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特開2024-169642封止用樹脂組成物、電子部品装置及び電子部品装置の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024169642
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】封止用樹脂組成物、電子部品装置及び電子部品装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 63/00 20060101AFI20241128BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20241128BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20241128BHJP
   C08K 5/18 20060101ALI20241128BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
C08L63/00 C
C08K3/36
C08K3/013
C08K5/18
H01L23/30 R
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024165570
(22)【出願日】2024-09-24
(62)【分割の表示】P 2020513047の分割
【原出願日】2018-04-13
(71)【出願人】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹内 勇磨
(72)【発明者】
【氏名】高橋 寿登
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 貴一
(57)【要約】
【課題】ブリードを抑制することができる封止用樹脂組成物の提供。
【解決手段】封止用樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂、(B)1分子中にアミノ基を少なくとも1つ有する硬化剤及び(C)無機充填材を含み、前記(C)無機充填材が、(C1)平均粒径が0.1μm~20μmの第1の無機充填材及び(C2)平均粒径が10nm~80nmの第2の無機充填材を含み、前記(C)無機充填材の比表面積に、固形分質量に占める前記(C)無機充填材の質量の割合を乗じた値が、4.0m/g以上である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エポキシ樹脂、(B)1分子中にアミノ基を少なくとも1つ有する硬化剤及び(C)無機充填材を含み、
前記(C)無機充填材が、(C1)平均粒径が0.1μm~20μmの第1の無機充填材及び(C2)平均粒径が10nm~80nmの第2の無機充填材を含み、
前記(C)無機充填材の比表面積に、固形分質量に占める前記(C)無機充填材の質量の割合を乗じた値が、4.0m/g以上である封止用樹脂組成物。
【請求項2】
110℃での粘度が、0.20Pa・s以下である請求項1に記載の封止用樹脂組成物。
【請求項3】
前記(C)無機充填材に占める前記(C2)平均粒径が10nm~80nmの第2の無機充填材の割合が、0.3質量%以上である請求項1又は請求項2に記載の封止用樹脂組成物。
【請求項4】
前記(C)無機充填材に占める前記(C2)平均粒径が10nm~80nmの第2の無機充填材の割合が、30質量%以下である請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の封止用樹脂組成物。
【請求項5】
前記(C)無機充填材に占める前記(C2)平均粒径が10nm~80nmの第2の無機充填材の割合が、10質量%~30質量%である請求項1又は請求項2に記載の封止用樹脂組成物。
【請求項6】
前記(C)無機充填材に占める前記(C1)平均粒径が0.1μm~20μmの第1の無機充填材の割合が、70質量%以上である請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の封止用樹脂組成物。
【請求項7】
25℃における粘度が、0.1Pa・s~50.0Pa・sである請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の封止用樹脂組成物。
【請求項8】
前記(C1)平均粒径が0.1μm~20μmの第1の無機充填材が、シリカを含む請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の封止用樹脂組成物。
【請求項9】
前記(C2)平均粒径が10nm~80nmの第2の無機充填材が、シリカを含む請求項1~請求項8のいずれか1項に記載の封止用樹脂組成物。
【請求項10】
前記(C)無機充填材の含有率が、40質量%~85質量%である請求項1~請求項9のいずれか1項に記載の封止用樹脂組成物。
【請求項11】
前記(C1)平均粒径が0.1μm~20μmの第1の無機充填材の比表面積が、1m/g~30m/gである請求項1~請求項10のいずれか1項に記載の封止用樹脂組成物。
【請求項12】
前記(C2)平均粒径が10nm~80nmの第2の無機充填材の比表面積が、20m/g~500m/gである請求項1~請求項11のいずれか1項に記載の封止用樹脂組成物。
【請求項13】
25℃における揺変指数が、0.5~1.5である請求項1~請求項12のいずれか1項に記載の封止用樹脂組成物。
【請求項14】
前記(B)1分子中にアミノ基を少なくとも1つ有する硬化剤が、芳香族アミンを含む請求項1~請求項13のいずれか1項に記載の封止用樹脂組成物。
【請求項15】
前記芳香族アミンが、芳香環に直接アミノ基が結合しており、前記芳香環が1分子中に1個又は2個含まれるものである請求項14に記載の封止用樹脂組成物。
【請求項16】
前記(C1)平均粒径が0.1μm~20μmの第1の無機充填材の平均粒径と、前記(C2)平均粒径が10nm~80nmの第2の無機充填材の平均粒径との比(C1/C2)が、10~50である請求項1~請求項15のいずれか1項に記載の封止用樹脂組成物。
【請求項17】
回路層を有する基板と、
前記基板上に配置され、前記回路層と電気的に接続された電子部品と、
前記基板と前記電子部品との間隙に配置された請求項1~請求項16のいずれか1項に記載の封止用樹脂組成物の硬化物と、
を備える電子部品装置。
【請求項18】
回路層を有する基板と、前記基板上に配置され、前記回路層と電気的に接続された電子部品とを、請求項1~請求項16のいずれか1項に記載の封止用樹脂組成物を用いて封止する工程を有する電子部品装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、封止用樹脂組成物、電子部品装置及び電子部品装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の配線等のさらなる高密度化に対応するため、システムインパッケージを採用した半導体チップの実装方式として、フリップチップボンディングが利用されている。フリップチップボンディングにより得られたパッケージは、フリップチップパッケージ(FC-PKG)と呼ばれている。一般的に、FC-PKGでは、半導体チップと基板の隙間を、アンダーフィル材と呼ばれる液状樹脂組成物で封止する。
【0003】
近年ではモバイル用途のFC-PKGの需要が増えており、特に小型のフリップチップチップサイズパッケージ(FC-CSP)が採用された半導体モジュールが増加している。現在では、FC-CSPのPKGサイズは、20mm以下×20mm以下×2mm程度となっており、益々の小型化が求められている。
【0004】
ここで、半導体チップと基板との間隙を封止する半導体用のアンダーフィル材に関する問題の1つとしてブリードが挙げられる。FC-PKGでのブリードとは、液状樹脂組成物である半導体用封止材中の液状成分が、半導体チップ下の基板上に付与されたソルダーレジストの表面に広がって滲み出す現象である。ブリードが発生すると、FC-PKGを配置された付近の接続回路を汚染してしまうことがある。
【0005】
したがって、近年、ソルダーレジストの表面にブリードを発生させないため、種々の検討が行われている。ブリードを解決するために、アクリル-シロキサン共重合体を含む液状封止樹脂組成物(例えば、特許文献1参照)、アミノ基を含むシリコーンオイルを含有する液状封止樹脂組成物(例えば、特許文献2参照)、並びにポリエーテル基を有する液状シリコーン化合物及びアミノ基を有する液状シリコーン化合物を含む液状封止樹脂組成物(例えば、特許文献3参照)が報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011-6618号公報
【特許文献2】特開2010-192525号公報
【特許文献3】特開2012-107149号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、シロキサン共重合体又はシリコーン化合物を添加することによって、液状樹脂組成物の表面張力の低下が懸念される。液状樹脂組成物の表面張力の低下は、液状樹脂組成物をアンダーフィル材として用いた場合に、パッケージ注入性の悪化につながる可能性がある。そのため、シロキサン共重合体又はシリコーン化合物に依らずにブリードを抑制できる材料が求められている。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、ブリードを抑制することができる封止用樹脂組成物並びにそれを用いた電子部品装置及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するための具体的手段は以下の通りである。
<1> (A)エポキシ樹脂、(B)1分子中にアミノ基を少なくとも1つ有する硬化剤及び(C)無機充填材を含み、
前記(C)無機充填材が、(C1)平均粒径が0.1μm~20μmの第1の無機充填材及び(C2)平均粒径が10nm~80nmの第2の無機充填材を含み、
前記(C)無機充填材の比表面積に、固形分質量に占める前記(C)無機充填材の質量の割合を乗じた値が、4.0m/g以上である封止用樹脂組成物。
<2> 110℃での粘度が、0.20Pa・s以下である<1>に記載の封止用樹脂組成物。
<3> 前記(C)無機充填材に占める前記(C2)平均粒径が10nm~80nmの第2の無機充填材の割合が、0.3質量%以上である<1>又は<2>に記載の封止用樹脂組成物。
<4> 前記(C)無機充填材に占める前記(C2)平均粒径が10nm~80nmの第2の無機充填材の割合が、30質量%以下である<1>~<3>のいずれか1項に記載の封止用樹脂組成物。
<5> 前記(C)無機充填材に占める前記(C2)平均粒径が10nm~80nmの第2の無機充填材の割合が、10質量%~30質量%である<1>又は<2>に記載の封止用樹脂組成物。
<6> 前記(C)無機充填材に占める前記(C1)平均粒径が0.1μm~20μmの第1の無機充填材の割合が、70質量%以上である<1>~<5>のいずれか1項に記載の封止用樹脂組成物。
<7> 25℃における粘度が、0.1Pa・s~50.0Pa・sである<1>~<6>のいずれか1項に記載の封止用樹脂組成物。
<8> 前記(C1)平均粒径が0.1μm~20μmの第1の無機充填材が、シリカを含む<1>~<7>のいずれか1項に記載の封止用樹脂組成物。
<9> 前記(C2)平均粒径が10nm~80nmの第2の無機充填材が、シリカを含む<1>~<8>のいずれか1項に記載の封止用樹脂組成物。
<10> 前記(C)無機充填材の含有率が、40質量%~85質量%である<1>~<9>のいずれか1項に記載の封止用樹脂組成物。
<11> 前記(C1)平均粒径が0.1μm~20μmの第1の無機充填材の比表面積が、1m/g~30m/gである<1>~<10>のいずれか1項に記載の封止用樹脂組成物。
<12> 前記(C2)平均粒径が10nm~80nmの第2の無機充填材の比表面積が、20m/g~500m/gである<1>~<11>のいずれか1項に記載の封止用樹脂組成物。
<13> 25℃における揺変指数が、0.5~1.5である<1>~<12>のいずれか1項に記載の封止用樹脂組成物。
<14> 前記(B)1分子中にアミノ基を少なくとも1つ有する硬化剤が、芳香族アミンを含む<1>~<13>のいずれか1項に記載の封止用樹脂組成物。
<15> 前記芳香族アミンが、芳香環に直接アミノ基が結合しており、前記芳香環が1分子中に1個又は2個含まれるものである<14>に記載の封止用樹脂組成物。
<16> 前記(C1)平均粒径が0.1μm~20μmの第1の無機充填材の平均粒径と、前記(C2)平均粒径が10nm~80nmの第2の無機充填材の平均粒径との比(C1/C2)が、10~50である<1>~<15>のいずれか1項に記載の封止用樹脂組成物。
<17> 回路層を有する基板と、
前記基板上に配置され、前記回路層と電気的に接続された電子部品と、
前記基板と前記電子部品との間隙に配置された<1>~<16>のいずれか1項に記載の封止用樹脂組成物の硬化物と、
を備える電子部品装置。
<18> 回路層を有する基板と、前記基板上に配置され、前記回路層と電気的に接続された電子部品とを、<1>~<16>のいずれか1項に記載の封止用樹脂組成物を用いて封止する工程を有する電子部品装置の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ブリードを抑制することができる封止用樹脂組成物並びにそれを用いた電子部品装置及びその製造方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の実施形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合を除き、必須ではない。数値及びその範囲についても同様であり、本発明を制限するものではない。
本明細書において「工程」との語には、他の工程から独立した工程に加え、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の目的が達成されれば、当該工程も含まれる。
本明細書において「~」を用いて示された数値範囲には、「~」の前後に記載される数値がそれぞれ最小値及び最大値として含まれる。
本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本明細書において組成物中の各成分の含有率は、組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計の含有率を意味する。
本明細書において組成物中の各成分の粒径は、組成物中に各成分に該当する粒子が複数種存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の粒子の混合物についての値を意味する。
本明細書において「層」との語には、当該層が存在する領域を観察したときに、当該領域の全体に形成されている場合に加え、当該領域の一部にのみ形成されている場合も含まれる。
【0012】
<封止用樹脂組成物>
本開示の封止用樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂、(B)1分子中にアミノ基を少なくとも1つ有する硬化剤及び(C)無機充填材を含み、(C)無機充填材が、(C1)平均粒径が0.1μm~20μmの第1の無機充填材及び(C2)平均粒径が10nm~80nmの第2の無機充填材を含み、(C)無機充填材の比表面積に、固形分質量に占める(C)無機充填材の質量の割合を乗じた値が、4.0m/g以上とされたものである。
【0013】
以下、封止用樹脂組成物を構成する各成分の詳細について説明する。
【0014】
-エポキシ樹脂-
(A)成分のエポキシ樹脂は、封止用樹脂組成物に、硬化性及び接着性を付与し、封止用樹脂組成物の硬化物に、耐熱性及び耐久性を付与する。エポキシ樹脂は液状エポキシ樹脂であることが好ましい。本開示においては、ブリードの抑制が達成される範囲内であれば、液状エポキシ樹脂と共に固形エポキシ樹脂を併用することもできる。
【0015】
なお、液状エポキシ樹脂とは、常温(25℃)において液状のエポキシ樹脂であることを意味する。具体的には、25℃において、E型粘度計で測定される粘度が1000Pa・s以下であることを意味する。上記粘度は、具体的には、E型粘度計EHD型(コーン角度3°、コーン直径28mm)を用いて、測定温度:25℃、サンプル容量:0.7ml、以下を参考に回転数をサンプルの想定される粘度に合わせて設定の上、測定開始から1分経過後の値を測定値とする。
(1)想定される粘度が100Pa・s~1000Pa・sの場合:回転数0.5回転/分
(2)想定される粘度が100Pa・s未満の場合:回転数5回転/分
また、固形エポキシ樹脂とは常温(25℃)において固体状のエポキシ樹脂であることを意味する。
【0016】
エポキシ樹脂の種類は特に限定されるものではない。エポキシ樹脂としては、ナフタレン型エポキシ樹脂;ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ビスフェノールS、水添ビスフェノールA等のジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂;オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂を代表とするフェノール類とアルデヒド類のノボラック樹脂をエポキシ化したもの;フタル酸、ダイマー酸等の多塩基酸とエピクロロヒドリンの反応により得られるグリシジルエステル型エポキシ樹脂;ジアミノジフェニルメタン、イソシアヌル酸等のアミン化合物とエピクロロヒドリンの反応により得られるグリシジルアミン型エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0017】
エポキシ樹脂のエポキシ当量は、粘度調整の観点から、80g/eq~250g/eqであることが好ましく、85g/eq~240g/eqであることがより好ましく、90g/eq~230g/eqであることがさらに好ましい。
エポキシ樹脂のエポキシ当量は、秤量したエポキシ樹脂をメチルエチルケトン等の溶媒に溶解させ、酢酸と臭化テトラエチルアンモニウム酢酸溶液を加えた後、過塩素酸酢酸標準液によって電位差滴定することにより測定される。この滴定には、指示薬を用いてもよい。
【0018】
エポキシ樹脂としては、市販品を用いてもよい。エポキシ樹脂の市販品の具体例としては、三菱ケミカル株式会社製アミン型エポキシ樹脂(品名:jER630)、新日鉄住金化学株式会社製ビスフェノールF型エポキシ樹脂(品名:YDF-8170C)、新日鉄住金化学株式会社製ビスフェノールA型エポキシ樹脂(品名:YD-128)、DIC株式会社製ナフタレン型エポキシ樹脂(品名:HP-4032D)等が挙げられる。エポキシ樹脂は、これら具体例に限定されるものではない。エポキシ樹脂は、単独でも2種以上を併用してもよい。
エポキシ樹脂の含有率は特に限定されるものではなく、例えば、封止用樹脂組成物の固形分に占める割合として、5質量%~28質量%であることが好ましく、7質量%~17質量%であることがより好ましく、10質量%~15質量%であることがさらに好ましい。
【0019】
-1分子中にアミノ基を少なくとも1つ有する硬化剤-
(B)成分の1分子中にアミノ基を少なくとも1つ有する硬化剤(以下、特定硬化剤と称することがある。)は、エポキシ樹脂とともに重合により硬化するものであればよく、封止用樹脂組成物としたときに、封止用樹脂組成物が室温(25℃)で流動性を有するならば、液体状のものでも固体状のものでも使用可能である。
特定硬化剤としては、アミン系硬化剤、カルボン酸ジヒドラジド硬化剤等が挙げられる。流動性、ポットライフ性等の観点から、特定硬化剤としては、アミン系硬化剤が好ましい。
【0020】
アミン系硬化剤としては、鎖状脂肪族アミン、環状脂肪族アミン、脂肪芳香族アミン、芳香族アミン等が挙げられ、耐熱性と電気特性の面から芳香族アミンであることが好ましく、芳香環に直接アミノ基が結合しており、前記芳香環が1分子中に1個又は2個含まれる芳香族アミンであることがより好ましい。
特定硬化剤に占める芳香族アミンの割合は、50質量%~100質量%であることが好ましく、70質量%~100質量%であることがより好ましく、90質量%~100質量%であることがさらに好ましい。
アミン系硬化剤としては、具体的には、m-フェニレンジアミン、1,3-ジアミノトルエン、1,4-ジアミノトルエン、2,4-ジアミノトルエン、3,5-ジエチル-2,4-ジアミノトルエン、3,5-ジエチル-2,6-ジアミノトルエン、2,4-ジアミノアニソール等の芳香環が1個の芳香族アミン硬化剤;4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-メチレンビス(2-エチルアニリン)、3,3’-ジエチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’,5,5’-テトラエチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン等の芳香環が2個の芳香族アミン硬化剤;芳香族アミン硬化剤の加水分解縮合物;ポリテトラメチレンオキシドジ-p-アミノ安息香酸エステル、ポリテトラメチレンオキシドジパラアミノベンゾエート等のポリエーテル構造を有する芳香族アミン硬化剤;芳香族ジアミンとエピクロロヒドリンとの縮合物;芳香族ジアミンとスチレンとの反応生成物などが挙げられる。
【0021】
特定硬化剤としては、市販品を用いてもよい。特定硬化剤の市販品の具体例としては、日本化薬株式会社製アミン硬化剤(品名:カヤハード-AA)、三菱ケミカル株式会社製アミン硬化剤(品名:jERキュア(登録商標)113、品名:jERキュア(登録商標)W)等が挙げられるが、特定硬化剤は、これら具体例に限定されるものではない。特定硬化剤は、単独でも2種以上を併用してもよい。
【0022】
封止用樹脂組成物に含まれるエポキシ樹脂の当量数と特定硬化剤の当量数との比は特に制限されない。それぞれの未反応分を少なく抑えるために、エポキシ樹脂の当量数と特定硬化剤の当量数との比(特定硬化剤の当量数/エポキシ樹脂の当量数)を0.6~1.4の範囲に設定することが好ましく、0.7~1.3の範囲に設定することがより好ましく、0.8~1.2の範囲に設定することがさらに好ましい。
【0023】
封止用樹脂組成物は、必要に応じて特定硬化剤以外のその他の硬化剤を含んでもよい。その他の硬化剤としては、例えば、フェノール系硬化剤、酸無水物系硬化剤及びイミダゾール系硬化剤が挙げられる。
【0024】
-無機充填材-
(C)成分の無機充填材としては、(C1)平均粒径が0.1μm~20μmの第1の無機充填材及び(C2)平均粒径が10nm~80nmの第2の無機充填材が併用される。
無機充填材としては、コロイダルシリカ、疎水性シリカ、球状シリカ等のシリカ、タルクなどの無機粒子、有機粒子などが挙げられる。封止用樹脂組成物を塗布する際の流動性、封止用樹脂組成物の硬化物の耐熱性の観点から、非晶質の球状シリカであることが好ましい。
無機充填材の含有率は特に限定されるものではなく、例えば、封止用樹脂組成物の固形分に占める割合として、40質量%~85質量%であることが好ましく、46質量%~78質量%であることがより好ましく、50質量%~70質量%であることがさらに好ましい。
【0025】
(C1)成分の第1の無機充填材は、封止用樹脂組成物の硬化物に耐ヒートサイクル性、耐湿性、絶縁性等を付与し、封止用樹脂組成物の硬化の際の応力を低減する。
【0026】
第1の無機充填材の平均粒径は、0.1μm~20μmであり、0.2μm~10μmであることが好ましく、0.2μm~8μmであることがより好ましく、0.3μm~5μmであることがさらに好ましい。
第1の無機充填材の比表面積としては流動性の観点から1m/g~30m/gであることが好ましく、2m/g~20m/gであることがより好ましい。
【0027】
無機充填材に占める第1の無機充填材の割合は、70質量%以上であることが好ましい。また、無機充填材に占める第1の無機充填材の割合は、99.7質量%以下であることが好ましい。無機充填材に占める第1の無機充填材の割合は、70質量%~99.7質量%であることがより好ましく、75質量%~99.5質量%であることがさらに好ましい。
【0028】
無機充填材の比表面積の測定法としては主にBET法が適用される。BET法とは、窒素(N)、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)等の不活性気体分子を固体粒子に吸着させ、吸着した気体分子の量から固体粒子の比表面積を測定する気体吸着法である。比表面積の測定は、比表面積細孔分布測定装置(例えば、ベックマン・コールター製、SA3100)を用いて行うことができる。
【0029】
第1の無機充填材としては、市販品を用いてもよい。第1の無機充填材の市販品の具体例としては、株式会社アドマテックス製球状シリカ(品名:SO-E2)、株式会社アドマテックス製球状シリカ(品名:SE2200)等が挙げられるが、第1の無機充填材は、これら具体例に限定されるものではない。ここで、第1の無機充填材の平均粒径は、動的光散乱式ナノトラック粒度分析計により測定する。なお、本開示における平均粒径は、小径側からの体積累積50%に対応する粒径とする。第1の無機充填材は、単独でも2種以上を併用してもよい。
【0030】
第1の無機充填材は、製造原料に由来する有機基を有するものであってもよい。第1の無機充填材が有していてもよい有機基としては、メチル基、エチル基等のアルキル基が挙げられる。
また、非晶質の球状シリカとしては、粒径制御性及び純度の面からゾル-ゲル法にて製造される非晶質の球状シリカも好ましい。なお、シリカとして、特開2007-197655号公報に記載の製造方法によって得られたシリカを含有する組成物を用いてもよい。
【0031】
(C2)成分の第2の無機充填材を用いることで、ブリードの抑制効果が向上する。第2の無機充填材の平均粒径は、10nm~80nmであり、10nm~70nmであることが好ましく、10nm~60nmであることがより好ましい。第2の無機充填材の平均粒径が10nm以上であれば、封止用樹脂組成物の粘度が増大しにくく、流動性の悪化が生じにくい傾向にある。
【0032】
第2の無機充填材の比表面積としては流動性の観点から20m/g~500m/gであることが好ましく、50m/g~300m/gであることがより好ましい。
第2の無機充填材としては、市販品を用いてもよい。第2の無機充填材の市販品の具体例としては、株式会社アドマテックス製の無機充填材(品名:YA010C、YA050C等)、堺化学工業株式会社製の無機充填材(品名:Sciqas0.05μm)などが挙げられるが、第2の無機充填材は、これら具体例に限定されるものではない。第2の無機充填材は、単独でも2種以上を併用してもよい。
【0033】
無機充填材に占める第2の無機充填材の割合は、0.3質量%以上であることが好ましい。また、無機充填材に占める第2の無機充填材の割合は、30質量%以下であることが好ましい。無機充填材に占める第2の無機充填材の割合は、0.3質量%~30質量%であることがより好ましく、0.5質量%~25質量%であることがさらに好ましい。無機充填材に占める第2の無機充填材の割合が上記範囲であれば、ブリードの低減効果を発現でき、且つ流動性に優れる封止用樹脂組成物が得られる。
ある態様では、無機充填材に占める第2の無機充填材の割合は、10質量%~30質量%であることが好ましく、12質量%~27質量%であることがより好ましく、15質量%~25質量%であることがさらに好ましい。
【0034】
第2の無機充填材としては、粒子の表面が有機基で予め処理されたものを用いることもできる。粒子の表面が有機基で予め処理されることで、半導体チップ、有機基板等への接着力が向上し、封止用樹脂組成物の硬化物の靭性を向上させる点で好ましい。
【0035】
第1の無機充填材の平均粒径と第2の無機充填材の平均粒径との比(第1の無機充填材の平均粒径/第2の無機充填材の平均粒径)は、5~100であることが好ましく、7~75であることがより好ましく、10~50であることがさらに好ましい。
【0036】
無機充填材が第1の無機充填材及び第2の無機充填材の両方を含むか否かは、例えば、無機充填材の体積基準の粒度分布(頻度分布)を求めることで確認される。具体的には、無機充填材の体積基準の頻度分布において、0.1μm~20μmの範囲及び10nm~80nmの範囲の各々にピークが存在する場合、無機充填材が第1の無機充填材及び第2の無機充填材の両方を含むといえる。なお、確認方法は、上記方法に限定されるものではない。
また、無機充填材に占める第1又は第2の無機充填材の割合を求める方法としては、特に限定されるものではない。例えば、無機充填材の体積基準の粒度分布(頻度分布)を求め、第1の無機充填材に相当するピークと第2の無機充填材に相当するピークとの谷間で両者を切り分け、切り分けられた各範囲に含まれる粒子の体積を、無機充填材の総和の体積で除することにより、第1又は第2の無機充填材の割合を求めることができる。封止用樹脂組成物の組成が明らかな場合には、封止用樹脂組成物の組成から無機充填材に占める第1又は第2の無機充填材の割合を求めることができる。なお、算出方法は、上記方法に限定されるものではない。
【0037】
無機充填材の比表面積に、固形分質量に占める無機充填材の質量の割合を乗じた値は、4m/g以上であり、4m/g~30m/gであることが好ましく、5m/g~26m/gであることがより好ましく、6m/g~24m/gであることがさらに好ましい。無機充填材の比表面積に、固形分質量に占める無機充填材の質量の割合を乗じた値が上記範囲であれば、ブリードの低減効果を発現でき、且つ流動性に優れる樹脂組成物が得られる。
ここで、「無機充填材の比表面積」とは、第1の無機充填材及び第2の無機充填材の加重平均をいう。無機充填材として、第1の無機充填材及び第2の無機充填材以外のその他の無機充填材が併用される場合、無機充填材の比表面積とは、第1の無機充填材、第2の無機充填材及びその他の無機充填材の加重平均をいう。
また、「固形分質量」とは封止用樹脂組成物に含まれる固形分の質量をいい、封止用樹脂組成物から有機溶剤等の揮発性成分を除いた残りの成分を意味する。
【0038】
-ゴム添加物-
封止用樹脂組成物は、封止用樹脂組成物の硬化物の応力を緩和する観点から、(D)成分のゴム添加物を含有することが好ましい。ゴム添加物としては、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、ブタジエンゴム等が挙げられる。ゴム添加物は、常温(25℃)において固体のものを使用することができる。形態は特に限定されず、粒子状又はペレット状のものを使用することができる。ゴム添加物が粒子状の場合は、例えば、平均粒径が、好ましくは0.01μm~20μmであり、より好ましくは0.02μm~10μmであり、さらに好ましくは0.03μm~5μmである。
ゴム添加物は、常温(25℃)で液状のものを使用することもできる。液状のゴム添加物としては、ポリブタジエン、ブタジエン・アクリロニトリルコポリマー、ポリイソプレン、ポリプロピレンオキシド、ポリジオルガノシロキサン等が挙げられる。
ゴム添加物が常温(25℃)で固体の場合は、加熱してエポキシ樹脂又は特定硬化剤に溶解させて使用することが好ましい。また、ゴム添加物は、末端にエポキシ基と反応する基を有するものを使用することができる。末端にエポキシ基と反応する基を有するゴム添加物は、常温(25℃)で固体であっても液状であってもいずれの形態であってもよい。
ゴム添加物としては、市販品を用いてもよい。ゴム添加物の市販品の具体例としては、宇部興産株式会社製CTBN1300、ATBN1300-16、CTBN1008-SP等、東レ・ダウコーニング株式会社製シリコーンゴムパウダー(品名:AY42-119等)、JSR株式会社製ゴムパウダー(品名:XER81等)などが挙げられるが、ゴム添加物は、これら具体例に限定されるものではない。また、ゴム添加物は、単独でも2種以上を併用してもよい。
【0039】
-カップリング剤-
封止用樹脂組成物は、(E)成分のカップリング剤を含有してもよい。封止用樹脂組成物がカップリング剤を含有すると、封止用樹脂組成物の密着性の観点から好ましい。
カップリング剤には特に制限はなく、従来公知のものから適宜選択して用いることができる。例えば、1級アミノ基、2級アミノ基及び3級アミノ基からなる群より選ばれる少なくとも1種を有するアミノシラン、エポキシシラン、メルカプトシラン、アルキルシラン、ウレイドシラン、ビニルシラン等のシラン系化合物;チタネート系化合物などが挙げられる。これらの中でも、封止用樹脂組成物の密着性の観点からエポキシシラン化合物が好ましい。
カップリング剤としては、市販品を用いてもよい。カップリング剤の市販品の具体例としては、信越化学工業株式会社製KBM-403、KBE-903、KBE-9103等が挙げられるが、カップリング剤は、これら具体例に限定されるものではない。カップリング剤は、単独でも2種以上を併用してもよい。
【0040】
-その他の成分-
封止用樹脂組成物には、本開示の目的を損なわない範囲で、さらに必要に応じ、作業性向上のための揺変剤、カーボンブラック等の顔料、染料、イオントラッパ、消泡剤、レベリング剤、酸化防止剤、反応性希釈剤、有機溶剤などのその他の成分を含有してもよい。
【0041】
封止用樹脂組成物は、例えば、エポキシ樹脂、特定硬化剤、無機充填材及び必要に応じて用いられるその他の成分を一括して又は別々に、必要により加熱処理を加えながら、撹拌、溶融、混合、分散等させることにより得ることができる。特に、特定硬化剤が固形の場合には、特定硬化剤を固形のまま配合すると粘度が上昇し、作業性の低下することがあるため、予め加熱により特定硬化剤を液状化して用いることが好ましい。これらの成分の混合、撹拌、分散等のための装置としては、特に限定されるものではなく、撹拌装置、加熱装置等を備えたライカイ機、3本ロールミル、ボールミル、プラネタリーミキサー、ビーズミルなどが挙げられる。これらの装置を用いて上記成分を混合し、混練し、必要に応じて脱泡することによって封止用樹脂組成物を得ることができる。
【0042】
封止用樹脂組成物の粘度は特に制限されない。中でも高流動性の観点から、25℃において0.1Pa・s~50.0Pa・sであることが好ましく、0.1Pa・s~20.0Pa・sであることがより好ましく、0.1Pa・s~10.0Pa・sであることがさらに好ましい。なお、封止用樹脂組成物の粘度は、E型粘度計(コーン角3°、回転数10回転/分)を用いて、25℃において測定される。
【0043】
また、封止用樹脂組成物をアンダーフィル材等の用途で用いる場合、100℃~120℃付近で数十μm~数百μmの狭ギャップ間に封止用樹脂組成物を充填する際の充填のしやすさの指標として、110℃の粘度が0.20Pa・s以下であることが好ましく、0.15Pa・s以下であることがより好ましい。なお、110℃での封止用樹脂組成物の粘度は、レオメーターAR2000(TAインストルメント製、アルミコーン40mm、せん断速度32.5/sec)により測定される。
【0044】
また、封止用樹脂組成物は、E型粘度計を用いて25℃で測定される回転数が1.5回転/分における粘度と回転数が10回転/分における粘度との比である揺変指数[(1.5回転/分における粘度)/(10回転/分における粘度)]は、0.5~1.5であることが好ましく、0.8~1.2であることがより好ましい。揺変指数が上記範囲であるとアンダーフィル材用途でのフィレット形成性がより向上する。なお、封止用樹脂組成物の粘度及び揺変指数は、エポキシ樹脂の組成、無機充填材の含有率等を適宜選択することで所望の範囲とすることができる。
【0045】
封止用樹脂組成物の硬化条件は特に限定されるものではなく、80℃~165℃で、1分間~150分間加熱することが好ましい。
【0046】
<電子部品装置>
本開示の電子部品装置は、回路層を有する基板と、前記基板上に配置され、前記回路層と電気的に接続された電子部品と、前記基板と前記電子部品との間隙に配置された本開示の封止用樹脂組成物の硬化物と、を備える。本開示の電子部品装置は、本開示の封止用樹脂組成物により電子部品を封止して得ることができる。電子部品が封止用樹脂組成物によって封止されることで、本開示の電子部品装置は、耐温度サイクル性に優れる。
【0047】
電子部品装置としては、リードフレーム、配線済みのテープキャリア、リジッド配線板、フレキシブル配線板、ガラス、シリコンウエハ等の回路層を有する基板に、半導体チップ、トランジスタ、ダイオード、サイリスタ等の能動素子、コンデンサ、抵抗体、抵抗アレイ、コイル、スイッチ等の受動素子などの電子部品を搭載し、必要な部分を本開示の封止用樹脂組成物で封止して得られる電子部品装置が挙げられる。
特に、リジッド配線板、フレキシブル配線板又はガラス上に形成した配線に、半導体素子をバンプ接続によりフリップチップボンディングした半導体装置が、本開示を適応しうる対象の1つとして挙げられる。具体的な例としては、フリップチップBGA(Ball Grid Array)、LGA(Land Grid Array)、COF(Chip On Film)等の電子部品装置が挙げられる。
【0048】
本開示の封止用樹脂組成物は信頼性に優れたフリップチップ用のアンダーフィル材として好適である。本開示の封止用樹脂組成物が特に好適に適用されるフリップチップの分野としては、配線基板と半導体素子を接続するバンプ材質が従来の鉛含有はんだではなく、Sn-Ag-Cu系等の鉛フリーはんだを用いたフリップチップ半導体部品である。従来の鉛はんだと比較して物性的に脆い鉛フリーはんだを用いてバンプ接続をしたフリップチップに対しても、本開示の封止用樹脂組成物は良好な信頼性を維持できる。また、ウエハーレベルCSP等のチップスケールパッケージを基板に実装する際にも本開示の封止用樹脂組成物を適用することで、信頼性の向上を図ることができる。
【0049】
<電子部品装置の製造方法>
本開示の電子部品装置の製造方法は、回路層を有する基板と、前記基板上に配置され、前記回路層と電気的に接続された電子部品とを、本開示の封止用樹脂組成物を用いて封止する工程を有する。
本開示の封止用樹脂組成物を用いて回路層を有する基板と電子部品とを封止する工程に特に限定はない。例えば、電子部品と回路層を有する基板とを接続した後に、電子部品と基板とのギャップに毛細管現象を利用して封止用樹脂組成物を付与し、次いで封止用樹脂組成物の硬化反応を行う後入れ方式、並びに、先に回路層を有する基板及び電子部品の少なくとも一方の表面に本開示の封止用樹脂組成物を付与し、熱圧着して電子部品を基板に接続する際に、電子部品及び基板の接続と封止用樹脂組成物の硬化反応とを一括して行う先塗布方式が挙げられる。
封止用樹脂組成物の付与方法としては、注型方式、ディスペンス方式、印刷方式等が挙げられる。
【0050】
本開示の封止用樹脂組成物を用いることにより、ブリードが抑制されたフリップチップ実装体等の電子部品装置を容易に製造することができる。
【実施例0051】
以下に、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。なお、下記実施例において、部及び%は特に断りのない限り、質量部及び質量%を示す。
【0052】
表1及び表2に示す組成となるように各成分を配合し、三本ロール及び真空ライカイ機にて混練し、分散して、実施例1~実施例9及び比較例1~比較例7の封止用樹脂組成物を作製した。なお、表中の配合単位は質量部であり、また「-」は「配合無し」を表す。さらに封止用樹脂組成物における無機充填材の含有率(質量%)は、各成分の配合量から算出した。
【0053】
(実施例1~9、比較例1~7)
エポキシ樹脂として、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(エポキシ樹脂1;新日鉄住金化学株式会社製、商品名「YDF-8170C」、エポキシ当量:160g/eq)、及び3官能のエポキシ基を有するアミン型エポキシ樹脂(エポキシ樹脂2;三菱ケミカル株式会社製、商品名「jER630」、エポキシ当量:95g/eq)を用意した。
【0054】
特定硬化剤として、ジアミノトルエン型アミン硬化剤(アミン硬化剤1;三菱ケミカル株式会社製、商品名「jERキュアW」)、及びジアミノジフェニルメタン型アミン硬化剤(アミン硬化剤2;日本化薬株式会社製、商品名「カヤハード-AA」)を用意した。
【0055】
無機充填材として、シリカ粒子である平均粒径0.5μmで比表面積4.5m/gの無機充填材(無機充填材1:株式会社アドマテックス製、商品名「SE2200-SEJ」)、平均粒径50nmで比表面積66m/gの無機充填材(無機充填材2:株式会社アドマテックス製、商品名「YA050C-SZ2)、平均粒径10nmで比表面積280m/gの無機充填材(無機充填材3:株式会社アドマテックス製、商品名「YA010C-SZ2」)、平均粒径0.3μmで比表面積14m/gの無機充填材(無機充填材4:株式会社アドマテックス製、商品名「SE1050」)、平均粒径0.3μmで比表面積15m/gの無機充填材(無機充填材5:株式会社アドマテックス製、商品名「SE1050-SET」)、平均粒径0.3μmで比表面積16m/gの無機充填材(無機充填材6:株式会社アドマテックス製、商品名「SE1030-SET」)、平均粒径0.15μmで比表面積30m/gの無機充填材(無機充填材7:株式会社日本触媒製、商品名「KE-S10」)、及び平均粒径0.15μmで比表面積30m/gの無機充填材(無機充填材8:株式会社日本触媒製、商品名「KE-S10-HG」)を用意した。
【0056】
上記で得られた封止用樹脂組成物について、以下のようにして諸特性の評価を行った。また、以下の表1及び表2に各数値を示す。
【0057】
(1)流動性:粘度及び揺変指数
封止用樹脂組成物の25℃における粘度(常温粘度、Pa・s)を、E型粘度計(コーン角度3°、回転数10回転/分)を用いて測定した。また、25℃における揺変指数は、回転数が1.5回転/分における粘度と回転数が10回転/分における粘度との比[(1.5回転/分における粘度)/(10回転/分における粘度)]とした。110℃における粘度(Pa・s)はレオメーターAR2000(アルミコーン40mm、せん断速度32.5/sec)を用いて測定した。
【0058】
(2)耐熱性:ガラス転移温度(Tg)、熱膨張係数(CTE)
封止用樹脂組成物を165℃、2時間の条件で硬化して作製した試験片(φ4mm×20mm)を、熱機械分析装置(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社製、商品名TMAQ400)を用い、荷重15g、測定温度-50℃~220℃、昇温速度5℃/分の条件で測定した。
またTg以下の温度範囲における熱膨張係数をCTE1とし、Tg以上の温度範囲における熱膨張係数をCTE2とした。Tg及びCTEは熱的安定性を示し、Tgは100℃~130℃程度が好ましく、CTE1及びCTE2は低いほど好ましい。
【0059】
(3)ブリード:ブリード長さの測定
ソルダーレジスト基板に、Arプラズマ処理(400W、2分間)を行い、このArプラズマ処理を行ったソルダーレジスト基板上に、シリンジに充填された封止用樹脂組成物を、20Gのニードルにて30mg吐出してポッティングし、150℃で120分間硬化させた。硬化後、光学顕微鏡を用いて、ブリードの長さを測定した。基板にはFR-4(日立化成株式会社製、MRC-E-679)上にソルダーレジスト(太陽インキ製造株式会社製 PSR-4000-AUS703)を形成したものを使用した。ブリード長さは、500μm以下であることが好ましく、400μm以下であることがより好ましく、350μm以下であることがさらに好ましい。
【0060】
【表1】
【0061】
【表2】
【0062】
表1及び表2において「第2の無機充填材の含有率」は、無機充填材に占める第2の無機充填材の割合を意味する。
表1及び表2において、「比表面積×無機充填材の割合」は、「無機充填材の比表面積に、固形分質量に占める無機充填材の質量の割合を乗じた値」を意味する。
【0063】
表1及び表2の結果から明らかなように、実施例1~9の封止用樹脂組成物は、比較例1~7の封止用樹脂組成物に比較して、ブリードに優れることが分かる。
【0064】
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び技術規格は、個々の文献、特許出願、及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。