IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 国立大学法人 東京大学の特許一覧

特開2024-168324方向推定装置、方向推定システム、方向推定方法及び方向推定プログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168324
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】方向推定装置、方向推定システム、方向推定方法及び方向推定プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01S 15/42 20060101AFI20241128BHJP
   G01S 15/89 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
G01S15/42
G01S15/89 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023084885
(22)【出願日】2023-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】巻 俊宏
(72)【発明者】
【氏名】平林 紳一郎
(72)【発明者】
【氏名】横畑 大樹
【テーマコード(参考)】
5J083
【Fターム(参考)】
5J083AA02
5J083AB20
5J083AD04
5J083AD15
5J083AE10
5J083AF18
(57)【要約】
【課題】対象物の位置を測定するときの誤差を抑制することが可能な方向推定装置、方向推定システム、方向推定方法及び方向推定プログラムを提供する。
【解決手段】方向推定装置は、複数の方向に音波ビームを発するソナーによって測定された時系列の聴音結果であって、前記複数の方向の少なくとも一部を含む複数の聴音方向からの音波の前記聴音結果を示す聴音結果情報を取得する情報取得部と、前記聴音結果情報に基づいて、前記音波ビームが対象物に対して垂直に入射する垂直入射方向を推定する方向推定部と、を備える。
【選択図】図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の方向に音波ビームを発するソナーによって測定された時系列の聴音結果であって、前記複数の方向の少なくとも一部を含む複数の聴音方向からの音波の前記聴音結果を示す聴音結果情報を取得する情報取得部と、
前記聴音結果情報に基づいて、前記音波ビームが対象物に対して垂直に入射する垂直入射方向を推定する方向推定部と、を備える、
方向推定装置。
【請求項2】
前記聴音結果情報は、天頂角ごと及び偏角ごとの前記複数の聴音方向からの前記音波の前記聴音結果を示す、
請求項1に記載の方向推定装置。
【請求項3】
前記情報取得部は、前記聴音結果情報として、前記音波ビームが発された時刻からの経過時間及び前記偏角をそれぞれ半径及び中心角とする扇状の画像であって、前記音波ビームの前記対象物からの反響に応じた像が含まれる前記画像を示す画像情報を前記天頂角ごとに取得し、
前記方向推定部は、前記天頂角ごとの前記画像情報に基づいて前記垂直入射方向を推定する、
請求項2に記載の方向推定装置。
【請求項4】
前記方向推定部は、前記天頂角ごとの前記画像情報の示す各前記画像にそれぞれ含まれる各前記像の長さに基づいて前記垂直入射方向を推定する、
請求項3に記載の方向推定装置。
【請求項5】
前記方向推定部は、さらに、推定した前記垂直入射方向が前記音波ビームに含まれる場合の前記画像情報に基づいて前記ソナーと前記対象物との間の距離を算出する、
請求項3に記載の方向推定装置。
【請求項6】
前記対象物は、前記ソナーから見て直線状に見える、
請求項1に記載の方向推定装置。
【請求項7】
前記対象物を含む平面と前記ソナーとの間の距離は、前記ソナーと前記対象物との間の距離を基準として定められた値より小さい、
請求項6に記載の方向推定装置。
【請求項8】
前記方向推定装置は、
前記垂直入射方向及び前記距離の組を保持する記憶部と、
前記記憶部に保持された複数の前記組に基づいて前記対象物の形状を推定する形状推定部と、をさらに備える、
請求項5に記載の方向推定装置。
【請求項9】
前記ソナーは、マルチビームソナーである、
請求項1に記載の方向推定装置。
【請求項10】
前記ソナーは、スキャニングソナーである、
請求項1に記載の方向推定装置。
【請求項11】
ソナーが設けられた水中ロボットと、
請求項1から10のいずれか一項に記載の方向推定装置と、を備え、
前記ソナーは、複数の方向に音波ビームを発し、かつ、前記複数の方向の少なくとも一部を含む複数の聴音方向からの音波を聴音し、時系列の聴音結果を示す聴音結果情報を生成する、
方向推定システム。
【請求項12】
前記ソナーは、前記複数の聴音方向のうち、偏角ごとの前記聴音方向からの前記音波を測定するマルチビームソナーであり、
前記水中ロボットは、
前記複数の聴音方向のうち、天頂角ごとの前記聴音方向に前記ソナーを向ける機構を含む、
請求項11に記載の方向推定システム。
【請求項13】
方向推定装置における方向推定方法であって、
複数の方向に音波ビームを発するソナーによって測定された時系列の聴音結果であって、前記複数の方向の少なくとも一部を含む複数の聴音方向からの音波の前記聴音結果を示す聴音結果情報を取得することと、
前記聴音結果情報に基づいて、前記音波ビームが対象物に対して垂直に入射する垂直入射方向を推定することと、を含む、
方向推定方法。
【請求項14】
方向推定装置において用いられる方向推定プログラムであって、
コンピュータを、
複数の方向に音波ビームを発するソナーによって測定された時系列の聴音結果であって、前記複数の方向の少なくとも一部を含む複数の聴音方向からの音波の前記聴音結果を示す聴音結果情報を取得する情報取得部と、
前記聴音結果情報に基づいて、前記音波ビームが対象物に対して垂直に入射する垂直入射方向を推定する方向推定部と、として機能させるための、
方向推定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、方向推定装置、方向推定システム、方向推定方法及び方向推定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
船舶などの浮体の係留索の故障及び破断を遠隔から監視する係留索負荷監視システムがある(例えば、非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】LCM SYSTEMS.、Mooring Line Load Monitoring(MLM).、[令和5年4月21日検索]、インターネット〈URL:https://www.lcmsystems.com/Applications/load-cells-load-pins-for-mooring-line-load-monitoring-mlm〉
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
非特許文献1に記載の係留索負荷監視システムでは、係留索の上端又は中腹にひずみゲージなどのセンサが取り付けられ、センサの出力値が常時モニタリングされる。このモニタリングによって係留索の破断といった決定的なイベントを検出することや、張力過大による破断リスクを予測することが可能である。
【0005】
しかしながら、センサから得られるひずみなどは、あくまで索上のある点における断片的な情報にすぎず、係留索の全体的な形状及び挙動、並びに生物付着量及びその分布などを正確にモニタリングすることは難しい。
【0006】
これらを正確にモニタリングするためには、小さい誤差で係留索の位置を測定する技術が求められる。
【0007】
そこで、本発明は、対象物の位置を測定するときの誤差を抑制することが可能な方向推定装置、方向推定システム、方向推定方法及び方向推定プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る方向推定装置は、複数の方向に音波ビームを発するソナーによって測定された時系列の聴音結果であって、前記複数の方向の少なくとも一部を含む複数の聴音方向からの音波の前記聴音結果を示す聴音結果情報を取得する情報取得部と、前記聴音結果情報に基づいて、前記音波ビームが対象物に対して垂直に入射する垂直入射方向を推定する方向推定部と、を備える。
【0009】
従来のソナーでは、ソナーから見た対象物の方向と、ソナー及び対象物間の距離とが測定可能であるものの、対象物に対する音波ビームの入射角を正確に取得することが困難なため、対象物の位置測定に誤差が生じてしまう。これに対して、音波ビームが対象物に対して垂直に入射する垂直入射方向を推定する態様によれば、推定した垂直入射方向に、ソナーによって測定された距離だけ離れた位置を、誤差の抑制された対象物の位置として求めることができる。したがって、対象物の位置を測定するときの誤差を抑制することができる。
【0010】
上記態様において、前記聴音結果情報は、天頂角ごと及び偏角ごとの前記複数の聴音方向からの前記音波の前記聴音結果を示してもよい。
【0011】
この態様によれば、ソナーを基準とする極座標で複数の聴音方向を表すことができるので、垂直入射方向の推定処理を簡易にすることができる。
【0012】
上記態様において、前記情報取得部は、前記聴音結果情報として、前記音波ビームが発された時刻からの経過時間及び前記偏角をそれぞれ半径及び中心角とする扇状の画像であって、前記音波ビームの前記対象物からの反響に応じた像が含まれる前記画像を示す画像情報を前記天頂角ごとに取得し、前記方向推定部は、前記天頂角ごとの前記画像情報に基づいて前記垂直入射方向を推定してもよい。
【0013】
この態様によれば、像の天頂角に対する変化すなわち像の入射角に対する変化を容易に取得することができる。これにより、対象物に対する音波ビームの入射角に応じて像の長さが変化する性質を利用して、垂直入射方向の推定を容易に行うことができる。
【0014】
上記態様において、前記方向推定部は、前記天頂角ごとの前記画像情報の示す各前記画像にそれぞれ含まれる各前記像の長さに基づいて前記垂直入射方向を推定してもよい。
【0015】
この態様によれば、例えば、対象物が直線状の場合において、対象物に対して音波ビームが入射する角度が垂直に近いほど像の長さが短くなる性質を利用して、垂直入射方向を精度よく求めることができる。
【0016】
上記態様において、前記方向推定部は、さらに、推定した前記垂直入射方向が前記音波ビームに含まれる場合の前記画像情報に基づいて前記ソナーと前記対象物との間の距離を算出してもよい。
【0017】
この態様によれば、垂直入射方向が音波ビームに含まれる場合の画像では、扇の中心と像との間の距離が、音波ビームが対象物に対して垂直に入射する位置とソナーとの間の距離となる性質を利用して、音波ビームが対象物に対して垂直に入射する位置とソナーとの間の距離を精度よく算出することができる。
【0018】
上記態様において、前記対象物は、前記ソナーから見て直線状に見えてもよい。
【0019】
対象物が面状の場合、その方向を事前に推定して、適切な方向から計測することが求められる。例えば、対象物が平坦な海底面であれば上から計測することが求められ、垂直な壁面であれば横から計測することが求められる。この態様によれば、対象物の形状を直線状として取り扱うことができるので、事前に適切な方向を推定することなく計測することができる。また、対象物に対して音波ビームが入射する角度と像の長さとの関係式を簡易に導出することができる。これにより、垂直入射方向の推定を容易に行うことができる。
【0020】
上記態様において、前記対象物を含む平面と前記ソナーとの間の距離は、前記ソナーと前記対象物との間の距離を基準として定められた値より小さくてもよい。
【0021】
このように、対象物を含む平面の近傍にソナーが位置する態様により、垂直入射方向の推定精度の劣化を抑制することができる。
【0022】
上記態様において、前記方向推定装置は、前記垂直入射方向及び前記距離の組を保持する記憶部と、前記記憶部に保持された複数の前記組に基づいて前記対象物の形状を推定する形状推定部と、をさらに備えてもよい。
【0023】
この態様によれば、例えば、複数の組がそれぞれ表す複数の位置をよく近似する曲線を算出し、その曲線が対象物の形状を表すものとして対象物全体の形状を推定することができる。これにより、対象物における一部の位置の計測結果に基づいて、対象物全体の形状を推定することが可能となる。
【0024】
上記態様において、前記ソナーは、マルチビームソナーであってもよい。
【0025】
この態様によれば、複数の聴音方向からの音波の聴音結果を効率よく取得することができるとともに、聴音方向がばらつくことを抑制することができるので、垂直入射方向の推定精度の劣化を抑制することができる。
【0026】
上記態様において、前記ソナーは、スキャニングソナーであってもよい。
【0027】
この態様によれば、複数の聴音方向からの音波の聴音結果を低コストで取得することができる。
【0028】
本発明の他の態様に係る方向推定システムは、ソナーが設けられた水中ロボットと、上記方向推定部と、を備え、前記ソナーは、複数の方向に音波ビームを発し、かつ、前記複数の方向の少なくとも一部を含む複数の聴音方向からの音波を聴音し、時系列の聴音結果を示す聴音結果情報を生成する。
【0029】
従来のソナーでは、ソナーから見た対象物の方向と、ソナー及び対象物間の距離とが測定可能であるものの、対象物に対する音波ビームの入射角を正確に取得することが困難なため、対象物の位置測定に誤差が生じてしまう。これに対して、音波ビームが対象物に対して垂直に入射する垂直入射方向を推定する態様によれば、推定した垂直入射方向に、ソナーによって測定された距離だけ離れた位置を、誤差の抑制された対象物の位置として求めることができる。したがって、対象物の位置を測定するときの誤差を抑制することができる。また、水中を自在に移動できる水中ロボットにソナーが設けられるので、対象物の多くの位置を測定することができる。これにより、対象物の全体の形状を取得することができる。
【0030】
上記態様において、前記ソナーは、前記複数の聴音方向のうち、偏角ごとの前記聴音方向からの前記音波を測定するマルチビームソナーであり、前記水中ロボットは、前記複数の聴音方向のうち、天頂角ごとの前記聴音方向に前記ソナーを向ける機構を含んでもよい。
【0031】
この態様によれば、天頂角ごと及び偏角ごとの複数の聴音方向からの音波の聴音結果を示す聴音結果情報を簡易に生成することができる。
【0032】
本発明の他の態様に係る方向推定方法は、方向推定装置における方向推定方法であって、複数の方向に音波ビームを発するソナーによって測定された時系列の聴音結果であって、前記複数の方向の少なくとも一部を含む複数の聴音方向からの音波の前記聴音結果を示す聴音結果情報を取得することと、前記聴音結果情報に基づいて、前記音波ビームが対象物に対して垂直に入射する垂直入射方向を推定することと、を含む。
【0033】
従来のソナーでは、ソナーから見た対象物の方向と、ソナー及び対象物間の距離とが測定可能であるものの、対象物に対する音波ビームの入射角を正確に取得することが困難なため、対象物の位置測定に誤差が生じてしまう。これに対して、音波ビームが対象物に対して垂直に入射する垂直入射方向を推定する態様によれば、推定した垂直入射方向に、ソナーによって測定された距離だけ離れた位置を、誤差の抑制された対象物の位置として求めることができる。したがって、対象物の位置を測定するときの誤差を抑制することができる。
【0034】
本発明の他の態様に係る方向推定プログラムは、方向推定装置において用いられる方向推定プログラムであって、コンピュータを、複数の方向に音波ビームを発するソナーによって測定された時系列の聴音結果であって、前記複数の方向の少なくとも一部を含む複数の聴音方向からの音波の前記聴音結果を示す聴音結果情報を取得する情報取得部と、前記聴音結果情報に基づいて、前記音波ビームが対象物に対して垂直に入射する垂直入射方向を推定する方向推定部と、として機能させるためのプログラムである。
【0035】
従来のソナーでは、ソナーから見た対象物の方向と、ソナー及び対象物間の距離とが測定可能であるものの、対象物に対する音波ビームの入射角を正確に取得することが困難なため、対象物の位置測定に誤差が生じてしまう。これに対して、音波ビームが対象物に対して垂直に入射する垂直入射方向を推定する態様によれば、推定した垂直入射方向に、ソナーによって測定された距離だけ離れた位置を、誤差の抑制された対象物の位置として求めることができる。したがって、対象物の位置を測定するときの誤差を抑制することができる。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、対象物の位置を測定するときの誤差を抑制することが可能な方向推定装置、方向推定システム、方向推定方法及び方向推定プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】本開示の一実施形態に係る水中ロボットの係留索に対する位置を説明するための図である。
図2】本開示の一実施形態に係る方向推定システムの構成を示す図である。
図3】本開示の一実施形態に係る水中ロボットの構成を示す図である。
図4】本開示の一実施形態に係る水中ロボットにおけるMBSの向きを説明するための図である。
図5】本開示の一実施形態に係る水中ロボットにおけるMBSの向きを説明するための図である。
図6】本開示の一実施形態に係る水中ロボットにおけるMBSの向きを説明するための図である。
図7】本開示の一実施形態に係る音響画像の一例を示す図である。
図8】本開示の一実施形態に係る首振り機構の一例を示す図である。
図9】本開示の一実施形態に係る方向推定装置によって行われる方向推定の原理を説明するための図である。
図10】本開示の一実施形態に係る方向推定装置によって行われる方向推定の原理を説明するための図である。
図11】本開示の一実施形態に係る像の長さL* imageの理論解の首振り角αに対する変化の一例を示す図である。
図12】本開示の一実施形態に係る方向推定装置の構成を示す図である。
図13】本開示の一実施形態に係る像の長さL* imageの時間変化の一例を示す図である。
図14】本開示の一実施形態に係るフィッティング部によってフィッティングされた結果の一例を示す図である。
図15】本開示の一実施形態に係るフィッティング部によってスキャンごとに算出された対象角度α0の一例を示す図である。
図16】本開示の一実施形態に係るフィッティング部によってスキャンごとに算出された距離dの一例を示す図である。
図17】本開示の一実施形態に係る係留索の座標を算出する方法を説明するための図である。
図18】本開示の一実施形態に係る係留索の絶対座標の測定結果の一例を示す図である。
図19】本開示の一実施形態に係る係留索の絶対座標の測定結果の一例を示す図である。
図20】本開示の一実施形態に係る係留索の絶対座標の測定結果の一例を示す図である。
図21】本開示の一実施形態に係る係留索の絶対座標の測定結果の一例を示す図である。
図22】本開示の一実施形態に係る方向推定装置11が方向推定処理を行う際の動作手順を定めたフローチャートである。
図23】本開示の一実施形態に係る方向推定装置が測定処理を行う際の動作手順を定めたフローチャートである。
図24】本開示の一実施形態に係る方向推定装置が情報取得処理を行う際の動作手順を定めたフローチャートである。
図25】本開示の一実施形態に係る方向推定装置が対象物位置座標の算出処理を行う際の動作手順を定めたフローチャートである。
図26】本開示の一実施形態に係る方向推定装置の第1変形例におけるフィッティング部によってスキャンごとに算出された対象角度α0の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、各図において、同一の符号を付したものは、同一又は同様の構成を有する。
【0039】
[第1実施形態]
図1は、本開示の一実施形態に係る水中ロボットの係留索に対する位置を説明するための図である。
【0040】
各図面には、X軸、Y軸及びZ軸を示すことがある。X軸、Y軸及びZ軸は、地球に固定された座標軸であり、右手系の3次元の直交座標を形成する。鉛直下向きが、Z軸の正の方向である。つまり、X軸及びY軸は、水平方向を向いている。以下、X軸の矢印方向をX軸+側、矢印とは逆方向をX軸-側と呼ぶことがあり、その他の軸についても同様である。なお、Z軸+側及びZ軸-側を、それぞれ「下側」及び「上側」と呼ぶこともある。また、Z軸方向を「深さ方向」と呼ぶこともある。また、X軸、Y軸又はZ軸にそれぞれ直交する面を、YZ面、ZX面又はXY面と呼ぶことがある。
【0041】
係留索401(対象物)は、例えば、浮体式の風力発電において、風車を支える浮体を海底面Pbから係留するチェーンである。係留索401の一端が浮体に固定され、かつ、係留索401の他端が海底面Pbに固定されると、係留索401は自重で垂れ下がりカテナリ曲線(懸垂曲線)をなす。この垂れ下がった係留索401の自重によって係留力を得る係留方式は、カテナリ係留と呼ばれる。以下、係留索401を含む面を、移動面Pmと称することがある。本実施形態では、移動面Pmは、ZX面と平行である。
【0042】
水中ロボット111は、水中ロボット111の外部(例えば船上又は地上)から操作者が遠隔操作を行う遠隔操縦無人水中ロボット(Remotely Operated Vehicle : ROV)である。なお、水中ロボット111は、人間が直接乗り込んで操縦する水中ロボットでもよいし、人間による操縦等の支援を受けず、自律的にミッションをこなす水中ロボットでもよい。
【0043】
水中ロボット111は、例えば、5基のスラスタを有しており、サージ(Surge)、スウェイ(Sway)、ヒーブ(Heave)、ピッチ(Pitch)及びヨー(Yaw)の5つの自由度の制御が可能である。
【0044】
水中ロボット111には、マルチビームイメージングソナー(Multibeam Imaging Sonar)114(マルチビームソナー)(以下、MBS114と称することがある。)が設けられる。
【0045】
水中ロボット111は、外部からの遠隔操作に応じて、水中ロボット111を基準としたときの係留索401の位置(以下、相対位置と称することがある。)の測定に適した位置(以下、好適位置と称することがある。)を移動する。
【0046】
好適位置は、例えば、移動面PmとMBS114との間の距離が、MBS114と係留索401との間の距離より小さいという条件を満たす位置である。
【0047】
好ましくは、移動面PmとMBS114との間の距離が、MBS114と係留索401との間の距離を基準として定められた値より小さいという条件を満たす位置である。具体的には、移動面PmとMBS114との間の距離は、MBS114と係留索401との間の距離の100%(好ましくは、20%)より小さい。
【0048】
より好ましくは、好適位置は、例えば、MBS114が移動面Pmと交わるという条件を満たす位置である。この場合、移動面PmとMBS114との間の距離は、MBS114と係留索401との間の距離の例えば2%より小さい。
【0049】
具体的には、水中ロボット111における5基のスラスタが外部からの遠隔操作に応じて動作し、水中ロボット111が移動面Pm内において、深度を変えたり、水平方向に移動したりする。水中ロボット111が好適位置に存在するときは、MBS114から係留索401を見ると、係留索401は、直線状に見える。
【0050】
図2は、本開示の一実施形態に係る方向推定システムの構成を示す図である。図2に示すように、方向推定システム201は、コンピュータ101と、水中ロボット111と、を備える。
【0051】
コンピュータ101は、例えば、陸上に設けられる。なお、コンピュータ101は、浮体若しくは船舶又は水中ロボット111に設けられてもよい。
【0052】
コンピュータ101は、プロセッサ21と、バス22と、通信I/F(インタフェース)23と、メモリ24(記憶部)と、ディスク25(記憶部)と、を含む。コンピュータ101は、例えば、パーソナルコンピュータである。
【0053】
コンピュータ101では、プロセッサ21、通信部23、メモリ24及びディスク25は、互いにデータのやり取りが可能なようにバス22を介して接続される。
【0054】
メモリ24は、DRAM(Dynamic Random Access Memory)などの揮発性の記憶装置である。通信部23と、コンピュータ101の外部に設けられる水中ロボット111とは、例えばケーブルで接続される。通信部23は、ケーブルを通じて水中ロボット111と通信する。
【0055】
通信部23は、プロセッサ21からの指示に従って各種データを水中ロボット111へ送信する。また、通信部23は、水中ロボット111から送信された各種データを受信し、受信したデータをプロセッサ21へ出力する。
【0056】
ディスク25は、HDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)などの読み書きが可能な不揮発性の記憶装置であり、プログラム(コード)が保存されている。なお、ディスク25は、HDD及びSSDに限定するものではなく、メモリーカード又は読み込み専用のCD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)若しくはDVD-ROM(Digital Versatile Disc-Read Only Memory)などであってもよい。また、プログラムは、外部からインストールすることができる。また、プログラムは、ディスク25のようなコンピュータ101によって読み取り可能な記憶媒体に格納された状態で流通する。なお、プログラムは、通信インタフェースを経由して接続されたインターネット上で流通するものであってもよい。
【0057】
プロセッサ21は、プログラムの実行時において、ディスク25に保存されたプログラム及び当該プログラムの実行に必要なデータをメモリ24に転送する。プロセッサ21は、プログラムの実行に必要な処理命令及びデータをメモリ24から読み出し、処理命令の内容に従って演算処理を実行する。このとき、プロセッサ21は、プログラムの実行に必要なデータを新たに生成してメモリ24に保存する場合がある。なお、プロセッサ21は、プログラム及びデータをディスク25から取得する構成に限らず、インターネットを経由してサーバなどから取得する構成であってもよい。
【0058】
図3は、本開示の一実施形態に係る水中ロボットの構成を示す図である。図3に示すように、水中ロボット111は、通信部112と、首振り機構113と、MBS114と、スラスタ制御部115と、絶対座標測定部116と、首振り角測定部117と、を備える。
【0059】
水中ロボット111における通信部112は、コンピュータ101と通信する。スラスタ制御部115は、通信部112を通じてコンピュータ101から受信する制御情報に基づいて5つのスラスタを制御する。
【0060】
絶対座標測定部116は、例えば、地球上の基準点を基準としたときの水中ロボット111の位置を示す座標(以下、絶対座標と称することがある。)を測定する。
【0061】
絶対座標測定部116は、例えば、1軸の光ファイバジャイロ(Fiber Optic Gyro : FOG)と、ドップラー式速度計(Doppler Velocity Log : DVL)と、を含む。水中ロボット111の移動量は、例えば、FOGによって測定された方位角の角速度を積分して得られる方位角に沿って、DVLによって測定された水平方向の対地速度を積分することで算出される。絶対座標測定部116は、算出した移動量を初期位置の絶対座標に加えることで水中ロボット111の絶対座標を測定する。
【0062】
絶対座標測定部116は、例えば、水中ロボット111の絶対座標を所定の周期で測定し、測定した絶対座標を示す絶対座標情報を通信部112経由でコンピュータ101へ送信する。
【0063】
図4図6は、本開示の一実施形態に係る水中ロボットにおけるMBS114の向きを説明するための図である。
【0064】
図4図6に示すように、MBS114に固定された直交座標としてx軸、y軸及びz軸を定義する。x軸、y軸及びz軸は、右手系の3次元の直交座標を形成する。水中ロボット111が設計通りに移動して好適位置に存在するときは、x軸は、Y軸と平行であり、y軸及びz軸は、移動面Pmと平行である。
【0065】
図4は、y軸-側からMBS114を見たときの図である。図5は、x軸-側からMBS114を見たときの図である。図6は、z軸+側からMBS114を見たときの図である。
【0066】
MBS114は、複数の方向に音響ビーム411(音波ビーム)を発し、かつ、複数の方向の少なくとも一部を含む複数の聴音方向からの音波を聴音し、時系列の聴音結果を示す聴音結果情報を生成する。
【0067】
詳細には、MBS114は、1回の測定において、zx面内の複数の方向に音響ビーム411を発し、当該複数の方向からの音波を聴音する。音響ビーム411の進む方向及び音波を聴音する方向(例えば聴音方向Da)は、例えば、同じである。zx面内における聴音方向Daは、z軸を基準としたときの偏角βによって規定される。なお、音響ビーム411の進む方向及び音波を聴音する方向は、異なってもよい。
【0068】
すなわち、MBS114は、1回の測定において、複数の偏角βによってそれぞれ定まる複数の聴音方向Daに音響ビーム411を発し、当該複数の聴音方向Daからの音波を聴音する。
【0069】
図7は、本開示の一実施形態に係る音響画像の一例を示す図である。図4図7に示すように、MBS114は、音響ビーム411が発された時刻からの経過時間及び偏角βをそれぞれ半径及び中心角とする扇状の音響画像301であって、音響ビーム411の係留索401からの反響に応じた像302が含まれる音響画像301を生成する。本実施形態では、音響画像301には、音響ビーム411の海面からの反響に応じた像303がさらに含まれる。
【0070】
扇状の音響画像301の範囲内は、像が存在しうる領域である。MBS114の計測原点は、扇形の弧の両端を通る二つの半径の交点すなわち扇の中心に位置する。
【0071】
音響画像301内の座標表現(以下、音響画像座標と称することがある。)として、上記交点を原点とし、互いに直交するu軸及びv軸を定義する。u軸方向は、例えば、扇形の中心角を二等分する方向であり、z軸方向に発された音響ビーム411に基づく時系列の聴音結果が示されるようにとる。u軸を基準としたときの偏角βによって規定される方向Drは、聴音方向Da(図5参照)に発された音響ビーム411に基づく時系列の聴音結果が示される。
【0072】
扇形の半径は、MBS114で測定することのできる最大距離R(以下、測定レンジRと称することがある。)である。MBS114の測定レンジRは、係留索401のサイズに合わせて適切に設定される。
【0073】
MBS114が音響ビームに基づく反響を受波した場合、その方位と、音響ビーム411が発された時刻から反響を受波するまでの経過時間とによって像の位置が定まる。像は、反響が返ってくるまでの経過時間が短いほど音響画像座標の原点(0,0)の近くに位置し、また、当該経過時間が長いほど扇形の弧の近くに位置する。
【0074】
また、反響の強度が強いほど像が白く映る。音響画像301において扇形の領域の内部に白く映っている棒状の像302が係留索401の像である。水中ロボット111が設計通りに移動して好適位置に位置するときは、係留索401の像302は、u軸上において真っ直ぐに伸びた像となる。
【0075】
本実施形態では、MBS114は、測定ごとに音響画像301を生成する。MBS114は、例えば所定の周期で測定を行い、音響画像301を示す画像情報を通信部112経由でコンピュータ101へ送信する。
【0076】
図8は、本開示の一実施形態に係る首振り機構113の一例を示す図である。図8に示すように、首振り機構113は、水中ロボット111(図示しない)に固定される。
【0077】
首振り機構113は、例えば、モータによって回転する回転軸(図示しない)を有する。回転軸は、x軸と平行である。MBS114は、首振り機構113における回転軸に取り付けられる。これにより、MBS114を回転軸の周りに回転させることができる。
【0078】
本実施形態では、首振り機構113は、所定の角度範囲において、所定の角速度で回転軸を往復回転することによって、MBS114を連続して首振り運動させる。
【0079】
図4及び図8に示すように、首振り角測定部117は、MBS114の首振り角(天頂角)を測定する。本実施形態では、首振り角測定部117は、例えば、角度センサを含み、角度センサによって検出された首振り機構113の回転軸の角度すなわち首振り角を所定周期で取得する。首振り角測定部117は、取得した角度を示す首振り角情報を通信部112経由でコンピュータ101へ送信する。
【0080】
角度センサの測定タイミング及びMBS114の測定タイミングは、略同じが好ましい。なお、角度センサの測定タイミング及びMBS114の測定タイミングは、異なっていてもよい。
【0081】
[測定の原理]
図9及び図10は、本開示の一実施形態に係る方向推定装置によって行われる方向推定の原理を説明するための図である。図9及び図10に示すように、MBS114から係留索401までの距離及び音響ビームの係留索401に対する入射角によって係留索401の像302の長さL* image図7参照)長さがどのように変化するかを理論的に導出する。
【0082】
図9に示すように、点OにMBS114が位置している場合において、点Oから係留索401に下した垂線が音響ビーム411に含まれない状況を想定する。
【0083】
MBS114を正面側(z軸+側)から見たとき、首振りの回転軸TAと係留索401の延びる方向とのなす角度は、90度とする(図6参照)。また、係留索401は、MBS114の視野角のちょうど中央に位置しているものとする(図4参照)。
【0084】
さらに、議論を簡単にするため以下の5つの仮定をおく。すなわち、第1の仮定は、MBS114が首振り運動をしたときに音響ビーム411の当たる係留索401の領域では、係留索401が局所的に直線であるとみなすことである。
【0085】
第2の仮定は、係留索401の太さを無視することである。これは、音響ビーム411が、係留索401の中心軸から反射するとみなすことと等価である。
【0086】
第3の仮定は、MBS114を点とみなすことである。第4の仮定は、音響ビーム411は、MBS114の本体から見て一定の対称な角度範囲内(例えば、2δ)(図5図9及び図10参照)にのみ一様に分布することである。
【0087】
第5の仮定は、音響ビーム411のパルス幅は無視し、音響ビーム411が幅のない円弧状に広がるものとすることである。
【0088】
これらの仮定をおいた場合において、音響画像301に映る係留索401の像302の長さを考える。2δは、yz面内における音響ビーム411の分布角である。距離dは、点Oから係留索401に下ろした垂線OHの長さである。
【0089】
αは、点Oから基準方向Dsに基準をとり、かつ、x軸+側からx軸-側を見たときの反時計回りを正の向きとしたMBS114の首振り角である。基準方向Dsは、例えば水平方向である。そして、α0は、音響ビーム411が係留索401に対して垂直に入射するときの首振り角αである。
【0090】
また、点Aは、音響ビーム411の中心線と係留索401との交点である。点B及びCは、それぞれ、音響ビーム411の中心線から上下にδずつとった音響ビームの分布範囲を示す線と係留索401との上側及び下側の交点である。
【0091】
まず、簡単のためα0=0°の場合を考える。音響ビーム411が係留索401に反射してMBS114に返ってくるとき、音響ビーム411は、三角形OBC内の領域に分布することとなる。この領域内の最長の反射経路の長さL1は、線分OB及びOCのうちの長い方の長さである。長さL1は、d=OHを用いて、
【数1】
と表される。
【0092】
一方、最短の反射経路は、点Bと点Cとの間に点Hが位置するか否かによって場合分けが生じる。点Bと点Cとの間に点Hが位置する場合(図10参照)は、最短経路の長さは、d=OHに等しい。
【0093】
点Bと点Cとの間に点Hが位置しない場合(図9参照)は、線分OB及びOCのうちの短い方が最短経路となる。従って、最短の反射経路の長さL2は、
【数2】
と表される。ここで、max(A,B)は、A及びBのうちの大きいものを返す関数である。
【0094】
以上より、最短経路の長さと最短経路の長さとの差Ldiffは、
【数3】
と表される。
【0095】
MBS114の測定レンジをRとして、像302の長さL* imageをLdiffのRに対する割合として表すこととすると、
【数4】
となる。
【0096】
ここで、α0≠0°である場合を考慮する。α0≠0°の場合は、係留索401を点Oのまわりに対象角度α0だけ回転させたものと考えると、最終的に像302の長さL* imageの理論解は、
【数5】
となる。
【0097】
図11は、本開示の一実施形態に係る像302の長さL* imageの理論解の首振り角αに対する変化の一例を示す図である。なお、図11において、縦軸はL* imageを示す。横軸は、単位を「°」とする首振り角αを示す。
【0098】
図11に示すように、例えば、d=2.0m、R=7.5m、α0=-45.0°及びδ=10.0°としてL* image(α)をプロットすると、-90°≦α≦0°の範囲においてα=α0で最小値をとる下に凸な曲線が得られる。
【0099】
これは、係留索401に対してMBS114の音響ビーム411が垂直に入射するような首振り角の場合に、音響画像301に係留索401の像302が最も短く映ることを意味する。
【0100】
必ずしも直線ではない実際の係留索401においても、局所的に直線とみなすことによって、この「係留索401の像302の長さLimageが最小となるとき、MBS114の音響ビーム411が係留索401に対して垂直に入射している」という性質を仮定する。
【0101】
図12は、本開示の一実施形態に係る方向推定装置の構成を示す図である。図12には、方向推定装置11のソフトウェア構成が示される。方向推定装置11は、例えば、コンピュータ101におけるプロセッサ21においてプログラムを実行させることによって構成されるものである。
【0102】
図12に示すように、方向推定装置11は、機能ブロックとして、聴音結果情報取得部31と、首振り角情報取得部32と、制御部33と、画像処理部34と、データセット生成部35と、方向推定部36と、対象物座標算出部37と、絶対座標情報取得部38と、全体形状推定部39と、を備える。
【0103】
方向推定装置11における制御部33は、バス22及び通信部23を通じて水中ロボット111を制御する。具体的には、制御部33は、水中ロボット111のスラスタの制御、首振り機構113の制御及びMBS114の制御などを行う。
【0104】
聴音結果情報取得部31は、聴音結果情報を取得する。本実施形態では、聴音結果情報は、首振り角αごと及び偏角βごとの複数の聴音方向からの音波の聴音結果を示す。
【0105】
具体的には、聴音結果情報取得部31は、聴音結果情報として、音響画像301を示す画像情報を、MBS114の測定タイミングごとに水中ロボット111から受信する。
【0106】
首振り機構113によってMBS114が所定の角速度で首振り運動しているので、画像情報は首振り角αごとの情報でもある。聴音結果情報取得部31は、取得した音響画像301を画像処理部34へ出力する。
【0107】
画像処理部34は、聴音結果情報取得部31から音響画像301を受けると、音響画像301に基づいて像302の長さL* imageを取得する(図7参照)。
【0108】
具体的には、画像処理部34は、例えば、像302が含まれる領域を設定して当該領域を二値化する。画像処理部34は、二値化した領域(以下、二値化領域と称することがある。)に対してモルフォロジー変換のオープニングを行い、小さなノイズ点を除去し、続いてモルフォロジー変換のクロージングを行い、小さな隙間を連結する。
【0109】
画像処理部34は、二値化領域における複数の輪郭から、計測原点(u=0,v=0)から最も近い点を持つ輪郭を選択する。ただし、計測原点に近すぎるものはノイズ点とみなして除外してもよい。
【0110】
画像処理部34は、選択した輪郭に外接し、かつ各辺が元の画像の辺と平行な最小の長方形を与える。
【0111】
画像処理部34は、長方形の下の辺の中点である位置(u1,v1)を係留索401の像302の最下部の位置として算出する。また、画像処理部34は、長方形の高さを係留索401の像302の長さL* imageとして算出する。
【0112】
画像処理部34は、算出した像302の最下部の位置(u1,v1)を示す最下部位置情報、及び像302の長さL* imageを示す長さ情報をデータセット生成部35へ出力する。
【0113】
首振り角情報取得部32は、MBS114における首振り角測定部117の測定タイミングごとに首振り角情報をMBS114から受信し、首振り角情報をデータセット生成部35へ出力する。
【0114】
図13は、本開示の一実施形態に係る像302の長さL* imageの時間変化の一例を示す図である。なお、図13において、縦軸はL* imageを示す。横軸は、時間を示す。
【0115】
データセット生成部35は、画像処理部34から最下部位置情報及び長さ情報を受けて、最下部の位置(u1,v1)及び像302の長さL* imageと、測定時刻とを対応付けて蓄積する。これにより、最下部の位置(u1,v1)、像302の長さL* image及び測定時刻の組が時系列順に並んだ第1データセットが生成される。図13に示すグラフは、MBS114の首振りが1往復したときのL* imageの時間変化をプロットしたものである。
【0116】
また、データセット生成部35は、首振り角情報取得部32から首振り角情報を受けて、首振り角αと測定時刻とを対応付けて蓄積する。これにより、首振り角α及び測定時刻の組が時系列順に並んだ第2データセットが生成される。
【0117】
データセット生成部35は、第1データセットにおける測定時刻と第2データセットにおける測定時刻との関係に基づいて、像302の最下部の位置(u1,v1)及び像302の長さL* imageと、首振り角αとを対応付けた第3データセットを生成する。これにより、図13のグラフの横軸が、第3データセットに基づいて時間から首振り角αに変換される。データセット生成部35は、第3データセットを方向推定部36へ出力する。
【0118】
図14は、本開示の一実施形態に係るフィッティング部によってフィッティングされた結果の一例を示す図である。なお、図14において、縦軸はL* imageを示す。横軸は、単位を「°」とする首振り角αを示す。
【0119】
方向推定部36は、首振り角αごとの画像情報の示す各像302の長さL* imageに基づいて垂直入射方向を推定する。
【0120】
本実施形態では、方向推定部36は、データセット生成部35から第3データセットを受けると、第3データセットに基づいて垂直入射方向を推定する。
【0121】
具体的には、方向推定部36は、第3データセット及び式(5)に基づいてフィッティングを行うことにより、式(5)が第3データセットに最も当てはまるときの曲線Cbを与える対象角度α0を算出する。方向推定部36は、MBS114の首振りの片道分ごとに対象角度α0を算出する。
【0122】
本実施形態では、係留索401の形状を直線で近似しているので、対象角度α0の方向には、線状の係留索401上の点であって、MBS114との距離が最短となる点が位置する。
【0123】
また、方向推定部36は、推定した垂直入射方向が音響ビーム411に含まれる場合の画像情報に基づいてMBS114と係留索401との間の距離dを算出する。
【0124】
本実施形態では、方向推定部36は、第3データセットにおいて、対象角度α0に最も近い首振り角αに対応する音響画像301における像302の最下部の位置(u1,v1)を取得する。
【0125】
方向推定部36は、取得した位置(u1,v1)から音響画像301における音響画像座標の原点(0,0)までの距離dimageを算出し、距離dimageと測定レンジRとを乗じた結果をMBS114から係留索401までの距離dとして算出する。
【0126】
図15は、本開示の一実施形態に係るフィッティング部によってスキャンごとに算出された対象角度α0の一例を示す図である。なお、図15において、縦軸は、単位を「°」とする対象角度α0を示す。横軸は、スキャン数を示す。例えば、スキャン数が奇数及び偶数のときは、それぞれMBS114の首振り運動が往路及び復路の結果である。
【0127】
図16は、本開示の一実施形態に係るフィッティング部によってスキャンごとに算出された距離dの一例を示す図である。縦軸は、単位を「m」とする距離dを示す。なお、横軸の見方は、図15と同様である。方向推定部36は、スキャンごとすなわちMBS114の首振りの片道分ごとに、対象角度α0及び距離dを対象物座標算出部37へ出力する。
【0128】
絶対座標情報取得部38は、絶対座標情報をバス22経由で水中ロボット111から受信すると、絶対座標情報を対象物座標算出部37へ出力する。
【0129】
対象物座標算出部37は、方向推定部36から受ける対象角度α0及び距離dと、絶対座標情報取得部38から受ける絶対座標情報とに基づいて係留索401の絶対座標を算出する。
【0130】
図17は、本開示の一実施形態に係る係留索の座標を算出する方法を説明するための図である。図12及び図17に示すように、MBS114の位置の絶対座標を(xs,zs)、ロボットのピッチ角をθ、垂直入射時の首振り角を対象角度α0、及び音響ビーム411の中心面411aと係留索401とが交わる点の絶対座標を(xt,zt)とする。また、θは、Y軸+側から見て反時計回りを正とし、α0は、Y軸+側から見て時計回りを正とする。このとき、(xt,zt)Tは以下のように求められる。
【数6】
【0131】
水中ロボット111の測位中心の絶対座標を(xb,zb)とし、その点から見たMBS114の相対的な取り付け位置の絶対座標を(xsb,zsb)とすれば、(xs,zs)Tは、(xb,zb)Tと(xsb,zsb)Tとを用いて以下のように表される。
【数7】
【0132】
式(6)及び式(7)から(xs,zs)Tを消去して、実機において容易に取り出せるパラメータである(xb,zb)Tと(xsb,zsb)Tとを用いて(xt,zt)Tは以下のように表すことができる。
【数8】
【0133】
対象物座標算出部37は、係留索401の絶対座標として(xt,zt)を算出し、算出した絶対座標を示す対象物座標情報をバス22経由でメモリ24又はディスク25に保存する。
【0134】
図18図21は、本開示の一実施形態に係る係留索の絶対座標の測定結果の一例を示す図である。なお、図18図21において、縦軸は、単位を「m」とするZ座標を示す。横軸は、単位を「m」とするX座標を示す。
【0135】
図18図21に示すように、複数のマーカーが係留索401に取り付けられている。シンボル401aは、例えば、水中モーションキャプチャによって測定されたマーカーの絶対座標に位置する。
【0136】
図18に示すように、シンボル群Sr1に含まれる複数のシンボルは、水中ロボット111が聴音結果情報を生成したときの絶対座標にそれぞれ位置する。
【0137】
シンボル群Sr1に含まれる複数のシンボルの位置で生成された聴音結果情報に基づいて算出された係留索401の絶対座標には、シンボル群St1に含まれる複数のシンボルが位置する。
【0138】
シンボル群Sr2に含まれる複数のシンボルは、水中ロボット111が聴音結果情報を生成したときの絶対座標にそれぞれ位置する。
【0139】
シンボル群Sr2に含まれる複数のシンボルの位置で生成された聴音結果情報に基づいて算出された係留索401の絶対座標には、シンボル群St2に含まれる複数のシンボルが位置する。
【0140】
シンボル群Sr3に含まれる複数のシンボルは、水中ロボット111が聴音結果情報を生成したときの絶対座標にそれぞれ位置する。
【0141】
シンボル群Sr3に含まれる複数のシンボルの位置で生成された聴音結果情報に基づいて算出された係留索401の絶対座標には、シンボル群St3に含まれる複数のシンボルが位置する。
【0142】
図19に示すように、シンボル群Sr4に含まれる複数のシンボルは、水中ロボット111が聴音結果情報を生成したときの絶対座標にそれぞれ位置する。
【0143】
シンボル群Sr4に含まれる複数のシンボルの位置で生成された聴音結果情報に基づいて算出された係留索401の絶対座標には、シンボル群St4に含まれる複数のシンボルが位置する。
【0144】
シンボル群Sr5に含まれる複数のシンボルは、水中ロボット111が聴音結果情報を生成したときの絶対座標にそれぞれ位置する。
【0145】
シンボル群Sr5に含まれる複数のシンボルの位置で生成された聴音結果情報に基づいて算出された係留索401の絶対座標には、シンボル群St5に含まれる複数のシンボルが位置する。
【0146】
図20に示すように、シンボル群Sr6に含まれる複数のシンボルは、水中ロボット111が聴音結果情報を生成したときの絶対座標にそれぞれ位置する。
【0147】
シンボル群Sr6に含まれる複数のシンボルの位置で生成された聴音結果情報に基づいて算出された係留索401の絶対座標には、シンボル群St6に含まれる複数のシンボルが位置する。
【0148】
図21に示すように、シンボル群Sr7に含まれる複数のシンボルは、水中ロボット111が聴音結果情報を生成したときの絶対座標にそれぞれ位置する。
【0149】
シンボル群Sr7に含まれる複数のシンボルの位置で生成された聴音結果情報に基づいて算出された係留索401の絶対座標には、シンボル群St7に含まれる複数のシンボルが位置する。
【0150】
このように、シンボル群St1~St7に含まれる各シンボルは、各シンボル401aを結ぶ曲線(図示しない)を良く再現している。つまり、方向推定装置11によって係留索401の絶対座標を精度よく算出することができる。
【0151】
図12に示すように、係留索401の全体形状が分かれば係留索401のモニタリングに有益であるため、係留索401の形状を推定する技術が求められる。本実施形態では、方向推定装置11における全体形状推定部39は、メモリ24又はディスク25に保持された垂直入射方向及び距離dの組であって複数の組に基づいて係留索401の形状を推定する。
【0152】
本実施形態では、全体形状推定部39は、メモリ24又はディスク25に蓄積された複数の対象物座標情報をバス22経由で取得し、取得した複数の対象物座標情報に基づいて係留索401の全体形状を推定する。
【0153】
具体的には、全体形状推定部39は、例えば、制御部33による水中ロボット111の制御が終了した後、メモリ24又はディスク25に蓄積された複数の対象物座標情報を取得する。
【0154】
全体形状推定部39は、例えば、係留索401の形状をよく近似する曲線を仮定する。本実施形態では、全体形状推定部39は、パラメータで形状が定まるカテナリ曲線を仮定し、取得した複数の対象物座標情報と、仮定したカテナリ曲線とに基づいてフィッティングを行うことにより、複数の対象物座標の示す各絶対座標にカテナリ曲線が最も当てはまるときのパラメータを算出する。
【0155】
全体形状推定部39は、算出したパラメータ及びカテナリ曲線に基づいて、係留索401の全体的な形状を推定する。つまり、断片的な計測結果に基づいて、係留索401全体の形状を推定することが可能となる。
【0156】
[方向推定処理]
図22は、本開示の一実施形態に係る方向推定装置11が方向推定処理を行う際の動作手順を定めたフローチャートである。
【0157】
図22に示すように、水中ロボット111は、例えば、所定の移動経路を移動する。移動経路は、例えば、係留索401の近傍における複数の好適位置を含む。
【0158】
まず、方向推定装置11は、例えば、水中ロボット111を移動経路に沿って移動させる(ステップS102)。
【0159】
次に、方向推定装置11は、測定処理を行う(ステップS104)。測定処理は、例えば、水中ロボット111が所定の測定位置に到達したり、所定の測定タイミングが到来するなどの所定条件が満たされたときに開始される。
【0160】
次に、方向推定装置11は、水中ロボット111が所定の移動経路の終点に到達したか否かを判定する(ステップS106)。
【0161】
方向推定装置11は、水中ロボット111が終点に到達していないと判定すると(ステップS106でNO)、水中ロボット111を移動経路に沿ってさらに移動させる(ステップS102)。
【0162】
一方、方向推定装置11は、水中ロボット111が終点に到達したと判定すると(ステップS106でYES)、算出した複数の係留索401の絶対座標に基づいて、係留索401の形状を出力する(ステップS108)。
【0163】
図23は、本開示の一実施形態に係る方向推定装置が測定処理を行う際の動作手順を定めたフローチャートである。図23は、図22のステップS104における動作の詳細を示している。
【0164】
図23に示すように、まず、方向推定装置11は、測定開始処理を行う(ステップS202)。具体的には、方向推定装置11は、水中ロボット111における首振り機構113、MBS114、絶対座標測定部116及び首振り角測定部117を起動させる。これにより、水中ロボット111から首振り角情報、画像情報及び絶対座標情報が方向推定装置11に送信される。首振り機構113は、MBS114に首振り運動させる。
【0165】
次に、方向推定装置11は、MBS114の首振り角αが上限に到達するまで(ステップS206でNO)、情報取得処理を行う(ステップS204)。
【0166】
次に、方向推定装置11は、対象物位置座標の算出処理を行う(ステップS208)。
【0167】
次に、方向推定装置11は、MBS114の首振り角αが下限に到達するまで(ステップS212でNO)、情報取得処理を行う(ステップS210)。
【0168】
次に、方向推定装置11は、対象物位置座標の算出処理を行う(ステップS214)。
【0169】
次に、方向推定装置11は、所定の終了条件が満たされていないと判定すると(ステップS216でNO)、MBS114の首振り角αが上限に到達するまで(ステップS206でNO)、情報取得処理を行う(ステップS204)。
【0170】
所定の終了条件は、例えば、測定開始から所定時間が経過したこと、又は首振り機構113がMBS114の首振り角を所定回数往復させたことなどである。
【0171】
一方、方向推定装置11は、所定の終了条件が満たされたと判定すると(ステップS216でYES)、測定処理を終了する。
【0172】
図24は、本開示の一実施形態に係る方向推定装置が情報取得処理を行う際の動作手順を定めたフローチャートである。図24は、図23のステップS204及びS210における動作の詳細を示している。
【0173】
図24に示すように、まず、方向推定装置11は、画像情報、首振り角情報又は絶対座標情報を水中ロボット111から受信するまで待機する(ステップS302でNO、ステップS308でNO及びステップS314でNO)。
【0174】
方向推定装置11は、画像情報を水中ロボット111から受信すると(ステップS302でYES)、画像情報の示す音響画像301を画像処理し、像302の最下部の位置(u1,v1)、及び像302の長さL* imageを取得する(ステップS304)。
【0175】
次に、方向推定装置11は、最下部の位置(u1,v1)及び像302の長さL* imageを、測定時刻と対応付けて第1データセットに蓄積する(ステップS306)。
【0176】
また、方向推定装置11は、首振り角情報を水中ロボット111から受信すると(ステップS308でYES)、首振り角情報の示す首振り角αを、測定時刻と対応付けて第2データセットに蓄積する(ステップS310)。
【0177】
また、方向推定装置11は、絶対座標情報を水中ロボット111から受信すると(ステップS312でYES)、首振り角情報の示す首振り角αを、測定時刻と対応付けて保持する(ステップS314)。
【0178】
図25は、本開示の一実施形態に係る方向推定装置が対象物位置座標の算出処理を行う際の動作手順を定めたフローチャートである。図25は、図23のステップS208及びS214における動作の詳細を示している。
【0179】
図25に示すように、まず、方向推定装置11は、第1データセットにおける測定時刻と第2データセットにおける測定時刻との関係に基づいて、像302の最下部の位置(u1,v1)及び像302の長さL* imageと、首振り角αとを対応付けた第3データセットを生成する(ステップS402)。
【0180】
次に、方向推定装置11は、第3データセット及び式(5)に基づいてフィッティングを行うことにより、式(5)が第3データセットに最も当てはまるときの曲線Cbを与える対象角度α0を算出する(ステップS404)。
【0181】
次に、方向推定装置11は、第3データセットにおいて、対象角度α0に最も近い首振り角αに対応する像302の最下部の位置(u1,v1)を取得し、音響画像座標の原点(0,0)から位置(u1,v1)までの距離dimageと測定レンジRとを乗じた結果をMBS114から係留索401までの距離dとして算出する(ステップS406)。
【0182】
次に、方向推定装置11は、対象角度α0及び距離dと、絶対座標情報の示す絶対座標とに基づいて係留索401の絶対座標を算出する(ステップS408)。
【0183】
(第1変形例)
図26は、本開示の一実施形態に係る方向推定装置の第1変形例におけるフィッティング部によってスキャンごとに算出された対象角度α0の一例を示す図である。なお、図26の見方は、図15と同様である。
【0184】
例えば、MBS114が音響画像301を生成するタイミングと、首振り角情報取得部32が首振り角αを取得するタイミングとがずれることがある。この場合、首振り運動の往路(例えば、スキャン数が奇数)のときの対象角度α0が、首振り運動の復路(例えば、スキャン数が偶数)のときの対象角度α0よりも大きくなるか、あるいは小さくなる。
【0185】
詳細には、例えば、往路において、MBS114が音響画像301を生成した首振り角αよりも大きい角度を首振り角情報取得部32が測定する場合、復路では、MBS114が音響画像301を生成した首振り角αよりも小さい角度を首振り角情報取得部32が測定してしまう。
【0186】
また、例えば、往路において、MBS114が音響画像301を生成した首振り角αよりも小さい角度を首振り角情報取得部32が測定する場合、復路では、MBS114が音響画像301を生成した首振り角αよりも大きい角度を首振り角情報取得部32が測定してしまう。
【0187】
これに対して、方向推定装置11の第1変形例では、方向推定部36は、2つの連続するスキャン数のときの2つの対象角度α0の平均を、当該2つの連続するスキャン数のうちの一方のときの対象角度α0として算出する。
【0188】
具体的には、方向推定部36は、例えば、スキャン数が1及び2のときの2つの対象角度α0の平均を、スキャン数が1のときの対象角度α0として算出する。
【0189】
そして、方向推定部36は、例えば、スキャン数が2及び3のときの2つの対象角度α0の平均を、スキャン数が2のときの対象角度α0として算出する。
【0190】
これにより、MBS114が音響画像301を生成した首振り角αと、首振り角情報取得部32が測定する首振り角αと、の差を相殺することができるので、対象角度α0のばらつきを抑制することができる。
【0191】
なお、本実施形態では、形状計測の対象物が係留索401である構成について説明したが、これに限定するものではない。対象物は、例えば、船の舵などのように縁から見たときに直線状に見えるものであってもよい。
【0192】
また、本実施形態では、MBS114が画像情報を生成するごとに水中ロボット111からコンピュータ101へ画像情報が送信される構成について説明したが、これに限定するものではない。MBS114が生成する画像情報が水中ロボット111に設けられる記憶装置に順次蓄積される構成であってもよい。この場合、方向推定装置11は、MBS114による測定が完了した後、記憶装置に蓄積された画像情報に基づいて垂直入射方向を推定する。
【0193】
また、本実施形態では、MBS114が水中ロボット111に設けられる構成について説明したが、これに限定するものではない。MBS114の代わりにスキャニングソナーが水中ロボット111に設けられる構成であってもよい。しかしながら、偏角方向の精度のよいMBS114が水中ロボット111に設けられる構成が好ましい。
【0194】
また、本実施形態では、首振り機構113による首振り運動によってMBS114の向きが変更される構成について説明したが、これに限定するものではない。例えば、MBS114が水中ロボット111に固定され、水中ロボット111のピッチを調整することによってMBS114の向きが変更される構成であってもよい。
【0195】
また、本実施形態では、MBS114が水中ロボット111に設けられる構成について説明したが、これに限定するものではない。MBS114は、船舶に設けられたり、あるいはダイバーによって保持される構成であってもよい。
【0196】
また、本実施形態では、首振り角αに対するL* imageのプロットにモデル関数すなわち式(5)をフィッティングさせることによって垂直入射時の対象角度α0を推定する構成について説明したが、これに限定するものではない。例えば、2つの首振り角αのときの2つのL* imageを比べて、小さいL* imageの首振り角αのときの音波ビームが垂直入射に近いと判定するアルゴリズムを用いる構成であってもよい。式(5)は最小値を有するので、このアルゴリズムを繰り返し実行することによってL* imageが最小となる垂直入射方向を求めることができる。
【0197】
また、本実施形態では、相対位置の座標(対象角度α0及び距離d)から絶対座標を求める構成について説明したが、これに限定するものではない。例えば、水中ロボット111に搭乗者が搭乗している場合、搭乗者は、対象角度α0及び距離dに基づいて対象物の位置を容易に認識することができる。
【0198】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。実施形態が備える各要素並びにその配置、材料、条件、形状及びサイズ等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、異なる実施形態で示した構成同士を部分的に置換し又は組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0199】
11…方向推定装置
21…プロセッサ
22…バス
23…通信部
24…メモリ
25…ディスク
31…聴音結果情報取得部
32…首振り角情報取得部
33…制御部
34…画像処理部
35…データセット生成部
36…方向推定部
37…対象物座標算出部
38…絶対座標情報取得部
39…全体形状推定部
101…コンピュータ
111…水中ロボット
112…通信部
113…首振り機構
114…マルチビームイメージングソナー
115…スラスタ制御部
116…絶対座標測定部
117…首振り角測定部
201…方向推定システム
301…音響画像
302、303…像
401…係留索
411…音響ビーム
411a…中心面
TA…回転軸
Pm…移動面
Pb…海底面
Da…聴音方向
Ds…基準方向
R…測定レンジ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26