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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024169072
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】放射線検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/2204 20180101AFI20241128BHJP
   G01N 23/223 20060101ALI20241128BHJP
   G01T 7/00 20060101ALI20241128BHJP
   G01T 1/24 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
G01N23/2204
G01N23/223
G01T7/00 A
G01T1/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023086260
(22)【出願日】2023-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】000155023
【氏名又は名称】株式会社堀場製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】村田 駿介
【テーマコード(参考)】
2G001
2G188
【Fターム(参考)】
2G001AA01
2G001BA04
2G001CA01
2G001CA03
2G001DA03
2G001DA06
2G001EA03
2G001JA14
2G001KA01
2G001PA07
2G001QA02
2G001SA06
2G188BB03
2G188CC28
2G188DD10
(57)【要約】
【課題】磁性を有する試料からの放射線を容易に検出することができる放射線検出装置を提供する。
【解決手段】放射線検出装置は、試料が載置される試料台と、前記試料台に載置された試料からの放射線を検出する放射線検出器と、磁界を発生させる第1磁界発生部を有しており、前記試料台及び前記放射線検出器の間の位置に配置された電子トラップとを備え、前記試料台は、載置された磁性を有する試料を吸引する磁界を発生させる第2磁界発生部を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料が載置される試料台と、
前記試料台に載置された試料からの放射線を検出する放射線検出器と、
磁界を発生させる第1磁界発生部を有しており、前記試料台及び前記放射線検出器の間の位置に配置された電子トラップとを備え、
前記試料台は、載置された磁性を有する試料を吸引する磁界を発生させる第2磁界発生部を有すること
を特徴とする放射線検出装置。
【請求項2】
前記第2磁界発生部が発生させる磁界は、前記試料台に試料が載置される位置において、前記第1磁界発生部が発生させる磁界よりも強いこと
を特徴とする請求項1に記載の放射線検出装置。
【請求項3】
前記試料台は、載置される試料と前記第2磁界発生部との間に位置する非磁性部材を更に有すること
を特徴とする請求項1又は2に記載の放射線検出装置。
【請求項4】
上面が開放された筒状であり、粉末の試料が収納された状態で前記試料台に載置される試料ケースを更に備えること
を特徴とする請求項1乃至3の何れか一つに記載の放射線検出装置。
【請求項5】
内部が減圧される減圧室を更に備え、
前記試料台は、前記減圧室の内部に配置されていること
を特徴とする請求項1乃至4の何れか一つに記載の放射線検出装置。
【請求項6】
前記試料台に載置された試料へX線が照射され、
前記放射線検出器は、前記試料から発生した蛍光X線を検出すること
を特徴とする請求項1乃至5の何れか一つに記載の放射線検出装置。
【請求項7】
前記試料台に載置された試料へ放射線を照射する照射部と、
前記放射線検出器が検出した放射線のスペクトルを生成するスペクトル生成部と、
前記スペクトル生成部が生成したスペクトルを表示する表示部と
を更に備えることを特徴とする請求項1乃至6の何れか一つに記載の放射線検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
放射線分析は、X線等の放射線を試料へ照射し、試料から発生する放射線を検出し、放射線の検出結果に基づいて試料の成分を分析する手法である。放射線分析を行う放射線分析装置は、試料が載置される試料台と、放射線検出器とを備える。試料台に載置された試料に放射線が照射され、試料から発生した放射線を放射線検出器で検出する。放射線検出器には、検出対象となる放射線以外に電子が入射することがある。このような電子は、ノイズの原因となる。放射線検出装置には、放射線検出器への電子の入射を防止するために、磁石を用いた電子トラップを放射線検出器の先端に備えたものがある。特許文献1には、電子トラップを備えた放射線検出装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-221504
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
放射線検出器は、試料から発生した放射線を高い効率で検出するために、試料台に近づけて使用される。磁石を用いた電子トラップが放射線検出器の先端に配置されている場合は、磁性を有する試料が電子トラップに吸引され、試料が移動し、試料からの放射線の検出が困難になることがある。
【0005】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、磁性を有する試料からの放射線を容易に検出することができる放射線検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一形態に係る放射線検出装置は、試料が載置される試料台と、前記試料台に載置された試料からの放射線を検出する放射線検出器と、磁界を発生させる第1磁界発生部を有しており、前記試料台及び前記放射線検出器の間の位置に配置された電子トラップとを備え、前記試料台は、載置された磁性を有する試料を吸引する磁界を発生させる第2磁界発生部を有することを特徴とする。
【0007】
本発明の一形態においては、試料が載置される試料台と試料から発生する放射線を検出する放射線検出器との間には、第1磁界発生部を有する電子トラップが配置されている。試料台は、第2磁界発生部を有する。試料が磁性体であり、第1磁界発生部が発生させる磁界が試料に作用する場合でも、試料は第2磁界発生部に吸引され、試料台から移動しない。
【0008】
本発明の一形態に係る放射線検出装置は、前記第2磁界発生部が発生させる磁界は、前記試料台に試料が載置される位置において、前記第1磁界発生部が発生させる磁界よりも強いことを特徴とする。
【0009】
本発明の一形態においては、試料が試料台に載置される位置において、第2磁界発生部が発生させる磁界は、第1磁界発生部が発生させる磁界よりも強い。このため、試料が磁性体であったとしても、試料は、第1磁界発生部には吸引されず、第2磁界発生部に吸引され、即ち、試料は試料台に吸引される。試料は試料台から移動しない。
【0010】
本発明の一形態に係る放射線検出装置は、前記試料台は、載置される試料と前記第2磁界発生部との間に位置する非磁性部材を更に有することを特徴とする。
【0011】
本発明の一形態においては、試料と第2磁界発生部との間には、非磁性部材が位置する。試料が第2磁界発生部に直接に接触することは無く、試料5を試料台から容易に除去することができる。特に、粉末の試料を試料台から容易に除去することができる。
【0012】
本発明の一形態に係る放射線検出装置は、上面が開放された筒状であり、粉末の試料が収納された状態で前記試料台に載置される試料ケースを更に備えることを特徴とする。
【0013】
本発明の一形態においては、上面が開放された筒状の試料ケースに粉末の試料が収納され、試料ケースが試料台に載置される。粉末の試料は、試料ケースに収納されることで、定量が可能である。
【0014】
本発明の一形態に係る放射線検出装置は、内部が減圧される減圧室を更に備え、前記試料台は、前記減圧室の内部に配置されていることを特徴とする。
【0015】
本発明の一形態においては、試料室は減圧室の内部に配置されている。減圧室の内部が減圧される際に、空気の流れによって粉末の試料が飛散し得る。粉末の試料が磁性体である場合は、第2磁界発生部によって粉末の試料が試料台に吸引されるので、粉末の試料の試料の飛散が防止される。
【0016】
本発明の一形態に係る放射線検出装置は、前記試料台に載置された試料へX線が照射され、前記放射線検出器は、前記試料から発生した蛍光X線を検出することを特徴とする。
【0017】
本発明の一形態においては、放射線検出装置は、試料へX線を照射し、試料から発生した蛍光X線を検出する。蛍光X線の検出結果に基づいて、試料の元素分析が行われ得る。
【0018】
本発明の一形態に係る放射線検出装置は、前記試料台に載置された試料へ放射線を照射する照射部と、前記放射線検出器が検出した放射線のスペクトルを生成するスペクトル生成部と、前記スペクトル生成部が生成したスペクトルを表示する表示部とを更に備えることを特徴とする。
【0019】
本発明の一形態においては、放射線検出装置は、試料から発生する放射線のスペクトルを生成し、生成したスペクトルを表示部に表示する。使用者は、試料から発生した放射線のスペクトルを確認することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明にあっては、試料が磁性体であったとしても、試料は試料台から移動しないので、磁性を有する試料からの放射線を容易に検出することが可能となる等、優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】放射線検出装置の機能構成例を示すブロック図である。
図2】試料台の例を示す模式的斜視図である。
図3】試料が載置された状態の試料台の例を示す模式的斜視図である。
図4】試料台の第1例を示す模式的な分解斜視図である。
図5】試料が載置された状態の試料台の第1例を示す模式的正面図である。
図6】試料台の第2例を示す模式的な分解斜視図である。
図7】試料が載置された状態の試料台の第2例を示す模式的正面図である。
図8】試料台の第3例を示す模式的な分解斜視図である。
図9】試料が載置された状態の試料台の第3例を示す模式的正面図である。
図10】試料台の第4例を示す模式的な分解斜視図である。
図11】粉末の試料を試料台に載置した形態の第1例を示す模式的斜視図である。
図12】粉末の試料を試料台に載置した形態の第2例を示す模式的斜視図である。
図13】試料ケースの例を示す模式的斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下本発明をその実施の形態を示す図面に基づき具体的に説明する。
図1は、放射線検出装置100の機能構成例を示すブロック図である。放射線検出装置100は、例えば蛍光X線分析装置である。放射線検出装置100は、試料5が載置される試料台1と、試料台1を移動させる移動ステージ25と、試料5に電子線又はX線等の放射線を照射する照射部24と、第1放射線検出器21と、第2放射線検出器22と、電子トラップ23とを備えている。移動ステージ25は、試料台1を保持し、試料台1をXYZの夫々の方向へ移動させる。移動ステージ25が試料台1を移動させることによって、試料5上で照射部24からの放射線が照射される部分が変更される。
【0023】
第1放射線検出器21は、試料台1よりも上側に配置されており、第2放射線検出器22は、移動ステージ25よりも下側に配置されている。照射部24から試料5へ放射線が照射され、試料5では蛍光X線等の特性X線が発生し、第1放射線検出器21は試料5から発生した特性X線を検出する。試料台1及び移動ステージ25には、貫通孔が形成されている。試料5は、貫通孔の上側に配置される。照射部24から試料5へ照射されて試料5を透過した放射線は、試料台1及び移動ステージ25の貫通孔を通過し、第2放射線検出器22で検出される。図1には、特性X線を含む放射線を矢印で示している。放射線検出装置100は、放射線を導くための図示しない光学系を備えていてもよい。
【0024】
第1放射線検出器21は、放射線が入射し、放射線に応じた信号を出力する放射線検出素子を有している。例えば、第1放射線検出器21は、半導体を用いた放射線検出素子を有している。例えば、第1放射線検出器21は、SDD(Silicon Drift Detector)である。第1放射線検出器21は、放射線検出素子を用いて、入射した特性X線を検出し、検出した特性X線に応じた信号を出力する。第1放射線検出器21は、半導体製以外の放射線検出素子を有していてもよい。第2放射線検出器22は、第1放射線検出器21と同様の構成となっている。なお、放射線検出装置100は、第2放射線検出器22を備えていない形態であってもよい。この形態では、試料台1及び移動ステージ25に貫通孔が形成されていなくてもよい
【0025】
電子トラップ23は、試料台1と第1放射線検出器21との間の位置に配置されている。電子トラップ23は、試料5から発生した特性X線が通過する通過路を有しており、特性X線は通過路を通過して第1放射線検出器21へ入射する。電子トラップ23は、第1磁界発生部231を有している。第1磁界発生部231は、電子トラップ23の通過路の途中に複数の永久磁石が互いに対向するように配置されることによって、構成されている。第1磁界発生部231は、電磁石を用いて構成されていてもよい。電子トラップ23は、第1磁界発生部231によって、通過路内に磁界を発生させる。
【0026】
試料5から発生する二次放射線として、特性X線以外に、電子が発生することがある。発生した電子が第1放射線検出器21へ入射した場合は、第1放射線検出器21が出力する信号にノイズが発生し、特性X線の検出精度が悪化する。電子トラップ23が通過路内に磁界を発生させている状態では、通過路内を移動する電子の移動方向が磁界によって曲げられる。このため、試料5から発生した電子は、第1放射線検出器21へ向かう途中で移動方向が曲げられ、第1放射線検出器21へ入射し難い。第1放射線検出器21へ入射する電子が低減され、第1放射線検出器21が出力する信号に発生するノイズが低減され、特性X線の検出精度の悪化が抑制される。
【0027】
放射線検出装置100は、減圧室3を備えている。減圧室3は、箱状であり、開閉可能な蓋部30を有する。蓋部30が閉鎖されることにより、減圧室3は密閉される。減圧室3の内部には、試料台1、第1放射線検出器21、第2放射線検出器22、電子トラップ23、照射部24及び移動ステージ25が配置されている。減圧室3には、真空ポンプ等の減圧部31が連結されている。減圧部31は、減圧室3の内部を減圧する。蓋部30が閉鎖された状態で減圧部31が動作することによって、減圧室3の内部は減圧される。なお、照射部24は、減圧室3の外部から、減圧室3の内部に配置された試料5へ放射線を照射する形態であってもよい。
【0028】
第1放射線検出器21には、第1信号処理部41が接続されており、第2放射線検出器22には、第2信号処理部42が接続されている。第1信号処理部41及び第2信号処理部42は、分析部43に接続されている。分析部43はコンピュータを用いて構成されている。分析部43には、液晶ディスプレイ又はELディスプレイ(Electroluminescent Display)等の表示部44が接続されている。放射線検出装置100が第2放射線検出器22を備えていない形態では、放射線検出装置100は、第2信号処理部42を備えていない。
【0029】
照射部24、移動ステージ25、減圧部31、第1信号処理部41、第2信号処理部42及び分析部43は、制御部45に接続されている。制御部45は、照射部24、移動ステージ25、減圧部31、第1信号処理部41、第2信号処理部42及び分析部43の動作を制御する。制御部45は、各部を制御するための演算を実行する演算部を含んだコンピュータを用いて構成されている。制御部45は、使用者の操作を受け付け、受け付けた操作に応じて放射線検出装置100の各部を制御する構成であってもよい。制御部45及び分析部43は、一体に構成されていてもよい。
【0030】
使用者は、蓋部30を開放し、試料5を試料台1に載置し、蓋部30を閉鎖する。制御部45の制御に応じて、減圧部31は減圧室3の内部を減圧し、移動ステージ25は、試料台1を移動させることによって、試料5の放射線を照射される部分の位置を調整する。減圧室3の内部が減圧された状態で、制御部45の制御に応じて、照射部24は、放射線を試料5へ照射する。試料5では特性X線が発生し、発生した特性X線は第1放射線検出器21へ入射する。第1放射線検出器21は、特性X線を検出し、検出した特性X線のエネルギーに応じた強度の信号を第1信号処理部41へ出力する。また、試料5を透過した放射線は、第2放射線検出器22へ入射する。第2放射線検出器22は、放射線を検出し、検出した放射線のエネルギーに応じた強度の信号を第2信号処理部42へ出力する。例えば、照射部24が試料5へ照射する放射線はX線であり、第1放射線検出器21は、試料5から発生した蛍光X線を検出する。
【0031】
第1信号処理部41は、第1放射線検出器21が出力した信号を受け付け、信号の強度を検出することにより、第1放射線検出器21が検出した特性X線のエネルギーに対応する信号値を検出する。第1信号処理部41は、信号値別に信号をカウントし、信号値とカウント数との関係を示すデータを分析部43へ出力する。同様に、第2信号処理部42は、第2放射線検出器22が検出した放射線のエネルギーに対応する信号値を検出し、信号値別に信号をカウントし、信号値とカウント数との関係を示すデータを分析部43へ出力する。
【0032】
分析部43は、第1信号処理部41及び第2信号処理部42が出力した信号値とカウント数との関係を示すデータを受け付ける。分析部43は、第1信号処理部41及び第2信号処理部42からのデータに基づいて、第1放射線検出器21へ入射した特性X線のスペクトル及び第2放射線検出器22へ入射した放射線のスペクトルを生成する。信号値は特性X線を含む放射線のエネルギーに対応し、カウント数は放射線を検出した回数に対応するので、信号値とカウント数との関係から、放射線のスペクトルが得られる。スペクトルは、放射線のエネルギーと強度との関係を示す。第1放射線検出器21又は第2放射線検出器22が出力した信号を信号値別にカウントする処理は、第1信号処理部41又は第2信号処理部42ではなく分析部43で行ってもよい。スペクトルの生成は第1信号処理部41又は第2信号処理部42で行われてもよい。分析部43は、スペクトルを表したスペクトルデータを記憶する。第1信号処理部41、第2信号処理部42及び分析部43は、スペクトル生成部に対応する。
【0033】
表示部44は、放射線のスペクトルを表示する。例えば、表示部44は、試料5から発生した特性X線のスペクトルを表示する。使用者は、特性X線のスペクトルを確認することができる。分析部43は、更に、放射線のスペクトルに基づいた情報処理を行ってもよい。例えば、分析部43は、試料5からの特性X線のスペクトルに基づいて、試料5に含まれる元素の定性分析又は定量分析を行う。第1放射線検出器21が蛍光X線を検出した場合は、蛍光X線のスペクトルに基づいて試料5の元素分析が行われ得る。
【0034】
図2は、試料台1の例を示す模式的斜視図である。試料台1は、全体として直方体状であり、上下方向に貫通孔11が形成されている。図3は、試料5が載置された状態の試料台1の例を示す模式的斜視図である。試料5は、貫通孔11の少なくとも一部を塞ぐように試料台1に載置される。
【0035】
図4は、試料台1の第1例を示す模式的な分解斜視図である。試料台1は、直方体の上面を構成する天板部12と、直方体の四方の側面を構成する角筒部13と、直方体の底面を構成する底板部14とを含んでいる。天板部12及び底板部14は、平面視で矩形の板状であり、貫通孔11が形成されている。天板部12は、非磁性体で構成されており、非磁性部材に対応する。角筒部13は、四角筒状である。下から底板部14、角筒部13及び天板部12が重なって試料台1が構成されている。なお、試料台1の形状は、平面視で円形であってもよく、矩形以外の多角形であってもよい。
【0036】
試料台1は、第2磁界発生部15を有している。第2磁界発生部15は、永久磁石を用いて構成されている。図4に示す第1例では、底板部14上に複数の永久磁石が配置されることによって、第2磁界発生部15が構成されている。図4には、底板部14に形成された貫通孔11の周囲に四つの永久磁石が配置されることによって第2磁界発生部15が構成された例を示している。永久磁石の数は、四よりも多くてもよく、少なくてもよい。
【0037】
図5は、試料5が載置された状態の試料台1の第1例を示す模式的正面図である。第2磁界発生部15は、試料台1の内部に配置されている。図5には、試料台1の内部に配置された第2磁界発生部15を破線で示している。試料5は、天板部12の表面に載置される。第2磁界発生部15と試料5との間には天板部12が位置している。天板部12は非磁性材で構成されているので、第2磁界発生部15が発生させる磁界は試料5に作用する。試料5が磁性を有する磁性体である場合は、磁界によって試料5は第2磁界発生部15に吸引される。
【0038】
図1に示すように、試料5よりも上側には、電子トラップ23が存在する。電子トラップ23が有する第1磁界発生部231が発生させる磁界は、試料5に作用する。第2磁界発生部15が存在せず、試料5が磁性体である場合は、試料5は、磁界によって第1磁界発生部231に吸引され、試料台1から移動することがあり得る。試料5が移動した場合は、試料5へ放射線を照射して特性X線を検出することが困難になる。
【0039】
本実施形態では、天板部12の表面、即ち試料5が試料台1に載置される位置において、第2磁界発生部15が発生させる磁界は、第1磁界発生部231が発生させる磁界よりも強い。このため、試料5が磁性体であったとしても、試料5は、第1磁界発生部231には吸引されず、第2磁界発生部15に吸引され、即ち、試料5は試料台1に吸引される。試料5は、試料台1から移動しない。従って、試料5が磁性体であったとしても、試料5へ放射線を照射し、試料5から発生した特性X線を第1放射線検出器21で容易に検出することができる。
【0040】
図6は、試料台1の第2例を示す模式的な分解斜視図である。底板部14上に環状の永久磁石が配置されることによって、第2磁界発生部15が構成されている。図6には、円環状の永久磁石が用いられた例を示しているが、永久磁石は角環状であってもよく、分断されていてもよい。図7は、試料5が載置された状態の試料台1の第2例を示す模式的正面図である。試料台1の内部に配置された第2磁界発生部15は破線で示されている。第2例においても、試料5が試料台1に載置される位置において、第2磁界発生部15が発生させる磁界は、第1磁界発生部231が発生させる磁界よりも強い。このため、試料5が磁性体であったとしても、試料5は、試料台1に吸引され、試料台1から移動しない。試料5へ放射線を照射し、試料5から発生した特性X線を容易に検出することができる。
【0041】
図8は、試料台1の第3例を示す模式的な分解斜視図である。角筒部13の内面に複数の永久磁石が設けられていることによって、第2磁界発生部15が構成されている。例えば、四面の内面の夫々に、永久磁石が設けられている。永久磁石の数は、四よりも多くてもよく、少なくてもよい。図9は、試料5が載置された状態の試料台1の第3例を示す模式的正面図である。試料台1の内部に配置された第2磁界発生部15は破線で示されている。第3例においても、試料5が試料台1に載置される位置において、第2磁界発生部15が発生させる磁界は、第1磁界発生部231が発生させる磁界よりも強い。このため、試料5が磁性体であったとしても、試料5は、試料台1に吸引され、試料台1から移動しない。試料5へ放射線を照射し、試料5から発生した特性X線を容易に検出することができる。
【0042】
図10は、試料台1の第4例を示す模式的な分解斜視図である。第4例は、放射線検出装置100が第2放射線検出器22を備えておらず、試料台1に貫通孔11が形成されていない形態である。底板部14上に板状の永久磁石が配置されることによって、第2磁界発生部15が構成されている。図6には、円板状の永久磁石が用いられた例を示しているが、永久磁石は角板状であってもよい。第4例においても、試料5が試料台1に載置される位置において、第2磁界発生部15が発生させる磁界は、第1磁界発生部231が発生させる磁界よりも強い。このため、試料5が磁性体であったとしても、試料5は、試料台1に吸引され、試料台1から移動しない。試料5へ放射線を照射し、試料5から発生した特性X線を容易に検出することができる。
【0043】
第2磁界発生部15の構成は、試料台1に載置された試料5を吸引することができる構成であれば、第1例~第4例に示した構成以外の構成であってもよい。例えば、天板部12の表面の裏側にある裏面に永久磁石が配置されていることによって、第2磁界発生部15が構成されていてもよい。天板部12の裏面に永久磁石が配置されていることにより、永久磁石が試料5に近く、磁界が強く、磁性を有する試料5が確実に試料台1に吸引される。以上に説明した例では、永久磁石を用いて第2磁界発生部15を構成した例を示したが、第2磁界発生部15は、電磁石を用いて構成されてもよい。
【0044】
図11は、粉末の試料5を試料台1に載置した形態の第1例を示す模式的斜視図である。試料台1の表面に、貫通孔11を跨いでシート16が張設され、シート16上に粉末の試料5が載置される。シート16は、非磁性材製であり、非磁性部材の一例である。シート16の代わりに、貫通孔11を跨いで非磁性材製の平板が配置され、当該平板上に粉末の試料5が載置されてもよい。載置された粉末の試料5に対して放射線が照射され、発生した特性X線が検出される。
【0045】
第2磁界発生部15が存在せず、粉末の試料5が磁性体である場合は、粉末の試料5は、第1磁界発生部231に吸引されて飛散し、減圧室3の内部が粉末の試料5で汚染される。また、減圧部31が減圧室3の内部を減圧する際に、空気の流れによって粉末の試料5が飛散し、減圧室3の内部が粉末の試料5で汚染される。本実施形態では、粉末の試料5が磁性体である場合は、第2磁界発生部15によって粉末の試料5が試料台1に吸引されるので、粉末の試料5の試料の飛散が防止され、減圧室3の内部が粉末の試料5で汚染されることが防止される。従って、減圧室3の内部を汚染させずに、粉末の試料5から発生した特性X線を検出することができる。
【0046】
粉末の試料5を更にシートで覆った場合は、粉末の試料5の飛散を防止できるものの、低エネルギーの特性X線がシートで遮蔽され、低エネルギーの特性X線の検出が困難になる。低エネルギーの特性X線の検出が困難になることによって、試料5に含まれる軽元素の分析が困難になる。本実施形態では、粉末の試料5が磁性体である場合は、粉末の試料5を覆うシートを必要としないので、粉末の試料5の試料の飛散を防止しながら、容易に軽元素の分析を行うことができる。粉末の試料5と第2磁界発生部15との間には、非磁性材製の天板部12又はシート16が存在するので、粉末の試料5が第2磁界発生部15に直接に接触することは無く、粉末の試料5を試料台1から容易に除去することができる。
【0047】
図12は、粉末の試料5を試料台1に載置した形態の第2例を示す模式的斜視図である。粉末の試料5は、試料ケース17に収納されている。図13は、試料ケース17の例を示す模式的斜視図である。試料ケース17は、有底筒状であり、上面は開放されている。試料ケース17の内容量は所定の値に定まっている。図12及び図13には、試料ケース17が円筒状である例を示したが、試料ケース17は角筒状であってもよい。
【0048】
粉末の試料5は、上から試料ケース17内へ流入され、試料ケース17に収納される。粉末の試料5を収納した試料ケース17は、試料台1に載置される。試料ケース17は、側面から突出した複数の突出部を有する。突出部が試料台1の上面に接触することによって、試料ケース17は、貫通孔11を跨ぐように、試料台1に載置される。試料ケース17に収納された粉末の試料5に対して上から放射線が照射され、発生した特性X線が検出される。
【0049】
粉末の試料5は、試料ケース17に収納されることで、定量が可能である。例えば、試料ケース17は内径が一定になっており、試料ケース17に粉末の試料5が収納された高さに応じて、試料ケース17に収納された粉末の試料5の量が計測され得る。計測された粉末の試料5の量と、検出された特性X線の強度とに応じて、試料5に含まれた成分の定量分析が可能となる。
【0050】
なお、放射線検出装置100は、移動ステージ25を備えていない形態であってもよい。放射線検出装置100は、照射部24から試料5へ照射する放射線の経路を移動させる形態であってもよい。放射線検出装置100は、照射部24を備えていない形態であってもよい。又は、放射線検出装置100は、特性X線以外の放射線を検出する形態であってもよい。
【0051】
本発明は上述した実施の形態の内容に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。即ち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0052】
各実施形態に記載した事項は相互に組み合わせることが可能である。また、特許請求の範囲に記載した独立請求項及び従属請求項は、引用形式に関わらず全てのあらゆる組み合わせにおいて、相互に組み合わせることが可能である。さらに、特許請求の範囲には他の2以上のクレームを引用するクレームを記載する形式(マルチクレーム形式)を用いているが、これに限るものではない。マルチクレームを少なくとも一つ引用するマルチクレーム(マルチマルチクレーム)を記載する形式を用いて記載してもよい。
【符号の説明】
【0053】
100 放射線検出装置
1 試料台
15 第2磁界発生部
17 試料ケース
21 第1放射線検出器
22 第2放射線検出器
23 電子トラップ
231 第1磁界発生部
3 減圧室
31 減圧部
41 第1信号処理部
42 第2信号処理部
43 分析部
44 表示部
5 試料
図1
図2
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