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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024169694
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】顕微鏡
(51)【国際特許分類】
   G02B 21/06 20060101AFI20241128BHJP
   G01N 21/17 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
G02B21/06
G01N21/17 620
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024166978
(22)【出願日】2024-09-26
(62)【分割の表示】P 2024528236の分割
【原出願日】2022-06-24
(71)【出願人】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】100113549
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 守
(74)【代理人】
【識別番号】100092897
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 正悟
(74)【代理人】
【識別番号】100157417
【弁理士】
【氏名又は名称】並木 敏章
(74)【代理人】
【識別番号】100115808
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 真司
(74)【代理人】
【識別番号】100218224
【弁理士】
【氏名又は名称】長嶺 浩之
(72)【発明者】
【氏名】池田 諭史
(72)【発明者】
【氏名】福武 直樹
(57)【要約】
【課題】 標本における3次元の屈折率分布をより正確に求めることが可能な顕微鏡を提供する。
【解決手段】 顕微鏡は、照明用対物レンズを含み、照明用対物レンズの光軸方向に交差する面内において、走査部を介して、光源からの照明光によって、標本を走査して照射する照明光学系と、照明用対物レンズとは異なる検出用対物レンズを含み、標本を透過した光を検出部へ導く検出光学系と、検出部からの信号に基づき、画像を生成する画像処理部と、を備え、検出光学系は、検出用対物レンズの瞳又はその共役位置に配置され、光の透過率が瞳の面内又は共役位置の面内で変化する強度変調素子を有し、検出部は、検出用対物レンズの瞳の共役位置に配置される。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
照明用対物レンズを含み、前記照明用対物レンズの光軸方向に交差する面内において、走査部を介して、光源からの照明光によって、標本を走査して照射する照明光学系と、
前記照明用対物レンズとは異なる検出用対物レンズを含み、前記標本を透過した光を検出部へ導く検出光学系と、
前記検出部からの信号に基づき、画像を生成する画像処理部と、
を備え、
前記検出光学系は、前記検出用対物レンズの瞳又はその共役位置に配置され、前記光の透過率が前記瞳の面内又は前記共役位置の面内で変化する強度変調素子を有し、
前記検出部は、前記検出用対物レンズの瞳の共役位置に配置される顕微鏡。
【請求項2】
制御部を更に備え、
前記制御部は、前記強度変調素子を制御又は挿脱して他の強度変調素子と切り替えて、前記光の透過率の状態を変化させることにより、前記検出光学系が前記検出部へ導く前記光を互いに異なる状態にし、
前記検出部は、前記互いに異なる状態の光をそれぞれ受光する請求項1に記載の顕微鏡。
【請求項3】
前記強度変調素子の透過率は、連続関数に従って変化する請求項1又は2に記載の顕微鏡。
【請求項4】
前記強度変調素子の前記光の透過率は、前記連続関数に従って前記瞳の面内もしくは前共役位置の面内で一方向に沿って変化する請求項3に記載の顕微鏡。
【請求項5】
前記強度変調素子の前記光の透過率は、前記連続関数に従って前記瞳の面内もしくは前記共役位置の面内で一方向に沿って単調に増加もしくは減少し、前記瞳の面内もしくは前記共役位置の面内の外周の一部において零となる請求項3に記載の顕微鏡。
【請求項6】
前記連続関数が、一次関数、二次関数、ガウス関数、1周期より小さい範囲での正弦関数、1周期より小さい範囲での余弦関数のうちのいずれかの関数である請求項3に記載の顕微鏡。
【請求項7】
前記光の透過率の状態の変化は、前記透過率が、一方向において一次関数に従って単調増加する状態から、前記一方向において一次関数に従って単調減少する状態への変化である請求項2に記載の顕微鏡。
【請求項8】
前記画像処理部は、前記検出部から出力された複数の信号により形成された複数の画像に基づいて、差分画像を生成する請求項7に記載の顕微鏡。
【請求項9】
前照明用対物レンズ及び前記検出用対物レンズは、前記標本を載置するステージを介して、互い対向する位置関係で配置される請求項1に記載の顕微鏡。
【請求項10】
前記照明用対物レンズ及び前記検出用対物レンズは、前記標本を載置するステージを介することなく、前記標本に対して、互いに対向する位置関係で配置される請求項1に記載の顕微鏡。
【請求項11】
前記照明用対物レンズの開口数と前記検出用対物レンズの開口数とが同じである請求項1、2、7から10のいずれか一項に記載の顕微鏡。
【請求項12】
前記画像処理部は、前記差分画像に基づき、前記画像として、3次元屈折率分布を生成する請求項8に記載の顕微鏡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顕微鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、位相物体等の試料における3次元の屈折率分布を求める方法が考案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2020/161826号パンフレット
【発明の概要】
【0004】
本発明に係る顕微鏡は、照明用対物レンズを含み、前記照明用対物レンズの光軸方向に交差する面内において、走査部を介して、光源からの照明光によって、標本を走査して照射する照明光学系と、前記照明用対物レンズとは異なる検出用対物レンズを含み、前記標本を透過した光を検出部へ導く検出光学系と、前記検出部からの信号に基づき、画像を生成する画像処理部と、を備え、前記検出光学系は、前記検出用対物レンズの瞳又はその共役位置に配置され、前記光の透過率が前記瞳の面内又は前記共役位置の面内で変化する強度変調素子を有し、前記検出部は、前記検出用対物レンズの瞳の共役位置に配置される。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1】第1実施形態に係る顕微鏡装置の模式図である。
図2】第1実施形態に係る顕微鏡装置を示す概略構成図である。
図3】第1実施形態におけるステージの拡大図である。
図4】変調素子の光の透過率の分布を示すグラフである。
図5】試料の複数の断面の画像データに基づいてデコンボリューションを行う方法を示す模式図である。
図6】従来の方法で生成した明視野観察による試料の画像を示す図である。
図7】従来の方法で生成した試料の屈折率分布の画像を示す図である。
図8】従来におけるPOTFの分布を示す図である。
図9】従来におけるPOTFのミッシングコーン領域を推定して補完したスペクトルの分布を示す図である。
図10】明視野観察による試料の画像を示す図である。
図11】試料の屈折率分布の画像を示す図である。
図12】POTFの分布を示す図である。
図13】POTFのミッシングコーン領域を推定して補完したスペクトルの分布を示す図である。
図14】第1実施形態に係るデータ生成方法を示すフローチャートである。
図15】第1実施形態に係る顕微鏡装置の変形例を示す概略構成図である。
図16】第2実施形態に係る顕微鏡装置を示す概略構成図である。
図17】第2実施形態におけるステージの拡大図である。
図18】第2実施形態に係る顕微鏡装置の変形例を示す概略構成図である。
図19】第3実施形態に係る顕微鏡装置を示す概略構成図である。
図20】第3実施形態におけるステージの拡大図である。
図21】第3実施形態に係る顕微鏡装置の変形例を示す概略構成図である。
図22】第4実施形態に係る顕微鏡装置の模式図である。
図23】第4実施形態に係る顕微鏡装置を示す概略構成図である。
図24】第4実施形態におけるステージの拡大図である。
図25】第5実施形態に係る顕微鏡装置の模式図である。
図26】第6実施形態に係る顕微鏡装置の模式図である。
図27】変形例に係る第1顕微鏡部を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
以下、各実施形態に係る顕微鏡装置について説明する。以下の説明で用いる図は、特徴を分かり易くするために、便宜上、構成部品を拡大して示している場合があり、各構成部品の寸法比率等が実際と同じであるとは限らない。
【0007】
<第1実施形態>
まず、図1および図2を用いて、第1実施形態に係る顕微鏡装置1について説明する。第1実施形態に係る顕微鏡装置1は、図1および図2に示すように、第1顕微鏡部10と、第2顕微鏡部50とを有する。さらに、顕微鏡装置1は、図2に示すように、ステージ2と、制御部90と、画像処理部91とを有する。ステージ2は、試料SAを支持する。試料SAは、例えば細胞等の位相物体である。ステージ2には、ステージ駆動部(図示せず)が設けられる。ステージ駆動部は、ステージ2を第1顕微鏡部10の光軸AX1に沿って移動させる。
【0008】
図2に示すように、第1顕微鏡部10の光軸方向(上下方向)に延びる座標軸をz軸とし、z軸と垂直な座標軸をx軸およびy軸とする。ステージ駆動部によりステージ2をz方向に移動させることで、図3に示すように、所定の位置Z、位置Zから+Δzだけ離れた位置Z+Δz、位置Zから-Δzだけ離れた位置Z-Δz、位置Zから+2Δzだけ離れた位置Z+2Δz、位置Zから-2Δzだけ離れた位置Z-2Δz…における試料SAの断面の画像データを取得することが可能である。
【0009】
第1顕微鏡部10は、図1および図2に示すように、第1光源11と、第1照明光学系20と、第1検出光学系30と、第1検出器40とを有する。第1光源11は、ハロゲンランプやLED(Light Emitting Diode)等の白色光源を用いて構成される。また、第1光源11は、ハロゲンランプやLED等の近赤外光源を用いて構成されてもよい。第1光源11は、所定の波長帯域の照明光(以降、第1照明光と称する)を発生させる。
【0010】
第1照明光学系20は、第1光源11から発光した第1照明光L1を-z方向(第1の方向)に向けて試料SAに照射する。第1照明光学系20は、図2に示すように、第1光源11側から順に、コレクタレンズ21と、視野絞り23と、リレーレンズ24と、第1変調素子25と、開口絞り26と、コンデンサレンズ27とを有する。第1光源11として白色光源が用いられる場合、第1照明光の波長帯域を狭くする素子が設けられることが好ましい。例えば、第1照明光学系20におけるコレクタレンズ21と視野絞り23との間の光路に、所定の分光透過率特性を有するバンドパスフィルター22を挿入することで、第1照明光の波長帯域を狭くすることが可能である。第1照明光の波長帯域を狭くすることで、詳細は後述するPOTF等の計算値の精度を高くすることができる。バンドパスフィルター22の分光透過率特性は、明視野観察等の観察の用途に応じた照明光の波長帯域に基づいて設定される。なお、第1照明光学系20における視野絞り23とリレーレンズ24との間の光路に、バンドパスフィルター22を挿入してもよい。
【0011】
第1変調素子25および開口絞り26は、第1照明光学系20におけるリレーレンズ24とコンデンサレンズ27との間の瞳(以降、照明瞳と称する場合がある)の位置P1において第1顕微鏡部10(第1照明光学系20)の光軸AX1と垂直な面に配置される。第1変調素子25は、開口絞り26に隣接して(一例として、図2のように開口絞り26の上側に)配置される。照明瞳の位置P1における第1顕微鏡部10の光軸AX1と垂直な面を、照明瞳の面と称する。第1変調素子25は、一例として、光の透過性を有する平板であって、この平板の面内で光の透過率が変化する平板である。この平板は、例えば、ガラス基板等の平行平板に、光の透過率を低減させることが可能な(遮光性のある)膜を蒸着させることにより形成される。一例として、金属膜を蒸着させる。例えば、膜が蒸着される平行平板の部位に応じて膜厚を変化させることにより、平行平板の部位に応じて光の透過率を変化させることができる(膜厚が厚いほど、透過率は低くなる)。この第1変調素子25を、照明瞳の面に配置することによって、照明瞳の面内で光の透過率を変化させることができる。したがって、第1変調素子25の光の透過率が照明瞳の面内で変化すると言える。第1変調素子25の光の透過率は、照明瞳の面内で連続的(もしくは離散的)に変化する。
【0012】
なお、第1変調素子25の部位に応じて光の透過率が変化することにより、第1変調素子25の光の透過率の分布(言い換えれば、照明瞳の面における光の透過率の分布)が決まる。第1変調素子25として、光の透過率の変化、すなわち光の透過率の分布が異なる複数の第1変調素子25のうちいずれかを選択して照明瞳の位置P1に配置することが可能である。第1変調素子25の光の透過率の詳細については、後述する。なお、第1変調素子25が配置される位置は、照明瞳の位置P1に限られない。例えば、第1変調素子25は、照明瞳と共役な位置において光軸AX1と垂直な面(言い換えれば、照明瞳と共役な面)に配置されてもよい。また、第1光源11は、照明瞳と共役な位置に配置される。
【0013】
コンデンサレンズ27は、ステージ2の上方に対向して配置される。コンデンサレンズ27として、光学特性が異なる複数のコンデンサレンズ27のうちいずれかを選択してステージ2の上方に配置することが可能である。
【0014】
第1検出光学系30は、試料SAを挟んで第1照明光学系20と反対の側から第1照明光L1の照射に応じた試料SAからの光を受ける。第1検出光学系30は、図2に示すように、試料SA側から順に、対物レンズユニット31と、結像レンズ36と、ミラー37とを有する。対物レンズユニット31は、複数の第1対物レンズ32と、レンズ保持部33と、ユニット駆動部34とを有する。第1対物レンズ32は、ステージ2の下方に対向して配置される。レンズ保持部33は、焦点距離が異なる複数の第1対物レンズ32を保持する。レンズ保持部33は、例えば、レボルバやターレット等を用いて構成される。ユニット駆動部34は、レンズ保持部33を駆動し、複数の第1対物レンズ32のうちいずれかを選択してステージ2の下方に配置することが可能である。なお、ユニット駆動部34は、レンズ保持部33をz軸に沿って移動させてもよい。この場合、前述のステージ駆動部を併用してもよいし、ステージ駆動を使わなくてもよい。
【0015】
ステージ2の下方に配置された第1対物レンズ32には、第1照明光の照射に応じた試料SAからの光が入射する。第1対物レンズ32を透過した光は、結像レンズ36に入射する。結像レンズ36を透過した光は、ミラー37で反射して所定の像面Iで結像する。ここで、所定の像面Iの位置は、試料SAにおける第1対物レンズ32の焦点位置と共役な位置である。なお、ミラー37の代わりにハーフミラーを設け、当該ハーフミラーを透過する光の光路上に接眼レンズ(図示せず)を有する観察光学系(図示せず)を設けてもよい。これにより、観察者は、接眼レンズを用いて試料SAの像を観察することが可能である。
【0016】
第1検出光学系30の像面Iに、第1検出器40が配置される。第1検出器40は、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の撮像素子を用いて構成される。第1検出器40は、第1検出光学系30を介して試料SAからの光を検出する。
【0017】
第2顕微鏡部50は、図1および図2に示すように、光源ユニット51と、第2照明光学系70と、第2検出光学系75と、第2検出器80とを有する。光源ユニット51は、ビーム操作ユニット(Beam Steering unit)とも称される。光源ユニット51は、図2に示すように、第2光源52と、第1レンズ53と、第1ガルバノミラー54と、第2レンズ55と、第3レンズ56と、第2ガルバノミラー57と、液体レンズ59と、第4レンズ60と、第5レンズ61とを有する。また、光源ユニット51は、第1レンズ53と第1ガルバノミラー54との間の光路に挿脱可能なシリンドリカルレンズ(図示せず)を有する。
【0018】
第2光源52は、レーザー光源を用いて構成される。第2光源52は、所定の波長帯域の照明光(以降、第2照明光と称する)を発光させる。第1レンズ53は、第2光源52から発光した第2照明光を平行にする。第1ガルバノミラー54は、第1レンズ53からの第2照明光を第2レンズ55に向けて反射させる。第1ガルバノミラー54は、反射面の向きを変化させることにより、第2照明光の進行方向を変化させることが可能である。第1ガルバノミラー54が第2照明光の進行方向を変化させることで、試料SAにおける第2照明光の集光位置をy方向に変化させる。第2レンズ55および第3レンズ56は、第1ガルバノミラー54で反射した第2照明光を第2ガルバノミラー57に入射させる。なお、第1ガルバノミラー54と第2ガルバノミラー57が瞳と共役な位置に配置される場合、第2レンズ55および第3レンズ56は、設けられていなくてもよい。
【0019】
第2ガルバノミラー57は、第3レンズ56からの第2照明光を液体レンズ59に向けて反射させる。第2ガルバノミラー57は、反射面の向きを変化させることにより、第2照明光の進行方向を変化させることが可能である。第2ガルバノミラー57が第2照明光の進行方向を変化させることで、試料SAにおける第2照明光の集光位置をz方向に変化させる。
【0020】
液体レンズ59は、レンズ面の曲率半径を変化させることにより、液体レンズ59の焦点距離を変化させることが可能である。液体レンズ59が液体レンズ59の焦点距離を変化させることで、試料SAにおける第2照明光の集光位置をx方向に変化させる。第4レンズ60および第5レンズ61は、液体レンズ59を透過した第2照明光を第2照明光学系70に入射させる。第1ガルバノミラー54と、第2ガルバノミラー57と、液体レンズ59により、試料SAにおける第2照明光の集光位置を3次元方向(x方向とy方向とz方向の3つの方向)に変化させて、試料SAを3次元的に走査することが可能である。
【0021】
なお、デコンボリューションの観点から、第1照明光学系20による第1照明光の照射範囲(試料SAにおける3次元的な観察範囲)と、第2照明光学系70による第2照明光の照射範囲(試料SAにおける3次元的な観察範囲)とを、予め一致させるように調整しておくことが好ましい。第1照明光と第2照明光の照射範囲(観察範囲)を一致させる調整は、例えば、光源ユニット51における第1ガルバノミラー54および第2ガルバノミラー57のうち少なくとも一方の振り角を制御することで実現することができる。また、第1照明光と第2照明光の照射範囲(観察範囲)を一致させる調整を行わずに、第1照明光と第2照明光の共通する照射範囲(観察範囲)を特定することで、試料SAに対する3次元的な走査による画像構築を行うようにしてもよい。
【0022】
第2照明光学系70は、光源ユニット51(第2光源52)から発光した第2照明光L2を+x方向(第1の方向と直交する第2の方向)に向けて試料SAに集光して照射する。なお、図2図15図16図18図19、および図21においては、第1照明光L1と区別し易くするため、第2照明光L2を破線で示す。第2照明光学系70は、図2および図3に示すように、照明用第2対物レンズ71を有する。照明用第2対物レンズ71は、試料SAの左方に対向して配置される。照明用第2対物レンズ71は、光源ユニット51(第2光源52)から発光した第2照明光L2を試料SAに集光する。第2顕微鏡部50における第2照明光学系70と第2検出光学系75との間の光軸AX2は、第1顕微鏡部10における第1照明光学系20と第1検出光学系30との間の光軸AX1と直交する。
【0023】
第2検出光学系75は、試料SAを挟んで第2照明光学系70と反対の側から第2照明光の照射に応じた試料SAからの光を受ける。第2検出光学系75は、図2および図3に示すように、試料SA側から順に、検出用第2対物レンズ76と、第2変調素子77とを有する。検出用第2対物レンズ76は、試料SAを挟んで照明用第2対物レンズ71と反対の側に設けられる。検出用第2対物レンズ76には、第2照明光の照射に応じた試料SAからの光が入射する。なお、照明用第2対物レンズ71と検出用第2対物レンズ76とは、同一で且つ高いNA(開口数)を有してもよい。
【0024】
第2変調素子77は、第2検出光学系75における検出用第2対物レンズ76の瞳(以降、検出瞳と称する場合がある)と共役な位置P2において第2顕微鏡部50(第2検出光学系75)の光軸AX2と垂直な面に配置される。検出瞳と共役な位置P2における第2顕微鏡部50の光軸AX2と垂直な面を、検出瞳と共役な面と称する。第2変調素子77は、一例として、第1変調素子25と同様に、ガラス基板等の平行平板に、光の透過率を低減させることが可能な膜を蒸着させることにより形成される。この第2変調素子77を、検出瞳と共役な面に配置することによって、検出瞳と共役な面内で光の透過率を変化させることができる。したがって、第2変調素子77の光の透過率が検出瞳と共役な面内で変化すると言える。第2変調素子77の光の透過率は、検出瞳と共役な面内で連続的(もしくは離散的)に変化する。第2変調素子77として、光の透過率の分布が異なる複数の第2変調素子77のうちいずれかを選択して検出瞳と共役な位置P2に配置することが可能である。第2変調素子77の光の透過率の詳細については、後述する。なお、第2変調素子77が配置される位置は、検出瞳と共役な位置P2に限られない。例えば、第2変調素子77は、検出瞳の位置において光軸AX2と垂直な面(言い換えれば、検出瞳の面)に配置されてもよい。この場合、例えば、第2変調素子77は、検出用第2対物レンズ76に内蔵されてもよい。
【0025】
第2検出器80は、第2検出光学系75における検出瞳と共役な位置P2に、第2変調素子77に隣接して配置される。第2検出器80は、PMT(Photomultiplier tube)やNDD(Non-Descanned Detection)等を用いて構成される。第2検出器80は、第2検出光学系75を介して試料SAからの光を検出する。
【0026】
第1変調素子25および第2変調素子77の、瞳の面内における光の透過率の変化(言い換えると、瞳の面内における光の透過率の分布)の例について述べる。図4は、第1変調素子25および第2変調素子77の光の透過率の分布の一例を示すグラフである。図4において、Xは光軸(第1顕微鏡部10の光軸AX1または第2顕微鏡部50の光軸AX2)が通る座標位置を原点とするx方向の座標であり、Yは光軸が通る座標位置を原点とするy方向の座標である。
【0027】
図4に示す例では、第1変調素子25または第2変調素子77の光の透過率が、連続関数に従って一方向に沿って変化する。具体的には、第1変調素子25または第2変調素子77の光の透過率が、X方向(例えば-X方向)において正弦関数に従って単調に減少する(光の透過率の等しい部分がY方向へ延びる直線状に分布する)。つまり、第1変調素子25または第2変調素子77の光の透過率が、正弦関数に従って変化する。なお、第1変調素子25または第2変調素子77の光の透過率は、瞳の面内で、X方向(例えば+X方向)において正弦関数に従って単調に増加するとも言えるし、X方向において単調に減少もしくは増加するとも言える。
【0028】
なお、第1変調素子25または第2変調素子77の光の透過率が、Y方向において正弦関数に従って単調に減少もしくは増加してもよい(光の透過率の等しい部分がX方向へ延びる直線状に分布してもよい)。また、第1変調素子25または第2変調素子77の光の透過率が、X方向やY方向に限らず、XY座標系における任意の方向において正弦関数に従って単調に減少もしくは増加してもよい(光の透過率の等しい部分が上記XY座標系における任意の方向と垂直な方向へ延びる直線状に分布してもよい)。
【0029】
図4に示す例において、第1変調素子25または第2変調素子77の光の透過率が、X方向(例えば-X方向)において一次関数に従って単調に減少してもよい。つまり、第1変調素子25または第2変調素子77の光の透過率が、正弦関数に限られず、一次関数に従って変化してもよい。
【0030】
図4に示す例において、上記の連続関数は、一次関数、二次関数、ガウス関数、正弦関数、余弦関数のうちいずれかであればよい。なお、上記の連続関数は、一次関数、二次関数、ガウス関数、正弦関数、余弦関数に限られず、三次関数など他の関数であってもよい。また、第1変調素子25や第2変調素子77において光の透過率が変化する範囲は、瞳(照明瞳、検出瞳)の大きさ(直径)に合わせて設定すればよい。例えば、図4に示す場合には、光の透過率が0となる領域が瞳(照明瞳、検出瞳)の外周部と合うように第1変調素子25や第2変調素子77を形成する。
【0031】
なお、第1変調素子25または第2変調素子77の光の透過率が、余弦関数や正弦関数に従って変化する場合、瞳(照明瞳、検出瞳)の面内において1周期より小さい範囲での余弦関数や正弦関数に従った変化であることが望ましい。1周期より大きい範囲になると、POTFの値も周期的な振る舞いをするため、デコンボリューションを行う観点から好ましくないからである。この場合、POTFの値が0になる周波数が複数存在することになり、デコンボリューションの過程で生じるノイズが大きくなるため、得られる試料SAの屈折率分布の精度が低下する。また、第1変調素子25または第2変調素子77の光の透過率が、余弦関数に従って変化する場合、瞳(照明瞳、検出瞳)の外周部で光の透過率が0になる(余弦関数の値が0になる)ように工夫しているが、これは瞳の外周部における光の透過率の不連続性が、像におけるリンギング等のアーティファクトの原因となっていることを考慮したものである。
【0032】
図4に示す例において、第1変調素子25または第2変調素子77の光の透過率は、連続関数に従って瞳の面内もしくは瞳と共役な面内で一方向に沿って変化し、瞳の面内もしくは瞳と共役な面内の外周の一部において0(零)となるが、これに限られるものではない。例えば、第1変調素子25または第2変調素子77の光の透過率は、連続関数に従って瞳の面内もしくは瞳と共役な面内で光軸から離れるにつれて変化し、瞳の面内もしくは瞳と共役な面内の外周部の全周で0(零)となってもよい。
【0033】
本実施形態において、試料SAの明視野観察を行う場合、第1顕微鏡部10の第1光源11から発光した第1照明光L1は、第1照明光学系20のコレクタレンズ21に入射する。コレクタレンズ21を透過した第1照明光L1は、平行光となって視野絞り23(第1光源11として白色光源が用いられる場合、バンドパスフィルター22および視野絞り23)を通り、リレーレンズ24に入射する。リレーレンズ24を透過した第1照明光L1は、第1変調素子25と開口絞り26とを通ってコンデンサレンズ27に入射する。コンデンサレンズ27を透過した第1照明光L1は、平行光となってステージ2上の試料SAに照射される。これにより、第1照明光学系20は、第1光源11から発光した第1照明光L1を-z方向(第1の方向)に向けて試料SAに照射する。
【0034】
第1照明光学系20の方から試料SAを透過した光(以降、第1検出光と称する場合がある)は、第1検出光学系30の第1対物レンズ32に入射する。第1対物レンズ32を透過した第1検出光は、結像レンズ36に入射する。結像レンズ36を透過した第1検出光は、ミラー37で反射して第1検出器40が配置される所定の像面Iで結像する。第1検出器40は、第1検出光学系30を介して試料SAからの光(第1検出光)を検出し、当該光の検出信号を出力する。第1検出器40から出力された光(第1検出光)の検出信号は、制御部90を介して画像処理部91に送信される。なお、第1検出器40は、検出光学系40を介して試料SAの像を撮像すると言い換えることができる。ここで、検出信号とは、光(検出光)の強度に応じて第1検出器40または第2検出器80で検出された信号強度を示す信号である。例えば、第1検出器40がCCDを用いて構成される場合、CCDの各画素における信号である。なお、第1検出器40の検出信号は、試料SAの像の強度に応じて第1検出器40で検出された信号強度を示す信号と言い換えることができる。
【0035】
なお、試料SAの明視野観察を行う場合、第2顕微鏡部50の光源ユニット51のシリンドリカルレンズ(図示せず)は、光源ユニット51における第1レンズ53と第1ガルバノミラー54との間の光路から退避される。光源ユニット51の第2光源52から発光した第2照明光は、第1レンズ53に入射する。第1レンズ53を透過した第2照明光は、平行光となって第1ガルバノミラー54で反射する。第1ガルバノミラー54で反射した第2照明光は、第2レンズ55および第3レンズ56を透過し、第2ガルバノミラー57で反射する。第2ガルバノミラー57で反射した第2照明光は、液体レンズ59に入射する。液体レンズ59を透過した第2照明光は、第4レンズ60および第5レンズ61を透過して光源ユニット51の外部に射出される。これにより、光源ユニット51は、第2照明光を発光させる。
【0036】
光源ユニット51(第2光源52)から発光した第2照明光L2は、第2照明光学系70の照明用第2対物レンズ71に入射する。照明用第2対物レンズ71を透過した第2照明光L2は、集光されてステージ2上の試料SAに照射される。これにより、第2照明光学系70は、光源ユニット51(第2光源52)から発光した第2照明光L2を+x方向(第1の方向と直交する第2の方向)に向けて試料SAに集光して照射する。
【0037】
第2照明光学系70の方から試料SAを透過した光(以降、第2検出光と称する場合がある)は、第2検出光学系75の検出用第2対物レンズ76に入射する。検出用第2対物レンズ76を透過した第2検出光は、第2変調素子77を通って第2検出器80に入射する。第2検出器80は、第2検出光学系75を介して試料SAからの光(第2検出光)を検出し、当該光の検出信号を出力する。第2検出器80から出力された光(第2検出光)の検出信号は、制御部90を介して画像処理部91に送信される。
【0038】
また、顕微鏡装置1を選択的平面照明顕微鏡(SPIM)として用いて、試料SAの蛍光観察を行うことも可能である。試料SAの蛍光観察を行う場合、第2顕微鏡部50の光源ユニット51のシリンドリカルレンズ(図示せず)は、光源ユニット51における第1レンズ53と第1ガルバノミラー54との間の光路に挿入される。
【0039】
試料SAの蛍光観察を行う場合、光源ユニット51の第2光源52から発光した励起光は、第1レンズ53に入射する。第1レンズ53を透過した励起光は、シリンドリカルレンズ(図示せず)を透過し、第1ガルバノミラー54で反射する。第1ガルバノミラー54で反射した励起光は、第2レンズ55および第3レンズ56を透過し、第2ガルバノミラー57で反射する。第2ガルバノミラー57で反射した励起光は、液体レンズ59に入射する。液体レンズ59を透過した励起光は、第4レンズ60および第5レンズ61を透過して光源ユニット51の外部に射出される。これにより、光源ユニット51は、シート光である励起光を発光させる。
【0040】
光源ユニット51(第2光源52)から発光した励起光は、第2照明光学系70の照明用第2対物レンズ71に入射する。照明用第2対物レンズ71を透過した励起光は、集光されてステージ2上の試料SAに照射される。これにより、第2照明光学系70は、光源ユニット51(第2光源52)から発光したシート光である励起光を試料SAに照射する。
【0041】
励起光の照射によって、試料SAに含まれる蛍光物質が励起されて蛍光が出射する。試料SAからの蛍光は、第1顕微鏡部10の第1検出光学系30の第1対物レンズ32に入射する。第1対物レンズ32を透過した蛍光は、結像レンズ36に入射する。結像レンズ36を透過した蛍光は、ミラー37で反射して第1検出器40が配置される所定の像面Iで結像する。第1検出器40は、第1検出光学系30を介して試料SAからの蛍光を検出し、当該蛍光の検出信号を出力する。第1検出器40から出力された蛍光の検出信号は、制御部90を介して画像処理部91に送信される。
【0042】
制御部90は、顕微鏡装置1の全体的な制御を行う。制御部90は、ステージ駆動部(図示せず)、ユニット駆動部34、第1検出器40、光源ユニット51、第2検出器80、画像処理部91、操作入力部(図示せず)、画像表示部(図示せず)等と電気的に接続される。
【0043】
画像処理部91は、試料SAの明視野観察を行う場合、第1検出器40から出力された光(第1検出光)の検出信号および、第2検出器80から出力された光(第2検出光)の検出信号に基づいて、試料SAに関する屈折率のデータを生成する。ここで、試料SAに関する屈折率のデータとは、試料SAの屈折率を表すデータであり、例えば、試料SAにおける各位置での屈折率のデータ、すなわち試料SAにおける屈折率分布を示すデータである。また、試料SAに関する屈折率のデータは、例えばルックアップテーブルとして記憶部(図示せず)に記憶される。また、画像処理部91は、試料SAにおける屈折率分布の各位置での屈折率の値に応じて各画素の輝度値を設定した画像データ(以降、試料SAの屈折率分布の画像データと称する場合がある)を生成する。また、画像処理部91は、第1検出器40から出力された光(第1検出光)の検出信号および、第2検出器80から出力された光(第2検出光)の検出信号に基づいて、試料SAにおける各位置(第1検出器40の各画素)での検出信号の信号強度の値に応じて各画素の輝度値を設定した画像データ(以降、明視野観察による試料SAの画像データと称する場合がある)を生成する。
【0044】
なお、画像処理部91は、試料SAの蛍光観察を行う場合、第1検出器40から出力された蛍光の検出信号に基づいて、試料SAにおける各位置での検出信号の信号強度の値に応じて各画素の輝度値を設定した画像データ(以降、蛍光観察による試料SAの画像データと称する場合がある)を生成する。
【0045】
これにより、画像処理部91で生成された試料SAの屈折率分布の画像データに基づいて、画像表示部(図示せず)に試料SAにおける屈折率分布の画像を表示することが可能である。また、画像処理部91で生成された明視野観察による試料SAの画像データに基づいて、画像表示部に明視野観察による試料SAの画像を表示することが可能である。画像処理部91で生成された蛍光観察による試料SAの画像データに基づいて、蛍光観察による試料SAの画像を表示することが可能である。
【0046】
次に、画像処理部91により、試料SAに関する屈折率のデータとして試料SAにおける3次元の屈折率分布を求める公知の方法について説明する。試料SAにおける3次元の屈折率分布を求める代表的な例として、PC-ODT(Partially Coherent-Optical Diffraction Tomography)と称される理論を用いる方法がある。以下、PC-ODTの理論について簡単に述べる。部分コヒーレント結像の式より、3次元の物体の像の強度I(x,y,z)は、下記の式(1)のように表すことができる。
【0047】
【数1】
【0048】
式(1)において、oは物体の複素振幅透過率を表す。TCCは相互透過係数(Transmission Cross Coefficient)を表す。(ξ,η,ζ)は回折光(もしくは直接光)の方向余弦を表す。また、この場合の像とは、照明により試料SAの少なくとも一部を透過した光(検出光)が結像して得られる試料SAの像である。したがって、3次元の物体の像、すなわち3次元の試料SAの像の強度I(x,y,z)は、画像処理においては第1検出器40等から出力される検出信号の信号強度(例えば、第1検出器40で試料SAを撮像した際の第1検出器40の各画素における信号強度)に置き換えることができる。図2に示すように、第1顕微鏡部10の光軸方向(上下方向)に延びる座標軸をz軸とし、z軸と垂直な座標軸をx軸およびy軸とする。相互透過係数TCCは、下記の式(2)のように表すことができる。
【0049】
【数2】
【0050】
式(2)において、Sは照明瞳を表す。Gは検出瞳を表す。相互透過係数TCCは、エルミート共役であることから、下記の式(3)に示す性質を持つ。
【0051】
【数3】
【0052】
細胞のような厚みの薄い試料の場合、散乱の影響は小さいので、第1次Born近似(低コントラスト近似)が成り立つ。このとき、試料を透過した直接光(0次回折光)と、試料で回折した回折光(1次回折光)との干渉のみを考えればよい。そのため、第1次Born近似によって、上記の式(1)~(3)から下記の式(4)が得られる。
【0053】
【数4】
【0054】
また、物体の複素振幅透過率oは、下記の式(5)のように近似することができる。
【0055】
【数5】
【0056】
式(5)において、Pは散乱ポテンシャルの実部を表す。Φは散乱ポテンシャルの虚部を表す。上記の式(4)は、式(5)を利用して、下記の式(6)のように表される。
【0057】
【数6】
【0058】
ここで、TCCをWOTF(Weak Object Transfer Function)と改める。WOTFは下記の式(7)で定義される。
【0059】
【数7】
【0060】
上記の式(6)および式(7)より、透過照明方式の顕微鏡で得られる3次元の物体の像の強度I(x,y,z)は、下記の式(8)のように表される。
【0061】
【数8】
【0062】
ここで、試料の振幅変化は、小さくて無視できるものとする。すなわち、P=0とする。この場合、上記の式(8)を実空間上で表すと、下記の式(9)が得られる。
【0063】
【数9】
【0064】
式(9)において、EPSFは、有効点像分布(Effective Point Spread Function)を表す。EPSFは、WOTFを逆フーリエ変換したものに等しい。EPSFは、一般的に複素関数である。式(9)の第1項は、背景強度を表す。式(9)の第2項は、試料の持つ散乱ポテンシャルの虚部Φに、EPSFの虚部Im[EPSF]がかかっていることを表す。この式(9)を利用して、試料の持つ散乱ポテンシャルの虚部Φを求めることができる。
【0065】
Φ(x,y,z)を求める第1の方法として、Im[EPSF]を用いて直接デコンボリューションを行う方法がある。図5に、ステージ2をz方向(つまり、光軸方向)に移動させて、試料SAのz方向の位置(つまり、光軸方向の位置)が異なる複数の断面(xy断面)の像の強度(第1検出器40等から出力される検出信号の信号強度)を取得し、デコンボリューションを行う過程を模式的に示す。なお、試料SAのz方向の位置(つまり、光軸方向の位置)が異なる複数の断面の像を纏めて、試料SAのzスタック像と称する場合がある。式(9)の第1項は、背景強度を表す定数項である。まず、式(9)の両辺をこの定数項で割って規格化した後、規格化した式(9)の第1項を実空間(もしくは周波数空間)上で除く。そして、Im[EPSF]を用いてデコンボリューションを行うことで、下記の式(10)が得られる。
【0066】
【数10】
【0067】
式(10)において、Im[EPSF]を3次元フーリエ変換したものをPOTF(Phase Optical Transfer Function)とする。なお、Im[EPSF]は正の値から負の値までとり得るため、POTFの値も、正の値から負の値までとり得る。ここで、POTFは、明視野観察による試料SAの画像(像)のコントラストや分解能を表す指標となる。具体的には、POTFの絶対値は画像のコントラストを表し、POTFの絶対値が高いほど、明視野観察による試料SAの画像(像)のコントラストは高くなる。また、周波数空間においてPOTFの値が0ではない領域が広いほど、明視野観察による試料SAの画像(像)の分解能は高くなる。また、試料SAのzスタック像における試料SAの各断面の像の強度I(例えば、図5におけるI~I)を式(9)の定数項で規格化したものをI’とする。γは、任意の小さい値を取るものとする。
【0068】
Φ(x,y,z)を求める第2の方法として、試料SAのz方向の位置(つまり、光軸方向の位置)が異なる2つの断面の像の強度の差分を求めることで、式(9)の定数項を除いた後、求めた強度の差分のIm[EPSF]を用いてデコンボリューションを行う方法がある。この方法は、国際公開第2021/064807号パンフレットにも記載されており、説明を省略する。
【0069】
なお、散乱ポテンシャルΦは、P=0の場合、下記の式(11)で定義される。
【0070】
【数11】
【0071】
式(11)において、n(x,y,z)は試料SAにおける3次元の屈折率分布を表し、kは真空中の波数を表し、nは媒質の屈折率を表す。式(11)を用いれば、上述した方法によって求めた散乱ポテンシャルΦを、3次元の屈折率分布に換算することができる。画像処理部91は、上記の式(10)と式(11)とを用いて、第1検出器40等から出力される検出信号の信号強度、すなわち3次元の試料SAの像の強度I(x,y,z)から試料SAにおける3次元の屈折率分布n(x,y,z)を算出する。一例として画像処理部91は、算出した試料SAにおける3次元の屈折率分布の各位置(座標)での屈折率の値に応じて各画素の輝度値を設定した画像データ、すなわち試料SAの3次元の屈折率分布の画像データを生成する。なお、3次元の試料SAの像の強度は、試料SAのzスタック像における試料SAの各断面の像の強度として表すことができる。すなわち、3次元の試料SAの像の強度は、試料SAにおけるz方向の位置(つまり、光軸方向の位置)が異なる複数の像の強度とも言える。
【0072】
従来のように、第1顕微鏡部10のみを用いて試料SAからの光を検出する場合、POTFがz方向に対して情報の欠落する領域(以降、missing cone領域と称する)を持つため、z方向の屈折率の変化にエラーが生じる。そのため、試料SAの3次元の屈折率分布の画像や、明視野観察による試料SAの画像を生成することが難しい。図6に、従来の方法で生成した明視野観察による試料SA(xz断面)の画像の一例を示す。図7に、従来の方法で生成した試料SAの3次元の屈折率分布(xz断面)の画像の一例を示す。図6および図7に示す試料SAとして、屈折率等が既知である略球形の疑似細胞を用いている。図6および図7に示す例では、試料SA(疑似細胞)の屈折率が~1.35に設定され、媒質の屈折率が1.33に設定される。また、図6および図7に示す例で使用される顕微鏡の照明側NA(開口数)および検出側NAが0.95に設定される。
【0073】
図8に、従来におけるPOTFの分布を示す。図8において、白色(背景)はPOTFの値が0であることを示し、黒色はPOTFの値が正または負の値であることを示す。したがって、図8において、黒色が濃いほどPOTFの絶対値が大きくなる。図8に示すように、従来におけるPOTFの分布の中心側に、大きなmissing cone領域が存在する。そのため、明視野観察による試料SAの画像は、例えば図6に示すように、本来の略球形の形状から乖離し、z方向に延びてしまう。
【0074】
また、POTFがmissing cone領域を持つため、上記の式(10)と式(11)とを用いて、3次元の屈折率分布を求める場合、屈折率の補正が必要となる。そこで、Gerchberg-Papoulis法、Edge-Preserving Regularization法、Total Variation Regularization法などのmissing cone推定手法を用いて、屈折率の補正を行う。具体的には、missing cone推定アルゴリズムを使用して、最小の屈折率値が所定の屈折率値(例えば、既知である試料SAにおける媒質の屈折率値)となるように拘束条件を設定し、missing cone領域を推定する。
【0075】
図9に、従来におけるPOTFのmissing cone領域を推定して補完したスペクトルの分布を示す。図9に示すように、POTFのmissing cone領域を補完したとしても、試料SAの3次元の屈折率分布の画像は、例えば図7に示すように、本来の略球形の形状から乖離し、z方向に延びてしまう。
【0076】
本実施形態において、画像処理部91は、第1照明光学系20が第1照明光L1を-z方向(第1の方向)に向けて試料SAに照射することによって第1検出器40から出力された光の検出信号および、第2照明光学系70が第2照明光L2を+x方向(第1の方向と直交する第2の方向)に向けて試料SAに集光して照射することによって第2検出器80から出力された光の検出信号に基づいて、試料SAの3次元の屈折率分布の画像データを生成する。これにより、本実施形態によれば、第2検出器80から出力された光の検出信号に基づいて、POTFにおけるmissing cone領域を小さくすることが可能になるため、試料SAの3次元の屈折率分布の画像や、明視野観察による試料SAの画像をより正確に生成することが可能になる。
【0077】
図10に、本実施形態に係る方法で生成した明視野観察による試料SA(xz断面)の画像の一例を示す。図11に、本実施形態に係る方法で生成した試料SAの3次元の屈折率分布(xz断面)の画像の一例を示す。図10および図11に示す試料SAとして、屈折率等が既知である略球形の疑似細胞を用いている。図10および図11に示す例では、試料SA(疑似細胞)の屈折率が~1.35に設定され、媒質の屈折率が1.33に設定される。また、第1顕微鏡部10の照明側NA(開口数)および検出側NAが0.95に設定され、第2顕微鏡部50の照明側NAおよび検出側NAが0.5に設定される。
【0078】
図12に、本実施形態におけるPOTFの分布を示す。図12において、図8と同様に、黒色が濃いほどPOTFの絶対値が大きくなる。図12に示すように、本実施形態におけるPOTFの分布の中心側に、missing cone領域を埋めるように、第2検出器80から出力された光の検出信号に基づくPOTFが存在する。そのため、明視野観察による試料SAの画像は、例えば図10に示すように、本来の略球形の形状に近くなる。図13に、本実施形態におけるPOTFのmissing cone領域を推定して補完したスペクトルの分布を示す。図13に示すように、従来よりも広い範囲でPOTFのmissing cone領域を補完することができ、試料SAの3次元の屈折率分布の画像は、例えば図11に示すように、本来の略球形の形状に近くなる。
【0079】
また、fを空間周波数とし、照明側NA(開口数)を決定するレンズ(対物レンズ・コンデンサレンズ)の瞳関数をPill(f)とし、検出側NAを決定するレンズ(対物レンズ・コンデンサレンズ)の瞳関数をPcol(f)とする。POTFは、照明系有効瞳関数と検出系有効瞳関数のコンボリューションで得られる。ケーラー照明顕微鏡である第1顕微鏡部10において、照明系有効瞳関数は|Pill(f)|2*col(f)、検出系有効瞳関数はPcol(f)となることが知られている。一方、非共焦点レーザー顕微鏡である第2顕微鏡部50において、照明系有効瞳関数はPill(f)、検出系有効瞳関数は|Pcol(f)|2Pill*(f)となることが知られている。なお、コンボリューションは順序を入れ替えても変わらないため、ケーラー照明顕微鏡(第1顕微鏡部10)および非共焦点レーザー顕微鏡(第2顕微鏡部50)は、NA等の条件が同じである場合、同じPOTFが得られる。
【0080】
ケーラー照明顕微鏡(第1顕微鏡部10)における照明瞳の位置に1次関数強度透過マスク(例えば、光の透過率が一次関数に従って瞳面内で一方向に沿って単調に増加もしくは減少する第1変調素子25)を配置した場合、|Pill(f)|2が1次関数となるため、照明系有効瞳関数が1次関数となる。そのため、POTFの分布が図12に示す例では左右対称に大きくなり、光軸に対して直交する方向での試料SAの解像度が改善される。一方、非共焦点レーザー顕微鏡(第2顕微鏡部50)における検出瞳と共役な位置に1次関数強度透過マスク(例えば、光の透過率が一次関数に従って瞳と共役な面内で一方向に沿って単調に増加もしくは減少する第2変調素子77)を配置した場合、|Pcol(f)|2が1次関数となるため、検出系有効瞳関数が1次関数となる。そのため、POTFの分布が図12に示す例では上下対称に大きくなり、光軸に対して直交する方向での試料SAの解像度が改善される。ケーラー照明顕微鏡と非共焦点レーザー顕微鏡とを直交するように配置することによって、2つの方向(図12に示す例では、x方向とz方向)での解像度を改善することができ、透明な位相物体である試料SAについて、3次元での正確な像を形成することができる。従って、ケーラー照明顕微鏡(第1顕微鏡部10)による光の検出信号および、非共焦点レーザー顕微鏡(第2顕微鏡部50)による光の検出信号に基づく演算により、試料SAにおける3次元の屈折率分布をより正確に求めることが可能となる。
【0081】
なお、ケーラー照明顕微鏡(第1顕微鏡部10)および非共焦点レーザー顕微鏡(第2顕微鏡部50)は、照明側NAと検出側NAが同じである場合、下記の式(12)を満足してもよい。
【0082】
【数12】
【0083】
ここで、NA_1は、ケーラー照明顕微鏡(第1顕微鏡部10)のNA(開口数)である。NA_2は、非共焦点レーザー顕微鏡(第2顕微鏡部50)のNA(開口数)である。n_1は、ケーラー照明顕微鏡(第1顕微鏡部10)での試料SAにおける浸液の屈折率である。n_2は、非共焦点レーザー顕微鏡(第2顕微鏡部50)での試料SAにおける浸液の屈折率である。式(12)を満足することにより、POTFにおけるmissing cone領域が完全に埋まるため、試料SAにおける3次元の屈折率分布をより正確に求めることが可能となる。
【0084】
また、第1顕微鏡部10と第2顕微鏡部50とを直交するように配置することが理想的であるが、これに限られるものではない。第1顕微鏡部10と第2顕微鏡部50とを異なる角度で配置しても、第1顕微鏡部10のみを用いる場合と比較して、試料SAにおける3次元の屈折率分布をより正確に求めることが可能である。
【0085】
ケーラー照明顕微鏡である第1顕微鏡部10を垂直方向に配置し、非共焦点レーザー顕微鏡である第2顕微鏡部50を水平方向に配置すれば、従来のケーラー照明顕微鏡の構成を利用することができるため、顕微鏡装置としての実用性が高くなる。但し、第1顕微鏡部と第2顕微鏡部との組み合わせは、ケーラー照明顕微鏡と非共焦点レーザー顕微鏡との組み合わせに限られるものではない。例えば、ケーラー照明顕微鏡同士の組み合わせや、非共焦点レーザー顕微鏡同士の組み合わせであっても、同様にして、試料SAにおける3次元の屈折率分布をより正確に求めることが可能である。
【0086】
第1変調素子25および第2変調素子77の光の透過率は、一次関数に従って瞳の面内もしくは瞳と共役な面内で一方向に沿って単調に増加もしくは減少することが理想的であるが、これに限られるものではない。第1変調素子25と第2変調素子77のうち一方の光の透過率が、一次関数に従って瞳の面内もしくは瞳と共役な面内で一方向に沿って単調に増加もしくは減少するようにしてもよい。前述したように、第1変調素子25と第2変調素子77との少なくとも一方の光の透過率が、連続関数に従って瞳の面内もしくは瞳と共役な面内で一方向に沿って単調に増加もしくは減少してもよく、連続関数が、正弦関数、余弦関数、二次関数、ガウス関数のうちのいずれかの関数であってもよい。このような構成であっても、試料SAにおける3次元の屈折率分布をより正確に求めることが可能である。
【0087】
前述したように、第1変調素子25として、光の透過率の変化、すなわち光の透過率の分布が異なる複数の第1変調素子25のうちいずれかを選択して照明瞳の位置P1に配置することが可能である。この場合、複数の第1変調素子25を保持したターレット(図示せず)を設け、当該ターレットを回動させることで照明瞳の位置P1に配置する第1変調素子25を選択してもよい。なお、複数の第1変調素子25のうちいずれかを選択して照明瞳の位置P1に配置することが可能な素子選択部として、ターレットに限られず、スライダー等の既存の機構を用いてもよい。これにより、制御部90が、複数の第1変調素子25のうちいずれかに切り替えて照明瞳の位置P1に配置するように素子選択部を制御することで、照明瞳の面内における光の透過率の分布を変更する。
【0088】
また、第2変調素子77として、光の透過率の分布が異なる複数の第2変調素子77のうちいずれかを選択して検出瞳と共役な位置P2に配置することが可能である。この場合、複数の第2変調素子77を保持したターレット(図示せず)を設け、当該ターレットを回動させることで検出瞳と共役な位置P2に配置する第2変調素子77を選択してもよい。なお、複数の第2変調素子77のうちいずれかを選択して検出瞳と共役な位置P2に配置する手段として、複数の第1変調素子25のうちいずれかを選択して照明瞳の位置P1に配置する手段と同様の手段(素子選択部)を用いることが可能である。これにより、制御部90が、複数の第2変調素子77のうちいずれかに切り替えて検出瞳と共役な位置P2に配置するように素子選択部を制御することで、検出瞳と共役な面内における光の透過率の分布を変更する。
【0089】
次に、第1実施形態に係る顕微鏡装置1における屈折率のデータ生成方法について説明する。図14は、第1実施形態に係るデータ生成方法を示すフローチャートである。なお、試料SAは、予めステージ2の上に載置されているものとする。制御部90は、例えばコンピュータシステムを含む。制御部90は、記憶部に記憶されている制御プログラムを読み出し、この制御プログラムに従って各種の処理を実行する。
【0090】
まず、第1顕微鏡部10の第1照明光学系20は、第1の方向に向けた第1照明光を試料SAに照射する(ステップST1)。次に、第1検出光学系30は、第1照明光に照射に応じた試料SAからの光を受ける(ステップST2)。次に、第1検出器40は、第1検出光学系30を介して試料SAからの光を検出して光の検出信号を出力する(ステップST3)。次に、第2顕微鏡部50の第2照明光学系70は、第1の方向と直交する第2の方向に向けた第2照明光を試料SAに照射する(ステップST4)。次に、第2検出光学系75は、第2照明光の照射に応じた試料SAからの光を受ける(ステップST5)。次に、第2検出器80は、第2検出光学系85を介して試料SAからの光を検出して光の検出信号を出力する(ステップST6)。なお、試料SAのz方向の位置(光軸方向の位置)が異なる複数の断面の像、すなわち試料SAのzスタック像に対応する試料SAの各断面からの光をそれぞれ検出するように、ステップST1~ST6の処理を繰り返す。例えば、ステップST1~ST3において、ステージ駆動部(図示せず)によりステージ2(試料SA)をz方向に移動させることで、第1顕微鏡部10(第1検出器40)により試料SAの各断面からの光をそれぞれ検出してもよい。ステップST4~ST6において、第1ガルバノミラー54と、第2ガルバノミラー57と、液体レンズ59により、試料SAを3次元的に走査することで、第2顕微鏡部50(第2検出器80)により試料SAの各断面からの光をそれぞれ検出してもよい。そして、画像処理部91は、第1検出器40から出力された光の検出信号および、第2検出器80から出力された光の検出信号に基づいて、試料SAにおける3次元の屈折率分布(例えば、試料SAの3次元の屈折率分布の画像データ)を生成する(ステップST7)。このとき例えば、画像処理部91は、第1検出器40から出力された検出信号の信号強度に応じた試料SAの像の強度と、第2検出器80から出力された検出信号の信号強度に応じた試料SAの像の強度とをマージして得られる試料SAの像の強度に基づいて、上記の式(10)と式(11)とを用いて、試料SAにおける3次元の屈折率分布を算出してもよい。これにより、試料SAにおける3次元の屈折率分布をより正確に求めることができる。
【0091】
図14に示すフローにおいて、第1顕微鏡部10により、第1の方向に向けた第1照明光を試料SAに照射して第1照明光の照射に応じた試料SAからの光を検出する工程(ステップST1~ST3)と、第2顕微鏡部50により、第1の方向と直交する第2の方向に向けた第2照明光を試料SAに照射して第2照明光の照射に応じた試料SAからの光を検出する工程(ステップST4~ST6)を、この順に行っているが、これに限られるものではない。例えば、第1顕微鏡部10による各工程(ステップST1~ST3)と、第2顕微鏡部50による各工程(ステップST4~ST6)を同時に行うようにしてもよい。これにより、試料SAにおける3次元の屈折率分布を短時間で求めることができる。
【0092】
上述の第1実施形態において、画像処理部91は、試料SAのzスタック像に対応する試料SAの各断面について、第1検出器40により検出された光の検出信号および、第2検出器80により検出された光の検出信号に基づいて、3次元のデコンボリューションを行い、試料SAにおける3次元の屈折率分布(例えば、試料SAの3次元の屈折率分布の画像データ)を求めているが、これに限られるものではない。例えば、画像処理部91は、試料SAのzスタック像に対応する試料SAの断面ごとに、第1検出器40により検出された光の検出信号および、第2検出器80により検出された光の検出信号に基づいて、2次元のデコンボリューション(例えば、図12に例示される3次元のPOTFの分布におけるFz(Fx)=0の断面でのPOTFに基づく2次元のデコンボリューション)を行い、試料SAの各断面における屈折率分布を求めることで、試料SAにおける3次元の屈折率分布を求めるようにしてもよい。
【0093】
上述の第1実施形態において、第2顕微鏡部50の光源ユニット51は、第1ガルバノミラー54と第2ガルバノミラー57とを有しているが、これに限られるものではない。例えば、図15に示す顕微鏡装置1aのように、第2顕微鏡部50aの光源ユニット51aは、1つだけガルバノミラー64を有する構成であってもよい。この場合、光源ユニット51aにおいて、第2ガルバノミラー57の代わりにミラー67が配置される。第2ガルバノミラー57に代えて、ステージ駆動部(図示せず)によりステージ2をz方向に移動させることで、試料SAにおける第2照明光の集光位置をz方向に変化させる。また、ガルバノミラー64は、第1ガルバノミラー54と同様の構成であり、第2照明光の進行方向を変化させることで、試料SAにおける第2照明光の集光位置をy方向に変化させる。ガルバノミラー64と、液体レンズ59と、ステージ駆動部により、試料SAにおける第2照明光の集光位置を3次元方向に変化させて、試料SAを3次元的に走査することが可能である。この場合、ステージ駆動部によりステージ2(試料SA)をz方向に移動させることで、第1顕微鏡部10(第1検出器40)により試料SAの各断面からの光をそれぞれ検出するのに合わせて、ガルバノミラー64と液体レンズ59により試料SAを走査して、第2顕微鏡部50a(第2検出器80)により試料SAの各断面からの光をそれぞれ検出するようにしてもよい。これにより、第1顕微鏡部10による各工程(ステップST1~ST3)と、第2顕微鏡部50aによる各工程(ステップST4~ST6)を同時に行うことが可能である。
【0094】
<第2実施形態>
次に、図16を用いて、第2実施形態に係る顕微鏡装置101について説明する。第2実施形態に係る顕微鏡装置101は、第2顕微鏡部の他は、第1実施形態に係る顕微鏡装置1と要部が共通の構成である。そのため、第1実施形態と同様の構成については、第1実施形態と同一の符号を付して詳細な説明を省略する。第2実施形態に係る顕微鏡装置101は、第1顕微鏡部110と、第2顕微鏡部150とを有する。さらに、第2実施形態に係る顕微鏡装置101は、ステージ2と、制御部90と、画像処理部91とを有する。
【0095】
第1顕微鏡部110は、第1光源11と、第1照明光学系20と、第1検出光学系130と、第1検出器40とを有する。第1光源11と、第1照明光学系20と、第1検出器40は、第1実施形態と同様に構成される。第1検出光学系130は、第1実施形態と同様、試料SA側から順に、対物レンズユニット31と、結像レンズ36と、ミラー37とを有する。さらに、第1検出光学系130は、第2顕微鏡部150のハーフミラー172を含む。対物レンズユニット31と、結像レンズ36と、ミラー37は、第1実施形態と同様に構成される。
【0096】
第2顕微鏡部150は、光源ユニット51と、第2照明光学系170と、第2検出光学系175と、第2検出器80とを有する。光源ユニット51と、第2検出器80は、第1実施形態と同様に構成される。
【0097】
第2照明光学系170は、光源ユニット51(第2光源52)から発光した第2照明光L2を-x方向(第1の方向と直交する第2の方向)に向けて試料SAに集光して照射する。第2照明光学系170は、図16および図17に示すように、ハーフミラー172と、照明用ミラー174とを有する。さらに、第2照明光学系170は、第1顕微鏡部110(第1検出光学系130)の対物レンズユニット31(第1対物レンズ32)を含む。
【0098】
ハーフミラー172は、第1顕微鏡部110(第1検出光学系130)における第1対物レンズ32と結像レンズ36との間の光路に配置される。ハーフミラー172の透過率と反射率の比率は、例えば1:1に設定される。ハーフミラー172は、光源ユニット51(第2光源52)から発光した第2照明光L2の一部を第1対物レンズ32における検出瞳(後側焦点面)に向けて反射させる。第1対物レンズ32は、ハーフミラー172で反射した第2照明光L2を集光する。なお、ハーフミラー172で反射した第2照明光L2は、第1対物レンズ32の中心軸に対し傾斜した方向から第1対物レンズ32における検出瞳(後側焦点面)を通るため、第1対物レンズ32を透過すると第1対物レンズ32の中心軸に対しオフセットして+z方向に進む。照明用ミラー174は、第1対物レンズ32(およびステージ2)の上方において試料SAの右方に対向して配置される。照明用ミラー174は、第1対物レンズ32を透過して第1対物レンズ32の中心軸に対しオフセットして+z方向に進む第2照明光L2を、-x方向(第2の方向)に向けて反射させる。第2顕微鏡部150における第2照明光学系170と第2検出光学系175との間の光軸AX2は、第1顕微鏡部110における第1照明光学系20と第1検出光学系130との間の光軸AX1と直交する。
【0099】
第2検出光学系175は、試料SAを挟んで第2照明光学系170と反対の側から第2照明光の照射に応じた試料SAからの光を受ける。第2検出光学系175は、図16および図17に示すように、試料SA側から順に、検出用第2対物レンズ176と、第2変調素子177とを有する。検出用第2対物レンズ176は、試料SAを挟んで照明用ミラー174と反対の側に設けられる。検出用第2対物レンズ176には、第2照明光の照射に応じた試料SAからの光が入射する。第2変調素子177は、第2検出光学系175における検出用第2対物レンズ176の検出瞳と共役な面(検出瞳と共役な位置P2において第2顕微鏡部150(第2検出光学系175)の光軸AX2と垂直な面)に配置される。第2変調素子177は、第1実施形態に係る第2変調素子77と同様に構成される。
【0100】
第2実施形態において、試料SAの明視野観察を行う場合、第1顕微鏡部110の第1照明光学系20は、第1実施形態と同様に、第1光源11から発光した第1照明光L1を-z方向(第1の方向)に向けて試料SAに照射する。
【0101】
第1照明光学系20の方から試料SAを透過した第1検出光は、第1検出光学系130の第1対物レンズ32に入射する。第1対物レンズ32を透過した第1検出光は、ハーフミラー172に入射する。ハーフミラー172に入射した第1検出光の一部は、当該ハーフミラー172を透過して結像レンズ36に入射する。結像レンズ36を透過した第1検出光は、ミラー37で反射して第1検出器40が配置される所定の像面Iで結像する。第1検出器40は、第1検出光学系130を介して試料SAからの光(第1検出光)を検出し、当該光の検出信号を出力する。第1検出器40から出力された光(第1検出光)の検出信号は、制御部90を介して画像処理部91に送信される。
【0102】
第2顕微鏡部150の光源ユニット51(第2光源52)から発光した第2照明光L2は、第2照明光学系170のハーフミラー172に入射する。ハーフミラー172に入射した第2照明光L2の一部は、当該ハーフミラー172で反射して第1対物レンズ32に入射し、第1対物レンズ32の中心軸に対し傾斜した方向から第1対物レンズ32における検出瞳を通る。第1対物レンズ32を透過した第2照明光L2は、照明用ミラー174で反射して集光されてステージ2上の試料SAに照射される。これにより、第2照明光学系170は、光源ユニット51(第2光源52)から発光した第2照明光L2を-x方向(第1の方向と直交する第2の方向)に向けて試料SAに集光して照射する。
【0103】
第2照明光学系170の方から試料SAを透過した第2検出光は、第2検出光学系175の検出用第2対物レンズ176に入射する。検出用第2対物レンズ176を透過した第2検出光は、第2変調素子177を通って第2検出器80に入射する。第2検出器80は、第2検出光学系175を介して試料SAからの光(第2検出光)を検出し、当該光の検出信号を出力する。第2検出器80から出力された光(第2検出光)の検出信号は、制御部90を介して画像処理部91に送信される。
【0104】
また、第2顕微鏡部150により試料SAの蛍光観察を行う場合、第2顕微鏡部150の光源ユニット51のシリンドリカルレンズ(図示せず)は、光源ユニット51における第1レンズ53と第1ガルバノミラー54との間の光路に挿入される。また、第1対物レンズ32と結像レンズ36との間の光路に、ハーフミラー172に代えて蛍光フィルターキューブ173が挿入される。蛍光フィルターキューブ173は、ダイクロイックミラー173aと、励起フィルター173bと、吸収フィルター173cとを有する。
【0105】
光源ユニット51(第2光源52)から発光した励起光は、蛍光フィルターキューブ173の励起フィルター173bを通ってダイクロイックミラー173aに入射する。蛍光フィルターキューブ173のダイクロイックミラー173aに入射した励起光は、当該ダイクロイックミラー173aで反射して第1対物レンズ32に入射し、第1対物レンズ32の中心軸に対し傾斜した方向から第1対物レンズ32における検出瞳を通る。第1対物レンズ32を透過した励起光は、照明用ミラー174で反射して集光されてステージ2上の試料SAに照射される。これにより、第2照明光学系170は、光源ユニット51(第2光源52)から発光したシート光である励起光を試料SAに照射する。
【0106】
励起光の照射によって、試料SAに含まれる蛍光物質が励起されて蛍光が出射する。試料SAからの蛍光は、第1検出光学系130の第1対物レンズ32に入射する。第1対物レンズ32を透過した蛍光は、蛍光フィルターキューブ173のダイクロイックミラー173aに入射する。蛍光フィルターキューブ173のダイクロイックミラー173aに入射した蛍光は、当該ダイクロイックミラー173aを透過して吸収フィルター173cを通り、結像レンズ36に入射する。結像レンズ36を透過した蛍光は、ミラー37で反射して第1検出器40が配置される所定の像面Iで結像する。第1検出器40は、第1検出光学系130を介して試料SAからの蛍光を検出し、当該蛍光の検出信号を出力する。第1検出器40から出力された蛍光の検出信号は、制御部90を介して画像処理部91に送信される。
【0107】
第2実施形態では、第1実施形態に係る屈折率のデータ生成方法と同様の方法で、試料SAにおける3次元の屈折率分布(例えば、試料SAの3次元の屈折率分布の画像データ)を生成することができる。そのため、第2実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0108】
上述の第2実施形態において、第2顕微鏡部150の光源ユニット51は、第1ガルバノミラー54と第2ガルバノミラー57とを有しているが、これに限られるものではない。例えば、図18に示す顕微鏡装置101aのように、第2顕微鏡部150aの光源ユニット51aは、1つだけガルバノミラー64を有する構成であってもよい。この場合、第1実施形態の変形例に係る顕微鏡装置1aと同様に、光源ユニット51aにおいて、第2ガルバノミラー57の代わりにミラー67が配置される。
【0109】
<第3実施形態>
次に、図19を用いて、第3実施形態に係る顕微鏡装置201について説明する。第3実施形態に係る顕微鏡装置201は、第2顕微鏡部の他は、第1実施形態に係る顕微鏡装置1と要部が共通の構成である。そのため、第1実施形態と同様の構成については、第1実施形態と同一の符号を付して詳細な説明を省略する。第3実施形態に係る顕微鏡装置201は、第1顕微鏡部210と、第2顕微鏡部250とを有する。さらに、第3実施形態に係る顕微鏡装置201は、ステージ2と、制御部90と、画像処理部91とを有する。
【0110】
第1顕微鏡部210は、第1光源11と、第1照明光学系20と、第1検出光学系230と、第1検出器40とを有する。第1光源11と、第1照明光学系20と、第1検出器40は、第1実施形態と同様に構成される。第1検出光学系230は、試料SA側から順に、対物レンズユニット31と、結像レンズ36と、偏光ビームスプリッタ237とを有する。さらに、第1検出光学系230は、第2顕微鏡部250のハーフミラー272を含む。対物レンズユニット31と、結像レンズ36とは、第1実施形態と同様に構成される。偏光ビームスプリッタ237は、第1照明光の照射に応じた試料SAからの光(s偏光)を反射させ、第2照明光の照射に応じた試料SAからの光(p偏光)を透過させる。
【0111】
第2顕微鏡部250は、光源ユニット51と、第2照明光学系270と、第2検出光学系275と、第2検出器80とを有する。光源ユニット51と、第2検出器80は、第1実施形態と同様に構成される。
【0112】
第2照明光学系270は、光源ユニット51(第2光源52)から発光した第2照明光L2を-x方向(第1の方向と直交する第2の方向)に向けて試料SAに集光して照射する。第2照明光学系270は、図19および図20に示すように、ハーフミラー272と、照明用ミラー274とを有する。さらに、第2照明光学系270は、第1顕微鏡部210(第1検出光学系230)の対物レンズユニット31(第1対物レンズ32)を含む。
【0113】
ハーフミラー272は、第1顕微鏡部210(第1検出光学系230)における第1対物レンズ32と結像レンズ36との間の光路に配置される。ハーフミラー272の透過率と反射率の比率は、例えば1:1に設定される。ハーフミラー272は、光源ユニット51(第2光源52)から発光した第2照明光L2の一部を第1対物レンズ32における検出瞳(後側焦点面)に向けて反射させる。第1対物レンズ32は、ハーフミラー272で反射した第2照明光L2を集光する。なお、ハーフミラー272で反射した第2照明光L2は、第1対物レンズ32の中心軸に対し傾斜した方向から第1対物レンズ32における検出瞳(後側焦点面)を通るため、第1対物レンズ32を透過すると第1対物レンズ32の中心軸に対しオフセットして+z方向に進む。照明用ミラー274は、第1対物レンズ32(およびステージ2)の上方において試料SAの右方に対向して配置される。照明用ミラー274は、第1対物レンズ32を透過して第1対物レンズ32の中心軸に対しオフセットして+z方向に進む第2照明光L2を、-x方向(第2の方向)に向けて反射させる。第2顕微鏡部250における第2照明光学系270と第2検出光学系275との間の光軸AX2は、第1顕微鏡部210における第1照明光学系20と第1検出光学系230との間の光軸AX1と直交する。
【0114】
第2検出光学系275は、試料SAを挟んで第2照明光学系270と反対の側から第2照明光の照射に応じた試料SAからの光を受ける。第2検出光学系275は、図19および図20に示すように、検出用ミラー276と、リレーレンズ278と、第2変調素子277とを有する。さらに、第2検出光学系275は、第1顕微鏡部210(第1検出光学系230)の対物レンズユニット31(第1対物レンズ32)と、結像レンズ36と、偏光ビームスプリッタ237と、第2照明光学系270のハーフミラー272とを含む。
【0115】
検出用ミラー276は、第1対物レンズ32(およびステージ2)の上方において、試料SAを挟んで照明用ミラー274と反対の側に設けられる。照明用ミラー274は、第2照明光の照射に応じた試料SAからの光を、第1対物レンズ32の中心軸に対しオフセットした-z方向(すなわち第1対物レンズ32)に向けて反射させる。第1対物レンズ32には、検出用ミラー276を介して第2照明光の照射に応じた試料SAからの光が入射する。リレーレンズ278は、偏光ビームスプリッタ237を透過した試料SAからの光(p偏光)を第2変調素子277に入射させる。第2変調素子277は、第2検出光学系275における第1対物レンズ32の検出瞳と共役な面(検出瞳と共役な位置P2において第2顕微鏡部250(第2検出光学系275)の光軸と垂直な面)に配置される。第2変調素子277は、第1実施形態に係る第2変調素子77と同様に構成される。
【0116】
第3実施形態において、試料SAの明視野観察を行う場合、第1顕微鏡部110の第1照明光学系20は、第1実施形態と同様に、第1光源11から発光した第1照明光L1を-z方向(第1の方向)に向けて試料SAに照射する。なお、第3実施形態において、偏光ビームスプリッタ237に対してs偏光(第1検出光)が入射するように、例えば、第1照明光学系20における光路(例えば、コレクタレンズ21と視野絞り23との間の光路)に偏光板(図示せず)が配置される。
【0117】
第1照明光学系20の方から試料SAを透過した第1検出光(s偏光)は、第1検出光学系230の第1対物レンズ32に入射する。第1対物レンズ32を透過した第1検出光は、ハーフミラー272に入射する。ハーフミラー272に入射した第1検出光の一部は、当該ハーフミラー272を透過して結像レンズ36に入射する。結像レンズ36を透過した第1検出光(s偏光)は、偏光ビームスプリッタ237で反射して第1検出器40が配置される所定の像面Iで結像する。第1検出器40は、第1検出光学系230を介して試料SAからの光(第1検出光)を検出し、当該光の検出信号を出力する。第1検出器40から出力された光(第1検出光)の検出信号は、制御部90を介して画像処理部91に送信される。
【0118】
第2顕微鏡部250の光源ユニット51(第2光源52)から発光した第2照明光L2は、第2照明光学系270のハーフミラー272に入射する。なお、第3実施形態において、偏光ビームスプリッタ237に対してp偏光(第2検出光)が入射するように、例えば、光源ユニット51(第2光源52)が直線偏光である第2照明光L2を発光させる。ハーフミラー272に入射した第2照明光L2の一部は、当該ハーフミラー272で反射して第1対物レンズ32に入射し、第1対物レンズ32の中心軸に対し傾斜した方向から第1対物レンズ32における検出瞳を通る。第1対物レンズ32を透過した第2照明光L2は、照明用ミラー274で反射して集光されてステージ2上の試料SAに照射される。これにより、第2照明光学系270は、光源ユニット51(第2光源52)から発光した第2照明光L2を-x方向(第1の方向と直交する第2の方向)に向けて試料SAに集光して照射する。
【0119】
第2照明光学系270の方から試料SAを透過した第2検出光(p偏光)は、第2検出光学系275の検出用ミラー276で反射して第1対物レンズ32に入射する。第1対物レンズ32を透過した第2検出光は、ハーフミラー272に入射する。ハーフミラー272に入射した第2検出光の一部は、当該ハーフミラー272を透過して結像レンズ36に入射する。結像レンズ36を透過した第2検出光(p偏光)は、偏光ビームスプリッタ237を透過してリレーレンズ278に入射する。リレーレンズ278を透過した第2検出光は、第2変調素子277を通って第2検出器80に入射する。第2検出器80は、第2検出光学系275を介して試料SAからの光(第2検出光)を検出し、当該光の検出信号を出力する。第2検出器80から出力された光(第2検出光)の検出信号は、制御部90を介して画像処理部91に送信される。
【0120】
第3実施形態では、第1実施形態に係る屈折率のデータ生成方法と同様の方法で、試料SAにおける3次元の屈折率分布(例えば、試料SAの3次元の屈折率分布の画像データ)を生成することができる。そのため、第3実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0121】
上述の第3実施形態において、第2顕微鏡部250の光源ユニット51は、第1ガルバノミラー54と第2ガルバノミラー57とを有しているが、これに限られるものではない。例えば、図21に示す顕微鏡装置201aのように、第2顕微鏡部250aの光源ユニット51aは、1つだけガルバノミラー64を有する構成であってもよい。この場合、第1実施形態の変形例に係る顕微鏡装置1aと同様に、光源ユニット51aにおいて、第2ガルバノミラー57の代わりにミラー67が配置される。
【0122】
<第4実施形態>
次に、図22および図23を用いて、第4実施形態に係る顕微鏡装置301について説明する。第4実施形態に係る顕微鏡装置301は、第1顕微鏡部と第2顕微鏡部の他は、第1実施形態に係る顕微鏡装置1と共通の構成である。そのため、第1実施形態と同様の構成については、第1実施形態と同一の符号を付して詳細な説明を省略する。第4実施形態に係る顕微鏡装置301は、図22および図23に示すように、第1顕微鏡部310と、第2顕微鏡部350とを有する。さらに、第4実施形態に係る顕微鏡装置301は、図23に示すように、ステージ2と、制御部90と、画像処理部91とを有する。なお、第4実施形態において、図23に示すように、第2顕微鏡部350の光軸方向(上下方向)に延びる座標軸をz軸とし、z軸と垂直な座標軸をx軸およびy軸とする。
【0123】
第1顕微鏡部310は、図22および図23に示すように、第1光源311と、第1照明光学系320と、第1検出光学系330と、第1検出器340とを有する。第1光源311は、第1実施形態に係る第1光源11と同様に構成される。第1光源311は、第1照明光を発生させる。また、第1光源311は、照明瞳と共役な位置に配置される。
【0124】
第1照明光学系320は、第1光源311から発光した第1照明光L1を+x方向(第1の方向)に向けて試料SAに照射する。なお、図23においては、第2照明光L2と区別し易くするため、第1照明光L1を破線で示す。第1照明光学系320は、図23に示すように、第1光源311側から順に、コレクタレンズ321と、視野絞り(図示せず)と、リレーレンズ324と、第1変調素子325と、開口絞り(図示せず)と、コンデンサレンズ327とを有する。コレクタレンズ321、視野絞り、リレーレンズ324、第1変調素子325、開口絞り、およびコンデンサレンズ327は、x方向に並んで配置される他は、第1実施形態に係るコレクタレンズ21、視野絞り23、リレーレンズ24、第1変調素子25、開口絞り26、およびコンデンサレンズ27と同様に構成される。なお、コンデンサレンズ327は、ステージ2の左方に対向して配置される。また、第1光源311として白色光源が用いられる場合、第1実施形態と同様に、第1照明光の波長帯域を狭くする素子(例えば、バンドパスフィルター)が設けられてもよい。
【0125】
第1検出光学系330は、試料SAを挟んで第1照明光学系320と反対の側から第1照明光L1の照射に応じた試料SAからの光を受ける。第1検出光学系330は、図23および図24に示すように、試料SA側から順に、第1対物レンズ332と、結像レンズ336とを有する。第1対物レンズ332は、試料SAを挟んでコンデンサレンズ327と反対の側に設けられる。第1対物レンズ332には、第1照明光の照射に応じた試料SAからの光が入射する。第1対物レンズ332を透過した光は、結像レンズ336に入射する。結像レンズ336を透過した光は、所定の像面I(図22を参照)で結像する。
【0126】
第1検出光学系330の像面Iに、第1検出器340が配置される。第1検出器340は、第1実施形態に係る第1検出器40と同様に構成される。第1検出器340は、第1検出光学系330を介して試料SAからの光を検出する。
【0127】
第2顕微鏡部350は、図22および図23に示すように、光源ユニット351と、第2照明光学系360と、第2検出光学系370と、第2検出器380とを有する。光源ユニット351は、ビーム操作ユニット(Beam Steering unit)とも称される。光源ユニット351は、図23に示すように、第2光源352と、第1レンズ353と、第1ガルバノミラー354と、第2レンズ355と、第3レンズ356と、第2ガルバノミラー357と、第4レンズ358とを有する。また、光源ユニット351は、第1レンズ353と第1ガルバノミラー354との間の光路に挿脱可能なシリンドリカルレンズ(図示せず)を有する。
【0128】
第2光源352、第1レンズ353、第1ガルバノミラー354、第2レンズ355、第3レンズ356、および第2ガルバノミラー357は、第1実施形態に係る第2光源52、第1レンズ53、第1ガルバノミラー54、第2レンズ55、第3レンズ56、および第2ガルバノミラー57と同様に構成される。なお、第1ガルバノミラー354が第2照明光の進行方向を変化させることで、試料SAにおける第2照明光の集光位置をy方向に変化させる。第2ガルバノミラー357が第2照明光の進行方向を変化させることで、試料SAにおける第2照明光の集光位置をx方向に変化させる。
【0129】
第4レンズ358は、第2ガルバノミラー357で反射した第2照明光を所定の中間像面IMで集光させて、第2照明光学系360に入射させる。所定の中間像面IMの位置は、試料SAにおける第2対物レンズ366の焦点位置と共役な位置である。第1ガルバノミラー354と、第2ガルバノミラー357と、ステージ駆動部により、試料SAにおける第2照明光の集光位置を3次元方向(x方向とy方向とz方向の3つの方向)に変化させて、試料SAを3次元的に走査することが可能である。
【0130】
第2照明光学系360は、光源ユニット351(第2光源352)から発光した第2照明光L2を+z方向(第1の方向と直交する第2の方向)に向けて試料SAに集光して照射する。第2照明光学系360は、図22および図23に示すように、光源ユニット351側から順に、ミラー361と、コリメータレンズ362と、対物レンズユニット366とを有する。ミラー361は、光源ユニット351(第2光源352)から発光した第2照明光L2をコリメータレンズ362に向けて反射させる。コリメータレンズ362は、ミラー361で反射した第2照明光L2を平行にする。
【0131】
対物レンズユニット366は、複数の照明用第2対物レンズ367と、レンズ保持部368と、ユニット駆動部369とを有する。照明用第2対物レンズ367は、ステージ2の下方に対向して配置される。レンズ保持部368は、光学特性が異なる複数の照明用第2対物レンズ367を保持する。レンズ保持部368は、例えば、レボルバやターレット等を用いて構成される。ユニット駆動部369は、レンズ保持部368を駆動し、複数の照明用第2対物レンズ367のうちいずれかを選択してステージ2の下方に配置することが可能である。なお、ユニット駆動部369は、レンズ保持部368をz軸に沿って移動させてもよい。この場合、前述のステージ駆動部を併用してもよいし、ステージ駆動を使わなくてもよい。
【0132】
ステージ2の下方に配置された照明用第2対物レンズ367は、コリメータレンズ362を透過した第2照明光L2を試料SAに集光する。図24にも示すように、第2顕微鏡部350における第2照明光学系360と第2検出光学系370との間の光軸AX2は、第1顕微鏡部310における第1照明光学系320と第1検出光学系330との間の光軸AX1と直交する。
【0133】
第2検出光学系370は、試料SAを挟んで第2照明光学系360と反対の側から第2照明光の照射に応じた試料SAからの光を受ける。第2検出光学系370は、図22および図23に示すように、試料SA側から順に、検出用第2対物レンズ371と、開口絞り372と、第2変調素子373と、集光レンズ374と、ミラー376と、リレーレンズ377とを有する。検出用第2対物レンズ371は、試料SAを挟んで照明用第2対物レンズ367と反対の側に設けられる。検出用第2対物レンズ371として、光学特性が異なる複数の検出用第2対物レンズ371のうちいずれかを選択してステージ2の上方に配置することが可能である。検出用第2対物レンズ371には、第2照明光の照射に応じた試料SAからの光が入射する。
【0134】
開口絞り372および第2変調素子373は、第2検出光学系370における検出用第2対物レンズ371の検出瞳と共役な面(検出瞳と共役な位置P2Aにおいて第2顕微鏡部350(第2検出光学系370)の光軸と垂直な面)に配置される。第2変調素子373は、開口絞り372に隣接して(一例として、図23のように開口絞り372の上側に)配置される。第2変調素子373は、第1実施形態に係る第2変調素子77と同様に構成される。集光レンズ374は、開口絞り372および第2変調素子373を通った光を集光する。ミラー376は、集光レンズ374を透過した光をリレーレンズ377に向けて反射させる。リレーレンズ377は、ミラー376で反射した光を第2検出器380に入射させる。
【0135】
第2検出器380は、第2検出光学系370における検出瞳と共役な位置P2Bに配置される。第2検出器380は、第1実施形態に係る第2検出器80と同様に構成される。第2検出器380は、第2検出光学系370を介して試料SAからの光を検出する。
【0136】
第4実施形態において、試料SAの明視野観察を行う場合、第1顕微鏡部310の第1光源311から発光した第1照明光L1は、第1照明光学系320のコレクタレンズ321に入射する。コレクタレンズ321を透過した第1照明光L1は、平行光となって視野絞り(図示せず)を通り、リレーレンズ324に入射する。リレーレンズ324を透過した第1照明光L1は、第1変調素子325と開口絞り(図示せず)とを通ってコンデンサレンズ327に入射する。コンデンサレンズ327を透過した第1照明光L1は、平行光となってステージ2上の試料SAに照射される。これにより、第1照明光学系320は、第1光源311から発光した第1照明光L1を+x方向(第1の方向)に向けて試料SAに照射する。
【0137】
第1照明光学系320の方から試料SAを透過した第1検出光は、第1検出光学系330の第1対物レンズ332に入射する。第1対物レンズ332を透過した第1検出光は、結像レンズ336に入射する。結像レンズ336を透過した第1検出光は、第1検出器340が配置される所定の像面Iで結像する。第1検出器340は、第1検出光学系330を介して試料SAからの光(第1検出光)を検出し、当該光の検出信号を出力する。第1検出器340から出力された光(第1検出光)の検出信号は、制御部90を介して画像処理部91に送信される。
【0138】
なお、試料SAの明視野観察を行う場合、第2顕微鏡部350の光源ユニット351のシリンドリカルレンズ(図示せず)は、光源ユニット351における第1レンズ353と第1ガルバノミラー354との間の光路から退避される。光源ユニット351の第2光源352から発光した第2照明光は、第1レンズ353に入射する。第1レンズ353を透過した第2照明光は、平行光となって第1ガルバノミラー354で反射する。第1ガルバノミラー354で反射した第2照明光は、第2レンズ355および第3レンズ356を透過し、第2ガルバノミラー357で反射する。第2ガルバノミラー357で反射した第2照明光は、第4レンズ358を透過して光源ユニット351の外部に射出される。これにより、光源ユニット351は、第2照明光を発光させる。
【0139】
光源ユニット351(第2光源352)から発光した第2照明光L2は、第2照明光学系360のミラー361で反射してコリメータレンズ362に入射する。コリメータレンズ362を透過した第2照明光L2は、平行光となって照明用第2対物レンズ367に入射する。照明用第2対物レンズ367を透過した第2照明光L2は、集光されてステージ2上の試料SAに照射される。これにより、第2照明光学系360は、光源ユニット351(第2光源352)から発光した第2照明光L2を+z方向(第1の方向と直交する第2の方向)に向けて試料SAに集光して照射する。
【0140】
第2照明光学系360の方から試料SAを透過した第2検出光は、第2検出光学系370の検出用第2対物レンズ371に入射する。検出用第2対物レンズ371を透過した第2検出光は、開口絞り372と第2変調素子373とを通って集光レンズ374に入射する。集光レンズ374を透過した第2検出光は、ミラー376で反射してリレーレンズ377に入射する。リレーレンズ377を透過した第2検出光は、第2検出器380に入射する。第2検出器380は、第2検出光学系370を介して試料SAからの光(第2検出光)を検出し、当該光の検出信号を出力する。第2検出器380から出力された光(第2検出光)の検出信号は、制御部90を介して画像処理部91に送信される。
【0141】
また、第2顕微鏡部350により試料SAの蛍光観察を行う場合、第2顕微鏡部350の光源ユニット351のシリンドリカルレンズ(図示せず)は、光源ユニット351における第1レンズ353と第1ガルバノミラー354との間の光路に挿入される。
【0142】
光源ユニット351(第2光源352)から発光した励起光は、第2照明光学系360のミラー361で反射してコリメータレンズ362に入射する。コリメータレンズ362を透過した励起光は、平行光となって照明用第2対物レンズ367に入射する。照明用第2対物レンズ367を透過した励起光は、集光されてステージ2上の試料SAに照射される。
【0143】
励起光の照射によって、試料SAに含まれる蛍光物質が励起されて蛍光が出射する。試料SAからの蛍光は、第1顕微鏡部310の第1検出光学系330の第1対物レンズ332に入射する。第1対物レンズ332を透過した蛍光は、結像レンズ336に入射する。結像レンズ336を透過した蛍光は、第1検出器340が配置される所定の像面Iで結像する。第1検出器340は、第1検出光学系330を介して試料SAからの蛍光を検出し、当該蛍光の検出信号を出力する。第1検出器340から出力された蛍光の検出信号は、制御部90を介して画像処理部91に送信される。
【0144】
第4実施形態では、第1実施形態に係る屈折率のデータ生成方法と同様の方法で、試料SAにおける3次元の屈折率分布(例えば、試料SAの3次元の屈折率分布の画像データ)を生成することができる。そのため、第4実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0145】
<第5実施形態>
次に、図25を用いて、第5実施形態に係る顕微鏡装置401について簡潔に説明する。第5実施形態に係る顕微鏡装置401は、第2顕微鏡部の他は、第1実施形態に係る顕微鏡装置1と要部が共通の構成である。そのため、第1実施形態と同様の構成については、第1実施形態と同一の符号を付して詳細な説明を省略する。第5実施形態に係る顕微鏡装置401は、第1顕微鏡部410と、第2顕微鏡部450とを有する。さらに、第5実施形態に係る顕微鏡装置401は、図示を省略するが、ステージと、制御部と、画像処理部とを有する。ステージ、制御部、および画像処理部は、第1実施形態に係るステージ2、制御部90、および画像処理部91と同様に構成される。
【0146】
第1顕微鏡部410は、第1光源11と、第1照明光学系20と、第1検出光学系30と、第1検出器40とを有する。第1光源11と、第1照明光学系20と、第1検出光学系30と、第1検出器40は、第1実施形態と同様に構成される。なお、第1照明光学系20の第1変調素子25は、照明瞳の位置P1Aに配置される。第1検出器40は、所定の像面IAに配置される。
【0147】
第2顕微鏡部450は、第2光源451と、第2照明光学系460と、第2検出光学系470と、第2検出器480とを有する。第2光源451は、第4実施形態に係る第1光源311と同様に構成される。第2照明光学系460は、第4実施形態に係る第1照明光学系320と同様に構成される。なお、第2照明光学系460の第2変調素子465は、第4実施形態に係る第1変調素子325と同様に構成され、照明瞳の位置P1Bに配置される。第2検出光学系470は、第4実施形態に係る第1検出光学系330と同様に構成される。第2検出器480は、第4実施形態に係る第1検出器340と同様に構成され、所定の像面IBに配置される。
【0148】
第5実施形態では、第1実施形態に係る屈折率のデータ生成方法と同様の方法で、試料SAにおける3次元の屈折率分布(例えば、試料SAの3次元の屈折率分布の画像データ)を生成することができる。そのため、第5実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0149】
<第6実施形態>
次に、図26を用いて、第6実施形態に係る顕微鏡装置501について簡潔に説明する。第6実施形態に係る顕微鏡装置501は、第1顕微鏡部の他は、第1実施形態に係る顕微鏡装置1と要部が共通の構成である。そのため、第1実施形態と同様の構成については、第1実施形態と同一の符号を付して詳細な説明を省略する。第6実施形態に係る顕微鏡装置501は、第1顕微鏡部510と、第2顕微鏡部550とを有する。さらに、第6実施形態に係る顕微鏡装置501は、図示を省略するが、ステージと、制御部と、画像処理部とを有する。ステージ、制御部、および画像処理部は、第1実施形態に係るステージ2、制御部90、および画像処理部91と同様に構成される。
【0150】
第1顕微鏡部510は、第1光源512を有する第1光源ユニット511と、第1照明光学系520と、第1検出光学系530と、第1検出器540とを有する。第1光源ユニット511は、第4実施形態に係る第2光源ユニット351と同様に構成される。第1照明光学系520は、第4実施形態に係る第2照明光学系360と同様に構成される。第1検出光学系530は、第4実施形態に係る第2検出光学系370と同様に構成される。なお、第1検出光学系530の第1変調素子533は、第4実施形態に係る第2変調素子373と同様に構成され、検出瞳と共役な位置P2Aに配置される。第1検出器540は、第4実施形態に係る第2検出器380と同様に構成され、検出瞳と共役な位置P2Bに配置される。
【0151】
第2顕微鏡部550は、光源ユニット51と、第2照明光学系70と、第2検出光学系75と、第2検出器80とを有する。光源ユニット51と、第2照明光学系70と、第2検出光学系75と、第2検出器80は、第1実施形態と同様に構成される。なお、第2検出光学系75の第2変調素子77は、検出瞳と共役な位置P2Cに配置される。第2検出器80も、検出瞳と共役な位置P2Cに配置される。
【0152】
第6実施形態では、第1実施形態に係る屈折率のデータ生成方法と同様の方法で、試料SAにおける3次元の屈折率分布(例えば、試料SAの3次元の屈折率分布の画像データ)を生成することができる。そのため、第6実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0153】
<変形例>
上述の第1~第3実施形態において、第1顕微鏡部10,110,210の第1検出光学系30,130,230は、第1照明光学系20と別体に設けられているが、これに限られるものではなく、第1照明光学系の一部を含んでもよい。例えば、図27に示すように、変形例に係る第1顕微鏡部610は、第1光源11と、第1照明光学系620と、第1検出光学系630と、第1検出器40とを有する。第1光源11と、第1検出器40は、第1実施形態と同様に構成される。
【0154】
第1照明光学系620は、第1光源11側から順に、コレクタレンズ621と、第1リレーレンズ622と、第1変調素子623と、第2リレーレンズ624と、集光レンズ625と、ハーフミラー626と、対物レンズユニット631と、照明用ミラー628とを有する。なお、第1光源11として白色光源が用いられる場合、第1実施形態と同様に、第1照明光の波長帯域を狭くする素子(例えば、バンドパスフィルター)が設けられてもよい。第1変調素子623は、第1リレーレンズ622と第2リレーレンズ624との間の照明瞳の位置P1において第1照明光学系620の光軸AX1と垂直な面に配置される。第1変調素子623は、第1実施形態に係る第1変調素子25と同様に構成される。
【0155】
ハーフミラー626は、第1光源11からの第1照明光の一部をステージ2に向けて反射させる。ハーフミラー626は、ステージ2上の試料SAを透過した光(第1検出光)の一部を検出光学系630の結像レンズ636に向けて透過させる。ハーフミラー626の透過率と反射率の比率は、例えば1:1に設定される。対物レンズユニット631は、複数の第1対物レンズ632と、レンズ保持部633と、ユニット駆動部634とを有する。第1対物レンズ632は、ステージ2の下方に対向して配置される。レンズ保持部633は、焦点距離が異なる複数の第1対物レンズ632を保持する。レンズ保持部633は、例えば、レボルバやターレット等を用いて構成される。ユニット駆動部634は、レンズ保持部633を駆動し、複数の第1対物レンズ632のうちいずれかを選択してステージ2の下方に配置することが可能である。照明用ミラー628は、ステージ2の上方に対向して配置される。
【0156】
第1検出光学系630は、対物レンズユニット631と、ハーフミラー626とを含む。さらに、第1検出光学系630は、ハーフミラー626側から順に、結像レンズ636と、ミラー637とを有する。結像レンズ636およびミラー637は、第1実施形態に係る結像レンズ36およびミラー37と同様に構成される。
【0157】
第1顕微鏡部610の第1光源11から発光した第1照明光は、第1照明光学系620のコレクタレンズ621に入射する。コレクタレンズ621を透過した第1照明光は、平行光となって第1リレーレンズ622に入射する。第1リレーレンズ622を透過した第1照明光は、第1変調素子623を通って第2リレーレンズ624に入射する。第2リレーレンズ624を透過した第1照明光は、集光レンズ625を通ってハーフミラー626に入射する。ハーフミラー626に入射した第1照明光の一部は、当該ハーフミラー626で反射して第1対物レンズ632に入射する。第1対物レンズ632を透過した第1照明光は、ステージ2および試料SAを透過して照明用ミラー628で反射する。照明用ミラー628で反射した第1照明光は、ステージ2上の試料SAに照射される。これにより、第1照明光学系620は、第1光源11から発光した第1照明光を-z方向(第1の方向)に向けて試料SAに照射する。
【0158】
照明用ミラー628で反射して試料SAを透過した第1検出光は、第1検出光学系630としての第1対物レンズ632に入射する。第1対物レンズ632を透過した第1検出光は、ハーフミラー626に入射する。ハーフミラー626に入射した第1検出光の一部は、当該ハーフミラー626を透過して結像レンズ636に入射する。結像レンズ636を透過した第1検出光は、ミラー637で反射して第1検出器40が配置される所定の像面Iで結像する。第1検出器40は、第1検出光学系630を介して試料SAからの光(第1検出光)を検出し、当該光の検出信号を出力する。
【0159】
上述の各実施形態において、画像処理部91は、光の透過率に関して1つの検出条件で検出された光の検出信号に基づいて、試料SAにおける3次元の屈折率分布を求めているが、これに限られるものではない。画像処理部91は、光の透過率に関して複数の検出条件で検出された光の検出信号に基づいて、試料SAにおける3次元の屈折率分布を求めてもよい。例えば、画像処理部91は、ユーザーの設定等による2つの検出条件で検出された光の検出信号に基づくPOTFの線形和もしくは差分を求める。これにより、ユーザーの設定等による1つの検出条件で検出された光の検出信号に基づく場合よりも、広範囲の周波数帯域にわたり、高いPOTFの絶対値を得ることができる。そのため、コントラストと解像度(分解能)が共に高い、試料SAにおける3次元の屈折率分布の画像を生成することができる。なお、画像処理部91は、POTFを含む上記の式(10)と式(11)とを用いて、試料SAにおける3次元の屈折率分布n(x,y,z)を算出することが可能である。
【0160】
例えば、第1~第4実施形態に係る顕微鏡装置において、第1の検出条件では、光の透過率が図4に示す例において一次関数に従って変化する第1変調素子(一方向変化の第1変調素子)を照明瞳の位置に配置する。第2の検出条件では、光の透過率が一次関数に従って図4に示す例(第1の検出条件)とは逆方向に変化する第1変調素子(逆方向変化の第1変調素子)を照明瞳の位置に配置する。この変形例において、第1の検出条件で検出された光の検出信号に基づくPOTFと、第2の検出条件で検出された光の検出信号に基づくPOTFとの差分を求める。そうすると、第1の検出条件におけるPOTFの値と、第2の検出条件におけるPOTFの値とが互いに逆の符号になるため、POTFの絶対値が0にはならない周波数帯域の広さは大きく変化しないものの、POTFの絶対値が増加する。従って、コントラストに優れた試料SAにおける3次元の屈折率分布の画像を生成することができる。
【0161】
上述の各実施形態において、第1変調素子および第2変調素子は、平板の面内で光の透過率が変化する素子として、ガラス基板等の平行平板に、光の透過率を低減させることが可能な膜を蒸着させることにより形成されている素子を例示しているが、これに限られるものではない。例えば、第1変調素子と第2変調素子との少なくとも一方は、ガラス基板等の平行平板に、光の透過率を低減させることが可能な(遮光性のある)微小なドットパターンを形成したものであってもよい。この場合、既存のリソグラフィープロセス等を用いて、平行平板(ガラス基板)上に、粗密が異なるようにドットパターンを形成することにより、光の透過率を変えることが可能である(ドットパターンが密の領域は、粗の領域に比べて透過率が低くなる)。第1変調素子と第2変調素子との少なくとも一方は、上述したような光学素子に限らず、透過型液晶素子、反射型液晶素子、DMD(デジタルミラーデバイス)等のSLM(空間光変調器)を用いて構成されてもよい。SLMを用いる場合、SLMを、上述の各実施形態における光学素子と同様に、瞳(照明瞳と検出瞳の少なくとも一方)もしくは瞳と共役な位置に配置する。例えば、SLMとして透過型液晶素子を用いる場合は、素子の各画素の透過率を制御することで、所望の光の透過率の分布を設定することができる。また、SLMとしてDMDを用いる場合は、各ミラーの角度を制御することにより、所望の光の透過率の分布を設定することができる。
【0162】
なお、第1変調素子として、上述の各実施形態における光学素子(すなわち、光の透過性を有する平板)を用いる場合、制御部90は、複数の第1変調素子のうちいずれかに切り替えて照明瞳の位置に配置するように素子選択部を制御することで、照明瞳の面内における光の透過率の分布を変更してもよい。第2変調素子として、上述の各実施形態における光学素子(すなわち、光の透過性を有する平板)を用いる場合、制御部90は、複数の第2変調素子のうちいずれかに切り替えて検出瞳と共役な位置に配置するように素子選択部を制御することで、検出瞳と共役な面内における光の透過率の分布を変更してもよい。第1変調素子および第2変調素子としてSLMを用いる場合、制御部90は、SLMを制御することで、瞳の面内もしくは瞳と共役な面内における光の透過率の分布を変更する。そのため、制御部90により光の透過率の分布を変更するために、複数の素子や素子選択部を設ける必要がない。
【0163】
上述の各実施形態において、コレクタレンズ21等の「レンズ」は、説明の便宜上、各図において1枚のレンズとして記載されているが、これに限られるものではない。例えば、コレクタレンズ21等の「レンズ」は、複数枚のレンズから構成されてもよく、レンズとレンズ以外の既存の光学素子とを組み合わせた構成であってもよい。
【符号の説明】
【0164】
1 顕微鏡装置(第1実施形態)
2 ステージ
10 第1顕微鏡部 50 第2顕微鏡部
90 制御部
91 画像処理部(データ処理部)
101 顕微鏡装置(第2実施形態)
110 第1顕微鏡部 150 第2顕微鏡部
201 顕微鏡装置(第3実施形態)
210 第1顕微鏡部 250 第2顕微鏡部
301 顕微鏡装置(第4実施形態)
310 第1顕微鏡部 350 第2顕微鏡部
401 顕微鏡装置(第5実施形態)
410 第1顕微鏡部 450 第2顕微鏡部
501 顕微鏡装置(第6実施形態)
510 第1顕微鏡部 550 第2顕微鏡部
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