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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168686
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】電波強度推定システム
(51)【国際特許分類】
   H04B 17/391 20150101AFI20241128BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20241128BHJP
   G06T 1/40 20060101ALI20241128BHJP
   H04B 17/318 20150101ALI20241128BHJP
   G06N 20/00 20190101ALI20241128BHJP
【FI】
H04B17/391
G06T7/00 350B
G06T1/40
H04B17/318
G06N20/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023085563
(22)【出願日】2023-05-24
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(71)【出願人】
【識別番号】304021277
【氏名又は名称】国立大学法人 名古屋工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】野々目 朋晃
(72)【発明者】
【氏名】奥田 陵太郎
(72)【発明者】
【氏名】森 昌吾
(72)【発明者】
【氏名】平山 裕
【テーマコード(参考)】
5B057
5L096
【Fターム(参考)】
5B057CB08
5B057DB09
5L096AA06
5L096HA11
5L096KA04
(57)【要約】
【課題】学習に要する時間を短くすること。
【解決手段】電波強度推定システムは、生成部と、推定部と、を備える。生成部は、平面座標における電波の強度を示すデータ、及び高さ方向に関する付加情報を教師データとして用いることで、平面座標での電波の強度を推定するアルゴリズムを機械学習により生成する。推定部は、アルゴリズムに付加情報を入力することで送信アンテナが用いられる領域における平面座標での電波の強度を推定する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信アンテナから送信される電波の強度を推定する電波強度推定システムであって、
平面座標における前記電波の強度を示すデータ、及び高さ方向に関する付加情報を教師データとして用いることで、前記平面座標での前記電波の強度を推定するアルゴリズムを機械学習により生成する生成部と、
前記生成部により生成された前記アルゴリズムに前記付加情報を入力することで前記送信アンテナが用いられる領域における前記平面座標での前記電波の強度を推定する推定部と、を備える電波強度推定システム。
【請求項2】
前記付加情報は、前記送信アンテナの高さ、及び前記電波を受信する受信アンテナの高さを示す情報を含む、請求項1に記載の電波強度推定システム。
【請求項3】
前記付加情報は、前記送信アンテナから床、及び天井の少なくとも1つで反射して前記受信アンテナに到達する反射波に関する情報を含む、請求項2に記載の電波強度推定システム。
【請求項4】
前記付加情報は、遮蔽物の高さを示す情報を含む、請求項1~請求項3のうちいずれか一項に記載の電波強度推定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電波強度推定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
送信アンテナ、及び受信アンテナの少なくとも1つの配置位置を定める場合、送信アンテナから送信された電波が受信アンテナで受信できるように配置位置を定める。送信アンテナから送信される電波の強度が高い位置ほど、受信アンテナは電波を受信しやすい。非特許文献1に開示の電波強度推定システムは、機械学習によって生成したモデルを用いて送信アンテナから送信される電波の強度を推定している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】林遼平、澤井薫、立岩斉明、田中智、藤澤克樹、「深層学習による都市環境の電波伝搬推定モデルに関する検討」、電子情報通信学会技術研究報告、2020年3月19日
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
非特許文献1では、3次元のCNNを用いて機械学習を行っている。3次元のCNNを用いる場合、学習に用いるデータも3次元のデータを用いる必要がある。このため、学習に要する時間が長くなりやすい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する電波強度推定システムは、送信アンテナから送信される電波の強度を推定する電波強度推定システムであって、平面座標における前記電波の強度を示すデータ、及び高さ方向に関する付加情報を教師データとして用いることで、前記平面座標での前記電波の強度を推定するアルゴリズムを機械学習により生成する生成部と、前記生成部により生成された前記アルゴリズムに前記付加情報を入力することで前記送信アンテナが用いられる領域における前記平面座標での前記電波の強度を推定する推定部と、を備える。
【0006】
アルゴリズムは、平面座標における電波の強度を示すデータ、及び付加情報を教師データとして用いることで生成されている。平面座標における電波の強度を示すデータを用いることで、2次元の教師データを用いて学習を行うことができる。このため、3次元の教師データを用いて学習を行う場合に比べて、学習に要する時間を短くすることができる。
【0007】
上記電波強度推定システムについて、前記付加情報は、前記送信アンテナの高さ、及び前記電波を受信する受信アンテナの高さを示す情報を含んでいてもよい。
上記電波強度推定システムについて、前記付加情報は、前記送信アンテナから床、及び天井の少なくとも1つで反射して前記受信アンテナに到達する反射波に関する情報を含んでいてもよい。
【0008】
上記電波強度推定システムについて、前記付加情報は、遮蔽物の高さを示す情報を含んでいてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、学習に要する時間を短くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は電波強度推定システムの概略構成図である。
図2図2は送信アンテナが用いられる領域を示す図である。
図3図3はDNNのアーキテクチャを示す図である。
図4図4は自由空間モデルで用いられる電波強度を説明するための図である。
図5図5はアルゴリズムを示す図である。
図6図6は送信アンテナが用いられる領域を示す図である。
図7図7はアルゴリズムを示す図である。
図8図8は自由空間モデルで用いられる電波強度を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[第1実施形態]
電波強度推定システムの第1実施形態について説明する。
<電波強度推定システム>
図1に示すように、電波強度推定システム10は、プロセッサ11、及び記憶部12を備える。プロセッサ11は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、又はDSP(Digital Signal Processor)である。記憶部12は、RAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)を含む。記憶部12は、補助記憶装置を含んでいてもよい。補助記憶装置は、例えば、ハードディスクドライブ、又はソリッドステートドライブである。記憶部12は、処理をプロセッサ11に実行させるように構成されたプログラムコードまたは指令を格納している。記憶部12、即ち、コンピュータ可読媒体は、汎用または専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。電波強度推定システム10は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェア回路によって構成されていてもよい。処理回路である電波強度推定システム10は、コンピュータプログラムに従って動作する1つ以上のプロセッサ、ASICやFPGA等の1つ以上のハードウェア回路、或いは、それらの組み合わせを含み得る。
【0012】
図2に示すように、電波強度推定システム10は、送信アンテナ21が用いられる領域R1の平面座標に対応付けて送信アンテナ21から送信される電波の強度を推定する。送信アンテナ21は、例えば、送信機に設けられる。送信機は、例えば、センサの検出結果を含んだ電波を送信アンテナ21から送信する。送信アンテナ21から送信される電波は、領域R1に設けられた受信アンテナ22で受信される。受信アンテナ22は、例えば、センサの検出結果を取得する受信機に設けられる。この場合、送信機及び受信機は、ワイヤレスセンサネットワークを構成する。以下の説明において、適宜、送信アンテナ21から送信される電波の強度を電波強度と称する。
【0013】
送信アンテナ21が用いられる領域R1は、屋内であってもよい。屋内は、例えば、工場内、家屋内、公共施設内、商業施設内、倉庫内である。送信アンテナ21が用いられる領域R1は、屋外であってもよい。
【0014】
電波強度推定システム10のユーザは、電波強度推定システム10によって領域R1の平面座標に対応付けられた電波強度を認識する。電波強度推定システム10のユーザは、領域R1の平面座標に対応付けられた電波強度に応じて、送信アンテナ21、受信アンテナ22、あるいは送信アンテナ21及び受信アンテナ22の配置位置を設定する。より詳しくは、電波強度推定システム10は、例えば屋内の無線通信機器の配置を検討する際に用いられる。事前に複数パターンで測定した教師データを用いて機械学習アルゴリズムを生成し、後にそのアルゴリズムを用いて様々な無線通信機器の配置パターンにおける電波強度を推定して、適切な無線通信機器の配置を検討することになる。
【0015】
<生成部>
図1に示すように、電波強度推定システム10は、生成部13を備える。生成部13は、領域R1の平面座標での電波強度を推定するアルゴリズムA1を機械学習により生成する。生成部13は、プロセッサ11が予め定められた処理を実行することで機能する機能部である。
【0016】
アルゴリズムA1は、DNN(Deep Neural Network)を用いた機械学習によって生成された学習済みモデルである。詳細にいえば、アルゴリズムA1は、順伝播型のDNNを用いた機械学習によって生成されている。機械学習は、例えば、教師データを用いた教師有り学習、あるいは、半教師有り学習である。また、例えばEM DeepRayを電波強度推定に用いても良い(”EM DeepRay: An Expedient, Generalizable, and Realistic Data-Driven Indoor Propagation Model” IEEE TRANSACTIONS ON ANTENNAS AND PROPAGATION, VOL. 70, NO. 6, June 2022 参照)。本技術を用いれば2次元アルゴリズムを利用できる。
【0017】
図3に示すように、DNNは、入力層31と、隠れ層32と、出力層33と、を備える。入力層31には、教師データ41が入力される。隠れ層32は、教師データ41の特徴量抽出を行う。出力層33は、推測結果を出力する。入力層31には、CNN(Convolutional Neural Network)によって教師データ41から抽出した特徴量が入力されてもよい。
【0018】
入力層31に入力される教師データ41は、誘電率マップ42、導電率マップ43、距離マップ44、及び自由空間モデル45に、正解データとして電波強度マップ46を対応付けたデータである。誘電率マップ42、導電率マップ43、距離マップ44、自由空間モデル45、及び電波強度マップ46は、例えば、送信アンテナ21が用いられ得る環境を平面視した場合のマップである。これらのマップは、複数のグリッドに分割されている。グリッドは、環境の平面座標に対応している。環境の平面座標は、環境の水平方向の位置を表す座標である。誘電率マップ42、導電率マップ43、距離マップ44、自由空間モデル45、及び電波強度マップ46は、ヒートマップである。誘電率マップ42、導電率マップ43、距離マップ44、自由空間モデル45、及び電波強度マップ46は、送信アンテナ21が用いられ得る環境を平面で表した2次元データである。
【0019】
誘電率マップ42は、送信アンテナ21及び物体が存在する環境を平面視した場合の誘電率(ε)を表すマップである。物体は、例えば、環境に存在する壁、柱等の構造物である。誘電率マップ42は、例えば、環境の平面座標に対応した誘電率を濃淡によって表している。これにより、送信アンテナ21及び物体が存在する環境の誘電率を画像データとして捉えることができる。誘電率マップ42は、例えば、誘電率の高い位置ほど濃淡が薄い。誘電率マップ42は、誘電率を色彩によって表したものであってもよい。
【0020】
導電率マップ43は、送信アンテナ21及び物体が存在する環境を平面視した場合の導電率(σ)[S/m]を表すマップである。導電率マップ43の位置は、環境の平面座標を表す。導電率マップ43は、例えば、環境の平面座標に対応した導電率を濃淡によって表している。これにより、送信アンテナ21及び物体が存在する環境の導電率を画像データとして捉えることができる。導電率マップ43は、例えば、導電率の高い位置ほど濃淡が薄い。導電率マップ43は、導電率を色彩によって表したものであってもよい。
【0021】
距離マップ44は、送信アンテナ21が存在する環境を平面視した場合の送信アンテナ21と環境の各位置との距離(d)[m]を表すマップである。距離マップ44は、例えば、送信アンテナ21からの距離を濃淡によって表している。これにより、送信アンテナ21との距離を画像データとして捉えることができる。距離マップ44は、例えば、送信アンテナ21から遠い位置ほど濃淡が薄い。距離マップ44は、送信アンテナ21との距離を色彩によって表したものであってもよい。本実施形態では送信アンテナ21の位置は固定として、距離マップ44は1つである。
【0022】
自由空間モデル45は、送信アンテナ21が存在する環境であって物体が存在しないと仮定した場合の電波強度(RSSI)[dB]を示すマップである。自由空間モデル45の位置は、環境の平面座標を表す。自由空間モデル45は、例えば、環境の平面座標に対応した電波強度を濃淡によって表している。自由空間モデル45は、例えば、電波強度が高い位置ほど濃淡が濃い。自由空間モデル45は、電波強度を色彩によって表したものであってもよい。
【0023】
自由空間モデル45で用いられる電波強度は、フリスの公式を用いて(1)~(3)式によって算出されている。
【0024】
【数1】
は、送信アンテナ21の利得である。Gは、受信アンテナ22の利得である。Pは、送信電力である。λは、電波の波長である。dは、電波のうち直接波が送信アンテナ21から受信アンテナ22に到達するまでに通過する距離である。dは、電波のうち床による反射波が送信アンテナ21から受信アンテナ22に到達するまでに通過する距離である。Pは、直接波による電波強度である。Pは、反射波による電波強度である。Pは、PとPを合成した電波強度であり、自由空間モデル45で用いられる電波強度である。
【0025】
図4に示すように、距離d,dは、送信アンテナ21の高さh、受信アンテナ22の高さh、及び送信アンテナ21と受信アンテナ22との水平方向に対する距離dから算出することができる。送信アンテナ21の高さhは床から送信アンテナ21までの高さである。受信アンテナ22の高さhは、床から受信アンテナ22までの高さである。
【0026】
このように、自由空間モデル45は、送信アンテナ21の高さh、及び受信アンテナ22の高さhに関する付加情報を用いて算出された電波強度を用いて作成されている。詳細にいえば、自由空間モデル45は、送信アンテナ21の高さh、と受信アンテナ22の高さhの差に影響をうける直接波に関する付加情報と、送信アンテナ21から床で反射して受信アンテナ22に到達する反射波に関する付加情報を用いて作成されている。このように作成された自由空間モデル45を教師データ41とすることで、教師データ41は、領域R1における高さ方向に関する付加情報を含む。
【0027】
正解データである電波強度マップ46は、送信アンテナ21及び物体が存在する環境を平面視した場合の電波強度を表すマップである。電波強度マップ46は、平面座標における電波強度を示すデータである。電波強度マップ46の位置は、環境の平面座標を表す。電波強度マップ46は、例えば、環境の平面座標に対応した電波強度を濃淡によって表している。これにより、送信アンテナ21及び物体が存在する環境の電波強度を画像データとして捉えることができる。電波強度マップ46は、例えば、電波強度が高い位置ほど濃淡が濃い。電波強度マップ46は、電波強度を色彩によって表したものであってもよい。
【0028】
教師データ41は、環境の条件を変更した場合に得られる誘電率マップ42、導電率マップ43、距離マップ44、及び自由空間モデル45に、当該条件の場合の電波強度マップ46を正解データとして対応付けたデータである。即ち、教師データ41は、種々の条件を変更した場合に対応した複数のデータである。条件は、送信アンテナ21の高さh、受信アンテナ22の位置、受信アンテナ22の高さh、環境に存在する物体の位置、環境に存在する物体の種類、及び環境に存在する物体の大きさを含む。
【0029】
本実施形態で高さ方向に関する付加情報としては、送信アンテナ21の高さh、及び受信アンテナ22の高さhをさまざまに変えた複数の自由空間モデル45ともいえる。本実施形態では複数の自由空間モデル45と、それに紐づけた正解データとしての電波強度マップ46を用意する。教師データ41を作成する際の測定時は、アンテナ高さをさまざまに変える毎に各平面座標の電波強度を測定し、2次元データの自由空間モデル45とそれに紐づけた2次元データの電波強度マップ46を複数セット用意する。いずれも2次元データであるので、機械学習において2次元アルゴリズムを用いる事ができる。
【0030】
上記した教師データ41を入力層31に入力することによって、アルゴリズムA1として学習済みモデルが得られる。アルゴリズムA1は、例えば、記憶部12に記憶される。
<推定部>
図1に示すように、電波強度推定システム10は、推定部14を備える。推定部14は、プロセッサ11が予め定められた処理を実行することで機能する機能部である。
【0031】
図5に示すように、推定部14は、生成部13により生成されたアルゴリズムA1に入力データ51を入力することで、送信アンテナ21が用いられる領域R1の平面座標に対応付けて送信アンテナ21から送信される電波強度を推定する。
【0032】
電波強度推定システム10のユーザは、送信アンテナ21が用いられる領域R1における送信アンテナ21の高さh、受信アンテナ22の位置、及び受信アンテナ22の高さhを定める。そして、送信アンテナ21の高さh、受信アンテナ22の位置、及び受信アンテナ22の高さh、及び領域R1に存在する物体に応じた誘電率マップ52、導電率マップ53、距離マップ54、及び自由空間モデル55を生成する。これらを入力データ51として、アルゴリズムA1に入力することで、送信アンテナ21が用いられる領域R1に対応した電波強度マップ56が出力される。この電波強度マップ56は、送信アンテナ21が用いられる領域R1の平面座標に応じて電波強度が対応付けられたマップである。
【0033】
誘電率マップ52は、教師データ41として用いた誘電率マップ42と同様の手法により、領域R1の誘電率をマップ化して得られたものである。図5に示す例では、壁などの物体によって誘電率が変化している。
【0034】
導電率マップ53は、教師データ41として用いた導電率マップ43と同様の手法により、領域R1の導電率をマップ化して得られたものである。図5に示す例では、壁などの物体によって導電率が変化している。
【0035】
距離マップ54は、教師データ41として用いた距離マップ44と同様の手法により、領域R1の送信アンテナ21からの距離をマップ化して得られたものである。図5に示す距離マップ54では、送信アンテナ21から離れるほど濃淡が薄くなる。
【0036】
自由空間モデル55は、教師データ41として用いた自由空間モデル45と同様の手法により、領域R1の電波強度をマップ化して得られたものである。即ち、自由空間モデル55は、付加情報を含む。図5に示す例では、反射波の影響によって電波強度に強弱が生じている。なお、推定部14で用いる自由空間モデル55は実際に利用しようとする送信アンテナ21の高さh、及び受信アンテナ22の高さhの値を使った1つの2次元マップである。
【0037】
電波強度マップ56は、送信アンテナ21が用いられる領域R1における平面座標での電波強度の推定結果である。ユーザは、電波強度マップ56から領域R1の電波強度を認識できる。
【0038】
[第1実施形態の効果]
(1-1)アルゴリズムA1は、平面座標における電波強度を示すデータ、及び付加情報を教師データ41として用いることで生成されている。平面座標における電波強度を示すデータを用いることで、2次元の教師データ41を用いて2次元アルゴリズムで学習を行うことができる。このため、3次元の教師データを用いて3次元アルゴリズムで学習を行う場合に比べて、学習に要する時間を短くすることができる。
【0039】
(1-2)教師データ41は、領域R1における高さ方向に関する付加情報を含む。このため、領域R1における高さ方向の要素を加味した電波強度マップ56を得ることができる。
【0040】
教師データとして、領域R1における高さ方向に関する付加情報を含まない場合は、送信アンテナ21の高さh、受信アンテナ22の高さhの値はある固定値としてフリスの公式を用いて算出された電波強度を用いて1つの自由空間モデルを作成することになる。この自由空間モデルを教師データとして学習を行ったアルゴリズムは、送信アンテナ21の高さhや受信アンテナ22の高さhを変更したとしても同一の電波強度マップを出力する。即ち、送信アンテナ21の高さhや受信アンテナ22の高さhが教師データで用いた固定値から変更した場合、この変更を加味した電波強度マップ56を出力することができない。送信アンテナ21の高さhや受信アンテナ22の高さhを加味した電波強度マップ56を作成するには送信アンテナ21の高さhや受信アンテナ22の高さhが決定した後に教師データを作成してアルゴリズムを生成する必要がある。
【0041】
これに対し、実施形態であれば、領域R1における高さ方向に関する付加情報として送信アンテナ21の高さh、及び受信アンテナ22の高さhに関する情報を用いて機械学習を行ったアルゴリズムを用いている。このため、送信アンテナ21の高さh、及び受信アンテナ22の高さhが変更された場合に、送信アンテナ21の高さh、及び受信アンテナ22の高さhに応じた電波強度マップ56を得ることができる。結果、送信アンテナ21の高さh、及び受信アンテナ22の高さhが決まっていない状況でも教師データを作成してアルゴリズムを生成することができ、無線通信機器の配置の検討を迅速に行うことが可能である。
【0042】
[第2実施形態]
電波強度推定システムの第2実施形態について説明する。第1実施形態と同一の箇所については説明を省略する。
【0043】
図6に示すように、送信アンテナ21が用いられる領域R1には、遮蔽物23が存在する場合がある。遮蔽物23は、例えば、送信アンテナ21と受信アンテナ22との間に位置する。
【0044】
図3に示すように、第2実施形態の教師データ41は、第1実施形態の教師データ41に加えて高さマップ47を含む。即ち、教師データ41は、誘電率マップ42、導電率マップ43、距離マップ44、自由空間モデル45、及び高さマップ47に、正解データとして電波強度マップ46を対応付けたデータである。高さマップ47は、複数のグリッドに分割されている。グリッドは、環境の平面座標に対応している。高さマップ47は、ヒートマップである。高さマップ47は、送信アンテナ21が用いられ得る環境を平面で表した2次元データである。
【0045】
高さマップ47は、送信アンテナ21及び物体が存在する環境を平面視した場合の遮蔽物23の高さを表すマップである。高さマップ47の位置は、環境の平面座標を表す。高さマップ47は、例えば、環境の平面座標に対応した遮蔽物23の高さを濃淡によって表している。これにより、送信アンテナ21及び物体が存在する環境の遮蔽物23の高さを画像データとして捉えることができる。高さマップ47は、例えば、遮蔽物23の高さが高いほど濃淡が薄い。高さマップ47は、遮蔽物23の高さを色彩によって表したものであってもよい。高さマップ47は、環境に存在する遮蔽物23の高さを示す付加情報である。
【0046】
教師データ41は、条件を変更した場合に得られる誘電率マップ42、導電率マップ43、距離マップ44、自由空間モデル45、及び高さマップ47に、当該条件の場合の電波強度マップ46を正解データとして対応付けたデータである。条件は、第1実施形態で挙げた要素に加えて、遮蔽物23の位置、遮蔽物23の大きさ、遮蔽物23の形状、遮蔽物23の高さを含む。
【0047】
本実施形態で高さ方向に関する付加情報としては、第1実施形態と同じく複数の自由空間モデル45に加え、複数の高さマップ47ともいえる。本実施形態では各自由空間モデル45に対して複数の高さマップ47と、それに紐づけた正解データとしての電波強度マップ46を用意する。教師データ41を作成する際の測定時は、第1実施形態と同じくアンテナ高さをさまざまに変えると共に、遮蔽物の高さをさまざまに変える毎に各平面座標の電波強度を測定し、2次元データの高さマップ47とそれに紐づけた2次元データの電波強度マップ46を複数セット用意する。いずれも2次元データであるので、機械学習において2次元アルゴリズムを用いる事ができる。
【0048】
上記した教師データ41を入力層31に入力することによって、アルゴリズムA1として学習済みモデルが得られる。アルゴリズムA1は、例えば、記憶部12に記憶される。
図7に示すように、推定部14は、上記した教師データ41によって生成されたアルゴリズムA1に入力データ51を入力することで、送信アンテナ21が用いられる領域R1の平面座標に対応付けて送信アンテナ21から送信される電波強度を推定する。
【0049】
電波強度推定システム10のユーザは、送信アンテナ21が用いられる領域R1における送信アンテナ21の高さh、受信アンテナ22の位置、及び受信アンテナ22の高さh、及び遮蔽物23の高さを定める。そして、送信アンテナ21の位置、送信アンテナ21の高さh、受信アンテナ22の位置、受信アンテナ22の高さh、及び遮蔽物23の高さに応じた誘電率マップ52、導電率マップ53、距離マップ54、自由空間モデル55、及び高さマップ57を生成する。これらを入力データ51として、アルゴリズムA1に入力することで、送信アンテナ21が用いられる領域R1に対応した電波強度マップ56が出力される。
【0050】
高さマップ57は、教師データ41として用いた高さマップと同様の手法により、領域R1の遮蔽物23の高さをマップ化して得られたものである。なお、推定部14で用いる高さマップ57は実際に利用しようとする遮蔽物23の高さを使った1つの2次元マップである。図7に示す例では、遮蔽物23の高さによって高さマップ57に濃淡が生じている。
【0051】
[第2実施形態の効果]
第2実施形態によれば、第1実施形態の効果に加えて、以下の効果を得ることができる。
【0052】
(2-1)付加情報は、遮蔽物23の高さを示す情報を含む。このため、遮蔽物23の高さが変更された場合に、遮蔽物23の高さに応じた高さマップ57を含む入力データ51をアルゴリズムA1に入力することで、遮蔽物23の高さに応じた電波強度マップ56を得ることができる。したがって、遮蔽物23の高さが決まっていない状況でも教師データを作成してアルゴリズムを生成することができ、無線通信機器の配置の検討を迅速に行う事が可能である。
【0053】
[変更例]
各実施形態は、以下のように変更して実施することができる。各実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0054】
○各実施形態において、付加情報は、送信アンテナ21から天井で反射して受信アンテナ22に到達する反射波に関する情報を含んでいてもよい。この場合であっても、(1)~(3)式によって自由空間モデル45の作成に用いる電波強度を算出することができる。
【0055】
図8に示すように、dは、電波のうち天井による反射波が送信アンテナ21から受信アンテナ22に到達するまでに通過する距離である。距離dは、送信アンテナ21の高さh、受信アンテナ22の高さh、天井の高さh、及び送信アンテナ21と受信アンテナ22との水平方向に対する距離dから算出することができる。天井の高さhは、床から天井までの高さである。
【0056】
付加情報は、送信アンテナ21から床で反射して受信アンテナ22に到達する反射波に関する情報、及び送信アンテナ21から天井で反射して受信アンテナ22に到達する反射波に関する情報を含んでいてもよい。この場合、自由空間モデル45の作成に用いる電波強度として、送信アンテナ21から床で反射して受信アンテナ22に到達する反射波、送信アンテナ21から天井で反射して受信アンテナ22に到達する反射波、及び直接波による電波強度を用いればよい。
【0057】
○各実施形態において、教師データ41は、少なくとも付加情報、及び電波強度マップ46を含んでいればよい。
○各実施形態において、生成部13と、推定部14とは、互いに異なるハードウェアによって機能してもよい。例えば、第1コンピュータで機械学習を行って得られたアルゴリズムA1を第2コンピュータで実行してもよい。この場合、第1コンピュータが生成部13である。第2コンピュータが推定部14である。電波強度推定システム10は、第1コンピュータ、及び第2コンピュータを備える。
【0058】
○各実施形態において、教師データの作成は実測値を用いたが、任意のシミュレーション手段を用いて、教師データを生成しても良い。
○各実施形態において、送信アンテナ21の位置は固定として距離マップ44を用意したが、送信アンテナ21の位置を様々に変えて複数の距離マップ44を用意してもよい。この場合、各距離マップ44毎に自由空間モデル45や電波強度マップ46、高さマップ47を用意すればよい。
【0059】
○第1実施形態において、自由空間モデル45の作成に用いられる電波強度は反射波を考慮したPを用いたが、反射波を考慮せずPのみを利用しても良い。
○第2実施形態において、自由空間モデル45の作成に用いられる電波強度は、フリスの公式によって算出されてもよい。また各実施形態において、任意の手法により自由空間モデルを作成してもよい。
【0060】
○第2実施形態において、送信アンテナ21の高さh、受信アンテナ22の高さhの値はある固定値とした自由空間モデル45を用意してもよい。
【符号の説明】
【0061】
A1…アルゴリズム、R1…領域、10…電波強度推定システム、13…生成部、14…推定部、21…送信アンテナ、22…受信アンテナ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8