(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168579
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】ブランキングアパーチャアレイ機構、及び描画装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/027 20060101AFI20241128BHJP
H01J 37/147 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
H01L21/30 541B
H01L21/30 541W
H01J37/147 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023085390
(22)【出願日】2023-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】504162958
【氏名又は名称】株式会社ニューフレアテクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100119035
【弁理士】
【氏名又は名称】池上 徹真
(74)【代理人】
【識別番号】100141036
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 章
(74)【代理人】
【識別番号】100178984
【弁理士】
【氏名又は名称】高下 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】木村 駿生
(72)【発明者】
【氏名】馬場 裕一
(72)【発明者】
【氏名】森田 博文
【テーマコード(参考)】
5C101
5F056
【Fターム(参考)】
5C101BB03
5C101EE03
5C101EE13
5C101EE23
5C101EE48
5C101EE63
5C101EE68
5C101EE69
5C101EE70
5C101FF02
5C101GG19
5C101HH68
5F056AA07
5F056CB05
5F056EA03
(57)【要約】
【目的】マルチビームが通過するブランキングアパーチャアレイチップを配置した実装基板に流れる回路電流によって生じる磁場を相殺可能な装置を提供する。
【構成】本発明の一態様のブランキングアパーチャアレイ機構204は、マルチビームの入射を受け、マルチビームを個別にビームON状態とビームOFF状態とに切り替える複数のブランカーを有するブランキングアパーチャアレイチップ212と、ブランキングアパーチャアレイチップを支持すると共に、ブランキングアパーチャアレイチップに電源を供給する電源プレーン216と、電源プレーンの上層側若しくは下層側で電源プレーンと領域がオーバーラップするように配置され、電源プレーンにより生じた磁場を相殺するキャンセル層218と、が形成された実装基板211と、を備えたことを特徴とする。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチビームが入射した際に、前記マルチビームを個別にビームON状態とビームOFF状態とに切り替える複数のブランカーを有するブランキングアパーチャアレイチップと、
前記ブランキングアパーチャアレイチップを支持すると共に、
前記ブランキングアパーチャアレイチップに電源を供給する電源プレーンと、
前記電源プレーンの上層側若しくは下層側で前記電源プレーンと領域同士がオーバーラップするように配置され、前記電源プレーンにより生じた磁場を相殺するキャンセル層と、
が形成された実装基板と、
を備えたことを特徴とするブランキングアパーチャアレイ機構。
【請求項2】
前記キャンセル層は、前記電源プレーンと同一形状、及び同一面積に形成されることを特徴とする請求項1記載のブランキングアパーチャアレイ機構。
【請求項3】
前記キャンセル層は、面状に形成されることを特徴とする請求項1又は2記載のブランキングアパーチャアレイ機構。
【請求項4】
前記キャンセル層は、途中で方向を変えながら延びるように形成されることを特徴とする請求項1又は2記載のブランキングアパーチャアレイ機構。
【請求項5】
前記ブランキングアパーチャアレイ機構は、試料にパターンを描画する描画装置に搭載され、
前記電源プレーンに流れる電流に対応した逆電流が前記描画装置の制御回路から前記キャンセル層に供給されることを特徴とする請求項1又は2記載のブランキングアパーチャアレイ機構。
【請求項6】
マルチビームの入射を受け、前記マルチビームを個別にビームON状態とビームOFF状態とに切り替える複数のブランカーを有するブランキングアパーチャアレイチップと、
前記ブランキングアパーチャアレイチップを支持すると共に、
前記ブランキングアパーチャアレイチップに電源を供給する電源プレーンと、
前記電源プレーンの上層側若しくは下層側で前記ブランキングアパーチャアレイチップの近傍に配置され、前記マルチビームの位置ずれを補正する複数の補正コイルと、
が形成された実装基板と、
を備えたことを特徴とするブランキングアパーチャアレイ機構。
【請求項7】
描画対象の試料を載置するステージと、
請求項1又は6に記載のブランキングアパーチャアレイ機構と、
前記ブランキングアパーチャアレイ機構を通過したマルチビームのうち前記ビームOFF状態のビームを遮蔽する制限アパーチャ基板と、
前記制限アパーチャ基板を通過したマルチビームを前記試料に導く対物レンズと、
を備えたことを特徴とする描画装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、ブランキングアパーチャアレイ機構、及び描画装置に係り、例えば、マルチビームの軌道に影響を及ぼす磁場を相殺する手法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの微細化の進展を担うリソグラフィ技術は半導体製造プロセスのなかでも唯一パターンを生成する極めて重要なプロセスである。近年、LSIの高集積化に伴い、半導体デバイスに要求される回路線幅は年々微細化されてきている。ここで、電子線(電子ビーム)描画技術は本質的に優れた解像性を有しており、ウェハ等へ電子線を使って描画することが行われている。
【0003】
例えば、マルチビームを使った描画装置がある。1本の電子ビームで描画する場合に比べて、マルチビームを用いることで一度に多くのビームを照射できるのでスループットを大幅に向上させることができる。かかるマルチビーム方式の描画装置では、例えば、電子銃から放出された電子ビームを複数の穴を持ったマスクに通してマルチビームを形成し、各々、ブランキング制御され、遮蔽されなかった各ビームが光学系で縮小され、偏向器で偏向され試料上の所望の位置へと照射される。
【0004】
マルチビーム描画では、試料に入射する電子ビームの照射時間を個別に制御することによってパターンを形成する。そのため、照射時間がゼロ、若しくは所望の照射時間が経過したビームを個別にビームOFFにするための複数のブランカー機能を有するブランキングアパーチャアレイチップを配置した実装基板が描画装置に搭載される。
【0005】
かかる実装基板に流れる回路電流によって生じる磁場によって、ブランキングアパーチャアレイチップを通過する電子ビームに位置ずれが生じてしまうことがわかってきた。かかる位置ずれが生じると、描画精度を劣化させてしまう。
【0006】
ここで、鏡筒内の実装基板によって生じる磁場ではないが、電子鏡筒の周囲にキャンセルコイルを配置して、電子鏡筒外の外乱磁場を測定し、キャンセルコイルにより逆磁場を発生させて外乱磁場をキャンセルするといった技術が開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の一態様は、マルチビームが通過するブランキングアパーチャアレイチップを配置した実装基板に流れる回路電流によって生じる磁場を相殺可能な装置を提供する。また、かかる磁場に起因した電子ビームの位置ずれを補正可能な装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様のブランキングアパーチャアレイ機構は、
マルチビームが入射した際に、マルチビームを個別にビームON状態とビームOFF状態とに切り替える複数のブランカーを有するブランキングアパーチャアレイチップと、
ブランキングアパーチャアレイチップを支持すると共に、
ブランキングアパーチャアレイチップに電源を供給する電源プレーンと、
電源プレーンの上層側若しくは下層側で電源プレーンと領域同士がオーバーラップするように配置され、電源プレーンにより生じた磁場を相殺するキャンセル層と、
が形成された実装基板と、
を備えたことを特徴とする。
【0010】
また、キャンセル層は、電源プレーンと同一形状、及び同一面積に形成されると好適である。
【0011】
また、キャンセル層は、面状に形成されると好適である。
【0012】
或いは、キャンセル層は、途中で方向を変えながら延びるように形成されると好適である。
【0013】
また、ブランキングアパーチャアレイ機構は、試料にパターンを描画する描画装置に搭載され、
電源プレーンに流れる電流に対応した逆電流が描画装置の制御回路からキャンセル層に供給されると好適である。
【0014】
本発明の他の態様のブランキングアパーチャアレイ機構は、
マルチビームの入射を受け、マルチビームを個別にビームON状態とビームOFF状態とに切り替える複数のブランカーを有するブランキングアパーチャアレイチップと、
ブランキングアパーチャアレイチップを支持すると共に、
ブランキングアパーチャアレイチップに電源を供給する電源プレーンと、
電源プレーンの上層側若しくは下層側でブランキングアパーチャアレイチップの近傍に配置され、マルチビームの位置ずれを補正する複数の補正コイルと、
が形成された実装基板と、
を備えたことを特徴とする。
【0015】
本発明の一態様の描画装置は、
描画対象の試料を載置するステージと、
上述したブランキングアパーチャアレイ機構と、
ブランキングアパーチャアレイ機構を通過したマルチビームのうちビームOFF状態のビームを遮蔽する制限アパーチャ基板と、
制限アパーチャ基板を通過したマルチビームを試料に導く対物レンズと、
を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の一態様によれば、マルチビームが通過するブランキングアパーチャアレイチップを配置した実装基板に流れる回路電流によって生じる磁場を相殺できる。その結果、磁場に起因した電子ビームの位置ずれを抑制或いは低減できる。また、本発明の他の態様によれば、マルチビームが通過するブランキングアパーチャアレイチップを配置した実装基板に流れる回路電流によって生じる磁場に起因した電子ビームの位置ずれを補正できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施の形態1における描画装置の構成を示す概念図である。
【
図2】実施の形態1における成形アパーチャアレイ基板の構成を示す概念図である。
【
図3】実施の形態1におけるブランキングアパーチャアレイ機構の中央部の構成を示す断面図である。
【
図4】実施の形態1におけるブランキングアパーチャアレイチップのメンブレン領域内の構成の一部を示す上面概念図である。
【
図5】実施の形態1の個別ブランキング機構の一例を示す図である。
【
図6】実施の形態1におけるシフトレジスタの接続構成の一例を示す図である。
【
図7】実施の形態1におけるブランキングアパーチャアレイ機構の一例の上面図である。
【
図8】実施の形態1における動作電流とビームの位置ずれ量との関係の一例を示す。
【
図9】実施の形態1におけるブランキングアパーチャアレイ機構の断面の一例を示す図である。
【
図10】実施の形態1における実装基板に形成される各層の一例を示す図である。
【
図11】実施の形態1における実装基板に形成される各層の他の一例を示す図である。
【
図12】実施の形態1における実装基板に形成される各層の他の一例を示す図である。
【
図13】実施の形態1におけるブランキングアパーチャアレイ機構の他の一例の上面図である。
【
図14】実施の形態1における描画動作の一例を説明するための概念図である。
【
図15】実施の形態1におけるマルチビームの照射領域と描画対象画素との一例を示す図である。
【
図16】実施の形態1におけるマルチビーム描画動作の一例を説明するための図である。
【
図17】実施の形態2におけるブランキングアパーチャアレイ機構の一例の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、実施の形態では、荷電粒子ビームの一例として、電子ビームを用いた構成について説明する。但し、荷電粒子ビームは、電子ビームに限るものではなく、イオンビーム等の荷電粒子を用いたビームでも構わない。
【0019】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1における描画装置の構成を示す概念図である。
図1において、描画装置100は、描画機構150と制御系回路160を備えている。描画装置100は、マルチ荷電粒子ビーム描画装置の一例であると共に、マルチ荷電粒子ビーム露光装置の一例である。描画機構150は、電子鏡筒102(電子ビームカラム)と描画室103を備えている。電子鏡筒102内には、電子銃201、照明レンズ202、成形アパーチャアレイ基板203、ブランキングアパーチャアレイ機構204、縮小レンズ205、制限アパーチャ基板206、対物レンズ207、偏向器208、及び偏向器209が配置されている。
【0020】
ブランキングアパーチャアレイ機構204は、実装基板211、及びブランキングアパーチャアレイチップ212を有する。実装基板211の中央部には、マルチビーム20全体が通過可能な開口部が形成される。ブランキングアパーチャアレイチップ212は、かかる開口部を塞ぐように実装基板211に吊り下げられる。言い換えれば、ブランキングアパーチャアレイチップ212の外周部が実装基板211に支持されるように配置される。ブランキングアパーチャアレイチップ212は実装基板211上に配置されても構わない。
【0021】
描画室103内には、XYステージ105が配置される。XYステージ105上には、描画時(露光時)には描画対象基板となるマスク等の試料101が配置される。試料101には、半導体装置を製造する際の露光用マスク、或いは、半導体装置が製造される半導体基板(シリコンウェハ)等が含まれる。また、試料101には、レジストが塗布された、まだ何も描画されていないマスクブランクスが含まれる。
【0022】
また、XYステージ105上には、さらに、XYステージ105の位置測定用のミラー210が配置される。
【0023】
制御系回路160は、制御計算機110、メモリ112、偏向制御回路130、デジタル・アナログ変換(DAC)アンプユニット132,134、レンズ制御回路136、ステージ制御機構138、ステージ位置測定器139及び磁気ディスク装置等の記憶装置140,142を有している。制御計算機110、メモリ112、偏向制御回路130、レンズ制御回路136、ステージ制御機構138、ステージ位置測定器139及び記憶装置140,142は、図示しないバスを介して互いに接続されている。偏向制御回路130には、DACアンプユニット132,134及びブランキングアパーチャアレイ機構204が接続されている。偏向器209は、4極以上の電極により構成され、電極毎にDACアンプ132を介して偏向制御回路130により制御される。偏向器208は、4極以上の電極により構成され、電極毎にDACアンプ134を介して偏向制御回路130により制御される。照明レンズ202、縮小レンズ205、及び対物レンズ207といった例えば電磁レンズ群は、レンズ制御回路136により制御される。
【0024】
XYステージ105の位置はステージ制御機構138によって制御される図示しない各軸のモータの駆動によって制御される。ステージ位置測定器139は、ミラー210からの反射光を受光することによって、レーザ干渉法の原理でXYステージ105の位置を測長する。
【0025】
制御計算機110内には、ショットデータ生成部70、データ加工部72、転送処理部74、及び描画制御部76が配置される。ショットデータ生成部70、データ加工部72、転送処理部74、及び描画制御部76といった各「~部」は、処理回路を有する。かかる処理回路は、例えば、電気回路、コンピュータ、プロセッサ、回路基板、量子回路、或いは、半導体装置を含む。各「~部」は、共通する処理回路(同じ処理回路)を用いても良いし、或いは異なる処理回路(別々の処理回路)を用いても良い。ショットデータ生成部70、データ加工部72、転送処理部74、及び描画制御部76に入出力される情報および演算中の情報はメモリ112にその都度格納される。
【0026】
偏向制御回路130内には、偏向制御部50、電流測定部52、及びキャンセル回路制御部54が配置される。偏向制御部50、電流測定部52、及びキャンセル回路制御部54といった各「~部」は、処理回路を有する。かかる処理回路は、例えば、電気回路、コンピュータ、プロセッサ、回路基板、量子回路、或いは、半導体装置を含む。各「~部」は、共通する処理回路(同じ処理回路)を用いても良いし、或いは異なる処理回路(別々の処理回路)を用いても良い。偏向制御部50、電流測定部52、及びキャンセル回路制御部54に入出力される情報および演算中の情報は偏向制御回路130内の図示しないメモリにその都度格納される。
【0027】
描画装置100の描画動作は、描画制御部76によって制御される。また、各ショットの照射時間データの偏向制御回路130への転送処理は、転送処理部74によって制御される。
【0028】
また、描画装置100の外部から描画データ(チップデータ)が入力され、記憶装置140に格納される。チップデータには、チップパターンを構成する複数の図形パターンの情報が定義される。具体的には、図形パターン毎に、例えば、図形コード、座標、及びサイズ等が定義される。
【0029】
ここで、
図1では、実施の形態1を説明する上で必要な構成を記載している。描画装置100にとって、通常、必要なその他の構成を備えていても構わない。
【0030】
図2は、実施の形態1における成形アパーチャアレイ基板の構成を示す概念図である。
図2において、成形アパーチャアレイ基板203には、縦(y方向)p列×横(x方向)q列(p,q≧2)の穴(開口部)22が所定の配列ピッチでマトリクス状に形成されている。
図2の例では、例えば、縦横(x,y方向)に512×512列の穴22が形成される場合を示している。穴22の数は、これに限るものではない。例えば、64×64列の穴22が形成される場合であっても構わない。各穴22は、共に同じ寸法形状の矩形で形成される。或いは、同じ直径の円形であっても構わない。これらの複数の穴22を電子ビーム200の一部がそれぞれ通過することで、マルチビーム20が形成されることになる。言い換えれば、成形アパーチャアレイ基板203は、マルチビーム20を形成し、放出する。成形アパーチャアレイ基板203は、マルチビーム20の放出源の一例となる。
【0031】
図3は、実施の形態1におけるブランキングアパーチャアレイ機構の中央部の構成を示す断面図である。
図4は、実施の形態1におけるブランキングアパーチャアレイチップのメンブレン領域内の構成の一部を示す上面概念図である。なお、
図3と
図4において、制御電極24と対向電極26と制御回路41との位置関係は一致させて記載していない。
【0032】
ブランキングアパーチャアレイチップ212は、マルチビーム20の入射を受け、マルチビーム20を個別にビームON状態とビームOFF状態とに切り替える複数のブランカーを有する。具体的には、以下のように構成される。ブランキングアパーチャアレイチップ212は、シリコン等からなる半導体基板を用いたブランキングアパーチャアレイ基板31を有し、ブランキングアパーチャアレイ基板31の中央部に厚さの薄いメンブレン領域330が形成される。メンブレン領域330には、
図2に示した成形アパーチャアレイ基板203の各穴22に対応する位置にマルチビーム20のそれぞれのビームの通過用の通過孔25(開口部)が開口される。そして、複数の通過孔25のうち対応する通過孔25を挟んで対向する位置に制御電極24と対向電極26の組(ブランカー:ブランキング偏向器)がそれぞれ配置される。また、各通過孔25の近傍のブランキングアパーチャアレイ基板31内部には、各通過孔25用の制御電極24に偏向電圧を印加する制御回路41(ロジック回路)が配置される。各ビーム用の対向電極26は、グランド接続される。
【0033】
また、ブランキングアパーチャアレイ基板31上或いはブランキングアパーチャアレイ基板31中には、メンブレン領域330を挟んで例えばx方向の両側に制御回路44が配置される。
【0034】
また、
図4に示すように、各制御回路41は、制御信号用のnビット(例えば1ビット)のパラレル配線が接続される。各制御回路41は、照射時間制御信号(データ)用のnビットのパラレル配線の他、クロック(シフトクロック)信号、ロード信号、ショット信号および電源用の配線等が接続される。これらの配線等はパラレル配線の一部の配線を流用しても構わない。マルチビームを構成するそれぞれのビーム毎(通過孔25毎)に、制御電極24と対向電極26と制御回路41とによる個別ブランキング機構47が構成される。また、実施の形態1では、データ転送方式として、シフトレジスタ方式を用いる。シフトレジスタ方式では、マルチビームは複数のビーム毎に複数のグループに分割され、同じグループ内の複数のビーム用の複数のシフトレジスタは、直列に接続される。具体的には、メンブレン領域330にアレイ状に形成された複数の制御回路41は、例えば、同じ行或いは同じ列の中で所定のピッチでグループ化される。同じグループ内の制御回路41群は、
図4に示すように、直列に接続される。そして、グループ毎に配置されたパッド343からの信号がグループ内の制御回路41に伝達される。
【0035】
図5は、実施の形態1の個別ブランキング機構の一例を示す図である。
図5において、制御回路41内には、アンプ46(スイッチング回路の一例)が配置される。アンプ46の一例として、スイッチング回路となるCMOS(Complementary MOS)インバータ回路が配置される。CMOSインバータ回路の入力(IN)には、閾値電圧よりも低くなるL(low)電位(例えばグランド電位)と、閾値電圧以上となるH(high)電位(例えば、1.5V)とのいずれかが制御信号として印加される。実施の形態1では、CMOSインバータ回路の入力(IN)にL電位が印加される状態では、制御回路41に印加されるCMOSインバータ回路の出力(OUT)は正電位(Vdd)となり、対向電極26のグランド電位との電位差による電界により対応ビームを偏向し、制限アパーチャ基板206で遮蔽することでビームOFFになるように制御する。一方、CMOSインバータ回路の入力(IN)にH電位が印加される状態(アクティブ状態)では、CMOSインバータ回路の出力(OUT)はグランド電位となり、対向電極26のグランド電位との電位差が無くなり対応ビームを偏向しないので制限アパーチャ基板206を通過することでビームONになるように制御する。かかる偏向によってブランキング制御される。
【0036】
図6は、実施の形態1におけるシフトレジスタの接続構成の一例を示す図である。各ビーム用の制御回路41は、メンブレン領域330にアレイ状に形成される。そして、アレイ状に並ぶ複数の制御回路41は、左右に半分ずつに分離される。そして、例えば、右側半分の同じ行に並ぶ複数の制御回路41(x方向)の毎に、
図6に示すように、各行の制御回路41列が例えば8つのグループに順に振り分けられ、グループ化される。例えば、64列×64行のマルチビーム20で構成される場合、例えば右半分の32列の各行の1番目~32番目のビーム用の制御回路41が1,9,17,25と8ビーム間ピッチ毎に、データ列1(グループ)を構成する。同様に、2,10,18,26と8ビーム間ピッチ毎に、データ列2(グループ)を構成する。以下、同様に、データ列3(グループ)~データ列8(グループ)を構成する。そして、各グループ内の制御回路41群は、直列に接続される。アレイ状に並ぶ複数の制御回路41の左側半分についても同様である。
【0037】
そして、偏向制御回路130からブランキングアパーチャアレイ機構204に出力された行毎の信号が、実装基板211内の回路或いはブランキングアパーチャアレイチップ212内の制御回路44を介して分割されて、パラレルに各グループに伝達される。そして各グループの信号がグループ内の直列に接続された制御回路41に伝達される。具体的には、各制御回路41内に、シフトレジスタ11が配置され、同じグループの制御回路41内のシフトレジスタ11が直列に接続される。
図6の例では、データ列(グループ)毎に4個のシフトレジスタ11が直列に接続される。よって、nビットデータをシリーズで転送する場合、4n回のクロック信号によって、各ビーム用の照射時間制御信号(ON/OFF制御データ)がブランキングアパーチャアレイ機構204内で各ビーム用のシフトレジスタ11に転送(伝送)されることになる。例えば、512×512本のマルチビームを照射可能に構成する場合であれば、データ列(グループ)毎に例えば32個のシフトレジスタ11が直列に接続される。よって、nビットデータをシリーズで転送する場合、32n回のクロック信号によって、各ビーム用の照射時間制御信号が各ビーム用のシフトレジスタ11に伝送(転送)されることになる。
【0038】
そして、各個別ブランキング機構47が、各ビーム用のシフトレジスタ11に転送された照射時間制御信号に沿って、図示しないカウンタ回路を用いて当該ショットの照射時間をビーム毎に個別に制御する。或いは、1ショット分の最大照射時間Ttrを照射時間の異なる複数のサブショットに分割する。そして、各個別ブランキング機構47が、各ビーム用のシフトレジスタ11に転送された照射時間制御信号に沿って、複数のサブショットの中から1ショット分の照射時間になるようにサブショットの組合せを選択する。そして、選択されたサブショットの組合せが同じ画素に対して連続して照射されることにより、ビーム毎に1ショット分の照射時間を制御するようにしても好適である。1ショットを複数のサブショットに分割する場合、各サブショットの照射時間は予め決まっているので、図示しないロジック回路により制御された共通ブランキング偏向器が各サブショットの照射時間を制御することで、各個別ブランキング機構47だけで制御する場合よりも照射時間の精度を向上できる。逆に、カウンタ回路を用いて当該ショットの照射時間をビーム毎に個別に制御する場合、全ビームを一括してビームOFFに制御することは通常しないので、かかる場合、ロジック回路と共通ブランキング偏向器を省略しても構わない。また、1ショットを複数のサブショットに分割する場合、複数のサブショットの数だけ照射時間制御信号を転送することになる。その一方で、各ビーム用のシフトレジスタ11に転送された照射時間制御信号が複数のサブショットのON或いはOFFを選択するためだけの信号にできるので、1回の転送に使用するデータのビット数を小さくできる。
【0039】
次に、描画機構150の動作の具体例について説明する。電子銃201(放出源)から放出された電子ビーム200は、照明レンズ202によりほぼ垂直に成形アパーチャアレイ基板203全体を照明する。成形アパーチャアレイ基板203には、矩形の複数の穴22(開口部)が形成され、電子ビーム200は、すべての複数の穴22が含まれる領域を照明する。複数の穴22の位置に照射された電子ビーム200の各一部が、かかる成形アパーチャアレイ基板203の複数の穴22をそれぞれ通過することによって、例えば矩形形状のマルチビーム(複数の電子ビーム)20が形成される。かかるマルチビーム20は、ブランキングアパーチャアレイチップ212のそれぞれ対応するブランカー内を通過する。かかるブランカーは、それぞれ、設定された描画時間(照射時間)の間、ビームがON状態になるように個別に通過するビームをブランキング制御する。
【0040】
ブランキングアパーチャアレイチップ212を通過したマルチビーム20は、縮小レンズ205によって、縮小され、制限アパーチャ基板206に形成された中心の穴に向かって進む。ここで、ブランキングアパーチャアレイチップ212のブランカーによって偏向された電子ビームは、制限アパーチャ基板206の中心の穴から位置がはずれ、制限アパーチャ基板206によって遮蔽される。一方、ブランキングアパーチャアレイチップ212のブランカーによって偏向されなかった電子ビームは、
図1に示すように制限アパーチャ基板206の中心の穴を通過する。このように、制限アパーチャ基板206は、ブランキングアパーチャアレイチップ212のブランカーによってビームOFFの状態になるように偏向された各ビームを遮蔽する。そして、ビームONになってからビームOFFになるまでに形成された、制限アパーチャ基板206を通過したビームにより、1回分のショットの各ビームが形成される。制限アパーチャ基板206を通過したマルチビーム20は、対物レンズ207により焦点が合わされ、所望の縮小率のパターン像となり、偏向器208及び偏向器209によって、制限アパーチャ基板206を通過したマルチビーム20全体が同方向にまとめて偏向され、各ビームの試料101上のそれぞれの照射位置に照射される。また、例えばXYステージ105が連続移動している時、ビームの照射位置がXYステージ105の移動に追従するように偏向器208によってトラッキング制御が行われる。一度に照射されるマルチビーム20は、理想的には成形アパーチャアレイ基板203の複数の穴22の配列ピッチに上述した所望の縮小率を乗じたピッチで並ぶことになる。
【0041】
図7は、実施の形態1におけるブランキングアパーチャアレイ機構の一例の上面図である。
図7において、実装基板211は、ブランキングアパーチャアレイチップ212を支持する。具体的には、
図7に示すように、中央部に開口部が形成された実装基板211の開口部を塞ぐようにブランキングアパーチャアレイチップ212が配置される。
【0042】
上述したように、ブランキングアパーチャアレイチップ212内のメンブレン領域330にアレイ状に配置された複数の制御回路41は、x方向に左右半分ずつにわかれて制御される。そして、左半分について、さらに、同じ行に並ぶ複数の制御回路41の中でさらに複数のグループを構成する。同様に、右半分について、同じ行に並ぶ複数の制御回路41の中でさらに複数のグループを構成する。ブランキングアパーチャアレイチップ212には、左半分の複数のグループを制御する制御回路44とインターフェース回路13がメンブレン領域330を外れた外周部付近に配置される。同様に、ブランキングアパーチャアレイチップ212には、右半分の複数のグループを制御する制御回路44とインターフェース回路13がメンブレン領域330を外れた外周部付近に配置される。
【0043】
そして、実装基板211には、電源プレーン216とキャンセル層218とその他の信号回路とが形成される。電源プレーン216は、ブランキングアパーチャアレイチップ212に電源を供給する。電源プレーン216は、例えば、電圧Vddの各ロジック回路のトランジスタの電源となる。キャンセル層218は、電源プレーン216の上層側若しくは下層側で電源プレーン216と重なるように配置される。以下、具体的に説明する。
【0044】
実装基板211には、ブランキングアパーチャアレイチップ212のx方向の左側に、ブランキングアパーチャアレイチップ212の左半分の複数のグループに電源を供給する電源プレーン(面電源)216aの層と図示しない信号線の回路層とインターフェース回路217aとが形成される。電源プレーン216aは、左側のインターフェース回路13を介して左側の制御回路44に接続される。そして、電源プレーン216aは、制御回路44の電源として機能する。言い換えれば、電源プレーン216aは、制御回路44に電流を流す。図示しない信号線の回路層は、左側のインターフェース回路13を介して左側の制御回路44に接続される。そして、信号線の回路層は、制御回路44に制御信号を出力する。電源プレーン216aの層と信号線の回路層には、偏向制御回路130の偏向制御部50からインターフェース回路217aを介して電源と信号とが供給される。
【0045】
同様に、実装基板211には、ブランキングアパーチャアレイチップ212のx方向の右側に、ブランキングアパーチャアレイチップ212の右半分の複数のグループに電源を供給する電源プレーン(面電源)216bの層と図示しない信号線の回路層とインターフェース回路217bとが形成される。電源プレーン216aは、右側のインターフェース回路13を介して右側の制御回路44に接続される。そして、電源プレーン216bは、制御回路44の電源として機能する。言い換えれば、電源プレーン216bは、制御回路44に電流を流す。図示しない信号線の回路層は、右側のインターフェース回路13を介して右側の制御回路44に接続される。そして、信号線の回路層は、制御回路44に制御信号を出力する。電源プレーン216bの層と信号線の回路層には、偏向制御回路130の偏向制御部50からインターフェース回路217bを介して電源と信号とが供給される。
【0046】
上述したように、ブランキングアパーチャアレイチップ212内の各制御回路41にデータを伝送するためにシフトレジスタが駆動する。かかるシフトレジスタを駆動するために電力が消費される。そして、ビームON/OFFを行う際には、各制御回路41内のアンプ46に電流が流れる。これらの制御を高速に行うには、一度に多くの電流が流れ得る。そのため、実装基板211内には、電源プレーン216が形成される。ここで、実装基板211に流れる回路電流により磁場Bが発生する。これにより、マルチビーム20の位置ずれが発生する。
【0047】
図8は、実施の形態1における動作電流とビームの位置ずれ量との関係の一例を示す。
図8において、左縦軸は、動作電流を示し、右縦軸はビームの位置ずれ量を示す。
図8の例では、電圧Vddの左の電源プレーン216aの動作電流を変化させた場合のビームのx方向の位置ずれ量Δxとy方向の位置ずれ量Δyとを計測した結果を示す。
図8の例では、動作電流が大きくなると、それに伴って位置ずれ量Δxが例えば負側に大きくなる。
図7に示した電源プレーン216aでは、電流Iの多くが左から右に流れる。言い換えればx方向に流れる。y方向には流れない。或いは、y方向に流れたとしてもわずかな量に留まる。電圧Vddの左の電源プレーン216aの動作電流を変化させると、
図8に示すように、電圧Vddの左の電源プレーン216aの動作電流が流れるx方向では、動作電流の変化の大きさに応じて、ビームの位置ずれΔxが変化することがわかる。逆に、動作電流がほとんど流れないy方向では、位置ずれ量Δyの変化は小さいことがわかる。なお、実装基板211には、電圧Vddの各ロジック回路のトランジスタの電源となる電源プレーンの他に、信号線のI/O回路の電源となる電源プレーン等も形成される。I/O回路は、待機電流との差が小さいため、変動量が小さい。一方、電圧Vddの各ロジック回路は、待機電流との差が大きい。そのため、電圧Vddの各ロジック回路の方が、I/O回路よりもビーム位置変動量が大きくなる。よって、信号線のI/O回路の電源となる電源プレーンは、電圧Vddの各ロジック回路のトランジスタの電源となる電源プレーン216が与える影響に比べて十分に小さいことがわかっている。
【0048】
以上のように、実装基板211の電源プレーン216に電流が流れると磁場Bが発生する。そして、電源プレーン216に流れる電流の大きさによって、発生する磁場Bの大きさが変化する。磁場Bの大きさに応じて、ブランキングアパーチャアレイチップ212を通過するビームの位置ずれが変化してしまう。そこで、実施の形態1では、電源プレーン216により生じた磁場Bを相殺するキャンセルプレーン(キャンセル層)を実装基板211に形成する。
【0049】
図9は、実施の形態1におけるブランキングアパーチャアレイ機構の断面の一例を示す図である。
図9に示すように、実装基板211内において、x方向に左側のキャンセル層218aは、電源プレーン216aの上層側若しくは下層側で電源プレーン216aと領域同士がオーバーラップする(上方から見た場合に領域同士が重なる)ように配置される。同様に、x方向に右側のキャンセル層218bは、電源プレーン216bの上層側若しくは下層側で電源プレーン216bと領域同士がオーバーラップする(上方から見た場合に領域同士が重なる)ように配置される。
図9の例では、各キャンセル層218が電源プレーン216の下側に配置される場合を示している。
【0050】
電源プレーン216a(216b)に流れる電流と向きを逆にした同じ大きさの電流(逆電流)が描画装置100の偏向制御回路130(制御回路の一例)からキャンセル層218a(218b)に供給される。具体的には、電流測定部52が、偏向制御部50から電源プレーン216a(216b)に流れる電流を測定する。電流測定部52は、偏向制御部50での演算結果を入力し、例えば、左側(右側)のビームアレイのうちビームONにするビーム数を算出する。かかるビーム数から偏向制御部50から電源プレーン216a(216b)に流れる電流を予測(算出)する。そして、キャンセル回路制御部54は、予測(算出)された電流の逆電流をキャンセル層218a(218b)に流すように制御する。これにより、電源プレーン216a(216b)に流れる電流により生じる磁場Bとキャンセル層218a(218b)に流れる逆電流により生じる逆磁場B′とが方向を逆にして同一となる。これにより、キャンセル層218a(218b)に流れる逆電流により生じる逆磁場B′が、電源プレーン216a(216b)に流れる電流により生じる磁場Bを相殺する。
【0051】
キャンセル層218a(218b)に流す電流は、例えば、ショット毎に変動する変動電流(アクティブ電流)であっても良いし、例えば、後述するストライプ領域毎に設定される固定電流(スタティック電流)であっても良い。
【0052】
変動電流で制御する場合には、描画パターンにより電流値が変動するため、上述したように、各ショットでの電源プレーン216a(216b)に流れる電流に合わせて逆電流を流すことが望ましい。
【0053】
固定電流で制御する場合には、例えば、試料101を描画する前に予め空描画を行ってストライプ領域毎の電源プレーン216a(216b)に流れる電流の統計値(例えば平均値)を求め、かかる実際の描画処理時には、かかる統計値の逆電流をキャンセル層218a(218b)に流すようにすると良い。
【0054】
キャンセル層218a(218b)は、電源プレーン216a(216b)と同一形状、及び同一面積に形成されると好適である。これにより、磁場Bと逆磁場B′とを方向を逆にして完全に一致させることができる。
図7の例では、電源プレーン216a(216b)が矩形の面形状に形成される。言い換えれば、電源プレーン216a(216b)は、矩形の導電性材料のベタ膜で層が形成される。かかる場合、キャンセル層218a(218b)も同様の面形状に形成されると好適である。言い換えれば、キャンセル層218a(218b)は、矩形の導電性材料のベタ膜で層が形成される。
【0055】
電源プレーン216a(216b)及びキャンセル層218a(218b)が矩形に形成される場合、
図7に示す左側の電源プレーン216aでは、
図7の紙面左から右へと面内を平行に電流が流れる。よって、キャンセル層218aでは、
図7の紙面右から左へと面内を平行に電流を流す。また、
図7に示す右側の電源プレーン216bでは、
図7の紙面右から左へと面内を平行に電流が流れる。よって、キャンセル層218bでは、
図7の紙面左から右へと面内を平行に電流を流す。
【0056】
なお、実装基板211の層の構造上、電源プレーン216a(216b)と同じ形状にキャンセル層218a(218b)を形成することが困難な場合、線状或いは幅に対して長さが長い板状の複数のキャンセル層218a(218b)を並列に配置しても構わない。
【0057】
図10は、実施の形態1における実装基板に形成される各層の一例を示す図である。
図10の例では、実装基板211内に、電圧Vddの各ロジック回路のトランジスタの電源となる電源プレーン216の層と、キャンセル層218の他、I/O回路の電源となる電源プレーン層、およびこれらの層用の各グランド(GND)層が形成される。信号配線の層の図示は省略している。
図10の例では、下側からGND層、電圧Vddの電源プレーン216とI/O回路の電源となる電源プレーン層とをそれぞれ流れる電流によって形成される磁場を一緒に相殺するキャンセルVdd,I/Oで示すキャンセル層218、GND層、電圧Vddの電源プレーン216の層、GND層、I/O回路の電源となる電源プレーン層と、及びGND層の順で形成される場合を示す。各層の層間にはそれぞれ絶縁層が配置され、層間を絶縁する。
図10の例では、磁場Bに大きく影響する電圧Vddの電源プレーン216の層と、キャンセル層218とが、GND層を挟んで隣接される場合を示している。このように、電源プレーン216の層と、キャンセル層218とが近い位置に配置される場合であっても良い。
【0058】
なお、電源プレーン216を流れる電流は、ブランキングアパーチャアレイチップ212内で消費されるため、同様の負荷となる抵抗17をキャンセル層218と対応するGND層との間に配置すると好適である。抵抗17は、例えば、実装基板211上に配置すると好適である。これにより、層内或いは層間に形成するよりも寸法の自由度が上がり抵抗17を形成し易くできる。抵抗17とキャンセル層218及びGND層との間は、各層と直交する方向に延びる導電性のコンタクト配線により接続すればよい。これにより、キャンセル層218に電源プレーン216に流れる電流と同等の電流を逆方向に流すことができる。
【0059】
図11は、実施の形態1における実装基板に形成される各層の他の一例を示す図である。
図11の例では、実装基板211内に、電圧Vddの各ロジック回路のトランジスタの電源となる電源プレーン216の層と、電源プレーン216用のキャンセル層218、I/O回路の電源となる電源プレーン層、I/O電源となる電源プレーン層用のキャンセル層、およびこれらの層用の各グランド(GND)層が形成される。信号配線の層の図示は省略している。
図11の例では、下側からGND層、電圧Vddの電源プレーン216を流れる電流によって形成される磁場を相殺するキャンセルVddで示すキャンセル層218、GND層、電圧Vddの電源プレーン216の層、GND層、I/O回路の電源となる電源プレーン層と、GND層、I/O電源層を流れる電流によって形成される磁場を相殺するキャンセルI/Oで示すキャンセル層、及びGND層の順で形成される場合を示す。各層の層間にはそれぞれ絶縁層が配置され、層間を絶縁する。
図11の例では、電圧Vddの電源プレーン216の層用のキャンセル層と、I/O回路の電源となる電源プレーン層用のキャンセル層とを別々に形成し、距離を離した層に形成する場合を示す。このように、2つのキャンセル層の層間距離を大きくしても構わない。
図11の例では、
図10と同様、抵抗17とそのコンタクトが配置されるが、抵抗17の他、I/O電源層を流れる電流が消費される抵抗に合わせた抵抗が配置されるとより好適であるが、その図示を省略している。
【0060】
図12は、実施の形態1における実装基板に形成される各層の他の一例を示す図である。
図12の例では、下側からGND層、I/O回路の電源となる電源プレーン層と、GND層、電圧Vddの各ロジック回路のトランジスタの電源となる電源プレーン216の層、GND層、電圧Vddの電源プレーン216を流れる電流によって形成される磁場を相殺するキャンセルVddで示すキャンセル層218、GND層、I/O回路の電源となる電源プレーン層を流れる電流によって形成される磁場を相殺するキャンセルI/Oで示すキャンセル層、及びGND層の順で形成される場合を示す。信号配線の層の図示は省略している。各層の層間にはそれぞれ絶縁層が配置され、層間を絶縁する。
図12の例では、電圧Vddの電源プレーン216の層用のキャンセル層と、I/O回路の電源となる電源プレーン層用のキャンセル層とを別々に形成し、GND層を介して隣接した位置に形成する場合を示す。このように、2つのキャンセル層の層間距離を小さくしても構わない。
図12の例では、
図10と同様、抵抗17とそのコンタクトが配置されるが、抵抗17の他、I/O電源層を流れる電流が消費される抵抗に合わせた抵抗が配置されるとより好適であるが、その図示を省略している。
【0061】
上述した各例において、電圧Vddの各ロジック回路のトランジスタの電源となる電源プレーン216の層とI/O回路の電源となる電源プレーン層との2層の電源層を示したが、これに限るものではない。3層以上の複数の電源プレーンの層が形成されても構わない。また、各電源プレーンは用途別に形成され、それぞれ異なる電圧が印加される場合であっても構わない。
【0062】
上述した例のように、電圧Vddの各ロジック回路のトランジスタの電源となる電源プレーン216とI/O回路の電源となる電源プレーンとの数に応じたキャンセル層を形成すると好適である。言い換えれば、電圧Vddの各ロジック回路のトランジスタの電源となる電源プレーン216の層用のキャンセル層と、I/O回路の電源となる電源プレーン層用のキャンセル層とを形成する場合を示した。しかし、これに限るものではない。磁場Bに大きく影響する電圧Vddの各ロジック回路のトランジスタの電源となる電源プレーン216用のキャンセル層218だけを形成する場合であっても構わない。
【0063】
上述した例では、電源プレーン216として、例えば、矩形の面状の導電層を用いる場合を示したが、これに限るものではない。
図13は、実施の形態1におけるブランキングアパーチャアレイ機構の他の一例の上面図である。
図13において、電源プレーン216a(216b)の形状以外の内容は、
図7と同様である。
図13の例では、電源プレーン216a(216b)が途中で方向を変えながら延びるように形成される。電源プレーン216a(216b)の幅に対して、長さが十分長い形状となっている。かかる場合、キャンセル層218a(218b)も電源プレーン216a(216b)の形状と同様に、途中で方向を変えながら延びるように形成される。
図13の例では、電源プレーン216a(216b)及びキャンセル層218a(218b)は、インターフェース回路217aから直線でブランキングアパーチャアレイチップ212には向かわずに、延びる方向をいったん外側(上下方向)に向きを変えた後に、x方向に平行な方向に向きに変え、さらに、内側(上下方向)に向きを変えてブランキングアパーチャアレイチップ212付近まで延びる。このように、電源プレーン216a(216b)は様々な形状を取り得る。また、
図13の例では、左右それぞれ2つずつの電源プレーン216a(216b)が並列に形成される。必要な電流量が確保できるように複数の電源プレーン216a(216b)が並列に形成される。よって、キャンセル層218a(218b)は、電源プレーン216a(216b)と同じ形状で形成され、さらに同じ数だけ形成されると好適である。
【0064】
電源プレーン216a(216b)及びキャンセル層218a(218b)が途中で方向を変えながら延びるように形成される場合、
図13に示す左側の2つの電源プレーン216aの例えば上側の電源プレーン216aでは、
図13の紙面左から右斜め上方へと面内を平行に電流が流れ、途中で向きを変え、
図13の紙面左から右へと面内を平行に電流が流れ、再度、向きを変え、
図13の紙面左から右斜め下方へと面内を平行に電流が流れる。よって、対応するキャンセル層218aでは、
図13の紙面右から左斜め上方へと面内を平行に電流が流れ、途中で向きを変え、
図13の紙面右から左へと面内を平行に電流が流れ、再度、向きを変え、
図13の紙面右から左斜め下方へと面内を平行に電流が流れる。
【0065】
図14は、実施の形態1における描画動作の一例を説明するための概念図である。
図14に示すように、試料101の描画領域30(太線)は、アライメントマーク14の位置を基準に位置が定義される。
描画領域30(太線)は、例えば、y方向に向かって所定の幅で短冊状の複数のストライプ領域32に仮想分割される。
図14の例では、試料101の描画領域30が、例えばy方向に、1回のマルチビーム20の照射で照射可能な設計上の照射領域34(描画フィールド)のサイズと実質同じ幅サイズで複数のストライプ領域32に分割された場合を示している。設計上のマルチビーム20の照射領域34のx方向のサイズは、x方向のビーム数×x方向のビーム間ピッチで定義できる。矩形の照射領域34のy方向のサイズは、y方向のビーム数×y方向のビーム間ピッチで定義できる。
【0066】
まず、XYステージ105を移動させて、第1番目のストライプ領域32の左端、或いはさらに左側の位置にマルチビーム20の照射領域34が位置するように調整し、第1番目のストライプ領域32の描画が行われる。第1番目のストライプ領域32を描画する際には、XYステージ105を例えば-x方向に移動させることにより、相対的にx方向へと描画を進めていく。XYステージ105は例えば等速で連続移動させる。第1番目のストライプ領域32の描画終了後、ステージ位置を-y方向にストライプ領域32の幅のサイズだけ移動させる。
【0067】
そして、次に、第2番目のストライプ領域32の左端、或いはさらに左側の位置にマルチビーム20の照射領域34が位置するように調整し、XYステージ105を例えば-x方向に移動させることにより、相対的にx方向へと描画を進めていくことにより、第2番目のストライプ領域32の描画が行われる。
【0068】
また、
図14の例では、同じ方向に向かって各ストライプ領域32の描画を進める場合を示したが、これに限るものではない。例えば、x方向へと描画を進めたストライプ領域32の次に描画するストライプ領域32については、XYステージ105を例えばx方向に移動させることにより、-x方向に向かって描画を行う場合であっても構わない。このように交互に向きを変えながら描画することでステージ移動時間を短くでき、ひいては描画時間を短縮できる。1回のショットでは、成形アパーチャアレイ基板203の各穴22を通過することによって形成されたマルチビーム20によって、最大で各穴22と同数の複数のショットパターンが一度に形成される。
【0069】
また、
図14の例では、各ストライプ領域の描画処理のためのステージ移動を1回ずつ行う場合を示したが、これに限るものではない。同じ位置上を複数回ステージが移動するように多重描画を行っても好適である。その場合には、例えば、y方向にストライプ領域の幅の1/nのサイズのずらし量でずらしながら多重描画を行うと好適である。
【0070】
図15は、実施の形態1におけるマルチビームの照射領域と描画対象画素との一例を示す図である。
図15において、ストライプ領域32は、例えば、マルチビーム20のビームサイズでメッシュ状の複数のメッシュ領域に分割される。かかる各メッシュ領域が、描画対象の画素36(単位照射領域、照射位置、或いは描画位置)となる。描画対象画素36のサイズは、ビームサイズに限定されるものではなく、ビームサイズとは関係なく任意の大きさで構成されるものでも構わない。例えば、ビームサイズの1/n(nは1以上の整数)のサイズで構成されても構わない。
図15の例では、試料101の描画領域が、例えばy方向に、1回のマルチビーム20の照射で照射可能な照射領域34(描画フィールド)のサイズと実質同じ幅サイズで複数のストライプ領域32に分割された場合を示している。矩形の照射領域34のx方向のサイズは、x方向のビーム数×x方向のビーム間ピッチで定義できる。矩形の照射領域34のy方向のサイズは、y方向のビーム数×y方向のビーム間ピッチで定義できる。
図15の例では、例えば512×512列のマルチビームの図示を8×8列のマルチビームに省略して示している。そして、照射領域34内に、1回のマルチビーム20のショットで照射可能な複数の画素28(ビームの描画位置)が示されている。隣り合う画素28間のピッチがマルチビームの各ビーム間のピッチとなる。x,y方向にビームピッチのサイズで囲まれた矩形の領域で1つのサブ照射領域29(ピッチセル)を構成する。
図20の例では、各サブ照射領域29は、例えば4×4画素で構成される場合を示している。
【0071】
ショットデータ生成工程として、まず、ショットデータ生成部70は、画素36毎にショットデータを生成する。具体的には、以下のように動作する。まず、ショットデータ生成部70は、記憶装置140から描画データを読み出し、画素36毎に、当該画素36内のパターン面積密度ρ’を演算する。かかる処理は、例えば、ストライプ領域32毎に実行する。
【0072】
次に、ショットデータ生成部70は、まず、描画領域(ここでは、例えばストライプ領域32)を所定のサイズでメッシュ状に複数の近接メッシュ領域(近接効果補正計算用メッシュ領域)に仮想分割する。近接メッシュ領域のサイズは、近接効果の影響範囲の1/10程度、例えば、1μm程度に設定すると好適である。ショットデータ生成部70は、記憶装置140から描画データを読み出し、近接メッシュ領域毎に、当該近接メッシュ領域内に配置されるパターンのパターン面積密度ρ″を演算する。
【0073】
次に、ショットデータ生成部70は、近接メッシュ領域毎に、近接効果を補正するための近接効果補正照射係数Dp(x)(補正照射量)を演算する。未知の近接効果補正照射係数Dp(x)は、後方散乱係数η、しきい値モデルの照射量閾値Dth、パターン面積密度ρ″、及び分布関数g(x)を用いた、従来手法と同様の近接効果補正用のしきい値モデルによって定義できる。
【0074】
次に、ショットデータ生成部70は、画素36毎に、当該画素36に照射するための入射照射量D(x)(ドーズ量)を演算する。入射照射量D(x)は、例えば、基準照射量Dbaseに近接効果補正照射係数Dpとパターン面積密度ρ’とを乗じた値として演算すればよい。基準照射量Dbaseは、例えば、Dth/(1/2+η)で定義できる。以上により、描画データに定義される複数の図形パターンのレイアウトに基づいた、近接効果が補正された画素36毎の入射照射量D(x)を得ることができる。
【0075】
次に、ショットデータ生成部70は、画素36毎の照射時間を算出する。画素36毎の照射時間は、当該画素の入射照射量D(x)を電流密度Jで割ることで算出できる。
【0076】
データ加工工程として、データ加工部72は、得られた画素36毎の照射時間データをショット順に並び変えて、記憶装置142に格納する。転送処理部74は、ショット順に照射時間データを偏向制御回路130に転送する。
【0077】
描画工程として、描画制御部76による制御のもと、描画機構150は、XYステージ105を移動しながら、マルチビーム20を用いてXYステージ105上の試料101にパターンを描画する。マルチビーム描画では、描画処理を行いながら並行して後に描画処理を行う領域のショットデータを生成する。例えば、k番目のストライプ領域32の描画を行いながら、k+2番目のストライプ領域32用のショットデータを並行して生成する。かかる動作を繰り返しながら、全ストライプ領域32の描画を実施する。
【0078】
図16は、実施の形態1におけるマルチビーム描画動作の一例を説明するための図である。
図16の例では、マルチビーム20のそれぞれ1つのビーム照射位置を含みビーム間ピッチで囲まれた各サブ照射領域29内を4つの異なるビームで描画する場合を示している。また、
図16の例では、各サブ照射領域29内の1/4(照射に用いられるビーム本数分の1)の領域を描画する間に、XYステージ105が、例えば2ビームピッチ分の距離だけ移動する速度で、連続移動する描画動作を示している。
図16の例では、各サブ照射領域29が例えば4×4画素で構成される場合を示している。
【0079】
図16の例に示す描画動作では、例えば、XYステージ105がx方向に2ビームピッチ分の距離を移動する間に偏向器209によって順に照射位置(画素36)をシフトさせながらショットサイクルTでマルチビーム20を4ショットすることにより同じサブ照射領域29内の異なる4つの画素36を描画(露光)する。かかる4つの画素36を描画(露光)する間、照射領域34がXYステージ105の移動によって試料101との相対位置がずれないように、偏向器208によってマルチビーム20全体を一括偏向することによって、照射領域34をXYステージ105の移動に追従させる。言い換えれば、トラッキング制御が行われる。1回のトラッキングサイクルが終了するとトラッキングリセットして、前回のトラッキング開始位置に戻る。なお、各サブ照射領域29の左から1番目の画素列の描画は終了しているので、トラッキングリセットした後に、次回のトラッキングサイクルにおいてまず偏向器209は、各サブ照射領域29のまだ描画されていない例えば左から2番目の画素列を描画するように1番目の画素列とは異なるビームの描画位置を合わせる(シフトする)ように偏向する。ストライプ領域32の描画中、かかる動作を繰り返すことで、
図14の下図に示すように、順次マルチビーム20の照射領域34(34a~34o)の位置が移動していき、描画を行っていく。
【0080】
かかる描画処理の間、キャンセル層218a(218b)には、ショット毎、或いはストライプ毎等に制御された逆電流が流される。これにより、実装基板211に流れる回路電流によって生じる磁場Bが相殺された状態で、マルチビーム20はブランキングアパーチャアレイチップ212を通過できる。
【0081】
以上のように、実施の形態1によれば、マルチビーム20が通過するブランキングアパーチャアレイチップ212を配置した実装基板211に流れる回路電流によって生じる磁場Bを相殺できる。その結果、磁場Bに起因した電子ビームの位置ずれを抑制或いは低減できる。
【0082】
実施の形態2.
実施の形態1では、電源プレーンを流れる電流の逆電流を作ることで、磁場自体を相殺する構成について説明したが、回路電流により生じる磁場による電子ビームの位置ずれを抑制する構成はこれに限るものではない。
実施の形態2における描画装置の構成は
図1と同様である。また、以下、特に説明する点以外の内容は実施の形態1と同様である。
【0083】
図17は、実施の形態2におけるブランキングアパーチャアレイ機構の一例の上面図である。
図17において、ブランキングアパーチャアレイ機構204の実装基板211に形成されたキャンセル層218の代わりに、実装基板211に複数の補正コイル19a,19b,19c,19dを配置した点以外は、
図7と同様である。
図17において、複数の補正コイル19a,19b,19c,19dは、電源プレーン216a(216b)の上層側若しくは下層側でブランキングアパーチャアレイチップ212の近傍の磁場をキャンセルできる範囲に配置される。実施の形態2では、ブランキングアパーチャアレイチップ212の4辺に垂直な方向に補正コイルを配置することが望ましいが、その限りではない。
図10~12にて説明したキャンセル層218の代わりに、補正コイルの層を形成すればよい。なお、実施の形態2では、
図10~12に示す抵抗17及び抵抗17とキャンセル層とを接続するコンタクトは不要である。また、キャンセル層用のGND層も不要である。
【0084】
図17の例では、例えば、4つの補正コイル19a,19b,19c,19dによって、ブランキングアパーチャアレイチップ212が囲まれる場合を示している。補正コイル19a,19b,19c,19dは、4つに限らず、さらに多くても良い。4の整数倍の数で配置されると制御し易くて良い。複数の補正コイル19a,19b,19c,19dのうち、一部の補正コイル19a,19bは、電源プレーン216a,216bと一部が重なるように形成される。
【0085】
4つの補正コイル19a,19b,19c,19dによって、ブランキングアパーチャアレイチップ212を取り囲む場合、各補正コイル19は、ブランキングアパーチャアレイチップ212の4つの外周辺のうちそれぞれ1つに沿ってコイルの配線が配置されるように形成すると好適である。これにより、かかる外周辺毎に一定の磁場を作用させることができる。
【0086】
複数の補正コイル19a,19b,19c,19dは、キャンセル回路制御部54によって、独立に制御される。
【0087】
そして、実装基板211には、電源プレーンと216とキャンセル層218とが形成される。電源プレーン216は、ブランキングアパーチャアレイチップ212に電源を供給する。そして、上述したように、かかる実装基板211に流れる回路電流により磁場Bが発生する。これにより、マルチビーム20の位置ずれが発生する。
【0088】
実施の形態2では、かかる磁場B自体を相殺する代わりに、複数の補正コイル19a,19b,19c,19dに流す電流により生じる磁場によって、マルチビーム20の位置ずれを直接補正する。
【0089】
電源プレーン216a(216b)に流れる電流による生じる磁場によって、マルチビーム20が位置ずれしないように、描画装置100の偏向制御回路130(制御回路の一例)から複数の補正コイル19a,19b,19c,19dに電流が供給される。
【0090】
具体的には、電流測定部52が、偏向制御部50から電源プレーン216a(216b)に流れる電流を測定する。電流測定部52は、偏向制御部50での演算結果を入力し、例えば、左側(右側)のビームアレイのうちビームONにするビーム数を算出する。かかるビーム数から偏向制御部50から電源プレーン216a(216b)に流れる電流を予測(算出)する。そして、キャンセル回路制御部54は、予測(算出)された電流による磁場Bによって生じるマルチビーム20の位置ずれを補正する個別の電流を各補正コイル19に流すように制御する。これにより、電源プレーン216a(216b)に流れる電流により生じる磁場Bによって生じるマルチビーム20の位置ずれが、複数の補正コイル19a,19b,19c,19dに流れる電流により生じる磁場B′によって補正される。電源プレーン216a(216b)に流れる電流の大きさと、マルチビーム20の位置ずれ量と、これを補正する各補正コイル19に流す電流の向き及び大きさとの関係式或いは関係テーブルは、予め実験或いはシミュレーションにより求めておく。
【0091】
ショット毎或いはストライプ領域32毎に、複数の補正コイル19a,19b,19c,19dに流す電流を可変に制御する。ストライプ領域32毎に制御する場合には、上述したように、例えば、試料101を描画する前に予め空描画を行ってストライプ領域毎の電源プレーン216a(216b)に流れる電流の統計値(例えば平均値)を求め、実際の描画処理時には、かかる統計値の電流に対応する位置ずれ量を補正する各補正コイル19に流す電流の向き及び大きさで各補正コイル19を制御すればよい。
【0092】
以降、実施の形態1と同様に描画処理として、上述したショットデータ生成工程と
データ加工工程と、描画工程とを実施する。描画工程の際、各補正コイル19には、それぞれ個別に、ショット毎、或いはストライプ毎等に制御された電流が流される。これにより、位置ずれが補正された状態で、マルチビーム20はブランキングアパーチャアレイチップ212を通過できる。
【0093】
以上のように、実施の形態2によれば、マルチビーム20が通過するブランキングアパーチャアレイチップ212を配置した実装基板211に流れる回路電流によって生じる磁場に起因した電子ビーム(マルチビーム20)の位置ずれを補正できる。
【0094】
以上、具体例を参照しつつ実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。
【0095】
また、装置構成や制御手法等、本発明の説明に直接必要しない部分等については記載を省略したが、必要とされる装置構成や制御手法を適宜選択して用いることができる。例えば、描画装置100を制御する制御部構成については、記載を省略したが、必要とされる制御部構成を適宜選択して用いることは言うまでもない。
【0096】
その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更しうる全ての位置計測装置、荷電粒子ビーム描画装置、及びマーク位置計測方法は、本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0097】
11 シフトレジスタ
13 インターフェース回路
14 アライメントマーク
17 抵抗
19 補正コイル
20 マルチビーム
22 穴
24 制御電極
25 通過孔
26 対向電極
29 サブ照射領域
30 描画領域
31 ブランキングアパーチャアレイ基板
32 ストライプ領域
34 照射領域
36 画素
41 制御回路
44 制御回路
46 アンプ
50 偏向制御部
52 電流測定部
54 キャンセル回路制御部
70 ショットデータ生成部
72 データ加工部
74 転送処理部
76 描画制御部
100 描画装置
101 試料
102 電子鏡筒
103 描画室
105 XYステージ
110 制御計算機
112 メモリ
130 偏向制御回路
132,134 DACアンプユニット
136 レンズ制御回路
138 ステージ制御機構
139 ステージ位置測定器
140,142 記憶装置
150 描画機構
160 制御系回路
200 電子ビーム
201 電子銃
202 照明レンズ
203 成形アパーチャアレイ基板
204 ブランキングアパーチャアレイ機構
205 縮小レンズ
206 制限アパーチャ基板
207 対物レンズ
208 偏向器
209 偏向器
210 ミラー
211 実装基板
212 ブランキングアパーチャアレイチップ
216 電源プレーン
217 インターフェース回路
218 キャンセル層
330 メンブレン領域
343 パッド