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特開2024-168926端子付き電線、ワイヤハーネス、端子、端子付き電線の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168926
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】端子付き電線、ワイヤハーネス、端子、端子付き電線の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01R 4/18 20060101AFI20241128BHJP
   H01R 43/16 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
H01R4/18 A
H01R43/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023085988
(22)【出願日】2023-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】高橋 宏和
(72)【発明者】
【氏名】水戸瀬 賢悟
(72)【発明者】
【氏名】外池 翔
【テーマコード(参考)】
5E063
5E085
【Fターム(参考)】
5E063GA05
5E063XA01
5E085BB03
5E085BB12
5E085BB14
5E085CC03
5E085DD13
5E085EE11
5E085EE23
5E085EE24
5E085FF01
5E085HH06
5E085HH11
5E085HH34
5E085JJ36
(57)【要約】
【課題】 信頼性の高い端子付き電線等を提供する。
【解決手段】 端子付き電線10は、端子1と被覆導線11とが電気的に接続されて構成される。端子1の圧着部5は、被覆導線11と圧着される部位であり、被覆導線11の被覆部15の先端側から露出する導線13を圧着する導線圧着部7と、被覆導線11の被覆部15を圧着する被覆圧着部9とを有する。導線圧着部7は、板状部材であるバレル片が丸められて略筒状に形成される。この際、導線13が圧着された導線圧着部7は、対向するバレル片の端部同士の突き合わせ部23が、導線13の軸方向に対して一直線状ではなく、周方向に対して互いに対応する凹凸形状を有する。すなわち、一方のバレル片の先端が他方のバレル片側に突出するように凸形状である部位は、他方のバレル片はこの凸形状に対応する凹形状となる
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
端子に被覆導線が圧着された端子付き電線であって、
前記端子は、前記被覆導線の先端の被覆部から露出する導線が圧着される導線圧着部と、前記被覆導線の前記被覆部が圧着される被覆圧着部と、を具備し、
前記導線が圧着された前記導線圧着部は、対向するバレル片の端部同士の突き合わせ部が、前記導線の軸方向に対して一直線状ではなく、周方向に対して互いに対応する凹凸形状を有することを特徴とする端子付き電線。
【請求項2】
前記被覆導線は、複数の前記導線と、少なくとも1本の抗張力体を含んで構成されることを特徴とする請求項1記載の端子付き電線。
【請求項3】
前記バレル片の端部同士が接合されていないことを特徴とする請求項1記載の端子付き電線。
【請求項4】
前記バレル片の端部同士が接合されており、前記バレル片の端部同士の接合部が、前記導線圧着部の周方向に対して凹凸形状を有することを特徴とする請求項1記載の端子付き電線。
【請求項5】
略管状の前記導線圧着部は、圧縮されて変形して、前記導線と圧着されており、
前記導線圧着部の先端部と後端部とは、略同一の高さに圧縮されており、前記導線圧着部の後端部の変形量が、前記導線圧着部の先端部の変形量よりも大きいことを特徴とする請求項1記載の端子付き電線。
【請求項6】
請求項1に記載の端子付き電線を含む複数の端子付き電線が束ねられていることを特徴とするワイヤハーネス。
【請求項7】
導線圧着部と被覆圧着部とを有する端子であって、
前記導線圧着部のバレル片のそれぞれの端部には、互いに対応する位置に凹凸形状が形成されており、前記バレル片を丸める際に、前記バレル片の両端部の凹凸形状が噛みあうように丸めることが可能であることを特徴とする端子。
【請求項8】
導線圧着部と被覆圧着部とを有する端子であって、
前記導線圧着部は、バレル片が丸められて略筒状であり、前記バレル片のそれぞれの端部には、互いに対応する位置に凹凸形状が形成されており、前記バレル片の両端部の凹凸形状が噛みあうことを特徴とする端子。
【請求項9】
請求項7記載の端子を用いた端子付き電線の製造方法であって、
前記バレル片の凹凸形状が噛みあうように丸めて、
略筒状の前記導線圧着部に、被覆導線の被覆部の先端から露出する導線を挿入して、前記導線圧着部で前記導線を圧着するとともに、前記被覆圧着部で前記被覆部を圧着することを特徴とする端子付き電線の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車等に用いられる端子付き電線等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
通常、自動車用ワイヤハーネスは、被覆導線の導体に圧着端子が接続された後に束ねられて、自動車等の信号線などとして配索される。一般的な被覆導線と圧着端子は、被覆導線の先端部の被覆が除去され、露出させた導体と導線圧着部とが圧着され、被覆部が被覆圧着部で圧着されて接続される。
【0003】
このような端子としては、例えば、導線圧着部がバレル片を有し、導線に対してバレル片を丸めるようにして圧着を行うオープンバレル型の端子が提案されている(例えば特許文献1)。
【0004】
また、予め導線圧着部を筒状に丸めておいて、筒状の導線圧着部に導線を挿通した状態で圧着を行う端子が提案されている(例えば特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-89834号公報
【特許文献2】特開2016-46171号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような端子を用いた端子付き電線において、端子への衝撃力や、被覆導線に強い曲げ力等が付与されると、その力の方向によっては、導線圧着部のバレル片等の先端の突き合せ部において、突き合せ部に平行な方向の力が付与される場合がある。すなわち、発明者は、導線圧着部の上部において、互いに対向するバレル片同士の突き合わせ部に、せん断方向の力がかかる場合があることを知見した。
【0007】
このような力が付与されると、バレル片の先端同士が、導線の軸方向に対してずれて端子が変形する恐れがある。この場合、導線を外周から均等に圧着している導線圧着部の圧着力が部位によって不均一になり、接続強度が低下する結果、導線の抜けや接続不良等の要因となる。
【0008】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、信頼性の高い端子付き電線等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した目的を達するために第1の発明は、端子に被覆導線が圧着された端子付き電線であって、前記端子は、前記被覆導線の先端の被覆部から露出する導線が圧着される導線圧着部と、前記被覆導線の前記被覆部が圧着される被覆圧着部と、を具備し、前記導線が圧着された前記導線圧着部は、対向するバレル片の端部同士の突き合わせ部が、前記導線の軸方向に対して一直線状ではなく、周方向に対して互いに対応する凹凸形状を有することを特徴とする端子付き電線である。
【0010】
前記被覆導線は、複数の前記導線と、少なくとも1本の抗張力体を含んでいてもよい。
【0011】
前記バレル片の端部同士が接合されていなくてもよい。
【0012】
前記バレル片の端部同士が接合されており、前記バレル片の端部同士の接合部が、前記導線圧着部の周方向に対して凹凸形状を有してもよい。
【0013】
略管状の前記導線圧着部は、圧縮されて変形して、前記導線と圧着されており、前記導線圧着部の先端部と後端部とは、略同一の高さに圧縮されており、前記導線圧着部の後端部の変形量が、前記導線圧着部の先端部の変形量よりも大きくてもよい。
【0014】
第1の発明によれば、導線圧着部を構成する一対の対向するバレル片の端部が導線圧着部の軸方向に直線状ではなく、突き合わせ部において互いに噛み合うような対応する凹凸形状を有する。このため、突き合わせ部にせん断力が付与された場合でも、端部同士が軸方向にずれて変形することを抑制することができる。
【0015】
また、被覆導線が複数の導線と抗張力体とを含んで構成されれば、抗張力体によって導線の引張強度を確保することができる。
【0016】
また、バレル片の突き合わせ部が溶接等によって接合されていなければ、溶接部と非溶接部との強度差が生じることがなく、全周にわたって均一に圧着することができるため、接合強度を高めることができる。また、溶接が不要であるため、端子の製造も容易である。
【0017】
また、バレル片の突き合わせ部を溶接等によって接合した場合でも、溶接部が凹凸形状に形成されるため、溶接長を長くすることができるとともに、せん断力に対しても、溶接部が破断することを抑制することができる。
【0018】
また、導線圧着部の先端側においては、相対的に導線圧着部の変形量を少なくすることで、過剰な変形(座屈)などが生じにくく、内面に凹凸が形成されずに、導線圧着部を略均等に周囲から圧着することができる。このため、導線を確実に圧着して高い引張強度を得ることができる。例えば、導線圧着部に座屈などが生じると、周囲から均一に導線に荷重がかからずに、荷重の弱い部分で導線の滑り等が生じ、接続部の引張強度の低下のおそれがある。これに対し、導線圧着部を適切に変形させて周囲から略均一な荷重で圧着することで、このような滑りを抑制し、接続部の引張強度を高めることができる。
【0019】
一方、導線圧着部の後端側の変形量をあえて大きくすることで、導線圧着部に座屈等を生じさせることができる。このような座屈が生じると、導線圧着部の内部空間が略均等な円形にならずに、例えば、内部空間の側方の一部が部分的に外方へ突出するような隙間が形成され、内周長が長くなる。このように、内周長が長くなり、隙間が形成されると、導線の一部が隙間に入り込むため、導線と導線圧着部との接触面積を増大させ、接続抵抗を低減することができる。また、導線を圧縮する際に、導線の一部がこの隙間に逃げるため、導線への荷重が十分にかからずに導線の滑りが生じやすくなるが、導線の過剰な潰れが抑制され、導線の破断を抑制することができる。
【0020】
このように、導線圧着部の先端側を、相対的に接続強度が高い、導線を保持するための電線保持部として機能させ、導線圧着部の後端側を、相対的に接続抵抗が低い、導線との導通を確保する導通部と機能させることで、接続強度と接続抵抗の両者を満足することができる。この際、導線圧着部の先端側と後端側は略同じ高さに圧縮されるため、通常の金型を使用することができる。このため、圧着作業が容易である。
【0021】
第2の発明は、第1の発明にかかる端子付き電線を含む、複数の端子付き電線が一体化されたことを特徴とするワイヤハーネスである。
【0022】
第2の発明によれば、電線が複数束ねられたワイヤハーネスを得ることができる。
【0023】
第3の発明は、導線圧着部と被覆圧着部とを有する端子であって、前記導線圧着部のバレル片のそれぞれの端部には、互いに対応する位置に凹凸形状が形成されており、前記バレル片を丸める際に、前記バレル片の両端部の凹凸形状が噛みあうように丸めることが可能であることを特徴とする端子である。
【0024】
また、導線圧着部と被覆圧着部とを有する端子であって、前記導線圧着部は、バレル片が丸められて略筒状であり、前記バレル片のそれぞれの端部には、互いに対応する位置に凹凸形状が形成されており、前記バレル片の両端部の凹凸形状が噛みあうことを特徴とする端子であってもよい。
【0025】
第3の発明によれば、バレル片の端部の突き合わせ部にせん断力が付与された際にも、バレル片同士が軸方向にずれて変形することを抑制することが可能な端子を提供することができる。
【0026】
第4の発明は、第3の発明にかかる端子を用いた端子付き電線の製造方法であって、前記バレル片の凹凸形状が噛みあうように丸めて、略筒状の前記導線圧着部に、被覆導線の被覆部の先端から露出する導線を挿入して、前記導線圧着部で前記導線を圧着するとともに、前記被覆圧着部で前記被覆部を圧着することを特徴とする端子付き電線の製造方法である。
【0027】
第4の発明によれば、特殊な工程を経ることなく、第1の発明にかかる端子付き電線を容易に得ることができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、信頼性の高い端子付き電線等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】端子付き電線10を示す斜視図。
図2】(a)は、端子付き電線10を示す平面図、(b)~(d)は、突き合わせ部23の他の形態を示す図。
図3】加工前の端子1を示す図。
図4】圧着前の端子1と被覆導線11を示す図、(b)は導線圧着部7の断面図。
図5】端子付き電線10aを示す斜視図。
図6】端子付き電線10aを示す断面図。
図7】(a)~(d)は、導線圧着部7における断面図。
図8】圧着前の端子1aと被覆導線11を示す図。
図9】被覆導線11を圧着部5に挿入した状態を示す斜視図。
図10】(a)、(b)は、圧着前の導線圧着部7における断面図。
図11】(a)、(b)は、圧着部5の圧着工程を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
(第1の実施形態)
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。図1は、端子付き電線10を示す斜視図であり、図2(a)は、端子付き電線10の平面図である。端子付き電線10は、端子1と被覆導線11とが電気的に接続されて構成される。
【0031】
被覆導線11は、例えば、銅、銅合金、アルミニウムまたはアルミニウム合金製である導線13と、導線13を被覆する被覆部15からなる。すなわち、被覆導線11は、被覆部15と、その先端から露出する導線13とを具備する。
【0032】
なお、導線13は、例えば複数の導体素線が撚り合わせられて形成される。この際、導体素線の配置や本数は特に限定されない。また、被覆導線11は、例えば、複数の導線(素線)と、少なくとも1本の抗張力体からなる複合導体であってもよい。例えば、抗張力体の外周に、複数の素線がより合わせられて構成される。
【0033】
ここで、導線13の断面積(素線の断面積の総計)又は抗張力体が用いられる場合には、複合導体の断面積(導線13と抗張力体の断面積の総計)は、0.35sq以下であることが望ましい。さらには、導線13又は複合導体の断面積(素線の断面積の総計又は導線13と抗張力体の断面積の総計)は、0.3sq以下であることが望ましい。また、例えば複合導体が用いられる場合には、導線13と抗張力体の断面積の総計は0.13sq以下であってもよく、さらに0.05sq以下であってもよい。
【0034】
端子1は、例えば銅、銅合金、アルミニウムまたはアルミニウム合金製である。端子1には被覆導線11が接続される。端子1は、端子本体3と圧着部5とがトランジション部4を介して連結されて構成される。
【0035】
端子本体3は、所定の形状の板状素材を、断面が矩形の筒体に形成したものである。端子本体3は、内部に、板状素材を矩形の筒体内に折り込んで形成される弾性接触片を有する。端子本体3は、前端部から雄型端子などが挿入されて接続される。なお、以下の説明では、端子本体3が、雄型端子等の挿入タブ(図示省略)の挿入を許容する雌型端子である例を示すが、本発明において、この端子本体3の細部の形状は特に限定されない。例えば、雌型の端子本体3に代えて雄型端子の挿入タブを設けてもよいし、丸型端子のようなボルト締結部を設けても良い。
【0036】
端子1の圧着部5は、被覆導線11と圧着される部位であり、被覆導線11の被覆部15の先端側から露出する導線13を圧着する導線圧着部7と、被覆導線11の被覆部15を圧着する被覆圧着部9とを有する。すなわち、被覆部15が剥離されて露出する導線13が、導線圧着部7により圧着され、導線13と端子1とが電気的に接続される。また、被覆導線11の被覆部15は、端子1の被覆圧着部9によって圧着される。なお、本実施形態では、導線圧着部7は略筒状であり、被覆圧着部9はオープンバレル型であって、被覆圧着部9と導線圧着部7との間に隙間がある例を示すが、圧着部5の形態は特に限定されない。
【0037】
なお、導線圧着部7の内面の一部には、幅方向(長手方向に垂直な方向)に、図示を省略したセレーションが設けられてもよい。このようにセレーションを形成することで、導線13を圧着した際に、導線13の表面の酸化膜を破壊しやすく、また、導線13との接触面積を増加させることができる。
【0038】
導線圧着部7は、板状部材であるバレル片が丸められて略筒状に形成される。この際、導線13が圧着された導線圧着部7は、対向するバレル片の端部同士の突き合わせ部23が、導線13の軸方向に対して一直線状ではなく、周方向に対して互いに対応する凹凸形状を有する。すなわち、一方のバレル片の先端が他方のバレル片側に突出するように凸形状である部位は、他方のバレル片はこの凸形状に対応する凹形状となる。図示した例では、略三角形状の凹凸が繰り返して形成されるため、突き合わせ部23は、導線圧着部7(導線13)の軸方向に対して三角波状にジグザグに形成される。
【0039】
なお、突き合わせ部23の凹凸形態は、図2(a)に示す例には限られず、例えば、図2(b)に示すように、矩形波状に形成されてもよく、図2(c)に示すように、鋸刃状に形成されてもよい。また、図2(d)に示すように、凹凸形状は、突き合わせ部23の軸方向に対して、少なくとも1か所形成されればよい。
【0040】
なお、バレル片同士の端部同士の突き合わせ部23は、溶接などによって接合されていなくてもよく、または、バレル片の端部同士が溶接等によって接合されていてもよい。溶接等によって接合される場合には、バレル片の端部同士の接合部が、導線圧着部7の周方向に対して凹凸形状を有するように形成される。
【0041】
次に、端子付き電線10の製造方法について説明する。図3は、加工前の端子1を示す図である。前述したように、端子1は、導線圧着部7と被覆圧着部9を有する。端子1は、導線圧着部7、被覆圧着部9ともに、一対のバレル片を有する。また、導線圧着部7のバレル片のそれぞれの端部は、互いに対応する位置に凹凸形状を有する。この状態で、導線圧着部7のバレル片を丸めて略筒状とすると、対向するバレル片の両端部の凹凸形状が噛みあうように丸めることができる。
【0042】
図4(a)は、圧着前の端子1と被覆導線11を示す斜視図である。前述したように、導線圧着部7は、あらかじめ丸められて略筒状となる。まず、前述したように、被覆導線11の先端部の被覆部15を剥離して、先端部の導線13を露出する。なお、端子1の圧着部5へ挿入する前に、導線13の先端部に金属めっき等の端末処理部を行ってもよい。端末処理部を行うことで、素線がばらけることが抑制され、管状の導線圧着部7への挿入が容易である。
【0043】
次に、略筒状の導線圧着部7の後端側から、被覆導線11の被覆部15の先端側に露出する導線13を挿入する。被覆導線11の先端部を導線圧着部7へ挿入すると、導線圧着部7の内部には導線13の露出部が位置し、被覆圧着部9の内部には被覆部15が位置する。この際、導線13の先端が導線圧着部7の先端からはみ出してもよい。
【0044】
ここで、突き合わせ部23を溶接等によって接合しない場合において、端部同士が接触して隙間が0であってもよいが、加工時のスプリングバック等により、わずかに隙間が形成されてもよい。例えば、図4(b)に示すように、突き合わせ部23は、互いに接触せずに隙間(図中X)が空いていてもよい。この場合、対向するバレル片の端部同士の隙間Xは、被覆導線11の導線13を構成する導体素線径よりも小さいことが望ましく、例えば、0.01mm以下であることが望ましい。
【0045】
このように、あえて突き合わせ部23に隙間が形成されることで、導線13の挿入時に、導線圧着部7の内部の導線13の位置を把握することができる。また、バレル片の厚みは、被覆導線11の導線13を構成する導体素線径よりも厚いことが望ましい。すなわち、バレル片の厚みよりもバレル片の端部同士の隙間の方が狭いことが望ましい。
【0046】
この状態で、圧着部5を圧縮することで、導線圧着部7によって導線13が圧着され、被覆圧着部9によって被覆部15を圧着することができる。なお、本実施形態では、導線圧着部7をあらかじめ筒状に形成した後に、導線13を挿入して圧着を行った。このようにすることで、導線圧着部7への導線13の挿入作業や位置決め作業が容易となる。なお、一般的なオープンバレル型の端子と同様に、図3に示す状態で圧着部5に被覆導線11を配置して、導線13を丸める加工と圧着を同時に行ってもよい。この場合、導線圧着部7の突き合わせ部23において、バレル片の先端が多少、導線13に食い込むように変形してもよい。以上のように、端子は、図3の状態で圧着を行うことも可能であるし、図4(a)の状態で圧着を行うことも可能である。
【0047】
以上により、突き合わせ部23のずれによる変形を抑制することが可能な端子付き電線10を得ることができる。さらに、得られた端子付き電線10を含む、複数の端子付き電線が一体化されたワイヤハーネスを得ることができる。
【0048】
以上説明したように、本実施形態によれば、導線圧着部7の突き合わせ部23に凹凸形状が形成されて、互いに噛み合った状態で圧着されるため、外力によって突き合わせ部23に対してせん断力が付与された場合においても、突き合わせ部23が軸方向にずれて導線圧着部7が変形することを抑制することができる。
【0049】
また、ずれが抑制されるため、突き合わせ部23が接合されていなくてもよく、端子1の製造が容易である。また、突き合わせ部23に隙間が形成されていれば、導線13の挿入位置を容易に把握することができる。
【0050】
また、突き合わせ部23を溶接等によって接合してもよく、この場合には、突き合わせ部23が直線状ではないため、接合長を長くすることができる。
【0051】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。図5は、第2の実施形態にかかる端子付き電線10aを示す斜視図であり、図6は端子付き電線10aの軸方向断面図である。なお、以下の説明において、第1の実施形態と同様の機能を発揮する構成については、図1図4と同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0052】
端子付き電線10aは、端子付き電線10と略同様の構成であるが、端子1aが用いられる点で異なる。本実施形態の端子1aは、導線圧着部7と被覆圧着部9は、一体で周方向に閉じた管状(略円筒状)に構成される。
【0053】
導線圧着部7の先端側(導線圧着部7の端子本体3側)には、導線13を保持する電線保持部7aが設けられ、導線圧着部7の後端側(被覆圧着部9側)には、導線13との導通を得るための導通部7bが設けられる。導線圧着部7の先端側(端子本体3側)に設けられる電線保持部7aは、導通部7bと比較して導線13の保持力が相対的に強く、導線圧着部7の後端側(被覆圧着部9側)に設けられる導通部7bは、導線13との導通を得るために形成される。
【0054】
図7(a)、図7(b)は、導線圧着部7の軸方向に垂直な断面図であり、図7(a)は電線保持部7aの断面図、図7(b)は導通部7bの断面図である。前述したように、略管状の導線圧着部7は、圧縮されて変形して、導線13と圧着される。また、導線圧着部7の先端部(電線保持部7a)と後端部(導通部7b)は、略同一の高さに圧縮されている。すなわち、電線保持部7aと導通部7bは、略同一の外径であり、電線保持部7aの圧縮高さAと導通部7bの圧縮高さBは、略同一である。
【0055】
ここで、電線保持部7aにおける圧縮率(圧縮後の導線13の断面積/圧縮前の導線13の断面積)と、導通部7bにおける圧縮率は略同一であるが、導線圧着部7の変形量が異なる。すなわち、導線圧着部7の後端部(導通部7b)の変形量が、導線圧着部7の先端部(電線保持部7a)の変形量よりも大きい。
【0056】
より詳細には、電線保持部7aは、導線13が略円形に周方向に略均一に圧縮されて圧着され、内面側には周方向に大きな凹凸が形成されない。このため、導線13は、全周から略均一に圧縮される。このため、圧縮の弱い部分が存在せず、確実に導線13が全周から圧着されて強い引張強度を得ることができる。なお、略円形とは、圧縮方向に垂直な方向(図中左右方向)が広がるように多少偏平していてもよい。また、内面及び外面の周方向に多少の凹凸(後述する導通部7bにおける凹凸と比較して小さな凹凸)があってもよい。
【0057】
また、導通部7bは、導線圧着部7の周方向の一部に折れ曲がり(座屈)が生じ、内面の周方向には大きな凹凸が形成される。すなわち、軸方向に垂直な断面において、導通部7b(導線圧着部7の後端部)の内周長が、電線保持部7a(導線圧着部7の先端部)の内周長よりも長い。例えば、導線圧着部7の内部空間が略均等な円形にならずに、内部空間の側部の一部が部分的に外方へ突出するような隙間が形成される。このように、導通部7bは、電線保持部7aと比較して、内面に大きな凹凸が形成されるため、この凹部近傍では、他の部位と比較して圧縮荷重が低くなる。このため、導線13と導線圧着部7との間で滑りが生じるおそれがあるが、電線保持部7aにおいて引張強度を確保することができるため問題ない。
【0058】
一方、この凹部(隙間)には、導線13の一部が入り込むため、導通部7bの方が、導線13と導線圧着部7との接触面積が大きくなる。このように、導線13と導線圧着部7との接触面積が増加するため、接続抵抗を低減することができる。また、圧縮時に導線の一部が凹部(隙間)に逃げることができるため、過剰に導線13が潰れることを抑制することができる。このため、導線13の断線等を抑制し、導通を確実に確保することができる。
【0059】
なお、図7(a)、図7(b)に示す例では、導線13が16本の素線からなるが、導線13の素線数は特に限定されない。例えば、素線は7本であってもよく、その他であってもよい。なお、素線同士は互いに撚り合わせられていることが望ましい。
【0060】
また、前述したように、被覆導線11は、複数の導線13(複数の導体素線)と、抗張力体17とが被覆部15で被覆されていてもよい。抗張力体は、引張荷重に対して張力を受ける部材である。例えば、図7(c)、図7(d)に示すように、被覆導線11の長手方向に垂直な断面において、少なくとも1本の抗張力体17が被覆導線11の略中心に位置し、複数の導線13が抗張力体17の外周部に配置されていてもよい。この場合には、電線保持部7a及び導通部7bでは、導線13と抗張力体17の両方が圧着されて保持される。なお、抗張力体17と導線13とから構成される導線を、複合導体12とする。
【0061】
この際、抗張力体17の外周に配置されるそれぞれの導線13(素線)が、同一断面積の同一形状の導線13(素線)であってもよい。さらに、抗張力体17の外周部に、導線13が、被覆導線11の長手方向に螺旋状に撚られていてもよい。なお、抗張力体17は、鋼線などの金属線であってもよく、樹脂や繊維強化樹脂であってもよい。また、抗張力体17としては、単線であってもよく、アラミド繊維などの複数の繊維を束ねたものであってもよい。
【0062】
次に、端子付き電線10aの製造方法について説明する。図8は、圧着前の端子1aと被覆導線11を示す斜視図である。端子1aは、端子1と同様に、端子本体3と圧着部5とを有する。圧着部5は、導線圧着部7と被覆圧着部9とが一体で、両端が開口する略円筒状に構成される。圧着部5は、例えば、板状部材(バレル片)を丸めて端部同士を突き合わせて、長手方向に溶接やロウ付けによって接合される。すなわち、電線保持部7a、導通部7b、被覆圧着部9の板厚は略同一である。また、突き合わせ部23は、導線圧着部7と被覆圧着部9の全長にわたって凹凸形状で形成される。
【0063】
周方向に閉じた略管状の導線圧着部7は、導線圧着部7の先端側に形成され、内径及び外径が相対的に小さい小径部(電線保持部7aに対応する)と、導線圧着部7の後端側に形成され、内径及び外径が相対的に大きい大径部(導通部7bに対応する)とを有する。すなわち、電線保持部7aの外径及び内径は、導通部7bの外径及び内径よりも小さい。図示したように、圧着部5は、後方から順に、被覆圧着部9、導通部7b、電線保持部7aが形成され、それぞれの部位において、略同一径で軸方向に所定長さ形成される。一方、被覆圧着部9と導線圧着部7(導通部7b)との間、及び導通部7bと電線保持部7aとの間には、先端側に向けて徐々に縮径されるテーパ部が形成される。
【0064】
なお、導通部7bと電線保持部7aとの間の段差は、全周に形成されてもよいが(すなわち、軸方向からみで、導通部7bと電線保持部7aを同心円としてもよいが)、例えば導線圧着部7の下面側は軸方向にストレート形状であり、上面側で径変化に伴う段差を形成してもよい。
【0065】
まず、前述したように、被覆導線11の先端部の被覆部15を剥離して、先端部の導線13を露出する。次に、図9に示すように、導線13を、端子1aの管状の圧着部5の後端部側から挿入する。被覆導線11の先端部を圧着部5へ挿入すると、導線圧着部7の内部には導線13の露出部が位置し、被覆圧着部9の内部には被覆部15が位置する。
【0066】
図10(a)は、電線保持部7aにおける軸方向に垂直な断面図であり、図10(b)は、導通部7bにおける軸方向に垂直な断面図である。前述したように、電線保持部7aの外径Cよりも、導通部7bの外径Dは大きい。一方、導線13の外径Eは、略同一であるため、導線13の外面と電線保持部7aの内面との隙間が相対的に小さく、導線13の外面と導通部7bの内面との隙間が相対的に大きい。
【0067】
図11(a)は、端子付き電線10aを製造するための端子圧着刃型の圧着前における上刃型31a、下刃型31b等を示す断面図、図10(b)は、圧着中の圧着部5を示す断面図である。上刃型31a、下刃型31bは、長手方向に延びる略半円柱状の空洞を有する。また、上刃型31aは、被覆圧着部9に対応するとともに被覆圧着部9の半径よりも僅かに小さい径の被覆圧着刃型34と、導線圧着部7に対応するとともに被覆圧着刃型34よりも径の小さい導線圧着刃型32とを備える。すなわち、上刃型31a、下刃型31bは、導線圧着部7と被覆圧着部9に対応するいずれの部位も、端子1を圧着した際に、略円形断面となるように形成される。
【0068】
なお、導通部7bは、被覆導線11と端子1aとの導通性を確保するため、電線保持部7aと比較して相対的に長さが長くてもよい。一方、電線保持部7aは、長さが短くても、確実に導線13もしくは抗張力体17と端子1aとが適切な圧力で密着していれば、両者の強度は十分高くなるため、電線保持部7aは、導通部7bと比較して相対的に長さが短くてもよい。
【0069】
図11(b)に示すように、上刃型31aと下刃型31bを噛み合わせて、圧着部5を圧縮すると、導線圧着部7が導線13に圧着され、被覆圧着部9は、被覆部15に圧着される。この際、電線保持部7aと導通部7bの外面の形状は、略同一となるように圧着される。ここで、金型で圧着部5を圧縮して圧着する際に、大径部の変形量は、小径部の変形量よりも大きくなる。すなわち、圧着前の端子1は、電線保持部7aよりも導通部7bの方が大きいため、導通部7bは、電線保持部7aよりも大きく変形し、部分的な座屈が生じやすくなる。すなわち、導通部7bの内面形状が電線保持部7aの内面と比較して凹凸が生じやすくなる。
【0070】
このようにすることで、導通部7bの変形量が電線保持部7aの変形量よりも大きく、導通部7bの内周長が電線保持部7aの内周長よりも大きい端子付き電線10aを得ることができる。
【0071】
第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、導線圧着部7が、電線保持部7aと導通部7bとを有するため、接続強度を確保するのに適した形態で電線保持部7aを圧着し、導通を確保するのに適した形態で導通部7bを圧着することができる。すなわち、電線保持部7aと導通部7bの圧着時のそれぞれの変形量を異なるようにすることができるため、各部を目的に適した内面形状となるように圧着を行うことができる。
【0072】
また、導線圧着部7の先端部側(端子本体3側)を電線保持部7aとすることで、より強い接続強度を確保することができる。一方、導通部7bは、導線圧着部7の後端部側(被覆部15側)に配置されるため、仮に電線保持部7aにおいて、導線13の一部が破断しても、被覆導線11と端子1aとの導通を確保することができる。
【0073】
また、圧着前の電線保持部7aと導通部7bは外径が異なる。このため、通常の端子付き電線の圧着と同様の金型を用いて圧着作業を行うことで、電線保持部7aと導通部7bの変形量を適切に変えることができる。このため、作業が容易である。また、導線圧着部7の後端側の内径が大きいため、導線13の挿入作業が容易である。
【0074】
また、導線圧着部7は略円筒状であるため、特に、電線保持部7aでは、導線13の全周360°から確実に圧着することができる。このため、圧着時に、導線13へ局所的な応力(変形)が生じることを抑制することができる。
【0075】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0076】
例えば、各実施形態における構成は、互いに組み合わせることができることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0077】
1、1a………端子
3………端子本体
4………トランジション部
5………圧着部
7………導線圧着部
7a………電線保持部
7b………導通部
9………被覆圧着部
10、10a……端子付き電線
11………被覆導線
12………複合導体
13………導線
15………被覆部
17………抗張力体
23………突き合わせ部
31a………上刃型
31b………下刃型
32………導線圧着刃型
34………被覆圧着刃型
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11