(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168704
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】検査装置、検査方法、及びセラミックス焼結体の製造方法
(51)【国際特許分類】
G01N 29/27 20060101AFI20241128BHJP
【FI】
G01N29/27
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023085596
(22)【出願日】2023-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前野 裕史
(72)【発明者】
【氏名】大音 仁昭
【テーマコード(参考)】
2G047
【Fターム(参考)】
2G047AA09
2G047AD19
2G047BA03
2G047BB06
2G047BC03
2G047BC07
2G047CB01
2G047CB02
2G047CB03
2G047GE02
2G047GF06
2G047GG06
2G047GG28
(57)【要約】 (修正有)
【課題】欠陥を適切に検出する。
【解決手段】検査装置は、セラミックス焼結体Cの検査装置であって、セラミックス焼結体CにZ1方向に向けて超音波を照射する探触子と、探触子よりもZ1方向に設けられて、セラミックス焼結体Cを回転可能に支持し、Z2方向に移動不可能に位置が固定されている支持部40と、支持部40よりもZ1方向側に設けられて、セラミックス焼結体Cを回転可能に支持しつ、かつZ1方向に移動可能である可動支持部50と、を有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックス焼結体の検査装置であって、
前記セラミックス焼結体に第1方向に向けて超音波を照射する探触子と、
前記探触子よりも前記第1方向に設けられて、前記セラミックス焼結体を回転可能に支持し、前記第1方向と反対方向である第2方向に移動不可能に位置が固定されている支持部と、
前記支持部よりも前記第1方向側に設けられて、前記セラミックス焼結体を回転可能に支持し、かつ前記第1方向に移動可能である可動支持部と、
を有する、検査装置。
【請求項2】
前記セラミックス焼結体が前記検査装置に取り付けられた状態において、前記支持部及び前記探触子は、前記セラミックス焼結体の中心よりも、前記第2方向側に位置しており、前記可動支持部は、前記セラミックス焼結体の中心よりも前記第1方向側に位置している、請求項1に記載の検査装置。
【請求項3】
前記支持部は、複数設けられている、請求項1又は請求項2に記載の検査装置。
【請求項4】
それぞれの前記支持部は、前記第1方向に見て、前記探触子からの超音波が照射される位置を囲う位置に設けられている、請求項3に記載の検査装置。
【請求項5】
前記第1方向に見て、前記セラミックス焼結体の表面の前記超音波が照射される照射位置が、それぞれの前記支持部を頂点とした多角形の重心に位置するように、前記支持部が配置されている、請求項4に記載の検査装置。
【請求項6】
前記探触子として、縦波の超音波を照射する第1探触子と、横波の超音波及び表面波の超音波の少なくとも一方を照射する第2探触子とが設けられている、請求項1又は請求項2に記載の検査装置。
【請求項7】
前記セラミックス焼結体が前記検査装置に取り付けられた状態において、前記第1探触子は、前記セラミックス焼結体の中心軸に沿った方向に、前記縦波の超音波を照射し、前記第2探触子は、前記セラミックス焼結体の中心軸に対して傾斜する方向に、前記横波の超音波及び表面波の超音波の少なくとも一方の超音波を照射する、請求項6に記載の検査装置。
【請求項8】
前記セラミックス焼結体を収納し、内部に溶媒が貯留される容器を更に含み、前記支持部及び前記可動支持部は、前記容器内に設けられる、請求項1又は請求項2に記載の検査装置。
【請求項9】
セラミックス焼結体の検査方法であって、
探触子よりも第1方向に設けられて前記第1方向と反対方向である第2方向に移動不可能に位置が固定されている支持部と、前記支持部よりも前記第1方向側に設けられる可動支持部とによって、前記セラミックス焼結体を回転可能に支持することと、
前記探触子から、前記第1方向に向けて、支持された前記セラミックス焼結体に超音波を照射することと、
を含む、
検査方法。
【請求項10】
セラミックス成形体を焼結してセラミックス焼結体を得ることと、
請求項9に記載の検査方法により、前記セラミックス焼結体を検査することと、
を含む、
セラミックス焼結体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査装置、検査方法、及びセラミックス焼結体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セラミックス焼結体に対して、気孔などの欠陥の有無を検査する場合がある。例えば特許文献1には、窒化ケイ素玉を玉保持部に回転可能に取り付けて、窒化ケイ素玉を回転させつつ、超音波探傷用の探触子から窒化ケイ素玉に超音波を照射することで、窒化ケイ素玉の探傷を行う旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、セラミックス焼結体の表面は、完全に滑らかではなく、凹凸が存在している場合がある。従って、セラミックス焼結体を回転させることで、探触子に対する、セラミックス焼結体の表面における超音波が照射される位置がずれてしまい、欠陥を適切に検出できなくなるおそれがある。
【0005】
本発明は、欠陥を適切に検出可能な検査装置、検査方法、及びセラミックス焼結体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る検査装置は、セラミックス焼結体の検査装置であって、前記セラミックス焼結体に第1方向に向けて超音波を照射する探触子と、前記探触子よりも前記第1方向に設けられて、前記セラミックス焼結体を回転可能に支持し、前記第1方向と反対方向である第2方向に移動不可能に位置が固定されている支持部と、前記支持部よりも前記第1方向側に設けられて、前記セラミックス焼結体を回転可能に支持し、かつ前記第1方向に移動可能である可動支持部と、を有する。
【0007】
本開示に係る検査方法は、セラミックス焼結体の検査方法であって、探触子よりも第1方向に設けられて前記第1方向と反対方向である第2方向に移動不可能に位置が固定されている支持部と、前記支持部よりも前記第1方向側に設けられる可動支持部とによって、前記セラミックス焼結体を回転可能に支持することと、前記探触子から、前記第1方向に向けて、支持された前記セラミックス焼結体に超音波を照射することと、を含む。
【0008】
本開示に係るセラミックス焼結体の製造方法は、セラミックス成形体を焼結してセラミックス焼結体を得ることと、前記検査方法により、前記セラミックス焼結体を検査することと、を含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、欠陥を適切に検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本実施形態に係るセラミックス焼結体の模式図である。
【
図2】
図2は、本実施形態に係る検査装置の模式図である。
【
図3】
図3は、本実施形態に係る検査装置の模式図である。
【
図4】
図4は、支持部の位置を説明する模式図である。
【
図5】
図5は、検査制御装置の模式的なブロック図である。
【
図7】
図7は、反射波の強度の標準偏差の一例を示すグラフである。
【
図8】
図8は、セラミックス焼結体の製造方法を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではなく、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせて構成するものも含むものである。また、数値については四捨五入の範囲が含まれる。
【0012】
(セラミックス焼結体)
本実施形態に係る検査装置10は、セラミックス焼結体Cを検査する装置である。さらに言えば、検査装置10は、セラミックス焼結体Cの欠陥の有無を検査する。最初に、セラミックス焼結体Cについて説明する。
【0013】
図1は、本実施形態に係るセラミックス焼結体の模式図である。セラミックス焼結体Cは、セラミックス製の焼結体である。セラミックス焼結体Cは、例えば、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化ケイ素、窒化ケイ素、炭化ケイ素、窒化アルミニウム、及びサイアロンの少なくとも1種のセラミックスの焼結体であることが好ましく、窒化ケイ素の焼結体であることがより好ましい。
【0014】
例えばセラミックス焼結体Cが窒化ケイ素の焼結体である場合、セラミックス焼結体CのSi及びNの合計含有量が、セラミックス焼結体Cの全体に対して、90wt%以上であることが好ましく、90wt%以上98wt%以下でもよく、92wt%以上97.5wt%以下でもよく、94wt%以上96wt%以下でもよい。
Si及びNの合計含有量は、XRF(蛍光X線)によって測定できる。
【0015】
本実施形態においては、検査装置10の検査対象となるセラミックス焼結体Cは、焼成工程後であって研磨前の焼結体である。すなわち、焼結体は、焼成工程(焼結工程)後に表面が研磨される場合があるが、本実施形態のセラミックス焼結体Cは、研磨されていない状態(研磨前の状態)の焼結体を指す。ただしそれに限られず、検査対象となるセラミックス焼結体Cは、焼結後に研磨された状態の焼結体であってもよい。
セラミックス焼結体Cの、JIS B 0601:2001規定の算術平均粗さRaは、50μm以下であることが好ましく、10μm以下であることが好ましく、3μm以下であることがより好ましい。なお、算術平均粗さRaは、セラミックス焼結体Cの表面Caの粗さ曲線を、基準長さだけ抜き取って、算出される。基準長さは、例えば、0.8mmである。
【0016】
セラミックス焼結体Cは、任意の用途で用いられてよいが、例えば、ベアリングボール用の素球として用いられてよい。ここでの素球とは、最終製品をベアリングボールとした場合の中間製品を意味し、例えばセラミックス焼結体Cの表面を研磨することで、最終製品であるベアリングボールが形成される。
【0017】
セラミックス焼結体Cは、球状であることが好ましい。ここでの球状とは、真球に限定されず、例えば、セラミックス焼結体Cは、直径Dに対して、好ましくは3%以内、より好ましくは2.5%以内、更に好ましくは2%以内の真球度であってよい。例えば、直径50mmの焼結体であれば真球度は1.5mm以下が好ましく、1.25mm以下がより好ましく、1.0mm以下がさらに好ましい。例えば、直径10mmの焼結体であれば真球度は0.3mm以下が好ましく、0.25mm以下がより好ましく、0.2mm以下がさらに好ましい。ここでの直径Dとは、平均直径(直径の最大値と最小値との算術平均値)を指してよい。
【0018】
セラミックス焼結体Cの直径Dは、0.5mm以上であることが好ましく、0.5mm以上100mm以下であることがより好ましく、0.5mm以上80mm以下であることが更に好ましく、30mm以上55mm以下であることが更に好ましく、45mm以上55mm以下であることが更に好ましく、49mm以上51mm以下であることが更に好ましい。直径がこの範囲であることで、例えばベアリングボールなどに好適に使用できる。
【0019】
(検査装置)
次に、検査装置10について説明する。
図2及び
図3は、本実施形態に係る検査装置の模式図である。
図2は、検査対象のセラミックス焼結体Cが検査装置10に設置されていない状態を示し、
図3は、検査対象のセラミックス焼結体Cが検査装置10に設置されている状態を示している。
【0020】
図2及び
図3に示すように、本実施形態に係る検査装置10は、容器20と、探触子30と、支持部40と、可動支持部50と、台座部60と、検査制御装置70とを有する。
以降においては、検査装置10における一方向をZ1方向(第1方向)とし、Z1方向の反対方向をZ2方向(第2方向)とする。本実施形態の例では、検査装置10は、Z1方向が鉛直方向下方を向くように設置されるが、それに限られず、例えばZ1方向が水平方向を向いていてもよい。以降において、Z1方向とZ2方向とを区別しない場合には、Z方向と記載する。
【0021】
(容器)
容器20は、支持部40と可動支持部50と台座部60とを内部に収容する容器である。セラミックス焼結体Cの検査時においては、セラミックス焼結体Cも容器20内に収容されて、容器20内に溶媒Wが貯留される。すなわち、本実施形態においては、セラミックス焼結体Cが容器20に貯留された溶媒Wに浸漬された状態で、セラミックス焼結体Cの検査が行われる。また、検査時には、探触子30の少なくとも一部(後述の出射口32)も、容器20内に配置され、容器20内の溶媒Wに浸漬される。溶媒Wは、超音波を伝達可能な任意の液体であってよいが、本実施形態では水である。
ただし、容器20は必須の構成ではない。すなわち、検査装置10は、セラミックス焼結体Cを溶媒Wに浸漬させない状態で、セラミックス焼結体Cの検査を行ってもよい。
【0022】
(探触子)
探触子30は、超音波を照射する端子である。探触子30としては、超音波を照射する任意の装置を用いることができる。探触子30は、超音波を出射する出射口32が、Z1方向側を向くように配置されている。言い換えれば、探触子30は、出射口32側に向かう探触子30の中心軸AXが(出射する超音波の進行方向)、Z1方向を向くように、配置されている。ここでのZ1方向を向くとは、Z1方向に平行であることのみに限られず、Z方向に対して傾斜しつつZ1方向を向いていること(Z方向に対して直交していないこと)も含まれる。探触子30は、このように配置されることで、Z1方向に向けて超音波を照射する。探触子30から照射された超音波は、検査装置10に配置されたセラミックス焼結体Cの表面Caに照射され、その超音波は、表面Caで一部が反射し、一部がセラミックス焼結体Cの内部に入射する。セラミックス焼結体Cの内部に欠陥などがあると、セラミックス焼結体Cの内部に入射した超音波の一部が反射して、探触子30に反射波として戻る。この反射波を検知することで、セラミックス焼結体Cの内部の欠陥を検出できる。
探触子30の周波数は、例えば、5MHz以上200MHz以下が好ましく、10MHz以上150MHz以下がより好ましく、20MHz以上125MHz以下がさらに好ましい。
【0023】
探触子30は、セラミックス焼結体Cが検査装置10に取り付けられた状態において、セラミックス焼結体Cの表面Caに接触しない位置に配置されることが好ましい。すなわち、探触子30は、表面Caに接触しない状態で、表面Caに向けて超音波を照射することが好ましい。これにより、溶媒Wを介して、表面Caに超音波を適切に照射できる。
【0024】
また、
図3に示すように、探触子30は、セラミックス焼結体Cが検査装置10に取り付けられた状態において、セラミックス焼結体Cの中心C0の位置よりも、Z2方向側に配置される。さらに言えば、セラミックス焼結体Cの表面Caのうちの最もZ2方向側の位置を位置CaZ2とすると、探触子30は、位置CaZ2よりも、Z2方向側に配置されることが好ましい。探触子30は、セラミックス焼結体CよりもZ2方向側に位置し、かつ、出射口32がセラミックス焼結体Cの表面Caに対向して配置されることで、セラミックス焼結体Cの表面Caに超音波を照射できる。
ここで、支持部40(後述)がセラミックス焼結体Cを支持する位置(接触点)と、可動支持部50(後述)がセラミックス焼結体Cを支持する位置(接触点)とを通る仮想的な球を、仮想球とする。この場合、セラミックス焼結体Cが検査装置10に取り付けられた状態における、セラミックス焼結体Cの中心C0の位置とは、仮想球の中心位置を指してよい。同様に、セラミックス焼結体Cの表面Caは、仮想球の表面(外周面)を指してよい。以降も同様である。
【0025】
本実施形態では、探触子30として、第1探触子30Aと第2探触子30Bとが設けられることが好ましい。第1探触子30Aは、縦波の超音波を照射する探触子であり、第2探触子30Bは、横波の超音波及び表面波の超音波の少なくとも一方の超音波を照射する探触子である。第1探触子30Aは、縦波の超音波として、例えば10km/s以上12km/s以下の速度の超音波を照射する。第2探触子30Bは、横波の超音波として例えば5km/s以上7km/s以下の速度の超音波を照射する。第2探触子30Bは、表面波の超音波として、例えば4.5km/s以上6.5km/s以下の速度の超音波を照射する。
【0026】
図3に示すように、第1探触子30Aは、出射口32側に向かう探触子30の中心軸AXa(出射する超音波の進行方向)が、Z1方向に沿うように配置されることが好ましい。また、セラミックス焼結体Cが検査装置10に取り付けられた状態において、第1探触子30Aの中心軸AXa(出射する超音波の進行方向)は、セラミックス焼結体Cの中心軸AXc1と同一であることが好ましい。なお、セラミックス焼結体Cの表面Caのうちで、中心軸AXaが通る位置(第1探触子30Aからの超音波が照射される位置)を位置Ca1とすると、セラミックス焼結体Cの中心軸AXc1とは、セラミックス焼結体Cの中心C0と位置Ca1とを通る直線であるともいえる。
このように、第1探触子30Aを配置することで、セラミックス焼結体Cの位置Ca1における法線に沿って超音波を照射することができるため、縦波の超音波をセラミックス焼結体C内に適切に入射させることができる。
ただし、第1探触子30Aの中心軸AXaとセラミックス焼結体Cの中心軸AXc1とは、厳密に平行であることに限られず、互いのなす角度が、0度以上2度以下程度であってもよい。
【0027】
図3に示すように、第2探触子30Bは、セラミックス焼結体Cが検査装置10に取り付けられた状態において、第2探触子30Bの中心軸AXb(出射する超音波の進行方向)が、セラミックス焼結体Cの中心軸AXc2に対して傾斜していることが好ましい。なお、セラミックス焼結体Cの表面Caのうちで、中心軸AXbが通る位置(第2探触子30Bからの超音波が照射される位置)を位置Ca2とすると、セラミックス焼結体Cの中心軸AXc2とは、セラミックス焼結体Cの中心C0と位置Ca2とを通る直線であるともいえる。
第2探触子30Bの中心軸AXbとセラミックス焼結体Cの中心軸AXc2とのなす角度θは、12度以上19度以下が好ましく、13度以上17度以下がより好ましく、14度以上16度以下がさらに好ましい。
また、
図3の例では、第2探触子30Bは、中心軸AXbがZ1方向に対して傾斜して設けられているが、それに限られず、中心軸AXbがZ1方向に沿っていてもよい。中心軸AXbがZ1方向に沿う場合、第2探触子30Bの設ける位置を、第1探触子30Aが設けられる位置から、Z方向に直交する方向(
図3の例では右方向)に平行移動した位置とすることで、中心軸AXbをセラミックス焼結体Cの中心軸AXc2に対して傾斜させることができる。
また、セラミックス焼結体Cの中心C0を通り、かつ第2探触子30Bの中心軸AXbに平行な直線を、セラミックス焼結体Cの中心軸AXc3とする。この場合、セラミックス焼結体Cの直径Dに対する、中心軸AXbと中心軸AXc3との間の距離D1の比率(距離D1/直径D)は、10%以上16%以下が好ましく、12%以上14%以下がより好ましい。
このように、第2探触子30Bを配置することで、セラミックス焼結体Cの表面Caの法線に傾斜して超音波を照射することができるため、横波や表面波の超音波をセラミックス焼結体C内に適切に入射させることができる。
なお、本実施形態の例では、位置Ca1と位置Ca2とは異なる位置にあるが、同じ位置にあってもよい。
【0028】
なお、第2探触子30Bは、本実施形態では、横波の超音波と表面波の超音波との両方を照射可能であるが、それに限られず、横波の超音波と表面波の超音波とのいずれかのみを照射可能であってもよい。第2探触子30Bが横波の超音波と表面波の超音波との一方のみを照射可能である場合、横波の超音波と表面波の超音波との他方を照射可能な第3探触子を設けてもよいが、それに限られず第3探触子を設けなくてもよい。
【0029】
(支持部)
支持部40は、セラミックス焼結体Cを回転可能に支持する部材である。支持部40は、Z方向に移動不可能に(Z2方向に移動不可能に、より好ましくはZ1方向及びZ2方向の両方向に移動不可能に)、位置が固定されている。支持部40は、Z方向以外の方向にも移動不可能であることが好ましい。すなわち、支持部40は、検査装置10(例えば容器20)に対する相対位置が固定されているといえる。また、支持部40は、探触子30よりもZ1方向側に配置されている。なお、本実施形態では、支持部40は、球形状であるが、それに限られず、任意の形状であってよい。
【0030】
図3に示すように、支持部40は、セラミックス焼結体Cの表面Caに接触することで、セラミックス焼結体Cを回転可能に支持する。支持部40は、セラミックス焼結体Cが検査装置10に取り付けられた状態において、セラミックス焼結体Cの中心C0の位置よりも、Z2方向側に配置される。さらに言えば、支持部40は、セラミックス焼結体Cの表面Caのうちの、中心C0の位置よりもZ2方向側の領域に接触する。このように、セラミックス焼結体Cの中心C0の位置よりもZ2方向側に支持部40を配置することで、セラミックス焼結体Cを回転させた場合であっても、超音波の表面Caへの入射角度が変動することを好適に抑制できる。より詳しくは、支持部40が、探触子30よりもZ1方向側、かつ中心C0の位置よりもZ2方向側に配置されることで、セラミックス焼結体Cを回転させた場合であっても、超音波の表面Caへの入射角度が変動することを好適に抑制できる。
【0031】
図4は、支持部の位置を説明する模式図である。
図4は、視線をZ1方向に向けて支持部40とセラミックス焼結体Cを見た場合の図である。本実施形態では、支持部40が複数設けられている。それぞれの支持部40は、Z1方向に見て、探触子30からの超音波が照射される位置を囲う位置に設けられる。すなわち、それぞれの支持部40は、Z1方向に見て、探触子30からの超音波が照射される位置が、それぞれの支持部40を頂点とした仮想的な多角形の領域内に入るような位置に、配置されている。探触子30からの超音波が照射される位置とは、セラミックス焼結体Cの表面Caのうちで探触子30の中心軸と交差する位置(探触子30からの超音波が照射される位置)といえる。
それぞれの支持部40が、超音波が照射される位置を囲うように設けられることで、セラミックス焼結体Cを回転させた場合であっても、超音波の表面Caへの入射角度が変動することを好適に抑制できる。
【0032】
さらに言えば、それぞれの支持部40は、Z1方向に見て、探触子30からの超音波が照射される位置が、それぞれの支持部40を頂点とした仮想的な多角形の重心に位置するように、配置されている。より詳しくは、それぞれの支持部40は、第1探触子30Aからの超音波が照射される位置Ca1が、多角形の重心に位置するように、配置されている。
図4の例では、支持部40が3つ設けられている。そして、
図4の例では、Z1方向に見て、3つの支持部40を頂点とする三角形の重心位置が、第1探触子30Aからの超音波が照射される位置Ca1と重なっている。また、
図4の例では、第2探触子30Bからの超音波が照射される位置Ca2が、3つの支持部40を頂点とする三角形の領域内に位置している。
それぞれの支持部40が
図4に示すような位置に設けられることで、超音波の表面Caへの入射角度が変動することをより好適に抑制できる。ただし、位置Ca2は、それぞれの支持部40を頂点とした多角形よりも外側に位置していてもよい。また、位置Ca1も、それぞれの支持部40を頂点とした多角形よりも外側に位置していてもよい。
【0033】
また、Z1方向に見て、セラミックス焼結体Cの直径Dに対する、探触子30からの超音波が照射される位置(本例では位置Ca1)から支持部40の中心までの距離D2の比率(距離D2/直径D)は、10%以上40%以下が好ましく、15%以上35%以下がより好ましく、20%以上30%以下がさらに好ましい。このように超音波が照射される位置の近くに支持部40を配置することで、超音波の表面Caへの入射角度が変動することをより好適に抑制できる。
【0034】
ただし、支持部40の数は3つであることに限られず、任意の複数個であってもよい。また、支持部40の設けられる位置も、上記の説明に限られず、支持部40は、探触子30よりもZ1方向(
図3の例では下方向)の任意の位置にあってよい。
【0035】
(可動支持部)
可動支持部50は、セラミックス焼結体Cを回転可能に支持する部材である。可動支持部50は、Z方向に移動可能(Z1方向に移動可能、本実施形態ではZ1方向及びZ2方向の両方向に移動可能)である。すなわち、可動支持部50のセラミックス焼結体Cを支持する部分は、検査装置10(例えば容器20や支持部40)に対する相対位置が、Z方向に移動可能である。また、可動支持部50は、支持部40よりもZ1方向側に配置されている。可動支持部50がこの位置に設けられることで、セラミックス焼結体Cを回転させた場合であっても、超音波の表面Caへの入射角度が変動することを好適に抑制できる。
【0036】
可動支持部50は、セラミックス焼結体Cの表面Caに接触することで、セラミックス焼結体Cを回転可能に支持する。
図3に示すように、可動支持部50は、セラミックス焼結体Cが検査装置10に取り付けられた状態において、セラミックス焼結体Cの中心C0の位置よりも、Z1方向側に配置される。さらに言えば、可動支持部50は、セラミックス焼結体Cの表面Caのうちの、中心C0の位置よりもZ1方向側の領域に接触する。可動支持部50がこの位置に設けられることで、支持部40と可動支持部50とでセラミックス焼結体Cを挟持しつつ、セラミックス焼結体Cが回転した際の表面Caの位置変動を、可動支持部50のZ方向の移動で吸収することができる。そのため、セラミックス焼結体Cを回転させた場合であっても、超音波の表面Caへの入射角度が変動することを抑制できる。
【0037】
図3及び
図4の例では、可動支持部50は、支持体52と、弾性部材54とを有する。支持体52は、セラミックス焼結体Cと接触してセラミックス焼結体Cを回転可能に支持する部材である。弾性部材54は、支持体52と、可動支持部50よりもZ1方向側の台座部60とに接続されて、弾性変形によりZ方向に伸縮する部材(例えばバネ)である。支持体52は、セラミックス焼結体Cの表面Caの支持体52と接触する位置が、セラミックス焼結体Cの回転に伴い、Z方向に移動する場合がある。それに対して、表面CaのZ方向の移動に伴い弾性部材54が伸縮するため、支持体52は、表面CaのZ方向の移動に追従して、Z方向に移動する。
【0038】
支持体52は、Z方向と交差する方向を回転軸として回転可能であることが好ましい。これにより、支持体52の回転に伴いセラミックス焼結体Cを回転させることが可能となる。なお、ここでの交差とは、それぞれの方向同士が、0°より大きい角度をもって交差していることを指す。また、本実施形態では、可動支持部50を複数(
図3及び
図4の例では2つ)設けており、それぞれの可動支持部50が独立回転可能となっている。これにより、それぞれの可動支持部50の回転速度を異ならせることで、セラミックス焼結体Cの回転方向を変化させることが可能となり、超音波を表面Caの全域に照射させることが可能となる。
【0039】
ただし、可動支持部50の構成や数は上記の説明に限られない。可動支持部50は、支持部40よりもZ1方向側にあり、かつZ方向に移動可能な、任意の構成であってよい。
【0040】
(検査制御装置)
図5は、検査制御装置の模式的なブロック図である。検査制御装置70は、検査装置10の各部を制御して、セラミックス焼結体Cを検査する。
図5に示すように、検査制御装置70は、入力部72と、表示部74と、記憶部76と、制御部78とを有する。
【0041】
入力部72は、ユーザの入力を受け付ける装置であり、例えばコントローラやタッチパネルやキーボードであってよい。表示部74は、画像を表示するディスプレイである。記憶部76は、制御部78の演算内容やプログラムなどの各種情報を記憶するメモリであり、例えば、RAM(Random Access Memory)と、ROM(Read Only Memory)のような主記憶装置と、HDD(Hard Disk Drive)などの外部記憶装置とのうち、少なくとも1つ含む。記憶部76が保存する制御部78用のプログラムは、検査制御装置70が読み取り可能な記録媒体に記憶されていてもよい。
【0042】
制御部78は、演算装置であり、例えばCPU(Central Processing Unit)などの演算回路を含む。制御部78は、回転制御部80と照射制御部82と処理部84とを含む。制御部78は、記憶部76からプログラム(ソフトウェア)を読み出して実行することで、回転制御部80と照射制御部82と処理部84とを実現して、それらの処理を実行する。なお、制御部78は、1つのCPUによってこれらの処理を実行してもよいし、複数のCPUを備えて、それらの複数のCPUで、処理を実行してもよい。また、回転制御部80と照射制御部82と処理部84との少なくとも一部を、ハードウェアで実現してもよい。
【0043】
回転制御部80は、検査装置10に取り付けられたセラミックス焼結体Cを回転させる。照射制御部82は、探触子30を制御して、探触子30からセラミックス焼結体Cに超音波を照射させる。処理部84は、探触子30が照射した超音波の反射波のデータを取得して、取得した反射波のデータに基づいて、セラミックス焼結体Cに含まれる欠陥の有無を検出する。各部の処理の詳細は後述する。
【0044】
(検査方法)
次に、検査装置10によるセラミックス焼結体Cの検査方法について説明する。
【0045】
本検査方法においては、支持部40と可動支持部50とによって、検査対象となるセラミックス焼結体Cを、回転可能に支持することで、セラミックス焼結体Cを検査装置10に取り付ける。より詳しくは、セラミックス焼結体Cの表面Caのうちの中心C0の位置よりもZ2方向側の箇所を、支持部40に接触させつつ、表面Caのうちの中心C0の位置よりもZ1方向側の箇所を、可動支持部50に接触させて、溶媒Wを貯留した容器20内に、セラミックス焼結体Cを回転可能に支持する。
この状態において、探触子30は、セラミックス焼結体CよりもZ2方向側であって、出射口32がセラミックス焼結体Cの表面Caに対向する位置に配置される。
【0046】
セラミックス焼結体Cを検査装置10に取り付けたら、回転制御部80は、セラミックス焼結体Cを回転させる。本実施形態では、回転制御部80は、可動支持部50を制御して、可動支持部50を回転させることで、セラミックス焼結体Cを回転させる。ただし、セラミックス焼結体Cを回転させる方法は、可動支持部50を回転させることに限られない。例えば、可動支持部50とは別にセラミックス焼結体Cを回転させる機構を設け、回転制御部80は、その機構を制御することで、セラミックス焼結体Cを回転させてもよい。この場合、可動支持部50は、回転する構成でなくてもよい。
【0047】
照射制御部82は、探触子30から超音波を照射させる。探触子30から出射された超音波は、セラミックス焼結体Cの表面Caに照射される。セラミックス焼結体Cの表面Caに照射された超音波の一部は、表面Caで反射され、他の一部はセラミックス焼結体Cの内部に入射する。セラミックス焼結体Cの内部に空孔などの欠陥が存在する場合であって、その欠陥に超音波が照射された場合には、その超音波の一部は、セラミックス焼結体Cの内部構造と欠陥との界面で反射する。探触子30は、このように表面Caで反射された超音波や、欠陥で反射された超音波を検出する。検査装置10は、探触子30により検出された欠陥からの反射波を検出することで、セラミックス焼結体Cの欠陥の有無を検査できる。反射された超音波に基づく欠陥の有無の検査方法の詳細は後述する。
なお、以上の説明では、探触子30が超音波を照射しつつ反射波を受信するが、それに限られず、反射波を受信するレシーバを、探触子30とは別体として設けてもよい。
【0048】
検査装置10は、セラミックス焼結体Cを回転させつつ、探触子30から超音波を照射する。超音波の照射は、パルス法を用いてもよい。また、検査装置10は、探触子30又は別体のレシーバにより、超音波の反射波を検出する。セラミックス焼結体Cの回転により、超音波が照射される位置が変化するため、セラミックス焼結体Cの内部の各位置における欠陥を検出できる。
【0049】
また、本実施形態では、第1探触子30Aと第2探触子30Bとが設けられている。照射制御部82は、第1探触子30Aから、セラミックス焼結体Cに縦波の超音波を照射させる。縦波の超音波は、セラミックス焼結体Cの超音波が入射する表面(入射面)から、反対側の表面まで進行するため、セラミックス焼結体Cの入射面から反対側の表面までの区間における欠陥を検出できる。
ただし、入射面の近傍に欠陥が形成されている場合には、入射面からの反射波と欠陥からの反射波とが探触子30に入射するタイミングが近くなるため、欠陥からの反射波であるかの判定が難しくなることがある。それに対し、照射制御部82は、第2探触子30Bからも超音波を照射させる。第2探触子30Bは、セラミックス焼結体Cの中心軸に対して傾斜した向きに配置されており、かつ、横波又は表面波の超音波を出射する。従って、第2探触子30Bは、入射面の近傍の欠陥からの反射波を適切に検出できる。
なお、照射制御部82は、第1探触子30A及び第2探触子30Bに超音波を照射させるタイミングを異ならせてよい。
【0050】
図6は、反射波の一例を示すグラフである。処理部84は、探触子30(又はレシーバ)に検出された超音波の反射波に基づいて、セラミックス焼結体Cの欠陥の有無を検出する。具体的には、処理部84は、探触子30が検出した超音波の反射波のデータを取得する。例えば、
図6に示すように、処理部84は、探触子30が検出した反射波の強度の時系列データを、反射波のデータとして取得する。
図6の縦軸は、反射波の強度であり、横軸は時間である。すなわち、反射波のデータとは、反射波の強度と、その強度の反射波が検出された時刻とを、時系列で示すデータである。ただし、
図6に示す反射波のデータの波形は一例である。
【0051】
処理部84は、反射波のデータに基づいて、欠陥からの反射波の波形が含まれているかを検出し、欠陥からの反射波の波形が含まれている場合には、セラミックス焼結体Cに欠陥が含まれていると判断する。欠陥からの反射波の波形が含まれているかの検出方法は任意であってよいが、例えば、処理部84は、反射波のデータに示される反射波の波形が所定の条件を満たす場合に、欠陥からの反射波の波形が含まれていると判断し、所定の条件を満たさない場合には、欠陥からの反射波の波形が含まれていないと判断する。以下、具体例を説明する。
【0052】
図7は、反射波の強度の標準偏差の一例を示すグラフである。本実施形態においては、処理部84は、反射波のデータ(探触子30が検出した反射波の強度の時系列データ)に基づいて、反射波の強度の標準偏差を、時刻毎に算出する。例えば、処理部84は、算出対象となる時刻よりも所定時間前の第1時刻から、算出対象となる時刻よりも所定時間後の第2時刻までにおける、時刻毎の反射波の強度についての、標準偏差を算出する。処理部84は、算出した標準偏差を、算出対象となる時刻における標準偏差として扱う。処理部84は、時刻毎に同様の方法で標準偏差を算出することで、例えば
図7に示すように、反射波の強度の標準偏差の時系列データを算出する。なお、ここでの所定時間(第1時刻や第2時刻)は任意に設定されてよいが、例えば、第1時刻から第2時刻までの時間を、使用する探触子30の周期に相当する時間の1倍以上6倍以下とすることが好ましく、2倍以上4倍以下とすることがより好ましい。このようにして標準偏差を算出することで、欠陥の有無を適切に検出できる。
【0053】
処理部84は、反射波の強度の標準偏差の時系列データに基づき、欠陥の有無を検出する。例えば、処理部84は、反射波の強度の標準偏差の時系列データにおいて、所定の時間帯での標準偏差の値が所定の閾値を超えている場合に、欠陥があると判断する。一方、処理部84は、所定の時間帯での標準偏差の値が所定の閾値を超えていない場合には、欠陥が無いと判断する。また、処理部84は、標準偏差の値が所定の閾値を超えた時刻に基づいて、その欠陥の位置(深さ)を算出してもよい。処理部84は、標準偏差の値が所定の閾値を超えた時刻と、超音波の速度とに基づいて、その欠陥の位置(深さ)を算出できる。
【0054】
なお、上述の説明では、探触子30が検出した反射波の強度の時系列データから標準偏差の時系列データを算出していたが、それに限られない。例えば、処理部84は、異なるタイミングで照射された超音波のそれぞれ(例えば5つ)についての、反射波の強度の時系列データを、平均化処理してよい。そして、処理部84は、平均化処理した反射波の強度の時系列データから、標準偏差の時系列データを算出してよい。
【0055】
処理部84は、欠陥の有無の判断結果を出力する。すなわち例えば、処理部84は、所定の時間帯における標準偏差の値が所定の閾値を超えている場合に、欠陥がある旨の情報を出力する。また、処理部84は、欠陥の位置(深さ)の情報も出力してよい。処理部84は、表示部74に、欠陥の有無の判断結果や欠陥の位置の情報を表示させてもよいし、別の装置に判断結果や欠陥の位置の情報を出力(送信)してもよい。
【0056】
(セラミックス焼結体の製造方法)
次に、本実施形態におけるセラミックス焼結体Cの製造方法を説明する。
図8は、セラミックス焼結体の製造方法を説明するフローチャートである。
【0057】
本製造方法においては、セラミックス焼結体Cを得る(ステップS10)。ステップS10においては、セラミックス成形体を焼結することで、セラミックス焼結体Cを得る。以下、セラミックス焼結体Cを得る方法の具体例を説明する。
【0058】
本例においては、原料を成形して、セラミックス成形体を生成する。セラミックス成形体とは、セラミックス焼結体Cの原料を所望の形状に成形した成形体である。セラミックス成形体は、球状であることが好ましい。
本例においては、原料を成形型に充填後、脱型して、セラミックス成形体を得てもよい。成形体の生成方法は任意であってよく、例えばゲルキャスティング法を用いてよい。
本例においては、生成したセラミックス成形体を焼成して、セラミックス焼結体Cを得る。セラミックス成形体の焼成条件(熱処理条件)は任意であってよいが、第1条件での熱処理と第2条件での熱処理との、少なくとも2段階の熱処理を行ってよい。この場合、セラミックス成形体に第1条件での熱処理を行った後に、第2条件での熱処理を行う。第2条件での熱処理は、例えば、第1条件での熱処理よりも高圧環境下での熱処理であり、例えばHIP(Hot Isostatic Pressing)処理を適用してもよい。
【0059】
セラミックス焼結体Cを得たら、セラミックス焼結体Cを、上述の検査方法で検査する。すなわち、セラミックス焼結体Cを検査装置10に取り付けて(ステップS12)、セラミックス焼結体Cの検査を行う(ステップS14)。これにより、セラミックス焼結体Cの製造が完了する。本検査方法を用いてセラミックス焼結体Cを製造することで、欠陥が多かったり大きな欠陥を含んだりするセラミックス焼結体Cを検出することが可能となる。そのため、例えばそのようなセラミックス焼結体Cを除外することで、欠陥が少ない適切なセラミックス焼結体Cを得ることができる。
【0060】
なお、第1条件と第2条件との2段階以上での熱処理を行う場合には、第1条件での熱処理の完了後のセラミックス焼結体Cに対して、上述の検査方法での検査を行ってよい。この場合、検査が完了したら、第2条件以降の熱処理を行って、セラミックス焼結体Cを製造する。ただしそれに限られず、全ての段階の熱処理を完了してから、上述の検査方法での検査を行ってよい。
【0061】
(効果)
以上説明したように、本開示の第1態様に係る検査装置10は、セラミックス焼結体Cの検査装置であって、セラミックス焼結体CにZ1方向(第1方向)に向けて超音波を照射する探触子30と、探触子30よりもZ1方向に設けられて、セラミックス焼結体Cを回転可能に支持し、Z2方向(第2方向)に移動不可能に位置が固定されている支持部40と、支持部40よりもZ1方向側に設けられて、セラミックス焼結体Cを回転可能に支持しつ、かつZ1方向に移動可能である可動支持部50と、を有する。本開示によると、Z2方向の位置が固定された支持部40を、Z1方向に移動可能な可動支持部50に対して、探触子30側に配置する。これにより、セラミックス焼結体Cを回転させた場合であっても、超音波の表面Caへの入射角度が変動することを抑制でき、欠陥を適切に検出可能となる。
【0062】
本開示の第2態様に係る検査装置10は、第1態様に係る検査装置10であって、セラミックス焼結体Cが検査装置10に取り付けられた状態において、支持部40及び探触子30は、セラミックス焼結体Cの中心C0よりもZ2方向側に位置しており、可動支持部50は、セラミックス焼結体Cの中心よりもZ1方向側に位置していることが好ましい。これにより、超音波の表面Caへの入射角度が変動することをより好適に抑制でき、欠陥を適切に検出可能となる。
【0063】
本開示の第3態様に係る検査装置10は、第1態様又は第2態様に係る検査装置10であって、支持部40は、複数設けられていることが好ましい。これにより、超音波の表面Caへの入射角度が変動することをより好適に抑制でき、欠陥を適切に検出可能となる。
【0064】
本開示の第4態様に係る検査装置10は、第3態様に係る検査装置10であって、それぞれの支持部40は、Z1方向に見て、探触子30からの超音波が照射される位置を囲う位置に設けられていることが好ましい。これにより、超音波の表面Caへの入射角度が変動することをより好適に抑制でき、欠陥を適切に検出可能となる。
【0065】
本開示の第5態様に係る検査装置10は、第4態様に係る検査装置10であって、Z1方向に見て、セラミックス焼結体Cの表面Caの超音波が照射される照射位置が、それぞれの支持部40を頂点とした多角形の重心に位置するように、支持部40が配置されていることが好ましい。これにより、超音波の表面Caへの入射角度が変動することをより好適に抑制でき、欠陥を適切に検出可能となる。
【0066】
本開示の第6態様に係る検査装置10は、第1態様から第5態様のいずれかに係る検査装置10であって、探触子30として、縦波の超音波を照射する第1探触子30Aと、横波の超音波及び表面波の超音波の少なくとも一方を照射する第2探触子30Bとが設けられていることが好ましい。これにより、セラミックス焼結体Cの欠陥をより好適に検出できる。
【0067】
本開示の第7態様に係る検査装置10は、第6態様に係る検査装置10であって、セラミックス焼結体Cが検査装置10に取り付けられた状態において、第1探触子30Aは、セラミックス焼結体Cの中心軸AXc1に沿った方向に、縦波の超音波を照射し、第2探触子30Bは、セラミックス焼結体Cの中心軸AXc2に対して傾斜する方向に、横波の超音波及び表面波の超音波の少なくとも一方の超音波を照射することが好ましい。これにより、縦波の反射波により比較的に深い位置にある欠陥を検出し、横波又は表面波の反射波により表面近傍の欠陥や表面欠陥を検出可能となるため、セラミックス焼結体Cの欠陥をより好適に検出できる。
【0068】
本開示の第8態様に係る検査装置10は、第1態様から第7態様のいずれかに係る検査装置10であって、セラミックス焼結体Cを収納し、内部に溶媒Wが貯留される容器20を更に含み、支持部40及び可動支持部50は、容器20内に設けられることが好ましい。これにより、溶媒Wにセラミックス焼結体Cを浸漬させた状態で検査ができるため、セラミックス焼結体Cの欠陥をより好適に検出できる。
【0069】
本開示の第9態様に係る検査方法は、セラミックス焼結体の検査方法であって、探触子30よりもZ1方向に設けられてZ2方向に移動不可能に位置が固定されている支持部40と、支持部40よりもZ1方向側に設けられる可動支持部50とによって、セラミックス焼結体Cを回転可能に支持することと、探触子30から、Z1方向に向けて、支持されたセラミックス焼結体Cに超音波を照射することと、を含む。本開示によると、セラミックス焼結体Cの欠陥を好適に検出できる。
【0070】
本開示の第10態様に係る製造方法は、セラミックス焼結体の製造方法であって、セラミックス成形体を焼結してセラミックス焼結体Cを得ることと、第9態様の検査方法により、セラミックス焼結体Cを検査することと、を含む。本開示によると、セラミックス焼結体Cの欠陥を好適に検出できる。
【0071】
以上、本発明の実施形態を説明したが、この実施形態の内容により実施形態が限定されるものではない。また、前述した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、前述した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。さらに、前述した実施形態の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0072】
10 検査装置
20 容器
30 探触子
40 支持部
50 可動支持部
70 検査制御装置
C セラミックス焼結体
Ca 表面