(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168153
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】加工装置
(51)【国際特許分類】
B24B 55/02 20060101AFI20241128BHJP
H01L 21/301 20060101ALI20241128BHJP
B23Q 11/10 20060101ALI20241128BHJP
B24B 27/06 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
B24B55/02 D
H01L21/78 F
B23Q11/10 F
B24B27/06 M
B23Q11/10 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023084590
(22)【出願日】2023-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 一輝
【テーマコード(参考)】
3C011
3C047
3C158
5F063
【Fターム(参考)】
3C011EE01
3C047FF06
3C047GG01
3C047GG07
3C158AA03
3C158AA14
3C158AA16
3C158AB04
3C158AC02
3C158AC04
3C158BA05
3C158BA09
3C158BB04
3C158CB05
3C158DA17
5F063AA44
5F063DD01
5F063DD21
5F063DD23
5F063FF22
5F063FF23
5F063FF28
(57)【要約】
【課題】切削水を使用する加工装置において、大量の切削水が使用されて不経済であるという問題を解消できる加工装置を提供する。
【解決手段】ウエーハWを保持するチャックテーブル7と、チャックテーブル7に保持されたウエーハWを切削する切削手段9と、チャックテーブル7と切削手段9とを相対的に加工送りする送り手段と、を含み、切削手段9は、外周に切り刃91aを備えた切削ブレード91と、切削ブレード91を回転可能に支持する端部を備えたスピンドル92と、スピンドル92を回転可能に支持し、駆動源を備えたスピンドルハウジング93と、スピンドルハウジング93の端部に装着され切削ブレード91を覆うカバー手段94とを含み、カバー手段94は、切削ブレード91を冷却するマイクロアイス130を噴射するマイクロアイス噴射ノズル95、96を備えている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状物を加工する加工装置であって、
板状物を保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された板状物を切削する切削手段と、該チャックテーブルと該切削手段とを相対的に加工送りする送り手段と、を含み、
該切削手段は、外周に切り刃を備えた切削ブレードと、該切削ブレードを回転可能に支持する端部を備えたスピンドルと、該スピンドルを回転可能に支持し、駆動源を備えたスピンドルハウジングと、該スピンドルハウジングの端部に装着され切削ブレードを覆うカバー手段と、を含み、
該カバー手段は、切削ブレードを冷却するマイクロアイスを噴射するマイクロアイス噴射ノズルを備えている加工装置。
【請求項2】
該マイクロ噴射ノズルは、切削ブレードを挟むように配設された切り刃の側面にマイクロアイスを噴射する一対の側面ノズル、又は切削ブレードの切り刃の先端に向けてマイクロアイスを噴射する先端側ノズルの少なくともいずれかを含む請求項1に記載の加工装置。
【請求項3】
該マイクロアイス噴射ノズルは、一端からエアーを供給するエアー供給パイプと、該エアー供給パイプの他端に配設されエアーを供給する流路を絞る絞り部及び該絞り部に連結された拡張部を含む噴射部と、該噴射部の絞り部に他端が連結され一端から切削水を供給する切削水供給パイプとを含み、
該エアー供給パイプに供給されるエアーの圧力と、該噴射部の絞り部に供給される切削水の流量とが調整可能であり、該エアーの圧力を0.5~1.0MPaの範囲で調整し、該切削水の流量を5~50mL/分の範囲で調整することで、マイクロアイス噴射ノズルから噴射されるマイクロアイスの流量、及び硬さが調整される請求項2に記載の加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板状物を加工する加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
IC、LSI等の複数のデバイスが分割予定ラインによって区画され表面に形成されたウエーハは、ダイシング装置によって個々のデバイスチップに分割されて携帯電話、パソコン等の電気機器に利用される。
【0003】
ダイシング装置は、ウエーハを保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持されたウエーハを切削する切削ブレードを備えた切削手段と、該チャックテーブルと該切削手段とを相対的に加工送りする送り手段とを備え、該切削ブレードとウエーハの加工点とに切削水を供給しながらウエーハを個々のデバイスチップに分割することができる(例えば特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来のダイシング装置においては、切削水として1分間に2~3Lの水が使用され、1台のダイシング装置を8時間稼働すると、約1tの純水が切削水として使用されることになり、不経済であるという問題がある。また、この問題は、加工後の切削水を濾過して純水化する廃液濾過装置を使用したとしても、該廃液濾過装置の稼働率が高くなり、同様に不経済であるという問題が生じ得る。
【0006】
本発明は、上記事実に鑑みなされたものであり、その主たる技術課題は、切削水を使用する加工装置において、大量の切削水が使用されて不経済であるという問題を解消できる加工装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記主たる技術課題を解決するため、本発明によれば、板状物を加工する加工装置であって、板状物を保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された板状物を切削する切削手段と、該チャックテーブルと該切削手段とを相対的に加工送りする送り手段と、を含み、該切削手段は、外周に切り刃を備えた切削ブレードと、該切削ブレードを回転可能に支持する端部を備えたスピンドルと、該スピンドルを回転可能に支持し、駆動源を備えたスピンドルハウジングと、該スピンドルハウジングの端部に装着され切削ブレードを覆うカバー手段とを含み、該カバー手段は、切削ブレードを冷却するマイクロアイスを噴射するマイクロアイス噴射ノズルを備えている加工装置が提供される。
【0008】
該マイクロ噴射ノズルは、切削ブレードを挟むように配設された切り刃の側面にマイクロアイスを噴射する一対の側面ノズル、又は切削ブレードの切り刃の先端に向けてマイクロアイスを噴射する先端側ノズルの少なくともいずれかを含むことが好ましい。また、該マイクロアイス噴射ノズルは、一端からエアーを供給するエアー供給パイプと、該エアー供給パイプの他端に配設されエアーを供給する流路を絞る絞り部及び該絞り部に連結された拡張部を含む噴射部と、該噴射部の絞り部に他端が連結され一端から切削水を供給する切削水供給パイプと、を含み、該エアー供給パイプに供給されるエアーの圧力と、該噴射部の絞り部に供給される切削水の流量とが調整可能であり、該エアーの圧力を0.5~1.0MPaの範囲で調整し、該切削水の流量を5~50mL/分の範囲で調整することで、マイクロアイス噴射ノズルから噴射されるマイクロアイスの流量、及び硬さが調整するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の加工装置は、板状物を保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された板状物を切削する切削手段と、該チャックテーブルと該切削手段とを相対的に加工送りする送り手段と、を含み、該切削手段は、外周に切り刃を備えた切削ブレードと、該切削ブレードを回転可能に支持する端部を備えたスピンドルと、該スピンドルを回転可能に支持し、駆動源を備えたスピンドルハウジングと、該スピンドルハウジングの端部に装着され切削ブレードを覆うカバー手段とを含み、該カバー手段は、切削ブレードを冷却するマイクロアイスを噴射するマイクロアイス噴射ノズルを備えていることから、切削ブレード及び加工点を冷却すると共に、異物の除去を行う洗浄効果を確保しつつ、純水をそのまま切削水として使用する場合に比べ、純水の使用量を大幅に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】(a)
図1に示すダイシング装置に装着される切削手段の斜視図、(b)(a)に示す切削手段の分解斜視図である。
【
図3】(a)
図2(b)のA-A断面図、(b)
図2(b)のB-B断面図である。
【
図4】
図1に示すダイシング装置において切削加工が実施される態様を示す斜視図である。
【
図5】(a)
図4に示す切削加工時における切削手段の
図2(b)のA-A断面図に対応する断面図、(b)
図4に示す切削加工時における切削手段の一部を断面図として示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に基づいて構成される加工装置に係る実施形態について、添付図面を参照しながら、詳細に説明する。
【0012】
図1には、本発明の加工装置の一つの実施形態として示すダイシング装置1が示されている。図示のダイシング装置1は、板状物を保持するチャックテーブル7と、該チャックテーブル7に保持された板状物を切削する切削手段9と、チャックテーブル7と切削手段9とを相対的に加工送りする送り手段(図示されていない)と、を備えている。なお、本実施形態のダイシング装置1によって加工される板状物は、例えばシリコンのウエーハWであって、図示の如く保護テープTを介して環状のフレームFに支持されている。
【0013】
ダイシング装置1は、複数のウエーハWを収容するカセット4(2点鎖線で示す)と、カセット4に収容されたウエーハWを搬出して仮置きする仮置きテーブル5と、仮置きテーブル5に、カセット4からウエーハWを搬出する搬出入手段3と、仮置きテーブル5に搬出されたウエーハWをチャックテーブル7の保持面を構成する吸着チャック7a上に旋回して搬送する搬送手段6と、チャックテーブル7上のウエーハWを撮像して加工すべき位置を検出するアライメント手段10と、切削手段9により切削加工されたウエーハWを洗浄する洗浄手段11(詳細は省略している)と、切削加工されたウエーハWをチャックテーブル7から洗浄手段11へ搬送する洗浄搬送手段12と、図示を省略する制御手段、表示手段等を備えている。カセット4は、図示しない昇降手段によって上下に移動可能なカセットテーブル4a上に載置されており、カセット4から所望のウエーハWを搬出入手段3によって搬出したり、仮置きテーブル5からカセット4の所望の位置に搬入したりする際に、カセット4の高さを適宜調整する。チャックテーブル7の外周には、ウエーハWを支持するフレームFを把持する複数のクランプ7b(図示の実施形態では4つ)が配設されている。
【0014】
上記した送り手段は、装置ハウジング2内に配設されており、本実施形態では、チャックテーブル7を切削送り方向である矢印Xで示すX軸方向に移動させるX軸送り手段と、切削手段9を割り出し送り方向である該X軸方向と直交する矢印Yで示すY軸方向に移動させるY軸送り手段と、切削手段9をX軸方向とY軸方向とに直交するZ軸方向(上下方向)に移動して切り込み送りするZ軸送り手段と、チャックテーブル7を回転させる回転駆動手段と、を含んでいる(いずれも図示を省略している)。チャックテーブル7は、カバーテーブル8の中央から上方に突出するように形成され、カバーテーブル8は、X軸方向に配設された蛇腹部材8a、8bによって挟まれている。カバーテーブル8と共にチャックテーブル7がX軸方向に移動する際には、該蛇腹部材8a、8bが伸縮して、チャックテーブル7が移動する領域の上面を覆っている。
【0015】
図2、
図3を参照しながら、上記した切削手段9についてより具体的に説明する。
図2(a)は、切削手段9の主要部を拡大した斜視図であり、
図2(b)は、
図2(a)に示す切削手段9の一部を分解した斜視図を示している。
【0016】
図2(a)及び
図2(b)から理解されるように、切削手段9は、外周に切り刃91aを備えた切削ブレード91と、該切削ブレード91を回転可能に支持する端部を備えたスピンドル92と、該スピンドル92を回転可能に支持し、図示を省略するもう一方の端部側に切削ブレード91を矢印R1で示す方向に回転させる駆動源を備えたスピンドルハウジング93と、スピンドルハウジング93の端部に装着され切削ブレード91を覆うカバー手段94と、を含んでいる。
【0017】
図2(b)に示すように、カバー手段94は、回転軸ハウジング93の端部に固定される第一のカバー部材94aと、第一のカバー部材94aの前面のねじ穴94hに対してねじ94eによって固定される第二のカバー部材94bと、第一のカバー部材94aの上面のねじ穴94iに対して上方からねじ94fによって固定されるブレード検出ブロック94cとを備えている。ブレード検出ブロック94cには、切削ブレード91の切り刃91aの摩耗や欠けを検出するためのブレードセンサ(図示は省略する)が配設されている。
【0018】
該カバー手段94には、切削ブレード91を冷却するマイクロアイス(微小な氷粒子)を噴射するマイクロアイス噴射ノズルが配設されている。本実施形態のマイクロアイス噴射ノズルは、切削ブレード91を挟むように配設され切り刃91aの側面にマイクロアイスを噴射する一対の側面ノズル95と、切削ブレード91の切り刃91aの先端に向けてマイクロアイスを噴射する先端側ノズル96(
図2(b)では詳細を示していないため、
図3(b)、
図5(a)も併せて参照。)と、を備えている。なお、本発明は、必ずしも上記した側面ノズル95と、先端側ノズル96の両方がマイクロアイス噴射ノズルであることに限定されず、マイクロアイス噴射ノズルとして、側面ノズル95と、先端側ノズル96のうち、いずれか一方のみを備えるものであってもよい。
【0019】
図2(a)、(b)に示す側面ノズル95は、切削ブレード91の切り刃91aの側面にマイクロアイスを噴射する一対のノズルであり、切削ブレード91の図中手前側の側面にマイクロアイスを噴射する第一の側面ノズル951と、切削ブレード91の反対側の側面にマイクロアイスを噴射する第二の側面ノズル(図示されていない)とを備えている。第一の側面ノズル951は第二のカバー部材94b側に形成され、該第二の側面ノズルは、第一のカバー部材94a側に形成されている。
【0020】
図2(b)と、
図2(b)のA-A断面を示す
図3(a)とを参照しながら、第一の側面ノズル951の構成についてより具体的に説明する。第一の側面ノズル951は、一端からエアーを供給するエアー供給パイプ951aと、該エアー供給パイプ951aの他端に配設されエアーを供給する流路951bを絞る絞り部951c及び該絞り部951cに連結され該絞り部951cに対して容積が拡大する拡張部951dを備えた噴射部951eと、を備えている。該噴射部951eの絞り部951cには、切削水供給パイプ951gの他端を構成する連通路951fが連結され、該切削水供給パイプ951gの一端側から切削水が供給される。本実施形態では、
図3(a)で示す噴射部951eが、エアー供給パイプ951aの長手方向に並んで配設された連通路951fに対応して4つ形成されている。第二のカバー部材94bの上面には、上記したエアー供給パイプ951aの一端側に高圧のエアーを供給するエアー導入口951hが配設されると共に、切削水供給パイプ951gの一端側に切削水を導入すべく切削水導入口951iが形成されている。なお、第二の側面ノズルは、第一の側面ノズル951に対向して切削ブレード91の反対側に配設され、第一の側面ノズル951と同一の構成を備え、第一のカバー部材94a上に形成されたエアー導入口951h、切削水導入口951iを介して高圧のエアーと切削水が導入される(詳細な説明については省略する。)。以上のように、側面ノズル95は、第一の側面ノズル951及び第二の側面ノズルにおいて、噴射部951eを合計8つ備えていることになる。なお、本発明のマイクロアイス噴射ノズルを構成する一対の側面ノズル95に形成される噴射部951eの数はこれに限定されず、第一の側面ノズル951及び第二の側面ノズルに1個以上形成する形態から適宜選択することができる。該噴射部951eからマイクロアイスが噴射される態様については追って詳述する。
【0021】
次に、
図2(b)、及び
図2(b)のB-B断面を示す
図3(b)を参照しながら、切削ブレード91の切り刃91aの先端に向けてマイクロアイスを噴射する先端側ノズル96の構成について説明する。
【0022】
先端側ノズル96は、
図3(b)に示すように、一端からエアーを供給するエアー供給パイプ96aと、該エアー供給パイプ96aの他端に配設されエアーを供給する流路96bを絞る絞り部96c及び該絞り部96cに連結され該絞り部96cに対して容積が拡大する拡張部96dを備えた噴射部96eとを備え、該噴射部96eの絞り部96cには、切削水供給パイプ96fの他端を構成する連通路97を介して切削水供給パイプ96fが連結され、該切削水供給パイプ96fの一端側から切削水が供給される。そして、
図2(b)に示すように、第一のカバー部材94aの上面には、先端側ノズル96のエアー供給パイプ96aの一端側に高圧のエアーを導入するエアー導入口96gが配設されると共に、第一のカバー部材94bの側面には、切削水供給パイプ96fの一端側に切削水を導入する切削水導入口96hが配設されている。
【0023】
上記した切削手段9を使用して、チャックテーブル7に保持されて切削加工されるウエーハWに対してマイクロアイスを噴射する態様について、
図4、5を参照しながら、さらに具体的に説明する。
【0024】
図4に示すように、ダイシング装置1の切削手段9は、高圧のエアーP1、P2、P3を供給するためのエアー源30と、切削水(純水)Q1、Q2、Q3を供給するための水源40とを備えている。エアー源30は、例えば2.0MPaに高めた高圧のエアーを供給する手段であり、水源40は、例えば0.3MPaの純水を切削水として供給する手段である。
【0025】
エアー源30には、エアー供給路31a、31b、32が配設されている。エアー供給路31a、31b、32には、エアー供給路31a、31b、32を通過するエアーP1、P2、P3の圧力を調整する調整弁33a、33b、33cが配設され、図示を省略する制御手段によって制御される。エアー供給路31a、31bは、カバー手段94に形成されたエアー導入口951h、951hに接続されている。第二のカバー部材94に形成されたエアー導入口951hを介して導入されたエアーP1は、上記した第一の側面ノズル951のエアー供給パイプ951aに供給され、第一のカバー部材94aに形成されたエアー導入口951hを介して導入されたエアーP2は、図示されていない第二の側面ノズルのエアー供給パイプに供給される。また、エアー供給路32は、第一のカバー部材94aに形成されたエアー導入口96gに接続され、エアー導入口96gを介して導入されたエアーP3は、上記した先端側ノズル96のエアー供給パイプ96aに供給される。
【0026】
水源40には、切削水供給路41a、41b、42が配設されている。切削水供給路41a、41b、42には、切削水供給路41a、41b、42を通過する切削水Q1、Q2、Q3の流量を調整する調整弁43a、43b、43cが配設され、図示を省略する制御手段によって制御される。切削水供給路41a、41bは、カバー手段94に形成された切削水導入口951i、951iに接続されている。第二のカバー部材94に形成された切削水導入口951iを介して導入された切削水Q1は、第一の側面ノズル951の切削水供給パイプ951gに供給され、第一のカバー部材94aに形成された切削水導入口951iを介して導入された切削水Q2は、図示されていない第二の側面ノズルの切削水供給パイプに供給される。また、切削水供給路32は、第一のカバー部材94aに形成された切削水導入口96hに接続され、切削水導入口96hを介して導入された切削水Q3は、上記した先端側ノズル96の切削水供給パイプ96fに導入される。
【0027】
本実施形態のダイシング装置1及び該ダイシング装置1に配設される切削手段9は概ね上記したとおりの構成を備えており、切削手段9によってウエーハWを切削する切削加工を実施する際に、切削ブレード91及びウエーハWの加工点に対して、側面ノズル95、先端側ノズル96から、以下に説明するようにマイクロアイスが噴射される。
【0028】
図4に示すように、ウエーハWは、複数のデバイスWDが分割予定ラインWLによって区画され表面Waに形成されたウエーハであり、保護テープTを介して環状のフレームFに支持されている。ウエーハWは、
図1に基づき説明したように、カセット4から搬出入手段3によって搬出されて、仮置きテーブル5に仮置きされ、搬送手段6によって仮置きテーブル5からチャックテーブル7に搬送されて載置される。図示を省略する吸引手段を作動することにより吸着チャック7aに負圧を生成し、ウエーハWを吸引保持すると共に、クランプ7bによってフレームFを把持する。
【0029】
次いで、上記したX軸送り手段を作動してウエーハWをアライメント手段10の直下に位置付けてウエーハWを撮像し、回転駆動手段によりチャックテーブル7を回転して分割予定ラインWLをX軸方向に整合させると共に、切削加工すべき分割予定ラインWLを検出する。分割予定ラインWLを検出したならば、加工すべき分割予定ラインWLの位置情報を上記した制御手段に記憶して、X軸送り手段、Y軸送り手段を作動して、ウエーハWにおいて切削加工を開始する加工開始位置を、切削手段9の切削ブレード91の直下に位置付ける。
【0030】
切削ブレード91の直下にウエーハWの加工開始位置に位置付けたならば、図示を省略する切削手段9の駆動源を作動して、切削ブレード91を
図4に矢印R1で示す方向に回転させると共にZ軸送り手段を作動して、ウエーハWの分割予定ラインWLに切り込み送りすると共に、チャックテーブル7をX軸方向に加工送りして、図示のように分割溝100を形成する。このとき、上記したエアー源30と、水源40とを作動して、側面ノズル95と先端側ノズル96に対して、高圧のエアーP1、P2、P3と、切削水Q1、Q2、Q3とを供給する。この際、上記した調整弁33a、33b、33cにより、側面ノズル95を構成する第一の側面ノズル951及び第二の側面ノズルに配設された各噴射部951eの絞り部951cと、先端側ノズル96に配設された噴射部96eの絞り部96cとに供給されるエアーP1、P2、P3の圧力を0.5~1.0MPaの範囲で所定の圧力になるように調整する(例えば0.6MPa)と共に、上記した調整弁43a、43b、43cにより、各噴射部951eの絞り部951cと、噴射部96eの絞り部96cとに供給される切削水の流量を5~50mL/分の範囲で所定の流量となるように調整する(例えば5mL/分)。
【0031】
上記したように調整されることで、
図5(a)(
図3(a)に基づき説明したA-A断面図に対応する断面図)に示すように、エアー供給パイプ951aの流路951bに供給されて第一の側面ノズル951における絞り部951cを通過するエアーP1が音速まで加速され、該絞り部951cを通過して拡張部951dにおいて超音速に加速して断熱拡張が生じる。この結果、該第一の側面ノズル951の拡張部951dにおいては、該絞り部951cに供給された切削水Q1の温度が急速に低下して微小な氷粒子であるマイクロアイス130となって、噴射部951eから切削ブレード91の切り刃91aの側面、及びウエーハWの加工点に向けて噴射される。また、図示が省略された第二の側面ノズルにおいても、これと同様に、上記したエアーP2と切削水Q2とにより、マイクロアイス130が生成されて、切削ブレード91の切り刃91aの側面とウエーハWの加工点に対して噴射される。
【0032】
さらに、先端側ノズル96においては、
図5(b)(
図3(b)に基づき説明したB-B断面図に対応する領域を含む一部を断面図としたカバー手段94の側面図であり、説明の都合上、側面ノズル95は示していない)に示すように、エアー導入口96gを介してエアーP3がエアー供給パイプ96aの一端側に供給され、先端側ノズル96における絞り部96cで音速まで加速され、該絞り部96cを通過して拡張部96dにおいて超音速に加速されて断熱拡張が生じる。この結果、先端側ノズル96の拡張部96dにおいて、該絞り部96cに供給された切削水Q3の温度が急速に低下してマイクロアイス130となって、噴射部96eから切削ブレード91の切り刃91aの先端に向けて噴射される。
【0033】
上記したように、側面ノズル95、先端側ノズル96からマイクロアイス130を噴射しながら、切削手段9と上記した送り手段とを作動して、全ての分割予定ラインWLに対して分割溝100を形成する切削加工を実施したならば、上記した洗浄搬送手段12を作動して、ウエーハWを洗浄手段11に搬送し、洗浄・乾燥を行い、搬送手段6、搬出入手段3を作動して、切削加工後のウエーハWをカセット4に収容し、切削加工を完了させる。なお、切削ブレード91とウエーハWの加工点に噴射されたマイクロアイス130は、切削ブレード91、及びウエーハWの加工点の熱によって速やかに溶けてチャックテーブル7のカバーテーブル8、及び蛇腹部材8a、8b上を流れて排出されるか、又は回収される。
【0034】
切削手段9によってウエーハWの切削加工が実施されている間、上記した如く側面ノズル95、先端側ノズル96から切削ブレード91の切り刃91aとウエーハWの加工点に対してマイクロアイス130が噴射されることにより、従来技術において、切削水が切削ブレード91に供給される場合と比較して、切削ブレード91のみならず被加工物であるウエーハWが十分に冷却される。また、高速で噴射されるマイクロアイス130によって、ウエーハW上に付着する切削屑を含む異物がマイクロアイス130と共に加工点近傍の領域から吹き飛ばされて除去され、加工領域の洗浄も良好に実施される。そして、上記した実施形態のように、側面ノズル95に配設された噴射部951eの絞り部951c(8箇所)、及び先端側ノズル96に配設された噴射部96eの絞り部96c(1箇所)のそれぞれに供給される純水の流量を、例えば5mL/分になるように調整し、切削ブレード91に対してマイクロアイス130を噴射することで、1台のダイシング装置を8時間稼働した場合の純水の使用量を約21.6Lに抑えることができ、1日の純水の使用量は、従来(約1t)に比べ、大きく削減することができ、極めて経済的である。
【0035】
また、上記したエアー供給路31a、31b、32に配設された調整弁33a、33b、33c、及び切削水供給路に配設された調整弁43a、43b、43cの開度を適宜調整することにより、マイクロアイス130の流量や、硬さを適宜調整することが可能である。例えば、調整弁33a、33b、33cを調整して、各絞り部951c、96cに供給されるエアーP1~P3の圧力を、0.6MPaから1.0MPaに上昇させることで、各絞り部951c、96cを通過するエアーP1~P3の速度を上げて、噴射部951e、及び噴射部96eから噴射されるマイクロアイス130の温度をより低下させて冷却効果を向上させることができる。また、調整弁43a、43b、43cの開度を調整して、各絞り部951c、96cに供給される切削水Q1~Q3を5mL/分から増加することにより、マイクロアイス130の噴射量を増量して冷却効果を向上すると共に、軟らかい氷粒子を形成することができ、異物を氷粒子に取り込み除去する洗浄効果を向上させることができる。そして、各絞り部951c、96cに供給される切削水Q1~Q3の流量を、最大の50mL/分に設定したとしても、1日の純水の使用量は約216Lに留まり、従来に比較して、純水の使用量を抑えることができる。
【0036】
なお、上記した実施形態では、側面ノズル95及び先端側ノズル96のいずれもマイクロアイス噴射ノズルとしたが、本発明はこれに限定されず、いずれか一方をマイクロアイス噴射ノズルとし、他方側を従来の切削水を供給する手段としてもよい。
【符号の説明】
【0037】
1:ダイシング装置
2:装置ハウジング
3:搬出入手段
4:カセット
5:仮置きテーブル
6:搬送手段
7:チャックテーブル
8:カバーテーブル
8a、8b:蛇腹部材
9:切削手段
91:切削ブレード
91a:切り刃
92:スピンドル
93:スピンドルハウジング
94:カバー手段
94a:第一のカバー部材
94b:第二のカバー部材
94c:ブレード検出ブロック
95:側面ノズル
951:第一の側面ノズル
951a:エアー供給パイプ
951b:流路
951c:絞り部
951d:拡張部
951e:噴射部
951f:連通路
951g:切削水供給パイプ
951h:エアー導入口
951i:切削水導入口
96:先端側ノズル
96a:エアー供給パイプ
96b:流路
96c:絞り部
96d:拡張部
96e:噴射部
96f:切削水供給パイプ
96g:エアー導入口
96h:切削水導入口
97:連通路
10:アライメント手段
11:洗浄手段
12:洗浄搬送手段
30:エアー源
31a、31b:エアー供給路
32:エアー供給路
33a、33b、33c:調整弁
40:水源
41a、41b:切削水供給路
42:切削水供給路
43a、43b、43c:調整弁
100:分割溝100
130:マイクロアイス
F:フレーム
T:保護テープ
W:ウエーハ
Wa:表面
WD:デバイス
WL:分割予定ライン
P1~P2:エアー
Q1~Q3:切削水(純水)
【手続補正書】
【提出日】2023-05-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】