(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168186
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】成膜装置および膜付き基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
C23C 14/58 20060101AFI20241128BHJP
C23C 16/50 20060101ALI20241128BHJP
C23C 16/56 20060101ALI20241128BHJP
C23C 14/06 20060101ALI20241128BHJP
C23C 14/35 20060101ALI20241128BHJP
G03F 1/24 20120101ALI20241128BHJP
【FI】
C23C14/58 Z
C23C16/50
C23C16/56
C23C14/06 R
C23C14/35
G03F1/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023084643
(22)【出願日】2023-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100168985
【弁理士】
【氏名又は名称】蜂谷 浩久
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100149401
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 浩史
(72)【発明者】
【氏名】仲村 壮太郎
(72)【発明者】
【氏名】大石 竜輔
(72)【発明者】
【氏名】秋庭 一樹
(72)【発明者】
【氏名】角田 剛志
【テーマコード(参考)】
2H195
4K029
4K030
【Fターム(参考)】
2H195BB17
2H195BB25
2H195CA16
2H195CA22
4K029AA09
4K029AA24
4K029BA05
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4K029DC39
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4K029JA02
4K029KA01
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4K030BA06
4K030BA12
4K030BA13
4K030BA16
4K030BA17
4K030BA18
4K030BA22
4K030BA29
4K030BA43
4K030BB05
4K030BB12
4K030CA06
4K030CA17
4K030DA08
4K030GA06
4K030KA49
(57)【要約】
【課題】 基板上の膜の改質処理に伴うチャンバー内の改質によって生じるパーティクルの発生を抑制できる、成膜装置の提供。
【解決手段】 成膜チャンバーと、上記成膜チャンバー内に収容された基板上に膜を形成する成膜機構と、改質チャンバーと、上記改質チャンバー内に収容された上記基板上に形成された上記膜の表面に対してプラズマを供給するプラズマ供給機構と、上記成膜チャンバーおよび上記改質チャンバーとの間に配置され、上記成膜チャンバーおよび上記改質チャンバーの両方に接続し、上記基板を上記成膜チャンバーおよび改質チャンバーに搬送する搬送機構を備える搬送チャンバーとを有する、成膜装置。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
成膜チャンバーと、
前記成膜チャンバー内に収容された基板上に膜を形成する成膜機構と、
改質チャンバーと、
前記改質チャンバー内に収容された前記基板上に形成された前記膜の表面に対してプラズマを供給するプラズマ供給機構と、
前記成膜チャンバーおよび前記改質チャンバーとの間に配置され、前記成膜チャンバーおよび前記改質チャンバーの両方に接続し、前記基板を前記成膜チャンバーおよび改質チャンバーに搬送する搬送機構を備える搬送チャンバーとを有する、成膜装置。
【請求項2】
成膜チャンバーと、
前記成膜チャンバー内に収容された基板上に膜を形成する成膜機構と、
前記成膜チャンバーと接続される改質チャンバーと、
前記改質チャンバー内に収容された前記基板上に形成された前記膜の表面に対してプラズマを供給するプラズマ供給機構と、
前記成膜チャンバーと前記改質チャンバーとの間で前記基板を搬送する搬送手段とを有する、成膜装置。
【請求項3】
前記成膜チャンバーと、前記改質チャンバーとを仕切り、かつ、開閉可能な仕切り手段を備える、請求項1または2に記載の成膜装置。
【請求項4】
前記プラズマ供給機構が、プラズマを生成するプラズマ生成部と、前記プラズマ生成用のガスを供給するガス供給部とを備える、請求項1または2に記載の成膜装置。
【請求項5】
前記ガス供給部が、窒素系ガス、酸素系ガス、炭素系ガス、シラン系ガス、水素ガス、および、ハロゲン系ガスからなる群から選択される1種以上のガスを含むガスを供給する、請求項4に記載の成膜装置。
【請求項6】
前記ガス供給部が、窒素系ガスおよび酸素系ガスからなる群から選択される1種以上のガスを供給する、請求項4に記載の成膜装置。
【請求項7】
希釈ガス供給部をさらに有し、前記希釈ガス供給部は前記プラズマ供給機構に接続され、
前記希釈ガス供給部が、ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス、クリプトンガス、および、キセノンガスからなる群から選択される1種以上のガスを供給する、請求項4に記載の製膜装置。
【請求項8】
前記成膜機構が、マグネトロンスパッタリングを行う、請求項1または2に記載の成膜装置。
【請求項9】
前記成膜機構が、イオンビームスパッタリングを行う、請求項1または2に記載の成膜装置。
【請求項10】
前記成膜機構が、プラズマ化学気相蒸着を行う、請求項1または2に記載の成膜装置。
【請求項11】
前記改質チャンバーが、前記改質チャンバー内の気体を排気する排気機構をさらに備える、請求項1または2に記載の成膜装置。
【請求項12】
前記プラズマ供給機構と、前記改質チャンバーに収容された前記基板を保持する基板ホルダーとの間に、さらに拡散失活板を備える、請求項1または2に記載の成膜装置。
【請求項13】
請求項1または2に記載の成膜装置を用いる膜付き基板の製造方法であって、
前記成膜機構により、前記成膜チャンバーにおいて前記基板の一方の主面に対して膜を形成し、
前記膜が形成された前記基板を前記改質チャンバーに搬送し、
前記改質チャンバーに前記基板が収容された状態で、前記プラズマ供給機構により前記改質チャンバー内にプラズマを導入する、膜付き基板の製造方法。
【請求項14】
前記プラズマ供給機構から、窒素系ガス、酸素系ガス、炭素系ガス、シラン系ガス、水素ガスおよび、ハロゲン系ガスからなる群から選択される1種以上のガスから生成されるプラズマを供給する、請求項13に記載の膜付き基板の製造方法。
【請求項15】
前記改質チャンバー内に収容された前記基板を、前記基板の主面の法線方向に沿う軸を中心に前記基板を回転させながら前記改質チャンバー内にプラズマを導入する、請求項13に記載の膜付き基板の製造方法。
【請求項16】
請求項1または2に記載の成膜装置を用いる反射型マスクブランクの製造方法であって、
前記成膜機構により、前記成膜チャンバーにおいて前記基板の一方の主面に対して多層反射膜を形成し、
前記多層反射膜が形成された前記基板を前記改質チャンバーに搬送し、
前記改質チャンバーに前記基板が収容された状態で、前記プラズマ供給機構により前記改質チャンバー内にプラズマを導入する、反射型マスクブランクの製造方法。
【請求項17】
請求項16に記載の反射型マスクブランクの製造方法であって、
前記多層反射膜が、高屈折率層と低屈折率層とを基板側からこの順に積層した積層構造を有し、
前記多層反射膜のうち、少なくとも基板側とは反対側の最表面の膜に対して前記プラズマ供給機構により前記改質チャンバー内にプラズマを導入して改質処理を行う、反射型マスクブランクの製造方法。
【請求項18】
前記プラズマ供給機構から、窒素系ガス、酸素系ガス、炭素系ガス、水素ガス、および、ハロゲン系ガスからなる群から選択される1種以上のガスから生成されるプラズマを導入する、請求項17に記載の反射型マスクブランクの製造方法。
【請求項19】
前記プラズマ供給機構から、窒素系ガスおよび酸素系ガスからなる群から選択される1種以上のガスから生成されるプラズマを導入する、請求項17に記載の反射型マスクブランクの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成膜装置に関する。
また、本発明は、上記成膜装置を用いた膜付き基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
成膜装置では、基板に対して所望の性質を有する膜が形成される。
形成される膜としては、金属元素等の単体からなる膜が形成される場合もあるが、例えば、金属元素と、ホウ素、炭素、窒素、酸素、フッ素、リン、硫黄および塩素等の元素との金属化合物からなる膜が形成される場合もある。
上記のような金属化合物を基板上に成膜する場合、金属化合物のターゲットを用いて成膜する方法が挙げられる。金属化合物のターゲットを用いて成膜する場合、通常、プラズマを生成させて、スパッタリングにより成膜を行う。
上記のように金属化合物のターゲットを用いて成膜する場合、膜厚をよく制御して高品質なナノメートルオーダーの薄膜を形成することは一般的に難しい。
【0003】
これに対して、特許文献1では、成膜した金属薄膜の表面に対し、プラズマを供給して金属化合物の薄膜を形成する方法が開示されている。
より具体的には、特許文献1に開示された方法では、まず、金属のターゲットに対して不活性ガスのイオンを衝突させてスパッタリングし、基板上に金属薄膜を形成する。次いで、金属のターゲットに対する不活性ガスのイオンの供給を停止し、形成した金属薄膜に対し、RFコイルによって発生させた酸素プラズマまたは窒素プラズマを供給し、金属薄膜を酸化または窒化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載の方法では、同一のチャンバー内で金属薄膜の形成処置、および、酸化または窒化処理が実施されている。すなわち、同一のチャンバー内で、金属薄膜の形成処理および改質処理が実施されている。
本発明者らが、上記方法および装置について検討したところ、形成した膜の表面にパーティクルが発生する場合が多いことを知見した。さらに、本発明者らは、基板上に形成した膜の改質処理を行うと、改質処理を行ったチャンバー内の化合物に由来するパーティクルが発生しやすいことを知見した。
昨今、更なるパーティクルの低減が求められており、基板上の膜の改質を行ってもパーティクルの発生が少ない成膜装置が求められていた。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされ、基板上の膜の改質処理に伴うチャンバー内の改質によって生じるパーティクルの発生を抑制できる、成膜装置の提供を課題とする。
また、本発明は、上記成膜装置を用いた膜付き基板の製造方法の提供も課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、成膜を行うチャンバーと、改質処理を行うチャンバーとを別のチャンバーとすることで、上記パーティクルの発生が抑制できることを見出し、本発明に至った。
【0008】
すなわち、発明者らは、以下の構成により上記課題が解決できることを見出した。
〔1〕 成膜チャンバーと、
上記成膜チャンバー内に収容された基板上に膜を形成する成膜機構と、
改質チャンバーと、
上記改質チャンバー内に収容された上記基板上に形成された上記膜の表面に対してプラズマを供給するプラズマ供給機構と、
上記成膜チャンバーおよび上記改質チャンバーとの間に配置され、上記成膜チャンバーおよび上記改質チャンバーの両方に接続し、上記基板を上記成膜チャンバーおよび改質チャンバーに搬送する搬送機構を備える搬送チャンバーとを有する、成膜装置。
〔2〕 成膜チャンバーと、
上記成膜チャンバー内に収容された基板上に膜を形成する成膜機構と、
上記成膜チャンバーと接続される改質チャンバーと、
上記改質チャンバー内に収容された上記基板上に形成された上記膜の表面に対してプラズマを供給するプラズマ供給機構と、
上記成膜チャンバーと上記改質チャンバーとの間で上記基板を搬送する搬送手段とを有する、成膜装置。
〔3〕 上記成膜チャンバーと、上記改質チャンバーとを仕切り、かつ、開閉可能な仕切り手段を備える、〔1〕または〔2〕に記載の成膜装置。
〔4〕 上記プラズマ供給機構が、プラズマを生成するプラズマ生成部と、上記プラズマ生成用のガスを供給するガス供給部とを備える、〔1〕~〔3〕のいずれか1つに記載の成膜装置。
〔5〕 上記ガス供給部が、窒素系ガス、酸素系ガス、炭素系ガス、シラン系ガス、水素ガス、および、ハロゲン系ガスからなる群から選択される1種以上のガスを含むガスを供給する、〔4〕に記載の成膜装置。
〔6〕 上記ガス供給部が、窒素系ガスおよび酸素系ガスからなる群から選択される1種以上のガスを供給する、〔4〕または〔5〕に記載の成膜装置。
〔7〕 希釈ガス供給部をさらに有し、上記希釈ガス供給部は上記プラズマ供給機構に接続され、
上記希釈ガス供給部が、ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス、クリプトンガス、および、キセノンガスからなる群から選択される1種以上のガスを供給する、〔4〕~〔6〕のいずれか1つに記載の製膜装置。
〔8〕 上記成膜機構が、マグネトロンスパッタリングを行う、〔1〕~〔7〕のいずれか1つに記載の成膜装置。
〔9〕 上記成膜機構が、イオンビームスパッタリングを行う、〔1〕~〔7〕のいずれか1つに記載の成膜装置。
〔10〕 上記成膜機構が、プラズマ化学気相蒸着を行う、〔1〕~〔7〕のいずれか1つに記載の成膜装置。
〔11〕 上記改質チャンバーが、上記改質チャンバー内の気体を排気する排気機構をさらに備える、〔1〕~〔10〕のいずれか1つに記載の成膜装置。
〔12〕 上記プラズマ供給機構と、上記改質チャンバーに収容された上記基板を保持する基板ホルダーとの間に、さらに拡散失活板を備える、〔1〕~〔11〕のいずれか1つに記載の成膜装置。
〔13〕 〔1〕~〔12〕のいずれか1つに記載の成膜装置を用いる膜付き基板の製造方法であって、
上記成膜機構により、上記成膜チャンバーにおいて上記基板の一方の主面に対して膜を形成し、
上記膜が形成された上記基板を上記改質チャンバーに搬送し、
上記改質チャンバーに上記基板が収容された状態で、上記プラズマ供給機構により上記改質チャンバー内にプラズマを導入する、膜付き基板の製造方法。
〔14〕 上記プラズマ供給機構から、窒素系ガス、酸素系ガス、炭素系ガス、シラン系ガス、水素ガスおよび、ハロゲン系ガスからなる群から選択される1種以上のガスから生成されるプラズマを供給する、〔13〕に記載の膜付き基板の製造方法。
〔15〕 上記改質チャンバー内に収容された上記基板を、上記基板の主面の法線方向に沿う軸を中心に上記基板を回転させながら上記改質チャンバー内にプラズマを導入する、〔13〕または〔14〕に記載の膜付き基板の製造方法。
〔16〕 〔1〕~〔12〕のいずれか1つに記載の成膜装置を用いる反射型マスクブランクの製造方法であって、
上記成膜機構により、上記成膜チャンバーにおいて上記基板の一方の主面に対して多層反射膜を形成し、
上記多層反射膜が形成された上記基板を上記改質チャンバーに搬送し、
上記改質チャンバーに上記基板が収容された状態で、上記プラズマ供給機構により上記改質チャンバー内にプラズマを導入する、反射型マスクブランクの製造方法。
〔17〕 〔16〕に記載の反射型マスクブランクの製造方法であって、
上記多層反射膜が、高屈折率層と低屈折率層とを基板側からこの順に積層した積層構造を有し、
上記多層反射膜のうち、少なくとも基板側とは反対側の最表面の膜に対して上記プラズマ供給機構により上記改質チャンバー内にプラズマを導入して改質処理を行う、反射型マスクブランクの製造方法。
〔18〕 上記プラズマ供給機構から、窒素系ガス、酸素系ガス、炭素系ガス、水素ガス、および、ハロゲン系ガスからなる群から選択される1種以上のガスから生成されるプラズマを導入する、〔16〕または〔17〕に記載の反射型マスクブランクの製造方法。
〔19〕 上記プラズマ供給機構から、窒素系ガスおよび酸素系ガスからなる群から選択される1種以上のガスから生成されるプラズマを導入する、〔16〕~〔18〕のいずれか1つに記載の反射型マスクブランクの製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、基板上の膜の改質処理に伴うチャンバー内の改質によって生じるパーティクルの発生を抑制できる成膜装置を提供できる。
また、本発明によれば、上記成膜装置を用いた膜付き基板の製造方法も提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第1実施態様の成膜装置の模式図である。
【
図2】本発明の第1実施態様の成膜装置が有する成膜チャンバーの断面を示す模式図である。
【
図3】本発明の第1実施態様の成膜装置が有する改質チャンバーの断面を示す模式図である。
【
図4】本発明の第2実施態様の成膜装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の具体的な実施形態について説明する。ただし、以下の実施形態は、本発明の理解を容易にするために挙げた一例にすぎず、本発明を限定するものではない。すなわち、本発明は、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、以下の実施形態から変更または改良され得る。
また、本発明を実施するために用いられる各機器の材質および形状等は、本発明の用途および本発明の実施時点での技術水準等に応じて任意に設定し得る。また、本発明には、その等価物が含まれる。
【0012】
本発明における用語の意味は、以下のとおりである。
本明細書中の「方形」には、長方形および正方形が含まれる。
【0013】
本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
本明細書において、ホウ素、炭素、窒素、酸素、シリコン、チタン、クロム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、タンタル、および、イリジウム等の元素は、それぞれ対応する元素記号(B、C、N、O、Si、Ti、Cr、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、TaおよびIr等)で表す場合がある。
【0014】
<第1実施態様>
以下、本発明の第1実施態様について説明する。
本発明の第1実施態様の成膜装置は、成膜チャンバーと、成膜チャンバー内に収容された基板上に膜を形成する成膜機構と、改質チャンバーと、改質チャンバー内に収容された基板上に形成された膜の表面に対してプラズマを供給するプラズマ供給機構と、成膜チャンバーおよび改質チャンバーとの間に配置され、成膜チャンバーおよび改質チャンバーの両方に接続し、基板を成膜チャンバーおよび改質チャンバーに搬送する搬送機構を備える搬送チャンバーとを有する。
本発明の第1実施態様の成膜装置では、成膜を行う成膜チャンバーと、膜の表面の改質を行う改質チャンバーとが別のチャンバーとなっている。通常、成膜を行う際には、基板以外の部分(例えば、チャンバーの内壁およびチャンバー内に収容される機構の表面等)にも膜の材料が付着し得る。
本発明の第1実施態様の成膜装置では、上記の構成とすることで、基板上の膜の改質処理を行う際、成膜チャンバーの内壁等に付着している材料が改質処理に曝されにくく、これにより、成膜チャンバー内で改質によって生じるパーティクルの発生が抑制される。
【0015】
本発明の第1実施態様の成膜装置の一態様について、図面を用いて具体的に説明する。
図1は、本発明の第1実施態様の成膜装置10の模式図である。
成膜装置10は、
図1に示すように、成膜機構22(
図2参照)を備える成膜チャンバー20と、プラズマ供給機構32を備える改質チャンバー30と、搬送機構42を備える搬送チャンバー40と、ロードロックチャンバー50とを有する。搬送チャンバー40は、成膜チャンバー20および改質チャンバー30との間に配置され、成膜チャンバー20および改質チャンバー30の両方に接続している。換言すると、成膜チャンバー20と改質チャンバー30とは、その間に配置された搬送チャンバー40によって隔てられ、互いに分離している。また、搬送チャンバー40は、ロードロックチャンバー50とも接続している。搬送機構42は、図示しない基板を、搬送チャンバー40を経由して、成膜チャンバー20、改質チャンバー30、および、ロードロックチャンバー50の間で搬送可能である。
【0016】
[成膜チャンバー20]
図1に図示した態様における成膜チャンバー20について詳細に説明する。
図2は、本発明の第1実施態様の成膜装置10が有する成膜チャンバー20の断面を示す模式図である。
成膜チャンバー20は、
図2に示すように、成膜機構22と、基板ホルダー24と、排気機構26とを備える。
図2に示す態様においては、基板ホルダー24が、基板14を保持している。基板14は、後述する膜が形成される主面を有している。基板14については、後段で詳細に説明する。
基板ホルダー24は、基板14の主面(成膜面)が成膜機構22のターゲット22A側を向いた状態で基板14を保持するものであり、基板14の主面の法線方向に沿う軸を中心に基板14を回転させることが可能である。
基板ホルダー24は、基板14を加熱可能な手段を有してもよい。また、基板ホルダー24は、基板14の回転を実施しないものでもよい。
【0017】
図2に示す態様においては、成膜機構22は、イオンビームスパッタリングを行う成膜機構であり、ターゲット22Aおよびイオン銃22Bとからなる。イオンビームスパッタリングを行う際には、通常、不活性ガス(例えば、アルゴンガス、および、クリプトンガス等)のイオンビームをイオン銃22Bからターゲット22Aに向かって照射する。イオンビームによってターゲット22Aからはじき出されたターゲット22Aの材料は、基板14の主面に到達し、ターゲット22Aを構成する材料からなる膜が基板14の主面に形成される。
イオン銃22Bは、成膜機構として用いられる通常のイオン銃が備える機構を有する。例えば、イオン銃22Bは、ガス導入手段、ガスイオン化手段、イオン加速手段、イオンの照射方向の調整手段、および、電源等の公知の機構を有する。
ターゲット22Aは、通常、電気的に接地するように成膜チャンバー20に設置されている。ターゲット22Aは、成膜装置として用いられる通常のスパッタリング用ターゲットが備える機構を有していてもよい。
ターゲット22Aの材料は、基板14の主面に形成する膜の種類によって適宜選択できる。ターゲット22Aの材料としては、特に制限されないが、例えば、炭素、アルミニウム、ケイ素、ガリウム、ゲルマニウム、インジウム、スズ、鉛、ビスマス、および、遷移金属元素からなる群から選択される1種以上の元素を含むターゲットが挙げられる。遷移金属としては、特に制限されないが、例えば、チタン、クロム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、ハフニウム、タンタル、タングステン、レニウム、オスミウム、および、イリジウムからなる群から選択される1種以上が好ましい。
ターゲット22Aの材料は、上記の元素を含む化合物であってもよい。
また、ターゲット22Aと、基板14との間には、ターゲット22Aの材料の、基板14への到達の有無を切り換える目的で、シャッター等の開閉自在な遮蔽機器が設けられてもよい。
【0018】
図2に示す態様において、排気機構26は、ターボ分子ポンプを備える。ターボ分子ポンプは、その排気側(成膜チャンバー20と接続する側とは反対側)において、図示しない他の排気手段が接続されている。当該他の排気手段としては、公知の排気手段を選択でき、油回転ポンプ、揺動ピストン型ポンプ、ダイヤフラムポンプ、および、油拡散ポンプ等が挙げられる。なお、排気機構26は、ターボ分子ポンプの代わりに、以外の公知の真空ポンプを備えるものであってもよい。
排気機構26は、開閉可能なバルブを介して成膜チャンバー20と接続されていてもよい。開閉可能なバルブとしては、後述するドアバルブ44と同様のものが挙げられる。
なお、排気機構26は、省略されてもよい。
【0019】
図2に示す態様においては、成膜チャンバー20は、
図2の紙面右側で接続部を介して搬送チャンバー40と接続し、上記接続部は、仕切り手段としてのドアバルブ44を備えている。ドアバルブ44は、開閉可能な仕切手段の一例であり、閉じた状態では、成膜チャンバー20の内部と、搬送チャンバー40の内部とを遮断することが可能である。また、ドアバルブ44が開いた状態では、基板14を、成膜チャンバー20および搬送チャンバー40との間で搬送可能である。すなわちドアバルブ44を閉じることで、成膜チャンバー20と、搬送チャンバー40とを仕切り、成膜チャンバー20の内部が独立し、かつ、成膜チャンバー20と接続された他のチャンバーとは異なる雰囲気になるように制御することが可能である。
【0020】
成膜チャンバー20における成膜を実施していない状態の真空度(到達真空度)は、1.0×10-2Pa以下が好ましく、1.0×10-4Pa以下が好ましく、1.0×10-6以下がさらに好ましい。
成膜チャンバー20において成膜を実施する際の真空度は、1.0×100Pa以下が好ましく、1.0×10-1Pa以下が好ましく、1.0×10-2以下がさらに好ましい。
【0021】
本発明の第1実施態様の成膜装置における成膜チャンバーは、
図2に示す成膜チャンバー20以外の態様であってもよい。以下、成膜チャンバー20の変形例、および、変形例に係る成膜チャンバー20が備え得る機構を説明する。
【0022】
成膜機構22は、イオンビームスパッタリング方式以外の公知の成膜機構であってもよく、例えば、マグネトロンスパッタリングを行うものであってもよく、化学気相蒸着を行うものであってもよい。
マグネトロンスパッタリングは、公知の方法で実施でき、マグネトロンスパッタリングを行う成膜機構は、通常の構成を有するものが挙げられる。例えば、マグネトロンスパッタリングを行う成膜機構は、例えば、ガス導入機構、プラズマ生成機構、マグネット、ターゲット、および、電源を有する。上記の構成の成膜機構でマグネトロンスパッタリングを行う場合は、例えば、ガス導入機構から導入されたガスの少なくとも一部をプラズマ生成機構でプラズマ化して導入したガスに由来するイオンを発生させ、マグネットでプラズマを制御しつつ、ターゲットに発生したイオンを衝突させる。ターゲットにイオンが衝突すると、ターゲットの構成材料がターゲットから飛び出し、基板14の主面に到達し、ターゲットの構成材料に由来する膜が形成される。
化学気相蒸着(CVD:Chemical Vapor Deposition)は、公知の方法で実施できる。CVDは、熱CVD、プラズマCVD、および、原子層堆積等が挙げられ、プラズマCVDが好ましい。CVDを行う成膜機構は、通常の構成を有するものが挙げられる。例えば、プラズマCVDを行う成膜機構は、プラズマ生成機構、反応ガス導入機構、および、電源を有する。上記の構成の成膜機構でプラズマCVDを行う際は、反応ガスを反応ガス導入機構によって基板14の主面付近に導入し、プラズマ生成機構によってプラズマを生成して反応ガスを励起し、基板14の主面に反応ガス由来の膜が形成される。
【0023】
ドアバルブ44は、公知の開閉可能な仕切り手段に置き換えられていてもよい。公知の仕切り手段としては、例えば、スパッタリングされたターゲット22Aの材料が、成膜チャンバー20から、搬送チャンバー40へ移動(飛散)することを防ぐシャッターであってもよい。このシャッターは、上記ドアバルブ44とは異なり、成膜チャンバー20の雰囲気を独立させる目的で使用されるものではないが、成膜チャンバー20と接続されるチャンバーへの物質の拡散を抑制できる。上記シャッターが開いた状態では、基板14を成膜チャンバー20および搬送チャンバー40との間で搬送可能である。
また、上記の説明では、ドアバルブ44または上記シャッターが、搬送チャンバー40と接続する接続部に存在する態様について説明したが、他の位置に設置されていてもよい。例えば、ドアバルブ44または上記シャッターは、成膜チャンバー20の内部に設けられていてもよい。さらに、ドアバルブ44および上記シャッターからなる群から選択される1つ以上の仕切り手段は、複数設けられていてもよい。
なお、ドアバルブ44または上記シャッターは、チャンバー間の物質の拡散を抑制し、改質によって生じるパーティクルの発生がより抑制される点で設けられることが好ましいが、設けられなくてもよい。
【0024】
成膜チャンバー20における各構成の配置は、
図2に示す態様から適宜変更できる。
【0025】
成膜チャンバー20は、その壁面に窓を有していてもよい。窓は、成膜チャンバー20の内部を外部から観察可能にする。窓の設置位置は特に制限されないが、例えば、成膜チャンバー20の壁面のうち、基板ホルダー24が設置されている側の壁面と対向する壁面に設置されてもよい。
【0026】
成膜チャンバー20には、基板14の主面に形成される膜の膜厚をモニターする膜厚監視手段が収容されていてもよい。膜厚監視手段としては、公知の膜厚監視手段を採用できる。
また、成膜チャンバー20には、成膜チャンバー20内の圧力を監視する真空計が収容されていてもよい。真空計は、公知の真空計を採用できる。
【0027】
[改質チャンバー30]
図1に図示した態様における改質チャンバー30について詳細に説明する。
図3は、本発明の第1実施態様の成膜装置10が有する改質チャンバー30の断面を示す模式図である。
改質チャンバー30は、
図3に示すように、プラズマ供給機構32(
図3中、一点鎖線で図示)と、基板ホルダー34と、排気機構36と、拡散失活板38とを備える。
図3に示す態様においては、基板ホルダー34が、基板14を保持している。基板14の主面には、上記成膜チャンバー20で成膜された膜が形成されている。
基板ホルダー34は、基板14を保持した状態で、基板14の主面の法線方向に沿う軸を中心に基板14を回転させることが可能である。
基板ホルダー34は、基板14を加熱可能な手段を有していてもよい。また、基板ホルダー24は、上記基板の回転を実施できなくてもよい。
【0028】
図3に示す態様においては、プラズマ供給機構32は、プラズマ生成部32Aと、プラズマ生成用のガスを供給するガス供給部32B(
図3中、二点鎖線で図示)と、電源32Dとから構成され、希釈ガス供給部32C(
図3中、二点鎖線で図示)がプラズマ供給機構32に接続されている。
プラズマ生成部32Aでは、電源32Dからプラズマ生成部に高周波電圧が印加される。これにより、ガス供給部32Bからプラズマ生成部32Aに供給されたガスは、プラズマ化される。プラズマ化されたガスは、希釈ガス供給部32Cから供給される希釈ガスで希釈され、多数の穴を有する金属製の拡散失活板38を通過して、基板14の主面に形成された膜に供給される。
プラズマ供給機構32から基板14の主面にプラズマを供給すると、基板14の主面に形成された膜が改質される。
なお、プラズマ供給機構32において、プラズマ生成部32Aに印加される電圧の大きさおよび周波数、ならびに、ガスの供給量(流量)および供給圧力は、任意に調整可能である。
プラズマ生成部32Aにおいては、例えば、一対の電極に高周波電圧を印加してもよいし、コイルに高周波電圧を印加してもよい。
【0029】
図3に示す態様においては、ガス供給部32Bは、ガス供給源32Eがプラズマ供給機構32にチューブで接続されており、ガス供給部32Bとプラズマ供給機構32との間には、供給されるガスの量を調整する調整バルブ32Fが設けられている。
ガス供給部32Bから供給されるガスは、特に制限されないが、例えば、窒素系ガス、酸素(O
2)ガス、炭素系ガス、シラン系ガス、水素(H
2)ガス、および、ハロゲン系ガスからなる群から選択される1種以上のガスを含むガスが挙げられる。
窒素系ガスとしては、窒素(N
2)ガス、アンモニアガス、が挙げられ、窒素ガスが好ましい。
酸素系ガスとしては、酸素(O
2)ガス、オゾン(O
3)ガスが挙げられ、酸素ガスが好ましい。
炭素系ガスとしては、メタンガス、エタンガス、エチレンガスが挙げられる。
シラン系ガスとしては、シラン(SiH
4)ガス、ジシラン(Si
2H
6)ガスが挙げられる。
ハロゲン系ガスとしては、フッ素(F
2)ガス、塩素(Cl
2)ガス、NF
3ガス、HFガス、HClガスが挙げられ、NF
3ガスが好ましい。
ガス供給部32Bから供給されるガスは、例えば、ArガスおよびHeガス等の希ガスと、上記ガスとを混合したガスであってもよい。混合比は、特に制限されず、供給するガス種、および、改質の目的に応じて適宜調整できる。
【0030】
図3に示す態様においては、希釈ガス供給部32Cは、ガスが貯留されるガス供給源32Gがプラズマ供給機構32にチューブで接続されており、ガス供給源32Gとプラズマ供給機構32との間に、供給されるガスの量を調整する調整バルブ32Hが設けられている。
希釈ガス供給部32Cからガスを供給すると、プラズマ生成部32Aで発生したプラズマを含むガスの濃度を調整でき、これにより、基板14の主面の膜に対する改質の程度を調整し得る。
希釈ガス供給部32Cから供給されるガスは、特に制限されないが、ガス供給部32Bから供給されるガスと同種のガス、または、不活性ガスが好ましく、不活性ガスとしては、ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス、クリプトンガス、および、キセノンガスからなる群から選択される1種以上のガスを含むことがより好ましい。
なお、希釈ガス供給部32Cは、省略されてもよい。
【0031】
図3に示す態様においては、改質チャンバー30は、プラズマ供給機構32によりプラズマ化されたガスの導入口と基板ホルダー34との間に、拡散失活板38を有する。拡散失活板38は、多数の穴を有する金属製の板であり、接地されている。拡散失活板38を通じてプラズマ化したガスを供給すると、プラズマを拡散させてチャンバー内でのプラズマ量の分布を調整でき、基板14の主面に対して均一にプラズマを供給できるとともに、プラズマを一部失活させることで、基板14の主面の膜に対する改質の程度を調整し得る。
拡散失活板38の形態は、ガスを通過させることができれば特に制限されないが、例えば、
図3に示す態様のような多数の円形の穴または多数の線状の穴が所定の間隔で空けられたパンチングメタル、三角形、四角形または六角型等の多角形の穴が規則的に配列された板、および、羽板を配列して形成される鎧戸構造等が挙げられる。また、改質チャンバー30の形状、および、ガスの流れ等に応じて、後述するように、穴の配置および穴のサイズの少なくとも一方を面内方向で不均一にする場合もある。
拡散失活板38の形状は、均一にプラズマ化したガスを供給するように適宜調整し得る。例えば、拡散失活板38の面内方向において、パンチングメタルの穴の密度は、プラズマ供給機構32のガス出口付近に近い部分では低く、ガス出口から遠い部分では高くなるようにしてもよい。
また、上記では、拡散失活板38の材質として金属を例示したが、金属以外の材質で構成されていてもよい。例えば、拡散失活板38の材料としては、純アルミニウム、アルミニウムを含む合金、ステンレス鋼、純モリブデン、および、モリブデンを含む合金等が挙げられる。
拡散失活板38は、2枚以上設けられていてもよい。拡散失活板38を2枚以上設ける場合、例えば、一枚の拡散失活板38に設けられた円形の穴もしくは線状の穴と、隣接して配置される拡散失活板38に設けられた円形の穴もしくは線状の穴とが、2枚以上の拡散失活板38の配置される方向からみた際に重なり合わさないように配置されてもよい。拡散失活板38を2枚以上用いる場合に、上記のような穴同士が重なり合わないように配置すると、より均一にプラズマ化したガスを基板14に供給でき、好ましい。また、拡散失活板38は、省略してもよい。
【0032】
図3に示す態様においては、排気機構36は、ターボ分子ポンプを備える。排気機構36の態様および好ましい態様については、上記排気機構26と同様であるため、説明を省略する。
また、
図3に示す態様においては、改質チャンバー30は、
図3の紙面右側で接続部を介して搬送チャンバー40と接続し、上記接続部は、仕切り手段としてのドアバルブ44を備えている。ドアバルブ44は、開閉可能な仕切り手段の一例であり、閉じた状態では、改質チャンバー30の内部と、搬送チャンバー40の内部とを遮断することが可能である。また、ドアバルブ44が開いた状態では、基板14を、改質チャンバー30および搬送チャンバー40との間で搬送可能である。すなわち、ドアバルブ44を閉じることで、改質チャンバー30と搬送チャンバー40とを仕切り、改質チャンバー30の内部が独立し、かつ、改質チャンバー30と接続された他のチャンバーとは異なる雰囲気に制御することが可能である。
【0033】
改質チャンバー30におけるプラズマ供給機構32からのプラズマの供給を実施していない状態の真空度(到達真空度)は、1.0×10-1Pa以下が好ましく、1.0×10-3Pa以下が好ましく、1.0×10-6以下がさらに好ましい。
改質チャンバー30におけるプラズマ供給機構32からのプラズマの供給を実施している状態の真空度は、1.0×100Pa以下が好ましく、1.0×101Pa以下が好ましく、1.0×102以下がさらに好ましい。
【0034】
本発明の第1実施態様の成膜装置における改質チャンバーは、
図3に示す改質チャンバー30以外の態様であってもよい。以下、改質チャンバー30の変形例、および、変形例に係る改質チャンバー30が備え得る機構を説明する。
【0035】
ドアバルブ44は、公知の開閉可能な仕切り手段に置き換えられていてもよい。公知の仕切り手段としては、例えば、プラズマ供給機構32から供給されるプラズマ化されたガスが、改質チャンバー30から、搬送チャンバー40へ流入することを防ぐシャッターであってもよい。このシャッターは、上記ドアバルブ44とは異なり、改質チャンバー30の雰囲気を独立させる目的で使用されないが、改質チャンバー30と接続されるチャンバーへの物質の拡散を抑制できる。上記シャッターが開いた状態では、基板14を改質チャンバー30および搬送チャンバー40との間で搬送可能である。
また、上記の説明では、ドアバルブ44または上記シャッターが、搬送チャンバー40と接続する接続部に存在する態様について説明したが、他の位置に設置されていてもよい。例えば、ドアバルブ44または上記シャッターは、改質チャンバー30の内部に設けられていてもよい。さらに、ドアバルブ44および上記シャッターからなる群から選択される1つ以上の仕切り手段は、複数設けられていてもよい。
なお、ドアバルブ44または上記シャッターは、チャンバー間の物質の拡散を抑制し、改質によって生じるパーティクルの発生がより抑制される点で設けられることが好ましいが、設けられなくてもよい。
【0036】
改質チャンバー30における各構成の配置は、
図3に示す態様から適宜変更できる。
【0037】
改質チャンバー30は、その壁面に窓を有していてもよい。窓は、改質チャンバー30の内部を外部から観察可能にする。窓の設置位置は特に制限されないが、例えば、改質チャンバー30の壁面のうち、基板ホルダー34が設置されている側の壁面と対向する壁面に設置されてもよい。
【0038】
[搬送チャンバー40]
図1に図示した態様における搬送チャンバー40は、搬送機構42を備える。
搬送機構42は、公知の搬送機構を採用できる。搬送機構42は、静電チャックによって基板を保持する機構であってもよい。
搬送チャンバー40は、成膜チャンバー20で説明した排気機構26と同様の排気機構を備えていてもよい。上記排気機構は、搬送チャンバー40内の気体を排気する。
図1に図示した態様における搬送チャンバー40は、平面視で六角形状であるが、特に上記態様には制限されない。例えば、円形でもよいし、六角形以外の多角形状であってもよい。また、搬送チャンバー40は、搬送機構42を2つ以上有していてもよい。
【0039】
搬送チャンバー40は、成膜チャンバー20で説明した開閉可能な公知の仕切り手段(例えばドアバルブ44およびシャッター)を備えていてもよい。公知の仕切り手段は、各チャンバーとの接続部に設けられていてもよく、搬送チャンバー40の内側に設けられていてもよい。
また、本発明の第1実施態様の成膜装置10は、上述した位置に、開閉可能な仕切り手段をそれぞれ備えていてもよい。すなわち、成膜装置10は、開閉可能な仕切り手段を2つ以上備えていてもよい。なお、成膜装置10は、開閉可能な仕切り手段を備えていなくてもよい。
上記開閉可能な仕切り手段に代えて、接続されるチャンバー間に圧力差を設けて、物質の拡散を制御してもよい。例えば、搬送チャンバー40内の圧力を、改質チャンバー30内の圧力よりも高くすれば、改質チャンバー30から搬送チャンバー40へプラズマ化されたガスが流入しにくくなる。他にも、搬送チャンバー40内の圧力を、成膜チャンバー20の圧力よりも低くすれば、改質チャンバー30から成膜チャンバー20へプラズマ化されたガスが流入しにくくなる。
【0040】
[ロードロックチャンバー50]
図1に図示した態様におけるロードロックチャンバー50は、搬送チャンバー40を大気開放せずに基板14を搬送チャンバー40に導入し、搬送チャンバー40を大気開放せずに膜を形成した基板14を搬送チャンバー40から搬出するための機構を備える。
例えば、ロードロックチャンバー50は、成膜チャンバー20で説明した排気機構26と同様の排気機構を備える。上記排気機構は、ロードロックチャンバー50内の気体を排気する。
また、ロードロックチャンバー50は、成膜チャンバー20で説明したドアバルブ44を介して搬送チャンバー40に接続される。さらに、ロードロックチャンバー50は、搬送チャンバー40側とは反対側の位置に、外部から基板14を導入可能にするための開閉機構を備えた取り出し口を備える。
上記ドアバルブ44を閉じた状態でロードロックチャンバー50を大気開放し、上記取り出し口から基板14をロードロックチャンバー50内に搬入し、取り出し口を閉めてロードロックチャンバー50内の気体を排気して所定レベルまで減圧し、その後に上記ドアバルブ44を開けると、基板14を搬送チャンバー40に導入できる。
ロードロックチャンバー50は、基板14の表面を清浄化する公知の機構を備えていてもよい。
【0041】
図1に示した成膜装置10においては、成膜チャンバー20は1つであるが、本発明の第1実施態様の成膜装置は、成膜チャンバー20を複数有していてもよい。
また、同様に、本発明の第1実施態様の成膜装置は、改質チャンバー30、搬送チャンバー40、および、ロードロックチャンバー50をそれぞれ複数有していてもよい。
また、本発明の第1実施態様の成膜装置は、上記説明した以外のその他のチャンバーを有していてもよい。その他のチャンバーとしては、例えば、形成した膜の状態を確認する分析チャンバーが挙げられる。分析チャンバーは、公知の分析手段(例えば分光測定ユニット)を備える。
基板ホルダー24および34等において、基板14を保持する際の角度は、基板14の主面の法線方向と、重力の作用方向とが平行となるようにしてもよいし、垂直となるようにしてもよい。また、基板14の主面の法線方向と、重力の作用方向とのなす角は、0~90°の任意の角度としてもよい。
また、搬送機構42を用いて基板14を搬送する際は、基板14の角度は特に制限されず、基板の主面の法線方向と重力の作用方向とが平行となるようにして搬送してもよいし、垂直となるようにしてもよい。また、基板14を搬送する際は、基板14の主面の法線方向と、重力の作用方向とのなす角は、0~90°の任意の角度としてもよい。
【0042】
<第2実施態様>
以下、本発明の第2実施態様について説明する。
本発明の第2実施態様の成膜装置は、成膜チャンバーと、成膜チャンバー内に収容された基板上に膜を形成する成膜機構と、成膜チャンバーと接続される改質チャンバーと、改質チャンバー内に収容された基板上に形成された膜の表面に対してプラズマを供給するプラズマ供給機構と、成膜チャンバーと改質チャンバーとの間で基板を搬送する搬送手段とを有する。
本発明の第2実施態様の成膜装置では、成膜を行う成膜チャンバーと、膜の表面の改質を行う改質チャンバーとが別のチャンバーとなっている。通常、成膜を行う際には、基板以外の部分(例えば、チャンバーの内壁およびチャンバー内に収容される機構の表面等)にも膜の材料が付着し得る。
本発明の第2実施態様の成膜装置では、上記の構成とすることで、基板上の膜の改質処理を行う際、成膜チャンバーの内壁等に形成されている膜が改質処理に曝されにくく、これにより、成膜チャンバー内で改質によって生じるパーティクルの発生が抑制される。
【0043】
本発明の第2実施態様の成膜装置の一態様について、図面を用いて具体的に説明する。
図4は、本発明の第2実施態様の成膜装置12の模式図である。
成膜装置12は、
図4に示すように、成膜機構22(
図2参照)を備える成膜チャンバー20と、プラズマ供給機構32を備える改質チャンバー30と、搬送機構42を備える搬送チャンバー40と、ロードロックチャンバー50とを有する。成膜チャンバー20は、搬送チャンバー40と、改質チャンバー30との間に配置されている。換言すると、搬送チャンバー40と、成膜チャンバー20と、改質チャンバー30とが、この順で列状に並んで配置されている。また、搬送チャンバー40は、成膜チャンバー20およびロードロックチャンバー50に接続している。搬送機構42は、図示しない基板を、成膜チャンバー20、改質チャンバー30、および、ロードロックチャンバー50の間で搬送可能である。
【0044】
本発明の第2実施態様の成膜装置は、搬送チャンバー40を介さずに、成膜チャンバー20と改質チャンバー30とが直接接続されている以外は、本発明の第1実施態様の成膜装置と同様である。したがって、成膜チャンバー20、改質チャンバー30、搬送チャンバー40、および、ロードロックチャンバー50の好ましい態様、ならびに、取り得る態様は、第1実施態様のものと同様である。
すなわち、成膜チャンバー20と、改質チャンバー30との間に、上述した仕切り手段(例えばドアバルブ44、または、上記シャッター)を備えることが好ましい。また、上述したように、仕切り手段の代わりに、成膜チャンバー20と改質チャンバー30との間に圧力差を設けて、物質の拡散を制御してもよい。
【0045】
<膜付き基板の製造方法>
本発明の膜付き基板の製造方法は、上述した第1実施態様または第2実施態様の成膜装置を用いる製造方法である。
具体的には、成膜機構により、成膜チャンバーにおいて基板の一方の主面に対して膜を形成し、膜が形成された基板を改質チャンバーに搬送し、改質チャンバーに基板が収容された状態で、プラズマ供給機構により改質チャンバー内にプラズマを導入する製造方法である。
上記膜付き基板の製造方法によれば、改質処理に伴うチャンバー(改質チャンバーおよび成膜チャンバー)内の改質によって生じるパーティクルの発生を抑制でき、得られる基板上の膜において、上記パーティクルの発生が抑制される。
【0046】
本発明の膜付き基板の製造方法で得られる膜付き基板は、反射型マスクブランクであることが好ましい。すなわち、本発明の第1実施態様の成膜装置、および、第2実施態様の成膜装置は、反射型マスクブランクを製造するための成膜装置であることが好ましい。
反射型マスクブランクとは、半導体製造の露光プロセスで使用されるEUV(Etreme Ultra Violet:極端紫外)露光に用いられる反射型マスクを作成するための反射型マスクの原板を意味する。
反射型マスクブランクは、通常、基板と、その基板の一方の面側に配置されるEUV光を反射する多層反射膜と、多層反射膜の上記基板側とは反対側に配置される吸収体膜とを有する。
本発明の膜付き基板の製造方法で得られる膜付き基板としての反射型マスクブランクについては、後段で詳細に説明する。また、用いる基板についても後段で説明する。
【0047】
以下、膜付き基板の製造方法について説明する。なお、以下では、本発明の第1実施態様の成膜装置を用いた膜付き基板の製造方法について説明するが、本発明の第2実施態様の成膜装置を用いても、同様に膜付き基板の製造方法を実施できる。
【0048】
まず、搬送機構42により、基板14を成膜チャンバー20に搬送する。搬送された基板14は、基板ホルダー24に保持される。基板14を成膜チャンバー20に搬送した後、成膜チャンバー20の内部を独立させる理由から、成膜チャンバー20と搬送チャンバー40との間の接続部に備えられるドアバルブ44は閉じることが好ましい。
次に、基板14に対して、成膜機構22を用いて、基板14の一方の主面に膜を形成する。基板14は、後述する基板を用いてもよいし、基板の一方の主面に膜が既に形成されたものを用いてもよい。
成膜機構22は、形成する膜の材料および厚みに応じて、適宜選択できる。
膜を形成する際は、基板14の主面の法線方向に沿う軸を中心に基板14を回転させながら実施することが好ましい。基板14の回転は、基板ホルダー24で基板14を保持した状態で、基板ホルダー24を回転させればよい。
【0049】
なお、基板14を成膜チャンバー20に搬送するためには、通常、まず、ロードロックチャンバー50と搬送チャンバー40との間に設けられるドアバルブを閉めた状態で、ロードロックチャンバー50を大気開放する。次に、基板14をロードロックチャンバー50内に設置し、ロードロックチャンバー50内の気体を排気する。
その後、上記のドアバルブを開き、搬送機構42によってロードロックチャンバー50から基板14を搬送チャンバー40へ移動させ、その後、基板14を成膜チャンバー20に搬送する。
【0050】
基板14の一方の主面に膜を形成した後、基板14を、搬送機構42によって改質チャンバー30に搬送する。搬送された基板14は、基板ホルダー34に保持される。基板14を改質チャンバー30に搬送した後、改質チャンバー30の内部を独立させる理由から、改質チャンバー30と搬送チャンバー40との間の接続部に備えられるドアバルブ44は閉じることが好ましい。
次に、基板14に対して、プラズマ供給機構32から改質チャンバー30内にプラズマを導入する。導入されたプラズマによって、基板14の一方の主面に形成された膜が改質される。
プラズマ供給機構32から導入されるプラズマは、窒素系ガス、酸素系ガス、炭素系ガス、シラン系ガス、および、ハロゲン系ガスからなる群から選択される1種以上のガスから生成されるプラズマであることが好ましい。導入されるプラズマは、形成する膜の材料によって適宜選択できる。
プラズマを導入する際、基板14の主面の法線方向に沿う軸を中心に基板14を回転させながら改質チャンバー30内にプラズマを導入することが好ましい。基板14の回転は、基板ホルダー34で基板14を保持した状態で、基板ホルダー34を回転させればよい。
【0051】
以上までに説明した手順により、膜付き基板が得られる。なお、上記一連の手順は、繰り返し実施してもよい。すなわち、上述したように、一方の主面に膜が形成された膜付き基板に対して、成膜チャンバー20で他方の主面に膜を形成し、改質チャンバー30で当該膜を改質してもよい。
得られる膜付き基板が、反射型マスクブランクの場合、後述する反射型マスクブランクにおける多層反射膜、保護膜、吸収体膜、ハードマスク膜および、導電膜からなる群から選択される1つ以上が、上記手順で形成されることが好ましい。
また、多層反射膜が上記手順で形成され、多層反射膜が改質処理される際、窒素系ガス、酸素系ガス、炭素系ガス、水素ガス、および、ハロゲン系ガスからなる群から選択される1種以上のガスを含むガスが供給され、多層反射膜を窒化、酸化、炭化、水素化またはハロゲン化処理することが好ましい。特に、多層反射膜において最も保護膜側に位置する多層反射膜の層に対して、上述した改質処理を施すことが好ましい。
多層反射膜の改質処理に用いられるガスとしては、窒素系ガス、および酸素系ガスからなる群から選択される1種以上のガスを含むガスを用いることがより好ましい。
【0052】
以下、得られる膜付き基板の好ましい態様である反射型マスクブランクについて説明する。
なお、膜付き基板は、以下の態様に制限されない。
【0053】
[基板]
膜付き基板の製造方法で用いる基板、すなわち、反射型マスクブランクが有する基板は、熱膨張係数が小さいことが好ましい。
基板の熱膨張係数は、20℃において、0±1.0×10-7/℃が好ましく、0±0.3×10-7/℃がより好ましい。
熱膨張係数が小さい材料としては、SiO2-TiO2系ガラス等が挙げられるが、これに限定されず、β石英固溶体を析出した結晶化ガラス、石英ガラス、金属シリコン、および、金属等の基板も使用できる。
SiO2-TiO2系ガラスは、SiO2を90~95質量%、TiO2を5~10質量%含む石英ガラスを用いることが好ましい。
【0054】
基板の多層反射膜が積層される側の面(以下、「第1主面」ともいう。)は、高い表面平滑性を有することが好ましい。第1主面の表面平滑性は、表面粗さで評価できる。第1主面の表面粗さは、二乗平均平方根粗さRqで、0.15nm以下が好ましい。なお、表面粗さは、原子間力顕微鏡で測定でき、表面粗さは、JIS-B0601に基づく二乗平均平方根粗さRqとして説明する。
第1主面は、反射型マスクブランクを用いて得られる反射型マスクのパターン転写精度および位置精度を高められる点で、所定の平坦度となるように表面加工されることが好ましい。基板は、第1主面の所定の領域(例えば、132mm×132mmの領域)において、平坦度は、100nm以下が好ましく、50nm以下がより好ましく、30nm以下がさらに好ましい。平坦度は、フジノン社製平坦度測定器によって測定できる。
基板の大きさおよび厚さ等は、マスクの設計値等により適宜決定される。例えば、外形は6インチ(152mm)角、および、厚さは0.25インチ(6.3mm)等が挙げられる。
さらに、基板は、基板上に形成される膜(多層反射膜、吸収体膜等)の膜応力による変形を防止する点で、高い剛性を有することが好ましい。例えば、基板のヤング率は、65GPa以上が好ましい。
【0055】
[多層反射膜]
反射型マスクブランクの一方の面に設けられる多層反射膜は、EUVマスクブランクの反射膜として所望の特性を有する限り特に限定されない。多層反射膜は、EUV光に対して高い反射率を有することが好ましく、具体的には、EUV光が入射角6°で多層反射膜の表面に入射した際、波長13.5nm付近のEUV光の反射率の最大値は、60%以上が好ましく、65%以上がより好ましい。また、多層反射膜の上に、保護膜が積層されている場合でも、同様に、波長13.5nm付近のEUV光の反射率の最大値は、60%以上が好ましく、65%以上がより好ましい。
【0056】
多層反射膜は、高いEUV光の反射率を達成できることから、通常はEUV光に対して高い屈折率を示す高屈折率層と、EUV光に対して低い屈折率を示す低屈折率層とを交互に複数回積層させた多層反射膜が用いられる。
多層反射膜は、高屈折率層と低屈折率層とを基板側からこの順に積層した積層構造を1周期として複数周期積層してもよいし、低屈折率層と高屈折率層とをこの順に積層した積層構造を1周期として複数周期積層してもよい。
高屈折率層としては、Siを含む層を用いることができる。Siを含む材料としては、Si単体の他に、Siに、B、C、N、およびOからなる群から選択される1種以上を含むSi化合物を用いることができる。Siを含む高屈折率層を用いることによって、EUV光の反射率に優れた反射型マスクが得られる。
低屈折率層としては、Mo、Ru、Rh、およびPtからなる群から選択される金属、またはこれらの合金を含む層を用いることができる。
上記高屈折率層には、Siが広く使用され、低屈折率層にはMoが広く使用される。すなわち、Mo/Si多層反射膜が最も一般的である。ただし、多層反射膜はこれに限定されず、Ru/Si多層反射膜、Mo/Be多層反射膜、Mo化合物/Si化合物多層反射膜、Si/Mo/Ru多層反射膜、Si/Mo/Ru/Mo多層反射膜、Si/Ru/Mo/Ru多層反射膜も使用できる。
【0057】
多層反射膜を構成する各層の膜厚および層の繰り返し単位の数は、使用する膜材料および反射層に要求されるEUV光の反射率に応じて適宜選択できる。Mo/Si多層反射膜を例にとると、EUV光の反射率の最大値が60%以上の多層反射膜とするには、膜厚2.3±0.1nmのMo膜と、膜厚4.5±0.1nmのSi膜とを繰り返し単位数が30~60になるように積層させればよい。
【0058】
[保護膜]
上記反射型マスクブランクは、上記多層反射膜の基板側とは反対側に、保護膜を有していてもよい。保護膜は、エッチングプロセス(通常はドライエッチングプロセス)により吸収体膜にパターン形成する際に、多層反射膜がエッチングプロセスによるダメージを受けないよう、多層反射膜を保護する目的で設けられる。
上記目的を達成できる材料としては、Ru、および、Rhからなる群から選択される少なくとも1つの元素を含む材料が挙げられる。すなわち、保護膜は、Ru、および、Rhからなる群から選択される少なくとも1つの元素を含むことが好ましい。
より具体的には、上記材料として、Ru金属単体、Ruと、Si、Ti、Nb、Mo、Rh、および、Zrからなる群から選択される1種以上の金属とを含むRu合金、ならびに、Rh金属単体、Rhと、Si、Ti、Nb、Ru、Ta、Mo、および、Zrからなる群から選択される1種以上の金属とを含むRh合金、上記Rh合金と窒素とを含むRh含有窒化物、および、上記Rh合金と窒素と酸素とを含むRh含有酸窒化物等のRh系材料が挙げられる。
また、上記目的を達成できる材料として、Alおよびこれらの金属と窒素とを含む窒化物、および、Al2O3等も例示される。
なかでも、上記目的を達成できる材料としては、Ru金属単体、Ru合金、Rh金属単体、または、Rh合金が好ましい。Ru合金としては、Ru-Si合金またはRu-Rh合金が好ましく、Rh合金としては、Rh-Si合金またはRh-Ru合金が好ましい。
【0059】
保護膜の膜厚は、保護膜としての機能を果たすことができる限り特に制限されない。多層反射膜で反射されたEUV光の反射率を保つ点から、保護膜の膜厚は、1~10nmが好ましく、1.5~6nmがより好ましく、2~5nmがさらに好ましい。
保護膜の材料が、Ru金属単体、Ru合金、Rh金属単体、または、Rh合金であって、保護膜の膜厚が上記好ましい膜厚であることも好ましい。
【0060】
保護膜は、単一の層からなる膜でもよいし、複数の層からなる多層膜でもよい。保護膜が多層膜である場合、多層膜を構成する各層は、上記好ましい材料からなることが好ましい。また、保護膜が多層膜である場合、多層膜の合計膜厚が、上記好ましい範囲の保護膜の膜厚であることも好ましい。
【0061】
[吸収体膜]
反射型マスクブランクが有する吸収体膜は、吸収体膜をパターン化した際に、多層反射膜で反射されるEUV光と、吸収体膜でEUV光とのコントラストが高いことが求められる。
パターン化された吸収体膜(吸収体膜パターン)は、EUV光を吸収してバイナリマスクとして機能してもよく、EUV光を反射しつつ多層反射膜からのEUV光と干渉してコントラストを生じせしめる位相シフトマスクとして機能してもよい。
【0062】
吸収体膜パターンをバイナリマスクとして用いる場合には、吸収体膜がEUV光を吸収し、EUV光の反射率が低い必要がある。具体的には、EUV光が吸収体膜の表面に照射された際の、波長13.5nm付近のEUV光の反射率の最大値は、2%以下が望ましい。
吸収体膜は、Ta、Ti、SnおよびCrからなる群から選択される1種以上の金属の他に、O、N、B、Hf、および、Hからなる群から選択される1種以上の成分を含んでいてもよい。これらの中でも、NまたはBを含むことが好ましい。NまたはBを含むことで、吸収体膜の結晶状態をアモルファスまたは微結晶の構造にできる。
吸収体膜の結晶状態は、アモルファスが好ましい。これにより、吸収体膜の平滑性および平坦度を高められる。また、吸収体膜の平滑性および平坦度が高くなると、吸収体膜パターンのエッジラフネスが小さくなり、吸収体膜パターンの寸法精度を高くできる。
吸収体膜パターンをバイナリマスクとして用いる場合、吸収体膜の膜厚は、40~70nmが好ましく、50~65nmがより好ましい。
【0063】
吸収体膜パターンを位相シフトマスクとして用いる場合には、吸収体膜のEUV光の反射率は2%以上が好ましい。位相シフト効果を十分に得るためには、吸収体膜の反射率は9~15%が好ましい。位相シフトマスクとして吸収体膜を用いると、ウエハ上の光学像のコントラストが向上し、露光マージンが増加する。
位相シフトマスク形成する材料としては、例えば、Ru金属単体、RuとCr、Au、Pt、Re、Hf、Ta、TiおよびSiからなる群から選択される1種以上の金属とを含むRu合金、TaとNbとの合金、Ru合金またはTaNb合金と酸素とを含む酸化物、Ru合金またはTaNb合金と窒素とを含む窒化物、Ru合金またはTaNb合金と酸素と窒素とを含む酸窒化物等が例示される。また、位相シフト膜を形成する材料としては、例えば、Ir金属単体、Irと、Ta、Cr、W、ReおよびSiからなる群から選択される1種以上の金属とを含むIr合金等も例示される。吸収体膜パターンを位相シフトマスクとして用いる場合、吸収体膜の膜厚は、30~60nmが好ましく、35~55nmがより好ましい。
【0064】
吸収体膜は、単層の膜でもよいし、複数の膜からなる多層膜でもよい。吸収体膜が単層膜である場合は、マスクブランク製造時の工程数を削減できて生産効率を向上できる。吸収体膜が多層膜である場合、吸収体膜の多層反射膜保護膜側とは反対側に配置される層は、検査光(例えば、波長193~248nm)を用いて吸収体膜パターン検査する際の反射防止膜であってもよい。
【0065】
[導電膜]
本発明の反射型マスクブランクは、基板の上記第1主面とは反対側の面(第2主面)側に、導電膜を有していてもよい。導電膜を備えることにより、反射型マスクブランクは、静電チャックによる取り扱いが可能となる。
導電膜としては、CrおよびTaからなる群から選択される1種以上の第1元素を含む態様が挙げられる。
【0066】
導電膜は、CrおよびTaからなる群から選択される1種以上の第1元素を含む。導電膜は、B、C、N、および、Oからなる群から選択される1種以上の第2元素を含んでいてもよい。ただし、導電膜の組成は、後段で詳述する保護膜の組成とは異なる。なお、組成が異なるとは、導電膜と保護膜とで異なる元素が含まれる場合だけでなく、導電膜と保護膜とで2種以上の同種の元素が含まれ、導電膜と保護膜とで元素の含有比率が異なる場合も含む。
導電膜は、第1元素としてCrおよびTaのいずれか一方を含むことが好ましく、Crを含むことがより好ましい。導電膜は、第2元素としてNを含むことが好ましい。導電膜は、第1元素としてCrを含み、第2元素として少なくともNを含むことも好ましい。
導電膜を構成する具体的な材料としては、例えば、Cr単体、CrN、CrO、CrON、CrB、CrBN、CrC、CrCN、CrOC、Ta単体、TaN、TaO、TaON、TaB、TaBN、TaC、TaCN、TaOC、CrTaO、および、CrTaN等が挙げられ、Cr単体、CrN、TaN、または、TaBNが好ましい。なお、「CrON」のような表記は、CrとOとNとを含む材料を指し、それら元素の含有比率は制限されない。
【0067】
導電膜は、シート抵抗値が低いことが好ましい。導電膜のシート抵抗値は、例えば、200Ω/□以下が好ましく、100Ω/□以下がより好ましい。
導電膜の厚みは、10~1000nmが好ましく、100~500nmがより好ましい。
【0068】
[その他の膜]
本発明の反射型マスクブランクは、その他の膜を有していてもよい。その他の膜としては、ハードマスク膜が挙げられる。ハードマスク膜は、吸収体膜の保護膜側とは反対側に配置されることが好ましい。
ハードマスク膜としては、Cr系膜およびSi系膜等、ドライエッチングに対して耐性の高い材料が用いられることが好ましい。Cr系膜としては、例えば、Cr、ならびに、CrとO、N、CおよびHからなる群から選択される1種以上の元素とを含む材料等が挙げられる。具体的には、CrO、およびCrN等が挙げられる。Si系膜としては、Si、ならびに、SiとO、N、C、およびHからなる群から選択される1種以上とを含む材料等が挙げられる。具体的には、SiO2、SiON、SiN、SiO、Si、SiC、SiCO、SiCN、およびSiCON等が挙げられる。吸収体膜上にハードマスク膜を形成すると、吸収体膜パターンの最小線幅が小さくなっても、ドライエッチングを実施できる。そのため、吸収体膜パターンの微細化に対して有効である。
【0069】
反射型マスクブランクにおける吸収体膜をパターニングして吸収体膜パターンを形成すると、反射型マスクが得られる。反射型マスクにおいては、吸収体膜の開口部ではEUV光をより多く反射するため、EUV光による露光に用いられる反射型マスクとして好適に適用できる。
本発明の膜付き基板の製造方法で得られる反射型マスクブランクにおいては、パーティクルが発生しにくく、反射型マスクとした際に露光欠陥が少なくなり、好ましい。
【符号の説明】
【0070】
10,12 成膜装置
14 基板
20 成膜チャンバー
22 成膜機構
22A ターゲット
22B イオン銃
24,34 基板ホルダー
26,36 排気機構
30 改質チャンバー
32 プラズマ供給機構
32A プラズマ生成部
32B ガス供給部
32C 希釈ガス供給部
32D 電源
32E,32G ガス供給源
32F,32H 調整バルブ
38 拡散失活板
40 搬送チャンバー
42 搬送機構
44 ドアバルブ
50 ロードロックチャンバー