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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168706
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】基板処理方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 16/02 20060101AFI20241128BHJP
   C23C 16/26 20060101ALI20241128BHJP
   H01L 21/205 20060101ALI20241128BHJP
   H01L 21/314 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
C23C16/02
C23C16/26
H01L21/205
H01L21/314 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023085600
(22)【出願日】2023-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】金子 都
(72)【発明者】
【氏名】光成 正
(72)【発明者】
【氏名】藤井 康
【テーマコード(参考)】
4K030
5F045
5F058
【Fターム(参考)】
4K030AA03
4K030AA06
4K030AA09
4K030AA14
4K030AA16
4K030AA17
4K030AA18
4K030BA27
4K030CA04
4K030CA12
4K030DA02
4K030EA01
4K030EA05
4K030EA06
4K030FA01
4K030GA02
4K030GA12
4K030HA01
4K030JA01
4K030JA09
4K030JA10
4K030JA11
4K030JA16
4K030JA18
5F045AA08
5F045AB02
5F045AB07
5F045AC00
5F045AC01
5F045AC05
5F045AC08
5F045AC14
5F045AC15
5F045AC16
5F045AC17
5F045AD08
5F045AD09
5F045AD10
5F045AE21
5F045AF03
5F045AF10
5F045BB17
5F045CB06
5F045DA69
5F045DP03
5F045DQ10
5F045DQ17
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5F045EH20
5F045EK07
5F045EM02
5F045EM09
5F045EM10
5F045EN04
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5F045HA11
5F058BA10
5F058BC09
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5F058BE10
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5F058BF23
5F058BF24
5F058BF26
5F058BF27
5F058BF36
5F058BF37
5F058BF72
5F058BG01
5F058BG02
5F058BG03
5F058BG04
5F058BJ10
(57)【要約】
【課題】膜剥がれを抑制する基板処理方法を提供する。
【解決手段】金属含有膜が形成された基板を準備する工程と、前記基板にシリコン含有ガスを供給して、前記基板を第1の期間、前記シリコン含有ガスにさらして前記金属含有膜の表面を改質する処理を施す工程と、前記表面を改質する処理が施された前記基板を炭素含有ガスを含む処理ガスのプラズマにさらして、改質された基板表面上に1GPa以上の膜応力を有する炭素含有膜を形成する工程と、を有する、基板処理方法。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属含有膜が形成された基板を準備する工程と、
前記基板にシリコン含有ガスを供給して、前記基板を第1の期間、前記シリコン含有ガスにさらして前記金属含有膜の表面を改質する処理を施す工程と、
前記表面を改質する処理が施された前記基板を炭素含有ガスを含む処理ガスのプラズマにさらして、改質された基板表面上に1GPa以上の膜応力を有する炭素含有膜を形成する工程と、を有する、
基板処理方法。
【請求項2】
前記表面を改質する処理を施す工程は、前記表面に疎水基を形成する、
請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項3】
前記シリコン含有ガスは、シリコン(Si)及び水素(H)を含むガスである、
請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項4】
前記シリコン含有ガスは、Si-H結合を有する、
請求項3に記載の基板処理方法。
【請求項5】
前記シリコン含有ガスは、SiH、Si、Si、高次シラン、SiHCl、SiHCl、および、有機Si前駆体のうちの少なくとも1つを含む、
請求項3に記載の基板処理方法。
【請求項6】
前記第1の期間は、2sec~30secの範囲内である、
請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項7】
前記表面を改質する処理を施す工程における前記基板の温度は、400℃~700℃の範囲内である、
請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項8】
前記金属含有膜は、TiN膜である、
請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項9】
前記TiN膜の膜厚は20nm~100nmである、
請求項8に記載の基板処理方法。
【請求項10】
前記炭素含有ガスは、炭素(C)及び水素(H)を含むガス、炭素(C)及びフッ素(F)を含むガス、炭素(C)及び酸素(O)を含むガス、炭素(C)及び金属を含むガスのうちの少なくとも1つを含む、
請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項11】
前記処理ガスは、不活性ガスを含む、
請求項10に記載の基板処理方法。
【請求項12】
前記処理ガスは、水素ガスをさらに含む、
請求項10に記載の基板処理方法。
【請求項13】
前記炭素含有膜を形成する工程の処理圧力は、5mT~200mTである、
請求項10に記載の基板処理方法。
【請求項14】
前記炭素含有膜を形成する工程のプラズマパワーは、10W~300Wである、
請求項10に記載の基板処理方法。
【請求項15】
炭素膜の膜厚は、20nm~100nmである、
請求項10に記載の基板処理方法。
【請求項16】
基板にハードマスクを形成する基板処理方法であって、
前記基板を準備する工程と、
前記基板に金属含有膜を形成する工程と、
前記金属含有膜を形成された前記基板にシリコン含有ガスを供給して、前記基板を第1の期間、前記シリコン含有ガスにさらして前記金属含有膜の表面を改質する工程と、
前記金属含有膜の前記表面を改質する工程で処理された前記基板を炭素含有ガスを含む処理ガスのプラズマにさらして、改質された基板表面上に1GPa以上の膜応力を有する炭素含有膜を形成して、前記金属含有膜及び前記炭素含有膜を含む前記ハードマスクを形成する工程と、を有する、
基板処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、a-CF膜は絶縁膜又は金属膜との密着性が非常に悪いため、a-CF膜と絶縁膜又は金属膜との間に密着層を形成することが不可欠となることが開示されている。また、密着層としては、シリコンリッチ酸化膜とダイアモンドライクカーボン(DLC)膜との積層構造が提案されており、シリコンリッチ酸化膜は下地酸化膜及び金属膜との密着性を有していると共にDLC膜との密着性も有しており、また、DLC膜はa-CF膜との密着性を有していることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-58641号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一の側面では、本開示は、膜剥がれを抑制する基板処理方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、一の態様によれば、金属含有膜が形成された基板を準備する工程と、前記基板にシリコン含有ガスを供給して、前記基板を第1の期間、前記シリコン含有ガスにさらして前記金属含有膜の表面を改質する処理を施す工程と、前記表面を改質する処理が施された前記基板を炭素含有ガスを含む処理ガスのプラズマにさらして、改質された基板表面上に1GPa以上の膜応力を有する炭素含有膜を形成する工程と、を有する、基板処理方法が提供される。
【発明の効果】
【0006】
一の側面によれば、本開示は、膜剥がれを抑制する基板処理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】一実施形態に係る処理システムの一例を示す図。
図2】一実施形態に係る基板処理方法の一例を示すフローチャート。
図3】一実施形態に係る基板処理方法によって処理された基板の断面模式図の一例。
図4】処理装置の一例を示す概略断面図。
図5】改質処理が施された基板の表面状態を示す断面模式図の一例。
図6】一実施形態の基板処理方法における金属含有膜と炭素含有膜との密着性を示す模式図。
図7】参考例の基板処理方法における金属含有膜と炭素含有膜との密着性を示す模式図。
図8】基板表面に形成された炭素含有膜の状態を示す図。
図9】質量分析の結果の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本開示を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0009】
[処理システム]
一実施形態に係る基板処理方法に用いられる処理システム100について、図1を用いて説明する。図1は、一実施形態に係る処理システム100の一例を示す図である。
【0010】
処理システム100は、処理装置101~104と、真空搬送室105と、ロードロック室301~303と、大気搬送室400と、ロードポート501~504と、制御装置600と、を有する。
【0011】
処理装置101~104は、それぞれゲートバルブG11~G14を介して真空搬送室105と接続されている。処理装置101~104内は所定の真空雰囲気に減圧され、その内部にて基板Wに所望の処理を施す。
【0012】
処理装置101は、後述する図2のステップS12を実行し、基板Wの基部21(後述する図3参照)の上に金属含有膜22(後述する図3参照)を形成する処理装置(成膜装置)である。金属含有膜22は、例えばTiN膜である。
【0013】
具体的には、処理装置101は、処理装置101の処理容器内にTi含有ガス(例えば、TiClガス)と、反応ガス(窒化ガス、例えば、アンモニアガス又はNガス)と、を交互に供給してALD(Atomic Layer Deposition)法により基板W上にTiN膜(金属含有膜22)を形成する。なお、処理装置101は、ALD法により基板Wに金属含有膜22を形成する成膜装置であるものとして説明したが、これに限られるものではない。例えば、処理装置101は、CVD(Chemical Vapor Deposition)法により基板Wに金属含有膜22を形成する成膜装置であってもよく、PVD(Physical Vapor Deposition)法により基板Wに金属含有膜22を形成する成膜装置であってもよい。
【0014】
処理装置102は、後述する図2のステップS13を実行し、基板Wに形成された金属含有膜22の表面をSi含有ガスで改質することにより、基板Wの表面にモノレイヤー相当のSi、及び/又は、SiHxを吸着させる処理装置である。なお、処理装置102の一例は、図4を用いて後述する。
【0015】
処理装置103は、後述する図2のステップS14を実行し、基板Wの金属含有膜22の上に炭素含有膜24(後述する図3参照)を形成する処理装置(成膜装置)である。炭素含有膜24は、例えばDLC(Diamond Like Carbon)膜である。なお、処理装置103の一例は、図4を参照しつつ後述する。
【0016】
処理装置104は、処理装置101~103のいずれかと同一の処理プロセスを実行する処理装置、又は、処理装置101~103のいずれとも異なる処理プロセスを実行する処理装置(例えば、アニール装置やエッチング装置など)であってもよい。また、基板W上に金属含有膜22を形成する処理と、基板Wに形成された金属含有膜22の表面をSi含有ガスで改質する処理とは、同一の処理装置で実施される構成であってもよい。
【0017】
真空搬送室105内は、所定の真空雰囲気に減圧されている。真空搬送室105は、基板Wを搬送する搬送装置の一例である。真空搬送室105には、減圧状態で基板Wを搬送可能な搬送機構106が設けられている。搬送機構106は、処理装置101~104、ロードロック室301~303に対して、基板Wを搬送する。
【0018】
ロードロック室301~303は、それぞれゲートバルブG21~G23を介して真空搬送室105と接続され、ゲートバルブG31~G33を介して大気搬送室400と接続されている。ロードロック室301~303内は、大気雰囲気と真空雰囲気とを切り替えることができるようになっている。
【0019】
大気搬送室400内は、大気雰囲気となっており、例えば清浄空気のダウンフローが形成されている。大気搬送室400内には、基板Wのアライメントを行う図示しないアライナが設けられている。また、大気搬送室400には、搬送機構402が設けられている。搬送機構402は、ロードロック室301~303、後述するロードポート501~504のキャリアC、アライナに対して、基板Wを搬送する。
【0020】
ロードポート501~504は、大気搬送室400の壁面に設けられている。ロードポート501~504は、ゲートバルブG41~G44を介して基板Wが収容されたキャリアC又は空のキャリアCが取り付けられる。キャリアCとしては、例えばFOUP(Front Opening Unified Pod)を利用できる。
【0021】
制御装置600は、処理システム100の各部を制御する。例えば、制御装置600は、処理装置101~104の動作、搬送機構106,402の動作、ゲートバルブG11~G14,G21~G23,G31~G33,G41~G44の開閉、ロードロック室301~303内の雰囲気の切り替え等を実行する。
【0022】
[基板処理方法]
次に、図1に示す処理システム100を用いた基板処理方法の一例について、図2及び図3を用いて説明する。図2は、一実施形態に係る基板処理方法の一例を示すフローチャートである。図3は、一実施形態に係る基板処理方法によって処理された基板Wの断面模式図の一例である。
【0023】
ここでは、図3に示すように、基部21を有する基板Wに、金属含有膜22及び炭素含有膜24を形成する。基部21は、例えばシリコン基板で形成されていてもよく、また、例えば、シリコン酸化膜やシリコン窒化膜で形成されていてもよい。また、基部21には、例えば、MTJ(Magnetic Tunnel Junction)素子、MRAM(Magnetoresistive Random Access Memory)等の半導体装置となる構造が形成されていてもよい。
【0024】
金属含有膜22は、例えば、TiN膜である。炭素含有膜24は、例えば、DLC(Diamond Like Carbon)膜である。なお、金属含有膜22及び炭素含有膜24は、基部21(例えばMTJ素子等)のハードマスクとして用いることができる。この場合、TiN膜(金属含有膜22)の膜厚は、20nm~100nmが好ましい。また、DLC膜(炭素含有膜24)の膜厚は、20nm~100nmが好ましい。なお、金属含有膜22は、他の金属含有膜であってもよい。例えば、タングステン(W)、コバルト(Co)、銅(Cu)、ルテニウム(Ru)、マグネシウム(Mg)、鉄(Fe)、チタン(Ti)、及びその酸化物、窒化物、又は、酸窒化物であってもよい。
【0025】
ここで、DLC膜(炭素含有膜24)は、高ストレス(compressive stress)を有している。このため、TiN膜(金属含有膜22)の上にDLC膜(炭素含有膜24)を形成した場合、高ストレスによりDLC膜(炭素含有膜24)の膜剥がれが発生するおそれがある。これに対し、図2に示す一実施形態に係る基板処理方法では、DLC膜(炭素含有膜24)の膜剥がれを抑制して、TiN膜(金属含有膜22)とDLC膜(炭素含有膜24)との積層膜を形成することができる。
【0026】
ステップS11において、基板Wを準備する。ここで、準備される基板Wは、基部21(図3参照)を有している。ここでは、基部21を有する基板Wが収容されたキャリアCがロードポート501~504のいずれかに取り付けられる。そして、制御装置600は、搬送機構402等を制御して、基板WをキャリアCからロードロック室301~303のいずれかに搬送する。また、制御装置600は、搬送機構106等を制御して、基板Wをロードロック室301~303のいずれかから処理装置101に搬送する。
【0027】
ステップS12において、基板Wに金属含有膜22を形成する金属含有膜形成工程を行う。制御装置600は、処理装置101を制御して、基板Wの基部21の上に金属含有膜22(TiN膜)を形成する。具体的には、金属含有膜22の形成は、ALD法により基板Wに金属含有膜22を形成する。なお、金属含有膜22の形成は、上述の通り、ALD法に限られるものではない。例えば、金属含有膜22の形成は、CVD(Chemical Vapor Deposition)法により形成してもよく、PVD(Physical Vapor Deposition)法により基板Wに金属含有膜22を形成してもよい。
【0028】
ステップS13において、Si含有ガスで基板表面を改質する工程を行う。まず、制御装置600は、搬送機構106等を制御して、基板Wを処理装置101から処理装置102に搬送する。そして、制御装置600は、処理装置102を制御して、Si含有ガスを供給して基板表面を改質する。
【0029】
ここで、基板表面を改質する処理装置102の一例について、図4を用いて説明する。図4は、処理装置102の一例を示す概略断面図である。処理装置102は、減圧状態の処理容器702内で基板Wを所定の温度(例えば400℃以上)に加熱した状態で、処理容器702内にSi含有ガスを供給することにより基板Wに形成された金属含有膜22(TiN膜)の表面(炭素含有膜24と接合する面)を改質する装置である。
【0030】
処理装置102は、略円筒状の気密な処理容器702を備える。処理容器702の底壁の中央部分には、排気室721が設けられている。排気室721は、下方に向けて突出する例えば略円筒状の形状を備える。排気室721には、例えば排気室721の側面において、排気流路722が接続されている。排気流路722には、圧力調整部723を介して排気部724が接続されている。圧力調整部723は、例えばバタフライバルブ等の圧力調整バルブを備える。排気流路722は、排気部724によって処理容器702内を減圧できるように構成されている。処理容器702の側面には、搬送口725が設けられている。搬送口725は、ゲートバルブ726によって開閉自在に構成されている。処理容器702内と搬送室(図示せず)との間における基板Wの搬入出は、搬送口725を介して行われる。
【0031】
処理容器702内には、基板Wを略水平に保持するための載置台703が設けられている。載置台703は、平面視で略円形状に形成されており、支持部材731によって支持されている。載置台703の表面には、例えば直径が300mmの基板Wを載置するための略円形状の凹部732が形成されている。凹部732は、基板Wの直径よりも僅かに(例えば1mm~4mm程度)大きい内径を有する。凹部732の深さは、例えば基板Wの厚さと略同一に構成される。載置台703は、例えば窒化アルミニウム(AlN)等のセラミックス材料により形成されている。また、載置台703は、ニッケル(Ni)等の金属材料により形成されていてもよい。なお、凹部732の代わりに載置台703の表面の周縁部に基板Wをガイドするガイドリングを設けてもよい。
【0032】
載置台703には、下部電極733が埋設される。下部電極733の下方には、温調機構734が埋設される。温調機構734は、制御部709からの制御信号に基づいて、載置台703に載置された基板Wを設定温度に調整する。
【0033】
下部電極733には、整合器735aを介してRF電源735が接続されている。RF電源735は、後述するRF電源751の周波数よりも低い周波数(LF;Low Frequency)の電力を下部電極733に印加する。RF電源735が発生する低周波電力は、基板Wにイオンを引き込むためのバイアス用の低周波電力として用いられる。RF電源735の周波数は、450kHz~27MHzであり、例えば、13.56MHzである。
【0034】
載置台703には、載置台703に載置された基板Wを保持して昇降するための複数本(例えば3本)の昇降ピン741が設けられている。昇降ピン741の材料は、例えばアルミナ(Al)等のセラミックスや石英等であってよい。昇降ピン741の下端は、支持板742に取り付けられている。支持板742は、昇降軸743を介して処理容器702の外部に設けられた昇降機構744に接続されている。
【0035】
昇降機構744は、例えば排気室721の下部に設置されている。ベローズ745は、排気室721の下面に形成された昇降軸743用の開口部721aと昇降機構744との間に設けられている。支持板742の形状は、載置台703の支持部材731と干渉せずに昇降できる形状であってもよい。昇降ピン741は、昇降機構744によって、載置台703の表面の上方の側と、載置台703の表面の下方の側との間で、昇降自在に構成される。言い換えると、昇降ピン741は、載置台703の上面から突出可能に構成される。
【0036】
また、支持部材731の下端部は、排気室721の開口部721bを貫通し、処理容器702の下方に配置された昇降板747を介して、昇降機構746に支持される。排気室721の底部と昇降板747との間には、ベローズ748が設けられており、昇降板747の上下動によっても処理容器702内の気密性は保たれる。
【0037】
昇降機構746が昇降板747を昇降させることにより、載置台703を昇降することができる。これにより、載置台703と上部電極プレート705の下面とのギャップを調整することができる。
【0038】
処理容器702の天壁727には、絶縁部材728を介して上部電極プレート705が設けられている。上部電極プレート705は、上部電極を成しており、下部電極733に対向して平行に配置されている。上部電極プレート705には、整合器751aを介してRF電源751が接続されている。RF電源751は、RF電源735の周波数よりも高い周波数(HF;High Frequency)の電力を上部電極プレート705に供給する。RF電源751が発生する高周波電力は、基板Wの成膜に必要なプラズマ生成用の高周波電力として用いられる。RF電源751の周波数は、例えば、450KHz~2.45GHzである。RF電源751から上部電極プレート705にRF電力が印加される。これにより、載置台703と上部電極プレート705との間にRF電界が生じるように構成されている。上部電極プレート705は、中空状のガス拡散室752を備える。ガス拡散室752の下面には、処理容器702内へ処理ガスを分散供給するための多数の孔753が例えば均等に配置されている。上部電極プレート705における例えばガス拡散室752の上方には、加熱機構754が埋設されている。加熱機構754は、制御部709からの制御信号に基づいて図示しない電源部から給電されることによって、設定温度に加熱される。
【0039】
ガス拡散室752には、ガス供給路706が設けられている。ガス供給路706は、ガス拡散室752に連通している。ガス供給路706の上流側には、ガスライン762を介してガス源761が接続されている。ガス源761は、例えば各種の処理ガスの供給源、マスフローコントローラ、バルブ(いずれも図示せず)を含む。ここで、基板表面を改質する工程において、シリコン(Si)及び水素(H)を含有する処理ガスが用いられる。また、処理ガスは、Si-H結合を含むガスが用いられる。具体的には、処理ガスは、シラン(SiH)、ジシラン(Si)、トリシラン(Si)、高次シラン、ジクロロシラン(SiHCl、以下DCSともいう。)、トリクロロシラン(SiHCl)、および、トリス(ジメチルアミド)シラン(((CH)N)SiH、以下、TDMASともいう。)などの有機Si前駆体等のうち少なくともいずれかを含む。処理ガスは、不活性ガスや希釈ガス(例えば、H、Ar、He、O、N)を含んでもよい場合がある。各種のガスは、ガス源761からガスライン762を介してガス拡散室752に導入される。
【0040】
処理装置102は、制御部709を備える。制御部709は、例えばコンピュータであり、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、補助記憶装置等を備える。CPUは、ROM又は補助記憶装置に格納されたプログラムに基づいて動作し、処理装置102の動作を制御する。制御部709は、処理装置102の内部に設けられていてもよく、外部に設けられていてもよい。制御部709が処理装置102の外部に設けられている場合、制御部709は、有線又は無線等の通信手段によって、処理装置102を制御できる。
【0041】
制御部709は、温調機構734を制御して、基板Wの温度を所定の温度とする。また、温調機構734は、圧力調整部723及び排気部724を制御して、処理容器702内を所定の圧力とする。また、制御部709は、ガス源761を制御して、所定の期間(第1の期間)で処理容器702内にSi含有ガスを供給する。
【0042】
このような構成により、処理装置102は、基板Wを所定の温度(例えば400℃以上)に加熱した状態で、処理容器702内にSi含有ガスを供給することにより基板Wに形成された金属含有膜22(TiN膜)の表面(炭素含有膜24と接合する面)を改質する。
【0043】
ここで、金属含有膜22(TiN膜)の表面を改質する際の処理条件の例を挙げる。
第1の期間:2sec~30sec
基板温度:400℃~700℃
処理圧力:1000mT~5000mT
【0044】
図5は、改質処理が施された基板Wの表面状態を示す断面模式図の一例である。
【0045】
ここで、TiN膜(金属含有膜22)は、親水性膜である。Si含有ガスを基板Wの表面に供給することにより、Si原子23a及びH原子23bを有する疎水基23がTiN膜(金属含有膜22)の表面に物理吸着及び/又は化学結合する。即ち、TiN膜中のTiとSiHx(xは任意の数)とが化学結合して、Ti-SiHxを形成する。換言すれば、金属含有膜22の終端基を(-SiHx)とする。また、TiN膜の表面にSi及び/又はSiHx(xは任意の数)が物理吸着する。これにより、親水性膜であるTiN膜(金属含有膜22)の表面を、疎水性の表面とする。即ち、ステップS13において、基板WにSi含有ガスを供給し、基板表面を疎水性の表面に改質する。
【0046】
また、処理装置102は、Si含有ガスのプラズマを生成し、基板表面を疎水性の表面に改質してもよい。具体的には、制御部709は、Si含有ガスのプラズマで金属含有膜22の表面に疎水基23を形成する。制御部709は、温調機構734を制御して、基板Wの温度を所定の温度(例えば、300℃以下)とする。また、温調機構734は、圧力調整部723及び排気部724を制御して、処理容器702内を所定の圧力とする。また、制御部709は、ガス源761を制御して所定の期間(第1の期間)で処理容器702内にSi含有ガスを供給する。また、制御部709は、RF電源751を制御して上部電極プレート705に高周波電力(HF)を印加する。制御部709は、RF電源735を制御して下部電極733に低周波電力(LF)を印加する。これにより、Si含有ガスのプラズマが生成され、このプラズマにより基板Wの金属含有膜22の表面に疎水基23が形成される。また、プラズマを用いることにより、改質処理を低温化することができる。
【0047】
ここで、金属含有膜22(TiN膜)の表面を改質する際の処理条件の例を挙げる。
第1の期間:2sec~20sec
基板温度:300℃~500℃
処理圧力:100mT~5000mT
プラズマパワー:10W~2000W
【0048】
なお、上記では、上部電極プレート705に高周波電力(HF)を印加し、下部電極733に低周波電力(LF)を印加する例を説明したが、この限りではない。例えば、上部電極プレート705に高周波電力(HF)および低周波電力(LF)の2周波を印加してもよいし、下部電極733に高周波電力(HF)および低周波電力(LF)の2周波を印加してもよい。
【0049】
ステップS104において、基板Wを炭素含有ガスを含む処理ガスのプラズマにさらして、疎水化された基板表面に1GPa以上の膜応力を有する炭素含有膜24を形成する(炭素含有膜形成工程)。なお、膜応力は、圧縮方向であってもよく、引張方向であってもよい。即ち、絶対値が1GPa以上の膜応力を有する炭素含有膜24を形成する。まず、制御装置600は、搬送機構106等を制御して、基板Wを処理装置102から処理装置103に搬送する。そして、制御装置600は、処理装置103を制御して、炭素含有ガスのプラズマにより基板表面が改質された基板Wの上に炭素含有膜24を形成する。
【0050】
ここで、炭素含有膜24を形成する処理装置103は、例えば、図4に示す処理装置102と同様の装置構成であってよい。但し、処理装置103では、ガス源761から供給する処理ガスのガス種が異なっている。
【0051】
なお、炭素含有膜の形成工程において用いられる処理ガスには、炭素含有ガスを含む。炭素含有ガスは、炭素(C)及び水素(H)を含むガス(CxHy)、炭素(C)及びフッ素(F)を含むガス(CxFy)、炭素(C)及び酸素(O)を含むガス(例えば、CO)や、炭素(C)及び金属を含むガス(例えば、TDMATなどの有機金属プリカーサ)のうちの少なくとも1つを含む(なお、x、yは任意の数)。また、炭素含有ガスは、例えば、CH、C、C、C、Cを含む。また、処理ガスは、不活性ガスや希釈ガス(例えば、H、Ar、He、O、N)を含んでもよい場合がある。また、処理ガスは、水素ガスをさらに含んでいてもよい。各種のガスは、ガス源761からガスライン762を介してガス拡散室752に導入される。
【0052】
このような構成により、処理装置103は、基板表面に炭素含有膜を形成する。具体的には、制御部709は、炭素含有ガスのプラズマで炭素含有膜を形成する。制御部709は、温調機構734を制御して、基板Wの温度を所定の温度とする。また、温調機構734は、圧力調整部723及び排気部724を制御して、処理容器702内を所定の圧力とする。また、制御部709は、ガス源761を制御して処理容器702内に炭素含有ガスを供給する。また、制御部709は、RF電源751を制御して上部電極プレート705に高周波電力(HF)を印加する。制御部709は、RF電源735を制御して下部電極733に低周波電力(LF)を印加する。これにより、炭素含有ガスのプラズマが生成され、このプラズマにより基板Wの上に炭素含有膜が形成される。
【0053】
ここで、1GPa以上の膜応力を有する炭素含有膜24を形成する際の成膜条件の例を挙げる。
処理圧力:5mT~200mT
プラズマパワー:10W~3000W
炭素含有膜の膜厚:20nm~100nm
【0054】
なお、上記では、上部電極プレート705に高周波電力(HF)を印加し、下部電極733に低周波電力(LF)を印加する例を説明したが、この限りではない。例えば、上部電極プレート705に高周波電力(HF)および低周波電力(LF)の2周波を印加してもよいし、下部電極733に高周波電力(HF)および低周波電力(LF)の2周波を印加してもよい。
【0055】
以上のように、基板Wに金属含有膜22及び炭素含有膜24を含むハードマスクが形成される。その後、制御装置600は、搬送機構106等を制御して、処理装置103からロードロック室301~303のいずれかに基板Wを搬送する。そして、制御装置600は、搬送機構402等を制御して、基板Wをロードロック室301~303のいずれかからキャリアCに搬送する。
【0056】
なお、処理システム100は、基部21を有する基板Wが収容されたキャリアCがロードポート501~504に取り付けられ、金属含有膜22及び炭素含有膜24が成膜された基板WをキャリアCに再び収容するものとして説明したが、これに限られるものではない。処理システム100は、少なくとも、処理装置102及び処理装置103を備え、金属含有膜22及び基部21を有する基板Wが収容されたキャリアCがロードポート501~504に取り付けられ、金属含有膜22の表面を改質し、金属含有膜22の上に炭素含有膜24が成膜された基板WをキャリアCに再び収容する構成であってもよい。
【0057】
また、図1では、金属含有膜22を形成した後、改質処理を施す前において、真空雰囲気で基板Wを搬送する構成を例に説明したが、これに限られるものではない。金属含有膜22を形成した後、改質処理を施す前において、大気雰囲気で基板Wを搬送する構成であってもよい。また、改質処理を施した後、炭素含有膜24を形成する前において、真空雰囲気で基板Wを搬送する構成を例に説明したが、これに限られるものではない。改質処理を施した後、炭素含有膜24を形成する前において、大気雰囲気で基板Wを搬送する構成であってもよい。
【0058】
図6は、一実施形態の基板処理方法における金属含有膜22と炭素含有膜24との密着性を示す模式図である。図6では、金属含有膜22と炭素含有膜24との密着力31を模式的に矢印の大きさで示している。一実施形態の基板処理方法では、図2のフローチャートで示す基板処理方法によって金属含有膜22の表面をSi含有ガスで改質(S13参照)した後、炭素含有膜24を形成(S14参照)する。
【0059】
図7は、参考例の基板処理方法における金属含有膜22と炭素含有膜24との密着性を示す模式図である。図7では、金属含有膜22と炭素含有膜24との密着力32を模式的に矢印の大きさで示している。また、参考例の基板処理方法では、改質処理(S13参照)を行わずに、金属含有膜22に炭素含有膜24を形成する。
【0060】
図7に示す参考例において、TiN膜(金属含有膜22)は、親水性膜である。一方、DLC膜(炭素含有膜24)は、C=C結合、C-C結合、C-H結合を主とする有機膜であり、疎水性膜である。このため、TiN膜(金属含有膜22)とDLC膜(炭素含有膜24)との接合面では、親水性膜と疎水性膜の接合となっており、密着性が悪く、密着力32が小さい。このため、TiN膜の上に1GPa以上の膜応力を有するDLC膜を成膜すると、DLC膜自身の膜応力によってDLC膜の膜剥がれが生じる。
【0061】
これに対し、図6に示す一実施形態において、Si原子23a及びH原子23bを有する疎水基23(SiHx)がTiN膜(金属含有膜22)の表面に物理吸着及び/又は化学結合する。このため、TiN膜(金属含有膜22)とDLC膜(炭素含有膜24)との接合面では、疎水性表面と疎水性膜の接合となっており、密着性が良く、密着力31が大きい。このため、TiN膜の上に1GPa以上の膜応力を有するDLC膜を成膜しても、DLC膜の膜剥がれを抑制することができる。
【0062】
図8は、基板表面に形成された炭素含有膜24の状態を示す図である。
【0063】
ここで、図8において、(a)は、ALD法でTiN膜を形成し、改質処理を行わずに、TiN膜の上にDLC膜を形成した場合である(As Depo TiN)。(b)は、ALD法でTiN膜を形成し、基板温度600℃でDCSを2.5sec供給して改質処理を行った後、TiN膜の上にDLC膜を形成した場合である(DCS flow 2.5sec)。(c)は、ALD法でTiN膜を形成し、基板温度600℃でDCSを20sec供給して改質処理を行った後、TiN膜の上にDLC膜を形成した場合である(DCS flow 20sec)。また、(a)~(c)のそれぞれについて、DLC膜の形成後大気開放前の状態、大気開放直後の状態、大気開放から10min経過後の状態について、DLC膜の膜剥がれを観察した。図中、「○」は膜剥がれがなかったことを示し、「×」は膜剥がれたあったことを示す。なお、DLC膜は、膜応力-3GPa(compressive stress)、膜密度2.1g/cm、膜厚40nmで成膜した。
【0064】
図8の(a)に示すように、改質処理を行わずに、TiN膜の上にDLC膜を成膜した場合、大気開放直後から膜剥がれが発生し、大気開放から10min経過後では全面にわたってDLC膜の膜剥がれが発生した。
【0065】
これに対し、図8の(b)(c)に示すように、改質処理を行ったTiN膜の上にDLC膜を成膜した場合、大気開放直後及び大気開放から10min経過後のいずれにおいてもDLC膜の膜剥がれが生じなかった。なお、図示は省略するが、(b)(c)のいずれにおいても、大気開放から一か月経過した時点においても、DLC膜の膜剥がれが生じなかった。
【0066】
図9は、質量分析の結果の一例を示すグラフである。
【0067】
ここでは、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF-SIMS:Time-of-Flight Secondary Ion Mass Spectrometry)を用いて、TiN膜の分析を行った。(a)(b)は、ALD法によってTiN膜を成膜し、DCSを供給する前の基板Wにおける分析結果である(DCS 0sec)。(c)(d)は、ALD法によってTiN膜を成膜し、基板温度600℃でDCSを20sec供給して改質処理を行った後の基板Wにおける分析結果である(DCS 20sec)。また、(a)及び(c)は、Si(m/z=28)における解析結果を示す。(b)及び(d)は、Si-H(m/z=29)における解析結果を示す。
【0068】
図9に示すように、基板温度600℃でDCSを20sec供給して改質処理を行うことにより、TiN膜の表面にSi-Hが物理吸着及び/又は化学結合していることが確認された。また、図示していないが基板温度600℃でDCSを2.5sec供給して改質処理を行うことにより、DCSを20sec供給して改質処理を行ったときと同様、TiN膜の表面にSi-Hが物理吸着及び/又は化学結合していることが確認された。
【0069】
以上の様に、基板表面に炭素含有膜24を形成する前に、まず、改質処理によって金属含有膜22の基板表面を疎水性の表面とする。そして、疎水性の表面に炭素含有膜24を成膜することにより、金属含有膜22と炭素含有膜24との密着性を向上させることができる。また、炭素含有膜24の膜剥がれを抑制することができる。
【0070】
また、DLC膜は、膜密度が高いほど、ストレスが大きい傾向を有する。一実施形態に係る基板処理方法によれば、膜密度が高く、1GPa以上の高ストレスのDLC膜においても、膜剥がれを抑制することができる。
【0071】
以上、金属含有膜22の上に炭素含有膜24を形成する基板処理方法について説明したが、本開示は上記実施形態等に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本開示の要旨の範囲内において、種々の変形、改良が可能である。
【符号の説明】
【0072】
W 基板
21 基部
22 金属含有膜
23 疎水基
23a Si原子
23b H原子
24 炭素含有膜
100 処理システム
101~104 処理装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9