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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168969
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】洗浄装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20241128BHJP
   H01L 21/301 20060101ALI20241128BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20241128BHJP
   B24B 27/06 20060101ALI20241128BHJP
   B24B 41/06 20120101ALI20241128BHJP
   B23Q 11/00 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
H01L21/304 643D
H01L21/78 P
H01L21/304 622Q
H01L21/68 P
H01L21/304 643B
B24B27/06 M
B24B41/06 L
B23Q11/00 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023086067
(22)【出願日】2023-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】弁理士法人東京アルパ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】新田 祐士
【テーマコード(参考)】
3C034
3C158
5F057
5F063
5F131
5F157
【Fターム(参考)】
3C034AA19
3C034BB73
3C034DD10
3C158AA03
3C158AB01
3C158AB06
3C158AC05
3C158CB01
3C158CB06
3C158DA10
5F057AA21
5F057AA31
5F057BA11
5F057DA01
5F057DA03
5F057DA11
5F057DA26
5F057DA38
5F057FA37
5F063AA15
5F063AA21
5F063CA04
5F063CA06
5F063CB05
5F063CB06
5F063CB29
5F063DD25
5F063DD58
5F063DD61
5F063EE21
5F063FF04
5F063FF22
5F063FF33
5F063FF35
5F063FF36
5F063FF42
5F063FF43
5F131AA02
5F131BA32
5F131BA33
5F131BA37
5F131BA43
5F131BA52
5F131CA12
5F131CA31
5F131EB01
5F131EB51
5F157AA98
5F157AB02
5F157AB16
5F157AB33
5F157AB47
5F157AB51
5F157AB62
5F157AB97
5F157AC01
5F157AC13
5F157AC56
5F157BB22
5F157BB73
5F157CB13
5F157CB15
5F157CF10
5F157CF48
5F157DB02
(57)【要約】
【課題】ワークから加工屑を良好に除去する。
【解決手段】超音波振動子27からの超音波振動を、チャックテーブル20の保持面22およびウェーハ100の表面に伝播させて、ウェーハ100の表面に付着している加工屑、および、表面に形成された加工溝120内の加工屑を浮き上がらせている。そして、この状態で、洗浄水ノズル70から、ウェーハ100の表面に洗浄水を供給している。これにより、ウェーハ100から浮き上がった加工屑を、洗浄水によって、良好に洗い流して除去することができる。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工具によって加工屑を排出しながらワークを加工する加工装置に配置される洗浄装置であって、
保持面によってワークを保持するチャックテーブルと、
該ワークに洗浄水を供給する洗浄水ノズルと、を備え、
該チャックテーブルは、該保持面の下方に配置され、該保持面に超音波振動を付与する超音波振動子を備える、
洗浄装置。
【請求項2】
該チャックテーブルは、
テーブルベース、
該テーブルベースに対して脱着可能なテーブル、
該テーブルベースまたは該テーブルに配置される該超音波振動子、および、
該テーブルベースと該テーブルとを接合させた際に、高周波電源と該超音波振動子とを接続させて該超音波振動子への電力の供給を可能とする端子、を備える、
請求項1記載の洗浄装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1~3に開示のように、切削ブレードでワークを切削する切削装置では、カーフ(切り口)の側面に切削屑を付着させないように、切削中に、ワークの上方からカーフに、高圧水または二流体を噴射している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2023-015609号公報
【特許文献2】特開2019-106437号公報
【特許文献3】特開2021-150494号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記のように切削中に洗浄を実施する構成では、チップが小さいときには、この高圧水あるいは二流体の勢いによって、チップがテープから剥がされることがある。
【0005】
また、加工後に洗浄を実施する構成では、狭いカーフに切削屑が進入した場合、高圧水または二流体がカーフに入り込み難いため、切削屑を除去することが困難である。また、ハーフカットしたウェーハを研削して溝を露出させチップ分割するDBGにおいては、溝に進入した研削屑を除去することが困難である。
【0006】
また、ウェーハの裏面を研削あるいは研磨する加工において、研削屑あるいは研磨屑が小さい場合には、その研削屑あるいは研磨屑を裏面から除去する洗浄時間が長くなる。
【0007】
したがって、本発明の目的は、ワークから加工屑を良好に除去することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の洗浄装置(本洗浄装置)は、加工具によって加工屑を排出しながらワークを加工する加工装置に配置される洗浄装置であって、保持面によってワークを保持するチャックテーブルと、該ワークに洗浄水を供給する洗浄水ノズルと、を備え、該チャックテーブルは、該保持面の下方に配置され、該保持面に超音波振動を付与する超音波振動子を備える。
【0009】
本洗浄装置では、該チャックテーブルは、テーブルベース、該テーブルベースに対して脱着可能なテーブル、該テーブルベースまたは該テーブルに配置される該超音波振動子、および、該テーブルベースと該テーブルとを接合させた際に、高周波電源と該超音波振動子とを接続させて該超音波振動子への電力の供給を可能とする端子、を備えていてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本洗浄装置では、超音波振動子からの超音波振動を、チャックテーブルの保持面およびワークの表面に伝播させることにより、ワークに付着している加工屑を浮き上がらせることができる。そして、この状態で、洗浄水ノズルから、ワークの表面に洗浄水を供給することにより、ワークから浮き上がった加工屑を、洗浄水によって良好に洗い流すことができる。したがって、本洗浄装置によれば、ワークから加工屑を良好に除去することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】切削装置の構成を示す斜視図である。
図2】切削工程を示す説明図である。
図3】チャックテーブルのテーブルの下面を示す斜視図である。
図4】チャックテーブルの構成を示す説明図である。
図5】第1洗浄工程示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1に示す切削装置1は、加工具によって加工屑を排出しながらワークを加工する加工装置の一例である。
図1に示すウェーハ100は、ワークの一例である。ウェーハ100は、本実施形態では、円板状の半導体ウェーハであり、表面に格子状の分割予定ライン102を有している。分割予定ライン102によって区画された各領域には、デバイス(図示せず)が形成されている。
【0013】
本実施形態では、ウェーハ100は、ワークセット110の状態で取り扱われる。ワークセット110は、ウェーハ100を収容可能な開口112を有する環状のリングフレーム111と、リングフレーム111の開口112に位置づけられたウェーハ100とを、ダイシングテープ113によって一体化させることによって形成されている。ウェーハ100は、このようなワークセット110の状態で、切削装置1において切削加工される。
【0014】
以下に、切削装置1の構成について説明する。
切削装置1は、支持台10、支持台10に立設された直方体状の筐体12、および、筐体12に内蔵され、切削装置1の各部材を制御する制御部7を備えている。
【0015】
支持台10の-Y方向側には、複数のワークセット110を保持するカセット(図示せず)が載置されるカセットステージ16が設けられている。カセットステージ16の下方における支持台10の内部には、カセットステージ16を上下方向に移動させるためのステージ移動部材13が設けられている。
【0016】
カセットステージ16と支持台10の中央のチャックテーブル20との間には、ワークセット110を搬送するプッシュプル機構17が設けられている。プッシュプル機構17は、カセットに対してワークセット110を出し入れするプッシュプルアーム171と、プッシュプルアーム171をY軸方向に往復移動させるプッシュプルアーム移動機構172とを備えている。
【0017】
また、チャックテーブル20の筐体12側には、ワークセット110を仮置きするための仮置き部材18が設けられている。プッシュプル機構17は、カセットステージ16上のカセットから仮置き部材18に、切削加工前のウェーハ100を含むワークセット110を搬送および載置する。仮置き部材18は、ワークセット110のX軸方向の位置決めを実施する。
【0018】
チャックテーブル20の上部における筐体12の前面には、第1搬送機構50が設けられている。第1搬送機構50は、ワークセット110のリングフレーム111を保持する第1フレーム保持部51、第1フレーム保持部51をY軸方向に移動させる第1移動機構52、および、第1フレーム保持部51をZ軸方向に昇降させる第1昇降機構53を備えている。
【0019】
第1搬送機構50は、仮置き部材18上のワークセット110を、チャックテーブル20に搬送および載置する。また、第1搬送機構50は、チャックテーブル20上のワークセット110を、支持台10の+Y方向側に設けられたスピンナ洗浄機構55に搬送および載置する。
【0020】
チャックテーブル20は、保持面22によってウェーハ100を保持するものであり、移動板14上に配置されている。移動板14は、蛇腹状の防水カバー15とともに、支持台10の上面中央の開口を覆っている。
【0021】
チャックテーブル20は、ポーラス材からなる保持面22を有している。この保持面22は、図示しない吸引源に連通されることにより、ワークセット110のウェーハ100を、ダイシングテープ113を介して吸引保持する。また、チャックテーブル20は、4つのクランプ28を備えている。各クランプ28によって、ワークセット110のリングフレーム111が、四方から挟持固定される。このようにして、チャックテーブル20は、ワークセット110を保持する。
【0022】
チャックテーブル20は、ワークセット110を保持した状態で、移動板14とともに、X軸移動機構29(図2参照)によって、支持台10上から筐体12の内部に運ばれる。筐体12の内部には、加工ユニット40が設けられている。加工ユニット40は、ワークセット110のウェーハ100を、分割予定ライン102に沿って切削加工する。これにより、ウェーハ100に加工溝(切削溝)が形成される。
【0023】
切削加工後、チャックテーブル20および移動板14は、X軸移動機構29によって支持台10上に戻される。このとき、チャックテーブル20に保持されているワークセット110のウェーハ100が、仮置き部材18の近傍に備えられた洗浄水ノズル70によって洗浄される。そして、ワークセット110は、第1搬送機構50によって、チャックテーブル20から、チャックテーブル20の奥側のスピンナ洗浄機構55に送られる。
【0024】
スピンナ洗浄機構55は、ワークセット110を保持するスピンナテーブル56を有している。スピンナ洗浄機構55では、スピンナテーブル56によって保持されたワークセット110のウェーハ100が洗浄および乾燥される。
【0025】
スピンナ洗浄機構55の上部における筐体12の前面には、第2搬送機構60が設けられている。第2搬送機構60は、ワークセット110のリングフレーム111を保持する第2フレーム保持部61、第2フレーム保持部61をY軸方向に移動させる第2移動機構63、および、第2フレーム保持部61をZ軸方向に昇降させる第2昇降機構65を備えている。
【0026】
第2搬送機構60は、スピンナ洗浄機構55によって洗浄および乾燥されたウェーハ100を含むワークセット110を、スピンナ洗浄機構55から搬出して、カセットステージ16上の図示しないカセットに収納する。
【0027】
なお、第2搬送機構60は、ウェーハ100の切削加工後に、第1搬送機構50に代わって、ワークセット110をチャックテーブル20からスピンナ洗浄機構55に搬送してもよい。
【0028】
また、筐体12の側面には、タッチパネル80が設置されている。タッチパネル80には、ウェーハ100の切削加工に関する加工条件等の各種情報が表示される。また、タッチパネル80は、加工条件等の各種情報を設定するためにも用いられる。このように、タッチパネル80は、情報を入力するための入力部材として機能するとともに、情報を表示するための表示部材としても機能する。
【0029】
制御部7は、各種の処理を実行し、切削装置1の各構成要素を統括制御する。たとえば、制御部7には、各種検出器(図示せず)からの検出結果が入力される。また、制御部7は、加工ユニット40を制御して、ウェーハ100に対する切削加工を実施する。さらに、制御部7は、スピンナ洗浄機構55を制御して、ウェーハ100を洗浄する。
【0030】
次に、チャックテーブル20および加工ユニット40の構成について説明する。
【0031】
図2に示すように、チャックテーブル20は、ウェーハ100を保持するテーブル21、テーブル21を保持するテーブルベース25、および、上述したクランプ28を備えている。
【0032】
テーブル21は、略円板状の枠体23を有しており、枠体23の上面に設けられた凹部内に、ポーラスセラミックス等の多孔質部材からなる保持部材24を備えている。保持部材24の上面が、ワークセット110におけるウェーハ100を吸引保持する保持面22となっている。
【0033】
また、図3に示すように、テーブル21の下面(枠体23の下面)210には、環状のテーブル吸引溝231、枠体23を貫通する中央の吸引口232、および、超音波振動子27が設けられている。吸引口232は、保持部材24の下面の全面に接続されている(図2参照)。
【0034】
図2に示すように、テーブルベース25は、上面によってテーブル21を保持するように構成されている円板状体である。テーブルベース25の側面には、上述したクランプ28が取り付けられている。また、テーブルベース25には、Z軸方向にテーブルベース25を貫通する第1吸引路251および第2吸引路252が設けられている。
【0035】
第1吸引路251は、テーブル21の下面210の環状のテーブル吸引溝231と吸引源301とを、第1バルブ302を介して接続するための流路であり、テーブルベース25によってテーブル21を吸引保持するために用いられる。
【0036】
すなわち、図4に示すように、テーブル21は、テーブルベース25に対して着脱可能(テーブルベース25から分離されることが可能)なように構成されている。テーブル21をテーブルベース25によって保持する際には、図2に示すように、テーブル21の中心とテーブルベース25の中心とが重なるように、テーブルベース25に対してテーブル21を載置する。これにより、テーブルベース25の第1吸引路251と、テーブル21の下面210のテーブル吸引溝231とが接続される。そして、第1バルブ302を開けることにより、第1バルブ302および第1吸引路251を介して、テーブル吸引溝231が吸引源301に連通される。これにより、テーブル21が、テーブルベース25によって吸引保持される。
【0037】
また、第2吸引路252は、テーブル21の枠体23における中央の吸引口232と吸引源301とを、第2バルブ303を介して接続するための流路である。吸引口232が吸引源301に連通されることにより、テーブル21の保持部材24が吸引源301に連通される。これにより、テーブル21の保持面22に吸引力が付与されて、保持面22によって、ワークセット110におけるウェーハ100を、ダイシングテープ113を介して吸引保持することが可能となっている。
【0038】
テーブル21に備えられている超音波振動子27は、保持面22の下方に配置されており、保持面22に超音波振動を付与するように構成されている。図3に示すように、超音波振動子27は、リング状を有しており、テーブル21の下面210における中央の吸引口232を囲むように、下面210から突出するように設けられている。また、テーブルベース25の上面には、超音波振動子27の突出部分を嵌合させるための凹部253が設けられている(図2参照)。このため、テーブル21の超音波振動子27がテーブルベース25の凹部253に嵌合するように、テーブル21をテーブルベース25に載置することにより、テーブル21の中心とテーブルベース25の中心とを容易に重ねることが可能となっている。
なお、テーブル21の下面210における吸引口232を下面210の外周側に配置し、超音波振動子27を円柱状としてもよい。
【0039】
また、テーブルベース25の上面の凹部253には、端子272が設けられている。この端子272は、高周波電源271に接続されており、プラス端子およびマイナス端子を含んでいる。テーブル21の超音波振動子27がテーブルベース25の凹部253に嵌合されたときに、高周波電源271のプラス端子およびマイナス端子が、超音波振動子27のプラス端子およびマイナス端子に接触する。
【0040】
このように、テーブルベース25の端子272は、テーブル21をテーブルベース25によって保持することによってテーブル21とテーブルベース25とを接合させた際に、高周波電源271と超音波振動子27とを接続させて、超音波振動子27への電力の供給を可能とするものである。
【0041】
超音波振動子27は、高周波電源271から電力供給を受けることにより、超音波振動を発振して、テーブル21の保持面22に超音波振動を伝播させることができる。
【0042】
このような超音波振動子27を有するチャックテーブル20は、その下方に配されたX軸移動機構29によって、X軸方向に沿って移動することができる。また、チャックテーブル20は、回転機構(図示せず)によって、保持面22の中心を通りZ軸方向に延びる回転軸を中心に回転することもできる。
【0043】
図1および図2に示した加工ユニット40は、チャックテーブル20に保持されたウェーハ100のウェーハ100を切削して、ウェーハ100に加工溝を形成するものである。図2に示すように、加工ユニット40は、ウェーハ100を切削するための切削ブレード41、および、切削水を噴射するための切削水ノズル42を有している。
【0044】
切削ブレード41は、検出された分割予定ライン102に沿って、ウェーハ100を切削するために用いられる。切削水ノズル42は、切削ブレード41とウェーハ100との接点に切削水を供給するためのものであり、切削水供給源43に接続されている。
また、加工ユニット40は、切削ブレード41のY軸方向およびZ軸方向における位置を調整するためのブレード移動機構44を備えている。
【0045】
ここで、図1に示した洗浄水ノズル70について説明する。洗浄水ノズル70は、筐体12の内部に対してX軸方向に移動されるチャックテーブル20の移動経路の上方に備えられており、移動されるチャックテーブル20に保持されているワークセット110のウェーハ100に洗浄水を供給するためのものである。
【0046】
図5に示すように、洗浄水ノズル70は、Y軸方向に延びる筐体71と、筐体71の下面に取り付けられた複数のノズル部72とを有している。筐体71は、洗浄水供給源75に接続されている。洗浄水ノズル70は、筐体71が洗浄水供給源75に連通されることにより、ノズル部72から下方に洗浄水を噴射するように構成されている。
【0047】
ここで、ウェーハ100に対する加工溝の形成動作について説明する。
【0048】
〔保持工程〕
まず、制御部7が、図1に示したプッシュプル機構17によって、カセットステージ16上の図示しないカセットからワークセット110を搬出し、仮置き部材18に載置して、ワークセット110の位置決めを実施する。その後、制御部7は、第1搬送機構50によって、ワークセット110をチャックテーブル20の保持面22に載置する。
【0049】
次に、制御部7は、図2に示すように、第2バルブ303を開放して、保持面22によって、ワークセット110のウェーハ100を、ダイシングテープ113を介して吸引保持する。また、制御部7は、ワークセット110のリングフレーム111を、クランプ28によって保持し、保持面22に対して下方に引き下げる。このようにして、ウェーハ100を含むワークセット110が、チャックテーブル20によって保持される。
【0050】
その後、制御部7は、ワークセット110を保持したチャックテーブル20を、X軸移動機構29によって、加工ユニット40が配置されている図1に示した筐体12の内部に運ぶ。
【0051】
〔切削工程〕
この工程では、加工ユニット40によって、ウェーハ100に加工溝を形成する。
具体的には、まず、制御部7が、チャックテーブル20および加工ユニット40の位置を調整することにより、チャックテーブル20に保持されているワークセット110のウェーハ100における1本の分割予定ライン102に、図2に示した加工ユニット40における切削ブレード41の位置および向きに合わせる。この状態で、制御部7は、切削ブレード41を回転させながらブレード移動機構44によって下降させて、この分割予定ライン102に切削ブレード41を切り込ませる。本実施形態では、切削ブレード41を、たとえば、ウェーハ100を切断可能な位置にまで下降させる。
【0052】
さらに、制御部7は、X軸移動機構29を用いて、チャックテーブル20を、この分割予定ライン102の延びる方向であるX軸方向に移動させる。これにより、この分割予定ライン102に沿って、図5に示すように、ウェーハ100を切断する深さの加工溝120が形成されて、ウェーハ100が切断される。
【0053】
このようにして、制御部7は、全ての分割予定ライン102に沿ってウェーハ100に加工溝120を形成することにより、これらのラインに沿ってウェーハ100を切断する。これにより、ウェーハ100が分割されて、複数のチップ121が形成される。
【0054】
なお、ウェーハ100の分割予定ライン102に対する切削ブレード41の切り込み深さを、ウェーハ100を切断しない深さに設定して、ウェーハ100をハーフカットしてもよい。この場合、後の工程においてダイシングテープ113を拡張することにより、分割予定ライン102に沿ってウェーハ100を分割して、複数のチップ121を形成することができる。
【0055】
〔第1洗浄工程〕
この工程では、切削されたウェーハ100の表面を洗浄する。すなわち、切削工程の後では、ウェーハ100の表面に、切削時に形成された加工屑(図示せず)が付着している。また、切削工程においてウェーハ100の表面に形成された加工溝120内にも、多くの加工屑がたまっている。第1洗浄工程では、これらの加工屑をウェーハ100の表面から除去する。
【0056】
具体的には、制御部7は、切削工程の後、X軸移動機構29を用いて、チャックテーブル20を、筐体12の外部の支持台10上に向けて+X方向に移動させる。そして、制御部7は、チャックテーブル20の移動経路上にある図5に示す洗浄水ノズル70を、洗浄水供給源75に連通させる。これにより、ノズル部72から、+X方向に移動するチャックテーブル20に保持されているワークセット110におけるウェーハ100の表面の全面に、洗浄水が噴射される。
【0057】
また、この際、制御部7は、高周波電源271を制御して、チャックテーブル20のテーブル21の下面210に設けられている超音波振動子27に、高周波電力を供給する。これにより、高周波電源271によって、所定の周波数で電圧の印加のオンとオフとが繰り返され、超音波振動子27に伸縮運動が発生する。そして、この伸縮運動が機械的な超音波振動となり、超音波振動子27を備えるテーブル21を超音波振動が伝播して、テーブル21の保持面22が超音波振動する。
【0058】
これにより、保持面22に保持されているウェーハ100の表面も超音波振動する。その結果、ウェーハ100の表面に付着している加工屑が表面から浮き上がる。また、加工溝120内の加工屑が加工溝120から浮き上がる。そして、これらの加工屑が、ウェーハ100に供給されている洗浄水によって、ウェーハ100の外部に洗い流される。
【0059】
〔第2洗浄工程〕
チャックテーブル20が支持台10上に戻された後、制御部7は、ウェーハ100を含むワークセット110を、第1搬送機構50によって、チャックテーブル20からスピンナ洗浄機構55に送り、スピンナテーブル56によって保持する。そして、制御部7は、スピンナテーブル56を高速回転させるとともに、図示しないノズルからの洗浄水を、高速回転されているワークセット110のウェーハ100の表面に向けて噴射して、ウェーハ100の表面を洗浄する。その後、制御部7は、高速回転されているワークセット110のウェーハ100の表面に、図示しないノズルから乾燥エアを噴射することによって、ウェーハ100の表面を乾燥させる。
【0060】
そして、制御部7は、洗浄および乾燥されたウェーハ100を含むワークセット110を、第2搬送機構60を用いて、スピンナ洗浄機構55から搬出して、カセットステージ16上のカセットに収納する。
【0061】
以上のように、本実施形態では、チャックテーブル20および洗浄水ノズル70が、加工屑を排出しながらウェーハ100を加工する加工装置である切削装置1に配置される洗浄装置を構成している。
【0062】
そして、本実施形態では、この洗浄装置を用いた第1洗浄工程において、超音波振動子27からの超音波振動を、チャックテーブル20の保持面22およびウェーハ100の表面に伝播させて、ウェーハ100の表面に付着している加工屑、および、表面に形成された加工溝120内の加工屑を浮き上がらせている。そして、この状態で、洗浄水ノズル70から、ウェーハ100の表面に洗浄水を供給している。これにより、ウェーハ100から浮き上がった加工屑を、洗浄水によって、良好に洗い流して除去することができる。このように、本実施形態によれば、洗浄スポンジなどの洗浄具を用いることなく、非接触で、ウェーハ100から加工屑を良好に除去することができる。
【0063】
また、本実施形態では、第1洗浄工程を、筐体12の内部にあるチャックテーブル20を、筐体12の外部の支持台10上に向けて+X方向に移動させる際に実施している。このため、第1洗浄工程を実施するために加工時間が延びることを抑制することが可能である。
【0064】
また、本実施形態では、第1洗浄工程の後、スピンナ洗浄である第2洗浄工程を実施して、ウェーハ100の洗浄および乾燥を実施している。これに関し、第1洗浄工程において、ウェーハ100の表面および加工溝120内の加工屑を除去しているため、第2洗浄工程の時間を短縮することが可能である。したがって、本実施形態では、従来に比して、トータルの洗浄時間を短縮することが可能となる。
【0065】
なお、スピンナ洗浄機構55のスピンナテーブル56も、超音波振動子27のような超音波振動子を備えていてもよい。この場合、第2洗浄工程でのスピンナ洗浄の際に、スピンナテーブル56の保持面を超音波振動させることによって、スピンナテーブル56に保持されているワークセット110のウェーハ100の表面を超音波振動させて、加工屑を浮き上がらせることができる。したがって、スピンナ洗浄を効率よく実施することが可能である。
【0066】
また、本実施形態では、チャックテーブル20の超音波振動子27は、図3に示したように、テーブル21の下面210に、下面210から突出するように設けられている。これに関し、超音波振動子27は、下面210から突出していなくもよく、たとえば、下面210と面一となるように下面210に埋め込まれていてもよい。
また、超音波振動子27は、テーブル21の保持面22およびウェーハ100に超音波振動を伝播させることが可能であれば、リング状に限らず例えば円柱状など、任意の形状を有していてもよい。なお、超音波振動子27が任意の形状のときには、超音波振動子27が吸引口232を塞がないように、テーブル21の下面210の中心以外の位置に吸引口232を配置する。
【0067】
また、チャックテーブル20の超音波振動子27は、テーブルベース25に設けられていてもよい。この場合、超音波振動子27は、たとえば、チャックテーブル20の下面210に接するテーブルベース25の上面に設けられる。この構成でも、超音波振動子27は、チャックテーブル20における保持面22の下方に設けられており、この保持面22に超音波振動を伝播させることが可能である。
また、超音波振動子27は、一つに限定するものではない。ウェーハ100の大きさに対応して複数配置してもよい。
【0068】
また、洗浄水ノズル70を用いた第1洗浄工程では、ワークセット110のリングフレーム111を保持しているクランプ28を上方に持ち上げて、ワークセット110を、ウェーハ100を底面とするすり鉢状(凹状)に変形させてもよい。これにより、ウェーハ100の表面上に、洗浄水ノズル70からの洗浄水を溜めることができる。このため、溜められた洗浄水を介して、超音波振動をウェーハ100の表面に伝播することができる。その結果、ウェーハ100の加工屑を、より良好に浮き上がらせることが可能である。
【0069】
また、切削装置1は、切削ブレード41を有する加工ユニット40に代えて、レーザー光によってウェーハ100の表面に加工溝120を形成するレーザー加工ユニットを備えていてもよい。この場合でも、第1洗浄工程により、ウェーハ100の表面に形成された加工溝120にたまっている加工屑を、良好に洗い流すことが可能である。
【0070】
また、本実施形態では、加工装置の一例として、切削装置1を示している。これに関し、本実施形態の洗浄装置(チャックテーブルおよび洗浄水ノズルを含む構成)が備えられる加工装置は、切削装置に限られず、研磨装置、研削装置あるいはバイト切削装置などであってもよい。この構成では、研磨屑あるいは研削屑などの加工屑が小さい場合でも、洗浄スポンジなどの洗浄具を接触させることなく、超音波振動によって加工屑を浮き上がらせ、非接触でワークの表面を良好に洗浄することができる。
【0071】
また、切削装置1によって加工溝120が形成されたウェーハ100の表面を、CMP研磨装置によってCMP加工する場合もある。この場合、CMP研磨装置に、本実施形態の洗浄装置を備えることにより、CMP加工においてウェーハ100の表面の加工溝120に入り込んだスラリーを、良好に除去することができる。
【符号の説明】
【0072】
1:切削装置、7:制御部、10:支持台、12:筐体、13:ステージ移動部材、
14:移動板、15:防水カバー、16:カセットステージ、17:プッシュプル機構、
18:仮置き部材、20:チャックテーブル、21:テーブル、22:保持面、
23:枠体、24:保持部材、25:テーブルベース、27:超音波振動子、
28:クランプ、29:X軸移動機構、40:加工ユニット、41:切削ブレード、
42:切削水ノズル、43:切削水供給源、44:ブレード移動機構、
50:第1搬送機構、51:第1フレーム保持部、52:第1移動機構、
53:第1昇降機構、55:スピンナ洗浄機構、56:スピンナテーブル、
60:第2搬送機構、61:第2フレーム保持部、63:第2移動機構、
65:第2昇降機構、70:洗浄水ノズル、71:筐体、72:ノズル部、
75:洗浄水供給源、80:タッチパネル、
100:ウェーハ、102:分割予定ライン、110:ワークセット、
111:リングフレーム、112:開口、113:ダイシングテープ、
120:加工溝、121:チップ、
171:プッシュプルアーム、172:プッシュプルアーム移動機構、210:下面、
231:テーブル吸引溝、232:吸引口、251:第1吸引路、252:第2吸引路、
253:凹部、271:高周波電源、272:端子、301:吸引源、
302:第1バルブ、303:第2バルブ
図1
図2
図3
図4
図5