つ以上を含む。切断装置は、徐冷装置4で徐冷したガラスを切断する。切断装置は、例えば、徐冷装置4で徐冷したガラスにスクライブ線を形成し、スクライブ線に沿ってガラスを割断する。スクライブ線は、カッター又はレーザー光線を用いて形成される。研削装置は、徐冷装置4で徐冷したガラスを研削する。研磨装置は、徐冷装置4で徐冷したガラスを研磨する。コーティング装置は、徐冷装置4で徐冷したガラスに所望の膜を形成する。
【0015】
図示しないが、ガラス製造装置1は、清澄装置をさらに有してもよい。清澄装置は、溶解装置2で得られた溶融ガラスGを成形装置3で成形する前に、溶融ガラスG中に含まれる気泡を除去する。気泡を除去する方法として、例えば、溶融ガラスGの周辺雰囲気を減圧する方法、及び溶融ガラスGを高温に加熱する方法から選ばれる1つ以上が用いられる。清澄装置は、溶解装置2の一部であってもよい。
【0016】
次に、
図2を参照して、ガラス製造装置1の詳細について説明する。
図2のガラス製造装置1は、フロート法でガラス板を製造する。ガラス板は、例えば無アルカリガラス、アルミノシリケートガラス、ホウケイ酸ガラス又はソーダライムガラスなどである。無アルカリガラスとは、Na
2O、K
2O等のアルカリ金属酸化物を実質的に含有しないガラスを意味する。ここで、アルカリ金属酸化物を実質的に含有しないとは、アルカリ金属酸化物の含有量の合量が0.1質量%以下を意味する。
【0017】
ガラス板の用途は、特に限定されないが、例えばディスプレイ(例えば液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイ等)のカバーガラスである。ガラス板の用途がカバーガラスである場合、ガラス板は化学強化用ガラスである。化学強化用ガラスは、無アルカリガラスとは異なり、アルカリ金属酸化物を含有する。
【0018】
ガラス板の厚みは、ガラス板の用途に応じて選択される。ガラス板の用途がディスプレイのカバーガラスである場合、ガラス板の厚みは例えば0.1mm~5.0mmである。ガラス板の用途がディスプレイのガラス基板である場合、ガラス板の厚みは例えば0.1mm~0.7mmである。ガラス板の用途が自動車のウィンドシールドである場合、ガラス板の厚みは例えば0.2mm~3.0mmである。
【0019】
溶解装置2は、例えば、溶融ガラスGを収容する溶解炉21と、溶解炉21内に収容されている溶融ガラスGの上方に火炎を形成するバーナー22とを備える。溶解炉21内に投入されたガラス原料は、バーナー22が形成する火炎からの輻射熱によって溶融ガラスGに徐々に溶け込む。溶融ガラスGは、溶解装置2から成形装置3に連続的に搬送される。加熱源は、バーナー22には限定されず、電気ヒータまたは電極などであってもよい。電極は、溶融ガラスGに電流を流すことで、溶融ガラスGを発熱させる。
【0020】
成形装置3は、成形炉31を備え、成形炉31の内部で溶融ガラスGを所望の形状に成形する。成形炉31は、例えば浴槽311を有する。浴槽311は、溶融金属Mを収容する。溶融金属Mとしては、例えば溶融スズが用いられる。溶融スズの他に、溶融スズ合金なども使用可能であり、溶融金属Mは溶融ガラスGよりも高い密度を有するものであればよい。溶融ガラスGは、溶融金属Mの上に連続的に供給され、溶融金属Mの平滑な液面を利用して、帯板状のガラスリボンGRに成形される。
【0021】
成形炉31は、浴槽311の上方に天井312を有する。成形炉31の内部は、溶融金属Mの酸化を防止するため、還元性ガスで満たされ、大気圧よりも高い気圧に維持される。還元性ガスは、例えば窒素ガスと水素ガスとの混合ガスであり、窒素ガスを85体積%~98.5体積%、水素ガスを1.5体積%~15体積%含んでいる。還元性ガスは、天井312のレンガ同士の目地及び天井312の孔から供給される。
【0022】
成形装置3は、ガラスリボンGRを加熱するヒータ32を備える。ヒータ32は、例えば成形炉31の天井312から吊り下げられ、下方を通過するガラスリボンGRを加熱する。ヒータ32は、例えば電気ヒータであって、通電加熱される。ヒータ32は、ガラスリボンGRの搬送方向と幅方向に行列状に複数配列される。複数のヒータ32の出力を制御することにより、ガラスリボンGRの温度分布を制御でき、ガラスリボンGRの板厚分布を制御できる。
【0023】
徐冷装置4は、ドロスボックス41と、リフトアウトロール42と、を備える。ドロスボックス41は、熱処理炉の一例である。リフトアウトロール42は、ドロスボックス41の内部に配置され、ガラスリボンGRを溶融金属Mから引き上げる。リフトアウトロール42は、搬送ローラの一例である。リフトアウトロール42は、ガラスリボンGRの搬送方向(X軸方向)に間隔をおいて複数配置される。リフトアウトロール42の数は、特に限定されない。リフトアウトロール42は、図示しないモータ等の駆動装置によって回転駆動され、その駆動力によってガラスリボンGRを斜め上方に向けて搬送する。リフトアウトロール42の軸方向は、ガラスリボンGRの幅方向(Y軸方向)と同一方向である。
【0024】
徐冷装置4は、ガラスリボンGRの温度を調整すべく、ドロスボックス41の天井に図示しないヒータを備えてもよい。ヒータは、ガラスリボンGRの上方のみならず、下方にも設けられてもよい。ドロスボックス41の内部において、ガラスリボンGRの温度は、ガラスリボンGRのガラス転移点Tgを基準として、(Tg-50)℃~(Tg+30)℃であることが好ましい。
【0025】
徐冷装置4は、徐冷炉45と、レヤーロール46と、を備える。徐冷炉45は、ドロスボックス41の下流側に配置される。徐冷炉45は、熱処理炉の一例である。レヤーロール46は、徐冷炉45の内部に配置され、ガラスリボンGRの長手方向(X軸方向)にガラスリボンGRを搬送する。レヤーロール46は、搬送ローラの一例である。レヤーロール46は、ガラスリボンGRの搬送方向に間隔をおいて複数設けられる。レヤーロール46の数は、特に限定されない。レヤーロール46は、図示しないモータ等の駆動装置によって回転駆動され、その駆動力によってガラスリボンGRを水平方向(X軸方向)に搬送する。レヤーロール46の軸方向は、ガラスリボンGRの幅方向(Y軸方向)と同一方向である。
【0026】
徐冷装置4は、ガラスリボンGRをレヤーロール46によって搬送しながらガラスの歪点以下の温度に徐冷する。徐冷装置4は、ガラスリボンGRの温度を調整すべく、徐冷炉45の内部に図示しないヒータを備えてもよい。
【0027】
次に、
図3~
図5を参照して、成形装置3の具体例について説明する。成形装置3は、溶融ガラスGを内部に収容する成形炉31と、成形炉31の内部の気体を成形炉31の外部に排気する排気管33と、を備える。成形炉31は、例えば、浴槽311と、天井312と、側壁313と、を有する。側壁313は、浴槽311の上方に設けられる。側壁313は、レンガ層314と、レンガ層314の外側に設けられる金属層315と、を有する。側壁313は、ガラスリボンGRの幅方向両側(Y軸正方向側とY軸負方向側)に設けられる。
【0028】
排気管33は、例えば成形炉31の内部と成形炉31の外部の気圧差を利用して成形炉31の内部の気体を成形炉31の外部に排気することで、成形炉31の雰囲気を所望の雰囲気に維持する。排気管33は、
図4に示すように、ガラスリボンGRの搬送方向(X軸方向)に間隔をおいて複数設けられる。また、排気管33は、図示しないが、ガラスリボンGRの幅方向両側(Y軸正方向側とY軸負方向側)に設けられる。
【0029】
排気管33は、
図3に示すように、例えば、浴槽311と側壁313の隙間を介して気体を排気する。排気管33は、例えば、側壁313から突出する水平管331と、水平管331の先端から上方に延びる鉛直管332と、を有する。水平管331の先端には、のぞき窓としての透明板333が設けられる。
【0030】
鉛直管332は、成形炉31の外部に設けられる。鉛直管332の内部において上昇気流が生じ、その上昇気流の流れと気圧差によって排気が進む。排気されるガスは水素ガスを含んでおり、水素ガスと大気の反応によって火炎Frが形成される。火炎Frは、鉛直管332の上端に形成される。なお、気圧差を利用して排気を行う代わりに、排気ファンを利用して強制排気を行なってもよい。
【0031】
成形炉31、排気管33、及び火炎Frは、輻射熱を放射する。輻射熱とは、赤外線によって伝わる熱のことである。
【0032】
成形装置3は、熱流束計34A、34Bを備える。熱流束計34A、34Bは、成形炉31の外側において輻射熱の熱流束を測定する。熱流束(W/m2)は、単位時間に単位面積を横切る熱量である。熱流束は、熱の流れる方向の温度勾配に比例する。熱流束は、熱量だけではなく、熱の流れる方向を表すパラメータである。
【0033】
熱流束計34A、34Bは、温度計とは異なり、熱量だけではなく、熱の流れる方向をも測定することができる。よって、熱の流れを効率的に遮るように、後述する遮熱板を適切な位置に配置できる。また、熱の流れを効率的に遮ることで、無駄な遮熱板の配置を抑制でき、成形炉31からの熱の放出が滞ることを抑制でき、成形装置3の損傷又はガラスの品質劣化が生じることを抑制できる。
【0034】
熱流束計34A、34Bは、例えば回転ホルダ35に取付けられる。回転ホルダ35は、水平な回転軸36の先端に設けられる。熱流束計34Aは、回転軸36に沿う方向における熱流束を測定する。熱流束計34Bは、回転軸36と直交する方向における熱流束を測定する。回転軸36を回転させることで、回転ホルダ35と共に熱流束計34A、34Bが回転させられる。熱流束計34Aの測定方向を維持しつつ、熱流束計34Bの測定方向を変更することができる。
【0035】
成形装置3は、第1遮熱板37A、第2遮熱板37B、第3遮熱板37C、及び第4遮熱板37Dから選ばれる少なくとも1つ(本実施形態では全て)を備える。第1遮熱板37A、第2遮熱板37B、第3遮熱板37C、及び第4遮熱板37Dは、例えば熱流束計34A又は熱流束計34Bの測定結果に基づき、排気管33の周りに配置される。
【0036】
なお、成形装置3は、第1遮熱板37A、第2遮熱板37B、第3遮熱板37C、及び第4遮熱板37Dから選ばれる少なくとも1つを備えればよく、全てを備えなくてもよい。第1遮熱板37A、第2遮熱板37B、第3遮熱板37C、及び第4遮熱板37Dは、磁石による着脱式にしてもよい。また、成形装置3は、図示しない遮熱板を備えてもよい。熱流束の測定結果に応じて遮熱板を配置すればよい。
【0037】
第1遮熱板37Aは、排気管33の鉛直管332の上端に形成される火炎Frの輻射熱を、成形炉31の側壁313から遠ざかる方向に向ける。火炎Frの輻射熱による成形炉31の側壁313の熱劣化を抑制できる。また、第1遮熱板37Aは、火炎Frの輻射熱が上方に向かうのを制限する。これにより、ヒータ32に電力を供給する配線38の断線を抑制できる。第1遮熱板37Aは、例えば矩形状の上壁378と、上壁378の3つの辺から下方に延びる3つの側壁379と、を有する。
【0038】
第1遮熱板37Aは、成形炉31及び排気管33との間で熱が伝導するのを防止すべく、成形炉31及び排気管33から離隔して設けられる。成形炉31の外側には図示しないフレームが設けられる。フレームは、複数本の柱と、複数本の柱に架け渡される梁と、を含む。第1遮熱板37Aは、フレームに固定される。第1遮熱板37Aは、本実施形態では全ての排気管33の上方に設けられるが、全ての排気管33の上方に設けられなくてもよく、一部の排気管33の上方に設けられてもよい。
【0039】
第2遮熱板37Bは、排気管33の鉛直管332の上端に形成される火炎Frの輻射熱が下方に向かうのを制限する。第2遮熱板37Bの下方で作業する作業者に作用する熱量を低減できる。第2遮熱板37Bを設置する前に作業者に作用する熱量を100%とすると、第2遮熱板37Bを設置した後に作業者に作用する熱量を81%程度まで低減することができる。
【0040】
第2遮熱板37Bは、水平に配置され、排気管33の鉛直管332の上端から、成形炉31の側壁313から遠ざかる方向に延びている。第2遮熱板37Bは、本実施形態では全ての排気管33に設けられるが、全ての排気管33に設けられなくてもよく、一部の排気管33に設けられてもよい。
【0041】
熱流束計34Bは、第1遮熱板37Aを設置した後、第2遮熱板37Bを設置する前に、火炎Frから放射される輻射熱の熱流束を測定する。熱流束の測定値が閾値以上であれば、第2遮熱板37Bが設置される。なお、熱流束計34Bは、第2遮熱板37Bを設置した後に、第2遮熱板37Bから放射される輻射熱の熱流束を測定してもよい。第2遮熱板37Bを設置した効果を確認することができる。
【0042】
第3遮熱板37Cは、排気管33の鉛直管332の外周を取り囲む。第3遮熱板37Cは、鉛直管332の輻射熱が側方に向かうのを制限する。鉛直管332の横で作業する作業者に作用する熱量を低減できる。第3遮熱板37Cは、排気管33の鉛直管332の外周に巻き付けられ、筒状に形成される。第3遮熱板37Cは、のぞき窓としての透明板333を避けて設けられる。第3遮熱板37Cは、本実施形態では全ての排気管33に設けられるが、全ての排気管33に設けられなくてもよく、一部の排気管33に設けられてもよい。
【0043】
熱流束計34Aは、第3遮熱板37Cを設置する前に、排気管33に対向して配置され、排気管33から放射される輻射熱の熱流束を測定する。熱流束の測定値が閾値以上であれば、第3遮熱板37Cが設置される。なお、熱流束計34Aは、第3遮熱板37Cを設置した後に、第3遮熱板37Cから放射される輻射熱の熱流束を測定してもよい。第3遮熱板37Cを設置した効果を確認することができる。
【0044】
第4遮熱板37Dは、成形炉31の側壁313に対向して配置される。第4遮熱板37Dは、成形炉31の側壁313の輻射熱が側方に向かうのを制限する。成形炉31の側壁313の横で作業する作業者に作用する熱量を低減できる。第4遮熱板37Dは、成形炉31の側壁313に対して平行に配置され、板状に形成される。第4遮熱板37Dは、成形炉31の側壁313と、排気管33の鉛直管332との間に配置される。
【0045】
熱流束計34Aは、第4遮熱板37Dを設置する前に、成形炉31の側壁313に対向して配置され、側壁313から放射される輻射熱の熱流束を測定する。熱流束の測定値が閾値以上であれば、第4遮熱板37Dが設置される。なお、熱流束計34Aは、第4遮熱板37Dを設置した後に、第4遮熱板37Dから放射される輻射熱の熱流束を測定してもよい。第4遮熱板37Dを設置した効果を確認することができる。
【0046】
図5に示すように、第4遮熱板37Dと成形炉31との間には空気層ALが形成される。空気層ALは、断熱層として機能し、成形炉31から第4遮熱板37Dへの熱伝達を抑制する。これにより、第4遮熱板37Dの温度上昇を抑制でき、第4遮熱板37Dから放射される輻射熱を低減できる。
【0047】
第4遮熱板37Dと成形炉31との間には、空気層ALの厚みを規定するスペーサ391が設けられてもよい。スペーサ391は、例えばヒンジ392による第4遮熱板37Dの回転を制限し、空気層ALの厚みを規定する。これにより、空気層ALの厚みを所望の厚みに調節できる。
【0048】
次に、
図6を参照して、第1遮熱板37Aの構造の一例について説明する。なお、第2遮熱板37Bは、第1遮熱板37Aと同様に構成されるので説明を省略する。第1遮熱板37Aは、例えば断熱層371と断熱層371の片側に設けられる金属層372とを含む。
【0049】
断熱層371は、無機繊維と無機粒子の少なくとも1つの集合体である。無機繊維と無機粒子は、例えばセラミック、ガラス、又はカーボンで構成される。セラミックは、例えば、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、又は酸化ケイ素と酸化アルミニウムの化合物を含む。断熱層371は、無機バインダを更に含んでもよい。断熱層371は、上記の集合体を束ねるロープを含んでもよい。
【0050】
金属層372は、赤外線を反射することで、輻射熱の放射を抑制する。金属層372は、断熱層371を基準として火炎Frとは反対側に配置される。断熱層371は、火炎Frと金属層372の接触を防止し、金属層372の変色を抑制する。その結果、赤外線の反射率の低下を抑制できる。金属層372の材質は、耐熱性の高い金属であれば特に限定されないが、例えばステンレス鋼である。
【0051】
次に、
図7を参照して、第3遮熱板37Cの構造の一例について説明する。なお、第4遮熱板37Dは、第3遮熱板37Cと同様に構成されるので説明を省略する。第3遮熱板37Cは、例えば断熱層373と断熱層373を収容する金属層374とを含む。断熱層373は、無機繊維と無機粒子の少なくとも1つの集合体である。断熱層373は、無機バインダを更に含んでもよい。金属層374は、赤外線を反射することで、輻射熱の放射を抑制する。金属層374は、断熱層373を包むことで、断熱層373の形を保持する。金属層374は、例えばアルミニウム箔である。
【0052】
なお、上記実施形態では熱流束の測定結果に基づいて成形炉31の外側に遮熱板を配置するが、本開示の技術はこれに限定されない。熱流束の測定結果に基づいて溶解炉21の外側に遮熱板を配置してもよい。
【0053】
上記実施形態等に関し、下記の付記を開示する。
【0054】
[付記1]
ガラス原料を溶解炉の内部で溶解し、溶融ガラスを得ることと、前記溶融ガラスを成形炉の内部で成形することと、を有するガラス製造方法であって、
前記溶解炉または前記成形炉の外側において輻射熱の熱流束を測定することと、
前記熱流束の測定結果に基づいて、前記溶解炉または前記成形炉の外側に遮熱板を配置することと、
を有する、ガラス製造方法。
【0055】
[付記2]
前記成形炉の内部の気体を前記成形炉の外部に排気する排気管が設けられており、
前記熱流束の測定結果に基づいて、前記排気管の周りに前記遮熱板を配置することを有する、付記1に記載のガラス製造方法。
【0056】
[付記3]
溶融ガラスを成形する、成形装置であって、
溶融ガラスを内部に収容する成形炉と、
前記成形炉の内部から前記成形炉の外部に気体を排気する排気管と、
前記排気管の周りに配置される遮熱板と、
を備える、成形装置。
【0057】
[付記4]
前記成形炉の外側において輻射熱の熱流束を測定する熱流束計を備え、
前記遮熱板は、前記熱流束の測定結果に基づいて、前記排気管の周りに配置される、付記3に記載の成形装置。
【0058】
[付記5]
前記排気管は、前記成形炉の側壁から突出する水平管と、前記成形炉の外部において前記水平管の先端から上方に延びる鉛直管と、を有し、前記鉛直管の上端に火炎を形成し、
前記遮熱板は、前記火炎の輻射熱を、前記成形炉の前記側壁から遠ざかる方向に向ける第1遮熱板を含む、付記3又は4に記載の成形装置。
【0059】
[付記6]
前記排気管は、前記成形炉の側壁から突出する水平管と、前記成形炉の外部において前記水平管の先端から上方に延びる鉛直管と、を有し、前記鉛直管の上端に火炎を形成し、
前記遮熱板は、前記火炎の輻射熱が下方に向かうのを制限する第2遮熱板を含む、付記3~5のいずれか1つに記載の成形装置。
【0060】
[付記7]
前記排気管は、前記成形炉の側壁から突出する水平管と、前記成形炉の外部において前記水平管の先端から上方に延びる鉛直管と、を有し、
前記遮熱板は、前記鉛直管の外周を取り囲む第3遮熱板を含む、付記3~6のいずれか1つに記載の成形装置。
【0061】
[付記8]
前記遮熱板は、前記成形炉の側壁に対向して配置される第4遮熱板を含む、付記3~7のいずれか1つに記載の成形装置。
【0062】
[付記9]
前記遮熱板と前記成形炉との間には空気層が形成される、付記3~8のいずれか1つに記載の成形装置。
【0063】
[付記10]
前記遮熱板と前記成形炉との間には、前記空気層の厚みを規定するスペーサが設けられる、付記9に記載の成形装置。
【0064】
以上、本開示に係るガラス製造方法、及び成形装置について説明したが、本開示は上記実施形態等に限定されない。特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更、修正、置換、付加、削除、及び組み合わせが可能である。それらについても当然に本開示の技術的範囲に属する。
【符号の説明】
【0065】
1 ガラス製造装置
2 溶解装置
21 溶解炉
3 成形装置
31 成形炉
37A 第1遮熱板
37B 第2遮熱板
37C 第3遮熱板
37D 第4遮熱板
G 溶融ガラス