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特開2024-168190pH調整水製造装置、及びpH調整水の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168190
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】pH調整水製造装置、及びpH調整水の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20241128BHJP
   C02F 1/66 20230101ALI20241128BHJP
   C02F 1/20 20230101ALI20241128BHJP
   B01D 53/22 20060101ALI20241128BHJP
   B01D 19/00 20060101ALI20241128BHJP
   B01F 21/00 20220101ALI20241128BHJP
   B01F 23/2326 20220101ALI20241128BHJP
   B01F 25/30 20220101ALI20241128BHJP
【FI】
H01L21/304 647Z
H01L21/304 648G
C02F1/66 510A
C02F1/66 521A
C02F1/66 521B
C02F1/66 521E
C02F1/66 530C
C02F1/66 530G
C02F1/66 530K
C02F1/66 530L
C02F1/66 530Q
C02F1/66 540H
C02F1/66 540Z
C02F1/20 Z
B01D53/22
B01D19/00 H
B01F21/00
B01F23/2326
B01F25/30
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023084651
(22)【出願日】2023-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【弁理士】
【氏名又は名称】村雨 圭介
(72)【発明者】
【氏名】顔 暢子
【テーマコード(参考)】
4D006
4D011
4D037
4G035
5F157
【Fターム(参考)】
4D006GA32
4D006GA35
4D006JA53Z
4D006KA01
4D006KA72
4D006KB30
4D006KD30
4D006KE15P
4D006KE15R
4D006KE30P
4D006KE30R
4D006MC22
4D006MC30
4D006MC53
4D006MC65
4D006PA01
4D006PA10
4D006PB02
4D006PB20
4D006PB62
4D006PC01
4D011AA17
4D011AD03
4D037AA03
4D037AB11
4D037BA23
4D037BB07
4D037CA09
4D037CA14
4G035AA01
4G035AA02
4G035AB20
4G035AC22
4G035AE02
5F157AA36
5F157BC07
5F157BD04
5F157BD26
5F157BD27
5F157BD36
5F157BD54
5F157BE33
5F157BE35
5F157BE63
5F157BF39
5F157BH14
5F157CF04
5F157CF14
5F157CF60
5F157CF99
5F157DB03
5F157DB23
5F157DB57
(57)【要約】
【課題】 一部又は全面にスカンジウムやランタンなどの希土類元素、又はこれらの酸化物が露出した半導体ウェハの洗浄・リンス水工程で、ウェハの帯電及び腐食溶解を最小化することの可能なpH調整水の製造装置を提供する。
【解決手段】 pH調整水製造装置1は、超純水Wを供給する超純水供給ライン2と、pH調整剤タンク4に連通した給液ポンプ6を備えたpH調整剤注入ライン5とを有する。この超純水供給ライン2には、真空ポンプ9を備えた吸気管8が接続した膜式脱気装置7と、Nガス供給源に連通した不活性ガス供給管11が接続したガス溶解膜10が設けられている。そして、ガス溶解膜10の後段にはpHセンサ及び溶存酸素濃度センサが設けられている。これらセンサは制御手段にデータ送信可能となっていて、制御手段は添加されるpH調整剤の添加量及び脱気度を制御可能となっている。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超純水供給ラインと、
この超純水供給ラインに配置された該超純水にpH調整剤を添加しpH7超として一次pH調整水を調製するpH調整機構と、
前記超純水に含まれる溶存ガスを除去して脱気pH調整水を製造する脱気機構と、
前記pH調整機構の後段に設けられた被処理水のpHを監視する水質監視機構と
を有し、前記水質監視機構で測定された水質の監視結果に基づいて、前記pH調整機構により添加されるpH調整剤の添加量を制御可能な制御機構を備える、pH調整水製造装置。
【請求項2】
前記脱気機構の後段に不活性ガスを溶解するガス溶解機構を備える、請求項1に記載のpH調整水製造装置。
【請求項3】
前記pH調整剤が、アンモニア水、水酸化ナトリウム溶液、TMAH、水酸化カリウム溶液、炭酸ナトリウム溶液、炭酸水素ナトリウム溶液、アンモニアガスから選ばれた1種又は2種以上である、請求項1に記載のpH調整水製造装置。
【請求項4】
前記pH調整機構における前記pH調整剤が気体であり、前記pH調整機構は該pH調整剤を気体透過性膜モジュールあるいはエゼクタによる直接気液接触装置を用いたガス溶解により添加可能緒となっている、請求項3に記載のpH調整水製造装置。
【請求項5】
前記pH調整機構における前記pH調整剤が液体であり、前記pH調整機構は該pH調整剤をポンプあるいは密閉タンクと不活性ガスを用いる加圧手段により薬注可能となっている、請求項3に記載のpH調整水製造装置。
【請求項6】
前記脱気pH調整水が、一部又は全面にスカンジウム、ランタン又はこれらの酸化物が露出した半導体ウェハの洗浄水用又はリンス水用である、請求項1~5のいずれか1項に記載のpH調整水製造装置。
【請求項7】
超純水にpH調整剤を添加して該超純水をpH7超として一次pH調整水を調整するpH調整工程と、
この一次pH調整水に含まれる溶存ガスを除去して脱気pH調整水を製造する脱気工程と、
得られたpH調整水のpHを監視する水質監視工程と、
この水質監視工程の監視結果に基づいて、前記pH調整工程におけるpH調整剤の添加量を制御する調整工程と
からなる、pH調整水の製造方法。
【請求項8】
前記脱気工程の後、不活性ガスを溶解させる不活性ガス溶解工程を有する、請求項7に記載のpH調整水の製造方法。
【請求項9】
前記脱気pH調整水のpHを8~12とし、溶存酸素濃度を50ppb以下とする、請求項8に記載のpH調整水の製造方法。
【請求項10】
超純水に含まれる溶存ガスを除去する脱気工程と、
この脱気した超純水にpH調整剤を添加してpH7超の脱気pH調整水を製造するpH調整工程と、
得られた脱気pH調整水のpHを監視する水質監視工程と、
この水質監視工程の監視結果に基づいて、前記pH調整工程におけるpH調整剤の添加量を制御する調整工程と
からなる、pH調整水の製造方法。
【請求項11】
前記脱気工程の後、不活性ガスを溶解させる不活性ガス溶解工程を有する、請求項10に記載のpH調整水の製造方法。
【請求項12】
前記脱気pH調整水のpHを8~12とし、溶存酸素濃度を50ppb以下とする、請求項11に記載のpH調整水の製造方法。
【請求項13】
前記脱気pH調整水が、一部又は全面にスカンジウム、ランタン又はこれらの酸化物が露出した半導体ウェハの洗浄水用又はリンス水用である、請求項7~12のいずれか1項に記載のpH調整水の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造プロセスで使用するpH調整水製造装置、及びこれを用いたpH調整水の製造方法に関し、特に一部又は全面にスカンジウムやランタンなどの希土類元素又はこれらの酸化物が露出した半導体ウェハの洗浄・リンス水工程で、ウェハの帯電及びこれら希土類元素又はこれらの酸化物の腐食溶解を最小化することの可能なpH調整水の製造装置、及びこれを用いたpH調整水の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の半導体の微細化に伴い、配線幅も縮小が進んでいる。以前から半導体製造プロセスにおける配線製造工程では、製造装置由来による配線の位置ずれが発生していたが、配線幅が広かったため配線の位置ずれによる影響は無視できるものであり、歩留まりにも影響しなかった。しかしながら、配線幅の微細化が進んだことで、従来は無視できていた配線の位置ずれが、例え極僅かであって歩留まりに影響するため、無視できなくなってきた。配線の微細化は今後も続く上、配線の位置ずれは製造装置に起因するため、配線の位置ずれそのものの発生を防止することは困難である。
【0003】
そこで、配線の位置ずれによる半導体の性能の劣化を防止する方法として、配線層の極微小エッチング技術の開発が進められている。この極微小エッチング技術とは、予め配線層を極微小に溶解しておくことで、配線間に存在する層間絶縁膜を堤防のように利用し、万一配線の位置ずれが発生した場合でも配線同士が接触しないような構造とすることで、短絡を防止する技術であり、微細化が進む限り必要とされる技術である。
【0004】
このような半導体の製造工程では、ウェハの表面を清浄に保つため、洗浄水として超純水を用い、ウェハ表面を洗浄するリンス工程がある。この際、超純水の比抵抗値が高いため、ウェハ表面の帯電による静電破壊の発生や、静電気によって微粒子がウェハ表面に付着するという問題が生じる。そこで、超純水に炭酸ガスを溶解させ比抵抗を低下させた炭酸水をリンス水として使用する方法が一般的に用いられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、炭酸水は弱酸性であるため、半導体材料として用いられる金属の多くを溶解してしまうという特徴を有する。そのため、ウェハ表面の帯電防止はできても、半導体材料の溶解防止には適していない。
【0006】
特に次世代半導体製造で適用が見込まれるスカンジウムやランタンなどの希土類元素やこれらの酸化物のリンス工程においても、同様にリンス水として超純水を用いた場合には、帯電が防止できず、スカンジウムやランタンなどの希土類元素やこれらの酸化物の腐食溶解が発生し、半導体性能が低下するという問題がある。また、リンス水として炭酸水超純水を用いた場合には、帯電は防止できるものの、スカンジウムやランタンなどの希土類元素やこれらの酸化物の腐食溶解が超純水の場合よりも大きく発生し、半導体性能が低下するという問題がある。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、一部又は全面にスカンジウムやランタンなどの希土類元素、又はこれらの酸化物が露出した半導体ウェハの洗浄・リンス水工程で、ウェハの帯電及びこれら希土類元素又はこれらの酸化物の腐食溶解を最小化することの可能なpH調整水の製造装置を提供することを目的とする。また、本発明は、一部又は全面にスカンジウムやランタンなどの希土類元素、又はこれらの酸化物が露出した半導体ウェハの洗浄・リンス水工程で、ウェハの帯電及びこれら希土類元素、又はこれらの酸化物の腐食溶解を最小化することの可能なpH調整水の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的に鑑み、本発明は第一に、超純水供給ラインと、この超純水供給ラインに配置された該超純水にpH調整剤を添加しpH7超として一次pH調整水を調製するpH調整機構と、前記超純水に含まれる溶存ガスを除去して脱気pH調整水を製造する脱気機構と、前記pH調整機構の後段に設けられた被処理水のpHを監視する水質監視機構とを有し、前記水質監視機構で測定された水質の監視結果に基づいて、前記pH調整機構により添加されるpH調整剤の添加量を制御可能な制御機構を備える、pH調整水製造装置を提供する(発明1)。
【0009】
かかる発明(発明1)によれば、超純水にpH調整剤を添加してpH7超とするとともに、超純水に含まれる溶存ガスを脱気機構により除去する。この結果、得られるpH調整水のpHを適切にコントロールするとともに安定した状態に維持することができる。これらにより、ウェハの帯電防止に加え、ウェハ表面の一部もしくは全面に露出したスカンジウムやランタンなどの希土類元素、又はこれらの酸化物の溶解を極力抑制可能なpH調整水を製造することができる。
【0010】
上記発明(発明1)においては、前記前記脱気機構の後段に不活性ガスを溶解するガス溶解機構を備える、ことが好ましい(発明2)。
【0011】
かかる発明(発明2)によれば、脱気機構において脱気した後、ガス溶解機構において不活性ガスを溶解することにより、得られるpH調整剤の性状をより安定させることができる。
【0012】
上記発明(発明1)においては、前記pH調整剤が、アンモニア水、水酸化ナトリウム溶液、TMAH、水酸化カリウム溶液、炭酸ナトリウム溶液、炭酸水素ナトリウム溶液、アンモニアガスから選ばれた1種又は2種以上であることが好ましい(発明3)。
【0013】
かかる発明(発明2)によれば、これらpH調整剤を適宜選択することで、pH調整水のpHを7を超える値に調整することができる。
【0014】
上記発明(発明3)においては、前記pH調整機構における前記pH調整剤が気体であり、前記pH調整機構は該pH調整剤を気体透過性膜モジュールあるいはエゼクタによる直接気液接触装置を用いたガス溶解により添加可能緒となっていることが好ましい(発明4)。
【0015】
かかる発明(発明4)によれば、気体としてのpH調整剤の微量な溶解を安定して制御することができ、pH7を超えるpH調整水を製造することができる。
【0016】
上記発明(発明3)においては、前記pH調整機構における前記pH調整剤が液体であり、前記pH調整機構は該pH調整剤をポンプあるいは密閉タンクと不活性ガスを用いる加圧手段により薬注可能となっていることが好ましい(発明5)。
【0017】
かかる発明(発明5)によれば、液体としてのpH調整剤の微量添加を安定して制御することができ、所望とするpH調整水を製造することができる。
【0018】
上記発明(発明1~5)においては、脱気pH調整水が、一部又は全面にスカンジウム、ランタン又はこれらの酸化物が露出した半導体ウェハの洗浄水用又はリンス水用であることが好ましい(発明6)。
【0019】
かかる発明(発明6)によれば、スカンジウム、ランタン又はこれらの酸化物の腐食を抑制可能なpHを調整することができるので、これらが露出した半導体材料のリンス水として好適なpH調整水を製造することができる。
【0020】
また、本発明は第二に、超純水にpH調整剤を添加して該超純水をpH7超として一次pH調整水を調整するpH調整工程と、この一次pH調整水に含まれる溶存ガスを除去して脱気pH調整水を製造する脱気工程と、得られたpH調整水のpHを監視する水質監視工程と、この水質監視工程の監視結果に基づいて、前記pH調整工程におけるpH調整剤の添加量を制御する調整工程とからなる、pH調整水の製造方法を提供する(発明7)。
【0021】
かかる発明(発明7)によれば、超純水に該超純水がpH7を超えるようにpH調整剤を添加して一次pH調整水を製造し、この一次pH調整水に含まれている溶存ガスを脱気機構により除去して脱気pH調整水を製造する。この結果、pHを適切にコントロールするとともに安定した状態に維持することができる。これらにより、ウェハの帯電防止に加え、ウェハ表面の一部もしくは全面に露出したスカンジウムやランタンなどの希土類元素、又はこれらの酸化物の溶解を極力抑制可能なpH調整水を製造することができる。
【0022】
上記発明(発明7)においては、前記脱気工程の後、不活性ガスを溶解させる不活性ガス溶解工程を有することが好ましい(発明8)。
【0023】
かかる発明(発明8)によれば、脱気機構において脱気した後、ガス溶解機構において不活性ガスを溶解することにより、得られるpH調整剤の性状をより安定させることができる。
【0024】
上記発明(発明8)においては、前記脱気pH調整水のpHを8~12とし、溶存酸素濃度を50ppb以下とすることが好ましい(発明9)。
【0025】
かかる発明(発明9)によれば、一部又は全面にスカンジウム、ランタン、又はこれらの酸化物が露出した半導体ウェハの帯電防止に加え、ウェハ表面の一部もしくは全面に露出したスカンジウムやランタンなどの希土類元素、又はこれらの酸化物の溶解を極力抑制可能なpH調整水を製造することができる。
【0026】
さらに、本発明は、超純水に含まれる溶存ガスを除去する脱気工程と、この脱気した超純水にpH調整剤を添加してpH7超の脱気pH調整水を製造するpH調整工程と、得られた脱気pH調整水のpHを監視する水質監視工程と、この水質監視工程の監視結果に基づいて、前記pH調整工程におけるpH調整剤の添加量を制御する調整工程とからなる、pH調整水の製造方法を提供する(発明10)。
【0027】
かかる発明(発明10)によれば、超純水を脱気した後、pH7を超えるようにpH調整剤を添加して脱気pH調整水を製造する。この結果、pHを適切にコントロールするとともに安定した状態に維持することができる。これらにより、ウェハの帯電防止に加え、ウェハ表面の一部もしくは全面に露出したスカンジウムやランタンなどの希土類元素、又はこれらの酸化物の溶解を極力抑制可能なpH調整水を製造することができる。
【0028】
上記発明(発明10)においては、前記脱気工程の後、不活性ガスを溶解させる不活性ガス溶解工程を有することが好ましい(発明11)。
【0029】
かかる発明(発明11)によれば、脱気機構において脱気した後、ガス溶解機構において不活性ガスを溶解することにより、得られるpH調整剤の性状をより安定させることができる。
【0030】
上記発明(発明11)においては、前記脱気pH調整水のpHを8~12とし、溶存酸素濃度を50ppb以下とすることが好ましい(発明12)。
【0031】
かかる発明(発明12)によれば、一部又は全面にスカンジウム、ランタン又はこれらの酸化物が露出した半導体ウェハの帯電防止に加え、ウェハ表面の一部もしくは全面に露出したスカンジウムやランタンなどの希土類元素、又はこれらの酸化物の溶解を極力抑制可能なpH調整水を製造することができる。
【0032】
上記発明(発明7~12)においては、前記脱気pH調整水が、一部又は全面にスカンジウム、ランタン、又はこれらの酸化物が露出した半導体ウェハの洗浄水用又はリンス水用であることが好ましい(発明13)。
【0033】
かかる発明(発明13)によれば、これらにより製造されるpH調整水は、一部又は全面にスカンジウム、ランタン、又はこれらの酸化物が露出した半導体ウェハの洗浄水あるいはリンス水として好適に用いることができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明のpH調整水製造装置によれば、超純水にpH調整剤を添加してpH7超として一次pH調整水を製造し、この一次pH調整水に含まれている溶存ガスを脱気機構により除去した後、不活性ガスを溶解させてpH調整水を製造することができるので、pHを適切にコントロールするとともに安定した状態に維持することができる。これらにより、ウェハの帯電防止に加え、ウェハ表面の一部もしくは全面に露出したスカンジウムやランタンなどの希土類元素、又はこれらの酸化物の溶解を極力抑制可能なpH調整水を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】本発明の第一の実施形態によるpH調整水製造装置を示す概略図である。
図2】本発明の第二の実施形態によるpH調整水製造装置を示す概略図である。
図3】本発明の第二の実施形態によるpH調整水製造装置を示す概略図である。
図4】リンス水(pH調整水)によるスカンジウム酸化物の溶解速度の差異を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明のpH調整水製造装置について、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0037】
〔第一の実施形態〕
<pH調整水製造装置>
図1は、本発明の第一の実施形態によるpH調整水製造装置を示している。図1においてpH調整水製造装置1は、処理原水としての超純水Wを供給する超純水供給ライン2と、この超純水供給ライン2の途中に設けられた過酸化水素除去機構としての白金族金属担持樹脂カラム3と、この白金族金属担持樹脂カラム3の後段で接続したpH調整機構としてのpH調整剤タンク4に連通した給液機構(給液ポンプ)6を備えたpH調整剤注入ライン5とを有する。また、超純水供給ライン2には、真空ポンプ9を備えた吸気管8が接続した脱気機構としての膜式脱気装置7と、不活性ガス(IG)としてのNガス供給源に連通した不活性ガス供給管11が接続したガス溶解機構としてのガス溶解膜10が設けられている。また、ガス溶解膜10の後段には、水質監視機構としてpH調整水のpH及び溶存酸素濃度を監視するためのpHセンサ(図示せず)及び溶存酸素濃度センサ(図示せず)とが設けられていて、これらセンサは図示しないパーソナルコンピュータ(PC)などの制御手段にデータ送信可能となっている。そして、この制御手段はpH調整機構により添加されるpH調整剤の添加量及び膜式脱気装置7における真空ポンプ9での脱気度を制御可能となっている。
【0038】
<超純水>
本実施形態において、原水となる超純水Wとは、例えば、抵抗率:18.1MΩ・cm以上、微粒子:粒径50nm以上で1000個/L以下、生菌:1個/L以下、TOC(Total Organic Carbon):1μg/L以下、全シリコン:0.1μg/L以下、金属類:1ng/L以下、イオン類:10ng/L以下、過酸化水素;30μg/L以下、水温:25±2℃のものが好適である。
【0039】
<過酸化水素除去機構>
本実施形態においては、過酸化水素除去機構として白金族金属担持樹脂カラム3を使用する。
【0040】
(白金族金属)
本実施形態において、白金族金属担持樹脂カラム3に用いる白金族金属担持樹脂に担持する白金族金属としては、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム及び白金を挙げることができる。こられの白金族金属は、1種を単独で用いることができ、2種以上を組み合わせて用いることもでき、2種以上の合金として用いることもでき、あるいは、天然に産出される混合物の精製品を単体に分離することなく用いることもできる。これらの中で白金、パラジウム、白金/パラジウム合金の単独又はこれらの2種以上の混合物は、触媒活性が強いので好適に用いることができる。また、これらの金属のナノオーダーの微粒子も特に好適に用いることができる。
【0041】
(担体樹脂)
白金族金属担持樹脂カラム3において、白金族金属を担持させる担体樹脂としては、イオン交換樹脂を用いることができる。これらの中で、アニオン交換樹脂を特に好適に用いることができる。白金系金属は、負に帯電しているので、アニオン交換樹脂に安定に担持されて剥離しにくいものとなる。アニオン交換樹脂の交換基は、OH形であることが好ましい。OH形アニオン交換樹脂は、樹脂表面がアルカリ性となり、過酸化水素の分解を促進する。
【0042】
<pH調整剤>
本実施形態において、pH調整剤タンク4から注入するpH調整剤としては、超純水WのpHを7超にするためのものであり、一部又は全面にスカンジウム、ランタン、又はこれらの酸化物が露出した半導体ウェハの洗浄水用又はリンス水用とする場合には、pH調整水W2のpHを8~12とすることが好ましい。したがって、アンモニア水、水酸化ナトリウム溶液、TMAH、水酸化カリウム溶液、炭酸ナトリウム溶液、炭酸水素ナトリウム溶液、アンモニアガスなどを用いることができる。これらpH調整剤は、1種又は2種以上を適宜選択して用いることができる。
【0043】
<pH調整剤注入装置>
本実施形態において、pH調整剤注入装置としては、特に制限はなく、一般的な薬注装置を用いることができる。本実施形態のようにpH調整剤が液体の場合には、給液機構(給液ポンプ)6として、ダイヤフラムポンプなどのポンプを用いることができ、pH調整剤タンク4内は、不活性ガスを用いてパージしたり、脱気膜を用いてタンク4内のpH調整剤液中の溶存酸素を除去する機構を設けたりすることが望ましい。また、密閉容器にpH調整剤をNガスなどの不活性ガスとともに入れておき、不活性ガスの圧力によりこれらの剤を押し出す加圧式ポンプも好適に用いることができる。なお、pH調整剤が気体の場合には、気体透過性膜モジュールやエゼクタ等の直接的な気液接触装置を用いることができる。
【0044】
<膜式脱気装置>
本実施形態において、膜式脱気装置7としては、脱気膜の一方の側(液相側)に一次pH調整水W1を流し、他方の側(気相側)を真空ポンプ(VP)9で吸気することで、溶存酸素などの溶存ガスを脱気膜を透過させて気相室側に移行させて除去する構成のものを用いることができる。脱気膜は、酸素、窒素、蒸気等のガスは通過するが水は透過しない膜であればよく、例えば、シリコンゴム系、ポリテトラフルオロエチレン系、ポリオレフィン系、ポリウレタン系等がある。この脱気膜としては市販の各種のものを用いることができる。
【0045】
<ガス溶解機構>
本実施形態において、ガス溶解膜10においては、ガス溶解膜の一方の側(液相側)にpH調整水を流し、他方の側(気相側)にNガスを供給することで、pH調整水にNガスを溶解する。なお、不活性ガスとしては、Nガスに限らず、アルゴンあるいはヘリウムなども好適に用いることができる。
【0046】
<pH調整水の製造方法>
前述したような構成を有する本実施形態のpH調整水製造装置1を用いたpH調整水の製造方法について以下説明する。
【0047】
(過酸化水素分解工程)
一般的に超純水Wには数十ppb程度の過酸化水素が含まれているため、pH調整水の酸化還元電位を適正なものとするためには、超純水W中の過酸化水素を除去しておく必要がある。また、超純水W中の過酸化水素がスカンジウム、ランタン、又はこれらの酸化物の腐食溶解を促進することはないが、表面ラフネスを悪化させる可能性がある。そこで、まず、原水としての超純水Wを供給ライン2から白金族金属担持樹脂カラム3に供給する。この白金族金属担持樹脂カラム3では白金族金属の触媒作用により、超純水W中の過酸化水素を分解除去する、すなわち過酸化水素除去機構として機能する。
【0048】
(pH調整工程)
次にこの超純水Wに対し、pH調整剤タンク4からポンプ6により注入ライン5を介してpH調整剤を注入して一次pH調整水W1を調製する。この際、pH調整水W1のpHが7超となるようにpH調整剤の注入量を制御する。特に一部又は全面にスカンジウム、ランタン、又はこれらの酸化物が露出した半導体ウェハの洗浄水やリンス水とする場合には、pHが8~12となるようにpH調整剤の注入量を制御すればよい。pH調整水W1がpH8未満では、スカンジウム、ランタン、又はこれらの酸化物の溶解抑制効果が十分で一方、pH12を超えても使用する薬剤量が増加するばかりで、それに見合う溶解抑制効果が得られない。
【0049】
(脱気工程)
続いて、この一次pH調整水W1を膜式脱気装置7に供給する。膜式脱気装置7では、疎水性気体透過膜により構成された液相室及び気相室の液相室側に一次pH調整水W1を流すとともに、気相室を真空ポンプ(VP)9で減圧することにより、一次pH調整水W1中に含まれる溶存酸素等の溶存ガスを疎水性気体透過膜を通して気相室に移行させることで除去する。これにより一次pH調整水W1の溶存酸素濃度を非常に低いレベルにまで低減した脱気pH調整水W2を得ることができる。具体的には、脱気工程において、溶存酸素濃度を50ppb以下とすることが好ましい。溶存酸素濃度が50ppbを超えると、pH調整水W1のpHを安定的に維持することが困難となる。
【0050】
(不活性ガス溶解工程)
そして、最後にこの脱気した脱気pH調整水W1をガス溶解膜10に供給する。ガス溶解膜10では、疎水性気体透過膜により構成された液相室及び気相室の液相室側に一次pH調整水W1を流すとともに、気相室に不活性ガスを供給することにより、疎水性気体透過膜を通して不活性ガスを液相室側に移行させることで溶解し、脱気pH調整水W2を製造する。
【0051】
(水質監視工程)
このようにしてして製造した脱気pH調整水W2は、図示しないpHセンサ及び溶存酸素濃度センサにより、pH及び溶存酸素濃度を監視し、脱気pH調整水W2がpH7超、例えばpHが8~12となるように制御手段によりpH調整剤の注入量を制御する。また、脱気pH調整水W2の溶存酸素濃度が、50ppb以下となるように制御手段により真空ポンプ(VP)9での減圧度を制御すればよい。
【0052】
なお、スカンジウム、ランタン、又はこれらの酸化物が露出しているウェハの洗浄用の脱気pH調整水W2を上記範囲のpH及び溶存酸素濃度とすることが好適な理由は以下のとおりである。すなわち、ある電位-pH条件下の水溶液中で金属がどのような状態の化学種が最も安定かを示しているスカンジウム及びランタンのプールベ図によると、スカンジウム及びランタンはアルカリ条件下では、水溶液のpH及び酸化還元電位の違いに依存せず溶解しないことが分かる。一方、酸性条件下では、水溶液の酸化還元電位の違いに依存せず、溶解しやすいことがわかる。さらに、pH及び過酸化水素濃度を変化させたスカンジウム酸化膜付きウェハ及びランタン酸化物膜付きウェハの浸漬試験から、pHが大きい程スカンジウム酸化物及びランタン酸化物の溶解は起こりにくくなることがわかった。そして、処理液のpHに関係なく、処理液中の過酸化水素濃度(酸化還元電位)が変化してもスカンジウム酸化物及びランタン酸化物の溶解量には影響が無いことが確認できた。また、pHをアルカリ性になるよう適切にコントロールすることで、炭酸水と同等のウェハ帯電防止効果が得られることがわかった。以上により、ウェハの一部又は全面に露出した希土類金属、特にスカンジウムやランタン及び/もしくはこれらの酸化物の腐食溶解を最小化し、ウェハの帯電防止を実現するには、処理液のpHを適切にコントロールしたpH調整水を供給する必要がある。さらに、このpHを安定的に維持するためには、溶存酸素濃度が所定の値より低くなるようコントロールする。
【0053】
〔第二の実施形態〕
<pH調整水製造装置>
図2は、本発明の第二の実施形態によるpH調整水製造装置を示している。本実施形態のpH調整水製造装置において、前述した第一の実施形態と同一の構成については同一の符号を付しその詳細な説明を省略する。図2においてpH調整水製造装置1は、処理原水としての超純水Wを供給する超純水供給ライン2と、この超純水Wの供給ライン2の途中に設けられた真空ポンプ9を備えた吸気管8が接続した脱気機構としての膜式脱気装置7と、ガス状のpH調整剤(pH-G)の供給源に連通したガス状のpH調整剤供給管11Aが接続したpH調整機構としてのガス溶解膜10が設けられている。そして、ガス溶解膜10の後段には、水質監視機構としてpH調整水W2のpH及び溶存酸素濃度を監視するためのpHセンサ(図示せず)及び溶存酸素濃度センサ(図示せず)とが設けられていて、これらセンサは図示しないパーソナルコンピュータ(PC)などの制御手段にデータ送信可能となっている。そして、この制御手段はpH調整機構により添加されるpH調整剤の添加量及び膜式脱気装置7における脱気度を制御可能となっている。
【0054】
<超純水>
本実施形態において、超純水Wとしては前述した第一の実施形態と同様のものを用いることができる。
【0055】
<pH調整剤>
本実施形態において、ガス溶解膜10から溶解させるpH調整剤としてはガス状のものを用いる、一部又は全面にスカンジウム、ランタン、又はこれらの酸化物が露出した半導体ウェハの洗浄水用又はリンス水用とする場合には、pH調整水W2のpHを8~12とすることが好ましいことから、アンモニアガスなどを用いるのが好ましい。
【0056】
<膜式脱気装置>
本実施形態において、膜式脱気装置7としては、前述した第一の第一の実施形態と同じものを用いることができる。
【0057】
<pH調整機構>
本実施形態において、pH調整剤注入装置としては、ガス溶解膜10を用いる。このガス溶解膜10としては、前述位した第一の実施形態と同じものを用いることができる。
【0058】
<pH調整水の製造方法>
前述したような構成を有する本実施形態のpH調整水製造装置1を用いたpH調整水の製造方法について以下説明する。
【0059】
(脱気工程)
まず、原水としての超純水Wを供給ライン2から膜式脱気装置7に供給する。膜式脱気装置7では、超純水W中に含まれる溶存酸素等の溶存ガスを疎水性気体透過膜を通して気相室に移行させることで除去する。具体的には、溶存酸素濃度を50ppb以下とすることが好ましい。
【0060】
(pH調整工程)
次にこの脱気した超純水Wをガス溶解膜10に供給する。ガス溶解膜10では、疎水性気体透過膜により構成された液相室及び気相室の液相室側に超純水Wを流すとともに、気相室にガス状のpH調整剤(pH-G)を供給することにより、疎水性気体透過膜を通してガス状のpH調整剤を液相室側に移行させることで溶解させる。このようにしてpH調整水W2を製造することができる。なお、ガス状のpH調整剤には、不活性ガスを混合させてもよい。この際、一部又は全面にスカンジウム、ランタン、又はこれらの酸化物が露出した半導体ウェハの洗浄水やリンス水とする場合には、pHが8~12となるようにガス状のpH調整剤の溶解量を制御すればよい。本実施形態のように脱気した超純水に対してpH調整剤を添加してもよい。
【0061】
(水質監視工程)
このようにしてして製造したpH調整水W2は、図示しないpHセンサ及び溶存酸素濃度センサにより、pH及び溶存酸素濃度を監視し、例えばpH調整水W2のpHが8~12となるように制御手段により,ガス状のpH調整剤の溶解量を制御する。また、pH調整水W2の溶存酸素濃度が、50ppb以下となるように制御手段により真空ポンプ(VP)9での減圧度を制御すればよい。
【0062】
〔第三の実施形態〕
<pH調整水製造装置>
図3は、本発明の第三の実施形態によるpH調整水製造装置を示している。本実施形態のpH調整水製造装置において、前述した第一の実施形態と同一の構成については同一の符号を付しその詳細な説明を省略する。図3においてpH調整水製造装置1は、処理原水としての超純水Wを供給する超純水供給ライン2と、この超純水供給ライン2の途中に設けられた真空ポンプ9を備えた吸気管8が接続した脱気機構としての膜式脱気装置7と、この膜式脱気装置7の後段で供給ライン2にpH調整機構としてのpH調整剤タンク4に連通した給液機構(給液ポンプ)6を備えたpH調整剤注入ライン5が接続している。そして、pH調整剤注入ライン5の接続箇所よりも後段には、水質監視機構としてpH調整水W2のpH及び溶存酸素濃度を監視するためのpHセンサ(図示せず)及び溶存酸素濃度センサ(図示せず)とが設けられていて、これらセンサは図示しないパーソナルコンピュータ(PC)などの制御手段にデータ送信可能となっている。そして、この制御手段はpH調整機構により添加されるpH調整剤の添加量及び膜式脱気装置7における脱気度を制御可能となっている。
【0063】
<超純水>
本実施形態において、超純水Wとしては前述した第一の実施形態と同様のものを用いることができる。
【0064】
<膜式脱気装置>
本実施形態において、膜式脱気装置7としては、前述した第一の第一の実施形態と同じものを用いることができる。
【0065】
<pH調整剤>
本実施形態において、pH調整剤タンク4から注入するpH調整剤としては液体を用いる。例えば、一部又は全面にスカンジウム、ランタン又はこれらの酸化物が露出した半導体ウェハの洗浄水用又はリンス水用とする場合には、pH調整水W2のpHを8~12、特に8~11とすることが好ましいことから、アンモニア水、水酸化ナトリウム溶液、TMAH、水酸化カリウム溶液、炭酸ナトリウム溶液、炭酸水素ナトリウム溶液などを用いることができる。これらpH調整剤は、1種又は2種以上を適宜選択して用いることができる。
【0066】
<pH調整剤注入装置>
本実施形態において、前述した第一の実施形態において、密閉式のpH調整剤タンク4内に不活性ガスとしてNガスを供給し、このガス圧によりpH湯王製剤を押し出す構成のものを用いる。
【0067】
<pH調整水の製造方法>
前述したような構成を有する本実施形態のpH調整水製造装置1を用いたpH調整水の製造方法について以下説明する。
【0068】
(脱気工程)
まず、原水としての超純水Wを供給ライン2から膜式脱気装置7に供給する。膜式脱気装置7では、超純水W中に含まれる溶存酸素等の溶存ガスを疎水性気体透過膜を通して気相室に移行させることで除去する。具体的には、溶存酸素濃度を50ppb以下とすることが好ましい。
【0069】
(pH調整工程)
次にこの脱気した超純水Wに対し、pH調整剤タンク4からポンプ6により注入ライン5を介してpH調整剤を注入してpH調整水W2を製造する。この際、一部又は全面にスカンジウム、ランタン又はこれらの酸化物が露出した半導体ウェハの洗浄水やリンス水とする場合には、pHが8~12となるようにpH調整剤の注入量を制御すればよい。
【0070】
(水質監視工程)
このようにしてして製造したpH調整水W2は、図示しないpHセンサ及び溶存酸素濃度センサにより、pH及び溶存酸素濃度を監視し、例えばpH調整水W2のpHが8~12となるように制御手段により,pH調整剤の注入量を制御する。また、pH調整水W2の溶存酸素濃度が、50ppb以下となるように制御手段により真空ポンプ(VP)9での減圧度を制御すればよい。
【0071】
以上、本発明のpH調整水製造装置について添付図面を参照して説明してきたが、本発明は前記実施形態に限らず種々の変更実施が可能である。例えば、第二の実施形態及び第三の実施形態において、最前段に過酸化水素除去機構を配置してもよい。
【実施例0072】
以下の具体的実施例により本発明をさらに詳細に説明する。
【0073】
(スカンジウム酸化物溶解速度の比較)
[実施例1]
スカンジウム酸化物を製膜した300mmΦのウェハを20mm角にカットし試験片とした。この試験片を処理液として100ppmアンモニア溶液(pH10.6、溶存酸素濃度約8ppm(大気開放))に室温にて20分間浸漬し、浸漬後の処理液中の金属濃度(スカンジウム濃度)をICP-MSで分析した。この分析結果に基づきスカンジウムの酸化物の溶解速度を算出した。結果を図4に示す。
【0074】
[比較例1]
実施例1において、処理液として炭酸水(CO濃度30ppm、pH4.7、溶存酸素濃度約8ppm(大気開放):従来例)を用いた以外は同様にして試験片の処理を行い、浸漬後の処理液中の金属濃度(スカンジウム濃度)をICP-MSで分析した。この分析結果に基づきスカンジウムの酸化物の溶解速度を算出した。結果を図4にあわせて示す。
【0075】
[比較例2]
実施例1において、処理液として100ppm塩酸(pH2.6、溶存酸素濃度約8ppm(大気開放))を用いた以外は同様にして試験片の処理を行い、浸漬後の処理液中の金属濃度(スカンジウム濃度)をICP-MSで分析した。この分析結果に基づきスカンジウムの酸化物の溶解速度を算出した。結果を図4にあわせて示す。
【0076】
[参考例]
実施例1において、処理液として超純水(抵抗率:18.1MΩ・cm以上)を用いた以外は同様にして試験片の処理を行い、浸漬後の処理液中の金属濃度(スカンジウム濃度)をICP-MSで分析した。この分析結果に基づきスカンジウムの酸化物の溶解速度を算出した。結果を図4にあわせて示す。
【0077】
図4から明らかなとおり、スカンジウム酸化物の溶解速度に関し、従来例である比較例1では0.351Å/分でスカンジウム酸化物が溶解し、100ppm塩酸を処理液とした比較例2では0.873Å/分であった。一方、100ppmアンモニア水を処理液とした実施例1のスカンジウム酸化物溶解速度は各々0.0017Å/分であり、比較例1に対してスカンジウム酸化物の溶解速度を約1/200に抑制可能であることがわかる。さらに、実施例1は、超純水を処理液とした参考例と比較してもスカンジウム酸化物の溶解速度が低かった。さらに、100ppmアンモニア水は従来例である炭酸水と同等の帯電防止効果を示すことが知られている。これらの結果から、スカンジウム酸化物溶解防止には稀薄なアンモニア水の適用が効果的であるといえる。
【0078】
(スカンジウム酸化物溶解抑制メカニズムの検証試験)
[実施例2]
スカンジウム酸化物を製膜した300mmΦのウェハを20mm角にカットし試験片とした。この試験片を下記(1)~(5)の処理液(溶存酸素濃度約8ppm(大気開放))に室温にて20分間浸漬し、浸漬後の処理液中の金属濃度(スカンジウム濃度)をICP-MSで分析した。この分析結果に基づきスカンジウムの酸化物の溶解速度を算出した。
【0079】
・処理液
(1)塩酸(濃度:1~1000ppm、pH約1.6~4.7)
(2)超純水(pH約6.9)
(3)アンモニア水(濃度:1~100ppm、pH約8.9~10.6)
(4)水酸化ナトリウム(濃度:100~1000ppm、pH約11.5~12.5)
(5)過酸化水素水(濃度:0.0001~100000ppm(10%)、pH約pH5.9)
【0080】
(1)~(4)の処理液により、pHによるスカンジウムの酸化物の溶解速度のpH依存性を確認したところ、スカンジウム酸化物の溶解はpHが高くなるほど溶解速度が低下することがわかった。一方、酸化還元電位(H濃度)の影響を確認したところ、H濃度の影響は受けていないことがわかった。これらの結果より、スカンジウム酸化物は水溶液中で下記反応式(i)を経て溶解すると推測される。
Sc + 6H → 2Sc3+ + 3HO ・・・(i)
【0081】
これらの結果より、従来技術である炭酸水を用いた酸化条件下ではHイオンが水溶液から十分に供給されるためスカンジウム酸化物の溶解速度が上昇する一方、実施例1のように100ppmアンモニア水を含むアルカリ条件下では水溶液中からのHイオンの供給量が大幅に低下するためスカンジウム酸化物の溶解が発生せず溶解速度が低下したと考えられる。また、スカンジウム酸化物の溶解速度に対しH濃度依存性は確認されなかった要因として、上記(i)の反応は酸アルカリ反応のみであり、酸化還元反応は関与していないことが挙げられる。
【符号の説明】
【0082】
1 pH調整水製造装置
2 超純水供給ライン
3 白金族金属担持樹脂カラム(過酸化水素除去機構)
4 pH調整剤タンク(pH調整機構)
5 pH調整剤注入ライン(pH調整機構)
6 給液ポンプ(給液機構)(pH調整機構)
7 膜式脱気装置(脱気機構)
8 吸気管
9 真空ポンプ
10 ガス溶解膜(ガス溶解機構)
11 不活性ガス供給管
11A pH調整剤供給管
IG 不活性ガス
W 超純水
W1 一次pH調整水
W2 脱気pH調整水
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2024-07-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超純水供給ラインと、
この超純水供給ラインに配置された該超純水にpH調整剤を添加しpH7超として一次pH調整水を調製するpH調整機構と、
前記超純水に含まれる溶存ガスを除去して脱気pH調整水を製造する脱気機構と、
前記pH調整機構の後段に設けられた被処理水のpHを監視する水質監視機構と
を有し、前記水質監視機構で測定された水質の監視結果に基づいて、前記pH調整機構により添加されるpH調整剤の添加量を制御可能な制御機構を備え、
前記一次pH調整水のpHを8~12とし、前記脱気pH調整水の溶存酸素濃度を50ppb以下とし、
前記脱気pH調整水が、一部又は全面にスカンジウム、ランタン又はこれらの酸化物が露出した半導体ウェハの洗浄水用又はリンス水用である、pH調整水製造装置。
【請求項2】
前記脱気機構の後段に不活性ガスを溶解するガス溶解機構を備える、請求項1に記載のpH調整水製造装置。
【請求項3】
前記pH調整剤が、アンモニア水、水酸化ナトリウム溶液、TMAH、水酸化カリウム溶液、炭酸ナトリウム溶液、炭酸水素ナトリウム溶液、アンモニアガスから選ばれた1種又は2種以上である、請求項1に記載のpH調整水製造装置。
【請求項4】
前記pH調整機構における前記pH調整剤が気体であり、前記pH調整機構は該pH調整剤を気体透過性膜モジュールあるいはエゼクタによる直接気液接触装置を用いたガス溶解により添加可能緒となっている、請求項3に記載のpH調整水製造装置。
【請求項5】
前記pH調整機構における前記pH調整剤が液体であり、前記pH調整機構は該pH調整剤をポンプあるいは密閉タンクと不活性ガスを用いる加圧手段により薬注可能となっている、請求項3に記載のpH調整水製造装置。
【請求項6】
超純水にpH調整剤を添加して該超純水をpH7超として一次pH調整水を調整するpH調整工程と、
この一次pH調整水に含まれる溶存ガスを除去して脱気pH調整水を製造する脱気工程と、
得られたpH調整水のpHを監視する水質監視工程と、
この水質監視工程の監視結果に基づいて、前記pH調整工程におけるpH調整剤の添加量を制御する調整工程と
からな
前記一次pH調整水のpHを8~12とし、前記脱気pH調整水の溶存酸素濃度を50ppb以下とし、
前記脱気pH調整水が、一部又は全面にスカンジウム、ランタン又はこれらの酸化物が露出した半導体ウェハの洗浄水用又はリンス水用である、pH調整水の製造方法。
【請求項7】
前記脱気工程の後、不活性ガスを溶解させる不活性ガス溶解工程を有する、請求項に記載のpH調整水の製造方法。
【請求項8】
超純水に含まれる溶存ガスを除去する脱気工程と、
この脱気した超純水にpH調整剤を添加してpH7超の脱気pH調整水を製造するpH調整工程と、
得られた脱気pH調整水のpHを監視する水質監視工程と、
この水質監視工程の監視結果に基づいて、前記pH調整工程におけるpH調整剤の添加量を制御する調整工程と
からな
前記脱気pH調整水のpHを8~12とし、溶存酸素濃度を50ppb以下とし、
前記脱気pH調整水が、一部又は全面にスカンジウム、ランタン又はこれらの酸化物が露出した半導体ウェハの洗浄水用又はリンス水用である、pH調整水の製造方法。
【請求項9】
前記脱気工程の後、不活性ガスを溶解させる不活性ガス溶解工程を有する、請求項に記載のpH調整水の製造方法。