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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168547
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】吸収性物品及び包装体
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/51 20060101AFI20241128BHJP
   A61F 13/15 20060101ALI20241128BHJP
   A61F 13/56 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
A61F13/51
A61F13/15 210
A61F13/15 120
A61F13/15 140
A61F13/56 210
【審査請求】未請求
【請求項の数】26
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023085309
(22)【出願日】2023-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】000115108
【氏名又は名称】ユニ・チャーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100183081
【弁理士】
【氏名又は名称】岡▲崎▼ 大志
(72)【発明者】
【氏名】植田 麻穂
(72)【発明者】
【氏名】深山 拓也
【テーマコード(参考)】
3B200
【Fターム(参考)】
3B200AA01
3B200BA07
3B200BA15
3B200BA17
3B200BB18
3B200BB21
3B200CA02
3B200DA16
3B200DA21
3B200DB02
3B200DB20
3B200DE01
3B200DF07
3B200DF08
(57)【要約】
【課題】コストの増大を抑制しつつ必要な資材強度を確保できると共に、廃棄後の吸収性物品の生分解の促進を図ることができる。
【解決手段】吸収性物品1は、内側シート部材11と、外側シート部材12と、吸収体13と、内側シート部材11が内側に包囲されるように吸収性物品1が折り畳まれた折り畳み状態を維持するように吸収性物品1の形状を固定するための固定部材と、を備える。外側シート部材12及び固定部材の少なくとも一方は、折り畳み状態において外側に露出する外側露出部を有し、外側露出部の少なくとも一部である第1部分は、単独では生分解性を有しないポリオレフィン樹脂を含んで構成される。第1部分は、ポリオレフィン樹脂を生分解させる添加剤が含まれていることにより、生分解性の評価試験の開始時点から28日以内に第1部分のカルボニルインデックスが1以上を示すという生分解条件を満たすように構成されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者により排泄される排泄物を吸収する吸収性物品であって、
前記着用者の肌に面する一以上のシートを含む内側シート部材と、
前記内側シート部材に対して肌側とは反対側に配置される一以上のシートを含む外側シート部材と、
前記内側シート部材と前記外側シート部材との間に配置され、前記着用者の排泄物を吸収する吸収体と、
前記内側シート部材が内側に包囲されるように前記吸収性物品が折り畳まれた折り畳み状態を維持するように前記吸収性物品の形状を固定するための固定部材と、を備え、
前記外側シート部材及び前記固定部材の少なくとも一方は、前記折り畳み状態において外側に露出する外側露出部を有し、
前記外側露出部の少なくとも一部である第1部分は、単独では生分解性を有しないポリオレフィン樹脂を含んで構成され、
前記第1部分は、酸素、水、及び紫外線の少なくとも1つを促進因子としてポリオレフィン樹脂を生分解させる添加剤が含まれていることにより、PAS9017:2020に規定された評価試験の開始時点から28日以内に前記第1部分のカルボニルインデックスが1以上を示すという生分解条件を満たすように構成されている、
吸収性物品。
【請求項2】
前記添加剤は、フェノール系酸化防止安定剤を含有する、
請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記添加剤における前記フェノール系酸化防止安定剤の含有量は、前記ポリオレフィン樹脂及び前記添加剤の重量の合計に対して、0.02~0.15重量%である、
請求項2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記外側シート部材は、複数のシートを含み、
前記添加剤は、前記複数のシートのうち少なくとも2以上のシートに添加されており、
前記2以上のシートの各々における前記フェノール系酸化防止安定剤の含有量は、外側に配置されているシートほど多い、
請求項2又は3に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記第1部分の引張強度は、MD:0.3N/mm以上且つCD:0.07N/mm以上である、
請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記第1部分は、JIS L0849に規定された表面摩擦堅牢度試験における200g荷重下での50回往復摩擦によって毛羽立ちが発生しない耐久性を有する、
請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記第1部分は、0.1mm以上2.0mm以下の厚さを有する、
請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項8】
前記第1部分の紫外線透過率は、15%以上である、
請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項9】
前記外側シート部材は、前記第1部分と前記吸収体との間に配置される生分解性の中間シートを有し、
フラジール試験によって測定される前記第1部分の通気度は、フラジール試験によって測定される前記中間シートの通気度よりも高い、
請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項10】
前記外側シート部材は、前記第1部分と前記吸収体との間に配置される生分解性の中間シートを有し、
前記第1部分の密度は、前記中間シートの密度よりも低い、
請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項11】
フラジール試験によって測定される前記第1部分の通気度は、100cm/(cm・s)以上700cm/(cm・s)以下である、
請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項12】
前記第1部分の密度は、0.02g/m以上0.1g/m以下である、
請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項13】
前記吸収体は、生分解性の高吸水性ポリマーを含む、
請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項14】
前記高吸水性ポリマーの生分解の促進因子は、前記第1部分の生分解の促進因子と同一である、
請求項13に記載の吸収性物品。
【請求項15】
前記高吸水性ポリマーの生分解の促進因子は、前記排泄物に由来する物質を含み、
前記第1部分の生分解の促進因子は、前記排泄物に由来する物質を含まない、
請求項13に記載の吸収性物品。
【請求項16】
前記第1部分が前記添加剤によって生分解性を有することにより、前記吸収性物品の全体の重量の90%以上を占める部分が生分解性を有するように構成されている、
請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項17】
前記外側シート部材は、前記第1部分と前記吸収体との間に配置される生分解性の中間シートを有し、
前記評価試験により測定される前記中間シートの劣化度は、前記評価試験により測定される前記第1部分の劣化度よりも高い、
請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項18】
前記中間シートにも、前記添加剤が含まれており、
前記中間シートにおける前記添加剤の含有量は、前記第1部分における前記添加剤の含有量よりも多い、
請求項17に記載の吸収性物品。
【請求項19】
前記固定部材は、基材シートと、前記基材シートの表面に設けられた係合部と、を含み、
前記第1部分は、前記基材シートを含み、
前記係合部は、前記折り畳み状態を維持するように前記外側シート部材又は前記固定部材の外表面と係合可能に構成されている、
請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項20】
前記第1部分の前記評価試験が開始してから所定期間が経過した後の前記係合部と前記外表面との係合強度は、前記評価試験が開始される前の前記係合部と前記外表面との係合強度よりも低い、
請求項19に記載の吸収性物品。
【請求項21】
前記生分解条件は、前記評価試験の開始時点から14日以内に、前記第1部分の数平均分子量が5000以下になり、前記第1部分のz平均分子量が30000以下になり、前記第1部分の重量平均分子量の損失が90%以上になるという条件を更に含む、
請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項22】
請求項1に記載の吸収性物品を複数まとめて包装する包装体であって、
複数の前記吸収性物品を包装するための包装シートを備え、
前記包装シートの酸素透過率は、前記第1部分の酸素透過率よりも低い、
包装体。
【請求項23】
前記吸収性物品の前記外側シート部材は、前記第1部分と前記吸収体との間に配置される中間シートを有し、
前記包装シートの酸素透過率は、前記中間シートの酸素透過率よりも低い、
請求項22に記載の包装体。
【請求項24】
請求項1に記載の吸収性物品を複数まとめて包装する包装体であって、
複数の前記吸収性物品を包装するための包装シートを備え、
前記包装シートの紫外線透過率は、前記第1部分の紫外線透過率よりも低い、
包装体。
【請求項25】
前記吸収性物品の前記外側シート部材は、前記第1部分と前記吸収体との間に配置される中間シートを有し、
前記包装シートの紫外線透過率は、前記中間シートの紫外線透過率よりも低い、
請求項24に記載の包装体。
【請求項26】
請求項1に記載の吸収性物品を複数まとめて包装する包装体であって、
複数の前記吸収性物品を包装するための包装シートを備え、
前記包装シートは、前記吸収性物品が収容される内部空間を密封している、
包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、吸収性物品及び包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、着用者の肌に面する内側シート部材と、内側シート部材に対して肌側とは反対側に配置される外側シート部材と、内側シート部材と外側シート部材との間に配置され、着用者の排泄物を吸収する吸収体と、を備える吸収性物品が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-195428号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したような吸収性物品は、一般的に、複数のシート資材が積層された構造を有すると共に、廃棄時には排泄物を内側に閉じ込めるように丸めた折り畳み状態にされる。このため、例えば使用済みの吸収性物品(例えば、上述したような折り畳み状態で廃棄された吸収性物品)を土壌中に埋立処理する場合等において、土壌中の微生物が吸収性物品の内部へと浸透し難く、吸収性物品の分解処理に時間がかかってしまうおそれがある。そこで、吸収性物品の分解処理を促進するために(すなわち、吸収性物品の内部への微生物の導入を促進するために)、吸収性物品の外側のシート部材をポリ乳酸樹脂等の生分解性を有する樹脂で構成することが考えられる。しかし、上記のような生分解性樹脂は、一般的に高コストであると共に、資材強度が不十分であるという問題がある。
【0005】
そこで、本開示は、コストの増大を抑制しつつ必要な資材強度を確保できると共に、廃棄後の吸収性物品の生分解の促進を図ることができる吸収性物品と、上記吸収性物品を好適に包装できる包装体と、を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一側面に係る吸収性物品は、着用者により排泄される排泄物を吸収する吸収性物品であって、着用者の肌に面する一以上のシートを含む内側シート部材と、内側シート部材に対して肌側とは反対側に配置される一以上のシートを含む外側シート部材と、内側シート部材と外側シート部材との間に配置され、着用者の排泄物を吸収する吸収体と、内側シート部材が内側に包囲されるように吸収性物品が折り畳まれた折り畳み状態を維持するように吸収性物品の形状を固定するための固定部材と、を備え、外側シート部材及び固定部材の少なくとも一方は、折り畳み状態において外側に露出する外側露出部を有し、外側露出部の少なくとも一部である第1部分は、単独では生分解性を有しないポリオレフィン樹脂を含んで構成され、第1部分は、酸素、水、及び紫外線の少なくとも1つを促進因子としてポリオレフィン樹脂を生分解させる添加剤が含まれていることにより、PAS9017:2020に規定された生分解性の評価試験の開始時点から28日以内に第1部分のカルボニルインデックスが1以上を示すという生分解条件を満たすように構成されている。
【0007】
本開示の第1側面に係る包装体は、上記吸収性物品を複数まとめて包装する包装体であって、複数の吸収性物品を包装するための包装シートを備え、包装シートの酸素透過率は、第1部分の酸素透過率よりも低い。
【0008】
本開示の第2側面に係る包装体は、上記吸収性物品を複数まとめて包装する包装体であって、複数の吸収性物品を包装するための包装シートを備え、包装シートの紫外線透過率は、第1部分の紫外線透過率よりも低い。
【0009】
本開示の第3側面に係る包装体は、上記吸収性物品を複数まとめて包装する包装体であって、複数の吸収性物品を包装するための包装シートを備え、包装シートは、吸収性物品が収容される内部空間を密封している。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、コストの増大を抑制しつつ必要な資材強度を確保できると共に、廃棄後の吸収性物品の生分解の促進を図ることができる吸収性物品と、上記吸収性物品を好適に包装できる包装体と、を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】一実施形態に係る吸収性物品を非肌面側から見た平面図である。
図2図1の吸収性物品を肌面側から見た平面図である。
図3図2のIII-III線に沿った吸収性物品の断面図である。
図4図1の吸収性物品の折り畳み状態の一例を示す図である。
図5】変形例に係る吸収性物品の斜視図である。
図6図5の吸収性物品の折り畳み状態の一例を示す図である。
図7】一実施形態に係る包装体の斜視図である。
図8図7の包装体の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示は以下の態様1~態様27を含む。
【0013】
(態様1)
着用者により排泄される排泄物を吸収する吸収性物品であって、
前記着用者の肌に面する一以上のシートを含む内側シート部材と、
前記内側シート部材に対して肌側とは反対側に配置される一以上のシートを含む外側シート部材と、
前記内側シート部材と前記外側シート部材との間に配置され、前記着用者の排泄物を吸収する吸収体と、
前記内側シート部材が内側に包囲されるように前記吸収性物品が折り畳まれた折り畳み状態を維持するように前記吸収性物品の形状を固定するための固定部材と、を備え、
前記外側シート部材及び前記固定部材の少なくとも一方は、前記折り畳み状態において外側に露出する外側露出部を有し、
前記外側露出部の少なくとも一部である第1部分は、単独では生分解性を有しないポリオレフィン樹脂を含んで構成され、
前記第1部分は、酸素、水、及び紫外線の少なくとも1つを促進因子としてポリオレフィン樹脂を生分解させる添加剤が含まれていることにより、PAS9017:2020に規定された生分解性の評価試験の開始時点から28日以内に前記第1部分のカルボニルインデックスが1以上を示すという生分解条件を満たすように構成されている、吸収性物品。
【0014】
上記吸収性物品では、外側露出部の少なくとも一部である第1部分を単独では生分解性を有しないポリオレフィン樹脂で構成することにより、第1部分をポリ乳酸樹脂等の生分解性樹脂で構成する場合と比較して、吸収性物品の低コスト化を図ると共に第1部分の資材強度を確保することができる。また、使用後の吸収性物品は、通常、外側露出部が外側に露出し且つ内側シート部材及び吸収体が内側に丸められた状態で廃棄される。上記吸収性物品では、上記の生分解条件を満たすように生分解を促進する添加剤が第1部分に含まれていることにより、廃棄後の吸収性物品の第1部分を早期に分解させることができる。その結果、廃棄後の吸収性物品の内部へと微生物を早期に浸透させることができるため、吸収性物品全体の生分解を促進できる。従って、上記吸収性物品によれば、コストの増大を抑制しつつ必要な資材強度を確保できると共に、廃棄後の吸収性物品の生分解の促進を図ることができる。
【0015】
(態様2)
前記添加剤は、フェノール系酸化防止安定剤を含有する、態様1の吸収性物品。
(態様3)
前記添加剤における前記フェノール系酸化防止安定剤の含有量は、前記ポリオレフィン樹脂及び前記添加剤の重量の合計に対して、0.02~0.15重量%である、態様2の吸収性物品。
態様2,3によれば、想定される一定の製品保存期間の経過後に分解が開始するように、生分解の開始時期を適切に調整できる。
【0016】
(態様4)
前記外側シート部材は、複数のシートを含み、
前記添加剤は、前記複数のシートのうち少なくとも2以上のシートに添加されており、
前記2以上のシートの各々における前記フェノール系酸化防止安定剤の含有量は、外側に配置されているシートほど多い、態様2又は3の吸収性物品。
態様4によれば、通常時(保管時又は使用時)に外気に触れやすい部分(外側の部分)ほど生分解の抑制度合いを大きくすることにより、外側シート部材の外側部分において予期せぬ生分解の促進が発生することを適切に防止できる。
【0017】
(態様5)
前記第1部分の引張強度は、MD:0.3N/mm以上且つCD:0.07N/mm以上である、態様1~4のいずれかの吸収性物品。
(態様6)
前記第1部分は、JIS L0849に規定された表面摩擦堅牢度試験における200g荷重下での50回往復摩擦によって毛羽立ちが発生しない耐久性を有する、態様1~5のいずれかの吸収性物品。
態様5,6によれば、第1部分の資材強度を好適に確保できるため、通常時(保管時又は使用時)における吸収性物品の変形及び破損等に対する安定性を向上させることができる。
【0018】
(態様7)
前記第1部分は、0.1mm以上2.0mm以下の厚さを有する、態様1~6のいずれかの吸収性物品。
第1部分(外側露出部材)の厚さを0.1mmよりも薄くした場合、肌触りが悪くなり易い。また、第1部分の厚さを2.0mmよりも厚くした場合、厚みが大きいことによって第1部分の分解速度が低下してしまう。従って、態様7によれば、第1部分の厚さを0.1mm以上2.0mm以下の範囲に設定することにより、良好な肌触りを維持しつつ分解速度の低下を抑制できる。
【0019】
(態様8)
前記第1部分の紫外線透過率は、15%以上である、態様1~7のいずれかの吸収性物品。
態様8によれば、吸収性物品のうち第1部分よりも内側の部材の生分解の促進因子となり得る紫外線を、第1部分を透過させて当該内側の部材へと好適に導くことができる。その結果、吸収性物品の内部の生分解の開始時期を早めることができ、吸収性物品全体の分解速度を向上させることができる。
【0020】
(態様9)
前記外側シート部材は、前記第1部分と前記吸収体との間に配置される生分解性の中間シートを有し、
フラジール試験によって測定される前記第1部分の通気度は、フラジール試験によって測定される前記中間シートの通気度よりも高い、態様1~8のいずれかの吸収性物品。
(態様10)
前記外側シート部材は、前記第1部分と前記吸収体との間に配置される生分解性の中間シートを有し、
前記第1部分の密度は、前記中間シートの密度よりも低い、態様1~9のいずれかの吸収性物品。
態様9,10によれば、中間シートの生分解の促進因子となり得る水、酸素等を、第1部分を透過させて中間シートへと好適に導くことができる。その結果、吸収性物品の内部(中間シート)の生分解の開始時期を早めることができ、吸収性物品全体の分解速度を向上させることができる。
【0021】
(態様11)
フラジール試験によって測定される前記第1部分の通気度は、100cm/(cm・s)以上700cm/(cm・s)以下である、態様1~10のいずれかの吸収性物品。
態様11によれば、通気度を700cm/(cm・s)以下に抑えることにより吸収性物品の機能(例えば排泄物の外漏れ防止等)が損なわれることを防止しつつ、通気度を100cm/(cm・s)以上にすることにより、生分解の促進因子となり得る水、酸素等を、第1部分を透過させて吸収性物品の内部へと適切に導くことができる。その結果、吸収性物品の内部の生分解の開始時期を早めることができ、吸収性物品全体の分解速度を向上させることができる。
【0022】
(態様12)
前記第1部分の密度は、0.02g/m以上0.1g/m以下である、態様1~11のいずれかの吸収性物品。
態様12によれば、密度を0.1g/m以下に抑えることにより吸収性物品の機能(例えば排泄物の外漏れ防止等)が損なわれることを防止しつつ、密度を0.02g/m以上にすることにより、生分解の促進因子となり得る水、酸素等を、第1部分を透過させて吸収性物品の内部へと適切に導くことができる。その結果、吸収性物品の内部の生分解の開始時期を早めることができ、吸収性物品全体の分解速度を向上させることができる。
【0023】
(態様13)
前記吸収体は、生分解性の高吸水性ポリマーを含む、態様1~12のいずれかの吸収性物品。
態様13によれば、吸収性物品の第1部分を生分解させて微生物を吸収体に到達させることにより、吸収体を適切に生分解させることができる。
【0024】
(態様14)
前記高吸水性ポリマーの生分解の促進因子は、前記第1部分の生分解の促進因子と同一である、態様13の吸収性物品。
態様14によれば、同一の環境において、第1部分及び高吸水性ポリマーの一方のみが分解されずに残ってしまう状況の発生を防止できる。
【0025】
(態様15)
前記高吸水性ポリマーの生分解の促進因子は、前記排泄物に由来する物質を含み、
前記第1部分の生分解の促進因子は、前記排泄物に由来する物質を含まない、態様13の吸収性物品。
態様15によれば、吸収性物品に対して着用者が排泄物を排泄した時点から吸収体(高吸水性ポリマー)の分解を開始させることができるため、吸収体の生分解が完了するまでの期間を短縮できる。一方、第1部分の生分解の促進因子が排泄物由来の物質を含まないことにより、第1部分が排泄処理を契機として適切な分解開始時期(すなわち、吸収性物品の廃棄後の時点)よりも前に分解開始することを防止することができる。
【0026】
(態様16)
前記第1部分が前記添加剤によって生分解性を有することにより、前記吸収性物品の全体の重量の90%以上を占める部分が生分解性を有するように構成されている、態様1~15のいずれかの吸収性物品。
態様16によれば、廃棄後の吸収性物品の生分解をより一層効果的に促進させることができる。
【0027】
(態様17)
前記外側シート部材は、前記第1部分と前記吸収体との間に配置される生分解性の中間シートを有し、
上記評価試験により測定される前記中間シートの劣化度は、上記評価試験により測定される前記第1部分の劣化度よりも高い、態様1~16のいずれかの吸収性物品。
(態様18)
前記中間シートにも、前記添加剤が含まれており、
前記中間シートにおける前記添加剤の含有量は、前記第1部分における前記添加剤の含有量よりも多い、態様17の吸収性物品。
排泄物の漏れを防ぐ観点から、一般的に、中間シートは分解しにくい構造を有する。態様17,18によれば、このような中間シートを生分解し易い構成にすることができる。その結果、吸収性物品全体の分解速度を向上させることができる。
【0028】
(態様19)
前記固定部材は、基材シートと、前記基材シートの表面に設けられた係合部と、を含み、
前記第1部分は、前記基材シートを含み、
前記係合部は、前記折り畳み状態を維持するように前記外側シート部材又は前記固定部材の外表面と係合可能に構成されている、態様1~18のいずれかの吸収性物品。
態様19によれば、廃棄後の吸収性物品において、係合部材の基材シートの生分解を促進させることにより、上記折り畳み状態を解除して吸収性物品の内部を外側に露出させることができる。その結果、吸収性物品の内側の部材に微生物が接触し易くなり、吸収性物品全体の分解速度を向上させることができる。
【0029】
(態様20)
前記第1部分の上記評価試験が開始してから所定期間が経過した後の前記係合部と前記外表面との係合強度は、上記評価試験が開始される前の前記係合部と前記外表面との係合強度よりも低い、態様19の吸収性物品。
上記係合強度は、上記折り畳み状態を維持するために作用している。態様20では、第1部分の評価試験の開始(すなわち、生分解の促進の開始)から所定期間後の係合部と外表面との係合強度が、評価試験が開始される前の係合強度よりも低くなるように、当該第1部分の少なくとも一部の生分解性(例えば添加剤の添加量)が調整されている。これにより、生分解の促進が開始されてから所定期間後に係合部と外表面との係合が外れ易くなるため上記折り畳み状態が解除される可能性を高めることができる。
【0030】
(態様21)
前記生分解条件は、上記評価試験の開始時点から14日以内に、前記第1部分の数平均分子量が5000以下になり、前記第1部分のz平均分子量が30000以下になり、前記第1部分の重量平均分子量の損失が90%以上になるという条件を更に含む、態様1~20のいずれかの吸収性物品。
態様21によれば、第1部分の生分解をより一層効果的に促進させることができる。
【0031】
(態様22)
態様1~21のいずれかの吸収性物品を複数まとめて包装する包装体であって、
複数の前記吸収性物品を包装するための包装シートを備え、
前記包装シートの酸素透過率は、前記第1部分の酸素透過率よりも低い、包装体。
(態様23)
前記吸収性物品の前記外側シート部材は、前記第1部分と前記吸収体との間に配置される中間シートを有し、
前記包装シートの酸素透過率は、前記中間シートの酸素透過率よりも低い、態様22の包装体。
(態様24)
態様1~21のいずれかの吸収性物品が複数まとめて包装する包装体であって、
複数の前記吸収性物品を包装するための包装シートを備え、
前記包装シートの紫外線透過率は、前記第1部分の紫外線透過率よりも低い、包装体。
(態様25)
前記吸収性物品の前記外側シート部材は、前記第1部分と前記吸収体との間に配置される中間シートを有し、
前記包装シートの紫外線透過率は、前記中間シートの紫外線透過率よりも低い、態様24の包装体。
(態様26)
態様1~21のいずれかの吸収性物品が複数まとめて包装する包装体であって、
複数の前記吸収性物品を包装するための包装シートを備え、
前記包装シートは、前記吸収性物品が収容される内部空間を密封している、包装体。
態様22~26の包装体によれば、吸収性物品が使用前に包装シート内に収容及び保管された状態(パッケージ状態)において、包装体の内部に生分解の促進因子となり得る酸素、紫外線等が侵入することを抑制できる。これにより、吸収性物品(第1部分)の生分解開始時期が早まってしまうこと、すなわち、吸収性物品の製品寿命が予定された期間よりも短くなってしまうことを抑制することができる。従って、上記包装体によれば、上述した吸収性物品を好適に包装できる。
【0032】
[実施形態]
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の説明において、同一又は相当要素には同一符号を用い、重複する説明を省略する。
【0033】
(吸収性物品)
図1は、一実施形態に係る吸収性物品1を非肌面側から見た平面図である。図2は、吸収性物品1を肌面側から見た平面図である。図3は、図2に示すIII-III線に沿った断面図である。図1及び図2の平面図は、吸収性物品1を、皺が形成されない状態まで伸長させた伸長状態を示している。本実施形態において「肌面側」とは吸収性物品1の使用状態(着用状態)において着用者の肌に面する側であり、「非肌面側」とは吸収性物品1の使用状態(着用状態)において着用者の肌とは反対側に向けられる側である。また、本実施形態において「着用者」とは吸収性物品1を着用する者であり、「装着者」とは吸収性物品1を着用者に装着する者である。
【0034】
また、以下では、吸収性物品1の伸長状態(図1及び図2参照)における長手方向(MD:machine direction)を前後方向Lとし、前後方向Lに直交する方向であって吸収性物品1の伸長状態における幅方向(CD:cross direction)を幅方向Wとして説明する。前後方向Lは、吸収性物品1の使用状態において、着用者の身体前側から身体後側に延びる方向である。幅方向Wは、吸収性物品1の使用状態において、着用者の左右方向となる方向である。
【0035】
吸収性物品1は、着用者が排泄した尿等の排泄物を吸収する物品であり、例えば使い捨ておむつである。吸収性物品1は、子供用の使い捨ておむつであってもよいし、大人用の使い捨ておむつであってもよい。一例として、吸収性物品1は、いわゆるテープ型の使い捨ておむつとして構成されている。
【0036】
吸収性物品1は、吸収性本体10と、一対のファスニングテープ21A,21B(固定部材)と、ターゲットテープ30と、を備える。吸収性物品1において、吸収性本体10は排泄物を吸収する機能を有する部分であり、一対のファスニングテープ21A,21B及びターゲットテープ30は吸収性本体10を着用者に装着及び固定する機能を有する部分である。ファスニングテープ21A,21Bは、吸収性物品1の使用後等において、吸収性物品1が後述する折り畳み状態に維持されるように吸収性物品1の形状を固定する機能も有する。
【0037】
吸収性本体10は、前胴回り域101と、後胴回り域102と、股下域103と、に区分される。前胴回り域101は、使用時(着用時)において着用者の前胴回り側に位置する領域である。後胴回り域102は、使用時において着用者の後胴回り側に位置する領域である。股下域103は、前後方向Lにおいて前胴回り域101及び後胴回り域102の間に位置し、使用時に着用者の股下に位置する領域である。
【0038】
吸収性本体10は、図3に示すように、内側シート部材11と、外側シート部材12と、吸収体13と、を含んで構成されている。
【0039】
吸収体13は、内側シート部材11と外側シート部材12との間に配置され、着用者の排泄物を吸収する部分である。吸収体13は、吸収性コア13aと、コアラップ13bとを含む。一例として、吸収性コア13aは、パルプ(粉砕パルプ)及び高吸収性ポリマー(SAP)を含む吸収材料の積層体である。コアラップ13bは、例えばティッシュ又は不織布シートによって構成され、吸収性コア13aの肌面側及び非肌面側を覆うように配置されている。吸収体13は、吸収性本体10の幅方向Wの中央部分において、前後方向Lの両端部を除いて、前後方向Lの略全域に設けられている。
【0040】
吸収性コア13aに含まれるSAPは、生分解性を有する。生分解性を有するSAPの材料例としては、セルロース、セルロースナノファイバー、カルボキシメチルセルロース、でんぷん、ポリアスパラギン酸、ポリグルタミン酸等が挙げられる。吸収性コア13aに含まれるパルプもバイオマス由来であるため、生分解性を有する。コアラップ13bも、例えばセルロースから構成されるティッシュ等の生分解性を有する材料によって形成されている。以上により、吸収体13は、全体として、生分解性を有する。
【0041】
内側シート部材11は、着用者の肌に面する一以上のシートを含む部材である。本実施形態では、内側シート部材11は、表面シート11aと、サイドシート11bと、を含む。表面シート11aは、吸収体13を覆うように肌面側に配置された液透過性のシートであり、尿等の排泄物を吸収体13へと通過させる。表面シート11aは、例えば液透過性の不織布により構成されている。サイドシート11bは、吸収体13の幅方向Wの中央部分よりも外側において、幅方向Wにおける表面シート11aの両側部を覆うように前後方向Lの全域に配置された液不透過性のシートである。サイドシート11bは、例えば疎水性を有する不織布により構成されている。
【0042】
表面シート11a及びサイドシート11bは、いずれも生分解性を有する。表面シート11a及びサイドシート11bは、例えば後述する添加剤(後述するアウター不織布12bに配合された生分解を促進させるための添加剤)が配合されることによって生分解を有するように構成されてもよいし、例えばコットン、レーヨンやリヨセル等の再生セルロース、PBATやPLA、PBS、PHA、PVA、PBSA、PGA、PETS、酢酸セルロース、或いはこれらが任意の比率で配合された混合物等の生分解性を有する材料で形成されることによって生分解性を有するように構成されてもよい。
【0043】
サイドシート11bにおける幅方向Wの内端部分には、前後方向Lに沿って、糸ゴム等の弾性部材116a(図2参照)が設けられている。弾性部材116aは、その前端が前胴回り域101に達しており、且つ、その後端が後胴回り域102に達している。また、サイドシート11bの前後方向Lの両端部は、接着剤等によって表面シート11aに貼付(固定)されている。なお、表面シート11aへのサイドシート11bの固定方法は貼付に限られず、超音波接合やエンボスロールによる熱融着等であってもよい。また、サイドシート11bにおける幅方向Wの外端部分には、後述するアウター不織布12bとの間に、前後方向Lに沿って、伸縮性シート等の弾性部材115aが設けられている。弾性部材115aは、その前端が前胴回り域101に達しており、且つ、その後端が後胴回り域102に達している。
【0044】
外側シート部材12は、内側シート部材11に対して肌側とは反対側に配置される一以上のシートを含む部材である。すなわち、外側シート部材12は、吸収体13を挟んで内側シート部材11とは反対側に配置されている。外側シート部材12は、防漏シート12a(中間シート)と、アウター不織布12bとを含む。防漏シート12aは、吸収体13を覆うように非肌面側に配置された液不透過性のシートであり、排泄物の外部への漏出を防ぐ機能を有する部分である。すなわち、防漏シート12aは、アウター不織布12bと吸収体13との間に配置されている。防漏シート12aは、例えばフィルムにより構成されている。アウター不織布12bは、防漏シート12aの非肌面側に配置された液不透過性のシートである。アウター不織布12bは、例えば疎水性を有する不織布により構成されている。アウター不織布12bは、外側シート部材12の外表面(すなわち、非肌側の最外面)を構成する外表面シートである。
【0045】
防漏シート12a及びアウター不織布12bは、いずれも生分解を有する。アウター不織布12bは、生分解性を有するように調整された分解性ポリマー組成物(例えば、特表2020-500254号公報に記載の分解性ポリマー組成物)によって構成されている。
【0046】
アウター不織布12bは、石化由来又はバイオマス由来の単独では生分解性を有しないポリオレフィン樹脂を主材料(例えば、アウター不織布12b全体の50重量%以上を構成する材料)として含む。ポリオレフィン樹脂とは、一般式-[CHCRR’]-の繰り返し単位を含むポリマーの類である。好ましくは、R及びR’は、水素、メチル、エチル、酢酸塩、酢酸ビニル、メタクリル酸メチル、ビニルアルコール、及びアクリル酸を含むリストから個々に選択される。アウター不織布12bを構成するポリオレフィン樹脂は、例えば、エチレン及び/又はプロピレンモノマーを含み、任意には酢酸塩、酢酸ビニル、メタクリル酸メチル、ビニルアルコール、及びアクリル酸を含むリストから選択されるモノマーを更に含み得る。また、アウター不織布12bを構成するポリオレフィン樹脂は、LDPE、LLDPE、HDPE、MDPE、VLDPE、EVA、EVOH、EMMA及びEAAから選択されてもよい。
【0047】
ここで、「生分解性を有しない」とは、空気中、土壌中、海中等の自然環境中に放置された場合に、長期間(例えば2年)において、微生物による作用が生じないことによって無機物(水、二酸化炭素、メタン等)にまで分解されないこと(すなわち、微生物による分解がされないこと)、換言すれば、マイクロプラスチックが分解されずに残留してしまうことを意味する。すなわち、アウター不織布12bを構成するポリオレフィン樹脂自体は、例えばポリ乳酸樹脂等のような生分解性を有しない。より具体的には、アウター不織布12bを構成するポリオレフィン樹脂は、1.0g/m以下の密度を有し、一般的な生分解性樹脂(例えばポリ乳酸樹脂等)よりも高い強度を有する。また、アウター不織布12bは、このようなポリオレフィン樹脂を主材料として含むと共に、熱融着点又は繊維同士の溶融接合部を有する不織布シートとして構成されている。熱融着点とは、熱エンボス加工等によって熱融着(ポイントボンド)されることにより形成される融着部分である。溶融接合部は、熱で溶かされた樹脂繊維の表面同士が接合されることにより形成される接合部分である。これにより、アウター不織布12bは、単独で生分解性を有するポリ乳酸樹脂等の生分解性樹脂を用いた場合よりも高い資材強度(例えば、引張強度等)を有している。
【0048】
上述した通り、アウター不織布12bを構成するポリオレフィン樹脂は、それ自体では生分解性を有していない。このため、本実施形態では、アウター不織布12bの全体を生分解性に改質するための添加剤が、アウター不織布12bを構成するポリオレフィン樹脂に添加されている。添加剤は、酸素、水、及び紫外線の少なくとも1つを促進因子とする生分解を促進するように構成されている。本実施形態の添加剤(すなわち、以下に例示する添加剤)においては、酸素、水、及び紫外線の全てが分解反応(C-C結合の切断)の促進因子として機能する。
【0049】
一例として、アウター不織布12bに含まれる添加剤は、アウター不織布12bを構成するポリオレフィン樹脂及び添加剤の重量の合計に対して、
(a)総量0.15~0.6重量%の2以上の遷移金属化合物と、
(b)0.04~0.08重量%の量のモノ又はポリ不飽和C14-C24カルボン酸、又はそのエステル、無水物若しくはアミドと、
(c)0.04~0.2重量%の量の合成ゴムと、を含み、
更に、任意で、
(d)0~20重量%の量の乾燥でんぷん、及び/又は、
(e)0~1重量%の量の酸化カルシウム、及び/又は、
(f)0~0.2重量%の量のフェノール系酸化防止安定剤を含む。
なお、上記(a)の2以上の遷移金属化合物は、鉄化合物、マンガン化合物、銅化合物、コバルト化合物及びセリウム化合物から選択され、2以上の遷移金属化合物における遷移金属は異なる。
【0050】
防漏シート12aは、樹脂フィルムであり、アウター不織布12bと同様に、単独では生分解性を有しないポリオレフィン樹脂を主材料(例えば、防漏シート12a全体の50重量%以上を構成する材料)として含む。すなわち、防漏シート12aは、ポリオレフィン樹脂が溶融されてシート状に形成されたフィルム部材である。防漏シート12aを構成するポリオレフィン樹脂にも、アウター不織布12bと同様に、上述した添加剤が配合されている。
【0051】
吸収性本体10は、その機能的な構成として、図2に示されるように、レッグ伸縮部115と、レッグサイドギャザー116と、を備えている。
【0052】
レッグ伸縮部115は、吸収性本体10の両側部(幅方向Wにおける両端部)において、前後方向Lに伸縮可能な伸縮部分である弾性部材115aを有する構成である。レッグ伸縮部115においては、弾性部材115aが収縮することにより、使用状態において、股下域103における着用者の脚回りのフィット性を向上させるレッグギャザーが形成される。
【0053】
レッグサイドギャザー116は、レッグ伸縮部115よりも幅方向Wの内側に設けられ、前後方向Lにおける両端部が固定されており、前後方向Lに収縮することにより起立可能に構成されている。レッグサイドギャザー116は、上述したサイドシート11bを含んで構成されている。レッグサイドギャザー116においては、サイドシート11bの前後方向Lにおける両端部が表面シート11aに固定されている状態で弾性部材116aが収縮することにより、使用状態における股下域103に、着用者の肌に向かって起立し排泄物が表面シート11aの表面を伝って漏れることを防ぐ一対の防漏カフが形成される。
【0054】
ファスニングテープ21A,21Bは、着用状態において、ターゲットテープ30に止着されることにより、吸収性本体10を着用者に装着・固定するように構成されている。図1及び図2に示されるように、ファスニングテープ21A,21Bは、吸収性本体10の後胴回り域102における幅方向Wの両端部に設けられ、幅方向Wの外側に延出する部材である。ファスニングテープ21A,21Bは、吸収性本体10におけるサイドシート11b及びアウター不織布12bに挟まれて固定されており、弾性部材115aの後端よりも後側に設けられている。ファスニングテープ21A,21Bは、幅方向Wにおいて吸収性本体10の中央部分に対して互いに対称に設けられており、前後方向において同じ位置に設けられている。ファスニングテープ21A,21Bは、互いに同様の形状及び構造を有している。ファスニングテープ21A,21Bの各々は、本体部である基材シート211と、基材シート211の肌面側の表面に設けられた係合部212と、を有している。係合部212は、ターゲットテープ30に止着される部分である。係合部212は、例えば、複数の係合フックが設けられたフックシートである。
【0055】
ターゲットテープ30は、図1に示されるように、吸収性本体10の前胴回り域101に設けられ、ファスニングテープ21A、21Bの止着部210が止着されるターゲット部である。ターゲットテープ30は、前胴回り域101においてアウター不織布12bに貼付されている。
【0056】
図4に示されるように、ファスニングテープ21A,21Bは、内側シート部材11が内側に包囲されるように吸収性物品1が折り畳まれた(丸められた)折り畳み状態を維持するように、吸収性物品1の形状を固定するための固定部材としても機能する。例えば、吸収性物品1の使用後には、図4(A)に示されるように、ターゲットテープ30からファスニングテープ21A,21Bを外して吸収性物品1を展開状態にした後に、内側シート部材11が内側になるように吸収性物品1が手前側(前胴回り域101側)から丸められる。その後、図4(B)に示されるように、ファスニングテープ21A,21Bがアウター不織布12bの外表面と係合される。これにより、吸収性物品1は、折り畳み状態に維持される。このように、本実施形態では、ファスニングテープ21A,21Bの係合部212は、上記折り畳み状態において対向するアウター不織布12bの外表面と係合可能に構成されている。なお、各ファスニングテープ21A,21Bの係合部212は、ファスニングテープ21A,21B(基材シート211)の外表面と係合可能に構成されてもよい。この場合、一方のファスニングテープの係合部212を他方のファスニングテープの基材シート211の外表面(係合部212が設けられた側とは反対側の表面)に係合させることによっても、折り畳み状態を実現できる。いずれにしても、ファスニングテープ21A,21Bの係合部212が、基材シート211又はアウター不織布12bの外表面と係合されることにより、吸収性物品1が折り畳み状態に維持される。
【0057】
外側シート部材12及びファスニングテープ21A,21Bは、上述した折り畳み状態(図4の(B)参照)において外側に露出する外側露出部を有する。本実施形態では、外側シート部材12のうちのアウター不織布12bとファスニングテープ21A,21Bの基材シート211とが、外側露出部を構成している。
【0058】
また、外側露出部の少なくとも一部である第1部分は、単独では生分解性を有しないポリオレフィン樹脂を含んで構成されると共に、上述した添加剤が配合されることによって生分解性を有するように構成されている。上述した通り、本実施形態では、アウター不織布12bの全体が、第1部分を構成している。第1部分は、上記添加剤が含まれていることにより、PAS9017:2020に規定された生分解性の評価試験(紫外線促進耐候性試験)の開始時点から28日以内に第1部分のカルボニルインデックスが1以上を示すという生分解条件を満たすように構成されている。
【0059】
上記の生分解条件は、上述した条件(第1部分のカルボニルインデックスが1以上を示す条件)に加えて、上記評価試験の開始時点から14日以内に、第1部分の数平均分子量が5000以下になり、第1部分のz平均分子量が30000以下になり、第1部分の重量平均分子量の損失が90%以上になるという条件を更に含んでもよい。この場合、第1部分の生分解をより一層効果的に促進させることができる。
【0060】
第1部分が上述したような生分解条件を満たすか否かは、以下に述べるようなPAS9017:2020に準拠した試験方法によって確認することができる。なお、本試験方法は、ASTM D4329-13又はBS EN ISO4892-1の実験室耐候性規格に準拠する部分を含んでいる。試料(第1部分)は、冶具に装着される。また、空気、熱、紫外線を組み合わせて照射可能な紫外線促進耐候装置が使用される。装置の校正及び試験の手順は、BS EN ISO 4892-3又はASTM D4329-13に記載されているものを使用する。
<試料の厚みが0.25mm未満の場合>
紫外線促進耐候装置のサイクルは、以下の試験条件に設定される。
(1)放射照度:0.8W/m±0.02W/m
(2)UVサイクル時間:1時間
(3)ダークサイクル時間:23時間
(4)エアーチャンバー温度:60℃±2℃に設定し,連続して14日間以内の試験日数を確保し、各サンプルはN3を確保する。
<試料の厚みが0.25mm以上の場合>
上記試験条件は、ASTM D2565-16又はBS EN ISO 4892-1の実験室耐候性規格に従って以下のように調整される。
(1)放射照度:0.35W/m±0.02W/m、昼光フィルター(340nm)を使用
(2)UVサイクル時間:8時間
(3)ダークサイクル時間:16時間
(4)エアーチャンバー温度:60℃±2℃
(5)非絶縁型ブラックパネル温度:70℃±2℃に設定し、連続して28日間以内の試験日数を確保するものとする。
カルボニルインデックスは、赤外線分光測定とその結果のIRスペクトルを用いて決定される。スペクトルの測定は500~3000cm-1の領域、特に1420~1500cm-1と1650~1850cm-1の領域が焦点となる。解像度は、4cm以下に設定され、スキャン回数は32回以上に設定される。測定の際には、バックグラウンドノイズの除去、及びピーク面積の積分を算出可能なソフトウェアが使用される。カルボニルインデックスは、最低3回測定される。カルボニルインデックスの算出は、1850~1650cm-1と1500~1420cm-1のピーク面積の積分値から行う。各試料の平均カルボニルインデックスは、採取した3つのスペクトルから決定される。
試料の分子量(数平均分子量、z平均分子量、重量平均分子量)の測定は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)又はサイズ排除クロマトグラフィー(GPC-SEC)によって行われる。上記測定は、BS ISO 16014-4又はASTM D6474-20に従った調製で実施される。各試料の分析は、3回の平均値として報告されるものとする、収集した試料は、試験したポリオレフィン材料全体の3分の1をカバーするものでなければならない。試料は分子量分析に使用する溶媒に完全に溶解していなければならない。
【0061】
さらに、吸収性物品1全体を用いた下記の生分解性評価が、ASTM D 5988-18、BS EN ISO 17556:2019に従って実施されてもよい。その場合、上述した試験方法の条件に以下の追加条件を加えて調製されたサンプルを用いて評価を実施してもよい。サンプルはN3以上確保することが好ましく、侵襲試験を実施する場合はそれ以上に確保することが好ましい。
<追加条件>
・サンプル(吸収性物品1)に含まれる吸水材(吸収体13)を、生理食塩水によって100%保水された状態にする。
・サンプルを、廃棄時を模した状態にする。例えば、サンプルを図4(B)に示される折り畳み状態にする。
・サンプルを構成するシート資材(本実施形態では、内側シート部材11、外側シート部材12、防漏シート12a、アウター不織布12b等)が積層された状態を維持する(実際の吸収性物品1をサンプルとして用いて上記の折り畳み状態にした場合には、本条件を満たす。)。
【0062】
上記の追加条件において、「生理食塩水」は、蒸留水によって生成された0.9%の濃度のNaCl水溶液(aq)である。また、「100%保水された状態」とは、サンプルを上記の生理食塩水に30分間浸漬した後、吸水面(すなわち、吸収体13上の内側シート部材11の)を下側に向けた状態でメッシュ上に配置し、サンプル上にアクリル板(重し)を載せ、10kgの荷重を20分間かけた後、遠心型脱水機(例えば、株式会社コクサン製、上部排出型遠心分離機H-130E等)を用いて540rpmの回転速度で90秒間の脱水がされた後の状態を意味する。
【0063】
このような吸収性物品1全体の生分解評価は、サンプル(吸収性物品1)の全体をまるごと入れ込むことが可能な空間を有する評価装置内にサンプルを配置し、サンプルに対して、上述した紫外線促進耐候装置の試験条件と同様の試験条件による紫外線照射を実施することにより行われる。なお、サンプルに対する紫外線照射の均一性を確保するために、所定期間(例えば3日)毎に、サンプルを回転させてもよい。
【0064】
(作用効果)
吸収性物品1では、外側露出部の少なくとも一部である第1部分(本実施形態ではアウター不織布12bの全体)を単独では生分解性を有しないポリオレフィン樹脂で構成することにより、第1部分をポリ乳酸樹脂等の生分解性樹脂で構成する場合と比較して、吸収性物品1の低コスト化を図ると共に第1部分の資材強度を確保することができる。また、使用後の吸収性物品1は、通常、外側露出部が外側に露出し且つ内側シート部材11及び吸収体13が内側に丸められた状態(すなわち、図4(B)に示されるような折り畳み状態)で廃棄される。吸収性物品1では、上記の生分解条件を満たすように第1部分に生分解を促進する添加剤が含まれていることにより、廃棄後の吸収性物品1の第1部分を早期に分解させることができる。その結果、廃棄後の吸収性物品1の内部へと微生物を早期に浸透させることができるため、吸収性物品1全体の生分解を促進できる。従って、吸収性物品1によれば、コストの増大を抑制しつつ必要な資材強度を確保できると共に、廃棄後の吸収性物品1の生分解の促進を図ることができる。
【0065】
第1部分に配合されている添加剤は、好ましくは、上述した(f)フェノール系酸化防止安定剤を含有する。フェノール系酸化防止安定剤としては、公知の酸化防止安定剤(例えば、イルガノックス(Irganox)1076、イルガノックス1010等)を用いることができる。このようなフェノール系酸化防止安定剤は、添加剤による生分解促進機能を一定期間抑制し、分解の開始を遅らせて製品の保存可能期限を延ばす機能を有する。従って、上記構成によれば、想定される一定の製品保存期間の経過後に分解が開始するように、生分解の開始時期を適切に調整できる。なお、上述したような生分解の抑制機能を好適に発揮させる観点から、添加剤におけるフェノール系酸化防止安定剤の含有量は、ポリオレフィン樹脂及び添加剤の重量の合計に対して、0.02~0.15重量%に設定されることが好ましい。
【0066】
上述した通り、本実施形態では、生分解を促進するための添加剤は、2つのシート(アウター不織布12b及び防漏シート12a)に添加されている。ここで、各シートにおけるフェノール系酸化防止安定剤の含有量(重量%)は、外側に配置されているシートほど多くされてもよい。すなわち、本実施形態では、アウター不織布12bにおけるフェノール系酸化防止安定剤の含有量(重量%)は、防漏シート12aにおけるフェノール系酸化防止安定剤の含有量(重量%)よりも多くされてもよい。このように、通常時(保管時又は使用時)に外気に触れやすい部分(外側の部分)ほどフェノール系酸化防止安定剤の含有量を多くして生分解の抑制度合いを大きくすることにより、外側シート部材12の外側部分(アウター不織布12b)において予期せぬ生分解の促進が発生することを適切に防止できる。より具体的には、アウター不織布12bの生分解が、防漏シート12aの生分解よりも極端に早く進行してしまうことを防止し、アウター不織布12b及び防漏シート12aの生分解がバランス良く進行するように調整できる。
【0067】
第1部分(アウター不織布12b)の引張強度は、好ましくはMD(前後方向Lにおける引張強度):0.3N/mm以上且つCD(幅方向Wにおける引張強度):0.07N/mm以上である。引張強度は、以下の方法によって測定される。すなわち、長さ(前後方向Lの長さ)が約160mm、幅(幅方向Wの長さ)が25mmの試験片を採取し、引張試験機(例えば、定速伸長型引張試験機)を用いて当該試験片を上下の方向に引っ張り速度100mm/分、チャック間100mmで試験片が破断するまで引っ張る。試験片が破断した際に試験片に掛けられた最大の力を引張強度の値として取得する。なお、試験片の十分な長さ又は幅を確保できない場合には、試験片の長さ及び幅並びにチャック間は、任意に変更され得る。また、第1部分は、表面摩擦堅牢度試験における200g荷重下での50回往復摩擦によって毛羽立ちが発生しない耐久性を有する。このような第1部分の耐摩耗性は、JIS L0849に基づいて、染色物摩擦堅牢度試験機を用いて測定される。すなわち、幅(幅方向Wの長さ)300mm、長さ(前後方向Lの長さ)150mmにカットされた試験片を採取し、試験機のステージにセロハンテープで貼付する。摩擦子の摩擦面に布テープを貼付し、摩擦子を試験片の中央面上に静置する。往復回数を50回に設定し、評価を開始する。終了後、ステージから試験片を取り外し、表面状態を観察する。上記構成によれば、第1部分の資材強度を好適に確保できるため、通常時(保管時又は使用時)における吸収性物品1の変形及び破損等に対する安定性を向上させることができる。
【0068】
第1部分(アウター不織布12b)は、好ましくは0.1mm以上2.0mm以下の厚さを有する。第1部分の厚さを0.1mmよりも薄くした場合、肌触りが悪くなり易い。また、第1部分の厚さを2.0mmよりも厚くした場合、厚みが大きいことによって第1部分の分解速度が低下してしまう。よって、第1部分の厚さを0.1mm以上2.0mm以下の範囲に設定することにより、良好な肌触りを維持しつつ分解速度の低下を抑制できる。なお、第1部分の分解速度を向上させる観点から、第1部分の厚さは、好ましくは0.25mm以下に設定される。
【0069】
第1部分(アウター不織布12b)の紫外線透過率は、好ましくは15%以上である。上記条件を満たしているか否かは、例えば以下のようにして確認できる。例えば、280~400nmの波長範囲に含まれるいくつかの波長の紫外線をサンプルに照射し、分光光度計を用いて各波長の紫外線透過率を測定する。そして、各波長の紫外線透過率のうちの最小値が15%以上であればよい。上記構成によれば、吸収性物品1のうち第1部分よりも内側の部材(本実施形態では、防漏シート12a、吸収体13、及び内側シート部材11等)の生分解の促進因子となり得る紫外線を、第1部分を透過させて当該内側の部材へと好適に導くことができる。その結果、吸収性物品1の内部の生分解の開始時期を早めることができ、吸収性物品1全体の分解速度を向上させることができる。
【0070】
第1部分(アウター不織布12b)及び防漏シート12aは、好ましくは、フラジール試験によって測定される第1部分の通気度がフラジール試験によって測定される防漏シート12aの通気度よりも高くなるように構成される。フラジール試験とは、通気性試験(JIS L 1096)で定められた試験方法(フラジール法)に基づいて通気度(1cmの面積を1秒間でどの程度空気が通過するかを示す数値)を測定する試験である。また、第1部分及び防漏シート12aは、好ましくは、第1部分の密度が防漏シート12aの密度よりも低くなるように構成される。密度は、例えば以下のようにして測定される。すなわち、厚み計を用いて第1部分の厚みを測定し、物差しを用いて第1部分の寸法(面積)を測定し、電子天秤を用いて第1部分の質量を測定する。最後に、第1部分の「質量/体積(=厚み×面積)」が、密度として算出される。上記構成によれば、防漏シート12aの生分解の促進因子となり得る水、酸素等を、第1部分を透過させて防漏シート12aへと好適に導くことができる。その結果、吸収性物品1の内部(防漏シート12a)の生分解の開始時期を早めることができ、吸収性物品1全体の分解速度を向上させることができる。
【0071】
フラジール試験によって測定される第1部分(アウター不織布12b)の通気度は、好ましくは100cm/(cm・s)以上700cm/(cm・s)以下である。通気度を700cm/(cm・s)以下に抑えることにより吸収性物品1の機能(例えば、第1部分における排泄物の外漏れ防止等)が損なわれることを防止しつつ、通気度を100cm/(cm・s)以上にすることにより、生分解の促進因子となり得る水、酸素等を、第1部分を透過させて吸収性物品1の内部へと適切に導くことができる。その結果、吸収性物品1の内部の生分解の開始時期を早めることができ、吸収性物品1全体の分解速度を向上させることができる。
【0072】
第1部分(アウター不織布12b)の密度は、好ましくは0.02g/m以上0.1g/m以下である。密度を0.1g/m以下に抑えることにより吸収性物品1の機能(例えば、第1部分における排泄物の外漏れ防止等)が損なわれることを防止しつつ、密度を0.02g/m以上にすることにより、生分解の促進因子となり得る水、酸素等を、第1部分を透過させて吸収性物品1の内部へと適切に導くことができる。その結果、吸収性物品1の内部の生分解の開始時期を早めることができ、吸収性物品1全体の分解速度を向上させることができる。
【0073】
吸収体13(吸収性コア13a)は、生分解性の高吸水性ポリマー(SAP)を含んでいるため、吸収性物品1の第1部分(アウター不織布12b)を生分解させて微生物を吸収体13に到達させることにより、吸収体13を適切に生分解させることができる。
【0074】
吸収体13に含まれるSAPの生分解の促進因子は、第1部分の生分解の促進因子と同一であってもよい。本実施形態では、第1部分は、上述した添加剤を含むことにより、水、酸素、及び紫外線の各々を促進因子として分解(すなわち、炭素結合の切断等)が開始される。この場合、上記SAPは、第1部分と同一の促進因子(本実施形態では、水、酸素、及び紫外線)によって分解を開始するように構成されてもよい。上記構成によれば、同一の環境において、第1部分及び吸収体13(SAP)の一方のみが分解されずに残ってしまう状況の発生を防止できる。
【0075】
或いは、吸収体13に含まれるSAPの生分解の促進因子は、第1部分の生分解の促進因子と異なっていてもよい。より具体的には、吸収体13に含まれるSAPの生分解の促進因子が排泄物に由来する物質(例えば尿素)を含む一方で、第1部分の生分解の促進因子が排泄物に由来する物質を含まないように構成されてもよい。上記構成によれば、吸収性物品1に対して着用者が排泄物を排泄した時点から吸収体13(高吸水性ポリマー)の分解を開始させることができるため、吸収体13の生分解が完了するまでの期間を短縮できる。一方、第1部分の生分解の促進因子が排泄物由来の物質を含まないことにより、第1部分が排泄処理をトリガとして適切な分解開始時期(すなわち、吸収性物品1の廃棄後の時点)よりも前に分解開始することを防止することができる。
【0076】
吸収性物品1では、第1部分が上記添加剤によって生分解性を有するように構成されていることにより、吸収性物品1の全体の重量の90%以上を占める部分が生分解性を有するように構成されている。なお、上述した通り、第1部分については上記添加剤が配合されることによって生分解性に改質されているが、吸収性物品1のうち第1部分以外の部分については、第1部分と同様に上記添加剤が配合されることによって生分解性に改質されていてもよいし、上記添加剤以外の生分解性を有する材料で形成されることによって生分解性を有するように構成されてもよい。なお、吸収性物品1のうち生分解性を有しない部分の例としては、上述した糸ゴム等の弾性部材116aが挙げられる。上記構成によれば、廃棄後の吸収性物品1の生分解をより一層効果的に促進させることができる。
【0077】
上記評価試験(紫外線促進耐候性試験)により測定される防漏シート12aの劣化度は、好ましくは、上記評価試験により測定される第1部分の劣化度よりも高い。具体的には、上述した防漏シート12a及び第1部分の各々の劣化度は、上記評価試験を実施した後のカルボニルインデックスの値の大小によって比較される。カルボニルインデックスの値が大きいほど、劣化度が高いといえる。より好ましくは、防漏シート12aにおける添加剤の含有量(重量%)は、第1部分における添加剤の含有量(重量%)よりも多い。排泄物の漏れを防ぐ観点から、一般的に、防漏シート12aは分解しにくい構造を有する。上記構成によれば、このような防漏シート12aを生分解し易い構成にすることができる。その結果、吸収性物品1全体の分解速度を向上させることができる。
【0078】
また、ファスニングテープ21A,21Bの基材シート211は、アウター不織布12bと同様に、単独では生分解性を有しないポリオレフィン樹脂を主材料として含んでもよい。その上で、ファスニングテープ21A,21Bは、アウター不織布12bと同様の添加剤が配合されることによって、上述した生分解条件を満たす生分解性を有するように構成されてもよい。換言すれば、上述した第1部分は、ファスニングテープ21A,21Bの基材シート211を含んでもよい。上記構成によれば、廃棄後の吸収性物品1において、折り畳み状態を維持するように吸収性物品1の形状を固定するための固定部材として機能しているファスニングテープ21A,21Bの基材シート211の生分解を促進させることにより、基材シート211の破断等を発生させて折り畳み状態(図4(B)参照)を解除して吸収性物品1の内部を外側に露出させることができる。その結果、吸収性物品1の内側の部材に微生物が接触し易くなり、吸収性物品1全体の分解速度を向上させることができる。
【0079】
第1部分(ここでは、アウター不織布12b又はファスニングテープ21A,21Bの基材シート211)の上記評価試験(紫外線促進耐候性試験)が開始してから所定期間が経過した後の係合部212と当該係合部212に係合される外表面(アウター不織布12bの外表面又は他方のファスニングテープの基材シート211の表面)との係合強度は、好ましくは、上記評価試験が開始される前の係合部212と当該外表面との係合強度よりも低い。上記の「所定期間」は、例えば、上述した生分解条件で定められた期間(すなわち、生分解の開始時点から28日間)である。また、「係合部212と外表面との係合強度」は、係合部212と係合部212が係合されるアウター不織布12b又は基材シート211の外表面との係合の度合い(離れにくさ)を示す値である。上記係合強度は、例えば、40度の恒温器内で評価される。例えば、係合部212とアウター不織布12b、もしくは係合部212と基材シート211とを、それぞれ50mm四方にカットした後にそれぞれを係合させ、係合部212の側に800gの錘を吊り下げ、錘が落下するまでの耐久時間を測定することによって測定される値である。
【0080】
上記係合強度は、上記の折り畳み状態(図4(B)参照)を維持するために作用している。また、第1部分の生分解の促進が開始されてから所定期間後の係合部212と当該係合部212に係合される外表面との係合強度が、評価試験が開始される前の係合強度よりも低くなるように、当該第1部分の少なくとも一部の生分解性(例えば添加剤の添加量)が調整されている。すなわち、第1部分(アウター不織布12b及び各ファスニングテープ21A,21Bの基材シート211の少なくとも一方を含む)の資材強度が生分解によって低下する結果、上記の係合強度が第1部分の生分解前よりも低下するように構成されている。これにより、生分解の促進が開始されてから所定期間後に係合部212と外表面との係合が外れ易くなるため、上記折り畳み状態が解除される可能性を高めることができる。
【0081】
(吸収性物品の変形例)
以上、本開示の吸収性物品の実施形態について説明したが、吸収性物品の各構成の材料及び形状には、上述した材料及び形状に限らず、様々な材料及び形状を採用することができる。また、上述した実施形態の構成に含まれる一部の構成は、変更又は省略されてもよいし、他の構成が付加されてもよい。
【0082】
例えば、上記実施形態では、アウター不織布12b及び基材シート211の両方が第1部分に該当する形態を例示したが、アウター不織布12b及び基材シート211の一方のみが第1部分に該当するように構成されてもよい。
【0083】
また、吸収性物品の種類は、上記実施形態で例示したテープ型の使い捨ておむつに限られない。図5は、変形例に係る吸収性物品1Aの斜視図である。図5に示されるように、吸収性物品1Aは、パンツ型の使い捨ておむつであってもよい。吸収性物品1Aの吸収性本体10Aは、胴回り開口部H1と左右一対の脚周り開口部H2とが設けられている点において、吸収性物品1の吸収性本体10と主に相違している。胴回り開口部H1は、着用者の胴部が挿通される部分であり、一対の脚周り開口部H2は、着用者の左右の脚部が挿通される部分である。吸収性物品1Aが着用者に着用された状態において、着用者の胴部の左右両側に位置する部分には、上下方向に延在する係止部Eが設けられている。吸収性物品1Aは、使用後に係止部Eを引き裂くことによって、上述したテープ型の吸収性物品1(図1,2参照)のように展開可能とされている。
【0084】
吸収性物品1Aは、吸収性物品1が備えるファスニングテープ21A,21B及びターゲットテープ30を備えていない。一方、図6に示されるように、吸収性物品1Aのアウター不織布12bの背面側の幅方向中央部には、吸収性物品1Aをコンパクトに丸めた折り畳み状態に維持するための止着テープ22が設けられている。吸収性物品1Aでは、この止着テープ22が、折り畳み状態を維持するように吸収性物品1Aの形状を固定するための固定部材として機能する。例えば、図6(A)に示されるように、内側シート部材11が内側になり且つ止着テープ22が設けられたアウター不織布12bの背面側の部分が外側に露出するように吸収性物品1Aを丸めた後に、図6(B)に示されるように、止着テープ22の粘着面をアウター不織布12bの外表面に接着させる。これにより、吸収性物品1Aは、折り畳み状態に維持される。なお、図6(A)は、係止部Eを引き裂かずに吸収性物品1Aを丸める例を示しているが、吸収性物品1Aは、係止部Eを引き裂いた後に、吸収性物品1と同様の方法(図4(A)参照)によって丸められてもよい。
【0085】
また、吸収性物品は、布下着等の着用物品の内側に装着される使い捨ての吸収性パッドであってもよいし、女性用の生理用ナプキンであってもよい。なお、吸収性物品が生理用ナプキンである場合等には、上述したアウター不織布12bに相当するシート部材は省略されてもよく、防漏シート12aに相当するシート部材(フィルム)が吸収性物品の最外層を構成してもよい。この場合、防漏シート12aに相当するシート部材が、上述した第1部分に相当し得る。
【0086】
(包装体)
図7及び図8は、複数(一例として26個)の吸収性物品1がまとめて収容された包装体50の一例を示す図である。包装体50は、複数の吸収性物品1を包装するための包装シート51を備える。包装シート51は、例えば、複数の吸収性物品1を収容した状態において略直方体形状を有する袋状に形成される。包装シート51は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン又はポリエチレンテレフタレート等の合成樹脂によって構成される。一例として、包装体50には、図8に示されるように2段に分けて複数の吸収性物品1が収容され得る。収容される吸収性物品1は、内側シート部材11が内側になるように折り畳まれた二つ折り状態とされている。各段において、複数の吸収性物品1は、隣り合う吸収性物品1のアウター不織布12bの外表面同士が面接触するように配列されている。
【0087】
包装シート51の酸素透過率は、好ましくは、吸収性物品1の第1部分(例えば、アウター不織布12b)の酸素透過率よりも低い。より好ましくは、包装シート51の酸素透過率は、吸収性物品1の防漏シート12aの酸素透過率よりも低い。なお、酸素透過率は、JIS K 7126-2又はISO15105-2に基づいて、ガスクロマトグラフ法もしくは電解センサ法により測定される。
【0088】
包装シート51の紫外線透過率は、好ましくは、吸収性物品1の第1部分(例えば、アウター不織布12b)の紫外線透過率よりも低い。より好ましくは、包装シート51の紫外線透過率は、吸収性物品1の防漏シート12aの紫外線透過率よりも低い。上記の比較を行うための紫外線透過率は、例えば以下のようにして得られる。例えば、280~400nmの波長範囲に含まれるいくつかの波長の紫外線をサンプルに照射し、分光光度計を用いて各波長の紫外線透過率を測定する。そして、各波長の紫外線透過率のうちの最小値を比較対象として用いれればよい。
【0089】
包装シート51は、好ましくは、吸収性物品1が収容される内部空間(すなわち、包装シート51の内側の空間)を密封している。より具体的には、包装シート51には、開封用に一般的に設けられるミシン目状の貫通孔が形成されていない。
【0090】
包装体50によれば、吸収性物品1が使用前に包装シート51内に収容及び保管された状態(パッケージ状態)において、包装体50の内部に生分解の促進因子となり得る酸素、紫外線等が侵入することを抑制できる。これにより、吸収性物品1(第1部分)の生分解開始時期が早まってしまうこと、すなわち、吸収性物品1の製品寿命が予定された期間よりも短くなってしまうことを抑制することができる。従って、包装体50によれば、上述した吸収性物品1を好適に包装できる。なお、包装体50に収容される吸収性物品は、パンツ型の吸収性物品1Aであってもよいし、使い捨ておむつ以外の吸収性物品(例えば、吸収性パッド、生理用ナプキン等)であってもよい。また、包装シート51の形状は、収容される吸収性物品の種類及び数量等に応じて変更されてもよい。
【符号の説明】
【0091】
1,1A…吸収性物品、11…内側シート部材、12…外側シート部材、12a…防漏シート(中間シート)、12b…アウター不織布(外側露出部、第1部分)、13…吸収体、21A,21B…ファスニングテープ(固定部材、外側露出部、第1部分)、22…止着テープ(固定部材、外側露出部、第1部分)、50…包装体、51…包装シート、211…基材シート、212…係合部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8