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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168377
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/49 20060101AFI20241128BHJP
【FI】
A61F13/49 312Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023084982
(22)【出願日】2023-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】000115108
【氏名又は名称】ユニ・チャーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 京太
(72)【発明者】
【氏名】村上 浩子
(72)【発明者】
【氏名】中野 加奈
(72)【発明者】
【氏名】ディン ニュー チエン
【テーマコード(参考)】
3B200
【Fターム(参考)】
3B200BA12
3B200CA06
3B200DA01
(57)【要約】
【課題】着用者の胴回りの変化に応じたフィット性が維持されやすい吸収性物品を提供する。
【解決手段】分離されている胴回り部(20、30)の所定の位置に止着部(5)が係合して胴回り開口部が形成された状態にて、55%以上の所定の収縮率では、上下方向における止着部(5)の中心位置において、胴回り部(20、30)の左右方向の中心から一方側の端までの長さと、胴回り部(20、30)の左右方向の中心から他方側の端までの長さとが一致し、55%以上の或る収縮率よりも10%高い収縮率まで胴回り部(20、30)を左右方向に伸長させたときに胴回り部(20、30)に作用する伸長力を、或る収縮率まで胴回り部(20、30)を左右方向に伸長させたときに胴回り部(20、30)に作用する伸長力で除した値が、1.8以上である吸収性物品(1)。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに直交する上下方向、左右方向、及び前後方向を有し、
一方側胴回り部と他方側胴回り部を備えた胴回り部、及び股下部を有する吸収性物品であって、
止着部を有し、
前記止着部の先端部は、前記胴回り部の非肌側面に分離可能に係合する係合部を有し、
前記胴回り部は、前記左右方向に伸縮する伸縮部材を備え、
少なくとも1箇所が分離されている前記胴回り部の所定の位置に前記止着部が前記係合部によって係合して胴回り開口部が形成された状態において、
前記胴回り部の前記左右方向の長さを、前記胴回り部が最も伸長したときの前記左右方向の長さで除した割合を、収縮率としたとき、
55%以上の所定の収縮率では、前記上下方向における前記止着部の中心位置において、前記胴回り部の前記左右方向の中心から前記左右方向の一方側の端までの長さと、前記胴回り部の前記左右方向の中心から前記左右方向の他方側の端までの長さとが一致し、
55%以上の或る収縮率よりも10%高い収縮率まで前記胴回り部を前記左右方向に伸長させたときに前記胴回り部に作用する伸長力を、前記或る収縮率まで前記胴回り部を前記左右方向に伸長させたときに前記胴回り部に作用する伸長力で除した値が、1.8以上であること、を特徴とする吸収性物品。
【請求項2】
請求項1に記載の吸収性物品であって、
伸長状態の前記胴回り部を前記或る収縮率まで前記左右方向に収縮させたときに前記胴回り部に作用する収縮力を、収縮状態の前記胴回り部を前記或る収縮率まで前記左右方向に伸長させたときに前記胴回り部に作用する伸長力で除した値が、0.8以下であること、を特徴とする吸収性物品。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の吸収性物品であって、
前記胴回り部は、
前記止着部の係合を可能とする被係合部と、
前記胴回り部の上端から下端に亘り前記伸縮部材が存在しない非伸縮領域と、を有し、
前記被係合部は、前記左右方向において前記非伸縮領域と重複する部位を有していること、を特徴とする吸収性物品。
【請求項4】
請求項3に記載の吸収性物品であって、
前記左右方向において、前記被係合部の全域が前記非伸縮領域と重複していること、を特徴とする吸収性物品。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の吸収性物品であって、
吸収体を有し、
前記胴回り部は、前記前後方向の前側において、前記胴回り部の上端から下端に亘り前記伸縮部材が存在しない非伸縮領域を有し、
前記非伸縮領域は、前記前側の前記吸収体の前記左右方向の中心を跨いで位置し、
少なくとも1箇所が分離されている前記胴回り部の前記所定の位置に前記止着部が前記係合部によって係合し、伸長している状態において、前記非伸縮領域の前記左右方向の長さは、前記一方側胴回り部と前記他方側胴回り部の前記左右方向の合計長さの20%以上であり50%以下であること、を特徴とする吸収性物品。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の吸収性物品であって、
前記所定の位置は、前記前後方向の前側の前記胴回り部に位置し、
前記前側の前記胴回り部の伸縮領域の方が、後側の前記胴回り部の伸縮領域に比べて、
前記上下方向の単位幅の領域を前記左右方向に所定の長さを伸長させるための力が大きいこと、を特徴とする吸収性物品。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の吸収性物品であって、
吸収体を有し、
前記止着部の基端部は、前記胴回り部に固定部で固定されており、
前記左右方向における前記吸収体の中心から前記固定部までの前記胴回り部の領域は、上端から下端に亘り前記伸縮部材が存在しない非伸縮領域であること、を特徴とする吸収性物品。
【請求項8】
請求項1又は2に記載の吸収性物品であって、
前記止着部の基端部は、前記胴回り部に固定部で固定されており、
前記胴回り部は、前記固定部よりも前記左右方向の外側の第1部位と、前記止着部の前記係合部が係合される第2部位と、を有し、
前記吸収性物品は、前記第1部位を前記上下方向に2等分する中心線と、前記第2部位を前記上下方向に2等分する中心線とが、前記左右方向に沿う直線上に位置するように、前記止着部を係合するための目印部を有すること、を特徴とする吸収性物品。
【請求項9】
請求項8に記載の吸収性物品であって、
前記目印部は、前記止着部の外形輪郭に沿う形状であること、を特徴とする吸収性物品。
【請求項10】
請求項1又は2に記載の吸収性物品であって、
前記所定の位置に前記止着部を係合するための目印部を有すること、を特徴とする吸収性物品。
【請求項11】
請求項1又は2に記載の吸収性物品であって、
吸収体を有し、
前記左右方向における前記吸収体の中心よりも一方側において、前記止着部の基端部は、前記胴回り部に固定部で固定されており、且つ、前記止着部を係合するための目印部が少なくとも1つ設けられていること、を特徴とする吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ウェスト開口部と一対のレッグ開口部とを有するパンツ型の使い捨ておむつであり、ウェスト開口部の装着圧力ではなく、着用者の腸骨稜から上前腸骨棘にかけての部位の装着圧力を従来よりも高めたおむつが開示されている。このパンツ型の使い捨ておむつによれば、おむつ着用中のずれ落ちを効果的に防止できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-61680号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
通常、パンツ型おむつの装着時には、先ずユーザーが胴回り部を大きく広げて、ユーザー自身又は着用者の脚を入れる。そのため、ユーザーが胴回り部を広げやすくなるように、胴回り部を伸長させたときに胴回り部に作用する応力(所謂行き応力)が比較的に小さく設計されている。ゆえに、特許文献1のように伸縮材の配置を工夫しても、パンツ型おむつでは、着用者の姿勢変更や飲食などで着用者の胴回りが変化した際に胴回り部が伸びやすく、おむつのずれ落ちや漏れに繋がる問題が生じていた。
【0005】
本発明は、上記のような従来の問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、着用者の胴回りの変化に応じたフィット性が維持されやすい吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための主たる発明は、
互いに直交する上下方向、左右方向、及び前後方向を有し、
一方側胴回り部と他方側胴回り部を備えた胴回り部、及び股下部を有する吸収性物品であって、
止着部を有し、
前記止着部の先端部は、前記胴回り部の非肌側面に分離可能に係合する係合部を有し、
前記胴回り部は、前記左右方向に伸縮する伸縮部材を備え、
少なくとも1箇所が分離されている前記胴回り部の所定の位置に前記止着部が前記係合部によって係合して胴回り開口部が形成された状態において、
前記胴回り部の前記左右方向の長さを、前記胴回り部が最も伸長したときの前記左右方向の長さで除した割合を、収縮率としたとき、
55%以上の所定の収縮率では、前記上下方向における前記止着部の中心位置において、前記胴回り部の前記左右方向の中心から前記左右方向の一方側の端までの長さと、前記胴回り部の前記左右方向の中心から前記左右方向の他方側の端までの長さとが一致し、
55%以上の或る収縮率よりも10%高い収縮率まで前記胴回り部を前記左右方向に伸長させたときに前記胴回り部に作用する伸長力を、前記或る収縮率まで前記胴回り部を前記左右方向に伸長させたときに前記胴回り部に作用する伸長力で除した値が、1.8以上であること、を特徴とする吸収性物品である。
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、着用者の胴回りの変化に応じたフィット性が維持されやすい吸収性物品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】着用状態の使い捨ておむつ1の斜視図である。
図2】自然状態のおむつ1を腹側胴回り部20側から見た平面図である。
図3】展開かつ伸長状態のおむつ1を非肌側面側から見た平面図である。
図4図3中の部分Xの拡大図である。
図5】腹側胴回り部20の分離及び胴回り開口の形成について説明する図である。
図6】腹側胴回り部20の切断の動作について説明する図である。
図7】止着部50を係合する位置の目印部60についての説明図である。
図8図8A及び図8Bは胴回り部20、30の収縮率についての説明図である。
図9図9A図9Cは胴回り部20、30の伸長力と収縮力の測定方法の説明図である。
図10図10A及び図10BはSサイズのおむつ1の伸長力と収縮力の測定結果を示す図である。
図11図11A及び図11BはMサイズのおむつ1の伸長力と収縮力の測定結果を示す図である。
図12】被係合部25と非伸縮領域Nについて説明する図である。
図13図13A及び図13Bは目印部60の変形例を示す図である。
図14図14A及び図14Bは目印部60の変形例を示す図である。
図15】固定部F1及び補助固定部F2の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
(態様1)
互いに直交する上下方向、左右方向、及び前後方向を有し、一方側胴回り部と他方側胴回り部を備えた胴回り部、及び股下部を有する吸収性物品であって、止着部を有し、前記止着部の先端部は、前記胴回り部の非肌側面に分離可能に係合する係合部を有し、前記胴回り部は、前記左右方向に伸縮する伸縮部材を備え、少なくとも1箇所が分離されている前記胴回り部の所定の位置に前記止着部が前記係合部によって係合して胴回り開口部が形成された状態において、前記胴回り部の前記左右方向の長さを、前記胴回り部が最も伸長したときの前記左右方向の長さで除した割合を、収縮率としたとき、55%以上の所定の収縮率では、前記上下方向における前記止着部の中心位置において、前記胴回り部の前記左右方向の中心から前記左右方向の一方側の端までの長さと、前記胴回り部の前記左右方向の中心から前記左右方向の他方側の端までの長さとが一致し、55%以上の或る収縮率よりも10%高い収縮率まで前記胴回り部を前記左右方向に伸長させたときに前記胴回り部に作用する伸長力を、前記或る収縮率まで前記胴回り部を前記左右方向に伸長させたときに前記胴回り部に作用する伸長力で除した値が、1.8以上であること。
【0010】
態様1によれば、上記伸長力の比率が1.8よりも小さい場合に比べて、胴回り部の伸びやすさが適度に抑えられる。そのため、着用者の胴回り周長が大きくなったときも、胴回り部から着用者の身体に掛かる力が比較的に大きく、着用者の胴回りの変化に応じたフィット性が維持されやすい。よって、胴回り部のずれ落ちや排泄物の漏れを抑制できる。また、吸収性物品の装着時には、胴回り部が分離されている状態で止着部が係合されるため、胴回り部の伸びやすさが抑えられていても、ユーザーは装着し難さを感じるおそれが少ない。また、胴回り部が所定の収縮率で装着されたときに、胴回り部の左右の長さのバランスが良く、着用者に違和感を生じさせ難くすることができる。
【0011】
(態様2)態様1に記載の吸収性物品であって、
伸長状態の前記胴回り部を前記或る収縮率まで前記左右方向に収縮させたときに前記胴回り部に作用する収縮力を、収縮状態の前記胴回り部を前記或る収縮率まで前記左右方向に伸長させたときに前記胴回り部に作用する伸長力で除した値が、0.8以下である。
【0012】
態様2によれば、収縮力を伸長力で除した値が0.8よりも大きい場合に比べて、伸長力に対する収縮力が小さくなる。そのため、着用者の胴回り周長に合わせて胴回り部がフィットする際に、胴回り部から着用者の身体に掛かる力が小さく、締め付け感を軽減できる。そのため、吸収性物品の着け心地を向上させることができる。
【0013】
(態様3)態様1又は2に記載の吸収性物品であって、
前記胴回り部は、前記止着部の係合を可能とする被係合部と、前記胴回り部の上端から下端に亘り前記伸縮部材が存在しない非伸縮領域と、を有し、前記被係合部は、前記左右方向において前記非伸縮領域と重複する部位を有している。
【0014】
態様3によれば、ユーザーが吸収性物品の装着時に、一方の手で止着部を掴み、他方の手で被係合部又はその近傍を掴んだ際に、被係合部が左右方向に伸び難く、ふら付き難いため、止着部を被係合部に安定して近付けて係合できる。
【0015】
(態様4)態様3に記載の吸収性物品であって、
前記左右方向において、前記被係合部の全域が前記非伸縮領域と重複している。
【0016】
態様4によれば、ユーザーが吸収性物品の装着時に、一方の手で止着部を掴み、他方の手で被係合部又はその近傍を掴んだ際に、被係合部が左右方向に伸び難く、ふら付き難いため、止着部を被係合部に安定して近付けて係合できる。
【0017】
(態様5)態様1から4の何れかに記載の吸収性物品であって、
吸収体を有し、前記胴回り部は、前記前後方向の前側において、前記胴回り部の上端から下端に亘り前記伸縮部材が存在しない非伸縮領域を有し、前記非伸縮領域は、前記前側の前記吸収体の前記左右方向の中心を跨いで位置し、少なくとも1箇所が分離されている前記胴回り部の前記所定の位置に前記止着部が前記係合部によって係合し、伸長している状態において、前記非伸縮領域の前記左右方向の長さは、前記一方側胴回り部と前記他方側胴回り部の前記左右方向の合計長さの20%以上であり50%以下である。
【0018】
態様5によれば、着用者の腹部が非伸縮領域に当接するため、腹部への締め付け感を軽減でき、着け心地が向上する。また、非伸縮領域の左右方向の長さが前記合計長さの20%よりも短い場合に比べて、腹部の締め付け感を軽減でき、また、胴回り部の伸びやすさも適度に抑えられるので、着用者の胴回りの変化に応じたフィット性が維持されやすい。また、非伸縮領域の左右方向の長さが前記合計長さの50%よりも長い場合に比べて、胴回り部の伸縮性が確保され、胴回り部が着用者の胴回りにしっかりとフィットできる。
【0019】
(態様6)態様1~5の何れかに記載の吸収性物品であって、
前記所定の位置は、前記前後方向の前側の前記胴回り部に位置し、前記前側の前記胴回り部の伸縮領域の方が、後側の前記胴回り部の伸縮領域に比べて、前記上下方向の単位幅の領域を前記左右方向に所定の長さを伸長させるための力が大きい。
【0020】
態様6によれば、ユーザーが吸収性物品の装着時に、前側の胴回り部を掴んだ際に、前側の胴回り部の伸びが抑えられ、ふら付き難いため、止着部を前側の胴回り部に安定して近付けて係合できる。一方、後側の胴回り部は、着用者の臀部を包み込むように大きく伸びやすく、着用者の背側部への胴回り部のフィット性が得られやすい。
【0021】
(態様7)態様1~6の何れかに記載の吸収性物品であって、
吸収体を有し、前記止着部の基端部は、前記胴回り部に固定部で固定されており、前記左右方向における前記吸収体の中心から前記固定部までの前記胴回り部の領域は、上端から下端に亘り前記伸縮部材が存在しない非伸縮領域である。
【0022】
態様7によれば、ユーザーが止着部を胴回り部に係合する際に、固定部で分離された胴回り部の先端部である非伸縮領域を掴むことができ、非伸縮領域がふら付き難いため、止着部を胴回り部に安定して近付けて係合できる。
【0023】
(態様8)態様1~7の何れかに記載の吸収性物品であって、
前記止着部の基端部は、前記胴回り部に固定部で固定されており、前記胴回り部は、前記固定部よりも前記左右方向の外側の第1部位と、前記止着部の前記係合部が係合される第2部位と、を有し、前記吸収性物品は、前記第1部位を前記上下方向に2等分する中心線と、前記第2部位を前記上下方向に2等分する中心線とが、前記左右方向に沿う直線上に位置するように、前記止着部を係合するための目印部を有する。
【0024】
態様8によれば、止着部側の第1部位と、その反対側の第2部位との上下方向の位置が揃いやすく、且つ、第1部位と第2部位が共に左右方向に沿って平行となりやすい。そのため、胴回り部の伸縮部材が着用者の胴回りの周方向に沿いやすく、また、着用者の胴回りを胴回り部により左右でバランス良く覆うことができる。よって、装着時の違和感が生じ難くなる。
【0025】
(態様9)態様8に記載の吸収性物品であって、
前記目印部は、前記止着部の外形輪郭に沿う形状である。
【0026】
態様9によれば、ユーザーは、目印部に基づいて、第1部位を上下方向に2等分する中心線と、第2部位を上下方向に2等分する中心線とが、左右方向に沿う直線上に位置するように、止着部を胴回り部に係合しやすくなる。
【0027】
(態様10)態様1~9の何れかに記載の吸収性物品であって、
前記所定の位置に前記止着部を係合するための目印部を有する。
【0028】
態様10によれば、ユーザーは、目印部に基づいて、胴回り部が所定の収縮率で装着されたときに、胴回り部の左右の長さのバランスが良くなるように、止着部を胴回り部に係合しやすくなる。
【0029】
(態様11)態様1~10の何れかに記載の吸収性物品であって、
吸収体を有し、前記左右方向における前記吸収体の中心よりも一方側において、前記止着部の基端部は、前記胴回り部に固定部で固定されており、且つ、前記止着部を係合するための目印部が少なくとも1つ設けられている。
【0030】
態様11によれば、止着部と止着部を係合する位置(目印部)が胴回り部の左右方向の一方側に集中して配置されている。そのため、例えばユーザーは止着部を吸収体の前まで大きく回し込んで係合する必要がなく、止着部を胴回り部に係合しやすい。
【0031】
===実施形態===
以下、本発明に係る吸収性物品として、乳幼児用のパンツ型の使い捨ておむつを例に挙げて実施形態を説明する。但し、本発明に係る吸収性物品は、乳幼児用の使い捨ておむつに限らず、大人用の使い捨ておむつや、生理用ショーツ等としても利用可能である。
【0032】
===使い捨ておむつ1の構成===
図1は、着用状態の使い捨ておむつ1(以下「おむつ」)の斜視図であり、左右方向における一方側から見た斜視図である。図2は、自然状態のおむつ1を腹側胴回り部20側から見た平面図である。図3は、展開かつ伸長状態のおむつ1を非肌側面側から見た平面図である。図3等の中央線C-Cは、伸長状態における左右方向における中央線である。なお、図3は、図1及び図2に示すパンツ型のおむつ1の展開且つ伸長状態を示している。
【0033】
「自然状態」とは、おむつ1を所定時間放置したときの状態である。例えば、製品状態のおむつ1をパッケージから取り出した背側胴回り部30を左右方向の両外側に引っ張り、胴回り部20、30を「伸長した状態」として、この伸長状態を15秒間継続させた後、おむつ1の引っ張りを解除して机等の平面に置く。そして、このような平面平置きで5分間経過させた状態を自然状態とする。
【0034】
「展開状態」とは、パンツ型状態のおむつ1の両側部、つまり、腹側胴回り部20の両側側端部と背側胴回り部30の両側側端部の接合部2a、2bをそれぞれ分離し、開いておむつ1全体を平面的に展開した状態である。「伸長状態」とは、おむつ1の皺が視認できなくなる程度まで、おむつ1が備える伸縮部材を伸長させた状態を示す。具体的には、おむつ1を構成する各部材(例えば、後述する腹側胴回り部20等)の寸法がその部材単体の寸法と一致又はそれに近い寸法になるまで伸長させた状態を示す。
【0035】
おむつ1は、図1及び図2に示すパンツ型状態において、互いに直交する上下方向、左右方向、及び前後方向を有し、胴回り開口部BH、及び、一対の脚回り開口部LHが形成されている。上下方向において、胴回り開口部BH側を上側とし、股下側を下側とする。前後方向において、着用者の腹側を前側とし、着用者の背側を後側とする。また、おむつ1を構成する資材が積層された方向を厚さ方向といい、厚さ方向において着用者に接触する側を肌側といい、肌側と反対側を非肌側という。なお、厚さ方向は、自然状態における前後方向に沿う方向でもある。
【0036】
おむつ1は、所謂3ピースタイプであり、吸収性本体10と腹側胴回り部20と背側胴回り部30を有する。腹側胴回り部20は、着用者の腹側を覆い、背側胴回り部30は、着用者の背側を覆う。おむつ1は、止着部5も有している。
【0037】
図3に示す展開状態のおむつ1において、腹側胴回り部20及び背側胴回り部30は、それらの長手方向がおむつ1の左右方向に沿うように配置されている。そして、左右方向における腹側胴回り部20の中央部に、吸収性本体10の長手方向一方側の端部が配置され、左右方向における背側胴回り部30の中央部に、吸収性本体10の長手方向他方側の端部を配置することで、股下部40を構成する。吸収性本体10は、腹側胴回り部20及び背側胴回り部30より肌側に配置される。
【0038】
図3に示す展開状態のおむつ1を、吸収性本体10の長手方向がおむつ1の上下方向に沿った状態で、吸収性本体10の長手方向の略中央CLで二つ折りし、おむつ1の左右方向における腹側胴回り部20の両側端部と背側胴回り部30の両側端部とを、熱溶着や超音波溶着等で接合して、一対の接合部2a、2bを形成することにより、図1及び図2に示すパンツ型状態のおむつ1となる。接合部2aは、左右方向における一方側に設けられた接合部であり、接合部2bは、左右方向における他方側に設けられた接合部である。
【0039】
また、本実施形態のおむつ1は乳幼児用であるため、おむつ1の展開且つ伸長状態(図3)において、おむつ1の長手方向の最大寸法(腹側胴回り部20の上端から背側胴回り部30の上端までの長さ)は、395mm以上425mm以下程度の範囲であるとよい。サイド接合部2a、2bの長手方向(上下方向)の長さは、88.5mm以上98.5mm以下程度の範囲であるとよい。ただし上記寸法の範囲外の大きさである乳幼児用のおむつであってもよい。
【0040】
本実施形態では、上下方向において一対の接合部2a、2bと重複する部位を胴回り部20、30とし、胴回り部20、30は、一方側胴回り部である腹側胴回り部20と、他方側胴回り部である背側胴回り部30を備える。そして、胴回り部20、30よりも下方の部位を股下部40とする。なお、吸収性本体10の非肌側に位置する外装材として、腹側胴回り部20や背側胴回り部30から下方に延出する延出部が設けられた吸収性物品であってもよい。延出部によって着用者の下腹部や臀部を覆うことができる。また、腹側胴回り部20と背側胴回り部30が分離されて別部材であるに限らず、腹側胴回り部20と背側胴回り部30の間に股下部の外装部材が設けられ、腹側胴回り部20と背側胴回り部30が連続した一部材であってもよい。
【0041】
吸収性本体10は、吸収体11と、吸収体11よりも肌側に配置された液透過性のトップシート12と、トップシート12と吸収体11の間に配置されたセカンドシート13と、吸収体11及びセカンドシート13よりも肌側に配置されたサイドシート14と、吸収体11よりも非肌側に配置された液不透過性のバックシート15と、バックシート15よりも非肌側に配置された外装シート16とを有する。
【0042】
吸収体11は、平面視略矩形形状であり、尿等の排泄液を吸収して保持する吸収性コア11Aと、吸収性コアを覆う液透過性のコアラップシート(不図示)を備える。吸収性コア11Aとしては、高吸収性ポリマー(SAP)を含むパルプ等の液体吸収性繊維を所定の形状、例えば平面視略砂時計形状に成形されたもの(液体吸収性繊維の成形物)や、高吸収性ポリマー(SAP)をシート状に成形した所謂SAPシートを例示できる。また、SAPシートと液体吸収性繊維の成形物とを厚さ方向に重ねた吸収性コア11Aとしてもよく、例えば、厚さ方向における肌側から順に、SAPシート、液体吸収性繊維の成形物、SAPシートを重ねた構成の吸収性コア11Aであってもよい。おむつ1の吸収性コア11Aの左右方向の長さは、吸収体11の左右方向の長さにほぼ一致する。コアラップシートとしては、ティッシュペーパーや不織布等の液透過性シートを例示できる。なお、コアラップシートを備えない構成でもよい。
【0043】
図3に示すように、吸収性本体10の左右方向における両側部に設けられた脚回り伸縮部材17は、レッグギャザーを構成する。パンツ型の状態のおむつ1のレッグギャザーは、各脚回り開口部LHに沿って設けられており、脚回り伸縮部材17の伸縮によって、おむつ1は着用者の脚回りにフィットする。おむつ1の脚回り伸縮部材17は、複数本の糸ゴムが用いられ、例えば、左右方向の内側に折り返されて2層となった外装シート16同士の間において、バックシート15と外装シート16との間に、吸収性本体10の長手方向に伸長された状態で固定されている。
【0044】
吸収性本体10の左右方向における両側部で、脚回り伸縮部材17より内側に、防漏壁伸縮部材18を有する。左右方向の外側に折り返されて2層となったサイドシート14同士の間に複数の防漏壁伸縮部材18が、長手方向に伸長された状態で固定されており、長手方向に沿った一対の防漏壁部を形成する。おむつ1の着用時には、防漏壁伸縮部材18が発現する伸縮性によって、防漏壁部が着用者の肌側に起立し、着用者の股間部にフィットする。
【0045】
脚回り伸縮部材17、防漏壁伸縮部材18としては、糸ゴムや伸縮性シート等を例示できる。
【0046】
腹側胴回り部20は、肌側シート21と、非肌側シート22と、左右方向に伸縮する複数の伸縮部材23を有する。肌側シート21と、非肌側シート22は、ホットメルト等の接着剤、熱や超音波等の溶着などの接合手段によって接合されている。肌側シート21と非肌側シート22は、略同じ大きさで、略同じ形状のシート部材であり、本実施形態では、略矩形形状を有している。非肌側シート22は、肌側シート21よりも非肌側に配置されている。肌側シート21及び非肌側シート22としては、SMS不織布(スパンボンド・メルトブローン・スパンボンド不織布)、スパンボンド不織布、エアスルー不織布、ポイントボンド不織布、伸縮不織布、プラスチックシート、開孔プラスチックシート及びそれらのラミネートシートなどの非伸縮シートを用いることができる。
【0047】
腹側胴回り部20の複数の伸縮部材23は、肌側シート21と非肌側シート22との間において、上下方向に並んで配置されるとともに、左右方向に伸長状態で固定されている。よって、腹側胴回り部20は、左右方向に伸縮し、着用者の胴回りにフィットする。伸縮部材23としては、ゴムやスパンデックス等の伸縮部材を例示できる。腹側胴回り部20は、非肌側シート22の非肌側面に、止着部5が有する係合部51(後述)の係合を可能とする被係合部25を有する。被係合部25は、所謂ターゲット領域であり、例えば、不織布シートを例示できる。また、係合部51に面ファスナーの雄部材を用いた場合には、被係合部25には、面ファスナーの雌部材等を用いるなど、係合部51に応じた被係合部を選択することが望ましい。さらに、被係合部25として、非肌側シート22の非肌側面に別部材を設けずに、係合部51と係合可能な部材(例えば不織布)からなる非肌側シート22を用いて、非肌側シート22の非肌側面に直接係合させてもよい。しかし、上記とは逆に、腹側胴回り部20の被係合部25が面ファスナーの雄部材であり、止着部5の係合部51(腹側胴回り部20との対向面)が不織布シートや面ファスナーの雌部材等であってもよい。
【0048】
背側胴回り部30は、肌側シート31と、非肌側シート32と、左右方向に伸縮する複数の伸縮部材33を有する。肌側シート31と、非肌側シート32は、ホットメルト等の接着剤、熱や超音波等の溶着などの接合手段によって接合されている。肌側シート31と非肌側シート32は、略同じ大きさで、略同じ形状のシート部材であり、本実施形態では、略矩形形状を有している。非肌側シート32は、肌側シート31よりも非肌側に配置されている。肌側シート31及び非肌側シート32としては、例えば、ポリプロピレンのSMS不織布(スパンボンド・メルトブローン・スパンボンド不織布)、スパンボンド不織布、エアスルー不織布、ポイントボンド不織布、伸縮不織布、プラスチックシート、開孔プラスチックシート及びそれらのラミネートシートなどの非伸縮シートを用いることができる。
【0049】
背側胴回り部30の複数の伸縮部材33は、肌側シート31と非肌側シート32との間において、上下方向に並んで配置されるとともに、左右方向に伸長状態で固定されている。よって、腹側胴回り部20及び背側胴回り部30は、それぞれ左右方向に伸縮し、着用者の胴回りにフィットする。伸縮部材23,33としては、ゴムやスパンデックス等の伸縮部材を例示できる。
【0050】
止着部5は、所謂タブ(つまみ)部材であり、腹側胴回り部20を切断した場合に胴回り開口を形成するために用いる部材である。図4は、図3中の部分Xの拡大図である。本実施形態の止着部5は、止着部5の基端部(図3等における左右方向の一方側)が、腹側胴回り部20の左右方向における中央より一方側に固定されており、止着部5の先端部(図3等における左右方向の他方側)が、腹側胴回り部20の非肌側面に分離可能に係合する係合部51を有している。
【0051】
止着部5は、着用者や着用者におむつ1を着用させようとする者(以下、「着用者等」ともいう。)が掴んで動作を行う摘まみ部であるため、止着部5自体が破断しない程度の強度を有することが好ましい。止着部5としては、例えば、プラスチックフィルム、ナイロンフィルム等の各種フィルムや、不織布、不織布をラミネート加工したフィルム等を用いることができる。本実施形態のおむつ1の止着部5は、プラスチックフィルムの両面にそれぞれ同じ大きさの不織布を重ねた3層からなるシート状の部材を用いている。
【0052】
係合部51は、止着部5の肌側面に設けられており、腹側胴回り部20の非肌側面(具体的には、被係合部25)に分離可能に係合することができる部材である。係合部51としては、例えば、面ファスナーの雄部材や粘着シート等の粘着材を例示できる。本実施形態の係合部51は、略矩形形状であるところ、丸型等の任意の形状としてもよい。
【0053】
図4等に示すように、止着部5は、固定部F1と補助固定部F2によって、腹側胴回り部20に固定されている。本実施形態の固定部F1と補助固定部F2は、止着部5と腹側胴回り部20とを厚さ方向に、熱溶着や超音波溶着等で接合した溶着部である。止着部5は、主に固定部F1によって、腹側胴回り部20に固定されており、補助固定部F2が、固定部F1による固定を補助している。
【0054】
===おむつ1の着用方法について===
本実施形態のおむつ1は、予め腹側胴回り部20を切断誘導部で切断して、左右方向における一方側を所謂テープ型のおむつの形態(脚回り開口部LHが形成されていない状態)、左右方向における他方側がパンツ型のおむつの形態(脚回り開口部LHが形成された状態)として着用可能である。
【0055】
まず、腹側胴回り部20を切断誘導部で切断し、左右方向における他方側(パンツ型のおむつの形態)の脚回り開口部LHに着用者の他方側の脚(おむつ1では着用者の右脚)を通してから、おむつ1を着用者の股間部まで引き上げて、その後、着用者の胴回りにフィットするように、止着部5の係合部51を腹側胴回り部20に係合させて、胴回り開口を形成することで、着用状態となる。
【0056】
このように着用させることで、例えば、脚をばたつかせて、両脚をパンツ型の使い捨ておむつの両側の脚回り開口部LHに通すことが困難な乳幼児に対しても、着用者の片方の脚を脚回り開口部LHに通すことができれば、その後は、止着部5(係合部51)で係合させることで、容易に着用状態とさせることができる。また、着用者自身が、おむつ1を着用する場合に、一般的なテープ型のおむつ(左右方向の両側にテープを備えたおむつ)をトイレ等で着用することが難しい場合もあるが、左右方向の一方側がパンツ型の形態で、他方側が止着部5を備えた(テープ型)形態とすることで、容易に着用し、且つ、容易に胴回りのフィット性を調整することが可能となる。
【0057】
なお、使用後のおむつ1を身体から取り外す際に、腹側胴回り部20を切断誘導部で分離して、着用者の身体からおむつ1の左右方向の一方側を取り除き、左右方向の他方側の脚周り開口部LHから他方側の脚を引き抜くことで、おむつ1を着用者の身体から取り外すことができる。
【0058】
===腹側胴回り部20の切断について===
腹側胴回り部20の切断について図5及び図6を用いて説明する。図5は、腹側胴回り部20の分離及び胴回り開口の形成について説明する図である。図6は、腹側胴回り部20の切断の動作について説明する図である。図5は、図4中のA―A矢視における断面の構成を説明する図である。なお、図5及び図6は、模式図であり、寸法等は必ずしも正確ではない。
【0059】
図5Aは、図1等に示すパンツ型の状態のおむつ1である。つまり、腹側胴回り部20は切断されておらず、腹側胴回り部20と背側胴回り部30とが、接合部2a、2bを介して連続した胴回り開口を形成している。図5Aに示す状態から、止着部5の先端部を掴んで、非肌側に向かって引き上げた状態を、図5B及び図6Aに示す。
【0060】
そして、図6Aのように、片手で腹側胴回り部20を掴み、もう一方の手で、止着部5を掴んで、それぞれ左右方向の外側に向かって引っ張ることで、図5C及び図6Bに示すように、腹側胴回り部20が切断誘導部に沿って切断され、左右方向の一方側と他方側とに分離される。「切断誘導部」とは、腹側胴回り部20の少なくとも一部を切断する際の誘導部である。おむつ1において、腹側胴回り部20と止着部5とを固定した固定部F1が、切断誘導部として機能する。具体的には、図6Aに示すように、それぞれ腹側胴回り部20と止着部5を持った状態で左右方向に引っ張ると、まず、切断誘導部(固定部F1)のうち、最も先端部側に位置する先端部側の端である切断誘導起点Kに引っ張りによる力が集中し、その後、切断誘導部の切断誘導起点Kから上側且つ基端部側に向かって傾斜する傾斜部と切断誘導起点Kから下側且つ基端部側にむって傾斜する傾斜部に沿って力が伝わる。そして、固定部F1の左右方向における他方側の端CEを境として、腹側胴回り部20が切断され、腹側胴回り部20が、止着部5を備えた一方側の部分と、止着部5を備えない他方側の部分とに分離される。
【0061】
その後、必要に応じて、図5Dに示すように、止着部5の係合部51を腹側胴回り部20の被係合部25に係合させることで、おむつ1の胴回り開口が形成される。係合部51を被係合部25に係合させた状態において、分離した腹側胴回り部20の左右方向における一方側の部分と他方側の部分とが、前後方向(厚さ方向)に重なるように係合部51を被係合部25に係合させてもよく、分離した腹側胴回り部20の左右方向における一方側の部分と他方側の部分とが、前後方向(厚さ方向)に重ならないように係合部51を被係合部25に係合させてもよい。係合部51を係合させる位置の調整によって、おむつ1の胴回り開口の大きさを調整できる。
【0062】
ただし、固定部F1を切断誘導部とするに限らず、ミシン目を設けたり、目付が薄い低目付部分を設けたりする等、腹側胴回り部20の切断を誘導可能な切断誘導部を設けてもよい。さらに、必ずしも、おむつ1が切断誘導部を備えていなくてもよい。着用者等が、刃物や手によって、腹側胴回り部20の所望の位置を切断してもよい。
【0063】
===胴回り部20、30の伸縮力について===
図7は止着部50を係合する位置の目印部60についての説明図である。図8A及び図8Bは胴回り部20、30の収縮率についての説明図である。
【0064】
ここで、切断誘導部(固定部F1)で分離されている腹側胴回り部20の「所定の位置p0」に止着部50が係合部51によって係合して胴回り開口部BHが形成された状態(図5D図8A)を「基準装着状態」と呼ぶ。おむつ1には、図7に示すように、所定の位置p0に止着部50を係合するための目印部60が設けられている。
【0065】
この基準装着状態において、胴回り部20、30の左右方向の長さWN(図8B)を、胴回り部20,30が最も伸長したときの左右方向の長さW100(図8A)で除した割合を、図8Bのときの「収縮率(N%=WN/W100×100)」とする。
【0066】
なお、接合部2a、2bは左右方向に幅を有する。そのため、本実施形態のおむつ1のように接合部2a、2bを有する吸収性物品の場合、胴回り部20,30の左右方向の長さ(WN、W100)とは、左右方向の一方側の接合部2aの内側端(他方側端)から左右方向の他方側の接合部2bの内側端(一方側端)までの左右方向の長さとする。
【0067】
また、胴回り部20、30が最も伸長したときの左右方向の長さとは、胴回り部20、30の皺が視認できなくなる程度まで、胴回り部20、30を伸長させたときの長さであり、胴回り部20、30を構成する肌側シート21、31と非肌側シート22、32の寸法がその部材単体の寸法(所謂、型紙寸法)と一致又はそれに近い寸法になるまで伸長させたときの長さである。
【0068】
胴回り部20、30が伸縮部材23、33を備える吸収性物品では、胴回り部20、30が最も伸長した状態(収縮率100%)から左右方向に収縮した状態で、着用者の胴回りにフィットする。例えば本実施形態のおむつ1とは異なり、止着部50を有さない一般的なパンツ型吸収性物品では、統計的に、左右方向に最も伸長したときの55%程度の長さ(収縮率55%)で着用されることが分かっている。
【0069】
そこで、本実施形態のおむつ1では、55%以上の所定の収縮率において以下となる。図8Bに示すように、上下方向における止着部5の中心位置5C(つまり接合部2a、2bの上下方向の中心位置)において、胴回り部20、30の左右方向の中心Cから左右方向の一方側の端までの長さ(WN/2)と、胴回り部20、30の左右方向の中心Cから左右方向の他方側の端までの長さ(WN/2)とが一致する。
【0070】
なお、胴回り部20、30の左右方向の中心Cとは、吸収体11(吸収性本体10)の左右方向の中心に対応する。また、本実施形態のおむつ1のように接合部2a、2bを有する吸収性物品の場合、胴回り部20、30の左右方向の一方側の端までとは、左右方向の一方側の接合部2aの内側端(他方側端)までであり、胴回り部20、30の左右方向の他方側の端までとは、左右方向の他方側の接合部2bの内側端(一方側端)までである。
【0071】
このように着用状態に対応する所定の収縮率において、着用者の股下部に位置している吸収体11から左右方向の両外側にそれぞれ延出する胴回り部20、30の左右方向の長さが一致することが好ましい。そうすることで、着用中の胴回り部20、30の左右のバランスが良く、着用者に違和感を生じさせ難くすることができる。例えば、左右方向の一方側の胴回り部20、30の締め付けが強く、左右方向の他方側の胴回り部20、30の締め付けが緩くなってしまうことを防止できる。
【0072】
本実施形態のおむつ1では、想定する着用対象者の平均胴回り寸法に基づいて「所定の収縮率」が決定されている。例えば、Sサイズのおむつ1では、基準装着状態(止着部5が所定の位置P0に係合している状態)において、66%の収縮率での胴回り部20、30の周長が着用対象者の平均胴回り寸法に対応する。よって、Sサイズのおむつ1の所定の収縮率は66%である。また、Mサイズのおむつ1では、基準装着状態において、74%の収縮率での胴回り部20、30の周長が着用対象者の平均胴回り寸法に対応する。よって、Mサイズのおむつ1の所定の収縮率は74%である。何れも所定の収縮率は55%よりも高い。
【0073】
さらに、本実施形態のおむつ1では、収縮状態の胴回り部20、30を、55%以上の或る収縮率よりも10%高い収縮率まで胴回り部20、30を左右方向に伸長させたときに胴回り部20、30に作用する伸長力をFaとする。また、収縮状態の胴回り部20、30を、或る収縮率まで胴回り部20、30を左右方向に伸長させたときに胴回り部20、30に作用する伸長力をFbとする。このとき伸長力Faを伸長力Fbで除した値が1.8以上である(Fa/Fb≧1.8)。
【0074】
そうすることで、前記伸長力の比率(Fa/Fb)が1.8よりも小さい場合に比べて、胴回り部20、30を伸長させるために要する力(行き応力)が大きくなる。そのため、着用者が姿勢を変更したり、飲食したり、呼吸したりすることで、着用者の胴回り周長が大きくなっても、胴回り部20、30の伸長が適度に抑えられ、フィット性が維持される。換言すると、着用者の胴回り周長が大きくなる時に胴回り部20、30から着用者の身体に掛かる力が大きく、フィット性が維持される。ゆえに、着用中のおむつ1のずれ落ちや排泄物の漏れを抑制できる。
【0075】
また、止着部50を有する本実施形態のおむつ1は、通常、腹側胴回り部20が切断誘導部(固定部F1)で分離されている状態(図6B参照)で装着される。そのため、胴回り部が分離されずに装着される一般的なパンツ型おむつのように、ユーザー(保護者等)は胴回り部を大きく広げながら着用者(乳幼児)の脚を入れる必要がない。つまり、少なくとも1箇所が分離されている胴回り部20、30に止着部5が係合して胴回り開口部BHを形成するおむつ1では、装着時に胴回り部20、30を大きく広げる動作が行われる確率が低い。そのため、前記伸長力の比率(Fa/Fb)を1.8以上としても、ユーザーはおむつ1の装着し難さを感じ難い。むしろ動き回る乳幼児の片側の脚だけを胴回り開口部BHから脚回り開口部LHへ通すだけでよいので、装着しやすいと感じやすくなる。ただし本実施形態のおむつ1は、一般的なパンツ型のおむつと同様に、胴回り部20、30を分離せずに、着用者の両脚を胴回り開口部BHから脚回り開口部LHに入れて装着することもできる。
【0076】
なお、55%以上の或る収縮率と或る収縮率よりも10%高い収縮率において、前記伸長力の比率の関係(Fa/Fb≧1.8)が成立していればよい。そのため、55%以上の別の収縮率と別の収縮率よりも10%高い収縮率において、前記伸長力の比率の関係が成立していなくても、本発明にかかる吸収性物品に含まれる。
【0077】
また、少なくとも1箇所が分離されている胴回り部に止着部(係合部)が係合して胴回り開口部が形成される吸収性物品は、本実施形態のおむつ1に限らず、以下の構成であってもよい。
例えば、左右方向の一方側だけでなく他方側の腹側胴回り部20にも止着部5が設けられた吸収性物品であってもよい。この場合、腹側胴回り部20の2箇所が分離され、2つの止着部5がそれぞれの所定の位置に係合した状態を基準装着状態とする。
また、止着部5は、背側胴回り部30に固定部F1にて固定されて、背側胴回り部30に係合してもよい。
また、左右方向の片側だけ腹側胴回り部20と背側胴回り部30が接合部にて接合され、その反対側では、腹側胴回り部20と背側胴回り部30が分離しており、止着部5が1つ設けられた吸収性物品であってもよい。或いは、左右方向の両側とも腹側胴回り部20と背側胴回り部30が分離しており、止着部5が2つ設けられた吸収性物品であってもよい。これらの場合、本実施形態のおむつ1のように、胴回り部20、30の途中に固定部F1にて止着部5が固定されていてもよいし、テープ型おむつのように、腹側胴回り部20又は背側胴回り部30の分離されている先端部に止着部5が固定されていてもよい。
また、腹側胴回り部20と背側胴回り部30が連続した筒状の一部材から構成されてもよい。
【0078】
また、本実施形態では腹側胴回り部20と背側胴回り部30が接合部2a、2bにて接合している状態で流通され、パッケージからおむつ1を取り出したユーザーが固定部F1にて腹側胴回り部20を分離するが、これに限らない。止着部で胴回り部を繋げる部位が予め分離されている状態でパッケージに収容されていてもよい。
【0079】
図9A図9Cは胴回り部20、30の伸長力と収縮力の測定方法の説明図である。図10A及び図10BはSサイズのおむつ1の伸長力と収縮力の測定結果を示す図である。図11A及び図11BはMサイズのおむつ1の伸長力と収縮力の測定結果を示す図である。
実際に、実施例(本実施形態)のSサイズとMサイズのおむつ1と、比較例のSサイズとMサイズのおむつをサンプルとして準備し、引張試験機70を用いて以下の測定を行った。比較例のおむつは、止着部を有さず、胴回り部が分離されない状態で装着される一般的なパンツ型おむつ(市販品)である。実施例のおむつについては、固定部F1にて腹側胴回り部20を切断し、止着部5が所定の位置P0(目印部60)に係合されている基準装着状態において、測定を行った。
【0080】
引張試験機70として、インストロン社製(型式:5965)又はそれと同等のものを使用して測定を行う。先ず、図9Aに示すように、引張方向に離間している一対のチャック(固定治具)71の初期距離L0を、サンプルの胴回り部の長さに合わせて、胴回り部が弛まない或いは若干弛む程度の長さに調整する。今回は乳幼児用のおむつであった為、L0=130mmにセットした。
次に、自然状態のサンプル(おむつ1)の胴回り部(20、30)をチャック71に引っ掛ける。「自然状態」とは、既述の通り、無負荷状態のサンプルを所定時間放置した状態である。一方側のチャック71に左右方向一方側の胴回り部(20、30)の端部を引っ掛け、他方側のチャック71に左右方向他方側の胴回り部(20、30)の端部を引っ掛ける。このとき接合部(2a、2b)を有するサンプルの場合、引張方向におけるチャック71の外側面の幅方向(図9の紙面に直交する方向)の中央に接合部(2a、2b)が位置するようにサンプルをセットする。
次に、100mm/minの速度で、一対のチャック71の間隔を引張方向に離す。一対のチャック71間の距離が所定の長さになるまでサンプルの胴回り部(20、30)を左右方向に伸長する。例えば、着用対象者の最小胴回りに対応する収縮率から着用対象者の最大胴回りに対応する収縮率が少なくとも含まれる範囲で伸長する。今回は初期長さ(130mm)からSサイズが242mmの長さまで、Mサイズが250mmの長さまで伸長した。
続いて、胴回り部(20、30)が伸長した状態から、100mm/minの速度で一対のチャック71間の距離が初期距離L0に戻るまで、一対のチャック71の間隔を近付ける。
このサイクルを2回繰り返す。そして、2サイクル目の引っ張り時において、伸長した胴回り部の収縮率(胴回り部の左右方向の長さ)と、その時に胴回り部に作用する伸長力(胴回り部をその長さに伸長させるのに要する力)とを対応付けて記録する。また、2サイクル目の収縮時において、収縮した胴回り部の収縮率(胴回り部の左右方向の長さ)と、その時に胴回り部に作用する収縮力(胴回り部をその長さに収縮させるのに要する力)とを対応付けて記録する。
【0081】
実際に測定した結果を図10A及び図11Aのグラフに示す。グラフの横軸は胴回り部の収縮率を表し、縦軸は測定荷重(N)を表す。図10AにはSサイズの実施例及び比較例の結果を示す。図11AにはMサイズの実施例及び比較例の結果を示す。
【0082】
図10A及び図11Aの伸長力のグラフ(右上がりのグラフ、伸長時の行き応力のグラフ)から、比較例に比べて実施例の方が、収縮率に対する伸長力の変化の傾きが大きいことが分かる。つまり、比較例に比べて実施例の方が、収縮率が10%高まったときの伸長力の増加率も高いので、胴回り部20、30の伸長しやすさが適度に抑えられることが分かる。ゆえに、着用者の胴回り周長が大きくなる時にもフィット性が維持されやすい。
【0083】
具体的に、Sサイズの実施例及び比較例の伸長力の測定結果(グラフ)から近似2次曲線を求め、66%の収縮率(或る収縮率)における伸長力と、76%の収縮率(或る収縮率よりも10%高い収縮率)における伸長力とを算出し、図10Bの表にまとめた。比較例では76%の伸長力(7.2N)を66%の伸長力(4.4N)で除した値が「1.64」であり、1.8よりも小さかった。一方、実施例では76%の伸長力(6.1N)を66%の伸長力(3.3N)で除した値が「1.85」であり、1.8以上であった。
【0084】
同様に、Mサイズの実施例及び比較例の伸長力の測定結果(グラフ)から近似2次曲線を求め、74%の収縮率(或る収縮率)における伸長力と、84%の収縮率(或る収縮率よりも10%高い収縮率)における伸長力とを算出し、図11Bの表にまとめた。比較例では84%の伸長力(8.8N)を74%の伸長力(6.0N)で除した値が「1.47」であり、1.8よりも小さかった。一方、実施例では84%の伸長力(7.3N)を74%の伸長力(3.9N)で除した値が「1.87」であり、1.8以上であった。
【0085】
以上の結果から、或る収縮率よりも10%高い収縮率での伸長力を、或る収縮率(Sサイズ64%、Mサイズ74%)での伸長力で除した値が、1.8以上である実施例は、そうではない比較例(一般的なパンツ型おむつ)に比べて、胴回り部の伸び易さが適度に抑えられる。よって、着用者の胴回り周長の変化に対するフィット性が維持されやすいことが分かる。
【0086】
なお、或る収縮率と或る収縮率よりも10%高い収縮率との伸長力の比率は、上記のように、伸長力の測定結果から近似曲線を求め、近似曲線式から各収縮率での伸長力を算出し、伸長力の比率を算出してもよい。又は、引張試験機70による測定時に、図9Bに示すように或る収縮率A%での伸長力の測定値と、図9Cに示すように或る収縮率より10%高い収縮率A+10%での伸長力の測定値を取得して、伸長力の比率を算出してもよい。後述する収縮力についても同様である。
【0087】
また、前述したように、55%以上の或る収縮率と或る収縮率よりも10%高い収縮率において、前記伸長力の比率の関係(Fa/Fb≧1.8)が成立していればよい。ただし、胴回り部20、30が有する伸縮部材23、33は弾性部材である。そのため、測定結果のグラフからも分かるように、胴回り部20、30が所定の長さ伸長したときの応力の変化は概ね比例的に増加する。そのため、実施例では、或る収縮率(Sサイズ64%、Mサイズ74%)以外の収縮率においても前記伸長力の比率の関係が成立していると考えられる。一方、比較例では、或る収縮率(Sサイズ64%、Mサイズ74%)以外の収縮率においても前記伸長力の比率の関係が成立していないと考えられる。
【0088】
また、実施例では、基準装着状態において吸収体11に対する胴回り部20、30の左右方向の長さのバランスが良くなる所定の収縮率(Sサイズ64%、Mサイズ74%)を或る収縮率とした。つまり、所定の収縮率と所定の収縮率よりも10%高い収縮率において前記伸長力の比率の関係(Fa/Fb≧1.8)が成立していた。そのため、所定の収縮率で胴回り部20、30が着用者の胴回りに装着される場合、胴回り部20、30の左右のバランスが良く、且つ、胴回りの変化に対するフィット性も得られる。ただし、伸長力の比率の関係が成立する或る収縮率は所定の収縮率と異なっていてもよい。
【0089】
また、図10A図11Aのグラフには、収縮力のグラフ(左下がりのグラフ、収縮時の戻り応力のグラフ)も示されている。伸長力のグラフに比べて、収縮力のグラフの方が、下方に位置して力が弱い。つまり、同じ収縮率であっても、その収縮率に収縮させるために要する力の方が、その収縮率に伸長させるために要する力よりも小さい。
そこで、伸長状態の胴回り部20、30を或る収縮率まで左右方向に収縮させたときに胴回り部20、30に作用する収縮力とFcとし、収縮状態の胴回り部20、30を或る収縮率まで左右方向に伸長させたときに胴回り部20、30に作用する伸長力をFbとする。このとき収縮力Fcを伸長力Fbで除した値が0.8以下(Fc/Fb≦0.8)であることが好ましい。
【0090】
そうすることで、前記収縮力と伸長力の比率(Fc/Fb)が0.8よりも大きい場合に比べて、胴回り部20、30の収縮力を小さくできる。よって、胴回り部20、30が収縮したときに着用者の身体に掛かる力が小さく、着用者の胴回りへの締め付け感を軽減できる。よって、おむつ1の着け心地が向上する。
【0091】
また、本実施形態のおむつ1では、或る収縮率と或る収縮率よりも10%高い収縮率において、前記伸長力の比率の関係(Fa/Fb≧1.8)が成立している。そのため、或る収縮率で胴回り部20、30が着用者の胴回りに装着される場合、締め付け感を軽減しつつ、胴回りの変化に対するフィット性が得られる。
【0092】
実際に収縮力を測定したSサイズの実施例及び比較例の収縮力の測定結果(グラフ)から近似2次曲線を求め、66%の収縮率(或る収縮率)における収縮力を算出し、図10Bの表にまとめた。比較例では66%の収縮力(3.6N)を66%の伸長力(4.4N)で除した値が「0.82」であり、0.8よりも大きかった。一方、実施例では66%の収縮力(2.2N)を66%の伸長力(3.3N)で除した値が「0.67」であり、0.8以下であった。
【0093】
同様に、収縮力を測定したMサイズの実施例及び比較例の収縮力の測定結果(グラフ)から近似2次曲線を求め、74%の収縮率(或る収縮率)における収縮力を算出し、図10Bの表にまとめた。比較例では74%の収縮力(5.2N)を74%の伸長力(6.0N)で除した値が「0.87」であり、0.8よりも大きかった。一方、実施例では74%の収縮力(2.5N)を74%の伸長力(3.9N)で除した値が「0.64」であり、0.8以下であった。
【0094】
以上の結果から、或る収縮率(Sサイズ64%、Mサイズ74%)での収縮力を或る収縮率での伸長力で除した値が0.8以下である実施例は、そうではない比較例(一般的なパンツ型おむつ)に比べて、胴回り部の締め付け感が軽減されることが分かる。
【0095】
図12は、被係合部25と非伸縮領域Nについて説明する図である。図12図3の一部分の拡大図である。
前述したように、腹側胴回り部20は、止着部5の係合を可能とする被係合部25(例えば不織布シートや面ファスナーの雌部材等)を有する。また、前後方向の前側の胴回り部である腹側胴回り部20は、腹側胴回り部20の上端から下端に亘り伸縮部材23が存在しない非伸縮領域Nを有する。伸縮部材23が存在しないとは、図12に示すように、胴回り部20、30に伸縮性を発現させる伸縮部材23が存在しないということである。そのため、胴回り部20、30に伸縮性を発現させない伸縮部材23(例えば細かく切断された不連続の糸ゴムや、接着剤で肌側シート21や非肌側シート22に固定されていない糸ゴムの切れ端等)は非伸縮領域Nに存在していてもよい。
また、伸縮部材23が存在し、胴回り部20、30が左右方向に伸縮する領域を伸縮領域Sと呼ぶ。
【0096】
そして、図12に示すように、被係合部25は、左右方向において非伸縮領域Nと重複する部位を有しているとよい。被係合部25の一部が伸縮領域Sと左右方向に重複してもよいが、より好ましくは、左右方向において被係合部25の全域が非伸縮領域Nと重複しているとよい。
【0097】
そうすることで、ユーザーが、おむつ1の装着時に(図6B参照)、一方の手で止着部5を掴み、他方の手で被係合部25又はその近傍を掴んだ際に、被係合部25が左右方向に伸び難いので、ふら付き難い。よって、ユーザーは、止着部5を被係合部25に安定して近付けて係合でき、装着しやすくなる。
また、仮に被係合部25が設けられている腹側胴回り部20の上下方向の一部の領域にだけ伸縮部材23が存在すると、その部分だけが左右方向の外側に引っ張られやすく、被係合部25が左右方向に対して傾く恐れがある。しかし、非伸縮領域Nでは、腹側胴回り部20の上下方向の全域に亘り伸縮部材23が存在せず、被係合部25が左右方向に対して傾き難い。よって、被係合部25側(図12では左右方向の他方側)の腹側胴回り部20の部位と、止着部5側(左右方向の一方側)の腹側胴回り部20の部位とが、左右方向に沿って平行に装着されやすくなる。ゆえに、着用者に装着中の違和感を生じさせ難くすることができる。
また、被係合部25と伸縮部材23が厚さ方向に重なって配置されない、或いは重なって配置されない領域が多いため、被係合部25が伸縮部材23によって左右方向に収縮してしまうことを抑制できる。したがって、止着部5の係合部51は被係合部25の平坦な面としっかりと係合できる。
【0098】
また、図12に示すように、非伸縮領域Nは、前側(腹側)の吸収体11の前記左右方向の中心を跨いで位置するとよい。そうすることで、着用者の腹部に非伸縮領域Nが当接し、伸縮部材23によって着用者の腹部を締め付けてしまうことを抑制できる。特に本実施形態のおむつ1の着用対象者である乳幼児は、腹部が膨らんだ体型であり、飲食や呼吸により腹部が膨らみやすいので、腹部の締め付けを抑制する効果が有効に発揮する。
【0099】
さらに、少なくとも1箇所が分離されている胴回り部20、30の所定の位置P0に止着部5が係合部51によって係合し、伸長している状態において(つまり、図8Aに示すように、基準装着状態で最も伸長している状態において)、以下であるとよい。すなわち、非伸縮領域Nの左右方向の長さ(LN)は、腹側胴回り部20と背側胴回り部30の左右方向の合計長さ(全体長さ:W100×2)の20%以上であり50%以下であることが好ましい。
そうすることで、非伸縮領域Nの長さLNが胴回り部20、30の全体長さの20%未満である場合に比べて、着用者の腹部の締め付け感をより確実に抑制できる。また、非伸縮領域Nの比率を高めることで、胴回り部20、30の伸びやすさが適度に抑えられ、着用者の胴回り変化に対するフィット性が維持されやすい。一方、非伸縮領域Nの長さLNが胴回り部20、30の全体長さの50%よりも大きい場合に比べて、胴回り部20、30の伸縮性を確保でき、着用者の胴回りへのフィット性が得られる。
【0100】
なお、おむつ1のように吸収性物品が左右一対の接合部2a、2bを有する場合、前記合計長さ(全体長さ)は、止着部5が所定の位置P0に係合している状態において、一方側の接合部2aの内側端から他方側の接合部2bの内側端までの腹側胴回り部20と背側胴回り部30の各々の左右方向の長さの合計値(W100×2)である。
【0101】
また、図12に示すように、止着部5の基端部は、腹側胴回り部20に固定部F1で固定されている。この場合、左右方向における吸収体11の中心Cから固定部F1までの腹側胴回り部20の領域が、非伸縮領域Nであることが好ましい。腹側胴回り部20は固定部F1にて切断されやすいので(図5C参照)、腹側胴回り部20の切り離しの端部(F1)から吸収体11の中心Cまでの領域が非伸縮領域Nとなる。
【0102】
そのため、ユーザーは、おむつ1の装着時に、一方の手で止着部5を掴み、他方の手で非伸縮領域Nを掴むことになる。よって、非伸縮領域Nがふら付き難く、ユーザーは、止着部5を平坦な非伸縮領域Nに安定して近付けて係合でき、装着しやすくなる。
【0103】
また、本実施形態のように、基準装着状態となる止着部5の係止位置(図7の所定の位置P0)が腹側胴回り部20に位置する場合、以下であるとよい。すなわち、腹側胴回り部20の伸縮領域Sの方が、背側胴回り部30の伸縮領域Sに比べて、上下方向の単位幅の領域を左右方向に所定の長さを伸長させるための力(伸長力)が大きいことが好ましい。
【0104】
なお、図12に示すように、腹側胴回り部20は、非伸縮領域Nの左右方向の一方側(止着部5よりも一方側)に伸縮領域Saを有し、非伸縮領域Nの左右方向の他方側に伸縮領域Sbを有する。一方、背側胴回り部30では、図3に示すように、左右方向の一対の接合部Sa、Sbの間が伸縮領域Sである。
【0105】
腹側胴回り部20の伸長力(伸長させるために要する力、行き応力)が大きく、伸びやすさが適度に抑えられることで、腹側の所定の位置P0に止着部5を係合する際に、腹側胴回り部20がふら付き難く、安定して係合しやすくなる。一方、背側胴回り部30の伸長力が小さく、伸びやすいことで、着用者の臀部を背側胴回り部30で包み込むように伸ばしながら止着部5を所定の位置P0に係合できる。よって、着用者の背側部へ胴回り部20、30のフィット性を向上させることができる。
また伸長力が小さいと収縮力も小さくなる傾向にあるため、背側胴回り部30の収縮力(収縮させるために要する力、戻り応力)が適度に抑えられる。そのため、例えば、腹側胴回り部20を切断誘導部(固定部F1)で切断した後、着用者を仰向けにさせた状態でおむつ1を着用させようとしたときに、背側胴回り部30が過度に収縮して、止着部5が着用者の臀部の下に潜り込んでしまうことを抑制できる。
【0106】
腹側胴回り部20と背側胴回り部30とで、上下方向の単位幅の領域を左右方向に所定の長さを伸長させるための力の測定する方法は、前述した引張試験機70(インストロン社製)を用いて測定できる。
先ず、おむつ1から腹側胴回り部20の伸縮領域Sを切り出して、所定の大きさ(単位面積)にカットして試験片Aとする。同様に、背側胴回り部30の伸縮領域Sを切り出して、試験片Aと同じ大きさにカットして試験片Bとする。これらの試験片A,Bについて、それぞれ左右方向において弛緩時における長さ(例えば25mm)を測定区間として引張試験器70のチャック71で挟み込む。
そして、所定の速度(例えば100mm/min)で測定区間を所定の長さ(例えば50mm)に伸長するまで左右方向の両側に引っ張り、その後、100mm/minの速度でチャック間距離がはじめの長さ(25mm)に戻るまで収縮させる。このサイクルを複数回(例えば2回)繰り返し、複数サイクル目において、所定の長さまで伸長させたときの引っ張り荷重を測定することにより、試験片A及び試験片Bの伸長させる力をそれぞれ算出して比較する。なお、試験片の伸縮可能範囲が狭く所定の長さまで伸長できない場合は、測定区間の伸長時の所定の長さを短くする(例えば50mmを40mmとする)など調整すればよい。
【0107】
また、図8Aに示すように、腹側胴回り部20は、止着部5の基端部が固定された固定部F1よりも左右方向の外側の第1部位201と、止着部5の係合部51が係合される第2部位202とを有する。つまり、第1部位201と第2部位202は分離されている状態から、止着部5によって繋がり、胴回り開口部BHが形成される。このとき、おむつ1は、第1部位201を上下方向に2等分する中心線C1-C1と、第2部位202を上下方向に2等分する中心線C2-C2と、が左右方向に沿う直線上に位置するように、止着部5を係合するための目印部60を有することが好ましい。つまり、目印部60は、ユーザーが止着部5を係合する際に、中心線C1-C1と中心線C2-C2の上下方向の位置が揃い且つ平行となるように誘導する目印である。
【0108】
そうすることで、止着部5側の腹側胴回り部20の第1部位201と、その反対側の腹側胴回り部20の第2部位202との上下方向の位置が揃いやすく、且つ、第1部位201と第2部位202が共に左右方向に沿って平行となりやすい。そのため、胴回り部20、30の伸縮部材23、33が着用者の胴回りの周方向に沿いやすくなる。また、着用者の胴回りを胴回り部20、30で左右にバランス良く覆うことができる。よって、着用者に装着中の違和感を生じさせ難くすることができる。また、例えば、第2部位202(被係合部25等)の中心線C2-C2に対して、第1部位201の中心線C1-C1が左右方向の外側に向かって下方に傾いてしまうことにより第1部位201側の脚回り開口部LHが小さくなってしまうことも防止できる。
【0109】
具体的には、図7に示すように、目印部60は、止着部5の外形輪郭に沿う形状であるとよい。この場合、腹側胴回り部20の第2部位202に対して、止着部5(第1部位201)の左右方向及び上下方向の位置が規定される。そのため、目印部60は、第1部位201の中心線C1-C1と、第2部位202の中心線C2-C2とが左右方向に沿う直線上に位置して止着部5が係合されるように、ユーザーを誘導できる。
【0110】
なお、止着部5の外形輪郭の全部に沿う形状に限らず、外形輪郭の一部に沿う形状であってもよい。また、目印部60は、外形輪郭に沿う線であってもよいし、外見輪郭の内側の部位が着色された着色部であってもよい。また、図7に例示する目印部60は曲線と直線で構成されるが、止着部5の外形輪郭に沿って例えばドットや星や花等の小さい図柄を並べることで目印部60を構成してもよい。
【0111】
図13A及び図13Bは目印部60の変形例を示す図である。図14A及び図14Bは目印部60の変形例を示す図である。目印部60は外形輪郭に沿う形状であるに限らない。以下に説明する変形例の目印部60であっても、腹側胴回り部20の第1部位201の中心線C1-C1と、第2部位202の中心線C2-C2と、が左右方向に沿う直線上に位置して止着部5が係合されるように、ユーザーを誘導できる。
【0112】
図13Aに示すように、目印部60は、止着部5の上下方向の係合位置を示す第1目印部61A(例:黒色三角形)と、止着部5の左右方向の係合位置を示す第2目印部61B(例:白色三角形)から構成されてもよい。腹側胴回り部20に第1目印部61Aと第2目印部61Bが1つずつ設けられ、止着部5にも第1目印部61Aと第2目印部61Bが1つずつ設けられている。そのため、ユーザーは、止着部5の第1目印部61Aを腹側胴回り部20の第1目印部61Aに合わせて(三角形の頂点を対向させて)上下方向の位置合わせを行いつつ、止着部5の第2目印部61Bを腹側胴回り部20の第2目印部61Bに合わせて、左右方向の位置合わせを行うことができる。
【0113】
図13Bに示すように、目印部60は、上下方向に3分割された3つの図柄62A、62B(ここではキリンの図柄)から構成されてもよい。上下2つの図柄の目印部62Aは腹側胴回り部20に設けられ、間の図柄の目印部62Bは止着部5に設けられている。そのため、ユーザーは、止着部5の図柄の目印部62Bを、腹側胴回り部20の図柄の目印部62Aの間に設けて上下方向の位置合わせを行いつつ、上下の図柄の目印部62Aと左右方向の位置も揃えることができる。これにより図柄が完成し、図柄を楽しむこともできる。
【0114】
図14及び図14Bに示すように、伸縮部材23を着色する(他の伸縮部材23と異なる色にする)ことによって目印部60を構成してもよい。図14Aに示すように、止着部5に設けられた目印部63の上端及び下端それぞれと上下方向の位置が同じである伸縮部材23A、23Bを着色して目印部63A、63Bとしてもよい。そうすることで、ユーザーは、着色された伸縮部材23A、23Bに基づき、止着部5の目印部63の上下方向の位置合わせを行いつつ、止着部5の目印部63の上端と下端が、着色された左右方向に沿う伸縮部材23A、23Bと平行となるように、止着部5を係合できる。
また、図14Bに示すように、止着部5の目印部63と上下方向に重複する位置に設けられた複数本の伸縮部材23Cを着色して目印部63Cとしてもよい。この場合も同様に、ユーザーは、着色された伸縮部材23Cに基づき、止着部5の目印部63の上下方向の位置合わせを行いつつ、止着部5の目印部63の上端と下端が、着色された左右方向に沿う伸縮部材23Cと平行となるように、止着部5を係合できる。
なお、図14A及び図14Bの場合、図示しないが、止着部5の左右方向の係合位置を示す目印部が別に設けられていてもよい。
【0115】
また、目印部60は、おむつ1の非肌側からユーザーが視認可能であればよく、印刷や、エンボス加工等による凹凸によって形成できる。
また、目印部60は、止着部5と厚さ方向に重なる位置に設けられ、図7に示すように止着部5を捲り返すことで視認されるものであってもよいし、止着部5の一部又は全部と厚さ方向に重ならない位置に設けられてもよい。
また、1つの止着部5に対して目印部60を複数設けてもよい。
また、胴回り部20、30に被係合部25(ターゲット領域)が設けられている場合、おむつ1が目印部60を備えなくとも、着用者は胴回り部20の適切な位置に止着部5を係合できる。ただし、おむつ1が目印部60を有することで、より適切な位置に(着用者の胴回りを締め付け過ぎず、且つ、ゆる過ぎず漏れ難い位置に)、止着部5を係合できる。
また、目印部60は、止着部5を係合する左右方向の位置を示すだけのもの(例えば上下方向に沿う直線)であってもよい。
【0116】
また、おむつ1は、基準装着状態となる所定の位置P0に止着部5を係合するための目印部60を有することが好ましい。
そうすることで、胴回り部20、30が所定の収縮率又はそれに近い収縮率で着用者の胴回りに装着されたときに、着用者の股下部に位置している吸収体11から左右方向の両外側にそれぞれ延出する胴回り部20、30の左右方向の長さを同じ又は近い長さにすることができる。そのため、着用時の胴回り部20、30の左右のバランスが良く、着用中の違和感が生じ難くなる。
【0117】
また、おむつ1は、胴回り部20、30が所定の収縮率であるときに、図8Bに示すように、上下方向における止着部5の中心位置5Cにおいて、胴回り部20、30(吸収体11)の左右方向の中心Cから左右方向の一方側の端までの長さWN/2と、胴回り部20、30の左右方向の中心(吸収体11)から左右方向の他方側の端までの長さWN/2とが一致するように、止着部5を胴回り部20、30に係合するための目印部60を有することが好ましい。
【0118】
そうすることで、胴回り部20、30が所定の収縮率又はそれに近い収縮率で着用者の胴回りに装着されたときに、着用者の股下部に位置している吸収体11から左右方向の両外側にそれぞれ延出する胴回り部20、30の左右方向の長さを同じ又は近い長さにすることができる。そのため、着用時の胴回り部20、30の左右のバランスが良く、着用中の違和感が生じ難くなる。
【0119】
また、図12に示すように、左右方向における吸収体11の中心Cよりも一方側において、止着部5の基端部は、腹側胴回り部20に固定部F1で固定されており、且つ、止着部5を係合するための目印部60が少なくとも1つ設けられていることが好ましい。
【0120】
目印部60が吸収体11の中心Cよりも他方側(止着部5の固定部F1とは反対側)に離れて設けられていると、ユーザーは、止着部5を掴んだ手を吸収体11の前を通るように回し込まなければならず、装着し難い。そのため、上記のように、腹側胴回り部20の左右方向の一方側に、止着部5と、止着部5の係合位置を示す目印部60とが集中していることで、止着部5を胴回り部20、30に係合しやすい。また、止着部5を胴回り部20、30に係合した際に、腹側胴回り部20同士が重複する部位が不要に長くなることがなく、資材削減を図ることができる。
【0121】
おむつ1が目印部60を複数有する場合、全ての目印部60が吸収体11の中心Cよりも左右方向の一方側(止着部5側)に位置してもよい。この場合、止着部5の操作性が良く、資材削減をより図ることができる。
或いは、一部の目印部60は、吸収体11の中心Cよりも左右方向の一方側(止着部5側)に位置するが、別の一部の目印部60は、吸収体11の中心Cよりも左右方向の他方側に位置していてもよい。この場合、別の一部の目印部60に基づいて止着部5を係合することで、胴回りの小さい着用者に対しても胴回り部20、30をフィットさせることができる。
【0122】
また、上記に限らず、吸収体11の中心Cよりも左右方向の他方側(止着部5とは反対側)に全ての目印部60が位置してもよい。この場合、胴回りの小さい着用者に対しても胴回り部20、30をフィットさせることができる。
【0123】
また、吸収体11の中心Cよりも左右方向の他方側に位置する目印部60であっても、目印部60が吸収体11上に位置することが好ましい。この場合、吸収体11よりも左右方向の他方側に目印部60が設けられている場合に比べて、止着部5を大きく回し込む必要がなく、装着し難さを抑制でき、また、腹側胴回り20同士が重複する部位も小さくできる。
【0124】
また、おむつ1の伸長状態において、前後方向における腹側胴回り部20(一方側胴回り部)側からおむつ1(吸収性物品)を見たときに、図4に示すように、腹側胴回り部20の非肌側面と止着部5とが重なる重畳領域Wを有し、図3に示すように、前記重畳領域Wが、おむつ1の左右方向における中央線Cに対して非対称に設けられていることが好ましい。本実施形態のおむつ1では、重畳領域Wは、左右方向における中央より一方側に設けられており、左右方向における中央より他方側には設けられておらず、重畳領域Wが、おむつ1の左右方向における中央線C-Cに対して非対称である。
【0125】
この場合、前後方向における一方側胴回り部側から見たときに、おむつ1が、左右方向の中央線に対して非対称な形状であるとユーザーに認識させやすくなる。よって、ユーザーが着用者の身体に対して、おむつ1を左右対称に装着させようとすることに対して過度に意識を向けさせないようにすることができるため、おむつ1の装着が容易になる。
【0126】
さらに、図2に示すように、自然状態のおむつ1においても、重畳領域Wが左右方向における中央線C-Cに対して非対称であり、おむつ1が左右方向における中央線C-Cに対して非対称な形状である。そのため、ユーザーは、自然状態でも、おむつ1が左右方向に非対称な形状であることを認識しやすい。
具体的には、自然状態のおむつ1を、前後方向における腹側胴回り部20側から見たときに、腹側胴回り部20の左右方向における一方側の側端からおむつ1の左右方向における中央(C―C)までの長さL1とし、腹側胴回り部20の左右方向における他方側の側端からおむつ1の左右方向における中央(C-C)までの長さL2とする。この長さL1と長さL2とが異なることが好ましい。本実施形態では、止着部5が設けられた左右方向における一方側の長さL1の方が、止着部5が設けられていない左右方向における他方側の長さL2より長い(L1>L2)。これによって、自然状態のおむつ1でも、左右方向の中央線C-Cに対して非対称な形状であることをユーザーに認識させやすくなる。
【0127】
また、図12に示すように、伸長状態において、前後方向における腹側胴回り部20側からおむつ1を見たときに、左右方向における吸収性コア11Aより外側における非伸縮領域Nが、左右方向における中央線C-Cに対して非対称に設けられていることが好ましい。
そのため、左右方向における中央線C-Cより一方側の領域と他方側の領域とで収縮力が異なることから、前後方向における腹側胴回り部20側からおむつ1を見たときのおむつ1の腹側胴回り部20の形状が左右方向における中央線C-Cに対して非対称となりやすい。ユーザーは、このおむつ1を腹側胴回り部20側から見たときに、左右方向の中央線C-Cに対して非対称な形状であることを認識しやすくなる。
【0128】
また、図4等に示すように、左右方向において、接合部2aと固定部F1との間に、左右方向に伸縮する一方側伸縮領域Saを有することが好ましい。さらに、伸長状態において、一方側伸縮領域Saの方が、他方側伸縮領域Sbに比べて、左右方向の長さが短い。
ゆえに、腹側胴回り部20側からおむつ1を見たユーザーに、おむつ1が左右方向の中央線C-Cに対して非対称な形状であることを認識させやすくしつつ、接合部2aと固定部F1との間に設けられた一方側伸縮領域Saによって、止着部5の係合部51を腹側胴回り部20に係合させる場合に止着部5に対して伸縮性を付与することができるため、止着部5の操作性が向上し、ユーザーに装着が容易なおむつ1であるという印象を与えやすくなる。
【0129】
また、おむつ1は、腹側胴回り部20と背側胴回り部30の左右方向における一方側の端部は接合部2aで接合されており、止着部5の基端部が腹側胴回り部20に固定部F1で固定されている。止着部5の先端部は、腹側胴回り部20の非肌側面に分離可能に係合する係合部51を有し、止着部5と腹側胴回り部20とを固定する固定部F1の少なくとも一部は、左右方向において、接合部2aと離間している。
【0130】
止着部5及び固定部F1は、胴回り開口を形成したり、胴回り開口の大きさを調整したり、腹側胴回り部20を切断したりする際に力が加えられる部分である。そのため、固定部F1の少なくとも一部を接合部2aと離間させることで、止着部5の動きによる、止着部5及び固定部F1に加えられた力で、接合部2aの腹側胴回り部20と背側胴回り部30の接合を破損させたり、剥離させたりする恐れを軽減させることができる。
【0131】
なお、固定部F1の一部が接合部2aと離間し、固定部F1の一部が接合部2aと厚さ方向(前後方向)に重なる構成であっても、止着部5の動きによる接合部2aの接合の破損や剥離を軽減できるが、図3等に示すように、左右方向において、固定部F1の全てが接合部2aと離間していることがより好ましい。止着部5の動きによって、接合部2aの接合を破損したり、剥離したりする恐れをより軽減させることができる。
【0132】
止着部5について、左右方向において、固定部F1が、接合部2aより他方側に設けられ、係合部51が、固定部F1より他方側に設けられており、図12に示すように、止着部5は、固定部F1より一方側で、且つ、接合部2aより他方側に非固定部Dを有することが好ましい。非固定部Dは、腹側胴回り部20に固定されていない、所謂ドライエッジ部分であり、接着剤や溶着等の接合手段が設けられていない部分である。
【0133】
図4に示すように、非固定部Dは、左右方向において、固定部F1と接合部2aとの間に設けられている。左右方向における固定部F1と接合部2aとの間の部分は、止着部5の動き及び係合において、力が加えられる部分であるため、この部分の少なくとも一部を非固定部Dで覆うことで、固定部F1と接合部2aとの間の部分が破損する恐れを軽減させることができる。しかし、上記に限らず、非固定部Dは、離散的に配置された複数の溶着部で仮固定されていてもよい。そうすることで、製造時や流通時に非固定部Dが捲れてしまったり、その捲れに起因して止着部5が胴回り部20、30から分離したりしてしまうことを防止できる。
【0134】
また、左右方向における接合部2aと固定部F1との間は、止着部5を動かした場合に力が加わりやすい部分であり、破損しやすい部分でもある。そのため、左右方向における接合部2aと固定部F1との間に、左右方向に伸縮する一方側伸縮領域Saを設けることで、止着部5の動きによる力を一方側伸縮領域Saの伸縮が緩衝しやすくなり、接合部2aと固定部F1との間の部分が破損する恐れを軽減させやすくなる。
【0135】
また、左右方向において、接合部2aと固定部F1との間に、左右方向に伸縮しない一方側非伸縮領域Na(非伸縮領域Nの一部)を有することが好ましい。そうすることで、止着部5を動かした際に、止着部5を動かすための力を直接的に止着部5に与えやすくなり、止着部5の係合や止着部5による胴回り開口の大きさの調整を行いやすくなる。なお、一方側非伸縮領域Naを、左右方向において、固定部F1の一方側から隣接するように配置することがより好ましい。一方側非伸縮領域Naが、固定部F1と隣接することで、止着部5を動かすための力を直接的に止着部5に与えやすくなる。
【0136】
また、止着部5の基端部は、胴回り部20、30に固定部F1で固定されており、固定部F1の少なくとも一部は、胴回り部20、30の少なくとも一部を切断する際の切断誘導部でもあることが好ましい。そうすることで、ミシン目を形成する工程等の切断誘導部を形成するための製造工程が不要な、簡略化された製造工程で製造されたおむつ1を提供することができる。
【0137】
また、固定部F1における腹側胴回り部20と止着部5の固定は、例えば、熱や超音波による溶着、接着剤等で固定することができる。ミシン目が設けられた部分の肌側胴回り部20は、孔が開いていたり、繊維が少なくなっていたりするため、破損しやすい部分である。一方、溶着部は、繊維を溶融して固められた部分であって、繊維の総量は減っていない。そのため、溶着部による固定部F1が切断誘導部として機能することで、切断する目的をもって操作を行う際には、切断が可能である一方で、切断を意図していない場合には、意図に反して、切断誘導部で腹側胴回り部20が不用意に破れてしまう恐れを軽減させることができる。
【0138】
前後方向における腹側胴回り部20側からおむつ1を見たとき、止着部5の先端部側から固定部F1に隣接する隣接領域において、止着部5の最も小さい単位面積当たりの重量が、胴回り部20、30の最も高い単位面積当たりの重量より大きいことが好ましい。
そうすることで、止着部5と腹側胴回り部20をそれぞれ左右方向の外側に向かって引っ張ると、固定部F1に引き裂かれる力が集中して、固定部F1の左右方向における他方側の端CEで、単位面積当たりの重量が小さい腹側胴回り部20が引き裂かれるように切断されやすくなる。単位面積当たりの重量が大きい止着部5は、固定部F1に固定された状態を維持しやすくなる。
【0139】
図15は、固定部F1及び補助固定部F2の拡大図である。
切断誘導部(固定部F1)のうち、最も先端部側の端Kが、切断誘導起点Kである。切断誘導起点Kは、切断誘導部で腹側胴回り部20を切断するために、腹側胴回り部20と止着部5に力を加えたときに、最も力が集中しやすい部分であり、最初に切断が始まりやすい部分でもある。そして、図8に示すように、切断誘導部は、最も先端部側の端Kから、基端部側に向かい、且つ上下方向に傾斜する傾斜部fa1、fb1を有することが好ましい。これによって、着用者等が腹側胴回り部20と止着部5とをそれぞれ引っ張ったときの力を、まず、切断誘導起点Kに集中させやすくしつつ、その力を切断誘導起点Kから傾斜部fa1、fb1に伝えやすくすることができるため、切断誘導部に沿った形状に腹側胴回り部20を切断しやすくなる。
【0140】
また、図8に示すように、切断誘導部が、上側傾斜部fa1と下側傾斜部fb1を有することが好ましい。上側傾斜部fa1は、最も先端部側の端K(切断誘導起点)から上側且つ基端部側に向かって傾斜する傾斜部であり、下側傾斜部fb1は、最も先端部側の端K(切断誘導起点)から下側且つ基端部側に向かって傾斜する傾斜部である。これによって、切断誘導部で腹側胴回り部20を切断するために、腹側胴回り部20と止着部5に加えた力を、まず、切断誘導起点Kに集中させやすくし、切断誘導起点Kに集中した力を上側傾斜部fa1と下側傾斜部fb1に伝えやすくすることで、腹側胴回り部20の切断が容易となる。
【0141】
さらに、上側傾斜部fa1と下側傾斜部fb1とがなす角度のうち、左右方向における基端部側の角度θが鈍角(90度よりも大きく、180度よりも小さい角度)であることがより好ましい。これによって、切断誘導起点Kから上側傾斜部fa1と下側傾斜部fb1に加えた力を伝えやすくして、腹側胴回り部20の切断を容易にさせつつ、θが鋭角の場合よりも、切断誘導部(固定部F1)の左右方向の長さを短くすることができる。
【0142】
腹側胴回り部20と背側胴回り部30の両側端部は、それぞれ接合部2a、2b接合されており、胴回り部20、30は、胴回り部20、30の少なくとも一部を切断する際の切断誘導部を有し、切断誘導部は、左右方向の両側端部に設けられた接合部2a、2bと異なる位置に設けられており、切断誘導部は、胴回り部20、30の少なくとも一部が溶融された溶融部であることが好ましい。そうすることで、切断する目的をもって操作を行う際には、切断を可能とする一方で、切断を意図していない場合には、着用者等の意図に反して、切断誘導部で腹側胴回り部20が破れてしまう恐れを軽減させることができる。
【0143】
おむつ1が、溶融部F1とは異なる補助溶融部F2を備えることが好ましい。複数の補助溶融部F2は、腹側胴回り部20の少なくとも一部が溶融されており、上下方向に間欠に配置されている。複数の補助溶融部F2は、胴回り開口に沿う方向において、切断誘導部(固定部F1)よりも止着部5の基端部に近い位置に設けられていることが好ましい。
そうすることで、切断誘導部である固定部F1で腹側胴回り部20の切断を誘導しつつ、複数の補助溶融部F2を備えることで、着用者等の意図に反する位置である切断誘導部より止着部5の基端部側で腹側胴回り部20が切断されてしまう恐れを軽減させることができる。
【0144】
また、複数の補助溶融部F2の少なくとも一部は、左右方向における長さf2wが、上下方向における長さf2tより長いことが好ましい(f2w>f2t)。補助溶融部F2の左右方向の長さf2wが上下方向の長さf2tの長さより長いことで、補助溶融部F2の左右方向の長さf2wの長さが、上下方向における長さf2tの長さより短い場合よりも、腹側胴回り部20に左右方向から加えられる力に対して、補助溶融部F2を起点として肌側胴回り部20が破断する恐れを軽減させることができる。
【0145】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。また、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更や改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれるのはいうまでもない。
【符号の説明】
【0146】
1 おむつ(使い捨ておむつ、吸収性物品)、
2a、2b 接合部、
5 止着部、
10 吸収性本体、11 吸収体、11A 吸収性コア、
12 トップシート、13 セカンドシート、14 サイドシート、
15 バックシート、16 外装シート、
17 脚回り伸縮部材、18 防漏壁伸縮部材、
20 腹側胴回り部(一方側胴回り部)、
21 肌側シート、22 非肌側シート、23 伸縮部材、
25 被係合部、
30 背側胴回り部(他方側胴回り部)、
31 肌側シート、32 非肌側シート、33 伸縮部材、
51 係合部、
60 目印部、P0 所定の位置、
70 引張試験機、71 チャック、
BH 胴回り開口部、LH 脚回り開口部、
F1 固定部、F2 補助固定部、
S 伸縮領域、
Sa 一方側伸縮領域、Sb 他方側伸縮領域、
N 非伸縮領域、
W 重畳領域
図1
図2
図3
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図5
図6
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