(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168264
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】表面形状測定装置、および表面形状測定方法
(51)【国際特許分類】
G01B 11/25 20060101AFI20241128BHJP
【FI】
G01B11/25 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023084778
(22)【出願日】2023-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(71)【出願人】
【識別番号】507050724
【氏名又は名称】バイスリープロジェクツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】幸松 孝治
(72)【発明者】
【氏名】清水 英仁
(72)【発明者】
【氏名】菅野 直
(72)【発明者】
【氏名】備前 克英
【テーマコード(参考)】
2F065
【Fターム(参考)】
2F065AA20
2F065AA53
2F065BB25
2F065FF04
2F065HH06
2F065HH07
2F065JJ03
2F065JJ26
2F065LL04
2F065LL59
2F065QQ25
(57)【要約】
【課題】小型化が可能な鏡面反射面の表面形状測定装置を提供する。
【解決手段】本表面形状測定装置は、鏡面反射面の表面形状測定装置であって、前記鏡面反射面に第1パターン光を照射する照射部と、前記照射部から照射された前記第1パターン光が前記鏡面反射面により反射された後、前記照射部を透過した光である第2パターン光を撮像する撮像部と、前記撮像部による撮像画像において、前記第2パターン光の所定位置からの位置ずれ量を取得し、該位置ずれ量から得られる前記鏡面反射面の表面形状に関する情報を出力する処理部と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鏡面反射面の表面形状測定装置であって、
前記鏡面反射面に第1パターン光を照射する照射部と、
前記照射部から照射された前記第1パターン光が前記鏡面反射面により反射された後、前記照射部を透過した光である第2パターン光を撮像する撮像部と、
前記撮像部による撮像画像において、前記第2パターン光の所定位置からの位置ずれ量を取得し、該位置ずれ量から得られる前記鏡面反射面の表面形状に関する情報を出力する処理部と、を有する、表面形状測定装置。
【請求項2】
前記照射部は、
1以上の光源と、
光入射面と第1主面と第2主面とを有し、前記1以上の光源から発せられ、前記光入射面を通って入射される光を導光する導光板と、
前記導光板の内部または表面のどちらか一方に配置され、前記導光板により導光された光が入射すると蛍光を発する発光部と、を有し、
前記発光部から発せられる蛍光を含んで形成される前記第1パターン光を照射する、請求項1に記載の表面形状測定装置。
【請求項3】
前記照射部は、前記導光板に配置された前記発光部の前記撮像部が位置する側に遮光部を有する、請求項2に記載の表面形状測定装置。
【請求項4】
平面視における前記発光部および前記遮光部のそれぞれの形状は円形であり、
前記遮光部の直径をAとし、前記発光部の直径をBとすると、1.05×B≦A≦1.15×Bを満足する、請求項3に記載の表面形状測定装置。
【請求項5】
前記第1パターン光に含まれるパターンは、ドットパターンである、請求項1または請求項2に記載の表面形状測定装置。
【請求項6】
前記照射部と前記撮像部との間に配置されるテレセントリックレンズを有し、
前記撮像部は、前記鏡面反射面により反射された後、前記照射部を透過して、さらに前記テレセントリックレンズを透過した前記第2パターン光を撮像する、請求項1または請求項2に記載の表面形状測定装置。
【請求項7】
鏡面反射面の表面形状測定装置による表面形状測定方法であって、
前記表面形状測定装置が、
照射部により、前記鏡面反射面に第1パターン光を照射し、
撮像部により、前記照射部から照射された前記第1パターン光が前記鏡面反射面により反射された後、前記照射部を透過した光である第2パターン光を撮像し、
処理部により、前記撮像部による撮像画像において、前記第2パターン光の所定位置からの位置ずれ量を取得し、該位置ずれ量から得られる前記鏡面反射面の表面形状に関する情報を出力する、表面形状測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、表面形状測定装置、および表面形状測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、ターゲットの表面に表示されたパターンを鏡面反射面で反射させ、反射光の画像を記録し、反射光の画像とパターンとの位置関係に基づき、鏡面反射面の形状を測定する装置が開示されている。また、特許文献2には、鏡面に近い対象物表面を検査するために、照明ユニットからの光をカメラと対象物表面の光路間で分割するハーフミラーを含み、ハーフミラーを透過した対象物表面からの反射光をカメラで撮影して検査する装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-197391号公報
【特許文献2】特開2004-354283号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の装置では、被測定面である鏡面反射面に斜め方向かパターンを照明し、照明光が被測定面で反射された光により得られる画像を記録するため、装置が大型化する場合がある。特許文献2に記載の装置では、鏡面反射面とカメラ等の撮像部との間にハーフミラーを用いた分波および合波光学系を配置するため、装置が大型化する場合がある。
【0005】
本開示は、小型化が可能な鏡面反射面の表面形状測定装置およびこれを用いた表面形状測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一実施形態に係る表面形状測定装置は、鏡面反射面の表面形状測定装置であって、前記鏡面反射面に第1パターン光を照射する照射部と、前記照射部から照射された前記第1パターン光が前記鏡面反射面により反射された後、前記照射部を透過した光である第2パターン光を撮像する撮像部と、前記撮像部による撮像画像において、前記第2パターン光の所定位置からの位置ずれ量を取得し、該位置ずれ量から得られる前記鏡面反射面の表面形状に関する情報を出力する処理部と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
本開示の実施形態によれば、小型化が可能な鏡面反射面の表面形状測定装置およびこれを用いた表面形状測定方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係る表面形状測定装置の全体構成を模式的に示す図である。
【
図2】実施形態に係る照射部の構成を模式的に示す図である。
【
図3】テレセントリックレンズの画角を模式的に示す図である。
【
図4】非テレセントリックレンズの画角を模式的に示す図である。
【
図5】被写体距離が異なる複数の被写体の配置を示す図である。
【
図6】テレセントリックレンズを用いた
図5の被写体の撮像画像を示す図である。
【
図7】非テレセントリックレンズを用いた
図5の被写体の撮像画像を示す図である。
【
図8】テレセントリックレンズ使用時の照射部を模式的に示す図である。
【
図9】非テレセントリックレンズ使用時の照射部を模式的に示す図である。
【
図10】実施形態に係る処理部のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図11】実施形態に係る処理部の機能構成を示すブロック図である。
【
図12】実施形態に係る第2パターン光の撮像画像を示す図である。
【
図14】実施形態に係る第2パターン光の位置ずれ量を模式的に説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本開示の実施形態について詳細に説明する。各図面において、同一構成要素には同一符号を付与し、重複した説明を適宜省略する。
【0010】
以下に示す実施形態は、本開示の技術思想を具体化するための表面形状測定装置、および表面形状測定方法を例示するものであって、本開示を以下に示す実施形態に限定するものではない。以下に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特定的な記載がない限り、本開示の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、例示することを意図したものである。また図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため、誇張している場合がある。
【0011】
<表面形状測定装置100の構成例>
図1は、実施形態に係る表面形状測定装置100の全体構成の一例を模式的に示す図である。表面形状測定装置100は、鏡面反射面Sの表面形状を測定する装置である。鏡面反射面Sは、表面形状測定装置100の被測定物に対応する。
図1に示すように、表面形状測定装置100は、照射部1と、撮像部2と、レンズ3と、処理部4と、を有する。
【0012】
照射部1は、鏡面反射面Sに第1パターン光L1を照射する。撮像部2は、照射部1から照射された第1パターン光L1が鏡面反射面Sにより反射された後、照射部1を透過した光である第2パターン光L2を撮像する。
【0013】
より詳しくは、第1パターン光L1は、鏡面反射面Sの法線S0にほぼ沿う方向から鏡面反射面Sに照射される。照射部1からの第1パターン光L1は、鏡面反射面Sにより、鏡面反射面Sの法線S0にほぼ沿う方向に反射される。第2パターン光L2は、照射部1から照射された第1パターン光L1が鏡面反射面Sにより反射された後、照射部1を透過した光である。第2パターン光L2は、照射部1を透過した後、さらにレンズ3を透過して撮像部2の撮像面21に到達する。撮像部2は、撮像面21に到達した第2パターン光L2を撮像する。
【0014】
レンズ3は、照射部1と撮像部2との間に配置される。鏡胴31は、レンズ3を内側に収容する。レンズ3は、第2パターン光L2を撮像部2の撮像面21上にほぼ結像させる。レンズ3を構成するレンズの数、配置、レンズ面の数、レンズ面の形状およびレンズの材料等は、表面形状測定装置100の仕様等に応じて適宜選択できる。
【0015】
レンズ3は、テレセントリックレンズであってよい。このテレセントリックレンズについては、
図6~12を参照して別途詳述する。撮像部2は、鏡面反射面Sにより反射された後、レンズ3を透過した第2パターン光L2を撮像することができる。
【0016】
処理部4は、撮像部2から撮像画像を入力する。処理部4は、撮像部2による撮像画像において、第2パターン光L2の所定位置からの位置ずれ量を取得し、該位置ずれ量から得られる鏡面反射面Sの表面形状に関する情報を出力する。
【0017】
ここで、表面形状測定装置100による鏡面反射面Sの表面形状に関する情報の取得方法について説明する。照射された第1パターン光L1が理想的な平坦面である鏡面反射面Sで反射された第2パターン光L2に含まれるパターンは、第1パターン光L1に含まれるパターンとほぼ同じとなる。一方、照射された第1パターン光L1が理想的な平坦面に対して形状誤差を有する鏡面反射面Sで反射された第2パターン光L2に含まれるパターンは、第1パターン光L1に含まれるパターンに対して位置ずれし、歪んだパターンとなる。第2パターン光L2の第1パターン光L1に対する位置ずれは、鏡面反射面Sにおける理想的な平坦面に対する形状誤差に対応したものとなる。
【0018】
表面形状測定装置100は、撮像部2による第2パターン光L2の撮像画像において、第1パターン光L1に含まれるパターンに対する第2パターン光L2に含まれるパターンの歪み量、すなわち第1パターン光L1に対する第2パターン光L2の位置ずれ量を取得する。表面形状測定装置100は、第1パターン光L1に対する第2パターン光L2の位置ずれ量に基づき、理想的な平坦面に対する鏡面反射面Sのずれとしての鏡面反射面Sの表面形状に関する情報を取得する。表面形状測定装置100は、取得した鏡面反射面Sの表面形状に関する情報を、鏡面反射面Sの表面形状測定結果として出力することができる。
【0019】
第2パターン光L2の位置ずれの基準となる第1パターン光L1の位置は、「所定位置」に対応する。表面形状測定装置100は、測定対象である鏡面反射面Sの測定に先立ち、理想的な平坦面を有する基準の鏡面反射面で反射された第2パターン光L2を、撮像部2により撮像することで、第1パターン光L1の撮像画像に対応する基準撮像画像を取得する。基準撮像画像に含まれるパターンの位置は、第1パターン光L1の位置に対応し、かつ「所定位置」に対応する。表面形状測定装置100は、測定対象である鏡面反射面Sで反射された第2パターン光L2の撮像部2による撮像画像に含まれるパターンと、基準撮像画像に含まれるパターンと、を比較することで、第2パターン光L2の所定位置からの位置ずれ量を取得できる。
【0020】
処理部4は、鏡面反射面Sの表面形状の測定結果を外部装置に出力する。外部装置には、外部PC(Personal Computer)、表示装置、記憶装置、ネットワークを介して外部サーバ等と通信する通信装置等が挙げられる。
【0021】
ここで、例えば、鏡面反射面Sにより反射され、照射部1を透過しない第2パターン光L2を用いる表面形状測定装置では、照射部および撮像部が鏡面反射面Sの法線S0に対して傾いた方向、すなわち斜め方向に配置するため、装置が大型化する場合がある。或いは、例えば、鏡面反射面と撮像部との間にハーフミラーを用いた分波および合波光学系を配置する表面形状測定装置では、装置が大型化する場合がある。
【0022】
本実施形態では、表面形状測定装置100は、照射部1から照射された第1パターン光L1が鏡面反射面Sにより反射された後、照射部1を透過した光である第2パターン光L2を撮像部2により撮像する。表面形状測定装置100は、この撮像画像に基づいて、鏡面反射面Sの表面形状を測定する。本実施形態では、鏡面反射面Sの法線S0に対して傾いた方向に照射部1および撮像部2を配置しないため、照射部および撮像部を鏡面反射面Sの法線S0に対して傾いた方向に配置する場合と比較して小型化可能な表面形状測定装置100を提供することができる。また、本実施形態では、鏡面反射面Sと撮像部2との間にハーフミラーを用いた分波および合波光学系を配置しないため、鏡面反射面Sと撮像部2との間にハーフミラーを用いた分波および合波光学系を配置する場合と比較して小型化可能な表面形状測定装置100を提供できる。表面形状測定装置100を小型化する観点では、照射部1および撮像部2は、鏡面反射面Sの法線S0上に配置されることが好ましい。また、表面形状測定装置100を小型化する観点では、照射部1の中心10および撮像部2の中心20は、鏡面反射面Sの法線S0上に配置されることがよりいっそう好ましい。なお、本実施形態では、レンズ3を必ずしも有さなくてよい。レンズ3を有さない場合にも上記の効果が得られる。
【0023】
<照射部1の構成例>
図2は、照射部1の詳細構成の一例を模式的に示す図である。
図2示すように、照射部1は、光源12と、導光板13と、発光部14と、遮光部15と、を有する。
【0024】
光源12は、LED(Light Emitting Diode)等であってよい。光源12は、光源12から発せられた光が導光板13の内部に入射可能な位置に配置される。照射部1は、導光板13の外側に1以上の光源12を有してよい。
図2に示す例では、照射部1は、導光板13の両側に配置された一対の光源12を有する。
【0025】
導光板13は、光入射面131と、第1主面132と、第2主面133と、を有する。光入射面131は、第1主面132および第2主面133のそれぞれに対して交差する。第1主面132および第2主面133は略平行である。なお、「略平行」は、平行から10度以下のずれを含んでもよいことを意味する。
【0026】
導光板13は、光源12から発せられ、光入射面131を通って内部に入射される光を導光する。導光板13は、入射される光を第1主面132および第2主面133のそれぞれで全反射させながら導光することができる。例えば、光源12には白色の光を発するLEDを用いることができる。
【0027】
発光部14は、導光板13の表面に配置され、導光板13により導光された光が入射すると蛍光を発する部分である。発光部14は、導光板13の表面ではなく導光板13の内部に配置されてもよい。例えば、導光板13の表面に発光部14を印刷することにより、導光板13の表面に発光部14を配置することができる。
【0028】
照射部1は、発光部14から発せられる第1パターン光L1を鏡面反射面Sに照射することができる。
【0029】
第1パターンL1に含まれるパターンは、ドットパターンであってよい。照射部1は、それぞれがドットを形成するように複数の発光部14を導光板13に配置することで、複数の発光部14のそれぞれから発せされる蛍光を用いて、ドットパターンを含む第1パターン光L1を鏡面反射面Sに照射できる。換言すると、ドット状の発光部14は、導光板13の内部を導光される光が入射することで蛍光を発し、鏡面反射面Sの表面に輝点を映し出すことができる。第2パターンL2の所定位置からの位置ずれ量は、第2パターンL2に含まれる複数のドットパターンごとに得られる。表面形状測定装置100は、第1パターン光L1にドットパターンを用いることで、第2パターン光L2のドットの所定位置からの位置ずれ量を画像処理により算出しやすくなる。
【0030】
遮光部15は、導光板13に配置された発光部14の撮像部2が位置する側に配置される。例えば、発光部14から発せられた蛍光が鏡面反射面Sを経ずに撮像部2に直接入射すると、鏡面反射面Sが反映されていない測定結果が得られるため、測定誤差が生じる。表面形状測定装置100は、発光部14から発せられた蛍光を遮光部15で遮光することにより、該蛍光が撮像部2に直接入射することを回避し、測定誤差を低減することができる。
【0031】
複数の遮光部15は、導光板13の表面において、ドット状に配置された複数の発光部14に合わせてドット状に配置される。複数の遮光部15は、複数の発光部14と一対一で対応する。遮光性を高くする観点では、個々の遮光部15の面積は、個々の発光部14の面積よりも大きいことが好ましい。
【0032】
本実施形態では、平面視における発光部14および遮光部15のそれぞれの形状は円形であり、遮光部15の直径をAとし、発光部14の直径をBとすると、1.05×B≦A≦1.15×Bを満足してもよい。表面形状測定装置100は、上記条件を満足することにより、発光部14から発せられた光が撮像部2に直接入射することを好適に回避し、測定誤差を低減することができる。
【0033】
また、鏡面反射面Sからの反射光の大きさがドット状の発光部14の大きさとほぼ一致すると、この反射光はドット状の遮光部15により遮光されるため、撮像部2によりドットのパターンを撮像できなくなる。しかしながら、表面形状測定装置100では、鏡面反射面Sからの反射光は、鏡面反射面Sへの照射光に対してわずかに広がりを有する。このため、反射光はドット状の遮光部15の周囲から漏れること、或いはドット状の遮光部15の縁で回折されることで、撮像部2の撮像面21に入射可能である。従って、表面形状測定装置100は、鏡面反射面Sからの反射光の大きさがドット状の発光部14の大きさとほぼ一致する場合にも、鏡面反射面Sの表面形状を測定することができる。
【0034】
<テレセントリックレンズの作用>
図3~9を参照して、レンズ3がテレセントリックレンズである場合の作用について説明する。
図3は、テレセントリックレンズの画角を模式的に示す図である。
図4は、非テレセントリックレンズの画角を模式的に示す図である。非テレセントリックレンズは、テレセントリックレンズではないレンズを意味する。
図5は、被写体距離が異なる複数の被写体の配置を示す図である。
図6は、テレセントリックレンズを用いた
図5の被写体の撮像画像を示す図である。
図7は、非テレセントリックレンズを用いた
図5の被写体の撮像画像を示す図である。
図8は、テレセントリックレンズ使用時の照射部を模式的に示す図である。
図9は、非テレセントリックレンズ使用時の照射部を模式的に示す図である。
【0035】
本実施形態では、照射部1、撮像部2および鏡面反射面Sそれぞれの間における距離変動が表面形状測定に与える影響を低減する観点では、レンズ3にテレセントリックレンズを用いることが好ましい。
【0036】
テレセントリックレンズであるレンズ3は、
図3に示すように画角が0度である。このため、表面形状測定装置において、
図4に示す非テレセントリックレンズであるレンズ3xを用いた場合と比較して、視差による撮像画像の変化を無くすことができ、視差が表面形状測定に与える影響を低減することができる。
【0037】
また、
図5に示すように、大きさがほぼ等しい第1被写体S1および第2被写体S2が撮像部に対して異なる被写体距離に位置する場合に、第1被写体S1および第2被写体S2を撮像部により撮像したとする。
図6に示すように、テレセントリックレンズであるレンズ3を用いた場合には、撮像画像における第1被写体S1および第2被写体S2の大きさはほぼ等しくなる。一方、
図7に示すように、非テレセントリックレンズであるレンズ3xを用いた場合には、遠くに位置する被写体は小さく、近くに位置する被写体は大きく写るため、撮像画像における第1被写体S1および第2被写体S2の大きさは、被写体距離に応じて異なるものとなる。撮像画像における距離に応じた被写体の大きさの差異は、表面形状測定に影響を与える可能性がある。レンズ3にテレセントリックレンズを用いると、被写体距離によって撮像画像に写る被写体の大きさが変わることを低減できるため、被写体距離が表面形状測定に与える影響を低減することができる。
【0038】
また、
図8に示すように、テレセントリックレンズであるレンズ3を用いると、画角が0度であるため、表面形状測定装置100は、鏡面反射面Sと同じ程度の大きさを有する照射部1を用いて、鏡面反射面S全体の表面形状を測定することができる。一方、
図9に示すように、非テレセントリックレンズであるレンズ3xを用いると、鏡面反射面Sよりも大きい照射部1が必要になる場合がある。表面形状測定装置100は、テレセントリックレンズであるレンズ3を用いることで、照射部1が大型化することを低減し、小型化可能な表面形状測定装置100を提供できる。また、表面形状測定装置100は、テレセントリックレンズであるレンズ3を用いることで、被写体距離に応じた光学倍率やレンズ歪みの変化により撮像画像が変化することを低減できる。このため、表面形状測定装置100は、光学倍率やレンズ歪みを補正する処理を不要とし、表面形状測定のための演算処理を簡素化することができる。
【0039】
<処理部4の構成例>
(ハードウェア構成例)
図10は、処理部4のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。処理部4は、例えばコンピュータによって構築されている。処理部4は、CPU(Central Processing Unit)401と、ROM(Read Only Memory)402と、RAM(Random Access Memory)403と、接続I/F(Interface)404と、通信I/F405と、を有する。これらは、システムバスAを介して相互に通信可能に接続されている。
【0040】
CPU401は、各種の演算処理を含む制御処理を実行する。ROM402は、IPL(Initial Program Loader)等のCPU401の駆動に用いられるプログラムを記憶する。RAM403は、CPU401のワークエリアとして使用される。I/F404は、処理部4を各種の外部機器と接続するためのインターフェースである。ここでの外部機器には、撮像部2等が含まれる。
【0041】
通信I/F405は、通信ネットワーク等を介して、外部装置との間で通信するためのインターフェースである。例えば、処理部4は、通信I/F405を介してインターネットに接続し、インターネットを介して外部装置との間で通信する。
【0042】
処理部4は、上記の構成以外にHDD/SSD(Hard Disk Drive/Solid State Drive)等を有してもよい。HDD/SSDは、プログラム等の各種情報、撮像部2により取得された撮像画像等を記憶する。
【0043】
(機能構成例)
図11~14を参照して、処理部4の機能構成について説明する。
図11は、処理部4の機能構成の一例を示すブロック図である。
図12は、第2パターン光L2の撮像画像を示す図である。
図13は、
図12におけるIV領域の拡大図である。
図14は、第2パターン光L2の位置ずれ量を模式的に説明する図である。
【0044】
図11に示すように、処理部4は、位置ずれ量取得部41と、形状取得部42と、出力部43と、を有する。位置ずれ量取得部41および形状取得部42の機能は、CPU401等のプロセッサがROM402等の不揮発性メモリに格納されたプログラムに規定された処理を実行すること等により実現できる。出力部43の機能は、接続I/F404または通信I/F405等により実現できる。なお、処理部4が有する上記機能の一部は、PCまたはサーバ等の外部装置により実現されてもよいし、処理部4と外部装置との分散処理により実現されてもよい。
【0045】
位置ずれ量取得部41は、撮像部2による撮像画像において、第2パターン光L2の所定位置からの位置ずれ量を取得する。
図12~13に示すように、撮影画像Imはドットパターンを含む。複数のドットDのそれぞれは、
図2に示した照射部1に含まれる発光部14から発せられる蛍光により形成される。鏡面反射面Sが理想的な平坦面に対して形状誤差を有すると、複数のドットDそれぞれの位置が、それぞれに対応する所定位置からずれる。複数のドットDそれぞれの位置がずれることで、複数のドットDで形成されるパターンが歪む。位置ずれ量取得部41は、例えば、撮像画像Im上で予め定められている複数の「所定位置」の座標に対する、複数のドットDそれぞれの重心位置の位置ずれ量Δpを、演算により取得することができる。
【0046】
図11において、形状取得部42は、位置ずれ量取得部41による位置ずれ量Δpから得られる鏡面反射面Sの表面形状に関する情報を取得する。
図14に示すように、鏡面反射面Sに照射される照射光L11と、照射光L11の鏡面反射面Sでの反射光L21と、がなす角度θは、次の式(1)により得られる。なお、式(1)において、距離Lは、照射部1と鏡面反射面Sとの距離である。
【0047】
【0048】
また、予め定められているドットパターンの配置間隔pdから、ドットごとの平面の高さ変化量zは、次の式(2)により得られる。
【0049】
【0050】
図11において形状取得部42は、上記の式(1)および式(2)を用いて、鏡面反射面Sの表面形状に関する情報として高さ変化量zを取得できる。形状取得部42は、撮像画像Im2に写った第2パターンL2内で最も変化量の少ない位置から外側方向へ、撮像画像Im2に含まれる複数のドットそれぞれの高さ変化量zを算出する。これにより、形状取得部42は、鏡面反射面S全体の高さ変化量zを表面形状に関する情報として取得できる。出力部43は、形状取得部42により取得された鏡面反射面S全体の高さ変化量zを外部装置に出力する。
【0051】
以上、好ましい実施の形態について詳説したが、上述した実施の形態に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施の形態に種々の変形および置換を加えることができる。
【0052】
実施形態の説明で用いた序数、数量等の数字は、全て本発明の技術を具体的に説明するために例示するものであり、本発明は例示された数字に制限されない。また、構成要素間の接続関係は、本発明の技術を具体的に説明するために例示するものであり、本発明の機能を実現する接続関係をこれに限定するものではない。
【0053】
本開示によれば、表面形状測定装置の小型化が図れるので、測定がより簡便となり、また、表面形状測定の適用領域の拡大を図ることができる。
【0054】
本開示の態様は、例えば以下の通りである。
<1> 鏡面反射面の表面形状測定装置であって、前記鏡面反射面に第1パターン光を照射する照射部と、前記照射部から照射された前記第1パターン光が前記鏡面反射面により反射された後、前記照射部を透過した光である第2パターン光を撮像する撮像部と、前記撮像部による撮像画像において、前記第2パターン光の所定位置からの位置ずれ量を取得し、該位置ずれ量から得られる前記鏡面反射面の表面形状に関する情報を出力する処理部と、を有する、表面形状測定装置である。
<2> 前記照射部は、1以上の光源と、光入射面と第1主面と第2主面とを有し、前記1以上の光源から発せられ、前記光入射面を通って入射される光を導光する導光板と、前記導光板の内部または表面のどちらか一方に配置され、前記導光板により導光された光が入射すると蛍光を発する発光部と、を有し、前記発光部から発せられる蛍光を含んで形成される前記第1パターン光を照射する、前記<1>に記載の表面形状測定装置である。
<3> 前記照射部は、前記導光板に配置された前記発光部の前記撮像部が位置する側に遮光部を有する、前記<2>に記載の表面形状測定装置である。
<4> 平面視における前記発光部および前記遮光部のそれぞれの形状は円形であり、前記遮光部の直径をAとし、前記発光部の直径をBとすると、1.05×B≦A≦1.15×Bを満足する、前記<3>に記載の表面形状測定装置である。
<5> 前記第1パターン光に含まれるパターンは、ドットパターンである、前記<1>から前記<4>のいずれか1つに記載の表面形状測定装置である。
<6> 前記照射部と前記撮像部との間に配置されるテレセントリックレンズを有し、前記撮像部は、前記鏡面反射面により反射された後、前記照射部を透過して、さらに前記テレセントリックレンズを透過した前記第2パターン光を撮像する、前記<1>から前記<5>のいずれか1つに記載の表面形状測定装置である。
<7> 鏡面反射面の表面形状測定装置による表面形状測定方法であって、前記表面形状測定装置が、照射部により、前記鏡面反射面に第1パターン光を照射し、撮像部により、前記照射部から照射された前記第1パターン光が前記鏡面反射面により反射された後、前記照射部を透過した光である第2パターン光を撮像し、処理部により、前記撮像部による撮像画像において、前記第2パターン光の所定位置からの位置ずれ量を取得し、該位置ずれ量から得られる前記鏡面反射面の表面形状に関する情報を出力する、表面形状測定方法である。
【符号の説明】
【0055】
1…照射部
12…光源
13…導光板
131…光入射面
132…第1主面
133…第2主面
14…発光部
15…遮光部
2…撮像部
20…中心
21…撮像面
3…レンズ
31…鏡胴
4…処理部
41…位置ずれ量取得部
42…形状取得部
43…出力部
401…CPU
402…ROM
403…RAM
404…接続I/F
405…通信I/F
100…表面形状測定装置
A…システムバス
D…ドット
Im…撮像画像
L…距離
L1…第1パターン光
L11…照射光
L2…第2パターン光
L21…反射光
pd…配置間隔
S…鏡面反射面
S1、S2…被写体
S0…法線
Δp…位置ずれ量
θ…角度