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特開2024-168820送信装置、受信装置、及び、プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168820
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】送信装置、受信装置、及び、プログラム
(51)【国際特許分類】
   H04J 99/00 20090101AFI20241128BHJP
   H04L 27/34 20060101ALI20241128BHJP
   H04L 27/18 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
H04J99/00 100
H04L27/34
H04L27/18 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023085786
(22)【出願日】2023-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100164471
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 大和
(74)【代理人】
【識別番号】230128026
【弁護士】
【氏名又は名称】駒木 寛隆
(72)【発明者】
【氏名】秋山 良太
(72)【発明者】
【氏名】小泉 雄貴
(72)【発明者】
【氏名】亀井 雅
(57)【要約】
【課題】LDM伝送方式による放送システムにおいてより高い受信性能を実現可能にする。
【解決手段】送信装置は、第1変調信号に対して第1ヘッダを挿入して第1変調信号フレームを生成し、第2変調信号に対して第2ヘッダを挿入して第2変調信号フレームを生成し、第1変調信号フレーム及び第2変調信号フレームの平均電力の比が予め定められたレベルとなるように、第1変調信号フレーム及び第2変調信号フレームの少なくともいずれかの電力を調整し、少なくともいずれかの電力が調整された、第1変調信号フレーム及び第2変調信号フレームを合成して合成信号を生成し、合成信号を同一周波数帯で直交変調して階層分割多重信号を生成し、当該階層分割多重信号を送信する。送信装置は、第1変調信号フレームと第2変調信号フレームとで対応する信号の種類が同期するような間隔で、第1ヘッダを第1変調信号に挿入して第1変調信号フレームを生成する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1変調方式により変調された第1変調信号に対して第1ヘッダを挿入して第1変調信号フレームを生成する第1フレーム生成部と、
第2変調方式により変調された第2変調信号に対して第2ヘッダを挿入して第2変調信号フレームを生成する第2フレーム生成部と、
前記第1変調信号フレームの平均電力と前記第2変調信号フレームの平均電力との比が予め定められたレベルとなるように、前記第1変調信号フレーム及び前記第2変調信号フレームの少なくともいずれかの電力を調整する電力調整部と、
前記電力調整部により少なくともいずれかの電力が調整された、前記第1変調信号フレーム及び前記第2変調信号フレームを合成して合成信号を生成する合成部と、
前記合成信号を同一周波数帯で直交変調して階層分割多重信号を生成し、当該階層分割多重信号を送信する直交変調部と、
を備え、
前記第1フレーム生成部は、前記第1変調信号フレームと前記第2変調信号フレームとで同一種類の信号の配置が同期するような間隔で、前記第1ヘッダを前記第1変調信号に挿入して前記第1変調信号フレームを生成する、
送信装置。
【請求項2】
前記第2フレーム生成部は、前記第1変調信号フレームと前記第2変調信号フレームとで同一種類の信号の配置が同期するような間隔で、前記第2ヘッダを前記第2変調信号に挿入して前記第1変調信号フレームを生成する、請求項1に記載の送信装置。
【請求項3】
前記第1変調方式が伝送可能な1シンボル当たりのビット数は、第1ビットであり、
前記第2変調方式が伝送可能な1シンボル当たりのビット数は、第2ビットであり、
前記第1フレーム生成部は、前記第1ビット及び前記第2ビットの比に基づく間隔で前記第1ヘッダを前記第1変調信号に挿入して前記第1変調信号フレームを生成し、
前記第2フレーム生成部は、前記第1ビット及び前記第2ビットの比に基づく間隔で前記第2ヘッダを前記第2変調信号に挿入して前記第2変調信号フレームを生成する、
請求項2に記載の送信装置。
【請求項4】
第1パイロット信号を生成する第1パイロット生成部と、
前記第1パイロット信号を第1擬似乱数により拡散する第1パイロット拡散部と、
第2パイロット信号を生成する第2パイロット生成部と、
前記第2パイロット信号を第2擬似乱数により拡散する第2パイロット拡散部と、
を更に備え、
前記第1フレーム生成部は、前記第1パイロット拡散部において拡散された前記第1パイロット信号を更に前記第1変調信号に対して挿入したフレームを前記第1変調信号フレームとして生成し、
前記第2フレーム生成部は、前記第2パイロット拡散部において拡散された前記第2パイロット信号を更に前記第2変調信号に対して挿入したフレームを前記第2変調信号フレームとして生成する、
請求項2に記載の送信装置。
【請求項5】
前記第2パイロット生成部は、前記第1パイロット信号と異なる順序のシンボル系列を前記第2パイロット信号として生成し、
前記第2パイロット拡散部は、前記第1擬似乱数と初期値が異なる疑似ランダム信号により前記第2パイロット信号を拡散する、
請求項4に記載の送信装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の送信装置から前記階層分割多重信号を受信する受信装置であって、
受信した前記階層分割多重信号を直交復調して復調信号を取得する直交復調部と、
前記復調信号からヘッダを検出するヘッダ検出部と、
前記ヘッダが検出された前記復調信号の主信号に対して前記第1変調方式に応じてデマッピングを行い、デマッピング信号を取得するデマッピング部と、
前記デマッピング信号に対して誤り訂正復号を行って第1信号を取得する第1誤り訂正復号部と、
前記ヘッダが検出された前記復調信号の基準信号に基づきパイロット信号を検出するパイロット検出部と、
前記パイロット信号及び前記第1信号に基づき、前記合成信号における第2信号のシンボルが取りうるシンボル位置を示す基準点の候補であるシンボル候補点を絞り込む基準点判定部と、
前記ヘッダが検出された前記復調信号の主信号から前記シンボル候補点における信号を取得し、当該信号に対して誤り訂正復号を行って前記第2信号を取得する第2誤り訂正復号部と、
を備える、受信装置。
【請求項7】
前記ヘッダ検出部は、前記第1変調方式及び前記第2変調方式に基づき前記ヘッダの挿入頻度を算出し、当該挿入頻度に基づき、前記復調信号から前記ヘッダを検出する、請求項6に記載の受信装置。
【請求項8】
前記パイロット検出部は、前記主信号と同じ信号配置における信号を前記基準信号から検出し、当該信号に対して逆拡散を行って前記パイロット信号を検出する、請求項6に記載の受信装置。
【請求項9】
コンピュータを請求項1から5のいずれか一項に記載の送信装置として動作させるプログラム。
【請求項10】
コンピュータを請求項6に記載の受信装置として動作させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、送信装置、受信装置、及び、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
デジタル伝送方式では、各サービスが利用可能な周波数帯域幅において、より多くの情報を伝送可能とすることを目的として、多値変調方式が用いられることが多い。周波数利用効率を高めるには、変調信号1シンボル当たりに割り当てるビット数(変調次数)を高めることが有効であるが、周波数1Hzあたりに伝送可能な情報速度の上限値と信号対雑音比の関係はシャノン限界により制限される。衛星伝送路を用いた情報の伝送形態の一例として、衛星デジタル放送が挙げられる。
【0003】
昨今、周波数利用効率の向上を目的とした無線伝送方式の一つに、異なる2つの変調信号を互いに異なる電力で多重化し、同一周波数帯で伝送する階層分割多重方式(以下「LDM(Layered Division Multiplexing)方式」と称する。)が検討されている。地上デジタル放送においてもLDM方式の利用が検討されており、例えば、LDM方式を用いて新たな地上波放送方式を現行の地上波放送に多重するシステムが検討されている(非特許文献1、2)。2つの変調信号をLDM方式により多重する場合、一般的に、電力が高い階層をUL(Upper Layer)といい、低い階層をLL(Lower Layer)という。ULとLLの階層間の電力比は、LLの平均電力に対するULの平均電力の比を表すIL(Injection Level)によって定義される。
【0004】
衛星デジタル放送についても、LDM方式の利用が検討されている。例えば、21GHz帯衛星放送においてLDM方式を採用し、ULとLLに異なるサービスを割り当てることで、標準時と降雨減衰時でサービスを切り替え、天気に起因する受信環境に応じた動的なサービス提供が可能となる(非特許文献3)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】佐藤明彦、外11名、「次世代地上放送に向けたLDMの適用に関する一検討」、映像情報メディア学会技術報告、2017年2月、BCT2017-34、Vol. 41、No. 6、p. 45-48
【非特許文献2】岡田寛正、外6名、「地上デジタル放送に対するLDM適用時の諸問題改善に関する一考察 -新放送方式受信エリア拡大手法と同期方式に関する検討-」、映像情報メディア学会技術報告、2018年9月、BCT2018-76、Vol. 42、No. 28、p. 13-16
【非特許文献3】小泉雄貴、外1名、「Initial Study on Decoding Methods of LDM Transmission for Satellite Broadcasting System」、電子情報通信学会技術報告、2022年10月、SAT2022-53
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の構成により21GHz帯衛星放送等においてLDM方式を採用した場合、信号の復調及び検出の精度に改善の余地があった。例えば、ULとLLとで信号の変調方式が異なる場合、両者で変調信号フレームの種類が一致しない期間が生じる場合がある。このような期間においては、受信側でヘッダ及び主信号などの信号の復調及び検出の精度が低下する可能性がある。
【0007】
そこで、本開示の目的は、LDM伝送方式による放送システムにおいてより高い受信性能を実現可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示によれば、送信装置は、
(1)第1変調方式により変調された第1変調信号に対して第1ヘッダを挿入して第1変調信号フレームを生成する第1フレーム生成部と、
第2変調方式により変調された第2変調信号に対して第2ヘッダを挿入して第2変調信号フレームを生成する第2フレーム生成部と、
前記第1変調信号フレームの平均電力と前記第2変調信号フレームの平均電力との比が予め定められたレベルとなるように、前記第1変調信号フレーム及び前記第2変調信号フレームの少なくともいずれかの電力を調整する電力調整部と、
前記電力調整部により少なくともいずれかの電力が調整された、前記第1変調信号フレーム及び前記第2変調信号フレームを合成して合成信号を生成する合成部と、
前記合成信号を同一周波数帯で直交変調して階層分割多重信号を生成し、当該階層分割多重信号を送信する直交変調部と、
を備え、
前記第1フレーム生成部は、前記第1変調信号フレームと前記第2変調信号フレームとで同一種類の信号の配置が同期するような間隔で、前記第1ヘッダを前記第1変調信号に挿入して前記第1変調信号フレームを生成する、
送信装置である。
【0009】
(2)(1)の送信装置において、
前記第2フレーム生成部は、前記第1変調信号フレームと前記第2変調信号フレームとで同一種類の信号の配置が同期するような間隔で、前記第2ヘッダを前記第2変調信号に挿入して前記第1変調信号フレームを生成してもよい。
【0010】
(3)(2)の送信装置において、
前記第1変調方式が伝送可能な1シンボル当たりのビット数は、第1ビットであり、
前記第2変調方式が伝送可能な1シンボル当たりのビット数は、第2ビットであり、
前記第1フレーム生成部は、前記第1ビット及び前記第2ビットの比に基づく間隔で前記第1ヘッダを前記第1変調信号に挿入して前記第1変調信号フレームを生成し、
前記第2フレーム生成部は、前記第1ビット及び前記第2ビットの比に基づく間隔で前記第2ヘッダを前記第2変調信号に挿入して前記第2変調信号フレームを生成してもよい。
【0011】
(4)(1)から(3)のいずれかの送信装置において、
第1パイロット信号を生成する第1パイロット生成部と、
前記第1パイロット信号を第1擬似乱数により拡散する第1パイロット拡散部と、
第2パイロット信号を生成する第2パイロット生成部と、
前記第2パイロット信号を第2擬似乱数により拡散する第2パイロット拡散部と、
を更に備え、
前記第1フレーム生成部は、前記第1パイロット拡散部において拡散された前記第1パイロット信号を更に前記第1変調信号に対して挿入したフレームを前記第1変調信号フレームとして生成し、
前記第2フレーム生成部は、前記第2パイロット拡散部において拡散された前記第2パイロット信号を更に前記第2変調信号に対して挿入したフレームを前記第2変調信号フレームとして生成してもよい。
【0012】
(5)(4)の送信装置において、
前記第2パイロット生成部は、前記第1パイロット信号と異なる順序のシンボル系列を前記第2パイロット信号として生成し、
前記第2パイロット拡散部は、前記第1擬似乱数と初期値が異なる疑似ランダム信号により前記第2パイロット信号を拡散してもよい。
【0013】
本開示によれば、受信装置は、
(6)(1)から(5)のいずれかの送信装置から前記階層分割多重信号を受信する受信装置であって、
受信した前記階層分割多重信号を直交復調して復調信号を取得する直交復調部と、
前記復調信号からヘッダを検出するヘッダ検出部と、
前記ヘッダが検出された前記復調信号の主信号に対して前記第1変調方式に応じてデマッピングを行い、デマッピング信号を取得するデマッピング部と、
前記デマッピング信号に対して誤り訂正復号を行って第1信号を取得する第1誤り訂正復号部と、
前記ヘッダが検出された前記復調信号の基準信号に基づきパイロット信号を検出するパイロット検出部と、
前記パイロット信号及び前記第1信号に基づき、前記合成信号における第2信号のシンボルが取りうるシンボル位置を示す基準点の候補であるシンボル候補点を絞り込む基準点判定部と、
前記ヘッダが検出された前記復調信号の主信号から前記シンボル候補点における信号を取得し、当該信号に対して誤り訂正復号を行って前記第2信号を取得する第2誤り訂正復号部と、
を備える。
【0014】
(7)(6)の受信装置において、
前記ヘッダ検出部は、前記第1変調方式及び前記第2変調方式に基づき前記ヘッダの挿入頻度を算出し、当該挿入頻度に基づき、前記復調信号から前記ヘッダを検出してもよい。
【0015】
(8)(6)又は(7)の受信装置において、
前記パイロット検出部は、前記主信号と同じ信号配置における信号を前記基準信号から検出し、当該信号に対して逆拡散を行って前記パイロット信号を検出してもよい。
【0016】
本開示によれば、プログラムは、
(9)コンピュータを(1)から(5)のいずれかの送信装置として動作させるプログラムである。
【0017】
本開示によれば、プログラムは、
(10)コンピュータを(6)から(8)のいずれかの受信装置として動作させるプログラムである。
【発明の効果】
【0018】
本開示の一実施形態によれば、LDM伝送方式による放送システムにおいてより高い受信性能を実現することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】一実施形態に係る放送システムの構成例を示す図である。
図2図1の送信装置の構成例を示すブロック図である。
図3図1の受信装置の構成例を示すブロック図である。
図4】変調信号フレームの構成例を示す図である。
図5】ULとLLとでヘッダの挿入頻度が同一の場合における変調信号フレームの構成例を示す図である。
図6】ULとLLとでヘッダの挿入頻度を異ならせた場合における変調信号フレームの構成例を示す図である。
図7】LDM伝送におけるパイロット信号の生成過程の一例を示す図である。
図8図2のパイロット拡散部の構成例を示す図である。
図9】LDM信号のシンボルを構成するビット割当ての一例を示すIQ平面図である。
図10】LDM伝送におけるパイロット信号の生成過程の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本開示の一実施形態について、図面を参照して説明する。各図面中、同一の構成又は機能を有する部分には、同一の符号を付している。本実施形態の説明において、同一の部分については、重複する説明を適宜省略又は簡略化する場合がある。
【0021】
本実施形態に係る構成では、LDM伝送方式による放送システムにおいて、変調方式ごとにヘッダの挿入頻度を調整して変調フレーム信号を生成することで、受信側においてヘッダ及び主信号などの復調及び検出の精度を向上可能とする。また、本実施形態に係る構成は、主信号と同じ信号配置となるパイロット信号を生成し、衛星中継器の非線形特性を補正する機能を有する。したがって、本実施形態に係る構成によれば、LDM伝送方式による放送システムにおいてより高い受信性能を実現することが可能である。
【0022】
(放送システム)
図1は、一実施形態に係る放送システム1の構成例を示す図である。図1に示すように、放送システム1は、送信装置10及び受信装置20を備える。送信装置10の個数、及び、受信装置20の個数はいずれも任意である。
【0023】
送信装置10は、伝送路50を介してLDM信号を受信装置20へ送信する。送信装置10は、入力されたUL信号及びLL信号の各々に対して、誤り訂正符号化、マッピング、及び、予め定められたIL(レベル)に応じた電力調整等を行った上で合成し、LDM信号として送信する。
【0024】
伝送路50は、送信装置10から送信されたLDM信号を受信装置20へ伝送する。例えば、伝送路50は、21GHz帯衛星伝送路でもよい。
【0025】
受信装置20は、伝送路50を介して送信装置10から受信したLDM信号の復号等を行って、UL信号及びLL信号を出力する。
【0026】
電力の割当てがより大きい階層であるULは伝送耐性がより高く、電力の割当てがより小さい階層であるLLは伝送耐性がより低くなる。そこで、送信装置10は、例えば、ULにより標準サービスの映像等を送信し、LLにより拡張サービスの映像等を送信してもよい。これにより、送信装置10が同一のLDM信号を送信した場合であっても、受信装置20は、降雨等により受信環境が良くないときは標準サービスの提供を受ける一方で、受信環境が良いときは標準サービスに加えて拡張サービスの提供を受けることができる。
【0027】
(送信装置)
図2は、図1の送信装置10の構成例を示すブロック図である。送信装置10は、入力されたUL信号及びLL信号に基づきLDM信号を生成し、受信装置20へ向けてLDM信号を送信する。送信装置10は、UL信号処理部11、LL信号処理部12、合成部13、直交変調部14、及び、アンテナ15を備える。
【0028】
UL信号処理部11は、入力されたUL信号を処理する。UL信号処理部11は、誤り訂正符号化部111、マッピング部112、パイロット生成部113、パイロット拡散部114、ヘッダ生成部115、間隔調整部116、フレーム生成部117、及び、電力調整部118を備える。
【0029】
誤り訂正符号化部111は、送信装置10に入力されたUL信号を予め定められた誤り訂正符号により符号化し、マッピング部112へ出力する。本実施形態において、誤り訂正符号化部111は、誤り訂正符号の一例としてLDPC(Low-Density Parity-Check)符号を使用する例を説明するが、誤り訂正符号化部111が用いる誤り訂正符号の方式は任意である
【0030】
マッピング部112は、誤り訂正符号化処理後のUL信号を予め定められた変調方式(第1変調方式)によりマッピングし、同相成分I及び直交位相成分QからなるIQ平面で表すことが可能なIQ信号として、UL用のシンボルを有する変調信号(第1変調信号)を生成する。本実施形態において、マッピング部112は、予め定められた変調方式としてQPSK(Quadrature Phase Shift Keying)を使用する例を説明するが、マッピング部112が用いる変調方式は任意である。例えば、マッピング部112は、π/2シフトBPSK(Binary Phase Shift Keying)、8PSK(Phase Shift Keying)、又は、16APSK(Amplitude Phase Shift Keying)等の変調方式を用いてもよい。マッピング部112は、変調済みのUL用信号をフレーム生成部117へ出力する。
【0031】
第1パイロット生成部としてのパイロット生成部113は、衛星伝送路である伝送路50の非線形特性を補正する目的で用いるパイロット信号(第1パイロット信号)を生成する。本実施形態において、パイロット生成部113は、QPSKにより変調された2ビットのシンボルをパイロット信号として生成するが、パイロット信号の変調方式は任意である。パイロット生成部113は、生成したパイロット信号をパイロット拡散部114へ出力する。
【0032】
第1パイロット拡散部としてのパイロット拡散部114は、電力拡散回路により疑似ランダム信号(第1擬似乱数)を生成し、生成した疑似ランダム信号を用いて、パイロット生成部113から入力されたパイロット信号を電力拡散する。パイロット拡散部114は、電力拡散したパイロット信号をフレーム生成部117へ出力する。パイロット生成部113、及び、パイロット拡散部114の動作の詳細は、図7図10を参照して後述する。
【0033】
ヘッダ生成部115は、変調信号フレームに挿入するヘッダ(第1ヘッダ)を生成する。本実施形態において、ヘッダ生成部115は、π/2シフトBPSKにより変調された一定シンボル長のヘッダを生成するが、ヘッダの変調方式は任意である。ヘッダ生成部115は、生成したヘッダを間隔調整部116へ出力する。
【0034】
間隔調整部116は、UL信号及びLL信号の各々の変調方式に応じて、ヘッダの挿入間隔を調整する。ヘッダの挿入間隔の調整する具体的な方式については、図6を参照して後述する。
【0035】
第1フレーム生成部としてのフレーム生成部117は、マッピング部112から出力された変調済みのUL用信号、パイロット拡散部114から出力された電力拡散済みのパイロット信号、及び、ヘッダ生成部115において生成されたヘッダを用いて、変調信号フレーム(第1変調信号フレーム)を生成する。変調信号フレームを生成する具体的な方式については、図6を参照して後述する。
【0036】
電力調整部118は、送信装置10に予め設定されたILに応じて、フレーム生成部117において変調信号フレームとして構成されたUL信号の電力調整を行う。電力調整部118は、LL信号の平均電力に対するUL信号の平均電力の比がILとなるように、UL信号の電力を調整する。電力調整部118は、電力調整済みのUL信号を合成部13へ出力する。
【0037】
LL信号処理部12は、入力されたLL信号を処理する。LL信号処理部12は、誤り訂正符号化部121、マッピング部122、パイロット生成部123、パイロット拡散部124、ヘッダ生成部125、間隔調整部126、フレーム生成部127、及び、電力調整部128を備える。
【0038】
誤り訂正符号化部121は、送信装置10に入力されたLL信号を予め定められた誤り訂正符号により符号化し、マッピング部122へ出力する。本実施形態において、誤り訂正符号化部121は、UL信号処理部11と同様に、誤り訂正符号の一例としてLDPC符号を使用する例を説明するが、誤り訂正符号化部121が用いる誤り訂正符号の方式は任意である
【0039】
マッピング部122は、誤り訂正符号化処理後のLL信号を予め定められた変調方式(第2変調方式)によりマッピングし、IQ信号としてのLL用のシンボルを有する変調信号(第2変調信号)を生成する。本実施形態において、マッピング部122は、予め定められた変調方式として8PSKを使用する例を説明するが、マッピング部122が用いる変調方式は任意である。マッピング部122は、変調済みのLL用信号をフレーム生成部127へ出力する。
【0040】
第2パイロット生成部としてのパイロット生成部123は、衛星伝送路である伝送路50の非線形特性を補正する目的で用いるパイロット信号(第2パイロット信号)を生成する。本実施形態において、パイロット生成部123は、UL信号処理部11と同様に、QPSKにより変調された2ビットのシンボルをパイロット信号として生成するが、パイロット信号の変調方式は任意である。後述するように、パイロット生成部123は、パイロット生成部113が生成するパイロット信号と異なる順序のシンボル系列をパイロット信号として生成する。パイロット生成部123は、生成したパイロット信号をパイロット拡散部124へ出力する。
【0041】
第2パイロット拡散部としてのパイロット拡散部124は、電力拡散回路により疑似ランダム信号(第2擬似乱数)を生成し、生成した疑似ランダム信号を用いて、パイロット生成部123から入力されたパイロット信号を電力拡散する。後述するように、パイロット拡散部124は、パイロット拡散部114が生成した疑似ランダム信号と初期値が異なる疑似ランダム信号により、パイロット生成部123のパイロット信号を拡散する。パイロット拡散部124は、電力拡散したパイロット信号をフレーム生成部127へ出力する。パイロット生成部123、及び、パイロット拡散部124の動作の詳細は、図7図10を参照して後述する。
【0042】
ヘッダ生成部125は、変調信号フレームに挿入するヘッダ(第2ヘッダ)を生成する。本実施形態において、ヘッダ生成部125は、UL信号処理部11と同様に、π/2シフトBPSKにより変調された一定シンボル長のヘッダを生成するが、ヘッダの変調方式は任意である。ヘッダ生成部125は、生成したヘッダを間隔調整部126へ出力する。
【0043】
間隔調整部126は、LL信号及びLL信号の各々の変調方式に応じて、ヘッダの挿入間隔を調整する。ヘッダの挿入間隔の調整する具体的な方式については、図6を参照して後述する。
【0044】
第2フレーム生成部としてのフレーム生成部127は、マッピング部122から出力された変調済みのLL用信号、パイロット拡散部124から出力された電力拡散済みのパイロット信号、及び、ヘッダ生成部125において生成されたヘッダを用いて、変調信号フレーム(第2変調信号フレーム)を生成する。変調信号フレームを生成する具体的な方式については、図6を参照して後述する。
【0045】
電力調整部128は、送信装置10に予め設定されたILに応じて、フレーム生成部127において変調信号フレームとして構成されたLL信号の電力調整を行う。電力調整部128は、電力調整済みのLL信号を合成部13へ出力する。なお、図2は、便宜上、UL信号処理部11及びLL信号処理部12の両方が電力調整部118,128を備える構成例を示しているが、送信装置10がILに応じた階層間の電力比の調整できればよく、UL信号処理部11及びLL信号処理部12のいずれか一方がこのような電力調整部118,128を備えるようにしてもよい。
【0046】
合成部13は、UL信号処理部11から入力されたUL信号、及び、LL信号処理部12から入力されたLL信号を合成して、合成信号を生成する。具体的には、合成部13は、UL信号及びLL信号の各シンボルについて電力加算し、合成信号としてLDMシンボルを生成してもよい。合成部13は、生成した合成信号を直交変調部14へ出力する。
【0047】
直交変調部14は、予め定められた変調方式に従って、合成部13から入力された合成信号について同一周波数帯で直交変調してLDM信号(階層分割多重信号)を生成する。直交変調部14は、生成したLDM信号に対して必要な電力増幅等を行った上で、アンテナ15から伝送路50を経由して受信装置20に向けて送信する。
【0048】
(受信装置)
図3は、図1の受信装置20の構成例を示すブロック図である。受信装置20は、送信装置10から受信したLDM信号を復調し、UL信号及びLL信号に分離して復号する。受信装置20は、アンテナ21、直交復調部22、ヘッダ検出部23、デマッピング部24、誤り訂正復号部25、パイロット検出部26、基準点判定部27、及び、誤り訂正復号部28を備える。
【0049】
アンテナ21は、伝送路50を介して送信装置10により送信されたLDM信号を受信する。アンテナ21は、受信したLDM信号を直交復調部22へ出力する。
【0050】
直交復調部22は、アンテナ21を介して受信したLDM信号を直交復調する。具体的には、直交復調部22は、LDM信号に対して、利得調整による正規化処理、シンボル同期、及び、キャリア再生等の必要な処理を行った上で、直交復調処理を行ってLDMシンボルを復調する。直交復調部22は、復調したLDM信号(復調信号)をヘッダ検出部23へ出力する。
【0051】
ヘッダ検出部23は、直交復調部22において復調済みのLDM信号(復調信号)からヘッダを検出し、ヘッダに記載されている内容に基づき、LDM信号から主信号及び基準信号等を取得する。ヘッダ検出部23は、マッピング部112、122で使用されている各変調方式に基づきヘッダの挿入頻度を算出し、その挿入頻度に基づき復調信号からヘッダを検出してもよい。ヘッダ検出部23は、主信号をデマッピング部24及び誤り訂正復号部28へ出力するとともに、基準信号をパイロット検出部26へ出力する。
【0052】
デマッピング部24は、ヘッダ検出部23から入力されたLDM信号の主信号に対して、送信装置10のマッピング部112に設定されているULの変調方式に応じたデマッピングを行う。具体的には、本実施形態において、マッピング部112が用いる変調方式はQPSKであるため、デマッピング部24は、QPSKによりLDM信号の主信号をデマッピングする。デマッピング部24は、デマッピングされたLDM信号の主信号(デマッピング信号)を誤り訂正復号部25へ出力する。
【0053】
第1誤り訂正復号部としての誤り訂正復号部25は、送信装置10における誤り訂正符号化に用いられた誤り訂正符号と同一の誤り訂正符号により、デマッピングされた主信号(デマッピング信号)を復号し、UL信号(第1信号)のビット列として出力する。また、誤り訂正復号部25は、UL信号のビット列を基準点判定部27へ出力する。本実施形態において、誤り訂正復号部25は、誤り訂正符号の一例としてLDPC符号を使用する例を説明するが、誤り訂正復号部25が用いる誤り訂正符号の方式は任意である。
【0054】
パイロット検出部26は、ヘッダ検出部23から入力されたLDM信号の基準信号からパイロット信号を検出する。具体的には、パイロット検出部26は、主信号と同じ信号配置におけるパイロット信号を基準信号から検出し、送信装置10における電力拡散に対応する逆拡散を行う。パイロット検出部26は、検出及び逆拡散したパイロット信号を基準点判定部27へ出力する。
【0055】
基準点判定部27は、パイロット検出部26から入力されたパイロット信号、及び、誤り訂正復号部25が出力したULの復号結果(第1信号)を用いて、LDM信号が取りうる全てのシンボル位置を示す基準点の中からシンボル候補点を絞り込む。シンボル候補点とは、受信したLDM信号におけるLL信号(第2信号)のシンボルが取りうるシンボル位置を示す基準点の候補である。基準点判定部27は、取得したシンボル候補点を誤り訂正復号部28へ出力する。
【0056】
第2誤り訂正復号部としての誤り訂正復号部28は、ヘッダ検出部23から入力された主信号からシンボル候補点における信号を取得し、その信号に対して誤り訂正復号を行ってLL信号を出力する。本実施形態において、受信装置20におけるULとLLの復号処理は、一例として、非特許文献3のRS(Reference Selection)手法に基づき行われるが、復号方式はこれに限られない。例えば、受信装置20は、SIC(Successive Interference Cancellation)に基づき復号を行ってもよい。
【0057】
上記のような構成において、送信装置10は、ULとLL用伝送情報(UL信号、LL信号)をそれぞれ誤り訂正符号化した後、UL及びLLのそれぞれについて予め定められた変調方式でマッピングを行う。フレーム生成部117,127は、ヘッダ、主信号、及び、基準信号から成る変調信号フレームを生成する。ここで、間隔調整部116,126は、UL及びLLで用いられている各変調方式における1シンボル毎のビット数に応じてヘッダ間隔を調整することで、UL及びLLとで、ヘッダ、主信号、及び、基準信号等の同一種類の信号の配置を同期させる。そのため、受信装置20における、ヘッダ、主信号、及び、基準信号の復調及び検出の精度を向上することが可能となる。
【0058】
また、パイロット生成部113,123で生成したパイロット信号は、パイロット拡散部114,124の電力拡散回路で生成する疑似ランダム信号により電力拡散を行う。ここで、シンボル生成順序及び疑似ランダム信号の初期値を、ULとLLで異ならせることで、主信号と同様の信号配置となるパイロット信号の生成が可能となる。電力調整部118,128は、設定したILに応じて、ULおよびLLの電力をそれぞれ調整する。合成部13は、電力調整したULおよびLL信号を合成して合成信号を生成する。直交復調部22は、その合成信号を直交変調して、アンテナ15からLDM信号を出力する。
【0059】
受信装置20のヘッダ検出部23は、送信装置10側で設定したヘッダ挿入頻度を変調方式からそれぞれ算出し、ULおよびLL信号のヘッダ位置を把握した上でヘッダを検出する。ヘッダ検出後、デマッピング部24は、主信号をデマッピングし、誤り訂正復号することでUL信号を得る。LL信号については、UL復号結果をフィードバックした情報を基に、基準点判定部27がシンボルの候補点を絞り込んだ上で、誤り訂正復号部28が復号する。その際、主信号と同様の信号配置となるパイロット信号の情報も反映し、衛星中継器の非線形特性による影響を補正して復号を行う。したがって、ULとLLの変調方式に関わらず、主信号と同じ信号配置となるパイロット信号を生成でき、衛星伝送路の非線形特性を正常に補正することが可能となる。
【0060】
このように、本実施形態では、LDM伝送方式において、送信装置10は、ヘッダ位置を調整するとともに、LL,UL間で異なるパターンで推移するパイロット信号を生成するなどの処理を行う。したがって、受信装置20においては、ULとLLの変調方式に関わらず、高い受信性能を実現することが可能である。
【0061】
なお、図2及び図3を参照して説明した送信装置10及び受信装置20の各ブロックの少なくともいずれかは、専用のハードウェアで実現してもよいし、あるいは、プログラムをプロセッサで実行することにより実現してもよい。すなわち、コンピュータを、送信装置10及び受信装置20の各ブロックの少なくともいずれかとして動作させるプログラムが提供されてもよい。
【0062】
(ヘッダ位置調整)
次に、放送システム1の詳細な動作例を説明する。以下、一例として、21GHz帯衛星伝送によるシングルキャリアのLDM伝送について説明する。以下の例において、ULの主信号の変調方式はQPSKであり、LLの主信号の変調方式は8PSKである。ILは3dBである。送信装置10の誤り訂正符号化部111,121は、UL信号及びLL信号の情報ビットに対して、ARIB STD-B44(ISDB-S3)に準拠したLDPC符号のパリティ検査行列を用いて、符号化率3/5、3/4により符号化を行う。
【0063】
図4は、送信装置10のフレーム生成部117,127が生成する変調信号フレームの構成例を示す図である。図4において、ヘッダは、1つの変調信号フレーム毎に生成されるビット列であり、UL、LLのいずれにおいてもπ/2シフトBPSKにより変調される。主信号は、誤り訂正符号化された信号が格納されるビット列である。基準信号は、パイロット信号又はバースト信号が格納されるビット列である。パイロット信号は主信号と同じ変調方式により変調される。具体的には、本実施形態において、ULのパイロット信号はQPSKにより変調され、LLのパイロット信号は8PSKにより変調される。バースト信号は、UL、LLのいずれにおいてもπ/2シフトBPSKにより変調される。
【0064】
変調フレーム信号生成における、1ヘッダあたりのシンボル長は26、主信号は187、基準信号はT=8である。なお、基準信号のシンボル長は、8以外の値(例えば、T=0,2,4,・・・,16)としてもよい。符号化後の1つのLDPCブロックのビット数は、44880ビットである。図4において、1つの変調信号フレームは、1つのLDPCブロックに対応する。ULで使用されるQPSK変調では、1シンボルの信号により2ビット(22=4)の情報を伝送することができる。そのため、ULにおいては、1つの変調信号フレームは、22440(=44880/2)シンボルにより伝送される。LLで使用される8PSK変調では、1シンボルの信号により3ビット(23=8)の情報を伝送することができる。そのため、ULにおいては、1つの変調信号フレームは、14960(=44880/3)シンボルにより伝送される。したがって、変調信号フレームを生成する際、1変調信号フレームあたりの基準信号数は、主信号(187シンボル)と同数となるため、ULで120(=22440/187)個、LLで80(=14960/187)個となる。そのため、1変調信号フレーム当たりのシンボル数は、ULで23426((187+8)×120+26)、LLで15626((187+8)×120+26)となる。
【0065】
このように、ULとLLで変調方式が異なる場合、1変調信号フレーム当たりのシンボル数も異なるため、ULとLLとで信号の種類が一致しない期間が生じてしまう。図5は、ULとLLとでヘッダの挿入頻度が同一の場合における変調信号フレームの構成例を示す図である。図5の例では、ULの1番目のヘッダ(#1)に続く81番目の主信号(#1-81)から602番目ヘッダ(#602)までの区間においては、信号の種類が同期されていない。このようにULとLLとで信号の種類が一致しない場合、ULとLLとで変調方式が異なる区間においては、その信号を受信側で高い精度で復調及び検出できない可能性がある。そして、図5の例では、1番目のヘッダ同期(#1)から次のヘッダ同期(#602)まで602フレーム(QPSK)分の時間を要することとなり、その間の大半の信号が受信側で復調及び検出できない可能性がある。
【0066】
そこで、本実施形態において、送信装置10は、ULとLLとでヘッダの挿入頻度を異ならせることで、ULとLLとで信号の種類を常に一致させるようにする。具体的には、送信装置10の間隔調整部116,126は、UL及びLLのそれぞれについて、予め設定された変調方式の1シンボル当たりのビット数(UL:αビット(第1ビット)、LL:βビット(第2ビット))について、ULではαフレーム、LLではβフレームごとにヘッダの挿入を行う。なお、ULとLLのビット数の比がnα:nβ(nは正の整数)となる場合も、ULではαフレーム、LLではβフレームごとにヘッダの挿入を行う。ここで、nは、各変調方式の1シンボル当たりのビット数の最大公約数である。すなわち、間隔調整部116は、各変調方式が伝送可能な1シンボル当たりのビット数である第1ビット及び第2ビットの比に基づく間隔で、ヘッダを変調済みのUL信号に挿入してUL信号の変調信号フレームを生成する。間隔調整部126は、第1ビット及び第2ビットの比に基づく間隔でヘッダを変調済みのLL信号に挿入してLL信号の変調信号フレームを生成する。換言すると、送信装置10の間隔調整部116,126は、UL、LLにおいて各変調方式により変調された同一ビット数の変調信号フレームの、各シンボル長の最小公倍数となるシンボル数の間隔毎にヘッダを挿入する。
【0067】
図6は、ULとLLとでヘッダの挿入頻度を異ならせた場合における変調信号フレームの構成例を示す図である。図6において、変調後のUL(22440シンボル)およびLL(14960シンボル)に対して、間隔調整部116,126は、各変調方式の1シンボルあたりのビット数(UL:2ビット、LL:3ビット)を求め、ULでは2フレーム、LLでは3フレームのように、算出したビット数分の個数の変調フレームごとにヘッダを挿入する。ここで、ヘッダの間隔はUL、LLともに46800シンボルとなる。したがって、ヘッダの挿入頻度を変調方式に応じて調整することで、UL及びLLの間で変調信号フレームの信号の種類が常に一致する。また、最初のヘッダ同期から次のヘッダ同期までは2フレーム(QPSK)分まで軽減でき、受信側で復調及び検出できない信号を大幅に減少させることができる。
【0068】
なお、本実施形態では、UL及びLLで同一ビット数の符号化ブロックを送信する場合の例を説明したが、これに限られない。すなわち、UL及びLLで符号化ブロックのビット数が異なる場合であっても、送信装置10は、UL、LLにおいて各変調方式により変調された変調信号フレームの、各シンボル長の最小公倍数となるシンボル数の間隔毎にヘッダを挿入してもよい。これにより、UL及びLLの間で変調信号フレームの信号の種類を常に一致させることができ、受信側での復調及び検出の精度を高めることが可能である。また、用途及び目的に応じて、送信装置10は、UL、LLにおいてそれぞれ変調された変調信号フレームの、各シンボル長の任意の倍数となるシンボル数の間隔毎にヘッダを挿入してもよい。これにより、UL及びLLの間で変調信号フレームの信号の種類を常に一致させることができる。
【0069】
(パイロット信号生成)
次に、放送システム1におけるパイロット信号の生成、及び、パイロット信号を用いた復号について説明する。図7は、LDM伝送におけるパイロット信号の生成過程の一例を示す図である。図7は、送信装置10のパイロット信号の生成に関わる構成要素のみを示している。
【0070】
図7の例において、パイロット生成部113,123は、UL及びLLのいずれも、00→01→10→11の順序で繰り返しシンボルを生成している。パイロット拡散部114,124は、生成したパイロット信号に対して15次の疑似ランダム信号を生成し、拡散を行う。図7の例では、疑似ランダム信号の初期値は、UL及びLLのいずれについても100000000101100である。
【0071】
図8は、図2のパイロット拡散部114,124の構成例を示す図である。図8に示すように、パイロット拡散部114,124は、シフトレジスタ31、加算器32、レベル変換部33、及び、乗算器34,35を備える。
【0072】
シフトレジスタ31は、それぞれ1ビットの情報(0又は1)を保持する15段(D1,D2,・・・,D15)のレジスタを備える。シフトレジスタ31には、各レジスタ(D1,D2,・・・,D15)の初期値が設定される。例えば、前述の例では、(D1,D2,・・・,D15)=(100000000101100)である。D14のビット及びD15のビットは、加算器32で加算され、次のサイクルにおいてD1へ入力される。また、D15のビットは、サイクルごとに、レベル変換部33へ出力される。
【0073】
レベル変換部33は、D15のビット「1」を「-1」に変換し、ビット「0」を「1」に変換する。乗算器34は、拡散前のパイロット信号のI値に対して「-1」又は「1」を乗算し、拡散後のパイロット信号のI’値として出力する。乗算器35は、拡散前のパイロット信号のQ値に対して「-1」又は「1」を乗算し、拡散後のパイロット信号のQ’値として出力する。
【0074】
図9は、LDM信号のシンボルを構成するビット割当ての一例を示すIQ平面図である。図9は、LDM信号のシンボル(LDMシンボル)を構成するビットの割り当ての一例として、UL、LLの変調方式をQPSKとし、QPSKシンボルへのビット割り当てをグレイコードマッピングしたときの原点Oを中心とするIQ平面図を示している。この場合、LDMシンボルは、全体で16シンボルとして構成され、この16シンボルに割り当てられるビットは、図9に示す通り(説明の便宜上、16QAMのように示している。)、上位2ビットがUL、下位2ビットがLLとなる。ただし、LDMシンボルにおけるUL及びLLのビット割り当ては、図2に示すものに限定されず、UL及びLLのビットがLDMシンボル上で識別できればよい。
【0075】
前述のように、図7の例において、UL及びLLのパイロット拡散部114,124は、パイロット信号及び疑似ランダム信号として、同一のビット列を使用する。この場合、合成部13において合成されたパイロット信号においては、UL及びLLの2ビットの値が常に一致する。その結果、合成後のパイロット信号は、IQ平面上で4つの点(0000,0101,1010,1111)しか取ることができない(図9参照)。この場合、ビット列の遷移が特定の場合に限られるため、パイロット信号を用いた補正の効果を十分得ることができない可能性がある。換言すると、合成する2つの信号の変調方式が同じ場合でも、衛星中継器の非線形特性を補正する目的で用いられるパイロット信号が、主信号の信号配置点と異なることで、補正精度が劣化する可能性がある。
【0076】
そこで、本実施形態において、送信装置10は、ULとLLで異なるシンボル生成順序のパイロット信号を用いるとともに、ULとLLで異なる初期値の疑似ランダム信号を用いて電力拡散を行う。図10は、LDM伝送におけるパイロット信号の生成過程の一例を示す図である。
【0077】
図10の例において、パイロット生成部113,123は、ULとLLで異なるシンボル順序(UL:00→01→10→11、LL:00→01→11→10)で繰り返しシンボルを生成している。また、パイロット拡散部114,124は、ULとLLで異なる初期値(UL:100000000101100、LL:100000000001110)を用いて疑似ランダム信号を生成している。この場合、合成部13において合成されたパイロット信号は、IQ平面において、UL,LLの4ビットの全てのシンボルを網羅することができる。このように、パイロット信号及び疑似ランダム信号の初期値をUL及びLLで異ならせることで、例えばULとLLの変調方式がともにQPSKのように同じとなる場合でも、主信号と同様の信号配置となるパイロット信号を生成することが可能である。したがって、衛星中継器の非線形特性による影響も考慮した復号を行うことが可能となる。
【0078】
本開示は上述の実施形態に限定されるものではない。例えば、ブロック図に記載の複数のブロックは統合されてもよいし、又は一つのブロックは分割されてもよい。その他、本開示の趣旨を逸脱しない範囲での変更が可能である。
【0079】
また、例えば、送信装置10ないし受信装置20の構成及び動作を、互いに通信可能な複数のコンピュータに分散させてもよい。
【符号の説明】
【0080】
1 放送システム
10 送信装置
11 UL信号処理部
111 誤り訂正符号化部
112 マッピング部
113 パイロット生成部
114 パイロット拡散部
115 ヘッダ生成部
116 間隔調整部
117 フレーム生成部
118 電力調整部
12 LL信号処理部
121 誤り訂正符号化部
122 マッピング部
123 パイロット生成部
124 パイロット拡散部
125 ヘッダ生成部
126 間隔調整部
127 フレーム生成部
128 電力調整部
20 受信装置
21 アンテナ
22 直交復調部
23 ヘッダ検出部
24 デマッピング部
25 誤り訂正復号部
26 パイロット検出部
27 基準点判定部
28 誤り訂正復号部
31 シフトレジスタ
32 加算器
33 レベル変換部
34,35 乗算器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10