(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024169169
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】SiC半導体装置用基板、SiC接合基板、SiC多結晶基板およびSiC多結晶基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
C30B 29/36 20060101AFI20241128BHJP
C30B 33/00 20060101ALI20241128BHJP
C30B 25/20 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
C30B29/36 A
C30B33/00
C30B25/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023086412
(22)【出願日】2023-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100161001
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 篤司
(72)【発明者】
【氏名】田原 大祐
(72)【発明者】
【氏名】青木 克冬
(72)【発明者】
【氏名】松岡 みのり
【テーマコード(参考)】
4G077
【Fターム(参考)】
4G077AA02
4G077AA03
4G077BE08
4G077DB07
4G077EA02
4G077EA06
4G077ED06
4G077FE11
4G077FG11
4G077FH05
4G077GA10
4G077HA12
4G077TA04
4G077TA07
4G077TC06
4G077TK01
(57)【要約】
【課題】 SiC多結晶基板とSiC単結晶基板を接合した構造のSiC半導体装置用基板において、裏面研削加工後の基板の反り量を十分に抑制することのできるSiC半導体装置用基板、SiC接合基板、SiC多結晶基板およびSiC多結晶基板の製造方法を提供する。
【解決手段】 順に、SiC多結晶からなる支持基板と、前記支持基板の表面に接合されたSiC単結晶基板と、前記SiC単結晶基板の表面に形成されたSiC単結晶エピタキシャル層と、前記SiC単結晶エピタキシャル層上に形成された半導体素子の構成要素と、が積層したSiC半導体装置用基板において、前記支持基板の前記SiC単結晶基板と接合していない面が研削面であり、前記研削面の直径に対する当該研削面の反り量が0.17mm/インチ以下である、SiC半導体装置用基板。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
順に、SiC多結晶からなる支持基板と、
前記支持基板の表面に接合されたSiC単結晶基板と、
前記SiC単結晶基板の表面に形成されたSiC単結晶エピタキシャル層と、
前記SiC単結晶エピタキシャル層上に形成された半導体素子の構成要素と、が積層したSiC半導体装置用基板において、
前記支持基板の前記SiC単結晶基板と接合していない面が研削面であり、
前記研削面の直径に対する当該研削面の反り量が0.17mm/インチ以下である、SiC半導体装置用基板。
【請求項2】
前記研削面の反り量が1.0mm以下である、請求項1に記載のSiC半導体装置用基板。
【請求項3】
SiC多結晶からなる支持基板と、
前記支持基板の表面に接合されたSiC単結晶基板と、が積層したSiC接合基板において、
前記支持基板の前記SiC単結晶基板と接合していない面をバックグラインド処理することにより、前記支持基板の厚みを40~60%研削して研削面を形成した状態において、前記研削面の直径に対する当該研削面の反り量が0.17mm/インチ以下である、SiC接合基板。
【請求項4】
前記研削面の反り量が1.0mm以下である、請求項3に記載のSiC接合基板。
【請求項5】
請求項3記載のSiC接合基板において、
前記支持基板の前記SiC単結晶基板と接合していない面をバックグラインド処理することにより、前記支持基板の厚みを40~50%研削して研削面を形成した状態において、前記研削面の直径に対する当該研削面の反り量が0.085mm/インチ以下である、SiC接合基板。
【請求項6】
SiC多結晶からなる支持基板と、前記支持基板の表面に接合されたSiC単結晶基板と、が積層したSiC接合基板に前記支持基板として用いるSiC多結晶基板において、
前記支持基板の前記SiC単結晶基板と接合しない面をバックグラインド処理することにより、前記支持基板の厚みを40~60%研削して研削面を形成した状態において、前記研削面の直径に対する当該研削面の反り量が0.17mm/インチ以下である、SiC多結晶基板。
【請求項7】
前記研削面の反り量が1.0mm以下である、請求項6に記載のSiC多結晶基板。
【請求項8】
請求項6記載のSiC多結晶基板において、
前記支持基板の前記SiC単結晶基板と接合しない面をバックグラインド処理することにより、前記支持基板の厚みを40~50%研削して研削面を形成した状態において、前記研削面の直径に対する当該研削面の反り量が0.085mm/インチ以下である、SiC多結晶基板。
【請求項9】
SiC多結晶からなる支持基板と、前記支持基板の表面に接合されたSiC単結晶基板と、が積層したSiC接合基板に前記支持基板として用いるSiC多結晶基板の製造方法において、
種基板にSiC多結晶膜を成膜する成膜工程と、
前記成膜工程後、前記種基板と前記SiC多結晶膜を分離する分離工程と、
前記分離工程後、前記SiC多結晶膜を1600℃以上2000℃未満に保持して熱処理する熱処理工程と、
前記熱処理工程後、前記SiC多結晶膜を研削および研磨して前記支持基板に加工する研削・研磨工程と、を含み、
前記熱処理工程では、前記SiC多結晶膜を当該SiC多結晶膜の有する反りの方向と反対方向への力を作用させた状態を維持して熱処理する、SiC多結晶基板の製造方法。
【請求項10】
前記熱処理工程では、矯正治具の上に載せた前記SiC多結晶膜に前記反対方向への力を作用させる、請求項9に記載のSiC多結晶基板の製造方法。
【請求項11】
前記熱処理工程は、前記SiC多結晶膜を1700℃~1800℃の間に3時間以上保持する工程である、請求項9に記載のSiC多結晶基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化ケイ素(以下、「SiC」とする場合がある)多結晶基板とその製造方法、およびSiC多結晶基板にSiC単結晶基板を接合して得られるSiC接合基板、並びにSiC接合基板にSiC単結晶エピタキシャル層と半導体回路を形成したSiC半導体装置用基板に関する。
【背景技術】
【0002】
SiCは、2.2~3.3eVの広い禁制帯幅を有するワイドバンドギャップ半導体であり、その優れた物理的、化学的特性から、耐環境性半導体材料として研究開発がなされている。近年、SiCは、高耐圧・高出力電子デバイスや高周波電子デバイスなどのパワーデバイス、青色から紫外にかけての短波長光デバイス向けの材料として注目されており、研究開発が活発化している。ところが、SiCは、良質な大口径単結晶の製造が難しく、これまでSiCデバイスの実用化を妨げてきた。
【0003】
この問題点を解決するために、SiC単結晶基板を種結晶として用いて昇華再結晶を行う改良型のレーリー法が開発されてきた。この改良レーリー法を用いれば、SiC単結晶の結晶多形(4H-SiC、6H-SiC、15R-SiC等)や、キャリア型、及び不純物濃度を制御しながらSiC単結晶を成長できる。この技術により、結晶欠陥密度は大きく減少し、その基板上へショットキーバリアダイオード(SBD)や電界効果トランジスタ(MOSFET)の実用化が進められてきた。
【0004】
しかしながら、SiC単結晶基板を種結晶とする改良型のレーリー法では、結晶成長速度が遅いこと、およびSiC単結晶インゴットを主として切断及び研磨からなる工程を経てウエハ状に加工する際の加工費用が高いことに起因して、単結晶SiC基板の製造コストは高い。この製造コストの高さも、SiCデバイスの実用化を妨げてきた要因であり、半導体デバイス用途、とくに高耐圧・高出力電子素子用途のSiC基板を安価に提供できる技術の開発が強く望まれていた。
【0005】
そこで、デバイス形成層部のみ品質の良い単結晶SiCを用いて、それを支持基板(デバイス製造工程に耐えうる強度・耐熱性・清浄度を持つ材料:例えば、多結晶SiC)に、接合界面における酸化膜の形成を伴わない接合手法にて固定することにより、低コストな支持基板部と高品質な単結晶SiCを兼ね備えた半導体基板(以下、「SiC接合基板」とする場合がある)を製造する技術が提供されている(例えば、特許文献1を参照)。特に、多結晶SiCを支持基板とするSiC接合基板は、パワーデバイス応用時に単結晶SiCの特性を生かしつつ、製造コストの低コスト化が可能という点で、単結晶SiC基板を単独で使用する場合に対して優位性がある。単結晶SiC基板の普及とともに、より安価に作製できるSiC接合基板への注目が高まっている。
【0006】
その一方で、単結晶SiC基板を用いたデバイスの作製工程における基板の「反り」に関する問題も顕在化してきた。一般に、デバイスの作製工程上、基板の「反り」は非常に重要視されている。何故なら、反りの大きな基板は、デバイスの作製工程での自動搬送のエラー要因や加工テーブルに基板を保持することができない不具合が発生することがあるからである。また、基板の反りが大きいことで、加工テーブルに基板を保持することができたとしても、十分な平坦度を確保できずに、例えば、露光プロセス(リソグラフプロセス)において、基板面内の一部が焦点を外れ、明確なマスク像を形成しなくなるからである。この焦点ずれの現象は、回路が微細であるほどその影響が大きい。また、ダイシング、パッケージ組立工程における歩留まり低下の懸念材料にもなる。これに対し、例えば、特許文献2によれば、基板の表裏をCMPないしダイヤモンドポリッシュにより加工ダメージを除去した表面を有する単結晶SiC基板において、ラマン分光法とX線法によって得られる歪み、残留応力により説明される基板の反りの小さい単結晶SiC基板が提供されている。また、特許文献3によれば、X線法により測定した残留応力値により説明される反りの小さい多結晶SiC成形体が提供されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2015-15401号公報
【特許文献2】特開2015-59073号公報
【特許文献3】特開2021-54666号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
基板の反りは、通電方向が基板の厚み方向となる縦型パワーデバイスの作製工程における表面回路パターン実装後の薄層化加工、例えば裏面研削(BG:バックグラインド)加工時にも発生する。この薄層化加工の工程では、元の基板厚みの40~60%程度を除去する必要がある。例えば、直径6インチのSiC単結晶基板では、板厚350μmに対して研削による薄層化加工後の板厚が150μm~200μm程度となるため研削量が多く、一般的に加工能率の高い研削加工が採用されている。接合を行わないSiC単結晶基板を用いた半導体装置用基板では、基板の反りは、約1mm以下に抑えられており、上記の反りに起因する問題は生じていない。これに対し、SiC多結晶基板とSiC単結晶基板を接合したSiC接合基板の場合には、裏面研削後の反りは、1mmを超える状況であり、後工程において搬送エラーや加工テーブルに基板を保持することができない不具合等、反りに起因する問題が生じるおそれがあった。特に、裏面研削量が基板の厚みを超える場合、反り量は極端に悪化する。基板の厚みが薄くなり、基板自体の剛性が小さくなることや、内部応力のバランスが崩れるためと考えられる。
【0009】
この裏面研削時の反りは、研削加工により基板の裏面に加工ダメージ層が発生し、基板の表裏の加工面の状態の差に起因してトワイマン効果が生じ、基板の大きな反りが発生する。一方、加工ダメージ層を伴わない化学機械研磨(Chemical Mechanical Polish:CMP)では、基板の大きな反りは発生し難いものの、研削加工に比べて研磨速度が1/100程度と非常に遅く、高コストとなる。そのため、基板の薄層化においては研磨による加工ではなく、裏面研削加工が必須である。
【0010】
よって、コストと製造効率の観点から、薄層化においては裏面研削加工のみを採用することを前提とし、裏面研削加工時に反りにくい基板を提供することができれば、所望の加工状態に仕上げられる研削加工のプロセスウィンドウが広くなり、デバイス製造工程における裏面研削加工設計の最適化が容易になると考えられる。
【0011】
そこで、本発明はこのような問題点に着目してなされたものであり、SiC多結晶基板とSiC単結晶基板を接合した構造のSiC半導体装置用基板において、裏面研削加工後の基板の反り量を十分に抑制することのできるSiC半導体装置用基板、SiC接合基板、SiC多結晶基板およびSiC多結晶基板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するため、本発明のSiC半導体装置用基板は、順に、SiC多結晶からなる支持基板と、前記支持基板の表面に接合されたSiC単結晶基板と、前記SiC単結晶基板の表面に形成されたSiC単結晶エピタキシャル層と、前記SiC単結晶エピタキシャル層上に形成された半導体素子の構成要素と、が積層したSiC半導体装置用基板において、前記支持基板の前記SiC単結晶基板と接合していない面が研削面であり、前記研削面の直径に対する当該研削面の反り量が0.17mm/インチ以下である。
【0013】
また、上記の課題を解決するため、本発明のSiC接合基板は、SiC多結晶からなる支持基板と、前記支持基板の表面に接合されたSiC単結晶基板と、が積層したSiC接合基板において、前記支持基板の前記SiC単結晶基板と接合していない面をバックグラインド処理することにより、前記支持基板の厚みを40~60%研削して研削面を形成した状態において、前記研削面の直径に対する当該研削面の反り量が0.17mm/インチ以下である。
【0014】
また、上記の課題を解決するため、本発明のSiC多結晶基板は、SiC多結晶からなる支持基板と、前記支持基板の表面に接合されたSiC単結晶基板と、が積層したSiC接合基板に前記支持基板として用いるSiC多結晶基板において、前記支持基板の前記SiC単結晶基板と接合しない面をバックグラインド処理することにより、前記支持基板の厚みを40~60%研削して研削面を形成した状態において、前記研削面の直径に対する当該研削面の反り量が0.17mm/インチ以下である。
【0015】
また、上記の課題を解決するため、本発明のSiC多結晶基板の製造方法は、SiC多結晶からなる支持基板と、前記支持基板の表面に接合されたSiC単結晶基板と、が積層したSiC接合基板に前記支持基板として用いるSiC多結晶基板の製造方法において、種基板にSiC多結晶膜を成膜する成膜工程と、前記成膜工程後、前記種基板と前記SiC多結晶膜を分離する分離工程と、前記分離工程後、前記SiC多結晶膜を1600℃以上2000℃未満に保持して熱処理する熱処理工程と、前記熱処理工程後、前記SiC多結晶膜を研削および研磨して前記支持基板に加工する研削・研磨工程と、を含み、前記熱処理工程では、前記SiC多結晶膜を当該SiC多結晶膜の有する反りとは反対に反らせた状態を維持して熱処理する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、SiC多結晶基板とSiC単結晶基板を接合した構造のSiC半導体装置用基板において、裏面研削加工後の基板の反り量を十分に抑制することのできるSiC半導体装置用基板、SiC接合基板、SiC多結晶基板およびSiC多結晶基板の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図3】SiC半導体装置用基板の概略断面図である。
【
図4】SiC半導体装置の一例であるMOSFETの概略断面図である。
【
図5】支持基板及びSiC接合基板の製造方法の一例を示すフローチャートである。
【
図6】SiC半導体装置の製造方法の一例を示すフローチャートである。
【
図7】SiC多結晶膜100の反りの矯正方法を示す概略側面図である。
【
図8】
図7とは異なる態様の、SiC多結晶膜100の反りの矯正方法を示す概略側面図である。
【
図9】
図7、8とは異なる態様の、SiC多結晶膜100の反りの矯正方法を示す概略図である。
【
図10】
図7~9とは異なる態様の、SiC多結晶膜100の反りの矯正方法を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態の一例について、詳細に説明するが、本発明は、この実施の形態に限定されるものではない。
【0019】
[SiC多結晶基板]
SiC多結晶基板は、SiC多結晶からなる支持基板と、支持基板の表面に接合されたSiC単結晶基板と、が積層したSiC接合基板に支持基板として用いる。例えば、
図1に示すように、CVD法により成膜された多結晶のSiCで形成されたSiC多結晶基板1である。SiC多結晶基板1は、厚さが200μm~500μmで、大きさが4インチ~8インチ径の円盤状である。例えば厚さが350μm程度の6インチの円盤状に形成される。なお、SiC多結晶基板1の多結晶SiCは、4H-SiC結晶、6H-SiC結晶および3C-SiC結晶の何れか、あるいはその混合物で構成されている。
【0020】
SiC多結晶基板1は、例えば表面11がSiC単結晶基板と接合する面だとすると、表面11の反対面12がSiC単結晶基板と接合しない面であり、SiC半導体装置を製造する工程において反対面12がバックグラインド処理されてSiC多結晶基板1が薄膜化処理される。なお、反対面12がSiC単結晶基板と接合する面であってもよく、この場合は表面11がSiC単結晶基板と接合しない面となり、表面11がバックグラインド処理される。
【0021】
SiC多結晶基板1をバックグラインド処理することにより、SiC多結晶基板1の厚みを40~60%研削して研削面13を形成した状態において、研削面13の直径に対する当該研削面13の反り量が0.17mm/インチ以下である。
【0022】
前記反り量が0.17mm/インチ以下であることにより、後工程において搬送エラーや加工テーブルに基板を保持することができない不具合等、反りに起因する問題の発生を防止することができる。
【0023】
例えば、SiC多結晶基板1の大きさが4インチ径、6インチ径、8インチ径の円盤状であれば、研削面13の直径もそれぞれ4インチ、6インチ、8インチとなる。反り量が0.17mm/インチ以下ということは、1インチあたりの反り量が0.17mm以下ということであり、小数点第二位を四捨五入した値で、研削面13の直径が4インチの場合の研削面13の反り量が0.7mm以下、研削面13の直径が6インチの場合の研削面13の反り量が1.0mm以下、研削面13の直径が8インチの場合の研削面13の反り量が1.4mm以下である。
【0024】
後工程における搬送エラーや加工テーブルに基板を保持することができない不具合等、反りに起因する問題の発生をより確実に防止するためには、例えばSiC多結晶基板1の大きさが6~8インチ径の円盤状である場合において、研削面13の反り量が1.0mm以下であることが好ましい。すなわち、反り量が0.17mm/インチ以下であることにより、現在主流となっている6インチ径以下の円盤状のSiC多結晶基板1であれば、後工程において搬送エラーや加工テーブルに基板を保持することができない不具合等、反りに起因する問題の発生をより確実に防止することができる。
【0025】
SiC多結晶基板1をバックグラインド処理することにより、SiC多結晶基板1の厚みを40~50%研削して研削面13を形成した状態において、研削面13の直径に対する当該研削面13の反り量が0.085mm/インチ以下であることが好ましい。
【0026】
前記反り量が0.085mm/インチ以下であることにより、後工程において搬送エラーや加工テーブルに基板を保持することができない不具合等、反りに起因する問題の発生をより確実に防止することができる。
【0027】
例えば、SiC多結晶基板1の大きさが4インチ径、6インチ径、8インチ径の円盤状であれば、研削面13の直径もそれぞれ4インチ、6インチ、8インチとなる。反り量が0.085mm/インチ以下ということは、小数点第二位を四捨五入した値で、研削面13の直径が4インチの場合の研削面13の反り量が0.3mm以下、研削面13の直径が6インチの場合の研削面13の反り量が0.5mm以下、研削面13の直径が8インチの場合の研削面13の反り量が0.7mm以下である。さらに、研削面15の直径が12インチとなった場合でも研削面15の反り量は1.0mm以下となり、後工程において搬送エラーや加工テーブルに基板を保持することができない不具合等、反りに起因する問題の発生を防止できるレベルとなる。
【0028】
後工程における搬送エラーや加工テーブルに基板を保持することができない不具合等、反りに起因する問題の発生を更に確実に防止するためには、例えばSiC多結晶基板1の大きさが6~8インチ径の円盤状である場合において、研削面13の反り量が0.5mm以下であることがより好ましい。
【0029】
SiC多結晶基板1を薄層化加工する工程では、SiC多結晶基板1の元の厚みの40~60%程度をバックグラインド処理により除去するのであるが、SiC多結晶基板1をどの程度薄層化するのかは、SiC半導体装置の厚みムラの許容範囲やどの程度高密度に実装する装置であるかによる。
【0030】
ここで、SiC多結晶基板1は、グラインダーを用いて5000番~8000番の砥石により研削することができる。そして、研削後の研削面は、表面粗さRaが1nm~5nmとなる。
【0031】
研削面13の反り量は、3次元測定器等の形状測定機を用いて測定することができる。
【0032】
[SiC接合基板]
SiC接合基板3は、
図2に示すように、SiC多結晶基板1と、SiC多結晶基板1の表面に接合されたSiC単結晶基板2を備える。SiC単結晶基板2は、単結晶のSiCで、直径の大きさは、SiC多結晶基板1と同一で4インチ~8インチ径であり、厚さは、特に限定はないが、例えば厚さが0.5μm~2.0μm程度であってもよい。SiC接合基板3は、半導体素子の構成要素を形成する部分を品質の良いSiC単結晶基板2を用いて、それを支持基板であるSiC多結晶基板1に接合することで、低コストな支持基板部と高品質な単結晶SiCを兼ね備えた基板となる。
【0033】
SiC多結晶基板1のSiC単結晶基板2と接合していない面である裏面14は、SiC半導体装置を製造する工程においてバックグラインド処理されてSiC多結晶基板1が薄膜化処理される。SiC多結晶基板1をバックグラインド処理することにより、SiC多結晶基板1の厚みを40~60%研削して研削面15を形成した状態において、研削面15の直径に対する当該研削面15の反り量が0.17mm/インチ以下である。なお、反対面12は裏面14と対応し、研削面13は研削面15と対応する面である。
【0034】
前記反り量が0.17mm/インチ以下であることにより、後工程において搬送エラーや加工テーブルに基板を保持することができない不具合等、反りに起因する問題の発生を防止することができる。
【0035】
例えば、SiC多結晶基板1の大きさが4インチ径、6インチ径、8インチ径の円盤状であれば、研削面15の直径もそれぞれ4インチ、6インチ、8インチとなる。反り量が0.17mm/インチ以下ということは、小数点第二位を四捨五入した値で、研削面15の直径が4インチの場合の研削面15の反り量が0.7mm以下、研削面15の直径が6インチの場合の研削面15の反り量が1.0mm以下、研削面15の直径が8インチの場合の研削面15の反り量が1.4mm以下である。
【0036】
後工程における搬送エラーや加工テーブルに基板を保持することができない不具合等、反りに起因する問題の発生をより確実に防止するためには、例えばSiC多結晶基板1の大きさが6~8インチ径の円盤状である場合において、研削面15の反り量が1.0mm以下であることが好ましい。すなわち、反り量が0.17mm/インチ以下であることにより、現在主流となっている6インチ径以下の円盤状のSiC多結晶基板1であれば、後工程において搬送エラーや加工テーブルに基板を保持することができない不具合等、反りに起因する問題の発生をより確実に防止することができる。
【0037】
SiC多結晶基板1をバックグラインド処理することにより、SiC多結晶基板1の厚みを40~50%研削して研削面15を形成した状態において、研削面15の直径に対する当該研削面15の反り量が0.085mm/インチ以下であることが好ましい。
【0038】
前記反り量が0.085mm/インチ以下であることにより、後工程において搬送エラーや加工テーブルに基板を保持することができない不具合等、反りに起因する問題の発生をより確実に防止することができる。
【0039】
例えば、SiC多結晶基板1の大きさが4インチ径、6インチ径、8インチ径の円盤状であれば、研削面15の直径もそれぞれ4インチ、6インチ、8インチとなる。反り量が0.085mm/インチ以下ということは、小数点第二位を四捨五入した値で、研削面15の直径が4インチの場合の研削面15の反り量が0.3mm以下、研削面15の直径が6インチの場合の研削面15の反り量が0.5mm以下、研削面15の直径が8インチの場合の研削面15の反り量が0.7mm以下である。さらに、研削面15の直径が12インチとなった場合でも研削面15の反り量は1.0mm以下と、後工程において搬送エラーや加工テーブルに基板を保持することができない不具合等、反りに起因する問題の発生を防止できるレベルとなる。
【0040】
後工程における搬送エラーや加工テーブルに基板を保持することができない不具合等、反りに起因する問題の発生を更に確実に防止するためには、例えばSiC多結晶基板1の大きさが6~8インチ径の円盤状である場合において、研削面15の反り量が0.5mm以下であることがより好ましい。
【0041】
[SiC半導体装置用基板]
SiC半導体装置用基板6は、
図3に示すように、順に、SiC多結晶基板1と、SiC多結晶基板1の表面に接合されたSiC単結晶基板2と、SiC単結晶基板2の表面に形成されたSiC単結晶エピタキシャル層4と、SiC単結晶エピタキシャル層4上に形成された半導体素子の構成要素5と、が積層した基板である。ここで、半導体素子の構成要素5は、特に限定はないが、例えば、ソース電極51と、ゲート電極52と、ゲート絶縁膜53と、N
+ソース54と、Pウェル55からなる。なお、半導体装置用基板は、個別に分割される前の状態の基板である。
【0042】
SiC多結晶基板1のSiC単結晶基板2と接合していない面である研削面16は、SiC半導体装置を製造する工程においてバックグラインド処理されてSiC多結晶基板1が薄膜化処理される。SiC多結晶基板1をバックグラインド処理することにより、SiC多結晶基板1を厚みが薄くなるように40%~60%研削して研削面16を形成し、研削面16の直径に対する当該研削面の反り量が0.17mm/インチ以下である。なお、研削面16は研削面13、研削面15と対応する面である。
【0043】
前記反り量が0.17mm/インチ以下であることにより、後工程において搬送エラーや加工テーブルに基板を保持することができない不具合等、反りに起因する問題の発生を防止することができる。
【0044】
例えば、SiC多結晶基板1の大きさが4インチ径、6インチ径、8インチ径の円盤状であれば、研削面16の直径もそれぞれ4インチ、6インチ、8インチとなる。反り量が0.17mm/インチ以下ということは、小数点第二位を四捨五入した値で、研削面16の直径が4インチの場合の研削面16の反り量が0.7mm以下、研削面16の直径が6インチの場合の研削面16の反り量が1.0mm以下、研削面16の直径が8インチの場合の研削面16の反り量が1.4mm以下である。
【0045】
後工程における搬送エラーや加工テーブルに基板を保持することができない不具合等、反りに起因する問題の発生をより確実に防止するためには、例えばSiC多結晶基板1の大きさが6~8インチ径の円盤状である場合において、研削面16の反り量が1.0mm以下であることが好ましい。すなわち、反り量が0.17mm/インチ以下であることにより、現在主流となっている6インチ径以下の円盤状のSiC多結晶基板1であれば、後工程において搬送エラーや加工テーブルに基板を保持することができない不具合等、反りに起因する問題の発生をより確実に防止することができる。
【0046】
[SiC半導体装置]
本実施形態のSiC半導体装置7は、前記SiC半導体装置用基板を個別に分割したものである。なお、
図4に示すように通電方向が基板の厚み方向となる縦型パワーデバイス用の半導体装置は、SiC半導体装置用基板6の研削面16に裏面電極としてドレイン電極8が形成された構造を有する。
【0047】
[SiC多結晶基板の製造方法]
次に、SiC多結晶基板の製造方法について説明する。本製造方法は、支持基板であるSiC多結晶基板1と、SiC多結晶基板1の表面に接合されたSiC単結晶基板2と、が積層したSiC接合基板3において、支持基板として用いるSiC多結晶基板1の製造方法であり、以下に説明する成膜工程と、分離工程と、熱処理工程と、研削・研磨工程と、を含む。
図5は、支持基板となるSiC多結晶基板1およびSiC接合基板3の製造方法の一例のフローチャートであり、ステップS10~S80の工程を示している。
【0048】
〈ステップS10(成膜工程)〉
SiC多結晶基板1の製造方法では、ステップS10にて、種基板にSiC多結晶膜を成膜する。カーボンやシリコン等で形成された種基板を下地基材とし、下地基材上にCVD法等によってSiC多結晶を成膜させる。
【0049】
〈ステップS20(分離工程)〉
次にステップS20にて、種基板と前記SiC多結晶膜を分離する。例えば、SiC多結晶膜を成膜した下地基材を燃焼または酸により溶解させて除去することができる。
【0050】
〈ステップS30(熱処理工程)〉
本実施の形態では、後述するバックグラインド処理(ステップS110)によりSiC多結晶基板1を薄層化することで発生するSiC半導体装置用基板6の反りを抑制することが課題であり、そのために熱処理工程を行う。
【0051】
分離工程後のSiC多結晶膜は、種基板から分離された状態になると、バックグラインド処理前であっても数十μm程度の反りが発生する。この分離工程後のSiC多結晶膜の反りの方向については、上述の3次元測定器等の形状測定機を用いるほか、各種の簡易な計測や目視でも判別することが可能である。熱処理工程では、SiC多結晶膜の反りを矯正した状態で熱処理する。反りの矯正は、SiC多結晶膜を当該SiC多結晶膜の有する反りの方向とは反対方向への力を作用させた状態を維持することで行う。
【0052】
例えば、SiC多結晶膜の反りを矯正することのできる矯正治具の上にSiC多結晶膜を積載し、上方より錘をかけることでSiC多結晶膜の有する反りの方向とは反対方向の力が作用するように(例えば、SiC多結晶膜の有する反りとは反対方向にSiC多結晶膜が反るように)形状を矯正し、この状態を維持して熱処理を行うとよい。矯正治具によってSiC多結晶膜に応力をかけた状態で熱処理することにより、後述する研削工程の後のSiC多結晶膜の反りを抑制するようにSiC多結晶膜の内部応力を緩和することが可能となる。
【0053】
矯正治具は、SiC多結晶膜の反りを矯正できる形状であれば特に限定はない。また、矯正治具としては、例えば、黒鉛やアルミナ等の材質のものを用いてもよい。一例として、
図7に、SiC多結晶膜100の反りの矯正方法を示す概略側面図を示す。
図7(a)において、円盤状のSiC多結晶膜100は中央が凹んで外周が起き上がった形状となる反りが生じており、中央が下向きに突出した凸状の球面110と、球面110の反対面であり中央が下向きに凹んだ凹状の球面120を備える。このSiC多結晶膜100の球面110が矯正治具200の矯正面210に接するように矯正治具200に載せ、更にSiC多結晶膜100の球面120と錘300の球面310が接するように、錘300をSiC多結晶膜100へ載せる(
図7(b))。この状態を維持して熱処理を行う。
【0054】
矯正治具200の矯正面210は、上向きに突出した凸状の球面であり、SiC多結晶膜100の直径が6インチであれば、矯正面210の曲率半径は5.0m以下であればよく、SiC多結晶膜100の反りを効果的に矯正する観点から、好ましくは、4.5m~3.0mである。また、矯正面210の中心220は矯正面210において最も突出しており、SiC多結晶膜100の反りを効果的に矯正する観点から、矯正面210の外周230よりも0.6mm~0.8mm突出していることが好ましい。
【0055】
錘は、SiC多結晶膜100の球面110の全面を矯正治具200の矯正面210の全面に密着するように設置できれば、その形状や重さに限定はない。また、錘としては、例えば、黒鉛やアルミナ等の材質のものを用いてもよい。例えば、錘300の球面310は上向きに凹んだ凹状の球面であり、矯正面210の凸状の球面形状に適合した凹状の球面形状としてもよい。このような球面形状に適合した形状とすることで、SiC多結晶膜100にキズ等が発生することを防止できる。このような球面形状に適合した形状とするべく、球面310の曲率半径は5.0m以下であればよく、SiC多結晶膜100の反りを効果的に矯正する観点から、好ましくは、4.5m~3.0mである。また、球面310の中心320は球面310において最も凹んでおり、SiC多結晶膜100の反りを効果的に矯正する観点から、球面310の外周330よりも0.6mm~0.8mm凹んでいることが好ましい。
【0056】
錘の重さは、SiC多結晶膜100の球面110の全面を矯正治具200の矯正面210の全面に密着するように設置できれば特に限定されない。例えば、SiC多結晶膜100の厚みが1.0mm以下であれば、錘300の重さは3kg以上8kg以下にすればよく、好ましくは、4kg以上6kg以下である。錘300の重さが3kg未満の場合には、SiC多結晶膜100の反りを十分に矯正できないことがある。また、錘300の重さが8kgを超えるとSiC多結晶膜100が割れる不具合が発生する場合がある。
【0057】
図8は、
図7とは異なる態様の、SiC多結晶膜100の反りの矯正方法を示す概略側面図である。
図7の場合とは異なり、SiC多結晶膜100の球面120を下にして矯正治具200aの矯正面210aに接するように矯正治具200aに載せ、更にSiC多結晶膜100の球面110と錘300aの球面310aが接するように、錘300aをSiC多結晶膜100へ載せる(
図8(b))。この状態を維持して熱処理を行ってもよい。
【0058】
矯正治具200aの矯正面210aは、下向きに凹んだ凹状の球面であり、SiC多結晶膜100の直径が6インチであれば、矯正面210aの曲率半径は5.0m以下であればよく、SiC多結晶膜100の反りを効果的に矯正する観点から、好ましくは、4.5m~3.0mである。また、矯正面210aの中心220aは矯正面210aにおいて最も凹んでおり、SiC多結晶膜100の反りを効果的に矯正する観点から、矯正面210aの外周230aよりも0.6mm~0.8mm凹んでいることが好ましい。
【0059】
また、錘300aの球面310aは下向きに突出した凸状の球面であり、矯正面210aの凹状の球面形状に適合した凸状の球面形状としてもよい。このような球面形状に適合した形状とすることで、SiC多結晶膜100にキズ等が発生することを防止できる。このような球面形状に適合した形状とするべく、球面310aの曲率半径は5.0m以下であればよく、SiC多結晶膜100の反りを効果的に矯正する観点から、好ましくは、4.5m~3.0mである。また、球面310aの中心320aは球面310aにおいて最も突出しており、SiC多結晶膜100の反りを効果的に矯正する観点から、球面310aの外周330aよりも0.6mm~0.8mm突出していることが好ましい。
【0060】
例えば、SiC多結晶膜100の厚みが1.0mm以下であれば、錘300aの重さは3kg以上8kg以下にすればよく、好ましくは、4kg以上6kg以下である。錘300aの重さが3kg未満の場合には、SiC多結晶膜100の反りを十分に矯正できないことがある。また、錘の重さが8kgを超えるとSiC多結晶膜100が割れる不具合が発生する場合がある。
【0061】
SiC多結晶膜100の反りの矯正は、SiC多結晶膜100の反りに対して反対方向に反らせるためにSiC多結晶膜100の周辺部を錘で押さえることなどにより、SiC多結晶膜100の有する反りの方向と反対方向への力を作用させることが効果的である。このため、
図9(a)に示すリング状治具400を介して、SiC多結晶膜100の周辺部を押さえるように錘300bを載置してもよい(
図9(b))。また、リング状治具400を用いることで、錘の下面を球面状に加工する必要がないことから、容易に作製することができる平面状の下面310bを備える錘300bを用いることができる。リング治具400は、黒鉛やアルミナ等の材質のものを用いることができる。また、SiC多結晶膜100の周辺部のみと接触するよう、下面がリング形状の錘を用いても良い。
【0062】
また、SiC多結晶膜100の反りの矯正は、複数枚のSiC多結晶膜100を同時に行うこともできる。例えば、
図10に示すように、複数枚のシート状のカーボンシート500を複数のSiC多結晶膜100の間に挿入して積層して、矯正治具200と錘300を用いて反りの矯正を行ってもよい。SiC多結晶膜100の間にカーボンシート500を介することで、SiC多結晶膜100を熱処理したときの、SiC多結晶膜100の表面の昇華・再結晶化によるSiC多結晶膜100間の接着を抑制または防止できる。
【0063】
図7~10において点線Lで示すように、いずれの場合においても、SiC多結晶膜100の球面110の中心と、矯正治具200の矯正面210の中心と、錘300の球面310の中心が同一直線状にあるように、かつその直線(
図7~10の点線L)が鉛直方向と平行となるように、矯正治具200、SiC多結晶膜100、錘300を重ねることで、SiC多結晶膜100の反りを確実に矯正することができる。
【0064】
熱処理工程は、ステップS20の分離工程後、バックグラインド処理(ステップS110)前に行う。SiC多結晶基板1への熱処理は、例えばSiC多結晶基板の製造工程、SiC接合基板3の製造工程、または、SiC半導体装置用基板6の製造工程においてバックグラインド処理前であれば可能である。しかしながら、後述するようにSiC多結晶膜の熱処理温度が1700℃を超える場合、SiC多結晶基板の表面のSiCの昇華・再結晶化が始まり表面が変質する。このため熱処理は、SiC多結晶基板の製造工程で行うことが好ましく、特に、SiC多結晶基板の研削工程(ステップS40)前に行うことで、熱処理で発生した表面の変質等の不具合を研削工程(ステップS40)で排除することが可能となる。かつ、熱処理工程により裏面研削後の反りを小さくすることができる。
【0065】
ステップS30では、分離工程後のSiC多結晶膜を1600℃以上2000℃未満に保持して熱処理する。本工程は、SiC多結晶膜を1700℃~1800℃の間に3時間以上保持する工程であってもよい。
【0066】
SiC多結晶膜の熱処理温度が高くなるほど、バックグラインド処理後の基板の反りは小さくなる傾向である。熱処理によりSiC多結晶基板成膜時の内部応力が緩和されて基板の反りを低減することができる。熱処理温度が1600℃未満では、バックグラインド処理後の基板の反りの改善効果が小さい。熱処理温度が1700℃以上ではSiC多結晶膜の表層からのSiCの昇華・再結晶化が始まり、1800℃を超えるとSiCの昇華・再結晶化が過剰に進行しやすい。また、熱処理温度が2000℃を超えるとSiC多結晶膜の表層に数μm~数十μmのクレーター状の気孔やくぼみが形成される場合があり、裏面電極の形成に不具合が生じるおそれがあるため、好ましくない。好ましくは、1700℃以上、1800℃以下に多結晶膜を保持して熱処理することである。
【0067】
SiC多結晶膜を1600℃以上2000℃未満に保持する保持時間は、3時間以上であることが好ましい。保持時間が3時間未満では、裏面研磨後の基板の反りの改善効果が小さい場合がある。また、保持時間の上限は特に限定はないが、30時間以下好ましい。保持時間が30時間を超える場合では、それ以上に効果が増大することは無く、保持時間が長くなることによる製造コスト上のデメリットが大きくなるからである。好ましくは20時間以上、30時間以内の保持時間とすることである。
【0068】
熱処理中のSiC多結晶膜の雰囲気は、酸化等の余計な反応が生じないよう、アルゴン(Ar)や窒素(N)等の不活性ガス、真空の少なくとも何れか1つの雰囲気とすることが好ましい。例えば熱処理に用いる熱処理炉内は、不活性ガスをフローさせた状態であることが望ましく、炉内に十分に不活性ガスが満たされる状態であればその流量に限定されない。加熱処理は、雰囲気制御加熱炉等を用いて実行してもよい。
【0069】
〈ステップS40(研削工程)、S50(研磨工程)〉
ステップ40では、研削によりSiC多結晶膜の厚みを所定の厚みになるように研削加工する。そして、ステップ50では、研磨によりSiC多結晶膜の表面を研磨する。これらの研削・研磨工程を経て、SiC単結晶基板と接合する準備ができたSiC多結晶基板が、支持基板として用いることのできる本実施の形態に係るSiC多結晶基板1である。
【0070】
[SiC接合基板の製造方法]
〈ステップS60~S80〉
ステップS60~S80は、SiC接合基板の製造方法である。ステップS60では、上述したSiC多結晶基板1と、別途用意したSiC単結晶基板2を接合する(接合工程)。なお、単結晶SiC基板2は、特許文献1に記載がある様に水素原子のアブレーションによる剥離技術(スマートカット(登録商標)とも呼ばれる)を用い、厚板のSiC単結晶基板を支持基板と接合し(ステップ60)、その後分離して支持基板状に薄板状のSiC単結晶基板を製作する(ステップ70)方法を用いてもよい。その後、ステップS80においてSiC単結晶基板の表面を研磨する研磨工程を経て得られるのが、SiC多結晶基板1、SiC単結晶基板2を備えるSiC接合基板3である。
【0071】
なお、接合されるSiC単結晶基板は、改良型のレーリー法で作製されたSiC単結晶でもよいし、CVD法を用いて成膜したSiC単結晶でもよい。
【0072】
[SiC半導体装置の製造方法]
次に、SiC半導体装置の製造方法について説明する。
図6はSiC半導体装置7の製造方法の一例を示すフローチャートであり、ステップS90~S140の工程を示している。ステップS90では、SiC単結晶基板2の表面にSiC単結晶エピタキシャル層4をエピタキシャル成長し、ステップS100では、SiC単結晶エピタキシャル層4の表面に半導体素子の構成要素5等の回路パターンを形成し、そして回路パターンを樹脂等で保護するための表面保護層を形成する。その後、ステップS110にて回路パターンを形成した面とは反対の裏面側を研削加工し、SiC多結晶基板1を薄層化して研削面16を形成する(バックグラインド処理)。ステップS110の工程までを終えた状態の基板が、
図3に示すSiC半導体装置用基板6である。ステップS110の工程後、ステップS120にてSiC半導体装置用基板6の研削面16に裏面電極としてドレイン電極8を形成し、SiC半導体装置7となる。なお、裏面電極を形成する前に、研削面16に対して研磨加工等の表面加工を行ってもよい。
【0073】
その後、ステップS130にてSiC半導体装置7の回路パターンを保護している表面保護層を除去し、ステップS140にて回転するダイヤモンドブレード等を用いてSiC半導体装置7を切断してダイを形成するダイシングを行う。
【0074】
SiC多結晶基板1の製造から半導体製造までの工程の流れは、ステップS10~S140のとおりであるが、コンタクトホールの形成やプローブ検査等、適宜既存の検査工程や処理工程を更に行っても良い。
【0075】
SiC半導体装置7の製造過程においては、SiC単結晶エピタキシャル層4に半導体素子の構成要素5が形成された後、バックグラインド処理により裏面研削が行われる。特に、SiC半導体装置7は、通電方向が基板の厚み方向となる縦型パワーデバイスに用いられることが多く、縦型パワーデバイスの作製工程における表面回路パターン実装後のバックグラインド処理による薄層化加工工程を実施する。この工程では、SiC多結晶基板1の元の厚みの40~60%程度を除去する必要がある。例えば、直径6インチのSiC多結晶基板では、基板の厚みが350μmである場合に150~200μm程度の厚みを研削により除去することとなるため、SiC多結晶の研削量が多く、一般的に研磨よりも薄層加工能率の高い研削加工が採用されている。例えば、SiC多結晶基板との接合を行わないSiC単結晶基板を用いたSiC半導体装置用基板では、バックグラインド処理によるSiC単結晶基板の薄層化後の基板の反りは、約1mm以下に抑えることができる。この範囲内に抑えることで、後工程で支障なく基板の処理をすることが可能となる。これに対し、SiC多結晶基板1とSiC単結晶基板2を接合したSiC接合基板3を使用し、バックグラインド処理によるSiC多結晶基板1の薄層化処理を行った後の基板の反りは、熱処理工程を行わない従来の技術では、例えば1.0mmを大きく超えるような状況であった。
【0076】
本実施の形態であれば、分離工程と研削工程との間に熱処理工程を行うことにより、バックグラインド処理によるSiC多結晶基板の薄層化処理を行った後の基板の反りを1.0mm程度以下に抑えることができる。
【実施例0077】
以下に、実施例を示してさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0078】
[実施例1]
〈SiC多結晶基板1の作製〉
カーボン製の円盤状に形成された種基板を下地基材とし、下地基材の表面に、化学気相成長法(CVD: Chemical Vapor Deposition)により、2mmの厚さのSiC多結晶膜を成膜した(ステップS10)。原料ガスとしては、メチルクロロシラン、キャリアガスとして水素及び窒素ガスを使用した。この化学気相成長法における成長温度は1400℃とした。その後、燃焼法により1000°Cの大気雰囲気で下地基板を加熱して除去し、直径6インチの円盤状のSiC多結晶膜100を作製した(ステップS20)。
【0079】
このSiC多結晶膜100を、雰囲気制御加熱炉を用いて熱処理した(ステップS30)。加熱温度は1700℃、加熱温度の保持時間を24時間とし、炉内雰囲気はアルゴンガス雰囲気とした。熱処理時は、黒鉛製の矯正治具200、黒鉛製のリング状治具400および黒鉛製の錘300bを使用してSiC多結晶膜100の反りを矯正した。この際まず、上面を矯正面210とした矯正治具200の上にSiC多結晶膜100を載置する。矯正面210の曲率半径は4mであり、この矯正面210にSiC多結晶膜100の中央が突出した凸状の球面110を載せる。このようにして矯正治具200の上に載置されたSiC多結晶膜100の上に、外径150mm、内径100mm、板厚2mmのリング状治具400を載せ、更にリング状治具400の上に、重量4kgの円柱型の錘300bを設置した。このように配置することで、SiC多結晶膜100の球面110が矯正面210に密着するように変形させ、SiC多結晶膜100の有する反りの方向とは反対方向への力を作用させることで、反対方向に反らせた状態を維持して熱処理をした。なお、矯正治具200の上に載置する前のSiC多結晶膜100の反りの方向については、上述の3次元測定器等の形状測定機を用いるほか、各種の簡易な計測や目視でも判別することが可能である。
【0080】
その後、SiC多結晶膜100の表面を研削・研磨して平坦化し(ステップS40、S50)、直径6インチ(約150mm)、厚さが350μmのSiC多結晶基板1を得た。
【0081】
〈SiC接合基板3の作製〉
製造したSiC多結晶基板1を使用してSiC接合基板3を作製した。SiC多結晶基板1と接合するSiC単結晶基板として、改良型のレーリー法で作製した厚さが350μm、直径6インチ(約150mm)の、主面方位が<0001>である4Hポリタイプの円盤状の基板を用いた。なお、SiC接合基板3の製造においては、特許文献1に記載がある水素原子のアブレーションによる剥離技術(スマートカット(登録商標)とも呼ばれる)を用いた。
【0082】
(ステップS60)
SiC単結晶基板のSiC多結晶基板1と接合する接合対象面に対して水素イオンを注入し、接合対象面から深さ1.0μmの位置に、水素イオン注入層を形成した。SiC単結晶基板とSiC多結晶基板1を静電チャックにより吸引し、チャンバー内にセットした。次に、静電チャックを移動させて、常温接合工程で両基板が正しい位置関係で接触できるように、SiC単結晶基板とSiC多結晶基板1との相対位置の位置合わせを行った。次に、チャンバー内を2×10-6Paの真空状態にした。次に、SiC単結晶基板の接合対象面の全面およびSiC多結晶基板1の接合対象面の全面にFABガンを用いて、アルゴンの中性原子ビームを均一に照射し、両方の接合対象面の酸化膜や吸着層を除去して結合手を表出させ、活性状態とした。次に、常温において真空状態を維持したままで、チャンバー内で静電チャックを移動させることにより、SiC単結晶基板の接合対象面とSiC多結晶基板1の接合対象面を、チャンバー内において真空状態で接触させて共有結合によって直接接合し、接合基板を得た。
【0083】
(ステップS70)
次に、ファーネス炉を用いて、アルゴンガスを充満させた不活性雰囲気下において接合基板を1000℃に加熱して水素イオン注入層に微小気泡層を形成し、SiC単結晶基板2を微小気泡層で分離して、1.0μmの厚さの薄板状のSiC単結晶基板2をSiC多結晶基板1に転写した。
【0084】
(ステップS80)
ステップS70によって露出したSiC単結晶基板2の表面を、CMP研磨にて平滑となるように加工した。これにより、SiC接合基板3を得た。
【0085】
〈SiC半導体装置用基板6の作製〉
次に、SiC半導体装置用基板6を作製した。上記の方法で製造したSiC接合基板3を使用し、SiC単結晶基板2の表面に化学気相成長法を用いて、SiC単結晶エピタキシャル層4を厚さ20μm成膜した(ステップS90)。その後、SiC単結晶エピタキシャル層4の表面に半導体素子の構成要素5として回路パターンを形成し、樹脂等で保護した(ステップS100)。その後、SiC多結晶基板1の露出面側を研削加工する裏面研削を行い、研削面16を形成した(ステップS110)。裏面研削は、DISCO製グラインダーを用いて、SiC多結晶基板1の裏面を研削加工した。研削に用いた砥石として、直径200mmの7000番の砥石を使用した。
【0086】
〈研削面16の反りの測定〉
SiC半導体装置用基板6の反りの測定は、コムス株式会社製3次元測定器 EMS-3D 300XYを用いて行った。まず、非全面吸着面にてSiC半導体装置用基板6の研削面16を吸着し、SiC半導体装置用基板6の半導体素子の構成要素5が上向きとなるように保持した状態で研削面16内の高低差データを取得し、次に、反りを基準平面との最大距離と最小距離の和として算出した。なお、ステップS110によって研削する前の状態、ステップS110におけるSiC多結晶基板1の裏面研削量が150μm(SiC多結晶基板1の板厚の43%)の状態、175μm(SiC多結晶基板1の板厚の50%)の状態、および200μm(SiC多結晶基板1の板厚の57%)の状態、における反りを測定した。測定結果を表1に示す。
【0087】
なお、非全面吸着面とは、基板の元の形状を変えないように、反りを測定する対象となる測定対象面の3点または1点を吸着・保持することのできる吸着面であり、測定対象面の全面を吸着しないことから、非全面吸着面を用いることで、反りの測定が可能となる。
【0088】
[実施例2]
実施例2では、実施例1で作製したSiC多結晶基板1の反りを評価した。まず、裏面研削評価として、実施例1のステップS110と同じ条件でSiC多結晶基板1にバックグラインド処理を実施した。また、バックグラインド処理前のSiC多結晶基板1の状態の反対面12、SiC多結晶基板1の裏面研削量が150μm(SiC多結晶基板1の板厚の43%)の状態、175μm(SiC多結晶基板1の板厚の50%)の状態、および200μm(SiC多結晶基板1の板厚の57%)の状態、における研削面13の反りを、非全面吸着面にて反対面12および研削面13を吸着・保持して測定した。測定結果を表1に示す。
【0089】
[実施例3]、[実施例4]
実施例3は、熱処理工程における矯正治具200の矯正面210の曲率半径を3.5mに変更した。実施例4は、熱処理工程における熱処理温度を1800℃に変更した。その他は、実施例1におけるSiC多結晶基板1の作製条件と同じ条件で作成したSiC多結晶基板1の反りを評価した。実施例2と同様に、バックグラインド処理を実施し、非全面吸着面にて反対面12および研削面13を吸着・保持して反対面12および研削面13の反りを測定した。すなわち、バックグラインド処理前のSiC多結晶基板1の状態の反対面12、SiC多結晶基板1の裏面研削量が150μm(SiC多結晶基板1の板厚の43%)の状態、175μm(SiC多結晶基板1の板厚の50%)の状態、および200μm(SiC多結晶基板1の板厚の57%)の状態、における研削面13の反りを測定した。測定結果を表1に示す。
【0090】
[比較例1]
ステップS30の熱処理工程を実施しなかった他は、実施例1と同様にSiC多結晶基板1、SiC接合基板3およびSiC半導体装置用基板6を製造し、製造したSiC半導体装置用基板6の反りを測定した。測定結果を表1に示す。
【0091】
[比較例2]
比較例1で作製したSiC多結晶基板1の反りを、実施例2と同様に測定した。測定結果を表1に示す。
【0092】
[比較例3]
比較例1で製作したSiC接合基板3の反りを測定した。具体的には、実施例1のステップS110と同じ条件でSiC接合基板3にバックグラインド処理を実施した。また、バックグラインド処理前のSiC接合基板3の状態の裏面14、SiC接合基板3の裏面研削量が150μm(SiC多結晶基板1の板厚の43%)の状態、175μm(SiC多結晶基板1の板厚の50%)の状態、および200μm(SiC多結晶基板1の板厚の57%)の状態、における研削面15の反りを測定した。反りの測定は、非全面吸着面にて裏面14および研削面15を吸着・保持して行った。測定結果を表1に示す。
【0093】
[比較例4]
比較例4は、熱処理工程で矯正治具200、リング状治具400および錘300bを使用せず、SiC多結晶膜100の反りを矯正せずに熱処理を行った。その他は、実施例1におけるSiC多結晶基板1の作製条件と同じ条件でSiC多結晶基板1を作成し、SiC多結晶基板1の反りを評価した。非全面吸着面にてバックグラインド処理前のSiC多結晶基板1の状態の反対面12、および実施例2と同様にバックグラインド処理を実施した後の研削面13を吸着・保持して、反対面12および研削面13の反りを測定した。測定結果を表1に示す。
【0094】
【0095】
(結果と考察)
SiC半導体装置用基板6は、SiC多結晶基板1、SiC単結晶基板2、SiC単結晶エピタキシャル層4、半導体素子の構成要素5で構成されている。この中で、SiC多結晶基板1の厚みが他に比べ十分大きく、かつ、裏面研削では、このSiC多結晶基板1が直接加工されていることから、SiC多結晶基板1は反りに対する影響が大きいことがわかる。また、表1の結果では、SiC半導体装置用基板6、SiC接合基板3、SiC多結晶基板1のいずれの場合であっても、裏面研削前(表1における「BG加工前」)の反りよりも裏面研削後(表1における「BG加工後」)の反りの程度が相当大きくなっていた。このことから、裏面研削による基板の反りは、SiC単結晶基板1の裏面研削後の反りを改善することが必要となる。表1の実施例1~4、比較例1~4を比べると、SiC多結晶基板1に熱処理を行うことで、反りを改善できる結果が得られた。
【0096】
比較例1~比較例3では、SiC半導体装置用基板6、SiC接合基板3、SiC多結晶基板1のいずれの場合も、熱処理工程を行っていないことにより、裏面研削後の反りは、それぞれにおいて1mmを超えている。また、SiC半導体装置用基板6、SiC接合基板3、SiC多結晶基板1の裏面研削後の反りはほぼ同等である。この結果から、SiC半導体装置用基板6の裏面研削後の反りは、多結晶SiC基板1が本質的な裏面研削後の反りの原因であると推察される。そして、実施例1~4の結果より、SiC多結晶基板1単体での裏面研削後の反りを熱処理により改善することで、SiC半導体装置用基板6の裏面研削後の反りも改善できる結果となった。
【0097】
また、矯正治具200、リング状治具400および錘300bを使用してSiC多結晶膜100の反りを矯正した状態、すなわちSiC多結晶膜100の有する反りの方向とは反対方向への力を作用させた状態を維持しつつ、熱処理を行うことにより、SiC多結晶膜100の反りを矯正せずに熱処理を行った場合よりも反りの程度を改善することができた(実施例1~4、比較例4)。
【0098】
以上説明した通り、本実施の形態はバックグラインド処理により裏面研削加工したときの6インチの基板の反りを1mm以下に低減でき、また本実施の形態では長時間・高温を特徴とする熱処理工程によりこれを実現することのできる製造方法を提供することができるため、産業上有用である。バックグラインド処理により裏面研削加工後の6インチの基板の反りを1mm以下に低減できる熱処理条件として、熱処理温度1600℃以上2000℃未満であり、温度の保持時間は3時間以上である。また、SiC多結晶膜の反りを矯正した状態を維持しつつ、熱処理を行うことにより、バックグラインド処理により裏面研削加工を行った後の基板の反りをより緩和することができる。
1,1A…SiC多結晶基板、2…SiC単結晶基板、3,3A…SiC接合基板、4…SiC単結晶エピタキシャル層、5…半導体素子の構成要素、6…SiC半導体装置用基板、7…SiC半導体装置、8…ドレイン電極、11…表面、12…反対面、13、15,16…研削面、14…裏面、51…ソース電極、52…ゲート電極、53…ゲート絶縁膜、54…N+ソース、55…Pウェル、100…SiC多結晶膜、110,120…球面、200,200a…矯正治具、210,210a…矯正面、220,220a,320,320a…中心、230,230a…外周、300,300a,300b…錘、310,310a…球面、310b…下面、330,330a…外周、400…リング状治具、500…カーボンシート。