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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168275
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】ワーク測定装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20241128BHJP
   B24B 49/04 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
H01L21/304 622R
H01L21/304 631
B24B49/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023084808
(22)【出願日】2023-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】弁理士法人東京アルパ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 晋也
(72)【発明者】
【氏名】武石 康行
【テーマコード(参考)】
3C034
5F057
【Fターム(参考)】
3C034AA08
3C034BB52
3C034BB73
3C034BB84
3C034BB87
3C034BB93
3C034CA04
3C034CB08
3C034DD07
3C034DD10
5F057AA19
5F057BA13
5F057CA13
5F057CA25
5F057DA01
5F057DA08
5F057DA11
5F057DA38
5F057FA33
5F057FA37
5F057GB02
5F057GB12
(57)【要約】
【課題】矩形ワークをチャックテーブルの保持面に保持させる前に、該矩形ワークの隣接する2辺の長さを測定することができるワーク測定装置を提供すること。
【解決手段】ワーク測定装置60は、テーブル61と、該テーブル61を回転させるサーボモータ62と、テーブル61の回転角度を検出するエンコーダ63と、テーブル61の回転中心O1から距離Lだけ離れた位置で、矩形ワークWの辺を検知するとON信号、検知しないとOFF信号を出力するフォトセンサFSと、制御部100とを備え、制御部100は、矩形ワークWを保持したテーブル61を回転させ、角度算出部101が算出する角度差a,b,c,dを用いて矩形ワークWの隣接する2辺の長さS,Tを次式:
S=L*cos(a/2)+L*cos(c/2)
T=L*cos(b/2)+L*cos(d/2)
によって算出する辺長さ算出部102を備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣接する2辺が互いに直交する矩形ワークの該2辺の長さS,Tを測定するワーク測定装置であって、
保持面で該矩形ワークを保持するテーブルと、
該保持面の中心を軸として該テーブルを回転させる回転機構と、
該テーブルの回転角度を検出する角度検出部と、
該テーブルの回転中心から該保持面に平行な方向に予め設定した距離Lだけ離れた位置で、回転する該矩形ワークの辺を検知するとON信号、検知しないとOFF信号を出力する検知部と、
制御部と、
を備え、
該制御部は、
該矩形ワークを保持した該テーブルを回転させ、該検知部が出力する信号がONからOFFになったときの該矩形ワークの回転角度とOFFからONになったときの回転角度との差を4つの角度差a,b,c,dとして算出する角度算出部と、
該角度差a,b,c,dを用いて該矩形ワークの隣接する2辺の長さS,Tを次式:
S=L*cos(a/2)+L*cos(c/2)
T=L*cos(b/2)+L*cos(d/2)
によって算出する辺長さ算出部と、
を備えることを特徴とするワーク測定装置。
【請求項2】
該制御部は、直交X-Y座標上の該テーブルの回転中心と該矩形ワークの中心とのX方向とY方向のズレ量X,Yを次式:
X=|S/2-L*cos(a/2)|
または、X=|S/2-L*cos(c/2)|
Y=|T/2-L*cos(b/2)|
または、Y=|T/2-L*cos(d/2)|
によって算出する中心ズレ量算出部を備えることを特徴とする請求項1記載のワーク測定装置。
【請求項3】
該検知部は、該テーブルの回転中心からの距離が異なる第1検知部と第2検知部を備えることを特徴とする請求項1または2記載のワーク測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、隣接する2辺が互いに直交する矩形ワークの2辺の長さなどを測定するワーク測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、各種電気製品に使用される半導体チップの製造工程においては、ウェーハの裏面(ICやLSIなどのデバイスが形成された面とは反対側の面)に対して研削や研磨などの加工が施されるが、ウェーハには、非円形の正方形や長方形などの矩形のものもあり、例えば、特許文献1,2には、矩形のウェーハを均一な厚みに研削することができる研削装置が提案されている。
【0003】
このような研削装置において矩形のウェーハをチャックテーブルの保持面に保持させる際には、保持面の中心とウェーハの中心とを一致させ、さらに保持面の寸法・形状とウェーハの寸法・形状とを一致させている。そして、特許文献3に開示されているように、矩形のウェーハを仮置きテーブル上で位置決めした後、搬送機構によってウェーハを保持して該ウェーハをチャックテーブルへと搬送している。そして、チャックテーブルへと搬送されたウェーハは、チャックテーブルの保持面が吸引されることによって該保持面上に吸引保持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-205358号公報
【特許文献2】特開2016-150421号公報
【特許文献3】特開2021-186935号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、チャックテーブルの保持面の寸法・形状に一致しない形状の矩形のウェーハをチャックテーブルに搬送した場合、例えば、ウェーハのチャックテーブルへの吸引保持に際して、ウェーハと保持面との間からのエアリークが発生し、ウェーハを保持面で確実に保持して研削することができないという不具合が発生する。
【0006】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたもので、その目的は、矩形ワークをチャックテーブルの保持面に保持させる前に、該矩形ワークの隣接する2辺の長さを測定することができるワーク測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明は、隣接する2辺が互いに直交する矩形ワークの該2辺の長さS,Tを測定するワーク測定装置であって、保持面で該矩形ワークを保持するテーブルと、該保持面の中心を軸として該テーブルを回転させる回転機構と、該テーブルの回転角度を検出する角度検出部と、該テーブルの回転中心から該保持面に平行な方向に予め設定した距離Lだけ離れた位置で、回転する該矩形ワークの辺を検知するとON信号、検知しないとOFF信号を出力する検知部と、制御部と、を備え、該制御部は、該矩形ワークを保持した該テーブルを回転させ、該検知部が出力する信号がONからOFFになったときの該矩形ワークの回転角度とOFFからONになったときの回転角度との差を4つの角度差a,b,c,dとして算出する角度算出部と、該角度差a,b,c,dを用いて該矩形ワークの隣接する2辺の長さS,Tを次式:
S=L*cos(a/2)+L*cos(c/2)
T=L*cos(b/2)+L*cos(d/2)
によって算出する辺長さ算出部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、該制御部は、直交X-Y座標上の該テーブルの回転中心と該矩形ワークの中心とのX方向とY方向のズレ量X,Yを次式:
X=|S/2-L*cos(a/2)|
または、X=|S/2-L*cos(c/2)|
Y=|T/2-L*cos(b/2)|
または、Y=|T/2-L*cos(d/2)|
によって算出する中心ズレ量算出部を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、矩形ワークをチャックテーブルの保持面に保持する前に、該矩形ワークの隣接する2辺の長さS,Tを算出することができるため、チャックテーブルの保持面に保持される矩形ワークが正規の寸法のものであるか否かを判断することができる。
【0010】
また、算出された矩形ワークの2辺の長さS,Tを用いて、テーブルの回転中心と矩形ワークの中心との直交X-Y座標上のX方向とY方向のズレ量X,Yを算出することができるため、テーブル上の矩形ワークを保持してチャックテーブルへと搬送する搬送手段の矩形ワークの保持位置を調整し、算出されたズレ量X,Yが0となるように搬送手段が矩形ワークを保持するように調整した状態で、搬送手段が矩形ワークを保持してチャックテーブルへと搬送することができるため、矩形ワークをチャックテーブルの所定位置に正確に位置決めした状態で保持させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係るワーク測定装置を備える加工装置の平面図である。
図2】本発明の第1実施形態に係るワーク測定装置の斜視図である。
図3】(a)~(d)は角度差を求める手順を示す平面図である。
図4】本発明の第1実施形態に係るワーク測定装置における矩形ワークの2辺の長さと、テーブルの回転中心と矩形ワークの中心とのズレ量を算出するための原理を説明する図である。
図5】本発明の第1実施形態に係るワーク測定装置におけるワークの測定手順(2辺の長さと中心のズレ量の算出手順)を示すフローチャートである。
図6】矩形ワークの中心のズレ量を補正する方法を示す部分平面図である。
図7】本発明の第2実施形態に係るワーク測定装置の斜視図である。
図8】本発明の第2実施形態に係るワーク測定装置における矩形ワークの2辺の長さと、テーブルの回転中心と矩形ワークの中心とのズレ量を算出するための原理を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0013】
[加工装置の構成]
先ず、本発明に係るワーク測定装置を備える加工装置の全体構成を図1に基づいて説明する。なお、以下の説明においては、図1に示す矢印方向をそれぞれX軸方向(左右方向)、Y軸方向(前後方向)とする。
【0014】
図1に示す加工装置1は、隣接する2辺が互いに直交する正方形(図2図4参照)または長方形(図7及び図8参照)のウェーハ(以下、「矩形ワーク」と称する)Wの裏面(図2図4図7及び図8においては、上面)を研削加工(粗研削と仕上げ研削)及び研磨加工した後、研磨された矩形ワークWを洗浄する装置であって、Y軸方向に長い矩形ボックス状のベース200を備えている。ここで、図2図4に示す正方形の矩形ワークWと図7及び図8に示す長方形の矩形ワークWは、その各表面(下面)が格子状に配列された互いに直交するストリートと称される不図示の分割予定ラインによって複数の矩形領域に分割されており、各矩形領域には、ICやLSIなどの不図示のデバイスがそれぞれ形成されている。そして、このように多数のデバイスが形成された矩形ワークWの各表面(下面)は、保護テープBGT(図2及び図7参照)によって保護されており、該矩形ワークWを分割予定ラインに沿って分割することによって複数の半導体チップが製造される。
【0015】
而して、ベース200上の中央部には、垂直な中心軸を中心として図示矢印方向に所定角度(本実施形態では、90°)ずつ間欠的に回転する円盤状のターンテーブル2が配置されており、該ターンテーブル2の上面の周方向に4つに区画されたワーク搬出入領域R1、粗研削領域R2、仕上げ研削領域R3及び研磨領域R4には、垂直な中心軸を中心として回転(自転)することができる円板状のチャックテーブル10がそれぞれ配置されている。なお、ターンテーブル2と4つの各チャックテーブル10の下方には、不図示の回転機構がそれぞれ設けられており、ターンテーブル2が所定角度(本実施形態では、90°)だけ回転することによって、各チャックテーブル10は、公転しながらワーク搬出入領域R1、粗研削領域R2、仕上げ研削領域R3及び研磨領域R4へと順次移動することができる。なお、各チャックテーブル10の上面は、矩形ワークWを吸引保持する保持面をそれぞれ構成しており、各保持面は、真空ポンプなどの不図示の吸引源に選択的に接続される。
【0016】
また、図1に示すように、ベース200上には、粗研削領域R2に位置するチャックテーブル10の保持面に保持された矩形ワークWの裏面(上面)を粗研削する粗研削ユニット20と、仕上げ研削領域R3に位置するチャックテーブル10の保持面に保持された矩形ワークWの裏面(上面)を仕上げ研削する仕上げ研削ユニット30と、研磨領域R4に位置するチャックテーブル10の保持面に保持された矩形ワークWの裏面(上面)を研磨する研磨ユニット40が配置されている。なお、図示しないが、粗研削ユニット20と仕上げ研削ユニット30は、垂直なスピンドルを回転駆動するサーボモータや、スピンドルの下端に取り付けられた円板状の研削ホイールをそれぞれ備えており、各研削ホイールには、加工具であるブロック状の複数の研削砥石が円環状に配置されている。また、研磨ユニット40は、垂直なスピンドルを回転駆動するサーボモータや、スピンドルの下端に取り付けられた円板状の研磨パッドを備えている。
【0017】
さらに、ベース200上には、研磨ユニット40によって研磨された矩形ワークWを洗浄する洗浄ユニット50が設けられている。この洗浄ユニット50は、矩形ワークWを保持して高速回転する円板状のスピンナテーブル51と、該スピンナテーブル51に保持されて回転する矩形ワークWに向かって純水などの洗浄水を噴射する洗浄水ノズル52を備えている。なお、洗浄水ノズル52は、水平旋回可能なアーム53の先端に取り付けられている。
【0018】
そして、ベース200上の洗浄ユニット50の近傍には、本発明に係るワーク測定装置60と、第1搬送手段70及び第2搬送手段80が配置されている。ここで、第1搬送手段70は、Y軸方向に沿って配設されたガイドレール71に沿って移動可能なアーム72と、該アーム72の先端に不図示の昇降軸を介して取り付けられた円板状の吸引パッド73と、該吸引パッド73をガイドレール71に沿ってY軸方向に移動させる不図示の移動機構を備えている。この第1搬送手段70は、ワーク測定装置60によって2辺の長さと中心のX,Y軸方向のズレ量が測定された矩形ワークWを保持してガイドレール71に沿ってY軸方向へと移動させ、該矩形ワークWをワーク搬出入領域R1に位置するチャックテーブル10へと受け渡す機能を果たすものである。
【0019】
また、第2搬送手段80は、水平旋回可能なアーム81と、該アーム81の先端に昇降軸82を介して取り付けられた円板状の吸引パッド83を備えており、ワーク搬出入領域R1に位置するチャックテーブル10に保持された矩形ワーク(研磨ユニット40による研磨が終了した矩形ワーク)Wを洗浄ユニット50へと搬送する機能を果たすものである。なお、本発明に係るワーク測定装置60は、図1に示すように、矩形ワークWを保持して回転するテーブル61と、検知部としてのフォトセンサFSなどを備えているが、該ワーク測定装置60の構成と作用の詳細については後述する。
【0020】
また、図1に示すように、ベース200の+Y軸方向端部には、2つのカセット3,4がX軸方向に沿って並設されている。ここで、一方のカセット3は、加工前の複数の矩形ワークWを収容するものであり、他方のカセット4は、加工が終了した複数の矩形ワークWを収容するものである。そして、ベース200上のカセット3の近傍には、搬送ロボット90が配置されている。この搬送ロボット90は、多関節アーム91を備えており、この多関節アーム91の先端には、矩形ワークWを吸引保持する吸引パッド92が取り付けられている。なお、この搬送ロボット90は、ガイドレール93に沿ってX軸方向に沿って移動可能であり、一方のカセット3に収容されている加工前の矩形ワークWを取り出し、取り出した矩形ワークWをワーク測定装置60へと搬送する機能を果たすものである。
【0021】
[加工装置の作用]
次に、以上のように構成された加工装置1による矩形ワークWの加工について説明する。
【0022】
まず、矩形ワークWを加工する際には、図1に示す搬送ロボット90によってカセット3から加工前の1枚の矩形ワークWが取り出され、取り出された矩形ワークWが搬送ロボット90によって保持されてワーク測定装置60へと搬送される。ワーク測定装置60においては、後述のように、矩形ワークWの2辺の長さと中心のX軸方向とY軸方向のズレ量が測定される。このように、ワーク測定装置60によって矩形ワークWの2辺の長さと中心のX軸方向とY軸方向のズレ量が測定されると、該矩形ワークWのX軸方向とY軸方向のズレ量が0となるように(矩形ワークWの中心とテーブル61の中心とが一致するように)テーブル61が回転するとともに、第1搬送手段70の吸引パッド73のY軸方向の位置が調整され、矩形ワークWの中心がテーブル61の中心に一致した状態(アライメントされた状態)で該矩形ワークWが第1搬送手段70の吸引パッド73によって吸引保持される。
【0023】
上述のように、矩形ワークWを保持した第1搬送手段70は、ガイドレール71に沿って-Y軸方向へと移動し、ワーク搬出入領域R1に位置するチャックテーブル10へと矩形ワークWを搬送して該チャックテーブル10へと受け渡す。そして、ワーク搬出入領域R1において、チャックテーブル10へと受け渡された矩形ワークWは、チャックテーブル10の保持面が不図示の吸引源によって真空引きされることによって保持面に吸引保持される。
【0024】
上述のように、矩形ワークWがチャックテーブル10上に固定保持されると、ターンテーブル2がその垂直な軸中心回りに図1の矢印方向(時計方向)に角度90°だけ回転してチャックテーブル10が矩形ワークWと共に粗研削領域R2へと移動する。この粗研削領域R2においては、チャックテーブル10の保持面に保持された矩形ワークWの裏面(上面)が粗研削ユニット20によって粗研削される。なお、矩形ワークWの粗研削においては、不図示の研削水供給源から矩形ワークWの被加工部に研削水が供給されるとともに、矩形ワークWの厚みが不図示の厚み測定器によって測定される。
【0025】
矩形ワークWの上面(裏面)が粗研削ユニット20によって所定厚みに粗研削されると、ターンテーブル2がその垂直な軸中心回りに角度90°だけ回転してチャックテーブル10が矩形ワークWと共に仕上げ研削領域R3へと移動する。この仕上げ研削領域R3においては、チャックテーブル10の保持面に保持された矩形ワークWの裏面(上面)が仕上げ研削ユニット30によって仕上げ研削される。なお、矩形ワークWの仕上げ研削においても、不図示の研削水供給源から矩形ワークWの被加工部に研削水が供給されるとともに、矩形ワークWの厚みが不図示の厚み測定器によって測定される。
【0026】
上述のように、仕上げ研削領域R3において、矩形ワークWが仕上げ研削ユニット30によって仕上げ研削されると、ターンテーブル2がその垂直な軸中心回りに角度90°だけ回転してチャックテーブル10が矩形ワークWと共に研磨領域R4へと移動する。この研磨領域R4においては、矩形ワークWの上面(裏面)が研磨剤であるスラリーの供給を受けながら研磨ユニット40の研磨パッドによって研磨され、研削加工によって矩形ワークWの上面に形成された加工歪層が除去され、該矩形ワークWの抗折強度が高められる。
【0027】
上述のように、矩形ワークWの上面が研磨ユニット40によって研磨されると、ターンテーブル2がその垂直な軸中心回りに角度90°だけ回転してチャックテーブル10が矩形ワークWと共にワーク搬出入領域R1へと移動する。このワーク搬出入領域R1においては、矩形ワークWが第2搬送手段80の吸引パッド83によって保持されて洗浄ユニット50へと搬送される。洗浄ユニット50においては、矩形ワークWがスピンナテーブル51上に固定され、該矩形ワークWがスピンナテーブル51と共に垂直な中心軸回りに所定の速度で回転駆動されるとともに、洗浄水ノズル52から洗浄水(例えば、純水)が矩形ワークWの上面に噴射されることによって、該矩形ワークWの上面が洗浄される。そして、上面が洗浄された矩形ワークWは、搬送ロボット90によってスピンナテーブル51から取り外されてカセット4へと搬送されて該カセット4内に収納され、1枚の矩形ワークWに対する一連の加工が終了する。
【0028】
次に、本発明に係るワーク測定装置60について説明する。
【0029】
[ワーク測定装置]
まず、本発明の第1実施形態に係るワーク測定装置60について説明する。
【0030】
<第1実施形態>
本発明の第1実施形態に係るワーク測定装置60は、正方形の矩形ワークWの互いに直交する2辺の長さと、矩形ワークWのX軸方向とY軸方向のズレ量を測定するものであって、図2に示すように、保持面61aで矩形ワークWを保持する円板状のテーブル61と、保持面61aの中心を軸としてテーブル61を回転駆動する回転機構としてのサーボモータ62と、テーブル61の回転角度を検出する角度検出部としてのエンコーダ63と、テーブル61と共に回転する矩形ワークWの辺を光学的に検知する検知部である透過型のフォトセンサFSと、制御部100を備えている。
【0031】
上記回転機構を構成するサーボモータ62は、テーブル61の下方に縦置き状態で配置されており、該サーボモータ62から上方に延びる出力軸(モータ軸)62aの上端にテーブル16の中心が取り付けられている。そして、このサーボモータ62の下部には、該サーボモータ62の回転角度と回転方向などを検出する角度検出部としてのエンコーダ63が取り付けられている。なお、サーボモータ62とエンコーダ63は、制御部100に電気的に接続されており、サーボモータ62の駆動が制御部100によって制御され、エンコーダ63によって検出されるテーブル61の回転角度は、制御部100へと送信される。
【0032】
前記フォトセンサ(フォトインタラプタ)FSは、側面視コの字状のホルダ64の空間部に一部が臨む矩形ワークWを挟んでこれの上下に相対向して配置された発光素子65と受光素子66を備えている。ここで、発光素子65は、発光ダイオード(LED)などで構成され、受光素子66はフォトトランジスタなどによって構成されており、フォトセンサFSは、発光素子65から出射される光が矩形ワークWによって遮られることなく受光素子66へと到達して該受光素子66によって受光されるとON信号を出力し、発光素子65から出射される光が矩形ワークWによって遮られて受光素子66によって受光されない場合にはOFF信号を出力し、そのON/OFF信号は、制御部100へと送信される。なお、フォトセンサFSは、不図示の移動機構によってX軸方向に移動可能である。
【0033】
また、制御部100は、矩形ワークWを保持したテーブル61を1回転させ、フォトセンサFSが出力する信号がONからOFFになったときのテーブル61の回転角度とOFFからONになったときの角度との差を4つの角度差として算出する角度算出部101と、該角度算出部101によって算出された4つの角度差を用いて矩形ワークWの隣接する2辺の長さを算出する辺長さ算出部102と、直交X-Y座標上のテーブル61の回転中心O1と矩形ワークWの中心O2(図4参照)とのX方向とY方向のズレ量を算出する中心ズレ量算出部103を備えている。
【0034】
ここで、ワーク測定装置60による矩形ワークWの隣接する2辺の長さと直交X-Y座標上のテーブル61の回転中心O1と矩形ワークWの中心O2とのX方向とY方向のズレ量を測定(算出)する手順を図3図5にしたがって以下に説明する。
【0035】
矩形ワークWの測定に際しては、先ず、該矩形ワークWをテーブル61上に載置し(図5のステップS1)、回転機構であるサーボモータ62を起動して矩形ワークWを360°回転(1回転)させる(図5のステップS2)。ここで、フォトセンサFSは、図4に示すように、テーブル61の回転中心O1から保持面61aに平行な方向(水平)に予め設定した距離Lだけ離れた位置、つまり、回転する矩形ワークWの4つのコーナー部がフォトセンサFSの発光素子65から出射する光を交互に4回遮る位置に配置されている。したがって、矩形ワークWがテーブル61に正しく載置している場合には、フォトセンサFSからON信号とOFF信号が交互に4回出力される。
【0036】
したがって、制御部100は、フォトセンサFSがON信号を4回出力したか否かを判断し(ステップS3)、フォトセンサFSがON信号を4回出力したことが確認されると(ステップS3:Yes)には、角度算出部101は、エンコーダ63によって検出されるテーブル61の回転角度、つまり、フォトセンサFSが出力する信号がONからOFFになったときのテーブル61の回転角度とOFFからONになったときの回転角度との差を4つの角度差a,b,c,d(図3及び図4参照)として算出する(図5のステップS4)。ここで、角度差a,b,c,dは、フォトセンサFSがON信号を出力する角度範囲であると定義することができる。なお、フォトセンサFSがON信号を出力する回数が4回未満である場合(ステップS3:No)には、矩形ワークWがテーブル61に正しく置かれていないものと判断してエラー表示を出力し(ステップS8)、処理を終了する(ステップS7)。
【0037】
ここで、角度差a,b,c,dについて図3(a)~(d)を参照しながら説明すると、以下のようになる。
【0038】
すなわち、矩形ワークWが図3の矢印方向に1回転する間に、該矩形ワークWは、図3(a)に示す点P1~点P2へと移動する角度範囲aにおいてフォトセンサFSの発光素子65から出射する光を遮ることがないため、フォトセンサFSからはON信号が出力される。同様に、矩形ワークWが図3(b)に示す点P3~点P4へと移動する角度範囲bにおいて、図3(c)に示す点P5~点P6へと移動する角度範囲cにおいて、図3(d)に示す点P7~点P8へと移動する角度範囲dにおいて、該矩形ワークWは、フォトセンサFSの発光素子65から出射する光を遮ることがない。このため、角度範囲b,c,dにおいてもフォトセンサFSからはON信号が出力される。したがって、前述のように、角度差a,b,c,dは、フォトセンサFSがON信号を出力する角度範囲であると定義することができる。
【0039】
而して、角度算出部101によって角度差a,b,c,dが算出されると(ステップS4)、制御部100の辺長さ算出部102は、正方形の矩形ワークWの隣接する2辺の長さS,T(図4参照)を算出する(図5のステップS5)。すなわち、図4に示すように、テーブル61の回転中心をO1、矩形ワークWの中心をO2とし、テーブル61の回転中心O1を通るX軸に平行な直線と矩形ワークWのY軸方向の辺との交点をQ1,Q2、テーブル61の回転中心O1を通るY軸方向の直線と矩形ワークWのX軸方向の辺との交点をQ3,Q4とすると、線分O1-Q1の長さは、L*cos(a/2)、線分O1-Q2に長さは、L*cos(c/2)となるため、矩形ワークWのX軸方向に平行な辺の長さSは、次式:
S=L*cos(a/2)+L*cos(c/2) …(1)
によって求められる。
【0040】
また、線分O1-Q3の長さは、L*cos(b/2)、線分O1-Q4の長さは、L*cos(d/2)となるため、矩形ワークWのY軸方向に平行な辺の長さTは、次式:
T=L*cos(b/2)+L*cos(d/2) …(2)
によって求められる。
【0041】
上記(1)式と(2)式によって矩形ワークWの2辺の長さS,Tが辺長さ算出部102によって算出されると(ステップS5)、制御部100の中心ズレ量算出部103は、直交X-Y座標上のテーブル61の回転中心O1と矩形ワークWの中心O2とのX方向とY方向のズレ量X,Yを次式:
X=|S/2-L*cos(a/2)| …(3)
または、
X=|S/2-L*cos(c/2)| …(3’)
Y=|T/2-L*cos(b/2)| …(4)
または、
Y=|T/2-L*cos(d/2)| …(4’)
によって算出し(図5のステップS6)、一連の処理を終了する(図5のステップS7)。
【0042】
而して、本実施形態では、矩形ワークWを図1に示すチャックテーブル10の保持面に保持する前に、該矩形ワークWの隣接する2辺の長さS,Tを前記(1)、(2)式によってそれぞれ算出することができるため、チャックテーブル10の保持面に保持される矩形ワークWが正規の寸法のものであるか否かを判断することができる。
【0043】
また、算出された矩形ワークWの2辺の長さS,Tを用いて、テーブル61の回転中心O1と矩形ワークWの中心O2とのX方向のズレ量Xを前記(3)式、または(3’)式、Y方向のズレ量Yを前記(4)式、または(4’)式によってそれぞれ算出することができるため、以下の調整が可能となる。すなわち、テーブル61上の矩形ワークWを保持してチャックテーブル10へと搬送する第1搬送手段70の矩形ワークWの保持位置を調整し、算出されたズレ量X,Yが0となるように第1搬送手段70が矩形ワークWを保持するように、つまり、矩形ワークWの中心O2がテーブル61の回転中心O1に一致した状態の矩形ワークWを第1搬送手段70が保持するように調整して、第1搬送手段70が矩形ワークWを保持してチャックテーブル10へと搬送することができるため、矩形ワークWをチャックテーブル10の所定位置に正確に位置決めした状態で保持させることができる。このことを図6に基づいて具体的に説明する。
【0044】
図6に示すように、テーブル61の回転中心O1と矩形ワークWの中心O2とのX方向とY方向のズレ量がX,Yである場合、矩形ワークWの中心O2がテーブル61の回転中心O1を通るY軸方向に平行な直線上に移動するようにテーブル61と矩形ワークWを図示の角度θだけ矢印方向に回転させる。この矩形ワークWの角度θの回転によって該矩形ワークWの中心O2は図示のO2’へと移動するため、回転後の矩形ワークWの中心O2’のテーブル61の回転中心O1からのY軸方向のズレ量が図示のΔYだけ大きくなる。
【0045】
ここで、テーブル61の回転中心O1と矩形ワークWの中心O2との距離をrとすると、rは次式:
r=(X+Y1/2 …(5)
で求められる。したがって、回転後の矩形ワークWの中心O2’のテーブル61の回転中心O1からのズレ量はrであって、rだけガイドレール71に沿ってY軸方向に移動させれば、矩形ワークWの中心O2をテーブル61の回転中心O1に一致させることができる。
【0046】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態に係るワーク測定装置60’を図7及び図8に基づいて説明する。
【0047】
本実施形態に係るワーク測定装置60’は、長方形の矩形ワークWの互いに直交する2辺の長さと、矩形ワークWの中心のX軸方向とY軸方向のズレ量を測定するものであって、その基本構成は図2に示すワーク測定装置60のそれと同じであるが、本実施の形態に係るワーク測定装置60’においては、第1検知部と第2検知部を構成する2つのフォトセンサFS1,FS2がテーブル61の回転中心O1から-X軸方向にそれぞれL1、L2(L1>L2)だけ離れた位置に配置されている(図8参照)。なお、図7においては、図2において示したものと同一要素には同一符号を付しており、以下、それらについての再度の説明は省略する。
【0048】
ここで、図7に示すように、一方のフォトセンサFS1は、上下方向において対向配置された発光素子67と受光素子68を含んで構成され、他方のフォトセンサFS2は、同じく上下方向において対向配置された発光素子65と受光素子66を含んで構成されている。
【0049】
而して、本実施の形態に係るワーク測定装置60’においても、実施の形態1に係るワーク測定装置60と同様の手順によって矩形ワークWの隣接する2辺の長さS,T(図8参照)と、直交X-Y座標上のテーブル61の回転中心O1と矩形ワークWの中心O2とのX方向とY方向のズレ量X,Y(図8参照)が求められる。
【0050】
すなわち、先ず、矩形ワークWがテーブル61上に載置され、回転機構であるサーボモータ62が起動されて矩形ワークWが360°回転(1回転)する。すると、制御部100の角度算出部101は、エンコーダ63によって検出されるテーブル61の回転角度、つまり、フォトセンサFS1,FS2が出力する信号がONからOFFになったときのテーブル61の回転角度とOFFからONになったときの回転角度との差を4つの角度差e,f,g,h(図8参照)として算出する。
【0051】
すると、制御部100の辺長さ算出部102は、長方形の矩形ワークWの隣接する2辺の長さS,T(図8参照)を算出する。ここで、図8から明らかなように、矩形ワークWの隣接する2辺の長さS,Tは次式:
S=L2*cos(e/2)+L2*cos(g/2) …(6)
T=L2*cos(f/2)+L1*cos(h/2) …(7)
によって算出される。
【0052】
上記(6)式と(7)式によって矩形ワークWの2辺の長さS,Tが辺長さ算出部102によって算出されると、制御部100の中心ズレ量算出部103は、直交X-Y座標上のテーブル61の回転中心O1と矩形ワークWの中心O2とのX方向とY方向のズレ量X,Yを次式:
X=|S/2-L2*cos(e/2)| …(8)
または、
X=|S/2-L2*cos(g/2)| …(8’)
Y=|T/2-L2*cos(f/2)| …(9)
または、
Y=|T/2-L1*cos(h/2)| …(9’)
によって算出し、一連の処理が終了する。
【0053】
而して、本実施形態においても、前記第1実施形態と同様に、矩形ワークWをチャックテーブル10の保持面に保持する前に、該矩形ワークWの隣接する2辺の長さS,Tを(6)、(7)式によって算出することができるため、チャックテーブル10の保持面に保持される矩形ワークWが正規の寸法のものであるか否かを判断することができるという効果が得られる。
【0054】
また、算出された矩形ワークWの2辺の長さS,Tを用いて、テーブル61の回転中心O1と矩形ワークWの中心O2とのX方向のズレ量Xを(8)式、または(8’)式、Y方向のズレ量Yを前記(9)式、または(9’)式によってそれぞれ算出することができるため、テーブル61上の矩形ワークWを保持してチャックテーブル10へと搬送する第1搬送手段70の矩形ワークWの保持位置を調整し、算出されたズレ量X,Yが0となるように第1搬送手段70が矩形ワークWを保持するように、つまり、矩形ワークWの中心O2がテーブル61の回転中心O1に一致した状態の矩形ワークWを第1搬送手段70が保持するように調整し、該第1搬送手段70が矩形ワークWを保持してチャックテーブル10へと搬送することができる。このため、矩形ワークWをチャックテーブル10の所定位置に正確に位置決めした状態で保持させることができるという効果が得られる。
【0055】
なお、以上は本発明に係るワーク測定装置が研削加工(粗研削と仕上げ研削加工)と研磨加工を行う加工装置に設けられている形態について説明したが、本発明は、単体としての研削装置や研磨装置などに設けられるワーク測定装置も適用対象に含むものである。
【0056】
その他、本発明は、以上説明した実施の形態に適用が限定されるものではなく、特許請求の範囲及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内で種々の変形が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0057】
1:加工装置、2:ターンテーブル、3,4:カセット、10:チャックテーブル、
20:粗研削ユニット、30:仕上げ研削ユニット、40:研磨ユニット、
50:洗浄ユニット、51:スピンナテーブル、52:洗浄水ノズル、53:アーム、
60,60’:ワーク測定装置、61:テーブル、61a:保持面、
62:サーボモータ(回転機構)、63:エンコーダ(角度検出部)、
64:ホルダ、65,67:発光素子、66,68:受光素子、70:第1搬送手段、
71:ガイドレール、72:アーム、74:吸引パッド、80:第2搬送手段、
81:アーム、82:昇降軸、83:吸引パッド、90:搬送ロボット、
91:多関節アーム、92:吸引パッド、93:ガイドレール、100:制御部、
101:角度算出部、102:辺長さ算出部、103:中心ズレ量算出部、
200:ベース、BGT:保護テープ、FS:FS1:FS2:フォトセンサ(検知部)
O1:テーブルの回転中心、O2:矩形ワークの中心、R1:ワーク搬出入領域、
R2:粗研削領域、R3:仕上げ研削領域、R4:研磨領域、
S,T:矩形ワークの辺の長さ、W:矩形ワーク、
X,Y:テーブルの回転中心と矩形ワークの中心とのズレ量
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8