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特開2024-169643水田の水位管理スケジュールの生成装置、生成方法、生成プログラム、制御装置、制御方法、及び制御プログラム
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  • 特開-水田の水位管理スケジュールの生成装置、生成方法、生成プログラム、制御装置、制御方法、及び制御プログラム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024169643
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】水田の水位管理スケジュールの生成装置、生成方法、生成プログラム、制御装置、制御方法、及び制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   A01G 25/00 20060101AFI20241128BHJP
【FI】
A01G25/00 501A
A01G25/00 501E
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024165619
(22)【出願日】2024-09-24
(62)【分割の表示】P 2021127841の分割
【原出願日】2021-08-03
(31)【優先権主張番号】P 2020134066
(32)【優先日】2020-08-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】501203344
【氏名又は名称】国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】丸山 篤志
(57)【要約】
【課題】ユーザが、水位管理スケジュールを作成及び変更することを可能にする。
【解決手段】生成装置(30)は、水田水位の管理パターンが異なる複数の水管理要素から選択される1以上の水管理要素を、水田の水位を管理する管理期間を分割した複数の分割期間のそれぞれに割り当てて作成された水位管理スケジュールを受け付け、水位管理スケジュールに含まれる水管理要素の水田水位の管理パターンを、ユーザからの入力に基づいて変更する変更部(332)を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水田への給排水を制御して当該水田の水位を管理するための水位管理スケジュールを生成する生成装置であって、
水田水位の管理パターンが異なる複数の水管理要素から選択される1以上の水管理要素を、水田の水位を管理する管理期間を分割した複数の分割期間のそれぞれに割り当てて作成された水位管理スケジュールを受け付け、当該水位管理スケジュールに含まれる前記水管理要素の水田水位の管理パターンを、ユーザからの入力に基づいて変更する変更部を含んでいることを特徴とする生成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水田の水位管理スケジュールの生成装置、生成方法、生成プログラム、制御装置、制御方法、及び制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報技術の発達に伴い、水田の給排水を遠隔操作できる技術が実用化されつつある。例えば、特許文献1には、水田水位をコンピュータコントロールする技術が開示されている。また特許文献2には、稲の生育及び気象条件にあった適正水位を設定する技術が開示されている。そして、特許文献3には、圃場群に対して給水を予約するシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開第2003-265055号明細書(2003年9月24日公開)
【特許文献2】特開第2000-69865号明細書(2000年3月7日公開)
【特許文献3】特開第2019-179293号明細書(2019年10月17日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のような従来技術は、予めシステムが備えた水位設定値のパターンモデルを、ユーザが任意に変更及び微調整できない(特許文献1~3)といった問題がある。
【0005】
本発明の一態様は、ユーザが、水田への給排水を制御して当該水田の水位を管理するための水位管理スケジュールを作成及び変更することを可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る生成装置は、水田への給排水を制御して当該水田の水位を管理するための水位管理スケジュールを生成する生成装置であって、水田水位の管理パターンが異なる複数の水管理要素から選択される1以上の水管理要素を、水田の水位を管理する管理期間を分割した複数の分割期間のそれぞれに割り当てて作成された水位管理スケジュールを受け付け、当該水位管理スケジュールに含まれる前記水管理要素の水田水位の管理パターンを、ユーザからの入力に基づいて変更する変更部を含んでいる構成である。
【0007】
前記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る生成方法は、水田への給排水を制御して当該水田の水位を管理するための水位管理スケジュールを生成する生成方法であって、水田水位の管理パターンが異なる複数の水管理要素から選択される1以上の水管理要素を、水田の水位を管理する管理期間を分割した複数の分割期間のそれぞれに割り当てて作成された水位管理スケジュールを受け付け、当該水位管理スケジュールに含まれる前記水管理要素の水田水位の管理パターンを、ユーザからの入力に基づいて変更するステップを含んでいる方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、ユーザが、水田への給排水を制御して当該水田の水位を管理するための水位管理スケジュールを容易に作成及び変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態1に係る生成装置を備えた自動水管理システムの構成を示す機能ブロック図である。
図2】本発明の実施形態1に係る生成装置によって作成された水位管理スケジュールの例を模式的に表した図である。
図3】本発明の実施形態1に係る生成装置の処理の一例を示すフローチャートである。
図4】本発明の実施形態1に係る生成装置が生成する水位管理スケジュール作成画面の一例を示す図である。
図5】本発明の実施形態2に係る生成装置を備えた自動水管理システムの構成を示す機能ブロックである。
図6】本発明の実施形態2に係る生成装置における水需要予測の概要を説明する図である。
図7】本発明の実施形態2に係る生成装置の処理の一例を示すフローチャートである。
図8】本発明の実施形態3に係る生成装置を備えた自動水管理システムの構成を示す機能ブロックである。
図9】気象データ、水稲の発育ステージ及び水田水位と、最適な給水時刻との関係を示すルックアップテーブルの一例を示す図である。
図10】本発明の実施形態3に係る生成装置の処理の一例を示すフローチャートである。
図11】本発明の実施形態1に係る制御装置の処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
〔実施形態1〕
<構成>
実施形態1に係る生成装置30の構成を図1に基づいて説明する。図1は、実施形態1に係る生成装置30を備えた自動水管理システム1の構成を示す機能ブロック図である。図1に示すように、自動水管理システム1は、ユーザ端末10、生成装置30、制御装置50、及び水位管理システム70を備えている。
【0011】
自動水管理システム1では、生成装置30は、ユーザ端末10におけるユーザからの入力に基づいて、水田への給排水を制御して当該水田の水位を管理するための水位管理スケジュールを生成する。制御装置50は、生成装置30が生成した水位管理スケジュールを受け付け、水位管理スケジュールが示す水田水位の管理パターンとなるように、水位管理システム70を制御して対象水田への給排水量を制御する。ユーザ端末10、生成装置30、制御装置50、及び水位管理システム70は、これらの内の少なくとも2つが同じ装置内に存在していてもよく、その組み合わせは特に制限されない。例えば、生成装置30と制御装置50とは、同じ装置内に存在してもよく、ユーザ端末10、生成装置30、制御装置50、及び水位管理システム70の全てが同じ装置内に存在していてもよい。なお、本明細書において使用する「水田の水位」又は「水田水位」は、水田の地表から水面までの高さをいう。
【0012】
ユーザ端末10は、水田の水管理を遠隔から行うユーザによって操作される端末である。ユーザ端末10は、一例として、通信機能を持つ電子端末である。例えば、ユーザ端末10は、スマートフォン端末、PDA端末、パソコン端末、またその他の電子端末である。
【0013】
水位管理システム70は、対象水田へ給水する給水部と対象水田から排水する排水部とを備える。水位管理システム70は、水田の水位の給排水を実際に行うシステムである。
【0014】
ユーザ端末10及び制御装置50は、ネットワークを介して生成装置30と通信することが可能である。これらを接続するネットワークは、例えば、インターネット、有線LAN(Local Area Network)、無線LAN、モバイルデータ通信網、又はこれらの組み合わせによって構成される。ただし、ネットワークの構成はこれらに限定されない。また、制御装置50及び水位管理システム70を接続するネットワークも同様である。また、ユーザ端末10自体を生成装置として機能させることも可能である。この場合、ユーザ端末10を、後述する生成装置30の各部として機能させればよい。
【0015】
<機能>
本実施形態に係る各部の機能を図1に基づいて説明する。
【0016】
(ユーザ端末10)
図1に示すように、ユーザ端末10は、通信部11、表示部13、及び入力部15を備えている。通信部11は、ユーザ端末10が生成装置30と通信する機能を有する。表示部13は、ユーザに対して、水位管理スケジュール作成画面を表示する。水位管理スケジュール作成画面については後述する。
【0017】
入力部15は、水位管理スケジュール作成画面に対するユーザからの入力を受け付ける。入力部15は、例えば、キーボード、マウス、タッチパッド、マイク、又はこれらの組み合わせ等が用いられる。
【0018】
(生成装置30)
図1に示すように、生成装置30は、通信部31、制御部33、及び記憶部35を備える。通信部31は、生成装置30が、ユーザ端末10及び制御装置50と通信する機能を有する。制御部33は、生成装置30の処理を制御する機能を有する。制御部33は、作成部331、変更部332、補正部333、及び選択部334を備える。
【0019】
作成部331は、ユーザからの入力に基づいて、水位管理スケジュールを作成する。具体的には、作成部331は、ユーザからの入力に基づいて、水田水位の管理パターンが異なる複数の水管理要素から選択される1以上の水管理要素を、水田の水位を管理する管理期間を分割した複数の分割期間のそれぞれに割り当て、前記管理期間内の水位管理スケジュールを作成する。前記「水管理要素」及び前記「水位管理スケジュール」については、後述する。
【0020】
変更部332は、水位管理スケジュールを、ユーザからの入力に基づいて変更する。具体的には、ユーザからの入力に基づいて、前記水位管理スケジュールに含まれる前記水管理要素の水田水位の管理パターンを変更する。
【0021】
補正部333は、対象水田において栽培する対象水稲の移植日、対象水田が存在する地点の気温、対象水田が存在する地点の降水量、対象水田の水田水位、対象水田の減水深、及び対象水田において栽培する対象水稲の発育予測情報からなる群から選択される1つ以上の情報(以下では「補正部参照情報」という場合がある)を受け付け、当該補正部参照情報を参照して、水位管理スケジュールを補正する。具体的には、補正部333は、1つ以上の補正部参照情報を参照して、前記水位管理スケジュールに含まれる前記水管理要素の水田水位の管理パターンを補正する。補正部による補正は自動的に行われてもよく、ユーザの承認に基づき補正を行う態様としてもよい。各補正部参照情報については、後述する。各補正部参照情報は、サーバから取得してもよく、記憶部35に予め記憶されていてもよい。
【0022】
選択部334は、ユーザからの入力に基づいて、予め作成した複数の水位管理スケジュールの内の一つを選択する。選択部334については、実施形態1の変形例で後述する。
【0023】
記憶部35には、制御部33の各部によって参照される各種情報が記憶されている。
【0024】
図2は、水位管理スケジュールの一例を模式的に表した図である。「水位管理スケジュール」は、水管理要素と、水田の水位を管理する管理期間を分割した複数の分割期間のそれぞれと、の対応を示している。
【0025】
水田の水位を管理する「管理期間」は、特に限定されず、図2に示す水位管理スケジュールのように、例えば、水稲の移植日を開始日とし、成熟日から任意の日数(例えば、10日)が経過した日を終了日とする連続した期間として設定することができる。また、「分割期間」は、管理期間を2~10個、好ましくは7~8個に分割した各期間をいう。分割期間の数が7~8個であれば、日本で実施されているほとんどの水位管理スケジュールを再現することができるため、図2に示す水位管理スケジュールでは、管理期間を7つ又は8つの分割期間に分割している。
【0026】
各分割期間の開始日及び終了日は、特に限定されないが、水稲の発育ステージ(例えば、移植日、幼穂形成日、出穂日、成熟日)と紐付けて決定することが好ましい。例えば、図2の2001に示す水位管理スケジュールでは、分割期間の開始日が、各発育ステージとの差分日数と関連付けられている。具体的には、分割期間(1)の開始日が移植日+0日と関連付けられ、分割期間(3)の開始日が幼穂形成日+0日と関連付けられている。また、例えば、図2の2001に示す水位管理スケジュールでは、分割期間(2)の開始日が移植日+10日と関連付けられ、分割期間(4)の開始日が幼穂形成日+20日と関連付けられ、分割期間(5)の開始日が出穂日-5日と関連付けられ、分割期間(6)の開始日が出穂日+15日と関連付けられ、分割期間(7)の開始日が出穂日+30日と関連付けられている。これによって、各発育ステージに適した水位管理スケジュールを作成することが可能となる。なお、分割期間の長さは、続く次の分割期間の開始日が決まると自動的に定まる。
【0027】
「水管理要素」は、水田水位の管理パターン(以下、「水位管理パターン」と称する)を表したものである。「水位管理パターン」は、水位の管理方法、最大水位、水位の管理方法の繰り返し周期、水位の管理方法の期間の開始日等の情報を含む。「水管理要素」は、例えば、「一定湛水」、「落水管理」、「間断灌漑」、又は「深水管理」と称される4つの異なる水位管理パターンを表す水管理要素を含む。なお、水管理要素が示す水位の管理方法の期間の開始日は、当該水管理要素が割り当てられた分割期間の開始日と対応しており、水管理要素が示す水位の管理方法の期間の長さは、当該水管理要素が割り当てられた分割期間の長さと対応している。
【0028】
水管理要素「一定湛水」は、当該水管理要素を割り当てた分割期間にわたって、対象水田の水位を設定した最大水位に保つ水位の管理方法を表す。「一定湛水」が割り当てられた期間中は、水位を一定に保つため、蒸発散や地下への浸透等によって設定した水田水位から水位が低下した分を補うために、例えば、毎日少しずつ給水が行われる。
【0029】
水管理要素「一定湛水」は、前述した水位の管理方法の他に、当該水管理要素を割り当てた分割期間における最大水位、及び当該水管理要素が示す水位の管理方法の期間の開始日の情報を含む。「一定湛水」において設定される最大水位は、通常0~20cmの範囲であるが、この範囲に限定されず、対象水田の畔の高さによって適宜設定することができる。例えば、図2の2001に示す分割期間(1)、(2)及び(5)にそれぞれ割り当てられたパターンa1~a3によって水位管理スケジュール中の水管理要素「一定湛水」の水位管理パターンを模式的に表すことができる。
【0030】
「一定湛水」は、当該水管理要素を割り当てた分割期間における下限水位の情報をさらに含んでいてもよい。「下限水位」とは、水位の下限値である。「一定湛水」において、最大水位と下限水位との両方を設定することにより、所定の緩衝域をもたせて水位を一定に保つことが可能となる。「緩衝域」とは、最大水位と下限水位との差である。これにより、最大水位を少しでも下回ると直ちに給水を開始するのではなく、下限水位を下回ったときに給水を開始するように水位を管理することができる。その結果、給水の頻度を減らし、節水に寄与することができる。なお、「一定湛水」における「緩衝域」の幅を広くすることで、後述する「間断灌漑」にも対応することが可能となる。
【0031】
水管理要素「落水管理」は、当該水管理要素を割り当てた分割期間にわたって、給水を行わず、排水口を開けて強制的に排水し続ける水位の管理方法を表す。水管理要素「落水管理」が割り当てられた期間中は、排水口を開けたままにするため、水位が0cmになった後も、地下水位が下がり続ける。その結果、水田水位が0cm未満となる場合がある。水管理要素「落水管理」は、前述した水位の管理方法の他に、当該水位の管理方法の期間の開始日の情報を含む。例えば、図2の2001に示す分割期間(4)及び(7)にそれぞれ割り当てられたパターンb1及びb2によって水位管理スケジュール中の水管理要素「落水管理」の水位管理パターンを模式的に表すことができる。
【0032】
水管理要素「間断灌漑」は、対象水田の水位が設定した最大水位になるまで給水する給水ステップと、給水を行わずに排水口を閉じたままで自然落水させる自然落水ステップとを1サイクルとして、これらのステップを1サイクル以上行う水位の管理方法を表す。自然落水ステップにおける落水の速さは対象水田の減水深に応じて決まり、通常、一日あたり1~2cm水位が低下する速さで落水する。
【0033】
水管理要素「間断灌漑」は、前述した水位の管理方法の他に、当該水管理要素を割り当てた分割期間における最大水位、当該水管理要素が示す水位の管理方法の期間の開始日、及び1サイクル当たりの周期(繰り返し周期)の情報を含む。「間断灌漑」において設定される最大水位は、給水ステップにおける最大水位であり、通常0~20cmの範囲であるが、この範囲に限定されず、対象水田の畔の高さによって適宜設定することができる。繰り返し周期は適宜設定することができ、例えば、特定の周期(7日周期等)をユーザが任意で設定してもよく、又は土壌の乾燥状態に応じて次の給水ステップを開始するように設定してもよい。土壌の乾燥状態は、地下水位や土壌水分量の計測値、または減水深の計算値を利用することで把握することができる。地下水位及び土壌水分量を確認する方法は特に限定されず、例えば、地下水位は、後述する水位センサ77(図1)を用いて確認することができる。また、土壌水分量は、土壌水分センサ(図示しない)を用いるか、モデル等による推定によって確認することができる。減水深の算出方法については後述する。例えば、図2の2001に示す分割期間(6)に割り当てられたパターンc1によって水位管理スケジュール中の「間断灌漑」の水位管理パターンを模式的に表すことができる。
【0034】
水管理要素「間断灌漑」では、給水ステップにおける最大水位と、繰り返し周期とを調節することで、ほとんど湛水しないで土壌を湿潤に保つ水位の管理方法である「飽水管理」にも対応可能である。図2の2003に示す分割期間(5)に割り当てられたパターンが「飽水管理」に相当する。
【0035】
水管理要素「深水管理」は、当該水管理要素を割り当てた分割期間にわたって、対象水田の水位が設定した最大水位になるまで一定の割合で水位が上昇するように給水する水位の管理方法を表す。例えば、幼穂の成長スピードにあわせて、一日あたり1cm水位が上昇するように給水を行う。対象水田の水位が最大水位に到達した後は、当該最大水位を保つように、蒸発散や地下への浸透等による水位低下分を、例えば、毎日少しずつ給水することによって補う。
【0036】
水管理要素「深水管理」は、前述した水位の管理方法の他に、当該水管理要素を割り当てた分割期間における最大水位、一日あたりの水位の上昇量、及び当該水管理要素が示す水位の管理方法の期間の開始日の情報を含む。水管理要素「深水管理」において設定される最大水位は、通常0~20cmの範囲であるが、この範囲に限定されず、対象水田の畔の高さによって適宜設定することができる。また、水管理要素「深水管理」において設定される一日あたりの水位の上昇量はユーザが適宜設定することができる。また、水管理要素「深水管理」が示す水位の管理方法は、特に幼穂形成期の低温対策に適しているため、水管理要素「深水管理」において設定される水位の管理方法の期間の開始日は、幼穂形成日+0日と関連付けられていることが好ましい。例えば、図2の2001に示す分割期間(3)に割り当てられたパターンd1によって水位管理スケジュール中の水管理要素「深水管理」の水位管理パターンを模式的に表すことができる。
(制御装置50)
図1に示すように、制御装置50は、通信部51、水位管理スケジュール受付部53、給排水部制御部55を備える。通信部51は、制御装置50が生成装置30と通信する機能を有する。水位管理スケジュール受付部53は、生成装置30が生成した水位管理スケジュールを受け付ける。給排水部制御部55は、水位管理スケジュール受付部53が受け付けた水位管理スケジュールを参照して、水位管理スケジュールが示す水位となるように水位管理システム70の給水部73及び排水部75を制御する。具体的には、給排水部制御部55は、水位管理システム70の給水部73又は排水部75のバルブの開閉を制御することで、水田への給水又は排水を制御する。
【0037】
(水位管理システム70)
図1に示すように、水位管理システム70は、通信部71、給水部73、排水部75、水位センサ77を備える。通信部71は、水位管理システム70が制御装置50と通信する機能を有する。給水部73は、対象水田へ給水する。排水部75は、対象水田から排水する。水位センサ77は、対象水田の水位を計測する。
【0038】
<生成装置30の処理>
生成装置30の処理の流れについて、図1図3及び図4を参照して説明する。図3は、生成装置30による処理の一例を示すフローチャートである。図4は、生成装置30が生成する水位管理スケジュール作成画面4001の一例を示す図である。
【0039】
図4に示すように、水位管理スケジュール作成画面4001は、移植日入力領域4002、水位管理スケジュール入力領域4004、スケジュール作成ボタン4005、水位管理スケジュール表示領域4006、及び給水時刻管理スケジュール表示領域4007を含んでいる。
【0040】
移植日入力領域4002は、対象水田における水稲の移植日を入力する領域である。移植日入力領域4002は、リスト表示ボタン4008を含んでいるため、リスト表示ボタン4008を押下することによって、移植日候補リスト表示領域(図示しない)の表示/非表示を切り替えることができる。移植日候補リスト表示領域には移植日の候補日が表示され、ユーザは移植日候補リスト表示領域内に表示された日付を選択することによって移植日を入力することができる。移植日入力領域4002に移植日が入力されると、水稲の発育モデルと積算気温とを元に出穂日が自動的に算出される。
【0041】
水位管理スケジュール入力領域4004は、水位管理スケジュールを入力する領域である。管理期間は7つの分割期間に分割され、それぞれの分割期間について、発育ステージ、水位の管理方法、最大水位、給水時刻を設定できるようになっている。図4に示す例では、管理期間を7つの分割期間に分割しているが、これに限定されず、適宜調整することができる。
【0042】
水位管理スケジュール入力領域4004の各セルは、リスト表示ボタンを含んでいるため、リスト表示ボタンを押下することによって、各セルの設定項目に関する候補リスト表示領域(図示しない)の表示/非表示を切り替えることができる。例えば、発育ステージのセルに含まれるリスト表示ボタン4003を押下することによって、候補リスト表示領域には発育ステージの候補(例えば、「移植日+0日」等)が表示され、ユーザは候補リスト表示領域内に表示された発育ステージを選択することによって発育ステージを入力することができる。
【0043】
水位管理スケジュール表示領域4006は、水位管理スケジュールが表示される領域である。ユーザがスケジュール作成ボタン4005を押下すると、水位管理スケジュール入力領域4004における入力に対応する水位管理スケジュールが水位管理スケジュール表示領域4006に表示される。
【0044】
給水時刻管理スケジュール表示領域4007は、給水時刻管理スケジュールが表示される領域である。ユーザがスケジュール作成ボタン4005を押下すると、水位管理スケジュール入力領域4004における入力に対応する給水時刻管理スケジュールが給水時刻管理スケジュール表示領域4007に表示される。
【0045】
図3に示すように、まず、ステップS101において、作成部331は、ユーザからの入力を受け付け、当該入力に基づいて水位管理スケジュールを作成する(水位管理スケジュール作成ステップ)。具体的には、ユーザは、ユーザ端末10を操作し、表示部13に表示される水位管理スケジュール作成画面4001の水位管理スケジュール入力領域4004に必要事項を入力し、スケジュール作成ボタン4005を押下する。作成部331は、水位管理スケジュール入力領域4004におけるユーザの入力を受け付け、これに基づいて、1以上の水管理要素を、複数の分割期間のそれぞれに割り当てることにより、管理期間内の水位管理スケジュールを作成する。水位管理スケジュール表示領域4006には、作成部331が作成した水位管理スケジュールが表示される。
【0046】
次いで、ステップS102において、生成装置30の変更部332は、ユーザからの入力に基づいて、水位管理スケジュールに含まれる水管理要素の水田水位の管理パターンを変更する(変更ステップ)。具体的には、ユーザは、水位管理スケジュール作成画面4001の水位管理スケジュール表示領域4006に表示された水位管理スケジュールを確認し、必要に応じて水位管理スケジュール入力領域4004における最大水位又は発育ステージを変更し、スケジュール作成ボタン4005を押下する。変更部332は、水位管理スケジュール入力領域4004におけるユーザの入力を受け付け、これに基づいて、変更対象の水管理要素の水田水位の管理パターンを変更する。水位管理スケジュール表示領域4006には、変更部332が変更した変更後の水位管理スケジュールが表示される。
【0047】
次いで、ステップS103において、生成装置30の補正部333は、対象水田において栽培する対象水稲の移植日、対象水田が存在する地点の気温、対象水田が存在する地点の降水量、対象水田の水田水位、対象水田の減水深、及び対象水田において栽培する対象水稲の発育予測情報からなる群から選択される1つ以上の補正部参照情報を参照して、水位管理スケジュールに含まれる水管理要素の水田水位の管理パターンを補正する(補正ステップ)。
【0048】
「移植日」は、対象水稲を水田に植えた日である。尚、「移植日」は、直播栽培を行う場合には、「播種日」と言い換えることができる。「播種日」は、水田に種を播種した日を意味する。
【0049】
「気温」は、任意の時点における実測値、推定値、または予測値であってもよい。気温の推定値または予測値は、水田が存在する地点の気温が推定または予測可能な情報であれば特に限定されない。例えば、国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構が運用するメッシュ農業気象データシステムから取得することができる。
【0050】
「降水量」は、任意の時点における実測値、推定値、または予測値であってもよい。降水量の推定値または予測値は、水田が存在する地点の降水量が推定または予測可能な情報であれば特に限定されない。例えば、国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構が運用するメッシュ農業気象データシステムから取得することができる。
【0051】
「水田水位」は、任意の時点における実測値、推定値、または予測値である。水田水位の推定値または予測値は、水位管理スケジュールから推定または予測可能である。
【0052】
「減水深」は、対象水田における水の蒸発散量と地下への浸透量(地下浸透量)との和として、以下の式1から算出することができる:
減水深(mm/日)=E+ΔS …(1)
(式中、Eは蒸発散量を表し、ΔSは地下浸透量を表す。)。
【0053】
蒸発散量及び地下浸透量は、公知の方法から求めることができる。蒸発散量は季節変化するため、例えば、気象データから、微気象モデルまたは簡単な経験式を用いて、日々の蒸発散量を計算することができる。
【0054】
地下浸透量は、対象水田の土壌種類に応じたデフォルト値を与えるか、または減水深から蒸発散量を差し引いて得られる値を地下浸透量とすればよい。「減水深」は、水田毎に一定値を与えてもよいし、水田水位の観測データから自動的に求めてもよい。
【0055】
「発育予測情報」は、対象水田において栽培する対象水稲の発育を予測した結果であり、例えば、出穂日等である。「発育予測情報」は、対象水稲の発育ステージを予測可能な情報であれば特に限定されない。
【0056】
ステップS103では、補正部333は、「発育予測情報」を参照し、水管理要素が示す水位の管理方法の期間の開始日を早める又は遅らせることによって補正する。水管理要素が示す水位の管理方法の期間の長さは、続く次の期間の開始日が決まると自動的に定まる。水管理要素が示す水位の管理方法の期間の長さは、当該水管理要素が割り当てられた分割期間の長さと対応している。分割期間の開始日及び終了日は水稲の発育ステージと紐づけて決定されるため、補正部333は、「発育予測情報」を参照することによって、水位管理スケジュールにおいて設定された発育ステージと、発育予測情報とのズレを補正することができる。また、補正部333は、「降水量予測値」又は「減水深」の少なくとも1つを参照し、水管理要素が示す指定する水田の最大水位を上げる又は下げることによって補正する。
【0057】
<制御装置50の処理>
制御装置50の処理の流れについて、図1及び図11を参照して説明する。図11は、本発明の実施形態1に係る制御装置50の処理の一例を示すフローチャートである。
【0058】
まず、ステップS401において、制御装置50の水位管理スケジュール受付部53は、生成装置30が生成した水位管理スケジュールを受け付ける(水位管理スケジュール受け付けステップ)。
【0059】
次いで、ステップS402において、制御装置50の給排水部制御部55は、水位管理スケジュール受付部53が受け付けた水位管理スケジュールを参照して、水位管理スケジュールが示す水位を達成できるように、水位管理システム70の給水部73と排水部75とを制御する(給排水部制御ステップ)。
【0060】
水田水位は、水位センサ77によって常時モニタリングされている。給水によって、又は給水前からの雨等の影響で、水位管理スケジュールが指定する水田水位を上回る場合は、給排水部制御部55は給水部73を制御して給水を停止させると同時に、排水部75を制御して自動的に排水させる。
【0061】
<本実施形態の効果>
本実施形態は、ユーザからの入力に基づいて、生成装置30が水位管理スケジュールを作成し、変更することにより、ユーザが任意に水位管理スケジュールを作成及び変更することが可能となる。
【0062】
本発明者は、水稲栽培におけるほとんどの水位管理パターンを、前述の「一定湛水」、「落水管理」、「間断灌漑」、又は「深水管理」の4つの型でカバーできること、及びこれらの組み合わせによって日本で実施されているほとんどの水位管理スケジュールを再現可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。生成装置30によれば、ユーザは、水位管理スケジュールにおける水位管理パターンを4種類の水管理要素を含む複数の水管理要素の中から選択して分割期間に割り当てればよいため、水位管理スケジュールを容易に作成することができる。また、分割期間に水管理要素を割り当てて水位管理スケジュールを作成する方式を採用することにより、新たな水位管理パターンが必要になった場合には、それに対応する新たな水管理要素を水管理要素の選択肢に追加するだけで、新規の水位管理パターンを含む水位管理スケジュールを作成することが可能となる。
【0063】
また、各水管理要素を表すパターン(例えば、図2に示すパターンa~d)の組み合わせによって水位管理スケジュールを表すことにより、ユーザが視覚的に水位管理スケジュールの内容(例えば、各パターンにおいて設定されている水田水位、繰り返し周期、期間の開始日等)を把握しやすくなる。また、水位管理スケジュールは、発育ステージと紐づけされているため、他の移植日や気象条件の異なる他地域にも適用することができる。
【0064】
さらには、作成した水位管理スケジュールを、水田において栽培する対象水稲の移植日、水田が存在する地点の気温、水田が存在する地点の降水量、水田の水田水位、水田の減水深、及び水田において栽培する対象水稲の発育予測情報からなる群から選択される1つ以上の補正部参照情報に応じて補正することができるので、気象条件や発育に応じた適切な水位管理スケジュールを作成することができる。
【0065】
また、制御装置50は、水位管理スケジュールに従って水位管理システム70の給水部73と排水部75との制御を実行するので、ユーザが望む水位管理を実施することが可能となる。
【0066】
〔変形例〕
生成装置30は、選択部334が、ユーザからの入力に基づいて、予め作成した複数の水位管理スケジュールのうちの一つを選択し、作成部331は、ユーザからの入力に基づいて、選択部334が選択した前記水位管理スケジュールが示す前記水管理要素と、当該水管理要素の前記分割期間への割り当てとを変更して、新規の水位管理スケジュールを作成する構成とすることもできる。予め作成した複数の前記水位管理スケジュールには、地域ごとの慣行型水管理パターンを示す水位管理スケジュールが含まれていることが好ましい。
【0067】
地域ごとの慣行型水管理パターンを示す水位管理スケジュールの例を図2に示す。図2の2001~2004の水位管理スケジュールは、それぞれ、地域A~Dの慣行型水管理パターンを示す水位管理スケジュールである。図2に示すように、水位管理スケジュールに、地域性による違いがあることがわかる。
【0068】
予め作成した複数の水位管理スケジュールには、ユーザが予め作成したスケジュールが含まれていてもよい。予め作成した複数の水位管理スケジュールは、記憶部35に記憶されている。
【0069】
<処理のバリエーション>
上述したステップS101の代わりに、以下のステップS101-1及びS101-2を行う。まず、ステップS101-1において、ユーザは、水位管理スケジュール作成画面4001において、対象水田が存在する地域名を入力する。選択部334は、ユーザからの入力に基づいて、記憶部35に記憶されている予め作成した複数の水位管理スケジュールのうち、指定された地域の慣行型水管理パターンを示す水位管理スケジュールを選択し、水位管理スケジュール表示領域4006に水位管理スケジュールを表示させる(選択ステップ)。水位管理スケジュール入力領域4004には、選択した水位管理スケジュールに対応する情報が表示される。
【0070】
次いで、ステップS101-2において、ユーザは、ユーザ端末10を操作し、水位管理スケジュール入力領域4004に表示された情報の内、各分割期間に割り当てられた水管理要素を変更して、スケジュール作成ボタン4005を押下する。作成部331は、水位管理スケジュール入力領域4004におけるユーザの入力を受け付け、これに基づいて、各分割期間に割り当てられた水管理要素を変更することにより、新規の水位管理スケジュールを作成する。水位管理スケジュール表示領域4006には、作成部331が作成した新規の水位管理スケジュールが表示される。その後のステップS102、S103については前述したとおりである。
【0071】
<本変形例の効果>
本変形例は、ユーザが指定した情報(例えば、地域名、テンプレート名等)に対応する水位管理スケジュールを、記憶部35に記憶されている予め作成した複数の水位管理スケジュールから選択部334が選択することにより、ユーザは、選択した既存の水位管理スケジュールを、新規作成する水位管理スケジュールのテンプレートとして利用することができる。ユーザは、テンプレートの水位管理スケジュールに含まれている水管理要素等の情報を任意で変更すればよい。これにより、ユーザが、水位管理スケジュール作成画面4001の水位管理スケジュール入力領域4004を一から入力する場合と比較して、所望の水位管理スケジュールをより簡単に作成することができる。
【0072】
〔実施形態2〕
本発明の実施形態2について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、前述の実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0073】
<構成>
実施形態2に係る生成装置30aの構成を図5に基づいて説明する。図5は、実施形態2に係る生成装置30aを備えた自動水管理システム1aの構成を示す機能ブロック図である。図5に示すように、生成装置30aは、制御部33aが水需要予測値算出部335及び水位管理スケジュール実行決定部336をさらに備える点で、実施形態1に係る生成装置30と少なくとも異なる。
【0074】
<機能>
生成装置30aの制御部33aが備えている水需要予測値算出部335及び水位管理スケジュール実行決定部336の機能について説明する。
【0075】
水需要予測値算出部335は、水位管理スケジュールを参照して、管理期間内の各日の水需要量の予測値を算出する。管理期間内の対象日の水需要量の予測値を算出方法については後述する。
【0076】
水位管理スケジュール実行決定部336は、前記管理期間内の対象日から始まる連続するn日間(nは1以上の整数)の予測降水量の積算値及び前記水需要量の予測値の積算値を参照して、当該対象日に水位管理スケジュール通りの給排水を実行するか否かを決定する。
【0077】
<処理>
生成装置30aの処理の流れについて、図5図6及び図7を参照して説明する。図6は、本発明の実施形態2に係る生成装置における水需要予測の概要を説明する図である。図6に示すように、生成装置30aは、作成した水位管理スケジュールの情報を元に、対象水田における管理期間中の各日の水需要量を予測する。
【0078】
図7は、生成装置30aによる処理の一例を示すフローチャートである。生成装置30による水位管理スケジュール作成の処理フローについては、実施形態1で説明した通りであるため説明を省略する。
【0079】
ステップS201において、生成装置30aの水需要予測値算出部335は、水位管理スケジュールを参照して、管理期間内の各日の水需要量の予測値を算出する(水需要予測値算出ステップ)。
【0080】
対象水田における管理期間中の算出対象日の水需要量(W)は、算出対象日の水田水位と、当該算出対象日の翌日の水田水位と、当該対象水田の減水深とから算出することができ、具体的には、以下の式2から算出することができる:
=Di+1-D+(E+ΔS)…(2)
(式中、Dは算出対象日の水田水位を表し、Di+1は算出対象日の翌日の水田水位を表し、(E+ΔS)は算出対象日の減水深を表す。)。
【0081】
算出対象日の水田水位は、水位管理スケジュールにおける算出対象日の水田水位を参照することにより求めることができる。同様に、算出対象日の翌日の水田水位は、水位管理スケジュールにおける算出対象日の翌日の水田水位を参照することにより求めることができる。対象水田の減水深の算出方法については、前述したとおりである。なお、式2では、減水深として算出対象日の減水深の値を使用しているが、減水深は、水田毎に一定値を与えてもよいし、気象データから蒸発散量を計算して季節変化を与えることも可能である。
【0082】
次いで、ステップS202において、生成装置30の水位管理スケジュール実行決定部336は、前記管理期間内の対象日(水位管理スケジュール実行決定部336による決定の対象日)から始まる連続するn日間(nは1以上の整数)の予測降水量の積算値と、ステップS201で算出した対象日から始まる連続するn日間(nは1以上の整数)の水需要量の予測値の積算値とを参照して、対象日に水位管理スケジュール通りの給排水を実行するか否かを決定する(水位管理スケジュール実行決定ステップ)。予測降水量は、水田が存在する地点の予測降水量である。nの値は特に限定されないが、通常1~10、好ましくは2~3である。
【0083】
例えば、水位管理スケジュール実行決定部336は、以下の式3から算出した評価値Yに基づき水位管理スケジュール通りの給排水を実行するか否かを決定することができる:
【数1】
評価値Yは、対象日から始まる連続するn日間の降水量Pの積算値に重み係数K(0~1)を乗じた値から、対象日から始まる連続するn日間の水需要Wの積算値を減じた値である。
【0084】
水位管理スケジュール実行決定部336は、例えば、評価値Y>0の場合、すなわち、K=1の場合、対象日から始まる連続するn日間の予測降水量の積算値が水需要量の予測値を上回る場合には、節水のために、水位管理スケジュールに従わずに対象日の給水を停止することを決定する。これにより、給水することなく水位管理スケジュールに示された水田水位を達成することができるため、節水につながる。また、評価値Y>100の場合、すなわち、対象日から始まる連続するn日間の降水量の積算値と水需要量の予測値との差が100mm以上になる場合は、防災のために強制排水することを決定する。評価値Yの閾値、並びに式3中のK及びnの値は、ユーザが適宜設定することができる。
【0085】
水位管理スケジュールに従わない運用を連続して行うことが許容される日数の閾値を予め設定しておき、その閾値を上回る場合は、水位管理スケジュール実行決定部336は、評価値Yにかかわらず水位管理スケジュール通りの給排水を行うことを決定することが好ましい。これにより、実際の水管理の運用が水位管理スケジュールから大きくずれることを防ぐことができる。水位管理スケジュールに従わない運用を連続して行うことが許容される日数の閾値は、ユーザが適宜設定することができるが、通常、2~3日間である。
【0086】
<本実施形態の効果>
本実施形態は、生成装置30aの水需要予測値算出部335が管理期間中の各日の水需要量を算出することで、水位管理スケジュールを利用して管理期間全体の毎日の水需要量を把握することができる。また、管理期間全体の毎日の水需要量を把握することにより、どのような水位管理スケジュールが水需要量を小さくできるのかを事前に比較検討することができる。さらに、水位管理スケジュール実行決定部336は、予測降水量と水需要量の予測値とを参照して、対象日に水位管理スケジュール通りの給排水を実行するか否かを決定するので、対象日の翌日に雨が降りそうな場合には、節水のため給水を停止することができる。また、本実施形態は、水田を利用した防災にも応用することができ、対象日の翌日又は近日中に豪雨が予想される場合には、水田の貯水機能を発揮させるため積極的な排水を行う等の応用も期待できる。
【0087】
〔実施形態3〕
本発明の実施形態3について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、前述の実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0088】
<構成>
実施形態3に係る生成装置30bの構成を図8に基づいて説明する。図8は、実施形態3に係る生成装置30bを備えた自動水管理システム1bの構成を示す機能ブロック図である。図8に示すように、生成装置30bは、制御部33bが給水時刻決定部337をさらに備える点で、実施形態1に係る生成装置30と少なくとも異なる。
【0089】
<機能>
生成装置30bの制御部33bが備えている給水時刻決定部337は、水位管理スケジュールと、給水実施日の気象データを参照して、最適な給水時刻を決定する。ここで、前記「最適な給水時刻」とは、対象水田の水温を最も高く(又は低く)するための最適な給水時刻が意図される。気象データは、具体的には、日最高気温及び日最低気温のデータである。
【0090】
<処理>
生成装置30bの処理の流れについて、図8及び図10を参照して説明する。図10は、生成装置30bによる処理の一例を示すフローチャートである。生成装置30による水位管理スケジュール作成の処理フローについては、実施形態1で説明した通りであるため説明を省略する。
【0091】
ステップS301において、生成装置30bの給水時刻決定部337は、給水実施日の気象データを受け付ける(データ受け付けステップ)。
【0092】
次いで、ステップS302において、水位管理スケジュールと、S301で受け付けた給水実施日の気象データとを参照して、最適な給水時刻を決定する(給水時刻決定ステップ)。例えば、水位管理スケジュールに示されている給水実施日の水田水位及び水稲の発育ステージの情報と、気象データとして日最高気温及び日最低気温とを参照して、シミュレーションにより、「日最低水温」を最も高くする給水時刻を水田の水温を最も高くする最適給水時刻として決定する。又は、水位管理スケジュールに示されている給水実施日の水田水位及び発育ステージの情報と、日最高気温及び日最低気温とを参照して、シミュレーションにより、「日最高水温」を最も低くする給水時刻を水田の水温を最も低くする最適給水時刻として決定する。
【0093】
また、例えば、水位管理スケジュールに示されている給水実施日の水田水位及び水稲の発育ステージの情報と、日最高気温及び日最低気温とを参照して、シミュレーションにより、「日平均水温」を最も高くする給水時刻を水田の水温を最も高くする最適給水時刻として決定してもよく、「日平均水温」を最も低くする給水時刻を水田の水温を最も低くする最適給水時刻として決定してもよい。
【0094】
図4に示す水位管理スケジュール作成画面4001において、ユーザは、水位管理スケジュール入力領域4004における給水時刻のセルにおいて給水時刻を指定することができる。ユーザによって指定された時刻は、給水時刻管理スケジュール表示領域4007において給水時刻管理スケジュールとして表示される。図示しないが、例えば、ユーザが、水位管理スケジュール入力領域4004における給水時刻のセルにおいて水田の水温を最も高くする最適給水時刻を指定した場合は、S302において、給水時刻決定部337は、給水実施日の水田水位、水稲の発育ステージの情報及び気象データを参照して、シミュレーションにより、水田の水温を最も高くするための最適給水時刻を決定する。決定した時刻は、給水時刻管理スケジュールに表示される。
【0095】
生成装置30bは、作成した給水時刻管理スケジュールを制御装置50へと出力する。給水時刻管理スケジュールを受け付けた制御装置50は、給水時刻管理スケジュールにおいて指定された時刻に給水するように、水位管理システム70の給水部73を制御して給水する。
【0096】
<本実施形態の効果>
本実施形態は、生成装置30bの給水時刻決定部337が、水田の水温を管理するための最適な給水時刻を決定することで、低温対策又は高温対策のために水田水温をなるべく上昇(又は低下)させる水管理が可能となる。また、給水時刻決定部337は、水位管理スケジュールと給水実施日の気象データとを参照して最適給水時刻を決定するので、最適給水時刻を毎日の気象予報に基づいて自動的に更新することも可能である。
【0097】
〔変形例〕
図9は、気象データ、水稲の発育ステージ及び水田水位と、最適な給水時刻との関係を示すルックアップテーブルの一例を示す図である。図9に示すルックアップテーブルでは、気象データとして日最高気温及び日最低気温を用いている。図9中に示す「最適時刻1」は、日最低水温を最も高くする最適給水時刻を表している。また、「最適時刻2」は、日最高水温を最も低くする最適給水時刻を表している。給水時刻決定部337は、気象データ、水稲の発育ステージ及び水田水位と、最適な給水時刻との関係を示すルックアップテーブル(以下、「最適給水時刻決定用ルックアップテーブル」と称する)を参照して、給水実施日の気象データ、水稲の発育ステージ及び水田水位から最適な給水時刻を決定することも可能である。
【0098】
最適給水時刻決定用ルックアップテーブルは、気象データ(例えば、日最高気温、日最低気温)、水稲の発育ステージ及び水田水位を用いて水田水温シミュレーションを実行することによって作成することができる。水田水温シミュレーションモデルは、公知のモデルを使用することができる(例えば、Atsushi Maruyama et. al., "A Water Temperature Simulation Model for Rice Paddies With Variable Water Depths" Water Resources Research, Vol 53, Issue 12, December 2017, p.10065-10084を参照のこと)。最適給水時刻決定用ルックアップテーブルは、記憶部35に記憶されている。
【0099】
対象水田の条件に応じて減水深、給水所要時間、及び給水水温を変更して水田水温シミュレーションモデルを実行することにより、対象水田の条件に応じた最適給水時刻決定用ルックアップテーブルを作成してもよい。または、対象水田の条件に応じて減水深、給水量、給水時間、及び給水水温を変更して水田水温シミュレーションモデルを実行することにより、対象水田の条件に応じた最適給水時刻決定用ルックアップテーブルを作成してもよい。例えば、図9に示した最適給水時刻決定用ルックアップテーブルは、1日1回、減水深と同じ量の水を1時間で給水することを想定して作成したものであるが、減水深、給水量、給水時間、及び給水水温の条件の違いをさらに考慮した最適給水時刻決定用ルックアップテーブルを作成してもよい。後者の最適給水時刻決定用ルックアップテーブルを用いることにより、減水深よりも多い量の水を長時間かけて給水する「かけ流し灌漑」に対応した最適な給水時刻を決定することが可能となる。また、最適給水時刻決定用ルックアップテーブルに示す最適給水時刻を、日平均水温を最も高く(又は低く)する時刻としてもよい。
【0100】
<処理のバリエーション>
上述したステップS301及びS302の代わりに、以下のステップS301-1及びS302-1を行う。まず、ステップS301-1において、生成装置30bの給水時刻決定部337は、給水実施日の対象水田が存在する地点の気象データを受け付ける(データ受け付けステップ)。気象データは、給水実施日の対象水田が存在する地点の日最高気温及び日最低気温を利用する。
【0101】
次いで、ステップS302-1において、S301-1で受け付けた気象データと、水位管理スケジュールに示されている給水実施日の水田水位及び水稲の発育ステージの情報と、最適給水時刻決定用ルックアップテーブルとを参照して、最適な給水時刻を決定する(給水時刻決定ステップ)。最適給水時刻決定用ルックアップテーブルでは、気象データ、水稲の発育ステージ、及び水田水位の値は段階的に示されており、最も近い値が選ばれる(例えば、水位が51mmである場合は、最も近い値である60mmが選ばれる)。
【0102】
<本変形例の効果>
本変形例は、給水時刻決定部337が最適給水時刻決定用ルックアップテーブルを参照して最適な給水時刻を決定するので、ルックアップテーブルを利用しない場合と比較して給水時刻決定部337の処理速度を向上させることができる。
【0103】
〔ソフトウェアによる実現例〕
生成装置30、30a及び30bの制御ブロック(特に制御部33、33a及び33b)並びに制御装置50は、集積回路(ICチップ)等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現してもよいし、ソフトウェアによって実現してもよい。
【0104】
後者の場合、生成装置30、30a及び30b並びに制御装置50は、各機能を実現するソフトウェアであるプログラムの命令を実行するコンピュータを備えている。このコンピュータは、例えば1つ以上のプロセッサを備えていると共に、前記プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を備えている。そして、前記コンピュータにおいて、前記プロセッサが前記プログラムを前記記録媒体から読み取って実行することにより、本発明の目的が達成される。前記プロセッサとしては、例えばCPU(Central Processing Unit)を用いることができる。前記記録媒体としては、「一時的でない有形の媒体」、例えば、ROM(Read Only Memory)等の他、テープ、ディスク、カード、半導体メ
モリ、プログラマブルな論理回路などを用いることができる。また、前記プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)などをさらに備えていてもよい。また、前記プログラムは、該プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワークや放送波等)を介して前記コンピュータに供給されてもよい。なお、本発明の一態様は、前記プログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。
【0105】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係る生成装置は、水田への給排水を制御して当該水田の水位を管理するための水位管理スケジュールを生成する生成装置であって、水田水位の管理パターンが異なる複数の水管理要素から選択される1以上の水管理要素を、水田の水位を管理する管理期間を分割した複数の分割期間のそれぞれに割り当てて作成された水位管理スケジュールを受け付け、当該水位管理スケジュールに含まれる前記水管理要素の水田水位の管理パターンを、ユーザからの入力に基づいて変更する変更部を含んでいる構成である。
【0106】
本発明の態様2に係る生成装置は、前記の態様1において、前記水田において栽培する対象水稲の移植日、前記水田が存在する地点の気温、前記水田が存在する地点の降水量、前記水田の水田水位、前記水田の減水深、及び前記水田において栽培する対象水稲の発育予測情報からなる群から選択される1つ以上を参照して、前記水位管理スケジュールに含まれる前記水管理要素の水田水位の管理パターンを補正する補正部をさらに含んでいる構成としてもよい。
【0107】
本発明の態様3に係る生成装置は、前記の態様1または2において、ユーザからの入力に基づいて、水田水位の管理パターンが異なる複数の水管理要素から選択される1以上の水管理要素を、水田の水位を管理する管理期間を分割した複数の分割期間のそれぞれに割り当て、前記管理期間内の水位管理スケジュールを作成する作成部をさらに含んでいる構成としてもよい。
【0108】
つまり、本発明の態様3に係る生成装置は、水田への給排水を制御して当該水田の水位を管理するための水位管理スケジュールを生成する生成装置であって、ユーザからの入力に基づいて、水田水位の管理パターンが異なる複数の水管理要素から選択される1以上の水管理要素を、水田の水位を管理する管理期間を分割した複数の分割期間のそれぞれに割り当て、前記管理期間内の水位管理スケジュールを作成する作成部と、ユーザからの入力に基づいて、前記水位管理スケジュールに含まれる前記水管理要素の水田水位の管理パターンを変更する変更部と、前記水田において栽培する対象水稲の移植日、前記水田が存在する地点の気温、前記水田が存在する地点の降水量、前記水田の水田水位、前記水田の減水深、及び前記水田において栽培する対象水稲の発育予測情報からなる群から選択される1つ以上を参照して、前記水位管理スケジュールに含まれる前記水管理要素の水田水位の管理パターンを補正する補正部と、を含んでいる構成であり得る。
【0109】
本発明の態様4に係る生成装置は、前記の態様1から3のいずれかにおいて、前記水位管理スケジュールを参照して、前記管理期間内の各日の水需要量の予測値を算出する水需要予測値算出部をさらに含み、前記水需要予測値算出部は、前記水位管理スケジュールを参照して、対象水田における前記管理期間内の算出対象日の水田水位と、当該算出対象日の翌日の水田水位と、当該対象水田の減水深とから、当該算出対象日の水需要量の予測値を算出する構成としてもよい。
【0110】
本発明の態様5に係る生成装置は、前記の態様4において、前記管理期間内の対象日から始まる連続するn日間(nは1以上の整数)の予測降水量の積算値及び前記水需要量の予測値の積算値を参照して、当該対象日に前記水位管理スケジュール通りの給排水を実行するか否かを決定する水位管理スケジュール実行決定部をさらに含む構成としてもよい。
【0111】
本発明の態様6に係る生成装置は、前記の態様1から5のいずれかにおいて、前記水位管理スケジュールと、給水実施日の対象水田が存在する地点の気象データとを参照して、最適な給水時刻を決定する給水時刻決定部をさらに含む構成としてもよい。
【0112】
本発明の態様7に係る生成装置は、前記の態様6において、前記給水時刻決定部は、気象データ、水稲の発育ステージ及び水田水位と最適な給水時刻との関係を示すルックアップテーブルを参照して、給水実施日の対象水田が存在する地点の気象データと前記水位管理スケジュールとから最適な給水時刻を決定する構成としてもよい。
【0113】
本発明の態様8に係る生成方法は、水田への給排水を制御して当該水田の水位を管理するための水位管理スケジュールを生成する生成方法であって、水田水位の管理パターンが異なる複数の水管理要素から選択される1以上の水管理要素を、水田の水位を管理する管理期間を分割した複数の分割期間のそれぞれに割り当てて作成された水位管理スケジュールを受け付け、当該水位管理スケジュールに含まれる前記水管理要素の水田水位の管理パターンを、ユーザからの入力に基づいて変更するステップを含んでいる方法である。
【0114】
本発明の態様8に係る生成方法は、水田への給排水を制御して当該水田の水位を管理するための水位管理スケジュールを生成する生成方法であって、ユーザからの入力に基づいて、水田水位の管理パターンが異なる複数の水管理要素から選択される1以上の水管理要素を、水田の水位を管理する管理期間を分割した複数の分割期間のそれぞれに割り当て、前記管理期間内の水位管理スケジュールを作成するステップと、ユーザからの入力に基づいて、前記水位管理スケジュールに含まれる前記水管理要素の水田水位の管理パターンを変更するステップと、前記水田において栽培する対象水稲の移植日、前記水田が存在する地点の気温、前記水田が存在する地点の降水量、前記水田の水田水位、前記水田の減水深、及び前記水田において栽培する対象水稲の発育予測情報からなる群から選択される1つ以上を参照して、前記水位管理スケジュールに含まれる前記水管理要素の水田水位の管理パターンを補正するステップと、を含んでいる方法であってもよい。
【0115】
本発明の態様10に係る制御装置は、対象水田へ給水する給水部と対象水田から排水する排水部とを備えた水位管理システムを制御するための制御装置であり、前記の態様1から7のいずれかの生成装置が生成した水位管理スケジュールを受け付ける水位管理スケジュール受付部と、前記水位管理スケジュール受付部が受け付けた水位管理スケジュールを参照して、前記給水部と前記排水部とを制御する給排水部制御部と、を含んでいる構成としてもよい。
【0116】
本発明の態様11に係る制御方法は、対象水田へ給水する給水部と対象水田から排水する排水部とを備えた水位管理システムを制御する方法であり、前記の態様1から7のいずれかの生成装置が生成した水位管理スケジュールを受け付ける水位管理スケジュール受け付けステップと、前記水位管理スケジュール受付ステップにおいて受け付けた水位管理スケジュールを参照して、前記給水部から給水される給水量と、前記排水部から排水される排水量とを調整する給排水量調整ステップと、を含んでいる方法としてもよい。
【0117】
本発明の各態様に係る生成装置及び制御装置は、コンピュータによって実現してもよく、この場合には、コンピュータを前記生成装置及び制御装置が備える各部(ソフトウェア要素)として動作させることにより前記生成装置及び制御装置をコンピュータにて実現させる生成装置及び制御装置の制御プログラム、及びそれを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も、本発明の範疇に入る。
【0118】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0119】
30、30a、30b 生成装置
50 制御装置
53 水位管理スケジュール受付部
55 給排水部制御部
70 水位管理システム
73 給水部
75 排水部
331 作成部
332 変更部
333 補正部
334 選択部
335 水需要予測値算出部
336 水位管理スケジュール実行決定部
337 給水時刻決定部
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