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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168968
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】被加工物の研削方法
(51)【国際特許分類】
   B24B 7/04 20060101AFI20241128BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20241128BHJP
   B24B 19/02 20060101ALI20241128BHJP
   B24B 41/06 20120101ALI20241128BHJP
【FI】
B24B7/04 A
H01L21/304 631
H01L21/304 601Z
B24B19/02
B24B41/06 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023086065
(22)【出願日】2023-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】弁理士法人東京アルパ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小鮒 勇吾
(72)【発明者】
【氏名】佐竹 海音
【テーマコード(参考)】
3C034
3C043
3C049
5F057
【Fターム(参考)】
3C034AA08
3C034BB73
3C034DD10
3C043BA03
3C043BA09
3C043BA12
3C043BA15
3C043BA16
3C043CC04
3C043CC13
3C043DD02
3C043DD04
3C043DD05
3C049AA03
3C049AA14
3C049AA16
3C049AB04
3C049CB01
5F057AA11
5F057AA25
5F057BA15
5F057BB03
5F057BB06
5F057CA13
5F057CA14
5F057CA16
5F057DA08
5F057DA11
5F057DA17
5F057DA22
5F057EB20
5F057FA13
5F057FA39
(57)【要約】
【課題】薄膜が形成されたウェーハを安定的に研削する。
【解決手段】ウェーハ100の半導体基板101における裏面103に環状の溝120を形成した後、裏面103を研削する。このため、研削の際、研削ホイール28の下面を、環状の溝120によってドレスすることができる。したがって、半導体基板101の裏面103および外周端部の薄膜105を研削する際に、研削ホイール28のコンディションが低下することを、良好に抑制することが可能となる。このため、薄膜105が形成されたウェーハ100を、安定的に研削することが可能である。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、該基板の第1面にエピタキシャル成長によって形成された該基板とは異なる材質の薄膜とを有する被加工物の該基板の第2面を研削する被加工物の研削方法であって、
該被加工物における該基板の該第2面に環状の溝を形成することを含む溝形成ステップと、
研削ホイールの回転軌跡を、該被加工物の回転軸と重なる位置に位置付けた状態で、回転する該研削ホイールと回転する該被加工物の該基板における該第2面とを相対的に接近させ、該研削ホイールによって該基板の該第2面を少なくとも該溝の深さ以上研削し、該被加工物を所望の仕上げ厚さに研削することを含む研削ステップと、を備えることを特徴とする、
被加工物の研削方法。
【請求項2】
該溝形成ステップの前に実施され、該被加工物における該基板の該第1面側を第1チャックテーブルの第1保持面によって保持する第1保持ステップ、および、
該溝形成ステップの後であって該研削ステップの前に実施され、該被加工物における該基板の該第1面側を、第2チャックテーブルの第2保持面によって保持する第2保持ステップをさらに含んでおり、
該溝形成ステップは、該第1チャックテーブルの該第1保持面に保持されている該被加工物に対して実施されるとともに、
該研削ステップは、該第2チャックテーブルの該第2保持面に保持されている該被加工物に対して実施される、
請求項1に記載の被加工物の研削方法。
【請求項3】
該基板はシリコンから形成され、該薄膜は窒化ガリウムから形成されている、
請求項1記載の被加工物の研削方法。
【請求項4】
該研削ステップは、回転する該研削ホイールにおける該被加工物の中心から外周端部に向かって移動する部分を、該被加工物の該基板における該第2面に接触させることを含む、
請求項1~3のいずれかに記載の被加工物の研削方法。
【請求項5】
該研削ステップは、回転する該研削ホイールにおける該被加工物の外周端部から中心に向かって移動する部分を、該被加工物の該基板における該第2面に接触させることを含む、
請求項1~3のいずれかに記載の被加工物の研削方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工物の研削方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造工程においては、ウェーハ表面に格子状にストリートが形成され、ストリートによって区画された領域に、IC、LSI等のデバイスが形成される。これらのウェーハは、裏面が研削されて所定の厚みへと薄化された後、ストリートに沿って切削装置等によって分割される。これにより、個々の半導体デバイスチップが製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-124690号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、研削されるウェーハの表面に、エピタキシャル成長によって、該ウェーハとは異なる結晶の薄膜が形成されることがある。エピタキシャル成長では、薄膜は、ウェーハの表面だけでなく、ウェーハの外周端部にも回り込むように形成される。したがって、ウェーハの裏面を研削する際に、ウェーハの外周端部に形成された薄膜も、同時に研削されることとなる。
【0005】
この研削では、ウェーハおよび薄膜という2種類の材質を含む被加工物を研削することとなるため、研削の難易度があがる。例えば、シリコンウェーハに窒化ガリウムの薄膜を形成した場合、窒化ガリウムが硬質材料であるため、研削ホイールの目つぶれおよび目こぼれが発生する可能性がある。
【0006】
したがって、本発明の目的は、エピタキシャル成長によってウェーハの外周端部まで薄膜が形成されたウェーハを、安定的に研削する手法を確立することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の被加工物の研削方法(本研削方法)は、基板と、該基板の第1面にエピタキシャル成長によって形成された該基板とは異なる材質の薄膜とを有する被加工物の該基板の第2面を研削する被加工物の研削方法であって、該被加工物における該基板の該第2面に環状の溝を形成することを含む溝形成ステップと、研削ホイールの回転軌跡を、該被加工物の回転軸と重なる位置に位置付けた状態で、回転する該研削ホイールと回転する該被加工物の該基板における該第2面とを相対的に接近させ、該研削ホイールによって該基板の該第2面を少なくとも該溝の深さ以上研削し、該被加工物を所望の仕上げ厚さに研削することを含む研削ステップと、を備えることを特徴とする。
【0008】
また、本研削方法は、該溝形成ステップの前に実施され、該被加工物における該基板の該第1面側を第1チャックテーブルの第1保持面によって保持する第1保持ステップ、および、該溝形成ステップの後であって該研削ステップの前に実施され、該被加工物における該基板の該第1面側を、第2チャックテーブルの第2保持面によって保持する第2保持ステップをさらに含んでいてもよく、該溝形成ステップは、該第1チャックテーブルの該第1保持面に保持されている該被加工物に対して実施されてもよいとともに、該研削ステップは、該第2チャックテーブルの該第2保持面に保持されている該被加工物に対して実施されてもよい。
【0009】
また、本研削方法では、該基板はシリコンから形成されていてもよく、該薄膜は窒化ガリウムから形成されていてもよい。
【0010】
また、本研削方法では、該研削ステップは、回転する該研削ホイールにおける該被加工物の中心から外周端部に向かって移動する部分を、該被加工物の該基板における該第2面に接触させることを含んでいてもよい。
【0011】
また、本研削方法では、該研削ステップは、回転する該研削ホイールにおける該被加工物の外周端部から中心に向かって移動する部分を、該被加工物の該基板における該第2面に接触させることを含んでいてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本研削方法では、溝形成ステップにおいて被加工物の基板における第2面に環状の溝を形成した後、研削ステップにおいて、この環状の溝が形成された第2面を、研削ホイールによって研削している。このため、研削の際、研削ホイールの下面を、環状の溝によってドレスすることができる。したがって、基板の第2面および薄膜を研削する際に、研削ホイールのコンディションが低下することを、良好に抑制することが可能となる。このため、薄膜が形成された被加工物を、安定的に研削することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】ウェーハの構成を示す断面図である。
図2図2(a)は、第1保持ステップを示す断面図であり、図2(b)は、第1保持ステップを示す斜視図である。
図3図3(a)は、溝形成ステップを示す説明図であり、図3(b)は、溝形成ステップを示す斜視図である。
図4図4(a)は、第2保持ステップを示す断面図であり、図4(b)は、第2保持ステップを示す斜視図である。
図5図5(a)は、研削ステップを示す説明図であり、図5(b)は、研削ステップを示す斜視図である
図6】内外研削を示す説明図である。
図7】外内研削を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本実施形態にかかる被加工物の研削方法は、エピタキシャル成長によって形成された薄膜を有する被加工物を安定的に研削する方法である。
図1に示すように、被加工物の一例であるウェーハ100は、円板状の半導体基板101、および、半導体基板101に形成された薄膜105を有している。
半導体基板101は、シリコンからなる半導体基板であり、第1面である表面102、および、第2面である裏面103を有している。
【0015】
半導体基板101の表面102には、薄膜105が形成されている。薄膜105は、表面102にエピタキシャル成長によって形成された、半導体基板101の材質とは異なる材質(この材質の結晶)からなる薄膜である。本実施形態では、薄膜105の材質は、窒化ガリウムである。なお、薄膜105は、エピタキシャル成長によって表面102に形成されるため、表面102をはみ出て半導体基板101の外周端部(側面)にまで到達している。
【0016】
また、半導体基板101の裏面103は、研削加工が施される被加工面となる。すなわち、本実施形態の研削方法は、半導体基板101の裏面103を研削する方法である。
【0017】
以下に、本実施形態の研削方法のステップについて説明する。
【0018】
〔第1保持ステップ〕
このステップでは、図2(a)および図2(b)に示すように、ウェーハ100における半導体基板101の表面102側を、切削装置1のチャックテーブルである第1チャックテーブル10の第1保持面12によって保持する。
【0019】
第1チャックテーブル10は、ポーラス部材11と、ポーラス部材11の上面が露出するようにポーラス部材11を収容する枠体13と、を備えている。ポーラス部材11の上面は、ウェーハ100を吸引保持する保持面である第1保持面12である。第1保持面12は、吸引源(図示せず)に連通されることにより、ウェーハ100を吸引保持する。
また、第1チャックテーブル10は、Z軸方向(鉛直方向)に延びる回転軸301を中心に回転可能となっている。
【0020】
第1保持ステップでは、作業者あるいは図示しない搬送装置が、第1チャックテーブル10の第1保持面12に、第1保持面12の中心とウェーハ100の中心とが重なるように、ウェーハ100における半導体基板101の表面102側を載置する。そして、第1保持面12が吸引源に連通されることにより、ウェーハ100における半導体基板101の表面102が、薄膜105を介して、第1チャックテーブル10の第1保持面12によって吸引保持される。
【0021】
〔溝形成ステップ〕
第1保持ステップの後に実施される溝形成ステップは、第1チャックテーブル10の第1保持面12に保持されているウェーハ100に対して実施される。この溝形成ステップでは、ウェーハ100における半導体基板101の裏面103に、環状の溝を形成する。すなわち、切削装置1の第1チャックテーブル10の第1保持面12に保持されたウェーハ100の第1チャックテーブル10の表面102に、環状の溝を形成する。
【0022】
図3(a)および図3(b)に示すように、切削装置1は、第1チャックテーブル10に保持されたウェーハ100を切削する切削機構15を有している。切削機構15は、切削ブレード17、および、切削ブレード17を水平方向の回転軸302を中心に回転させるブレード回転機構16を有している。また、切削装置1は、切削機構15の切削ブレード17と第1チャックテーブル10との相対位置を調整可能な第1位置調整機構(図示せず)を有している。
【0023】
溝形成ステップでは、第1位置調整機構によって、ウェーハ100における半導体基板101の裏面103の溝形成位置に、切削機構15の切削ブレード17を配置する。本実施形態では、この溝形成位置は、半導体基板101の裏面103の、外周端部(外周縁)から所定距離だけ内側の部分である。
【0024】
そして、第1チャックテーブル10を矢印401に示すように回転させるとともに、ブレード回転機構16によって切削ブレード17を矢印402に示すように回転させる。この状態で、第1位置調整機構によって切削ブレード17を下降させて、半導体基板101の裏面103の溝形成位置に、切削ブレード17を切り込ませる。
【0025】
これにより、図3(a)および図3(b)に示すように、ウェーハ100における半導体基板101の裏面103の溝形成位置に、環状の溝120が形成される。なお、切削ブレード17の切り込み深さ、すなわち、環状の溝120の深さは、後述の研削ステップにおいてウェーハ100が研削される量(ウェーハ100の研削量)以下に設定される。
このような環状の溝120が裏面103に形成された後、作業者あるいは図示しない搬送装置によって、第1チャックテーブル10からウェーハ100が取り外される。
【0026】
〔第2保持ステップ〕
第2保持ステップは、溝形成ステップの後であって研削ステップの前に実施される。このステップでは、図4(a)および図4(b)に示すように、ウェーハ100における半導体基板101の表面102側を、研削装置2のチャックテーブルである第2チャックテーブル20の第2保持面22によって保持する。
【0027】
第2チャックテーブル20は、ポーラス部材21と、ポーラス部材21の上面が露出するようにポーラス部材21を収容する枠体23と、を備えている。ポーラス部材21の上面は、ウェーハ100を吸引保持する保持面である第2保持面22である。第2保持面22は、吸引源(図示せず)に連通されることにより、ウェーハ100を吸引保持する。
また、第2チャックテーブル20は、Z軸方向(鉛直方向)に延びる回転軸303を中心に回転可能となっている。
【0028】
第2保持ステップでは、作業者あるいは図示しない搬送装置が、第2チャックテーブル20の第2保持面22に、第2保持面22の中心とウェーハ100の中心とが重なるように、ウェーハ100における半導体基板101の表面102側を載置する。そして、第2保持面22が吸引源に連通されることにより、ウェーハ100における半導体基板101の表面102が、薄膜105を介して、第2チャックテーブル20の第2保持面22によって吸引保持される。
【0029】
〔研削ステップ〕
第2保持ステップの後に実施される研削ステップは、第2チャックテーブル20の第2保持面22に保持されているウェーハ100に対して実施される。この研削ステップでは、ウェーハ100における半導体基板101の裏面103を、切削装置1の研削機構によって所定の研削量だけ研削する。
【0030】
切削装置1は、図5(a)および図5(b)に示すように、研削ホイール28を備えた研削機構25を有している。研削機構25は、Z軸方向に延びる回転軸304を中心に図示しないモータによって回転されるスピンドル26と、スピンドル26の下端に配置されたマウント27と、マウント27に装着された研削ホイール28とを備えている。研削ホイール28は、ホイール基台281と、ホイール基台281の下面に環状に配列された略直方体状の複数の研削砥石282とを備えている。
【0031】
また、研削装置2は、研削機構25と第2チャックテーブル20との相対位置を調整可能な第2位置調整機構(図示せず)を有している。この第2位置調整機構により、研削機構25の研削ホイール28を第2チャックテーブル20に対して相対的に離接させること、および、ウェーハ100に対する研削ホイール28の研削軌跡の位置を調整することができる。
【0032】
このような研削機構25を用いる研削ステップでは、研削ホイール28の回転軌跡を、ウェーハ100の回転軸である回転軸303と重なる位置に位置付けた状態で、回転する研削ホイール28と回転するウェーハ100の半導体基板101における裏面103とを相対的に接近させ、研削ホイール28によって半導体基板101の裏面103を、少なくとも環状の溝120の深さ以上研削し、ウェーハ100を所望の仕上げ厚さに研削する。
【0033】
具体的には、研削ステップでは、まず、第2位置調整機構を用いて、研削機構25と第2チャックテーブル20との水平方向(XY方向)における位置を調整することにより、研削機構25における研削ホイール28の回転軌跡を、ウェーハ100の回転軸である回転軸303と重なる位置に位置付ける。すなわち、研削機構25における研削ホイール28の研削砥石282が、第2チャックテーブル20に保持されているウェーハ100の中心を通過するように、研削機構25と第2チャックテーブル20との相対位置を調整する。
【0034】
次に、第2チャックテーブル20を回転させることにより、第2保持面22に保持されているウェーハ100を、矢印403によって示すように、回転軸303を中心に回転させる。さらに、スピンドル26を回転させることにより、研削ホイール28を、矢印404によって示すように、回転軸304を中心に回転させる。この状態で、第2位置調整機構を用いて、研削機構25を-Z方向に下降させる。これにより、回転する研削ホイール28と回転するウェーハ100の半導体基板101における裏面103とが相対的に接近して、研削ホイール28の研削砥石282が、ウェーハ100における半導体基板101の裏面103に接触し、裏面103を研削する。
【0035】
そして、この研削ステップでは、研削ホイール28によって、半導体基板101の裏面103を、少なくとも環状の溝120の深さ以上の所定の研削量だけ研削することによって、ウェーハ100を、所望の仕上げ厚さに研削する。なお、この研削の際、図6に示すように、研削ホイール28は、半導体基板101の裏面103だけでなく、半導体基板101の外周端部に形成されている薄膜105をも研削することとなる。
【0036】
なお、この研削ステップでは、ウェーハ100における半導体基板101の中心から外周端部に向かって、研削が実施される(内外研削)。すなわち、この研削ステップでは、回転する研削ホイール28(研削砥石282)におけるウェーハ100の中心から外周端部に向かって移動する部分を、ウェーハ100における半導体基板101の裏面103に接触させている。
【0037】
より詳細には、図5(a)に示すように、第2チャックテーブル20の第2保持面22は、中心を頂点とする円錐面状に形成されている。そして、第2チャックテーブル20は、第2保持面22に保持されているウェーハ100における半導体基板101の裏面103の半径部分が研削ホイール28(研削砥石282)の下面と平行となるように、傾けられている。ここで、半導体基板101の裏面103の半径部分は、裏面103における研削ホイール28(研削砥石282)の下面に接する部分である。
【0038】
そして、本実施形態では、研削ホイール28における裏面103の半径部分に接する部分が、図6に示すように、裏面103を研削しながらウェーハ100の中心から外周端部に向かって移動するように、第2チャックテーブル20の傾き、第2チャックテーブル20の回転方向および研削ホイール28の回転方向が設定されている。
【0039】
以上のように、本実施形態では、溝形成ステップにおいてウェーハ100の半導体基板101における裏面103に環状の溝120を形成した後、研削ステップにおいて、この環状の溝120が形成された裏面103を研削している。このため、研削の際、研削ホイール28の下面(研削砥石282の下面)を、環状の溝120によってドレスすること(たとえば、鈍化した砥粒の切れ刃を再生すること)ができる。
【0040】
したがって、半導体基板101の裏面103および外周端部の薄膜105を研削する際に、研削ホイール28のコンディションが低下すること(たとえば、目つぶれや目こぼれが発生すること)を、良好に抑制することが可能となる。すなわち、研削ホイール28のコンディションの低下を抑制しながら、裏面103および薄膜105を良好に研削することができる。このため、薄膜105が形成されたウェーハ100を、安定的に研削することが可能である。
【0041】
また、本実施形態の研削ステップででは、図6に示すように、研削ホイール28(研削砥石282)におけるウェーハ100の中心から外周端部に向かって移動する部分を、半導体基板101の裏面103に接触させている(内外研削)。この場合、裏面103を研削した研削ホイール28が、環状の溝120の外側の角部121でドレスされた後、薄膜105を研削することとなる。
【0042】
したがって、研削ホイール28は、削り難い窒化ガリウムの薄膜105を研削する直前に、表面102によってドレス(目立て)されるため、薄膜105を良好に研削することができる。
【0043】
また、内外研削では、薄膜105の窒化ガリウムからなる研削屑を、ウェーハ100の外部に排出することが容易である。このため、環状の溝120は、半導体基板101の外周端部に近い位置に形成されることが好ましい。
【0044】
なお、研削ステップでは、ウェーハ100における半導体基板101の外周端部から中心に向かって裏面103を研削する外内研削が実施されてもよい。すなわち、研削ステップでは、回転する研削ホイール28(研削砥石282)におけるウェーハ100の外周端部から中心に向かって移動する部分を、ウェーハ100における半導体基板101の裏面103に接触させてもよい。
【0045】
この場合、第2保持面22に保持されているウェーハ100における半導体基板101の裏面103の半径部分に接する研削ホイール28(研削砥石282)の部分が、図7に示すように、裏面103を研削しながらウェーハ100の外周端部から中心に向かって移動するように、第2チャックテーブル20の傾き、第2チャックテーブル20の回転方向および研削ホイール28の回転方向が設定される。
【0046】
この構成では、薄膜105を研削した研削ホイール28が、環状の溝120の内側の角部122でドレスされた後、半導体基板101の裏面103を研削することとなる。したがって、研削ホイール28は、窒化ガリウムの薄膜105を研削してコンディションが低下した直後に、環状の溝120によってドレスされて、コンディションが回復することとなる。このため、コンディションが回復された状態の研削ホイール28によって、半導体基板101の裏面103を良好に研削することが可能となる。
【0047】
また、本実施形態の研削方法では、溝形成ステップにおいて、切削装置1の第1チャックテーブル10によってウェーハ100を保持した後(第1保持ステップ)、このウェーハ100の半導体基板101の裏面103に、環状の溝120を形成している(溝形成ステップ)。さらに、その後、ウェーハ100を、第1チャックテーブル10から取り外して、研削装置2の第2チャックテーブル20によって保持し(第2保持ステップ)、ウェーハ100の半導体基板101の裏面103および薄膜105を研削している(研削ステップ)。
【0048】
これに関し、本実施形態の研削方法を、ウェーハ100を保持する保持機構と、ウェーハ100の半導体基板101の裏面103に環状の溝120を形成可能な溝形成機構と、裏面103を研削可能な研削機構とを有する1つの加工装置を用いて実施してもよい。保持機構および溝形成機構としては、たとえば、図3(a)に示した第1チャックテーブル10および切削機構15を用いることができる。また、研削機構としては、たとえば、図5(a)に示した研削機構25を用いることができる。
【0049】
この場合、加工装置のチャックテーブルによってウェーハ100を保持した後(保持ステップ)、このウェーハ100の半導体基板101の裏面103に、溝形成機構によって環状の溝120を形成する(溝形成ステップ)。さらに、その後、チャックテーブルに保持されているウェーハ100の半導体基板101の裏面103および薄膜105を、研削機構によって研削する(研削ステップ)。
【0050】
この構成によっても、環状の溝120によって研削ホイール28のコンディションの低下を抑制しながら、裏面103および薄膜105を良好に研削することができる。
また、この構成では、ウェーハ100を保持するチャックテーブルの数を1つにすることができるので、装置構造を簡略化することが可能である。
【0051】
また、本実施形態では、溝形成ステップにおいて、切削装置1の切削ブレード17によって、ウェーハ100の半導体基板101の裏面103に環状の溝120を形成している。これに関し、溝形成ステップでは、レーザー光を用いて裏面103に環状の溝120を形成してもよい。
【符号の説明】
【0052】
1:切削装置、2:研削装置、
10:第1チャックテーブル、11:ポーラス部材、12:第1保持面、
13:枠体、15:切削機構、16:ブレード回転機構、17:切削ブレード、
20:第2チャックテーブル、21:ポーラス部材、22:第2保持面、23:枠体、
25:研削機構、26:スピンドル、27:マウント、28:研削ホイール、
100:ウェーハ、101:半導体基板、102:表面、103:裏面、105:薄膜、
120:溝、121:外側の角部、122:内側の角部、
281:ホイール基台、282:研削砥石
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7