(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024016805
(43)【公開日】2024-02-07
(54)【発明の名称】ガス検出装置
(51)【国際特許分類】
G01N 21/61 20060101AFI20240131BHJP
【FI】
G01N21/61
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023102731
(22)【出願日】2023-06-22
(31)【優先権主張番号】P 2022119041
(32)【優先日】2022-07-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】303046277
【氏名又は名称】旭化成エレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100165951
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 憲悟
(74)【代理人】
【識別番号】100180655
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 俊樹
(72)【発明者】
【氏名】一色 翔太
(72)【発明者】
【氏名】桑田 圭一郎
(72)【発明者】
【氏名】池田 優二
【テーマコード(参考)】
2G059
【Fターム(参考)】
2G059AA01
2G059BB01
2G059CC04
2G059CC05
2G059CC09
2G059CC13
2G059CC15
2G059EE01
2G059GG01
2G059GG02
2G059JJ14
2G059KK01
(57)【要約】
【課題】小型で精度よく測定できるガス検出装置が提供される。
【解決手段】ガス検出装置は、発光部(1)と、受光部(2)と、反射面が二次曲面であって、発光部から出射された光を反射する第1のミラー(3)と、反射面が二次曲面であって、第1のミラーで反射された光を第1のミラーに対して反射する第2のミラー(4)と、を備え、第1のミラーの二次曲面と第2のミラーの二次曲面とは凸部が同じ方向を向いており、第1のミラーは、第2のミラーで反射された光を受光部に対して反射し、発光部及び受光部が搭載された基板の1つの面を基準面として、第1のミラー及び第2のミラーは基準面より高い位置に設けられ、それぞれの高さが異なる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光部と、
受光部と、
反射面が二次曲面であって、前記発光部から出射された光を反射する第1のミラーと、
反射面が二次曲面であって、前記第1のミラーで反射された光を前記第1のミラーに対して反射する第2のミラーと、を備え、
前記第1のミラーの二次曲面と前記第2のミラーの二次曲面とは凸部が同じ方向を向いており、
前記第1のミラーは、前記第2のミラーで反射された光を前記受光部に対して反射し、
前記発光部及び前記受光部が搭載された基板の1つの面を基準面として、前記第1のミラー及び前記第2のミラーは前記基準面より高い位置に設けられ、それぞれの高さが異なる、ガス検出装置。
【請求項2】
前記第1のミラーの前記反射面及び前記第2のミラーの前記反射面は、それぞれ楕円体の一部の形状を有する、請求項1に記載のガス検出装置。
【請求項3】
前記第1のミラーの前記反射面は第1の球の一部の形状を有し、前記第2のミラーの前記反射面は前記第1の球と同心球である第2の球の一部の形状を有する、請求項2に記載のガス検出装置。
【請求項4】
前記第1の球の半径は前記第2の球の半径の2倍である、請求項3に記載のガス検出装置。
【請求項5】
前記発光部及び前記受光部について、前記発光部と前記受光部との中間位置の方向を内側とし、前記内側の反対方向を外側として、
前記第1のミラーは前記発光部の外側から前記受光部の外側まで延び、前記第2のミラーは前記発光部の内側から前記受光部の内側まで延びている、請求項1から4のいずれか一項に記載のガス検出装置。
【請求項6】
前記発光部と前記受光部の組を複数含んで構成される、請求項1から4のいずれか一項に記載のガス検出装置。
【請求項7】
前記第1のミラーの前記反射面と前記第2のミラーの前記反射面との間に配置されて、前記第1のミラー及び前記第2のミラーの一方から他方へ光を反射する平面ミラーをさらに備える、請求項1から4のいずれか一項に記載のガス検出装置。
【請求項8】
前記第2のミラーの下部に、前記発光部及び前記受光部の少なくとも一方を制御する制御部をさらに備える、請求項1から4のいずれか一項に記載のガス検出装置。
【請求項9】
前記第1のミラー又は前記第2のミラーが波長選択型の反射フィルタを備える、請求項1から4のいずれか一項に記載のガス検出装置。
【請求項10】
前記第1のミラーはガスポートとして用いられる隙間を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載のガス検出装置。
【請求項11】
前記発光部の中心から前記第1のミラーの前記発光部に一番近い端部との角度をθa1とすると、前記θa1が65度以下である、請求項1から4のいずれか一項に記載のガス検出装置。
【請求項12】
前記θa1が50度以下である、請求項11に記載のガス検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示はガス検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスを検出するガス検出装置が様々な分野で利用されている。例えば特許文献1は、第一基板及び第二基板と光反射部との間の空間に気体を導入し、被検出ガスの影響を受けた光をセンサ部で検出することによって被検出ガスの存在を検出する、部品点数を削減して小型化を図ったガスセンサを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6626281号公報
【特許文献2】特開2016-054230号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、
図6及び
図7は、楕円体ミラー103を有するガス検出装置(ガスセンサ)において結像した像がぼける(収差が大きくなる)問題を説明するための図である。
図6のガス検出装置は、従来の構成の1つであって、内面が2つの楕円体を結合したミラー103である導光部材106を備える。また、光源(発光部101)と、受光部102と、平面ミラー104とは封止部材105で封止され、導光部材106も封止部材105に接着されている。発光部101から出射された光は、楕円体ミラー103で反射し、平面ミラー104で反射した後に、再び楕円体ミラー103で反射して受光部102に達する。このような構成のガス検出装置において、発光部の面積が大きい場合は受光部102上での収差が増大する。
図7に示すように、収差が大きい(像がぼけると)とスポット109のサイズが受光部102の受光面のサイズを超えることがあり(
図7の右図)、精度の劣化が生じるという問題がある。そのため、スポット109が受光面におさまって(
図7の左図)高精度に検出できるように、ガス検出装置の新たな構成が求められていた。
【0005】
例えば特許文献2は、収差を抑制する構成であるオフナー光学系を用いたデバイス製造装置を開示する。しかし、大型のデバイス製造装置の構成を小型化されたガス検出装置にそのまま採用することはできない。
【0006】
かかる点に鑑みてなされた本開示の目的は、小型で精度よく測定できるガス検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一実施形態に係るガス検出装置は、
発光部と、
受光部と、
反射面が二次曲面であって、前記発光部から出射された光を反射する第1のミラーと、
反射面が二次曲面であって、前記第1のミラーで反射された光を前記第1のミラーに対して反射する第2のミラーと、を備え、
前記第1のミラーの二次曲面と前記第2のミラーの二次曲面とは凸部が同じ方向を向いており、
前記第1のミラーは、前記第2のミラーで反射された光を前記受光部に対して反射し、
前記発光部及び前記受光部が搭載された基板の1つの面を基準面として、前記第1のミラー及び前記第2のミラーは前記基準面より高い位置に設けられ、それぞれの高さが異なる。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、小型で精度よく測定できるガス検出装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本開示の一実施形態に係るガス検出装置の構成例を示す図である。
【
図2】
図2は、
図1のガス検出装置の構成要素の配置例及び形状例を説明するための図である。
【
図3】
図3は、発光部と受光部の組を複数備えるガス検出装置の構成例を示す図である。
【
図4】
図4は、本開示の一実施形態に係るガス検出装置の構成例を示す図である。
【
図5】
図5は、発光部と受光部の組の配置を説明するための図である。
【
図6】
図6は、楕円体ミラーを有するガス検出装置において結像した像がぼける問題を説明するための図である。
【
図7】
図7は、楕円体ミラーを有するガス検出装置において結像した像がぼける問題を説明するための図である。
【
図8】
図8は、ガス検出装置の別の形状例を示す図である。
【
図9】
図9は、本開示の一実施形態に係るガス検出装置の構成例を示す図である。
【
図10】
図10は、発光部と受光部の組の配置を説明するための図である。
【
図12】
図12は、反射面を球とみなせる場合を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本開示の実施形態に係るガス検出装置が説明される。各図中、同一又は相当する部分には、同一符号が付されている。本実施形態の説明において、同一又は相当する部分については、説明を適宜省略又は簡略化する。
【0011】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係るガス検出装置の構成を示す図である。ガス検出装置は、気体中の被検出ガスの濃度測定を行う装置である。本実施形態において、ガス検出装置は導入した気体を透過した赤外線に基づいて被検出ガスの濃度を測定するNDIR(Non Dispersive InfraRed)方式の装置である。被検出ガスは、例えば二酸化炭素、水蒸気、一酸化炭素、一酸化窒素、アンモニア、二酸化硫黄、アルコール、ホルムアルデヒド、メタン、プロパン、代替フロンなどであり得る。ガス検出装置は、一例として縦×横×高さが30mm×20mm×10mmの小型の装置であって、ガスセンサとも称される。ここで、図面は模式的なものである。例えば図面における縦、横及び高さの関係などは現実のものと異なる。
【0012】
ガス検出装置は、発光部1と、受光部2と、発光部1からの光を受光部2に導く導光部として第1のミラー3及び第2のミラー4と、を備える。ガス検出装置は、少なくとも発光部1及び受光部2を封止する封止部材5をさらに備えてよい。また、ガス検出装置は、付加的に発光部1及び受光部2の少なくとも一方を制御する制御部を備えてよい。ここで、発光部1の発光面及び受光部2の受光面は、ガス検出装置の内部の空間(検知空間)に接している。ガス検出装置は、検知空間に対して気体を導入及び排出するガスポートも備えている。
【0013】
第1のミラー3の反射面は二次曲面であり、第2のミラー4の反射面も二次曲面である。ここで二次曲面とは球面と回転楕円体であってよい。第1のミラー3の二次曲面と第2のミラー4の二次曲面とは凸部が同じ方向を向いている。
図1の例では、第1のミラー3の二次曲面の凸部が上を向いており、第2のミラー4の二次曲面の凸部も上を向いている。ここで、同じ方向を向くとは、完全に同じ向きである場合に限定されず、第1のミラー3と第2のミラー4との間で光が反射されるのであれば、二次曲面の凸部の向きに少しのずれがある場合も含む。ここで「上」とは、封止部材5から見た際に、導光部材6の方向のことである。また、「上」とは、発光部1又は受光部2が水平な発光面又は受光面を有するときに、発光面又は受光面と垂直な方向でかつミラーのある方向としても定められる。本実施形態において、ガス検出装置は導光部材6を備える。
図1に示すように、導光部材6の内面に第1のミラー3が設けられており、導光部材6は、封止部材5によって、発光部1及び受光部2を覆うように固定される。本実施形態において、反射部4aと、反射部4aを支持する支持部4bと、を含む部材の表面に、第2のミラー4が設けられる。支持部4bは、上部で反射部4aと接続されており、下部で封止部材5によって固定されている。ここで、
図1の例では、横方向(高さ方向に垂直な方向)において支持部4bの長さ(幅)が反射部4aに比べて短くなっているが、このような形状に限定されるものでない。別の例として、支持部4bの幅は反射部4aと同じ(
図4参照)であってよい。また、第2のミラー4は、例えば支持部4bが無い部材に設けられてよい。つまり、第2のミラー4は、封止部材5の上に直接的に設置される反射部4aの表面に設けられてよい。
【0014】
以下に、本実施形態に係るガス検出装置の構成部材の詳細が説明される。
【0015】
<発光部>
発光部1は、被検出ガスの検出に用いられる光を発する部品である。発光部1は、被検出ガスによって吸収される波長を含む光を出力するものであれば特に制限されない。本実施形態において、発光部1が発する光は赤外線であるが、これに限定されない。
【0016】
発光部1は発光素子を含んで構成される。本実施形態において、発光素子はLED(light emitting diode、発光ダイオード)である。別の例として、発光素子はランプ、レーザー(Light Amplification by Stimulated Emission of Radiation)、有機発光素子又はMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)ヒーターなどであり得る。また、発光部1は発光素子だけでなく、発光素子で発した光を受けて受動的に光を発する受動素子を含んで構成されてよい(
図11参照)。受動素子は例えば反射鏡、光学フィルタ、蛍光体、光学像、光ファイバ、光導波路、レンズ、回折格子などである。小型化の観点から、発光部1は半導体発光素子(一例としてLED)を含むことが好ましい。また、発光素子は平面状である面光源であることが好ましい。ここで発光面とは素子の発光部1において被検出ガスと触れ合う面でかつ光学的な透過性を持つ材料でできている面である。
【0017】
<受光部>
受光部2は、検知空間に導入された気体を透過した光を受け取る部品である。受光部2は、被検出ガスによって吸収される波長を含む光の帯域に感度を有するものであれば特に制限されない。本実施形態において、受光部2が受け取る光は赤外線であるが、これに限定されない。
【0018】
受光部2は受光素子を含んで構成される。本実施形態において、受光素子はフォトダイオード(Photodiode)である。別の例として、受光素子はフォトトランジスタ、サーモパイル、焦電センサ、ボロメータ又は光音響式検出器などであり得る。また、受光部2は受光素子だけでなく、受光素子に光を導く間接素子を含んで構成されてよい。間接素子は例えば反射鏡、光学フィルタ、蛍光体、レンズ、回折格子、光ファイバ、光導波路などである。小型化の観点から、受光部2は半導体受光素子(一例としてフォトダイオード)を含むことが好ましい。ここで受光面とは素子の受光部2において被検出ガスと触れ合う面でかつ光学的な透過性を持つ材料でできている面である。
【0019】
<導光部>
導光部は発光部1から出射された光を受光部2に導く部材であり、ガス検出装置の光学系である。上記のように、導光部は反射面を二次曲面とする第1のミラー3及び第2のミラー4を含む。本実施形態において、導光部材6の内面に第1のミラー3が設けられ、第1のミラー3の反射面と第2のミラー4の反射面とが少なくとも一部において対向している。第1のミラー3は発光部1から出射された光を反射する。第2のミラー4は、第1のミラー3で反射された光を第1のミラー3に対して反射する。また、第1のミラー3は、第2のミラー4で反射された光を受光部2に対して反射する。ここで、
図1の例において、第2のミラー4は、第1のミラー3で反射された光を第1のミラー3に対して1回だけ反射しているが、複数回の反射が行われてよい。発光部1からの光は、第1のミラー3で反射されて、第2のミラー4で少なくとも1回反射されてから、第1のミラー3で反射されて受光部2に到達する。また、第1のミラー3が「発光部1から出射された光を反射する」とは、直接的に発光部1から出射された光が第1のミラー3に達する場合だけでなく、例えば別の反射鏡などを介して発光部1から出射された光が第1のミラー3に達する場合を含む。同様に、第2のミラー4で反射された光を「受光部2に対して反射する」とは、直接的に第2のミラー4で反射された光が受光部2に達する場合だけでなく、例えば別の反射鏡などを介して第2のミラー4で反射された光が受光部2に達する場合を含む。
【0020】
導光部は、第1のミラー3及び第2のミラー4の他に、補助的に反射鏡、レンズ、回折格子、光学フィルタなどをさらに備えてよい。例えば第1のミラー3若しくは第2のミラー4が波長選択型の反射フィルタを備えてよい。第1のミラー3又は第2のミラー4に波長選択型の反射フィルタを備える場合、発光部1又は受光部2に波長選択のための光学フィルタを備える必要がなくなる。これにより発光部1から第1のミラー3の光学距離と第1のミラー3から受光部2の光学的距離を等しくできるためより収差を抑制することができる。また、波長選択しつつ収差をより小さくするために、第2のミラー4が回折格子を備えてよい。
【0021】
ここで、第1のミラー3及び第2のミラー4を構成する材料は、例えば金属、ガラス、セラミックス、ステンレスなどであってよいが、この限りではない。検出感度向上の観点から、これらの反射面を構成する材料は、光の吸収係数が小さく反射率が高い材料で構成されることが好ましい。具体的には、アルミニウム、金、銀を含む合金、誘電体又はこれらの積層体のコーティングが施された樹脂筐体が好ましい。樹脂筐体の材料として、例えばLCP(液晶ポリマー)、PP(ポリプロピレン)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、PA(ポリアミド)、PPE(ポリフェニレンエーテル)、PC(ポリカーボネート)又はPPS(ポリフェニレンスルファイド)、PMMA(ポリメタクリル酸メチル樹脂)、PAR(ポリアリレート樹脂)など、及び、これらの2つ以上を混合した硬質樹脂などがあげられる。また、信頼性及び経時変化の観点から金又は金を含む合金層でコーティングされた樹脂筐体が好ましい。さらに、反射率を高めるために金属層の表面に誘電体積層膜を形成することが好ましい。導光部材6が樹脂筐体であって、内面に第1のミラー3が金属の蒸着又はめっきによって形成される場合、全体が金属材料で形成される場合と比較して、高生産性と軽量化の向上を図ることができる。さらに、封止部材5が樹脂である場合に、封止部材5との熱膨張係数差が小さくなり、熱変形を抑制し、感度の変動を抑えることができる。同様に、支持部4b及び反射部4aが樹脂筐体であって、反射部4aの表面において第2のミラー4が金属の蒸着又はめっきによって形成される場合に、高生産性と軽量化の向上を図ることができ、熱変形を抑制し、感度の変動を抑えることが可能になる。また、金属板のプレス加工にて導光部材6を作製する場合、生産性と信頼性の向上を図ることができる。金属板として、例えばアルミニウム、金、銀を含む合金、又はこれらの材料に誘電体単層膜若しくは誘電体積層のコーティングが施されたものがあげられる。
【0022】
<封止部材>
封止部材5は、発光部1及び受光部2を封止して保持する部材である。また、封止部材5は導光部を保持する。本実施形態において、導光部材6及び支持部4bが封止部材5によって保持される。ここで、保持とは、外力に対して各部材の相対的な位置関係を維持することを意味する。保持の形態は、特に制限されない。ガス検出装置が制御部を備える場合に、封止部材5は、さらに制御部を封止し、保持してよい。
【0023】
封止部材5は、発光部1、受光部2及び導光部を保持することができれば、特定の部材に限定されない。本実施形態において、封止部材5は樹脂パッケージである。本実施形態において、樹脂パッケージの内部にリードフレームが含まれており、発光部1及び受光部2はワイヤーなどによってリードフレームと電気的に接続されている。ガス検出装置が制御部を備える場合に、リードフレームを介して、発光部1、受光部2及び制御部が電気的に接続されてよい。別の例として、封止部材5は、半導体基板、プリント基板又はセラミックパッケージなどであってよい。例えば封止部材5が半導体基板である場合に、発光部1と受光部2が半導体基板上に形成されていてよい。例えば封止部材5がプリント基板である場合に、発光部1と受光部2がはんだによって電気的かつ機械的に接合されていてよい。また、導光部は、接着剤、ネジ、ツメ、はめ合い、グロメット又は溶着などによって封止部材5に対して機械的に保持される。封止部材5はガス検出装置の外部装置と電気的な接続を行うための接続端子を有してよい。
【0024】
<制御部>
制御部は、発光部1及び受光部2の少なくとも一方を制御する部材である。制御部は、受光部2から出力されたアナログ電気信号をデジタル電気信号に変換する、アナログ-デジタル変換回路を有してよい。さらに、制御部は変換されたデジタル電気信号に基づいて被検出ガスの濃度を演算する演算部を有してよい。制御部は、ガス検出装置に含まれてよいし、ガス検出装置と電気的に接続される外部装置として設けられてよい。
【0025】
制御部は、読み込むプログラムに応じた機能を実行する汎用のプロセッサ及び特定の処理に特化した専用のプロセッサの少なくとも1つを有してよい。専用のプロセッサは、特定用途向けIC(ASIC:Application Specific Integrated Circuit)を含んでよい。プロセッサは、プログラマブルロジックデバイス(PLD;Programmable Logic Device)を含んでよい。制御部は、第2のミラー4の下部にあってよい。制御部は、第2のミラー4の下部にある場合、第2のミラー4が電磁シールドとして機能し、制御部から出力される電気信号のノイズが小さくなる。ここで、第2のミラー4の下部とは、高さ方向において第2のミラー4より低い位置にあり、横方向において第2のミラー4の反射部4aの範囲内であることをいう。
【0026】
(構成の詳細)
図2は、
図1のガス検出装置の構成要素の配置及び形状を説明するための図である。ただし、発光部1、受光部2、第1のミラー3及び第2のミラー4以外の構成要素については、図示を省略している。
【0027】
本実施形態に係るガス検出装置は、上記のように、どちらの反射面も二次曲面である第1のミラー3及び第2のミラー4を含む。まず、第1のミラー3及び第2のミラー4が設けられる高さ方向の位置について説明する。第1のミラー3及び第2のミラー4は基準面より高い位置に設けられ、それぞれの高さが異なる。ここで、受光部2及び発光部1が搭載された基板の1つの面を基準面として、各ミラーの高さは、各ミラーにおける基準面から垂直方向に最も離れた反射面内の点と基準面との距離で定義される。本実施形態に係るガス検出装置は、基準面の側(受光部2及び発光部1と同じ側)に、第1のミラー3及び第2のミラー4も設けられる構成を有する。ただし、補助的な受動素子が存在する場合に(例えば
図8参照)は、補助的な受動素子の光線通過部を含み、上記の基板の1つの面に平行な仮想面を基準面としてよく、補助的な受動素子の光線通過部を含み受光部又は発光部と光学的に共役な面を基準面としてよい。
【0028】
第1のミラー3及び第2のミラー4は、発光部1及び受光部2から高さ方向に離れており、いわゆる浮いた状態となっている。そのため、第1のミラー3及び第2のミラー4は、発光部1及び受光部2からの熱の影響を受けにくく、特性変動が起きづらい。また、検知空間に導入された気体に含まれる埃が、検知空間の底部、すなわち封止部材5にたまることがあり得る。第1のミラー3及び第2のミラー4は、いわゆる浮いた状態となっているため、埃がたまりにくい。発光部1、受光部2、制御部などが配置される封止部材5は平面形状部分を多く含むので、多くの場合、封止部材5が重力に対して下方になる。すなわち、ガス検知装置の上の方向と重力加速度方向がなす角度は90°~180°となる。
【0029】
次に、幅方向(横方向)において第1のミラー3及び第2のミラー4が延びる範囲について説明する。発光部1及び受光部2について、発光部1と受光部2との中間位置の方向を内側とし、内側の反対方向を外側として、第1のミラー3は発光部1の外側から受光部2の外側まで延びる。
図2に示すように、発光部1の外側の端部と、第1のミラー3の発光部1に一番近い端部との幅方向の距離をa
1とする場合に、a
1はゼロ以上である。また、受光部2の外側の端部と、第1のミラー3の受光部2に一番近い端部との幅方向の距離をa
2とする場合に、a
2はゼロ以上である。つまり、幅方向において、第1のミラー3は発光部1及び受光部2を完全に覆うように設けられる。またa
1の長さによって光源から出射される光のうちガス検出に用いる光量の度合いが調整できる。ガス検出に用いる光量が多ければ多いほどガス検出器のSNRは高くなるため、できるだけ多くの光をガス検出に用いることがガス検出装置には求められる。しかし、導光部内のミラー又は支持部4bの構造との干渉によって、発光部1から出射される光の全てをガス検出に用いることは困難である。また光源から出射される光のうち発光面に対する法線を基準として高角度方向に出射される光は導光部を通過した後に、低角度方向に出射される光に比べ、収差の影響を受けやすい。そのため、発光部1から出射される光の全てをガス検出に用いることは困難である。発光部1の中心から第1のミラー3の発光部1に一番近い端部との角度をθa
1とすると、θa
1は65度以下が望ましい。収差の影響を小さくする場合は50度以下がより好ましい。
【0030】
また同様に受光部2の中心から第1のミラー3の受光部2に一番近い端部との角度をθa2とすると、θa2は65度以下が望ましい。上記と同様に収差の影響を小さくする場合は50度以下がより好ましい。
【0031】
これに対して、
図2に示すように、発光部1の中心から、第2のミラー4の発光部1に一番近い端部との角度をθb
1とする場合に、θb
1はゼロ以上である。また、受光部2の中心から、第2のミラー4の受光部2に一番近い端部との角度をθb
2とする場合に、θb
2はゼロ以上である。θb
1とθb
2の角度はθa
1とθa
2と同様の理由から65度以下が望ましい。発光部1の中心とは、発光面の重心であってよい。同様に受光部2の中心とは、受光面の重心であってよい。第2のミラー4は、発光部1から出射されて第1のミラー3に達する光及び第1のミラー3で反射して受光部2に達する光を遮らないように設けられる。つまり、幅方向において、第2のミラー4は発光部1及び受光部2を覆うことがないように設けられる。
【0032】
ここで、発光部1から出射された光が受光部2に到達可能であれば、第1のミラー3は複数に分離されてよい。つまり、第1のミラー3は連続した1つのミラーであってよいし、
図2のようにすきまを有するミラー3a及びミラー3bで構成されてよい。ここで、第1のミラー3が複数に分離されている場合に、分離されたミラーの総数は2つに限定されず、3つ以上であってよい。
【0033】
図2のように第1のミラー3が隙間を有するミラー3a及びミラー3bで構成される場合、この隙間をガスポートとして用いてよい。ガスポートは導光部内に被検出ガスを導入する、又は導光部内から被検出ガスを導出するためのポートである。またガスポートに防塵フィルタ9を取り付け、導光部内に塵、埃が侵入することを防ぐことが好ましい。
【0034】
上記のように、例えば
図6のような従来構成のガス検出装置では収差が大きくなることがある。本実施形態に係るガス検出装置では、第1のミラー3及び第2のミラー4の反射面がどちらも二次曲面であるため、収差が大きくなることを抑制して、受光部102の受光面内で像が結ばれるようにすることができる。また、本実施形態に係るガス検出装置では、二次曲面の曲率、第1のミラー3と第2のミラー4との間隔などを適切に定めることによって小型化が可能である。例えば
図8のように発光部1と第1のミラー3の間と、受光部2と第1のミラー3の間に平面ミラー17の組合せを配置すると低背化が実現できる。また例えば低背化の観点から、第1のミラー3と第2のミラー4との間隔は、一例として発光部1の幅の2倍より小さくすることが好ましい。このような構成によって、本実施形態に係るガス検出装置は小型で精度のよい測定が可能である。
【0035】
ここで、二次曲面の具体例として楕円体の形状が用いられてよい。つまり、第1のミラー3の反射面及び第2のミラー4の反射面は、それぞれ楕円体の一部の形状を有してよい。また、二次曲面の具体例として球の形状が用いられてよい。また、
図12に示すように、反射面と比較する理想的な球面Sを仮定すると、下記の式(1)で定められるI
errが0.1以下である場合に反射面が球であるとみなしてよい。収差の影響を小さくする場合はI
errが0.01以下であることが好ましい。ここでΩは、点Pから反射面が張る立体角である。θ及びφはこのΩの範囲内の変数である。また、サグ量差(球面からのずれを光軸に対して平行に測定した距離)がI
errとされてよい。
【0036】
【0037】
例えば第1のミラー3の反射面が第1の球の一部の形状を有し、第2のミラー4の反射面が第1の球と同心球である第2の球の一部の形状を有してよい。さらに、第1の球の半径は第2の球の半径の2倍であってよい。
図2において、同心球の中心をpとして、pから第1のミラー3までの距離であるr
eが第1の球の半径に対応する。また、pから第2のミラー4までの距離であるr
iが第2の球の半径に対応する。第1の球の半径が第2の球の半径の2倍である場合に、導光部がオフナー光学系となって収差がさらに抑制されるため、ガス検出装置はさらに精度よく測定可能である。図中では第1のミラー3と第2のミラー4を球として説明したが、球の焦点(中心点)が2点に分離した場合が回転楕円体であるため、上記の説明を回転楕円体に一般化できる。
【0038】
また、
図3に示すように、ガス検出装置は発光部1と受光部2の組を複数含んで構成されてよい。第2のミラー4の反射面が例えば球である場合に、第2のミラー4の反射面を封止部材5に投影した仮想円cの中心を中点とするように、発光部1と受光部2の組が配置される。
図3の例のガス検出装置では、発光部1aと受光部2aの組と、発光部1bと受光部2bの組と、を備えている。例えば受光部2aと受光部2bの感度を有する波長帯域を異ならせることによって、2つの異なる種類の被検出ガスを同時に検出することが可能である。また導光部の一部を共有することによりミラー反射率の変化を発光部1と受光部2のそれぞれの組合せで検出することができ、信号処理でミラー反射率の変化の影響を取り除くことができる。つまり、複数種類のガスを検出できる小型で高精度なガスセンサを実現することができる。ここで、
図3の例において発光部1と受光部2の組は2つ(2組)であるが、2組に限定されず、3組以上であってよい。
【0039】
以上のように、本実施形態に係るガス検出装置は、上記の構成によって、小型で精度よく被検出ガスを測定できる。
【0040】
[第2実施形態]
図4は、第2実施形態に係るガス検出装置の構成例を示す図である。本実施形態に係るガス検出装置は平面ミラー7をさらに備える。平面ミラー7は、第1のミラー3の反射面と第2のミラー4の反射面との間に配置されて、第1のミラー3及び第2のミラー4の一方から他方へ光を反射する。
図4の例において、平面ミラー7は反射面が高さ方向に沿うように配置されているが、第1のミラー3及び第2のミラー4の一方から他方へ光を反射可能であれば高さ方向に対して角度が設けられてよい。重複説明を回避するため、第1実施形態と異なる構成が以下に説明される。
【0041】
平面ミラー7の反射面は、幅方向において、第1実施形態(
図1)における発光部1と受光部2との中点の位置に配置されている。そのため、本実施形態において、第1のミラー3は、平面ミラー7による第1のミラー3の反射像と合わせて、
図1の第1のミラー3と同等に扱うことができる。また、第2のミラー4は、平面ミラー7による第2のミラー4の反射像と合わせて、
図1の第2のミラー4と同等に扱うことができる。そして、本実施形態に係るガス検出装置の実際のサイズは、幅方向において第1実施形態の半分になる。本実施形態に係るガス検出装置は、平面ミラー7を含むことによって、さらなる小型化が可能である。
【0042】
図5は、発光部1と受光部2の組の配置を説明するための図であって、高さ方向で上から封止部材5に向かって見た場合の一例を示す。仮想円cは
図3と同様であるが、本実施形態において、平面ミラー7による反射像と合わせて円を構成する。つまり、本実施形態において、仮想円cは半円である。仮想円cの中心で平面ミラー7によって反射された発光部1からの光が、受光部2に到達するように、受光部2が配置される。
図5の例のガス検出装置では、発光部1aと受光部2aの組と、発光部1bと受光部2bの組と、を備えている。本実施形態においても、複数種類のガスを検出できる小型で高精度なガスセンサを実現することができる。ここで、
図5の例において発光部1と受光部2の組は2つ(2組)であるが、2組に限定されず、1組であってよいし、3組以上であってよい。
【0043】
本実施形態に係るガス検出装置は、第1実施形態と同様に小型で精度よく測定可能であり、平面ミラー7を含むことによって、第1実施形態より小型化することができる。よって、本実施形態に係るガス検出装置は、小型化が求められる用途で特に有用である。
【0044】
[第3実施形態]
図9は第3実施形態に係るガス検出装置の構成例を示す図である。本実施形態に係るガス検出装置は、アクチュエータにより制御可能な平面ミラー7を備える。平面ミラー7をアクチュエータにより制御することで、平面ミラー7を挿入した導光部と挿入しない導光部とを切り替えることが可能となる。
図9において平面ミラー7は高さ方向に可動する。ただし可動方向はこれに限定されない。平面ミラー7を挿入する場合、平面ミラー7は第2実施形態と同様に、第1のミラー3の反射面と第2のミラー4の反射面との間に配置されて、第1のミラー3及び第2のミラー4の一方から他方へ光を反射する。また平面ミラー7を挿入する場合、平面ミラー7の反射面は、幅方向において、発光部1と受光部2との中点の位置に配置される。そのため第2実施形態と同様に第1のミラー3は、平面ミラー7による第1のミラー3の反射像と合わせて、平面ミラー7を挿入しない場合の第1のミラー3と同等に扱うことができる。また、第2のミラー4は、平面ミラー7による第2のミラー4の反射像と合わせて、平面ミラー7を挿入しない場合の第2のミラー4と同等に扱うことができる。
図9の例において、平面ミラー7は反射面が高さ方向に沿うように配置されているが、第1のミラー3及び第2のミラー4の一方から他方へ光を反射可能であれば高さ方向に対して角度が設けられてよい。
【0045】
図10は、発光部1と受光部2の組の配置を説明するための図であって、高さ方向で上から封止部材5に向かって見た場合の一例を示す。仮想円cは
図3と同様である。本実施形態において、平面ミラー7を導光部内に挿入した場合、構造上仮想円は半円となるが、反射像と合わせて円を構成する。平面ミラー7を導光部に挿入せず導光部内に存在しない場合に、
図10において発光部1aから出射された光は受光部2(2a´)に導かれる。平面ミラー7を導光部に挿入し導光部内に存在する場合に、発光部1aから出射された光は受光部2(2a)に導かれる。さらに受光部2aと受光部2a´に異なる波長選択型の光学フィルタを含めると、複数の波長帯において複数の被検出ガスを検出することが可能な小型のガス検出装置を実現できる。ここで、例において受光部2の組は1つ(1組)であるが、1組に限定されず、2組であってよいし、2組以上であってよい。
【0046】
本実施形態に係るガス検出装置は、第1実施形態及び第2実施形態と同様に小型で精度よく測定可能であり、平面ミラー7をアクチュエータにより制御することで、平面ミラー7を挿入した導光部と挿入しない導光部とを切り替えることが可能となる。そのため、例えば複数の波長帯において複数の被検出ガスを検出する小型のガス検出装置を実現することができる。
【0047】
本開示の実施形態について、諸図面及び実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形又は修正を行うことが容易であることに注意されたい。従って、これらの変形又は修正は本開示の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各構成部などに含まれる機能などは論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の構成部などを1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0048】
1、1a、1b 発光部
2、2a、2b 受光部
3 第1のミラー
3a、3b ミラー
4 第2のミラー
4a 反射部
4b 支持部
5 封止部材
6 導光部材
7 平面ミラー
8 ガスポート
9 防塵フィルタ
17 平面ミラー