(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168499
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】加工装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20241128BHJP
H01L 21/301 20060101ALI20241128BHJP
B23Q 17/00 20060101ALI20241128BHJP
B23Q 3/08 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
H01L21/68 N
H01L21/78 F
H01L21/78 B
B23Q17/00 A
B23Q3/08 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023085225
(22)【出願日】2023-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 健太呂
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 智章
(72)【発明者】
【氏名】三瓶 貴士
【テーマコード(参考)】
3C016
3C029
5F063
5F131
【Fターム(参考)】
3C016DA01
3C029EE01
5F063AA41
5F063AA48
5F063CA04
5F063CA06
5F063DD01
5F063DD25
5F063DE23
5F063DE40
5F063FF04
5F063FF05
5F131AA02
5F131BA31
5F131BA37
5F131BA52
5F131CA09
5F131DA32
5F131DA33
5F131DA36
5F131DA42
5F131EA05
5F131EA06
5F131EA14
5F131EA22
5F131EA24
5F131EB01
5F131EB03
5F131EB31
5F131KA40
5F131KB45
(57)【要約】
【課題】スピンナーテーブルのポーラス板の脱落を検知可能な加工装置を提供する。
【解決手段】加工装置は、ウエーハを保持し回転するスピンナーテーブル18を備える。スピンナーテーブル18は、ウエーハを吸引保持する上面を有するポーラス板24と、ポーラス板24の側面と下面とを覆い吸引源に連通し上面に吸引力を生成する枠体26とを含む。また、加工装置は、枠体26に連結されポーラス板24に対して垂直な回転軸20aを有する駆動源20と、駆動源20の負荷を検出する負荷検出手段22と、ウエーハを保持する前に駆動源20を作動させスピンナーテーブル18を回転させて負荷検出手段22によって検出される負荷の値が所定範囲を外れた際、スピンナーテーブル18のポーラス板24の一部または全部が脱落していると判断する制御手段52と、を備える。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウエーハを保持し回転するスピンナーテーブルを備えた加工装置であって、
該スピンナーテーブルは、ウエーハを吸引保持する上面を有するポーラス板と、該ポーラス板の側面と下面とを覆い吸引源に連通し該上面に吸引力を生成する枠体と、を含み、
該枠体に連結され該ポーラス板に対して垂直な回転軸を有する駆動源と、該駆動源の負荷を検出する負荷検出手段と、を少なくとも備え、
ウエーハを保持する前に該駆動源を作動させ該スピンナーテーブルを回転させて該負荷検出手段によって検出される負荷の値が所定範囲を外れた際、該スピンナーテーブルの該ポーラス板の一部または全部が脱落していると判断する制御手段を備えた加工装置。
【請求項2】
該負荷検出手段は、該駆動源の負荷電流値またはトルク値を検出する請求項1記載の加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエーハを保持し回転するスピンナーテーブルを備えた加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
IC、LSIなどの複数のデバイスが分割予定ラインによって区画され表面に形成されたウエーハは、切削装置、レーザー加工装置によって個々のデバイスチップに分割され、分割された各デバイスチップは携帯電話、パソコンなどの電気機器に利用される。
【0003】
切削装置は、ウエーハを保持するチャックテーブルと、チャックテーブルに保持されたウエーハを切削する切削ブレードを回転可能に支持した切削手段と、チャックテーブルと切削手段とを相対的に加工送りする送り手段と、切削済みのウエーハを洗浄する洗浄手段と、を含んでいて、ウエーハを高精度に個々のデバイスチップに分割することができる(たとえば、特許文献1参照)。
【0004】
レーザー加工装置は、切削手段の代わりに、レーザー光線を照射してウエーハに加工を施すレーザー光線照射手段が配設されている点を除けば、切削装置とほぼ同じ構成を有している(たとえば、特許文献2参照)。
【0005】
また、洗浄手段は、ウエーハを保持し回転するスピンナーテーブルと、スピンナーテーブルに保持されたウエーハに洗浄水を供給する洗浄水ノズルと、を備え、ウエーハを洗浄した後、スピンナーテーブルを高速回転させることにより、ウエーハをスピン乾燥させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11-26402号公報
【特許文献2】特開2004-322168号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
スピンナーテーブルは、ウエーハを吸引保持する上面を有するポーラス板と、ポーラス板の側面と下面とを覆い吸引源に連通する枠体と、を含む。スピンナーテーブルにおいては、吸引力や高速回転の影響などによってポーラス板が割れることがある。
【0008】
ポーラス板が割れてしまうと、ウエーハをスピンナーテーブルから搬出した後、洗浄手段において、スピンナーテーブルを回転させポーラス板を自ら洗浄する際に、割れたポーラス板の一部または全部が枠体から剥がれ、脱落するおそれがある。
【0009】
ポーラス板の一部または全部が脱落した状態で、次のウエーハがスピンナーテーブルに搬入され洗浄およびスピン乾燥が行われると、ウエーハが破損するという問題がある。
【0010】
本発明の課題は、スピンナーテーブルのポーラス板の脱落を検知可能な加工装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、上記課題を解決する以下の加工装置が提供される。すなわち、
「ウエーハを保持し回転するスピンナーテーブルを備えた加工装置であって、
該スピンナーテーブルは、ウエーハを吸引保持する上面を有するポーラス板と、該ポーラス板の側面と下面とを覆い吸引源に連通し該上面に吸引力を生成する枠体と、を含み、
該枠体に連結され該ポーラス板に対して垂直な回転軸を有する駆動源と、該駆動源の負荷を検出する負荷検出手段と、を少なくとも備え、
ウエーハを保持する前に該駆動源を作動させ該スピンナーテーブルを回転させて該負荷検出手段によって検出される負荷の値が所定範囲を外れた際、該スピンナーテーブルの該ポーラス板の一部または全部が脱落していると判断する制御手段を備えた加工装置」が提供される。
【0012】
好ましくは、該負荷検出手段は、該駆動源の負荷電流値またはトルク値を検出する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の加工装置は、
ウエーハを保持し回転するスピンナーテーブルを備えた加工装置であって、
該スピンナーテーブルは、ウエーハを吸引保持する上面を有するポーラス板と、該ポーラス板の側面と下面とを覆い吸引源に連通し該上面に吸引力を生成する枠体と、を含み、
該枠体に連結され該ポーラス板に対して垂直な回転軸を有する駆動源と、該駆動源の負荷を検出する負荷検出手段と、を少なくとも備え、
ウエーハを保持する前に該駆動源を作動させ該スピンナーテーブルを回転させて該負荷検出手段によって検出される負荷の値が所定範囲を外れた際、該スピンナーテーブルの該ポーラス板の一部または全部が脱落していると判断する制御手段を備えているので、スピンナーテーブルのポーラス板の脱落を検知可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係る加工装置の一例としての切削装置の斜視図。
【
図4】
図2に示す洗浄手段のスピンナーテーブルを下降させた状態を示す断面模式図。
【
図5】スピンナーテーブルのポーラス板の一部が脱落している洗浄手段の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る加工装置の好適実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0016】
(切削装置2)
図1には、本発明に係る加工装置の一例としての切削装置2が示されている。切削装置2は、ウエーハを保持するチャックテーブル4と、チャックテーブル4に保持されたウエーハを切削する切削ブレードを回転可能に支持した切削手段6と、チャックテーブル4と切削手段6とを相対的に加工送りする送り手段(図示していない。)と、切削済みのウエーハを洗浄する洗浄手段8と、を含む。
【0017】
(チャックテーブル4)
チャックテーブル4の上端部分には、吸引源(図示していない。)に接続されたポーラス板10が設けられている。そして、チャックテーブル4においては、吸引源でポーラス板10の上面に吸引力を生成することにより、ウエーハを吸引保持する。なお、ポーラス板10の外周には、複数のクランプ12が周方向に間隔をおいて配置されている。
【0018】
(切削手段6)
切削手段6は、Y軸方向およびZ軸方向に移動自在に構成されたスピンドルハウジング14と、スピンドルハウジング14に回転自在に支持されたスピンドル(符号省略)に装着された切削ブレード16とを備える。
【0019】
なお、Y軸方向は、
図1に矢印Yで示す方向であり、Z軸方向は、
図1に矢印Zで示す方向であってY軸方向に直交する上下方向である。また、
図1に矢印Xで示すX軸方向は、Y軸方向およびZ軸方向に直交する方向である。X軸方向およびY軸方向が規定するXY平面は実質上水平である。
【0020】
(送り手段)
図示していないが、送り手段は、チャックテーブル4に連結されX軸方向に延びるボールねじと、このボールねじを回転させるモータとを有する。そして、送り手段は、ボールねじによりモータの回転運動を直線運動に変換してチャックテーブル4に伝達し、チャックテーブル4をX軸方向に加工送りする。
【0021】
(洗浄手段8)
図2ないし
図4を参照して説明すると、洗浄手段8は、ウエーハを保持し回転するスピンナーテーブル18と、スピンナーテーブル18を回転させる駆動源20と、駆動源20の負荷を検出する負荷検出手段22と、を少なくとも備える。
【0022】
(スピンナーテーブル18)
スピンナーテーブル18は、ウエーハを吸引保持する上面を有するポーラス板24と、ポーラス板24の側面と下面とを覆い吸引源(図示していない。)に連通し、ポーラス板24の上面に吸引力を生成する枠体26と、を含む。ポーラス板24と枠体26とは部分的にボンドで接合されている。枠体26の下方には、円筒状のカバー部材28が設けられている。そして、スピンナーテーブル18においては、吸引源でポーラス板24の上面に吸引力を生成することにより、ウエーハを吸引保持する。
【0023】
(駆動源20)
駆動源20は、たとえば、動力1.5kW、最大トルク12Nmのサーボモータから構成され得る。駆動源20は、スピンナーテーブル18の枠体26に連結された回転軸20aを有する。この回転軸20aは、スピンナーテーブル18のポーラス板24の上面に対して垂直に設置されている。
【0024】
駆動源20においては、上下方向に延びる軸線Lを中心として、スピンナーテーブル18を所定の回転速度(たとえば、100~3000rpm)で回転させる。なお、軸線Lは、円形のポーラス板24の中心を通っている。
【0025】
駆動源20の外周面には、エアシリンダなどの適宜のアクチュエータから構成され得る昇降手段30が装着されている。この昇降手段30は、スピンナーテーブル18を昇降させ、ウエーハが着脱される上昇位置(
図3に示す位置)と、ウエーハが洗浄される下降位置(
図4に示す位置)とにスピンナーテーブル18を位置づける。
【0026】
(負荷検出手段22)
負荷検出手段22は、駆動源20の負荷として、駆動源20の負荷電流値またはトルク値を検出する。負荷検出手段22によって検出された負荷電流値またはトルク値は、後述する制御手段52(
図1参照)に送られる。
【0027】
図2に示すとおり、洗浄手段8は、さらに、スピンナーテーブル18に保持されたウエーハに洗浄水を噴射する洗浄水ノズル32と、スピンナーテーブル18に保持されたウエーハにエアーを噴射するエアーノズル34と、スピンナーテーブル18を囲うハウジング36とを含む。ハウジング36には、洗浄水ノズル32から噴射された洗浄水を排出するためのドレーンホース38が装着されている。
【0028】
図1に示すように、切削装置2は、さらに、ウエーハを複数枚収容したカセット40が置かれる昇降自在なカセット台42と、カセット40から切削加工前のウエーハを引き出して仮置きテーブル44まで搬出するとともに、仮置きテーブル44に位置づけられた切削加工済みのウエーハをカセット40に搬入する搬出入手段46と、カセット40から仮置きテーブル44に搬出された切削加工前のウエーハをチャックテーブル4に搬送する第一の搬送手段48と、切削加工済みのウエーハをチャックテーブル4から洗浄手段8に搬送する第二の搬送手段50と、切削装置2の作動を制御する制御手段52と、を備えている。制御手段52は、プロセッサおよびメモリを有するコンピュータから構成され得る。
【0029】
次に、上述したとおりの切削装置2の作動について説明する。
【0030】
切削装置2の制御手段52においては、切削加工済みのウエーハを洗浄手段8のスピンナーテーブル18によって保持する前に駆動源20を作動させる。つまり、切削加工済みのウエーハを保持していない状態で、スピンナーテーブル18を回転させる。
【0031】
スピンナーテーブル18を回転させると、負荷検出手段22によって駆動源20の負荷(負荷電流値またはトルク値)が検出され、検出された負荷が負荷検出手段22から制御手段52に送られる。そして、制御手段52においては、駆動源20の負荷が所定範囲内であるかどうかによって、スピンナーテーブル18のポーラス板24の一部または全部が脱落しているか否かを判断する。
【0032】
図2に示すように、ポーラス板24が脱落していない場合には、ポーラス板24の重心が軸線L(スピンナーテーブル18の回転中心)に一致するため、スピンナーテーブル18はバランスの取れた状態で回転する。この場合には、負荷検出手段22によって検出される駆動源20の負荷は、ほとんど変動しない。
【0033】
したがって、制御手段52は、駆動源20の負荷が所定範囲内に収まっている場合には、スピンナーテーブル18のポーラス板24は脱落していないと判断する。この場合には、スピンナーテーブル18でウエーハを保持し、洗浄およびスピン乾燥を行っても、ウエーハが破損するおそれがないため、洗浄手段8による洗浄工程の実行が許容される。
【0034】
一方、
図5に示すように、ポーラス板24の一部が脱落していると、ポーラス板24の重心が軸線L(スピンナーテーブル18の回転中心)からずれてしまう。このため、回転中のスピンナーテーブル18のバランスがくずれるので、スピンナーテーブル18において振動が発生する。この結果、負荷検出手段22によって検出される駆動源20の負荷が、ポーラス板24が脱落していない場合と比較して大きくなる。
【0035】
また、ポーラス板24の全部が脱落した場合には、スピンナーテーブル18の重量が、所定重量(ポーラス板24が装着されている場合のスピンナーテーブル18の重量)よりも軽くなる。そのため、負荷検出手段22によって検出される駆動源20の負荷が、ポーラス板24が脱落していない場合と比較して小さくなる。
【0036】
したがって、制御手段52は、駆動源20の負荷が所定範囲内から外れた際、スピンナーテーブル18のポーラス板24の一部または全部が脱落していると判断する。
【0037】
ポーラス板24の一部または全部が脱落した状態で、スピンナーテーブル18でウエーハを保持し、洗浄およびスピン乾燥を行ってしまうと、ウエーハが破損するおそれがある。
【0038】
このため、ポーラス板24の一部または全部が脱落していると制御手段52が判断した場合には、洗浄手段8による洗浄工程は実行されないとともに、ポーラス板24が脱落している旨がオペレータに報知される。オペレータへの報知は、たとえば、図示していないモニターへの表示や、警報音の鳴動、ランプの点灯または点滅などでよい。
【0039】
このような判断は、切削装置2の作動開始時や作動中において適宜行うことができる。たとえば、洗浄工程を実行する前には、ポーラス板24が脱落しているか否かの判断を、必ず行うようにしてもよい。あるいは、洗浄工程を複数回(たとえば、3~5回程度)行ったら、上記判断を行なうようにしてもよい。
【0040】
なお、駆動源20の負荷の上記所定範囲は、任意に設定され得る。たとえば、負荷電流値の所定範囲は、0.45A~0.5Aの範囲でよく、トルク値の所定範囲は、7.5Nm~8Nmでよい。
【0041】
以上のとおりであり、図示の実施形態の切削装置2においては、ウエーハを保持する前に駆動源20を作動させスピンナーテーブル18を回転させて、負荷検出手段22によって検出される負荷の値が所定範囲を外れた際、スピンナーテーブル18のポーラス板24が脱落していると判断するので、スピンナーテーブル18のポーラス板24の脱落を検知可能である。
【0042】
したがって、切削装置2においては、ポーラス板24の脱落に気づかずに、洗浄手段8にウエーハを搬入してしまうことがない。この結果、ポーラス板24が脱落している洗浄手段8において、ウエーハの洗浄およびスピン乾燥を行うことによるウエーハの破損を防止することができる。
【0043】
なお、本発明に係る加工装置は、上述した切削装置2に限定されず、たとえば
図6に示すようなレーザー加工装置54であってもよい。レーザー加工装置54は、切削手段6の代わりに、レーザー光線を照射してウエーハにレーザー加工を施すレーザー光線照射手段56が配設されている点を除けば、チャックテーブル4や洗浄手段8など、切削装置2とほぼ同じ構成を有している。
【符号の説明】
【0044】
2:切削装置(加工装置)
18:スピンナーテーブル
20:駆動源
20a:回転軸
22:負荷検出手段
24:ポーラス板
26:枠体
52:制御手段