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特開2024-168866レーザ溶接用クラッド材、レーザ溶接用クラッド材を用いた接合構造、および電池の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168866
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】レーザ溶接用クラッド材、レーザ溶接用クラッド材を用いた接合構造、および電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 20/04 20060101AFI20241128BHJP
   H01M 50/562 20210101ALI20241128BHJP
   H01M 50/516 20210101ALI20241128BHJP
   B23K 26/21 20140101ALI20241128BHJP
   H01M 50/522 20210101ALI20241128BHJP
   H01M 50/543 20210101ALI20241128BHJP
   H01M 50/566 20210101ALI20241128BHJP
   H01M 50/548 20210101ALI20241128BHJP
【FI】
B23K20/04 D
H01M50/562
H01M50/516
B23K26/21 N
B23K20/04 C
B23K26/21 G
H01M50/522
H01M50/543
H01M50/566
H01M50/548 201
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023085885
(22)【出願日】2023-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】株式会社プロテリアル
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(72)【発明者】
【氏名】加藤 公康
(72)【発明者】
【氏名】織田 喜光
(72)【発明者】
【氏名】横山 紳一郎
【テーマコード(参考)】
4E167
4E168
5H043
【Fターム(参考)】
4E167AA03
4E167AA06
4E167AA29
4E167BC01
4E167DA04
4E167DB11
4E167DC02
4E168BA02
4E168BA86
4E168BA88
5H043AA05
5H043AA13
5H043BA17
5H043BA19
5H043CA03
5H043DA03
5H043DA08
5H043DA13
5H043DA14
5H043FA04
5H043HA17D
5H043HA17F
5H043KA06D
5H043KA09D
5H043KA09F
5H043LA02D
(57)【要約】
【課題】異種金属同士の接合を伴う接合構造のダウンサイジングを行うことが可能であるとともに 、接合構造を配置するスペースを小さくすることが可能なレーザ溶接に適するレーザ溶接用クラッド材を提供する。
【解決手段】レーザ溶接用クラッド材1は、純アルミニウムまたはアルミニウム合金からなるAl層1aと、Al層1aに圧延接合され、鉄基合金からなるFe層1bと、から構成され、Al層1aの厚みは、20μm以上140μm以下であり、Al層1a側からのレーザ照射により、他部材にレーザ溶接される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄基合金からなる他部材にレーザ溶接されるレーザ溶接用クラッド材であって、
純アルミニウムまたはアルミニウム合金からなるAl層と、
前記Al層に圧延接合され、鉄基合金からなるFe層と、から構成され、
前記Al層の厚みは、20μm以上140μm以下であり、
前記Al層側からのレーザ照射により、前記Fe層が前記他部材にレーザ溶接される、レーザ溶接用クラッド材。
【請求項2】
前記Al層の厚みは、40μm以上140μm以下である、請求項1に記載のレーザ溶接用クラッド材。
【請求項3】
純アルミニウムまたはアルミニウム合金からなるAl層と、前記Al層に圧延接合され、鉄基合金からなるFe層とを含み、前記Al層の厚みは、20μm以上140μm以下であるレーザ溶接用クラッド材と、
前記Fe層にレーザ溶接され、鉄基合金からなる他部材と、から構成され、
前記Al層側からのレーザ照射により、前記Fe層が前記他部材にレーザ溶接される、レーザ溶接用クラッド材を用いた接合構造。
【請求項4】
前記Fe層と前記他部材とのレーザ溶接による接合面に形成された溶融部分の前記接合面の延びる方向の長さが、40μm以上140μm以下である、請求項3に記載のレーザ溶接用クラッド材を用いた接合構造。
【請求項5】
前記Al層側からのレーザ照射により、前記Al層の前記Fe層が圧延接合された面とは反対側の露出面に形成される突出部の突出高さが、20μm以下である、請求項3に記載のレーザ溶接用クラッド材を用いた接合構造。
【請求項6】
前記Al層の厚みは、40μm以上140μm以下であり、
前記Al層側から前記Fe層側にレーザを照射されることにより、前記Al層の前記Fe層が圧延接合された面とは反対側の露出面に形成される突出部の突出高さが、15μm以下である、請求項5に記載のレーザ溶接用クラッド材を用いた接合構造。
【請求項7】
純アルミニウムまたはアルミニウム合金からなるAl板材と、鉄基合金からなるFe板材とを圧延接合して、Al層とFe層とから構成され、前記Al層の厚みが、20μm以上140μm以下である、レーザ溶接用クラッド材を準備する工程と、
前記Al層側から前記Fe層側に向けてレーザを照射することにより、前記Fe層に、鉄基合金からなる電池用端子部材を接合する工程と、
前記Al層に、純アルミニウムまたはアルミニウム合金からなるバスバーを接合する工程と、を備える、電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、レーザ溶接用クラッド材、レーザ溶接用クラッド材を用いた接合構造、および電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、耐衝撃強度を要求される車載用などの組電池において、バスバーと端子とが接合された構造の複数の電池で構成された組電池が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、複数の電池からなり、車載用に適する組電池(パック電池)が開示されている。特許文献1では、複数の電池を並べて、隣り合う電池をバスバー(リード板)によって接続している。また、バスバーは、電池の端子に溶着されている。
【0004】
上記特許文献1には開示されていないが、電池の端子が鉄基合金で構成されるとともに、バスバーが純アルミニウムまたはアルミニウム合金で構成される場合がある。鉄基合金から構成される電池用端子と純アルミニウムまたはアルミニウム合金から構成されるバスバーは、異種金属同士の溶着であることに起因して、電池用端子とバスバーとの接合部分に脆弱な金属間化合物が形成されて、接合強度が低下するという不都合がある。
【0005】
そこで、従来では、バスバーと電池用端子との間に、クラッドインサート材を配置することが提案されている(たとえば、特許文献2参照)。
【0006】
特許文献2には、鋼とアルミニウムとを重ね合わせて接合した構成の抵抗溶接に適するクラッドインサート材が開示されている。特許文献2では、クラッドインサート材の鉄基合金である鋼層が、表面処理鋼板に抵抗溶接されるとともに、クラッドインサート材のアルミニウム層がアルミニウム板に抵抗溶接される。具体的には、表面処理鋼板と、クラッドインサート材と、アルミニウム板とをこの順に重ね合わせた状態で、抵抗溶接用の一対の電極で挟み込むことにより抵抗溶接が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008-66001号公報
【特許文献2】特開平7-155964号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
抵抗溶接は、溶接する金属間の接触抵抗により溶接部位に発生するジュール熱や、溶接する金属自体の抵抗で発生するジュール熱を利用して、溶接部を溶融させて溶着させる溶接法である。抵抗溶接は、発生した熱が溶接する金属および電極に伝導して失われやすいため、狭い部位の溶着にかなり大きなエネルギー損失を伴う。そのため、上記特許文献2に開示されるクラッドインサート材では、より小さい熱量で溶融しやすいアルミニウム層の厚みが0.2mm超(請求項1)に規定されていると考えられる。したがって、抵抗溶接のように接合部を溶融させて接合する溶接法に用いるクラッドインサート材は、融点が低いアルミニウム層の厚みを確保する(十分に大きく)する必要があると考えられる。
【0009】
また、上記特許文献2に開示されるクラッドインサート材を抵抗溶接に用いる場合、クラッドインサート材を挟み込む一対の電極を配置する必要がある。しかしながら、組電池の構造によっては、スペースが小さく、個々の電池に対して電極を配置することが難しい場合がある。このような場合、抵抗溶接のように電極を用いる必要がなく、省スペース化に有利なレーザ溶接が提案されている。なお、レーザ照射により溶接部を溶融させて接合するレーザ溶接にクラッドインサート材を用いる場合もまた、融点が低いアルミニウム層の厚みを十分に確保する(十分に大きく)する必要があると考えられる。
【0010】
近年、地球温暖化などの環境問題に後押しされるように電気自動車の普及が急伸し、これに伴って、車載用の組電池の高性能化やダウンサイジング(小型化)が強く求められている。そのため、組電池をより高性能化するとともに、組電池を構成する多数の接合構造のダウンサイジングが急務になっている。しかしながら、上記特許文献2に開示されたクラッドインサート材は、アルミニウム層の厚みを十分に大きくする必要があるためダウンサイジング化が難しいという問題点がある。
【0011】
この発明は、上記のような組電池を構成する接合構造のダウンサイジングの課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、異種金属同士の接合を伴う接合構造のダウンサイジングを行うことが可能であるとともに、接合構造を配置するスペースを小さくすることが可能なレーザ溶接に適する、レーザ溶接用クラッド材、レーザ溶接用クラッド材を用いた接合構造、および電池の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本願発明者は、上記特許文献2に開示されるクラッドインサート材の特にアルミニウム層(Al層)の構成に着目し、レーザ溶接に適するクラッド材(クラッドインサート材)となるように鋭意検討し、下記のような構成を見出した。すなわち、この発明の第1の局面によるレーザ溶接用クラッド材は、鉄基合金からなる他部材にレーザ溶接されるレーザ溶接用クラッド材であって、純アルミニウムまたはアルミニウム合金からなるAl層と、Al層に圧延接合され、鉄基合金からなるFe層と、から構成され、Al層の厚みは、20μm以上140μm以下であり、Al層側からのレーザ照射により、Fe層が他部材にレーザ溶接される。
【0013】
この発明の第1の局面によるレーザ溶接用クラッド材では、上記のように、純アルミニウムまたはアルミニウム合金からなるAl層と、Al層に圧延接合され、鉄基合金からなるFe層と、から構成され、Al層の厚みは、20μm以上140μm以下であり、Al層側からのレーザ照射により、他部材にレーザ溶接される。Al層の厚みが20μm以上であることにより、Al層側からのレーザ照射によってFe層よりも十分に低融点のAl層が速やかに溶融されるため、溶融したAl層からのFe層への伝熱が速やかに行われ、レーザ溶接用クラッド材の厚み方向への溶け込みを速やかに行うことができる。この結果、鉄基合金からなる他部材に対してレーザ溶接用クラッド材を接合する際に、抵抗溶接のように大きなエネルギー損失を伴わない一般的なレーザ溶接を適用することが可能なレーザ溶接用クラッド材を提供することができる。
【0014】
また、Al層の厚みが140μm以下であることにより、レーザ溶接に好適なAl量(Al層の厚み)が確保される一方、過剰なAl量(Al層の厚み)が存在しないため、レーザ溶接用クラッド材の厚みが過度に大きくなるのを抑制することができる。この結果、レーザ溶接用クラッド材全体を薄肉化することができるため、レーザ溶接用クラッド材を用いて異種金属同士の接合を行った接合構造のダウンサイジング化を行うことができる。
【0015】
また、Al層の厚みが20μm以上140μm以下であることにより、レーザ照射によって溶融したAl層が凝固するときの体積変化に起因してAl層のレーザ照射側に形成される突出部の突出高さを小さくすることができる。この結果、レーザ溶接に起因してAl層の露出面に形成される突出部の突出高さが小さく、レーザ溶接用クラッド材全体を薄肉化することができるため、レーザ溶接用クラッド材を用いて異種金属同士の接合を行った接合構造のダウンサイジング化を行うことができる。なお、本願発明者は、Al層の厚みを20μm以上140μm以下にすることにより、上記の効果を得ることができることを後述する実験(実施例)により見出している。また、接合構造のダウンサイジングを行うことができることにより、接合構造を配置するスペースを小さくすることができる。これらの結果、異種金属同士の接合を伴う接合構造のダウンサイジングを行うことができるとともに 、接合構造を配置するスペースを小さくすることができる。
【0016】
上記第1の局面によるレーザ溶接用クラッド材において、好ましくは、Al層の厚みは、40μm以上140μmである。このように構成すれば、レーザ照射によって溶融したAl層が凝固するときの体積変化がAl層の内部に収まる割合が大きくなるため、Al層のレーザ照射側の露出面に形成される突出部の突出高さをより小さくすることができることを後述する実験により見出している。
【0017】
この発明の第2の局面によるレーザ溶接用クラッド材を用いた接合構造では、純アルミニウムまたはアルミニウム合金からなるAl層と、Al層に圧延接合され、鉄基合金からなるFe層とを含み、Al層の厚みは、20μm以上140μm以下であるレーザ溶接用クラッド材と、Fe層にレーザ溶接され、鉄基合金からなる他部材と、から構成され、Al層側からのレーザ照射により、Fe層が他部材にレーザ溶接される。
【0018】
この発明の第2の局面によるレーザ溶接用クラッド材を用いた接合構造では、上記のように、純アルミニウムまたはアルミニウム合金からなるAl層と、Al層に圧延接合され、鉄基合金からなるFe層と、から構成され、Al層の厚みは、20μm以上140μm以下であり、Al層側からのレーザ照射により、他部材にレーザ溶接される。Al層の厚みが20μm以上であることにより、Al層側からのレーザ照射によってFe層よりも十分に低融点のAl層が速やかに溶融されるため、溶融したAl層からのFe層への伝熱が速やかに行われ、レーザ溶接用クラッド材の厚み方向への溶け込みを速やかに行うことができる。この結果、上記したように、一般的なレーザ溶接を適用することができるため、レーザ溶接用クラッド材を用いた異種金属同士のレーザ溶接による接合を伴う接合構造を提供することができる。
【0019】
また、Al層の厚みが140μm以下であることにより、レーザ溶接に好適なAl量(Al層の厚み)が確保される一方、過剰なAl量(Al層の厚み)が存在しないため、レーザ溶接用クラッド材の厚みが過度に大きくなるのを抑制することができる。この結果、上記したように、レーザ溶接用クラッド材を用いて異種金属同士の接合を行った接合構造のダウンサイジング化することができる。
【0020】
また、Al層の厚みが20μm以上140μm以下であることにより、レーザ照射によって溶融したAl層が凝固するときの体積変化に起因してAl層のレーザ照射側に形成される突出部の突出高さを小さくすることができる。この結果、上記したように、レーザ溶接用クラッド材を用いて異種金属同士の接合を行った接合構造のダウンサイジング化することができる。なお、本願発明者は、Al層の厚みを20μm以上140μm以下にすることにより、上記の効果を得ることができることを後述する実験(実施例)により見出している。また、接合構造のダウンサイジングを行うことができることにより、接合構造を配置するスペースを小さくすることができる。これらの結果、異種金属同士の接合を伴う接合構造のダウンサイジングを行うことができるとともに 、接合構造を配置するスペースを小さくすることができる。
【0021】
上記第2の局面によるレーザ溶接用クラッド材を用いた接合構造において、好ましくは、Fe層と他部材とのレーザ溶接による接合面に形成された溶融部分の接合面の延びる方向の長さが、40μm以上である。このように構成すれば、レーザ溶接用クラッド材と他部材との接合強度を適度に高めることができる。なお、本願発明者は、溶融部分の接合面の延びる方向の長さを40μm以上にすることにより、上記の効果を得ることができることを後述する実験(実施例)により見出している。
【0022】
上記第2の局面によるレーザ溶接用クラッド材を用いた接合構造において、好ましくは、Al層側からのレーザ照射により、Al層のFe層が圧延接合された面とは反対側の露出面に形成される突出部の突出高さが、20μm以下である。このように構成すれば、突出部の突出高さが十分に小さいことにより、突出部がレーザ溶接用クラッド材以外の部材に接触することを抑制することができる。この結果、突出部がレーザ溶接用クラッド材以外の部材との接触により破損し、破損した突出部の欠片に起因して接合構造および組電池の動作が不安定になるリスクを抑制することができる。
【0023】
この場合、好ましくは、Al層の厚みは、40μm以上140μm以下であり、Al層側からFe層側にレーザを照射されることにより、Al層のFe層が圧延接合された面とは反対側の露出面に形成される突出部の突出高さが、15μm以下である。このように構成すれば、突出部の突出高さが、15μm以下であることにより、突出部がレーザ溶接用クラッド材以外の部材に接触することをさらに抑制することができる。この結果、突出部がレーザ溶接用クラッド材以外の部材に接触することに起因する接合構造および組電池の動作が不安定になるリスクをさらに抑制することができる。なお、本願発明者は、Al層の厚みを40μm以上140μm以下にすることにより、突出部の突出高さを15μm以下にすることができることを後述する実験により見出している。
【0024】
この発明の第3の局面による電池の製造方法では、純アルミニウムまたはアルミニウム合金からなるAl板材と、鉄基合金からなるFe板材とを圧延接合して、Al層とFe層とから構成され、Al層の厚みが、20μm以上140μm以下である、レーザ溶接用クラッド材を準備する工程と、Fe層に、鉄基合金からなる電池用端子部材を接合する工程と、Al層に、接合用のAl系ワイヤの一方端をワイヤボンディングにより接合する工程と、Al系ワイヤの他方端を純アルミニウムまたはアルミニウム合金からなるバスバーに接合する工程と、を備える。
【0025】
この発明の第3の局面による電池の製造方法では、上記のように、純アルミニウムまたはアルミニウム合金からなるAl板材と、鉄基合金からなるFe板材とを圧延接合して、Al層とFe層とから構成され、Al層の厚みが、20μm以上140μm以下である、レーザ溶接用クラッド材を準備する工程を備える。Al層の厚みが20μm以上であることにより、Al層側からのレーザ照射によってFe層よりも十分に低融点のAl層が速やかに溶融されるため、溶融したAl層からのFe層への伝熱が速やかに行われ、レーザ溶接用クラッド材の厚み方向への溶け込みを速やかに行うことができる。この結果、上記したように、一般的なレーザ溶接を適用して、電池を製造することができる。
【0026】
また、Al層の厚みが140μm以下であることにより、レーザ溶接に好適なAl量(Al層の厚み)が確保される一方、過剰なAl量(Al層の厚み)が存在しないため、レーザ溶接用クラッド材の厚みが過度に大きくなるのを抑制することができる。この結果、上記したように、レーザ溶接用クラッド材を用いて異種金属同士の接合を行った接合構造のダウンサイジングに有利であるため、適度にダウンサイジングを行うことが可能な電池を製造することができる。また、接合構造のダウンサイジングを行うことができることにより、接合構造を配置するスペースを小さくすることができるため、ダウンサイジングを行うことが可能な電池を製造することができる。
【0027】
また、Al層の厚みが20μm以上140μm以下であることにより、レーザ照射によって溶融したAl層が凝固するときの体積変化に起因してAl層のレーザ照射側に形成される突出部の突出高さを小さくすることができる。この結果、上記したように、レーザ溶接用クラッド材を用いて異種金属同士の接合を行った接合構造のダウンサイジングに有利であるため、適度にダウンサイジング化することが可能な電池を製造することができる。なお、本願発明者は、Al層の厚みを20μm以上140μm以下にすることにより、上記の効果を得ることができることを後述する実験(実施例)により見出している。これらの結果、異種金属同士の接合を伴う接合構造のダウンサイジングを行うことができるとともに 、接合構造を配置するスペースを小さくすることができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、種金属同士の接合を伴う接合構造のダウンサイジングを行うことが可能であるとともに 、接合構造を配置するスペースを小さくすることが可能なレーザ溶接に適する、レーザ溶接用クラッド材、レーザ溶接用クラッド材を用いた接合構造、および電池の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本実施形態による組電池を示す図である。
図2】本実施形態によるレーザ溶接用クラッド材の一例を示す図である。
図3】本実施形態によるレーザ溶接用クラッド材と、蓋材とを接合した状態を示す図である。
図4】本実施形態によるレーザ溶接用クラッド材を電池用端子にレーザ溶接する場合のレーザ溶接用クラッド材に対するレーザ照射位置を示す図である。
図5】レーザ溶接用クラッド材を用いた接合構造の一部分であって、蓋材にレーザ溶接用クラッド材をレーザ溶接した状態を示す断面図である。
図6】本実施形態による単電池の一例を示す図である。
図7】本実施形態によるレーザ溶接用クラッド材の製造方法を示す図である。
図8】本実施形態によるレーザ溶接用クラッド材を電池用端子に接合する方法を説明するための図である。
図9】本実施形態によるワイヤボンディングの方法を説明するための図である。
図10】レーザ溶接用クラッド材のAl層の厚みと、接合強度、溶融幅、溶け込み深さおよび突出高さとの関係を示すグラフである。
図11】変形例における組電池を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0031】
図1に示すように、本発明の実施形態によるレーザ溶接用クラッド材1は、組電池100に使用される。組電池100は、複数のリチウムイオン二次電池10が、バスバー20によって電気的に接続されることによって構成されている。なお、図1では、組電池100を簡略化して記載しているが、車載用などの組電池100を構成するリチウムイオン二次電池10の数は、図1に示すよりも多い。車載用の組電池100は、電気自動車(EV、electric vehicle)、またはハイブリッド自動車(HEV、hybrid electric vehicle)に搭載される大型の電池システムである。なお、組電池100は、特許請求の範囲に記載した「電池」の一例である。
【0032】
図2に示すように、レーザ溶接用クラッド材1は、Al層1aとFe層1bとから構成される。図2では、レーザ溶接用クラッド材1は円形状であるが、レーザ溶接用クラッド材1の形状はこれに限られない。
【0033】
Al層1aは、純アルミニウムまたはアルミニウム合金から構成される。純アルミニウムは、アルミニウムの含有量が99%以上100%以下であり、たとえば、A1050を含むJIS規格のA1000系である。また、アルミニウム合金は、Alに対してMnまたはMgなどの他元素が添加された合金であり、たとえば、A3003を含むJIS規格のA3000系やA5052を含むJIS規格のA5000系などである。
【0034】
Fe層1bは、鉄基合金から構成される。鉄基合金は、構成する金属元素のうちFeの含有量が一番多い合金である。鉄基合金のうちCrを約10質量%以上含有するものをステンレス鋼とする。Fe層1bを構成する鉄基合金は、耐久性の観点からCrを10質量%以上含む鉄基合金であるステンレス鋼が好ましい。また、Fe層1bを構成する鉄基合金は、Al層1aの硬さとの差を小さくするために、Niを含まないステンレス鋼であるフェライト系ステンレス鋼が好ましい。フェライト系ステンレス鋼は、Crを16質量%以上18質量%以下含む、常温でも主な金属組織が体心立方格子構造のフェライト相であるステンレス鋼であり、たとえば、SUS430である。
【0035】
図2および図5に示すように、レーザ溶接用クラッド材1の全体厚みt1は、200μm以上400μm以下である。また、Al層1aの厚みt2は、20μm以上140μm以下である。Al層1aの厚みt2は、Al層1a側からのレーザ照射によってFe層1bよりも十分に低融点のAl層1aを速やかに溶融させ、Al層1aからFe層1bへの伝熱を速やかに行わせ、レーザ溶接用クラッド材1の厚み方向(Z方向)のZ2側に向かう溶け込みを速やかに行わせるために、20μm以上とする。また、Al層1aの厚みt2は、レーザ溶接に好適なAl量を確保しながらも過剰なAl量を存在させないことでレーザ溶接用クラッド材1の全体厚みt1が過度に大きくなるのを抑制するために、140μm以下とする。また、Al層1aの厚みt2は、レーザ照射によって溶融したAl層が凝固するときの体積変化に起因してAl層1aのレーザ照射側に形成される突出部1dの突出高さx3を小さくするために、20μm以上140μm以下とする。
【0036】
また、Fe層1bに接合している面とは反対のAl層1aの面である、Al層1aの露出面1c(Z1側の面)に形成される突出部1dの突出高さx3を20μm以下としてAl層1aの一部が剥離することを抑制するためにも、Al層1aの厚みt2は、20μm以上とする。また、Al層1aの露出面1c(Z1側の面)に形成される突出部1dの突出高さx3を15μm以下としてAl層1aの一部が剥離することをより一層抑制するためにも、Al層1aの厚みt2は、好ましくは、40μm以上140μm以下とする。
【0037】
図3に示すように、レーザ溶接用クラッド材1のFe層1bには、リチウムイオン二次電池10の鉄基合金からなる端子(負極端子または正極端子)が接合される。図3では、Fe層1bに、正極端子である鉄基合金からなる蓋材12が接合されている構成例を示している。接合方法は、レーザ溶接である。Al層1aに対してZ1側からレーザ照射することによって、Al層1aとFe層1bとがZ方向に溶融するとともに蓋材12の一部が溶融し、レーザ溶接用クラッド材1と蓋材12とが接合される。レーザの種類は、接合構造などの諸条件に応じて選定すればよく、限定されない。なお、蓋材12は、特許請求の範囲に記載した「他部材」および「電子用端子部材」の一例である。
【0038】
たとえば、レーザ溶接用クラッド材1が円形状である場合に、レーザ溶接用クラッド材1に対するレーザ照射位置を示す図4において破線で示すように、Al層1aに対するレーザ照射は、レーザ溶接用クラッド材1と蓋材12とが重なる領域内で、円形状に行うことができる。たとえば、レーザ溶接用クラッド材1および蓋材12の直径が約23mmの場合、レーザ照射は直径が約20mm以下(たとえば、15mm)の円形状に行うことができる。
【0039】
たとえば、Al層1aのZ1側からレーザ照射を行ってレーザ溶接用クラッド材1を蓋材12にレーザ溶接した場合、接合構造の一部分を示す図5において二点鎖線で示すように、レーザ照射によってレーザ溶接用クラッド材1が溶融して蓋材12側に溶け込む。このときに、レーザ溶接用クラッド材1のFe層1bと蓋材12とのレーザ溶接による接合面1eに形成された溶融部分の接合面1eの延びる方向(X方向)の長さ(溶融幅)x1は、40μm以上であるのが好ましい。なお、図5はX-Z断面を示すものであるが、溶融部分の接合面1eはX-Y平面に平行である。また、図5では、溶融部分の接合面1eの延びる方向をX方向としているが、Y方向を接合面1eの延びる方向としてもよい。
【0040】
また、図5に示す溶け込み深さx2は、50μm以上130μm以下であってよい。この構成により、レーザ溶接用クラッド材1に対して蓋材12を適度な接合強度で接合しながら、蓋材12の薄肉化を進めることができる。この結果、レーザ溶接用クラッド材1を用いた異種金属同士の接合構造のダウンサイジング化を行うことができる。なお、溶け込み深さとは、溶融部分の接合面1eを基準として、レーザ照射によって蓋材12がZ方向に溶け込んだ量(長さ)を意図する。
【0041】
Al層1aの露出面1cには、レーザ照射によって溶融したAl層1aが凝固するときの体積変化に起因して、図5に示すように、蓋材12(Fe層1b)とは反対側(Z1側)に突出する突出部1dが形成される。突出部1dの突出高さx3は、突出部1dの破損を抑制するため、好ましくは20μm以下である。また、突出部1dの突出高さx3は、突出部1dの破損をより一層抑制するため、さらに好ましくは15μm以下である。
【0042】
Al層1aの露出面1cには、バスバー20が接合される。バスバー20との接合には、たとえば、ワイヤボンディングが用いられる。具体的には、図9に示すように、Al層1aに接合用のAl系ワイヤ2の一端がワイヤボンディングにより接合されるとともに、バスバー20の凹部20aに接合用のAl系ワイヤ2の他端がワイヤボンディングにより接合される。Al系ワイヤ2は、純アルミニウムまたはアルミニウム合金から構成される。
【0043】
(リチウムイオン二次電池)
図6に示すように、リチウムイオン二次電池10は、円筒状の筐体11と、筐体11の開口を封止する蓋材12と、筐体11内に配置される蓄電要素13とを備える。筐体11は、Niめっき鋼板から構成されており、リチウムイオン二次電池10の負極端子を兼ねている。
【0044】
筐体11内には、蓄電要素13と電解液(図示せず)とが収容されている。蓋材12は、鉄基合金から構成されており、リチウムイオン二次電池10の正極端子を兼ねている。蓄電要素13は、正極14と、負極15と、正極14と負極15との間に配置された絶縁性のセパレータ16とが巻回されることによって形成されている。正極14は、アルミニウム箔により構成される正極集電体(図示せず)と、正極集電体の表面上に配置される正極活物質層(図示せず)とを含む。正極活物質層は、マンガン酸リチウムなどの正極活物質と、樹脂材により構成されるバインダとを有する。
【0045】
リチウムイオン二次電池10は、正極14と正極端子(蓋材12)とを接続するための正極用リード材17と、負極15と負極端子(筐体11)とを接続するための負極用リード材18とをさらに備える。正極用リード材17は、アルミニウム箔により構成され、正極14の正極集電体と蓋材12とに抵抗溶接などにより接合されている。負極用リード材18は、銅箔により構成され、負極15の負極集電体と筐体11とに抵抗溶接などにより接合されている。
【0046】
図1に示すように、バスバー20は、純アルミニウムまたはアルミニウム合金から構成される。バスバー20は、リチウムイオン二次電池10の端子(負極端子、正極端子)間を電気的に接続するものである。本実施形態では、バスバー20は、板状形状を有しており、複数の単電池(リチウムイオン二次電池10)の正極端子の間を電気的に接続している。本実施形態では、レーザ溶接用クラッド材1は、バスバー20と、リチウムイオン二次電池10の正極端子との間に配置される。また、図1に示すように、バスバー20のAl系ワイヤ2が結合される部分には、凹部20aが設けられている。なお、図1では、短手方向の一方側(X1側)に凹部20aが設けられている例を示しているが、凹部20aは、短手方向の一方側(X1側)および他方側(X2側)に設けられていてもよい。バスバー20は、1つのバスバー20で複数の端子を同時に接続することができる。図1では示していないが、負極端子同士も別のバスバーで接続されている。負極端子と別のバスバーとの接合は、レーザ溶接、または、スポット溶接などが用いられる。また、図1に示す組電池100では、正極端子同士をバスバー20で接続する部分の構成例を示すことを意図しており、他の接続部分などの構成は略している。なお、組電池は、正極端子と負極端子とをバスバーで接合する構成であってもよい。また、組電池は、正極端子同士をバスバーで接続するとともに負極端子同士をバスバーで接続する構成と、正極端子と負極端子とをバスバーで接合する構成とを組み合わせた構成であってもよい。
【0047】
(電池の製造方法)
図7に示すように、Al板材50aと、Fe板材50bとを圧延接合することにより、Al層1aとFe層1bとから構成され、Al層1aの厚みが、20μm以上140μm以下である、レーザ溶接用クラッド材1を準備する。Al板材50aは、Al層1aと同じ純アルミニウムまたはアルミニウム合金から構成される板材である。Fe板材50bは、Fe層1bと同じ鉄基合金から構成される板材である。圧延接合では、圧延加工前のAl板材50aおよびFe板材50bの厚みが、圧延加工後のAl層1aおよびFe層1bの厚みとなるように、圧延率(加工度)が設定される。なお、図7には記載していないが、Al板材50aとFe板材50bとを圧延接合した後、拡散焼鈍が行われてもよい。また、Al板材50aとFe板材50bとを圧延接合する前、軟化焼鈍が行われてもよい。また、Al板材50aとFe板材50bとを圧延接合した後、所望のAl層1aの厚み、および所望のFe層1bの厚みにするために、さらに圧延が行われてもよい。また、さらに圧延する前、軟化焼鈍が行われてもよい。作製されたレーザ溶接用クラッド材1は、その後、たとえば、円形状に加工される。円形状に加工する方法は、レーザ溶接用クラッド材1を打ち抜くことで行われてもよい。円形状に形成されたレーザ溶接用クラッド材1の直径は、接合する端子の直径に適するように設定される。
【0048】
図1に示す組電池100を構成する場合、図8に示すように、電池用端子部材に対して、レーザ溶接用クラッド材1のFe層1bを接合する。図8では、電池用端子部材は、蓋材12(正極端子)である。なお、組電池の構成によっては、レーザ溶接用クラッド材1のFe層1bに対して、負極端子(筐体11の外底面)を接合することもできる。電池用端子部材に対して、レーザ溶接用クラッド材1のFe層1bを接合する方法は、レーザ溶接である。レーザ溶接では、レーザ照射部40をAl層1a側(Z1側)に配置してレーザ照射を行う。レーザ照射は、たとえば、図4において破線で示すように、円形状のレーザ溶接用クラッド材1の外周縁に沿って円形状の軌跡を形成するように行われる。これにより、レーザ溶接用クラッド材1と蓋材12とから構成される異種金属同士の接合を伴う接合構造が形成される。
【0049】
図9に示すように、電池用端子部材にレーザ溶接用クラッド材1を接合した後、バスバー20をAl層1aに接合する。バスバー20をAl層1aに接合する方法は、Al層1aに接合用のAl系ワイヤ2の一方端をワイヤボンディングにより接合するとともに、バスバー20の凹部20aにAl系ワイヤ2の他方端をワイヤボンディングにより接合する。
【0050】
ワイヤボンディングは、Al系ワイヤ2の一方端および他方端を溶融してボール状の接合箇所を形成する方法と、ボール状の接合箇所を形成しない方法とがある。また、Al系ワイヤ2の一方端および他方端をAl層1aおよびバスバー20にそれぞれ接合する方法としては、熱を用いる方法、圧力を用いる方法、超音波を用いる方法、または、熱や圧力や超音波などを相応に組み合わせて用いる方法などがある。超音波を用いる場合は、たとえば、レーザ溶接用クラッド材1のAl層1aに対して、ワイヤの一方端をツール50により押し付けた状態で超音波の振動を加えて内部で発熱させて、ワイヤの一方端およびAl層1aの表面付近を溶融して接合する。
【0051】
<本実施形態の効果>
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0052】
本実施形態では、レーザ溶接用クラッド材1は、純アルミニウムまたはアルミニウム合金からなるAl層1aと、Al層1aに圧延接合され、鉄基合金からなるFe層1bと、から構成され、Al層1aの厚みは、20μm以上140μm以下であり、Al層1a側からのレーザ照射により、他部材にレーザ溶接される。Al層1aの厚みが20μm以上であることにより、Al層1a側からのレーザ照射によってFe層1bよりも十分に低融点のAl層1aが速やかに溶融されるため、溶融したAl層1aからのFe層1bへの伝熱が速やかに行われ、レーザ溶接用クラッド材1の厚み方向(Z方向)への溶け込みを速やかに行うことができる。この結果、鉄基合金からなる他部材(蓋材12)に対してレーザ溶接用クラッド材1を接合する際に、抵抗溶接のように大きなエネルギー損失を伴わない一般的なレーザ溶接を適用することが可能なレーザ溶接用クラッド材1を提供することができる。また、Al層1aの厚みが140μm以下であることにより、レーザ溶接に好適なAl量が確保される一方、過剰なAl量が存在しないため、レーザ溶接用クラッド材1の厚みが過度に大きくなるのを抑制することができる。この結果、レーザ溶接用クラッド材1全体を薄肉化することができるため、レーザ溶接用クラッド材1を用いて異種金属同士の接合を行った接合構造のダウンサイジング化を行うことができる。また、Al層1aの厚みが20μm以上140μm以下であることにより、レーザ照射によって溶融したAl層1aが凝固するときの体積変化に起因してAl層1aのレーザ照射側(Z1側)に形成される突出部1dの突出高さを小さくすることができる。この結果、レーザ溶接に起因してAl層1aの露出面1cに形成される突出部1dの突出高さが小さく、レーザ溶接用クラッド材1全体を薄肉化することができるため、レーザ溶接用クラッド材1を用いて異種金属同士の接合を行った接合構造のダウンサイジングに有利である。なお、本願発明者は、Al層1aの厚みを20μm以上140μm以下にすることにより、上記の効果を得ることができることを後述する実験(実施例)により見出している。また、接合構造のダウンサイジングを行うことができることにより、接合構造を配置するスペースを小さくすることができる 。これらの結果、異種金属同士の接合を伴う接合構造のダウンサイジングを行うことができるとともに 、接合構造を配置するスペースを小さくすることができる。
【0053】
また、本実施形態では、Al層1aの厚みは、40μm以上140μm以下である。これにより、レーザ照射によって溶融したAl層1aが凝固するときの体積変化がAl層1aの内部に収まる割合が大きくなるため、Al層1aのレーザ照射側(Z1側)の露出面1cに形成される突出部1dの突出高さをより小さくすることができることを後述する実験により見出している。
【0054】
また、本実施形態によるレーザ溶接用クラッド材1を用いた接合構造では、上記のように、純アルミニウムまたはアルミニウム合金からなるAl層1aと、Al層1aに圧延接合され、鉄基合金からなるFe層1bと、から構成され、Al層1aの厚みt2は、20μm以上140μm以下であり、Al層1a側からのレーザ照射により、蓋材12にレーザ溶接される。これにより、Al層1aの厚みが20μm以上であることにより、Al層1a側(Z1側)からのレーザ照射によってFe層1bよりも十分に低融点のAl層1aが速やかに溶融されるため、溶融したAl層1aからのFe層1bへの伝熱が速やかに行われ、レーザ溶接用クラッド材1の厚み方向(Z方向)への溶け込みを速やかに行うことができる。この結果、上記したように、一般的なレーザ溶接を適用することができるため、レーザ溶接用クラッド材1を用いた異種金属同士のレーザ溶接による接合を伴う溶接構造を提供することができる。また、Al層1aの厚みが140μm以下であることにより、レーザ溶接に好適なAl量が確保される一方、過剰なAl量が存在しないため、レーザ溶接用クラッド材1の厚みが過度に大きくなるのを抑制することができる。この結果、上記したように、レーザ溶接用クラッド材1を用いて異種金属同士のレーザ溶接による接合を伴う接合構造のダウンサイジング化することができる。また、Al層1aの厚みが20μm以上140μm以下であることにより、レーザ照射によって溶融したAl層1aが凝固するときの体積変化に起因してAl層1aのレーザ照射側(Z1側)に形成される突出部1dの突出高さを小さくすることができる。この結果、上記したように、レーザ溶接用クラッド材1を用いて異種金属同士のレーザ溶接による接合を伴う接合構造のダウンサイジング化することができる。なお、本願発明者は、Al層1aの厚みを20μm以上140μm以下にすることにより、上記の効果を得ることができることを後述する実験(実施例)により見出している。また、接合構造のダウンサイジングを行うことができることにより、接合構造を配置するスペースを小さくすることができる。これらの結果、異種金属同士の接合を伴う接合構造のダウンサイジングを行うことができるとともに 、接合構造を配置するスペースを小さくすることができる。
【0055】
また、本実施形態では、Fe層1bと他部材とのレーザ溶接による接合面1eに形成された溶融部分の接合面の延びる方向の長さが、40μm以上である。これにより、レーザ溶接用クラッド材1と他部材(蓋材12)との接合強度を適度に高めることができる。なお、本願発明者は、溶融部分の接合面1eの延びる方向(X方向)の長さを40μm以上にすることにより、上記の効果を得ることができることを後述する実験(実施例)により見出している。
【0056】
また、本実施形態では、上記のように、Al層1a側からのレーザ照射により、Al層1aのFe層1bが圧延接合された面とは反対側の露出面1cに形成される突出部1dの突出高さが、20μm以下である。これにより、突出部1dの突出高さが十分に小さいことにより、突出部1dがレーザ溶接用クラッド材1以外の部材に接触することを抑制することができる。この結果、突出部1dがレーザ溶接用クラッド材1以外の部材との接触により破損し、破損した突出部1dの欠片に起因して接合構造および組電池の動作が不安定になるリスクを抑制することが可能な接合構造を提供することができる。
【0057】
また、本実施形態では、好ましくは、Al層1aの厚みは、40μm以上140μm以下であり、Al層1a側(Z1側)からFe層1b側にレーザを照射されることにより、Al層1aのFe層1bが圧延接合された面とは反対側の露出面1cに形成される突出部1dの突出高さが、15μm以下である。これにより、突出部1dがレーザ溶接用クラッド材1以外の部材に接触することをさらに抑制することができる。この結果、突出部1dがレーザ溶接用クラッド材1以外の部材に接触することに起因する接合構造および組電池の動作が不安定になるリスクをさらに抑制することができる。なお、本願発明者は、Al層1aの厚みを40μm以上140μm以下にすることにより、突出部1dの突出高さx3を15μm以下にすることができることを後述する実験により見出している。
【0058】
また、本実施形態の電池の製造方法では、上記のように、純アルミニウムまたはアルミニウム合金からなるAl板材50aと、鉄基合金からなるFe板材50bとを圧延接合して、Al層1aとFe層1bとから構成され、Al層1aの厚みが、20μm以上140μm以下である、レーザ溶接用クラッド材1を準備する工程を備える。Al層1aの厚みが20μm以上であることにより、Al層1a側(Z1側)からのレーザ照射によってFe層1bよりも十分に低融点のAl層1aが速やかに溶融されるため、溶融したAl層1aからのFe層1bへの伝熱が速やかに行われ、レーザ溶接用クラッド材1の厚み方向(Z方向)への溶け込みを速やかに行うことができる。この結果、上記したように、一般的なレーザ溶接を適用して、電池を製造することができる。また、Al層1aの厚みが140μm以下であることにより、レーザ溶接に好適なAl量が確保される一方、過剰なAl量が存在しないため、レーザ溶接用クラッド材1の厚みが過度に大きくなるのを抑制することができる。この結果、上記したように、レーザ溶接用クラッド材1を用いて異種金属同士のレーザ溶接による接合を行った接合構造のダウンサイジングに有利であるため、適度にダウンサイジングを行うことが可能な電池を製造することができる。また、Al層1aの厚みが20μm以上140μm以下であることにより、レーザ照射によって溶融したAl層1aが凝固するときの体積変化に起因してAl層1aのレーザ照射側に形成される突出部1dの突出高さを小さくすることができる。この結果、上記したように、レーザ溶接用クラッド材1を用いて異種金属同士のレーザ溶接による接合を伴う接合構造のダウンサイジングに有利であるため、適度にダウンサイジングを行うことが可能な電池を製造することができる。なお、本願発明者は、Al層1aの厚みを20μm以上140μm以下にすることにより、上記の効果を得ることができることを後述する実験(実施例)により見出している。これらの結果、異種金属同士の接合を伴う接合構造のダウンサイジングを行うことができるとともに 、接合構造を配置するスペースを小さくすることができる。
【0059】
[実施例]
試験体となるレーザ溶接用クラッド材1と鉄基合金からなる他部材とをレーザ溶接により接合した接合構造について、レーザ溶接により図5に示すように形成されたレーザ溶接部の接合強度、溶融幅x1、溶け込み深さx2および突出部1dの突出高さx3を測定・評価した実験(実施例)について説明する。
【0060】
まず、Al層1aを有する試験体として、全体厚みt1が300μmであって、A1050からなるAl層1aとSUS430からなるFe層1bとから構成され、Al層1aの厚みt2が異なる6種類のレーザ溶接用クラッド材1(実施例1~5および比較例2)を準備した。また、Al層を有さない試験体として、フェライト系ステンレス鋼からなる厚みが300μmのSUS430単板(比較例1)を準備した。また、鉄基合金からなる他部材として、厚みが300μmのSUS430単板を準備した。なお、試験体である6種類のレーザ溶接用クラッド材1のAl層1aの厚みt2は、10μm(比較例2)、20μm(実施例1)、40μm(実施例2)、60μm(実施例3)、90μm(実施例4)および140μm(実施例5)とした。
【0061】
次いで、実施例1~5および比較例2の試験体のAl層1aと他部材とをレーザ溶接により部分的に接合し、Al050とSUS430との異種金属接合部を含む接合構造を作製した。また、比較例1の試験体と他部材とをレーザ溶接により部分的に接合し、SUS430とSUS430との同種金属接合部を含む接合構造を作製した。なお、いずれの接合構造の場合も、レーザ溶接は、レーザの出力を300Wとし、レーザの照射速度を500mm/sとし、Al層1aのZ1側の表面に直径15mmの円を描くようにレーザ照射して行った。
【0062】
作製された実施例1~5、比較例1および比較例2の接合構造について、レーザ溶接部の接合強度評価試験を行った。具体的には、実施例1~5、比較例1および比較例2の接合構造について、レーザ溶接をされた箇所に剪断方向の荷重が作用するように、試験体と他部材とを互いに反対の方向に引っ張る、引張試験を行った。また、レーザ溶接をされた界面(接合面1e)を電子顕微鏡で観察した。
【0063】
表1に、Al層1aの厚みt2に対する実施例1~5、比較例1および比較例2の接合構造の測定値(接合強度、溶融幅x1、溶け込み深さx2および突出部1dの突出高さ)を示す。また、表2に、比較例1(Al層の厚みが0μm)の接合構造の測定値に対する、実施例1~5および比較例2の接合構造の測定値の比率(以下、「対比値」という。)を示す。さらに、図10に、表1に記載の数値を用いて、Al層1aの厚みt2を横軸にプロットし、それぞれの接合構造のレーザ溶接部の接合強度、溶融幅x1、溶け込み深さx2および突出高さx3を縦軸にプロットしたグラフを示す。なお、図10中に示す点線は、Al層1aの厚みt2と、それぞれの測定値との多項式近似(3次)曲線である。
【0064】
[表1]
【0065】
[表2]
【0066】
比較例1のSUS430単板(Al層の厚みが0μm)を用いた接合構造では、表1に示すように、接合強度が1999N、溶融幅x1が54μm、溶け込み深さx2が123μm、および突出部1dの突出高さx3が30μmとなった。
【0067】
比較例2のAl層1aの厚みt2が10μmのレーザ溶接用クラッド材1を用いた溶接構造では、表1に示すように、接合強度が1859N、溶融幅x1が54μm、溶け込み深さx2が133μm、および突出部1dの突出高さx3が30μmとなった。また、表2に示すように、比較例1との対比値は、接合強度が0.93、溶融幅x1が1.00、溶け込み深さx2が1.08、および突出部1dの突出高さx3が1.00となった。
【0068】
実施例1のAl層1aの厚みt2が20μmのレーザ溶接用クラッド材1を用いた溶接構造では、表1に示すように、接合強度が2066N、溶融幅x1が54μm、溶け込み深さx2が123μm、および突出部1dの突出高さx3が20μmとなった。また、表2に示すように、比較例1との対比値は、接合強度が1.03、溶融幅x1が1.00、溶け込み深さx2が1.00、および突出部1dの突出高さx3が0.67となった。
【0069】
実施例2のAl層1aの厚みt2が40μmのレーザ溶接用クラッド材1を用いた溶接構造では、表1に示すように、接合強度が1865N、溶融幅x1が49μm、溶け込み深さx2が99μm、および突出部1dの突出高さx3が15μmとなった。また、表2に示すように、比較例1との対比値は、接合強度が0.93、溶融幅x1が0.91、溶け込み深さx2が0.80、および突出部1dの突出高さx3が0.50となった。
【0070】
実施例3のAl層1aの厚みt2が60μmのレーザ溶接用クラッド材1を用いた溶接構造では、表1に示すように、接合強度が2054N、溶融幅x1が50μm、溶け込み深さx2が73μm、および突出部1dの突出高さx3が5μmとなった。また、表2に示すように、比較例1との対比値は、接合強度が1.03、溶融幅x1が0.93、溶け込み深さx2が0.59、および突出部1dの突出高さx3が0.17となった。
【0071】
実施例4のAl層1aの厚みt2が90μmのレーザ溶接用クラッド材1を用いた溶接構造では、表1に示すように、接合強度が1961N、溶融幅x1が55μm、溶け込み深さx2が61μm、および突出部1dの突出高さx3が10μmとなった。また、表2に示すように、比較例1との対比値は、接合強度が0.98、溶融幅x1が1.02、溶け込み深さx2が0.50、および突出部1dの突出高さx3が0.33となった。
【0072】
実施例5のAl層1aの厚みt2が140μmのレーザ溶接用クラッド材1を用いた溶接構造では、表1に示すように、接合強度が1921N、溶融幅x1が54μm、溶け込み深さx2が78μm、および突出部1dの突出高さx3が10μmとなった。また、表2に示すように、比較例1との対比値は、接合強度が0.96、溶融幅x1が1.00、溶け込み深さx2が0.63、および突出部1dの突出高さx3が0.33となった。
【0073】
接合構造のレーザ溶接部の接合強度は、上記のように、Al層を有さない比較例1と比べて、Al層1aの厚みt2が20μm(実施例1)および60μm(実施例3)ではやや大きくなり、10μm(比較例2)、40μm(実施例2)、90μm(実施例4)および140μm(実施例5)ではやや小さくなった。これより、接合構造のレーザ溶接部の接合強度は、Al層1aの厚みt2に関係なく、ばらつくことが分った。この接合強度がAl層1aの厚みt2に関係なくばらつく事象は、図10に示す接合強度のプロットおよびその近似曲線からも確認することができる。また、接合強度のばらつきの程度は、表2に示すAl層1aを有する場合の対比値が0.93(最小値)から1.03(最大値)であり、その振れ幅が0.10(-3%~+7%)であることから、10%程度と考えられる。以上のことから、Al層1aを有する接合構造のレーザ溶接部の接合強度は、10%程度のばらつきを生じる可能性はあるもののAl層を有さない接合構造のレーザ溶接部と略同等の十分に実用に足る水準であることが分かった。よって、Al層1aを有するレーザ溶接用クラッド材1は、それを用いた接合構造のレーザ溶接部の接合強度の観点で、鉄基合金からなる他部材とのレーザ溶接に適することが分った。
【0074】
また、上記のように、接合構造のレーザ溶接部の溶融幅x1は、Al層を有さない比較例1と比べて、Al層1aの厚みt2が10μm(比較例2)、20μm(実施例1)および140μm(実施例5)では同等になったが、90μm(実施例4)では僅かに大きくなり、40μm(実施例2)および60μm(実施例3)ではやや小さくなった。これより、接合構造のレーザ溶接部の溶融幅x1は、Al層1aの厚みt2に関係なく、ばらつくことが分った。この溶融幅x1がAl層1aの厚みt2に関係なくばらつく事象は、図10に示す溶融幅x1のプロットおよびその近似曲線からも確認することができる。また、溶融幅x1のばらつきの程度は、表2に示すAl層1aを有する場合の対比値が0.91(最小値)から1.02(最大値)であり、その振れ幅が0.11(-9%~+2%)であることから、10%程度と考えられる。以上のことから、Al層1aを有する接合構造のレーザ溶接部の溶融幅x1は、10%程度のばらつきを生じる可能性はあるが、Al層を有さない接合構造のレーザ溶接部と略同等の十分に実用に足る水準であることが分かった。よって、Al層1aを有するレーザ溶接用クラッド材1は、それを用いた接合構造のレーザ溶接部の溶融幅x1の観点で、鉄基合金からなる他部材とのレーザ溶接に適することが分った。
【0075】
また、上記のように、接合構造のレーザ溶接部の溶け込み深さx2は、Al層を有さない比較例1と比べて、Al層1aの厚みt2が20μm(実施例1)では同等になったが、10μm(比較例2)では大きくなり、40μm(実施例2)~140μm(実施例5)では小さくなった。また、表2に示す比較例1との対比値を見ると、Al層1aの厚みt2が10μmから90μmに大きくなるに従って溶け込み深さx2が小さくなる傾向を確認することができる。これより、接合構造のレーザ溶接部の溶け込み深さx2は、Al層1aの厚みt2の影響を受けることが分った。この溶け込み深さx2がAl層1aの厚みt2の影響を受ける事象は、図10に示す溶け込み深さx2のプロットおよびその近似曲線からも確認することができる。以上のことから、Al層1aを有する接合構造のレーザ溶接部の溶け込み深さx2は、Al層1aの厚みt2の影響を受けて、たとえば、Al層1aの厚みt2が20μm以上140μm以下の接合構造(実施例1~5)ではAl層を有さない接合構造(比較例1)と同等以下となり、Al層1aの厚みt2が40μm以上140μm以下の接合構造(実施例2~5)ではより小さくなることが分った。よって、Al層1aの厚みt2が20μm以上140μm以下(好ましくは、40μm以上140μm以下)であるレーザ溶接用クラッド材1は、それを用いた接合構造のレーザ溶接部の溶け込み深さx2の観点で、鉄基合金からなる他部材とのレーザ溶接に適することが分った。
【0076】
ここで、レーザ溶接部の溶け込み深さx2が大きい接合構造では、レーザ溶接用クラッド材1とレーザ溶接された他部材(正極端子)の溶接される側の面と反対側の面の近傍までレーザ溶接用クラッド材1の融液が到達して凝固することがある。その場合、これに起因して機械的強度が低下した他部材が割れやすくなるなどの問題点が生じるため、他部材の厚みを余分に大きくする必要がある。しかしながら、Al層1aの厚みt2が20μm以上140μm以下の接合構造(実施例1~5)では、溶け込み深さx2がAl層を有さない接合構造(比較例1)と同等以下であるため、レーザ溶接される他部材の厚みを余分に大きくする必要がなくなる。特に、Al層1aの厚みt2が40μm以上140μm以下の接合構造(実施例2~5)では、溶け込み深さx2がAl層を有さない接合構造(比較例1)よりも十分に小さいため、レーザ溶接される他部材の厚みをより薄肉化することができる。なお、図10に示す溶け込み深さx2の近似曲線を見ると、Al層1aの厚みt2が90μmから140μmに向かって大きくなると溶け込み深さx2が増加する傾向があるため、Al層1aの厚みt2が140μmを超えて大きくなるのは好ましくないと考えられる。この観点で、Al層1aの厚みt2が140μm以下であるレーザ溶接用クラッド材1は、厚さが過度に大きくなく、配置するスペースを小さくすることができるため、これを用いた接合構造のダウンサイジングを行うことができる。
【0077】
また、上記のように、接合構造の突出部1dの突出高さx3は、Al層を有さない比較例1と比べて、Al層1aの厚みt2が10μm(比較例2)では同等の30μmとなったが、20μm(実施例1)~140μm(実施例5)では小さく20μm以下となった。また、表2に示す比較例1との対比値を見ると、Al層1aの厚みt2が10μmから140μmに大きくなるに従って突出高さx3が小さくなる傾向を確認することができる。これより、接合構造の突出部1dの突出高さx3は、Al層1aの厚みt2の影響を受けることが分った。この突出高さx3がAl層1aの厚みt2の影響を受ける事象は、図10に示す突出高さx3のプロットおよびその近似曲線からも確認することができる。以上のことから、Al層1aを有する接合構造の突出部1dの突出高さx3は、Al層1aの厚みt2の影響を受けて、たとえば、Al層1aの厚みt2が20μm以上140μm以下の接合構造(実施例1~5)ではAl層を有さない接合構造(比較例1)よりも小さく20μm以下にすることができるし、Al層1aの厚みt2が40μm以上140μm以下の接合構造(実施例2~5)ではより小さく15μm以下にすることができることが分った。よって、Al層1aの厚みt2が20μm以上140μm以下(好ましくは、40μm以上140μm以下)であるレーザ溶接用クラッド材1は、それを用いた接合構造のレーザ溶接部の突出部1dの突出高さx3の観点で、鉄基合金からなる他部材とのレーザ溶接に適することが分った。
【0078】
ここで、レーザ溶接用クラッド材1を用いた接合構造の突出部1dの突出高さx3が小さいと、厚さが過度に大きくないため、配置するスペースを小さくすることが可能であるとともに、突出部1dがレーザ溶接用クラッド材以外の部材などに接触して破損しにくくなるため、突出部1dの破損に起因して接合構造および組電池の動作が不安定になるリスクを抑制することができる。この観点で、接合構造の突出部1dの突出高さx3が20μm以下となるAl層1aの厚みt2が20μm以上140μm以下、好ましくは、突出部1dの突出高さx3が15μm以下となるAl層1aの厚みt2が40μm以上140μm以下であるレーザ溶接用クラッド材1は、鉄基合金からなる他部材とのレーザ溶接に適し、これを用いた接合構造のダウンサイジングにも有利である。
【0079】
以上より、レーザ溶接用クラッド材1と他部材とをレーザ溶接により接合した接合構造のレーザ溶接部の接合強度、溶融幅x1、溶け込み深さx2および突出部1dの突出高さx3の評価結果に基づいて、Al層1aの厚みt2が20μm以上140μm以下であるレーザ溶接用クラッド材1は、配置するスペースを小さくすることが可能であり、鉄基合金からなる他部材との異種金属同士の接合を伴うレーザ溶接に適し、それを用いた接合構造のダウンサイジングを行うことが可能であることを本願発明者は知得した。
【0080】
[変形例]
今回開示されている実施形態および実施例は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態および実施例の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0081】
たとえば、本実施形態では、レーザ溶接用クラッド材1を組電池100に用いる構成例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、たとえば、レーザ溶接用クラッド材1は、組電池100以外に用いてもよく、たとえば、車載用などの電気・電子の回路基板などに用いてもよい。
【0082】
また、本実施形態では、レーザ溶接用クラッド材1は、バスバー20とワイヤボンディングにより接合する構成例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、レーザ溶接用クラッド材1は、たとえば、バスバー20とレーザ溶接などにより接合する構成に用いてもよい。
【0083】
また、本実施形態では、レーザ溶接用クラッド材1は、図2に示すAl層1aの厚みt2がFe層1bの厚みt3よりも小さい構成例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、レーザ溶接用クラッド材1は、たとえば、Al層1aの厚みt2がFe層1bの厚みt3と同じでもよく、大きくてもよい。
【0084】
また、本実施形態では、レーザ溶接用クラッド材1を、図6に示す円筒型のリチウムイオン二次電池10に用いる構成例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、レーザ溶接用クラッド材1を、図11に示すような角型のリチウムイオン二次電池10に用いる構成であってもよい。
【0085】
また、本実施形態では、レーザ溶接用クラッド材1のFe層1bが、正極端子である鉄基合金からなる蓋材12(電池用端子部材)にレーザ溶接される構成例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、レーザ溶接用クラッド材1のFe層1bは、たとえば、負極端子を兼ねている筐体にレーザ溶接される構成であってもよい。
【0086】
また、本実施形態では、レーザ溶接用クラッド材1のFe層1bが、蓋材12(電池用端子部材)に直接レーザ溶接される構成例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、レーザ溶接用クラッド材1のFe層1bと、蓋材12との間に他の部品を設けてもよい。この場合、レーザ溶接用クラッド材1のFe層1bと蓋材12との間に設けられた他の部品が電池用端子部材となる。
【符号の説明】
【0087】
1 レーザ溶接用クラッド材
1a Al層
1b Fe層
1c 露出面
1d 突出部
1e 接合面
12 蓋材(他部材、電池用端子部材)
20 バスバー
50a :Al板材
50b :Fe板材
100 組電池(電池)
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