(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168970
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】チップの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/301 20060101AFI20241128BHJP
【FI】
H01L21/78 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023086070
(22)【出願日】2023-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【弁理士】
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(74)【代理人】
【識別番号】100189773
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 英哲
(74)【代理人】
【識別番号】100184055
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 貴之
(74)【代理人】
【識別番号】100185959
【弁理士】
【氏名又は名称】今藤 敏和
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 文哉
【テーマコード(参考)】
5F063
【Fターム(参考)】
5F063AA05
5F063BA17
5F063CA04
5F063CC44
5F063FF03
(57)【要約】
【課題】パッケージ基板から製造されるチップの歩留まりを低下させることなく、パッケージ基板からチップを製造する際の切削ブレードの摩耗を抑制し、かつ、細分化された端材の飛散を防止することが可能なチップの製造方法を提供する。
【解決手段】複数のデバイスの境界に沿ったデバイス領域の切削ブレードによる切削(すなわち、第一デバイス領域切削ステップ及び第二デバイス領域切削ステップ)を、残存する第二端材部又は第四端材部を切削しないように、デバイス領域のうち第二端材部又は第四端材部から遠い側から近い側に向かって行うとともに、端材領域を横断するような切削ブレードによる切削を行うことなく、端材領域をデバイス領域から分離する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のデバイスが行列状に配設されている矩形状のデバイス領域と、該行列の行方向において該デバイス領域を挟むように位置付けられている第一端材部及び第二端材部と該行列の列方向において該デバイス領域を挟むように位置付けられている第三端材部及び第四端材部とを含む環状の端材領域と、を備えるパッケージ基板を切削ブレードで切削することによって複数のチップを製造するチップの製造方法であって、
該第一端材部を該デバイス領域から分離させて該デバイス領域の該行方向における一端を露出させるように、該デバイス領域と該第一端材部との境界に沿って該パッケージ基板を該切削ブレードで切削する第一分離ステップと、
該第三端材部を該デバイス領域から分離させて該デバイス領域の該列方向における一端を露出させるように、該デバイス領域と該第三端材部との境界に沿って該パッケージ基板を該切削ブレードで切削する第二分離ステップと、
該第一分離ステップの後に、該第二端材部が切削されないように、該複数のデバイスの境界のうち該行方向に沿った複数の行方向伸長部のそれぞれにおいて該デバイス領域の該行方向における該一端から他端まで該デバイス領域を該切削ブレードで切削する第一デバイス領域切削ステップと、
該第二分離ステップの後に、該第四端材部が切削されないように、該複数のデバイスの境界のうち該列方向に沿った複数の列方向伸長部のそれぞれにおいて該デバイス領域の該列方向における該一端から他端までデバイス領域を該切削ブレードで切削する第二デバイス領域切削ステップと、
該第一デバイス領域切削ステップ及び該第二デバイス領域切削ステップの後に、該第二端材部及び該第四端材部を該デバイス領域から分離させて該デバイス領域を個片化するように、該デバイス領域と該第二端材部との境界に沿って該パッケージ基板を該切削ブレードで切削し、かつ、該デバイス領域と該第四端材部との境界に沿って該パッケージ基板を該切削ブレードで切削する第三分離ステップと、
を備えるチップの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パッケージ基板を切削ブレードで切削することによって複数のチップを製造するチップの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
IC(Integrated Circuit)等のデバイスのチップは、携帯電話及びパーソナルコンピュータ等の各種電子機器において不可欠の構成要素である。このチップは、例えば、複数のデバイスが行列状に配設されている矩形状のデバイス領域と、デバイス領域を囲繞する端材領域と、を備えるパッケージ基板から製造される。
【0003】
具体的には、チップは、端材領域をデバイス領域から分離するとともにデバイス領域を個片化するようにパッケージ基板を切削することによって製造される。パッケージ基板の切削は、例えば、パッケージ基板を保持するための治具が装着されているテーブルと、円環状の切削ブレードが先端部に装着されているスピンドルと、を備える切削装置において実施される(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
この切削装置においてパッケージ基板を切削する際には、まず、治具を介してテーブルにおいてパッケージ基板を保持する。そして、スピンドルとともに回転する切削ブレードをチャックテーブルによって保持されているパッケージ基板に切り込ませた状態でチャックテーブルとスピンドルとを相対的に移動させることによってパッケージ基板が切削される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したようにパッケージ基板を切削する場合、切削ブレードがパッケージ基板を切り抜けるタイミングにおいて切削ブレードがぶれやすくなる。すなわち、加工点の位置を変更しながら連続して行われる切削が終了するタイミングにおいて、パッケージ基板の外周に含まれる点と加工点が重なる場合には、切削ブレードがぶれやすくなる。
【0007】
そして、この切削ブレードのぶれに起因して、パッケージ基板のうち切削ブレードが切り抜ける側の端部においてはチッピングと呼ばれる欠けが生じやすくなる。そのため、端材領域をデバイス領域から分離してからデバイス領域を個片化する場合、チッピングが生じたチップが製造され、パッケージ基板から製造されるチップの歩留まりが低下するおそれがある。
【0008】
このような歩留まりの低下は、端材領域をデバイス領域から分離するための切削を行うことなくパッケージ基板を個片化することによって防止できる。ただし、この場合、デバイス領域のみならず端材領域を横断するようにパッケージ基板の切削が行われることになる。そのため、この場合、切削ブレードの摩耗が促進されるとともに、細分化された端材が飛散し、切削装置及び/又は複数のチップに衝突して傷つけるおそれがある。
【0009】
これらの点に鑑み、本発明の目的は、パッケージ基板から製造されるチップの歩留まりを低下させることなく、パッケージ基板からチップを製造する際の切削ブレードの摩耗を抑制し、かつ、細分化された端材の飛散を防止することが可能なチップの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、複数のデバイスが行列状に配設されている矩形状のデバイス領域と、該行列の行方向において該デバイス領域を挟むように位置付けられている第一端材部及び第二端材部と該行列の列方向において該デバイス領域を挟むように位置付けられている第三端材部及び第四端材部とを含む環状の端材領域と、を備えるパッケージ基板を切削ブレードで切削することによって複数のチップを製造するチップの製造方法であって、該第一端材部を該デバイス領域から分離させて該デバイス領域の該行方向における一端を露出させるように、該デバイス領域と該第一端材部との境界に沿って該パッケージ基板を該切削ブレードで切削する第一分離ステップと、該第三端材部を該デバイス領域から分離させて該デバイス領域の該列方向における一端を露出させるように、該デバイス領域と該第三端材部との境界に沿って該パッケージ基板を該切削ブレードで切削する第二分離ステップと、該第一分離ステップの後に、該第二端材部が切削されないように、該複数のデバイスの境界のうち該行方向に沿った複数の行方向伸長部のそれぞれにおいて該デバイス領域の該行方向における該一端から他端まで該デバイス領域を該切削ブレードで切削する第一デバイス領域切削ステップと、該第二分離ステップの後に、該第四端材部が切削されないように、該複数のデバイスの境界のうち該列方向に沿った複数の列方向伸長部のそれぞれにおいて該デバイス領域の該列方向における該一端から他端までデバイス領域を該切削ブレードで切削する第二デバイス領域切削ステップと、該第一デバイス領域切削ステップ及び該第二デバイス領域切削ステップの後に、該第二端材部及び該第四端材部を該デバイス領域から分離させて該デバイス領域を個片化するように、該デバイス領域と該第二端材部との境界に沿って該パッケージ基板を該切削ブレードで切削し、かつ、該デバイス領域と該第四端材部との境界に沿って該パッケージ基板を該切削ブレードで切削する第三分離ステップと、を備えるチップの製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明においては、複数のデバイスの境界に沿ったデバイス領域の切削ブレードによる切削(すなわち、第一デバイス領域切削ステップ及び第二デバイス領域切削ステップ)が、残存する第二端材部又は第四端材部を切削しないように、デバイス領域のうち第二端材部又は第四端材部から遠い側から近い側に向かって行われる。
【0012】
この場合、切削ブレードがパッケージ基板を切り抜けることがない。すなわち、この場合、パッケージ基板の切削が終了するタイミングにおいて、加工点がパッケージ基板の外周に含まれる点と重なることなく、その内側に存在することになる。
【0013】
そのため、本発明においては、切削ブレードがパッケージ基板を切り抜ける際のぶれに起因したチッピングの発生が防止され、パッケージ基板から製造されるチップの歩留まりの低下を抑制することが可能である。
【0014】
また、本発明においては、端材領域を横断するような切削ブレードによる切削を行うことなく、端材領域がデバイス領域から分離される。そのため、本発明においては、切削ブレードの摩耗を抑制するとともに、細分化された端材の飛散を防止することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、パッケージ基板の一例を模式的に示す平面図である。
【
図2】
図2は、パッケージ基板を切削ブレードによって切削するための切削装置の一例を模式的に示す斜視図である。
【
図3】
図3は、
図2に示される切削装置のテーブル及び治具を模式的に示す斜視図である。
【
図4】
図4は、
図2に示される切削装置の切削ブレード等を模式的に示す斜視図である。
【
図5】
図5は、
図2に示される切削装置において
図1に示されるパッケージ基板から複数のチップを製造するチップの製造方法の一例を模式的に示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、
図5に示されるチップの製造方法に含まれる第一分離ステップ後のパッケージ基板を模式的に示す平面図である。
【
図7】
図7は、
図5に示されるチップの製造方法に含まれる第二分離ステップ後のパッケージ基板を模式的に示す平面図である。
【
図8】
図8は、
図5に示されるチップの製造方法に含まれる第一デバイス領域切削ステップ後のパッケージ基板を模式的に示す平面図である。
【
図9】
図9は、
図5に示されるチップの製造方法に含まれる第二デバイス領域切削ステップ後のパッケージ基板を模式的に示す平面図である。
【
図10】
図10は、
図5に示されるチップの製造方法に含まれる第三分離ステップにおいて製造される複数のチップを模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
図1は、パッケージ基板の一例を模式的に示す平面図である。
図1に示されるパッケージ基板11は、矩形状のデバイス領域13と、デバイス領域13を囲繞する環状の端材領域15と、を備える。
【0017】
デバイス領域13においては、複数のデバイス17が行列状に配設されている。具体的には、デバイス領域13には、行列の行方向においてn(
図1においては、8)個のデバイス17が並び、かつ、列方向においてm(
図1においては、4)個のデバイス17が並ぶようにn×m(
図1においては、32)個のデバイス17が配設されている。
【0018】
すなわち、複数のデバイス17の境界は、格子状に延在する。具体的には、この境界は、行方向に沿った(m―1)個の部分(行方向伸長部)と、列方向に沿った(n-1)個の部分(列方向伸長部)と、を含む。
【0019】
また、各デバイス17の周囲には、デバイス17に含まれる電極にそれぞれが接続されている複数の導電体19が配設されている。なお、導電体19は、パッケージ基板11から複数のチップを製造する際に分断され、各チップに残存する部分が当該チップの端子として機能する。
【0020】
端材領域15は、行方向においてデバイス領域13を挟むように位置付けられている第一端材部15a及び第二端材部15bと、列方向においてデバイス領域13を挟むように位置付けられている第三端材部15c及び第四端材部15dと、を含む。また、第一端材部15a乃至第四端材部15dのそれぞれには、デバイス領域13の位置を示すためのマーカ21が形成されている。
【0021】
図2は、パッケージ基板11を切削ブレードによって切削するための切削装置の一例を模式的に示す斜視図である。なお、
図2に示されるX軸方向及びY軸方向は、水平面上において互いに直交する方向であり、Z軸方向は、X軸方向及びY軸方向のそれぞれと直交する方向(鉛直方向)である。
【0022】
図2に示される切削装置2は、各構成要素を支持する基台4を備える。この基台4の上面には、X軸方向に沿って延在する窪み4aが形成されている。そして、窪み4aの内側には、平板状のテーブルカバー6と、テーブルカバー6の移動に伴って伸縮する蛇腹状の防塵防滴カバー8と、が設けられている。
【0023】
また、テーブルカバー6の上方には、直方体状のテーブル10が設けられている。また、テーブル10の上部には、パッケージ基板11を保持するための直方体状の治具12が装着されている。
図3は、テーブル10及び治具12を模式的に示す斜視図である。
【0024】
治具12の上面には、パッケージ基板11を保持する際に複数のデバイス17とそれぞれ重なる複数のデバイス領域支持用凸部14が行列状に配設されている。換言すると、治具12の上面には、パッケージ基板11を保持する際に複数のデバイス17の境界と重なる格子状の凹部が形成されている。なお、この凹部の底面は、その高さが概ね一定である。そして、複数のデバイス領域支持用凸部14のそれぞれには、その上面において開口する連通路14aが形成されている。
【0025】
さらに、複数のデバイス領域支持用凸部14の周囲には、パッケージ基板11を保持する際に端材領域15と重なる複数の端材領域支持用凸部16が配設されている。そして、複数のデバイス領域支持用凸部14と複数の端材領域支持用凸部16との間に存在する凹部は、パッケージ基板11を保持する際にデバイス領域13と端材領域15との境界と重なり、また、その底面の高さが概ね一定である。
【0026】
なお、複数の端材領域支持用凸部16は、パッケージ基板11を保持する際に、Z軸方向において、複数のデバイス17の境界(すなわち、複数の行方向伸長部及び複数の列方向伸長部のそれぞれ)から延伸する仮想の領域と重ならないように配設されている。
【0027】
また、テーブル10の内部には、吸引源に連通する連通路が形成されている。そして、この連通路は、治具12の複数のデバイス領域支持用凸部14のそれぞれに形成されている連通路14aと連通する。すなわち、連通路14aは、テーブル10の内部に形成されている連通路を介して吸引源に連通する。
【0028】
また、テーブル10は、窪み4aの内側に設けられているX軸方向移動機構(不図示)に接続されている。このX軸方向移動機構は、例えば、ボールねじと、このボールねじに接続されているモータと、を含む。そして、このX軸方向移動機構を動作させると、テーブル10がX軸方向に沿って移動する。さらに、この移動に伴って、テーブルカバー6がX軸方向に沿って移動するとともに防塵防滴カバー8が伸縮する。
【0029】
また、テーブル10は、窪み4aの内側に設けられている回転駆動源(不図示)に接続されている。この回転駆動源は、例えば、プーリと、このプーリに連結されているモータと、を含む。そして、この回転駆動源を動作させると、テーブル10の上面の中心を通り、かつ、Z軸方向に沿った直線を回転軸としてテーブル10が回転する。
【0030】
基台4の上面のうち窪み4a近傍の領域には、支持構造18が設けられている。この支持構造18は、基台4の上面から立設する立設部18aと、窪み4aを渡るように立設部18aの上端部からY軸方向に沿って延在する腕部18bと、を有する。そして、腕部18bの前面側には、Y軸方向移動機構20が設けられている。
【0031】
このY軸方向移動機構20は、腕部18bの前面に固定され、かつ、Y軸方向に沿って延在する一対のY軸ガイドレール22を有する。そして、一対のY軸ガイドレール22の前面側には、一対のY軸ガイドレール22に沿ってスライド可能な態様でY軸移動プレート24が設けられている。
【0032】
また、一対のY軸ガイドレール22の間には、Y軸方向に沿って延在するY軸ねじ軸26が配置されている。このY軸ねじ軸26の一端部には、Y軸ねじ軸26を回転させるためのモータ(不図示)が接続されている。そして、Y軸ねじ軸26の螺旋状の溝が形成された表面には、回転するY軸ねじ軸26の表面を転がる多数のボールを収容するナット(不図示)が設けられ、ボールねじが構成されている。
【0033】
すなわち、Y軸ねじ軸26が回転すると、多数のボールがナット内を循環して、ナットがY軸方向に沿って移動する。また、このナットは、Y軸移動プレート24の後面側に固定されている。そのため、Y軸ねじ軸26の一端部に連結されているモータでY軸ねじ軸26を回転させれば、ナットとともにY軸移動プレート24がY軸方向に沿って移動する。
【0034】
Y軸移動プレート24の前面側には、Z軸方向移動機構28が設けられている。このZ軸方向移動機構28は、Y軸移動プレート24の前面に固定され、かつ、Z軸方向に沿って延在する一対のZ軸ガイドレール30を有する。そして、一対のZ軸ガイドレール30の前面側には、一対のZ軸ガイドレール30に沿ってスライド可能な態様でZ軸移動プレート32が接続されている。
【0035】
また、一対のZ軸ガイドレール30の間には、Z軸方向に沿って延在するZ軸ねじ軸34が配置されている。このZ軸ねじ軸34の一端部(上端部)には、Z軸ねじ軸34を回転させるためのモータ36が接続されている。そして、Z軸ねじ軸34の螺旋状の溝が形成された表面には、回転するZ軸ねじ軸34の表面を転がる多数のボールを収容するナット(不図示)が設けられ、ボールねじが構成されている。
【0036】
すなわち、Z軸ねじ軸34が回転すると、多数のボールがナット内を循環して、ナットがZ軸方向に沿って移動する。また、このナットは、Z軸移動プレート32の後面側に固定されている。そのため、モータ36でZ軸ねじ軸34を回転させれば、ナットとともにZ軸移動プレート32がZ軸方向に沿って移動する。
【0037】
Z軸移動プレート32の下部には、切削ユニット38が固定されている。この切削ユニット38は、Y軸方向に沿って延在する筒状のスピンドルハウジング40と、スピンドルハウジング40から露出した切削ブレード42と、を有する。
図4は、切削ブレード42等を模式的に示す斜視図である。
【0038】
切削ユニット38のスピンドルハウジング40には、Y軸方向に沿って延在する円柱状のスピンドル44が収容されている。このスピンドル44は、回転可能な態様でスピンドルハウジング40によって支持される。そして、スピンドル44の先端部はスピンドルハウジング40の外に突出し、この先端部には環状の切削ブレード42が装着されている。
【0039】
なお、この切削ブレード42は、例えば、ダイヤモンド又は立方晶窒化ホウ素(cBN:cubic Boron Nitride)等でなる砥粒がニッケル等の結合材によって固定された電鋳砥石によって構成される切刃を含む。さらに、スピンドル44の基端部は、スピンドルハウジング40に内蔵されるモータに接続されている。
【0040】
そして、このモータを動作させると、Y軸方向に沿った直線を回転軸としてスピンドル44とともに切削ブレード42が回転する。なお、切削ブレード42は、スピンドル44の回転軸が切削ブレード42の中心を通るようにスピンドル44に装着されている。
【0041】
また、Y軸ねじ軸26の一端部に接続されているモータを動作させると、切削ユニット38がY軸方向に沿って移動する。また、Z軸ねじ軸34の一端部に接続されているモータ36を動作させると、切削ユニット38がZ軸方向に沿って移動する。
【0042】
また、
図2に示されるように、切削ユニット38の側方には撮像ユニット46が設けられている。この撮像ユニット46は、例えば、対物レンズと、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサ又はCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサ等の撮像素子と、を含み、その下方に存在する構造物を撮像する。
【0043】
図5は、切削装置2においてパッケージ基板11を切削ブレード42によって切削することによって複数のチップを製造するチップの製造方法の一例を模式的に示すフローチャートである。この方法においては、まず、第一端材部15aをデバイス領域13から分離させてデバイス領域13の行方向における一端を露出させる(第一分離ステップS1)。
【0044】
この第一分離ステップS1においては、まず、複数のデバイス17が複数のデバイス領域支持用凸部14にそれぞれ重なるようにパッケージ基板11が治具12に置かれた状態で、複数のデバイス領域支持用凸部14のそれぞれに形成されている連通路14aと連通する吸引源を動作させる。これにより、治具12を介してテーブル10においてパッケージ基板11が保持される。
【0045】
次いで、複数のデバイス17が配列されている行列の行方向がY軸方向と平行になり、かつ、列方向がX軸方向と平行になるようにテーブル10を回転させる。次いで、平面視において切削ブレード42からみてデバイス領域13と第一端材部15aとの境界がX軸方向に位置付けられるように、切削ユニット38をY軸方向に沿って移動させる。
【0046】
次いで、パッケージ基板11の下面よりも低く、かつ、治具12の上面のうちデバイス領域13と第一端材部15aとの境界と重なる領域(具体的には、複数のデバイス領域支持用凸部14と複数の端材領域支持用凸部16との間に存在する凹部の底面)よりも高い位置に切削ブレード42の下端が位置付けられるように、切削ユニット38をZ軸方向に沿って移動させる。
【0047】
次いで、切削ブレード42を回転させるようにスピンドル44の基端部に接続されているモータを動作させる。次いで、切削ブレード42を回転させたまま、パッケージ基板11が切削ブレード42を通り過ぎるようにテーブル10をX軸方向に沿って移動させる。これにより、第一分離ステップS1が完了する。
【0048】
図6は、第一分離ステップS1後のパッケージ基板11を模式的に示す平面図である。第一分離ステップS1においては、デバイス領域13と第一端材部15aとの境界においてパッケージ基板11を分断するように切削ブレード42がパッケージ基板11を切削する。これにより、第一端材部15aがデバイス領域13から分離されるとともにデバイス領域13の行方向における一端が露出される。
【0049】
第一分離ステップS1の後には、第三端材部15cをデバイス領域13から分離させてデバイス領域13の列方向における一端を露出させる(第二分離ステップS2)。この第二分離ステップS2においては、まず、パッケージ基板11の上面よりも高い位置に切削ブレード42の下端が位置付けられるように切削ユニット38を上昇させるとともに、切削ブレード42の回転を停止させるようにスピンドル44の基端部に接続されているモータの動作を停止させる。
【0050】
次いで、平面視において切削ブレード42からみてテーブル10がX軸方向に位置付けられるようにテーブル10をX軸方向に沿って移動させる。次いで、複数のデバイス17が配列されている行列の行方向がX軸方向と平行になり、かつ、列方向がY軸方向と平行になるとともに、デバイス領域13が第二端材部15bよりも切削ブレード42に近接するようにテーブル10を回転させる。
【0051】
次いで、平面視において切削ブレード42からみてデバイス領域13と第三端材部15cとの境界がX軸方向に位置付けられるように、切削ユニット38をY軸方向に沿って移動させる。次いで、パッケージ基板11の下面よりも低く、かつ、治具12の上面のうちデバイス領域13と第三端材部15cとの境界と重なる領域よりも高い位置に切削ブレード42の下端が位置付けられるように、切削ユニット38を下降させる。
【0052】
次いで、切削ブレード42を回転させるようにスピンドル44の基端部に接続されているモータを動作させる。次いで、切削ブレード42を回転させたまま、パッケージ基板11が切削ブレード42を通り過ぎるようにテーブル10をX軸方向に沿って移動させる。これにより、第二分離ステップS2が完了する。
【0053】
図7は、第二分離ステップS2後のパッケージ基板11を模式的に示す平面図である。第二分離ステップS2においては、デバイス領域13と第三端材部15cとの境界においてパッケージ基板11を分断するように切削ブレード42がパッケージ基板11を切削する。これにより、第三端材部15cがデバイス領域13から分離されるとともにデバイス領域13の列方向における一端が露出される。
【0054】
第二分離ステップS2の後には、第二端材部15bが切削されないように、複数のデバイス17の境界のうち行方向に沿った複数の行方向伸長部のそれぞれにおいてデバイス領域13の行方向における一端から他端までデバイス領域13を切削する(第一デバイス領域切削ステップS3)。
【0055】
この第一デバイス領域切削ステップS3においては、まず、パッケージ基板11の上面よりも高い位置に切削ブレード42の下端が位置付けられるように切削ユニット38を上昇させるとともに、切削ブレード42の回転を停止させるようにスピンドル44の基端部に接続されているモータの動作を停止させる。
【0056】
次いで、平面視において切削ブレード42からみてテーブル10がX軸方向に位置付けられるようにテーブル10をX軸方向に沿って移動させる。次いで、平面視において切削ブレード42からみて複数の行方向伸長部のいずれかがX軸方向に位置付けられるように、切削ユニット38をY軸方向に沿って移動させる。
【0057】
次いで、パッケージ基板11の下面よりも低く、かつ、治具12の上面のうち当該行方向伸長部と重なる領域(具体的には、複数のデバイス領域支持用凸部14の間に存在する凹部の底面)よりも高い位置に切削ブレード42の下端が位置付けられるように、切削ユニット38を下降させる。次いで、切削ブレード42を回転させるようにスピンドル44の基端部に接続されているモータを動作させる。
【0058】
次いで、切削ブレード42を回転させたまま、切削ブレード42による切削の加工点がデバイス領域13の行方向における他端に至るまでテーブル10をX軸方向に沿って移動させる。これにより、当該行方向伸長部においてパッケージ基板11が切削されて、パッケージ基板11を貫通する貫通路が形成される。
【0059】
さらに、残りの行方向伸長部のそれぞれにおいてパッケージ基板11を貫通する貫通路が形成されるように上述した動作を繰り返す。これにより、第一デバイス領域切削ステップS3が完了する。
【0060】
図8は、第一デバイス領域切削ステップS3後のパッケージ基板11を模式的に示す平面図である。第一デバイス領域切削ステップS3においては、複数のデバイス17の境界に含まれる複数の行方向伸長部のそれぞれにおいて行方向貫通路13aを形成するように切削ブレード42がデバイス領域13を切削する。これにより、複数のデバイス17のうち列方向において隣接するものが分離される。
【0061】
なお、行方向貫通路13aの形成は、
図8に示される切削方向に沿って加工点を移動させながら行われる。そのため、各行方向貫通路13aの形成が完了するタイミングにおいては、加工点がパッケージ基板11の内側、具体的には、デバイス領域13と第二端材部15bとの境界に存在することになる。
【0062】
第一デバイス領域切削ステップS3の後には、第四端材部15dが切削されないように、複数のデバイス17の境界のうち列方向に沿った複数の列方向伸長部のそれぞれにおいてデバイス領域13の列方向における一端から他端までデバイス領域13を切削する(第二デバイス領域切削ステップS4)。
【0063】
この第二デバイス領域切削ステップS4においては、まず、パッケージ基板11の上面よりも高い位置に切削ブレード42の下端が位置付けられるように切削ユニット38を上昇させるとともに、切削ブレード42の回転を停止させるようにスピンドル44の基端部に接続されているモータの動作を停止させる。
【0064】
次いで、平面視において切削ブレード42からみてテーブル10がX軸方向に位置付けられるようにテーブル10をX軸方向に沿って移動させる。次いで、複数のデバイス17が配列されている行列の行方向がY軸方向と平行になり、かつ、列方向がX軸方向と平行になるとともに、デバイス領域13が第四端材部15dよりも切削ブレード42に近接するようにテーブル10を回転させる。
【0065】
次いで、平面視において切削ブレード42からみて複数の列方向伸長部のいずれかがX軸方向に位置付けられるように、切削ユニット38をY軸方向に沿って移動させる。次いで、パッケージ基板11の下面よりも低く、かつ、治具12の上面のうち当該列方向伸長部と重なる領域よりも高い位置に切削ブレード42の下端が位置付けられるように、切削ユニット38を下降させる。
【0066】
次いで、切削ブレード42を回転させるようにスピンドル44の基端部に接続されているモータを動作させる。次いで、切削ブレード42を回転させたまま、切削ブレード42による切削の加工点がデバイス領域13の列方向における他端に至るまでテーブル10をX軸方向に沿って移動させる。これにより、当該列方向伸長部においてパッケージ基板11が切削されて、パッケージ基板11を貫通する貫通路が形成される。
【0067】
さらに、残りの列方向伸長部のそれぞれにおいてパッケージ基板11を貫通する貫通路が形成されるように上述した動作を繰り返す。これにより、第二デバイス領域切削ステップS4が完了する。
【0068】
図9は、第二デバイス領域切削ステップS4後のパッケージ基板11を模式的に示す平面図である。第二デバイス領域切削ステップS4においては、複数のデバイス17の境界に含まれる複数の列方向伸長部のそれぞれにおいて列方向貫通路13bを形成するように切削ブレード42がデバイス領域13を切削する。これにより、複数のデバイス17のうち行方向において隣接するものが分離される。
【0069】
なお、列方向貫通路13bの形成は、
図9に示される切削方向に沿って加工点を移動させながら行われる。そのため、各列方向貫通路13bの形成が完了するタイミングにおいては、加工点がパッケージ基板11の内側、具体的には、デバイス領域13と第四端材部15dとの境界に存在することになる。
【0070】
第二デバイス領域切削ステップS4の後には、第二端材部15b及び第四端材部15dをデバイス領域13から分離させて複数のチップを製造する(第三分離ステップS5)。この第三分離ステップS5においては、まず、パッケージ基板11の上面よりも高い位置に切削ブレード42の下端が位置付けられるように切削ユニット38を上昇させるとともに、切削ブレード42の回転を停止させるようにスピンドル44の基端部に接続されているモータの動作を停止させる。
【0071】
次いで、平面視において切削ブレード42からみてテーブル10がX軸方向に位置付けられるようにテーブル10をX軸方向に沿って移動させる。次いで、平面視において切削ブレード42からみてデバイス領域13と第二端材部15bとの境界がX軸方向に位置付けられるように、切削ユニット38をY軸方向に沿って移動させる。
【0072】
次いで、パッケージ基板11の下面よりも低く、かつ、治具12の上面のうちデバイス領域13と第二端材部15bとの境界と重なる領域よりも高い位置に切削ブレード42の下端が位置付けられるように、切削ユニット38を下降させる。次いで、切削ブレード42を回転させるようにスピンドル44の基端部に接続されているモータを動作させる。
【0073】
次いで、切削ブレード42を回転させたまま、パッケージ基板11が切削ブレード42を通り過ぎるようにテーブル10をX軸方向に沿って移動させる。これにより、デバイス領域13と第二端材部15bとの境界においてパッケージ基板11を分断するように切削ブレード42によってパッケージ基板11が切削される。
【0074】
次いで、パッケージ基板11の上面よりも高い位置に切削ブレード42の下端が位置付けられるように切削ユニット38を上昇させるとともに、切削ブレード42の回転を停止させるようにスピンドル44の基端部に接続されているモータの動作を停止させる。次いで、平面視において切削ブレード42からみてテーブル10がX軸方向に位置付けられるようにテーブル10をX軸方向に沿って移動させる。
【0075】
次いで、複数のデバイス17が配列されている行列の行方向がX軸方向と平行になり、かつ、列方向がY軸方向と平行になるようにテーブル10を回転させる。次いで、平面視において切削ブレード42からみてデバイス領域13と第四端材部15dとの境界がX軸方向に位置付けられるように、切削ユニット38をY軸方向に沿って移動させる。
【0076】
次いで、パッケージ基板11の下面よりも低く、かつ、治具12の上面のうちデバイス領域13と第四端材部15dとの境界と重なる領域よりも高い位置に切削ブレード42の下端が位置付けられるように、切削ユニット38を下降させる。次いで、切削ブレード42を回転させるようにスピンドル44の基端部に接続されているモータを動作させる。
【0077】
次いで、切削ブレード42を回転させたまま、パッケージ基板11が切削ブレード42を通り過ぎるようにテーブル10をX軸方向に沿って移動させる。これにより、デバイス領域13と第二端材部15bとの境界においてパッケージ基板11を分断するように切削ブレード42によってパッケージ基板11が切削される。
【0078】
以上によって、第三分離ステップS5が完了する。すなわち、
図5に示されるチップの製造方法が完了してパッケージ基板11から複数のチップが製造される。
図10は、第三分離ステップS5において製造される複数のチップを模式的に示す平面図である。
【0079】
第三分離ステップS5においては、デバイス領域13と第二端材部15b及び第四端材部15dとの境界においてパッケージ基板11を分断するように切削ブレード42がパッケージ基板11を切削する。これにより、第二端材部15b及び第四端材部15dがデバイス領域13から分離されるとともにデバイス領域13が個片化される。その結果、パッケージ基板11から複数のチップ23が製造される。
【0080】
図5に示されるチップの製造方法においては、複数のデバイス17の境界に沿ったデバイス領域13の切削ブレード42による切削(すなわち、第一デバイス領域切削ステップS3及び第二デバイス領域切削ステップS4)が、残存する第二端材部15b又は第四端材部15dを切削しないように、デバイス領域13のうち第二端材部15b又は第四端材部15dから遠い側から近い側に向かって行われる。
【0081】
この場合、切削ブレード42がパッケージ基板11を切り抜けることがない。すなわち、この場合、パッケージ基板11の切削が終了するタイミングにおいて、加工点がパッケージ基板11の外周に含まれる点と重なることなく、その内側に存在することになる。
【0082】
そのため、この方法においては、切削ブレード42がパッケージ基板11を切り抜ける際の切削ブレード42のぶれに起因したチッピングの発生が防止され、パッケージ基板11から製造されるチップ23の歩留まりの低下を抑制することが可能である。
【0083】
また、この方法においては、端材領域15を横断するような切削ブレード42による切削を行うことなく、端材領域15がデバイス領域13から分離される。そのため、この方法においては、切削ブレード42の摩耗が抑制されるとともに、細分化された端材の飛散を防止することが可能である。
【0084】
なお、上述した内容は本発明の一態様であって、本発明は上述した内容に限定されない。例えば、本発明においては、第二分離ステップS2の後に第一分離ステップS1が実施されてもよい。また、本発明の第三分離ステップS5においては、第四端材部15dがデバイス領域13から分離されてから第二端材部15bがデバイス領域13から分離されてもよい。
【0085】
また、本発明においては、第一分離ステップS1の後かつ第二分離ステップS2の前に第一デバイス領域切削ステップS3が実施されてもよい。あるいは、本発明においては、第二分離ステップS2の後かつ第一分離ステップS1の前に第二デバイス領域切削ステップS4が実施されてもよい。
【0086】
その他、上述した実施形態にかかる構造及び方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。
【符号の説明】
【0087】
2 :切削装置
4 :基台(4a:窪み)
6 :テーブルカバー
8 :防塵防滴カバー
10:テーブル
11:パッケージ基板
12:治具
13:デバイス領域(13a:行方向貫通路、13b:列方向貫通路)
14:デバイス領域支持用凸部(14a:連通路)
15:端材領域(15a:第一端材部、15b:第二端材部)
(15c:第三端材部、15d:第四端材部)
16:端材領域支持用凸部
17:デバイス
18:支持構造(18a:立設部、18b:腕部)
19:導電体
20:Y軸方向移動機構
21:マーカ
22:Y軸ガイドレール
23:チップ
24:Y軸移動プレート
26:Y軸ねじ軸
28:Z軸方向移動機構
30:Z軸ガイドレール
32:Z軸移動プレート
34:Z軸ねじ軸
36:モータ
38:切削ユニット
40:スピンドルハウジング
42:切削ブレード
44:スピンドル
46:撮像ユニット