(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168211
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】活性エネルギー線硬化性組成物、その硬化物及び光学粘着シート
(51)【国際特許分類】
C08F 292/00 20060101AFI20241128BHJP
C08F 2/44 20060101ALI20241128BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20241128BHJP
C09J 4/02 20060101ALI20241128BHJP
C09J 11/04 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
C08F292/00
C08F2/44 Z
C09J7/38
C09J4/02
C09J11/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023084691
(22)【出願日】2023-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100215935
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 茂輝
(74)【代理人】
【識別番号】100189337
【弁理士】
【氏名又は名称】宮本 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100188673
【弁理士】
【氏名又は名称】成田 友紀
(72)【発明者】
【氏名】木下 祐紀
(72)【発明者】
【氏名】海野 晃生
(72)【発明者】
【氏名】高田 泰廣
(72)【発明者】
【氏名】出口 義信
【テーマコード(参考)】
4J004
4J011
4J026
4J040
【Fターム(参考)】
4J004AA10
4J004AB01
4J004DB01
4J004DB02
4J004EA06
4J004FA08
4J011PA07
4J011PA46
4J011PA47
4J011PA88
4J011PB40
4J011QA03
4J011QA07
4J011QA34
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4J011SA84
4J011UA01
4J026AC00
4J026BA27
4J026BA30
4J026BB04
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4J040FA131
4J040HD23
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4J040JA09
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4J040KA36
4J040KA38
4J040KA42
4J040LA06
4J040LA08
4J040LA10
4J040NA17
(57)【要約】
【課題】本発明によれば、硬化後もタック性を有する高屈折率な活性エネルギー線硬化性組成物、その硬化物及び光学粘着シートを提供する。
【解決手段】本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は、無機酸化物粒子(A)と、(メタ)アクリレート(B)と、光重合開始剤(C)と、を含有する。前記活性エネルギー線硬化性組成物の屈折率が1.6以上であり、前記活性エネルギー線硬化性組成物の硬化物のガラス転移温度Tgが-2℃以下である活性エネルギー線硬化性組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機酸化物粒子(A)と、(メタ)アクリレート(B)と、を含有する活性エネルギー線硬化性組成物であって、
前記活性エネルギー線硬化性組成物の屈折率が1.6以上であり、
前記活性エネルギー線硬化性組成物の硬化物のガラス転移温度Tgが-2℃以下である活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項2】
光重合開始剤(C)をさらに含有する、請求項1に記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項3】
前記無機酸化物粒子(A)がジルコニア粒子である請求項1又は2に記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項4】
前記(メタ)アクリレート(B)が、ポリマーTgが-2℃以下の(メタ)アクリレート(B-1)を含む請求項1又は2に記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項5】
前記(メタ)アクリレート(B)が、少なくとも2種類の(メタ)アクリレートを含み、
前記2種類の(メタ)アクリレートは、前記(メタ)アクリレート(B-1)と異なる種類の(メタ)アクリレート(B-2)を更に含む、請求項4に記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項6】
分散剤(D)をさらに含有する、請求項1又は2に記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項7】
前記分散剤(D)は、リン酸エステル化合物を含む、請求項6に記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項8】
前記活性エネルギー線硬化性組成物の硬化物のガラス転移温度Tgが-5℃以下である請求項1又は2に記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項9】
活性エネルギー線硬化性組成物が、光学粘着シート用である、請求項1又は2に記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項10】
請求項1又は2に記載の活性エネルギー線硬化性組成物の硬化物であって、ガラス転移温度Tgが-2℃以下である硬化物。
【請求項11】
請求項10に記載の硬化物を含む光学粘着シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性エネルギー線硬化性組成物、その硬化物及び光学粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機EL表示装置等のディスプレイにおいては、カバーガラスやメタルメッシュフィルム、偏光板等の構成部材を貼り合せるために、光学粘着シートが用いられている。通常、このような光学粘着シートは、剥離シートに挟み込んだ光硬化性樹脂組成物を硬化させることで作製される。光学粘着シートの光透過性が高く、かつ高い屈折率を有していると、部材との屈折率差が小さくなることから、光取り出し効率が高まる。また、プロセス上の溶剤使用量削減、プリベイクにかかるエネルギー削減の観点から、光学粘着シートに用いる材料には、溶剤を含まないことが好ましい(例えば、特許文献1)。
一方、溶剤を配合しなくても低粘度で、かつ屈折率が向上した光硬化性樹脂組成物、及び、当該光硬化性樹脂組成物を光硬化して得られる高屈折性樹脂硬化体が開示されている(例えば、特許文献2)。屈折率を向上するため、高屈折率の化合物を使用したり、無機の高屈折率粒子を添加したりする方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第7116545号公報
【特許文献2】特開2017-128688号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、屈折率の高い化合物や無機粒子は一般に樹脂硬化物のガラス転移温度(Tg)を上昇させるため、光学粘着シートのタック性および粘着性を悪化させる。したがって、硬化後もタック性を有し、高屈折率である材料が求められていた。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、無機酸化物粒子と(メタ)アクリレートと光重合開始剤とを含む組成物の、硬化後のTgを-2℃以下とすることより、硬化後もタック性を有する高屈折率な活性エネルギー線硬化性組成物、その硬化物及び光学粘着シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の内容は、以下の実施態様を含む。
[1] 無機酸化物粒子(A)と、(メタ)アクリレート(B)と、を含有する活性エネルギー線硬化性組成物であって、
前記活性エネルギー線硬化性組成物の屈折率が1.6以上であり、
前記活性エネルギー線硬化性組成物の硬化物のガラス転移温度Tgが-2℃以下である活性エネルギー線硬化性組成物。
[2] 光重合開始剤(C)をさらに含有する、[1]に記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
[3] 前記無機酸化物粒子(A)がジルコニア粒子である[1]又は[2]に記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
[4] 前記(メタ)アクリレート(B)が、ポリマーTgが-2℃以下の(メタ)アクリレート(B-1)を含む[1]~[3]のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
[5] 前記(メタ)アクリレート(B)が、少なくとも2種類の(メタ)アクリレートを含み、
前記2種類の(メタ)アクリレートは、前記(メタ)アクリレート(B-1)と異なる種類の(メタ)アクリレート(B-2)を更に含む、[4]に記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
[6] 分散剤(D)をさらに含有する、[1]~[5]のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
[7] 前記分散剤(D)は、リン酸エステル化合物を含む、[6]に記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
[8] 前記活性エネルギー線硬化性組成物の硬化物のガラス転移温度Tgが-5℃以下である[1]~[7]のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
[9] 活性エネルギー線硬化性組成物が、光学粘着シート用である、[1]~[8]のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
[10] [1]~[8]のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化性組成物の硬化物であって、ガラス転移温度Tgが-2℃以下である硬化物。
[11] [10]に記載の硬化物を含む光学粘着シート。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、硬化後もタック性を有し、柔軟性が高くかつ復元性の大きい、高屈折率な活性エネルギー線硬化性組成物、その硬化物及び光学粘着シートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る光学粘着シート(硬化物)の断面図である。
【
図2】
図2は、微小硬度の評価方法を説明するための模試図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態のみに限定されるものではない。
【0010】
「~」は「~」という記載の前の値以上、「~」という記載の後の値以下を意味する。「(メタ)アクリル」とはアクリルとメタクリルの総称であり、「(メタ)アクリレート化合物(B)」とは、アクリレート化合物とメタクリレート化合物の総称である。
【0011】
(活性エネルギー線硬化性組成物)
本実施形態に係る活性エネルギー線硬化性組成物は、無機酸化物粒子(A)と、(メタ)アクリレート化合物(B)と、を含有する。前記活性エネルギー線硬化性組成物の屈折率が1.6以上である。前記活性エネルギー線硬化性組成物の硬化物のガラス転移温度Tgが-2℃以下である。本実施形態に係る活性エネルギー線硬化性組成物は、さらに光重合開始剤(C)を含有することが好ましい。
【0012】
[無機酸化物粒子(A)]
本実施形態にかかる無機酸化物粒子(A)が、ジルコニア、シリカ、硫酸バリウム、酸化亜鉛、チタン酸バリウム、酸化セリウム、及びアルミナ及び酸化チタンからなる群より選ばれる1種以上であることが好ましい。本実施形態にかかる無機酸化物粒子(A)が、ジルコニア粒子であることが好ましい。
本実施形態にかかる無機酸化物粒子(A)が結晶構造も特に限定されないが、例えば、ジルコニア粒子である場合、分散安定性に優れ、光透過率及び屈折率の高い硬化物が得られることから単斜晶系が好ましい。
【0013】
本実施形態にかかる無機酸化物粒子(A)は、通常公知のものが使用でき、粒子の形状は特に限定されるものではないが、例えば、球状、中空状、多孔質状、棒状、板状、繊維状、又は不定形のいずれでも良い。中でも、分散安定性に優れ、光透過率及び屈折率の高い硬化物が得られることから、球状であることが好ましい。
【0014】
<ジルコニアナノ粒子>
本実施形態にかかる無機酸化物粒子(A)はジルコニアナノ粒子であることがより好ましい。前記ジルコニアナノ粒子は、通常公知のものを用いることができ、粒子の形状は、特に限定させるものではないが、例えば、球状、中空状、多孔質状、棒状、繊維状等が挙げられ、これらの中でも、球状が好ましい。
また、本実施形態に係るジルコニアナノ粒子の平均一次粒子径は、1~50nmのものが好ましく、1~30nmのものがより好ましい。さらに、結晶構造も特に限定されるものではないが、単斜晶系が好ましい。
なお、本発明における平均一次粒子径は、TEM(透過型電子顕微鏡)を使用して、電子顕微鏡写真から一次粒子の大きさを直接計測する方法で測定することができる。測定方法としては、例えば、個々の無機粒子の一次粒子の短軸径と長軸径を計測し、その平均を一次粒子の平均一次粒子径とする方法が挙げられる。
本実施形態に係るジルコニアナノ粒子の具体例としては、第一稀元素化学工業株式会社製UEP-100(平均一次粒子径:11nm)、日本電工株式会社製PCS(平均一次粒子径:20nm)が挙げられる。
【0015】
[(メタ)アクリレート化合物(B)]
本実施形態に係る(メタ)アクリレート化合物(B)は、それを用いて調製した活性エネルギー線硬化性組成物の屈折率が1.6以上であり、かつ、前記活性エネルギー線硬化性組成物の硬化物のガラス転移温度Tgが-2℃以下であることができれば、特に限定されない。前記屈折率が1.62以上であってもよく、屈折率が1.64以上であってもよい。また、前記屈折率が1.69以下であってもよい。前記ガラス転移温度Tgが-4℃以下であってもよく、-9℃以下であってもよい。
本実施形態に係る(メタ)アクリレート化合物(B)としては、例えば、単官能(メタ)アクリレート、多官能(メタ)アクリレートが挙げられる。前記(メタ)アクリレート化合物(B)において、単官能(メタ)アクリレートを70質量%以上含有することが好ましく、90質量%以上含むことがより好ましく、100質量%含んでもよい。例えば、従来公知の光学シート形成用の(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基を有する単官能(メタ)アクリレート若しくは多官能(メタ)アクリレートが挙げられる。必要に応じてオリゴマー又はプレポリマー等を用いることができる。
単官能(メタ)アクリレートとは、活性エネルギー線硬化性基を1個有する単官能(メタ)アクリレートである。多官能(メタ)アクリレートとは、活性エネルギー線硬化性基を2個以上有する多官能(メタ)アクリレートである。
なお、本実施形態に係る(メタ)アクリレート化合物(B)は、後で述べる(メタ)アクリロイル基を有する分散剤(D)、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基を有するシランカップリング剤(E)を含まないとする。
【0016】
前記(メタ)アクリレート(B)が、ポリマーTgが-2℃以下の(メタ)アクリレート(B-1)を含むことが好ましい。ポリマーTgが-2℃以下の(メタ)アクリレート(B-1)を用いることで、硬化物のガラス転移温度Tgが-2℃以下である活性エネルギー線硬化性組成物を調製することが容易になる。前記ポリマーTgが-4℃以下であってもよく、-5℃以下であってもよく、-10℃以下であってもよい。また、-150℃以上であってもよく、-100℃以上であってもよい。
【0017】
なお、本発明において、単量体化合物の「ポリマーTg」とは、該単量体化合物の重合体のTg(ガラス転移温度)であり、樹脂を加熱した際、ガラス状態からゴム状態となる境界の温度を示す。Tgは、示差走査熱量計(DSC)、動的粘弾性測定(DMA)、熱機械分析(TMA)等の方法によって測定することができる。
【0018】
組成物の硬化物のTg、すなわち複数モノマーの共重合体のTgは、ホモポリマーのTgの低いモノマーを多く含むほど低くなる。例えば、理論的には、以下のFoxの式を用いて、モノマー1、モノマー2、・・・・モノマーnを含むモノマーMの共重合体のTgを求めることができる。
【0019】
【数1】
(Tg:共重合体のガラス転移温度(単位はケルビンK)、C1:モノマー1の重量分率、Tg1:モノマー1のホモポリマーのガラス転移温度、)
【0020】
ただし、重合条件、反応率、分子量、架橋点、フィラーの影響によってもTgは変化することから、各モノマーのホモポリマーTgから、本発明のようなナノ無機粒子含有組成物のTgを予測することは困難である。例えば、後述の実施例3において、2.9質量部のモノマー1(Tg1=-32℃)及び24.3質量部のモノマー2(Tg2=8℃)を用いた。上記Foxの式で算出したモノマー1とモノマー2の共重合体のTgの理論値は、3℃である。しかしながら、表1に示すように、53.6質量部の無機粒子を含む場合実施例1の硬化物のTgの実測値が-4℃であった。
【0021】
本実施形態にかかる(メタ)アクリレート(B)における前記(メタ)アクリレート(B-1)の含有量が、2質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましく、10質量%以上であることがさらに好ましい。また、前記(メタ)アクリレート(B-1)の含有量の上限値は特に限定されるものではなく値が高いほど好ましい。しいて言えば、屈折率とのバランスの観点から、90質量%以下であることがより好ましく、80質量%以下であることがさらに好ましい。
本実施形態の活性エネルギー線硬化性組成物における前記(メタ)アクリレート(B-1)の含有量が、0.5質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましく、2質量%以上であることがさらに好ましい。また、前記(メタ)アクリレート(B-1)の含有量が、50質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましく、30質量%以下であることがさらに好ましい。
【0022】
前記(メタ)アクリレート(B)が、少なくとも2種類の(メタ)アクリレートを含み、かつ、前記2種類の(メタ)アクリレートは、前記(メタ)アクリレート(B-1)と異なる種類の(メタ)アクリレート(B-2)を更に含んでもよい。前記(メタ)アクリレート(B-2)は、ポリマーTgが0℃以上の(メタ)アクリレートであることが好ましい。前記ポリマーTgが5℃以上であってもよく、10℃以上であってもよい。また、前記ポリマーTgが50℃以下であってもよい。
【0023】
本実施形態にかかる(メタ)アクリレート(B)における前記(メタ)アクリレート(B-2)の含有量が、10質量%以上であることが好ましく、15質量%以上であることがより好ましく、30質量%以上であることがさらに好ましい。また、前記(メタ)アクリレート(B-2)の含有量が、95質量%以下であることが好ましく、90質量%以下であることがさらに好ましい。
【0024】
本実施形態の活性エネルギー線硬化性組成物における前記(メタ)アクリレート(B)の含有量が、10質量%以上であることが好ましく、15質量%以上であることがより好ましく、20質量%以上であることがさらに好ましい。また、前記(メタ)アクリレート(B-1)の含有量が、60質量%以下であることが好ましく、50質量%以下であることがより好ましく、40質量%以下であることがさらに好ましい。
【0025】
<単官能(メタ)アクリレート>
前記単官能(メタ)アクリレートは、活性エネルギー線硬化性基を1個有する単官能(メタ)アクリレートであり、ハロゲン原子、硫黄原子、酸素原子若しくは窒素原子等のヘテロ原子を含む鎖状の脂肪族又は環状の脂環式若しくは芳香族の(メタ)アクリレートであっても良い。
【0026】
前記単官能(メタ)アクリレートとしては、芳香族モノ(メタ)アクリレート化合物、脂肪族モノ(メタ)アクリレート化合物、脂環型モノ(メタ)アクリレート化合物、複素環型モノ(メタ)アクリレート化合物、水酸基含有モノ(メタ)アクリレート化合物等が挙げられる。
また、前記単官能(メタ)アクリレートとしては、前記各種のモノ(メタ)アクリレート化合物の分子構造中にポリオキシエチレン鎖、ポリオキシプロピレン鎖、ポリオキシテトラメチレン鎖等のポリオキシアルキレン鎖を導入したポリオキシアルキレン変性モノ(メタ)アクリレート化合物;前記各種のモノ(メタ)アクリレート化合物の分子構造中に(ポリ)ラクトン由来の構造を導入したラクトン変性モノ(メタ)アクリレート化合物等が挙げられる。
【0027】
前記芳香族モノ(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、フェノキシ(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、フェノキシベンジル(メタ)アクリレート、ビフェニルメチル(メタ)アクリレート、ベンジルベンジル(メタ)アクリレート、フェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェニルフェノール(EO)n(メタ)アクリレート、フェノール(EO)n(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0028】
前記脂肪族モノ(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、n-ペンチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
前記脂環型モノ(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチルモノ(メタ)アクリレート、シクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニロキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニロキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
前記複素環型モノ(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート等が挙げられる。
前記水酸基含有モノ(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
前記ラクトン変性モノ(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0029】
前記単官能(メタ)アクリレートは1種単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。
前記(メタ)アクリレート化合物(B)における前記単官能(メタ)アクリレートの含有量は、70質量%であり、75質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、85質量%以上であることがさらに好ましい。また、95質量%以下であることが好ましく、90質量%以下であることがより好ましい。前記単官能(メタ)アクリレートの含有量が上記範囲である場合、高屈折率・低粘度であるためである。
【0030】
〔(メタ)アクリレート(B-1)〕
前記ポリマーTgが-2℃以下の(メタ)アクリレート(B-1)が単官能(メタ)アクリレートであることが好ましい。前記(メタ)アクリレート(B-1)が単官能(メタ)アクリレートである場合、(メタ)アクリレート(B-1)として、例えば、上記記載の単官能(メタ)アクリレートの中に、ポリマーTgが-2℃以下のものが挙げられる。例えば、n-ブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートが挙げられる。(メタ)アクリレート(B-1)の具体例としては、EO変性フェノキシエチルアクリレート(n=4)(ポリマーTg=-32℃)、アクリル酸2エチルヘキシル(ポリマーTg=-70℃)が挙げられる。
【0031】
〔(メタ)アクリレート(B-2)〕
前記(メタ)アクリレート(B-2)は、ポリマーTgが0℃以上の単官能(メタ)アクリレートであることが好ましい。芳香族モノ(メタ)アクリレート化合物を含有することが好ましく、1分子内に2個の芳香環を含む化合物を含有することがより好ましい。この場合、(メタ)アクリレート(B-2)としては、例えば、上記記載の単官能(メタ)アクリレートの中に、ポリマーTgが0℃以上のものが挙げられる。例えば、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、フェノキシ(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレートが挙げられる。(メタ)アクリレート(B-2)の具体例としては、フェノキシベンジルアクリレート(ポリマーTg=8℃)が挙げられる。
【0032】
[多官能(メタ)アクリレート]
本実施形態にかかる(メタ)アクリレート化合物(B)は、上記本実施形態にかかる前記単官能(メタ)アクリレートの他に、多官能(メタ)アクリレートを含まなくてもよく、含んでもよい。
【0033】
前記多官能(メタ)アクリレートは、活性エネルギー線硬化性基を3個以上有する多官能(メタ)アクリレートであることが好ましい。ハロゲン原子、硫黄原子、酸素原子若しくは窒素原子等のヘテロ原子を含む鎖状の脂肪族又は環状の脂環式若しくは芳香族の(メタ)アクリルアクリレートであっても良い。
【0034】
前記多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールヒドロキシピバリン酸エステルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、テトラブロモビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ヒドロピバルアルデヒド変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールフルオレンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールフルオレン(EO)nジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA(EO)nジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン(EO)nトリ(メタ)アクリレート、1,4-シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、アルキル変性したジペンタエリスリトールのトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート及びポリエステル(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート(B2)が挙げられる。
【0035】
これらの多官能(メタ)アクリレートは、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。また、これらの中でも、乾燥性、インキ流動性、及び高速印刷適正に優れた(メタ)アクリル樹脂が得られることから、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エートキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールとアクリル酸の反応生成物、ジペンタエリスリトールとアクリル酸の反応生成物などが好ましい。
【0036】
[光重合開始剤(C)]
本実施形態にかかる光重合開始剤(C)としては、光励起によって、本実施形態にかかる(メタ)アクリレート化合物(B)等の(メタ)アクリロイル基の重合を開始できる機能を有するものであれば特に限定はなく、例えば、分子内結合開裂型の光重合開始剤(C)、分子内水素引き抜き型の光重合開始剤(C)などが挙げられる。例えば、モノカルボニル化合物、ジカルボニル化合物、アセトフェノン化合物、ベンゾインエーテル化合物、アシルホスフィンオキシド化合物、アミノカルボニル化合物等が使用できる。
【0037】
前記分子内結合開裂型の光重合開始剤(C)は、例えば、ジエトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、ベンジルジメチルケタール、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、1-ヒドロキシシクロヘキシル-フェニルケトン、2-メチル-2-モルホリノ(4-チオメチルフェニル)プロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタノンの如きアセトフェノン系;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテルの如きベンゾイン類;2,4,6-トリメチルベンゾインジフェニルホスフィンオキシドの如きアシルホスフィンオキシド系;ベンジル、メチルフェニルグリオキシエステル、などが挙げられる。
【0038】
前記分子内水素引き抜き型の光重合開始剤(C)は、例えば、ベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸メチル-4-フェニルベンゾフェノン、4,4′-ジクロロベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4′-メチル-ジフェニルサルファイド、アクリル化ベンゾフェノン、3,3′,4,4′-テトラ(t-ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3′-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノンの如きベンゾフェノン系;2-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントンの如きチオキサントン系;ミヒラ-ケトン、4,4′-ジエチルアミノベンゾフェノンの如きアミノベンゾフェノン系;10-ブチル-2-クロロアクリドン、2-エチルアンスラキノン、9,10-フェナンスレンキノン、カンファーキノン、などが挙げられる。
前記光重合開始剤(C)が、2、4、6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシドであることが好ましい。
【0039】
前記光重合開始剤(C)の市販品としては、IGM-Resins社製のOmnirad―184、651、500、907、127、369、784、2959、TPO-H;DKSHジャパン(株)製のEsacure ONE等が挙げられる。
少量添加でも硬化性に優れた硬化塗膜が得られる観点で、Omnirad―907、Omnirad-TPO-Hが好ましい。着色が少ないという観点では、Omnirad―184が特に好ましい。
【0040】
前記光重合開始剤(C)は、上記化合物に限定されず、紫外線により重合を開始させる能力があれば、どのようなものでも構わない。これらの光重合開始剤(C)は、一種類で用いられるほか、二種類以上を混合して用いてもよい。
前記光重合開始剤(C)の使用量に関しては、特に制限はされないが、本実施形態の活性エネルギー線硬化性組成物の全不揮発分100質量部に対して、0.1~10質量部の範囲内で使用することが好ましく、1~5質量部の範囲内で使用することがよい好ましい。増感剤として、公知の有機アミン等を加えることもできる。
さらに、上記ラジカル重合用開始剤のほかに、カチオン重合用の開始剤を併用することもできる。
【0041】
本実施形態にかかる光重合開始剤(C)の具体例としては、例えば、Runtecure 1108(Runtec Chemical Co., Ltd.製、構造式あるいは化合物名:2、4、6―トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド)
【0042】
前記光重合開始剤(C)の含有量は、組成物の不揮発分質量に対して、好ましくは0.1~10質量%であり、より好ましくは0.5~5質量%である。
組成物の不揮発分質量とは、組成物に含まれている溶剤を除いた後の全組成物の成分の総質量である。
【0043】
[分散剤(D)]
本実施形態の活性エネルギー線硬化性組成物は、さらに分散剤(D)を含むことが好ましく、前記分散剤(D)がリン酸エステルを含むことがより好ましい。
【0044】
<リン酸エステル>
本実施形態に係るリン酸エステルとしては、特に制限されないが、例えば、ポリエステル鎖を有するもの、(メタ)アクリロイル基を有するものなどが挙げられる。
ポリエステル鎖を有するものとしては、例えば、DISPERBYK-110、DISPERBYK-111(ビックケミー・ジャパン株式会社製)が挙げられる。
【0045】
また、(メタ)アクリロイル基を有するものとしては、例えば、得られる無機粒子分散体が優れた分散安定性を有すること、また、これを含有する硬化性組成物が低粘度であり、高い屈折率性能及び優れた耐ブリードアウト性を有する硬化塗膜を形成できることから、下記構造式(1)で表されるものが挙げられる。
【0046】
【化1】
(式中R
1は、水素原子またはメチル基であり、R
2は、炭素原子数2~4のアルキレン鎖である。また、xは、4~10の整数であり、yは、1以上の整数であり、nは、1~3の整数である。)
【0047】
上記構造式(1)で表されるリン酸エステル化合物は、得られる活性エネルギー線硬化性組成物が低粘度であり、高い屈折率性能及び優れた耐ブリードアウト性を有する硬化塗膜を形成できることから、式中のxは、4または5が好ましく、yは、2~7の整数が好ましい。また、上記構造式(1)で表される分散剤(D)は、式中のnが、1、2及び/または3の混合物であってもよい。
【0048】
前記活性エネルギー線硬化性組成物における、前記リン酸エステル化合物の含有量は、高い屈折率性能及び優れた耐ブリードアウト性を有する硬化塗膜を形成できることから、ジルコニアの100質量部に対して5~40質量部の範囲であることがより好ましく、10~25質量部の範囲であることがさらに好ましい。
【0049】
[シランカップリング剤(E)]
本実施形態の活性エネルギー線硬化性組成物は、さらにシランカップリング剤(E)を含んでも良い。本実施形態に係るシランカップリング剤(E)としては、例えば、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメチルシラン、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン等の(メタ)アクリロイルオキシ系シランカップリング剤;
アリルトリクロロシラン、アリルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、ジエトキシメチルビニルシラン、トリクロロビニルシラン、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2-メトキシエトキシ)シラン等のビニル系シランカップリング剤;
ジエトキシ(グリシジルオキシプロピル)メチルシラン、2-(3、4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のエポキシ系シランカップリング剤;
p-スチリルトリメトキシシラン等のスチレン系シランカップリング剤;
N-2(アミノエチル)3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2(アミノエチル)3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2(アミノエチル)3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1、3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ系シランカップリング剤;
3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン等のウレイド系シランカップリング剤;
3-クロロプロピルトリメトキシシラン等のクロロプロピル系シランカップリング剤;3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト系シランカップリング剤;
ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルファイド等のスルフィド系シランカップリング剤;
3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等のイソシアネート系シランカップリング剤;
アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート等のアルミニウム系シランカップリング剤などが挙げられる。
本実施形態にかかるシランカップリング剤(E)は、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランなどの(メタ)アクリロイルオキシ系シランカップリング剤が好ましい。3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランの具体例としては、メタクリル基を持つシランカップリング剤KBM-503(信越シリコーン製)が挙げられる。
これらのシランカップリング剤(E)は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。これらの中でも、前記アクリレート化合物(B)との相溶性が良いことから、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランが好ましい。
本実施形態に係るシランカップリング剤(E)の使用量は、得られる活性エネルギー線硬化性組成物が優れた分散安定性を有すること、また、低粘度であり、高い屈折率性能及び優れた耐ブリードアウト性を有する硬化塗膜を形成できることから、ジルコニアの100質量部に対して10~30質量部の範囲が好ましい。
【0050】
[添加剤]
本実施形態の活性エネルギー線硬化性組成物には、上記した成分以外にも、各種添加剤を本発明の目的を逸脱しない範囲内で、製造工程の何れの段階においても用いることができる。
かかる添加剤としては、例えば、整泡剤、酸化防止剤、脱泡剤、充填剤、顔料、染料、着色剤、増粘剤、界面活性剤、難燃剤、可塑剤、滑剤、帯電防止剤、耐熱安定剤、粘着付与剤、硬化触媒、安定剤、ワックス等の公知のものが使用できる。また、必要に応じて、ブレンド用樹脂として、従来公知の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等を本発明の目的を阻害しない範囲内で適宜、選択して使用することができる。尚、前記添加剤はほんの一例であって、本発明の目的を阻害しない限り、特にその種類及び使用量を限定するものではない。
前記可塑剤としては、具体的には、例えば、ジオクチルフタレート(DOP)、ジブチルフタレート(DBP);アジピン酸ジオクチル、コハク酸イソデシル;ジエチレングリコールジベンゾアート、ペンタエリスリトールエステル;オレイン酸ブチル、アセチルリシノール酸メチル;リン酸トリクレジル、リン酸トリオクチル;アジピン酸プロピレングリコールポリエステル、アジピン酸ブチレングリコールポリエステル等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0051】
[溶剤]
本実施形態の活性エネルギー線硬化性組成物は、溶剤を含んでいても構わない。
溶剤としては、特に制限されるものでなく、様々な公知の有機溶剤を用いることができる。具体的には例えば、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、アセトン、アセチルアセトン、トルエン、キシレン、n-ブタノール、イソブタノール、tert-ブタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、エタノール、メタノール、3-メトキシ-1-ブタノール、3-メトキシ-2-ブタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノn-ブチルエーテル、2-エトキシエタノール、1-メトキシ-2-プロパノール、ジアセトンアルコール、乳酸エチル、乳酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、2-エトキシエチルアセテート、ブチルアセテート、イソアミルアセテート、アジピン酸ジメチル、コハク酸ジメチル、グルタル酸ジメチル、テトラヒドロフラン、メチルピロリドン等が挙げられる。これらの中、メチルエチルケトンが好ましい。これらの有機溶剤は、2種類以上を併用しても差し支えない。
本実施形態の活性エネルギー線硬化性組成物は、例えば、各樹脂を合成する際に使用する溶剤を含むことができる。
また、本実施形態の活性エネルギー線硬化性組成物は、無機酸化物粒子(A)、溶剤、及び任意成分を混合して無機酸化物粒子(A)分散体を調製したのち、(メタ)アクリレート化合物(B)及び必要に応じて光重合開始剤(C)と混合しても良い。
上述の溶剤を含有する例は一例であって、本実施形態の活性エネルギー線硬化性組成物を調製する過程で溶剤を含有したとしても、最終的には溶剤を揮発させ、溶剤の含有量が極力少ないことが好ましい。したがって、本実施形態の活性エネルギー線硬化性組成物が溶剤を含む場合、前記活性エネルギー線硬化性組成物における溶剤の含有量が、0~5質量%であることが好ましく、0~0.1質量%であることがより好ましい。
【0052】
[活性エネルギー線硬化性組成物の粘度]
本実施形態の活性エネルギー線硬化性組成物の25℃における粘度は、50000mPa・s以下であることが好ましく、15000mPa・s以下であることがより好ましく、6000mPa・s以下であることがさらに好ましい。また、1000mPa・s以上であってもよい。その範囲であれば、成膜適性がある。
【0053】
[活性エネルギー線硬化性組成物の調製方法]
本実施形態の活性エネルギー線硬化性組成物を調製する方法は、特に制限されない。例えば、無機酸化物粒子(A)の分散体を得た後、前記無機酸化物粒子(A)の分散体と、前記(メタ)アクリレート(B)と、前記光開始剤(C)と、及び必要に応じて、他の様々な添加剤と、を混合して製造する方法等が挙げられる。
また、市販されている無機酸化物粒子(A)を用いる場合、本実施形態の活性エネルギー線硬化性組成物を製造する方法は、該無機酸化物粒子(A)の分散体と、前記(メタ)アクリレート(B)と、前記光開始剤(C)と、及び必要に応じて、他の様々な添加剤と、を混合して製造する方法等が挙げられる。
本実施形態の活性エネルギー線硬化性組成物を製造する方法は、無機酸化物粒子(A)分散体を調製する工程と;前記無機酸化物粒子(A)分散体と、前記(メタ)アクリレート(B)と、光開始剤(C)と、及び必要に応じて、他の様々な添加剤と、を混合する工程と、を含むことが好ましい。
混合方法としては、特に限定されないが、例えば、メディア式湿式分散機を用いる方法が挙げられる。
【0054】
また、無機酸化物粒子(A)分散体を調製する工程において、前記単官能(メタ)アクリレートの少なくとも一部と、または必要に応じて前記多官能(メタ)アクリレート(B2)の少なくとも一部とを添加してもよい。
【0055】
<無機酸化物粒子(A)分散体>
本実施形態に係る無機酸化物粒子(A)分散体は、例えば、前記無機酸化物粒子(A)と、前記溶剤と、前記添加剤としての前記分散剤(D)とを含むことが好ましい。本実施形態に係る無機酸化物粒子(A)分散体は、さらに、前記(メタ)アクリレート(B)の少なくとも一部を含んでもよい。
前記分散剤(D)は、酸価が50~300mgKOH/gの範囲であってもよい。前記分散剤(D)一般に、無機酸化物粒子(A)と本実施形態の活性エネルギー線硬化性組成物に含まれている他の樹脂成分との相互作用などによって、系内で無機ナノの凝集が生じ易く、活性エネルギー線硬化性組成物の安定性が保存低下したり、硬化塗膜の透明性が低下したりする。酸価が50~300mgKOH/gの範囲である分散剤(D)を用いることにより、経時安定性に優れる硬化性組成物が得られ、硬化物において屈折率が高いのみならず、光透過性や耐傷性にも優れるものとなる。
本実施形態に係る無機酸化物粒子(A)分散体は、さらに、前記添加剤としての前記シランカップリング剤(E)を含むことがより好ましい。全述の各種シランカップリング剤(E)等を用いて前記無機酸化物粒子(A)の表面に官能基を導入することができる。
【0056】
本実施形態に係る無機酸化物粒子(A)分散体の製造方法は特に限定されないが、例えば、前記無機酸化物粒子(A)と、前記分散剤(D)と、必要に応じて前記シランカップリング剤(E)とを含む原料をメディア式湿式分散機で分散する方法等により製造する方法が挙げられる。
【0057】
前記製造方法で用いるメディア式湿式分散機は、通常公知のものを制限なく使用することができ、例えば、ビーズミル(アシザワファインテック株式会社製スターミルLMZ-015、寿工業(株)製ウルトラアペックスミルUAM-015等)が挙げられる。
【0058】
分散機で使用されるメディアは、通常公知のビーズであれば特に制限はないが、好ましくは、ジルコニア、アルミナ、シリカ、ガラス、炭化珪素、窒化珪素が挙げられる。メディアの平均粒子径は50~500μmが好ましく、50~200μmのメディアがより好ましい。粒子径が50μm以上であれば、原料粉に対する衝撃力が適正であり、分散に過度な時間を要しない。一方、メディアの粒子径が500μm以下であれば、原料粉に対する衝撃力が適正であることから、分散された粒子の表面エネルギーの増大を抑制でき、再凝集を防止できる。
【0059】
また、原料粉の粉砕初期に、衝撃力の大きい大粒径のメディアを使用し、分散された粒子の粒径が小さくなってから、再凝集のおきにくい小粒径のメディアを使用する2段階の方法により、分散工程時間を短くすることもできる。
【0060】
また、メディアは、得られる分散体の光透過度の低下を抑制できる観点より、十分に研磨したものを使用することが望ましい。
【0061】
前記メディア式湿式分散機を用いる製造方法において、分散機に各原料を仕込む際の順番は特に限定されないが、少なくとも前記分散剤(D)を最後に供給することにより、少量の分散剤(D)の使用で分散安定性に優れる硬化性組成物を得ることができる。より具体的には、前記分散剤(D)以外の原料を先に仕込み、混合或いはプレ分散等の作業を行った後、最後に分散剤(D)を仕込み、本分散工程を行う方法などが挙げられる。
【0062】
分散終了後は、用途に応じて各種添加剤を加えたり、揮発成分を留去するなどして、本発明の硬化性組成物を得ることができる。
【0063】
また無機酸化物粒子(A)分散体中の無機酸化物粒子(A)の粒子径(平均粒子径とする)は、分散体中で無機酸化物粒子(A)が一部凝集していることから、無機酸化物粒子(A)分散体の原料である無機酸化物粒子(A)の平均一次粒子径よりも大きい。
したがって、無機酸化物粒子(A)分散体中の無機酸化物粒子(A)の平均粒子径は、屈折率が高く光透過性にも優れる硬化物となることから、100nm以下であることが好ましく、20~100nmの範囲であることがより好ましい。
【0064】
[活性エネルギー線硬化性組成物の特性]
本実施形態の活性エネルギー線硬化性組成物の屈折率が1.6以上である。1.62以上であってもよく、1.64以上であってもよい。1.69以下であってもよい。
本実施形態の活性エネルギー線硬化性組成物は、その硬化物のガラス転移温度Tgが-2℃以下である。-4℃以下であってもよく、-9℃以下であってもよい。-50℃以上であってもよい。
【0065】
(硬化物)
本実施形態の硬化物は、前述本実施形態の活性エネルギー線硬化性組成物の硬化物である。本実施形態の硬化物は、光学レンズなどの光学部品、光学フィルム、反射防止材料、薄膜封止材料、光学用粘着剤、光学用接着剤、拡散マイクロレンズ、光学粘着シート(表示装置構成部材を貼り合せるのに用いられる粘着シート)等、種々用途に使用することができる。
また本実施形態の硬化物の形状は特に限定されず、平滑な面を有する平らなシート状、微細凹凸構造を有するシート状、凹レンズ又は凸レンズのように湾曲した表面を有するシート状等用途に応じて選択可能である。
本実施形態の硬化物は、光学レンズに用いた場合に薄膜化が可能となったり、光学フィルムでは、透明電極との屈折率差を小さくして透明電極が目立たなくできたり、低屈折率層と組合せることにより反射防止機能を付与したり、LED封止材では発光素子部位からの光取出し効率を高める等の観点から、25℃における屈折率(589nm)が1.62以上であるが好ましく、1,65以上であることがより好ましく、1.66以上であることがさらも好ましい。また、屈折率の上限値は特に限定されるものではなく値が高いほど好ましい。しいて言えば、粘度とのバランスの観点から、1.62以上1.70以下であることが好ましく、1.65以上1.69以下であることがより好ましい。
また、粘着剤として用いた場合に、硬化物が柔軟で被着体の段差に追従しやすい観点から、最大押し込み深さが10μm以上70μm以下であることが好ましく、15μm以上50μm以下であることがより好ましい。また、分子の運動性が大きく復元性を高める観点から、弾性変形仕事率が60%以上100%以下であることが好ましく、75%以上98%以下であることがより好ましい。
【0066】
[硬化物の製造方法]
本実施形態の硬化物の製造方法は、特に限定されなく、例えば、基材の上、前述本実施形態の活性エネルギー線硬化性組成物を成膜する成膜工程と;成膜工程で得られた活性エネルギー線硬化性組成物の膜に対して、活性エネルギー線を照射し硬化する硬化工程と、を含む。
【0067】
透明フィルムなどの基材への成膜方法としては、塗布方法が挙げられる。塗布方法としては、公知の方法を用いることができ、例えばロットまたはワイヤーバー等を用いた方法や、マイクログラビア、グラビア、ダイ、カーテン、リップ、スロットまたはスピン等の各種コーティング方法を用いることができる。
【0068】
本実施形態の硬化物の製造方法は、例えば、
図1に示すように、一方の剥離シート2a(または2b)の剥離面に、前述本実施形態の活性エネルギー線硬化性組成物を塗布することで所定の厚みを有する塗布層を形成する。形成した塗布層に他方の剥離シート2b(または2a)の剥離面を重ね合わせた後、塗布層に対して波長365nmなどのLEDランプなどの活性エネルギー線照射を行って硬化させ、硬化物1を形成する。
硬化物1の他の製造例としては、一方の剥離シート2a(または2b)の剥離面に、無溶剤型粘着性組成物の塗布液を塗布し、活性エネルギー線照射を行って無溶剤型粘着性組成物を硬化させ、硬化物1を形成した後、その硬化物1に他方の剥離シート2b(または2a)の剥離面を重ね合わせる。
【0069】
前記活性エネルギー線は、本発明の硬化性組成物が硬化を起こす活性エネルギー線であれば特に制限なく用いることができるが、特に紫外線を用いることが好ましい。
【0070】
紫外線の発生源としては、LED、蛍光ケミカルランプ、ブラックライト、低圧、高圧、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、太陽光線などがある。例えば、80W高圧水銀ランプを用いることができる。
紫外線の照射強度は、終始一定の強度でも行って良いし、硬化途中で強度を変化させることにより、硬化後の物性を微調整することもできる。例えば、窒素雰囲気下、80W高圧水銀ランプを用いる場合、紫外線を0.5~3.0kJ/m2のエネルギー数値で照射することができる。
【0071】
紫外線の他、活性エネルギー線として、例えば可視光線、電子線類の活性エネルギー線も用いることができる。
【0072】
(光学粘着シート)
本実施形態の光学粘着シートは、上記の本実施形態の硬化物を用いて形成することができる。本実施形態の光学粘着シートは、例えば、表示装置構成部材を貼り合せるのに用いられる粘着シートとして使用することもできる。
本実施形態の光学粘着シートは、例えば、カバーガラス、メタルメッシュフィルム、偏光板等の表示装置構成部材の間に配置されてもよい。本実施形態の光学粘着シートは、光透過性が高く、かつ高い屈折率を有しているため、部材との屈折率差が小さくなることから、光取り出し効率が高い。
【0073】
[光学粘着シートの製造方法]
本実施形態の光学粘着シートを製造する方法は、特に限定されなく、例えば、前述本実施形態の活性エネルギー線硬化性組成物を、前記基材に塗布する工程と、紫外線などの活性エネルギー線を照射し、硬化塗膜を形成する工程と、を含む。
【0074】
本実施形態の光学粘着シートの製造方法は、例えば、
図1に示すように、一方の剥離シート2a(または2b)の剥離面に、前述本実施形態の活性エネルギー線硬化性組成物を塗布することで所定の厚みを有する塗布層を形成する。形成した塗布層に他方の剥離シート2b(または2a)の剥離面を重ね合わせた後、塗布層に対して波長365nmなどのLEDランプなどの活性エネルギー線照射を行って硬化させ、光学用粘着シート1を形成する。
光学用粘着シート1の他の製造例としては、一方の剥離シート2a(または2b)の剥離面に、無溶剤型粘着性組成物の塗布液を塗布し、活性エネルギー線照射を行って無溶剤型粘着性組成物を硬化させ、光学用粘着シート1を形成した後、その光学用粘着シート1に他方の剥離シート2b(または2a)の剥離面を重ね合わせる。
【実施例0075】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。
(原料)
「ジルコニア」:UEP-100(第一稀元素化学工業株式会社製)
「ジルコニアナノ粒子分散液」:ジルコニアナノ粒子分散液、日本触媒製、ジルコスター(登録商標)高屈折率ナノ粒子ZP-153
「分散剤(D)」(リン酸エステル化合物):分散剤D-1(下記構造式(1)で表される化合物
【0076】
【0077】
(式中、R1がメチル基であり、R2が炭素原子数2のエチレン鎖であり、xが5であり、yが2(平均値)であり、nが1~3の整数である)
【0078】
「シランカップリング剤(E)」:KBM-503(信越化学工業株式会社製、3-(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート)
【0079】
「(メタ)アクリレート化合物(B-1)」:
EO変性フェノキシエチルアクリレート(n=4)(ポリマーTg=-32℃)、MIWON SPECIALTY CHEMICAL CO.,LTD.製
アクリル酸2エチルヘキシル(ポリマーTg=-70℃)三菱ケミカル製
【0080】
「(メタ)アクリレート化合物(B-2)」:
フェノキシベンジルアクリレート(ポリマーTg=8℃)Green Chemical Co.,Ltd.製
フェニルベンジルアクリレート(ポリマーTg=40℃)新中村化学製
【0081】
「光重合開始剤(C)」:2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、商品名:Runtecure 1108(Runtec Chemical Co., Ltd.製)
ジエチレングリコールジベンゾアート:東京化成工業製
【0082】
<液屈折率>
活性エネルギー線硬化性組成物をAbbe屈折計のプリズムに直接塗布し、25℃にて測定を行った。測定波長:589nm。
【0083】
<ガラス転移温度(Tg)>
活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を、厚さ125μmのPETフィルムをスペーサーとして、二枚のガラス板の間に充填した後、波長365nmのLEDランプにより2000mJ/cm2の紫外線を照射して硬化させ、次いで、照射面と反対側のガラス板を剥離し、ガラス板上に厚さ125μmの平膜状硬化物を作製した。
平膜状硬化物をガラス基材から剥離し、示差走査熱量計(X-DSC7000、日立ハイテクサイエンス製)を用いて、動的走査熱量分析(DSC)にてDSC曲線を測定した。
昇温条件:20℃→80℃、80℃→-50℃、-50℃→80℃(10℃/min)
雰囲気:N2
パン:Al
【0084】
<膜屈折率>
活性エネルギー線硬化性組成物を、ガラス板と、透明基材としての透明で易接着処理されたPETフィルム(商品名:A4300、厚み:125μm 東洋紡績製)との間に挟み、ゴムハンドローラーで膜厚10μm程度になるように押し広げた後、活性エネルギー線を照射して硬化させ、次いで、PETフィルムを活性エネルギー線硬化樹脂層と共にガラス板から剥離し、前記基材の表面に硬化性組成物の硬化塗膜を形成した。その塗膜の屈折率をPRISM COUPLER MODEL 2010/M(Metricon社製)を用いて測定した。
「照射条件」
光源:超高圧水銀灯の紫外線
積算光量:400mJ/cm2
「測定条件」
波長:594nm
測定モード:single film
【0085】
<粘度>
粘度の評価は、E型回転粘度計(東機産業株式会社製「TVE-25H」)を用いて、温度25℃における粘度を測定した。
【0086】
<微小硬度>
上記<ガラス転移温度(Tg)>と同様にガラス基材付き平膜状硬化物を作製し、圧子はダイヤモンド製の四角錐型の代わりに、ダイヤモンド製の平面圧子を用いた以外は、ISO 14577-1に準拠して株式会社フィッシャーインストルメンツ製の微小硬さ試験機(商品名HM2000)を用いて測定した。試験条件は以下の通りである。
平面圧子の平面サイズ:100μmx100μm
1秒当たり:20~60mN
最大圧縮力:500mN
最大圧縮力における停止時間:5~10秒
F:500mN/10s(最大試験力/最大試験力負荷所要時間)
C:5.0s(最大試験力保持時間)
R:0.1mN/10s(最小試験力/最小試験力除荷所要時間)
C2:10.0s(最小試験力保持時間)
荷重と押し込み深さを、
図2の模試図のように連続的に監視していくと、以下の通りパラメータを求めることができる。
nIt:弾性変形仕事率(=W
elast/(W
elast+W
plast)×100)(単位:%)
hmax u:最大押し込み深さ (単位:μm)
hp u:試験力除荷後の永久押し込み深さ (単位:μm)
CIT1:押し込みクリープ(=(h
2-h
1)/h
1×100)(単位:%)
【0087】
<タック性>
上記<ガラス転移温度(Tg)>と同様に作製したガラス基材付き平膜状硬化物に、ガラス板を押し当てたあと、押し当てた上側のガラス板のみを持ち上げ、タック性を以下のように判断した。
〇:下側のガラス基材付き平膜状硬化物持ち上がった。
△:下側のガラス基材付き平膜状硬化物が一時持ち上がったが、すぐに落下した。
×:下側のガラス基材付き平膜状硬化物が持ち上がらなかった。
【0088】
(実施例1)
無機酸化物粒子(A)として、ジルコニアナノ粒子(第一稀元素化学工業株式会社製、商品名:UEP-100)55.4質量部と、
分散剤(D)として、リン酸エステル1(上記構造式(1)で表される化合物)8.3質量部と、
シランカップリング剤(E)として、3-(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート(信越化学工業株式会社製、商品名:KBM-503)5.5質量部と、溶剤として、メチルエチルケトン(以下、「MEK」と略記する。)69.3質量部と、を混合し、分散攪拌機で30分間攪拌し、粗分散を行った。次いで、得られた混合液を、メディア式湿式分散機(アシザワファインテック株式会社製「スターミルLMZ-015」)にて、粒子径100μmのジルコニアビーズを用いて分散処理した。途中の粒子径を確認しながら、滞留時間100分の分散処理を行い、無機粒子分散体を得た。
この無機粒子分散体に、ポリマーTgが-2℃以下の(メタ)アクリレート(B-1)として、アクリル酸2エチルヘキシル(ポリマーTg=-70℃、三菱ケミカル製)2.9質量部と、ポリマーTgが0℃以上の(メタ)アクリレート(B-2)として、フェノキシベンジルアクリレート(ポリマーTg=8℃、Green Chemical Co.,Ltd.製)19.0質量部と、を加え、エバポレーターにて加温しながら揮発成分を減圧除去した。さらに、光重合開始剤として、2、4、6―トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(Runtec Chemical Co., Ltd.製、商品名:Runtecure 1108)質量部2.9質量部、添加剤として、ジエチレングリコールジベンゾアート(東京化成工業製)を5.8添加し、本実施形態の活性エネルギー線硬化性組成物P1(組成物P1)を調製した。上記の評価方法を用いて、組成物P1の液屈折率、粘度を評価した。また、組成物P1の硬化物の膜屈折率、微小硬度、タック性を評価した。それらの結果を表1に示す。
【0089】
(実施例2~4、6、比較例1、3)
各実施例は、表1に示す成分及び組成比を用いた以外は、実施例1と同様な方法で、それぞれ、実施例2~4、6、比較例1、3の組成物P2~P4、P6、cP1、cP3を調製した。なお、MEKの使用量は、実施例1と同様に、表1に示す無機ナノ粒子の配合量の2.15倍量であった。実施例1と同様に、各組成物の液屈折率、粘度を評価した。また、各組成物の硬化物の膜屈折率、微小硬度、タック性を評価した。それらの結果を表1に示す。
【0090】
(実施例5、比較例2)
調製した無機粒子分散体の代わりに、日本触媒製ジルコニアナノ粒子分散液(ジルコスター(登録商標)高屈折率ナノ粒子ZP-153)を用い、実施例1と同様な方法で、それぞれ、実施例5、比較例2の組成物P5、cP2を調製した。なお、MEKの使用量は、実施例1と同様に、表1に示す無機ナノ粒子の配合量の2.15倍量であった。実施例1と同様に、各組成物の液屈折率、粘度を評価した。また、各組成物の硬化物の膜屈折率、微小硬度、タック性を評価した。それらの結果を表1に示す。
【0091】
【0092】
(考察)
表1に示すように、実施例において、硬化後もタック性を有する高屈折率な活性エネルギー線硬化性組成物およびその硬化物が得られた。これは、高屈折率の無機粒子であるジルコニアと、ポリマーTg -2℃以下の(メタ)アクリレート(B-1)を使用することにより、硬化後も-2℃以下の低いTgを有し、常温でもゴム状態を維持するためである。更に、ポリマーTg 0℃以下の(メタ)アクリレート(B-2)を使用することにより、ハンドリング性のある粘度を維持したまま、高い屈折率を実現することができる。
なお、ポリマーTg -2℃以下の(メタ)アクリレート(B-1)を含有しない比較例1、2、3では、硬化後のTgが0℃以上となり、良好なタック性が得られなかった。
また、表1に示すように、実施例において、最大押し込み深さを10μm以上かつ弾性変形仕事率を60%以上とすることで、良好なタック性が得られた。これは、最大押し込み深さが大きく、硬化物が柔軟で、被着体であるガラス表面の凹凸に追従するためである。更に、最大押し込み深さを15μm以上かつ弾性変形仕事率を75%以上とすることで、より良好なタック性が得られた。一方、最大押し込み深さが10μmより小さいまたは弾性変形仕事率が60%より小さい比較例1、2,3では、良好なタック性が得られなかった。