(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168405
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】高粘度原料の粒状凍結物製造装置及び方法
(51)【国際特許分類】
B01J 2/02 20060101AFI20241128BHJP
F25D 3/10 20060101ALI20241128BHJP
F25D 3/11 20060101ALI20241128BHJP
B01J 2/26 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
B01J2/02 A
F25D3/10 D
F25D3/11 A
B01J2/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023085042
(22)【出願日】2023-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】320011650
【氏名又は名称】大陽日酸株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127845
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 壽彦
(72)【発明者】
【氏名】米倉 正浩
(72)【発明者】
【氏名】多畑 英治
【テーマコード(参考)】
3L044
4G004
【Fターム(参考)】
3L044AA03
3L044BA04
3L044CA03
3L044DB03
3L044FA06
3L044KA03
3L044KA04
4G004CA07
(57)【要約】 (修正有)
【課題】凍結用冷媒に直接接触させずに高粘度原料の粒状に凍結させる高粘度原料の粒状凍結物製造装置及び方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る高粘度原料の粒状凍結物製造装置1は、高粘度原料を粒状に凍結させて粒状凍結物を製造するものであって、断熱構造で覆われた筐体10と、筐体10内を大気圧下で陽圧に保持するために筐体10内に不活性ガスの供給とその制御を行う不活性ガス供給制御部20と、筐体10内に静置され、高粘度原料と接触しないように供給される凍結用冷媒により冷却される凍結パネル30と、冷却された凍結パネル30の表面に高粘度原料を点状に供給する原料点状供給部40と、筐体10内に収納され、冷却された凍結パネル30の表面に点状に供給されて粒状に凍結した高粘度原料の粒状凍結物を掻き取るスクレイパー部50と、を備えたことを特徴とするものである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高粘度原料を粒状に凍結させて粒状凍結物を製造する高粘度原料の粒状凍結物製造装置であって、
断熱構造で覆われ、前記高粘度原料の供給を受けるための開口部が設けられた筐体と、
該筐体内を大気圧下で陽圧に保持するために該筐体内に不活性ガスの供給とその制御を行う不活性ガス供給制御部と、
前記筐体内に静置され、前記高粘度原料と接触しないように供給される凍結用冷媒により冷却される凍結パネルと、
前記筐体に設けられた前記開口部から、冷却された前記凍結パネルの表面に前記高粘度原料を点状に供給する原料点状供給部と、
前記筐体内に収納され、前記凍結パネルの表面に点状に供給されて粒状に凍結した前記高粘度原料の粒状凍結物を掻き取るスクレイパー部と、を備えたことを特徴とする高粘度原料の粒状凍結物製造装置。
【請求項2】
前記筐体は、前記不活性ガスを供給して陽圧に保持する際には閉じ、冷却された前記凍結パネルの表面に前記高粘度原料を点状に供給する際には開くように開閉動作する原料供給用開閉口部を備えたことを特徴とする請求項1に記載の高粘度原料の粒状凍結物製造装置。
【請求項3】
高粘度原料を粒状に凍結させて粒状凍結物を製造する高粘度原料の粒状凍結物製造装置であって、
断熱構造で覆われ、前記高粘度原料の供給を受けるための開口部が設けられた筐体と、
該筐体内を大気圧下で陽圧に保持するための該筐体内に不活性ガスの供給とその制御を行う不活性ガス供給制御部と、
前記筐体内に静置され、前記高粘度原料と接触しないように供給される凍結用冷媒により冷却される凍結パネルと、
裏面が前記凍結パネルに接触した状態で移動可能に配設されて前記凍結パネルにより冷却されるベルトと、
前記筐体に設けられた前記開口部から、冷却された前記ベルトの表面に前記高粘度原料を点状に供給する原料点状供給部と、
前記筐体内において前記ベルトの移動方向の下流側に設置され、前記ベルトの移動により該ベルトの表面に点状に供給されて粒状に凍結した前記高粘度原料の粒状凍結物を掻きとるスクレイパー部と、を備えたことを特徴とする高粘度原料の粒状凍結物製造装置。
【請求項4】
前記ベルトはエンドレス形状であり、
該ベルトを移動させるためのベルト駆動部が前記筐体の外部に設けられている、ことを特徴とする請求項3に記載の高粘度原料の粒状凍結物製造装置。
【請求項5】
前記ベルトはワンスルー形状であり、
該ベルトを移動させるためのベルト駆動部が前記筐体の外部に設けられている、ことを特徴とする請求項3に記載の高粘度原料の粒状凍結物製造装置。
【請求項6】
高粘度原料を点状に供給して該高粘度原料の粒状凍結物を製造する高粘度原料の粒状凍結物製造方法であって、
断熱構造で覆われて前記高粘度原料の供給を受けるための開口部が設けられた筐体内を大気圧下で陽圧に保持するために該筐体内に不活性ガスの供給とその制御をする不活性ガス供給制御工程と、
前記筐体内に静置された凍結パネルに凍結用冷媒を供給し、該凍結パネルを冷却する凍結パネル冷却工程と、
前記筐体に設けられた前記開口部から、冷却された前記凍結パネルの表面に高粘度原料を点状に供給する原料点状供給工程と、
冷却された前記凍結パネルの表面に点状に供給された高粘度原料を粒状に凍結させる原料凍結工程と、
前記凍結パネルの表面において粒状に凍結した前記高粘度原料の前記粒状凍結物をスクレイパー部により掻き取る粒状凍結物掻き取り工程と、を備えたことを特徴とする高粘度原料の粒状凍結物製造方法。
【請求項7】
高粘度原料を点状に供給して該高粘度原料の粒状凍結物を製造する高粘度原料の粒状凍結物製造方法であって、
断熱構造で覆われて前記高粘度原料の供給を受けるための開口部が設けられた筐体内を大気圧下で陽圧に保持するために、該筐体内に不活性ガスの供給とその制御をする不活性ガス供給制御工程と、
前記筐体内に静置された凍結パネルに凍結用冷媒を供給し、裏面が前記凍結パネルに接触した状態で移動可能に配設されたベルトを冷却するベルト冷却工程と、
前記筐体に設けられた前記開口部から、冷却された前記ベルトの表面に高粘度原料を点状に供給する原料点状供給工程と、
前記ベルトの表面に点状に供給された高粘度原料を粒状に凍結させる原料凍結工程と、
前記ベルトを移動させることにより、該ベルトの表面において粒状に凍結した高粘度原料の粒状凍結物を、該ベルトの移動方向の下流に設置されたスクレイパー部により掻き取る粒状凍結物掻き取り工程と、を備えたことを特徴とする高粘度原料の粒状凍結物製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘度が高い液体状の高粘度原料を粒状に凍結させる高粘度原料の粒状凍結物製造装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、液体状の被凍結物を粒状に凍結させる方法として、例えば特許文献1及び2には、液化窒素等の極低温冷媒に液体原料を滴下して製造する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6327721号公報
【特許文献2】特開2020-108336号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
液化窒素は不活性であり、極低温冷媒として被凍結物の凍結に利用されることが多い。しかしながら、特許文献1及び2に開示されているように、液化窒素中に液体状の被凍結物を滴下して粒状に凍結させる場合、原料である被凍結物の粘度が高かったり、固形物を含んでいたりすると、液化窒素中に滴下できない場合があった。
また、被凍結物と極低温冷媒との温度差が大きいと、粒状に凍結した被凍結物が割れたりする場合があるという課題があった。
さらに、粒状凍結物の製造終了後の液化窒素中には大気中の雑菌や水分、被凍結物の残渣が混入してしまって極低温冷媒として再利用することができないため、運転コストの面で課題があった。
その上、被凍結物を液化窒素中に滴下した時にできる細かい粒や、半凍結状態の凍結物同士が付着して凍結してしまうこともあり、粒状凍結物の粒度にばらつきが多くなり品質面での課題もあった。
【0005】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、高粘度原料を粒状に凍結させることができ、粒状凍結物の品質を低下させずに運転コストや衛生面の課題を解消した高粘度原料の粒状凍結物製造装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明に係る高粘度原料の粒状凍結物製造装置は、高粘度原料を粒状に凍結させて粒状凍結物を製造するものであって、
断熱構造で覆われ、前記高粘度原料の供給を受けるための開口部が設けられた筐体と、
該筐体内を大気圧下で陽圧に保持するために該筐体内に不活性ガスの供給とその制御を行う不活性ガス供給制御部と、
前記筐体内に静置され、前記高粘度原料と接触しないように供給される凍結用冷媒により冷却される凍結パネルと、
前記筐体に設けられた前記開口部から、冷却された前記凍結パネルの表面に前記高粘度原料を点状に供給する原料点状供給部と、
前記筐体内に収納され、前記凍結パネルの表面に点状に供給されて粒状に凍結した前記高粘度原料の粒状凍結物を掻き取るスクレイパー部と、を備えたことを特徴とするものである。
【0007】
(2)上記(1)に記載のものにおいて、
前記筐体は、前記不活性ガスを供給して陽圧に保持する際には閉じ、冷却された前記凍結パネルの表面に前記高粘度原料を点状に供給する際には開くように開閉動作する原料供給用開閉口部を備えたことを特徴とするものである。
【0008】
(3)本発明に係る高粘度原料の粒状凍結物製造装置は、高粘度原料を粒状に凍結させて粒状凍結物を製造するものであって、
断熱構造で覆われ、前記高粘度原料の供給を受けるための開口部が設けられた筐体と、
該筐体内を大気圧下で陽圧に保持するための該筐体内に不活性ガスの供給とその制御を行う不活性ガス供給制御部と、
前記筐体内に静置され、前記高粘度原料と接触しないように供給される凍結用冷媒により冷却される凍結パネルと、
裏面が前記凍結パネルに接触した状態で移動可能に配設されて前記凍結パネルにより冷却されるベルトと、
前記筐体に設けられた前記開口部から、冷却された前記ベルトの表面に前記高粘度原料を点状に供給する原料点状供給部と、
前記筐体内において前記ベルトの移動方向の下流側に設置され、前記ベルトの移動により該ベルトの表面に点状に供給されて粒状に凍結した前記高粘度原料の粒状凍結物を掻きとるスクレイパー部と、を備えたことを特徴とするものである。
【0009】
(4)上記(3)に記載のものにおいて、
前記ベルトはエンドレス形状であり、
該ベルトを移動させるためのベルト駆動部が前記筐体の外部に設けられている、ことを特徴とするものである。
【0010】
(5)上記(3)に記載のものにおいて、
前記ベルトはワンスルー形状であり、
該ベルトを移動させるためのベルト駆動部が前記筐体の外部に設けられている、ことを特徴とするものである。
【0011】
(6)本発明に係る高粘度原料の粒状凍結物製造方法は、高粘度原料を点状に供給して該高粘度原料の粒状凍結物を製造するものであって、
断熱構造で覆われて前記高粘度原料の供給を受けるための開口部が設けられた筐体内を大気圧下で陽圧に保持するために該筐体内に不活性ガスの供給とその制御をする不活性ガス供給制御工程と、
前記筐体内に静置された凍結パネルに凍結用冷媒を供給し、該凍結パネルを冷却する凍結パネル冷却工程と、
前記筐体に設けられた前記開口部から、冷却された前記凍結パネルの表面に高粘度原料を点状に供給する原料点状供給工程と、
冷却された前記凍結パネルの表面に点状に供給された高粘度原料を粒状に凍結させる原料凍結工程と、
前記凍結パネルの表面において粒状に凍結した前記高粘度原料の前記粒状凍結物をスクレイパー部により掻き取る粒状凍結物掻き取り工程と、を備えたことを特徴とするものである。
【0012】
(7)本発明に係る高粘度原料の粒状凍結物製造方法は、高粘度原料を点状に供給して該高粘度原料の粒状凍結物を製造するものであって、
断熱構造で覆われて前記高粘度原料の供給を受けるための開口部が設けられた筐体内を大気圧下で陽圧に保持するために、該筐体内に不活性ガスの供給とその制御をする不活性ガス供給制御工程と、
前記筐体内に静置された凍結パネルに凍結用冷媒を供給し、裏面が前記凍結パネルに接触した状態で移動可能に配設されたベルトを冷却するベルト冷却工程と、
前記筐体に設けられた前記開口部から、冷却された前記ベルトの表面に高粘度原料を点状に供給する原料点状供給工程と、
前記ベルトの表面に点状に供給された高粘度原料を粒状に凍結させる原料凍結工程と、
前記ベルトを移動させることにより、該ベルトの表面において粒状に凍結した高粘度原料の粒状凍結物を、該ベルトの移動方向の下流に設置されたスクレイパー部により掻き取る粒状凍結物掻き取り工程と、を備えたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明においては、不活性ガスの陽圧雰囲気下において凍結用冷媒と直接接触させずに高粘度原料を粒状に凍結させることにより、高粘度原料の粒状凍結物に大気中の雑菌や水分が混入することを防ぐことができ、衛生面に配慮した高品質の粒状凍結物を製造することが可能である。
また、高粘度原料を点状に供給して凍結させるため、粘度が高かったり固形物を含んでいたりして滴下できない高粘度原料にも適用できる。その上、高粘度原料の供給を精密に行うことができるため、粒状凍結物の大きさを揃えて粒度のばらつきを低減することができ、製造した粒状凍結物の計量時の作業工数を低減することが可能である。
さらに、高粘度原料の種類に応じて凍結させる温度を設定でき、必要最低量の凍結用冷媒を利用することで、運転コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施の形態1に係る粒状凍結物製造装置の構成を説明する図である。
【
図2】本発明の実施の形態1に係る粒状凍結物製造装置の具体的な構成を詳細に説明する図である(その1)。
【
図3】本発明の実施の形態1に係る粒状凍結物製造装置の具体的な構成を詳細に説明する図である(その2)。
【
図4】本発明の実施の形態1における原料供給用開閉口部の一例として、スライド式の原料供給用開閉口部を示す図である。
【
図5】本発明の実施の形態1における原料供給用開閉口部の一例として、上下開閉式の原料供給用開閉口部を示す図である。
【
図6】本発明の実施の形態1に係る粒状凍結物製造方法の処理の流れを示すフロー図である。
【
図7】本発明の実施の形態2に係る粒状凍結物製造装置の構成を説明する図である。
【
図8】本発明の実施の形態2の他の態様に係る粒状凍結物製造装置の構成を説明する図である。
【
図9】本発明の実施の形態2に係る粒状凍結物製造方法の処理の流れを示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態1及び2に係る粒状凍結物製造装置及び方法について説明する。なお、本発明において、高粘度原料は、粘度が100mPa・S以上、好ましくは1000mPa・S以上の液体原料のことをいう。また、高粘度原料は、常温で液体である必要はなく、固形物を含んだペースト状や溶融金属でも良く、必要に応じてヒーター等の加熱源で液体状態が維持されているものであればよい。
また、以下の説明で用いる図面は、特徴を分かりやすくするために便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実物と同じであるとは限らない。また、以下の説明における材料や具体的な数値等は、本発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。
【0016】
[実施の形態1]
<粒状凍結物製造装置>
本発明の実施の形態1に係る高粘度原料の粒状凍結物製造装置1(以下、単に「粒状凍結物製造装置1」という)は、一例として
図1に示すように、高粘度原料を粒状に凍結させて粒状凍結物101を製造するものであり、筐体10と、不活性ガス供給制御部20と、凍結パネル30と、原料点状供給部40と、スクレイパー部50と、を備えたものである。
【0017】
≪筐体≫
筐体10は、断熱構造として断熱パネル11で覆われ、高粘度原料の供給を受けるための開口部13が設けられたものである。筐体10を覆う断熱構造に関しては特に限定はなく、断熱パネル11の他、断熱材が例示できる。また、
図1においては、複数の開口部13が筐体10に設けられている。
【0018】
≪不活性ガス供給制御部≫
不活性ガス供給制御部20は、筐体10内を大気圧下で陽圧に保持するために、筐体10内に不活性ガスの供給とその制御を行うものである。
【0019】
図1及び
図2に示す不活性ガス供給制御部20は、圧力指示調節計(PIC)21と、圧力制御弁(PCV)23と、流量計(FI)25と、を備えた構成の一例である。不活性ガス供給制御部20は、圧力指示調節計21により計測した筐体10内の圧力が所定の圧力となるように、圧力制御弁23により窒素ガスの供給を制御する。
【0020】
筐体10内の圧力は、周囲の大気中に含まれる水分や雑菌等の混入を防ぐ程度に保持すればよく、例えば、大気圧下でゲージ圧10kPaの陽圧にするとよい。
また、不活性ガスは、窒素ガスに限らず、高粘度原料の物性次第では、炭酸ガスやアルゴンガス等を不活性ガスとして利用してもよい。
【0021】
≪凍結パネル≫
凍結パネル30は、筐体10内に静置され、高粘度原料と接触しないように供給される凍結用冷媒により冷却されるものである。
【0022】
図1及び
図2は、凍結用冷媒として供給された液化窒素(LN)により凍結パネル30が冷却される構成の一例を図示したものであり、温度指示調節計(TIC)31と、温度制御弁(TCV)33と、供給管35と、排出管37と、を有するものである。
【0023】
温度指示調節計31は、凍結パネル30の表面30aの温度(表面温度)を計測するものである。
温度制御弁33は、温度指示調節計31により計測された凍結パネル30の表面温度が予め設定された所定の温度となるように、凍結パネル30への液化窒素の供給を制御するものである。
供給管35は、温度制御弁33により制御された液化窒素を凍結パネル30に供給するものである。
排出管37は、凍結パネル30に供給されて冷却した液化窒素を窒素ガス(GN)として筐体10の外部へと排出させるものである。
【0024】
凍結パネル30の表面温度は、例えば0~-100℃の温度制御範囲で設定すればよく、凍高粘度原料の凍結温度以下に設定するとよい。
凍結パネル30を上記の温度制御範囲で設定された表面温度に冷却するには、例えば、内部に凍結用冷媒のマイクロチャネル流路が形成されたヒートシンクを用いることができる。ヒートシンクを用いると凍結パネル30の表面30aを均一温度に冷却することが可能であるため、凍結パネル30の表面30aに点状に供給された高粘度原料の局所的な未凍結や過凍結を避けることができる。
【0025】
また、凍結パネル30に供給する凍結用冷媒は、高粘度原料の凍結温度に応じて適宜選択することができる。凍結用冷媒としては、液化窒素に限らず、冷却されたアルコール、フッ素エーテル及びシリコーンオイル等、低温での流動性が良い液体冷媒を好ましく適用できる。
【0026】
≪原料点状供給部≫
原料点状供給部40は、筐体10に設けられた開口部13から、冷却された凍結パネル30の表面30aに高粘度原料を点状に供給するものである。
【0027】
原料点状供給部40は、手動又は自動で高粘度原料を点状に供給することができるものであればよい。自動の原料点状供給部40としては、例えば、一定量の高粘度原料が精度良く充填されて吐出することができるディスペンサーが挙げられる。
【0028】
本実施の形態1に係る粒状凍結物製造装置1は、例えば
図3に示すように、凍結パネル30に対して原料点状供給部40を水平方向に相対移動を可能にする原料点状供給部移動用ガイドレール43を筐体10の外部に設置するとよい。
さらに、原料点状供給部40は、
図3に示すように、筐体10に設けられた複数の開口部13と同じ間隔で配置された複数のノズル41を備え、各ノズル41が開口部13の上方に位置するように設置するとよい。これにより、ノズル41が開口部13に挿通した状態で原料点状供給部40を水平移動させることで、凍結パネル30の表面30aに所定の間隔で高粘度原料を点状に供給して凍結させる箇所を複数設けることができる。
【0029】
≪スクレイパー部≫
スクレイパー部50は、
図1に示すように、冷却された凍結パネル30の表面30aに点状に供給されて粒状に凍結した高粘度原料の粒状凍結物101を掻き取るものであり、凍結パネル30の表面30aに沿った水平方向に移動可能に設置されたスクレイパー51を有する。
【0030】
スクレイパー51は、
図1に示すように、δの位置からεの位置まで凍結パネル30の表面30aに沿って移動することで、粒状凍結物101を掻き取る。
【0031】
スクレイパー51は、例えば
図3に示すように、スクレイパー51に連結した2台のアクチュエーター53aと、筐体10の外部に設置されたガイドレール53bと、を有するスクレイパー駆動部53により移動させるとよい。
スクレイパー駆動部53を備えた粒状凍結物製造装置1においては、2台のアクチュエーター53aがガイドレール53b上を移動することで、スクレイパー51を凍結パネル30の表面30aに沿って移動させることができる。なお、スクレイパー駆動部53によりスクレイパー51を移動させる場合、スクレイパー51を適度な力で凍結パネル30の表面30aに押し付けるように調整し、粒状凍結物101を確実に掻き取るようことができるようにするとよい。
【0032】
以上、本実施の形態1に係る粒状凍結物製造装置1によれば、不活性ガスの陽圧雰囲気下において凍結用冷媒と直接接触させずに高粘度原料を粒状に凍結させることにより、高粘度原料の粒状凍結物101に大気中の雑菌や水分が混入することを防ぐことができるので、衛生面に配慮して高品質の粒状凍結物101を製造することが可能である。
【0033】
また、粒状凍結物製造装置1においては、冷却した凍結パネル30の表面30aに高粘度原料を点状に供給して凍結させるため、粘度が高かったり固形物を含んでいたりして滴下できない高粘度原料にも適用できる。その上、高粘度原料の供給を精密に行うことができるため、粒状凍結物の大きさを揃えて粒度のばらつきを低減することができ、製造した粒状凍結物の計量時の作業工数を低減することが可能である。
【0034】
さらに、高粘度原料の種類に応じて凍結させる温度を設定でき、必要最低量の凍結用冷媒を利用することで、運転コストを低減することができる。その上、装置の製作が比較的容易であり、製作コストを低減することができるという利点も有する。
【0035】
また、粒状凍結物製造装置1においては、スクレイパー51を移動させるスクレイパー駆動部53を筐体10外に備えたものである場合、低温によるスクレイパー51の動作不良の影響を受けずにスクレイパー51を移動させることができる。
【0036】
さらに、粒状凍結物製造装置1は、凍結パネル30が筐体10内に静置されたものであり、粒状凍結物の掻き取り工程において、水平方向や上下方向への移動や回転運動等せずに静止したままである。そのため、凍結パネル30の表面30aにおける粒状凍結物101を回収するにあたっては、凍結パネル30を駆動させずにスクレイパー51を移動させればよい。そのため、極低温に冷却された凍結パネル30を移動等させるための駆動機構を備える必要がなく、極低温による動作不良の影響がなく安定して粒状凍結物101を回収することができる。
【0037】
なお、本実施の形態1に係る粒状凍結物製造装置1は、高粘度原料の供給を受けるために設けられた開口部13の代わりに、
図4又は5に例示する原料供給用開閉口部15が設けられていることが好ましい。
原料供給用開閉口部15は、筐体10の上面に設けられ、筐体10内に不活性ガスを供給制御して陽圧に保持する際には閉じ、高粘度原料を凍結パネル30の表面30aに供給する際には開くように開閉動作するものである。
【0038】
原料供給用開閉口部15としては、コンパクト化を図るために、例えば、
図4に示すようなスライド式の原料供給用開閉口部15A、又は、
図5に示すような上下開閉式の原料供給用開閉口部15Bを好適に用いることができる。
図4に示すスライド式の原料供給用開閉口部15Aは、筐体10の上面に設けられた開口部15aの上方にスライド扉15bが設けられたものである。そして、スライド扉15bが水平方向に移動することで開閉をする。
一方、
図5に示す上下開閉式の原料供給用開閉口部15Bは、
図5(a)に示すように、両開き扉15cが開口部15aに設けられたものであってもよいし、
図5(b)に示すように、片開き扉15dが開口部15aに設けられたものであってもよい。
【0039】
筐体10に原料供給用開閉口部15が設けられている場合、不活性ガス供給制御部20は、開口部15aを閉じた状態で筐体10内への不活性ガスの供給とその制御を行うことができるため、より容易に筐体10内を大気圧下で陽圧の不活性ガス雰囲気にすることができる。
さらに、原料供給用開閉口部15は、原料点状供給部40により凍結パネル30の表面30aに高粘度原料が点状に供給された後は閉じるように動作するものとしてもよい。これにより、原料供給用開閉口部15を閉じた状態で高粘度原料を凍結させることができるので、外気との接触による粒状凍結物101の品質低下を防ぐことができる。
【0040】
また、粒状凍結物製造装置1は、掻き取った粒状凍結物101を回収するために、例えば
図1に示すように、ホッパー61と、定量計63と、小分け容器65と、を筐体10内に設置するとよい。
【0041】
ホッパー61は、スクレイパー51の下方に設置されたものであり、スクレイパー51により掻き取られた粒状凍結物101を捕集するものである。
定量計63は、ホッパー61の下部に設けられたものであり、ホッパー61に捕集された粒状凍結物101を一定量に小分けするものである。
小分け容器65は、定量計63により一定量に小分けされた粒状凍結物101を回収するものである。
【0042】
この場合、スクレイパー51は、
図1に示すようにδの位置からεの位置に移動して粒状凍結物101を掻き取り、その後、δの位置に戻る。そして、原料点状供給部40により凍結パネル30の表面30aに高粘度原料を点状に再度供給する。以降、この動作を繰り返すことで、粒状凍結物101をホッパー61から定量計63を通じて小分け容器65に一定量に小分けして回収し、所定量の粒状凍結物101の製造を完了するまでの間、筐体10内に保管することができる。
なお、筐体10内は、断熱パネル11により断熱されているので、凍結パネル30によって冷却されているため、小分け容器65に回収された粒状凍結物101の品質を低下させずに保管することが可能である。
【0043】
<粒状凍結物製造方法>
本実施の形態1に係る高粘度原料の粒状凍結物製造方法(以下、「粒状凍結物製造方法」という)は、高粘度原料を粒状に凍結させて粒状凍結物を製造するものであり、
図6に示すように、不活性ガス供給制御工程S1と、凍結パネル冷却工程S3と、原料点状供給工程S5と、原料凍結工程S7と、粒状凍結物掻き取り工程S9と、を含むものである。
以下、不活性ガスに窒素ガス、凍結用冷媒に液化窒素、高粘度原料にポリビニルアルコール水溶液(以下PVA、粘度10,000mPa・s)を使用し、前述した粒状凍結物製造装置1(
図1)を用いて粒状凍結物101を製造する場合について、本実施の形態1に係る粒状凍結物製造方法の各工程を説明する。
【0044】
≪不活性ガス供給制御工程≫
不活性ガス供給制御工程S1は、断熱構造で覆われて高粘度原料の供給を受けるための開口部13が設けられた筐体10内を大気圧下で陽圧に保持するために筐体10内に不活性ガスである窒素ガス(GN)の供給とその制御をする工程である。
筐体10内への窒素ガスの供給は、例えば前述した
図1に示すように、圧力指示調節計21と、圧力制御弁23と、流量計25と、を有する不活性ガス供給制御部20により行うことができる。
【0045】
不活性ガス供給制御工程S1において、筐体10内の圧力は、大気圧下でゲージ圧10kPaの陽圧にするとよい。また、不活性ガスとしては、窒素ガスに限らず、高粘度原料の物性次第では、炭酸ガスやアルゴンガス等を利用してもよい。
【0046】
≪凍結パネル冷却工程≫
凍結パネル冷却工程S3は、筐体10内に静置された凍結パネル30に凍結用冷媒である液化窒素(LN)を供給し、凍結パネル30を冷却する工程である。
【0047】
凍結パネル冷却工程S3において、凍結パネル30の冷却は、例えば前述した
図1に示すように、温度指示調節計31で設定された温度に調整されるように、温度制御弁33により凍結用冷媒(液化窒素)の供給を制御することにより行うことができる。そして、凍結パネル30が設定された温度にまで冷却された時点で、凍結準備が完了したものとする。
本実施の形態1では高粘度原料としてPVAを用いているため、凍結パネル冷却工程S3においては、凍結パネル30の表面30aの温度が-80℃となるように調整すればよい。
【0048】
≪原料点状供給工程≫
原料点状供給工程S5は、筐体10に設けられた開口部13から、冷却された凍結パネル30の表面30aに高粘度原料を点状に供給する工程である。
【0049】
原料点状供給工程S5においては、原料点状供給部40を凍結パネル30に対して上下方向、水平方向に移動させることで、凍結パネル30の表面30aに所定の間隔で高粘度原料を点状に供給するとよい。
【0050】
≪原料凍結工程≫
原料凍結工程S7は、凍結パネル30の表面30aに点状に供給された高粘度原料を粒状に凍結させる工程である。
【0051】
≪粒状凍結物掻き取り工程≫
粒状凍結物掻き取り工程S9は、凍結パネル30の表面30aに点状に供給されて粒状に凍結した高粘度原料の粒状凍結物をスクレイパー部50により掻き取る工程である。
粒状凍結物を掻き取るには、例えば
図1に示すように、スクレイパー51を水平方向にβからγの位置まで移動させればよい。
【0052】
前述したように、粒状凍結物掻き取り工程S9においては、
図1に示すように、筐体10内にホッパー61と定量計63と小分け容器65とを設置し、凍結パネル30の表面30aからスクレイパー51により掻き取った粒状凍結物101をホッパー61に捕集してもよい。そして、ホッパー61の下部に設けられた定量計63により所定量の粒状凍結物101を小分け容器65に小分けして回収するとよい。
【0053】
以上、本実施の形態1に係る粒状凍結物製造方法によれば、高粘度原料の粒状凍結物101に大気中の雑菌や水分、さらには凍結用冷媒である液化窒素が混入することを防ぐことができるので、衛生面に配慮して高品質の粒状凍結物101を製造することが可能である。
【0054】
また、極低温冷媒中に液体原料を滴下して凍結させる場合のように液体状の原料の粘度が高かったり固形物を含んでいたりすると滴下できないといった問題を回避することができる上、粒状凍結物101の大きさを揃えて粒度のばらつきを低減することができるので、製造した粒状凍結物101の計量時の作業工数を低減することが可能である。
【0055】
さらに、高粘度原料の種類に応じて凍結パネル30の表面30aの温度を適宜設定することができるため、必要最低量の凍結用冷媒を利用することで運転コストを低減することができる。
【0056】
なお、本実施の形態1に係る粒状凍結物製造方法において、前述した
図4及び
図5に示したように、粒状凍結物製造装置1に原料供給用開閉口部15が設けられている場合、不活性ガス供給制御工程S1、原料点状供給工程S5及び原料凍結工程S7においては、原料点状供給部40及び原料供給用開閉口部15を以下のように動作させるとよい。
【0057】
まず、不活性ガス供給制御工程S1においては、原料供給用開閉口部15は閉じた状態とし、筐体10内に窒素ガスの供給とその制御をして筐体10内を陽圧に保持する。
【0058】
次に、筐体10内が不活性ガスにより大気圧下で陽圧となったら、原料点状供給工程S5においては、原料供給用開閉口部15を開く。
そして、原料点状供給部40をβの位置に移動させ、凍結パネル30の表面30aに高粘度原料の点状供給を開始する。高粘度原料の供給を開始した後は、原料点状供給部40をβの位置からγの位置まで、所定の間隔で高粘度原料を点状に供給しながら水平方向に移動させ、原料点状供給部40がγの位置に到達した後に、原料点状供給部40をαの位置に戻す。
【0059】
さらに、原料凍結工程S7においては、原料供給用開閉口部15を閉じ、凍結パネル30の表面30aに供給された高粘度原料を凍結させるとよい。
【0060】
このように、原料点状供給工程S5においてのみ原料供給用開閉口部15を開き、不活性ガス供給制御工程S1と原料凍結工程S7においては原料供給用開閉口部15を閉じることで、より容易に筐体10内を大気圧下で陽圧の不活性ガス雰囲気し、外気との接触による粒状凍結物101の品質低下を防ぐことができる。
【0061】
[実施の形態2]
<粒状凍結物製造装置>
本実施の形態2に係る粒状凍結物製造装置3は、一例として
図7に示すように、高粘度原料を粒状に凍結させて粒状凍結物101を製造するものであり、筐体10と、不活性ガス供給制御部20と、凍結パネル30と、ベルト70と、原料点状供給部80と、スクレイパー部90と、を備えたものである。
粒状凍結物製造装置3において、筐体10、不活性ガス供給制御部20及び凍結パネル30は、前述した本実施の形態1に係る粒状凍結物製造装置1と共通であるため、以下、ベルト70と、原料点状供給部80と、スクレイパー部90と、について説明する。なお、
図7においては、凍結パネル30に供給する凍結用冷媒(液化窒素等)の流路及び制御部は省略している。
【0062】
≪ベルト≫
ベルト70は、凍結パネル30に裏面を接触させた状態で移動可能に配設され、凍結用冷媒が供給されて冷却された凍結パネル30により冷却されるものである。
【0063】
図7は、エンドレス形状のベルト70を模式的に示した図であり、筐体10の外部に設けられてベルト70を相対移動させるベルト駆動部(図示なし)と、ベルト70を凍結パネル30の表面30aに接触させるためのテンショナー71と、を有する。
【0064】
なお、ベルト70には、金属製又は樹脂製のものを用いることができ、樹脂製のベルト70の場合、その材質は、フッ素樹脂及びフッ素樹脂含侵ガラスクロス、又は、ポリエチレン、ポリプロピレン若しくはポリイミド、が例示できる。
【0065】
≪原料点状供給部≫
原料点状供給部80は、冷却されたベルト70の表面70aに高粘度原料を点状に供給するものである。
【0066】
原料点状供給部80としては、一定量の高粘度原料が精度良く充填されて吐出することができるディスペンサーが例示できる。
【0067】
また、原料点状供給部80は、ベルト70に対して上下方向に相対移動が可能な駆動部(図示なし)を有するものが好ましく、
図7に示すαの位置からβの位置まで上下動作を繰り返すように原料点状供給部80を駆動すればよい。
この場合、駆動部は、ベルト70の表面70aに原料を点状に供給させる際には原料点状供給部80をβの位置まで移動させ、ベルト70を移動させる際には原料点状供給部80をαの位置まで移動させる。このように、ベルト70の移動とともに原料点状供給部80を上下方向に移動させることにより、ベルト70の水平方向(移動方向)において所定の間隔で高粘度原料を点状に供給することができる。
【0068】
もっとも、原料点状供給部80がβの位置に留まった状態でも高粘度原料に影響がなければ、駆動部は原料点状供給部80をβの位置に留めた状態としてもよい。
【0069】
さらに、原料点状供給部80は、筐体10に設けた複数の開口部13又は原料供給用開閉口部15と同じ間隔で配置された複数のノズル81を備えたものとするとよい。
【0070】
≪スクレイパー部≫
スクレイパー部90は、
図7に示すように、筐体10内におけるベルト70の移動方向の下流に設置され、ベルト70の表面70aに点状に供給されて粒状に凍結した高粘度原料の粒状凍結物101を掻きとるものである。スクレイパー部90は、
図7に示すように、スクレイパー91と、スクレイパー自立架台93と、を有するものが例示でき、スクレイパー91の先端がベルト70の表面70aに接触するように設置するとよい。
【0071】
以上、本実施の形態2に係る粒状凍結物製造装置3によれば、ベルト70の表面70aに点状に供給された高粘度原料の凍結と、ベルト70の表面70aで粒状に凍結した粒状凍結物101の回収と、を連続的に行うことができる。
また、粒状凍結物製造装置3によれば、ベルト70の表面70aに原料を供給するために原料点状供給部80の上下動作に必要な分だけ筐体10に開口部13を設ければよいため、筐体10内を不活性ガス雰囲気により好ましく保持することができる。
さらに、粒状凍結物製造装置3においては、ベルト駆動部(図示なし)を筐体10の外部に配置することにより、極低温によるベルト70の動作不良を防止することも可能である。
【0072】
なお、本実施の形態2に係る粒状凍結物製造装置3は、ベルト70が凍結パネル30の表面30aと接触して冷却された状態で移動可能なものであればよいため、エンドレス形状に限るものではなく、
図8に一例として示すように、ワンスルー形状であってもよい。
図8に示す粒状凍結物製造装置5は、ワンスルー形状のベルト70を備えたものであり、ベルト供給ロール73と、ベルト回収ロール75と、ベルト駆動部(図示なし)と、が設置されたものである。なお、
図8においては、凍結パネル30に供給する凍結用冷媒(液化窒素等)の流路及び制御部は省略している。
【0073】
ワンスルー形状のベルトを備えた粒状凍結物製造装置5においては、ベルト供給ロール73からベルト70を凍結パネル30の表面に供給する。そして、ベルト70は、その表面70aに点状に供給されて粒状に凍結された粒状凍結物101をスクレイパーで掻き取った後は、ベルト回収ロール75に回収される。そのため、回収したベルト70は外部で洗浄することができるので、より衛生面に配慮して粒状凍結物101を製造することができる。
【0074】
<粒状凍結物製造方法>
本実施の形態2に係る粒状凍結物製造方法は、高粘度原料を粒状に凍結させて粒状凍結物を製造するものであり、
図9に示すように、不活性ガス供給制御工程S1と、ベルト冷却工程S13と、原料点状供給工程S15と、原料凍結工程S17と、粒状凍結物掻き取り工程S19と、を備えたものである。
本実施の形態2において、不活性ガス供給制御工程S1は、前述した本実施の形態1に係る粒状凍結物製造方法と共通であるため、以下、
図7に示す粒状凍結物製造装置3を用いて、ベルト冷却工程S13と、原料点状供給工程S15と、原料凍結工程S17と、粒状凍結物掻き取り工程S19と、を実施する場合について説明する。
【0075】
≪ベルト冷却工程≫
ベルト冷却工程S13は、筐体10内に静置された凍結パネル30に液化窒素(LN)を供給し、裏面が凍結パネル30の表面30aに接触した状態で移動可能に配設されたベルト70を冷却する工程である。
【0076】
ベルト冷却工程S13においては、実施の形態1で説明したように凍結パネル30を冷却することでベルト70を冷却すればよく、例えば、凍結パネル30の表面30aが所定の温度(例えば、高粘度原料にPVAを用いた場合には-80℃)にまで冷却した時点で、ベルト70の表面70aも冷却されて凍結準備が完了したものとすることができる。
【0077】
≪原料点状供給工程≫
原料点状供給工程S5は、冷却されたベルト70の表面70aに高粘度原料を点状に供給する工程である。
【0078】
原料点状供給工程S5においては、原料点状供給部80をベルト70に対して上下方向に移動させることで、凍結パネル30の表面30aに所定の間隔で高粘度原料を点状に供給する。
【0079】
筐体10に原料供給用開閉口部15(
図4または
図5参照)が設けられている場合、原料点状供給工程S5は、原料供給用開閉口部15を開いた状態とし、原料点状供給部80をαの位置からβの位置まで上下動作を繰り返し、ベルト70の移動方向において所定の間隔で高粘度原料を点状に供給すればよい。もっとも、原料点状供給部80がβの位置にあっても高粘度原料が凍結する恐れがなければ、原料点状供給部80をβの位置に留めて高粘度原料をベルト70の表面70aに点状に供給してもよい。
そして、高粘度原料の供給を終えた後、原料点状供給工程S5においては、原料点状供給部40を元の位置(
図7においてはαの位置)に戻し、原料供給用開閉口部15を閉じるとよい。
【0080】
≪原料凍結工程≫
原料凍結工程S7は、ベルト70の表面70aに点状に供給された高粘度原料を粒状に凍結させる工程である。
筐体10に原料供給用開閉口部15が設けられている場合、原料凍結工程S7は、原料供給用開閉口部15を閉じた状態で、高粘度原料を凍結させるとよい。
【0081】
≪粒状凍結物掻き取り工程≫
粒状凍結物掻き取り工程は、ベルト70を移動させることにより、ベルト70の表面において粒状に凍結した高粘度原料の粒状凍結物101を、ベルト70の移動方向の下流に配設されたスクレイパー51により掻き取る工程である。
【0082】
以上、本実施の形態2に係る粒状凍結物製造方法によれば、ベルト70の表面70aに点状に供給された高粘度原料の凍結と、ベルト70の表面70aで粒状に凍結した粒状凍結物101の回収と、を連続的に行うことができる。
【0083】
なお、本実施の形態2に係る粒状凍結物製造方法の上記説明は、
図7に示すエンドレス形状のベルト70を備えた粒状凍結物製造装置3を用いて実施する場合についてのものであったが、
図8に示すワンスルー形状のベルト70を備えた粒状凍結物製造装置5を用いて実施してもよい。
【0084】
また、本実施の形態1に係る粒状凍結物製造装置1、又は、本実施の形態2に係る粒状凍結物製造装置3、5は、筐体10内が凍結パネル30により冷却されるものであり、凍結パネル30の温度制御範囲が0~-100℃の場合、筐体10の外気温を30℃とすると、筐体10内の温度は+13℃~-62℃となる。そこで、スクレイパー51により掻き取って回収した粒状凍結物101を筐体10内において一時的に保管する際に粒状凍結物101の品質が低下することを防ぐことも可能である。
【0085】
もっとも、外気からの筐体10内への熱侵入の影響が大きい場合、本発明に係る粒状凍結物製造装置は、筐体10内を冷却する筐体内冷却部をさらに備えたものであってもよい。この場合、筐体内冷却部としては、筐体10内を冷却することができるものであれば特に制限はなく、例えば、チラー等の冷却機器を利用することができる。
【符号の説明】
【0086】
1 粒状凍結物製造装置
3 粒状凍結物製造装置
5 粒状凍結物製造装置
10 筐体
11 断熱パネル
13 開口部
15 原料供給用開閉口部
15A 原料供給用開閉口部
15B 原料供給用開閉口部
15a 開口部
15b スライド扉
15c 両開き扉
15d 片開き扉
20 不活性ガス供給制御部
21 圧力指示調節計
23 圧力制御弁
25 流量計
30 凍結パネル
30a 表面
31 温度指示調節計
33 温度制御弁
35 供給管
37 排出管
40 原料点状供給部
41 ノズル
43 原料点状供給部移動用ガイドレール
50 スクレイパー部
51 スクレイパー
53 スクレイパー駆動部
53a アクチュエーター
53b ガイドレール
61 ホッパー
63 定量計
65 小分け容器
70 ベルト
70a 表面
71 テンショナー
73 ベルト供給ロール
75 ベルト回収ロール
80 原料点状供給部
90 スクレイパー部
91 スクレイパー
93 スクレイパー自立架台
101 粒状凍結物