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特開2024-169093熱処理装置及び半導体基板の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024169093
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】熱処理装置及び半導体基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/26 20060101AFI20241128BHJP
【FI】
H01L21/26 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023086286
(22)【出願日】2023-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】312007423
【氏名又は名称】グローバルウェーハズ・ジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101878
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100187506
【弁理士】
【氏名又は名称】澤田 優子
(72)【発明者】
【氏名】角田 拓也
(72)【発明者】
【氏名】加藤 学
(72)【発明者】
【氏名】田村 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】須藤 治生
(57)【要約】
【課題】熱処理装置内における冷却媒体のリークを精度よく検知することによって、歩留まり低下、及び生産効率の低下を抑制する。
【解決手段】コントローラ70は、温度検出部50により検出された半導体基板Wの温度に基づき、複数のランプ30に印加するランプ電圧又はランプ電流を制御し、nを処理する半導体基板のロット順番を示す2以上の正の整数としたとき、前記複数のランプに印加される最大ランプ電圧又は最大ランプ電流に基づき、差分効果量(n)=(最大ランプ電圧または最大ランプ電流(n)-最大ランプ電圧または最大ランプ電流(n-1))/所定のロット範囲における最大ランプ電圧または最大ランプ電流の標準偏差により差分効果量(n)を算出し、前記差分効果量(n)が第一の閾値を越えた場合に、異常が発生したと判定する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の半導体基板にロット単位で連続して熱処理を行う熱処理装置であって、
前記半導体基板を加熱する複数のランプと、
前記複数のランプにランプ電圧を印加する電源と、
前記半導体基板の温度を検出する温度検出部と、
前記複数のランプに印加するランプ電圧又はランプ電流を制御し、前記熱処理装置の異常を検出するコントローラと、
を備え、
前記コントローラは、
前記温度検出部により検出された前記半導体基板の温度に基づき、前記複数のランプに印加するランプ電圧又はランプ電流を制御し、
nを処理する半導体基板のロット順番を示す2以上の正の整数としたとき、
前記複数のランプに印加される最大ランプ電圧又は最大ランプ電流に基づき、
差分効果量(n)=(最大ランプ電圧または最大ランプ電流(n)-最大ランプ電圧または最大ランプ電流(n-1))/所定のロット範囲における最大ランプ電圧または最大ランプ電流の標準偏差
により差分効果量(n)を算出し、
前記差分効果量(n)が第一の閾値を越えた場合に、異常が発生したと判定することを特徴とする熱処理装置。
【請求項2】
前記熱処理装置の異常を表示または音声により警告する警告部を有し、
前記コントローラにより異常が発生したと判定されると前記警告部により警告することを特徴とする請求項1に記載された熱処理装置。
【請求項3】
前記第一の閾値は1.2以上3.0以下であることを特徴とする請求項1に記載された熱処理装置。
【請求項4】
複数の半導体基板にロット単位で連続して熱処理を行う熱処理装置であって、
前記半導体基板を加熱する複数のランプと、
前記複数のランプにランプ電圧を印加する電源と、
前記半導体基板の温度を検出する温度検出部と、
前記複数のランプに印加するランプ電圧を制御し、前記熱処理装置の異常を検出するコントローラと、
を備え、
前記コントローラは、
前記温度検出部が検出した検出された前記半導体基板の温度に基づき、前記複数のランプに印加するランプ電圧又はランプ電流を制御し、
nを処理する半導体基板のロット順番を示す2以上の正の整数としたとき、
前記複数のランプに印加される最大ランプ電圧又は最大ランプ電流に基づき、
差分効果量(n)=(最大ランプ電圧または最大ランプ電流(n)-最大ランプ電圧または最大ランプ電流(n-1))/所定のロット範囲における最大ランプ電圧または最大ランプ電流の標準偏差
により差分効果量(n)を算出し、さらに、
二階差分効果量(n)=差分効果量(n)-差分効果量(n-1)、或いは、(最大ランプ電圧または最大ランプ電流の差分(n)-最大ランプ電圧または最大ランプ電流の差分(n-1))/所定のロット範囲における最大ランプ電圧または最大ランプ電流の差分(n)の標準偏差
により二階差分効果量(n)を算出し、
前記差分効果量(n)が第一の閾値を越え、かつ二階差分効果量が第二の閾値を越え第三の閾値未満の範囲となる場合に、異常が発生したと判定することを特徴とする熱処理装置。
【請求項5】
前記熱処理装置の異常を表示または音声により警告する警告部を有し、
前記コントローラにより異常が発生したと判定されると前記警告部により警告することを特徴とする請求項4に記載された熱処理装置。
【請求項6】
前記第一の閾値は1.2以上3.0以下であり、前記第二の閾値は-1.5以上-0.7以下であり、前記第三の閾値は0.7以上1.5以下であることを特徴とする請求項4に記載された熱処理装置。
【請求項7】
複数の半導体基板にロット単位で連続して熱処理を行う請求項1に記載された熱処理装置を用いて半導体基板を製造する半導体基板の製造方法であって、
前記コントローラにより、
前記複数のランプに印加するランプ電圧又はランプ電流を制御し、前記複数のランプにより半導体基板を加熱するステップと、
前記温度検出部により前記半導体基板の温度を検出し、前記半導体基板の温度に基づき、前記複数のランプに印加するランプ電圧又はランプ電流を制御するステップと、
nをロット順番を示す2以上の正の整数としたとき、
前記複数のランプに印加される最大ランプ電圧又は最大ランプ電流に基づき、
差分効果量(n)=(最大ランプ電圧または最大ランプ電流(n)-最大ランプ電圧または最大ランプ電流(n-1))/所定のロット範囲における最大ランプ電圧または最大ランプ電流の標準偏差
により差分効果量(n)を算出し、
前記差分効果量(n)が第一の閾値を越えた場合に、異常が発生したと判定することを特徴とする半導体基板の製造方法。
【請求項8】
前記コントローラにより異常が発生したと判定されると、前記熱処理装置の異常を表示または音声により警告する警告部により警告することを特徴とする請求項7に記載された半導体基板の製造方法。
【請求項9】
前記第一の閾値は1.2以上3.0以下であることを特徴とする請求項7に記載された半導体基板の製造方法。
【請求項10】
複数の半導体基板からなるロット単位で熱処理の連続運転を行う請求項4に記載された熱処理装置を用いて半導体基板を製造する半導体基板の製造方法であって、
前記コントローラにより、
前記複数のランプに印加するランプ電圧を制御し、前記複数のランプにより半導体基板を加熱するステップと、
前記温度検出部により前記半導体基板の温度を検出し、前記半導体基板の温度に基づき、前記複数のランプに印加するランプ電圧を制御するステップと、
nをロット順番を示す2以上の正の整数としたとき、
前記複数のランプに印加される最大ランプ電圧又は最大ランプ電流に基づき、
差分効果量(n)=(最大ランプ電圧または最大ランプ電流(n)-最大ランプ電圧または最大ランプ電流(n-1))/所定のロット範囲における最大ランプ電圧または最大ランプ電流の標準偏差
により差分効果量(n)を算出し、さらに、
二階差分効果量(n)=差分効果量(n)-差分効果量(n-1)、或いは、(最大ランプ電圧または最大ランプ電流の差分(n)-最大ランプ電圧または最大ランプ電流の差分(n-1))/所定のロット範囲における最大ランプ電圧または最大ランプ電流の差分(n)の標準偏差
により二階差分効果量(n)を算出し、
前記差分効果量(n)が第一の閾値を越え、かつ二階差分効果量が第二の閾値を越え第三の閾値未満の範囲となる場合に、異常が発生したと判定することを特徴とする半導体基板の製造方法。
【請求項11】
前記コントローラにより異常が発生したと判定されると、前記熱処理装置の異常を表示または音声により警告する警告部により警告することを特徴とする請求項10に記載された半導体基板の製造方法。
【請求項12】
前記第一の閾値は1.2以上3.0以下であり、前記第二の閾値は-1.5以上-0.7以下であり、前記第三の閾値は0.7以上1.5以下であることを特徴とする請求項10に記載された半導体基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱処理装置及び半導体基板の製造方法に関し、特に、ランプの熱エネルギーにより半導体基板を熱処理する熱処理装置及び当該熱処理装置を用いた半導体基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、半導体デバイスの基板に用いられるシリコンウェーハは、半導体デバイスの活性領域となる表面および表層において、COP(Crystal Originated Particle)と呼ばれるボイド欠陥が存在しない無欠陥層を形成することが求められる。このような要求に対する技術として、急速昇降温熱処理(RTP;Rapid Thermal Process)を施す技術が知られている。
【0003】
RTPを行う熱処理装置(以下、RTP装置と呼ぶ)は、ウェーハを所定の温度に加熱処理する際、ウェーハ面内の温度をばらつき無く制御することができる。また、1200℃を超える温度までシリコンウェーハを急速昇温するために、発熱源であるランプの放射光を効率良くシリコンウェーハに吸収させ、エネルギー損失が極力少なくなるように装置構成が工夫されている。
【0004】
また、RTP装置は、1200℃を越える最高到達温度まで急速に昇温させた後、急速に降温させるため、装置温度を冷却させるための冷却水(冷媒)がRTP装置内を循環している。
例えば、特許文献1には、RTP装置において、垂直配向円筒形のランプホール内に発熱源であるランプが収容され、そのランプホールに隣接して冷却水が流れるように構成されている。これにより、ランプによる加熱終了後には、冷却水によってすぐさまRTP装置を冷却することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012-156522号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このようにRTP装置においては、装置内に冷却水(冷却媒体)を循環させて加熱終了後の装置を急速に冷却するようにしている。
しかしながら、RTP装置による熱処理を連続して行うと、発生する熱負荷が蓄積することが原因となって、冷却水の循環路部が破損し(亀裂が生じ)、装置内に冷却水がリークする虞があった。
また、装置内に冷却水がリークすると、熱処理中においてチャンバー内にリークした水分が水蒸気となり熱エネルギーの放射の散乱を発生させ、所望性能のシリコンウェーハが得られずに歩留まりが低下するという課題があった。
【0007】
本発明は、このような事情のもとになされたものであり、熱処理装置内における冷却媒体のリークを精度よく検知することによって、歩留まり低下、及び生産効率の低下を抑制することができる熱処理装置、及び当該熱処理装置を用いた半導体基板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するためになされた、本発明に係る熱処理装置は、複数の半導体基板にロット単位で連続して熱処理を行う熱処理装置であって、前記半導体基板を加熱する複数のランプと、前記複数のランプにランプ電圧を印加する電源と、前記半導体基板の温度を検出する温度検出部と、前記複数のランプに印加するランプ電圧又はランプ電流を制御し、前記熱処理装置の異常を検出するコントローラと、を備え、前記コントローラは、前記温度検出部により検出された前記半導体基板の温度に基づき、前記複数のランプに印加するランプ電圧又はランプ電流を制御し、nを処理する半導体基板のロット順番を示す2以上の正の整数としたとき、前記複数のランプに印加される最大ランプ電圧又は最大ランプ電流に基づき、差分効果量(n)=(最大ランプ電圧または最大ランプ電流(n)-最大ランプ電圧または最大ランプ電流(n-1))/所定のロット範囲における最大ランプ電圧または最大ランプ電流の標準偏差により差分効果量(n)を算出し、前記差分効果量(n)が第一の閾値を越えた場合に、異常が発生したと判定することに特徴を有する。
なお、前記熱処理装置の異常を表示または音声により警告する警告部を有し、前記コントローラにより異常が発生したと判定されると前記警告部により警告することが望ましい。
また、前記第一の閾値は1.2以上3.0以下であることが望ましい。
【0009】
このように、最大ランプ電圧または最大ランプ電流(n)から最大ランプ電圧または最大ランプ電流(n-1)を差し引いた差分を所定のロット範囲における最大ランプ電圧(またはランプ電流)の標準偏差σで除算した差分効果量と第1の閾値とを比較することにより冷却水のリーク発生を検知するようにした。
これにより冷却水のリーク以外の原因により偶発的に発生したランプ電圧の急上昇を排除することができ、冷却水のリークを精度よく検知することができる。
その結果、すぐに熱処理装置の停止、修理等の対応を行うことにより、歩留まり低下、及び生産性の低下を抑制することができる。
【0010】
また、前記課題を解決するためになされた、本発明に係る熱処理装置は、複数の半導体基板にロット単位で連続して熱処理を行う熱処理装置であって、前記半導体基板を加熱する複数のランプと、前記複数のランプにランプ電圧を印加する電源と、前記半導体基板の温度を検出する温度検出部と、前記複数のランプに印加するランプ電圧を制御し、前記熱処理装置の異常を検出するコントローラと、を備え、前記コントローラは、前記温度検出部が検出した検出された前記半導体基板の温度に基づき、前記複数のランプに印加するランプ電圧又はランプ電流を制御し、nを処理する半導体基板のロット順番を示す2以上の正の整数としたとき、前記複数のランプに印加される最大ランプ電圧又は最大ランプ電流に基づき、差分効果量(n)=(最大ランプ電圧または最大ランプ電流(n)-最大ランプ電圧または最大ランプ電流(n-1))/所定のロット範囲における最大ランプ電圧または最大ランプ電流の標準偏差により差分効果量(n)を算出し、さらに、二階差分効果量(n)=差分効果量(n)-差分効果量(n-1)、或いは、(最大ランプ電圧または最大ランプ電流の差分(n)-最大ランプ電圧または最大ランプ電流の差分(n-1))/所定のロット範囲における最大ランプ電圧または最大ランプ電流の差分(n)の標準偏差により二階差分効果量(n)を算出し、前記差分効果量(n)が第一の閾値を越え、かつ二階差分効果量が第二の閾値を越え第三の閾値未満の範囲となる場合に、異常が発生したと判定することに特徴を有する。
なお、前記熱処理装置の異常を表示または音声により警告する警告部を有し、前記コントローラにより異常が発生したと判定されると前記警告部により警告することが望ましい。
また、前記第一の閾値は1.2以上3.0以下であり、前記第二の閾値は-1.5以上-0.7以下であり、前記第三の閾値は0.7以上1.5以下であることが望ましい。
【0011】
このように、ロット(n)での最大ランプ電圧V(n)からロット(n-1)での最大ランプ電圧V(n-1)を差し引いた差分を所定のロット範囲における最大ランプ電圧の標準偏差σで除算した差分効果量d(n)、及び、差分効果量d(n)と差分効果量d(n-1)との差分である二階差分効果量D(n)を用いて冷却水のリーク発生を検知するようにした。
すなわち、差分効果量d(n)だけでなく二階差分効果量D(n)を用いることにより最大ランプ電圧V(n)の偶発的変動とリークによる系統的変動とを区別することができ、より精度よく冷却水のリークを検知することができる。
その結果、すぐに熱処理装置の停止、修理等の対応を行うことにより、歩留まり低下、及び生産性の低下を抑制することができる。
【0012】
また、前記課題を解決するためになされた、本発明に係る半導体基板の製造方法は、複数の半導体基板にロット単位で連続して熱処理を行う前記熱処理装置を用いて半導体基板を製造する半導体基板の製造方法であって、前記コントローラにより、前記複数のランプに印加するランプ電圧又はランプ電流を制御し、前記複数のランプにより半導体基板を加熱するステップと、前記温度検出部により前記半導体基板の温度を検出し、前記半導体基板の温度に基づき、前記複数のランプに印加するランプ電圧又はランプ電流を制御するステップと、nをロット順番を示す2以上の正の整数としたとき、前記複数のランプに印加される最大ランプ電圧又は最大ランプ電流に基づき、差分効果量(n)=(最大ランプ電圧または最大ランプ電流(n)-最大ランプ電圧または最大ランプ電流(n-1))/所定のロット範囲における最大ランプ電圧または最大ランプ電流の標準偏差により差分効果量(n)を算出し、前記差分効果量(n)が第一の閾値を越えた場合に、異常が発生したと判定することに特徴を有する。
なお、前記コントローラにより異常が発生したと判定されると、前記熱処理装置の異常を表示または音声により警告する警告部により警告することが望ましい。
また、前記第一の閾値は1.2以上3.0以下であることが望ましい。
【0013】
このような方法によれば、最大ランプ電圧または電流(n)から最大ランプ電圧または電流(n-1)を差し引いた差分を所定のロット範囲における最大ランプ電圧(または最大ランプ電流)の標準偏差σで除算した差分効果量と第1の閾値とを比較することにより冷却水のリーク発生を検知するようにした。
これにより冷却水のリーク以外の原因により偶発的に発生した最大ランプ電圧の急上昇を排除することができ、冷却水のリークを精度よく検知することができる。
その結果、すぐに熱処理装置の停止、修理等の対応を行うことにより、歩留まり低下、及び生産性の低下を抑制することができる。
【0014】
また、前記課題を解決するためになされた、本発明に係る半導体基板の製造方法は、複数の半導体基板からなるロット単位で熱処理の連続運転を行う前記熱処理装置を用いて半導体基板を製造する半導体基板の製造方法であって、前記コントローラにより、前記複数のランプに印加するランプ電圧を制御し、前記複数のランプにより半導体基板を加熱するステップと、前記温度検出部により前記半導体基板の温度を検出し、前記半導体基板の温度に基づき、前記複数のランプに印加するランプ電圧を制御するステップと、nをロット順番を示す2以上の正の整数としたとき、前記複数のランプに印加される最大ランプ電圧又は最大ランプ電流に基づき、差分効果量(n)=(最大ランプ電圧または最大ランプ電流(n)-最大ランプ電圧または最大ランプ電流(n-1))/所定のロット範囲における最大ランプ電圧または最大ランプ電流の標準偏差により差分効果量(n)を算出し、さらに、二階差分効果量(n)=差分効果量(n)-差分効果量(n-1)、或いは、(最大ランプ電圧または最大ランプ電流の差分(n)-最大ランプ電圧または最大ランプ電流の差分(n-1))/所定のロット範囲における最大ランプ電圧または最大ランプ電流の差分(n)の標準偏差により二階差分効果量(n)を算出し、前記差分効果量(n)が第一の閾値を越え、かつ二階差分効果量が第二の閾値を越え第三の閾値未満の範囲となる場合に、異常が発生したと判定することに特徴を有する。
なお、前記コントローラにより異常が発生したと判定されると、前記熱処理装置の異常を表示または音声により警告する警告部により警告することが望ましい。
また、前記第一の閾値は1.2以上3.0以下であり、前記第二の閾値は-1.5以上-0.7以下であり、前記第三の閾値は0.7以上1.5以下であることが望ましい。
【0015】
このような方法によれば、ロット(n)での最大ランプ電圧V(n)からロット(n-1)での最大ランプ電圧V(n-1)を差し引いた差分をランプ電圧の標準偏差σで除算した差分効果量d(n)、及び、差分効果量d(n)と差分効果量d(n-1)との差分である二階差分効果量D(n)を用いて冷却水のリーク発生を検知するようにした。
すなわち、差分効果量d(n)だけでなく二階差分効果量D(n)を用いることにより最大ランプ電圧V(n)の偶発的変動とリークによる系統的変動とを区別することができ、より精度よく冷却水のリークを検知することができる。
その結果、すぐに熱処理装置の停止、修理等の対応を行うことにより、歩留まり低下、及び生産性の低下を抑制することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、熱処理装置内における冷却媒体のリークを精度よく検知することによって、歩留まり低下、及び生産効率の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明の実施形態を示すRTP装置(熱処理装置)を概略的に示す断面図である。
図2図2は、図1のRTP装置が備えるハロゲンランプを拡大して示す断面図である。
図3図3は、本発明に係る半導体基板の製造方法の第一の実施形態を示すフローである。
図4図4は、本発明に係る半導体基板の製造方法の第二の実施形態を示すフローである。
図5図5は、実施例の実験1の結果を示すグラフである。
図6図6は、実施例の実験1の結果を示す他のグラフである。
図7図7は、実施例の実験1の結果を示す他のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図面等を参照して詳細に説明する。
本発明の実施形態は、ランプスリーブ内に配置されたランプ(例えば高電圧タングステンハロゲンランプ)を熱源とするRTP装置(熱処理装置)を例にして説明する。
図1は、本発明の実施形態を示すRTP装置100(熱処理装置)を概略的に示す断面図である。このRTP装置100は、チャンバー20を備え、このチャンバー20は、チャンバー側壁2と、チャンバー側壁2に結合されるチャンバー底部4と、チャンバー側壁2の上方にわたって配置される石英窓6とを有する。
【0019】
チャンバー20を構成するチャンバー側壁2、チャンバー底部4および石英窓6は、その中にあるシリコンウェーハW(半導体基板)を処理するための反応空間25を形成している。RTP装置100には、反応空間25内にシリコンウェーハWを移送するために、チャンバー側壁2を貫通したスリットバルブドア(図示せず)が設けられている。
【0020】
また、RTP装置100は、チャンバー側壁2に形成されたガス導入口20aを備え、このガス導入口20aは反応空間25に1つまたは複数の処理ガスを与えるように構成されるガス供給源18に接続されている。また、RTP装置100は、チャンバー側壁2に形成されたガス排出口20bを備え、このガス排出口20bは、反応空間25から外へ排気するために真空ポンプ21に接続されている。
また、RTP装置100は、チャンバー20内の反応空間25にシリコンウェーハWを支持する基板支持部40を備える。また、図示しないが、シリコンウェーハWをその中心軸周りに所定速度で回転させる回転手段を備えている。
【0021】
基板支持部40は、シリコンウェーハWの外周部を支持する環状のサセプタ40aと、サセプタ40aを支持するステージ40bとを備える。
また、このRTP装置100におけるシリコンウェーハWの温度制御は、基板支持部40のステージ40bに埋め込まれた複数の放射温度計50(温度検出部)を用いて行う。放射温度計50は、コンピュータであるコントローラ70に接続され、このコントローラ70は、放射温度計50により取得されたシリコンウェーハWの温度情報に基づきシリコンウェーハWの温度を制御する。
【0022】
即ち、コントローラ70は、放射温度計50によって、シリコンウェーハWの下部の基板径方向における基板面内多点(例えば9点)の温度を測定し、その測定された温度に基づいて複数のハロゲンランプ30の制御(各ランプの個別のON-OFF制御や、供給電力の増減制御、発光する光の発光強度の制御等)を行う。
【0023】
複数のハロゲンランプ30は、石英窓6の上方に配置され、石英窓6を通してシリコンウェーハWに向かって熱エネルギーを送るように構成される。複数のハロゲンランプ30は、平面視において例えば六角形パターンに配置される。複数のハロゲンランプ30はそれぞれ、電源60に電気的に接続するために加熱アセンブリベース17に接続されている。
【0024】
各ハロゲンランプ30は、例えば図2に示すように構成されている。図2に示すハロゲンランプ30は、石英ガラスにより形成されたランプガラス31中にタングステンのフィラメントコイル32を配置し、ランプガラス31中にハロゲンガスを含むガスが封入されている。
【0025】
また、ランプガラス31は筒状のランプスリーブ33に包囲されており、ランプスリーブ33の内壁33aは、ランプガラス31の発光した熱エネルギーが下方のシリコンウェーハWに向かうように傾斜している。また、ランプスリーブ33の内壁33aは、好ましくはAuめっきが施されている。これは、Auめっきは、耐熱性が高く、反射率が高い、加えて、耐酸性が高いという理由による。
各ハロゲンランプ30には、電源60よりランプ電圧が印加される。このランプ電圧の値は、コントローラ70によって制御される。
【0026】
また、本実施形態において、複数のハロゲンランプ30の周囲には、図1に示すように加熱処理後のハロゲンランプ30の熱を急速に冷却するための冷却水(冷却媒体)を循環させるための冷却水路55が設けられている。さらに基板支持部40のステージ40bには冷却水路56が設けられ、加熱処理後においてステージ40b及びその上のシリコンウェーハWを急速に冷却可能となされている。
【0027】
また、本実施の形態に係るRTP装置100は、例えば画面表示、あるいは警告音(音声)により、冷却水路55、56からの冷却水のリーク発生を警告するための警告部80を備えている。
具体的には、コントローラ70は、シリコンウェーハWをロット(例えば25枚)単位で連続運転を行う際に、下記式1により算出された効果量(差分効果量と呼ぶ)が、第1の閾値(例えば1.2)を越えた場合に、警告部80により警告を行う。
なお、本発明に係る熱処理装置にあっては、本実施形態のように警告を行うことに限らず、警告を行うことなく、熱処理装置を自動で停止させる構成としてもよい。
【0028】
この第1の閾値は、例えば、複数の熱処理レシピのそれぞれにおいて、最大ランプ電圧の急上昇によりNGとする電圧閾値を設定し、各レシピにおいてNGとなるロット(すなわち、電圧閾値を越える最大ランプ電圧となるロット)が数多く存在する差分効果量の領域を特定することにより決定する。
具体的には、例えば図7に示す例であれば、差分効果量が1.2を越えるとNGが多くなり、1.2未満であればNGが無いため、第1の閾値は、1.2とすればよい。あるいは、差分効果量が1.2以上3.0以下の範囲では、NGではないロットも存在するため、1.2以上3.0以下の範囲で適宜、第1の閾値を設定すればよい。ただし、本発明にあっては、第1の閾値として、必ずしも3.0を超える値を除外するものではない。
【0029】
差分効果量d(n)=(最大ランプ電圧V(n)-最大ランプ電圧V(n-1))/標準偏差σ ・・・(式1)
この式1で算出される差分効果量d(n)は、n番目のロット(n:nは2以上の正の整数)での最大ランプ電圧(または最大ランプ電流)と、その前回ロット(n-1)での最大ランプ電圧(または最大ランプ電流)との差分を、所定のロット範囲における最大ランプ電圧(または最大ランプ電流)の標準偏差σ(例えば1ロット5枚としたときに直近25枚、つまり直近5ロットのシリコンウェーハWでの標準偏差)で除算したものである。
なお、1ロットは1~50枚の範囲で設定するのが好ましい。1ロット50枚を超える枚数とすると、冷却水のリークの早期検知が遅れてしまう場合があるものの、必ずしも50枚を超える枚数を除外するものではない。
また、所定のロット範囲としては直前の同一レシピのロットの2~30ロットに設定することが好ましいが、この範囲に限定されることなく設定することができる。
また、所定のロット範囲における最大ランプ電圧(または最大ランプ電流)としては、1ロット範囲における最大ランプ電圧の最大値としても平均値としてもよい。
【0030】
より好ましくは、下記式2により二階差分効果量D(n)を算出し、差分効果量d(n)が、第1の閾値(例えば1.2)を越えた場合、かつ二階差分効果量D(n)が第2の閾値を越えて第3の閾値未満の範囲内(例えば-0.7を越えて0.7未満)の場合に異常と判定し、警告部80により警告を行う。
【0031】
第2の閾値と第3の閾値は、第1の閾値と同様に、複数の熱処理レシピのそれぞれにおいて、最大ランプ電圧の急上昇によりNGとする電圧閾値を設定し、各レシピにおいてNGとなるロット(すなわち、電圧閾値を越える最大ランプ電圧となるロット)が数多く存在する二階差分効果量の領域を特定することにより決定する。
具体的には、例えば図7に示す例であれば、二階差分効果量が-0.7を越えて0.7未満の領域であるとNGが多くなり、その他の領域であればNGが少ないため、第2の閾値は-0.7とし、第3の閾値は0.7とすればよい。
あるいは、第2の閾値としては、-1.5以上-0.7以下の範囲で設定し、第3の閾値としては0.7以上1.5以下の範囲で設定すればよい。これは、二階差分効果量が-1.5以上-0.7以下の範囲においても、NGではないロットが存在し、二階差分効果量が0.7以上1.5以下の範囲においても、NGではないロットが存在するためである。
【0032】
二階差分効果量D(n)=差分効果量d(n)-差分効果量d(n-1) ・・・(式2)
この式2で算出される二階差分効果量D(n)は、n番目のロット(n)での最大効果量とその前回のロット(n-1)での差分効果量との差分である。
【0033】
続いて、本発明に係る熱処理装置による半導体基板の製造方法の第一の実施形態について図3のフローに基づいて説明する。
図1に示すRTP装置100において、複数のロット(例えば各ロット25枚)に対する熱処理を連続的に行う。n番目(nは2以上の正の整数)のロットのシリコンウェーハWに対する熱処理は次のようにして行う(図3のステップS1)。
すなわち、各シリコンウェーハWに対する熱処理は、まず所望の初期温度で保持されたチャンバー20内にシリコンウェーハWを収容する。
シリコンウェーハの設置後、チャンバー20内には、雰囲気ガス導入口20aから酸素(O)と不活性ガスとを混合したガスを所定の流量で導入する。不活性ガスとしては、Arガスや窒素ガス等が挙げられる。
【0034】
そして、例えばシリコンウェーハWを1300℃の目標温度で熱処理する場合、コントローラ70は、それに対応するハロゲンランプ30へ印加するランプ電圧(初期設定電圧)を決定し、電源60により各ハロゲンランプ30へランプ電圧を印加する。各ハロゲンランプ30は、供給されたランプ電圧に応じた熱エネルギーをシリコンウェーハWに向けて放射する。これによりシリコンウェーハWが加熱開始される。
【0035】
シリコンウェーハWが加熱される間、放射温度計50によって、シリコンウェーハWの下部の基板径方向における基板面内多点(例えば9点)の温度が測定される。コントローラ70は、測定したシリコンウェーハWの温度に基づきハロゲンランプ30への印加電圧を制御する。
【0036】
なお、RTP装置100において、仮に冷却水のリークが発生した場合には、例えば水蒸気の発生により熱エネルギーの放射が遮られるため、シリコンウェーハWの温度が低下し、コントローラ70はハロゲンランプ30への印加電圧を上昇制御することになる。
【0037】
そして、ハロゲンランプ30への印加電圧により基板温度が目標温度(例えば1300℃)となり、その温度で所定時間経過すると、シリコンウェーハWに対する熱処理を終了する。
【0038】
次に、n番目(nは2以上の正の整数)のロット(例えば25枚)のシリコンウェーハWに対する熱処理がすべて終了後、差分効果量d(n)の算出を下記式1に基づき行う(図3のステップS2)。
差分効果量d(n)=(最大ランプ電圧V(n)-最大ランプ電圧V(n-1))/所定のロット範囲における最大ランプ電圧Vの標準偏差σ ・・・(式1)
【0039】
差分効果量d(n)が得られると、コントローラ70は、差分効果量d(n)が第1の閾値(例えば1.2)を越えているか否かを判定する(図3のステップS3)。
ここで、差分効果量d(n)が第1の閾値を越えない場合には、ステップS1に戻って次のロット(n+1)の熱処理を行う。
一方、差分効果量d(n)が第1の閾値を越えた場合には、コントローラ70は、異常(冷却水のリーク)が発生したと判定し、警告部80により冷却水のリークが発生したとする警告を画面等での表示や音声により行う(図3のステップS4)。
作業者は、警告部80による警告がなされると、RTP装置100の運転停止後、異常発生個所の確認及び修理を行い、RTP装置100の運転を再開すればよい。
また、ステップS3において、コントローラ70は、RTP装置100の異常が発生したと判定した場合、RTP装置100の運転を自動的に停止するよう制御してもよい。
【0040】
以上のように、本発明に係る半導体基板の製造方法の第一の実施形態によれば、最大ランプ電圧V(n)から最大ランプ電圧V(n-1)を差し引いた差分をランプ電圧(または電流)の標準偏差σで除算した差分効果量と第1の閾値とを比較することにより冷却水のリーク発生を検知するようにした。
これにより冷却水のリーク以外の原因により偶発的に発生したランプ電圧の急上昇を排除し、冷却水のリークを精度よく検知することができる。
その結果、すぐに修理等の対応を行うことにより、歩留まり低下、及び生産効率の低下を抑制することができる。
【0041】
続いて、本発明に係る熱処理装置による半導体基板の製造方法の第二の実施形態について図4のフローに基づいて説明する。
図1に示すRTP装置100において、複数のロット(例えば各ロット25枚)に対する熱処理を連続的に行う。n番目(nは2以上の正の整数)のロットのシリコンウェーハWに対する熱処理は次のようにして行う(図4のステップSt1)。
すなわち、各シリコンウェーハWに対する熱処理は、まず所望の初期温度で保持されたチャンバー20内にシリコンウェーハWを収容する。
シリコンウェーハの設置後、チャンバー20内には、雰囲気ガス導入口20aから酸素(O)と不活性ガスとを混合したガスを所定の流量で導入する。不活性ガスとしては、Arガスや窒素ガス等が挙げられる。
【0042】
そして、例えばシリコンウェーハWを1300℃の目標温度で熱処理する場合、コントローラ70は、それに対応するハロゲンランプ30へ印加するランプ電圧(初期設定電圧)を決定し、電源60により各ハロゲンランプ30へランプ電圧を印加する。各ハロゲンランプ30は、供給されたランプ電圧に応じた熱エネルギーをシリコンウェーハWに向けて放射する。これによりシリコンウェーハWが加熱開始される。
【0043】
シリコンウェーハWが加熱される間、放射温度計50によって、シリコンウェーハWの下部の基板径方向における基板面内多点(例えば9点)の温度が測定される。コントローラ70は、測定したシリコンウェーハWの温度に基づきハロゲンランプ30への印加電圧を制御する。
【0044】
なお、RTP装置100において、仮に冷却水のリークが発生した場合には、例えば水蒸気の発生により熱エネルギーの放射が遮られるため、シリコンウェーハWの温度が低下し、コントローラ70はハロゲンランプ30への印加電圧を上昇制御することになる。
【0045】
そして、ハロゲンランプ30への印加電圧により基板温度が目標温度(例えば1300℃)となり、その温度で所定時間経過すると、シリコンウェーハWに対する熱処理を終了する。
【0046】
次に、n番目(nは2以上の正の整数)のロット(例えば25枚)のシリコンウェーハWに対する熱処理が終了後、差分効果量d(n)、及び二階差分効果量D(n)の算出を下記式1、2に基づき行う(図4のステップSt2)。
【0047】
差分効果量d(n)=(最大ランプ電圧V(n)-最大ランプ電圧V(n-1))/所定のロット範囲における最大ランプ電圧Vの標準偏差σ ・・・(式1)
【0048】
二階差分効果量D(n)=差分効果量d(n)-差分効果量d(n-1) ・・・(式2)
なお、二階差分効果量D(n)は、下記式3により求めてもよい。
二階差分効果量D(n)=(最大ランプ電圧の差分v(n)-最大ランプ電圧の差分v(n-1))/所定のロット範囲における最大ランプ電圧Vの差分(n)の標準偏差σ ・・・(式3)
式3において、最大ランプ電圧の差分v(n)は、ロット(n)における最大ランプ電圧Vと前回処理したロット(n-1)との差分である。
【0049】
差分効果量d(n)及び二階差分効果量D(n)が得られると、コントローラ70は、差分効果量d(n)が第1の閾値(例えば1.2)を越えるか、かつ二階差分効果量D(n)が第2の閾値を越えて第3の閾値未満の範囲内(例えば-0.7を越えて0.7未満)にあるかを判定する(図4のステップSt3)。
ここで、差分効果量d(n)が第1の閾値を越えない、あるいは差分効果量d(n)が第1の閾値を越えても二階差分効果量D(n)が第2の閾値を越えて第3の閾値未満の範囲内(例えば-0.7を越えて0.7未満)にない場合には、ステップSt1に戻って次のロット(n+1)の熱処理を行う。
【0050】
一方、差分効果量d(n)が第1の閾値(例えば1.2)を越え、かつ二階差分効果量D(n)が第2の閾値を越えて第3の閾値未満の範囲内(例えば-0.7を越えて0.7未満)にある場合には、コントローラ70は、異常(冷却水のリーク)が発生したと判定し、警告部80により冷却水のリークが発生したとする警告を画面等での表示や音声により行う(図4のステップSt4)。
作業者は、警告部80による警告がなされると、RTP装置100の運転停止後、異常発生個所の確認及び修理を行い、RTP装置100の運転を再開すればよい。
また、ステップSt3において、コントローラ70は、RTP装置100の異常が発生したと判定した場合、RTP装置100の運転を自動的に停止するよう制御してもよい。
【0051】
以上のように、本発明に係る検知方法の第二の実施形態によれば、ロット(n)での最大ランプ電圧V(n)からロット(n-1)での最大ランプ電圧V(n-1)を差し引いた差分をランプ電圧の標準偏差σで除算した差分効果量d(n)、及び、差分効果量d(n)と差分効果量d(n-1)との差分である二階差分効果量D(n)を用いて冷却水のリーク発生を検知するようにした。
すなわち、差分効果量d(n)だけでなく二階差分効果量D(n)を用いることにより最大ランプ電圧V(n)の偶発的変動とリークによる系統的変動とを区別することができ、より精度よく冷却水のリークを検知することができる。
その結果、すぐに修理等の対応を行うことにより、歩留まり低下、及び生産効率の低下を抑制することができる。
【0052】
なお、前記第一、第二の実施形態においては、ハロゲンランプ30に印加する最大ランプ電圧を用いて差分効果量及び二階差分効果量を求めるようにしたが、本発明にあっては、その例に限定されるものではなく、ハロゲンランプ30に印加する最大ランプ電流により差分効果量及び二階差分効果量を求めてもよい。
その場合、上記した(式1)、(式2)、(式3)における最大ランプ電圧を最大ランプ電流に置き換えればよい。
【0053】
また、前記第一、第二の実施形態においては、半導体基板として、シリコンウェーハを例に説明したが、それに限らず半導体基板として、SiCウェーハ、GaNウェーハ、デバイス処理されたウェーハ等を適用することができる。
【実施例0054】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに具体的に説明するが、本発明は、下記実施例により限定解釈されるものではない。
【0055】
(実験1)
実験1では、RTP装置をロット単位で連続運転し、最大ランプ電圧の変化を測定することにより、差分効果量及び二階差分効果量の閾値(第1、第2、第3の閾値)について検証した。
先ず、2種の異なるレシピについてRTP装置で半導体用シリコンウェーハに対し、レシピAでは加熱温度1300℃、40秒、レシピBでは加熱温度1350℃、35秒の熱処理プロセスで連続運転を行った。レシピA、Bともに1ロット25枚のシリコンウェーハとし、39ロットを連続して熱処理した。
【0056】
図5のグラフに、各ロットにおける最大ランプ電圧V(縦軸)とロット順番(横軸)の関係をレシピA,Bについて示す。
レシピA,Bの各プロットデータについて、それぞれ閾値A、閾値Bを越えるランプ電圧において冷却水のリークが発生した。
【0057】
次いで、図5のグラフに示すデータから、下記式1に基づき差分効果量を求め、下記式2に基づき二階差分効果量を求めて、差分効果量と二階差分効果量との相関関係についてグラフを作成した。
差分効果量d(n)=(RTP処理時の最大ランプ電圧V(n)-最大ランプ電圧V(n-1))/所定のロット範囲における最大ランプ電圧Vの標準偏差σ ・・・(式1)
二階差分効果量D(n)=差分効果量d(n)-差分効果量d(n-1) ・・・(式2)
【0058】
図6(a)にレシピAについて差分効果量と二階差分効果量との相関関係のグラフを示し、図6(b)にレシピBについて差分効果量と二階差分効果量との相関関係のグラフを示す。図6(a)、(b)において、縦軸は二階差分効果量、横軸は差分効果量である。
【0059】
次に、図7に示すように、図6(a)、(b)を同一グラフ上に重ね、図5に示した閾値A、閾値Bより高い最大ランプ電圧(すなわちNG)となったロットが多く存在する領域を特定した。
その結果、差分効果量は閾値1.2を越える多くの場合に、冷却水のリークを生じる最大ランプ電圧となる結果となった。
そのため、実験1の条件では、差分効果量が閾値1.2を越える場合には、RTP装置において警告を行うことが好ましいことを確認した。あるいは、差分効果量が1.2以上3.0以下の範囲では、NGではないロットも存在したため、1.2以上3.0以下の範囲で適宜、第1の閾値を設定すればよいことを確認した。
【0060】
また、差分効果量が閾値1.2を越え、かつ二階差分効果量が-0.7を越え0.7未満の範囲となる場合に、より冷却水のリークを生じる最大ランプ電圧となる結果となった。
そのため、第二の実施形態のように、差分効果量が1.2(第1の閾値)を越え、かつ二階差分効果量が-0.7(第2の閾値)を越え0.7(第3の閾値)未満の範囲内となる場合に、RTP装置において警告を行うことがより好ましいことを確認した。
あるいは、二階差分効果量が-1.5以上-0.7以下の範囲においても、NGではないロットが存在し、二階差分効果量が0.7以上1.5以下の範囲においても、NGではないロットが存在したため、第2の閾値としては、適宜、-1.5以上-0.7以下の範囲で設定し、第3の閾値としては、適宜、0.7以上1.5以下の範囲で設定すればよいことを確認した。
【符号の説明】
【0061】
20 チャンバー
20a ガス導入口
20b ガス排出口
25 反応空間
30 ハロゲンランプ(ランプ)
40 基板支持部
40a サセプタ
50 放射温度計(温度検出部)
60 電源
70 コントローラ
80 警告部
W シリコンウェーハ(半導体基板)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7