(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168460
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】ウェーハの加工方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20241128BHJP
H01L 21/683 20060101ALI20241128BHJP
H01L 21/301 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
H01L21/304 601Z
H01L21/68 N
H01L21/78 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023085165
(22)【出願日】2023-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【弁理士】
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(74)【代理人】
【識別番号】100189773
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 英哲
(74)【代理人】
【識別番号】100184055
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 貴之
(74)【代理人】
【識別番号】100185959
【弁理士】
【氏名又は名称】今藤 敏和
(72)【発明者】
【氏名】リュ ゾンヒョン
【テーマコード(参考)】
5F057
5F063
5F131
【Fターム(参考)】
5F057AA05
5F057AA12
5F057AA31
5F057BA26
5F057BB03
5F057BB09
5F057CA16
5F057CA31
5F057DA17
5F057DA19
5F057DA22
5F057DA31
5F057EC06
5F057EC09
5F057EC16
5F057EC19
5F057FA13
5F057FA28
5F057FA30
5F057FA42
5F063AA04
5F063AA16
5F063AA18
5F063BA03
5F063BA45
5F063DD97
5F063DG23
5F063DG31
5F131AA02
5F131BA31
5F131BA52
5F131BA53
5F131CA09
5F131CA12
5F131CA32
5F131EB01
5F131EB81
5F131EC32
5F131EC33
5F131EC64
5F131EC65
5F131EC72
(57)【要約】
【課題】環状凸部を有するウェーハを高品質、かつ、高い生産性をもって加工する。
【解決手段】裏面の外周部に環状凸部を有するとともに、該裏面の該環状凸部に囲繞される領域に円形凹部が形成されたウェーハの加工方法であって、該ウェーハの表面に糊層を備えないシートを固定するとともに該シートの外周部分に環状フレームを固定することによってウェーハユニットを形成するウェーハユニット形成ステップと、該ウェーハユニット形成ステップの後に、該シートを介して保持テーブルで該ウェーハを保持する保持ステップと、該保持ステップの後に、該ウェーハの該円形凹部に分断溝を形成し、該ウェーハから該環状凸部を分離する分断ステップと、該分断ステップの後に、該環状凸部を該シートから除去する除去ステップと、を含む。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
裏面の外周部に環状凸部を有するとともに、該裏面の該環状凸部に囲繞される領域に円形凹部が形成されたウェーハの加工方法であって、
該ウェーハの表面に糊層を備えないシートを固定するとともに該シートの外周部分に環状フレームを固定することによってウェーハユニットを形成するウェーハユニット形成ステップと、
該ウェーハユニット形成ステップの後に、該シートを介して保持テーブルで該ウェーハを保持する保持ステップと、
該保持ステップの後に、該ウェーハの該円形凹部に分断溝を形成し、該ウェーハから該環状凸部を分離する分断ステップと、
該分断ステップの後に、該環状凸部を該シートから除去する除去ステップと、を含むウェーハの加工方法。
【請求項2】
該ウェーハユニット形成ステップでは、該シートを加熱し押圧して該ウェーハに熱圧着することで該シートを該ウェーハに固定することを特徴とする請求項1に記載のウェーハの加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外周部に環状凸部を有するとともに環状凸部に囲繞される領域に円形凹部が形成された裏面を有するウェーハの加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話、パーソナルコンピュータ等の電子機器には、デバイスチップが搭載されている。デバイスチップは、通常、IC(Integrated Circuit)等のデバイスが表面側に複数個形成されたウェーハを裏面側から研削して薄化し、ウェーハをデバイス毎に分割して製造される。
【0003】
研削され薄化されたウェーハは、剛性が低下して割れやすい。そこで、ウェーハの裏面のうち複数のデバイスが形成されたデバイス形成領域に対応する領域を研削して円形凹部を形成するとともに、その周囲を環状凸部として残す。この環状凸部は、ウェーハが搬送等される間、薄化された円形凹部を補強する機能を発揮する(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
一方、ウェーハを個々のチップに分割する際には環状凸部が分割の妨げとなるため、事前に環状凸部をウェーハから除去する必要がある。環状凸部を除去する際には、円形凹部と環状凸部を含むウェーハの裏面の全域に粘着テープを貼着し、粘着テープを介してウェーハを保持テーブルで保持する。保持テーブルは、ウェーハの円形凹部に対応する凸形状を有し、この凸形状に円形凹部が合わせられる。そして、保持テーブルで保持されたウェーハに環状の分断溝を形成し、環状凸部を除去する(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
また、環状凸部をウェーハから除去する別の方法として、ウェーハの表面に粘着テープを貼着し、平坦な保持テーブルで粘着テープを介してウェーハを吸引保持し、環状凸部を切除する分断溝をウェーハに形成する方法が知られている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007-173487号公報
【特許文献2】特開2011-61137号公報
【特許文献3】特開2012-54275号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
いずれの方法で環状凸部を除去する場合においても、ウェーハに貼着される粘着テープの外周部には、環状フレームが貼着される。このとき、ウェーハは、環状フレームに形成された開口に収容される。そして、分断溝を形成する加工をウェーハに実施すると、ウェーハ等から加工屑が発生し周囲に飛散する。一部の飛散した加工屑は、環状フレームの開口中に露出する粘着テープに付着する。そして、ウェーハの搬送や加工等の過程で一部の加工屑が再び飛散してウェーハに付着することがあり、問題となる。
【0008】
また、ウェーハに分断溝を形成して環状凸部を切り離した後、切り離された環状凸部は粘着テープから剥離される。しかしながら、環状凸部はウェーハから分離される前から糊層を備える粘着テープに強い力で貼着されているため、環状凸部の粘着テープからの剥離に大きな力を要する。そして、環状凸部に大きな力がかかり環状凸部が割れて破片がウェーハに飛散することがあった。
【0009】
そこで、紫外線照射により貼着力が低下する糊層を備える粘着テープをウェーハ及び環状フレームに貼着することが考えられる。この場合、ウェーハから切り離された環状凸部を粘着テープから剥離する際に、環状凸部と重なる領域において粘着テープに紫外線を照射し、糊層の粘着力を低下させる。このとき、円形凹部と重なる領域に紫外線が照射されないように、遮蔽部材が使用される。
【0010】
しかしながら、環状凸部と重なる領域に十分な強度で紫外線を照射するために、遮蔽部材で遮蔽できる領域の大きさには制限がある。そのため、円形凹部の外周部と重なる領域で粘着テープにも紫外線が照射され、この領域において粘着テープの貼着力が低下する。粘着テープの粘着力が低下した部分でウェーハを分割する加工を実施すると、当該部分でウェーハが十分に支持されないため、加工が低品質となる。そのため、ウェーハの表面のデバイス形成に使用する領域を狭める必要があり、生産性が低下する。
【0011】
本発明は係る問題点に鑑みてなされたものであり、環状凸部を有するウェーハを高品質、かつ、高い生産性をもって加工するウェーハの加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様によれば、裏面の外周部に環状凸部を有するとともに、該裏面の該環状凸部に囲繞される領域に円形凹部が形成されたウェーハの加工方法であって、該ウェーハの表面に糊層を備えないシートを固定するとともに該シートの外周部分に環状フレームを固定することによってウェーハユニットを形成するウェーハユニット形成ステップと、該ウェーハユニット形成ステップの後に、該シートを介して保持テーブルで該ウェーハを保持する保持ステップと、該保持ステップの後に、該ウェーハの該円形凹部に分断溝を形成し、該ウェーハから該環状凸部を分離する分断ステップと、該分断ステップの後に、該環状凸部を該シートから除去する除去ステップと、を含むウェーハの加工方法が提供される。
【0013】
好ましくは、該ウェーハユニット形成ステップでは、該シートを加熱し押圧して該ウェーハに熱圧着することで該シートを該ウェーハに固定する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一態様に係るウェーハの加工方法では、糊層を備えないシートをウェーハ及び環状フレームに固定することでウェーハユニットを形成する。シートは糊層を備えないため、ウェーハに分断溝を形成する際に発生する加工屑がシートに接触しても、加工屑はシートに貼着されない。さらに、環状凸部をシートから除去する際に環状凸部が破損し発生した破片がシートに接触しても、破片はシートに貼着されない。また、シートに接触した加工屑や破片は、洗浄により容易にシートから除去される。
【0015】
また、糊層により粘着テープに強力に貼着されている場合とは異なり、糊層を備えないシートに固定されている場合には環状凸部の除去は比較的容易となる。そのため、除去される環状凸部に大きな力がかかることがなく、破損も起きにくく破片が生じにくい。そのため、シートに接触した加工屑や破片がウェーハ(デバイスチップ)に移ってデバイスチップの品質を低下させることがない。
【0016】
さらに、シートからの環状凸部の除去のためにシートに紫外線を照射する必要もなく、紫外線が照射されることを前提としてウェーハの表面のデバイス形成に使用する領域を狭める必要もない。したがって、デバイスチップの生産性も高まる。
【0017】
したがって、本発明の一態様により、環状凸部を有するウェーハを高品質、かつ、高い生産性をもって加工するウェーハの加工方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1(A)は、ウェーハの裏面側を模式的に示す斜視図であり、
図1(B)は、ウェーハの表面側を模式的に示す斜視図である。
【
図2】
図2(A)は、熱圧着装置を模式的に示す断面図であり、
図2(B)は、ウェーハユニット形成ステップの第1段階における熱圧着装置を模式的に示す断面図である。
【
図3】
図3(A)は、ウェーハユニット形成ステップの第2段階における熱圧着装置を模式的に示す断面図であり、
図3(B)は、ウェーハユニット形成ステップの第3段階における熱圧着装置を模式的に示す断面図である。
【
図4】ウェーハユニット形成ステップの第4段階における熱圧着装置を模式的に示す断面図である。
【
図5】ウェーハユニットを模式的に示す斜視図である。
【
図6】
図6(A)は、保持ステップにおけるウェーハユニットを模式的に示す斜視図であり、
図6(B)は、保持ステップにおけるウェーハユニットを模式的に示す断面図である。
【
図7】
図7(A)は、分断ステップにおけるウェーハユニットを模式的に示す斜視図であり、
図7(B)は、分断ステップにおけるウェーハユニットを模式的に示す断面図である。
【
図8】
図8(A)は、除去ステップにおけるウェーハユニットを模式的に示す斜視図であり、
図8(B)は、除去ステップにおけるウェーハユニットを模式的に示す断面図である。
【
図9】実施形態に係るウェーハの加工方法の各ステップの流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
添付図面を参照して、本発明の一態様に係る実施形態について説明する。
図1(A)は、ウェーハ11の裏面11b側を模式的に示す斜視図であり、
図1(B)は、ウェーハ11の表面11a側を模式的に示す斜視図である。まず、本実施形態に係るウェーハの加工方法で加工されるウェーハ11について説明する。
【0020】
ウェーハ11は、例えば、シリコン(Si)、炭化珪素(SiC)等の半導体材料で形成された円板状の単結晶基板である。但し、ウェーハ11の形状、構造、大きさ等に制限はない。
図1(B)に示すように、ウェーハ11の表面11a側には、格子状に複数の分割予定ライン19が設定されている。複数の分割予定ライン19によって区画された各領域には、ICやLSI等のデバイス21が形成されている。
【0021】
ウェーハ11の表面11aのうち複数のデバイス21が形成された領域を囲繞する外周部の領域は、外周余剰領域23と呼ばれる。また、ウェーハ11の表面11aのうち外周余剰領域23で囲まれ複数のデバイス21が形成された領域は、デバイス形成領域25と呼ばれる。
【0022】
複数のデバイス21が形成されたウェーハ11を裏面11b側から研削して薄化し、分割予定ライン19に沿ってウェーハ11を分割すると、それぞれデバイス21を備える複数の薄型デバイスチップが得られる。ウェーハ11の分割は、例えば、円環状の切削ブレードを備える切削装置により実施される。しかしながら、研削され薄化されたウェーハ11は剛性が低下して割れやすく、搬送等の取り扱いが容易でない。
【0023】
そこで、
図1(A)に示すように、ウェーハ11の裏面11bのうち複数のデバイス21が形成されたデバイス形成領域25に対応する領域を研削して円形凹部15を形成するとともに、その周囲を環状凸部13として残す。この環状凸部13は、ウェーハ11が搬送等される間、薄化された円形凹部15を補強する機能を発揮する。これにより、ウェーハ11の剛性が保たれ、反りや割れ等が生じにくくなり、取り扱いが容易となる。
【0024】
しかしながら、環状凸部13を裏面11b側に有するウェーハ11を切削装置でそのまま分割予定ライン19に沿って分割しようとしたとき、薄い円形凹部15を分割するようにウェーハ11に形成する分割溝では、厚い環状凸部13を切断できない。すなわち、環状凸部13は、ウェーハ11を個々のチップに分割する際には分割の妨げとなる。
【0025】
そのため、ウェーハ11を分割する前に環状凸部13をウェーハ11から除去する必要がある。本実施形態に係るウェーハの加工方法では、ウェーハ11の表面11aの全域に糊層を備えないシートを熱圧着等の方法により固定する。ウェーハ11は、シートを介して分割装置の保持テーブルで保持される。
【0026】
次に、ウェーハ11に固定されるシートについて説明する。
図3(A)等には、シート27を模式的に示す断面図が含まれている。
図5等には、シート27を模式的に示す斜視図が含まれている。シート27は、ウェーハ11の外径よりも大きい径を有し、糊層を備えない。また、シート27は、熱可塑性を有するシートである。
【0027】
シート27の外周部は、金属製の環状フレーム29(
図5等参照)に配設される。シート27は、例えば、ポリオレフィン系シート、ポリエステル系シート等の柔軟性を有する樹脂系シートであるが、シート27の材質はこれに限定されない。
【0028】
ここで、ポリオレフィン系シートは、アルケンをモノマーとして合成されるポリマーのシートである。シート27に使用されるポリオレフィン系シートは、例えば、ポリエチレンシート、ポリプロピレンシート、または、ポリスチレンシート等の可視光に対して透明または半透明なシートである。
【0029】
また、ポリエステル系シートは、ジカルボン酸(2つのカルボキシル基を有する化合物)と、ジオール(2つのヒドロキシル基を有する化合物)と、をモノマーとして合成されるポリマーのシート27である。シート27に使用されるポリエステル系シートは、例えば、ポリエチレンテレフタレートシート、または、ポリエチレンナフタレートシート等の可視光に対して透明または半透明なシート27である。
【0030】
別の観点から説明すると、熱圧着でウェーハ11に固定される糊層を備えないシート27は、常温での貯蔵弾性率は1×106~1×109Paであり、加熱時での貯蔵弾性率は1×106~1×107Paである熱可塑性樹脂である。ここで、加熱時とは、シート27がウェーハ11に熱圧着される際の温度である。例えば、シート27がポリオレフィンの場合、この温度は80℃~100℃としてもよい。
【0031】
なお、シート27の構成材料として使用される熱可塑性樹脂の貯蔵弾性率の評価には、株式会社日立ハイテク製の粘弾性測定装置“DMA7100”が使用可能である。この粘弾性測定装置は、試料に周期的な変形を与え、これにより生じる応力または歪みを測定することにより、試料の粘弾性特性として貯蔵弾性率、損失弾性率、損失正接(tanδ)等の温度依存性や周波数依存性を算出できる。
【0032】
粘弾性測定装置を利用した熱可塑性樹脂の貯蔵弾性率の測定は、例えば、昇温速度:2℃/min、測定温度範囲:室温から200℃、変形の周波数:1Hzという条件で実施可能である。ただし、貯蔵弾性率の測定条件はこれに限定されない。また、貯蔵弾性率の測定には、他の測定装置が使用されてもよい。
【0033】
シート27は糊層(粘着剤層)を備えず、十分な粘着性を有しないため、そのままの状態ではウェーハ11及び環状フレーム29に貼着できない。シート27は熱可塑性を有し、所定の圧力を印加しながらウェーハ11と接合させた状態で融点近傍の温度まで加熱すると、部分的に溶融してウェーハ11に固定できる。すなわち、シート27は、ウェーハ11に熱圧着できる。
【0034】
また、
図5に示す通り、シート27の外周部は金属製の環状フレーム29に固定される。環状フレーム29は、ウェーハ11の径よりも大きい径の開口部(貫通孔)29aを備える。例えば、シート27は、ウェーハ11よりも先に環状フレーム29に固定される。シート27を環状フレーム29に固定する方法は、例えば、熱圧着である。例えば、シート27は、ウェーハ11とともに環状フレーム29に熱圧着される。または、シート27は、接着材等により環状フレーム29に貼着され固定される。
【0035】
最終的にウェーハ11と、シート27と、環状フレーム29と、が一体化されるとウェーハユニット31(
図5等参照)が形成される。ウェーハユニット31が形成されるとシート27を介してウェーハ11を扱えるため、ウェーハ11の取り扱いが容易となる。また、ウェーハユニット31の一部となっているウェーハ11を分割すると、形成された個々のデバイスチップがシート27に引き続き支持されるため、デバイスチップの取り扱いも容易となる。
【0036】
次に、本実施形態に係るウェーハの加工方法において、シート27をウェーハ11に固定する際に使用される熱圧着装置2について説明する。ただし、本実施形態に係るウェーハの加工方法において、シート27をウェーハ11に固定する際に熱圧着装置2が使用されなくてもよい。
図2(A)から
図4には、熱圧着装置2を模式的に示す断面図が含まれている。
【0037】
図2(A)は、熱圧着装置2の一例を模式的に示す断面図である。熱圧着装置2は、例えば、内部にウェーハ11を収容できる空間を有するチャンバー状のユニットであり、ウェーハ11の表面11aにシート27を熱圧着する機能を有する。熱圧着装置2は、上方に開口した凹状の下チャンバー6と、下チャンバー6の上方に配設され下方に開口した凹状の上チャンバー4と、を有する。
【0038】
熱圧着装置2の上チャンバー4は、第1減圧ユニット20に連結され第1開口12を有する第1凹部8を備える。下チャンバー6は、第2減圧ユニット22に連結され第2開口14を有する第2凹部10を備える。第1減圧ユニット20及び第2減圧ユニット22は、例えば、ロータリーポンプ等の真空ポンプである。ただし、第1減圧ユニット20及び第2減圧ユニットはこれに限定されない。
【0039】
また、熱圧着装置2は、第2凹部10に配設されウェーハ11を保持する保持テーブル32を備える。そして、上チャンバー4の第1開口12及び下チャンバー6の第2開口14を合わせることで上チャンバー4及び下チャンバー6を閉じることができる。
【0040】
熱圧着装置2について、より詳細に説明する。上チャンバー4の第1開口12及び下チャンバー6の第2開口14は、ウェーハ11の径よりも大きい内径を有する。また、上チャンバー4の第1凹部8及び下チャンバー6の第2凹部10は、シート27の外周部に配設された環状フレーム29の内径よりも小さい外径を有する。
【0041】
例えば、上チャンバー4は昇降可能である。下チャンバー6の第2開口14と、上チャンバー4の第1開口12と、は同形状であり、第2開口14に第1開口12が重なるように上チャンバー4を下チャンバー6に下降させると、上チャンバー4及び下チャンバー6の内部に外部とは遮断された空間を形成できる。
【0042】
下チャンバー6には、ウェーハ11を支持するテーブル状の保持テーブル32が設けられている。保持テーブル32には、環状凸部13及び円形凹部15が形成された裏面11bが下方に向けられたウェーハ11が載せられる。
【0043】
保持テーブル32の上面は、ウェーハ11を裏面11b側から支持し保持する保持面34である。保持テーブル32は、保持面34に通じた吸引路(不図示)と、吸引路に接続された吸引源(不図示)と、を備えてもよい。この場合、保持テーブル32の保持面34に載せられたウェーハ11に吸引路を通じて吸引源で生じた吸引力を作用させると、保持テーブル32でウェーハ11を吸引保持できる。
【0044】
保持テーブル32は、主にウェーハ11の裏面11bの円形凹部15を支持する円形凸部34aと、円形凸部34aの外周に配置され主にウェーハ11の環状凸部13を支持する環状支持部34bと、を含む。
【0045】
円形凸部34aの上面の平面形状は、ウェーハ11の円形凹部15に収まる形状であり、円形凹部15より僅かに小さい形状となる。環状支持部34bは、ウェーハ11の環状凸部13の幅(内周と外周の距離)よりも大きい幅(内周と外周の距離)を有する。環状支持部34bの上面と、円形凸部34aの上面と、の高さの差は、ウェーハ11の円形凹部15と、環状凸部13と、の高さの差に相当する。すなわち、この差は、ウェーハ11の円形凹部15と環状凸部13の段差部17(
図1(B)参照)の高さに基づいて適宜決定される。
【0046】
環状支持部34bの上面には、図示しないスペーサーが配されている。スペーサーは、樹脂層等の弾性部材により形成されており、ウェーハ11の円形凹部15及び環状凸部13の高さの差(段差部17の高さ)のばらつきに対応して厚みが変化する。すなわち、保持テーブル32は、ウェーハ11の円形凹部15及び環状凸部13の高さの差のばらつきに対応しながらウェーハ11を適切に保持できる。
【0047】
保持テーブル32の高さは、ウェーハ11を保持面34に載せたとき、ウェーハ11の表面11aと、下チャンバー6の第2開口14と、の高さが略同一となるように調整されている。または、保持テーブル32の高さは、ウェーハ11の表面11aよりも下チャンバー6の第2開口14の方が高くなるように調整されている。
【0048】
上チャンバー4の天井または側壁には、排気部24が接続されている。排気部24は、一端が上チャンバー4の第1凹部8に接続され、他端が第1減圧ユニット20に接続された排気路である。排気部24の排気路には、上チャンバー4及び第1減圧ユニット20の接続状態を切り替える第1電磁弁28(例えば、ソレノイドバルブ)が設けられている。すなわち、第1電磁弁28を作動させると、上チャンバー4及び第1減圧ユニット20が接続された接続状態と、互いに切り離された分断状態と、を切り替えられる。
【0049】
下チャンバー6の底壁または側壁には、排気部26が接続されている。排気部26は、一端が下チャンバー6の第2凹部10に接続され、他端が第2減圧ユニット22に接続された排気路である。排気部26の排気路には、下チャンバー6及び第2減圧ユニット22の接続状態を切り替える第2電磁弁30(例えば、ソレノイドバルブ)が設けられている。すなわち、第2電磁弁30を作動させると、下チャンバー6及び第2減圧ユニット22が接続された接続状態と、互いに切り離された分断状態と、を切り替えられる。
【0050】
第1電磁弁28を作動させて第1減圧ユニット20及び上チャンバー4を接続すると、上チャンバー4の内部空間16を減圧できる。また、第2電磁弁30を作動させて第2減圧ユニット22及び下チャンバー6を接続すると、下チャンバー6の内部空間18を減圧できる。
【0051】
熱圧着装置2は、保持テーブル32に載せられたウェーハ11、及び、ウェーハ11に載せられたシート27を加熱する加熱ユニットを備える。例えば、保持テーブル32の内部には、加熱ユニットとして機能できるヒーター36が配設されている。ヒーター36は、例えば、電熱線である。ヒーター36を作動させると、ウェーハ11が加熱されるとともに、ウェーハ11を通じてシート27が加熱される。
【0052】
ただし、熱圧着装置2が備える加熱ユニットはこれに限定されない。例えば、上チャンバー4の第1凹部8には、上チャンバー4の内部空間16に熱風を供給する加熱ユニット(不図示)が設けられてもよい。加熱ユニットは、例えば、空気の流れを生じさせる送風機と、空気を加熱できるヒーターと、を備える。保持テーブル32にウェーハ11を載せ、ウェーハ11の上にシート27を配設し、加熱ユニットからシート27に熱風を供給すると、シート27を加熱できる。
【0053】
次に、本実施形態に係るウェーハの加工方法において、ウェーハ11の環状凸部13の除去に使用される切削装置について説明する。
図7(A)には、切削装置を模式的に示す斜視図が含まれており、
図7(B)には、切削装置を模式的に示す断面図が含まれている。
【0054】
切削装置38は、ウェーハ11(ウェーハユニット31)を保持する保持テーブル40と、保持テーブル40に保持されたウェーハ11を切削する切削ユニット50と、を備える。
【0055】
保持テーブル40は、ウェーハ11の表面11aと同程度の大きさの円形の上面を有する多孔質部材44と、多孔質部材44を収容して上方に露出させる枠体42と、を備える。枠体42は、多孔質部材44を収容する収容凹部を上面に有する。枠体42の内部には、一端が多孔質部材44に接続され、他端がエジェクタ等の吸引源(不図示)に接続された吸引路(不図示)が形成されている。
【0056】
ウェーハ11(ウェーハユニット31)を保持テーブル40に載せ、吸引源を作動させると、吸引路及び多孔質部材44を通じてウェーハ11に負圧が作用する。すなわち、シート27を介してウェーハ11が保持テーブル40に吸引保持される。そして、保持テーブル40の上面が保持面46となる。
【0057】
また、保持テーブル40にはモータ等の回転駆動源(不図示)が連結されており、回転駆動源は保持テーブル40を保持面46に概ね平行な回転軸の周りで回転させる。さらに、保持テーブル40の周囲には、シート27を介してウェーハ11を支持する環状フレーム29を把持して固定する複数のクランプ48が設けられてもよい。
【0058】
保持テーブル40の上方には、ウェーハ11を切削する切削ユニット50が配設されている。切削ユニット50は、保持テーブル40の保持面46に概ね平行な方向に沿って配置された円筒状のスピンドル54を備える。スピンドル54の先端部(一端側)には、ウェーハ11を切削する環状の切削ブレード56が装着される。
【0059】
また、スピンドル54の基端部(他端側)はスピンドルハウジング52に回転可能に収容されている。スピンドルハウジング52にはモータ等の回転駆動源(不図示)が収容されており、スピンドル54の基端部にはこの回転駆動源(不図示)が連結されている。回転駆動源からスピンドル54を介して伝達される動力により、切削ブレード56が回転する。
【0060】
スピンドル54の先端に装着された切削ブレード56としては、例えばハブタイプの切削ブレード(ハブブレード)が用いられる。ハブブレードは、金属等でなる環状の基台と、基台の外周縁に沿って形成された環状の切刃58とが一体となって構成される。また、ハブタイプの切削ブレードの切刃58は、ダイヤモンド等でなる砥粒がニッケルめっき層等の結合材によって固定された電鋳砥石によって構成される。
【0061】
ただし、切削ブレード56として、ワッシャータイプの切削ブレード(ワッシャーブレード)を用いることもできる。ワッシャーブレードは、砥粒が金属、セラミックス、樹脂等でなる結合材によって固定された環状の切刃58によって構成される。いずれにせよ、切削ブレード56は、環状の切刃58によりウェーハ11を切削できる。
【0062】
切削ユニット50は図示しない移動ユニットに接続されており、切削ブレード56がウェーハ11を切り込む位置を調整できる。また、切削ユニット50は図示しない昇降ユニットに接続されており、環状の切刃58の下端の高さ位置を変更できる。
【0063】
次に、本実施形態に係るウェーハの加工方法において、ウェーハ11から切り離された環状凸部13をシート27から除去する除去ユニットについて説明する。
図8(B)には、除去ユニット60を模式的に示す断面図が含まれている。
図8(A)には、除去ユニット60の一部の構成を模式的に示す斜視図が含まれている。
【0064】
除去ユニット60は、高さ方向に略平行に配置された円柱状の腕部62を有する。腕部62は、例えば、各々ボールねじ式の高さ方向移動機構(不図示)及び水平方向移動機構(不図示)により、高さ方向及び水平方向に沿って移動可能である。
【0065】
腕部62の下端部には、円板状のベース板64の中央部が、腕部62に対して回転可能に連結されている。腕部62には、モータ等の回転駆動源(不図示)が内蔵されている。回転駆動源は、ベース板64を所定の方向に回転させる。
【0066】
ベース板64の上部には、複数の除去用爪ユニット66が設けられている。各除去用爪ユニット66は、直動機構68を有する。直動機構68は、進退ロッド70を進退させるボールねじ機構(不図示)を含む。
【0067】
進退ロッド70は、直動機構68のガイド部に対してスライド可能に連結されたナット部(不図示)を含む。ナット部は、直動機構68のボールねじ(不図示)に回転可能に連結されている。ナット部を直動機構68で進退させることで、進退ロッド70は、その長手方向に沿って進退する。本実施形態では、複数の進退ロッド70が設けられている。複数の進退ロッド70のそれぞれの位置は、腕部62を中心とした点対称形とされる。
【0068】
進退ロッド70の先端部には、直方体状の移動ブロック72の長手方向の一端部(基端部)が固定されている。進退ロッド70は、進退ロッド70の長手方向と、移動ブロック72の長手方向とが、水平面内で直交する様に、移動ブロック72に固定されている。
【0069】
移動ブロック72の他端部(先端部)には、垂直下方に延びる態様で円柱状の回転軸用ロッド74が固定されている。回転軸用ロッド74の下端部には、ベアリング76を介して、除去用爪78が回転可能に連結されている。
【0070】
除去用爪78は、各々円板状の上爪78a及び下爪78bと、上爪78a及び下爪78bの中心部を接続する円柱状の接続部78cと、を有する。上爪78a及び下爪78bは、接続部78cを介して固定されている。
【0071】
本実施形態では、
図8(A)に示すように3つの除去用爪78がベース板64の周方向に沿って略等間隔に互いに離れて配置されており、環状凸部13をシート27から剥離し、剥離後の環状凸部13を三点で支持するために、3つの下爪78bが利用される。ただし、除去ユニット60において除去用爪78等の数は3に限定されず、除去ユニット60は除去用爪78等を4以上の数で有してもよい。
【0072】
次に、本実施形態に係るウェーハの加工方法の各ステップについて詳述する。本実施形態に係るウェーハの加工方法は、例えば、ウェーハ11を分割してデバイスチップを形成するデバイスチップの製造方法の一部として実施される。
図9は、ウェーハの加工方法(デバイスチップの製造方法)の各ステップの流れを示すフローチャートである。以下、本実施形態に係るウェーハの加工方法について説明するが、以下の説明はデバイスチップの製造方法の各ステップの説明でもある。
【0073】
本実施形態に係るウェーハの処理方法では、まず、ウェーハユニット形成ステップS10を実施する。ウェーハユニット形成ステップS10では、ウェーハ11の表面11aに糊層を備えないシート27を固定するとともにシート27の外周部分に環状フレーム29を固定することによってウェーハユニット31を形成する。以下、ウェーハユニット形成ステップS10について、段階に分けて説明する。
【0074】
図2(B)は、ウェーハユニット形成ステップS10の第1段階における熱圧着装置2及びウェーハ11を模式的に示す断面図である。ウェーハユニット形成ステップS10の第1段階では、ウェーハ11の裏面11b側を下方に向け、保持テーブル32の上方にウェーハ11を移動させ、ウェーハ11の裏面11bを保持テーブル32の保持面34に対面させる。
【0075】
そして、ウェーハ11を保持テーブル32の保持面34上に載せ、保持テーブル32の吸引源を作動させてウェーハ11を保持テーブル32で吸引保持する。より詳細には、ウェーハ11の裏面11b側の円形凹部15を保持テーブル32の円形凸部34aに載せ、ウェーハ11の裏面11b側の環状凸部13を保持テーブル32の環状支持部34bに載せ、ウェーハ11を保持テーブル32で吸引保持する。このとき、シート27が熱圧着される面となる表面11aが上方に露出される。
【0076】
次に、ウェーハユニット形成ステップS10の第2段階として、シート27を熱圧着装置2の上チャンバー4及び下チャンバー6で挟み、上チャンバー4の内部空間16と、下チャンバー6の内部空間18と、を密閉する。
図3(A)は、ウェーハユニット形成ステップS10の第2段階における熱圧着装置2を模式的に示す断面図である。
【0077】
なお、シート27の外周部には、予め環状フレーム29(
図5等参照)が固定されてもよい。シート27の環状フレーム29への固定は、シート27を加熱し環状フレーム29に押圧する熱圧着により実施される。または、シート27の環状フレーム29への熱圧着は、ウェーハ11のシート27への熱圧着と同時に実施されてもよい。
【0078】
また、接着材を環状フレーム29及びシート27で挟み、接着材で環状フレーム29及びシート27を接着することでシート27を環状フレーム29に固定してもよい。または、シート27は、外周部にのみ糊層を備え、糊層により環状フレーム29に貼着されてもよい。
【0079】
ウェーハユニット形成ステップS10の第2段階では、ウェーハ11を収容できる開口部29aを中央に有する環状フレーム29と、環状フレーム29に外周部が固定されたシート27と、を有するフレームユニットを下チャンバー6に載せる。このとき、下チャンバー6の第2開口14がシート27により塞がれる。なお、このときに環状フレーム29と、第1開口12及び第2開口14と、が重ならないように環状フレーム29の位置が調整される。
【0080】
そして、上チャンバー4を下降させて、ウェーハユニット31のシート27を環状フレーム29の開口部29aの内側において第1凹部8の第1開口12及び第2凹部10の第2開口14で挟み、第1凹部8及び第2凹部10を閉じる。このとき、上チャンバー4の内部空間16は、シート27と、第1凹部8と、により密閉される。また、下チャンバー6の内部空間18は、シート27と、第2凹部10と、により密閉される。
【0081】
次に、ウェーハユニット形成ステップS10の第3段階として、第1凹部8を第1減圧ユニット20で減圧するとともに、第2凹部10を第2減圧ユニット22で減圧する。
図3(B)は、ウェーハユニット形成ステップS10の第3段階における熱圧着装置2を模式的に示す断面図である。
【0082】
ウェーハユニット形成ステップS10の第3段階では、第1電磁弁28を作動させて、第1減圧ユニット20及び上チャンバー4を接続する。すると、第1減圧ユニット20により上チャンバー4の第1凹部8の内部空間16が排気部24を通じて排気され、内部空間16が減圧される。そして、第2電磁弁30を作動させて、第2減圧ユニット22及び下チャンバー6を接続する。すると、第2減圧ユニット22により下チャンバー6の第2凹部10の内部空間18が排気部26を通じて排気され、内部空間18が減圧される。
【0083】
次に、ウェーハユニット形成ステップS10の第4段階として、第1凹部8の圧力を上昇させ、シート27をウェーハ11の表面11aに接触させる。例えば、シート27の上下の圧力差を利用してシート27をウェーハ11に押圧して接触させる。
図4は、ウェーハユニット形成ステップS10の第4段階における熱圧着装置2を模式的に示す断面図である。
【0084】
ウェーハユニット形成ステップS10の第4段階では、まず、第1減圧ユニット20による上チャンバー4の減圧を停止する。すなわち、第1電磁弁28を作動させて第1減圧ユニット20及び上チャンバー4の接続を解除する。このとき、第2電磁弁30は作動させずに、第2減圧ユニット22及び下チャンバー6の接続は維持しておく。この場合、上チャンバー4の内部空間16の圧力が徐々に上昇する。
【0085】
また、熱圧着装置2は、排気部24等を通じて上チャンバー4を外気に接続できてもよい。この場合、上チャンバー4を外気に接続すると、内部空間16に急速に空気が流入して上チャンバー4の内部空間16の圧力が急速に上昇する。
【0086】
上チャンバー4の内部空間16の圧力が下チャンバー6の内部空間18の圧力よりも高くなると、内部空間16及び内部空間18の間で両者を分離するシート27には下方に向いた力がかかる。すると、シート27がウェーハ11の表面11aに向けて押圧される。
【0087】
ウェーハユニット形成ステップS10の第4段階では、シート27が下方に押圧されてウェーハ11の表面11aに接触する。または、ウェーハユニット形成ステップS10の第4段階の開始時点ですでにシート27がウェーハ11の表面11aに接触しており、この第4段階においてシート27がウェーハ11に向けて押圧される。
【0088】
ウェーハユニット形成ステップS10の第4段階が完了したとき、シート27とウェーハ11の間には互いを固定するために十分な大きさの力が働いていない。そこで、シート27をウェーハ11に固定するために、シート27を加熱してシート27をウェーハ11の表面11aに熱圧着する。
【0089】
次に、ウェーハユニット形成ステップS10の第5段階として、熱圧着装置2の加熱ユニットを作動させてシート27を加熱する。例えば、熱圧着装置2が加熱ユニットとしてヒーター36を有する場合、ヒーター36を作動させてウェーハ11とともにシート27を加熱する。
【0090】
第1凹部8の内部空間16と、第2凹部10の内部空間18と、の圧力差によりシート27がウェーハ11に向けて押圧されている状態でシート27がその融点近傍の温度にまで加熱されると、シート27がウェーハ11に熱圧着される。シート27を熱圧着した後は、加熱ユニット(ヒーター36)を停止させ、シート27の加熱を停止する。
【0091】
なお、熱圧着を実施する際にシート27は、好ましくは、その融点以下の温度に加熱される。加熱温度が融点を超えると、シート27が溶解してシートの形状を維持できなくなる場合があるためである。また、シート27は、好ましくは、その軟化点以上の温度に加熱される。加熱温度が軟化点に達していなければ熱圧着を適切に実施できないためである。すなわち、シート27は、その軟化点以上でかつその融点以下の温度に加熱されるのが好ましい。
【0092】
さらに、一部のシート27は、明確な軟化点を有しない場合もある。そこで、熱圧着を実施する際にシート27は、好ましくは、その融点よりも20℃低い温度以上でかつその融点以下の温度に加熱される。
【0093】
例えば、シート27として使用されるポリオレフィン系シートがポリエチレンシートである場合、加熱温度は120℃~140℃とされるのが好ましい。また、ポリオレフィン系シートがポリプロピレンシートである場合、加熱温度は160℃~180℃とされるのが好ましい。さらに、ポリオレフィン系シートがポリスチレンシートである場合、加熱温度は220℃~240℃とされるのが好ましい。
【0094】
さらに、例えば、シート27として使用されるポリエステル系シートがポリエチレンテレフタレートシートである場合、加熱温度は250℃~270℃とされる。また、該ポリエステル系シートがポリエチレンナフタレートシートである場合、加熱温度は160℃~180℃とされる。ただし、シート27の加熱温度はこれらに限定されない。
【0095】
加熱ユニットを停止させてシート27の加熱を停止し、第2電磁弁30を作動させて第2減圧ユニット22及び下チャンバー6の接続を解除し、下チャンバー6の内部空間18の圧力を大気圧に戻した後、上チャンバー4を上昇させる。すると、
図5に示す通り、シート27と、ウェーハ11と、環状フレーム29と、が一体化されたウェーハユニット31が得られる。以上により、ウェーハユニット形成ステップS10が完了する。
【0096】
本実施形態に係るウェーハの処理方法では、ウェーハユニット形成ステップS10の後に、シート27を介して切削装置38の保持テーブル40でウェーハ11を保持する保持ステップS20を実施する。
図6(A)は、保持ステップS20におけるウェーハユニット31を模式的に示す斜視図であり、
図6(B)は、保持ステップS20におけるウェーハユニット31を模式的に示す断面図である。
【0097】
保持ステップS20では、熱圧着装置2からウェーハユニット31を搬出し、ウェーハユニット31を切削装置38の保持テーブル40に載せる。このとき、ウェーハ11の表面11a側を保持面46に向け、保持面46の中心と、ウェーハ11の表面11aの中心と、が重なるようにウェーハ11の位置を調整する。
【0098】
その後、保持テーブル40の吸引源(不図示)を作動させ、シート27を介して保持テーブル40でウェーハ11を吸引保持する。また、保持テーブル40の外周側に配置されたクランプ48により、ウェーハユニット31の環状フレーム29を把持する。これにより、ウェーハ11の裏面11b側が上方に露出する。
【0099】
本実施形態に係るウェーハの加工方法では、保持ステップS20の後に、ウェーハ11の円形凹部15に分断溝を形成し、ウェーハ11から環状凸部13を分離する分断ステップS30を実施する。
図7(A)は、分断ステップS30における切削装置38を模式的に示す斜視図であり、
図7(B)は、分断ステップS30における切削装置38を模式的に示す断面図である。
図8(A)及び
図8(B)には、ウェーハ11に形成される分断溝33が模式的に示されている。
【0100】
ウェーハ11の分断溝33が形成される位置は、円形凹部15の中心を中心とする円形の領域に設定される。特に、分断溝33が形成される位置は、
図1(A)に示される環状凸部13と円形凹部15の間の段差部17に切刃58が切り込まないように調整される。分断ステップS30においては、まず、切削ユニット50を移動させることにより、切削ブレード56の切刃58は、分断溝33が形成される領域の上方に位置付けられる。
【0101】
次に、スピンドルハウジング52の内部に設けられた回転駆動源を作動させて切削ブレード56の回転を開始し、切削ユニット50を下降させて切刃58をウェーハ11に切り込ませる。そして、切刃58の下端がシート27に到達する高さ位置まで切削ユニット50を下降させ、保持テーブル40の回転を開始する。そして、保持テーブル40が1回転以上するとウェーハ11に円形の分断溝33が形成され、環状凸部13がウェーハ11から切り離される。換言すると、環状凸部13と円形凹部15が分断される。
【0102】
なお、切削ユニット50でウェーハ11を切削すると、ウェーハ11や切削ブレード56の切刃58から切削屑と摩擦熱が発生する。そのため、切削ブレード56がウェーハ11に切り込む際には、純水等で構成される切削水が切削ブレード56及びウェーハ11に供給される。そして、ウェーハ11の切削により発生した切削屑と摩擦熱は、切削水に取り込まれて除去される。
【0103】
ここで、本実施形態に係るウェーハの加工方法とは異なり、シート27に代えて糊層を備えるダイシングテープが使用される場合、切削屑を取り込んだ切削水がダイシングテープに到達したときに、切削屑が糊層に付着することがある。この場合、その後の工程においてダイシングテープから切削屑が分離することがあり、切削屑がウェーハ11に到達して付着することもある。ウェーハ11に切削屑が付着すると、ウェーハ11から形成されるデバイスチップの品質が低下するため、問題となる。
【0104】
これに対して、本実施形態に係るウェーハの加工方法では、シート27は糊層を備えない。そのため、切削屑を取り込んだ切削水がシート27に到達しても、切削屑がシート27に付着しにくい。また、切削屑がシート27に付着した場合でも、切削屑はシート27から容易に除去される。そのため、シート27からウェーハ11への切削屑の転移も生じにくく、切削屑によるデバイスチップの品質低下も生じにくい。
【0105】
本実施形態に係るウェーハの加工方法では、分断ステップS30の後に、ウェーハ11から切り離された環状凸部13をシート27から除去する除去ステップS40を実施する。
図8(A)は、除去ステップS40におけるウェーハユニット31を模式的に示す斜視図であり、
図8(B)は、除去ステップS40におけるウェーハユニット31及び除去ユニット60を模式的に示す断面図である。
【0106】
図8(B)には、除去ステップS40でシート27から除去される際の環状凸部13を模式的に示す断面図が含まれている。環状凸部13がウェーハ11から切り離された後、環状凸部13を引き上げてシート27から引き剥がす。すると、ウェーハ11の円形凹部15であった部分がシート27上に残る。すなわち、環状凸部13が除去されたウェーハ11と、シート27と、環状フレーム29と、が一体化されたウェーハユニット31が得られる。その後、ウェーハ11を分割すると、個々のデバイスチップが得られる。
【0107】
除去ステップS40は、例えば、除去ユニット60の機能により遂行される。除去ユニット60は、例えば、切削装置38に組み込まれている。ただし、除去ユニット60は切削装置38に組み込まれていなくてもよく、除去ステップS40は、切削装置38の外部で実施されてもよい。以下、切削装置38に除去ユニット60が組み込まれており、保持テーブル40上で除去ユニット60により除去ステップS40が実施される場合を例に除去ステップS40について説明する。
【0108】
例えば、除去ステップS40は、
図8(A)及び
図8(B)に示されるように、分断ステップS30に引き続き保持テーブル40上で実施される。除去ステップS40では、まず、除去ユニット60のベース板64をウェーハ11の上方に配置する。そして、除去用爪78がウェーハ11よりも外側に位置する様に、除去用爪78を外側に突出させた状態で、ベース板64を下降させる。
【0109】
除去用爪78の下爪78bがシート27と環状凸部13との境界に位置するまで、腕部62を下降させた後、下降を止める。次いで、除去用爪78をベース板64の内側に向けて移動させる。このとき、下爪78bを、例えば、ウェーハ11の外周縁から1.6mmだけ内側に移動させる。除去ステップS40では、複数の除去用爪78がウェーハ11の周方向に沿って略均等に互いに離れて配置された状態で、シート27と環状凸部13との境界に除去用爪78が挿入される。
【0110】
次に、腕部62を回転軸としてベース板64を回転させることで、複数の除去用爪78をウェーハ11の外周に沿って回転させながら、腕部62及びベース板64を上昇させることで、複数の除去用爪78を上方に移動させる。なお、除去用爪78の回転速度は、例えば、10°/sとし、14秒かけて各除去用爪78を140°回転させる。また、除去用爪78の上昇速度は、例えば、0.14mm/sとする。環状凸部13がシート27から離れることで、環状凸部13はシート27(ウェーハユニット31)から除去される。
【0111】
本実施形態では、この様に、複数の除去用爪78をウェーハ11の周りに回転移動させる動作と、複数の除去用爪78を上方に移動させる動作とを、合せて行うので、各動作を個別に行う場合に比べて、環状凸部13をシート27から除去するのに要する時間を短縮できる。
【0112】
加えて、除去用爪78の回転移動に伴い、環状凸部13をシート27から離れる所定方向に移動させるので、環状凸部13がシート27に再付着することがないというメリットがある。
【0113】
また、除去用爪78は、下爪78bに加えて、上爪78aを有する。シート27から剥がれた環状凸部13は、勢いよく上昇することがあるが、上爪78aを設けることで、環状凸部13の上昇を上爪78aと下爪78bとの範囲に留めることができる。これにより、環状凸部13の落下を防止できる。
【0114】
なお、このように環状凸部13をシート27から除去する際、稀に環状凸部13に過剰な負荷がかかり、環状凸部13に割れや欠けが生じることがある。そして、生じた屑や破片等がウェーハユニット31のウェーハ11と、環状フレーム29と、の間でシート27に落下することがある。
【0115】
しかしながら、シート27は糊層を備えないため、屑や破片等がシート27に貼り付くことがない。例えば、ウェーハユニット31を洗浄装置等で洗浄した際に、このような屑や破片等は極めて容易に除去され、シート27に残らない。
【0116】
また、そもそも、糊層により粘着テープに強力に貼着されている場合とは異なり、糊層を備えないシート27に固定されている場合には環状凸部13の除去は比較的容易となる。そのため、除去される環状凸部13に大きな力がかかることがなく、破損も起きにくく破片が生じにくい。そのため、ウェーハ11が分割されて形成されたデバイスチップに後に破片が飛散して付着することがなく、デバイスチップの品質低下が防止される。
【0117】
さらに、シート27からの環状凸部の除去のためにシート27に紫外線を照射する必要もなく、紫外線が照射されることを前提としてウェーハ11の表面11aのデバイス形成に使用する領域を狭める必要もない。したがって、デバイスチップの生産性も高まる。
【0118】
なお、上記実施形態では、分断ステップS30において、切削ブレード56が装着された切削装置38を使用してウェーハ11に分断溝33を形成する場合について説明したが、本発明の一態様はこれに限定されない。すなわち、分断ステップS30では、ウェーハ11にレーザービームを照射してウェーハ11をレーザー加工できるレーザー加工装置(不図示)が使用されてもよい。
【0119】
例えば、ウェーハ11に吸収される波長成分を含むレーザービームをウェーハ11における分断溝33の形成が予定された領域に照射し、ウェーハ11をアブレーション加工する。または、ウェーハ11を透過する波長成分を含むレーザービームをウェーハ11における分断溝33の形成が予定された領域に集光し、当該領域に沿った改質層をウェーハ11に形成し、改質層を分断起点としてウェーハ11を分断する。
【0120】
これらの場合においても、本発明の一態様に係るウェーハの加工方法によると、ウェーハ11のウェーハ11から切除された環状凸部13をシート27から容易に除去できる。この際、環状凸部13に大きな負荷がかかることはなく、環状凸部13に破損等が生じて破片がシート27に落下しても、破片が容易にシート27から除去される。そのため、後に破片がデバイスチップに付着することはなく、高品質なデバイスチップが形成される。
【0121】
その他、上述の実施形態及び変形例に係る構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。上述の実施形態及び変形例を、適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0122】
11 ウェーハ
11a 表面
11b 裏面
13 環状凸部
15 円形凹部
17 段差部
19 分割予定ライン
21 デバイス
23 外周余剰領域
25 デバイス形成領域
27 シート
29 環状フレーム
29a 開口部
31 ウェーハユニット
33 分断溝
2 熱圧着装置
4 上チャンバー
6 下チャンバー
8 第1凹部
10 第2凹部
12 第1開口
14 第2開口
16,18 内部空間
20 第1減圧ユニット
22 第2減圧ユニット
24 排気部
26 排気部
28 第1電磁弁
30 第2電磁弁
32 保持テーブル
34 保持面
34a 円形凸部
34b 環状支持部
36 ヒーター
38 切削装置
40 保持テーブル
42 枠体
44 多孔質部材
46 保持面
48 クランプ
50 切削ユニット
52 スピンドルハウジング
54 スピンドル
56 切削ブレード
58 切刃
60 除去ユニット
62 腕部
64 ベース板
66 除去用爪ユニット
68 直動機構
70 進退ロッド
72 移動ブロック
74 回転軸用ロッド
76 ベアリング
78 除去用爪
78a 上爪
78b 下爪
78c 接続部