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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168067
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】モーターカバー
(51)【国際特許分類】
   H02K 5/08 20060101AFI20241128BHJP
   B60L 15/00 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
H02K5/08 A
B60L15/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023084462
(22)【出願日】2023-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100196058
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 彰雄
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 広之
(74)【代理人】
【識別番号】100214215
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼梨 航
(72)【発明者】
【氏名】青嶋 紘
(72)【発明者】
【氏名】古▲高▼ 英浩
【テーマコード(参考)】
5H125
5H605
【Fターム(参考)】
5H125AA01
5H125FF01
5H605CC02
5H605FF06
5H605GG18
(57)【要約】
【課題】外部からの応力が加わった際の変形が抑制された樹脂製のモーターカバーの提供。
【解決手段】熱可塑性樹脂を含有するモーターカバー10であって、平面視円環状の本体部12と、本体部12の軸方向に沿って本体部12から突出するとともに、本体部12の中央部から本体部12の外周部に延びる単リブ13とを有し、単リブ13は、一部で互いに交差するリブ片13A、リブ片13B及びリブ片13Cを有する、モーターカバー10。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂を含有するモーターカバーであって、
前記モーターカバーは、平面視で円環状を有する本体部と、単リブとを有し、
前記単リブは、前記本体部の軸方向に沿って前記本体部から突出するとともに、前記本体部の中央部から前記本体部の外周部にかけて存在しており、
前記単リブは、互いに交差する複数のリブ片を有する、モーターカバー。
【請求項2】
前記単リブの突出高さの最大値は、前記本体部の軸方向の高さの最大値に対して、13%以上56%以下である、請求項1に記載のモーターカバー。
【請求項3】
モーターカバーが有する全ての前記単リブを軸方向から投影した面積の合計面積は、前記本体部を軸方向から投影した面積100%に対して、7%以上18%以下である、請求項1又は2に記載のモーターカバー。
【請求項4】
前記モーターカバーは、さらに、複数の前記単リブと交差する円形リブを有する、請求項1又は2に記載のモーターカバー。
【請求項5】
前記単リブの本数は、18本以上52本以下である、請求項1又は2に記載のモーターカバー。
【請求項6】
径方向から見て平板状である、請求項1又は2に記載のモーターカバー。
【請求項7】
前記熱可塑性樹脂の含有量は、前記モーターカバー全量に対して、15質量%以上である、請求項1又は2に記載のモーターカバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モーターカバーに関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車や電動バイク用の駆動源として、モーターが挙げられる(例えば、特許文献1参照)。モーターを保護する役割を担う部品として、モーターカバーが挙げられる。モーターカバーの形成材料として、アルミニウムが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-30818号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
部品の軽量化を図るため、モーター部品の材料として、金属材料の代わりに樹脂材料を用いることが検討されている。モーターカバーが軽いと、モーターカバーが重い場合と比べて、モーターに投入される電力が同量であっても駆動源としての出力がより高くなるため、モーターカバーが軽量であることが好ましい。
しかしながら、樹脂材料を用いたモーターカバーは、金属材料を用いたモーターカバーに比べて、外部からの応力が加わった際の変形が大きくなる傾向がある。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、外部からの応力が加わった際の変形が抑制された樹脂製のモーターカバーを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本発明は以下の態様を包含する。
[1]熱可塑性樹脂を含有するモーターカバーであって、前記モーターカバーは、平面視で円環状を有する本体部と、単リブとを有し、前記単リブは、前記本体部の軸方向に沿って前記本体部から突出するとともに、前記本体部の中央部から前記本体部の外周部にかけて存在しており、前記単リブは、互いに交差する複数のリブ片を有する、モーターカバー。
[2]前記単リブの突出高さの最大値は、前記本体部の軸方向の高さの最大値に対して、13%以上56%以下である、[1]に記載のモーターカバー。
[3]モーターカバーが有する全ての前記単リブを軸方向から投影した面積の合計面積は、前記本体部を軸方向から投影した面積100%に対して、6%以上16%以下である、[1]又は[2]に記載のモーターカバー。
[4]前記モーターカバーは、さらに、複数の前記単リブと交差する円形リブを有する、[1]~[3]のいずれか一項に記載のモーターカバー。
[5]前記単リブの本数は、18本以上52本以下である、[1]~[4]のいずれか一項に記載のモーターカバー。
[6]径方向から見て平板状である、[1]~[5]のいずれか一項に記載のモーターカバー。
[7]前記熱可塑性樹脂の含有量は、前記モーターカバー全量に対して、50質量%以上である、[1]~[6]のいずれか一項に記載のモーターカバー。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、外部からの応力が加わった際の変形が抑制された樹脂製のモーターカバーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】モーターカバーの一実施形態を示す概略図である。
図2】モーターカバーの一実施形態を示す概略図である。
図3】モーターカバーの一実施形態を示す概略図である。
図4】モーターカバーの一実施形態を示す概略図である。
図5】比較例のモーターカバーを示す概略図である。
図6】比較例のモーターカバーを示す概略図である。
図7】比較例のモーターカバーを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、本実施形態のモーターカバーについて説明する。なお、以下の全ての図面においては、各構成要素の寸法や比率、角度は、実物に対して異なる場合がある。
【0010】
本実施形態のモーターカバーは、熱可塑性樹脂を含有する。
熱可塑性樹脂として、具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン樹脂;塩化ビニル、塩化ビニリデン酢酸ビニル、ポリビニルアルコール等のビニル系樹脂;ポリスチレン、アクリロニトリル-スチレン樹脂(AS樹脂)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂(ABS樹脂)等のポリスチレン系樹脂;ポリアミド6(ナイロン6)、ポリアミド66(ナイロン66)、ポリアミド11(ナイロン11)、ポリアミド12(ナイロン12)、ポリアミド46(ナイロン46)、ポリアミド610(ナイロン610)、ポリテトラメチレンテレフタルアミド(ナイロン4T)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド(ナイロン6T)、ポリメタキシリレンアジパミド(ナイロンMXD6)、ポリノナメチレンテレフタルアミド(ナイロン9T)、ポリデカメチレンテレフタルアミド(ナイロン10T)等のポリアミド系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、液晶ポリエステル等のポリエステル系樹脂;変性ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリフェニルスルホン等のポリスルホン系樹脂;直鎖型ポリフェニレンスルフィド、架橋型ポリフェニレンスルフィド、半架橋型ポリフェニレンスルフィドなどのポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン等のポリエーテルケトン;ポリカーボネート;ポリフェニレンエーテル;熱可塑性ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド等のポリイミド系樹脂などが挙げられる。
【0011】
本実施形態における熱可塑性樹脂としては、モーターカバーの強度向上の観点から、ポリエーテルスルホンが好ましい。
【0012】
・ポリエーテルスルホン
ポリエーテルスルホンは、典型的には、2価の芳香族基(芳香族化合物から、その芳香環に結合した水素原子を2個除いてなる残基)とスルホニル基(-SO-)と酸素原子とを含む繰返し単位を有する樹脂である。ポリエーテルスルホンは、耐熱性や耐薬品性の点から、下記式(S1)で表される繰返し単位(以下、「繰返し単位(S1)」ということがある。)を有することが好ましく、さらに、下記式(S2)で表される繰返し単位(以下、「繰返し単位(S2)」ということがある。)や、下記式(S3)で表される繰返し単位(以下、「繰返し単位(S3)」ということがある。)などの他の繰返し単位を1種以上有していてもよい。
【0013】
(S1)-Ph-SO-Ph-O-
【0014】
PhおよびPhは、それぞれ独立に、フェニレン基を表す。前記フェニレン基にある水素原子は、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基またはハロゲン原子で置換されていてもよい。
【0015】
(S2)-Ph-R-Ph-O-
【0016】
PhおよびPhは、それぞれ独立に、フェニレン基を表す。前記フェニレン基にある水素原子は、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基またはハロゲン原子で置換されていてもよい。Rは、アルキリデン基、酸素原子または硫黄原子を表す。
【0017】
(S3)-(Ph-O-
【0018】
Phは、フェニレン基を表す。前記フェニレン基にある水素原子は、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基またはハロゲン原子で置換されていてもよい。nは、1~3の整数を表す。nが2以上である場合、複数存在するPhは、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0019】
Ph~Phのいずれかで表されるフェニレン基は、p-フェニレン基であってもよいし、m-フェニレン基であってもよいし、o-フェニレン基であってもよいが、p-フェニレン基であることが好ましい。
【0020】
前記フェニレン基にある水素原子を置換していてもよいアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、n-ヘキシル基、2-エチルヘキシル基、n-オクチル基およびn-デシル基が挙げられ、その炭素数は、例えば1~10である。
【0021】
前記フェニレン基にある水素原子を置換していてもよいアリール基の例としては、フェニル基、o-トリル基、m-トリル基、p-トリル基、1-ナフチル基および2-ナフチル基が挙げられ、その炭素数は、例えば6~20である。前記フェニレン基にある水素原子がこれらの基で置換されている場合、置換される水素原子の数は、前記フェニレン基毎に、それぞれ独立に、例えば2個以下であり、好ましくは1個以下である。
【0022】
Rであるアルキリデン基の例としては、メチレン基、エチリデン基、イソプロピリデン基および1-ブチリデン基が挙げられ、その炭素数は、例えば1~5である。
【0023】
ポリエーテルスルホンは、繰返し単位(S1)を、全繰返し単位の合計に対して、50モル%以上有することが好ましく、80モル%以上有することがより好ましく、繰返し単位として実質的に繰返し単位(S1)のみを有することがさらに好ましい。ポリエーテルスルホンは、繰返し単位(S1)~(S3)を、それぞれ独立に、2種以上有してもよい。
【0024】
ポリエーテルスルホンは、それを構成する繰返し単位に対応するジハロゲノスルホン化合物とジヒドロキシ化合物とを重縮合させることにより、製造することができる。
【0025】
ポリエーテルスルホンの還元粘度は、例えば0.3dL/g以上であり、好ましくは0.33dL/g以上0.45dL/g以下であり、より好ましくは0.36dL/g以上0.41dL/g以下である。還元粘度が0.3dL/g以上であると、耐熱性や強度・剛性が向上し易い。一方、還元粘度が0.45dL/g以下であると、成形温度や溶融粘度が高くなりすぎず、所定の形状に成形しやすい。
【0026】
本実施形態のモーターカバーは、一種の熱可塑性樹脂を有していてもよいし、二種以上の熱可塑性樹脂を有していてもよい。
【0027】
本実施形態のモーターカバーにおける熱可塑性樹脂の含有量は、モーターカバー全量に対して、15質量%であってよく、35質量%であってよく、45質量%であってよく、50質量%であってよい。本実施形態のモーターカバーは、熱可塑性樹脂のみからなるモーターカバーであってもよい。
【0028】
本実施形態のモーターカバーは、充填材、添加剤等をさらに含有してもよい。
【0029】
充填材は、繊維状充填材であってもよいし、板状充填材であってもよいし、球状および球状以外の粒状充填材であってもよい。また、充填材は、無機充填材であってもよいし、有機充填材であってもよい。
【0030】
繊維状無機充填材の例としては、ガラス繊維;パン系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維などの炭素繊維;シリカ繊維、アルミナ繊維、シリカアルミナ繊維などのセラミック繊維;およびステンレス繊維などの金属繊維が挙げられる。また、チタン酸カリウムウイスカー、チタン酸バリウムウイスカー、ウォラストナイトウイスカー、ホウ酸アルミニウムウイスカー、窒化ケイ素ウイスカー、炭化ケイ素ウイスカーなどのウイスカーも挙げられる。
【0031】
繊維状有機充填材の例としては、ポリエステル繊維およびアラミド繊維が挙げられる。
【0032】
板状無機充填材の例としては、タルク、マイカ、グラファイト、ウォラストナイト、ガラスフレーク、硫酸バリウムおよび炭酸カルシウムが挙げられる。マイカは、白雲母であってもよいし、金雲母であってもよいし、フッ素金雲母であってもよいし、四ケイ素雲母であってもよい。
【0033】
粒状無機充填材の例としては、シリカ、アルミナ、酸化チタン、ガラスビーズ、ガラスバルーン、窒化ホウ素、炭化ケイ素および炭酸カルシウムが挙げられる。
【0034】
充填材の配合量は、熱可塑性樹脂100質量部に対して、例えば0~20質量部である。
【0035】
添加剤の例としては、離型剤、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、界面活性剤、難燃剤および着色剤が挙げられる。
【0036】
離型剤としては、例えば、モンタン酸、その塩、そのエステル、その多価アルコールとのハーフエステル、ステアリルアルコール、ステアラミドおよびポリエチレンワックスなどが挙げられ、好ましくはペンタエリスリトールの脂肪酸エステルが挙げられる。
【0037】
添加剤の配合量は、熱可塑性樹脂100質量部に対して、例えば0~5質量部である。
【0038】
本実施形態のモーターカバーは、平面視で円環状を有する本体部と、前記本体部の軸方向に沿って前記本体部から突出するとともに、前記本体部の中央部から前記本体部の外周部に延びる複数の単リブとを有する。前記単リブは、互いに交差する複数のリブ片を有する。より具体的には、前記単リブは、互いに交差する方向に延びるとともに、一部で互いに接触する複数のリブ片を有する。
前記本体部は、平面視で円環状である。
【0039】
本明細書において「平面視」とは、本体部を軸方向から見ることを指す。
軸方向とは、平面視で円環状を有する本体部の中心軸に沿う方向である。また、軸方向に交差する方向を径方向といい、中心軸の軸線回りに周回する方向を周方向という。
【0040】
本実施形態のモーターカバーは、平面視したときに円環状である。軸方向におけるモーターカバーの本体部の高さは種々の高さであってよく、本体部の凹凸については種々の形状であってよい。例えば、本実施形態のモーターカバーは、径方向から見て平板状である形状や、軸方向に延在する筒状である形状であってよい。
【0041】
「円環状」における「円」の形状は、誤差を含み楕円形であってもよい。モーターカバーは、モーターカバーを他の部材に取り付けるためのねじ穴のような、モーターカバーが機能するために必要な構成を備えていてもよい。
【0042】
単リブは、本体部の中央部から本体部の外周部に延びるリブであって、互いに交差する複数のリブ片を有する。本実施のモーターカバーが複数の単リブを有する場合、複数の単リブは、周方向に並んで配置される。本実施のモーターカバーが複数の単リブを有する場合、複数の単リブは、周方向に等間隔に並んで配置されていることが好ましい。
【0043】
本実施のモーターカバーが複数の単リブを有する場合、複数の単リブは同一形状であっても、異なる形状であってもよいが、同一形状であることが好ましい。
【0044】
本実施のモーターカバーが複数の単リブを有する場合、平面視において線対称にあることが好ましく、点対称にあることがより好ましい。
【0045】
本実施形態のモーターカバーは、一部で互いに接触するリブ片を有する単リブを有するため、例えば、本実施形態のモーターカバーとリブ以外の形状が同じ形状であり、かつ、リブ片を有しない直線状のリブを有するモーターカバーに比べて、様々な方向からの力に対して変形を抑えることができる。
【0046】
図1は、モーターカバー10の概略図である。
モーターカバー10は、インホイールモーターのカバーである。
モーターカバー10には不図示の永久磁石が備えられており、ローターとなる。
モーターカバー10は、不図示のコイルを備えるステーターと連結する。
【0047】
本明細書において、中心軸Cが延びる方向を軸方向といい、軸方向に交差する方向を径方向といい、中心軸Cの軸線回りに周回する方向を周方向という。
【0048】
モーターカバー10は、平面視円環状の本体部12と、本体部12の軸方向に沿って本体部12から突出するとともに、本体部12の中央部から本体部12の外周部に延びる複数の単リブ13とを有する射出成形体である。
モーターカバー10は、軸方向の内側(単リブ13とは反対側)に開口する有底筒状である。
【0049】
本体部12は、平面視で円環状である。
本体部12は、不図示のステーターの連結部に対して、軸方向で重ね合わせられる。
【0050】
本体部12は、軸方向から見て円環状の円環部122と、円環部122の外縁端部から軸方向の内側(単リブ13とは反対側)に延びる側壁部121とを有する。
したがって、本体部12は、円環部122と、側壁部121とで囲まれた空洞部を有する。
【0051】
円環部122の直径は、例えば130~200mmである。
円環部122の軸方向の厚さは、例えば5~15mmである。
【0052】
側壁部121の軸方向の高さの最大値は、例えば60~170mmである。
側壁部121の径方向の厚さは、例えば5~15mmである。
【0053】
円環部122は、円環状の中心部122Aと、中心部122Aの外径よりも外径が大きい円環状の周縁部122Bとを備える。
円環状の中心部122Aには、中心部122Aを軸方向に貫通する貫通孔Hが形成されている。貫通孔Hは、周方向に間隔をあけて複数(例えば、4つ)形成されている。貫通孔Hは、金属製のカラーが挿入された状態で形成されていてもよい。
【0054】
本体部12は、熱可塑性樹脂を含む射出成形体であるが、不図示のステーターの連結部と直接連結する中心部122Aは金属製であってもよい。当該金属としては、例えば、アルミニウム合金(A2017等)が挙げられる。
中心部122Aが金属製の場合、インサート成形によりモーターカバー10を製造することができる。
【0055】
単リブ13は、互いに交差する方向に延びるとともに、一部で互いに接触する複数のリブ片13A及びリブ片13Bを有する。
単リブ13は、周縁部112Bの外側端部から、内側(中心部122A側)端部まで形成されている。
単リブ13は、周方向に等間隔に並んで配置されている。
【0056】
モーターカバー10において、単リブ13は、径方向外側に位置する部分が、径方向内側に位置する部分に対して二股に延びるY字形状である。具体的には、リブ片13A、リブ片13B及びリブ片13Cは、途中で交差しており、単リブ13はY字形状となっている。
【0057】
単リブ13の突出高さの最大値は、例えば5~45mmである。
単リブ13の突出高さとは、単リブ13の軸方向の高さである。
【0058】
単リブ13の突出高さの最大値は、本体部12の軸方向の高さの最大値に対して、13%以上であることが好ましく、17%以上であることがより好ましく、20%以上であることがさらに好ましい。
単リブ13の突出高さの最大値は、本体部12の厚さの最大値に対して、56%以下であることが好ましく、53%以下であることがより好ましく、49%以下であることがさらに好ましい。
【0059】
本体部12の軸方向の高さの最大値に対する単リブ13の突出高さの最大値が、上記の好ましい下限値以上であれば、モーターカバー10に力が加わった際の変形をより抑制することができる。
本体部12の軸方向の高さの最大値に対する単リブ13の突出高さの最大値が。上記の好ましい上限値以下であれば、よりモーターカバー10の軽量化及び低コスト化が図れる。
【0060】
例えば、単リブ13の突出高さの最大値は、本体部12の厚さの最大値に対して、13%以上56%以下であることが好ましく、17%以上53%以下であることがより好ましく、20%以上49%以下であることがさらに好ましい。
【0061】
単リブ13の突出高さの最大値は、側壁部121の径方向の厚さの最大値に対して、13%以上であることが好ましく、17%以上であることがより好ましく、20%以上であることがさらに好ましい。
単リブ13の突出高さの最大値は、側壁部121の径方向の厚さの最大値に対して、56%以下であることが好ましく、53%以下であることがより好ましく、49%以下であることがさらに好ましい。
【0062】
側壁部121の径方向の厚さの最大値に対にする単リブ13の突出高さの最大値が、上記の好ましい下限値以上であれば、モーターカバー10に力が加わった際の変形をより抑制することができる。
側壁部121の径方向の厚さの最大値に対にする単リブ13の突出高さの最大値が、上記の好ましい上限値以下であれば、よりモーターカバー10の軽量化及び低コスト化が図れる。
【0063】
例えば、単リブ13の突出高さの最大値は、側壁部121の径方向の厚さの最大値に対して、13%以上56%以下であることが好ましく、17%以上53%以下であることがより好ましく、20%以上49%以下であることがさらに好ましい。
【0064】
単リブ13は、末端に向けて、単リブ13の突出高さが次第に低くなる形状を有することが好ましい。
【0065】
単リブ13の幅(径方向の厚さ)の最大値は、例えば、3~6mmである。
【0066】
モーターカバーが有する全ての単リブ13の軸方向の投影面積の合計面積は、本体部12の軸方向の投影面積に対して、7%以上であってよく、8%以上であってよく、9%以上であってもよい。
モーターカバーが有する全ての単リブ13の軸方向の投影面積の合計面積は、本体部12の軸方向の投影面積に対して、18%以下であってよく、17%以下であってもよい。
単リブの軸方向の投影面積の合計面積は、CADソフト(例えば、SolidWorks)により、それぞれの単リブの投影面積を算出し、当該投影面積を合計することで算出することができる。
【0067】
複数の単リブ13の合計体積が上記の好ましい下限値以上であれば、モーターカバー10に力が加わった際の変形をより抑制することができる。
複数の単リブ13の合計体積が上記の好ましい上限値以下であれば、よりモーターカバー10の軽量化及び低コスト化が図れる。
【0068】
例えば、モーターカバーが有する全ての単リブ13の軸方向の投影面積の合計面積は、本体部12の軸方向の投影面積に対して、7%以上18%以下であってよく、8%以上18%以下であってよく、9%以上17%以下であってもよい。
【0069】
単リブ13の本数は、18本以上52本以下であることが好ましい。
【0070】
モーターカバー10は、中央部から放射状に広がる複数の単リブ13が途中で分岐しており、Y字形状となっている。そのため、モーターカバー10を軽量化及びコスト低下させつつ、特に変形が起こりやすい円環部122の外周の機械的強度がより高められている。
【0071】
図2は、モーターカバー20の概略図である。
モーターカバー20は、単リブの形状以外は、上述したモーターカバー10と同一である。
【0072】
モーターカバー20において、単リブ23は、径方向内側に位置する部分が、径方向外側に位置する部分に対して二股に延びるY字形状である。具体的には、リブ片23A、リブ片23B及びリブ片23Cが交差しており、単リブ23全体でY字形状を形成している。加えて、隣接する単リブ23同士は、一部で互いに交差している。
【0073】
モーターカバー20は、円環部222の外縁から放射状に広がる複数の単リブ23が途中で分岐しており、Y字形状となっている。そのため、モーターカバー20を軽量化及びコスト低下させつつ、ステーターと連結され、特に応力がかかりやすい周縁部222Bの中央部の機械的強度がより高められている。
【0074】
図3は、モーターカバー30の概略図である。
モーターカバー30は、単リブの形状以外は、上述したモーターカバー10と同一である。
【0075】
モーターカバー30は、上述した単リブ23と同様に、円環部322の中心部から外縁に向かって互いに交差する方向に延びるリブ片33A及びリブ片33Bが、途中で一体となりリブ片33Cとなり、単リブ33全体で逆Y字形状を形成している。加えて、隣接する単リブ33同士は、一部で互いに接触している。さらに、単リブ33の内側(中心部322A側)末端は、2つ隣の単リブ33の内側末端と接触している。
【0076】
モーターカバー30は、複数の単リブ33が途中で分岐しており、Y字形状となっている。さらに、隣接する単リブ33同士は、一部で互いに交差している。単リブ33は、単リブ22に比べて、より径方向外側の位置から二股になっている。そのため、モーターカバー30は、上述したモーターカバー20よりも応力がかかりやすい周縁部322Bの中央部の機械的強度がさらに高められている。
【0077】
図4は、モーターカバー40の概略図である。
モーターカバー40は、単リブ43に加えて、本体部42の周方向に沿って延びるとともに、複数の単リブ43と交差する2つの円形リブ44を有する。
2つの円形リブ44は、本体部42の外円および内円と同心円状である。
【0078】
複数の単リブ43と2つの円形リブ44が交わる箇所は、一つは単リブ43内のリブ片43A及び43Bの交点であり、もう一つは隣り合う単リブ43同士の交点である。
複数の単リブ43と2つの円形リブ44が交わる箇所を上記の交点にすることで、トラス構造を形成することができ、モーターカバー40の機械的強度をより高めることができる。
【0079】
図面では、モーターカバー40として、2つの円形リブ44を有するモーターカバーが例示されているが、本実施形態のモーターカバーが有する円形リブの個数は、1つであっても、3つ以上であってもよい。
【0080】
モーターカバー40は、上述した単リブ43と同様に、円環部422の中心部から外縁に向かって互いに交差する方向に延びるリブ片43A及びリブ片43Bが、途中で一体となり、単リブ43全体で逆Y字形状を形成している。加えて、隣接する単リブ43同士は、一部で互いに接触している。さらに、単リブ43の内側(中心部322A側)末端は、2つ隣の単リブ43の内側末端と接触している。
【0081】
モーターカバー40は、上述したモーターカバー30に比べて、さらに円形リブ44を有する。そのため、モーターカバー40は、上述したモーターカバー30よりも、特に変形が起こりやすい円環部422の外周、及び、特に応力がかかりやすい周縁部422Bの中央部の機械的強度がより高められている。
【0082】
以上説明した本実施形態のモーターカバーは、特に車両用のインホイールモーターカバーとして有用である。
【0083】
本実施形態のモーターカバーの単リブの形状は、上述したモーターカバー10~40の単リブの形状に限定されず、2つのリブ片の末端のみが接触するV字形状であってもよく、2つのリブ片が交差するX字形状であってもよい。
【0084】
上述したモーターカバー10~40は、いずれも単リブが3つのリブ片を有していたが、2つでも、4つ以上であってもよい。
【実施例0085】
以下、具体的な実施例により、本発明についてさらに詳しく説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施例に何ら限定されるものではない。
【0086】
実施例においては、プラスチック射出成形のシミュレーションソフトウェア(CATIA V5;ダッソー・システムズ社製)を用いて解析を行った。
【0087】
解析を行ったモーターカバーは、直径が279mm、中心部(アルミニウムインサート)の直径が145mm、高さが70.4mmの平面視円環状を呈する。モーターカバーの厚さは6mmである。
また、側壁部の内側には磁石を備える。
【0088】
(実施例1~4、比較例1~3、参考例1)
各例のモーターカバーの相違点はリブ部分のみである。
実施例1のモーターカバーは、図1に示すモーターカバー10と同一の形状である。
実施例2のモーターカバーは、図2に示すモーターカバー20と同一の形状である。
実施例3のモーターカバーは、図3に示すモーターカバー30と同一の形状である。
実施例4のモーターカバーは、図4に示すモーターカバー40と同一の形状である。
【0089】
比較例1のモーターカバーは、図5に示すリブの無いモーターカバーである。
比較例2のモーターカバーは、図6に示す単リブが1つのリブ片で構成されているモーターカバーである。
比較例3のモーターカバーは、図7に示す円形リブのみを有するモーターカバーである。
参考例のモーターカバーは、アルミニウム合金(A2017)製のモーターカバーであり、図5に示すリブの無いモーターカバーである。
【0090】
図1~4に示す各形状のモーターカバーについて、以下の解析条件で、アルミニウムインサート部分は固定したまま、軸方向、及び、径方向に振動加速度をかけた解析を実施した。その結果を表1に示す。
【0091】
[シミュレーションにおける解析条件]
・形成材料
樹脂:ポリエーテルスルホン(住友化学社製;商品名「スミカエクセル(登録商標)PES 4100P」)60質量%
充填剤:炭素フィラー(三菱ケミカル株式会社製、;商品名「パイロフィル(登録商標)CFチョップ、TR03M」;ポリエーテルスルホン100質量部に対して66質量部)
【0092】
・形成材料の物性
密度:1.51
ヤング率:26.3GPa
ポアソン比:0.38
降伏強度:188Mpa
【0093】
・アルミニウムインサート
アルミニウム合金 A2017
密度:2.71
ヤング率:69GPa
ポアソン比:0.28
降伏強度:195Mpa
【0094】
・磁石
鋼材
密度:7.65
ヤング率:1.20GPa
ポアソン比:0.34
降伏強度:300Mpa
【0095】
振動加速度:20G
温度:23℃
【0096】
【表1】
【0097】
表1に示す通り、実施例のモーターカバーは、比較例のモーターカバーに比べて、軸方向及び径方向のいずれの方向においても、最大変位が低く、力が加わった際の変形がより抑制されていることが確認できた。
【0098】
(実施例5、6、比較例4、5)
各例のモーターカバーの相違点はリブ部分のみである。
実施例5のモーターカバーは、リブ幅を3mmから6mmに変更したこと以外は、上記実施例4のモーターカバー(図4)と同一のモーターカバーである。
実施例6のモーターカバーは、リブの突出高さを10mmから40mmに変更したこと以外は、上記実施例4のモーターカバー(図4)と同一のモーターカバーである。
【0099】
比較例4のモーターカバーは、リブ幅を3mmから6mmに変更したこと以外は、上記比較例2のモーターカバー(図6)と同一のモーターカバーである。
比較例5のモーターカバーは、リブの突出高さを10mmから40mmに変更したこと以外は、上記比較例2のモーターカバー(図6)と同一のモーターカバーである。
【0100】
【表2】
【0101】
表2に示す通り、リブの突出高さ及び幅を変更した場合であっても、実施例のモーターカバーは、比較例のモーターカバーに比べて、軸方向及び径方向のいずれの方向においても、最大変位が低く、力が加わった際の変形がより抑制されていることが確認できた。
【符号の説明】
【0102】
10、20、30、40…モーターカバー、12、22、32、42…本体部、13、23、33、43…単リブ、13A、13B、13C、23A、23B、23C、33A、33B、33C、43A、43B、43C…リブ片、121、221、321、421…側壁部、122、222、322、422…円環部、122A、222A、322A、422A…中心部、122B、222B、322B、422B…周縁部、H…貫通孔、44…円形リブ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7