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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024169887
(43)【公開日】2024-12-06
(54)【発明の名称】無線電力伝送システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/05 20160101AFI20241129BHJP
   H02J 50/70 20160101ALI20241129BHJP
【FI】
H02J50/05
H02J50/70
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023086724
(22)【出願日】2023-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114292
【弁理士】
【氏名又は名称】来間 清志
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(72)【発明者】
【氏名】木下 岳
(57)【要約】
【課題】送電カプラ及び受電カプラの小型化が可能な無線電力伝送システムを提供すること。
【解決手段】無線電力伝送システム1は、電源部30からの電力を無線で送電する送電カプラ10と、電界共振によって送電カプラ10から電力を無線で受電する受電カプラ20と、受電カプラ20によって受電された電力を直流電力に整流する整流部40と、を備え、送電カプラ10と受電カプラ20とにより形成される共振回路は、2つの共振周波数からなる双峰性の伝送特性を示し、低周波側の共振周波数は、無線送電に用いる搬送波周波数に設定される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源からの電力を無線で送電する送電カプラと、
電界共振によって前記送電カプラから電力を無線で受電する受電カプラと、
前記受電カプラによって受電された電力を直流電力に整流する整流部と、を備え、
前記送電カプラと前記受電カプラとにより形成される共振回路は、2つの共振周波数からなる双峰性の伝送特性を示し、
低周波側の前記共振周波数は、無線送電に用いる搬送波周波数に設定される無線電力伝送システム。
【請求項2】
前記共振回路は、高周波側の前記共振周波数が前記搬送波周波数の整数倍の周波数に一致しないように構成される請求項1に記載の無線電力伝送システム。
【請求項3】
前記送電カプラの直前の前段部に配置され、無線送電に用いる搬送波の高調波成分の通過を抑制する第1フィルタ部、および、前記受電カプラと前記整流部の間に配置され、前記整流部から前記受電カプラへ反射される信号の高調波成分の通過を抑制する第2フィルタ部の少なくともいずれか一方、または、双方を備える請求項1記載の無線電力送電システム。
【請求項4】
前記整流部は、無線送電に用いる搬送波の高調波成分の放射を抑制する金属製の収容部に収容され、
前記受電カプラは、前記収容部から所定の間隔を空けて配置される請求項1に記載の無線電力伝送システム。
【請求項5】
前記整流部に電気的に接続可能な第1接続部と前記整流部からの直流電力が供給される負荷に電気的に接続可能な第2接続部とを有し、前記整流部と前記負荷との間に配置される接続ユニットを備える請求項1に記載の無線電力伝送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線電力伝送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話や電気自動車などの普及に伴い、無線で電力を供給する無線電力伝送システムの開発が積極的になされている。例えば送電側と受電側に共振回路を形成し、電界や磁界等によって、送電側の送電カプラから受電側の受電カプラに無線で電力を送電する技術が知られている。
【0003】
例えば特許文献1には、電力の電源周波数に対する伝送特性の値が二つのピーク帯域を有するように設定し、給電モジュールに供給する電力の電源周波数を伝送特性の二つのピーク帯域の何れかに対応する電源周波数帯域に設定し、電力を供給する無線電力伝送装置が記載されている。特許文献2には、送電装置と複数の受電装置とを備え、複数の受電装置は、電圧利得の周波数特性が2つの極大値を有する双峰性となる、第1等価抵抗値の負荷を有する第1受電装置と、周波数特性が単峰性となる、第2等価抵抗値の負荷を有する第2受電装置と、を含むワイヤレス給電システムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-80295号公報
【特許文献1】特表2016-190095号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、電界共振によって送電カプラから受電カプラに電力を無線送電する場合、共振回路の共振周波数と電源の交流電力等の搬送波の周波数とを一致させる必要があり、カプラの構成等を調整する必要がある。特許文献1及び特許文献2の技術では、電力の伝送効率を高めることができるものの、装置を小型化するという点で改善の余地があった。
【0006】
本発明は、送電カプラ及び受電カプラの小型化が可能な無線電力伝送システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)無線電力伝送システムは、交流電源からの電力を無線で送電する送電カプラと、電界共振によって前記送電カプラから電力を無線で受電する受電カプラと、前記受電カプラによって受電された電力を直流電力に整流する整流部と、を備え、前記送電カプラと前記受電カプラとにより形成される共振回路は、2つの共振周波数からなる双峰性の伝送特性を示し、低周波側の前記共振周波数は、無線送電に用いる搬送波周波数に設定される。
【0008】
(2)(1)に記載の無線電力伝送システムにおいて、前記共振回路は、高周波側の前記共振周波数が前記搬送波周波数の整数倍の周波数に一致しないように構成される。
【0009】
(3)(1)又は(2)に記載の無線電力伝送システムは、前記送電カプラの直前の前段部に配置され、無線送電に用いる搬送波の高調波成分の通過を抑制する第1フィルタ部、および、前記受電カプラと前記整流部の間に配置され、前記整流部から前記受電カプラへ反射される信号の高調波成分の通過を抑制する第2フィルタ部の少なくともいずれか一方、または、双方を備える。
【0010】
(4)(1)~(3)のいずれか1つに記載の無線電力伝送システムにおいて、前記整流部は、無線送電に用いる搬送波の高調波成分の放射を抑制する金属製の収容部に収容され、前記受電カプラは、前記収容部から所定の間隔を空けて配置される。
【0011】
(5)(1)~(4)のいずれか1つに記載の無線電力伝送システムは、前記整流部に電気的に接続可能な第1接続部と前記整流部からの直流電力が供給される負荷に電気的に接続可能な第2接続部とを有し、前記整流部と前記負荷との間に配置される接続ユニットを備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、送電カプラ及び受電カプラの小型化が可能な無線電力伝送システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1実施形態に係る無線電力伝送システムのブロック図である。
図2】第1実施形態に係る無線電力伝送システムの送電カプラ及び受電カプラの回路構成を示す模式図である。
図3】第1実施形態に係る無線電力伝送システムの送電カプラと受電カプラとの間における電力の通過率と周波数との関係を示す図である。
図4】送電カプラと受電カプラとの間における電力の通過率と整流部からの反射電力に含まれる信号の周波数の一例を示す図である。
図5】無線電力伝送システムの高周波側の共振周波数が搬送波に伴う高調波の周波数と一致する場合における整流部から受電カプラに送信される反射電力の様子を示す模式図である。
図6】第1実施形態に係る無線電力伝送システムの送電カプラと受電カプラとの間における電力の通過率と整流部からの反射電力に含まれる信号の周波数との関係を示す図である。
図7】第2実施形態に係る無線電力伝送システムのブロック図である。
図8】第2実施形態に係る無線電力伝送システムのフィルタ部の遮断周波数を示す図である。
図9】第3実施形態に係る無線電力伝送システムのブロック図である。
図10】第3実施形態に係る無線電力伝送システムが適用された移動体と受電カプラ及び整流部を示す模式図である。
図11図10における受電カプラ及び整流部とその周囲を示す拡大模式図である。
図12図10に示す移動体における受電装置の取付位置の一例を示す模式図である。
図13図10に示す移動体における受電装置の取付位置の一例を示す模式図である。
図14】第4実施形態に係る無線電力伝送システムのブロック図である。
図15】第4実施形態に係る無線電力伝送システムの充電ユニットと接続ユニットと負荷を示す模式図である。
図16】第4実施形態に係る無線電力伝送システムの充電ユニットと接続ユニットと負荷を示す分解模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態に係る無線電力伝送システムについて説明する。なお、以下の実施の形態により本発明が限定されるものでない。また、以下の説明において参照する各図は、本開示の内容を理解でき得る程度に形状、大きさ、及び位置関係を概略的に示してあるに過ぎない。即ち、本発明は、各図で例示された形状、大きさ、及び位置関係のみに限定されるものでない。
【0015】
第1実施形態に係る無線電力伝送システム1の全体的な構成について図1及び図2を参照しながら説明する。図1は、無線電力伝送システム1のブロック図である。図2は、無線電力伝送システム1の送電カプラ及び受電カプラの回路構成を示す模式図である。
【0016】
無線電力伝送システム1は、送電装置2と、受電装置3と、を備え、電界共振によって送電装置2から受電装置3に無線で電力を伝送するシステムである。
【0017】
まず、送電装置2について説明する。送電装置2は、図1に示すように、電源部(電源)30と、送電カプラ10と、を有する。
【0018】
電源部30は、交流電力を生成して送電カプラ10に供給する交流電源である。電源部30は、例えばMHz帯域の高周波電源によって構成される。
【0019】
また、電源部30は、フィルタ回路、整合回路等も含む概念であり、送電装置2から受電装置3への無線送電に用いる搬送波の周波数(以下、搬送波周波数という)を設定する機能も有する。
【0020】
送電カプラ10は、電源部30からの交流電力を無線で受電装置3に送電する。送電カプラ10は、平板状の第1電極11と、平板状の第2電極12と、コイル13と、を有し、伝送線14を介して電源部30に接続される。
【0021】
第1電極11と第2電極12は、図2に示すように、同一平面上に所定の間隔を空けて並ぶように配置される。第1電極11と第2電極12とは、それぞれ伝送線14を介してコイル13と電源部30に接続される。
【0022】
コイル13は、第1電極11と第2電極12と電源部30のそれぞれと伝送線14を介して接続される。
【0023】
第1電極11と第2電極12とコイル13は、送電側収容部(図示省略)の内部に収容される。送電側収容部は、後述する受電側収容部(図示省略)と嵌合部(図示省略)を介して着脱可能に構成される筐体であってもよい。
【0024】
受電装置3について説明する。受電装置3は、図1に示すように、受電カプラ20と、整流部40と、を有し、負荷50に接続される。負荷50とは、例えば蓄電池であり、産業機器や携帯電子機器等に採用されている。産業機器としては、電気自動車、携帯電子機器としては、ラップトップパソコン、スマートフォン、携帯音楽プレーヤ等が挙げられる。
【0025】
受電カプラ20は、平板状の第3電極21と、平板状の第4電極22と、コイル23と、を有し、伝送線24を介して整流部40に接続される。
【0026】
第3電極21と第4電極22は、図2に示すように、同一平面上に所定の間隔を空けて並ぶように配置される。第3電極21と第4電極22とは、それぞれ伝送線24を介してコイル23と整流部40に接続される。
【0027】
第3電極21と第4電極22とコイル23は、受電側収容部の内部に収容される。受電側収容部は、例えば送電側収容部と嵌合部(図示省略)を介して着脱可能に構成される筐体であってもよい。
【0028】
受電側収容部の嵌合部と送電側収容部の嵌合部を嵌合して送電カプラ10と受電カプラ20とを接続すると、図2に示すように、第1電極11と第3電極21とが所定の距離d1を空けて対向し、第2電極12と第4電極22とが距離d2を空けて対向した状態となる。この状態で、受電装置3に負荷50を接続し、電源部30から交流電力を流すと、送電カプラ10と受電カプラ20が共振回路を形成し、電界共振方式によって送電カプラ10から受電カプラ20に無線で電力が伝送される。以降の説明において、送電カプラ10と受電カプラ20とが接続し、第1電極11と第3電極21とが所定の距離d1を空けて対向し、第2電極12と第4電極22とが距離d2を空けて対向した状態を「電界共振可能状態」という。なお、距離d1と距離d2は略等しい距離である。
【0029】
整流部40は、受電カプラ20によって送電カプラ10から受電した交流電力を直流電力に整流する。整流部40は、例えばダイオードやトランジスタ等の非線形素子を含む回路によって構成される。整流部40は、伝送線44を介して負荷50と接続可能であり、整流した直流電力を接続された負荷50に供給する。
【0030】
次に、無線電力伝送システム100の無線による電力伝送の詳細について図2を参照しながら説明する。
【0031】
電界共振可能状態においては、第1電極11と第3電極21の間と、第2電極12と第4電極22との間に容量Cが形成されており、第1電極11と第2電極12と、第3電極21と第4電極22との間に容量Cが形成されている。電源部30からは交流電力が伝送されるので、容量C及び容量Cに電荷は蓄積され、あるいは放出されることで送電カプラ10から受電カプラ20に電力が伝送され、負荷50に電力が供給される。即ち、コイル13、23によるインダクタンスLや容量C、C等によって共振回路を形成し、電界共振方式によって電力を伝送している。
【0032】
ここで、電源部30から供給される電力を効率よく負荷に伝えるためには、電源部30から供給される電力の周波数、即ち搬送波周波数と、送電カプラ10及び受電カプラ20によって形成される共振回路の共振周波数とを合わせる必要がある。即ち、送電カプラ10と受電カプラ20によって形成される共振回路の共振周波数と搬送波周波数とを一致又は略一致させる必要がある。
【0033】
本実施形態に係る無線電力伝送システム1の送電カプラ10及び受電カプラ20によって形成される共振回路は、以下(a)~(c)の特徴を有する。
(a)2つの共振周波数からなる双峰性の伝送特性を示す。
(b)2つの共振周波数のうち低周波側の共振周波数ωr1が搬送波周波数に設定される。
(c)2つの共振周波数のうち高周波側の共振周波数ωr2が搬送波周波数の整数倍の周波数に一致しないように構成される。なお、搬送波周波数の整数倍の周波数とは、高調波の周波数を意味する。
【0034】
まず無線電力伝送システム1の共振回路の(a)、(b)の特徴について図3を参照しながら説明する。図3は、無線電力伝送システム1の送電カプラ10と受電カプラ20との間における電力の通過率と周波数の関係を示す図である。
【0035】
図3に示すように、無線電力伝送システム1の送電カプラ10及び受電カプラ20によって形成される共振回路は、2つの共振周波数からなる双峰性の伝送特性を示す。また無線電力伝送システム1では、2つの共振周波数のうち低周波側の共振周波数ωr1が無線伝送に用いる搬送波周波数に設定されるように第1電極11、第2電極12、第3電極21、第4電極22の大きさ、コイル13、23の大きさ、第1電極11と第3電極21との間の距離d1や第2電極12と第4電極22との間の距離d2、第1電極11と第2電極12との間の距離d3、第3電極21と第4電極22との間の距離d4が設定される。
【0036】
共振回路は、送電カプラ10及び受電カプラ20の構成やこれらの間の距離に応じて異なる伝送特性を示す。例えば共振回路は、距離d1及び距離d2が遠く、容量Cが容量Cに比べて小さい場合、1つの共振周波数からなる単峰性の伝送特性を示す。本実施形態では、距離d1及び距離d2を近づけて容量Cを大きな値にすることで、共振回路が2つの共振周波数からなる双峰性の伝送特性を示すように設定している。
【0037】
共振回路が単峰性の伝送特性を示す場合の共振周波数ωrは、以下の式(1)で表される。
【数1】
【0038】
これに対して、本実施形態の送電カプラ10及び受電カプラ20によって形成される共振回路の2つの共振周波数のうち低周波側の共振周波数ωr1は以下の式(2)で表され、高周波側の共振周波数ωr2は以下の式(3)で表される。
【数2】
【0039】
【数3】
【0040】
無線電力伝送システム1では、式(1)及び式(2)に示すように、共振周波数が同じ場合、式(2)で表される共振周波数ωr1の方が式(1)で表される共振周波数ωrよりも容量Cが存在する分だけインダクタンスLを小さくすることができる。即ち、本実施形態によれば、共振周波数ωrを搬送波周波数に設定する場合よりも共振周波数ωr1を搬送波周波数に設定する方がコイル13及びコイル23のサイズを小さくすることができるので、送電カプラ10及び受電カプラ20の小型化が可能となる。
【0041】
次に、無線電力伝送システム1の共振回路の(c)の特徴について図4図6を参照しながら説明する。図4は、無線電力伝送システム1の送電カプラ10と受電カプラ20との間における電力の通過率と整流部40からの反射電力の周波数を示す図である。図5は、無線電力伝送システム1の高周波側の共振周波数が搬送波に伴う高調波の周波数と一致する場合における整流部40から受電カプラ20に送信される反射電力の様子を示す模式図である。図6は、無線電力伝送システム1の送電カプラ10と受電カプラ20との間における通過特性と整流部40からの反射電力の周波数との関係を示す図である。
【0042】
受電カプラ20から整流部40に搬送波で電力を送電した場合、整流部40に含まれる非線形素子によって搬送波形が歪み、整流部40からの反射電力に図4に示すような高調波が含まれる。高調波は、搬送波の整数倍の周波数を有する信号である。図4では、搬送波の5次高調波まで示されている。
【0043】
図4では、送電カプラ10及び受電カプラ20によって形成される共振回路の高周波側の共振周波数ωr2が搬送波の高調波(図4では3次高調波)の周波数と一致している。この場合、図5に示すように、整流部40から反射された高調波を含む反射電力が受電カプラ20に到達すると、受電カプラ20から高調波成分が放射されてしまう。
【0044】
これに対して本実施形態では、図6に示すように、共振回路の共振周波数のうち共振周波数ωr2が搬送波周波数の整数倍と一致しないように構成される。これにより、整流部40から反射された高調波を含む反射電力を受電カプラ20が受電した場合における放射電磁界の発生を抑制できる。
【0045】
次に第2実施形態に係る無線電力伝送システム1Aについて図7及び図8を参照しながら説明する。なお、以下の説明において、第1実施形態と同じ構成については詳細な説明を省略する。
【0046】
無線電力伝送システム1Aは、電源部30、フィルタ部(第1フィルタ部)60、及び送電カプラ10を有する送電装置2Aと、受電カプラ20、フィルタ部(第2フィルタ部)70、及び整流部40を有する受電装置3Aを備える。第2実施形態の無線電力伝送システム1Aは、送電カプラ10及び受電カプラ20によって形成される共振回路の特徴と、フィルタ部60及びフィルタ部70を備える点が主に異なる。
【0047】
無線電力伝送システム1Aの送電カプラ10及び受電カプラ20によって形成される共振回路は、上述した(a)(b)の特徴を有するものの、(c)の特徴を有していなくてもよい。即ち無線電力伝送システム1Aの共振回路は、2つの共振周波数のうち共振周波数ωr2が搬送波周波数の整数倍の周波数に一致する構成であってもよい。
【0048】
フィルタ部60は、電源部30と送電カプラ10との間、即ち送電カプラ10の直前の前段部に配置され、搬送波に伴う高調波の通過を抑制するローパスフィルタである。フィルタ部60の遮断周波数は、図8に示すように共振周波数ωr1と共振周波数ωr2との間に設定される。電源部30から送電される電力は、フィルタ部60を介して送電カプラ10に供給される。これにより、搬送波に含まれる高調波を減衰させて送電カプラ10に電力を供給することができる。
【0049】
フィルタ部70は、受電カプラ20と整流部40との間に配置され、搬送波に伴う高調波の通過を抑制するローパスフィルタである。フィルタ部60の遮断周波数は、図8に示すように共振周波数ωr1と共振周波数ωr2との間に設定される。整流部40から反射される反射電力は、フィルタ部70を介して受電カプラ20に到達する。
【0050】
ここで、無線電力伝送システム1Aの共振回路の共振周波数ωr2が搬送波周波数の整数倍の周波数に一致している場合、整流部40から反射された高調波を含む反射電力を受電カプラ20に到達すると、受電カプラ20から高調波の放射電磁界が発生する。本実施形態では、受電カプラ20に送電される反射電力の搬送波に伴う高調波がフィルタ部70で減衰されるので、受電カプラ20に到達する高調波を低減でき、受電カプラ20における高調波の放射電磁界の発生を抑制できる。
【0051】
次に、第3実施形態に係る無線電力伝送システム1Bについて図9図11を参照しながら説明する。なお、以下の説明において、第1実施形態と同じ構成については詳細な説明を省略する。図9は、第3実施形態に係る無線電力伝送システム1Bのブロック図である。図10は、第3実施形態に係る無線電力伝送システム1Bが適用された移動体4と受電カプラ20及び整流部40を示す模式図である。図11は、図10における受電カプラ20及び整流部40とその周囲を示す拡大模式図である。
【0052】
無線電力伝送システム1Bは、電源部30、及び送電カプラ10を有する送電装置2Bと、受電カプラ20及び整流部40を有する受電装置3Bを備える。第3実施形態の無線電力伝送システム1Bは、送電カプラ10及び受電カプラ20によって形成される共振回路の特徴と、受電装置3Bの構成が主に第1実施形態の無線電力伝送システム1と異なる。
【0053】
無線電力伝送システム1Bの送電カプラ10及び受電カプラ20によって形成される共振回路は、上述した(a)(b)の特徴を有するものの、(c)の特徴を有していなくてもよい。即ち無線電力伝送システム1Bの共振回路では、2つの共振周波数のうち共振周波数ωr2が搬送波周波数の整数倍の周波数に一致する構成であってもよい。
【0054】
送電装置2Bは、電源部30と、送電カプラ10と、電源部30を収容する第1収容部31と、送電カプラ10を収容する第2収容部15と、を備える。第1収容部31は、図9に示すように地表面から立設するように配置される。第2収容部15は、樹脂製であり、第1収容部31の側面に取り付けられる。
【0055】
受電装置3Bは、図9に示すように、受電カプラ20と、整流部40と、受電カプラ20を収容する第1収容部25と、整流部40を収容する第2収容部45と、を備え、移動体4に取り付けられる。本実施形態の移動体4は、電気で駆動する二輪車である。本実施形態の無線電力伝送システム1Bによって電力が供給される負荷50は、移動体4のバッテリである。
【0056】
第1収容部25は、樹脂製であり、移動体4のフロント側に位置する第1本体部41における移動体4の幅方向Xの一側(図10では左側)に取り付けられる。電界共振によって送電カプラ10から受電カプラ20に無線送電する場合、送電カプラ10は、第1収容部25の幅方向Xにおける第1本体部41に取り付けられる側とは反対側に配置される。
【0057】
第2収容部45は、金属製であり、受電カプラ20から送電される搬送波の高調波の放射を抑制するシールドケースである。第2収容部45には、第1本体部41における移動体4の幅方向Xの他側(図10では右側)に配置される。即ち第2収容部45は、第1本体部41を挟んで第1収容部25とは反対側に配置される。第1収容部25と第2収容部45とは、図11に示すように、幅方向Xに延びる連結部46によって互いに接続される。
【0058】
第2収容部45に収容される整流部40は、第1本体部41に取り付けられた第2接続部81と伝送線82を介して電気的に接続される。受電カプラ20が送電カプラ10から受電した電力は、整流部40、伝送線44、第2接続部81を介して負荷50に供給される。
【0059】
本実施形態では、高調波の発生源である整流部40が金属製のシールドケースに収容されるので、高調波の放射電磁界の発生を抑制できる。また受電カプラ20が金属製の第2収容部45から間隔を空けて配置されるので、送電カプラ10と受電カプラ20との間の伝送効率を維持することができる。また第1収容部25と第2収容部45とが移動体4の第1本体部41を挟んで配置されるので、重量の偏りを削減できる。さらに受電カプラ20と整流部40とを異なる収容部に配置しているため、受電装置3内の回路を分散配置できるので、回路配線に余裕ができ、受電カプラ20等の薄型化が可能となる。よって、受電カプラ20の面積を大型化できるので、長距離伝送化及び大電力化が容易になる。
【0060】
次に、第3実施形態に係る無線電力伝送システム1Bの移動体4における受電装置3Bの取付位置の変形例について図12及び図13を参照しながら説明する。図12は、移動体4における受電装置3Bの取付位置の一例を示す模式図である。図13は、移動体4における受電装置3Bの取付位置の図10及び図12とは異なる例を示す模式図である。
【0061】
受電装置3Bは、図12に示すように、第1収容部25と第2収容部45によって移動体4の第1本体部41を移動体4の前後方向Yで挟むように配置してもよい。具体的には、第1収容部25が第1本体部41における移動体4の前後方向Yの一側(図12では左側)に配置し、第2収容部45が第1本体部41における移動体4の前後方向Yの他側(図12では右側)に配置してもよい。
【0062】
また受電装置3Bは、図13に示すように、第1収容部25と第2収容部45によって第2本体部42を移動体4の上下方向Zで挟むように配置してもよい。第2本体部42は、移動体4の前後方向Yに延び、車輪が配置される部位である。図13に示す例では、第1収容部25が第2本体部42における移動体4の上下方向Zの一側(図13では上側)に配置され、第2収容部45が第2本体部42における移動体4の上下方向Zの他側(図13では下側)に配置される。
【0063】
次に、第4実施形態に係る無線電力伝送システム1Cについて図14図16を参照しながら説明する。なお、以下の説明において、第1実施形態と同じ構成については詳細な説明を省略する。図14は、第4実施形態に係る無線電力伝送システム1Cのブロック図である。図15は、第4実施形態に係る無線電力伝送システム1Cの充電ユニット5と接続ユニット80と負荷50を示す模式図である。図16は、第4実施形態に係る無線電力伝送システム1Cの充電ユニット5と接続ユニット80と負荷50を示す分解模式図である。
【0064】
無線電力伝送システム1Cは、電源部30及び送電カプラ10を有する送電装置2Cと、受電装置3Cを備える。無線電力伝送システム1Cは、送電カプラ10及び受電カプラ20によって形成される共振回路の特徴と、受電装置3Cの構成が主に第1実施形態の無線電力伝送システム1と異なる。
【0065】
無線電力伝送システム1Cの送電カプラ10及び受電カプラ20によって形成される共振回路は、上述した(a)(b)の特徴を有するものの、(c)の特徴を有していなくてもよい。即ち無線電力伝送システム1Cの共振回路は、2つの共振周波数のうち共振周波数ωr2が搬送波周波数の整数倍の周波数に一致する構成であってもよい。
【0066】
受電装置3Cは、充電ユニット5と、充電ユニット5と負荷50との間に配置される接続ユニット80とを有する。負荷50は、移動体4のバッテリである。
【0067】
充電ユニット5は、受電カプラ20と、整流部40と、受電カプラ20及び整流部40を収容する筐体51とを有する。筐体51には、ボルト6が挿通される複数の貫通孔52が形成される。
【0068】
接続ユニット80は、平板状であり、充電ユニット5と負荷50に着脱可能である。接続ユニット80は、その厚み方向の一側(図16では左側)の面に負荷50が接続され、他側(図16では右側)の面に充電ユニット5が接続される。
【0069】
接続ユニット80の充電ユニット5が接続される面には、ボルト6が螺合する複数の螺合部84が形成される。接続ユニット80と充電ユニット5は、ボルト6が貫通孔52に挿通された状態で、充電ユニット5に設けられた螺合部84と螺号することで互いに接続される。
【0070】
また接続ユニット80は、整流部40と電気的に接続可能な第1接続部83と、負荷50に取り付けられ、負荷50と電気的に接続可能な第2接続部81とを有する。第1接続部83と第2接続部81とは、伝送線82を介して電気的に接続される。受電カプラ20が送電カプラ10から受電した電力は、整流部40及び第1接続部83、伝送線82、第2接続部81を介して負荷50に供給される。
【0071】
本実施形態では、接続ユニット80を介して充電ユニット5と負荷50が接続されるので、負荷50側の機器の改造を行わずに受電装置3Cを取り付けることができる。これにより、様々な負荷50に対して容易に電界共振方式による無線での給電を行うことができる。
【0072】
以上説明した実施形態によれば、以下のような効果を奏する。
【0073】
本実施形態に係る無線電力伝送システム1は、電源部30からの電力を無線で送電する送電カプラ10と、電界共振によって送電カプラ10から電力を無線で受電する受電カプラ20と、受電カプラ20によって受電された電力を直流電力に整流する整流部40と、を備え、送電カプラ10と受電カプラ20とにより形成される共振回路は、2つの共振周波数からなる双峰性の伝送特性を示し、低周波側の共振周波数ωr1は、無線送電に用いる搬送波周波数に設定される。
【0074】
これにより、送電カプラ10及び受電カプラ20によって形成される共振回路が双峰性の伝送特性を有し、低周波側の共振周波数ωr1が搬送波周波数に設定されるので、上記式(2)に示す容量Cの分だけ共振用のインダクタンスを小さくすることができる。よって、コイル13及びコイル23のサイズを小さくすることができ、カプラの小型化が可能となる。
【0075】
また本実施形態に係る無線電力伝送システム1において、共振回路は、高周波側の共振周波数ωr2が搬送波周波数の整数倍の周波数に一致しないように構成される。
【0076】
これにより、共振回路の共振周波数のうち高周波側の共振周波数ωr2が搬送波周波数の整数倍と一致しないので、整流部40から反射された高調波を含む反射電力が受電カプラ20に到達した場合における放射電磁界の発生を抑制できる。
【0077】
また本実施形態に係る無線電力伝送システム1は、送電カプラ10の直前の前段部に配置され、無線送電に用いる搬送波の高調波成分の通過を抑制するフィルタ部60、および、受電カプラ20と整流部40の間に配置され、整流部40から受電カプラ20へ反射される信号の高調波成分の通過を抑制するフィルタ部70を備える。
【0078】
これにより、整流部40から高調波を含む反射電力が受電カプラ20側に反射された場合であっても、フィルタ部60、70によって高調波の通過を抑制できるので、搬送波の高調波の放射電磁界の発生を抑制できる。
【0079】
また本実施形態に係る無線電力伝送システム1において、整流部40は、無線伝送に用いる搬送波の高調波成分の放射を抑制する金属製の第2収容部45に収容され、受電カプラ20は、第2収容部45から所定の間隔を空けて配置される。
【0080】
これにより、高調波の発生源である整流部40が金属製の第2収容部45に収容されているので高調波の放射電磁界の発生を抑制できるとともに、受電カプラ20を金属製の第2収容部45と間隔を空けて配置しているので、送電カプラ10と受電カプラ20との間の伝送効率の低下を抑制できる。
【0081】
また本実施形態に係る無線電力伝送システム1は、整流部40に電気的に接続可能な第1接続部83と整流部40からの直流電力が供給される負荷50に電気的に接続可能な第2接続部81とを有し、整流部40と負荷50との間に配置される接続ユニット80を備える。
【0082】
これにより、接続ユニット80を介して充電ユニット5と負荷50が接続されるので、負荷50側の機器の改造を行わずに受電装置3Cを取り付けることができる。よって、バッテリ等の様々な負荷50に容易に無線電力伝送システム1を適用することができる。
【0083】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に制限されるものではなく、適宜変更が可能である。
【0084】
上記第2実施形態では、無線電力伝送システム1Aがフィルタ部60とフィルタ部70の両方を備える構成であったが、フィルタ部60及びフィルタ部70のいずれか一方を備える構成であってもよい。
【符号の説明】
【0085】
1 無線電力伝送システム
10 送電カプラ
20 受電カプラ
30 電源部(交流電源)
40 整流部
図1
図2
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図16