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特開2024-168226ポリエチレン積層フィルムおよび医療容器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168226
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】ポリエチレン積層フィルムおよび医療容器
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/32 20060101AFI20241128BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
B32B27/32 E
B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023084715
(22)【出願日】2023-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】冨田 奈恵
(72)【発明者】
【氏名】菊地 元三
(72)【発明者】
【氏名】山野 直樹
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
3E086AA23
3E086AB01
3E086AC07
3E086AD01
3E086BA04
3E086BA13
3E086BA15
3E086BA35
3E086BB02
3E086BB05
3E086BB51
3E086CA28
4F100AK04A
4F100AK04B
4F100AK04C
4F100AK05A
4F100AK05C
4F100AK63A
4F100AK63C
4F100AK64B
4F100AK64J
4F100AL05A
4F100AL05B
4F100AL05C
4F100AT00
4F100BA03
4F100BA14
4F100BA15
4F100BA27
4F100BA28
4F100GB15
4F100GB23
4F100JJ03
4F100JN01
(57)【要約】
【課題】 薄膜化した場合においても耐熱性および水蒸気バリア性に優れ、かつ高い透明性が保持されるポリエチレン積層フィルムおよびこれよりなる医療容器を提供する。
【解決手段】 C層とA層とそれらの間に配置されたB層とを有しJIS K7129―1に準拠した水蒸気透過度計にて測定した水蒸気透過率が2.0g/m/day以下で、かつ純水中において波長450nmで測定した光線透過率が70%以上である積層フィルムであって、C層の厚みに対するB層の厚みの比率が6倍以下、かつ、A層の厚みに対するB層の厚みの比率が6倍以下であることを特徴とする、厚み200μm以下のポリエチレン積層フィルム。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともA層、B層、C層をこの順で有し、A層、B層、C層がポリエチレンからなる3層以上の積層体であって、JIS K7129―1に準拠した水蒸気透過度計にて測定した水蒸気透過率が2.0g/m/day以下で、かつ純水中において波長450nmで測定した光線透過率が70%以上であり、C層の厚みに対するB層の厚みの比率が6倍以下、かつ、A層の厚みに対するB層の厚みの比率が6倍以下であり、フィルム全体の厚みが200μm以下である、積層フィルム。
【請求項2】
C層および/またはA層が、下記特性(a)~(c)を満足する高密度ポリエチレン(A)20~50重量%、および下記特性(d)~(g)を満足するエチレン系重合体(B)50~80重量%((A)、(B)の合計は100重量%)を含み、下記特性(h)~(i)を満足するポリエチレン樹脂組成物からなり、B層が、前記特性(a)~(c)を満足する高密度ポリエチレン(A)10~40重量%、および下記特性(d)~(g)を満足するエチレン系重合体(B)0~10重量%、下記特性(j)~(k)を満足する直鎖状低密度ポリエチレン(C)60~90重量%、((A)、(B)、(C)の合計は100重量%)を含む樹脂組成物からなる、請求項1に記載の積層フィルム。
(a)密度が945~970kg/m
(b)190℃、荷重21.18Nで測定したメルトフローレート(以下、MFRという)が0.1~30g/10分である。
(c)13C-NMRスペクトルの測定から求められる炭素数1000個当りのヘキシル基以上の分岐数(LCB)が、0.5個未満である。
(d)密度が945~954kg/mである。
(e)MFRが0.1~1.0g/10分である。
(f)ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーによる分子量測定において、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が3.0~5.0の範囲である。
(g)13C-NMRスペクトルの測定から求められる炭素数1000個当りのヘキシル基以上の分岐数(LCB)が、0.5~2.0個である。
(h)密度が951~957kg/mである。
(i)MFRが0.1~1.5g/10分である。
(j)密度が880~915kg/mである。
(k)MFRが0.1~15g/10分である。
【請求項3】
薬液を収容する収容部を備えた医療容器であって、少なくとも前記収容部は請求項1又は2に記載の積層フィルムからなり、A層を内層とする医療容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエチレンからなる積層フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
薬液、血液等を充填する医療容器に供するフィルムには、異物の混入や薬剤配合による変化を確認するための透明性、滅菌処理等に耐えられる耐熱性、薬液の排出を容易にするための柔軟性、容器内への水蒸気や酸素の滲入による薬液等の変質や品質の低下を抑制するためのガスバリア性、さらに容器からの微粒子溶出の低減(低微粒子性)などが要求される。このようなフィルムとしては、ポリプロピレン樹脂および高圧法低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン等のポリエチレンからなるフィルムが用いられる。しかし、ポリプロピレンは三級炭素が繰り返し存在し、本質的に酸化劣化しやすいため、酸化防止剤の添加が必須となり、クリーン性が課題となっているのに加え、ポリプロピレン製フィルムは一般に耐寒衝撃性に劣ることから、薄膜化することが困難などの課題があった。一方、ポリエチレン製フィルムは、クリーン性に優れるものの、薄膜化すると耐熱性やガスバリア性が低下するなどの課題があり、耐熱性を満足するために密度を高くしたポリエチレンを用いたフィルムは透明性や柔軟性が低下するなどの課題がある。
【0003】
そこでフィルムを多層化し高耐熱性かつ高水蒸気バリア性を有するフィルムと高透明性を有するフィルムを積層した積層フィルムが使われている(特許文献1、2参照)が、薄膜化には課題が残るものであった。また、特定の内層厚みを有する積層フィルムも提案されているが具体例として200μm以下の積層フィルムについては何ら述べられていない(特許文献3参照)。薄膜化した際においても透明性、耐熱性およびガスバリア性に優れたフィルムが望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-96190号公報
【特許文献2】特開2015-74197号公報
【特許文献3】特開2005-7888号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、薄膜化した際においても、水蒸気や酸素等の透過に対するガスバリア性に優れ、高い透明性と耐熱性が保持される積層フィルムおよびこの積層フィルムを用いた医療容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは鋭意検討を行なった結果、ポリエチレンを特定の厚み比率で配置した積層体フィルムを医療容器とすることにより、上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、以下の[1]及至[3]に存する。
[1] 少なくともA層、B層、C層をこの順で有し、A層、B層、C層がポリエチレンからなる3層以上の積層体であって、JIS K7129―1に準拠した水蒸気透過度計にて測定した水蒸気透過率が2.0g/m/day以下で、かつ純水中において波長450nmで測定した光線透過率が70%以上であり、C層の厚みに対するB層の厚みの比率が6倍以下、かつ、A層の厚みに対するB層の厚みの比率が6倍以下であり、フィルム全体の厚みが200μm以下である、積層フィルム。
[2] C層および/またはA層が、下記特性(a)~(c)を満足する高密度ポリエチレン(A)20~50重量%、および下記特性(d)~(g)を満足するエチレン系重合体(B)50~80重量%((A)、(B)の合計は100重量%)を含み、下記特性(h)~(i)を満足するポリエチレン樹脂組成物からなり、B層が、前記特性(a)~(c)を満足する高密度ポリエチレン(A)10~40重量%、および下記特性(d)~(g)を満足するエチレン系重合体(B)0~10重量%、下記特性(j)~(k)を満足する直鎖状低密度ポリエチレン(C)60~90重量%、((A)、(B)、(C)の合計は100重量%)を含む樹脂組成物からなる、[1]に記載の積層フィルム。
(a)密度が945~970kg/m
(b)190℃、荷重21.18Nで測定したメルトフローレート(以下、MFRという)が0.1~30g/10分である。
(c)13C-NMRスペクトルの測定から求められる炭素数1000個当りのヘキシル基以上の分岐数(LCB)が、0.5個未満である。
(d)密度が945~954kg/mである。
(e)MFRが0.1~1.0g/10分である。
(f)ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーによる分子量測定において、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が3.0~5.0の範囲である。
(g)13C-NMRスペクトルの測定から求められる炭素数1000個当りのヘキシル基以上の分岐数(LCB)が、0.5~2.0個である。
(h)密度が951~957kg/mである。
(i)MFRが0.1~1.5g/10分である。
(j)密度が880~915kg/mである。
(k)MFRが0.1~15g/10分である。
[3] 薬液を収容する収容部を備えた医療容器であって、少なくとも前記収容部は[1]又は[2]に記載の積層フィルムからなり、A層を内層とする医療容器。
【発明の効果】
【0008】
本発明の積層フィルムは、薄膜した際にも透明性、ガスバリア性および耐熱性に優れることから樹脂使用量を減らすことができ、輸液バッグや血液バッグのような医療容器に好適に用いることが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明を詳細に説明する。
【0010】
本発明一態様であるの積層フィルムは、A層、B層、C層をこの順で有し、A層、B層、C層がポリエチレンからなる3層以上の積層体であって、JIS K7129―1に準拠した水蒸気透過度計にて測定した水蒸気透過率が2.0g/m/day以下で、かつ純水中において波長450nmで測定した光線透過率が70%以上であり、C層の厚みに対するB層の厚みの比率が6倍以下、かつ、A層の厚みに対するB層の厚みの比率が6倍以下であり、フィルム全体の厚みが200μm以下である。
【0011】
上記積層フィルムは、A層とB層とC層を有するものであれば、その他の層構成については特に限定されない。層の数については、前記A層/B層/C層からなる3層が最も好ましいが、それに限らず、A層/B層/C層におけるB層の中にさらに層を構成させたA層/B層/中心層/B層/C層という層構成や、B層とC層、またはA層とB層の間に、必要に応じて適宜他の層を設けることができる。そのような他の層としては、接着層、ガスバリア層等が挙げられる。例えば、A層/接着層/B層/ガスバリア層/C層といった五層構造をとることもできる。また、C層のさらにC側に新たな層を設けることもできる。なお、層の間の記号/は、隣接する層であることを表している。
【0012】
各層の厚み比率は、C層の厚みに対するB層の厚みの比率が6倍以下、かつ、A層の厚みに対するB層の厚みの比率が6倍以下であり、より透明性と水蒸気バリア性に優れる積層フィルムが得られることからC層の厚みに対するB層の厚みの比率が2~4倍、かつ、A層の厚みに対するB層の厚みの比率が2~4倍であることが好ましい。ここで、C層の厚みに対するB層の厚みの比率が6倍を超える、または、A層の厚みに対するB層の厚みの比率が6倍を超えると水蒸気バリア性および湿熱滅菌時の耐熱性に劣るものとなる。C層とA層の厚みは同じであっても異なっても構わない。各層の厚み比率の具体的例示として、C層:B層:A層=1:4:1(倍)からなる積層フィルムを挙げることができる。
【0013】
上記積層フィルムの全体の厚みは200μm以下であれば必要に応じて適宜決定することができ、透明性と水蒸気バリア性に優れることから好ましくは100~200μmである。
【0014】
上積層フィルムは、純水中において波長450nmで測定した光線透過率が70%以上である。光線透過率が70%以上である場合、積層フィルムを医療容器とした場合に内用液の視認性に優れることから好ましい。
【0015】
上記積層フィルムは、JIS K7219-1に準拠し、重量測定法で測定した水蒸気透過率が2.0g/m/day以下である。水蒸気透過率が2.0g/m/dayである場合、医療容器とした場合に内用液の蒸散が少ない積層フィルムとなることから好ましい。
【0016】
上記積層フィルムの製造方法は特に限定されないが、水冷式または空冷式共押出多層インフレーション法、共押出多層Tダイ法、ドライラミネーション法、押出ラミネーション法等により多層フィルムまたはシートとする方法が挙げられる。これらの中で、水冷式共押出多層インフレーション法または共押出多層Tダイ法を用いるのが好ましい。特に、水冷式共押出多層インフレーション法を用いた場合、透明性、衛生性等の点で多くの利点を有する。
【0017】
上記積層フィルムはA層、B層、C層がポリエチレンからなるフィルムであれば如何なるフィルムであってもよい。ポリエチレンはポリエチレンと称するものであれば如何なるポリエチレンであってもよく、エチレン単独重合体、エチレン・α-オレフィン重合体などが挙げられ、その中でもとりわけ透明性と水蒸気バリア性に優れた積層フィルムとなることから、C層および/またはA層が、下記特性(a)~(c)を満足する高密度ポリエチレン(A)20~50重量%、および下記特性(d)~(g)を満足するエチレン系重合体(B)50~80重量%((A)、(B)の合計は100重量%)を含み、下記特性(h)~(i)を満足するポリエチレン樹脂組成物であり、B層が、前記特性(a)~(c)を満足する高密度ポリエチレン(A)10~40重量%、および前記特性(d)~(g)を満足するエチレン系重合体(B)0~10重量%、前記特性(j)~(k)を満足する直鎖状低密度ポリエチレン(C)60~90重量%、((A)、(B)、(C)の合計は100重量%)を含む樹脂組成物であることが好ましい。
(a)密度が945~970kg/m
(b)190℃、荷重21.18Nで測定したメルトフローレート(以下、MFRという)が0.1~30g/10分である。
(c)13C-NMRスペクトルの測定から求められる炭素数1000個当りのヘキシル基以上の分岐数(LCB)が、0.5個未満である。
(d)密度が945~954kg/mである。
(e)MFRが0.1~1.0g/10分である。
(f)ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーによる分子量測定において、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が3.0~5.0の範囲である。
(g)13C-NMRスペクトルの測定から求められる炭素数1000個当りのヘキシル基以上の分岐数(LCB)が、0.5~2.0個である。
(h)密度が951~957kg/mである。
(i)MFRが0.1~1.5g/10分である。
(j)密度が880~915kg/mである。
(k)MFRが0.1~15g/10分である。
【0018】
高密度ポリエチレン(A)は、エチレン単独重合体、またはエチレンとα-オレフィンの共重合体であり、エチレンとα-オレフィンの共重合体としては例えばエチレン・ヘキセン-1共重合体、エチレン・ブテン-1共重合体、エチレン・オクテン-1共重合体等が挙げられる。
【0019】
高密度ポリエチレン(A)は、とりわけ透明性に優れ、厚みムラの少ない積層フィルムが得られることからJIS K6922-1に準拠した190℃、荷重21.18Nで測定した際のMFRは0.1~30g/10分であることが好ましい。また、透明性、ガスバリア性に優れるポリエチレン積層フィルムが得られることからJIS K6922-1に準拠した密度は945~970kg/mであることが好ましく、より好ましくは950~965kg/mである。またとりわけ耐熱性に優れる積層フィルムが得られることから13C-NMRスペクトルの測定から求められる炭素数1000個当たりのヘキシル基以上の分岐数(LCB)は0.5個未満であることが好ましい。高密度ポリエチレン(A)は、例えばスラリー法、溶液法、気相法等の製造法により製造することが可能であり、一般的にマグネシウムとチタンを含有する固体触媒成分および有機アルミニウム化合物からなるチーグラー触媒、シクロペンタジエニル誘導体を含有する有機遷移金属化合物と、これと反応してイオン性の錯体を形成する化合物および/又は有機金属化合物からなるメタロセン触媒、バナジウム系触媒等を用いることができ、該触媒によりエチレンを単独重合またはエチレンとα-オレフィンを共重合することにより製造することが可能であり、例えば特許3319051号等に記載の方法により得ることができる。
【0020】
高密度ポリエチレン(A)としては、市販品として入手したものであってもよく、例えば、東ソー(株)製(商品名)ニポロンハード 5700、4030等を挙げることができる。
【0021】
前記エチレン系重合体(B)は、とりわけ透明性および成形性に優れる積層フィルムが得られることからJIS K6922-1に準拠した190℃、荷重21.18Nで測定したMFRが0.1~1.0g/10分であることが好ましい。また、透明性、ガスバリア性に優れる積層フィルムが得られることからJIS K6922-1に準拠した密度が945~954kg/mであることが好ましい。また、透明性に優れ、安定生産が可能な積層フィルムが得られることからゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(以下、GPCという。)による分子量測定において重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)は3.0~5.0の範囲であることが好ましく、より好ましくは3.5~4.5である。またとりわけ耐熱性に優れる積層フィルムが得られることからさらに13C-NMRスペクトルの測定から求められる炭素数1000個当りのヘキシル基以上の分岐数(LCB)は0.5~2個であることが好ましい。
【0022】
エチレン系重合体(B)は、メタロセン触媒を用いて製造される。用いるメタロセン触媒は、一つのメタロセン錯体、活性化助触媒、および必要に応じて有機アルミニウム化合物を構成成分として有し、マクロモノマーの合成と同時に、マクロモノマーとエチレン、あるいはマクロモノマーとエチレンおよび炭素数3~6のオレフィンとの共重合を行うことが好ましい。マクロモノマーとは、末端にビニル基を有するオレフィン重合体であり、エチレン単独重合、あるいはエチレンと炭素数3~6のオレフィンを共重合することによって得られる末端にビニル基を有するエチレン系重合体である。
【0023】
メタロセン触媒の構成成分として用いる活性化助触媒は、メタロセン錯体、またはメタロセン錯体と有機アルミニウム化合物の反応物を、オレフィンの重合が可能な活性種に変換する役割を果たす化合物を示し、メタロセン錯体からカチオン性化合物を生成させる化合物であることが好ましい。
【0024】
なお、メタロセン触媒は、触媒の調製時、メタロセン錯体の活性化や溶媒中の不純物の除去など、必要に応じてトリエチルアルミニウムやトリイソブチルアルミニウムなどのアルキルアルミニウムを用いてもよい。
【0025】
エチレン系重合体(B)を製造する際には、重合温度は-100~120℃で行うことが好ましく、特に生産性を考慮すると20~120℃が好ましく、さらには60~120℃の範囲で行うことが好ましい。また、重合時間は10秒~20時間の範囲が好ましく、重合圧力は常圧~300MPaの範囲で行うことが好ましい。
【0026】
重合性単量体としては、エチレンと炭素数3~6のα-オレフィンであることが好ましく、エチレンと炭素数3~6のα-オレフィンの供給割合として、炭素数3~6のα-オレフィン/エチレン(モル比)が、0~0.2、好ましくは0~0.15の供給割合を用いることができる。また、重合時に水素などを用いて分子量の調節を行うことも可能である。その場合に用いる水素の量は、水素/エチレン(モル比)が、0~0.002(水素濃度:2,000ppm)、好ましくは0~0.0005(水素濃度:500ppm)の供給割合を用いることができる。
【0027】
重合はバッチ式、半連続式、連続式のいずれの方法でも行うことが可能であり、重合条件を変えて2段階以上に分けて行うことも可能である。また、エチレン・α-オレフィン共重合体は、重合終了後に従来既知の方法により重合溶媒から分離回収され、乾燥して得ることができる。
【0028】
重合はスラリー状態、溶液状態または気相状態で実施することができ、特に、重合をスラリー状態で行う場合にはパウダー粒子形状の整ったエチレン系重合体を効率よく、安定的に生産することができる。また、エチレン系重合体(B)は、特開2011-105934号公報等の公知の方法により得ることができる。
【0029】
前記直鎖状低密度ポリエチレン(C)はとりわけ成形性に優れる積層フィルムが得られることからJIS K6922-1に準拠した190℃、荷重2.16kgで測定したMFRが0.1~15g/10分であることが好ましい。また、透明性、柔軟性に優れる積層フィルムが得られることからJIS K6922-1に準拠した密度は890~915kg/mであることが好ましい。
【0030】
直鎖状低密度ポリエチレン(C)は、例えば高圧法、溶液法、気相法等の製造方法により製造することが可能である。一般的にマグネシウムとチタンを含有する固体触媒成分および有機アルミニウム化合物からなるチーグラー触媒、シクロペンタジエニル誘導体を含有する有機遷移金属化合物と、これと反応してイオン性の錯体を形成する化合物および/または有機金属化合物からなるメタロセン触媒、バナジウム触媒等を用いることができ、エチレンとα-オレフィンを共重合することにより製造可能であり、例えば特開2009-275059号公報、特開2013-81494号公報等に記載の方法により得ることができる。
【0031】
直鎖状ポリエチレン(C)としては、市販品として入手したものであってもよく、例えば、東ソー(株)製(商品名)二ポロンーZ HF210K、ZF220、FY12等を挙げることができる。
【0032】
ポリエチレン樹脂組成物は、前述の高密度ポリエチレン(A)および/またはエチレン系重合体(B)および/または直鎖状低密度ポリエチレン(C)を、従来公知の方法、例えばヘンシェルミキサー、V-ブレンダー、リボンブレンダー、タンブラーブレンダー等で混合する方法、あるいはこのような方法で得られた混合物をさらに一軸押出機、二軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサー等で溶融混練した後、造粒することによって得ることができる。
【0033】
C層および/またはA層を構成するポリエチレン樹脂組成物は、水蒸気バリア性の点から前記高密度ポリエチレン(A)20~50重量%、および前記エチレン系重合体(B)50~80重量%((A)、(B)の合計は100重量%)を含むことが好ましく、さらに高密度ポリエチレン(A)30~45重量%、及びエチレン系重合体(B)55~70重量%を含むことが好ましい。なお、(A)、(B)は100重量%となるような比率で含まれる。
【0034】
C層および/またはA層に用いられるポリエチレン樹脂組成物は、耐熱性の点から密度が951~957kg/mであることが好ましい。
【0035】
C層および/またはA層に用いられるポリエチレン樹脂組成物は、成形安定性の点からMFRが0.1~1.5g/10分であることが好ましく、更に0.6~1.2g/10分であることが好ましい。
【0036】
B層を構成するポリエチレン樹脂組成物は、前記高密度ポリエチレン(A)10~40重量%、前記エチレン系重合体(B)0~10重量%、及び前記直鎖状低密度ポリエチレン(C)60~90重量%を含むことが好ましく、さらに高密度ポリエチレン(A)10~40重量%、エチレン系重合体(B)0~10重量%、及び直鎖状低密度ポリエチレン(C)60~90重量%を含むことが好ましい。なお、(A)、(B)、(C)は100重量%となるような比率で含まれる。
【0037】
ポリエチレン樹脂組成物には、本発明の効果を著しく損なわない範囲において、通常用いられる公知の添加剤、例えば酸化防止剤、帯電防止剤、滑剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、有機系あるいは無機系の顔料、紫外線吸収剤、分散剤等を適宜必要に応じて配合することができる。本発明に関わる樹脂組成物に前記の添加剤を配合する方法は特に制限されるものではないが、例えば、重合後のペレット造粒工程で直接添加する方法、また、予め高濃度のマスターバッチを作製し、これを成形時にドライブレンドする方法等が挙げられる。
【0038】
また、上記ポリエチレン樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない程度の範囲内で、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体ゴム、ポリ-1-ブテン等の他の熱可塑性樹脂を配合して用いることもできる。
【0039】
本発明の一態様である医療容器は、薬液を収容する収容部を備えた医療容器であって、少なくとも収容部が前記積層フィルムからなり、A層を内層とするものであることが好ましい。
【0040】
薬液を収容する収容部の形状は、フィルム状の袋やボトル状である物を例示できる。
【0041】
上記積層フィルムを、水冷式または空冷式共押出多層インフレーション法、共押出多層Tダイ法、ドライラミネーション法、押出ラミネーション法等によりフィルム状に成形した場合は、得られたフィルムを2枚重ね合わせて、周辺部をヒートシールすることで、袋状の収容部を成形することができる。また、得られたフィルムを真空成形、圧空成形などの熱板成形により、収容部となる凹部を成形した後、凹部同士が対向するように重ね合わせて、周辺部をヒートシールすることで収容部を成形することもできる。この際、薬液の注出入口となるポート部は、前記収容部の成形時に同時にヒートシールして形成させてもよいし、収容部の形成とポート部の形成を別工程で行なうことも可能である。前期積層体を、多層ブロー成形法等によりボトル状に成形して、収容部を成形させることも可能である。また、ポート部の形成は、収容部との一体成形用金型を使用する方法、ポート部を収容部にヒートシールする方法、インサートブロー成形により収容部の成形と同時に一体化する方法等が挙げられる。
【0042】
上記医療容器の用途としては、医療関係全般に用いることができ、例えば血液バッグ、血小板保存バッグ、輸液(薬液)バッグ、医療複室容器、人工透析用バッグ等が挙げられる。
【実施例0043】
以下に、実施例を示して本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例により制限されるものではない。
A.樹脂
実施例、比較例に用いた樹脂の諸性質は下記の方法により評価した。
【0044】
<密度>
密度は、JIS K6922-1に準拠して密度勾配管法で測定した。
【0045】
<MFR>
MFR(メルトフローレート)は、JIS K6922-1に準拠して測定を行った。
【0046】
<分子量、分子量分布>
重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、および重量平均分子量と数平均分子量の比(Mw/Mn)は、GPCによって測定した。GPC装置(東ソー(株)製(商品名)HLC-8121GPC/HT)およびカラム(東ソー(株)製(商品名)TSKgel GMHhr-H(20)HT)を用い、カラム温度を140℃に設定し、溶離液として1,2,4-トリクロロベンゼンを用いて測定した。測定試料は1.0mg/mlの濃度で調製し、0.3ml注入して測定した。分子量の検量線は、分子量既知のポリスチレン試料を用いて校正した。なお、MwおよびMnは直鎖状ポリエチレン換算の値として求めた。
【0047】
<長鎖分岐>
炭素原子1000個当りの長鎖分岐数は、Bruker社製 AVANCE600核磁気共鳴装置を用いたカーボン核磁気共鳴(13C-NMR)法によって、重合体のカーボン核磁気共鳴(13C-NMR)スペクトルを測定し、下記算出方法より、重合体中の炭素原子数1000個当りの長鎖分岐の数を求めた。測定温度は130℃に設定し、溶媒は1,2-ジクロロベンゼン/1,2-ジクロロベンゼン-d4=75/25(容積比)の混合液を用いた。
【0048】
<長鎖分岐(LCB))の数の算出方法>
窓関数をガウシャンで処理したNMRスペクトルにおいて、5~50ppmにピークトップを有するすべてのピークのピーク面積の総和を1000として、炭素原子数7以上の分岐が結合したメチン炭素に由来するピークのピーク面積から長鎖分岐の数(炭素原子数7以上の分岐の数)を求めた。本測定条件においては、38.22~38.27ppm付近にピークトップを有するピークのピーク面積から長鎖分岐の数(炭素原子数7以上の分岐の数)を求めた。当該ピークのピーク面積は、高磁場側で隣接するピークとの谷のケミカルシフトから、低磁場側で隣接するピークとの谷のケミカルシフトまでの範囲でのシグナルの面積とした。なお、本測定条件においては、エチレン-1-オクテン共重合体の測定において、ヘキシル分岐が結合したメチン炭素に由来するピークのピークトップの位置が38.21ppmであった。
【0049】
実施例、比較例では、下記の方法により製造した樹脂および市販品を用いた。
(1)高密度ポリエチレン
A-1:下記市販品を用いた。
【0050】
東ソー(株)製、(商品名)ニポロンハード 5700(MFR=0.9g/10分、密度=954kg/m)A-1の基本特性評価結果を表1に示す。
【0051】
A-2:下記市販品を用いた。
【0052】
東ソー(株)製、(商品名)ニポロンハード 4030(MFR=5.0g/10分、密度=965kg/m)A-2の基本特性評価結果を表1に示す。
【0053】
A-3:下記市販品を用いた。
【0054】
東ソー(株)製、(商品名)ニポロンハード 1000(MFR=20.0g/10分、密度=964kg/m)A-3の基本特性評価結果を表1に示す
A-4:以下の方法により製造した。
[有機変性粘土の調製]
1リットルのフラスコに工業用アルコール(日本アルコール販売者製、(商品名)エネキンF-3)300mL及び蒸留水300mLを入れ、濃塩酸15.0g及びジオレイルメチルアミン((C1835(CH)N、ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製、(商品名)リポミンM2O6(120mmоl)を添加し、45℃に加熱した後、合成ヘクトライト(BYK社製、(商品名)ら歩ナイトRD)を100g分散させた後、60℃に昇温させてその温度を保持したまま1時間攪拌した。このスラリーを濾別後、60℃の水600mLで2回洗浄し、85℃の乾燥機内で12時間乾燥させることにより130gの有機変性粘土を得た。この有機変性粘土はジェットミル粉砕して、メジアン径を15μmとした。
[重合触媒の調製]
温度計と還流菅が装着された300mLのフラスコを窒素置換した後に[有機変性粘土の調製]で得られた有機変性粘土25.0gとヘキサンを108mL入れ、次いでビス(インデニル)ジルコニウムジクロライド0.392(1ミリモル)及び20%トリイソブチルアルミニウム142mLを添加して60℃で3時間攪拌した。室温まで冷却した後に上澄み液を抜き取り、220mLのヘキサンにて2回洗浄後、ヘキサンを220mL加えて触媒懸濁液を得た(固形重量分:12.0wt%)。
[A-4の製造]
2Lのオートクレーブにヘキサンを1.2L、20%トリイソブチルアルミニウムを1.0mL、[重合触媒の調製]で得られた触媒懸濁液を200mg(固形分24mg相当)加え、85℃に昇温後、分圧が0.90MPaになるようにエチレン/水素混合ガスを連続的に供給した(エチレン/水素混合ガス中の水素濃度:450ppm)。90分経過後に脱圧し、スラリーを濾別後、乾燥することで205gのポリマーを得た。このポリマーのMFRは1.0g/10分であり、密度は952kg/mであった。A-4の基本特性評価結果を表1に示す。
【0055】
【表1】
【0056】
(2)エチレン系重合体
B-1:以下の方法により製造した。
[変性粘土の調製]
1Lのフラスコに工業用アルコール(日本アルコール販売社製(商品名)エキネンF-3)300mL及び蒸留水300mLを入れ、濃塩酸15.0g及びジメチルベヘニルアミン(ライオン株式会社製(商品名)アーミンDM22D)42.4g(120mmol)を添加し、45℃に加熱して合成ヘクトライト(Rockwood Additives社製(商品名)ラポナイトRDS)を100g分散させた後、60℃に昇温させてその温度を保持したまま1時間攪拌した。このスラリーを濾別後、60℃の水600mLで2回洗浄し、85℃の乾燥機内で12時間乾燥させることにより122gの有機変性粘土を得た。この有機変性粘土はスプレードライして、メジアン径を15μmとした。
[重合触媒の調製]
温度計と還流管が装着された300mLのフラスコを窒素置換した後に(1)で得られた有機変性粘土25.0gとヘキサンを108mL入れ、次いでジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(2,4,7-トリメチル-1-インデニル)ジルコニウムジクロリド/0.4406g、及び20%トリイソブチルアルミニウム142mLを添加して60℃で3時間攪拌した。45℃まで冷却した後に上澄み液を抜き取り、200mLのヘキサンにて5回洗浄後、ヘキサンを200ml加えて触媒懸濁液を得た(固形重量分:12.0wt%)。
[B-1の製造]
2Lのオートクレーブにヘキサンを1.2L、20%トリイソブチルアルミニウムを1.0mL、[重合触媒の調製]で得られた触媒懸濁液を358mg(固形分43mg相当)加え、70℃に昇温後、1-ブテンを1.2g加え、分圧が0.80MPaになるようにエチレン/水素混合ガスを連続的に供給した(エチレン/水素混合ガス中の水素の濃度:765ppm)。90分経過後に脱圧し、スラリーを濾別後、乾燥することで65gのポリマーを得た。このポリマーのMFRは0.4g/10分であり、密度は947kg/mであった。また、数平均分子量(Mn)は3.2×10、重量平均分子量は13.0×10、Mw/Mnは4.1、ポリマー中に含まれる長鎖分岐数は、主鎖1000炭素数あたり0.8個であった。B-1の基本特性評価結果を表2に示す。
【0057】
B-2:以下の方法により製造した。
[変性粘土の調製]
B-1と同様の方法により変性粘土化合物を調製した。
[重合触媒の調製]
B-1と同様の方法により重合触媒を調製した。
[B-2の製造]
2Lのオートクレーブにヘキサンを1.2L、20%トリイソブチルアルミニウムを1.0mL、[重合触媒の調製]で得られた触媒懸濁液を358mg(固形分43mg相当)加え、70℃に昇温後、1-ブテンを4.6g加え、分圧が0.80MPaになるようにエチレン/水素混合ガスを連続的に供給した(エチレン/水素混合ガス中の水素の濃度:1600ppm)。90分経過後に脱圧し、スラリーを濾別後、乾燥することで86gのポリマーを得た。このポリマーのMFRは2.0g/10分であり、密度は942kg/mであった。また、数平均分子量(Mn)は2.0×10、重量平均分子量は9.5×10、Mw/Mnは4.5、ポリマー中に含まれる長鎖分岐数は、主鎖1000炭素数あたり1.6個であった。B-2の基本特性評価結果を表2に示す。
【0058】
B-3:以下の方法により製造した。
[変性粘土の調製]
B-1と同様の方法により変性粘土化合物を調製した。
[重合触媒の調製]
B-1と同様の方法により重合触媒を調製した。
[B-3の製造]
2Lのオートクレーブにヘキサンを1.2L、20%トリイソブチルアルミニウムを1.0mL、[重合触媒の調製]で得られた触媒懸濁液を358mg(固形分43mg相当)加え、70℃に昇温後、分圧が0.80MPaになるようにエチレン/水素混合ガスを連続的に供給した(エチレン/水素混合ガス中の水素の濃度:2000ppm)。90分経過後に脱圧し、スラリーを濾別後、乾燥することで291gのポリマーを得た。このポリマーのMFRは1.0g/10分であり、密度は958kg/mであった。また、数平均分子量(Mn)は2.0×10、重量平均分子量は9.1×10、Mw/Mnは4.0、ポリマー中に含まれる長鎖分岐数は、主鎖1000炭素数あたり1.3個であった。
【0059】
B-3の基本特性評価結果を表2に示す。
【0060】
【表2】
【0061】
(3)直鎖状低密度ポリエチレン
C-1:以下の方法により製造した。
[変性粘土の調製]
水1,500mlに37%塩酸30mlおよびN,N-ジメチル-ベヘニルアミンを106g加え、N,N-ジメチル-ベヘニルアンモニウム塩酸塩水溶液を調製した。平均粒径7.8μmのモンモリロナイト300g(クニミネ工業製、商品名クニピアFをジェット粉砕機で粉砕することによって調製した)を上記塩酸塩水溶液に加え、6時間反応させた。反応終了後、反応溶液を濾過し、得られたケーキを6時間減圧乾燥し、変性粘土化合物370gを得た。
[重合触媒の調製]
窒素雰囲気下の20Lステンレス容器にヘプタン3.3L、トリエチルアルミニウムのヘプタン溶液(20重量%希釈品)をアルミニウム原子当たり1.13mol(0.9L)および上記で得られた変性粘土化合物50gを加えて1時間撹拌した。そこへジフェニルメチレン(4-フェニル-インデニル)(2,7-ジ-t-ブチル-9-フルオレニル)ジルコニウムジクロライドをジルコニウム原子当たり1.25mmol加えて12時間撹拌した.得られた懸濁系に脂肪族系飽和炭化水素溶媒(出光石油化学製、商品名IPソルベント2835)5.8Lを加えることにより、触媒を調製した。(ジルコニウム濃度0.125mmol/L)
[C-1の製造]
高温高圧重合用に装備された槽型反応器を用い、エチレンおよび1-ヘキセンを連続的に反応器に圧入して、全圧を90MPa、1-ヘキセン濃度を18mol%、水素濃度を5mol%になるように設定した。そして反応器を1,500rpmで撹拌し、上記により得られた重合触媒を反応器の供給口より連続的に供給し、平均温度を200℃に保ち重合反応をいった。得られた直鎖状低密度このポリマーのMFRは2.0g/10分であり、密度は907kg/mであった。C-1の基本特性評価結果を表3に示す。
【0062】
C-2:以下の方法により製造した。
[変性粘土の調製]
C-1と同様の方法により変性粘土化合物を調製した。
[重合触媒の調製]
C-1と同様の方法により重合触媒を調製した。
[C-2の製造]
高温高圧重合用に装備された槽型反応器を用い、エチレンおよび1-ヘキセンを連続的に反応器に圧入して、全圧を90MPa、1-ヘキセン濃度を23mol%、水素濃度を1mol%になるように設定した。そして反応器を1,500rpmで撹拌し、上記により得られた重合触媒を反応器の供給口より連続的に供給し、平均温度を200℃に保ち重合反応をいった。このポリマーのMFRは0.8g/10分、密度は900kg/mであった。C-2の基本特性評価結果を表3に示す。
【0063】
C-3:下記市販品を用いた。
【0064】
東ソー(株)製、(商品名)ニポロン-Z ZF220(MFR=2.0g/10分、密度=913kg/m)C-3の基本特性評価結果を表3に示す。
【0065】
C-4:以下の方法により製造した。
[変性粘土の調製]
C-1と同様の方法により変性粘土化合物を調製した。
[重合触媒の調製]
C-1と同様の方法により重合触媒を調製した。
[C-4の製造]
高温高圧重合用に装備された槽型反応器を用い、エチレンおよび1-ヘキセンを連続的に反応器に圧入して、全圧を90MPa、1-ヘキセン濃度を20mol%、水素濃度を15mol%になるように設定した。そして反応器を1,500rpmで撹拌し、上記により得られた重合触媒を反応器の供給口より連続的に供給し、平均温度を200℃に保ち重合反応をいった。このポリマーのMFRは12g/10分、密度は907kg/mであった。C-4の基本特性評価結果を表3に示す。
【0066】
【表3】
【0067】
<樹脂組成物>
上記の高密度ポリエチレン(A)、エチレン系重合体(B)および直鎖状低密度ポリエチレン(C)を実施例、比較例に記載の比率でドライブレンドを行った。
B.積層体および密封容器
実施例、比較例に用いた積層フィルムおよび医療容器は下記の方法により製造し、評価した。
【0068】
<積層フィルム>
三層水冷インフレーション成形機(プラコー社製)を用いて、シリンダ温度180℃、水槽温度15℃、引取速度6m/分でフィルム幅135mm、フィルム厚み100~250μmの三層フィルムを成形した。
【0069】
<光線透過率>
前記三層フィルムから、幅10mm×長さ50mmの試験片を切出し、紫外可視分光光度計(型式V-730、日本分光(株)製)を用いて、純水中で波長450nmにおける光線透過率を測定した。
【0070】
<水蒸気透過率>
前記三層フィルムから10cm×10cmのフィルムを切り出し、JIS K7129―1に準拠し、アルミマスクを貼り付け測定径10cmにて水蒸気透過率を測定した。
【0071】
<医療容器>
前記三層フィルムから、面積420cmの長方形のフィルムを切出し、表面に印字したのちに、一方の端をヒートシールして袋状にした後、塩化ナトリウム78.5gと純水を300ml充填し、ヘッドスペースを50ml設けてヒートシールして袋状容器を作製し、評価用の医療容器とした。
【0072】
<判読性>
袋状容器を、蒸気滅菌装置((株)日阪製作所製)を用いて121℃で20分間滅菌処理後、容器表面にシワが生じずフィルムに印字した文字が判読できたものを判読性が良好な容器とした。
【0073】
<落袋試験>
袋状容器を高さ1800mmから2回落とし、破袋の有無を確認し破袋しなかったものを良好な容器とした。
【0074】
<内容物の析出>
袋状容器を温度25℃、湿度65%にて40日間保管し、容器内に塩化ナトリウムが析出しなかったものを良好な容器とした。
【0075】
実施例1~5、比較例1~5
表4に記載の樹脂組成物を用いて、水冷インフレーション成形機により厚み100~250μmとなるように成形し、成形安定性および得られた三層フィルムの光線透過率、水蒸気透過率を評価した。次いで、得られた三層フィルムから袋状容器を作製して、判読性、落袋、内容物の析出の評価を行った。評価結果を表4、5に示す。表中、外層はC層、中間層はB層、内層はA層に相当する。
【0076】
【表4】
【0077】
【表5】