(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168709
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】ウエーハの加工方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/301 20060101AFI20241128BHJP
B23K 26/364 20140101ALI20241128BHJP
【FI】
H01L21/78 A
H01L21/78 F
H01L21/78 B
B23K26/364
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023085605
(22)【出願日】2023-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バン ヒョンジン
(72)【発明者】
【氏名】イ ヒジョン
【テーマコード(参考)】
4E168
5F063
【Fターム(参考)】
4E168AD02
4E168CB03
4E168CB07
4E168DA43
4E168HA01
4E168JA12
4E168JA13
5F063AA05
5F063AA41
5F063BA20
5F063BA33
5F063BA43
5F063BA45
5F063BA47
5F063CB02
5F063CB03
5F063CB05
5F063CB06
5F063CB22
5F063CB23
5F063CB25
5F063CB26
5F063CC05
5F063DD25
5F063EE36
5F063FF01
5F063FF05
(57)【要約】
【課題】ウエーハの外周のチップ飛びを防止し、かつチップ品質の悪化を防止すること。
【解決手段】ウエーハの加工方法は、ウエーハの一方の面から、分割予定ラインに沿って、外周余剰領域の一部に第1非加工領域を残存させて、ウエーハを完全に分割しない深さで第1加工溝を形成する第1加工ステップ1100と、第1加工ステップ1100の後に、ウエーハの一方の面に支持部材を固定する支持部材固定ステップ1200と、支持部材固定ステップ1200の後に、ウエーハの他方の面から分割予定ラインに沿って、外周余剰領域の一部に第2非加工領域を残存させて、第1加工溝に至る深さで第2加工溝を形成し、デバイス領域を複数のデバイスチップに分割する第2加工ステップ1300と、を備え、第1非加工領域と第2非加工領域とにおいて、第1加工溝と第2加工溝とが接続せず、ウエーハが分割されないことで、外周余剰領域のチップ飛びを防止する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の分割予定ラインによって区画された領域にそれぞれデバイスが形成されたデバイス領域と、該デバイス領域を囲繞する外周余剰領域と、を有するウエーハを、該分割予定ラインに沿って分割して複数のチップを製造するウエーハの加工方法であって、
該ウエーハの一方の面から、該分割予定ラインに沿って、該外周余剰領域の一部に第1非加工領域を残存させて、該ウエーハを完全に分割しない深さで第1加工溝を形成する第1加工ステップと、
該第1加工ステップの後に、該ウエーハの該一方の面に支持部材を固定する支持部材固定ステップと、
該支持部材固定ステップの後に、該ウエーハの他方の面から該分割予定ラインに沿って、該外周余剰領域の一部に第2非加工領域を残存させて、該第1加工溝に至る深さで第2加工溝を形成し、該デバイス領域を複数のデバイスチップに分割する第2加工ステップと、を備え、
該第1非加工領域と、該第2非加工領域と、において、該第1加工溝と、該第2加工溝と、が接続せず、該ウエーハが分割されないことで、該外周余剰領域のチップ飛びを防止する、ウエーハの加工方法。
【請求項2】
該第2加工ステップは、該ウエーハの他方の面から該分割予定ラインに沿って、該外周余剰領域においる該第1非加工領域と重ならない位置に、該第2非加工領域を残存させて、該第1加工溝に至る深さで該第2加工溝を形成する、請求項1に記載のウエーハの加工方法。
【請求項3】
該第1加工ステップと、該第2加工ステップと、は、
該ウエーハの外方で切削ブレードを切り込み深さまで下降させる下降ステップと、
該下降ステップの後に、該切削ブレードと該ウエーハを保持する保持テーブルとを相対的に加工送り方向に移動させて該第1加工溝または該第2加工溝を形成する切削ステップと、
該外周余剰領域において該ウエーハの外縁より内側で該切削ブレードを上昇させて該第1非加工領域または該第2非加工領域を残存させる上昇ステップと、を有する、請求項2に記載のウエーハの加工方法。
【請求項4】
該第1加工ステップと、該第2加工ステップと、は、レーザ光線の照射によって該ウエーハに加工溝を形成する、請求項2に記載のウエーハの加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエーハの加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエーハやパッケージ基板等を複数のチップへと分割する際には、切削ブレードを備える切削装置やレーザ光線を照射するレーザ加工装置が使用される。特許文献1には、基板の表面に積層された機能層に格子状に形成された複数の分割予定ラインによって区画された複数の領域にデバイスが形成されたウエーハを、分割予定ラインに沿って分割するウエーハの加工方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ウエーハを分割して複数のチップを製造する従来の加工方法において、ウエーハの外周のチップ飛びが問題となっている。また、ウエーハの片側からウエーハを完全に切断するフルカットを行う従来の加工方法は、加工負荷が高く表裏面のチッピングが大きくなる等のチップ品質が悪化する傾向があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、その目的は、ウエーハの外周のチップ飛びを防止し、かつチップ品質の悪化を防止することができるウエーハの加工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明のウエーハの加工方法は、複数の分割予定ラインによって区画された領域にそれぞれデバイスが形成されたデバイス領域と、該デバイス領域を囲繞する外周余剰領域と、を有するウエーハを、該分割予定ラインに沿って分割して複数のチップを製造するウエーハの加工方法であって、該ウエーハの一方の面から、該分割予定ラインに沿って、該外周余剰領域の一部に第1非加工領域を残存させて、該ウエーハを完全に分割しない深さで第1加工溝を形成する第1加工ステップと、該第1加工ステップの後に、該ウエーハの該一方の面に支持部材を固定する支持部材固定ステップと、該支持部材固定ステップの後に、該ウエーハの他方の面から該分割予定ラインに沿って、該外周余剰領域の一部に第2非加工領域を残存させて、該第1加工溝に至る深さで第2加工溝を形成し、該デバイス領域を複数のデバイスチップに分割する第2加工ステップと、を備え、該第1非加工領域と、該第2非加工領域と、において、該第1加工溝と、該第2加工溝と、が接続せず、該ウエーハが分割されないことで、該外周余剰領域のチップ飛びを防止する。
【0007】
前記ウエーハの加工方法において、該第2加工ステップは、該ウエーハの他方の面から該分割予定ラインに沿って、該外周余剰領域においる該第1非加工領域と重ならない位置に、該第2非加工領域を残存させて、該第1加工溝に至る深さで該第2加工溝を形成してもよい。
【0008】
前記ウエーハの加工方法において、該第1加工ステップと、該第2加工ステップと、は、該ウエーハの外方で切削ブレードを切り込み深さまで下降させる下降ステップと、該下降ステップの後に、該切削ブレードと該ウエーハを保持する保持テーブルとを相対的に加工送り方向に移動させて該第1加工溝または該第2加工溝を形成する切削ステップと、該外周余剰領域において該ウエーハの外縁より内側で該切削ブレードを上昇させて該第1非加工領域または該第2非加工領域を残存させる上昇ステップと、を有する。
【0009】
前記ウエーハの加工方法において、該第1加工ステップと、該第2加工ステップと、は、レーザ光線の照射によって該ウエーハに加工溝を形成してもよい。
【発明の効果】
【0010】
本願発明は、ウエーハの外周のチップ飛びを防止し、かつチップ品質の悪化を防止することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、ウエーハの加工方法の処理手順を示すフローチャートである。
【
図2】
図2は、ウエーハの加工方法の加工対象のウエーハの一例を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、実施形態1に係る加工装置の構成例を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、
図1に示す第1加工ステップを説明するための模式図である。
【
図5】
図5は、
図1に示す支持部材固定ステップを説明するための模式図である。
【
図6】
図6は、
図1に示す第2加工ステップを説明するための模式図である。
【
図7】
図7は、実施形態2に係る第1加工ステップを説明するための模式図である。
【
図8】
図8は、実施形態2に係る第1加工ステップ及び第2加工ステップの処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、実施形態2に係る各加工ステップを説明するための図である。
【
図10】
図10は、実施形態2に係る第2加工ステップを説明するための模式図である。
【
図11】
図11は、実施形態2の変形例に係る第1加工ステップを説明するための模式図である。
【
図12】
図12は、実施形態2の変形例に係る第2加工ステップを説明するための模式図である。
【
図13】
図13は、ウエーハの加工方法を実施するレーザ加工装置の構成例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る実施形態につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0013】
以下に説明する実施形態において、XYZ直交座標系を設定し、このXYZ直交座標系を参照しつつ各部の位置関係について説明する。水平面内の一方向をX軸方向、水平面内においてX軸方向と直交する方向をY軸方向、X軸方向及びY軸方向のそれぞれと直交する方向をZ軸方向とする。X軸及びY軸を含むXY平面は、水平面と平行である。XY平面と直交するZ軸方向は、鉛直方向である。
【0014】
[実施形態1]
実施形態1に係るウエーハの加工方法を図面に基づいて説明する。
図1は、ウエーハの加工方法の処理手順を示すフローチャートである。
図2は、ウエーハの加工方法の加工対象のウエーハの一例を示す斜視図である。
図3は、実施形態1に係る加工装置の構成例を示す斜視図である。
【0015】
図1に示すように、実施形態1に係るウエーハの加工方法1000は、第1加工ステップ1100と、支持部材固定ステップ1200と、第2加工ステップ1300と、を備える。実施形態1に係るウエーハの加工方法1000は、例えば
図2に示すウエーハ200を分割予定ラインに沿って分割して複数のチップを製造する方法であり、後述する加工装置1によって実現される。
【0016】
実施形態1に係る加工方法1000の加工対象であるウエーハ200を図面に基づいて説明する。
図2に示すように、ウエーハ200は、シリコン(Si)、サファイア(Al
2O
3)、ガリウムヒ素(GaAs)または炭化ケイ素(SiC)等を基板211とする円板状の半導体ウエーハ、光デバイスウエーハ等のウエーハであり、実施形態において、シリコンウエーハである。ウエーハ200は、基板211の表面213側にデバイス領域215と、デバイス領域215を囲繞する外周余剰領域216と、を含む。デバイス領域215は、基板211の表面213に格子状に設定された複数の分割予定ライン217と、分割予定ライン217によって区画された各領域に形成されたデバイス218と、を有している。外周余剰領域216は、全周に亘ってデバイス領域215を囲繞し、かつデバイス218が形成されていない領域である。本実施形態では、ウエーハ200は、基板211の表面213が一方の面であり、裏面214が他方の面である。
【0017】
デバイス218は、表面に厚みのあるバンプやレンズなどを含む。この場合、ウエーハ200は、厚みのある複数のデバイス218が位置する表面213にテープ等の支持部材を固定すると、外周余剰領域216が支持部材から浮きやすく、支持部材への固定力が弱くなるので、分割したチップの飛びが発生しやすくなる。本実施形態では、このようなデバイス218の製造に用いるウエーハ200であっても、外周のチップ飛びを防止し、かつチップ品質の悪化を防止することができるウエーハ200の加工方法1000を提供する。
【0018】
(加工装置)
図3に示すように、加工装置1は、ウエーハ200の切削を行う加工装置である。加工装置1は、保持テーブル10と、加工ユニット20と、制御ユニット30と、を備える。制御ユニット30は、保持テーブル10及び加工ユニット20と電気的に接続されている。ウエーハ200は、環状のフレーム208に装着された支持部材207の表面に貼着された状態で、保持テーブル10に保持される。支持部材207は、例えば、粘着テープ等を含む。
【0019】
保持テーブル10は、基板211を保持する保持面11を有する。保持面11は、ウエーハ200を保持する。保持テーブル10は、不図示の吸引源と連通しており、吸引源から供給される負圧によってウエーハ200を吸引保持する。保持テーブル10は、後述するX軸移動手段41によってX軸方向に沿って移動可能であり、不図示の回転駆動源によってZ軸周りに回転可能である。保持テーブル10は、例えば、チャックテーブルである。保持テーブル10は、ウエーハ200をクランプする複数(本実施形態では2個)のクランプが配設されている。X軸移動手段41は、例えば、ボールねじ及びパルスモータ等からなる。
【0020】
加工ユニット20は、保持テーブル10に保持されたウエーハ200を加工する。加工ユニット20は、例えば、保持テーブル10の保持面11に保持されたウエーハ200を切削する切削ブレード21を有する。切削ブレード21は、回転するリング形状の極薄のブレードである。切削ブレード21は、ハウジングの中のスピンドルに回転可能に保持されている。スピンドルは、ハウジングに収容された不図示のモータにより回転駆動される。切削ブレード21は、スピンドルの先端部に着脱可能に装着され、スピンドルの回転駆動により回転する。
【0021】
加工ユニット20は、Y軸移動手段42によってY軸方向に沿って移動可能であり、Z軸移動手段43によってZ軸方向に沿って移動可能である。Y軸移動手段42は、保持テーブル10の保持面11に対して加工ユニット20を相対的にY軸方向に移動させる。Y軸移動手段42及びZ軸移動手段43は、例えば、ボールねじ、ナット、パルスモータ等からなる。
【0022】
制御ユニット30は、CPU(Central Processing Unit)などの演算処理装置と、ROM(Read Only Memory)又はRAM(Random Access Memory)などの記憶装置と、入出力インターフェース装置とを備える。制御ユニット30は、かかる装置を用いて、加工装置1が実施する一連の加工工程に従い、上述した各構成要素を制御するためのプログラムなどを実行可能なコンピュータである。
【0023】
制御ユニット30は、加工装置1を駆動する各機構(X軸移動手段41、Y軸移動手段42、Z軸移動手段43)、加工ユニット20等を制御する。制御ユニット30は、加工装置1の各部を制御し、加工装置1による加工処理を実現する。制御ユニット30は、例えば、プログラムを実行することにより、保持テーブル10や加工ユニット20を含む加工装置1の各部を制御し、ウエーハ200の加工処理を実現する。制御ユニット30は、加工ユニット20を制御することで、ウエーハ200を保持テーブル10の保持面11に保持した状態で、ウエーハ200を切削する処理を実行する。
【0024】
制御ユニット30は、ウエーハ200の表面213(一方の面)から、分割予定ライン217に沿って外周余剰領域216の一部に第1非加工領域を残存させて、ウエーハ200を完全に分割しない深さで第1加工溝を形成する。制御ユニット30は、ウエーハ200の裏面214(他方の面)から分割予定ライン217に沿って、外周余剰領域216の一部に第2非加工領域を残存させて、第1加工溝に至る深さで第2加工溝を形成し、デバイス領域215を複数のデバイスチップ220(
図2参照)に分割する。
【0025】
加工装置1は、X軸移動手段41、Y軸移動手段42及びZ軸移動手段43により、保持テーブル10と加工ユニット20とを相対移動させることで、保持テーブル10に保持されたウエーハ200の加工位置を制御する。加工装置1は、ウエーハ200を保持テーブル10の保持面11に保持した状態で、液体を切削箇所に供給しながらウエーハ200を切削ブレード21で切削してもよい。
【0026】
なお、加工装置1が備える加工ユニット20は、切削ブレードで基板211を切削加工する切削ユニットに限定されない。例えば、加工ユニット20は、研削砥石等で同様の基板211を研削加工する研削ユニットや、研磨パッド等で同様の基板211を研磨加工する研磨ユニットや、同様の基板211にレーザービームを照射してレーザ加工するレーザ加工ユニットなどでもよい。
【0027】
以上、実施形態1に係る加工装置1の構成例について説明した。なお、
図3を用いて説明した上記の構成はあくまで一例であり、実施形態1に係る加工装置1の構成は係る例に限定されない。実施形態1に係る加工装置1の機能構成は、仕様や運用に応じて柔軟に変形可能である。
【0028】
(ウエーハの加工方法)
次に、実施形態1に係る加工装置1が実行するウエーハ200の加工方法1000を説明する。
図4は、
図1に示す第1加工ステップ1100を説明するための模式図である。
図5は、
図1に示す支持部材固定ステップ1200を説明するための模式図である。
図6は、
図1に示す第2加工ステップ1300を説明するための模式図である。なお、
図4及び
図6では、基板211と加工溝との関係を示しており、その他の構成を省略している。
【0029】
本実施形態では、加工装置1は、ウエーハ200の表面213が上方を向いた状態で保持テーブル10の保持面11に載置され、保持テーブル10がウエーハ200を保持面11に吸引保持する。加工装置1は、赤外線CCDなどを有する図示しない撮像手段が取得した画像に基づいて、基板211の分割予定ライン217と対応する領域と切削ブレード21との位置合わせを行うためのパターンマッチングなどの画像処理を実行してアライメントを遂行する。そして、
図1に示した加工方法1000は、加工装置1の制御ユニット30がプログラムを実行することで実現される。
【0030】
まず、加工装置1は、第1加工ステップ1100を実行する。第1加工ステップ1100は、
図4に示すように、ウエーハ200の表面213から、分割予定ライン217に沿って、外周余剰領域216の一部に第1非加工領域230を残存させて、ウエーハ200を完全に分割しない深さで第1加工溝240を形成するステップである。
図4では、場面1101がウエーハ200の表面213を示す上面模式図を示し、場面1102がウエーハ200の断面模式図を示している。
図4に示す一例では、加工方法1000は、ウエーハ200の外縁212から所定距離内側の加工開始位置から内内カットで第1加工溝240を形成している。内内カットは、ウエーハ200の外縁212から所定距離内側から加工を開始し、外縁212の内側で加工を終了するカットである。
【0031】
第1加工ステップ1100は、ウエーハ200の加工開始位置から切削ブレード21を切り込み深さまで下降させ、切削ブレード21とウエーハ200を保持する保持テーブル10とを相対的に加工送り方向に移動させて第1加工溝240を形成する。第1加工ステップ1100は、外周余剰領域216においてウエーハ200の外縁212より内側で切削ブレード21を上昇させて第1非加工領域230を残存させる。
【0032】
加工装置1は、第1加工ステップ1100を実行することで、基板211の表面213側から分割予定ライン217と対応する領域に切削ブレード21を位置付けて、切削ブレード21が裏面214に至らない基板211の切り込み深さまで下降させ、切削ブレード21とウエーハ200を保持する保持テーブル10とを相対的に加工送り方向に移動させて第1加工溝240を形成する。加工装置1は、外周余剰領域216においてウエーハ200の外縁212より内側で切削ブレード21を上昇させて第1非加工領域230を残存させる。
【0033】
本実施形態では、加工装置1は、ウエーハ210の表面213において、分割予定ライン217と対応する領域の一端よりも若干中央寄りに切削ブレード21を対向させた後、表面213から例えば厚みが30μm程度の切り残しが生じるように、切削ブレード21をウエーハ200に切り込ませる。加工装置1は、保持テーブル10を移動させて、切削ブレード21を分割予定ライン217の他端に向けて移動させる。その後、加工装置1は、切削ブレード21が分割予定ライン217と対応する領域の他端よりも若干中央寄りに位置した後、切削ブレード21を上昇させる。このように、加工装置1は、第1加工ステップ1100においては、ウエーハ200の外周余剰領域216に未切削の第1非加工領域230を残し、分割予定ライン217に沿って第1加工溝240を形成する。加工装置1は、1つの分割予定ライン217に対応する第1加工溝240を形成すると、次の分割予定ライン217に対応する第1加工溝240を切削ブレード21で形成する。これにより、加工装置1は、
図4に示すように、ウエーハ200の表面213のデバイス領域215に複数の第1加工溝240をマトリックス状に形成し、複数の第1加工溝240を囲繞する第1非加工領域230を残存させる。そして、加工装置1は、全ての分割予定ライン217に対応する領域に第1加工溝240を形成すると、ステップを次の支持部材固定ステップ1200に進める。切削ブレード21が分割予定ライン217と対応する領域の他端よりも若干中央寄りの位置とは、デバイス領域215と、デバイス領域215を囲繞する外周余剰領域216との境界より外周余剰領域側の位置である。
【0034】
加工装置1は、
図1に示す支持部材固定ステップ1200を実行する。支持部材固定ステップ1200は、第1加工ステップ1100の後に、ウエーハ200の表面213(一方の面)に支持部材207を固定するステップである。本実施形態では、加工装置1は、
図5に示すように、支持部材207の粘着層が設けられた表面を、ウエーハ200の表面213に対向させて近づけ固定する。すなわち、ウエーハ200は、第1加工溝240が形成された表面213の全体を覆うように支持部材207が固定されている。そして、加工装置1は、ウエーハ200に支持部材207を固定すると、ステップを次の第2加工ステップ1300に進める。なお、
図5では、ウエーハ200を収容可能な開口部を備えた環状のフレーム208の構成を省略しているが、支持部材207は、フレーム208に開口部を塞ぐように装着されている。そして、加工装置1は、ウエーハ200の裏面214が上方を向いた状態で保持テーブル10の保持面11に載置され、保持テーブル10がウエーハ200を保持面11に吸引保持する。
【0035】
加工装置1は、
図1に示す第2加工ステップ1300を実行する。第2加工ステップ1300は、
図6に示すように、ウエーハ200の裏面214(他方の面)から分割予定ライン217に沿って、外周余剰領域216の一部に第2非加工領域250を残存させて、第1加工溝240に至る深さで第2加工溝260を形成し、デバイス領域215を複数のデバイスチップ220に分割するステップである。
図6では、場面1301がウエーハ200の裏面214を示す上面模式図を示し、場面1302がウエーハ200の断面模式図を示している。
【0036】
第2加工ステップ1300は、第1加工ステップ1100と同様に、ウエーハ200の裏面214に複数の第2加工溝260を形成する。第2加工ステップ1300は、ウエーハ200の裏面214から第1加工溝240に至る深さまで切削ブレード21を下降させるが、第1加工溝240と重なる深さまで切削ブレード21を下降させてもよい。第2加工ステップ1300は、切削ブレード21とウエーハ200を保持する保持テーブル10とを相対的に加工送り方向に移動させて第2加工溝260を形成する。第2加工ステップ1300は、外周余剰領域216においてウエーハ200の外縁212より内側で切削ブレード21を上昇させて第2非加工領域250を残存させる。
【0037】
加工装置1は、第2加工ステップ1300を実行することで、基板211の裏面214側から分割予定ライン217、すなわち第1加工溝240と対応する領域に切削ブレード21を位置付けて、切削ブレード21が表面213に至らない基板211の切り込み深さまで下降させ、切削ブレード21とウエーハ200を保持する保持テーブル10とを相対的に加工送り方向に移動させて第2加工溝260を形成する。加工装置1は、外周余剰領域216においてウエーハ200の外縁212より内側で切削ブレード21を上昇させて第2非加工領域250を残存させる。
【0038】
本実施形態では、加工装置1は、ウエーハ210の裏面214において、分割予定ライン217と対応する領域の一端よりも若干中央寄りに切削ブレード21を対向させた後、裏面214から第1加工溝240に至るように、切削ブレード21をウエーハ200に切り込ませる。加工装置1は、保持テーブル10を移動させて、切削ブレード21を分割予定ライン217の他端に向けて移動させる。その後、加工装置1は、切削ブレード21が分割予定ライン217と対応する領域の他端よりも若干中央寄りに位置した後、切削ブレード21を上昇させる。このように、第2加工ステップ1300においては、ウエーハ200の外周余剰領域216に未切削の第2非加工領域250を残し、分割予定ライン217に沿って第2加工溝260を形成する。本実施形態では、第2非加工領域250は、ウエーハ200の厚さ方向において、第1非加工領域230と対向する領域になっている。加工装置1は、1つの分割予定ライン217に対応する第2加工溝260を形成すると、次の分割予定ライン217に対応する第2加工溝260を切削ブレード21で形成する。これにより、加工装置1は、ウエーハ200の裏面214に複数の第2加工溝260を形成し、複数の第2加工溝260を囲繞する第2非加工領域250を残存させる。そして、加工装置1は、全ての分割予定ライン217に対応する領域に第2加工溝260を形成すると、
図1に示す加工方法1000を終了させる。
【0039】
加工装置1は、第1加工溝240と第2加工溝260を連通させたウエーハ200を、分割予定ライン217に沿って分割して複数のデバイスチップ220を製造する。加工装置1は、複数のデバイス218の凹凸が位置する表面213に支持部材207を固定すると、外周余剰領域216が支持部材207から浮きやすく、支持部材207への固定力が弱くなる。これに対し、実施形態1に係る加工方法1000は、ウエーハ200の表面213に第1非加工領域230、裏面214に第2非加工領域250をそれぞれ形成し、第1非加工領域230と第2非加工領域250とにおいて、第1加工溝240と第2加工溝260とが接続せず、ウエーハ200が分割されないことで、外周余剰領域216のチップ飛びを防止することができる。加工方法1000は、ウエーハ200の両方の面からハーフカットしてウエーハ200を分割するため、加工溝を形成する際の加工負荷を低減し、表面チッピングと裏面チッピングとを含むデバイスチップ220の品質の悪化を防止することができる。さらに、加工方法1000は、ウエーハ200の第1加工溝240及び第2加工溝260が形成された領域の剛性を向上することができるので、ウエーハ200の外縁212のチップ飛びを防止することができる。
【0040】
[実施形態2]
実施形態2に係るウエーハ200の加工方法1000を図面に基づいて説明する。実施形態2に係る加工方法1000は、上述した
図1に示す第1加工ステップ1100、支持部材固定ステップ1200及び第2加工ステップ1300を備える。実施形態2に係るウエーハ200の加工方法1000は、上述した加工装置1の制御ユニット30がプログラムを実行することで実現される。
【0041】
図7は、実施形態2に係る第1加工ステップ1100を説明するための模式図である。
図8は、実施形態2に係る第1加工ステップ1100及び第2加工ステップ1300の処理手順の一例を示すフローチャートである。
図9は、実施形態2に係る各加工ステップを説明するための図である。
図10は、実施形態2に係る第2加工ステップ1300を説明するための模式図である。なお、
図7及び
図10では、基板211と加工溝との関係を示しており、その他の構成を省略している。
【0042】
まず、加工装置1は、第1加工ステップ1100を実行する。第1加工ステップ1100は、
図7に示すように、ウエーハ200の表面213から、分割予定ライン217に沿って、外周余剰領域216の一部に第1非加工領域230を残存させて、ウエーハ200を完全に分割しない深さで第1加工溝240を形成するステップである。
図7では、場面1111がウエーハ200の表面213を示す上面模式図を示し、場面1112がウエーハ200の断面模式図を示している。
図7に示す一例では、加工方法1000は、X軸方向及びY軸方向に沿って延びる第1加工溝240の一端241がウエーハ200の外縁212、他端242が第1非加工領域230の内部に位置するように、第1加工溝240形成する。すなわち、ウエーハ200の表面213は、X軸方向に沿って延在する第1加工溝240の他端242が形成された領域が第1非加工領域230になっている。
【0043】
第1加工ステップ1100は、
図8に示す下降ステップ2100、切削ステップ2200及び上昇ステップ2300を有し、これらのステップを繰り返すことで、ウエーハ200の表面213に複数の第1加工溝240を形成する。下降ステップ2100は、
図9に示すように、ウエーハ200の外縁212の外方で切削ブレード21を切り込み深さまで下降させるステップである。
図8に示す切削ステップ2200は、下降ステップ2100の後に、切削ブレード21とウエーハ200を保持する保持テーブル10とを相対的に加工送り方向に移動させて第1加工溝240を形成するステップである。
図9に示す一例では、切削ステップ2200は、
図9に示す加工開始側から加工終了側に向かうように、切削ブレード21とウエーハ200を保持する保持テーブル10とを相対的に移動させて第1加工溝240を形成する。
図8に示す上昇ステップ2300は、外周余剰領域216においてウエーハ200の外縁212より内側で切削ブレード21を上昇させて第1非加工領域230を残存させるステップである。
【0044】
加工装置1は、第1加工ステップ1100を実行することで、基板211の表面213側から分割予定ライン217と対応する領域に切削ブレード21を位置付けて、切削ブレード21が裏面214に至らない基板211の切り込み深さまで下降させ、切削ブレード21とウエーハ200を保持する保持テーブル10とを相対的に加工送り方向に移動させて第1加工溝240を形成する。加工装置1は、第1加工溝240の一端241をウエーハ200の外縁212に形成し、外周余剰領域216においてウエーハ200の外縁212より内側で他端242を形成して第1非加工領域230を残存させる。
【0045】
第1加工ステップ1100は、第1加工溝240の一端241をウエーハ200の外縁212に形成し、他端242が位置するウエーハ200の外周余剰領域216に未切削の第1非加工領域230を残し、分割予定ライン217に沿って第1加工溝240を形成する。加工装置1は、1つの分割予定ライン217に対応する第1加工溝240を形成すると、次の分割予定ライン217に対応する第1加工溝240を切削ブレード21で形成する。これにより、加工装置1は、
図7に示すように、ウエーハ200の表面213に複数の第1加工溝240を形成し、複数の第1加工溝240を囲繞する第1非加工領域230を残存させる。そして、加工装置1は、全ての分割予定ライン217に対応する領域に第1加工溝240を形成すると、ステップを次の支持部材固定ステップ1200に進める。
【0046】
加工装置1は、
図1に示す支持部材固定ステップ1200を実行する。支持部材固定ステップ1200は、第1加工ステップ1100の後に、ウエーハ200の表面213(一方の面)に支持部材207を固定するステップである。本実施形態では、加工装置1は、
図6に示すように、支持部材207の粘着層が設けられた表面を、ウエーハ200の表面213に対向させて近づけ固定する。すなわち、ウエーハ200は、第1加工溝240が形成された表面213の全体を覆うように支持部材207が固定されている。そして、加工装置1は、ウエーハ200に支持部材207を固定すると、ステップを次の第2加工ステップ1300に進める。そして、加工装置1は、ウエーハ200の裏面214が上方を向いた状態で保持テーブル10の保持面11に載置され、保持テーブル10がウエーハ200を保持面11に吸引保持する。
【0047】
加工装置1は、
図1に示す第2加工ステップ1300を実行する。第2加工ステップ1300は、
図10に示すように、ウエーハ200の裏面214(他方の面)から分割予定ライン217に沿って、外周余剰領域216においる第1非加工領域230と重ならない位置に第2非加工領域250を残存させて、第1加工溝240に至る深さで第2加工溝260を形成し、デバイス領域215を複数のデバイスチップ220に分割するステップである。
図10では、場面1311がウエーハ200の裏面214を示す上面模式図を示し、場面1312がウエーハ200の断面模式図を示している。
【0048】
第2加工ステップ1300は、第1加工ステップ1100と同様に、
図8に示す下降ステップ2100、切削ステップ2200及び上昇ステップ2300を有し、これらのステップを繰り返すことで、ウエーハ200の裏面214に複数の第2加工溝260を形成する。加工装置1は、第2加工溝260の一端261を、裏面214において第1非加工領域230のウエーハ200の外縁212に形成し、外周余剰領域216においてウエーハ200の外縁212より内側で他端262を形成して第2非加工領域250を残存させる。すなわち、第2加工ステップ1300は、ウエーハ200の鉛直方向において、第1非加工領域230と第2非加工領域250が重ならないように、第2非加工領域250を形成する。
【0049】
第2加工ステップ1300は、第2加工溝260の一端261を第1非加工領域230の裏側のウエーハ200の外縁212に形成し、他端262が位置するウエーハ200の外周余剰領域216に未切削の第2非加工領域250を残し、分割予定ライン217に沿って第2加工溝260を形成する。加工装置1は、1つの分割予定ライン217に対応する第2加工溝260を形成すると、次の分割予定ライン217に対応する第2加工溝260を切削ブレード21で形成する。これにより、加工装置1は、
図10に示すように、ウエーハ200の裏面214に複数の第2加工溝260を形成し、複数の第2加工溝260を囲繞する第2非加工領域250を残存させる。そして、加工装置1は、全ての分割予定ライン217に対応する領域に第2加工溝260を形成すると、
図1に示す加工方法1000を終了させる。
【0050】
加工装置1は、第1加工溝240と第2加工溝260を連通させたウエーハ200を、分割予定ライン217に沿って分割して複数のデバイスチップ220を製造する。例えば、切削ブレード21で加工する際に加工開始側と加工終了側との両方で非加工領域を形成すると、加工開始側においてウエーハ200に対する着地時の切削ブレード21やウエーハ200への負荷が大きくなりウエーハ200の表面チッピングの悪化や切削ブレード21の破損に繋がる恐れがあるので、切削ブレード21をウエーハ200への切り込み深さまで低速で下降させる必要があり、生産性が低下する。これに対し、実施形態2に係る加工方法1000は、第1非加工領域230と第2非加工領域250とが重ならない位置に形成することで、それぞれ加工溝の加工開始側は外縁212から切削を開始することができ、切削ブレード21を切り込み深さまで下降させる際の速度を早めて、生産性も向上させることができる。実施形態2に係る加工方法1000は、実施形態1と同様に、ウエーハ200の表面213に第1非加工領域230、裏面214に第2非加工領域250をそれぞれ形成し、第1非加工領域230と第2非加工領域250とにおいて、第1加工溝240と第2加工溝260とが接続せず、ウエーハ200が分割されないことで、外周余剰領域216のチップ飛びを防止することができる。
【0051】
[実施形態2の変形例]
上述した実施形態2では、加工方法1000は、全ての分割予定ライン217において、第1加工溝240の他端242及び第2加工溝260の他端262の全てを内内カットとする場合について説明したが、一部を内内カットとしてもよい。すなわち、実施形態2の変形例に係る加工方法1000は、複数の第1加工溝240及び複数の第2加工溝260のうちの一部を内内カットとし、残りをウエーハ200の外縁212までカットしてもよい。加工方法1000は、一部を内々カットとするだけでも、外周のチップのサイズが大きくなるため、外周のチップ飛びの発生を低減できる効果がある。
【0052】
図11は、実施形態2の変形例に係る第1加工ステップ1100を説明するための模式図である。
図12は、実施形態2の変形例に係る第2加工ステップ1300を説明するための模式図である。なお、
図11及び
図12では、基板211と加工溝との関係を示しており、その他の構成を省略している。
【0053】
まず、加工装置1は、第1加工ステップ1100を実行する。第1加工ステップ1100は、
図11に示すように、ウエーハ200の表面213から、分割予定ライン217に沿って、外周余剰領域216の一部に第1非加工領域230を残存させて、ウエーハ200を完全に分割しない深さで第1加工溝240-1を形成する。そして、第1加工ステップ1100は、ウエーハ200の表面213から、分割予定ライン217に沿って、外周余剰領域216の一部に第1非加工領域230を残存させずに、ウエーハ200を完全に分割しない深さで第1加工溝240-2を形成する。
図11では、場面1121がウエーハ200の表面213を示す上面模式図を示し、場面1122がウエーハ200の断面模式図を示している。
【0054】
図11に示す一例では、加工方法1000は、X軸方向及びY軸方向に沿って延びる第1加工溝240-1の一端241がウエーハ200の外縁212、他端242が第1非加工領域230の内部に位置するように、第1加工溝240-1を形成する。そして、加工方法1000は、X軸方向及びY軸方向に沿って延びる第1加工溝240-2の一端241がウエーハ200の外縁212、他端243が第1非加工領域230の内部のウエーハ200の外縁212に位置するように、第1加工溝240-2を形成する。すなわち、ウエーハ200の表面213は、第1加工溝240-1の他端242と第1加工溝240-2の他端243が形成された領域が第1非加工領域230になっている。
【0055】
第1加工ステップ1100は、実施形態2と同様に、
図8に示す下降ステップ2100、切削ステップ2200及び上昇ステップ2300を有し、これらのステップを繰り返すことで、ウエーハ200の表面213に複数の第1加工溝240-1及び第1加工溝240-2を形成する。
【0056】
第1加工ステップ1100は、第1加工溝240-1の一端241をウエーハ200の外縁212に形成し、他端242が位置するウエーハ200の外周余剰領域216に未切削の第1非加工領域230を残し、分割予定ライン217に沿って第1加工溝240を形成する。加工装置1は、1つの分割予定ライン217に対応する第1加工溝240-1を形成すると、次の分割予定ライン217に対応する第1加工溝240-2を切削ブレード21で形成する。これにより、加工装置1は、
図11に示すように、ウエーハ200の表面213に複数の第1加工溝240-1及び第1加工溝240-2を形成し、複数の第1加工溝240-1及び第1加工溝240-2を囲繞する第1非加工領域230を残存させる。そして、加工装置1は、全ての分割予定ライン217に対応する領域に第1加工溝240-1及び第1加工溝240-2を形成すると、ステップを次の支持部材固定ステップ1200に進める。
【0057】
加工装置1は、
図1に示す支持部材固定ステップ1200を実行する。支持部材固定ステップ1200は、第1加工ステップ1100の後に、ウエーハ200の表面213(一方の面)に支持部材207を固定するステップである。本実施形態では、加工装置1は、
図6に示すように、支持部材207の粘着層が設けられた表面を、ウエーハ200の表面213に対向させて近づけ固定する。すなわち、ウエーハ200は、第1加工溝240が形成された表面213の全体を覆うように支持部材207が固定されている。そして、加工装置1は、ウエーハ200に支持部材207を固定すると、ステップを次の第2加工ステップ1300に進める。そして、加工装置1は、ウエーハ200の裏面214が上方を向いた状態で保持テーブル10の保持面11に載置され、保持テーブル10がウエーハ200を保持面11に吸引保持する。
【0058】
加工装置1は、
図1に示す第2加工ステップ1300を実行する。第2加工ステップ1300は、
図12に示すように、ウエーハ200の裏面214(他方の面)から分割予定ライン217に沿って、外周余剰領域216においる第1非加工領域230と重ならない位置に第2非加工領域250を残存させて、第1加工溝240-1及び第1加工溝240-2に至る深さで第2加工溝260-1及び第2加工溝260-2を形成し、デバイス領域215を複数のデバイスチップ220に分割するステップである。
図11では、場面1321がウエーハ200の裏面214を示す上面模式図を示し、場面1322がウエーハ200の断面模式図を示している。
【0059】
第2加工ステップ1300は、第1加工ステップ1100と同様に、
図8に示す下降ステップ2100、切削ステップ2200及び上昇ステップ2300を有し、これらのステップを繰り返すことで、ウエーハ200の裏面214に複数の第2加工溝260-1及び第2加工溝260-2を形成する。加工装置1は、第2加工溝260-1の一端261を、裏面214において第1非加工領域230のウエーハ200の外縁212に形成し、外周余剰領域216においてウエーハ200の外縁212より内側で他端262を形成して第2非加工領域250を残存させる。そして、加工装置1は、第2加工溝260-2の一端261を、裏面214において第1非加工領域230のウエーハ200の外縁212に形成し、外周余剰領域216においてウエーハ200の外縁212に他端262を形成して第2非加工領域250を残存させる。すなわち、加工方法1000は、第2加工溝260-2の一端261がウエーハ200の外縁212、他端243が第1非加工領域230の内部のウエーハ200の外縁212に位置するように、第2加工溝260-2を形成する。
【0060】
図12に示す一例では、加工方法1000は、X軸方向及びY軸方向に沿って延びる第2加工溝260-1の一端261がウエーハ200の外縁212、他端262が第2非加工領域250の内部に位置するように、第2加工溝260-1を形成する。そして、加工方法1000は、X軸方向及びY軸方向に沿って延びる第2加工溝260-2の一端261がウエーハ200の外縁212、他端263が第2非加工領域250の内部のウエーハ200の外縁212に位置するように、第2加工溝260-2を形成する。すなわち、ウエーハ200の表面213は、第2加工溝260-1の他端262と第2加工溝260-2の他端263が形成された領域が第2非加工領域250になっている。
【0061】
第2加工ステップ1300は、第2加工溝260-1の一端261を第1非加工領域230の裏側のウエーハ200の外縁212に形成し、他端262が位置するウエーハ200の外周余剰領域216に未切削の第2非加工領域250を残し、分割予定ライン217に沿って第2加工溝260-1を形成する。第2加工ステップ1300は、第2加工溝260-2の一端261を第1非加工領域230の裏側のウエーハ200の外縁212に形成し、他端263が位置するウエーハ200の外周余剰領域216に第2非加工領域250を残し、分割予定ライン217に沿って第2加工溝260-2を形成する。加工装置1は、1つの分割予定ライン217に対応する第2加工溝260-1を形成すると、次の分割予定ライン217に対応する第2加工溝260-2を切削ブレード21で形成する。これにより、加工装置1は、
図12に示すように、ウエーハ200の裏面214に複数の第2加工溝260-1及び第2加工溝260-2を形成し、複数の第2加工溝260-1及び第2加工溝260-2を囲繞する第2非加工領域250を残存させる。そして、加工装置1は、全ての分割予定ライン217に対応する領域に第2加工溝260-1及び第2加工溝260-2を形成すると、
図1に示す加工方法1000を終了させる。
【0062】
加工装置1は、第1加工溝240-1及び第1加工溝240-2と第2加工溝260-1及び第2加工溝260-2を連通させたウエーハ200を、分割予定ライン217に沿って分割して複数のデバイスチップ220を製造する。これにより、加工方法1000は、第1加工溝240-1及び第1加工溝240-2と第2加工溝260-1及び第2加工溝260-2とのうち、第1加工溝240-1及び第2加工溝260-1の他端262側を内内カットにし、第1加工溝240-2及び第2加工溝260-2をウエーハ200の外縁212までカットすることができる。その結果、加工方法1000は、ウエーハ200の端材サイズが大きくなるので、外周余剰領域216のチップ飛びを防止することができる。
【0063】
[実施形態3]
上記実施形態3に係るレーザ加工装置100を以下に説明する。上述した実施形態1及び実施形態2に係る加工方法1000は、レーザ加工装置100が実行してもよい。
図13は、ウエーハ200の加工方法1000を実施するレーザ加工装置100の構成例を示す斜視図である。
【0064】
図13に示すレーザ加工装置100は、加工対象であるウエーハ200に対して、レーザ光線122を照射することにより、ウエーハ200を加工する装置である。レーザ加工装置100は、保持テーブル110と、レーザ光線照射ユニット120と、移動ユニット140と、制御ユニット160と、を備える。なお、以下の説明において、レーザ加工装置100は、加工送り方向がX軸方向であり、割り出し送り方向がY軸方向であり、集光点位置調整方向がZ軸方向である。
【0065】
保持テーブル110は、ウエーハ200を保持面111で保持する。保持面111は、ポーラスセラミック等から形成された円板形状である。保持面111は、実施形態において、水平方向と平行な平面である。保持面111は、例えば、真空吸引経路を介して真空吸引源と接続している。保持テーブル110は、保持面111上に載置されたウエーハ200を吸引保持する。保持テーブル110の周囲には、ウエーハ200を支持するフレーム208を挟持するクランプ部112が複数配置されている。
【0066】
保持テーブル110は、回転ユニット113によりZ軸方向と平行な軸心回りに回転される。回転ユニット113は、X軸方向移動プレート114に支持される。回転ユニット113および保持テーブル110は、X軸方向移動プレート114を介して、移動ユニット140の加工送りユニット141によりX軸方向に移動される。回転ユニット113および保持テーブル110は、X軸方向移動プレート114、加工送りユニット141およびY軸方向移動プレート115を介して、移動ユニット140の割り出し送りユニット142によりY軸方向に移動される。
【0067】
レーザ光線照射ユニット120は、保持テーブル110に保持されたウエーハ200に対して、ウエーハ200を加工するための所定の波長を有するパルス状のレーザ光線122を照射するユニットである。実施形態において、レーザ光線照射ユニット120の照射ヘッド121を含む一部は、装置本体101から立設した立設壁102に基端部が取り付けられた支持梁103の先端に支持されている。
【0068】
レーザ光線照射ユニット120は、例えば、レーザ光線122を出射する発振器と、発振器から出射されたレーザ光線122を加工点へ集光照射する集光器と、発振器から集光器までレーザ光線122を導く各種の光学部品と、を有する。集光器は、照射ヘッド121の内部に設けられる。集光器によって集光され照射ヘッド121から照射されるレーザ光線122の集光点123は、例えば、不図示の集光点位置調整ユニットによって、集光点位置調整方向であるZ軸方向に、保持テーブル110に対して相対的に移動可能である。
【0069】
移動ユニット140は、保持テーブル110とレーザ光線照射ユニット120から照射されるレーザ光線122の集光点とを相対的に移動させるユニットである。移動ユニット140は、加工送りユニット141と、割り出し送りユニット142と、を含む。
【0070】
加工送りユニット141は、保持テーブル110とレーザ光線照射ユニット120から照射されるレーザ光線122の集光点とを加工送り方向であるX軸方向に相対的に移動させるユニットである。加工送りユニット141は、実施形態において、保持テーブル110をX軸方向に移動させる。加工送りユニット141は、実施形態において、レーザ加工装置100の装置本体101上に設置されている。加工送りユニット141は、X軸方向移動プレート114をX軸方向に移動自在に支持する。
【0071】
割り出し送りユニット142は、保持テーブル110と、レーザ光線照射ユニット120から照射されるレーザ光線122の集光点とを割り出し送り方向であるY軸方向に相対的に移動させるユニットである。割り出し送りユニット142は、実施形態において、保持テーブル110をY軸方向に移動させる。割り出し送りユニット142は、実施形態において、レーザ加工装置100の装置本体101上に設置されている。割り出し送りユニット142は、Y軸方向移動プレート115をY軸方向に移動自在に支持する。
【0072】
加工送りユニット141および割り出し送りユニット142はそれぞれ、例えば、周知のボールねじと、周知のパルスモータと、周知のガイドレールと、を含む。ボールねじは、軸心回りに回転自在に設けられる。パルスモータは、ボールねじを軸心回りに回転させる。加工送りユニット141のガイドレールは、Y軸方向移動プレート115に固定して設けられ、X軸方向移動プレート114をX軸方向に移動自在に支持する。割り出し送りユニット142のガイドレールは、装置本体101に固定して設けられ、Y軸方向移動プレート115をY軸方向に移動自在に支持する。
【0073】
制御ユニット160は、レーザ加工装置100の上述した各構成要素をそれぞれ制御して、ウエーハ200に対する加工動作をレーザ加工装置100に実行させる。制御ユニット160は、演算手段としての演算処理装置と、記憶手段としての記憶装置と、通信手段としての入出力インターフェース装置と、を含むコンピュータである。演算処理装置は、例えば、CPU等のマイクロプロセッサを含む。記憶装置は、ROMまたはRAM等のメモリを有する。演算処理装置は、記憶装置に格納された所定のプログラムに基づいて各種の演算を行う。演算処理装置は、演算結果に従って、入出力インターフェース装置を介して各種制御信号を上述した各構成要素に出力し、レーザ加工装置100の制御を行う。
【0074】
以上、本実施形態に係るレーザ加工装置100の構成例について説明した。なお、
図13を用いて説明した上記の構成はあくまで一例であり、本実施形態に係るレーザ加工装置100の構成は係る例に限定されない。本実施形態に係るレーザ加工装置100の機能構成は、仕様や運用に応じて柔軟に変形可能である。
【0075】
(実施形態3に係るウエーハの加工方法)
次に、レーザ加工装置100が実施形態1に係る加工方法1000を実行する一例について説明する。
【0076】
まず、レーザ加工装置100は、第1加工ステップ1100を実行する。第1加工ステップ1100は、ウエーハ200の表面213から、分割予定ライン217に沿って、吸収性を有する波長のレーザ光線を照射して改質層(変質領域)を連続的に形成し、外周余剰領域216の一部に第1非加工領域230を残存させて、ウエーハ200を完全に分割しない深さで第1加工溝240を形成する。例えば、加工方法1000は、ウエーハ200の外縁212から所定距離内側の加工開始位置から内内カットで第1加工溝240を形成する。第1加工ステップ1100は、レーザ光線を分割予定ライン217に沿って移動させ、分割予定ライン217毎にレーザ光線を照射にすることで、改質層と、該改質層からウエーハ200の表面213に対して垂直な方向へ伸展するクラックとを有する分割起点を形成する。
【0077】
第1加工ステップ1100は、ウエーハ200の加工開始位置に対してレーザ光線照射ユニット120からレーザ光線を照射し、レーザ光線照射ユニット120とウエーハ200を保持する保持テーブル110とを相対的に加工送り方向に移動させて第1加工溝240を形成する。第1加工ステップ1100は、外周余剰領域216においてウエーハ200の外縁212より内側でレーザ光線の照射を停止させて第1非加工領域230を残存させる。そして、レーザ加工装置100は、全ての分割予定ライン217に対応する領域に第1加工溝240を形成すると、ステップを次の支持部材固定ステップ1200に進める。
【0078】
レーザ加工装置100は、
図1に示した支持部材固定ステップ1200を実行する。支持部材固定ステップ1200は、第1加工ステップ1100の後に、ウエーハ200の表面213(一方の面)に支持部材207を固定する。そして、レーザ加工装置100は、ウエーハ200の裏面214が上方を向いた状態で保持テーブル110の保持面111に載置され、保持テーブル110がウエーハ200を保持面111に吸引保持する。
【0079】
レーザ加工装置100は、
図1に示した第2加工ステップ1300を実行する。第2加工ステップ1300は、ウエーハ200の裏面214(他方の面)から分割予定ライン217に沿って、外周余剰領域216の一部に第2非加工領域250を残存させて、第1加工溝240に至る深さで第2加工溝260を形成し、デバイス領域215を複数のデバイスチップ220に分割する。
【0080】
第2加工ステップ1300は、第1加工ステップ1100と同様に、ウエーハ200の裏面214に複数の第2加工溝260を形成する。第2加工ステップ1300は、ウエーハ200の裏面214から第1加工溝240に至る深さまでレーザ光線照射ユニット120からレーザ光線を照射し、レーザ光線照射ユニット120とウエーハ200を保持する保持テーブル110とを相対的に加工送り方向に移動させて第2加工溝260を形成する。第2加工ステップ1300は、外周余剰領域216においてウエーハ200の外縁212より内側で切削ブレード21を上昇させて第2非加工領域250を残存させる。
【0081】
本実施形態では、レーザ加工装置100は、ウエーハ210の裏面214において、分割予定ライン217と対応する領域の一端よりも若干中央寄りにレーザ光線を照射させた後、裏面214から第1加工溝240に至るように、レーザ光線をウエーハ200に照射する。レーザ加工装置100は、保持テーブル10を移動させて、レーザ光線照射ユニット120を分割予定ライン217の他端に向けて移動させる。その後、加工装置1は、レーザ光線照射ユニット120が分割予定ライン217と対応する領域の他端よりも若干中央寄りに位置した後、レーザ光線の照射を停止する。このように、第2加工ステップ1300においては、ウエーハ200の外周余剰領域216に未切削の第2非加工領域250を残し、分割予定ライン217に沿って第2加工溝260を形成する。これにより、レーザ加工装置100は、ウエーハ200の裏面214に複数の第2加工溝260を形成し、複数の第2加工溝260を囲繞する第2非加工領域250を残存させる。そして、レーザ加工装置100は、全ての分割予定ライン217に対応する領域に第2加工溝260を形成すると、
図1に示す加工方法1000を終了させる。
【0082】
レーザ加工装置100は、第1加工溝240と第2加工溝260を連通させたウエーハ200を、分割予定ライン217に沿って分割して複数のデバイスチップ220を製造する。実施形態3に係る加工方法1000は、ウエーハ200の表面213に第1非加工領域230、裏面214に第2非加工領域250をそれぞれ形成し、第1非加工領域230と第2非加工領域250とにおいて、第1加工溝240と第2加工溝260とが接続せず、ウエーハ200が分割されないことで、外周余剰領域216のチップ飛びを防止することができる。加工方法1000は、ウエーハ200の両方の面からハーフカットしてウエーハ200を分割するため、加工溝を形成する際の加工負荷を低減し、デバイスチップ220の品質の悪化を防止することができる。加工方法1000は、ウエーハ200の第1加工溝240及び第2加工溝260が形成された領域の剛性を向上することができるので、ウエーハ200の外縁212のチップ飛びを防止することができる。
【0083】
実施形態3では、レーザ加工装置100は、実施形態1に係る加工方法1000を実行する場合について説明したが、これに限定されない。レーザ加工装置100は、実施形態2及び変形例に係る加工方法1000を実行することで、実施形態2及び変形例に係る加工方法1000と同様の作用効果を奏する。
【0084】
上述した本実施形態では、加工方法1000は、ウエーハ200の表面213を一方の面、裏面214を他方の面とした場合について説明したが、ウエーハ200の表面213を他方の面、裏面214を一方の面としてもよい。
【符号の説明】
【0085】
1 加工装置
10 保持テーブル
11 保持面
20 加工ユニット
21 切削ブレード
30 制御ユニット
41 X軸移動手段
42 Y軸移動手段
43 Z軸移動手段
100 レーザ加工装置
110 保持テーブル
120 レーザ光線照射ユニット
121 照射ヘッド
122 レーザ光線
140 移動ユニット
141 加工送りユニット
142 割り出し送りユニット
160 制御ユニット
200 ウエーハ
207 支持部材
208 フレーム
211 基板
212 外縁
213 表面
214 裏面
215 デバイス領域
216 外周余剰領域
217 分割予定ライン
218 デバイス
230 第1非加工領域
240 第1加工溝
250 第2非加工領域
260 第2加工溝
1000 加工方法
1100 第1加工ステップ
1200 支持部材固定ステップ
1300 第2加工ステップ
2100 下降ステップ
2200 切削ステップ
2300 上昇ステップ