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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168234
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】液滴吐出装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/17 20060101AFI20241128BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
B41J2/17 103
B41J2/01 451
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023084727
(22)【出願日】2023-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹内 則康
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EB06
2C056EB29
2C056EB49
2C056EC06
2C056EC32
2C056FA13
2C056FA14
2C056JC17
(57)【要約】
【課題】経時的に低下するインクミストの回収力を補強可能とし、フィルタ使用期間を延長できる液滴吐出装置を提供することを目的とする。
【解決手段】媒体の搬送方向との交差方向に複数配列され、液滴の吐出をする吐出部と、吐出に起因して生ずる発生物を吸引するための負圧を発生させる負圧発生部と、吐出部に対する媒体の搬送方向下流側において、吐出部の配列方向に沿って開口する開口部と、開口部と負圧発生部とを連結する連結部と、開口部と負圧発生部の間において着脱自在に配置され、負圧により開口部から吸引された発生物を捕集する捕集部と、備え、負圧発生部は、捕集部が発生物を捕集した量の経時的変化に応じて負圧の強さを制御する、液滴吐出装置による。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送されてくる媒体に液滴の吐出をする液滴吐出装置であって、
前記媒体の搬送方向との交差方向に複数配列され、前記液滴の吐出をする吐出部と、
前記吐出に起因して生ずる発生物を吸引するための負圧を発生させる負圧発生部と、
前記吐出部に対する前記媒体の搬送方向下流側において、前記吐出部の配列方向に沿って開口する開口部と、
前記開口部と前記負圧発生部とを連結する連結部と、
前記開口部と前記負圧発生部の間において着脱自在に配置され、前記負圧により前記開口部から吸引された前記発生物を捕集する捕集部と、
備え、
前記負圧発生部は、前記捕集部による前記発生物の捕集量の経時的変化に応じて前記負圧の強さを制御する、
ことを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項2】
前記負圧発生部は、前記捕集量の累積値と所定の閾値との比較結果に応じて、前記負圧の強さを変更する、
請求項1に記載の液滴吐出装置。
【請求項3】
前記閾値は予め複数設定され、
前記負圧発生部は、前記累積値が前記閾値を超えるごとに、前記負圧の強さを段階的に強める、
請求項2に記載の液滴吐出装置。
【請求項4】
前記負圧発生部は、前記捕集部の交換した後の新規の捕集部を使用開始にするときに、前記捕集量を初期化する、
請求項2又は3に記載の液滴吐出装置。
【請求項5】
前記負圧発生部は、前記吐出部における累積吐出回数が、予め規定する所定の吐出閾値を超えたときに前記負圧の強さを強める、
請求項1又は2に記載の液滴吐出装置。
【請求項6】
前記吐出閾値は予め複数設定され、
前記負圧発生部は、前記吐出閾値を超えるごとに、前記負圧の強さを段階的に強める、
請求項5に記載の液滴吐出装置。
【請求項7】
前記負圧発生部は、前記捕集部の交換した後の新規の捕集部を使用開始にするときに、前記累積吐出回数を初期化する、
請求項5に記載の液滴吐出装置。
【請求項8】
前記負圧発生部は、前記吐出部によって前記液滴が吐出される前記媒体の搬送枚数が、予め規定する所定の搬送枚数閾値を超えたときに前記負圧の強さを強める、
請求項1に記載の液滴吐出装置。
【請求項9】
前記搬送枚数閾値は予め複数設定され、
前記負圧発生部は、前記搬送枚数閾値を超えるごとに、前記負圧の強さを段階的に強める、
請求項8に記載の液滴吐出装置。
【請求項10】
前記負圧発生部は、前記捕集部の交換した後の新規の捕集部を使用開始にするときに、前記搬送枚数を初期化する、
請求項8又は9に記載の液滴吐出装置。
【請求項11】
媒体に向けて液滴を吐出して画像を形成する画像形成装置であって、
前記媒体の搬送方向との交差方向に複数配列され、前記液滴の吐出をする吐出部と、
前記吐出に起因して生ずる発生物を吸引するための負圧を発生させる負圧発生部と、
前記吐出部に対する前記媒体の搬送方向下流側において、前記吐出部の配列方向に沿って開口する開口部と、
前記開口部と前記負圧発生部とを連結する連結部と、
前記開口部と前記負圧発生部の間において着脱自在に配置され、前記負圧により前記開口部から吸引された前記発生物を捕集する捕集部と、
備える液滴吐出部が、請求項1に記載の液滴吐出装置である、
ことを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液滴吐出装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
記録媒体に向けて液滴を吐出する液滴吐出装置が知られている。当該液滴吐出装置は、記録媒体に液滴を付着させて画像を形成するための画像形成装置として用いられることがある。
【0003】
液滴吐出装置のように、対象物(記録媒体)に向けて液滴を吐出したとき、この吐出動作に起因して対象物に付着しないで記録媒体表面上空に微細な液滴が舞うことがある。このような微細な液体を「インクミスト」と称する。インクミストは、吐出動作に起因して発生する発生物の一種である。インクミストが記録媒体に付着すると、汚れの原因になり、また、画像を形成した部分に付着すると画質低下の原因にもなるので、インクミストは回収する必要がある。また、インクミストの回収技術として、インクミストが舞う空間の空気を吸引し、いわゆる捕集部材としてのフィルタに空気を通過させる手法が知られている。
【0004】
フィルタを用いたインクミストの回収技術として、液滴を吐出するヘッド毎に異なるインクミストの発生量の差に応じて、ミスト回収のための風量を設定して、インクミストの捕集する捕集部材の使用期間を長くする技術が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の係る従来技術は、捕集部材(フィルタ)にインクミストを含む気流を通過させるため、フィルタに付着するインクミストの揮発成分が揮発して固着した場合、いわゆる、フィルタの「目詰まり」が生じて、気流を阻害する状態になる。この状態がある程度進行したときには、フィルタを交換する必要があるが、フィルタ交換時には液滴吐出装置の動作を停止する必要があるので、当該装置を用いた処理の生産性が低下する要因となる。
【0006】
また、揮発成分の固着が進行する段階において、気流の強さが経時的に弱くなるため、捕フィルタ交換までの間において、インクミストの回収効率が低下する要因となる。すなわち、従来技術には、装置を用いた処理の生産性低下の抑制及びインクミストの回収力の経時的な低下に対し課題がある。
【0007】
本発明は、経時的に低下するインクミストの回収力を補強可能とし、フィルタ使用期間を延長できる液滴吐出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、搬送されてくる媒体に液滴の吐出をする液滴吐出装置であって、前記媒体の搬送方向との交差方向に複数配列され、前記液滴の吐出をする吐出部と、前記吐出に起因して生ずる発生物を吸引するための負圧を発生させる負圧発生部と、前記吐出部に対する前記媒体の搬送方向下流側において、前記吐出部の配列方向に沿って開口する開口部と、前記開口部と前記負圧発生部とを連結する連結部と、前記開口部と前記負圧発生部の間において着脱自在に配置され、前記負圧により前記開口部から吸引された前記発生物を捕集する捕集部と、備え、前記負圧発生部は、前記捕集部が前記発生物を捕集した量の経時的変化に応じて前記負圧の強さを制御する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、経時的に低下するインクミストの回収力を補強可能とし、フィルタ使用期間を延長できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係る画像形成装置の実施形態の全体構成を例示する図。
図2】本実施形態に係るヘッドアレイの構成例を示す図。
図3】本実施形態に係るヘッドアレイの構成例を示す図。
図4】本発明に係る液滴吐出装置の実施形態の例の全体構成を示す図。
図5】本実施形態に係る液滴吐出装置において実行される制御処理フローの例。
図6】本実施形態に係る液滴吐出装置におけるファンの制御例を説明する図。
図7】本実施形態に係る液滴吐出装置において実行される制御処理フローの別例。
図8】本実施形態に係る液滴吐出装置におけるファンの制御例を説明する図。
図9】本発明に係る液滴吐出装置の実施形態の別例の全体構成を示す図。
図10】本実施形態に係る液滴吐出装置における制御機能構成例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[液滴吐出装置及び画像形成装置の全体構成]
以下、本発明に係る液滴吐出装置及び画像形成装置の実施形態に付いて図面を参照しながら説明する。図1は、画像形成装置の実施形態としてのインクジェットプリンタ1000の全体概要である。インクジェットプリンタ1000は、例えば、オンデマンド方式のライン走査型を採用した画像形成装置である。また、インクジェットプリンタ1000は、画像形成部210と、給紙部220と、レジスト調整部230と、乾燥部240と、記録媒体反転部250と、排紙部290と、を備える。
【0012】
まず、給紙部220に設けられている給紙スタック221に積載された記録媒体としての用紙W1を、エアー分離部222によって一枚ずつ持ち上げて、給紙部220から、画像形成部210に向けて搬送する。なお、本実施形態における用紙W1の搬送方向は、図1に示すX方向であって、後述するドラム211の回転方向に沿う方向に相当する。
【0013】
給紙部220から、搬送方向に向けて搬送された用紙W1は、レジスト調整部230に達すると、レジスト調整部230の内部に設けられたレジストローラ対231によって、搬送方向に対する傾きが補正される。
【0014】
レジストローラ対231において、搬送方向の傾きが補正された用紙W1は、搬送ローラ対214によって円筒形状のドラム211の表面に送られて、画像形成部210に向かって搬送される。
【0015】
ドラム211には、用紙W1の搬送方向先端部分を挟持する媒体挟持部を構成する記録媒体グリッパ212が複数設けられている。記録媒体グリッパ212に先端を挟持された用紙W1は、ドラム211の回転により、液滴吐出部100に対向する位置に搬送される。本発明に係る液滴吐出装置の実施形態に相当する液滴吐出部100の詳細は後述する。
【0016】
画像形成部210は、円筒形状のドラム211の回転方向における表面に沿って、複数のヘッドアレイ110が配置される。ヘッドアレイ110は、用紙W1に向けて液体インクを液滴として吐出する液滴吐出ヘッド102をドラム211の軸方向に複数配列して一体とした構造体である(図4参照)。ヘッドアレイ110は、図3に例示するように、ドラム211の外周に沿う方向において、複数個が配置されている。各ヘッドアレイ110は、カラー画像の形成に用いるカラー液体インクの、所定の色に対応するように構成されていて、一のヘッドアレイ110から、一のカラー液体インクが液滴として吐出されるように構成されている。
【0017】
ヘッドアレイ110は、ドラム211の外周面の曲がり具合に合わせて、放射状の所定の位置に配置される。具体的には、ヘッドアレイ110は、液滴の吐出方向がドラム211の外周面に対する直交方向となるように調整されているので、各ヘッドアレイ110の固定姿勢は、ドラム211の回転軸からの放射方向において、各々異なる角度を形成している。
【0018】
図1に戻るドラム211の外周面には、空吐出受け213が設けられていて、ヘッドアレイ110が用紙W1に対して液体インクを吐出しないときに、空吐出受け213に向けて吐出する。
【0019】
以上の構成を備えるドラム211及びヘッドアレイ110によって、所定のヘッドアレイ110の位置に用紙W1の所定の位置が到来するタイミングにおいて所定の液体インクを液滴として吐出することで、用紙W1に画像を形成する。画像形成後の用紙W1は、画像形成部210の搬送方向下流側に配置される乾燥部240に搬送される。
【0020】
乾燥部240は、乾燥ユニット241を備えていて、液体インクが付着している用紙W1の水分を蒸発させて乾燥させる機能を有する。乾燥部240には、記録媒体反転機構251を含む記録媒体反転部250が設けられる。用紙W1の表面と裏面の両方に画像形成を行う場合(両面印刷を行う場合)に、記録媒体反転部250によって、用紙W1を反転させる。そして、反転後の用紙W1を、記録媒体反転部250は、再度、画像形成部210へと搬送する。なお、両面印刷を行う場合も、ドラム211に用紙W1が到達する前に、画像形成部210内部に設けられたレジストローラ253によって用紙W1の搬送方向に対する傾きが補正される。
【0021】
乾燥を終えた用紙W1は、排紙部290に搬送されて、用紙W1の端部が整合された状態で積載される。
【0022】
液滴吐出部100における液滴吐出動作は、画像形成部210が備える画像形成制御部215が制御する。なお、画像形成制御部215は、インクジェットプリンタ1000の全体の動作を制御してもよい。また、給紙部220、レジスト調整部230、及び、乾燥部240は、個別に制御部を備えてもよい。そして、各々の制御部は、画像形成制御部215と連携して、インクジェットプリンタ1000の全体の動作を制御してもよい。
【0023】
なお、インクジェットプリンタ1000は、上記に説明する構成に限られない。具体的には、インクジェットプリンタ1000は、上記に説明する以外の装置を内部、又は、外部に備えてもよい。
【0024】
[ヘッドアレイ110の構成例]
図2は、ヘッドアレイ110の構成例を説明する図である。ヘッドアレイ110は、図2に示すに、複数のヘッド部111と、後述するミスト回収部112とを一体とした構造物である。一のヘッドアレイ110において、ヘッド部111に対する搬送方向下流側(図1にて示したドラム211の回転方向)にミスト回収部112が配置されている。
【0025】
また、一のヘッドアレイ110を構成する複数のヘッド部111は、図3に例示するように、複数の吐出ヘッド1110を備えている。吐出部としての吐出ヘッド1110は、用紙W1の搬送方向との交差方向であるドラム211の軸方向において、複数個が千鳥状に配置されている。すなわち、ヘッドアレイ110は、全体として、ドラム211の軸方向において長尺の形状を有している。
【0026】
図2及び図3に例示するように、ヘッドアレイ110を構成するミスト回収部112は、ヘッド部111が備える吐出ヘッド1110から、ドラム211の表面に向けて液体インクが吐出されたことに起因して発生するインクミストを回収可能とする。そのために、ミスト回収部112は、ヘッド部111に隣接するように配置されている。
【0027】
言い換えると、ヘッドアレイ110は、ドラム211の軸方向と直交する方向であって、ドラム211の外周に沿う方向において、ミスト回収部112を備えている。ミスト回収部112は、インクミストの回収に気流を利用する。
【0028】
図2に示す矢印は、ヘッドアレイ110からインクミストを回収するために、ミスト回収部112に設けられている開口を、ヘッド部111の吐出口近傍に配置し、この開口を流れるように気流を発生させたときの気流の方向を例示している。なお、以下の説明においても図面中に矢印を示しているが、いずれも、ヘッドアレイ110の吐出口近傍にて発生し浮遊しているインクミストの回収をするための大まかな気流を示している。本実施形態において、インクミストは気流の方向(図中の矢印が示す方向)に流れて回収(捕集)される。
【0029】
[ミスト回収部112の構成例]
次に、ミスト回収部112の構成について説明する。図4は、ヘッド部111とミスト回収部112を、吐出ヘッド1110が有する吐出口側から見た図である。図4に例示するように、ミスト回収部112が備える開口部としての吸入口601が、用紙W1の幅方向(ドラム211の軸方向)に沿うように形成されている。
【0030】
すなわち、吸入口601は、吐出ヘッド1110の配列方向に沿って形成されている開口に相当する。また、吸入口601は、連結部としてのダクト602の一部に形成された開口であって、ヘッド部111の近傍に配置されることで、ヘッド部111から吐出された液滴に起因して発生する発生物としてのインクミストを回収する気流を流入させる流入口となる。
【0031】
吸入口601から気体を流入させるための気流を発生させる発生源は、ダクト602の所定箇所において負圧を発生させる負圧発生部としてのファン603である。ファン603が発生させる負圧により、図4に例示するように、吸入口601からファン603への気流する気流が生じるので、この気流によってインクミストがファン603へと流動する。
【0032】
ファン603は、吸入口601からの気体の流入を発生させるための負圧を、ダクト602の内部に発生させる。なお、負圧を発生させる構成であれば、羽のない吸入器などでもよい。
【0033】
ファン603には、インクミストを捕集するための捕集部材としてのフィルタ604が設置されている。フィルタ604は、ダクト602とファン603の間に設置されていて、空気は通過させるがインクミストは捕集する、フィルタ604は、ダクト602及びファン603に対して着脱自在に設置されている。
【0034】
フィルタ604は、使用期間の経過によって、インクミストの捕集量が多くなることで、いわゆる目詰まりが発生し、気流の通過量が低下することがある。気流の通過量が低下すると吸入口601からのインクミストの回収(吸入)量も低下することになる。したがって、所定期間を使用したときや、所定の捕集量が一定量を超えたとき、及びこれらに相当するタイミングを推測した時点で、新たな物に交換される交換部材でもある。
【0035】
ダクト602は、ドラム211の軸方向(Y方向)において長尺な形状からなる吸入口601から連結して負圧発生部としてのファン603に至るように気流の通路を形成している。また、ダクト602は、吸入口601部分は通路としての幅が狭くファン603に近づく方向において通路が幅広くなるように形成されている。これによって、インクミストの吸入と流動をしやすい形状としている。なお、ダクト602の形状、寸法及び構成は、図4に例示したものでなくともよく、インクミストの回収に適する形状、寸法及び構成であればよい。
【0036】
[インクミスト回収制御の機能構成例]
次に、上記の液滴吐出部100の動作として実行されるインクミスト回収制御処理の実施形態について、説明する。インクミスト回収制御処理は、画像形成制御部215における制御ソフトウェアにより実現される。
【0037】
図10は、画像形成制御部215により実現される機能ブロックの例を示す図である。図10に示すように、制御部10は、画像形成制御部215が有するハードウェア資源を利用して実行される制御ソフトウェアによるコントローラ11と、同じくミスト回収制御部12と、操作表示部13と、を主に有する。
【0038】
コントローラ11は、いわゆる情報処理装置が備える演算処理機能、液滴吐出部100を構成するハードウェアに対する制御信号を通知するインターフェースなどを備える。
【0039】
ミスト回収制御部12は、画像形成制御部215において画像形成処理を制御したときに計測される処理回数を取得して記録するカウンタ121と、ファン603の出力を制御するファン制御122と、を少なくとも備える。なお、本実施形態における「処理回数」とは、画像形成を行った用紙W1の枚数の累積値(累積印刷枚数)、吐出ヘッド1110による液体インクの吐出回数の累積値(累積吐出回数)、及びフィルタ604の使用時間の累積値(累積使用時間)、の少なくともいずれかを含むものである。
【0040】
なお、用紙W1の枚数は、画像形成に伴い液滴吐出部100に対して搬送された搬送枚数にも相当する。すなわち、累積印刷枚数は、累積搬送枚数に相当する。
【0041】
操作表示部13は、図1等において図示はしていないが、例えば画像形成部210に設けられていて、動作パラメータの設定や、動作状況の表示を行うためのユーザインターフェースを提供するハードウェアを利用して実現される。
【0042】
ファン603が発生させる負圧が経時的変化(低下)することを補って、負圧の強さを維持するために、ファン603が発生させる気流の出力(出力値)を一定にする。ファン603の出力値を一定に維持するために、経時的に低下する負圧に低下度合いに応じて、経時的にファン603の出力値を一定するするための制御量を制御する。そこで、操作表示部13は、ファン603の出力値を一定に維持するための制御量を設定するユーザインターフェースとしての制御量設定部131を有する。また、操作表示部13は、ファン603による負圧を維持することが困難となるタイミングを処理回数に応じて判定し、フィルタ604の交換時期を報知するフィルタ交換要求部132を有する。また、操作表示部13は、フィルタ604を交換して新たに使用開始とするときに、それまでの累積処理回数を初期値に戻すカウンタリセット部133を有する。
【0043】
カウンタリセット部133において、フィルタ604の使用開始に対応して初期値に戻す操作が行われると、カウンタ121が保持している累積値をゼロにする。
【0044】
[第一実施形態]
次に、本発明に係る第一実施形態について、フローチャートなどを参照しながら説明する。図5に示すように、印刷処理(画像形成処理)が開始された後、処理回数としての吐出回数を累積加算する(S501)。
【0045】
次に、累積吐出回数が、累積的な使用量が所定の値を超えたことを示す第一吐出閾値としてのL1を超えたか否かを判定する(S502)。累積吐出回数がL1を超えていなければ(S502:No)、ファン603の駆動量の設定を駆動設定値Q0とする(S506)。続いて、設定された駆動設定値Q0に基づいてファン603を駆動し(S509)、印刷(画像形成)が終了しなければ(S510:No)、処理をS501へと戻す。印刷(画像形成)が終了すれば(S510:Yes)、ファン603を停止して、処理を終了する。
【0046】
S502において、累積吐出回数がL1を超えていて(S502:Yes)、S503において第二吐出閾値としてのL2を超えていなければ(S503:No)、ファン603の駆動量の設定を駆動設定値Q1とする(S507)。続いて、設定された駆動設定値Q1に基づいてファン603を駆動し(S509)、印刷(画像形成)が終了しなければ(S510:No)、処理をS501へと戻す。印刷(画像形成)が終了すれば(S510:Yes)、ファン603を停止して、処理を終了する。
【0047】
S502において累積吐出回数がL1を超えていて(S502:Yes)、S503においてL2を超えていて(S503:Yes)、第三吐出閾値としてのL3を超えていなければ(S504:No)、ファン603の駆動量の設定を駆動設定値Q2とする(S508)。続いて、設定された駆動設定値Q1に基づいてファン603を駆動し(S509)、印刷(画像形成)が終了しなければ(S510:No)、処理をS501へと戻す。印刷(画像形成)が終了すれば(S510:Yes)、ファン603を停止して、処理を終了する。
【0048】
また、S502において累積吐出回数がL1を超えていて(S502:Yes)、S503においてL2を超えていて(S503:Yes)、S504においてL4を超えているいとき(S503:Yes)、フォルタ交換要求を報知する(S505)。その後、処理を終了する。
【0049】
図6は、上記の処理における、累積吐出回数と、ファン603が発生させる風量との関係を説明するグラフである。図6に示すように、累積吐出回数は経時的に増加するパラメータの一種であって、ファン603が発生させる風量は経時的に低下する。そこで、累積吐出回数に対する閾値を設定し、第一吐出閾値としてのL1を超えるとき、ファン603の出力を初期の状態に戻すために、ファン603の出力を上昇させる駆動量を設定する。その結果、累積吐出回数L1を超える時点でファン603の出力は、初期値に戻るので、インクミストの回収力は補強されて、当初の強さが維持される。すなわち、ファン603の駆動量は、捕集量の累積値と、所定の閾値の一つである、累積吐出回数L1との比較結果に応じて設定される。これによって、ファン603が発生させる負圧の強さを変更することができる。なお、累積の吐出回数とは異なる値を所定の閾値として用いてもよい。
【0050】
累積吐出回数がL3を超えたときは、ファン603の駆動量を増加させてもインクミストの回収力の回復は期待できない状態になっていると仮定して、フィルタ604の交換を促す情報を出力する。フィルタ604が交換されたとき、カウンタリセット部133によって、累積回数を初期化(ゼロ)にする。
【0051】
なお、ファン603の駆動量は、例えば、出力Duty値である。
【0052】
ミスト回収部112は、各色の液体インクを吐出するヘッド部111に対応して設けられているので、累積吐出回数も、液体インクの色毎に判定される。
【0053】
なお、本実施形態では、累積吐出回数の判定によるファン603の駆動量の切り替えを三段階にしているが、これに限定するものではない。インクミストの回収量の経時的な変化に応じて切替タイミングを設定できればよいので、三段階よりも少ない二段階でもよく、又は四段階以上であってもよい。
【0054】
[第二実施形態]
次に、本発明に係る第二実施形態について、フローチャートなどを参照しながら説明する。図7に示すように、印刷処理(画像形成処理)が開始された後、処理回数としての印刷ページ数を累積加算する(S701)。
【0055】
次に、累積搬送枚数に相当する累積印刷ページ数Pnが、累積的な使用量が所定の値を超えたことを示す第一印刷閾値(第一搬送枚数閾値)としてのP1を超えたか否かを判定する(S702)。累積印刷ページ数PnがP1を超えていなければ(S702:No)、ファン603の駆動量の設定を駆動設定値Q0とする(S706)。続いて、設定された駆動設定値Q0に基づいてファン603を駆動し(S709)、印刷(画像形成)が終了しなければ(S710:No)、処理をS701へと戻す。印刷(画像形成)が終了すれば(S710:Yes)、ファン603を停止して、処理を終了する。
【0056】
S702において、累積印刷ページ数PnがP1を超えていて(S702:Yes)、S703において第二印刷閾値(第二搬送枚数閾値)としてのP2を超えていなければ(S703:No)、ファン603の駆動量の設定を駆動設定値Q1とする(S707)。続いて、設定された駆動設定値Q1に基づいてファン603を駆動し(S709)、印刷(画像形成)が終了しなければ(S710:No)、処理をS701へと戻す。印刷(画像形成)が終了すれば(S710:Yes)、ファン603を停止して、処理を終了する。
【0057】
S702において累積印刷ページ数PnがP1を超えていて(S702:Yes)、S703においてP2を超えていて(S703:Yes)、第三印刷閾値(第三搬送枚数閾値)としてのP3を超えていなければ(S704:No)、ファン603の駆動量の設定を駆動設定値Q2とする(S708)。続いて、設定された駆動設定値Q1に基づいてファン603を駆動し(S709)、印刷(画像形成)が終了しなければ(S710:No)、処理をS701へと戻す。印刷(画像形成)が終了すれば(S710:Yes)、ファン603を停止して、処理を終了する。
【0058】
また、S702において累積印刷ページ数PnがP1を超えていて(S702:Yes)、S703においてP2を超えていて(S703:Yes)、S704においてL4を超えているいとき(S703:Yes)、フォルタ交換要求を報知する(S705)。その後、処理を終了する。
【0059】
図8は、上記の処理における、累積印刷ページ数と、ファン603が発生させる風量との関係を説明するグラフである。図8に示すように、累積吐出回数は経時的に増加するパラメータの一種であって、ファン603が発生させる風量は経時的に低下する。そこで、累積印刷ページ数に対する閾値を設定し、第一印刷閾値としてのP1を超えるとき、ファン603の出力を初期の状態に戻すために、ファン603の出力を上昇させる駆動量を設定する。その結果、累積吐出回数L1を超える時点でファン603の出力は、初期値に戻るので、インクミストの回収力は維持される。
【0060】
累積印刷ページ数がP3を超えたときは、ファン603の駆動量を増加させてもインクミストの回収力の回復は期待できない状態になっていると仮定して、フィルタ604の交換を促す情報を出力する。フィルタ604が交換されたとき、カウンタリセット部133によって、累積回数を初期化(ゼロ)にする。
【0061】
なお、ファン603の駆動量は、例えば、出力Duty値である。
【0062】
なお、本実施形態では、累積印刷ページ数の判定によるファン603の駆動量の切り替えを三段階にしているが、これに限定するものではない。インクミストの回収量の経時的な変化に応じて切替タイミングを設定できればよいので、三段階よりも少ない二段階でもよく、又は四段階以上であってもよい。
【0063】
[その他]
液滴は、インク以外の種類でもよい。例えば、液滴は、無色の液体等でもよい。すなわち、液滴吐出装置は、インク以外の液滴を用いて、画像形成以外の処理を行ってもよい。
【0064】
発生物は、ミスト以外を含んでもよい。例えば、発生物は、粉末等でもよい。
【0065】
ファン603の出力(駆動量)を切り替えるタイミングを判定するための指標となる情報は、実質的にインクミストの発生量を表すものであれば、第一実施形態及び第二実施形態において提示した情報に限定されるものではない。例えば、風量変化やフィルタ重量の変化をファン603の駆動量の切り替るキッカケとしてもよい。同様に、フィルタ604を交換するキッカケとしてもよい。なお、風量変化やフィルタ重量変化をファン603の駆動量制御に用いる場合は、ファン603の風量を検知するセンサ及びフィルタ604の重量を検知する重量センサを搭載することとする。
【0066】
なお、上記において説明をしたファン603の駆動量の切り替え制御は、吐出された液滴が用紙W1に着弾するときの着弾位置の精度に与える影響が許容範囲内になるように設定される。すなわち、ファン603の駆動量に応じて液滴が用紙W1に着弾するまでの空間の気流が変化することになり、この気流の変化は液滴の着弾位置に影響を与える要素ではある。この点を考慮した範囲内において、ファン603の駆動量を制御することで、画像品質への影響を抑制できる。
【0067】
また、上記実施形態によって、フィルタ604の経時的な変化に対応してファン603の負圧が低下することを補強することができる。その結果、当該制御を実行し無い従来例と比較すると、上記実施形態のような段階的な駆動量の切り替え制御を経時的に繰り返すことで、フィルタ604の交換使用耐用期間を2倍~3倍に延長することができる。
【0068】
[第三実施形態]
次に本発明に係る液滴吐出装置及び画像形成装置の第三実施形態に関し、図9を用いて説明する。図9は、本実施形態に係るインクジェットプリンタ1000aの側面図である。
【0069】
インクジェットプリンタ1000aは、例えば建築物の壁面W2を液滴の吐出対象物ととする。壁面W2に対して液滴を吐出するヘッドアレイ110aが、移動機構700によって移動しながら液滴を吐出することで、画像を形成する。
【0070】
移動機構700は、X軸レール701、Y軸レール702、Z軸レール703により構成されている。ヘッドアレイ110aは、壁面W2に対して所定の距離を離隔した位置においてキャリッジ704に搭載された状態で維持される。キャリッジ704は、Z軸レール703に保持されていて、Z方向駆動部703mによりキャリッジ704の壁面W2との距離を変化させる。
【0071】
また、Z軸レール703は、X軸レール701において、X方向駆動部701mによって、図9に示すX方向に移動可能に支持されている。そして、X軸レール701は、Y軸レール702において、Y方向駆動部702m(図9において不図示)によって、図9に示すY方向に移動可能に支持されている。
【0072】
上記ヘッドアレイ110aにも、第一実施形態及び第二実施形態において説明をしたミスト回収部112が搭載されていて、制御部10aによってファン603の駆動量を制御することで、壁面W2に対する液滴吐出に応じて発生するインクミストを効果的に回収することができる。
【0073】
なお、本発明は、上記に例示する各実施形態に限定されない。したがって、本発明は、技術的な要旨を逸脱しない範囲で、構成要素の追加、又は、変形が可能である。ゆえに、特許請求の範囲に記載された技術思想に含まれる技術的事項のすべてが本発明の対象となる。なお、上記に例示する実施形態は、実施において好適な具体例である。そして、当業者であれば、開示した内容から様々な変形例を実現で可能であって、このような変形例は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲に含まれる。
【0074】
[本発明の態様]
本発明の内容は、例えば、以下のとおりである。
<1>
搬送されてくる媒体に液滴の吐出をする液滴吐出装置であって、
前記媒体の搬送方向との交差方向に複数配列され、前記液滴の吐出をする吐出部と、
前記吐出に起因して生ずる発生物を吸引するための負圧を発生させる負圧発生部と、
前記吐出部に対する前記媒体の搬送方向下流側において、前記吐出部の配列方向に沿って開口する開口部と、
前記開口部と前記負圧発生部とを連結する連結部と、
前記開口部と前記負圧発生部の間において着脱自在に配置され、前記負圧により前記開口部から吸引された前記発生物を捕集する捕集部と、
備え、
前記負圧発生部は、前記捕集部が前記発生物を捕集した量の経時的変化に応じて前記負圧の強さを制御する、
ことを特徴とする液滴吐出装置である。
<2>
前記負圧発生部は、前記捕集部の累積的な使用量が所定の量を超えたことを判定するための閾値を用いて、前記負圧の強さを変更する、
前記<1>に記載の液滴吐出装置である。
<3>
前記閾値は予め複数設定され、
前記負圧発生部は、前記閾値を超えるごとに、前記負圧の強さを段階的に強める、
前記<2>に記載の液滴吐出装置である。
<4>
前記負圧発生部は、前記捕集部の交換した後の新規の捕集部を使用開始にするときに、前記使用量を初期化する、
前記<2>又は前記<3>に記載の液滴吐出装置である。
<5>
前記負圧発生部は、前記吐出部における累積吐出回数が、予め規定する所定の吐出閾値を超えたときに前記負圧の強さを強める、
前記<1>又は前記<2>に記載の液滴吐出装置である。
<6>
前記吐出閾値は予め複数設定され、
前記負圧発生部は、前記吐出閾値を超えるごとに、前記負圧の強さを段階的に強める、
前記<5>に記載の液滴吐出装置である。
<7>
前記負圧発生部は、前記捕集部の交換した後の新規の捕集部を使用開始にするときに、前記累積吐出回数を初期化する、
前記<5>又は前記<6>に記載の液滴吐出装置である。
<8>
前記負圧発生部は、前記吐出部によって前記液滴が吐出される前記媒体の搬送枚数が、予め規定する所定の搬送枚数閾値を超えたときに前記負圧の強さを強める、
前記<1>に記載の液滴吐出装置である。
<9>
前記搬送枚数閾値は予め複数設定され、
前記負圧発生部は、前記搬送枚数閾値を超えるごとに、前記負圧の強さを段階的に強める、
前記<8>に記載の液滴吐出装置である。
<10>
前記負圧発生部は、前記捕集部の交換した後の新規の捕集部を使用開始にするときに、前記搬送枚数を初期化する、
前記<8>又は前記<9>に記載の液滴吐出装置である。
<11>
媒体に向けて液滴を吐出して画像を形成する画像形成装置であって、
前記媒体の搬送方向との交差方向に複数配列され、前記液滴の吐出をする吐出部と、
前記吐出に起因して生ずる発生物を吸引するための負圧を発生させる負圧発生部と、
前記吐出部に対する前記媒体の搬送方向下流側において、前記吐出部の配列方向に沿って開口する開口部と、
前記開口部と前記負圧発生部とを連結する連結部と、
前記開口部と前記負圧発生部の間において着脱自在に配置され、前記負圧により前記開口部から吸引された前記発生物を捕集する捕集部と、
備える液滴吐出部が、前記<1>乃至前記<10>のいずれか一つに記載の液滴吐出装置である、
ことを特徴とする画像形成装置である。
【符号の説明】
【0075】
10 :制御部
11 :コントローラ
12 :ミスト回収制御部
13 :操作表示部
100 :液滴吐出部
102 :液滴吐出ヘッド
110 :ヘッドアレイ
111 :ヘッド部
112 :ミスト回収部
121 :カウンタ
122 :ファン制御
131 :制御量設定部
132 :フィルタ交換要求部
133 :カウンタリセット部
210 :画像形成部
215 :画像形成制御部
601 :吸入口
602 :ダクト
603 :ファン
604 :フィルタ
1000 :インクジェットプリンタ
1110 :吐出ヘッド
【先行技術文献】
【特許文献】
【0076】
【特許文献1】特開2020-138329号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10