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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168314
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】感光性樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/027 20060101AFI20241128BHJP
   C08G 73/10 20060101ALI20241128BHJP
   C08F 290/14 20060101ALI20241128BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
G03F7/027 514
C08G73/10
C08F290/14
G03F7/20 521
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023084872
(22)【出願日】2023-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】000220239
【氏名又は名称】東京応化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】入江 真樹子
(72)【発明者】
【氏名】海老澤 和明
(72)【発明者】
【氏名】ザン イーヤン
【テーマコード(参考)】
2H197
2H225
4J043
4J127
【Fターム(参考)】
2H197CA05
2H197CE01
2H197HA03
2H197HA04
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2H225AD06
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2H225CC13
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(57)【要約】
【課題】誘電正接が低く、基板への密着性に優れるパターン化されたポリイミド樹脂膜を形成でき、均一な感光性樹脂組成物と、当該感光性樹脂組成物を用いるパターン化された樹脂膜の製造方法と、当該感光性樹脂組成物を用いるパターン化されたポリイミド樹脂膜の製造方法とを提供すること。
【解決手段】ポリイミド樹脂前駆体と、重合性化合物と、光ラジカル開始剤とを含む感光性樹脂組成物において、ダイマージアミンと芳香族ジアミンとを含むジアミン化合物、及びテトラカルボン酸二無水物に由来する構造単位を含む特定のポリイミド樹脂前駆体を用い、重合性化合物としてダイマージアミン残基、及び/又はダイマー酸残基を有する化合物を用いる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイミド樹脂前駆体(A)と、重合性化合物(B)と、光ラジカル開始剤(C)とを含み、
前記ポリイミド樹脂前駆体(A)が、ポリアミド酸が有するカルボキシ基の少なくとも一部を、イソシアネート基含有(メタ)アクリレートと反応させた、(メタ)アクリレート変性ポリアミド樹脂であり、
前記ポリアミド酸が、ジアミン化合物と、テトラカルボン酸二無水物との重合体であり、
前記ジアミン化合物が、ダイマージアミン、及び芳香族ジアミンからなり、
前記重合性化合物(B)が、ダイマージアミンに由来するダイマージアミン残基、及び/又はダイマー酸に由来するダイマー酸残基を含み、2つのラジカル重合性基を有する重合性化合物(B1)を含む、感光性樹脂組成物。
【請求項2】
ポリイミド樹脂前駆体(A)と、重合性化合物(B)と、光ラジカル開始剤(C)とを含み、
前記ポリイミド樹脂前駆体(A)が、(メタ)アクリレート変性ポリアミド樹脂と、多官能アミン化合物と、2以上のジカルボン酸無水物基を有する多官能酸無水物との反応物である、伸長ポリアミド樹脂であり、
前記(メタ)アクリレート変性ポリアミド樹脂が、ポリアミド酸が有するカルボキシ基の少なくとも一部を、イソシアネート基含有(メタ)アクリレートと反応させた樹脂であり、
前記ポリアミド酸が、ジアミン化合物と、テトラカルボン酸二無水物との重合体であり、
前記ジアミン化合物が、ダイマージアミン、及び芳香族ジアミンからなり、
前記重合性化合物(B)が、ダイマージアミンに由来するダイマージアミン残基、及び/又はダイマー酸に由来するダイマー酸残基を含み、2つのラジカル重合性基を有する重合性化合物(B1)を含む、感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記ポリイミド樹脂前駆体(A)100質量部に対して、前記重合性化合物(B1)を1質量部以上70質量部以下含む、請求項1、又は2に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
前記イソシアネート基含有(メタ)アクリレートが、イソシアナトアルキル(メタ)アクリレートである請求項1、又は2に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項5】
基板上に、請求項1、又は2に記載の感光性樹脂組成物を塗布して、塗布膜を形成することと、
前記塗布膜を位置選択的に露光することと、
露光された前記樹脂膜を現像することと、を含む、パターン化された樹脂膜の製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載の製造方法により製造された前記パターン化された樹脂膜を加熱することにより、前記ポリイミド樹脂前駆体(A1)、又は前記ポリイミド樹脂前駆体(A2)に由来するポリイミド樹脂を生成させることを含む、パターン化されたポリイミド樹脂膜の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリイミド樹脂前駆体を含む感光性樹脂組成物と、当該感光性樹脂祖組成物を用いるパターン化された樹脂膜、及びパターン化されたポリイミド樹脂膜の製造方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリイミド樹脂、及びポリアミド樹脂は、優れた耐熱性、機械的強度、及び絶縁性や、低誘電率等の特性を有するため、種々の素子や、多層配線基板等の電子基板のような電気・電子部品において、絶縁材や保護材として広く使用されている。
【0003】
近年、携帯電話等の通信機器では、高周波数化が進んでいる。そのため、通信機器が有する金属配線を絶縁する絶縁部にも高周波数化への対応が求められる。
ここで、周波数が高いほど伝送損失が増加し、伝送損失が増加すると電気信号が減衰する。したがって、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、及びポリベンゾオキサゾール樹脂等の樹脂に対して、高周波数化への対応として、さらに伝送損失を低減するために、高周波数帯域でのさらなる低誘電正接化と、さらなる低誘電率化が求められる。
【0004】
また、種々の素子や電子基板を作製する際に、所望する位置にだけ絶縁材や保護材を形成する必要がある場合が多い。このため、低い誘電正接と低い誘電率とを示し、且つパターニングされた樹脂膜を形成できる感光性樹脂組成物が求められている。
【0005】
上記のような要求から、例えば、パターニングされたポリイミド樹脂膜を形成できる感光性樹脂組成物として、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニルに由来する構成単位と、テトラカルボン酸二無水物と、例えば2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのようなラジカル重合性基を有するアルコール類との反応物であるジカルボン酸に由来する構成単位とを有する特定の構造の芳香族ポリアミド樹脂と、光重合開始剤とを含む感光性樹脂組成物(特許文献1、実施例を参照。)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2019/044874号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載される感光性樹脂組成物を用いる場合、ある程度誘電正接が低いポリイミド樹脂膜を形成できる。一方で、特許文献1に記載される感光性樹脂組成物を用いて、フォトリソグラフィー法によりパターン化されたポリイミド樹脂膜を形成する場合、パターン化されたポリイミド樹脂膜の基材への密着性に改良の余地がある。
【0008】
また、特許文献1には、ラジカル重合性基を有する芳香族ポリアミド樹脂とともに、多官能(メタ)アクリレート化合物のような架橋性化合物を用いることも開示されている。しかし、特許文献1に記載の芳香族ポリアミド樹脂と、多官能(メタ)アクリレート化合物とは、しばしば相溶性が低い。このように、ラジカル重合性基を有する芳香族ポリアミド樹脂と、多官能(メタ)アクリレート化合物のような架橋性化合物とを用いて感光性樹脂組成物を調製する場合に、均一な感光性樹脂組成物を調製しにくい問題がある。
【0009】
本発明は、上記の課題に鑑みなされたものであって、誘電正接が低く、基板への密着性に優れるパターン化されたポリイミド樹脂膜を形成でき、均一な感光性樹脂組成物と、当該感光性樹脂組成物を用いるパターン化された樹脂膜の製造方法と、当該感光性樹脂組成物を用いるパターン化されたポリイミド樹脂膜の製造方法とを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、ポリイミド樹脂前駆体と、重合性化合物と、光ラジカル開始剤とを含む感光性樹脂組成物において、ポリイミド樹脂前駆体として、ダイマージアミンと芳香族ジアミンとを含むジアミン化合物と、テトラカルボン酸二無水物との重合体であるポリアミド樹脂をイソシアネート基含有(メタ)アクリレートと反応させた、(メタ)アクリレート変性ポリアミド樹脂、又は(メタ)アクリレート変性ポリアミド樹脂を、多官能アミン化合物、及び多官能酸無水物と反応させて伸長させた伸長ポリアミド樹脂を、ポリイミド樹脂前駆体として用いるとともに、重合性化合物としてダイマージアミン残基、及び/又はダイマー酸残基を有する化合物を用いることにより、上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。より具体的には、本発明は以下のものを提供する。
【0011】
本発明の第1の態様は、ポリイミド樹脂前駆体(A1)と、重合性化合物(B)と、光ラジカル開始剤(C)とを含み、
ポリイミド樹脂前駆体(A1)が、ポリアミド酸が有するカルボキシ基の少なくとも一部を、イソシアネート基含有(メタ)アクリレートと反応させた、(メタ)アクリレート変性ポリアミド樹脂であり、
ポリアミド酸が、ジアミン化合物と、テトラカルボン酸二無水物との重合体であり、
ジアミン化合物が、ダイマージアミン、及び芳香族ジアミンからなり、
重合性化合物(B)が、ダイマージアミンに由来するダイマージアミン残基、及び/又はダイマー酸に由来するダイマー酸残基を含み、2つのラジカル重合性基を有する重合性化合物(B1)を含む、感光性樹脂組成物である。
【0012】
本発明の第2の態様は、ポリイミド樹脂前駆体(A2)と、重合性化合物(B)と、光ラジカル開始剤(C)とを含み、
ポリイミド樹脂前駆体(A2)が、(メタ)アクリレート変性ポリアミド樹脂と、多官能アミン化合物と、2以上のジカルボン酸無水物基を有する多官能酸無水物との反応物である、伸長ポリアミド樹脂であり、
(メタ)アクリレート変性ポリアミド樹脂が、ポリアミド酸が有するカルボキシ基の少なくとも一部を、イソシアネート基含有(メタ)アクリレートと反応させた樹脂であり、
ポリアミド酸が、ジアミン化合物と、テトラカルボン酸二無水物との重合体であり、
ジアミン化合物が、ダイマージアミン、及び芳香族ジアミンからなり、
重合性化合物(B)が、ダイマージアミンに由来するダイマージアミン残基、及び/又はダイマー酸に由来するダイマー酸残基を含み、2つのラジカル重合性基を有する重合性化合物(B1)を含む、感光性樹脂組成物である。
【0013】
本発明の第3の態様は、基板上に、第1の態様、又は第2の態様にかかる感光性樹脂組成物を塗布して、塗布膜を形成することと、
塗布膜を位置選択的に露光することと、
露光された塗布膜を現像することと、を含む、パターン化された樹脂膜の製造方法である。
【0014】
本発明の第4の態様は、第3の態様にかかる製造方法により製造されたパターン化された樹脂膜を加熱することにより、ポリイミド樹脂前駆体(A1)、又はポリイミド樹脂前駆体(A2)に由来するポリイミド樹脂を生成させることを含む、パターン化されたポリイミド樹脂膜の製造方法である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、誘電正接が低く、基板への密着性に優れるパターン化されたポリイミド樹脂膜を形成でき、均一な感光性樹脂組成物と、当該感光性樹脂組成物を用いるパターン化された樹脂膜の製造方法と、当該感光性樹脂組成物を用いるパターン化されたポリイミド樹脂膜の製造方法とを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
≪感光性樹脂組成物≫
感光性樹脂組成物は、ポリイミド樹脂前駆体(A)と、重合性化合物(B)と、光ラジカル重合開始剤(C)と、有機溶媒(S)とを含む。
ポリイミド樹脂前駆体(A)は、ポリアミド酸が有するカルボキシ基の少なくとも一部を、イソシアネート基含有(メタ)アクリレートと反応させた、(メタ)アクリレート変性ポリアミド樹脂であるか、前述の(メタ)アクリレート変性ポリアミド樹脂と、多官能アミン化合物と、2以上のジカルボン酸無水物基を有する多官能酸無水物との反応物である、伸長ポリアミド樹脂である。
以下、上記の(メタ)アクリレート変性ポリアミド樹脂を、ポリイミド樹脂前駆体(A1)とも記す。上記の伸長ポリアミド樹脂を、ポリイミド樹脂前駆体(A2)とも記す。
【0017】
感光性樹脂組成物は、重合性化合物(B)を含む。重合性化合物(B)は、ダイマージアミンに由来するダイマージアミン残基、及び/又はダイマー酸に由来するダイマー酸残基を含み、2つのラジカル重合性基を有する重合性化合物(B1)を含む。
【0018】
以下、ポリイミド樹脂前駆体(A1)と、重合性化合物(B)と、光ラジカル開始剤(C)とを含む感光性組成物を、第1の感光性組成物と記載する。
ポリイミド樹脂前駆体(A2)と、重合性化合物(B)と、光ラジカル開始剤(C)とを含む感光性組成物を、第2の感光性組成物と記載する。
【0019】
<第1の感光性組成物>
第1の感光性組成物は、ポリイミド樹脂前駆体(A1)と、重合性化合物(B)と、光ラジカル開始剤(C)とを含む。
ポリイミド樹脂前駆体(A1)は、ポリアミド酸が有するカルボキシ基の少なくとも一部を、イソシアネート基含有(メタ)アクリレートと反応させた、(メタ)アクリレート変性ポリアミド樹脂である。
ポリアミド酸は、ジアミン化合物と、テトラカルボン酸二無水物との重合体である。
ポリアミド酸の原料であるジアミン化合物は、ダイマージアミン、及び芳香族ジアミンからなる。
重合性化合物(B)は、ダイマージアミンに由来するダイマージアミン残基、及び/又はダイマー酸に由来するダイマー酸残基を含み、2つのラジカル重合性基を有する重合性化合物(B1)を含む。
【0020】
上記の第1の感光性組成物を用いることにより、誘電正接が低く、基板への密着性に優れるパターン化されたポリイミド樹脂膜を形成することができる。
【0021】
以下、第1の感光性組成物が含む、必須、又は任意の成分について説明する。
【0022】
[ポリイミド樹脂前駆体(A1)]
ポリイミド樹脂前駆体(A1)は、ポリアミド酸が有するカルボキシ基の少なくとも一部を、イソシアネート基含有(メタ)アクリレートと反応させた、(メタ)アクリレート変性ポリアミド樹脂である。
かかるポリイミド樹脂前駆体(A1)は、後述する重合性化合物(B)との相溶性に優れる。
以下、ポリイミド樹脂前駆体(A1)の原料である、ポリアミド酸と、イソシアネート基含有(メタ)アクリレートとについて説明する。
【0023】
〔ポリアミド酸〕
ポリアミド酸は、ジアミン化合物と、テトラカルボン酸二無水物との重合体である。
ポリアミド酸の原料であるジアミン化合物は、ダイマージアミン、及び芳香族ジアミンからなる。
【0024】
ポリアミド樹脂は、一部にイミド構造を有していてもよい。
ポリアミド樹脂は、ダイマージアミンと、テトラカルボン酸二無水物に由来するイミド構造単位と、芳香族ジアミンとテトラカルボン酸二無水物とに由来するアミド酸構造単位とを有するのが好ましい。
ダイマージアミンと、テトラカルボン酸二無水物に由来するイミド構造単位は、下記式(A1-i)で表される。
芳香族ジアミンとテトラカルボン酸二無水物とに由来するアミド酸構造単位は、下記式(A1-ii)で表される。
下記式(A1-i)、及び下記式(A1-ii)において、DiDAは、ダイマージアミンから2つのアミノ基を除いたダイマージアミン残基を表す。ArDAは、芳香族ジアミンから2つのアミノ基を除いた芳香族ジアミン残基を表す。TCDAは、テトラカルボン酸に無水物から、2つのカルボン酸無水物基を除いたテトラカルボン酸二無水物残基を表す。
【化1】
【0025】
ポリアミド樹脂の質量に対する、式(A1-i)で表されるイミド構造単位の質量の比率は、5質量%以上、9質量%以上、10質量%以上、15質量%以上、20質量%以上、25質量%以上、30質量%以上、35質量%以上、40質量%以上、又は45質量%以上であってよい。
また、ポリアミド樹脂の質量に対する、式(A1-i)で表されるイミド構造単位の質量の比率は、50質量%以下、45質量%以下、40質量%以下、35質量%以下、30質量%以下、25質量%以下、20質量%以下、15質量%以下、10質量%以下、又は9質量%以下であってよい。
ポリアミド樹脂の質量に対する、式(A1-i)で表されるイミド構造単位の質量の比率は、例えば、5質量%以上50質量%以下が好ましい。
【0026】
ジアミン化合物に由来する残基とテトラカルボン酸二無水物に由来する残基とを1つずつ含む単位を、1つの構造単位とする場合、ポリアミド樹脂を構成する全構造単位のモル数に対する、式(A1-i)で表されるイミド構造単位のモル数の比率は、5モル%以上、9モル%以上、10モル%以上、15モル%以上、20モル%以上、25モル%以上、30モル%以上、35モル%以上、40モル%以上、又は45モル%以上であってよい。
ポリアミド樹脂を構成する全構造単位のモル数に対する、式(A1-i)で表されるイミド構造単位のモル数の比率は、50モル%以下、45モル%以下、40モル%以下、35モル%以下、30モル%以下、25モル%以下、20モル%以下、15モル%以下、10モル%以下、又は9モル%以下であってよい。
ポリアミド樹脂を構成する全構造単位のモル数に対する、式(A1-i)で表されるイミド構造単位のモル数の比率は、例えば、5モル%以上50モル%以下が好ましい。
【0027】
ポリアミド樹脂の質量に対する、式(A1-ii)で表されるアミド酸構造単位の質量の比率は、50質量%以上、55質量%以上、60質量%以上、65質量%以上、70質量%以上、75質量%以上、80質量%以上、85質量%以上、90質量%以上、又は91質量%以上であってよい。
また、ポリアミド樹脂の質量に対する、式(A1-ii)で表されるアミド酸構造単位の質量の比率は、95質量%以下、91質量%以下、90質量%以下、85質量%以下、80質量%以下、75質量%以下、70質量%以下、65質量%以下、60質量%以下、又は55質量%以下であってよい。
ポリアミド樹脂の質量に対する、式(A1-ii)で表されるアミド酸構造単位の質量の比率は、例えば、50質量%以上95質量%以下が好ましい。
【0028】
ジアミン化合物に由来する残基とテトラカルボン酸二無水物に由来する残基とを1つずつ含む単位を、1つの構造単位とする場合、ポリアミド樹脂を構成する全構造単位のモル数に対する、式(A1-ii)で表されるアミド酸構造単位のモル数の比率は、50モル%以上、55モル%以上、60モル%以上、65モル%以上、70モル%以上、75モル%以上、80モル%以上、85モル%以上、90モル%以上、又は91モル%以上であってよい。
ポリアミド樹脂を構成する全構造単位のモル数に対する、式(A1-ii)で表されるアミド酸構造単位のモル数の比率は、95モル%以下、91モル%以下、90モル%以下、85モル%以下、80モル%以下、75モル%以下、70モル%以下、65モル%以下、55モル%以下、又は50モル%以下であってよい。
ポリアミド樹脂を構成する全構造単位のモル数に対する、式(A1-ii)で表されるアミド酸構造単位のモル数の比率は、例えば、50モル%以上95モル%以下が好ましい。
【0029】
以下、ジアミン化合物、テトラカルボン酸二無水物、及びポリアミド酸の製造方法について説明する。
【0030】
(ジアミン化合物)
前述の通り、ジアミン化合物は、ダイマージアミン、及び芳香族ジアミンからなる。
【0031】
ダイマージアミンは、1種を単独で使用されてもよく、2種以上を組み合わせて使用されてもよい。
ダイマージアミンとは、ダイマー酸の全てのカルボキシ基がアミノ基(-NH)に置換された化合物である。ダイマー酸は、オレイン酸等の不飽和脂肪族カルボン酸の二量体である。ダイマージアミンとしては、公知のダイマージアミンを特に限定なく用いることができる。ダイマージアミンについては、例えば、特開平9-12712号公報に記載されている。
【0032】
ダイマージアミンの好ましい例としては、下記式で表される化合物が挙げられる。下記式において、m、n、p、及びqは、それぞれ1以上の整数である。m+nは、6以上17以下が好ましい。p+qは、8以上19以下が好ましい。
【化2】
【0033】
ダイマージアミンとして、市販のダイマージアミンを用いることができる。市販のダイマージアミンの例として、バーサミン551(コグニクスジャパン(株)製)、バーサミン552(バーサミン551の水添物、コグニクスジャパン(株)製)、PRIAMINE 1075(クローダジャパン(株)製)、及びPRIAMINE 1074(クローダジャパン(株)製)等が挙げられる。
【0034】
芳香族ジアミン化合物は、芳香族基を含むジアミン化合物であれば、特に限定されない。芳香族ジアミン化合物は、以下の式(A2)で表される。
N-A-NH・・・(A2)
(式(A2)中、Aは芳香族基を含む2価の有機基を表す。)
【0035】
としての芳香族基を含む2価の有機基の炭素原子数は特に限定されない。Aとしての芳香族基を含む2価の有機基の炭素原子数は、6以上50以下が好ましく、6以上40以下がより好ましく、6以上30以下がさらに好ましい。Aとしての2価の有機基は、2以上の芳香族基を含んでいてもよい。Aは、2つのアミノ基の他に、1又は複数の置換基を有していてもよい。
置換基の好適な例としては、フッ素原子、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、炭素原子数1以上6以下のフッ素化アルキル基、炭素原子数1以上6以下のフッ素化アルコキシ基、カルボキシ基、又はヒドロキシ基が好ましい。
置換基がフッ素化アルキル基又はフッ素化アルコキシ基である場合、パーフルオロアルキル基又はパーフルオロアルコキシ基であるのが好ましい。
【0036】
としての2価の有機基は、1の芳香族基そのものであってもよく、2以上の芳香族基が、脂肪族炭化水素基及びハロゲン化脂肪族炭化水素基や、酸素原子、硫黄原子、及び窒素原子等のヘテロ原子を含む結合を介して結合された基であってもよい。Aに含まれる、酸素原子、硫黄原子、及び窒素原子等のヘテロ原子を含む結合としては、-CONH-、-NH-、-N=N-、-CH=N-、-COO-、-O-、-CO-、-SO-、-SO-、-S-、及び-S-S-等が挙げられ、-COO-、-O-、-CO-、及び-S-が好ましい。
【0037】
アミノ基と結合するA中の芳香環はベンゼン環であることが好ましい。A中のアミノ基と結合する環が2以上の環を含む縮合環である場合、当該縮合環中のアミノ基と結合する環はベンゼン環であることが好ましい。
また、Aに含まれる芳香環は、芳香族複素環であってもよい。
【0038】
第1の感光性組成物を用いて形成されるポリイミド樹脂膜の電機特性と機械特性との向上の点から、Aとしての2価の有機基は下記式(21)~(24)で表される基のうちの少なくとも1種であることが好ましい。
【化3】
【0039】
(21)~(24)中、R111は、水素原子、フッ素原子、カルボキシ基、スルホン酸基、ヒドロキシ基、炭素原子数1以上4以下のアルキル基、及び炭素原子数1以上4以下のハロゲン化アルキル基よりなる群から選択される1種を示す。式(24)中、Qは、9,9’-フルオレニリデン基、又は、式:-C-、-C-C-、-O-C-C-O-、-O-C-CO-C-O-、-O-C-C(CH-C-O-、-OCO-C-COO-、-OCO-C-C-COO-、-OCO-、-O-、-CO-、-C(CF-、-C(CH-、-CH-、-O-C-SO-C-O-、-C(CH-C-C(CH-、-O-C10-O-、-O-C-O-、-O-CH-O-、-O-(CH-O-、-O-(CH-O-、-O-(CH-O-、-O-(CH-O-、及び-O-(CH-O-で表される基よりなる群から選択される1種を示す。
【0040】
の例示における、-C-はフェニレン基であり、m-フェニレン基、及びp-フェニレン基が好ましく、p-フェニレン基がより好ましい。また、-C10-は、ナフタレンジイル基であり、ナフタレン-1,2-ジイル基、ナフタレン-1,4-ジイル基、ナフタレン-2,3-ジイル基、ナフタレン-2,6-ジイル基、及びナフタレン-2,7-ジイル基が好ましく、ナフタレン-1,4-ジイル基、及びナフタレン-2,6-ジイル基がより好ましい。
【0041】
式(21)~(24)中のR111としては、第1の感光性組成物を用いて形成されるポリイミド樹脂膜の電気特性向上の観点から、水素原子、フッ素原子、メチル基、エチル基、又はトリフルオロメチル基がより好ましく、水素原子、又はトリフルオロメチル基が特に好ましい。
【0042】
式(24)中のQとしては、第1の感光性組成物を用いて形成されるポリイミド樹脂膜の電気特性と機械特性の点から、-C-C-、-O-C-C-O-、-O-C-CO-C-O-、-O-C-C(CH-C-O-、-OCO-C-COO-、-OCO-C-C-COO-、-OCO-、-O-、-CO-、-C(CF-、-C(CH-、-CH-、-O-C-SO-C-O-、-C(CH-C-C(CH-、-O-C10-O-、-O-C-O-、-O-CH-O-、-O-(CH-O-、-O-(CH-O-、-O-(CH-O-、-O-(CH-O-、及び-O-(CH-O-が好ましい。第1の感光性組成物を用いて形成されるポリイミド樹脂膜の電気特性と機械特性向上の点から、式(24)中のQとしては、-O-C-C-O-、-O-C-C(CH-C-O-がより好ましく、-O-C-C-O-で表され-C-がともにp-フェニレン基である基が特に好ましい。
【0043】
例えば、以下に示される芳香族ジアミン化合物を好適に用いることができる。
すなわち、芳香族ジアミン化合物としては、p-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、2,4-ジアミノトルエン、4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジアミノビフェニル、3,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル(m-トリジン)、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル(o-トリジン)、1,5-ジアミノナフタレン、2,6-ジアミノナフタレン、9,10-ジアミノアントラセン、9,10-ビス(4-アミノフェニル)アントラセン、4,4’-ジアミノ-2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、3,3’-ジアミノベンゾフェノン、3,4’-ジアミノベンゾフェノン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、3,4’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジアミノジフェニルメタン、3,4’-ジアミノジフェニルメタン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)メタン、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2’-ビス[N-(3-アミノベンゾイル)-3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル]プロパン、2,2’-ビス[N-(4-アミノベンゾイル)-3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル]プロパン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジアミノジフェニルエーテル、3-カルボキシ-4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3-スルホ-4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノベンズアニリド、3,3’-ジアミノベンズアニリド、1,4-ビス(4-アミノフェニル)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェニル)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,2-ビス(4-アミノフェノキシ)エタン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)プロパン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ブタン、1,5-ビス(4-アミノフェノキシ)ペンタン、1,6-ビス(4-アミノフェノキシ)ヘキサン、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、3,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、3,3’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4-アミノフェノキシフェニル)スルホン、ビス(3-アミノフェノキシフェニル)スルホン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[N-(3-アミノベンゾイル)-3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル]スルホン、ビス[N-(4-アミノベンゾイル)-3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル]スルホン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、2,2-ビス[4-{4-アミノ-2-(トリフルオロメチル)フェノキシ}フェニル]ヘキサフルオロプロパン、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-アミノ-3-メチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス[N-(3-アミノベンゾイル)-3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル]フルオレン、9,9-ビス[N-(4-アミノベンゾイル)-3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル]フルオレン、2,7-ジアミノフルオレン、2-(4-アミノフェニル)-5-アミノベンゾオキサゾール、2-(3-アミノフェニル)-5-アミノベンゾオキサゾール、2-(4-アミノフェニル)-6-アミノベンゾオキサゾール、2-(3-アミノフェニル)-6-アミノベンゾオキサゾール、1,4-ビス(5-アミノ-2-ベンゾオキサゾリル)ベンゼン、1,4-ビス(6-アミノ-2-ベンゾオキサゾリル)ベンゼン、1,3-ビス(5-アミノ-2-ベンゾオキサゾリル)ベンゼン、1,3-ビス(6-アミノ-2-ベンゾオキサゾリル)ベンゼン、2,6-ビス(4-アミノフェニル)ベンゾビスオキサゾール、2,6-ビス(3-アミノフェニル)ベンゾビスオキサゾール、ビス[(3-アミノフェニル)-5-ベンゾオキサゾリル]、ビス[(4-アミノフェニル)-5-ベンゾオキサゾリル]、ビス[(3-アミノフェニル)-6-ベンゾオキサゾリル]、ビス[(4-アミノフェニル)-6-ベンゾオキサゾリル]、N,N’-ビス(3-アミノベンゾイル)-2,5-ジアミノ-1,4-ジヒドロキシベンゼン、N,N’-ビス(4-アミノベンゾイル)-2,5-ジアミノ-1,4-ジヒドロキシベンゼン、N,N’-ビス(4-アミノベンゾイル)-4,4’-ジアミノ-3,3-ジヒドロキシビフェニル、N,N’-ビス(3-アミノベンゾイル)-3,3’-ジアミノ-4,4-ジヒドロキシビフェニル、N、N’-ビス(4-アミノベンゾイル)-3,3’-ジアミノ-4,4-ジヒドロキシビフェニル、3,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’-[1,4-フェニレンビス(1-メチルエタン-1,1-ジイル)]ジアニリン、3,5-ジアミ安息香酸、3,4-ジアミノ安息香酸、4-アミノ安息香酸4-アミノフェニルエステル、1,3-ビス(4-アニリノ)テトラメチルジシロキサン、1,4-ビス(3-アミノプロピルジメチルシリル)ベンゼン、オルト-トリジンスルホン等が挙げられる。これらの中では、電気特性と機械特性向上の点から、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、3,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、及び3,3’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニルが好ましい。
【0044】
また、式(A2)中のAとしては、芳香族環を有していてもよいケイ素原子含有基を採用することができる。このようなケイ素原子含有基としては、典型的には、以下に示される基を用いることができる。
【化4】
【0045】
両末端にアミノ基を有し、且つケイ素原子含有基を有する化合物の具体例としては、両末端アミノ変性メチルフェニルシリコーン(例えば信越化学社製の、X-22-1660B-3(数平均分子量4,400程度)及びX-22-9409(数平均分子量1,300程度))等が挙げられる。
【0046】
(テトラカルボン酸二無水物)
テトラカルボン酸二無水物としては、所望する効果が損なわれない限り特に限定されない。テトラカルボン酸二無水物としては、典型的には、従来から、ポリアミック酸及びポリイミド樹脂の製造に用いられているテトラカルボン酸二無水物を好ましく用いることができる。
テトラカルボン酸二無水物としては、下記式(A3)で表される化合物が挙げられる。テトラカルボン酸二無水物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【化5】
(式(A3)中、Aは炭素原子数6以上50以下の4価の有機基である。)
【0047】
式(A3)中、Aは、炭素原子数6以上50以下の4価の有機基であり、式(A3)における2個の-CO-O-CO-で表される酸無水物基の他に、1又は複数の置換基を有していてもよい。
置換基の好適な例としては、フッ素原子、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、炭素原子数1以上6以下のフッ素化アルキル基、炭素原子数1以上6以下のフッ素化アルコキシ基が好ましい。また、式(a1-1)で表される化合物は、酸無水物基の他にカルボキシ基、カルボン酸エステル基を含んでいてもよい。
置換基がフッ素化アルキル基又はフッ素化アルコキシ基である場合、パーフルオロアルキル基又はパーフルオロアルコキシ基であるのが好ましい。
以上の置換基については、後述の芳香族基が芳香環上に有していてもよい1又は複数の置換基についても同様のことがいえる。
【0048】
としての4価の有機基の炭素原子数は8以上がより好ましく、12以上がさらに好ましい。また、Aとしての4価の有機基の炭素原子数は40以下がより好ましく、30以下がさらに好ましい。Aとしての4価の有機基は、脂肪族基であっても、芳香族基であっても、これらの構造を組み合わせた基であってもよい。Aとしての4価の有機基は、炭素原子、及び水素原子の他に、ハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、及び硫黄原子を含んでいてもよい。Aとしての4価の有機基が酸素原子、窒素原子、又は硫黄原子を含む場合、酸素原子、窒素原子、又は硫黄原子は、含窒素複素環基、-CONH-、-NH-、-N=N-、-CH=N-、-COO-、-O-、-CO-、-SO-、-SO-、-S-、及び-S-S-から選択される基として、Aに含まれてもよく、-O-、-CO-、-S-、及びから選択される基として、Aに含まれることがより好ましい。
【0049】
式(A3)で表されるテトラカルボン酸二無水物は、脂肪族基に結合するジカルボン酸無水物基を2つ有する脂肪族テトラカルボン酸二無水物であっても、芳香族基に結合するジカルボン酸無水物基を少なくとも1つ有する芳香族テトラカルボン酸二無水物であってもよい。
なお、芳香族テトラカルボン酸二無水物は、芳香族基に結合するジカルボン酸無水物基を2つ有するのが好ましい。
【0050】
脂肪族テトラカルボン酸二無水物は、脂環式構造を含有してもよい。該脂環式構造は多環式であってもよい。脂環式構造を有さない脂肪族テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物(例えば、リカシッドBT-100、新日本理化社製)が挙げられる。
脂環式構造を有する脂肪族テトラカルボン酸二無水物としては、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサン-1,2,4,5-テトラカルボン酸二無水物、ノルボルナン-2-スピロ-α-シクロペンタノン-α’-スピロ-2”-ノルボルナン-5,5”,6,6”-テトラカルボン酸二無水物(例えば、エネハイド(登録商標)CpODA、エネオス社製)、2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェノキシ)ヘキサフルオロプロパン二無水物[5,5’-(1,4-フェニレン)ビスノルボルナン]-2,2’,3,3’-テトラカルボン酸二無水物(例えば、エネハイド(登録商標)BzDA、エネオス社製)、1,3,3a,4,5,9b-ヘキサヒドロ-5(テトラヒドロ-2,5-ジオキソ-3-フラニル)ナフト[1,2-C]フラン-1,3-ジオン(例えば、リカシッドTDA-100、新日本理化社製)、が挙げられる。
【0051】
式(A3)で表され、芳香族基に結合するジカルボン酸無水物基を2つ有する芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、1,4-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、4,4’-オキシジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルスルフィドテトラカルボン酸二無水物、トリメリット酸(3,4-ジカルボキシフェニル)二無水物、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5,6-ピリジンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェノキシ)メタン二無水物、1,1-ビス(2,3-ジカルボキシフェノキシ)エタン二無水物、2,2-ビス[4-(3,4-ジカルボキシフェニルオキシ)フェニル]プロパン二無水物、4,4’-ビス(3,4-ジカルボキシフェニルカルボニルオキシ)ビフェニル二無水物、2,6-ビス(3,4-ジカルボキシフェニルカルボニルオキシ)ナフタレン二無水物、9,9’-ビス[4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]フルオレンニ無水物、9,9’-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フルオレンニ無水物、1,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニルカルボニルオキシ)エタン二無水物(例えば、リカシッドTMEG100、新日本理化社製)、及び1,10-ビス(3,4-ジカルボキシフェニルカルボニルオキシ)デカン二無水物(例えば、10BTA、黒金化成社製)等が挙げられる。
これらの芳香族テトラカルボン酸二無水物の中では、電気特性に優れる硬化物を形成しやすい点で、2,2-ビス[4-(3,4-ジカルボキシフェニルオキシ)フェニル]プロパン二無水物、4,4’-ビス(3,4-ジカルボキシフェニルカルボニルオキシ)ビフェニル二無水物、4,4’-ビス(3,4-ジカルボキシフェニルオキシ)ビフェニル二無水物、2,6-ビス(3,4-ジカルボキシフェニルカルボニルオキシ)ナフタレン二無水物、及びα,ω-ビス(3,4-ジカルボキシフェニルカルボニルオキシ)アルカン二無水物が好ましい。α,ω-ビス(3,4-ジカルボキシフェニルカルボニルオキシ)アルカン二無水物中の直鎖アルキレン基の炭素原子数は、1以上20以下が好ましく、2以上12以下がより好ましい。α,ω-ビス(3,4-ジカルボキシフェニルカルボニルオキシ)アルカン二無水物の好適な具体例としては、1,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニルカルボニルオキシ)エタン二無水物(例えば、リカシッドTMEG100、新日本理化社製)、及び1,10-ビス(3,4-ジカルボキシフェニルカルボニルオキシ)デカン二無水物(例えば、10BTA、黒金化成社製)が挙げられる。
【0052】
また、第1の感光性樹脂組成物を用いて形成されるポリイミド樹脂膜の反り抑制や、第1の感光性樹脂組成物のフォトリソグラフィー特性が良好である点で、芳香族テトラカルボン酸二無水物がビフェニルテトラカルボン酸二無水物であるのも好ましい。
ビフェニルテトラカルボン酸二無水物としては、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物が挙げられ、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物が好ましい。
【0053】
芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、また、例えば、下記一般式(a3-2)~(a3-4)で表される化合物であってもよい。
【化6】
【0054】
上記式(a3-2)及び式(a3-3)において、Ra01、Ra02及びRa03は、それぞれ、ハロゲンで置換されていてもよい脂肪族基、酸素原子、硫黄原子、1つ以上の2価元素を介した芳香族基のいずれかであるか、又はそれらの組み合わせによって構成される2価の基を示す。Ra02及びRa03は、同一であっても異なっていてもよい。
すなわち、Ra01、Ra02及びRa03は、炭素-炭素の一重結合、炭素-酸素-炭素のエーテル結合又はハロゲン元素(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)を含んでいてもよい。式(a3-2)で表される化合物としては、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)プロパン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)メタン二無水物、1,1-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)エタン二無水物、1,3-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ヘキサフルオロプロパン二無水物、及び1,4-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物等が挙げられる。
【0055】
また、上記式(a3-4)において、Ra04、Ra05はハロゲンで置換されていてもよい脂肪族基、1つ以上の2価元素を介した芳香族基、ハロゲンのいずれかであるか、又はそれらの組み合わせによって構成される1価の置換基を示す。Ra04、及びRa05は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。式(a3-4)で表される化合物として、ジフルオロピロメリット酸二無水物、及びジクロロピロメリット酸二無水物等も用いることができる。
【0056】
重合性ジカルボン酸を用いて製造されるポリアミド樹脂は、その分子鎖上にラジカル重合性基を有する。
このため、式(A3)中の4価の有機基Aは、下記式(a3-5)~式(a3-7)で表される基であってもよい。
【化7】
式(a3-5)~式(a3-7)における、Ra01、Ra02、及びRa03は、前述の式(a3-2)、式(a3-3)、及び式(a3-4)における、Ra01、Ra02、及びRa03と同様である。
式(a3-5)、式(a3-6)、及び式(a3-7)における、Ra06は、ラジカル重合性基である。ラジカル重合性基としては、典型的には、エチレン性不飽和二重結合を含有する基が挙げられる。エチレン性不飽和二重結合含有基としては、ビニル基、及びアリル基等のアルケニル基を含むアルケニル基含有基、並びに(メタ)アクリロイル基含有基が好ましい。
【0057】
(ポリアミド酸の製造方法)
ポリアミド酸は、上記のジアミン化合物と、上記のテトラカルボン酸二無水物とを重合させることにより製造される。
ポリアミド酸を製造する手段に特に制限はなく、例えば、溶剤中でテトラカルボン酸二無水物、及びジアミン化合物を反応させる方法等の公知の手法を用いることができる。
【0058】
テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物との反応は、通常、溶剤中で行われる。テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物との反応に使用される溶剤は、テトラカルボン酸二無水物及びジアミン化合物を溶解させることができ、テトラカルボン酸二無水物及びジアミン化合物と反応しない溶剤であれば特に限定されない。溶剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0059】
テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物との反応に用いる溶剤の例としては、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジエチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、N-メチルカプロラクタム、N,N,N’,N’-テトラメチルウレア等の含窒素極性溶剤;β-プロピオラクトン、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、δ-バレロラクトン、γ-カプロラクトン、ε-カプロラクトン等のラクトン系極性溶剤;ジメチルスルホキシド;アセトニトリル;乳酸エチル、乳酸ブチル等の脂肪酸エステル類;ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチルセルソルブアセテート、エチルセルソルブアセテート等のエーテル類;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素溶剤;クレゾール類、キシレン系混合溶媒等のフェノール系溶剤が挙げられる。
これらの溶剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。溶剤の使用量に特に制限はない。反応終了後の反応液に含まれるポリアミド酸の含有量が5質量%以上50質量%であるように、溶剤が使用されるのが好ましい。
【0060】
ジアミン化合物は、ダイマージアミン、及び芳香族ジアミンからなる。ダイマージアミン、及び芳香族ジアミンを同時にテトラカルボン酸二無水物と反応させてもよい。
ダイマージアミン、及びテトラカルボン酸二無水物を反応させた後に、芳香族ジアミンをテトラカルボン酸二無水物と反応させてもよい。
芳香族ジアミン、及びテトラカルボン酸二無水物を反応させた後に、ダイマージアミンをテトラカルボン酸二無水物と反応させてもよい。
【0061】
重合温度は一般的には-10℃以上120℃以下、好ましくは5℃以上30℃以下である。重合時間は使用する原料組成により異なるが、通常は3時間以上24時間以下である。
【0062】
前述の通り、ポリアミド樹脂は、ダイマージアミンと、テトラカルボン酸二無水物に由来するイミド構造単位と、芳香族ジアミンとテトラカルボン酸二無水物とに由来するアミド酸構造単位とを有するのが好ましい。
【0063】
この場合、以下の方法によりポリアミド樹脂を製造するのが好ましい。
まず、ダイマージアミンと、テトラカルボン酸二無水物とを反応させてポリアミド酸を生成させた後、生成したポリアミド酸をイミド化して、ダイマージアミンとテトラカルボン酸二無水物に由来するイミド構造単位からなるポリイミド樹脂を生成させる。
重合温度は一般的には-10℃以上120℃以下が好ましく、反応時間は、0.5時間以上3時間以下が好ましい。
ポリアミド酸をイミド化するイミド化反応条件としては、120℃以上150℃以下の反応温度、及び1時間以上24時間以下の反応時間が好ましい。
イミド化は、第三級アミン等のイミド化触媒や、酸無水物等の脱水剤の存在下に行われてもよい。
【0064】
次いで、生成したポリイミド樹脂を、芳香族アミン、及びテトラカルボン酸二無水物と反応させて、ポリイミド樹脂に由来するイミド構造単位ブロックに、アミド酸構造単位からなるアミド酸構造単位ブロックを結合させることで、イミド構造単位と、アミド酸構造単位とを含むポリアミド樹脂が得られる。
ポリイミド樹脂を、芳香族アミン、及びテトラカルボン酸二無水物と反応させる際の反応条件は、25℃以上60℃以下の反応温度、及び1時間以上24時間以下の反応時間が好ましい。
【0065】
〔イソシアネート基含有(メタ)アクリレート〕
上記のポリアミド酸が有するカルボキシ基の少なくとも一部を、イソシアネート基含有(メタ)アクリレートと反応させることにより、ポリイミド樹脂前駆体(A1)としての(メタ)アクリレート変性ポリアミド樹脂が得られる。
具体的には、カルボキシ基と、イソシアネート基との反応によりカルボン酸アミド結合(-CO-NH-)が形成される。その結果、イソシアネート基含有(メタ)アクリレートに由来する(メタ)アクリロイルオキシ基を有する有機基が、カルボン酸アミド結合を介して、(メタ)アクリレート変性ポリアミド樹脂の主鎖に結合する。
【0066】
イソシアネート基含有(メタ)アクリレートは、1つ、又は2つの(メタ)アクリロイル基と、1つ、又は2つのイソシアネート基とを有する(メタ)アクリレートである。
イソシアネート基含有(メタ)アクリレートは、(メタ)アクリロイル基を1つ有するのが好ましい。
イソシアネート基含有(メタ)アクリレートは、イソシアネート基を1つ有するのが好ましい。
イソシアネート基含有(メタ)アクリレートとしては、イソシアナトアルキル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0067】
イソシアネート基含有(メタ)アクリレートの好適な例としては、下記式(I):
C=CR01-CO-O-R02-Z-R03-NCO (I)
(式(I)中、R01は、水素原子、又はメチル基である。R02は、置換基を有してもよいアルキレン基である。R03は、置換基を有してもよいアルキレン基である。Zは、単結合、又は酸素原子である。)
で表される化合物が挙げられる。
【0068】
02、又はR03としてのアルキレン基の炭素原子数は、1以上4以下が好ましく、1又は2がより好ましい。R02、又はR03としてのアルキレン基の具体例としては、メチレン基、エタン-1,2-ジイル基(エチレン基)、プロパン-1,3-ジイル基、プロパン-1,2-ジイル基、及びブタン-1,4-ジイル基が挙げ有られる。
これらの中では、メチレン基、及びエタン-1,2-ジイル基(エチレン基)が好ましく、メチレン基がより好ましい。
【0069】
02、又はR03としてのアルキレン基が有してもよい置換基としては、炭素原子数1以上4以下のアルコキシ基、ハロゲン原子、及び(メタ)アクリロイルオキシ基が挙げられる。
【0070】
式(I)で表されるイソシアネート基含有(メタ)アクリレートの具体例としては、2-イソシアナトエチル(メタ)アクリレート、1,1-(ビス(メタ)アクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート、及び2-(2-(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)エチルイソシアネートが挙げられる。
【0071】
上記のポリアミド酸と、イソシアネート基含有(メタ)アクリレートと反応は、例えば、40℃以上120℃以下の温度で、1時間以上24時間以内の時間行われる。
上記のポリアミド酸と、イソシアネート基含有(メタ)アクリレートと反応は、溶媒の存在下に行われるのが好ましい。溶媒としては、ポリアミド酸の製造時に使用される得る前述の有機溶媒が挙げられる。
【0072】
ポリアミド酸との反応に用いられるイソシアネート基含有(メタ)アクリレートの量は、特に限定されない。
ポリアミド酸との反応に用いられるイソシアネート基含有(メタ)アクリレートの量は、ポリアミド酸100質量部に対して、5質量部以上、10質量部以上、15質量部以上、20質量部以上、又は25質量部以上が好ましい。
ポリアミド酸との反応に用いられるイソシアネート基含有(メタ)アクリレートの量は、ポリアミド酸100質量部に対して、30質量部以下、25質量部以下、20質量部以下、15質量部以下、又は10質量部以下が好ましい。
ポリアミド酸との反応に用いられるイソシアネート基含有(メタ)アクリレートの量は、例えば、ポリアミド酸100質量部に対して、5質量部以上30質量部以下が好ましい。
【0073】
[重合性化合物(B)]
重合性化合物(B)は、ダイマージアミンに由来するダイマージアミン残基、及び/又はダイマー酸に由来するダイマー酸残基を含み、2つのラジカル重合性基を有する重合性化合物(B1)を含む。
かかる重合性化合物(B)は、ポリイミド樹脂前駆体(A1)との相溶性に優れる。
【0074】
ダイマージアミン残基を有する重合性化合物(B1)は、ダイマージアミンが有するアミノ基と、ラジカル重合性基を有する化合物とを反応させることにより得られる。
ラジカル重合性基を有する化合物としては、例えば、不飽和基含有ジカルボン酸無水物;アクリル酸、及び(メタ)アクリル酸等の不飽和基含有脂肪族カルボン酸;ビニル安息香酸、及びアリル安息香酸等の不飽和基含有芳香族カルボン酸;不飽和基含有イソシアネート等が挙げられる。
【0075】
不飽和基含有ジカルボン酸無水物としては、マレイン酸無水物、シクロヘキサンジカルボン酸無水物、及び5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸等が挙げられる。
不飽和基含有イソシアネートとしては、前述のイソシアネート基含有(メタ)アクリレートを好ましく用いることができる。
【0076】
また、ダイマージアミンと、テトラカルボン酸二無水物、又はジカルボン酸化合物とを反応させて得られる、両末端にアミノ基を有するオリゴマーを用いて重合性化合物(B1)を調製することもできる。
上記のオリゴマーが有するアミノ基と、ラジカル重合性基を有する化合物とを反応させることにより重合性化合物(B1)が得られる。
ラジカル重合性基を有する化合物は、ダイマージアミンと反応させるラジカル重合性基を有する化合物と同様である。
【0077】
ダイマージアミンと、テトラカルボン酸二無水物との反応は、上述のポリアミド酸の製造方法と同様に行われる。
ダイマージアミンと、ジカルボン酸化合物との反応は、公知のポリアミド樹脂の製造方法に従って行われる。
ただし、両末端にアミノ基を有するオリゴマーを製造する際には、オリゴマーの重合度が所望する程度であるように、反応温度、及び反応時間が調整される。
【0078】
ダイマージアミンと反応させるテトラカルボン酸二無水物としては、ポリアミド酸の原料として上記したテトラカルボン酸二無水物を用いることができる。
ダイマージアミンと反応させるジカルボン酸としては、従来からポリアミド樹脂の原料として使用されている種々のジカルボン酸を特に制限なく使用することができる。
ジカルボン酸としては、例えば、炭素原子数2以上50以下の脂肪族ジカルボン酸、炭素原子数8以上50以下の芳香族カルボン酸が好ましい。
ジカルボン酸の好適な例としては、アジピン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、1,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、及び4,4’-ジカルボキシビフェニル、これらのアルキル、アルコキシ又はハロゲン置換体が挙げられる。
置換基としてのアルキル基としては、炭素原子数1以上4以下のアルキル基が好ましい。置換基としてのアルコキシ基としては、炭素原子数1以上4以下のアルコキシ基が好ましい。
前述のジカルボン酸が、アルキル基、アルコキシ基、又はハロゲンで置換されている場合、置換数は1以上4以下が好ましく、1又は2がより好ましく、1がさらに好ましい。
【0079】
ダイマー酸残基を有する重合性化合物(B1)は、ダイマー酸が有するカルボキシ基と、ラジカル重合性基を有する化合物とを反応させることにより得られる。ダイマー酸は、オレイン酸等の不飽和脂肪族カルボン酸の二量体である。
好ましいダイマー酸としては、下記式で表される化合物が挙げられる。
下記式において、m、n、p、及びqは、それぞれ1以上の整数である。m+nは、6以上17以下が好ましい。p+qは、8以上19以下が好ましい。
【化8】
【0080】
ラジカル重合性基を有する化合物としては、例えば、アリルアルコール、3-ブテン-1-オール等の不飽和基含有脂肪族アルコール;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、及びヒドロキシフェニル(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレート;アリルアミン、1-アミノ-3-ブテン等の不飽和基含有脂肪族アミン;ビニルアニリン、及びアリルアニリン等の不飽和基含有芳香族アミン等が挙げられる。
ダイマー酸と、ラジカル重合性基を有するこれらの化合物との反応は、公知のエステル化方法、又は公知のアミド化方法に従って行われる。
【0081】
ダイマー酸と、ジオールとを反応させて得られる、両末端に水酸基を有するオリゴマーを用いて重合性化合物(B1)を調製することもできる。
上記のオリゴマーが有する水酸基と、ラジカル重合性基を有する化合物とを反応させることにより重合性化合物(B1)が得られる。
【0082】
ジオールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコールジビニルエーテル、ポリプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,10-デカンジオール、及びネオペンチルグリコール等の鎖状脂肪族ジボール;1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、2-ヒドロキシ-5-(ヒドロキシメチル)-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタン、及びトリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノール等の脂環式基含有ジオール;1,4-ジヒドロキシベンゼン(ハイドロキノン)、1,3-ジヒドロキシベンゼン(レゾルシノール)、1,2-ジヒドロキシベンゼン(カテコール)、1,4-ジヒドロキシナフタレン、1,3-ジヒドロキシナフタレン、1,2-ジヒドロキシナフタレン、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、1,7-ジヒドロキシナフタレン、1,8-ジヒドロキシナフタレン、2,3-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、2,7-ジヒドロキシナフタレン、4,4’-ジヒドロキシビフェニル、3,3’-ジヒドロキシビフェニル、2,2’-ジヒドロキシビフェニル、3,4’-ジヒドロキシビフェニル、2,3’-ジヒドロキシビフェニル、2,4’-ジヒドロキシビフェニル、ビスフェノールA、1,4-ベンゼンジメタノール、1,3-ベンゼンジメタノール、1,2-ベンゼンジメタノール、及びナフタレン-1,4-ビスメタノール等の芳香族基含有ジオールが挙げられる。
【0083】
ダイマー酸と、ジオールとの反応は、公知のポリエステル樹脂の製造方法に従って行われる。
ただし、両末端に水酸基を有するオリゴマーを製造する際には、オリゴマーの重合度が所望する程度であるように、反応温度、及び反応時間が調整される。
【0084】
両末端に水酸基を有するオリゴマーと反応させる、ラジカル重合性基を有する化合物としては、例えば、不飽和基含有ジカルボン酸無水物;アクリル酸、及び(メタ)アクリル酸等の不飽和基含有脂肪族カルボン酸;ビニル安息香酸、及びアリル安息香酸等の不飽和基含有芳香族カルボン酸;不飽和基含有イソシアネート等が挙げられる。
【0085】
不飽和基含有ジカルボン酸無水物としては、マレイン酸無水物、シクロヘキサンジカルボン酸無水物、及び5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸等が挙げられる。
不飽和基含有イソシアネートとしては、前述のイソシアネート基含有(メタ)アクリレートを好ましく用いることができる。
【0086】
重合性化合物(B1)の具体例としては、下記の化合物が挙げられる。下記式中、X1は、1以上10以下の整数である、X2は1以上5以下の整数です。
【化9】
【0087】
重合性化合物(B)は、所望する効果が損なわれない範囲で重合性化合物(B1)とともに、重合性化合物(B1)に該当しない重合性化合物を含んでいてもよい。
重合性化合物(B)の質量に対する、重合性化合物(B1)の質量の比率は、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上がさらに好ましく、90質量%以上が特に好ましく、100質量%が最も好ましい。
【0088】
重合性化合物(B2)は、1つのラジカル重合性基を有する単官能化合物であっても、2つ以上のラジカル重合性基を有する多官能化合物であってもよく、多官能モノマー化合物が好ましい。
【0089】
単官能化合物としては、例えば、(メタ)アクリルアミド、メチロール(メタ)アクリルアミド、メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、プロポキシメチル(メタ)アクリルアミド、ブトキシメトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸、クロトン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、tert-ブチルアクリルアミドスルホン酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-フェノキシ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロピルフタレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノ(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2,2,2-トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、フタル酸誘導体のハーフ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの単官能化合物は、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0090】
多官能化合物としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサングリコールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(3-(メタ)アクリロイルオキシプロピル)エーテル、グリセリンジ(メタ)アクリレート、グリセリンエチレンオキサイド(EO)付加物のトリ(メタ)アクリレート、グリセリンプロピレンオキサイド(PO)付加物のトリ(メタ)アクリレート、グリセリンEO/PO共付加物のトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレンEO付加物のトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンPO付加物のトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンEO/PO共付加物のトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタンEO付加物のトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタンPO付加物のトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタンEO/PO共付加物のトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート、テトラペンタエリスリトールノナ(メタ)アクリレート、テトラペンタエリスリトールデカ(メタ)アクリレート、ペンタペンタエリスリトールウンデカ(メタ)アクリレート、ペンタペンタエリスリトールドデカ(メタ)アクリレート、ジメチロール-トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、1,3-アダマンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3,5-アダマンタントリオールジ(メタ)アクリレート、1,3,5-アダマンタントリオールトリ(メタ)アクリレート、1,4-シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、2,2-ビス(4-(メタ)アクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(メタ)アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、2-ヒドロキシ-3-(メタ)アクリロイルオキシプロピル(メタ)アクリレート、9,9-ビス[4-(2-(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9-ビス[4-(2-(メタ)アクリロイルオキシプロポキシ)-3-メチルフェニル]フルオレン、9,9-ビス[4-(2-(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)-3、5-ジメチルフェニル]フルオレン、エチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、フタル酸ジグリシジルエステルジ(メタ)アクリレート、グリセリントリアクリレート、グリセリンポリグリシジルエーテルポリ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート(すなわち、トリレンジイソシアネート)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートとヘキサメチレンジイソシアネートと2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとの反応物、トリ((メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミドメチレンエーテル、多価アルコールとN-メチロール(メタ)アクリルアミドとの縮合物等の多官能化合物や、トリアクリルホルマール等が挙げられる。これらの多官能化合物は、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0091】
また、特公昭48-41708号公報、特公昭50-6034号公報、及び特開昭51-37193号公報に記載されるウレタン(メタ)アクリレート類;特開昭48-64183号公報、特公昭49-43191号公報、及び特公昭52-30490号公報に記載されるポリエステル(メタ)アクリレート類;エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸との反応生成物であるエポキシ(メタ)アクリレート類;特開2008-292970号公報の段落[0254]~[0257]に記載の化合物;多官能カルボン酸にグリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基とエチレン性不飽和基を有する化合物を反応させて得られる多官能(メタ)アクリレート;特開2010-160418号公報、特開2010-129825号公報、及び特許第4364216号等に記載される、フルオレン環を有し、エチレン性不飽和結合を有する基を2個以上有する化合物やカルド樹脂;特公昭46-43946号公報、特公平1-40337号公報、及び特公平1-40336号公報に記載の不飽和化合物;特開平2-25493号公報に記載のビニルホスホン酸系化合物;特開昭61-22048号公報に記載のペルフルオロアルキル基を含む化合物;日本接着協会誌,vol.20,No.7,300~308ページ(1984年)に記載される光重合性モノマー及びオリゴマーも重合性化合物(B2)として使用され得る。
【0092】
第1の感光性樹脂組成物における重合性化合物(B)の含有量は、所望する効果が損なわれない範囲で特に限定されない。第1の感光性樹脂組成物における重合性化合物(B)の含有量は、後述する有機溶媒(S)の質量を除いた第1の感光性樹脂組成物の質量を100質量部としたときに、1質量部以上70質量部以下が好ましく、1質量部以上40質量部以下がより好ましく、1質量部以上25質量部以下が特に好ましい。
【0093】
[光ラジカル開始剤(C)]
第1の感光性樹脂組成物は、光ラジカル開始剤(C)を含む。
光ラジカル開始剤(C)として具体的には、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-〔4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル〕-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、2-ヒロドキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン、1-(4-ドデシルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、ビス(4-ジメチルアミノフェニル)ケトン、2-メチル-1-〔4-(メチルチオ)フェニル〕-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタン-1-オン、2-(4-メチルベンジル)-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタン-1-オン、1-フェニル-1,2-プロパンジオン-2-(O-エトキシカルボニル)オキシム、1-フェニル-1,2-プロパンジオン-2-(O-メトキシカルボニル)オキシム、1-フェニル-2-(ベンゾイルオキシムイミノ)-1-プロパノン、1-フェニル-1,2-ブタジオン-2-(o-メトキシカルボニル)オキシム、1,3-ジフェニルプロパントリオン-2-(o-エトキシカルボニル)オキシム、エタノン,1-フェニル-1,2-プロパンジオン-2-(O-ベンゾイル)オキシム、1-フェニル-3-エトキシプロパントリオン-2-(O-ベンゾイル)オキシム、O-アセチル-1-[6-(2-メチルベンゾイル)-9-エチル-9H-カルバゾール-3-イル]エタノンオキシム(Irgacure OXE02、BASFジャパン社製)、(9-エチル-6-ニトロ-9H-カルバゾール-3-イル)[4-(2-メトキシ-1-メチルエトキシ)-2-メチルフェニル]メタノンO-アセチルオキシム、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(0-アセチルオキシム)、2-(ベンゾイルオキシイミノ)-1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-1-オクタノン(Irgacure OXE01、BASFジャパン社製)、NCI-831(ADEKA社製)、NCI-930(ADEKA社製)、OXE-03(BASFジャパン社製)、OXE-04(BASFジャパン社製)、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、4-ベンゾイル-4’-メチルジメチルスルフィド、4-ジメチルアミノ安息香酸、4-ジメチルアミノ安息香酸メチル、4-ジメチルアミノ安息香酸エチル、4-ジメチルアミノ安息香酸ブチル、4-ジメチルアミノ安息香酸2-エチルヘキシル、4-ジメチルアミノ安息香酸2-イソアミル、4-ジエチル安息香酸エチル、ベンジル-β-メトキシエチルアセタール、ベンジルジメチルケタール、1-フェニル-1,2-プロパンジオン-2-(O-エトキシカルボニル)オキシム、o-ベンゾイル安息香酸メチル、ベンゾイルギ酸メチル、ベンゾイルギ酸エチル、2,4-ジエチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、1-クロロ-4-プロポキシチオキサントン、チオキサンテン、2-クロロチオキサンテン、2,4-ジエチルチオキサンテン、2-メチルチオキサンテン、2-イソプロピルチオキサンテン、アントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-tert-ブチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、2-アミノアントラキノン、β-クロルアントラキノン、1,2-ベンズアントラキノン、2,3-ジフェニルアントラキノン、アントロン、ベンズアントロン、ジベンズスベロン、メチレンアントロン、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキシド、クメンヒドロペルオキシド、2-メルカプトベンゾイミダゾール、2-メルカプトベンゾオキサゾール、2-メルカプトベンゾチアゾール、2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジ(m-メトキシフェニル)-イミダゾリル二量体、ベンゾフェノン、2-クロロベンゾフェノン、p,p’-ビスジメチルアミノベンゾフェノン、4,4’-ビスジエチルアミノベンゾフェノン、4,4’-ジクロロベンゾフェノン、3,3-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン、4-ヒドロキシベンゾフェノン、4-フェニルベンゾフェノン、フルオレノン、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン-n-ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトフェノン、2,2-ジエトキシアセトフェノン、p-ジメチルアセトフェノン、p-ジメチルアミノプロピオフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン、ジクロロアセトフェノン、トリクロロアセトフェノン、p-tert-ブチルアセトフェノン、2-フェニルアセトフェノン、p-ジメチルアミノアセトフェノン、p-tert-ブチルトリクロロアセトフェノン、p-tert-ブチルジクロロアセトフェノン、α,α-ジクロロ-4-フェノキシアセトフェノン、チオキサントン、2-メチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン、2-ヒドロキシ-3-(3,4-ジメチル-9-オキソ-9H-チオキサンテン-2-イロキシ)-N,N,N-トリメチル-1-プロパナミニウムクロリド、4-アジドベンザルアセトフェノン、2,6-ビス(p-アジドベンジリデン)シクロヘキサン、2,6-ビス(p-アジドベンジリデン)-4-メチルシクロヘキサノン、ジベンゾスベロン、ペンチル-4-ジメチルアミノベンゾエート、9-フェニルアクリジン、1,7-ビス-(9-アクリジニル)ヘプタン、1,5-ビス-(9-アクリジニル)ペンタン、1,3-ビス-(9-アクリジニル)プロパン、p-メトキシトリアジン、2,4,6-トリス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-メチル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-[2-(5-メチルフラン-2-イル)エテニル]-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-[2-(フラン-2-イル)エテニル]-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-[2-(4-ジエチルアミノ-2-メチルフェニル)エテニル]-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-[2-(3,4-ジメトキシフェニル)エテニル]-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(4-メトキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(4-エトキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(4-n-ブトキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2,4-ビス-トリクロロメチル-6-(3-ブロモ-4-メトキシ)フェニル-s-トリアジン、2,4-ビス-トリクロロメチル-6-(2-ブロモ-4-メトキシ)フェニル-s-トリアジン、2,4-ビス-トリクロロメチル-6-(3-ブロモ-4-メトキシ)スチリルフェニル-s-トリアジン、2,4-ビス-トリクロロメチル-6-(2-ブロモ-4-メトキシ)スチリルフェニル-s-トリアジン、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルケトン、ジベンジルケトン、4-ベンゾイル-4’-メチル-ジフェニルサルファイド、アルキル化ベンゾフェノン、3,3’,4,4’-テトラ(t-ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、4-ベンゾイル-N,N-ジメチル-N-[2-(1-オキソ-2-プロペニルオキシ)エチル]ベンゼンメタナミニウムブロミド、(4-ベンゾイルベンジル)トリメチルアンモニウムクロリド、2-ヒドロキシ-3-(4-ベンゾイルフェノキシ)-N,N,N-トリメチル-1-プロペンアミニウムクロリド一水塩、ナフタレンスルフォニルクロライド、キノリンスルホニルクロライド、N-フェニルチオアクリドン、ベンズチアゾールジスルフィド、トリフェニルホスフィン、四臭素化炭素、トリブロモフェニルスルホン等が挙げられる。これらの光ラジカル開始剤(C)は、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
感度が良好である点からは、光ラジカル開始剤(C)としては、オキシムエステル系光開始剤が好ましい。
【0094】
光ラジカル開始剤(C)の中では、第1の感光性樹脂組成物の感度の点で、オキシムエステル化合物が好ましい。
オキシムエステル化合物としては、下記式(c1)で表される部分構造を有する化合物が好ましい。
【0095】
【化10】
(式(c1)中、
n1は、0、又は1であり、
c2は、一価の有機基であり、
c3は、水素原子、置換基を有してもよい炭素原子数1以上20以下の脂肪族炭化水素基、又は置換基を有してもよいアリール基であり、
*は結合手である。)
【0096】
第1の感光性樹脂組成物における、光ラジカル開始剤(C)の含有量は、第1の感光性樹脂組成物が所望するフォトリソグラフィー特性を有する限り特に限定されない。第1の感光性樹脂組成物における光ラジカル開始剤(C)の含有量は、典型的には、ポリイミド樹脂前駆体(A1)の質量と、重合性化合物(B)の質量との合計100質量部に対して、0.01質量以上20質量部以下が好ましく、0.1質量部以上15質量部以下がより好ましく、1質量部以上10質量部以下がさらに好ましい。
【0097】
[有機溶媒(S)]
第1の感光性樹脂組成物は、塗布性の調整の目的等で有機溶媒(S)を含んでいてもよい。有機溶媒(S)の種類は、ポリイミド樹脂前駆体(A1)やその他の成分が良好に溶解する限り特に限定されない。
【0098】
ポリイミド樹脂前駆体(A1)の溶解性が良好である点から、有機溶媒(S)の具体例としては、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、ヘキサメチルホスホルアミド、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、N,N-ジメチルイソ酪酸アミド、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、N,N-ジメチルプロピオンアミド、N,N-ジメチルイソブチルアミド、N,N-ジメチルプロピレン尿素等の含窒素極性溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2-ヘプタノン、3-ヘプタノン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、及びイソホロン等のケトン類;γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、δ-バレロラクトン、γ-カプロラクトン、ε-カプロラクトン、α-メチル-γ-ブチロラクトン、乳酸メチル、乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸-n-プロピル、酢酸-n-ブチル、酢酸イソブチル、酢酸イソペンチル、ギ酸-n-ペンチル、プロピオン酸-n-ブチル、酪酸イソプロピル、酪酸エチル、酪酸-n-ブチル、メトキシ策酸メチル、メトキシ酢酸エチル、メトキシ酢酸-n-ブチル、エトキシ酢酸メチル、エトキシ酢酸エチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、2-メトキシプロピオン酸メチル、2-メトキシプロピオン酸エチル、2-エトキシプロピオン酸メチル、2-エトキシプロピオン酸エチル、2-メトキシ-2-メチルプロピオン酸メチル、2-エトキシ-2-メチルプロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸-n-プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2-オキソブタン酸メチル、2-オキソブタン酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、等のエステル類;ジアセトンアルコール、及び3-メチル-3-メトキシブタノール等のアルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、等のグリコールエーテル類;アニソール等の芳香族エーテル類;ジオキサン、及びテトラヒドロフラン等の環状エーテル類;エチレンカーボネート、及びプロピレンカーボネート等の環状エステル類;アニソール、トルエン、及びキシレン等の芳香族溶媒;リモネン等の脂肪族炭化水素類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類が挙げられる。
【0099】
有機溶媒(S)の使用量は、均一な液状の第1の感光性樹脂組成物を調製できれば特に限定されない。第1の感光性樹脂組成物は、懸濁液でも溶液であってもよく、溶液であるのが好ましい。典型的には、有機溶媒(S)は、第1の感光性樹脂組成物の固形分濃度が、好ましくは15質量%以上50質量%以下、より好ましくは20質量%以上45質量%以下であるように用いられる。
【0100】
[その他の成分]
第1の感光性樹脂組成物は、必要に応じて、以上説明した成分以外の種々の添加剤を含有していてもよい。添加剤としては、ポリイミド樹脂前駆体(A1)以外の樹脂、着色剤、分散剤、増感剤、密着促進剤、重合禁止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、凝集防止剤、消泡剤、界面活性剤、イミド化促進剤、密着性向上剤としての含窒素複素環化合物、及びシランカップリング剤等が挙げられる。また、感光性樹脂組成物は、必要に応じて、種々の充填材、又は強化材を含んでいてもよい。
【0101】
増感剤としては、公知の化合物を使用できる。増感剤としては、例えば、ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、ジエチルチオキサントン、N-フェニルジエタノールアミン、N-フェニルグリシン、7-ジエチルアミノ-3-ベンゾイルクマリン、7-ジエチルアミノ―4-メチルクマリン、N-フェニルモルホリン、及びこれらの誘導体が挙げられる。
【0102】
重合禁止剤としては、公知の化合物を使用できる。重合禁止剤としては、例えば、フェノール性水酸基を有する化合物や、ニトロソ化合物、N-オキシド化合物、キノン化合物、N-オキシル化合物、及びフェノチアジン化合物等が挙げられる。より具体的には、重合禁止剤としては、Irganox1010、Irganox1035、Irganox1098、Irganox1135、Irganox245、Irganox259、Irganox3114、(いずれもBASFジャパン社製)、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール、及び4-メトキシフェノールが好ましく、Irganox1010、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール、及び4-メトキシフェノールがより好ましい。
【0103】
重合禁止剤の使用量は、ポリイミド樹脂前駆体(A)の質量に対して、0.005質量%以上1質量%以下が好ましく、0.01質量%以上0.5質量%以下がより好ましく、0.03質量%以上0.3質量%以下がさらに好ましい。
【0104】
含窒素複素環化合物は、金属表面に配位して安定化することにより、第1の感光性樹脂組成物を用いて形成される膜の金属表面に対する密着性を向上させる。含窒素複素環化合物としては、公知の化合物を使用できる。含窒素複素間化合物としては、例えば、イミダゾール、ピラゾール、インダゾール、カルバソール、トリアゾール、ピラゾリン、ピラゾリジン、テトラゾール、ピリジン、ピペリジン、ピリミジン、ピラジン、トリアジン、シアヌル酸、イソシアヌル酸、及びそれらの誘導体が挙げられる。金属との配位性の観点から好ましい含窒素複素間化合物の具体例としては、1H-ベンゾトリアゾール、4-メチル-1H-メチルベンゾトリアゾール、5-メチル-1H-メチルベンゾトリアゾール、4-カルボキシ-1H-メチルベンゾトリアゾール、及び5-カルボキシ-1H-メチルベンゾトリアゾール等のトリアゾール類や、1H-テトラゾール、5-メチル-1H-テトラゾール、及び5-フェニル-1H-テトラゾール等のトリアゾール類が挙げられる。
【0105】
第1の感光性樹脂組成物の優れた現像性と、第1の感光性樹脂組成物を用いて形成される膜の基板等への密着性の向上とを両立する観点から、含窒素複素環化合物の使用量は、ポリイミド樹脂前駆体(A)の質量に対して、0.01質量%以上5質量%以下が好ましく、0.05質量%以上3質量%以下がより好ましい。
【0106】
シランカップリング剤を第1の感光性樹脂組成物に配合することにより、第1の感光性樹脂組成物を用いて形成される膜の基板等に対する密着性を向上させることができる。シランカップリング剤としては、公知の化合物を使用できる。シランカップリング剤としては、例えば、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2-(エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2-(エポキシシクロヘキシル)トリエトキシシラン、トリス(3-トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、トリス(3-トリエトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、3-アミノプロピルトリメトキシシランと酸無水物との反応物、3-アミノプロピルトリエトキシシランと酸無水物との反応物等が挙げられる。
3-アミノプロピルトリメトキシシラン、又は3-アミノプロピルトリエトキシシランと反応させる酸無水物としては、無水コハク酸、無水マレイン酸、ナジック酸無水物、3-ヒドロキシフタル酸無水物、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、及び4,4’-オキシジフタル酸二無水物等が挙げられる。
【0107】
シランカップリング剤の使用量は、ポリイミド樹脂前駆体(A)の質量に対して、0.01質量%以上10質量%以下が好ましい。
【0108】
界面活性剤を第1の感光性樹脂組成物に配合することにより、第1の感光性樹脂組成物の塗布性が向上し、また第1の感光性樹脂組成物の基板との濡れ性が向上する。界面活性剤としては、公知の化合物を使用できる。界面活性剤としては、例えば、フッ素系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、及びシリコーン系界面活性剤等が挙げられる。
【0109】
界面活性剤の使用量は、ポリイミド樹脂前駆体(A1)の質量に対して、0.001質量%以上1質量%以下が好ましい。
【0110】
ポリイミド樹脂前駆体(A1)は、加熱によりポリイミド樹脂に変換され得る。このため、第1の感光性樹脂組成物が、環化促進剤を含有していてもよい。環化促進剤は、閉環、及びイミド化を促進させ、その結果、加熱によるポリイミド樹脂前駆体(A1)からのポリイミド樹脂の生成を促進させる。
第1の感光性樹脂組成物が環化促進剤を含む場合、第1の感光性樹脂組成物を用いて、環化によってポリイミド樹脂を生成させつつ形成された膜の、機械特性や耐候信頼性が向上する。環化促進剤としては、公知の熱塩基発生剤や熱酸発生剤が用いられる。
【0111】
各種添加剤の使用量は、所望する効果が損なわれない範囲で特に限定されない。使用量が上記されていない添加剤についての使用量は、第1の感光性樹脂組成物の固形分の質量に対して、例えば、0.001質量%以上60質量%以下の範囲内で適宜調整すればよく、好ましくは0.01質量%以上5質量%以下である。
【0112】
[第1の感光性樹脂組成物の製造方法]
以上説明した、必須の成分と、必要に応じて任意の成分とを、それぞれ所望する量均一に混合することにより第1の感光性樹脂組成物を製造できる。混合方法は特に限定されない。第1の感光性樹脂組成物中の異物を除去する目的で、感光性樹脂組成物をフィルターによって濾過することが好ましい。
【0113】
<第2の感光性組成物>
第1の感光性組成物は、ポリイミド樹脂前駆体(A2)と、重合性化合物(B)と、光ラジカル開始剤(C)とを含む。
ポリイミド樹脂前駆体(A2)は、(メタ)アクリレート変性ポリアミド樹脂と、多官能アミン化合物と、2以上のジカルボン酸無水物基を有する多官能酸無水物との反応物である、伸長ポリアミド樹脂である。
(メタ)アクリレート変性ポリアミド樹脂は、ポリアミド酸が有するカルボキシ基の少なくとも一部を、イソシアネート基含有(メタ)アクリレートと反応させた樹脂である。
ポリアミド酸は、テトラカルボン酸二無水物と、ジアミン化合物との重合体である。
ポリアミド酸の原料であるジアミン化合物は、ダイマージアミン、及び芳香族ジアミンからなる。
重合性化合物(B)は、ダイマージアミンに由来するダイマージアミン残基、及び/又はダイマー酸に由来するダイマー酸残基を含み、2つのラジカル重合性基を有する重合性化合物(B1)を含む。
【0114】
上記の第2の感光性組成物を用いることにより、誘電正接が低く、基板への密着性に優れるパターン化されたポリイミド樹脂膜を形成することができる。
【0115】
以下、第2の感光性組成物が含む、必須、又は任意の成分について説明する。
【0116】
[ポリイミド樹脂前駆体(A2)]
ポリイミド樹脂前駆体(A2)は、(メタ)アクリレート変性ポリアミド樹脂と、多官能アミン化合物と、2以上のジカルボン酸無水物基を有する多官能酸無水物との反応物である、伸長ポリアミド樹脂である。
(メタ)アクリレート変性ポリアミド樹脂は、ポリアミド酸が有するカルボキシ基の少なくとも一部を、イソシアネート基含有(メタ)アクリレートと反応させた樹脂である。
ポリアミド酸は、テトラカルボン酸二無水物と、ジアミン化合物との重合体である。
ポリアミド酸の原料であるジアミン化合物は、ダイマージアミン、及び芳香族ジアミンからなる。
つまり、ポリイミド樹脂前駆体(A2)の原料であるポリアミド酸は、ポリイミド樹脂前駆耐(A1)について説明したポリアミド酸と同様である。
また、ポリイミド樹脂前駆体(A2)の原料である(メタ)アクリレート変性ポリアミド樹脂は、ポリイミド樹脂前駆耐(A1)について説明した(メタ)アクリレート変性ポリアミド樹脂と同様である。
かかるポリイミド樹脂前駆体(A2)は、重合性化合物(B)との相溶性に優れる。
【0117】
ポリイミド樹脂前駆体(A2)としての伸長ポリアミド樹脂の製造に用いられる、多官能アミン化合物は、2つ以上のアミノ基を有する化合物であれば特に限定されない。多官能アミン化合物は、2つのアミノ基を有するジアミン化合物であるのが好ましい。
ジアミン化合物としては、特に限定されない。ジアミン化合物としては、ポリイミド樹脂前駆耐(A1)について説明したジアミン化合物を好適に用いることができる。
【0118】
ポリイミド樹脂前駆体(A2)としての伸長ポリアミド樹脂の製造に用いられる、多官能酸無水物は、2つ以上のジカルボン酸無水物基を有する化合物であれば特に限定されない。多官能酸無水物化合物は、2つのジカルボン酸無水物基を有するテトラカルボン酸二無水物であるのが好ましい。
テトラカルボン酸二無水物としては、特に限定されない。テトラカルボン酸二無水物としては、ポリイミド樹脂前駆耐(A1)について説明したテトラカルボン酸二無水物を好適に用いることができる。
【0119】
(メタ)アクリレート変性ポリアミド樹脂と、多官能アミン化合物と、多官能酸無水物との反応は、ジアミン化合物と、テトラカルボン酸二無水物とを反応させる公知のポリアミド酸の製造方法に従って行われる。
(メタ)アクリレート変性ポリアミド樹脂と、多官能アミン化合物と、多官能酸無水物との反応は、典型的には、有機溶媒中で行われる。有機溶媒としては、ポリアミド酸の製造時に使用される得る前述の有機溶媒が挙げられる。
(メタ)アクリレート変性ポリアミド樹脂と、多官能アミン化合物と、多官能酸無水物との反応の条件は、10℃以上60℃以下の反応時間、0.5時間以上24時間以下の時間が好ましい。
【0120】
(メタ)アクリレート変性ポリアミド樹脂の質量、多官能アミン化合物の質量、及び多官能酸無水物の質量の合計に対する、(メタ)アクリレート変性ポリアミド樹脂の質量の比率は、62質量%以上、65質量%以上、70質量%以上、75質量%以上、80質量%以上、85質量%以上、90質量%以上、又は95質量%以上であってよい。
(メタ)アクリレート変性ポリアミド樹脂の質量、多官能アミン化合物の質量、及び多官能酸無水物の質量の合計に対する、(メタ)アクリレート変性ポリアミド樹脂の質量の比率は、100質量%未満、95質量%以下、90質量%以下、85質量%以下、80質量%以下、75質量%以下、70質量%以下、又は65質量%以下であってよい。
(メタ)アクリレート変性ポリアミド樹脂の質量、多官能アミン化合物の質量、及び多官能酸無水物の質量の合計に対する、(メタ)アクリレート変性ポリアミド樹脂の質量の比率は、例えば、62質量%以上100質量%未満が好ましく、65質量%以上95質量%以下がより好ましい。
【0121】
(メタ)アクリレート変性ポリアミド樹脂の質量、多官能アミン化合物の質量、及び多官能酸無水物の質量の合計に対する、多官能アミン化合物の質量の比率は、0.1質量%以上、0.5質量%以上、1質量%以上、2質量%以上、3質量%以上、4質量%以上、5質量%以上、7質量%以上、9質量%以上、10質量%以上、又は15質量%以上であってよい。
(メタ)アクリレート変性ポリアミド樹脂の質量、多官能アミン化合物の質量、及び多官能酸無水物の質量の合計に対する、多官能アミン化合物の質量の比率は、16質量%以下、15質量%以下、10質量%以下、9質量%以下、7質量%以下、5質量%以下、4質量%以下、3質量%以下、2質量%以下、1質量%以下、又は0.5質量%以下であってよい。
(メタ)アクリレート変性ポリアミド樹脂の質量、多官能アミン化合物の質量、及び多官能酸無水物の質量の合計に対する、多官能アミン化合物の質量の比率は、例えば、0.1質量%以上16質量%以下が好ましく、0.5質量%以上15質量%以下がより好ましい。
【0122】
(メタ)アクリレート変性ポリアミド樹脂の質量、多官能アミン化合物の質量、及び多官能酸無水物の質量の合計に対する、多官能酸無水物の質量の比率は、0.1質量%以上、0.5質量%以上、1質量%以上、2質量%以上、3質量%以上、4質量%以上、5質量%以上、7質量%以上、9質量%以上、10質量%以上、15質量%以上、又は20質量%以上であってよい。
(メタ)アクリレート変性ポリアミド樹脂の質量、多官能アミン化合物の質量、及び多官能酸無水物の質量の合計に対する、多官能酸無水物の質量の比率は、22質量%以下、20質量%以下、15質量%以下、10質量%以下、9質量%以下、7質量%以下、5質量%以下、4質量%以下、3質量%以下、2質量%以下、1質量%以下、又は0.5質量%以下であってよい。
(メタ)アクリレート変性ポリアミド樹脂の質量、多官能アミン化合物の質量、及び多官能酸無水物の質量の合計に対する、多官能酸無水物の質量の比率は、例えば、0.1質量%以上22質量%以下が好ましく、0.5質量%以上20質量%以下がより好ましい。
【0123】
[重合性化合物(B)]
重合性化合物(B)は、第1の感光性樹脂組成物について説明した重合性化合物(B)と同様である。
重合性化合物(B)は、ポリイミド樹脂前駆体(A2)との相溶性に優れる。
【0124】
第2の感光性樹脂組成物における重合性化合物(B)の含有量は、所望する効果が損なわれない範囲で特に限定されない。第2の感光性樹脂組成物における重合性化合物(B)の含有量は、後述する有機溶媒(S)の質量を除いた第2の感光性樹脂組成物の質量を100質量部としたときに、0.1質量部以上50質量部以下が好ましく、0.5質量部以上40質量部以下がより好ましく、1質量部以上25質量部以下が特に好ましい。
【0125】
[光ラジカル開始剤(C)]
光ラジカル開始剤(C)は、第1の感光性樹脂組成物について説明した光ラジカル開始剤(C)と同様である。
【0126】
第2の感光性樹脂組成物における、光ラジカル開始剤(C)の含有量は、第2の感光性樹脂組成物が所望するフォトリソグラフィー特性を有する限り特に限定されない第2の感光性樹脂組成物における光ラジカル開始剤(C)の含有量は、典型的には、ポリイミド樹脂前駆体(A2)の質量と、重合性化合物(B)の質量との合計100質量部に対して、0.01質量以上20質量部以下が好ましく、0.1質量部以上15質量部以下がより好ましく、1質量部以上10質量部以下がさらに好ましい。
【0127】
[有機溶媒(S)]
第2の感光性樹脂組成物は、塗布性の調整の目的等で有機溶媒(S)を含んでいてもよい。有機溶媒(S)の種類は、ポリイミド樹脂前駆体(A2)やその他の成分が良好に溶解する限り特に限定されない。
有機溶剤(S)は、第1の感光性樹脂組成物について説明した有機溶剤(S)と同様である。
【0128】
有機溶媒(S)の使用量は、均一な液状の第2の感光性樹脂組成物を調製できれば特に限定されない。第2の感光性樹脂組成物は、懸濁液でも溶液であってもよく、溶液であるのが好ましい。典型的には、有機溶媒(S)は、第2の感光性樹脂組成物の固形分濃度が、好ましくは15質量%以上50質量%以下、より好ましくは20質量%以上45質量%以下であるように用いられる。
【0129】
[その他の成分]
第2の感光性樹脂組成物は、必要に応じて、以上説明した成分以外の種々の添加剤を含有していてもよい。添加剤の種類、及び使用量は、第1の感光性樹脂組成物について説明した添加剤の種類、及び使用量と同様である。
【0130】
[第2の感光性樹脂組成物の製造方法]
以上説明した、必須の成分と、必要に応じて任意の成分とを、それぞれ所望する量均一に混合することにより第2の感光性樹脂組成物を製造できる。混合方法は特に限定されない。第2の感光性樹脂組成物中の異物を除去する目的で、感光性樹脂組成物をフィルターによって濾過することが好ましい。
【0131】
≪パターン化された樹脂膜の製造方法≫
基板上に、第1の態様、又は第2の態様にかかる感光性樹脂組成物を塗布して、塗布膜を形成することと、
塗布膜を位置選択的に露光することと、
露光された塗布膜を現像することと、を含む方法により、パターン化された樹脂膜を製造できる。
感光性樹脂組成物としては、第1の感光性樹脂組成物、及び第2の感光性樹脂組成物のいずれも使用できる。
【0132】
基板としては、特に限定されず、従来公知の基板を用いることができ、例えば、電子部品用の基板や、所定の配線パターンが形成された電子部品用の基板等を例示することができる。基板としては、シリコン基板やガラス基板等を用いることもできる。
【0133】
基板上への感光性樹脂組成物の塗布方法としては、スピンコート法、スリットコート法、ロールコート法、スクリーン印刷法、アプリケーター法等の方法を採用することができる。このようにして形成された塗布膜に対してはプレベークを行うのが好ましい。プレベーク条件は、感光性樹脂組成物中の各成分の種類、配合割合、塗布膜厚等によって異なるが、通常は70℃以上200℃以下で、好ましくは80℃以上150℃以下で、2分以上120分以下程度である。
上記のようにして形成された塗布膜に対して、所定のパターンのマスクを介して、活性光線又は放射線、例えば波長が300nm以上500nm以下の紫外線又は可視光線が位置選択的に照射(露光)される。
【0134】
放射線の線源としては、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、アルゴンガスレーザー等を用いることができる。また、放射線には、マイクロ波、赤外線、可視光線、紫外線、X線、γ線、電子線、陽子線、中性子線、イオン線等が含まれる。放射線照射量は、感光性樹脂組成物の組成や塗布膜の膜厚等によっても異なるが、例えば超高圧水銀灯使用の場合、100mJ/cm以上10000mJ/cm以下である。
【0135】
次いで、露光された塗布膜を、従来知られる方法に従って現像し、不要な部分を溶解、除去することにより、所定の形状にパターン化された樹脂膜が形成される。この際、感光性樹脂組成物に含まれる成分に応じた現像液が使用される。感光性樹脂組成物が、アルカリ可溶性基を有する樹脂を含む場合、現像液として、アルカリ性水溶液を使用できる。また、感光性樹脂組成物は、ラジカル重合性基を有するポリイミド樹脂前駆体(A1)、又はポリイミド樹脂前駆体(A2)と、重合性化合物(B)とを含むため露光により硬化し、有機溶媒に対して難溶化又は不溶化する。このため、現像液としては、前述の有機溶媒(S)を用いることができる。
【0136】
アルカリ現像液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア水、エチルアミン、n-プロピルアミン、ジエチルアミン、ジ-n-プロピルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(水酸化テトラメチルアンモニウム)、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、ピロール、ピペリジン、1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]-7-ウンデセン、1,5-ジアザビシクロ[4,3,0]-5-ノナン等のアルカリ類の水溶液を使用することができる。また、上記アルカリ類の水溶液にメタノール、エタノール等の水溶性有機溶媒や界面活性剤を適当量添加した水溶液を現像液として使用することもできる。
【0137】
現像時間は、感光性樹脂組成物の組成や感光性層の膜厚等によっても異なるが、通常1分以上30分以下の間である。現像方法は、液盛り法、ディッピング法、パドル法、スプレー現像法等のいずれでもよい。
【0138】
現像後は、必要に応じて洗浄を30秒以上90秒以下の間行い、エアーガンや、オーブン等を用いてパターン化された樹脂膜を乾燥させる。このようにして、基板の表面上に、所望する形状にパターン化された樹脂膜が形成される。洗浄溶剤については、特に限定されない。一例として、アルカリ現像した場合の洗浄溶剤としては、水やアルコール類等が使用可能である。有機溶剤にて現像した場合は、ソルベントショックが起きない範囲で、有機溶剤を使用可能である。
【0139】
≪パターン化された樹脂膜の製造方法≫
ポリイミド樹脂前駆体(A1)、又はポリイミド樹脂前駆体(A2)を含む樹脂膜は、加熱により閉環し、ポリイミド樹脂を生成させる。このため、現像後、必要に応じて、現像された塗布膜に対して、ベークを施すことにより、パターン化された樹脂膜中のポリイミド樹脂前駆体(A1)、又はポリイミド樹脂前駆体(A2)を、ポリイミド樹脂に変換できる。したがって、上記の方法により形成されるパターン化された樹脂膜を加熱することにより、パターン化されたポリイミド樹脂膜を形成できる。
加熱によるイミド化を行う場合、典型的には、加熱温度として、180℃以上400℃以下が好ましく、200℃以上350℃以下がより好ましい。
加熱時間は、加熱温度にもよるが、典型的には、1時間以上24時間以下が好ましく、2時間以上12時間以下がより好ましい。
【0140】
上記のようにして形成されるパターン化されたポリイミド樹脂膜は、例えば、半導体デバイスの絶縁膜、再配線層用層間絶縁膜や、タッチパネルディスプレーや有機電界発光表示パネル等における絶縁膜や保護膜として好適に用いられる。前述した感光性樹脂組成物は解像性が良好であることから、上記のようにして形成されるパターン化された樹脂膜は、特に、三次元実装デバイスにおける再配線層用層間絶縁膜等として、好ましく用いることができる。
また、上記のようにして形成されるパターン化された樹脂膜は、エレクトロニクス用のフォトレジスト、ガルバニック(電解)レジスト、エッチングレジスト、ソルダートップレジスト等としても好適に使用され得る。
さらに、上記のようにして形成されるパターン化されたポリイミド樹脂膜は、オフセット版面、又はスクリーン版面等の版面の製造、成形部品をエッチングする際のエッチングマスクの形成、エレクトロニクス部品、特に、マイクロエレクトロニクス部品における保護ラッカー、及び誘電層の製造等にも用いることもできる。
【実施例0141】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されない。
【0142】
〔調製例1〕
(ポリアミド酸の製造)
撹拌機、還流冷却管、温度計、及び窒素導入管を備えた反応容器に、ダイマージアミン(製品名:PRIAMINE 1075、クローダジャパン(株)製)270g(0.50mol)、ジエチレングリコールジメチルエーテル247.6gと、メチルシクロヘキサン52.2gとを仕込んだ。
反応容器の内温を、80~85℃に上げ、ダイマージアミンを溶媒に溶解させた。次いで、2,2-ビス[4-(3,4-ジカルボキシフェニルオキシ)フェニル]プロパン二無水物(製品名:BisDA-1000、SABICイノベーティブプラスチックスジャパン合同会社製)130g(0.25mol)と、ジエチレングリコールジメチルエーテル50gとを含むスラリーを、15分かけて反応容器に加えた。
次いで、冷却管を備えるディーンスターク管を反応容器に取り付けた。ディーンスターク管の液捕集部にメチルシクロヘキサンを満たした後、反応容器内の反応液を140℃まで加熱した。加熱する間、イミド化反応により副生した水を、ディーンスターク管ら排出した。
その後、反応容器内の反応液を150℃に加熱し、反応液を同温度で1時間保持した。
次いで、反応液を60℃まで冷却した。その後、m-トリジン(2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、セイカ(株)製)64.1g(0.302mol)と、N,N-ジメチルアセトアミド100gとを含むスラリーを、反応液に60℃で加えた。
さらに、168.4gのBisDA-1000と、144.8gのN,N-ジメチルアセトアミドとを含むスラリーを、55~60℃で、30分かけて反応液に加えた。
反応液を50℃まで冷却した後、反応液を同温度で1時間保持した。その後、反応液を室温に冷却し、反応液を室温で12時間撹拌した。
以上のようにして、ダイマージアミン、及びテトラカルボン酸に由来するイミド構造単位と、芳香族ジアミン、並びにテトラカルボン酸二無水物に由来するアミド酸構造単位を含むポリアミド酸を得た。
【0143】
((メタ)アクリレート変性ポリアミド樹脂の製造)
上記の方法で得られたポリアミド酸を含む反応液を、80℃に加熱した。次いで、2-イソシアナトエチルメタクリレート(製品名:カレンズMOI、昭和電工(株)製)108.2g(0.697mol)を、80℃で反応液に加えた。同温度で、7時間反応液を撹拌し、ポリアミド酸が有するカルボキシ基と、2-イソシアナトエチルメタクリレートとを反応させた。
反応終了後、反応液の質量に対して、4倍の質量のイソプロピルアルコールを用いて再沈殿を行って、精製された(メタ)アクリレート変性ポリアミド樹脂を得た。
【0144】
〔調製例2〕
(ポリアミド酸の製造)
撹拌機、還流冷却管、温度計、及び窒素導入管を備えた反応容器に、2,2-ビス[4-(3,4-ジカルボキシフェニルオキシ)フェニル]プロパン二無水物(製品名:BisDA-1000、SABICイノベーティブプラスチックスジャパン合同会社製)130g(0.25mol)と、ジエチレングリコールジメチルエーテル751.3gとメチルシクロヘキサン132.6gとを仕込んだ。
反応容器の内温を、80~85℃に上げ、2,2-ビス[4-(3,4-ジカルボキシフェニルオキシ)フェニル]プロパン二無水物を溶解させた。次いで、ダイマージアミン(製品名:PRIAMINE 1075、クローダジャパン(株)製)101.1g(0.187mol)を反応容器に加えた。
その後、冷却管を備えるディーンスターク管を反応容器に取り付けた。ディーンスターク管の液捕集部にメチルシクロヘキサンを満たした後、反応容器内の反応液を140℃まで加熱した。加熱する間、イミド化反応により副生した水を、ディーンスターク管ら排出した。
その後、反応容器内の反応液を150℃に加熱し、反応液を同温度で1時間保持した。
次いで、反応液を60℃まで冷却した。その後、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物220.4g(0.749mol)、及びN,N-ジメチルアセトアミド300gを含むスラリーを、60℃で反応容器に加えた。
さらに、m-トリジン156.6g(0.738mol)、及びN,N-ジメチルアセトアミド261.2gを含むスラリーを、55~60℃で、30分かけて反応液に加えた。反応液を50℃まで冷却した後、反応液を同温度で1時間保持した。その後、反応液を室温に冷却し、反応液を室温で12時間撹拌した。
以上のようにして、ダイマージアミン、及びテトラカルボン酸に由来するイミド構造単位と、芳香族ジアミン、並びにテトラカルボン酸二無水物に由来するアミド酸構造単位を含むポリアミド酸を得た。
【0145】
((メタ)アクリレート変性ポリアミド樹脂の製造)
上記の方法で得られたポリアミド酸を含む反応液を、80℃に加熱した。次いで、2-イソシアナトエチルメタクリレート(製品名:カレンズMOI、昭和電工(株)製)229.6g(1.480mol)を、80℃で反応液に加えた。同温度で、7時間反応液を撹拌し、ポリアミド酸が有するカルボキシ基と、2-イソシアナトエチルメタクリレートとを反応させた。
反応終了後、反応液の質量に対して、4倍の質量のイソプロピルアルコールを用いて再沈殿を行って、精製された(メタ)アクリレート変性ポリアミド樹脂を得た。
【0146】
(伸長ポリアミド樹脂の製造)
撹拌機、還流冷却管、温度計、及び窒素導入管を備えた反応容器に、精製された(メタ)アクリレート変性ポリアミド樹脂100gを加えた。次いで、反応容器内の(メタ)アクリレート変性ポリアミド樹脂を、固形分濃度が30質量%であるようにN,N-ジメチルアセトアミドに溶解させた。得られた溶液に、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物4.5g(0.015mol)を加えた。次いで、反応容器の内温を40℃に挙げた。同温度で、m-トリジン3.46g(0.016mol)、及びN,N-ジメチルアセトアミド43.9gを含むスラリーを、40~45℃で、30分かけて反応容器に加えた。
その後、反応液を40℃に冷却し、反応液を40℃で1時間保持した。その後、反応液を室温に冷却し、反応液を室温で12時間撹拌した。
反応終了後、反応液の質量に対して、4倍の質量のイソプロピルアルコールを用いて再沈殿を行って、(メタ)アクリレート変性ポリアミド樹脂と、ジアミン化合物と、テトラカルボン酸二無水物との反応物である精製された伸長ポリアミド樹脂を得た。
【0147】
〔実施例1~5、及び比較例1~5〕
実施例、及び比較例において、ポリイミド樹脂前駆体として以下の樹脂A1~A4を用いた。
A1:調整例1で得た(メタ)アクリレート変性ポリアミド樹脂
A2:調整例2で得た伸長ポリアミド樹脂
A3:下記式で表される構造単位からなるポリアミド酸
A4:下記式で表される構造単位からなるポリアミド酸
【化11】
【0148】
実施例1~5、比較例2、及び比較例5において、重合性化合物として以下のB1、~B4を用いた。なお、B2については、下記式中のX1が1~10である化合物の混合物である。B3については、下記式中のX2が1~5である化合物の混合物である。
B1:下記構造の化合物
B2:下記構造の化合物
B3:下記構造の化合物
B4:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
【化12】
【0149】
表1に記載の種類のポリイミド樹脂前駆体100質量部と、表1に記載の種類、及び量の重合性化合物と、光ラジカル開始剤(Irgacure OXE-02、BASFジャパン社製)5質量部とを、γ-ブチロラクトン300質量部に溶解させて、実施例1~5、比較例2、及び比較例5の感光性樹脂組成物を得た。
また、表1に記載の種類のポリイミド樹脂前駆体100質量部と、上記の光ラジカル開始剤(Irgacure OXE-02、BASFジャパン社製)5質量部とを、γ-ブチロラクトン300質量部に溶解させて、比較例1、比較例3、及び比較例4の感光性樹脂組成物を得た。
【0150】
上記のようにして得られた、各実施例、及び各比較例の感光性樹脂組成物を用いて、感光性樹脂組成物を用いて形成されたポリイミド樹脂膜の誘電正接と、基材への密着性(高速加速寿命試験(HAST)と、外観とを評価した。これらの評価結果を表1に記す。
なお、比較例2については、外観の評価が×であったため、誘電正接の評価と、基材への密着性の評価とを行わなかった。
【0151】
<誘電正接評価>
感光性樹脂組成物をシリコンウエハー上にスピンコーターにより塗布した後、感光性樹脂組成物の薄膜を90℃で240秒間ベークした。ベークされた塗布膜を、高圧水銀灯を用いて積算光量2000mJ/cmで露光した。露光後の膜をイナートオーブンにて、窒素雰囲気下で、温度を5℃/分の昇温速度で230℃まで昇温し、同温度にて塗布膜を1時間加熱した。温度が100℃まで下がったところで、ウエハを取り出し、2wt%フッ化水素酸水溶液に5分~30分間浸漬し、ウエハから樹脂膜を剥離することで、ポリイミド樹脂からなる樹脂膜を得た。剥離後の樹脂膜の膜厚は、10μmであった。
【0152】
得られたフィルムの誘電正接(tanδ)を、電子情報通信学会の信学技報 vol. 118, no. 506, MW2018-158, pp. 13-18, 2019年3月 「感光性絶縁フィルムの円筒空洞共振器法によるミリ波複素誘電率評価に関する検討」(高萩耕平(宇都宮大学)、海老澤和明(東京応化工業株式会社)、古神義則(宇都宮大学)、清水隆志(宇都宮大学))に記載された方法で測定した。ネットワークアナライザーHP8510C(キーサイト社製)を使用し、空洞共振器法で、室温25℃、湿度50%、周波数36GHz、サンプル厚さ10μmの条件で測定した。誘電正接の測定値に基づき、以下の基準に従い誘電正接の評価を行った。
〇:誘電正接値が0.01以下。
×:誘電正接値が0.01超。
【0153】
<高速加速寿命試験(HAST)>
感光性樹脂組成物を銅スパッタウエハー上にスピンコーターにより塗布した後、感光性樹脂組成物の薄膜を90℃で240秒間ベークした。ベークされた塗布膜を、高圧水銀灯を用いて積算光量2000mJ/cmで露光した。露光後の膜をイナートオーブンにて、窒素雰囲気下で、温度を5℃/分の昇温速度で230℃まで昇温し、同温度にて塗布膜を1時間加熱した。温度が100℃まで下がったところで、ウエハを取り出した。前記ウエハを恒温槽(ESPEC STH-120)を用いて120℃、相対湿度85%の環境に100時間さらした。前記ウエハを光学顕微鏡で観察し、浮きや剥がれが無いものを〇、あるものを×とした。
【0154】
<外観>
誘電正接の測定に用いたフィルムを目視で観察し、フィルムが濁りがなく透明であった場合を〇と評価し、フィルムが濁っていた場合を×と評価した。
フィルムに濁りがないことは、感光性樹脂組成物が均一であることを意味する。
【0155】
【表1】
【0156】
表1によれば、前述のポリイミド樹脂前駆体(A1)、又はポリイミド樹脂前駆体(A2)に該当するポリイミド樹脂前駆体と、前述の所定の要件を満たす重合性化合物(B)を含む感光性樹脂組成物は、均一であり、誘電正接が低く、基材への密着性に優れるポリイミド樹脂膜を与えることが分かる。