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特開2024-168570画像処理装置、画像処理方法、及び画像処理プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168570
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】画像処理装置、画像処理方法、及び画像処理プログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/03 20060101AFI20241128BHJP
【FI】
A61B6/03 360T
A61B6/03 360J
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023085371
(22)【出願日】2023-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504150450
【氏名又は名称】国立大学法人神戸大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 彩
(72)【発明者】
【氏名】児玉 裕三
(72)【発明者】
【氏名】増田 充弘
(72)【発明者】
【氏名】村上 卓道
(72)【発明者】
【氏名】祖父江 慶太郎
【テーマコード(参考)】
4C093
【Fターム(参考)】
4C093AA22
4C093AA26
4C093CA18
4C093FB11
4C093FD03
4C093FF17
4C093FF18
(57)【要約】
【課題】医用画像に視認できない病変が存在する可能性があることを適切に提示することができる画像処理装置、画像処理方法、及び画像処理プログラムを得る。
【解決手段】画像処理装置は、医用画像に病変が存在する確率、及び前記医用画像における病変の見易さを表す視認度を導出し、確率が、医用画像に病変が存在することを表し、かつ視認度が、医用画像において病変が視認できないことを表す場合に、医用画像に視認できない病変が存在することを表す情報を報知する。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つのプロセッサを備える画像処理装置であって、
前記プロセッサは、
医用画像に病変が存在する確率、及び前記医用画像における病変の見易さを表す視認度を導出し、
前記確率が、前記医用画像に前記病変が存在することを表し、かつ前記視認度が、前記医用画像において前記病変が視認できないことを表す場合に、前記医用画像に視認できない病変が存在することを表す情報を報知する
画像処理装置。
【請求項2】
前記プロセッサは、更に、
前記確率が、前記医用画像に前記病変が存在することを表し、かつ前記視認度が、前記医用画像において前記病変が視認できないことを表す場合と、
前記確率が、前記医用画像に前記病変が存在することを表し、かつ前記視認度が、前記医用画像において前記病変が視認できることを表す場合と、
前記確率が、前記医用画像に前記病変が存在しないことを表す場合と、
のそれぞれの場合で、態様を異ならせて表示する制御を行う
請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記プロセッサは、
前記医用画像を入力とし、前記確率を出力とする学習済みモデルであって、複数組の前記医用画像及び前記確率を学習用データとして用いて学習された第1の学習済みモデルに対し、診断対象の医用画像を入力することによって前記確率を導出する
請求項1又は請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記プロセッサは、
前記医用画像を入力とし、前記視認度を出力とする学習済みモデルであって、複数組の前記医用画像及び前記視認度を学習用データとして用いて学習された第2の学習済みモデルに対し、診断対象の医用画像を入力することによって前記視認度を導出する
請求項1又は請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記プロセッサは、
前記確率が、前記医用画像に前記病変が存在することを表す場合、前記医用画像における前記病変が存在すると判断された領域部分を前記第2の学習済みモデルに対して入力することによって前記視認度を導出する
請求項4に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記プロセッサは、
前記医用画像における1つ以上の間接所見に基づいて、前記確率を導出する
請求項1又は請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記プロセッサは、
前記1つ以上の間接所見に基づいて、第1の前記確率を導出し、
前記医用画像に対して病変検出処理を実行することによって第2の前記確率を導出し、
前記第1の前記確率及び前記第2の前記確率に基づいて、第3の前記確率を導出し、
前記第3の前記確率が、前記医用画像に前記病変が存在することを表し、かつ前記視認度が、前記医用画像において前記病変が視認できないことを表す場合に、前記医用画像に視認できない病変が存在することを表す情報を報知する
請求項6に記載の画像処理装置。
【請求項8】
医用画像に病変が存在する確率、及び前記医用画像における病変の見易さを表す視認度を導出し、
前記確率が、前記医用画像に前記病変が存在することを表し、かつ前記視認度が、前記医用画像において前記病変が視認できないことを表す場合に、前記医用画像に視認できない病変が存在することを表す情報を報知する
処理を画像処理装置が備えるプロセッサが実行する画像処理方法。
【請求項9】
医用画像に病変が存在する確率、及び前記医用画像における病変の見易さを表す視認度を導出し、
前記確率が、前記医用画像に前記病変が存在することを表し、かつ前記視認度が、前記医用画像において前記病変が視認できないことを表す場合に、前記医用画像に視認できない病変が存在することを表す情報を報知する
処理を画像処理装置が備えるプロセッサに実行させるための画像処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、画像処理装置、画像処理方法、及び画像処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数種類の病変の検出処理が行われた医用画像における病変の検出領域に対し、予め定められた条件に基づいて優先度を判定し、判定した優先度に応じて、医用画像において検出された検出領域の表示形態を変化させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-029387号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
病変を有する患者の診断対象部位を撮影して得られた医用画像において、病変が医用画像に描出されない場合、もしくは、わずかに描出される場合がある。この場合、医用画像の読影者は、病変自体を視認できなくても病変の発生に伴う周辺組織の形状及び性状の変化に基づいて、病変の発生有無を判断する。従って、この場合、読影者を効果的に支援するために、医用画像に視認できない病変が存在する可能性があることを読影者に適切に提示することが好ましい。
【0005】
本開示は、以上の事情を鑑みてなされたものであり、医用画像に視認できない病変が存在する可能性があることを適切に提示することができる画像処理装置、画像処理方法、及び画像処理プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様の画像処理装置は、少なくとも一つのプロセッサを備える画像処理装置であって、プロセッサは、医用画像に病変が存在する確率、及び医用画像における病変の見易さを表す視認度を導出し、確率が、医用画像に病変が存在することを表し、かつ視認度が、医用画像において病変が視認できないことを表す場合に、医用画像に視認できない病変が存在することを表す情報を報知する。
【0007】
第2の態様の画像処理装置は、第1の態様の画像処理装置において、プロセッサは、更に、確率が、医用画像に病変が存在することを表し、かつ視認度が、医用画像において病変が視認できないことを表す場合と、確率が、医用画像に病変が存在することを表し、かつ視認度が、医用画像において病変が視認できることを表す場合と、確率が、医用画像に病変が存在しないことを表す場合と、のそれぞれの場合で、態様を異ならせて表示する制御を行う。
【0008】
第3の態様の画像処理装置は、第1の態様又は第2の態様の画像処理装置において、プロセッサは、医用画像を入力とし、確率を出力とする学習済みモデルであって、複数組の医用画像及び確率を学習用データとして用いて学習された第1の学習済みモデルに対し、診断対象の医用画像を入力することによって確率を導出する。
【0009】
第4の態様の画像処理装置は、第1の態様から第3の態様の何れか1態様の画像処理装置において、プロセッサは、医用画像を入力とし、視認度を出力とする学習済みモデルであって、複数組の医用画像及び視認度を学習用データとして用いて学習された第2の学習済みモデルに対し、診断対象の医用画像を入力することによって視認度を導出する。
【0010】
第5の態様の画像処理装置は、第4の態様の画像処理装置において、プロセッサは、確率が、医用画像に病変が存在することを表す場合、医用画像における病変が存在すると判断された領域部分を第2の学習済みモデルに対して入力することによって視認度を導出する。
【0011】
第6の態様の画像処理装置は、第1の態様又は第2の態様の画像処理装置において、プロセッサは、医用画像における1つ以上の間接所見に基づいて、確率を導出する。
【0012】
第7の態様の画像処理装置は、第6の態様の画像処理装置において、プロセッサは、1つ以上の間接所見に基づいて、第1の確率を導出し、医用画像に対して病変検出処理を実行することによって第2の確率を導出し、第1の確率及び第2の確率に基づいて、第3の確率を導出し、第3の確率が、医用画像に病変が存在することを表し、かつ視認度が、医用画像において病変が視認できないことを表す場合に、医用画像に視認できない病変が存在することを表す情報を報知する。
【0013】
第8の態様の画像処理方法は、医用画像に病変が存在する確率、及び医用画像における病変の見易さを表す視認度を導出し、確率が、医用画像に病変が存在することを表し、かつ視認度が、医用画像において病変が視認できないことを表す場合に、医用画像に視認できない病変が存在することを表す情報を報知する処理を画像処理装置が備えるプロセッサが実行するものである。
【0014】
第9の態様の画像処理プログラムは、医用画像に病変が存在する確率、及び医用画像における病変の見易さを表す視認度を導出し、確率が、医用画像に病変が存在することを表し、かつ視認度が、医用画像において病変が視認できないことを表す場合に、医用画像に視認できない病変が存在することを表す情報を報知する処理を画像処理装置が備えるプロセッサに実行させるためのものである。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、医用画像に視認できない病変が存在する可能性があることを適切に提示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】医療情報システムの概略構成を示すブロック図である。
図2】画像処理装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
図3】画像処理装置の機能的な構成の一例を示すブロック図である。
図4】第1の学習済みモデルを説明するための図である。
図5】病変が存在すると判断された領域の一例を示す図である。
図6】第2の学習済みモデルを説明するための図である。
図7】表示画面の一例を示す図である。
図8】診断支援処理の一例を示すフローチャートである。
図9】変形例に係る間接所見から病変が存在する確率を導出する処理を説明するための図である。
図10】変形例に係る間接所見及び病変検出処理に基づいて病変が存在する確率を導出する処理を説明するための図である。
図11】変形例に係る第2の学習済みモデルを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本開示の技術を実施するための形態例を詳細に説明する。
【0018】
まず、図1を参照して、本実施形態に係る医療情報システム1の構成を説明する。図1に示すように、医療情報システム1は、画像処理装置10、撮影装置12、及び画像保管サーバ14を含む。画像処理装置10、撮影装置12、及び画像保管サーバ14は、有線又は無線のネットワーク18を介して互いに通信可能な状態で接続される。画像処理装置10は、例えば、パーソナルコンピュータ又はサーバコンピュータ等のコンピュータである。
【0019】
撮影装置12は、被検体の診断対象とする部位を撮影することにより、その部位を表す医用画像を生成する装置である。撮影装置12の例としては、単純X線撮影装置、内視鏡装置、CT(Computed Tomography)装置、MRI(Magnetic Resonance Imaging)装置、及びPET(Positron Emission Tomography)装置等が挙げられる。本実施形態では、撮影装置12がCT装置であり、診断対象とする部位が腹部である例を説明する。すなわち、本実施形態に係る撮影装置12は、被検体の腹部のCT画像を、複数の断層画像からなる3次元の医用画像として生成する。撮影装置12により生成された医用画像は、ネットワーク18を介して画像保管サーバ14に送信され、画像保管サーバ14により保存される。
【0020】
画像保管サーバ14は、各種データを保存して管理するコンピュータであり、大容量の外部記憶装置及びデータベース管理用ソフトウェアを備える。画像保管サーバ14は、撮影装置12により生成された医用画像を、ネットワーク18を介して受信し、受信した医用画像を保存して管理する。画像保管サーバ14による画像データの格納形式及びネットワーク18を介した他の装置との通信は、DICOM(Digital Imaging and Communication in Medicine)等のプロトコルに基づいている。
【0021】
次に、図2を参照して、本実施形態に係る画像処理装置10のハードウェア構成を説明する。図2に示すように、画像処理装置10は、CPU(Central Processing Unit)20、一時記憶領域としてのメモリ21、及び不揮発性の記憶部22を含む。また、画像処理装置10は、液晶ディスプレイ等のディスプレイ23、キーボードとマウス等の入力装置24、及びネットワーク18に接続されるネットワークI/F(InterFace)25を含む。CPU20、メモリ21、記憶部22、ディスプレイ23、入力装置24、及びネットワークI/F25は、バス27に接続される。CPU20は、開示の技術に係るプロセッサの一例である。
【0022】
記憶部22は、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、又はフラッシュメモリ等によって実現される。記憶媒体としての記憶部22には、画像処理プログラム30が記憶される。CPU20は、記憶部22から画像処理プログラム30を読み出してからメモリ21に展開し、展開した画像処理プログラム30を実行する。
【0023】
また、記憶部22には、学習済みモデル32及び学習済みモデル34が記憶される。学習済みモデル32及び学習済みモデル34の詳細については後述する。
【0024】
ところで、病変を有する患者の診断対象部位を撮影して得られた医用画像において、病変が医用画像に描出されない場合、もしくは、わずかに描出される場合がある。この場合、医師等の読影者は、病変自体を視認できなくても病変の発生に伴う間接所見に基づいて、病変の発生有無を判断する。なお、本実施形態において、病変とは、がん、嚢胞、及び炎症等の直接的に治療を行う対象となる異常の領域を意味する。また、本実施形態において、間接所見とは、病変の発生に伴う病変の周辺組織の形状及び性状のうちの少なくとも一方の特徴を表す所見を意味する。例えば、読影者は、腹部CT画像の膵臓の領域において、膵がんが視認できなくても、間接所見の一例である膵管の拡張によって膵がんの発生を疑う。
【0025】
本実施形態に係る画像処理装置10は、読影者を効果的に支援するために、医用画像に視認できない病変が存在する可能性があることを読影者に提示する機能を有する。
【0026】
次に、図3を参照して、本実施形態に係る画像処理装置10の機能的な構成について説明する。図3に示すように、画像処理装置10は、取得部40、第1導出部42、第2導出部44、及び表示制御部46を含む。CPU20が画像処理プログラム30を実行することにより、取得部40、第1導出部42、第2導出部44、及び表示制御部46として機能する。
【0027】
取得部40は、診断対象の医用画像(以下、「診断対象画像」という)を、ネットワークI/F25を介して、画像保管サーバ14から取得する。
【0028】
第1導出部42は、学習済みモデル32を用いて、取得部40により取得された診断対象画像に病変が存在する確率(以下、「病変存在確率」という)を導出する。学習済みモデル32は、医用画像を入力とし、病変存在確率を出力とする学習済みモデルであって、複数組の医用画像及びその医用画像における病変存在確率を学習用データ(教師データと称されることもある)として用いて学習された学習済みモデルである。学習済みモデル32は、例えば、CNN(Convolutional Neural Network)によって構成される。本実施形態に係る学習済みモデル32は、病変存在確率として、病変が存在することを表す「病変あり」又は病変が存在しないことを表す「病変なし」を出力する。学習済みモデル32が、開示の技術に係る第1の学習済みモデルの一例である。
【0029】
図4に示すように、第1導出部42は、学習済みモデル32に対し、取得部40により取得された診断対象画像を入力する。学習済みモデル32は、入力された診断対象画像に対応する病変存在確率を出力する。これにより、第1導出部42は、病変存在確率を導出する。
【0030】
なお、学習済みモデル32は、0以上1以下の数値を出力してもよい。この場合、第1導出部42は、学習済みモデル32の出力が閾値(例えば、0.5)以上の場合、「病変あり」と判定し、閾値未満の場合、「病変なし」と判定してもよい。
【0031】
また、図5に示すように、第1導出部42は、学習済みモデル32から出力された病変存在確率が「病変あり」の場合、診断対象画像における病変が存在すると判断される領域部分を特定する。具体的には、第1導出部42は、学習済みモデル32が「病変あり」を出力した場合における寄与率が一定値以上の領域を、診断対象画像における病変が存在すると判断される領域部分として特定する。この場合の寄与率は、例えば、Grad-CAM(Gradient-weighted Class Activation Mapping)等の公知の技術によって算出することができる。図5の例では、破線の内側の領域、すなわち、膵臓の頭部とその周辺の領域に、病変が存在すると判断された例を示している。
【0032】
第2導出部44は、学習済みモデル34を用いて、取得部40により取得された診断対象画像における病変の見易さを表す視認度(以下、「病変視認度」という)を導出する。学習済みモデル34は、医用画像を入力とし、病変視認度を出力とする学習済みモデルであって、複数組の医用画像及びその医用画像における病変視認度を学習用データとして用いて学習された学習済みモデルである。学習済みモデル34は、例えば、CNNによって構成される。本実施形態に係る学習済みモデル34は、病変視認度として、病変が視認できることを表す「視認可能」又は病変が視認できないことを表す「視認不可能」を出力する。学習済みモデル34が、開示の技術に係る第2の学習済みモデルの一例である。
【0033】
図6に示すように、第2導出部44は、第1導出部42により特定された診断対象画像における病変が存在すると判断される領域部分を学習済みモデル34に対して入力する。学習済みモデル34は、入力の領域部分に対応する病変視認度を出力する。これにより、第2導出部44は、病変視認度を導出する。
【0034】
なお、第2導出部44は、0以上1以下の数値を出力してもよい。この場合、第2導出部44は、学習済みモデル34の出力が閾値(例えば、0.5)以上の場合、「視認可能」と判定し、閾値未満の場合、「視認不可能」と判定してもよい。
【0035】
表示制御部46は、第1導出部42により導出された病変存在確率が「病変あり」であり、かつ第2導出部44により導出された病変視認度が「視認不可能」である場合に、診断対象画像に視認できない病変が存在することを表す情報を報知する。具体的には、この場合、一例として図7に示すように、表示制御部46は、診断対象画像、第1導出部42により特定された診断対象画像における病変が存在すると判断される領域部分を表す情報、及び診断対象画像に視認できない病変が存在する可能性がある旨のメッセージをディスプレイ23に表示する制御を行う。図7の例では、第1導出部42により特定された診断対象画像における病変が存在すると判断される領域部分の輪郭を破線で表している。
【0036】
なお、表示制御部46は、以下の(1)、(2)、及び(3)のそれぞれの場合で、態様を異ならせて表示する制御を行ってもよい。
(1)病変存在確率が「病変あり」であり、かつ病変視認度が「視認不可能」である場合
(2)病変存在確率が「病変あり」であり、かつ病変視認度が「視認可能」である場合
(3)病変存在確率が「病変なし」の場合
【0037】
この場合、表示制御部46は、(1)では、前述したように、診断対象画像、第1導出部42により特定された診断対象画像における病変が存在すると判断される領域部分を表す情報、及び診断対象画像に視認できない病変が存在する可能性がある旨のメッセージをディスプレイ23に表示する制御を行う。また、この場合、(2)では、表示制御部46は、診断対象画像、及び第1導出部42により特定された診断対象画像における病変が存在すると判断される領域部分を表す情報をディスプレイ23に表示する制御を行う。また、この場合、(3)では、表示制御部46は、診断対象画像及び病変が存在しない可能性が高い旨のメッセージをディスプレイ23に表示する制御を行う。このように、表示制御部46が、(1)~(3)のそれぞれの場合を、区別可能に表示する制御を行うことによって、読影者は、病変の有無及び病変が視認可能であるか否かを容易に把握することができる。
【0038】
また、この形態例において、表示制御部46は、病変視認度に応じて診断対象画像における病変が存在すると判断される領域部分の輪郭の線の種別、太さ、又は色等を異ならせることによって病変視認度を区別可能にしてもよい。また、表示制御部46は、病変視認度毎に予め割り当てられたマークを病変が存在すると判断される領域部分の近傍に表示する制御を行うことによって病変視認度を区別可能にしてもよい。また、表示制御部46は、病変視認度が数値である場合、その数値をディスプレイ23に表示する制御を行ってもよい。
【0039】
また、表示制御部46は、第1導出部42により特定された診断対象画像における病変が存在すると判断される領域部分を予め設定された色で塗りつぶしてもよい。また、表示制御部46は、病変視認度が「視認可能」である領域部分については、その領域部分を表す情報を表示しなくてもよい。
【0040】
次に、図8を参照して、本実施形態に係る画像処理装置10の作用を説明する。CPU20が画像処理プログラム30を実行することによって、図8に示す診断支援処理が実行される。図8に示す診断支援処理は、例えば、ユーザにより実行開始の指示が入力された場合に実行される。
【0041】
図8のステップS10で、取得部40は、診断対象画像を、ネットワークI/F25を介して、画像保管サーバ14から取得する。ステップS12で、第1導出部42は、前述したように、学習済みモデル32を用いて、ステップS10で取得された診断対象画像の病変存在確率を導出する。ステップS14で、第1導出部42は、ステップS12で導出された病変存在確率が「病変あり」であるか否かを判定する。この判定が肯定判定となった場合、処理はステップS16に移行する。
【0042】
ステップS16で、第1導出部42は、前述したように、ステップS10で取得された診断対象画像における病変が存在すると判断される領域部分を特定する。ステップS18で、第2導出部44は、前述したように、学習済みモデル34を用いて、ステップS10で取得された診断対象画像の病変視認度を導出する。
【0043】
ステップS20で、表示制御部46は、ステップS18で導出された病変視認度が「視認不可能」であるか否かを判定する。この判定が否定判定となった場合、処理はステップS24に移行し、肯定判定となった場合、処理はステップS22に移行する。ステップS22で、表示制御部46は、診断対象画像、ステップS16で特定された領域部分を表す情報、及び診断対象画像に視認できない病変が存在する可能性がある旨のメッセージをディスプレイ23に表示する制御を行う。ステップS22の処理が終了すると、診断支援処理が終了する。ステップS24で、表示制御部46は、診断対象画像、及びステップS16で特定された領域部分を表す情報をディスプレイ23に表示する制御を行う。ステップS24の処理が終了すると、診断支援処理が終了する。
【0044】
ステップS14の判定が否定判定となった場合、処理はステップS26に移行する。ステップS26で、表示制御部46は、診断対象画像及び病変が存在しない可能性が高い旨のメッセージをディスプレイ23に表示する制御を行う。ステップS26の処理が終了すると、診断支援処理が終了する。
【0045】
以上説明したように、本実施形態によれば、医用画像に視認できない病変が存在する可能性があることを適切に提示することができる。
【0046】
なお、上記実施形態では、第1導出部42は、学習済みモデル32を用いて、病変存在確率を導出する場合について説明したが、これに限定されない。一例として図9に示すように、第1導出部42は、診断対象画像における1つ以上の間接所見に基づいて、病変存在確率を導出してもよい。図9の例では、第1導出部42は、膵臓の頭部に腫大が発生している及び膵臓の尾部に萎縮が発生しているという2つの間接所見に基づいて、病変存在確率として「病変あり」を導出している。この場合、膵臓にがんが存在することが疑われる。この場合、第1導出部42は、1つ以上の間接所見と病変名とが対応付けられたルックアップテーブルを用いて、病変存在確率を導出してもよい。
【0047】
この場合、第1導出部42は、医用画像を入力とし、間接所見を表す情報を出力とする学習済みモデルであって、複数組の医用画像及びその医用画像に存在する間接所見を表す情報を学習用データとして用いて学習された学習済みモデルを用いて、間接所見を導出してもよい。
【0048】
また、一例として図10に示すように、第1導出部42は、診断対象画像における1つ以上の間接所見に基づいて、第1の病変存在確率を導出し、診断対象画像に対して病変検出処理を実行することによって第2の病変存在確率を導出してもよい。この場合の病変検出処理は、上記実施形態と同様に学習済みモデル32を用いた処理でもよいし、公知の病変検出アルゴリズムを用いた処理でもよい。また、この場合、第1導出部42は、第1の病変存在確率及び第2の病変存在確率に基づいて、第3の病変存在確率を導出してもよい。例えば、第1導出部42は、第1の病変存在確率及び第2の病変存在確率の少なくとも一方が「病変あり」の場合、第3の病変存在確率として「病変あり」を導出する。また、第1導出部42は、第1の病変存在確率及び第2の病変存在確率の両方が「病変なし」の場合、第3の病変存在確率として「病変なし」を導出する。この場合、表示制御部46は、第3の病変存在確率が「病変あり」であり、かつ病変視認度が「視認不可能」である場合に、診断対象画像に視認できない病変が存在することを表す情報を報知してもよい。図10の例では、破線の内側の領域が病変検出処理によって検出された病変が存在すると判断された領域を表している。
【0049】
また、この場合、表示制御部46は、更に、診断対象画像において間接所見によって「病変あり」と判断された部分と、病変検出処理によって「病変あり」と判断された部分とを区別可能に表示する制御を行ってもよい。
【0050】
また、上記実施形態では、第2導出部44は、第1導出部42により特定された診断対象画像における病変が存在すると判断される領域部分を学習済みモデル34に対して入力することによって病変視認度を導出する場合について説明したが、これに限定されない。一例として図11に示すように、第2導出部44は、学習済みモデル32への入力画像と同じ画像(すなわち、診断対象画像)を学習済みモデル34に対して入力することによって病変視認度を導出してもよい。
【0051】
また、上記実施形態では、第2導出部44は、学習済みモデル34を用いて、診断対象画像における病変視認度を導出する場合について説明したが、これに限定されない。第2導出部44は、CT値の分散及び周辺領域とのCT値の平均値の差等に基づいて、病変視認度を導出してもよい。
【0052】
また、上記実施形態では、学習済みモデル32及び学習済みモデル34がCNNによって構成される場合について説明したが、これに限定されない。学習済みモデル32及び学習済みモデル34は、CNN以外の機械学習の手法によって構成されてもよい。
【0053】
また、上記実施形態では、診断対象画像として、CT画像を適用した場合について説明したが、これに限定されない。診断対象画像として、単純X線撮影装置により撮影された放射線画像、及びMRI装置により撮影されたMRI画像等のCT画像以外の医用画像を適用してもよい。
【0054】
また、上記実施形態に係る診断支援処理のステップS10~S12の処理は、ユーザにより実行開始の指示が入力される前に実行されてもよい。この場合、ユーザにより実行開始の指示が入力されると、ステップS14以降が実行され、画面表示が行われる。
【0055】
また、上記実施形態において、例えば、取得部40、第1導出部42、第2導出部44、及び表示制御部46といった各種の処理を実行する処理部(processing unit)のハードウェア的な構造としては、次に示す各種のプロセッサ(processor)を用いることができる。上記各種のプロセッサには、前述したように、ソフトウェア(プログラム)を実行して各種の処理部として機能する汎用的なプロセッサであるCPUに加えて、FPGA(Field Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なプロセッサであるプログラマブルロジックデバイス(Programmable Logic Device:PLD)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が含まれる。
【0056】
1つの処理部は、これらの各種のプロセッサのうちの1つで構成されてもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGAの組み合わせや、CPUとFPGAとの組み合わせ)で構成されてもよい。また、複数の処理部を1つのプロセッサで構成してもよい。
【0057】
複数の処理部を1つのプロセッサで構成する例としては、第1に、クライアント及びサーバ等のコンピュータに代表されるように、1つ以上のCPUとソフトウェアの組み合わせで1つのプロセッサを構成し、このプロセッサが複数の処理部として機能する形態がある。第2に、システムオンチップ(System on Chip:SoC)等に代表されるように、複数の処理部を含むシステム全体の機能を1つのIC(Integrated Circuit)チップで実現するプロセッサを使用する形態がある。このように、各種の処理部は、ハードウェア的な構造として、上記各種のプロセッサの1つ以上を用いて構成される。
【0058】
更に、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造としては、より具体的には、半導体素子などの回路素子を組み合わせた電気回路(circuitry)を用いることができる。
【0059】
また、上記実施形態では、画像処理プログラム30が記憶部22に予め記憶(インストール)されている態様を説明したが、これに限定されない。画像処理プログラム30は、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disc Read Only Memory)、及びUSB(Universal Serial Bus)メモリ等の記録媒体に記録された形態で提供されてもよい。また、画像処理プログラム30は、ネットワークを介して外部装置からダウンロードされる形態としてもよい。
【符号の説明】
【0060】
1 医療情報システム
10 画像処理装置
12 撮影装置
14 画像保管サーバ
18 ネットワーク
20 CPU
21 メモリ
22 記憶部
23 ディスプレイ
24 入力装置
25 ネットワークI/F
27 バス
30 画像処理プログラム
32、34 学習済みモデル
40 取得部
42 第1導出部
44 第2導出部
46 表示制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11