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特開2024-168363液体吐出ヘッド、液体吐出ユニット及び液体を吐出する装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168363
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】液体吐出ヘッド、液体吐出ユニット及び液体を吐出する装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/14 20060101AFI20241128BHJP
   B41J 2/18 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
B41J2/14 605
B41J2/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023084945
(22)【出願日】2023-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100098626
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 壽
(72)【発明者】
【氏名】小▲高▼ 俊道
【テーマコード(参考)】
2C056
2C057
【Fターム(参考)】
2C056EA15
2C056EB20
2C056EB34
2C056FA04
2C056HA05
2C056KB16
2C057AF78
2C057AF80
2C057AG33
2C057AG44
2C057BA04
2C057BA14
(57)【要約】
【課題】共通供給流路と共通回収流路とを連通する連通路に求められる十分な機能を実現する。
【解決手段】液体を吐出する複数のノズルにそれぞれ通じる複数の圧力室と、複数の圧力室に通じる共通供給流路10と、複数の圧力室に通じる共通回収流路50と、備え、液体は共通供給流路から圧力室を経て共通回収流路に流れ、共通供給流路から共通回収流路へ圧力室を経ずに液体を通す連通路61,62が設けられた液体吐出ヘッドであって、連通路は、複数の圧力室が配置される圧力室エリア60の圧力室並び方向外側に配置されている。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出する複数のノズルにそれぞれ通じる複数の圧力室と、
前記複数の圧力室に通じる共通供給流路と、
前記複数の圧力室に通じる共通回収流路と、備え、
前記液体は、前記共通供給流路から前記圧力室を経て前記共通回収流路に流れ、
前記共通供給流路から前記共通回収流路へ前記圧力室を経ずに前記液体を通す連通路が設けられた液体吐出ヘッドであって、
前記連通路は、前記複数の圧力室が配置される圧力室エリアの圧力室並び方向外側に配置されていることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項2】
請求項1に記載の液体吐出ヘッドにおいて、
前記共通供給流路は、前記圧力室並び方向一端側外方に配置される入口流路部と、前記圧力室並び方向他端側外方に配置される供給流路端部とを備え、
前記共通回収流路は、前記圧力室並び方向他端側外方に配置される排出流路部と、前記圧力室並び方向一端側外方に配置される回収流路端部とを備え、
前記連通路は、前記入口流路部と前記回収流路端部とを連通する連通路、及び、前記供給流路端部と前記排出流路部とを連通する連通路のうちの少なくとも一方を含むことを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項3】
請求項2の液体吐出ヘッドにおいて、
前記共通供給流路は、前記入口流路部と前記供給流路端部との間に、前記入口流路部から分岐して前記供給流路端部へ合流する複数の分岐流路部を備え、前記複数の分岐流路部が前記複数の圧力室に通じるように構成されていることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッドにおいて、
前記共通回収流路の一部は、前記共通供給流路の上方に配置されていることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項5】
請求項4に記載の液体吐出ヘッドにおいて、
前記共通回収流路の他部は、前記共通供給流路と同じ高さであって、前記ノズルに近い側又は前記ノズルから遠い側に配置される流路部分を含むことを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項6】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッドにおいて、
前記共通供給流路の一部は、前記共通回収流路の上方に配置されていることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項7】
請求項6に記載の液体吐出ヘッドにおいて、
前記共通供給流路の他部は、前記共通回収流路と同じ高さであって、前記ノズルに近い側又は前記ノズルから遠い側に配置される流路部分を含むことを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項8】
請求項1乃至3のいずれかに記載の液体吐出ヘッドを備えていることを特徴とする液体吐出ユニット。
【請求項9】
請求項1乃至3のいずれかに記載の液体吐出ヘッドを含むことを特徴とする液体を吐出する装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出ヘッド、液体吐出ユニット及び液体を吐出する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、液体を吐出する複数のノズルにそれぞれ通じる複数の圧力室と、複数の圧力室に通じる共通供給流路と、複数の圧力室に通じる共通回収流路と備え、液体は共通供給流路から圧力室を経て共通回収流路に流れ、共通供給流路から共通回収流路へ圧力室を経ずに液体を通す連通路が設けられた液体吐出ヘッドが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ノズル面を鉛直方向下方に向くように配置され、液体が共通供給流路から圧力室を経て共通回収流路に流れるフロースルー型ヘッド(循環型の液体吐出ヘッド)が開示されている。この液体吐出ヘッドでは、共通回収流路の一部を共通供給流路の上方に配置するとともに、共通供給流路の天面から共通回収流路に通じる連通路を設けている。これにより、共通供給流路内の気泡が浮力により連通路を介して共通回収流路へ排出される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、従来の液体吐出ヘッドにおいては、連通路に求められる十分な機能を実現することが困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するために、本発明は、液体を吐出する複数のノズルにそれぞれ通じる複数の圧力室と、前記複数の圧力室に通じる共通供給流路と、前記複数の圧力室に通じる共通回収流路と、備え、前記液体は、前記共通供給流路から前記圧力室を経て前記共通回収流路に流れ、前記共通供給流路から前記共通回収流路へ前記圧力室を経ずに前記液体を通す連通路が設けられた液体吐出ヘッドであって、前記連通路は、前記複数の圧力室が配置される圧力室エリアの圧力室並び方向外側に配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、共通供給流路から共通回収流路へ圧力室を経ずに液体を通す連通路に求められる十分な機能を実現することが容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態1に係る液体吐出ヘッドの外観斜視説明図。
図2】同液体吐出ヘッドにおけるヘッド長手方向(ノズル配列方向)と直交するヘッド短手方向(圧力室長手方向)の断面説明図。
図3】同液体吐出ヘッドにおける1つのノズルに対応する部分を拡大したヘッド短手方向の拡大断面説明図。
図4】同液体吐出ヘッドにおける1つのノズル列に沿ったヘッド長手方向の部分断面説明図。
図5】同液体吐出ヘッドにおける共通流路部材の符号A-A'断面における断面説明図。
図6】同共通流路部材をノズル板1側(下側)から見たときの透視説明図。
図7】同共通流路部材の符号B-B'断面における断面説明図。
図8】共通回収流路の一部が共通供給流路の上方に配置されている構成例(実施形態3)を示すヘッド短手方向の拡大断面説明図。
図9】実施形態2における共通流路部材の符号C-C'断面における断面説明図。
図10】同共通流路部材をノズル板1側(下側)から見たときの透視説明図。
図11】同共通流路部材の符号D-D'断面における断面説明図。
図12】実施形態3における共通流路部材の符号E-E'断面における断面説明図。
図13】同共通流路部材をノズル板1側(下側)から見たときの透視説明図。
図14】同共通流路部材の符号F-F'断面における断面説明図。
図15】本発明に係る液体を吐出する装置の一例の概略説明図である。
図16】同装置のヘッドユニットの一例の平面説明図である。
図17】液体循環装置の一例のブロック説明図である。
図18】本発明に係る液体を吐出する装置の他の例の要部平面説明図である。
図19】同装置の要部側面説明図である。
図20】本発明に係る液体吐出ユニットの他の例の要部平面説明図である。
図21】本発明に係る液体吐出ユニットの更に他の例の正面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。
【0009】
〔実施形態1〕
まず、本発明の一実施形態(以下、本実施形態を「実施形態1」という。)について説明する。
図1は、実施形態1に係る液体吐出ヘッド100の外観斜視説明図である。
図2は、実施形態1の液体吐出ヘッド100におけるヘッド長手方向(ノズル配列方向)と直交するヘッド短手方向(圧力室長手方向)の断面説明図である。
図3は、実施形態1の液体吐出ヘッド100における1つのノズル4に対応する部分を拡大したヘッド短手方向の拡大断面説明図である。
図4は、実施形態1の液体吐出ヘッド100における1つのノズル列に沿ったヘッド長手方向の部分断面説明図である。
【0010】
液体吐出ヘッド100は、ノズル板1と、流路板2と、振動板3とを積層接合している。そして、振動板3を変位させる圧電アクチュエータ11と、共通流路部材20と、カバー29とを備えている。なお、以下の説明では、ヘッド長手方向をX方向、ヘッド短手方向をY方向、ヘッド高さ方向(ノズル面の法線方向)をZ方向とする。
【0011】
ノズル板1には、液体を吐出する複数のノズル4がX方向であるヘッド長手方向(ノズル配列方向)に沿って複数列に配列されている。本実施形態1では、複数のノズル4がヘッド長手方向(X方向)に沿って配列されたノズル列が4列形成されている。
【0012】
流路板2は、複数のノズル4にそれぞれ通じる複数の圧力室6、各圧力室6のそれぞれに通じる複数の供給側流体抵抗部7、各供給側流体抵抗部7のそれぞれに通じる複数の供給側導入部8を形成している。各供給側導入部8は、振動板3に形成した供給側開口部9を介して、共通流路部材20で形成した共通供給流路10に通じている。
【0013】
振動板3は、流路板2の圧力室6の壁面を形成する壁面部材である。振動板3は、2層構造(限定されない)とし、流路板2側から薄肉部を形成する第1層と、厚肉部を形成する第2層とで構成され、第1層で圧力室6に対応する部分に変形可能な振動領域30を形成している。
【0014】
振動板3の圧力室6とは反対側に、振動板3の振動領域30を変形させる駆動手段(アクチュエータ手段、圧力発生手段)としての電気機械変換素子を含む圧電アクチュエータ11を配置している。圧電アクチュエータ11は、ベース部材13上に接合した圧電部材12を有し、圧電部材12にはハーフカットダイシングによって溝加工して1つの圧電部材12に対して所要数の柱状の圧電素子12A,12Bを所定の間隔で櫛歯状に形成している。
【0015】
ここでは、圧電部材12の圧電素子12Aは駆動波形を与えて駆動させる圧電素子とし、圧電素子12Bは駆動波形を与えないで単なる支柱として使用しているが、すべての圧電素子12A,12Bを駆動させる圧電素子として使用することもできる。圧電素子12Aを振動板3の振動領域30に形成した島状の厚肉部である凸部30aに接合している。また、圧電素子12Bを振動板3の厚肉部である凸部30bに接合している。
【0016】
圧電部材12は、圧電層と内部電極とを交互に積層したものであり、内部電極がそれぞれ端面に引き出されて外部電極が設けられ、外部電極にフレキシブル配線部材15が接続されている。
【0017】
流路板2は、各圧力室6にそれぞれ通じる複数の回収側個別流路56と、各回収側個別流路56のそれぞれに通じる複数の回収側導出部58とを形成している。各回収側導出部58は、振動板3に形成した回収側開口部59を介して、共通流路部材20で形成した共通回収流路50に通じている。
【0018】
共通流路部材20は、共通供給流路10と共通回収流路50を形成する。共通供給流路10には、外部の循環経路から液体を供給する供給口(供給ポート)71が連通し、共通回収流路50には、外部の循環経路に液体が回収される回収口(回収ポート)72が連通している。
【0019】
液体吐出ヘッド100においては、例えば圧電素子12Aに与える電圧を基準電位から下げることによって圧電素子12Aが収縮し、振動板3の振動領域30が下降して圧力室6の容積が膨張することで、圧力室6内に液体が流入する。その後、圧電素子12Aに印加する電圧を上げて圧電素子12Aを積層方向(Z方向)に伸長させ、振動板3の振動領域30をノズル4に向かう方向に変形させて圧力室6の容積を収縮させることにより、圧力室6内の液体が加圧され、ノズル4から液体が吐出される。
【0020】
そして、圧電素子12Aに与える電圧を基準電位に戻すことによって振動板3の振動領域30が初期位置に復元し、圧力室6が膨張して負圧が発生するので、このとき、共通供給流路10から圧力室6内に液体が充填される。そこで、ノズル4のメニスカス面の振動が減衰して安定した後、次の吐出のための動作に移行する。
【0021】
ノズル4から吐出されない液体は、圧力室6から回収側個別流路56、回収側導出部58及び回収側開口部59を経て共通回収流路50へ排出される。そして、共通回収流路50から外部の循環経路を通じて共通供給流路10に再度供給される。また、液体吐出を行っていないときも、共通供給流路10から共通回収流路50に液体が流れ、更に外部の循環経路を通じて共通供給流路10に再度供給される。
【0022】
ヘッドの駆動方法については、上述した例(引き-押し打ち)に限るものではなく、駆動波形の与えた方によって引き打ちや押し打ちなどを行うこともできる。
【0023】
次に、本実施形態1の液体吐出ヘッド100における供給側共通液室及び回収側共通液室について説明する。
図5は、共通流路部材20の符号A-A'断面における断面説明図である。
図6は、共通流路部材20をノズル板1側(下側)から見たときの透視説明図である。
図7は、共通流路部材20の符号B-B'断面における断面説明図である。
【0024】
本実施形態1において、共通供給流路10の一部である上部流路部分10Bは、図2及び図3に示すように、共通回収流路50の上方に配置されている。また、共通供給流路10の他部である下部流路部分10Aは、図2及び図3に示すように、共通回収流路50と同じ高さ(同じZ方向位置)であって、ノズル4に近い側(図3中左側)に配置されている。
【0025】
より詳しく説明すると、本実施形態1の共通供給流路10は、図6中左右方向(X方向)であるヘッド長手方向(圧力室並び方向)の一端側外方に配置される入口流路部10aと、ヘッド長手方向の他端側外方に配置される供給流路端部10dと、入口流路部10aと供給流路端部10dとの間に、入口流路部10aから分岐して供給流路端部10dへ合流する2つの分岐流路部10b,10cとを備えている。
【0026】
本実施形態1の共通供給流路10は、2つの分岐流路部10b,10cにおけるヘッド長手方向(X方向)に延びる接続流路部分において、それぞれ対応するノズル列を構成する複数のノズルに連通した各圧力室6の供給側導入部8に接続されている。すなわち、図6の符号60で示すエリア(圧力室エリア)には、図中上下方向(Y方向)であるヘッド短手方向に並べられる2つのノズル列に対応する圧力室6がノズル配列方向すなわちヘッド長手方向(X方向)に沿って配列されている。そして、図中上側のノズル列に対応する各圧力室6の供給側導入部8は、図中上側の分岐流路部10bの接続流路部分に接続され、図中下側のノズル列に対応する各圧力室6の供給側導入部8は、図中下側の分岐流路部10cの接続流路部分に接続される。
【0027】
一方、本実施形態1の共通回収流路50は、図6中左右方向(X方向)であるヘッド長手方向(圧力室並び方向)の他端側外方に配置される排出流路部50aと、ヘッド長手方向の一端側外方に配置される回収流路端部50dと、排出流路部50aと回収流路端部50dとの間に、排出流路部50aから分岐して回収流路端部50dへ合流する2つの分岐流路部50b,50cとを備えている。
【0028】
本実施形態1の共通回収流路50は、2つの分岐流路部50b,50cにおけるヘッド長手方向(X方向)に延びる接続流路部分において、それぞれ対応するノズル列を構成する複数のノズルに連通した各圧力室6の回収側導出部58に接続されている。すなわち、図6の符号60で示す圧力室エリアに配置される図中上側のノズル列に対応する各圧力室6の回収側導出部58は、図中上側の分岐流路部50bの接続流路部分に接続され、図中下側のノズル列に対応する各圧力室6の回収側導出部58は、図中下側の分岐流路部50cの接続流路部分に接続される。
【0029】
供給ポート71から共通供給流路10の入口流路部10aに供給された液体は、分岐した2つの分岐流路部10b,10cへと流れ、共通供給流路10の各分岐流路部10b,10cの接続流路部分から各供給側導入部8を経て各圧力室6へと供給される。そして、ノズル4から吐出されずに各圧力室6から回収される液体は、各回収側導出部58から共通回収流路50の各分岐流路部50b,50cの接続流路部分を介して排出流路部50aへと流れる。そして、排出流路部50aに接続された回収口(回収ポート)72へと回収される。
【0030】
ここで、液体吐出ヘッド100内の液体を共通供給流路10及び共通回収流路50により循環させる循環型の液体吐出ヘッドでは、ヘッド寸法の制約等のため、共通供給流路10及び共通回収流路50の流路断面積を大きくできない、流路抵抗の少ないレイアウトを取れないなどの問題がある。そのため、共通供給流路10及び共通回収流路50の流路抵抗が高くなってしまい、液体を適切に循環させるために必要な、供給ポート71の液体に付与する正圧(共通供給流路10に印加される正圧)、あるいは、回収ポート72の液体に付与する負圧(共通回収流路50に印加される負圧)として、大きい圧力が求められる。その結果、液体吐出ヘッド100内の液体を共通供給流路10及び共通回収流路50により適切に循環させることが困難である。
【0031】
そこで、本実施形態1においては、図6及び図7に示すように、共通供給流路10から共通回収流路50へ圧力室6を経ずに液体を通す連通路61,62を設けている。このような連通路61,62を設けることで、供給ポート71の液体に付与する正圧や回収ポート72の液体に付与する負圧が小さくても、供給ポート71から供給した液体を回収ポート72から回収するという液体の循環を実現することが可能となる。
【0032】
共通供給流路10から共通回収流路50へ圧力室6を経ずに液体を通す連通路は、例えば、X方向であるヘッド長手方向(圧力室並び方向)において圧力室エリア60と重複する箇所に配置することが考えられる。しかしながら、この箇所に連通路を配置する場合、各圧力室6に接続される共通供給流路10の分岐流路部10b,10cの接続流路部分と共通回収流路50の分岐流路部50b,50cの接続流路部分とを連通路で接続することになる。この場合、連通路を流れる液体の流れが各圧力室6に影響を及ぼしやすいため、この影響を考慮して連通路の流路抵抗をあまり低くすることができない。
【0033】
加えて、この箇所に連通路を配置する場合、この箇所が圧力室エリア60に対してヘッド短手方向(Y方向)側の箇所であるため、一般にスペースの余裕がない。そのため、連通路の寸法の自由度やレイアウトの自由度などが低く、連通路の流路抵抗をあまり低くすることができない。
【0034】
したがって、X方向であるヘッド長手方向(圧力室並び方向)において圧力室エリア60と重複する箇所に連通路を配置する構成では、連通路の流路抵抗をあまり低くすることができず、十分な液体循環性を実現することが困難である。
【0035】
そこで、本実施形態においては、図6に示すように、圧力室エリア60のX方向であるヘッド長手方向(圧力室並び方向)の外側の箇所に、連通路61,62を配置している。この箇所は、圧力室エリア60に対してヘッド長手方向外側の箇所であるため、ヘッド短手方向(Y方向)と比べてスペースの余裕があり、連通路61,62の寸法の自由度やレイアウトの自由度などが高い。
【0036】
しかも、この箇所に連通路を配置する場合、圧力室6に接続される共通供給流路10の分岐流路部10b,10cの接続流路部分及び共通回収流路50の分岐流路部50b,50cの接続流路部分以外の流路部分に、連通路61,62を接続することができる。具体的には、一方の連通路61は、各圧力室6に接続される接続流路部分から外れた共通供給流路10の入口流路部10aと共通回収流路50の回収流路端部50dとを接続する。他方の連通路62も,各圧力室6に接続される接続流路部分から外れた共通供給流路10の供給流路端部10dと共通回収流路50の排出流路部50aとを接続する。したがって、連通路61,62を流れる液体の流れが各圧力室6に影響を及ぼしにくいので、この影響を考慮して連通路61,62の流路抵抗の設定が妨げられるということがない。
【0037】
以上のように、本実施形態1によれば、連通路61,62の寸法の自由度やレイアウトの自由度などが高く、また、連通路61,62を流れる液体の流れが圧力室6に影響を及ぼしにくい。そのため、連通路61,62の形成に対する制約が少なくなり、連通路61,62の流路抵抗を十分に小さく設定することが可能となり、高い液体循環性を実現することができる。また、液体循環性の向上により、ヘッド内の気泡などを液体とともに排出する気泡排出性も向上する。
【0038】
特に、本実施形態1における連通路61は、共通供給流路10の入口流路部10aと共通回収流路50の回収流路端部50dとを連通している。共通回収流路50を流れる液体の上流部分である回収流路端部50dは液体が滞りやすい場所である。本実施形態1によれば、共通供給流路10から連通路61を介して液体が、液体の滞りやすい場所である回収流路端部50dに流れ込んで共通回収流路50を排出流路部50aに向けて流れるという液体の流れを生み出すことができる。その結果、液体の滞りやすい場所であった回収流路端部50dにおける液体の滞りが発生しにくくなり、ヘッド全体に液体を循環させることが容易になる。その結果、気泡排出性も向上する。
【0039】
しかも、共通供給流路10の入口流路部10aは、液体を循環させるための大きな正圧が加わる箇所であるため、この入口流路部10aに接続される連通路61の液体の流れは比較的強いものとなる。したがって、この連通路61が接続される回収流路端部50dにも比較的強い液体の流れを生み出すことができるので、回収流路端部50dにおける液体の滞りの発生をより効果的に抑制することができ、気泡排出性も向上する。
【0040】
また、本実施形態1における連通路62は、共通供給流路10の供給流路端部10dと共通回収流路50の排出流路部50aとを連通している。共通供給流路10を流れる液体の下流部分である供給流路端部10dは液体が滞りやすい場所である。本実施形態1によれば、液体の滞りやすい場所である共通供給流路10の供給流路端部10dの液体が、連通路62を介して排出流路部50aへ流れるという液体の流れを生み出すことができる。その結果、液体の滞りやすい場所であった供給流路端部10dにおける液体の滞りが発生しにくくなり、ヘッド全体に液体を循環させることが容易になる。その結果、気泡排出性も向上する。
【0041】
しかも、共通回収流路50の排出流路部50aは、液体を循環させるための大きな負圧が加わる箇所であるため、この排出流路部50aに接続される連通路62の液体の流れは比較的強いものとなる。したがって、この連通路62が接続される供給流路端部10dにも比較的強い液体の流れを生み出すことができるので、供給流路端部10dにおける液体の滞りの発生をより効果的に抑制することができ、気泡排出性も向上する。
【0042】
また、本実施形態1において、2つの連通路61,62を上述したように配置したことで、共通供給流路10における2つの分岐流路部10b,10c間におけるそれぞれの接続流路部分を流れる液体の流量に偏りが生じにくい。そのため、2つの分岐流路部10b,10cにそれぞれ対応するノズル列間での液体吐出に差が生じにくい。
【0043】
なお、本実施形態1では、図3に示すように、共通供給流路10の一部(上部流路部分10B)が共通回収流路50の上方に配置されている構成について説明したが、これに限られない。例えば、図8に示すように、共通回収流路50の一部である上部流路部分50Bが共通供給流路10の上方に配置されている構成としてもよい。
【0044】
また、本実施形態1では、図3に示すように、共通供給流路10の他部(下部流路部分10A)が、共通回収流路50と同じ高さ(同じZ方向位置)であって、ノズル4に近い側(図3中左側)に配置されている構成について説明したが、これに限られない。例えば、図8に示すように、共通回収流路50の他部である下部流路部分50Aが、共通供給流路10と同じ高さ(同じZ方向位置)であって、ノズル4に近い側(図8中左側)に配置されている構成としてもよい。
【0045】
〔実施形態2〕
次に、本発明の他の実施形態(以下、本実施形態を「実施形態2」という。)について説明する。
本実施形態2は、連通路62の配置を上述した実施形態1の配置から変更した例である。
【0046】
図9は、本実施形態2における共通流路部材20の符号C-C'断面における断面説明図である。
図10は、本実施形態2における共通流路部材20をノズル板1側(下側)から見たときの透視説明図である。
図11は、本実施形態2における共通流路部材20の符号D-D'断面における断面説明図である。
【0047】
本実施形態2においても、図10に示すように、共通供給流路10から共通回収流路50へ圧力室6を経ずに液体を通す2つの連通路61,63が設けられている。しかも、2つの連通路61,63は、いずれも、圧力室エリア60のX方向であるヘッド長手方向(圧力室並び方向)の外側の箇所に配置されている。したがって、上述した実施形態1と同様、連通路61,63の形成に対する制約が少なく、連通路61,63の流路抵抗を十分に小さく設定することが可能となり、高い液体循環性を実現することができ、気泡排出性も向上する。
【0048】
ここで、本実施形態2において、共通供給流路10の供給流路端部10dと共通回収流路50の排出流路部50aと接続する連通路63の配置が、上述した実施形態1と異なっている。具体的には、上述した実施形態1の連通路62では、図7に示したように供給流路端部10dの下部に接続されていたのに対し、本実施形態2の連通路63では、図11に示したように、供給流路端部10dの上部に接続されている。共通供給流路10内の気泡は浮力により共通供給流路10内の上部に滞留するので、本実施形態2のように、連通路63が供給流路端部10dの上部に接続されることで、共通供給流路10内の気泡を排出しやすくなる。
【0049】
なお、本実施形態2では、連通路63の入口が接続される供給流路端部10dの上部の高さ位置と同じ高さ(同じZ方向位置)には、共通回収流路50の排出流路部50aが存在しない。そのため、本実施形態2では、共通回収流路50の排出流路部50aとは別に、共通回収流路50に回収ポート72が接続される第二排出流路部50eを、連通路63の入口が接続される供給流路端部10dの上部の高さ位置と同じ高さ(同じZ方向位置)に設けている。そして、この第二排出流路部50eに連通路63を接続している。これにより、連通路63の出口が入口よりも低くなることがなく、浮力により流路上部に位置する気泡を液体の流れで搬送でき、気泡排出性が高まる。
【0050】
〔実施形態3〕
次に、本発明の更に他の実施形態(以下、本実施形態を「実施形態3」という。)について説明する。
本実施形態3は、本実施形態1とは逆に、図8に示すように、共通回収流路50の一部である上部流路部分50Bが共通供給流路10の上方に配置されている構成とした例である。
【0051】
図12は、本実施形態3における共通流路部材20の符号E-E'断面における断面説明図である。
図13は、本実施形態3における共通流路部材20をノズル板1側(下側)から見たときの透視説明図である。
図14は、本実施形態3における共通流路部材20の符号F-F'断面における断面説明図である。
【0052】
本実施形態3においても、図13に示すように、共通供給流路10から共通回収流路50へ圧力室6を経ずに液体を通す2つの連通路64,65が設けられている。しかも、2つの連通路64,65は、いずれも、圧力室エリア60のX方向であるヘッド長手方向(圧力室並び方向)の外側の箇所に配置されている。したがって、上述した実施形態1と同様、連通路64,65の形成に対する制約が少なく、連通路64,65の流路抵抗を十分に小さく設定することが可能となり、高い液体循環性を実現することができ、気泡排出性も向上する。
【0053】
ここで、本実施形態3においては、図8に示すように、共通回収流路50の一部である上部流路部分50Bが共通供給流路10の上方に配置されており、上述した実施形態1における共通回収流路50と共通供給流路10の位置関係とは逆になっている。そのため、連通路65の出口を、連通路65の入口と同じ高さか高く設定することが容易である。そのため、連通路65を入口から出口に向けて水平な流路又は上り流路とすることができ、浮力により流路上部に位置する気泡を液体の流れで搬送しやすく、気泡排出性が高い。なお、連通路64についても同様である。
【0054】
また、本実施形態3のように共通回収流路50の上部流路部分50Bが共通供給流路10の上方に配置される構成とすることで、図14に示すように、連通路65を供給流路端部10dの上部に接続する構成を採用できる。共通供給流路10内の気泡は浮力により共通供給流路10内の上部に滞留するので、本実施形態3のように、連通路63が供給流路端部10dの上部に接続されることで、共通供給流路10内の気泡を排出しやすくなる。なお、連通路64についても同様である。
【0055】
次に、本発明に係る液体を吐出する装置の一例について図15及び図16を参照して説明する。図15は同装置の概略説明図、図16は同装置のヘッドユニットの一例の平面説明図である。
【0056】
この液体を吐出する装置である印刷装置500は、連続体510を搬入する搬入手段501と、搬入手段501から搬入された連続体510を印刷手段505に案内搬送する案内搬送手段503と、連続体510に対して液体を吐出して画像を形成する印刷を行う印刷手段505と、連続体510を乾燥する乾燥手段507と、連続体510を搬出する搬出手段509などを備えている。
【0057】
連続体510は搬入手段501の元巻きローラ511から送り出され、搬入手段501、案内搬送手段503、乾燥手段507、搬出手段509の各ローラによって案内、搬送されて、搬出手段509の巻取りローラ591にて巻き取られる。
【0058】
この連続体510は、印刷手段505において、搬送ガイド部材559上をヘッドユニット550及びヘッドユニット555に対向して搬送され、ヘッドユニット550から吐出される液体によって画像が形成され、ヘッドユニット555から吐出される処理液で後処理が行われる。
【0059】
ここで、ヘッドユニット550には、例えば、搬送方向上流側から、4色分のフルライン型ヘッドアレイ551A、551B、551C、551D(以下、色の区別しないときは「ヘッドアレイ551」という。)が配置されている。
【0060】
各ヘッドアレイ551は、液体吐出手段であり、それぞれ、搬送される連続体510に対してブラックK,シアンC、マゼンタM、イエローYの液体を吐出する。なお、色の種類及び数はこれに限るものではない。
【0061】
ヘッドアレイ551は、例えば、本発明に係る液体吐出ヘッド(これを、単に「ヘッド」ともいう。)100をベース部材552上に千鳥状に並べて配置したものであるが、これに限らない。
【0062】
次に、液体循環装置の一例について図17を参照して説明する。図17は同循環装置のブロック説明図である。なお、ここでは1つのヘッドのみ図示しているが、複数のヘッドを配列する場合には、マニホールドなどを介して複数のヘッドの供給側、回収側にそれぞれ供給側液体経路、回収側液体経路を接続することになる。
【0063】
液体循環装置600は、供給タンク601、回収タンク602、メインタンク603、第1送液ポンプ604、第2送液ポンプ605、コンプレッサ611、レギュレータ612、真空ポンプ621、レギュレータ622、供給側圧力センサ631、回収側圧力センサ632などで構成されている。
【0064】
ここで、コンプレッサ611及び真空ポンプ621は、供給タンク601内の圧力と回収タンク602内の圧力とに差圧を生じさせる手段を構成している。
【0065】
供給側圧力センサ631は、供給タンク601とヘッド100との間であって、ヘッド100の供給ポート71に繋がった供給側液体経路に接続されている。回収側圧力センサ632は、ヘッド100と回収タンク602との間であって、ヘッド100の回収ポート72に繋がった回収側液体経路に接続されている。
【0066】
回収タンク602の一方は、第1送液ポンプ604を介して供給タンク601と接続されており、回収タンク602の他方は第2送液ポンプ605を介してメインタンク603と接続されている。
【0067】
これにより、供給タンク601から供給ポート71を通ってヘッド100内に液体が流入し、回収ポート72から回収タンク602へ回収され、第1送液ポンプ604によって回収タンク602から供給タンク601へ液体が送られることによって、液体が循環する循環経路が構成される。
【0068】
ここで、供給タンク601にはコンプレッサ611がつなげられており、供給側圧力センサ631で所定の正圧が検知されるように制御される。一方、回収タンク602には真空ポンプ621がつなげられており、回収側圧力センサ632で所定の負圧が検知されるよう制御される。
【0069】
これにより、ヘッド100内を通って液体を循環させつつ、メニスカスの負圧を一定に保つことができる。
【0070】
また、ヘッド100のノズル4から液体を吐出すると、供給タンク601及び回収タンク602内の液体量が減少していく。そのため、適宜、第2送液ポンプ605を用いて、メインタンク603から回収タンク602に液体を補充する。
【0071】
なお、メインタンク603から回収タンク602への液体補充のタイミングは、回収タンク602内の液体の液面高さが所定高さよりも下がったときに液体補充を行うなど、回収タンク602内に設けた液面センサなどの検知結果によって制御することができる。
【0072】
次に、本発明に係る液体を吐出する装置としての印刷装置の他の例について図18及び図19を参照して説明する。図18は同装置の要部平面説明図、図19は同装置の要部側面説明図である。
【0073】
この印刷装置500は、シリアル型装置であり、主走査移動機構493によって、キャリッジ403は主走査方向に往復移動する。主走査移動機構493は、ガイド部材401、主走査モータ405、タイミングベルト408等を含む。ガイド部材401は、左右の側板491A、491Bに架け渡されてキャリッジ403を移動可能に保持している。そして、主走査モータ405によって、駆動プーリ406と従動プーリ407間に架け渡したタイミングベルト408を介して、キャリッジ403は主走査方向に往復移動される。
【0074】
このキャリッジ403には、本発明に係る液体吐出ヘッド100及びヘッドタンク441を一体にした液体吐出ユニット440を搭載している。液体吐出ユニット440の液体吐出ヘッド100は、例えば、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の各色の液体を吐出する。また、液体吐出ヘッド100は、複数のノズルからなるノズル列を主走査方向と直交する副走査方向に配置し、吐出方向を下方に向けて装着している。
【0075】
液体吐出ヘッド100は、前述した液体循環装置600と接続されて、所要の色の液体が循環供給される。
【0076】
この印刷装置500は、用紙410を搬送するための搬送機構495を備えている。搬送機構495は、搬送手段である搬送ベルト412、搬送ベルト412を駆動するための副走査モータ416を含む。
【0077】
搬送ベルト412は用紙410を吸着して液体吐出ヘッド100に対向する位置で搬送する。この搬送ベルト412は、無端状ベルトであり、搬送ローラ413と、テンションローラ414との間に掛け渡されている。吸着は静電吸着、あるいは、エアー吸引などで行うことができる。
【0078】
そして、搬送ベルト412は、副走査モータ416によってタイミングベルト417及びタイミングプーリ418を介して搬送ローラ413が回転駆動されることによって、副走査方向に周回移動する。
【0079】
さらに、キャリッジ403の主走査方向の一方側には搬送ベルト412の側方に液体吐出ヘッド100の維持回復を行う維持回復機構420が配置されている。
【0080】
維持回復機構420は、例えば液体吐出ヘッド100のノズル面(ノズルが形成された面)をキャッピングするキャップ部材421、ノズル面を払拭するワイパ部材422などで構成されている。
【0081】
主走査移動機構493、維持回復機構420、搬送機構495は、側板491A,491B、背板491Cを含む筐体に取り付けられている。
【0082】
このように構成したこの印刷装置500においては、用紙410が搬送ベルト412上に給紙されて吸着され、搬送ベルト412の周回移動によって用紙410が副走査方向に搬送される。
【0083】
そこで、キャリッジ403を主走査方向に移動させながら画像信号に応じて液体吐出ヘッド100を駆動することにより、停止している用紙410に液体を吐出して画像を形成する。
【0084】
次に、本発明に係る液体吐出ユニットの他の例について図20を参照して説明する。図20は同ユニットの要部平面説明図である。
【0085】
この液体吐出ユニット440、前記液体を吐出する装置を構成している部材のうち、側板491A、491B及び背板491Cで構成される筐体部分と、主走査移動機構493と、キャリッジ403と、液体吐出ヘッド100で構成されている。
【0086】
なお、この液体吐出ユニット440の例えば側板491Bに、前述した維持回復機構420を更に取り付けた液体吐出ユニットを構成することもできる。
【0087】
次に、本発明に係る液体吐出ユニットの更に他の例について図21を参照して説明する。図21は同ユニットの正面説明図である。
【0088】
この液体吐出ユニット440は、流路部品444が取付けられた液体吐出ヘッド100と、流路部品444に接続されたチューブ456で構成されている。
【0089】
なお、流路部品444はカバー442の内部に配置されている。流路部品444に代えてヘッドタンク441を含むこともできる。また、流路部品444の上部には液体吐出ヘッド100と電気的接続を行うコネクタ443が設けられている。
【0090】
本願において、吐出される液体は、ヘッドから吐出可能な粘度や表面張力を有するものであればよく、特に限定されないが、常温、常圧下において、または加熱、冷却により粘度が30mPa・s以下となるものであることが好ましい。より具体的には、水や有機溶媒等の溶媒、染料や顔料等の着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤等の機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料、などを含む溶液、懸濁液、エマルジョンなどであり、これらは例えば、インクジェット用インク、表面処理液、電子素子や発光素子の構成要素や電子回路レジストパターンの形成用液、3次元造形用材料液等の用途で用いることができる。
【0091】
液体を吐出するエネルギー発生源として、圧電アクチュエータ(積層型圧電素子及び薄膜型圧電素子)、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いるサーマルアクチュエータ、振動板と対向電極からなる静電アクチュエータなどを使用するものが含まれる。
【0092】
「液体吐出ユニット」は、液体吐出ヘッドに機能部品、機構が一体化したものであり、液体の吐出に関連する部品の集合体が含まれる。例えば、「液体吐出ユニット」は、ヘッドタンク、キャリッジ、供給機構、維持回復機構、主走査移動機構、液体循環装置の構成の少なくとも一つを液体吐出ヘッドと組み合わせたものなどが含まれる。
【0093】
ここで、一体化とは、例えば、液体吐出ヘッドと機能部品、機構が、締結、接着、係合などで互いに固定されているもの、一方が他方に対して移動可能に保持されているものを含む。また、液体吐出ヘッドと、機能部品、機構が互いに着脱可能に構成されていても良い。
【0094】
例えば、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドとヘッドタンクが一体化されているものがある。また、チューブなどで互いに接続されて、液体吐出ヘッドとヘッドタンクが一体化されているものがある。ここで、これらの液体吐出ユニットのヘッドタンクと液体吐出ヘッドとの間にフィルタを含むユニットを追加することもできる。
【0095】
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドとキャリッジが一体化されているものがある。
【0096】
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドを走査移動機構の一部を構成するガイド部材に移動可能に保持させて、液体吐出ヘッドと走査移動機構が一体化されているものがある。また、液体吐出ヘッドとキャリッジと主走査移動機構が一体化されているものがある。
【0097】
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドが取り付けられたキャリッジに、維持回復機構の一部であるキャップ部材を固定させて、液体吐出ヘッドとキャリッジと維持回復機構が一体化されているものがある。
【0098】
また、液体吐出ユニットとして、ヘッドタンク若しくは流路部品が取付けられた液体吐出ヘッドにチューブが接続されて、液体吐出ヘッドと供給機構が一体化されているものがある。このチューブを介して、液体貯留源の液体が液体吐出ヘッドに供給される。
【0099】
主走査移動機構は、ガイド部材単体も含むものとする。また、供給機構は、チューブ単体、装填部単体も含むものする。
【0100】
「液体を吐出する装置」には、液体吐出ヘッド又は液体吐出ユニットを備え、液体吐出ヘッドを駆動させて液体を吐出させる装置が含まれる。液体を吐出する装置には、液体が付着可能なものに対して液体を吐出することが可能な装置だけでなく、液体を 気中や液中に向けて吐出する装置も含まれる。
【0101】
この「液体を吐出する装置」は、液体が付着可能なものの給送、搬送、排紙に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置なども含むことができる。
【0102】
例えば、「液体を吐出する装置」として、インクを吐出させて用紙に画像を形成する装置である画像形成装置、立体造形物(三次元造形物)を造形するために、粉体を層状に形成した粉体層に造形液を吐出させる立体造形装置(三次元造形装置)がある。
【0103】
また、「液体を吐出する装置」は、吐出された液体によって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、それ自体意味を持たないパターン等を形成するもの、三次元像を造形するものも含まれる。
【0104】
上記「液体が付着可能なもの」とは、液体が少なくとも一時的に付着可能なものであって、付着して固着するもの、付着して浸透するものなどを意味する。具体例としては、用紙、記録紙、記録用紙、フィルム、布などの被記録媒体、電子基板、圧電素子などの電子部品、粉体層(粉末層)、臓器モデル、検査用セルなどの媒体であり、特に限定しない限り、液体が付着するすべてのものが含まれる。
【0105】
上記「液体が付着可能なもの」の材質は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックスなど液体が一時的でも付着可能であればよい。
【0106】
また、「液体を吐出する装置」は、液体吐出ヘッドと液体が付着可能なものとが相対的に移動する装置があるが、これに限定するものではない。具体例としては、液体吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、液体吐出ヘッドを移動させないライン型装置などが含まれる。
【0107】
また、「液体を吐出する装置」としては、他にも、用紙の表面を改質するなどの目的で用紙の表面に処理液を塗布するために処理液を用紙に吐出する処理液塗布装置、原材料を溶液中に分散した組成液を、ノズルを介して噴射させて原材料の微粒子を造粒する噴射造粒装置などがある。
【0108】
なお、本願の用語における、画像形成、記録、印字、印写、印刷、造形等はいずれも同義語とする。
【0109】
以上に説明したものは一例であり、次の態様毎に特有の効果を奏する。
[第1態様]
第1態様は、液体を吐出する複数のノズル4にそれぞれ通じる複数の圧力室6と、前記複数の圧力室に通じる共通供給流路10と、前記複数の圧力室に通じる共通回収流路50と、備え、前記液体は、前記共通供給流路から前記圧力室を経て前記共通回収流路に流れ、前記共通供給流路から前記共通回収流路へ前記圧力室を経ずに前記液体を通す連通路61~65が設けられた液体吐出ヘッド100であって、前記連通路は、前記複数の圧力室が配置される圧力室エリア60の圧力室並び方向(例えばヘッド長手方向、X方向)外側に配置されていることを特徴とするものである。
液体吐出ヘッドでは、気泡の排出性向上や液体の循環性向上などの種々の目的のために、共通供給流路から共通回収流路へ圧力室を経ずに液体を通す連通路が設けられる場合がある。従来の液体吐出ヘッドでは、複数のノズルが並べられたノズル列のノズル配列方向に沿って並べられる複数の圧力室の並び方向(圧力室並び方向、X方向)において、複数の圧力室が配置される圧力室エリアと重複する箇所に連通路が配置される。この連通路が配置される箇所は、圧力室エリアに対してヘッド短手方向(Y方向)側の箇所であるため、一般にスペースの余裕がない。そのため、連通路の寸法の自由度やレイアウトの自由度などが低く、上述した種々の目的を達成するために連通路に求められる十分な機能を実現することが困難である。加えて、上述した箇所に配置される連通路は、共通供給流路及び共通回収流路のうち、複数の圧力室に接続される流路部分に接続される。そのため、連通路を流れる液体の流れが圧力室に影響を及ぼしやすい結果、この影響を考慮して連通路に求められる機能が制限されやすい。
そこで、本態様では、複数の圧力室が配置される圧力室エリアの圧力室並び方向(X方向)外側に連通路を配置している。圧力室エリアの圧力室並び方向外側の箇所は、圧力室エリアに対してヘッド長手方向側の箇所であり、一般にスペースの余裕があるので、連通路の寸法の自由度やレイアウトの自由度などが高い。また、圧力室エリアの圧力室並び方向外側の箇所に配置される連通路であれば、共通供給流路及び共通回収流路のうちの複数の圧力室に接続される流路部分以外の流路部分に連通路を接続することができる。そのため、連通路を流れる液体の流れが圧力室に影響を及ぼしにくい。
このように、本態様によれば、連通路の寸法の自由度やレイアウトの自由度などが高く、また、連通路を流れる液体の流れが圧力室に影響を及ぼしにくいので、連通路の形成に対する制約が少なくなり、連通路に求められる十分な機能を実現することが容易になる。
【0110】
[第2態様]
第2態様は、第1態様において、前記共通供給流路10は、前記圧力室並び方向一端側外方に配置される入口流路部10aと、前記圧力室並び方向他端側外方に配置される供給流路端部10dとを備え、前記共通回収流路50は、前記圧力室並び方向他端側外方に配置される排出流路部50aと、前記圧力室並び方向一端側外方に配置される回収流路端部50dとを備え、前記連通路は、前記入口流路部と前記回収流路端部とを連通する連通路61,65、及び、前記供給流路端部と前記排出流路部とを連通する連通路62,63,64のうちの少なくとも一方を含むことを特徴とするものである。
回収流路端部又は供給流路端部は、液体の滞りやすい場所である。本態様によれば、このような液体の滞りやすい回収流路端部又は供給流路端部と、共通供給流路の入口流路部又は共通回収流路の排出流路部とを、連通路により連通させる。入口流路部は液体循環のための大きな正圧が加わる箇所であり、また、排出流路部は液体循環のための大きな負圧が加わる箇所であるため、連通路内に比較的強い液体の流れを生み出すことができる。したがって、本態様によれば、液体の滞りやすい場所である回収流路端部又は供給流路端部に強い液体の流れを生み出すことができ、液体の滞りを少なくし、ヘッド全体の液体の流れを良好にすることができるとともに、気泡排出性が向上する。
【0111】
[第3態様]
第3態様は、第2態様において、前記共通供給流路10は、前記入口流路部10aと前記供給流路端部10dとの間に、前記入口流路部から分岐して前記供給流路端部へ合流する複数の分岐流路部10b,10cを備え、前記複数の分岐流路部が前記複数の圧力室に通じるように構成されていることを特徴とするものである。
これによれば、圧力室に接続される共通供給流路10の分岐流路部10b,10cの接続流路部分以外の流路部分で、連通路61~65が共通供給流路10に接続される。したがって、連通路61~65を流れる液体の流れが各圧力室に影響を及ぼしにくいので、この影響を考慮して連通路61~65の流路抵抗の設定が妨げられるということがない。その結果、連通路の形成に対する制約が更に少なくなり、連通路に求められる十分な機能を実現することが容易になる。
【0112】
[第4態様]
第4態様は、第1乃至第3態様のいずれかにおいて、前記共通回収流路50の一部は、前記共通供給流路10の上方に配置されていることを特徴とするものである。
これによれば、簡易な構成で気泡排出性の向上を図ることができる。
【0113】
[第5態様]
第5態様は、第4態様において、前記共通回収流路50の他部は、前記共通供給流路10と同じ高さであって、前記ノズルに近い側又は前記ノズルから遠い側に配置される流路部分を含むことを特徴とするものである。
これによれば、共通回収流路50と共通供給流路10との間に同じ高さの流路部分が存在するため、これらの間を連通させる連通路を、水平の流路としたり、入口から出口に向かって上りの流路としたりすることが容易である。このような流路とすることで、共通供給流路10内の気泡排出性が向上する。
【0114】
[第6態様]
第6態様は、第1乃至第3態様のいずれかにおいて、前記共通供給流路の一部は、前記共通回収流路の上方に配置されていることを特徴とするものである。
これによれば、簡易な構成で液体循環性の向上を図ることができる。
【0115】
[第7態様]
第7態様は、第6態様において、前記共通供給流路の他部は、前記共通回収流路と同じ高さであって、前記ノズルに近い側又は前記ノズルから遠い側に配置される流路部分を含むことを特徴とするものである。
これによれば、共通回収流路50と共通供給流路10との間に同じ高さの流路部分が存在するため、これらの間を連通させる連通路を、水平の流路としたり、入口から出口に向かって上りの流路としたりすることが容易である。このような流路とすることで、共通供給流路10内の気泡排出性が向上する。
【0116】
[第8態様]
第8態様は、液体吐出ユニットであって、第1乃至第7態様のいずれかに記載の液体吐出ヘッドを備えていることを特徴とするものである。
これによれば、連通路に求められる十分な機能を実現することが容易な液体吐出ユニットを提供することができる。
【0117】
[第9態様]
第9態様は、液体を吐出する装置であって、第1乃至第7態様のいずれかに記載の液体吐出ヘッド、又は、請求項8に記載の液体吐出ユニットを含むことを特徴とするものである。
これによれば、連通路に求められる十分な機能を実現することが容易な液体を吐出する装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0118】
1 :ノズル板
2 :流路板
3 :振動板
4 :ノズル
6 :圧力室
7 :供給側流体抵抗部
8 :供給側導入部
9 :供給側開口部
10 :共通供給流路
10A :下部流路部分
10B :上部流路部分
10a :入口流路部
10b,10c:分岐流路部
10d :供給流路端部
11 :圧電アクチュエータ
12 :圧電部材
13 :ベース部材
15 :フレキシブル配線部材
20 :共通流路部材
29 :カバー
30 :振動領域
50 :共通回収流路
50A :下部流路部分
50B :上部流路部分
50a :排出流路部
50b,50c:分岐流路部
50d :回収流路端部
50e :第二排出流路部
56 :回収側個別流路
58 :回収側導出部
59 :回収側開口部
60 :圧力室エリア
61~65:連通路
71 :供給ポート
72 :回収ポート
100 :液体吐出ヘッド
【先行技術文献】
【特許文献】
【0119】
【特許文献1】特開2019-209595号公報
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