(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024169359
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】シリコン窒化膜エッチング用組成物およびこれを用いたシリコン窒化膜のエッチング方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/306 20060101AFI20241128BHJP
H01L 21/308 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
H01L21/306 E
H01L21/308 E
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024082405
(22)【出願日】2024-05-21
(31)【優先権主張番号】10-2023-0067887
(32)【優先日】2023-05-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】590002817
【氏名又は名称】三星エスディアイ株式会社
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG SDI Co., LTD.
【住所又は居所原語表記】150-20 Gongse-ro,Giheung-gu,Yongin-si, Gyeonggi-do, 446-902 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】朴 慶 熏
【テーマコード(参考)】
5F043
【Fターム(参考)】
5F043AA35
5F043BB23
5F043DD07
(57)【要約】 (修正有)
【課題】物理的な摩擦によって発生する気泡を減らすことができるシリコン窒化膜エッチング用組成物およびこれを用いたシリコン窒化膜のエッチング方法を提供する。
【解決手段】リン酸、下記化学式1で表される化合物、下記化学式2で表される化合物、および水を含むシリコン窒化膜エッチング用組成物であって、前記シリコン窒化膜エッチング用組成物の総質量を基準として、前記水の含有量は11質量%~16質量%であり、
1H-NMRスペクトルにより測定されるSi-CH
3に由来するピークの面積に対するSi-OR
a(ここで、R
aは、置換または非置換のアルキル基である)に由来するピークの面積の比が2~16である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リン酸、下記化学式1で表される化合物、下記化学式2で表される化合物、および水を含む、シリコン窒化膜エッチング用組成物であって、
前記シリコン窒化膜エッチング用組成物の総質量を基準として、前記水の含有量は11質量%~16質量%であり、
1H-NMRスペクトルにより測定されるSi-CH
3に由来するピークの面積に対するSi-OR
a(ここで、R
aは、置換または非置換のアルキル基である)に由来するピークの面積の比が2~16である、シリコン窒化膜エッチング用組成物:
【化1】
前記化学式1中、
R
1およびR
2は、それぞれ独立して、水素原子、重水素原子、または置換もしくは非置換の炭素数1~10のアルキル基であり、
R
3は、それぞれ独立して、置換または非置換の炭素数1~10のアルキル基であり、
aおよびbは、それぞれ独立して、0~2の整数のうちの1つであり、かつ0≦a+b≦2である;
【化2】
前記化学式2中、
R
5およびR
6は、それぞれ独立して、水素原子、重水素原子、非置換の炭素数1~10のアルキル基、少なくとも1つの水素原子が-NR
cR
dで置換された炭素数1~10のアルキル基、または少なくとも1つの-CH
2-が-NR
e-で置換された炭素数2~10のアルキル基であり、
R
7は、
(i)少なくとも1つの水素原子が-NR
fR
gで置換された炭素数1~10のアルキル基、または
(ii)少なくとも1つの-CH
2-が-NR
h-で置換された炭素数2~10のアルキル基であり、
この際、R
c~R
hは、それぞれ独立して、水素原子、置換もしくは非置換の炭素数1~5のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数3~10のシクロアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数6~10のアリール基、またはこれらの組み合わせであり、
R
8は、置換または非置換の炭素数1~10のアルキル基であり、
cおよびdは、それぞれ独立して、0~2の整数のうちの1つであり、かつ0≦c+d≦2である。
【請求項2】
前記化学式1中のR1~R3は、それぞれ独立して、置換または非置換の炭素数1~5のアルキル基である、請求項1に記載のシリコン窒化膜エッチング用組成物。
【請求項3】
前記化学式1中のR3は、メチル基、エチル基、またはプロピル基である、請求項1に記載のシリコン窒化膜エッチング用組成物。
【請求項4】
前記化学式1中のa+bは0である、請求項1に記載のシリコン窒化膜エッチング用組成物。
【請求項5】
前記化学式2中のR5~R7は、それぞれ独立して、
(i)少なくとも1つの水素原子が-NRfRgで置換された炭素数1~10のアルキル基、または
(ii)少なくとも1つの-CH2-が-NRh-で置換された炭素数2~10のアルキル基である、請求項1に記載のシリコン窒化膜エッチング用組成物。
【請求項6】
前記化学式2中に含まれ得るRc~Rhは、それぞれ独立して、水素原子、置換もしくは非置換の炭素数1~5のアルキル基、またはこれらの組み合わせである、請求項5に記載のシリコン窒化膜エッチング用組成物。
【請求項7】
前記化学式2中のc+dは0である、請求項1に記載のシリコン窒化膜エッチング用組成物。
【請求項8】
前記水の含有量は、前記シリコン窒化膜エッチング用組成物の総質量を基準として12質量%~15質量%である、請求項1に記載のシリコン窒化膜エッチング用組成物。
【請求項9】
前記Si-CH3に由来するピークの面積に対するSi-ORa(ここで、Raは、置換または非置換のアルキル基である)に由来するピークの面積の比が2~10である、請求項1に記載のシリコン窒化膜エッチング用組成物。
【請求項10】
前記化学式1で表される化合物の含有量は、前記シリコン窒化膜エッチング用組成物の総質量を基準として、0.3質量%~10質量%である、請求項1に記載のシリコン窒化膜エッチング用組成物。
【請求項11】
前記化学式2で表される化合物の含有量は、前記シリコン窒化膜エッチング用組成物の総質量を基準として、0.5質量%~30質量%である、請求項1に記載のシリコン窒化膜エッチング用組成物。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載のシリコン窒化膜エッチング用組成物をシリコン窒化膜表面と接触させることを含む、シリコン窒化膜のエッチング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコン窒化膜エッチング用組成物およびこれを用いたシリコン窒化膜のエッチング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多様な半導体製造工程は、シリコン窒化膜に対する選択的エッチング工程を必要とする。最近、V-NANDの製造工程中、シリコン窒化膜とシリコン酸化膜とが交互に積層された構造において、シリコン窒化膜のみを選択的に除去する工程、およびこのような工程を実現するためのエッチング用組成物に対する開発が活発に行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】韓国公開特許第10-2020-0119668号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、物理的な摩擦によって発生する気泡を減らすことができるシリコン窒化膜エッチング用組成物を提供することを目的とする。
【0005】
また、本発明は、上記シリコン窒化膜エッチング用組成物を用いたエッチング方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態によるシリコン窒化膜エッチング用組成物は、リン酸、下記化学式1で表される化合物、下記化学式2で表される化合物、および水を含むシリコン窒化膜エッチング用組成物であって、前記シリコン窒化膜エッチング用組成物の総質量を基準として、前記水の含有量は11質量%~16質量%であり、1H-NMRスペクトルにより測定される、Si-CH3に由来するピークの面積に対するSi-ORa(ここで、Raは、置換または非置換のアルキル基である)に由来するピークの面積の比が2~16である、シリコン窒化膜エッチング用組成物である:
【0007】
【0008】
上記化学式1中、
R1およびR2は、それぞれ独立して、水素原子、重水素原子、または置換もしくは非置換の炭素数1~10のアルキル基であり、
R3は、それぞれ独立して、置換または非置換の炭素数1~10のアルキル基であり、
aおよびbは、それぞれ独立して、0~2の整数のうちの1つであり、かつ0≦a+b≦2である;
【0009】
【0010】
上記化学式2中、
R5およびR6は、それぞれ独立して、水素原子、重水素原子、非置換の炭素数1~10のアルキル基、少なくとも1つの水素原子が-NRcRdで置換された炭素数1~10のアルキル基、または少なくとも1つの-CH2-が-NRe-で置換された炭素数2~10のアルキル基であり、
R7は、
(i)少なくとも1つの水素原子が-NRfRgで置換された炭素数1~10のアルキル基、または
(ii)少なくとも1つの-CH2-が-NRh-で置換された炭素数2~10のアルキル基であり、
この際、Rc~Rhは、それぞれ独立して、水素原子、置換もしくは非置換の炭素数1~5のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数3~10のシクロアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数6~10のアリール基、またはこれらの組み合わせであり、
R8は、置換または非置換の炭素数1~10のアルキル基であり、
cおよびdは、それぞれ独立して、0~2の整数のうちの1つであり、かつ0≦c+d≦2である。
【0011】
上記化学式1中のR1~R3は、それぞれ独立して、置換または非置換の炭素数1~5のアルキル基であることが好ましい。
【0012】
上記化学式1中のR3は、メチル基、エチル基、またはプロピル基であることが好ましい。
【0013】
上記化学式1中のa+bは、0であることが好ましい。
【0014】
上記化学式2中のR5~R7は、それぞれ独立して、
(i)少なくとも1つの水素原子が-NRfRgで置換された炭素数1~10のアルキル基、または
(ii)少なくとも1つの-CH2-が-NRh-で置換された炭素数2~10のアルキル基である、
ことが好ましい。
【0015】
上記Rc~Rhは、それぞれ独立して、水素原子、置換もしくは非置換の炭素数1~5のアルキル基、またはこれらの組み合わせであることが好ましい。
【0016】
上記化学式2中のc+dは、0であることが好ましい。
【0017】
上記水の含有量は、上記組成物の総質量を基準として、12質量%~15質量%であることが好ましい。
【0018】
上記Si-CH3に由来するピークの面積に対するSi-ORa(ここで、Raは置換もしくは非置換のアルキル基である)に由来するピークの面積の比は、2~10であることが好ましい。
【0019】
上記化学式1で表される化合物の含有量は、上記シリコン窒化膜エッチング用組成物の総質量を基準として、0.3質量%~10質量%であることが好ましい。
【0020】
上記化学式2で表される化合物の含有量は、上記シリコン窒化膜エッチング用組成物の総質量を基準として、0.5質量%~30質量%であることが好ましい。
【0021】
他の実施形態によれば、本発明の一実施形態によるシリコン窒化膜エッチング用組成物をシリコン窒化膜表面と接触させることを含む、シリコン窒化膜のエッチング方法が提供される。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、物理的な摩擦によって発生する気泡を減らすことができるシリコン窒化膜エッチング用組成物が提供され得る。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】実施例1によるシリコン窒化膜エッチング用組成物の
1H-NMRスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施することができるように詳しく説明する。しかし、本発明は様々の異なる形態に実現でき、ここで説明する実施形態に限定されない。
【0025】
以下、本明細書で別途の定義がない限り、「置換された」とは、化合物中の水素原子が重水素原子、ハロゲン原子(F、Br、Cl、またはI)、ヒドロキシ基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、アジド基、アミジノ基、ヒドラジノ基、ヒドラゾノ基、カルボニル基、カルバモイル基、チオール基、エステル基、カルボキシ基またはその塩の基、スルホン酸基またはその塩の基、リン酸基またはその塩の基、炭素数1~30のアルキル基、炭素数2~30のアルケニル基、炭素数2~30のアルキニル基、炭素数6~30のアリール基、炭素数7~30のアリールアルキル基、炭素数1~30のアルコキシ基、炭素数1~20のヘテロアルキル基、炭素数3~20のヘテロアリールアルキル基、炭素数3~30のシクロアルキル基、炭素数3~15のシクロアルケニル基、炭素数6~15のシクロアルキニル基、炭素数2~30のヘテロ環基、およびこれらの組み合わせから選択された置換基で置換されたことを意味する。
【0026】
また、置換されたハロゲン原子(F、Br、Cl、またはI)、ヒドロキシ基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、アジド基、アミジノ基、ヒドラジノ基、ヒドラゾノ基、カルボニル基、カルバモイル基、チオール基、エステル基、カルボキシ基もしくはその塩の基、スルホン酸基もしくはその塩の基、リン酸基もしくはその塩の基、炭素数1~30のアルキル基、炭素数2~30のアルケニル基、炭素数2~30のアルキニル基、炭素数6~30のアリール基、炭素数7~30のアリールアルキル基、炭素数1~30のアルコキシ基、炭素数1~20のヘテロアルキル基、炭素数3~20のヘテロアリールアルキル基、炭素数3~30のシクロアルキル基、炭素数3~15のシクロアルケニル基、炭素数6~15のシクロアルキニル基、または炭素数2~30のヘテロ環基のうちの隣接した2つの置換基は、縮合して環を形成することもできる。
【0027】
本明細書で「アリール基」は、芳香族炭化水素モイエティを1つ以上有する基を意味し、広くは、芳香族炭化水素モイエティが単結合で連結された形態、および芳香族炭化水素モイエティが直接または間接的に縮合した非芳香族縮合環も含む。アリール基は、単環、多環、または縮合多環(すなわち、炭素原子の隣接した対を共有する環)官能基を含む。
【0028】
より具体的に、置換または非置換のアリール基は、置換もしくは非置換のフェニル基、置換もしくは非置換のナフチル基、置換もしくは非置換のアントラセニル基、置換もしくは非置換のフェナントリル基、置換もしくは非置換のナフタセニル基、置換もしくは非置換のピレニル基、置換もしくは非置換のビフェニル基、置換もしくは非置換のテルフェニル基、置換もしくは非置換のクアテルフェニル基、置換もしくは非置換のクリセニル基、置換もしくは非置換のトリフェニレニル基、置換もしくは非置換のペリレニル基、これらの組み合わせ、またはこれらの組み合わせが縮合した形態であってもよいが、これらに制限されない。
【0029】
本明細書で特別な言及がない限り、「組み合わせ」とは、混合または共重合を意味する。
【0030】
従来、半導体製造工程において、基板に形成されたシリコン窒化膜パターンを除去するためのエッチング溶液として、高温に加熱したリン酸水溶液が使用されてきた。しかし、このエッチング液をそのまま使用する場合、シリコン窒化膜だけでなくシリコン酸化膜までエッチングされ、工程で要求されるシリコン窒化膜/シリコン酸化膜のエッチング選択比を満足させることができないという問題がある。このような問題を解決するために、リン酸と共に使用される多様な添加剤に対する研究が活発に行われている。
【0031】
シリコン酸化膜に対するシリコン窒化膜のエッチング選択比を高めるために、リン酸溶液と共にシラン系化合物を使用することができる。シリコン窒化膜エッチング用組成物にシラン系化合物が含有されると、エッチング選択比は改善できるが、シラン系化合物の含有量が多くなれば物理的な摩擦によって気泡が発生することがあり、これはエッチング工程の効率面で不利なことがある。よって、シリコン窒化膜エッチング用組成物がシラン系化合物を含んでエッチング選択比を改善しながらも、気泡発生が抑制されるか、または発生した気泡が急速に除去されることが要求される。
【0032】
本発明によるシリコン窒化膜エッチング用組成物は、リン酸、下記化学式1で表される化合物、下記化学式2で表される化合物、および水を含み、当該シリコン窒化膜エッチング用組成物の総質量を基準として、水の含有量は11質量%~16質量%であり、1H-NMRスペクトルにより測定される、Si-CH3に由来するピークの面積に対するSi-ORa(ここで、Raは、置換または非置換のアルキル基である)に由来するピークの面積の比が2~16であることを特徴とする。
【0033】
【0034】
上記化学式1中、
R1およびR2は、それぞれ独立して、水素原子、重水素原子、または置換もしくは非置換の炭素数1~10のアルキル基であり、
R3は、それぞれ独立して、置換または非置換の炭素数1~10のアルキル基であり、
aおよびbは、それぞれ独立して、0~2の整数のうちの1つであり、かつ0≦a+b≦2である;
【0035】
【0036】
上記化学式2中、
R5およびR6は、それぞれ独立して、水素原子、重水素原子、非置換の炭素数1~10のアルキル基、少なくとも1つの水素原子が-NRcRdで置換された炭素数1~10のアルキル基、または少なくとも1つの-CH2-が-NRe-で置換された炭素数2~10のアルキル基であり、
R7は、
(i)少なくとも1つの水素原子が-NRfRgで置換された炭素数1~10のアルキル基、または
(ii)少なくとも1つの-CH2-が-NRh-で置換された炭素数2~10のアルキル基、
であり、
この際、Rc~Rhは、それぞれ独立して、水素原子、置換もしくは非置換の炭素数1~5のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数3~10のシクロアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数6~10のアリール基、またはこれらの組み合わせであり、
R8は、置換または非置換の炭素数1~10のアルキル基であり、
cおよびdは、それぞれ独立して、0~2の整数のうちの1つであり、かつ0≦c+d≦2である。
【0037】
本発明の一実施形態によるシリコン窒化膜エッチング用組成物は、上記化学式1で表される化合物および上記化学式2で表される化合物を含むことによって、シリコン酸化膜のエッチング速度に対するシリコン窒化膜のエッチング速度の比(エッチング選択比)を高め、シリコン酸化膜の異常成長を抑制することができる。
【0038】
また、本発明に係るシリコン窒化膜エッチング用組成物は、水の含有量、およびアルキルシリル基に対するアルコキシシリル基の相対的な含有量を特定の範囲で同時に満足することによって、化合物間の摩擦による気泡発生が抑制され、組成物をエッチング温度まで加熱するのにかかる時間を短縮させることができる。
【0039】
上記化学式1中のR1~R3は、それぞれ独立して、置換または非置換の炭素数1~5のアルキル基であり得る。より具体的には、例えば、置換もしくは非置換のメチル基、置換もしくは非置換のエチル基、または置換もしくは非置換のプロピル基であり得るが、これらに制限されない。
【0040】
上記化学式1中のaとbとの合計は0、または1であってもよく、例えば0であってもよく、これらに制限されるものではない。
【0041】
上記化学式2中のR5~R7は、それぞれ独立して、
(i)少なくとも1つの水素原子が-NRfRgで置換された炭素数1~10のアルキル基、または
(ii)少なくとも1つの-CH2-が-NRh-で置換された炭素数2~10のアルキル基、であり得る。
【0042】
例えば、上記化学式2中のR5~R7は、それぞれ独立して、
(iii)少なくとも1つの水素原子が-NRfRgで置換された炭素数1~5のアルキル基、または
(iv)少なくとも1つの-CH2-が-NRh-で置換された炭素数2~5のアルキル基であり得るが、これらに制限されるものではない。
【0043】
上記化学式1および化学式2中のRc~Rhは、それぞれ独立して、水素原子、置換もしくは非置換の炭素数1~5のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数6~10のアリール基、またはこれらの組み合わせであり得、例えば、水素原子、置換もしくは非置換の炭素数1~5のアルキル基、またはこれらの組み合わせであり得るが、これらに制限されるものではない。
【0044】
上記化学式2中のcとdとの合計は0または1であり得、例えば0であり得るが、これらに制限されるものではない。
【0045】
1H-NMRスペクトルにおいて、Si-CH3に由来するピークの面積に対するSi-ORa(ここで、Raは、置換または非置換のアルキル基である)に由来するピークの面積の比が2~16であり、例えば3~16であり、例えば4~16であり、例えば4~15であり、例えば4~14であり、例えば4~13であり、例えば4~12であり、例えば4~11であり、例えば4~10であり得るが、これらに制限されるものではない。Si-CH3に由来するピークの面積に対するSi-ORaに由来するピークの面積比が上記のような範囲であれば、化合物間の摩擦による気泡発生を抑制し、組成物をエッチング温度まで加熱するのにかかる時間を短縮させることができる。なお、1H-NMRの測定は、実施例に記載の方法、条件等により行うことができる。
【0046】
水の含有量は、上記シリコン窒化膜エッチング用組成物の総質量を基準として11質量%~16質量%であり、例えば11.5質量%~15質量%であり、例えば12質量%~15質量%であり、例えば12質量%~14.5質量%であり、例えば12質量%~14質量%であり、例えば12質量%~13.8質量%であり、例えば12質量%~13.5質量%であり、例えば12質量%~13質量%であり得るが、これらに制限されるものではない。水の含有量が上記のような範囲であれば、化合物間の摩擦による気泡発生を抑制し、シリコン窒化膜エッチング用組成物をエッチング温度まで加熱するのにかかる時間を短縮させることができる。
【0047】
上述の1H-NMRスペクトルのピーク面積比と、シリコン窒化膜エッチング用組成物に含まれる水の含有量とが、上記の範囲を同時に満足することによって、本発明による組成物の効果を最大限に発揮することができる。
【0048】
上記化学式1で表される化合物の含有量は、上記シリコン窒化膜エッチング用組成物の総質量を基準として0.3質量%~10質量%であり、例えば0.5質量%~10質量%、例えば1質量%~10質量%であり、例えば2質量%~10質量%であり、例えば3質量%~10質量%であり、例えば3質量%~9質量%であり、例えば3質量%~8質量%であり、これらに制限されない。化学式1で表される化合物の含有量が上記のような範囲であれば、エッチング選択比を最適化することができる。
【0049】
本発明に係るシリコン窒化膜エッチング用組成物中の上記化学式2で表される化合物の含有量は、シリコン窒化膜エッチング用組成物の総質量を基準として、例えば0.5質量%~30質量%であり、例えば0.5質量%~25質量%であり、例えば0.5質量%~20質量%であり、例えば1質量%~30質量%であり、例えば1質量%~25質量%であり、例えば1質量%~20質量%であり、例えば1質量%~15質量%であり得るが、これらに制限されるものではない。化学式2で表される化合物の含有量が上記のような範囲であれば、シリコン酸化膜の異常成長を抑制しながらエッチング選択比を最適化することができる。
【0050】
また、他の実施形態によれば、上記シリコン窒化膜エッチング用組成物を用いて行われるエッチング方法を提供する。
【0051】
上記エッチング方法は、例えば、本発明の一実施形態によるシリコン窒化膜エッチング用組成物を、シリコン窒化膜が形成された基板と接触させる段階を含むことができる。
【0052】
本発明に係るエッチング方法は、上記の接触させる段階の後、シリコン窒化膜エッチング用組成物を除去する段階をさらに含むことができる。
【0053】
シリコン窒化膜が形成された基板は、シリコン酸化膜をさらに含むことができる。
【0054】
例えば、当該基板は、当該技術分野で通常使用されるものであれば特に制限されず、例えば半導体ウェーハであってもよい。
【0055】
シリコン窒化膜エッチング用組成物を、シリコン窒化膜が形成された基板と接触させる段階は、シリコン窒化膜が形成された基板を、シリコン窒化膜エッチング用組成物を含むエッチング槽に浸漬させるか、またはシリコン窒化膜エッチング用組成物をシリコン窒化膜が形成された基板上に噴霧する段階を含むことができるが、これらに限定されるものではない。
【0056】
本発明の一実施形態において、上記シリコン窒化膜エッチング用組成物をシリコン窒化膜が形成された基板と接触させる段階より前に、シリコン窒化膜エッチング用組成物を加熱する段階をさらに含むことができる。シリコン窒化膜エッチング用組成物の加熱は、100℃以上、例えば100℃~500℃の温度で行われ得る。例えば、シリコン窒化膜エッチング用組成物の加熱は、150℃~300℃の温度で行われ得るが、これに限定されるものではない。
【0057】
本発明によるシリコン窒化膜エッチング用組成物を使用することによって、シリコン窒化膜エッチング用組成物を加熱する段階で、シリコン窒化膜エッチング用組成物を上記の温度まで加熱するのにかかる時間を短縮することができる。
【0058】
上記エッチング方法は、シリコン窒化膜エッチング用組成物のエッチングの後、シリコン窒化膜が除去された基板を乾燥する段階をさらに含むことができる。
【0059】
本発明によるシリコン窒化膜エッチング用組成物は、これを使用してシリコン窒化膜およびシリコン酸化膜を含む基板をエッチングする場合、シリコン酸化膜に対するシリコン窒化膜のエッチング選択比を向上させることができ、シリコン酸化物の異常成長の発生を抑制することができる。
【実施例0060】
以下、上述のシリコン窒化膜エッチング用組成物の実施例を通じて、本発明をさらに詳細に説明する。しかし、下記の実施例によって本発明の技術的範囲が限定されるものではない。
【0061】
[シリコン窒化膜エッチング用組成物の製造]
(実施例1~10)
脱イオン水(DIW)に、メチルトリメトキシシラン(アルコキシシラン)および3-アミノプロピルトリエトキシシラン(アミノシラン)を溶かし、溶液を減圧してアルコキシシラン濃度を減少させた。その後、リン酸を混合して、実施例によるシリコン窒化膜エッチング用組成物を製造した。脱イオン水、アルコキシシラン、アミノシラン、およびリン酸の具体的な含有量と、
1H-NMRでSi-CH
3に由来するピークの面積に対するSi-OR
a(ここで、R
aは、置換または非置換のアルキル基である)に由来するピークの面積比を下記表1に示した。また、実施例1によるシリコン窒化膜エッチング用組成物の
1H-NMRスペクトルを
図1に示した。
【0062】
なお、1H-NMRの測定条件は、下記の通りである。Si-CH3に由来するピークの化学シフトは0.2ppmに現れ、Si-ORaに由来するピークの化学シフトは、3.8ppm、3.5ppm、3.4ppm、3.2ppm、0.9ppmに現れる。
【0063】
<1H-NMRの測定条件>
NMR装置:AVANCE III 300(Bruker社製)
共鳴周波数:300MHz
積算:16回
測定溶媒:CDCl3
基準物質および基準ピークの化学シフト:テトラメチルシラン(TMS)、0ppm
試料濃度:[CDCl3:サンプル=1:1(質量比)]。
【0064】
(比較例1~4)
比較例1による組成物はリン酸水溶液であり、比較例2~4による組成物は、下記表1に記載のように、リン酸、アルコキシシラン、アミノシラン、およびDIWをそれぞれ下記の含有量で含む。
【0065】
【0066】
[評価1:気泡量減少の評価]
20mLバイアルに、上記比較例1~4および実施例1~10によるシリコン窒化膜用エッチング組成物15gを入れ、上下に同じように40回振った後、文字(テキスト)が記載された紙の上にバイアルを置き、文字(テキスト)を見ることができるかどうか確認した。組成物を振ると物理的な摩擦によって組成物に気泡が発生し、振った後時間経過によって気泡が残っている程度、すなわち、文字(テキスト)が見える程度を観察して気泡が除去される程度を評価した。その結果は下記表2の通りである。下記表2で、「○」は気泡がないか少量であって文字の区別が明確な場合を意味し、「△」は気泡が多少存在して一部の文字の区別のみが可能な場合を意味し、「×」は気泡が多量存在するか溶液が凍って文字の区別が難しい場合を意味する。
【0067】
【0068】
上記表2を参照すれば、実施例1~9による組成物は、気泡が少量発生するか気泡が発生せず、気泡が発生しても1分以内に気泡量が減少するのを確認することができる。一方、比較例による組成物は、気泡が多量存在するか結晶化するのを確認することができる。比較例4による組成物は、シラン化合物の凝集が確認された。
【0069】
[評価2:エッチング速度、エッチング選択比、およびエッチング副生成物]
実施例1~10および比較例1~4で製造したシリコン窒化膜エッチング用組成物をビーカーに入れ、エッチング温度(165℃)まで加熱した。その後、シリコン窒化膜(LP-SiN膜)またはシリコン酸化膜(PE-SiO膜)を入れ、上記エッチング温度で30分間エッチングした。エッチング前およびエッチング後のLP-SiN膜またはPE-SiO膜の厚さを、エリプソメータを用いて測定して、エッチング速度を求めた。シリコン酸化膜のエッチング速度(B)に対するシリコン窒化膜のエッチング速度(A)の比(エッチング選択比=A/B)を計算し、またエッチング進行後に発生する副生成物の存在有無を肉眼で確認した後、その結果を下記表3に示した。
【0070】
【0071】
上記表3を参照すれば、実施例1~10による組成物は、エッチング速度およびエッチング選択比に優れ、エッチング工程後に副生成物も発生しなかったことを確認することができる。
【0072】
以上、本発明の特定の実施例が説明され図示されたが、本発明は記載された実施例に限定されるのではなく、本発明の思想および範囲を逸脱せず多様に修正および変形できるのは、この技術の分野における通常の知識を有する者に自明なことである。したがって、そのような修正例または変形例は、本発明の技術的な思想や観点から個別的に理解されてはならず、変形された実施例は本発明の特許請求の範囲に属すると言うべきである。