(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024169705
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】有機溶媒の製造方法
(51)【国際特許分類】
B01D 15/00 20060101AFI20241128BHJP
B01J 20/22 20060101ALI20241128BHJP
B01J 20/26 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
B01D15/00 J
B01J20/22 B
B01J20/26 B
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024167280
(22)【出願日】2024-09-26
(62)【分割の表示】P 2021504958の分割
【原出願日】2020-03-03
(31)【優先権主張番号】P 2019044162
(32)【優先日】2019-03-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】大橋 智也
(72)【発明者】
【氏名】吉田 豊之郎
(72)【発明者】
【氏名】佐々 卓
(57)【要約】
【課題】 半導体装置製造におけるリソグラフィー工程において、ウエハー上の微小欠陥の原因となる、金属不純物が低減された有機溶媒の製造方法、又は被精製有機溶媒の金属低減方法を提供する。
【解決手段】 フィルターカートリッジに通液する工程を含む、有機溶媒の製造方法であって、前記フィルターカートリッジが、
複数種類の濾過用基布を積層又は中空状内筒に巻き付けたフィルターカートリッジであって、
前記濾過用基布は、ポリオレフィン繊維に金属吸着基を化学結合した不織布であり、
前記濾過用基布は、不織布層A及び不織布層Bを含み、
前記不織布層Aは、金属吸着基としてスルホン酸基を化学結合したポリオレフィン繊維で構成され、
前記不織布層Bは、金属吸着基としてアミノ基、N-メチル-D-グルカミン基、イミノジ酢酸基、イミノジエタノール基、アミドキシム基、リン酸基、カルボン酸基及びエチレンジアミン三酢酸基からなる群より選択される少なくとも一種を化学結合したポリオレフィン繊維で構成されることを特徴とするフィルターカートリッジである、有機溶媒の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属除去用フィルターカートリッジに通液する工程を含む、有機溶媒の製造方法であって、前記金属除去用フィルターカートリッジが、
複数種類の濾過用基布を積層又は中空状内筒に巻き付けたフィルターカートリッジであって、
前記濾過用基布は、ポリオレフィン繊維に金属吸着基を化学結合した不織布であり、
前記濾過用基布は、不織布層A及び不織布層Bを含み、
前記不織布層Aは、金属吸着基としてスルホン酸基を化学結合したポリオレフィン繊維で構成され、
前記不織布層Bは、金属吸着基としてアミノ基、N-メチル-D-グルカミン基、イミノジ酢酸基、イミノジエタノール基、アミドキシム基、リン酸基、カルボン酸基及びエチレンジアミン三酢酸基からなる群より選択される少なくとも一種を化学結合したポリオレフィン繊維で構成されることを特徴とするフィルターカートリッジである、有機溶媒の製造方法。
【請求項2】
さらに、微粒子除去用フィルターカートリッジに通液する工程を含む、請求項1に記載の有機溶媒の製造方法。
【請求項3】
上記微粒子除去用フィルターの材質が、ポリエチレン及びナイロンからなる群より選ばれる少なくとも一種である、請求項2に記載の有機溶媒の製造方法。
【請求項4】
上記有機溶媒が、レジスト下層膜形成用として用いられる有機溶媒である、請求項1~3何れか1項に記載の有機溶媒の製造方法。
【請求項5】
上記有機溶媒が、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテル、γ―ブチロラクトン、乳酸エチル、乳酸ブチル、及びシクロヘキサノンからなる群より選択される少なくとも一種である、請求項4に記載の有機溶媒の製造方法。
【請求項6】
被精製有機溶媒を金属除去用カートリッジフィルターに通液して金属を低減する方法であって、
前記フィルターカートリッジは複数種類の濾過用基布を積層又は中空状内筒に巻き付けており、
前記濾過用基布は、ポリオレフィン繊維に金属吸着基を化学結合した不織布であり、
前記濾過用基布は、不織布層A及び不織布層Bを含み、
前記不織布層Aは、金属吸着基としてスルホン酸基を化学結合したポリオレフィン繊維で構成され、
前記不織布層Bは、金属吸着基としてアミノ基、N-メチル-D-グルカミン基、イミノジ酢酸基、イミノジエタノール基、アミドキシム基、リン酸基、カルボン酸基及びエチレンジアミン三酢酸基からなる群より選択される少なくとも一種を化学結合したポリオレフィン繊維で構成されているフィルターカートリッジである、被精製有機溶媒の金属低減方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
半導体装置製造におけるリソグラフィー工程において、欠陥の原因となる、金属不純物が低減された有機溶媒の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置製造におけるリソグラフィー工程において使用される有機溶媒は、ウエハー上の微小欠陥(例えば1~100nm程度、ディフェクト等と呼ばれる)の原因となる金属不純物の低減が求められている。特許文献1には、金属の吸着除去効率が高いフィルターが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
半導体装置製造におけるリソグラフィー工程において、ウエハー上の微小欠陥の原因となる、金属不純物が低減された有機溶媒の製造方法及び有機溶媒の金属低減方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は以下を包含する。
[1] 金属除去用フィルターカートリッジに通液する工程を含む、有機溶媒の製造方法であって、前記金属除去用フィルターカートリッジが、
複数種類の濾過用基布を積層又は中空状内筒に巻き付けたフィルターカートリッジであって、
前記濾過用基布は、ポリオレフィン繊維に金属吸着基を化学結合した不織布であり、
前記濾過用基布は、不織布層A及び不織布層Bを含み、
前記不織布層Aは、金属吸着基としてスルホン酸基を化学結合したポリオレフィン繊維で構成され、
前記不織布層Bは、金属吸着基としてアミノ基、N-メチル-D-グルカミン基、イミノジ酢酸基、イミノジエタノール基、アミドキシム基、リン酸基、カルボン酸基及びエチレンジアミン三酢酸基からなる群より選択される少なくとも一種を化学結合したポリオレフィン繊維で構成されることを特徴とするフィルターカートリッジである、有機溶媒の製造方法。
[2] さらに、微粒子除去用フィルターカートリッジに通液する工程を含む、[1]に記載の有機溶媒の製造方法。
[3] 上記微粒子除去用フィルターの材質が、ポリエチレン及びナイロンからなる群より選ばれる少なくとも一種である、[2]に記載の有機溶媒の製造方法。
[4] 上記有機溶媒が、レジスト下層膜形成用として用いられる有機溶媒である、[1]~[3]のいずれかに記載の有機溶媒の製造方法。
[5] 上記有機溶媒が、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテル、γ―ブチロラクトン、乳酸エチル、乳酸ブチル、及びシクロヘキサノンからなる群より選択される少なくとも一種である、[4]に記載の有機溶媒の製造方法。
[6] 被精製有機溶媒を金属除去用カートリッジフィルターに通液して金属を低減する方法であって、
前記フィルターカートリッジは複数種類の濾過用基布を積層又は中空状内筒に巻き付けており、
前記濾過用基布は、ポリオレフィン繊維に金属吸着基を化学結合した不織布であり、
前記濾過用基布は、不織布層A及び不織布層Bを含み、
前記不織布層Aは、金属吸着基としてスルホン酸基を化学結合したポリオレフィン繊維で構成され、
前記不織布層Bは、金属吸着基としてアミノ基、N-メチル-D-グルカミン基、イミノジ酢酸基、イミノジエタノール基、アミドキシム基、リン酸基、カルボン酸基及びエチレンジアミン三酢酸基からなる群より選択される少なくとも一種を化学結合したポリオレフィン繊維で構成されているフィルターカートリッジである、被精製有機溶媒の金属低減方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明記載のフィルターカートリッジを用いて、有機溶媒の製造を行うことで、金属不純物が大幅に低減された有機溶媒を製造することができる。当該有機溶媒を用いることで半導体製造工程におけるリソグラフィー工程での様々な微小欠陥(ディフェクト)を低減させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
<有機溶媒の製造方法>
本発明の有機溶媒の製造方法は、常温で溶液状である被精製有機溶媒を下記に詳述する金属除去用フィルターカートリッジに通液する工程を含む。
【0008】
上記通液工程は例えば、被精製有機溶媒を市販品として入手し、その有機溶媒を使用する製造設備(製造用容器)に直結(入口と出口の2か所)している金属除去用フィルターカートリッジに通液することで行うことができる。上記通液工程は、1回又は2回以上でもよい。上記通液工程は、ポンプを使用した循環ろ過であることが好ましい。本願の金属除去用フィルターカートリッジに加え、直列で連結された微粒子除去用フィルターカートリッジの両方に有機溶媒を通液して循環させることが好ましい。循環に必要な時間は、例えば3~144時間である。ろ過流量は例えば、1~1000L/時である。
【0009】
<被精製有機溶媒>
本願で使用される被精製有機溶媒は、例えば下記に記載されるリソグラフィー工程に一般的に使用される有機溶媒であることが推奨されるが、これらに限定されるわけではない。
【0010】
前記被精製有機溶媒としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテート、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、4-メチル-2-ペンタノール、2―ヒドロキシイソ酪酸メチル、2―ヒドロキシイソ酪酸エチル、エトキシ酢酸エチル、酢酸2-ヒドロキシエチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、2-ヘプタノン、メトキシシクロペンタン、アニソール、γ-ブチロラクトン、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、及びN,N-ジメチルアセトアミドが挙げられる。これらの溶剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0011】
これらの溶媒の中でプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテル、γ―ブチロラクトン、乳酸エチル、乳酸ブチル、及びシクロヘキサノン等が好ましい。特にプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート及びプロピレングリコールモノエチルエーテルが好ましい。
【0012】
<フィルターカートリッジ>
本願のフィルターカートリッジとしては、特開2018-167223号公報に記載されたものが好ましい。
【0013】
本発明のフィルターカートリッジは、複数種類の濾過用基布を積層又は中空状内筒に巻き付けたフィルターカートリッジであって、前記濾過用基布は、ポリオレフィン繊維に金属吸着基を化学結合した不織布であり、前記濾過用基布は、不織布層A及び不織布層Bを含み、前記不織布層Aは、金属吸着基としてスルホン酸基を化学結合したポリオレフィン繊維で構成され、前記不織布層Bは、金属吸着基としてアミノ基、N-メチル-D-グルカミン基、イミノ二酢酸基(イミノジ酢酸基)、イミノジエタノール基、アミドキシム基、リン酸基、カルボン酸基及びエチレンジアミン三酢酸基からなる群より選択される少なくとも一種を化学結合したポリオレフィン繊維で構成されることを特徴とする。
【0014】
本発明は、複数種類の濾過用基布を積層又は中空状内筒に巻き付けたフィルターカートリッジであって、前記濾過用基布は、ポリオレフィン繊維に金属吸着基を化学結合した不織布であり、前記濾過用基布は、不織布層A及び不織布層Bを含む。そして、前記不織布層Aは、金属吸着基としてスルホン基を化学結合したポリオレフィン繊維で構成され、前記不織布層Bは、金属吸着基としてアミノ基、N-メチル-D-グルカミン基、イミノ二酢酸基(イミノジ酢酸基)、イミノジエタノール基、アミドキシム基、リン酸基、カルボン酸基及びエチレンジアミン三酢酸基からなる群より選択される少なくとも一種を化学結合したポリオレフィン繊維で構成される。これにより効率よく金属を除去できる。なお、異なる種類の濾過用基布を結合して1枚の濾過用基布にしたものも、複数種類の濾過用基布に含まれる。
【0015】
本発明においては、不織布層Bはイミノジエタノール基を化学結合したポリオレフィン繊維で構成されるのが特に好ましい。金属の除去効率が高いためである。吸着できる金属については、スルホン酸基は主にNa、Cu、Kを吸着し、イミノジエタノール基は主にCr、Al、Feを吸着する。
【0016】
不織布A及びBを構成するポリオレフィン繊維は長繊維であるのが好ましい。長繊維不織布は繊維屑が発生しにくく、フィルター性能が高いためである。中でも面積当たりの質量(目付け)が10~100g/m2のメルトブロー長繊維不織布が好ましい。
【0017】
前記不織布A及びBを構成するポリオレフィン繊維の単繊維平均直径は0.2~10μmであるのが好ましい。前記の範囲であれば、フィルター性能が高いことが期待される。加えて、表面積(比表面積)の増大ができ、グラフト重合反応の基材表面増ともなるので、グラフト率を高めることも期待できる。
【0018】
ポリオレフィン繊維は、ポリプロピレン、プロピレンとエチレンの共重合体、ポリエチレン、及びエチレンと炭素数4以上の他のα-オレフィンとの共重合体からなる群より選ばれる少なくとも一種が好ましく、高密度ポリエチレンが特に好ましい。これらのポリマーは不活性であり、薬液に対して安定であり、グラフト重合が可能である。
【0019】
前記フィルターカートリッジは、中空状内筒及び濾過用基布を含むフィルターカートリッジであって、前記濾過用基布は、ポリオレフィン繊維に金属吸着基を化学結合した不織布であり、前記濾過用基布は、前記中空状内筒に巻き付けられることにより積層構造を形成しているフィルターカートリッジが好ましい。
【0020】
本発明のフィルターは、前記フィルターカートリッジを組み込んだフィルターである。例えば、フィルターカートリッジは内筒に濾過用基布が巻き付けられ、容器に収納されている。フィルターカートリッジをフィルターの容器に組み込む際には、例えば、容器にフィルターカートリッジを収納した状態でフィルターに組み込む。なお、カートリッジ型フィルターの場合は、フィルターカートリッジのみを交換することで、フィルター機能を再生することができる。フィルターの容器ごと交換するような、例えばカプセル型フィルターのような場合も、本発明に含むものである。カプセル型フィルターのような場合は、フィルターカートリッジに相当する部分は濾過部となる。
【0021】
次にポリオレフィン繊維に各種官能基を化学結合させる方法を説明する。その方法としては、例えば、ポリオレフィン繊維に電子線、γ線等の放射線を照射した後にGMAなどの反応性モノマ-を含むエマルション液と接触させる方法、ポリオレフィン繊維を反応性モノマーを含むエマルション液と接触させた後に電子線、γ線等の放射線を照射して、反応性モノマーをポリオレフィン繊維にグラフト重合させる方法などがある。電子線を照射する場合、通常は1~200kGy、好ましくは5~100kGy、より好ましくは10~50kGyの照射量が達成されればよい。照射は、窒素雰囲気下で行うことが好ましい。電子線照射装置としては市販のものが使用可能であり、例えば、エリアビーム型電子線照射装置としてEC250/15/180L(岩崎電気(株)社製)、EC300/165/800(岩崎電気(株)社製)、EPS300((株)NHVコーポレーション製)などが使用できる。
【0022】
前記グラフト重合法としては、具体的には、例えば、液相グラフト重合法が挙げられ、不織布を、γ線や電子線などの放射線照射によって活性化した後、水、界面活性剤および反応性モノマーを含むエマルションに浸漬して、前記の不織布基材にグラフト重合を完了させる。次に、前記基材に形成されたグラフト鎖に、スルホン酸基、アミノ基、N-メチル-D-グルカミン基やイミノ二酢酸基(イミノジ酢酸基)、イミノジエタノール基、アミドキシム基、リン酸基、カルボン酸基、エチレンジアミン三酢酸基などの機能性官能基、すなわちイオン交換基及び/又はキレート基を導入する。本発明においては、特に液相グラフト重合法に限定されず、モノマーの蒸気に基材を接触させて重合を行う気相グラフト重合法、基材をモノマー溶液に浸漬した後、モノマー溶液から取り出して気相中で反応を行わせる含浸気相グラフト重合法なども用いることができる。代表的な機能性官能基の化学式として(化1)にスルホン酸基(SC基)、(化2)にイミノジエタノール基(IDE基)、(化3)にイミノジ酢酸基(IDA基)、(化4)にN-メチル-D-グルカミン基(NMDG基)を示す。
【0023】
【0024】
【0025】
【0026】
【0027】
但し、(化1)~(化3)におけるRは、下記のポリエチレン(PE)+GMA(化5)又はポリプロピレン(PP)+GMA(化6)である。(化4)におけるRはメチル基である。
【0028】
【0029】
【0030】
但し、前記(化5)~(化6)におけるn,mは1以上の整数である。
【0031】
<微粒子除去用フィルター>
本発明の有機溶媒の製造方法は、上記被精製有機溶媒を上記フィルターカートリッジに通液後、さらに微粒子除去用フィルターを通液させることが好ましい。微粒子除去用フィルターは自体公知のものを使用できる。微粒子除去用フィルターの材質としては、ポリエチレン及びナイロンからなる群より選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。
【0032】
微粒子除去用フィルターの孔径は通常30nm以下であり、好ましくは、例えば0.1nm~30nm、例えば0.1nm~20nm、又は例えば1nm~10nmである。
【0033】
<金属低減方法>
本願の金属低減方法は、上記記載の被精製有機溶媒をフィルターカートリッジでろ過して金属を低減する方法であって、
前記カートリッジフィルターは複数種類の濾過用基布を積層又は中空状内筒に巻き付けており、
前記濾過用基布は、ポリオレフィン繊維に金属吸着基を化学結合した不織布であり、
前記濾過用基布は、不織布層A及び不織布層Bを含み、
前記不織布層Aは、金属吸着基としてスルホン酸基を化学結合したポリオレフィン繊維で構成され、
前記不織布層Bは、金属吸着基としてアミノ基、N-メチル-D-グルカミン基、イミノ二酢酸基(イミノジ酢酸基)、イミノジエタノール基、アミドキシム基、リン酸基、カルボン酸基及びエチレンジアミン三酢酸基からなる群より選択される少なくとも一種を化学結合したポリオレフィン繊維で構成されているフィルターカートリッジである、被精製有機溶媒の金属低減方法である。
【0034】
この工程を経ることにより、被精製有機溶媒に含まれる、原料又は溶媒由来の金属不純物を低減し、リソグラフィー工程での欠陥を少なくすることができる。
各種金属不純物(例えばNa、Cu、Cr、Al、Fe等)が上記金属低減方法により、例えば0.5ppb以下、例えば0.4ppb以下まで低減できる。
上記金属不純物含有量は、例えば実施例に記載の方法で求められる。
【実施例0035】
以下に実施例等を参照して本発明を更に詳しく説明するが、本発明は以下の実施例等によってなんら制限を受けるものではない。
【0036】
<実施例1>
被精製有機溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテル(PM-P:KHネオケム株式会社製)20Lを特開2018-167223に記載のカートリッジフィルター(10inch)1本(倉敷繊維加工株式会社製)を用いて毎分3Lの流量で100分間ろ過を実施した。ろ過後の有機溶媒の金属含有量をICP-MS(Agilent8800:アジレントテクノロジー株式会社製)で測定した。
【0037】
<比較例1>
実施例1に使用した被精製有機溶媒をろ過することなく、同様の方法で金属含有量を測定した。
【0038】
<比較例2>
実施例1のカートリッジフィルターをカートリッジフィルタ(ナイロンフィルターABD1ANM3EH1(20nmナイロンフィルター):日本ポール株式会社製)に変えた以外は実施例1と同様の方法でろ過を実施し、同様の方法で金属含有量を測定した。
【0039】
<比較例3>
実施例1のカートリッジフィルターを強酸性イオン交換樹脂(XSC-1115-H:室町ケミカル株式会社製)20kgに変えて4時間イオン交換した以外は実施例1と同様の方法でろ過を実施し、同様の方法で金属含有量を測定した。
【0040】
<有機溶媒中の金属濃度>
実施例1の処理方法を実施したあとの金属濃度を測定した結果を表1に示す。
【0041】
【0042】
表1の結果より、実施例1は金属濃度低減に効果的であることが示された。
【0043】
<実施例2>
被精製有機溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(EL-PGMEA:東洋合成工業株式会社製)20Lを特開2018-167223に記載のカートリッジフィルター(10inch)1本(倉敷繊維加工株式会社製)を用いて毎分2Lの流量で50分間ろ過を実施した。ろ過後の溶液の金属含有量をICP-MS(Agilent8800:アジレントテクノロジー株式会社製)で測定した。
【0044】
<比較例4>
実施例1に使用した溶媒をろ過することなく、同様の方法で金属含有量を測定した。
【0045】
【0046】
表2の結果より、実施例2は金属濃度低減に効果的であることが示された。