(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024169924
(43)【公開日】2024-12-06
(54)【発明の名称】液晶組成物、色素化合物、液晶層及び調光素子
(51)【国際特許分類】
C09K 19/38 20060101AFI20241129BHJP
G02F 1/13 20060101ALI20241129BHJP
G02F 1/1334 20060101ALI20241129BHJP
【FI】
C09K19/38
G02F1/13 500
G02F1/13 505
G02F1/1334
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023086787
(22)【出願日】2023-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100185591
【弁理士】
【氏名又は名称】中塚 岳
(74)【代理人】
【識別番号】100211018
【弁理士】
【氏名又は名称】財部 俊正
(72)【発明者】
【氏名】高崎 美花
(72)【発明者】
【氏名】川北 健人
(72)【発明者】
【氏名】東條 健太
(72)【発明者】
【氏名】中田 秀俊
(72)【発明者】
【氏名】間宮 純一
【テーマコード(参考)】
2H088
2H189
4H027
【Fターム(参考)】
2H088EA34
2H088FA29
2H088GA02
2H088GA10
2H088GA13
2H088GA17
2H088HA01
2H088HA02
2H088HA14
2H088JA06
2H088KA06
2H088KA20
2H088MA02
2H189AA04
2H189CA08
2H189HA06
2H189LA15
4H027BA12
4H027BB11
4H027BD02
4H027BD07
4H027BD24
4H027BE06
4H027CC04
4H027CD01
4H027CD04
4H027CE05
4H027CF04
4H027CG04
4H027CM01
4H027CM04
4H027CP04
(57)【要約】
【課題】電圧無印加時に十分な遮光性を有し、熱による遮光性の低下を起こし難い液晶層、及び、該液晶層を形成するための液晶組成物を提供すること。
【解決手段】重合性化合物と、重合開始剤と、非重合性液晶化合物と、を含有し、重合性化合物が、370~780nmの範囲に極大吸収波長を有する第1の重合性化合物と、370~780nmの範囲に極大吸収波長を有しない第2の重合性化合物と、を含む、液晶組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合性化合物と、重合開始剤と、非重合性液晶化合物と、を含有し、
前記重合性化合物が、370~780nmの範囲に極大吸収波長を有する第1の重合性化合物と、370~780nmの範囲に極大吸収波長を有しない第2の重合性化合物と、を含む、液晶組成物。
【請求項2】
前記第1の重合性化合物が、前記極大吸収波長の異なる2種以上の化合物を含む、請求項1に記載の液晶組成物。
【請求項3】
前記第1の重合性化合物が、アントラキノン骨格を有する化合物を含む、請求項1に記載の液晶組成物。
【請求項4】
前記第1の重合性化合物が、下記式(1)
【化1】
[式中、
A
1及びA
2はそれぞれ独立して
(a)1,4-シクロへキシレン基(この基中に存在する1個の-CH
2-又は隣接していない2個以上の-CH
2-はそれぞれ独立して-O-又は-S-に置き換えられてもよく、この基中に存在する-CH=は-N=に置き換えられてもよい。)、
(b)1,4-フェニレン基(この基中に存在する1個の-CH=又は隣接していない2個以上の-CH=は-N=に置き換えられてもよい。)、
(c)1,4-シクロヘキセニレン基、ビシクロ[2.2.2]オクタン-1,4-ジイル基、ナフタレン-2,6-ジイル基、ナフタレン-1,4-ジイル基、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-1,4-ジイル基、デカヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、アントラセン-2,6-ジイル基、アントラセン-1,4-ジイル基、アントラセン-9,10-ジイル基、フェナントレン-2,7-ジイル基(ナフタレン-2,6-ジイル基、ナフタレン-1,4-ジイル基、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-1,4-ジイル基、アントラセン-2,6-ジイル基、アントラセン-1,4-ジイル基、アントラセン-9,10-ジイル基及びフェナントレン-2,7-ジイル基中に存在する1個の-CH=又は隣接していない2個以上の-CH=は-N=に置き換えられてもよい。)及び
(d)チオフェン-2,5-ジイル基、チオフェン-2,4-ジイル基、ベンゾチオフェン-2,5-ジイル基、ベンゾチオフェン-2,6-ジイル基、ジベンゾチオフェン-3,7-ジイル基、ジベンゾチオフェン-2,6-ジイル基、又はチエノ[3,2-b]チオフェン-2,5-ジイル基(これらの基中に存在する1個の-CH=又は隣接していない2個以上の-CH=は-N=に置き換えられてもよい。)
からなる群より選ばれる基、又は単結合を表し、前記の基(a)、基(b)、基(c)及び基(d)中に存在する水素原子はそれぞれ独立して、メチル基、エチル基、プロピル基、2-プロピル基、ブチル基、2-ブチル基、メトキシ基、エトキシ基、メチルチオ基、エチルチオ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、シアノ基、ニトロ基、フッ素原子又は塩素原子に置き換えられていてもよく、
Z
1及びZ
2はそれぞれ独立して、単結合、-N=CH-、-CH=N-、-N=N-、-C≡C-、炭素原子数1~20の直鎖状若しくは分岐状アルキレン基、又は炭素原子数2~30の直鎖状若しくは分岐状アルケニレン基を表し、当該アルキレン基及びアルケニレン基中の1個又は2個以上の-CH
2-は-O-、-COO-又は-OCO-に置換されてもよく、当該アルキレン基及びアルケニレン基中に存在する水素原子はフッ素原子に置換されてもよく、
R
1及びR
2はそれぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1~30の非重合性基又は炭素原子数0~20の重合性基を表すが、R
1及びR
2のうちの少なくとも一つは前記重合性基であり、
X
1及びX
2はそれぞれ独立して、-O-、-S-又は-NY-を表し、ここでYは下記式(2)
【化2】
(式中、A
3及びZ
3は、それぞれ前記A
1及び前記Z
1と同義であり、R
3は水素原子又は炭素原子数1~30の非重合性基を表し、*は窒素原子との結合手を示す。)
で表される基であり、
n
1、n
2及びn
3はそれぞれ独立して0~3の整数を表し、
m
1及びm
2はそれぞれ独立して0~4の整数を表すが、m
1+m
2は1以上であり、
A
1、A
2、A
3、Z
1、Z
2、Z
3、X
1、X
2、R
1、R
2、R
3、n
1、n
2及びn
3が複数存在する場合、複数のA
1、A
2、A
3、Z
1、Z
2、Z
3、X
1、X
2、R
1、R
2、R
3、n
1、n
2及びn
3は、それぞれ、互いに同一であっても異なっていてもよい。
ただし、式中で酸素原子と酸素原子が直接結合することはない。]
で表される化合物を含む、請求項1に記載の液晶組成物。
【請求項5】
前記第1の重合性化合物が、下記式(1-1)~(1-3)
【化3】
【化4】
【化5】
[式中、
A
1a、A
2a、A
1b、A
2b、A
3b、A
1c及びA
2cはそれぞれ独立して前記A
1と同義であり、
Z
1a、Z
2a、Z
1b、Z
2b、Z
3b、Z
1c及びZ
2cはそれぞれ独立して前記Z
1と同義であり、
R
1a、R
2a、R
1b、R
2b、R
3b、R
1c及びR
2cはそれぞれ独立して前記R
1と同義であるが、R
1a及びR
2bのうちの少なくとも一つ、R
1b、R
2b及びR
3bのうちの少なくとも一つ、並びに、R
1c及びR
2cのうちの少なくとも一つは前記重合性基であり、
X
1a、X
2a及びX
1bはそれぞれ独立して-O-又は-S-を表し、
n
1a、n
2a、n
1b、n
2b、n
3b、n
1c及びn
2cはそれぞれ独立して0~3の整数を表し、
A
1a、A
2a、A
1b、A
2b、A
3b、A
1c、A
2c、Z
1a、Z
2a、Z
1b、Z
2b、Z
3b、Z
1c及びZ
2cが複数存在する場合、複数のA
1a、A
2a、A
1b、A
2b、A
3b、A
1c、A
2c、Z
1a、Z
2a、Z
1b、Z
2b、Z
3b、Z
1c及びZ
2cは、それぞれ、互いに同一であっても異なっていてもよい。
ただし、式中で酸素原子と酸素原子が直接結合することはない。]
で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含む、請求項1に記載の液晶組成物。
【請求項6】
非重合性の色素化合物を更に含有する、請求項1に記載の液晶組成物。
【請求項7】
前記非重合性液晶化合物が、下記式(3)
【化6】
[式中、
R
11は炭素原子数1~10のアルキル基(この基中に存在する水素原子はフッ素原子に置き換えられてもよく、この基中に存在する1個の-CH
2-又は隣接していない2個以上の-CH
2-はそれぞれ独立して、-CH=CH-、-C≡C-、-O-、-CO-、-COO-又は-OCO-に置き換えられてもよい。)を表し、
R
12はハロゲン原子、シアノ基、イソチオシアネート基又は炭素原子数1~10のアルキル基(該アルキル基中に存在する水素原子はフッ素原子に置き換えられてもよく、該アルキル基中に存在する1個の-CH
2-又は隣接していない2個以上の-CH
2-はそれぞれ独立して、-CH=CH-、-C≡C-、-O-、-CO-、-COO-又は-OCO-に置き換えられてもよい。)を表し、
A
11、A
12及びA
13はそれぞれ独立して
(a3)1,4-シクロヘキシレン基(この基中に存在する1個の-CH
2-又は隣接していない2個以上の-CH
2-は-O-に置き換えられてもよい。)、
(b3)1,4-フェニレン基(この基中に存在する1個の-CH=又は隣接していない2個以上の-CH=は-N=に置き換えられてもよい。)及び
(c3)1,4-シクロヘキセニル基、テトラヒドロピラン-2,5-ジイル基、1,3-ジオキサン-2,5-ジイル基、デカヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、ピリジン-2,5-ジイル基、ピリミジン-2,5-ジイル基、ピラジン-2,5-ジイル基、ナフタレン-2,6-ジイル基、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基(ナフタレン-2,6-ジイル基及び1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基中に存在する1個の-CH=又は隣接していない2個以上の-CH=は-N=に置き換えられてもよい。)
からなる群より選ばれる基を表し、前記の基(a3)、基(b3)及び基(c3)中に存在する水素原子はそれぞれ独立して、シアノ基、メチル基、トリフルオロメチル基、トリフルオロメチルオキシ基、フッ素原子又は塩素原子に置き換えられてもよく、
Z
11及びZ
12はそれぞれ独立して、単結合、-CH
2CH
2-、-(CH
2)
4-、-OCH
2-、-CH
2O-、-COO-、-OCO-、-OCF
2-、-CF
2O-、-CH=N-N=CH-、-CH=CH-、-CF=CF-又は-C≡C-を表し、
n
11は0~3の整数を表し、
A
11及びZ
11が複数存在する場合、複数のA
11は互いに同一であっても異なっていてもよく、複数のZ
11は互いに同一であっても異なっていてもよい。
ただし、式中で酸素原子と酸素原子が直接結合することはない。]
で表される化合物を含む、請求項1に記載の液晶組成物。
【請求項8】
前記式(3)で表される化合物が、トラン骨格を有する化合物を含む、請求項7に記載の液晶組成物。
【請求項9】
下記式(1-2)
【化7】
[式中、
A
1b、A
2b及びA
3bはそれぞれ独立して
(a)1,4-シクロへキシレン基(この基中に存在する1個の-CH
2-又は隣接していない2個以上の-CH
2-はそれぞれ独立して-O-又は-S-に置き換えられてもよく、この基中に存在する-CH=は-N=に置き換えられてもよい。)、
(b)1,4-フェニレン基(この基中に存在する1個の-CH=又は隣接していない2個以上の-CH=は-N=に置き換えられてもよい。)、
(c)1,4-シクロヘキセニレン基、ビシクロ[2.2.2]オクタン-1,4-ジイル基、ナフタレン-2,6-ジイル基、ナフタレン-1,4-ジイル基、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-1,4-ジイル基、デカヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、アントラセン-2,6-ジイル基、アントラセン-1,4-ジイル基、アントラセン-9,10-ジイル基、フェナントレン-2,7-ジイル基(ナフタレン-2,6-ジイル基、ナフタレン-1,4-ジイル基、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-1,4-ジイル基、アントラセン-2,6-ジイル基、アントラセン-1,4-ジイル基、アントラセン-9,10-ジイル基及びフェナントレン-2,7-ジイル基中に存在する1個の-CH=又は隣接していない2個以上の-CH=は-N=に置き換えられてもよい。)及び
(d)チオフェン-2,5-ジイル基、チオフェン-2,4-ジイル基、ベンゾチオフェン-2,5-ジイル基、ベンゾチオフェン-2,6-ジイル基、ジベンゾチオフェン-3,7-ジイル基、ジベンゾチオフェン-2,6-ジイル基、又はチエノ[3,2-b]チオフェン-2,5-ジイル基(これらの基中に存在する1個の-CH=又は隣接していない2個以上の-CH=は-N=に置き換えられてもよい。)
からなる群より選ばれる基、又は単結合を表し、前記の基(a)、基(b)、基(c)及び基(d)中に存在する水素原子はそれぞれ独立して、メチル基、エチル基、プロピル基、2-プロピル基、ブチル基、2-ブチル基、メトキシ基、エトキシ基、メチルチオ基、エチルチオ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、シアノ基、ニトロ基、フッ素原子又は塩素原子に置き換えられていてもよく、
Z
1b、Z
2b及びZ
3bはそれぞれ独立して、炭素原子数1~20の直鎖状若しくは分岐状アルキレン基、炭素原子数2~30の直鎖状若しくは分岐状アルケニレン基、-CH
2O-、-OCH
2-、-CF
2O-、-OCF
2-、-COO-、-OCO-、-N=CH-、-CH=N-、-N=N-、-C≡C-又は単結合を表し、当該アルキレン基及びアルケニレン基中に存在する水素原子はフッ素原子に置換されてもよく、
R
1b、R
2b及びR
3bはそれぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1~30の非重合性基又は炭素原子数0~20の重合性基を表すが、R
1b、R
2b及びR
3bのうちの少なくとも一つは前記重合性基であり、
X
1bは-O-又は-S-を表し、
n
1b、n
2b及びn
3bはそれぞれ独立して0~3の整数を表し、
A
1b、A
2b、A
3b、Z
1b、Z
2b及びZ
3bが複数存在する場合、複数のA
1b、A
2b、A
3b、Z
1b、Z
2b及びZ
3bは、それぞれ、互いに同一であっても異なっていてもよい。
ただし、式中で酸素原子と酸素原子が直接結合することはない。]
で表される色素化合物。
【請求項10】
請求項1~8のいずれか一項に記載の液晶組成物から形成される液晶層であって、
前記重合性化合物由来のポリマーネットワークと、前記非重合性液晶化合物とを含む、液晶層。
【請求項11】
一対の透明電極基板と、
前記一対の透明電極基板の間に配された請求項10に記載の液晶層と、を有する調光素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶組成物、色素化合物、液晶層及び調光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶材料は、TVやスマートフォンに代表される文字や画像、映像を表示させる各種表示素子に利用されるだけではなく、光の透過を調節する調光素子としての利用に関しても実用化されつつある。液晶材料には目的に応じて種々の性能を有する色素化合物が用いられる(例えば特許文献1)。
【0003】
近年、建材や運輸の分野において、空間の快適性と利便性向上のため、外光の透過度合いを調節するスマートウィンドウ・スマートガラス用途の調光素子として、いわゆる高分子分散型(ポリマーネットワーク型)液晶素子が注目されている。高分子分散型液晶素子は、液晶材料がポリマーネットワーク中に介在(又は分散)する構造の液晶層(調光層)を有しており、液晶層での光の透過/散乱度合いを印加電圧によって調整することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第5578419号明細書
【特許文献2】国際公開第2022/138418号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記調光素子の液晶層には、電圧印加時に十分な遮光性を有することが求められる。また、調光素子は高温環境下で使用されることがあるため、熱により液晶層の遮光性が低下しないこと、すなわち、液晶層が耐熱性を有することも重要である。
【0006】
本発明の課題の一つは、電圧無印加時に十分な遮光性を有し、熱による遮光性の低下を起こし難い液晶層を提供することにある。また、本発明の課題の一つは、上記液晶層を形成するための液晶組成物を提供することにある。また、本発明の課題の一つは、上記液晶組成物を用いた調光素子を提供することにある。また、本発明の課題の一つは、上記液晶組成物に用いられる新規な色素化合物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のいくつかの側面は、下記[1]~[11]を提供する。
【0008】
[1]
重合性化合物と、重合開始剤と、非重合性液晶化合物と、を含有し、
前記重合性化合物が、370~780nmの範囲に極大吸収波長を有する第1の重合性化合物と、370~780nmの範囲に極大吸収波長を有しない第2の重合性化合物と、を含む、液晶組成物。
【0009】
[2]
前記第1の重合性化合物が、前記極大吸収波長の異なる2種以上の化合物を含む、[1]に記載の液晶組成物。
【0010】
[3]
前記第1の重合性化合物が、アントラキノン骨格を有する化合物を含む、[1]又は[2]に記載の液晶組成物。
【0011】
[4]
前記第1の重合性化合物が、下記式(1)
【化1】
[式中、
A
1及びA
2はそれぞれ独立して
(a)1,4-シクロへキシレン基(この基中に存在する1個の-CH
2-又は隣接していない2個以上の-CH
2-はそれぞれ独立して-O-又は-S-に置き換えられてもよく、この基中に存在する-CH=は-N=に置き換えられてもよい。)、
(b)1,4-フェニレン基(この基中に存在する1個の-CH=又は隣接していない2個以上の-CH=は-N=に置き換えられてもよい。)、
(c)1,4-シクロヘキセニレン基、ビシクロ[2.2.2]オクタン-1,4-ジイル基、ナフタレン-2,6-ジイル基、ナフタレン-1,4-ジイル基、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-1,4-ジイル基、デカヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、アントラセン-2,6-ジイル基、アントラセン-1,4-ジイル基、アントラセン-9,10-ジイル基、フェナントレン-2,7-ジイル基(ナフタレン-2,6-ジイル基、ナフタレン-1,4-ジイル基、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-1,4-ジイル基、アントラセン-2,6-ジイル基、アントラセン-1,4-ジイル基、アントラセン-9,10-ジイル基及びフェナントレン-2,7-ジイル基中に存在する1個の-CH=又は隣接していない2個以上の-CH=は-N=に置き換えられてもよい。)及び
(d)チオフェン-2,5-ジイル基、チオフェン-2,4-ジイル基、ベンゾチオフェン-2,5-ジイル基、ベンゾチオフェン-2,6-ジイル基、ジベンゾチオフェン-3,7-ジイル基、ジベンゾチオフェン-2,6-ジイル基、又はチエノ[3,2-b]チオフェン-2,5-ジイル基(これらの基中に存在する1個の-CH=又は隣接していない2個以上の-CH=は-N=に置き換えられてもよい。)
からなる群より選ばれる基、又は単結合を表し、前記の基(a)、基(b)、基(c)及び基(d)中に存在する水素原子はそれぞれ独立して、メチル基、エチル基、プロピル基、2-プロピル基、ブチル基、2-ブチル基、メトキシ基、エトキシ基、メチルチオ基、エチルチオ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、シアノ基、ニトロ基、フッ素原子又は塩素原子に置き換えられていてもよく、
Z
1及びZ
2はそれぞれ独立して、単結合、-N=CH-、-CH=N-、-N=N-、-C≡C-、炭素原子数1~20の直鎖状若しくは分岐状アルキレン基、又は炭素原子数2~30の直鎖状若しくは分岐状アルケニレン基を表し、当該アルキレン基及びアルケニレン基中の1個又は2個以上の-CH
2-は-O-、-COO-又は-OCO-に置換されてもよく、当該アルキレン基及びアルケニレン基中に存在する水素原子はフッ素原子に置換されてもよく、
R
1及びR
2はそれぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1~30の非重合性基又は炭素原子数0~20の重合性基を表すが、R
1及びR
2のうちの少なくとも一つは前記重合性基であり、
X
1及びX
2はそれぞれ独立して、-O-、-S-又は-NY-を表し、ここでYは下記式(2)
【化2】
(式中、A
3及びZ
3は、それぞれ前記A
1及び前記Z
1と同義であり、R
3は水素原子又は炭素原子数1~30の非重合性基を表し、*は窒素原子との結合手を示す。)
で表される基であり、
n
1、n
2及びn
3はそれぞれ独立して0~3の整数を表し、
m
1及びm
2はそれぞれ独立して0~4の整数を表すが、m
1+m
2は1以上であり、
A
1、A
2、A
3、Z
1、Z
2、Z
3、X
1、X
2、R
1、R
2、R
3、n
1、n
2及びn
3が複数存在する場合、複数のA
1、A
2、A
3、Z
1、Z
2、Z
3、X
1、X
2、R
1、R
2、R
3、n
1、n
2及びn
3は、それぞれ、互いに同一であっても異なっていてもよい。
ただし、式中で酸素原子と酸素原子が直接結合することはない。]
で表される化合物を含む、[1]~[3]のいずれかに記載の液晶組成物。
【0012】
[5]
前記第1の重合性化合物が、下記式(1-1)~(1-3)
【化3】
【化4】
【化5】
[式中、
A
1a、A
2a、A
1b、A
2b、A
3b、A
1c及びA
2cはそれぞれ独立して前記A
1と同義であり、
Z
1a、Z
2a、Z
1b、Z
2b、Z
3b、Z
1c及びZ
2cはそれぞれ独立して前記Z
1と同義であり、
R
1a、R
2a、R
1b、R
2b、R
3b、R
1c及びR
2cはそれぞれ独立して前記R
1と同義であるが、R
1a及びR
2bのうちの少なくとも一つ、R
1b、R
2b及びR
3bのうちの少なくとも一つ、並びに、R
1c及びR
2cのうちの少なくとも一つは前記重合性基であり、
X
1a、X
2a及びX
1bはそれぞれ独立して-O-又は-S-を表し、
n
1a、n
2a、n
1b、n
2b、n
3b、n
1c及びn
2cはそれぞれ独立して0~3の整数を表し、
A
1a、A
2a、A
1b、A
2b、A
3b、A
1c、A
2c、Z
1a、Z
2a、Z
1b、Z
2b、Z
3b、Z
1c及びZ
2cが複数存在する場合、複数のA
1a、A
2a、A
1b、A
2b、A
3b、A
1c、A
2c、Z
1a、Z
2a、Z
1b、Z
2b、Z
3b、Z
1c及びZ
2cは、それぞれ、互いに同一であっても異なっていてもよい。
ただし、式中で酸素原子と酸素原子が直接結合することはない。]
で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含む、[1]~[4]のいずれかに記載の液晶組成物。
【0013】
[6]
非重合性の色素化合物を更に含有する、[1]~[5]のいずれかに記載の液晶組成物。
【0014】
[7]
前記非重合性液晶化合物が、下記式(3)
【化6】
[式(3)中、
R
11は炭素原子数1~10のアルキル基(この基中に存在する水素原子はフッ素原子に置き換えられてもよく、この基中に存在する1個の-CH
2-又は隣接していない2個以上の-CH
2-はそれぞれ独立して、-CH=CH-、-C≡C-、-O-、-CO-、-COO-又は-OCO-に置き換えられてもよい。)を表し、
R
12はハロゲン原子、シアノ基、イソチオシアネート基又は炭素原子数1~10のアルキル基(該アルキル基中に存在する水素原子はフッ素原子に置き換えられてもよく、該アルキル基中に存在する1個の-CH
2-又は隣接していない2個以上の-CH
2-はそれぞれ独立して、-CH=CH-、-C≡C-、-O-、-CO-、-COO-又は-OCO-に置き換えられてもよい。)を表し、
A
11、A
12及びA
13はそれぞれ独立して
(a3)1,4-シクロヘキシレン基(この基中に存在する1個の-CH
2-又は隣接していない2個以上の-CH
2-は-O-に置き換えられてもよい。)、
(b3)1,4-フェニレン基(この基中に存在する1個の-CH=又は隣接していない2個以上の-CH=は-N=に置き換えられてもよい。)及び
(c3)1,4-シクロヘキセニル基、テトラヒドロピラン-2,5-ジイル基、1,3-ジオキサン-2,5-ジイル基、デカヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、ピリジン-2,5-ジイル基、ピリミジン-2,5-ジイル基、ピラジン-2,5-ジイル基、ナフタレン-2,6-ジイル基、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基(ナフタレン-2,6-ジイル基及び1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基中に存在する1個の-CH=又は隣接していない2個以上の-CH=は-N=に置き換えられてもよい。)
からなる群より選ばれる基を表し、前記の基(a3)、基(b3)及び基(c3)中に存在する水素原子はそれぞれ独立して、シアノ基、メチル基、トリフルオロメチル基、トリフルオロメチルオキシ基、フッ素原子又は塩素原子に置き換えられてもよく、
Z
11及びZ
12はそれぞれ独立して、単結合、-CH
2CH
2-、-(CH
2)
4-、-OCH
2-、-CH
2O-、-COO-、-OCO-、-OCF
2-、-CF
2O-、-CH=N-N=CH-、-CH=CH-、-CF=CF-又は-C≡C-を表し、
n
11は0~3の整数を表し、
A
11及びZ
11が複数存在する場合、複数のA
11は互いに同一であっても異なっていてもよく、複数のZ
11は互いに同一であっても異なっていてもよい。
ただし、式中で酸素原子と酸素原子が直接結合することはない。]
で表される化合物を含む、[1]~[6]のいずれかに記載の液晶組成物。
【0015】
[8]
前記式(3)で表される化合物が、トラン骨格を有する化合物を含む、[7]に記載の液晶組成物。
【0016】
[9]
下記式(1-2)
【化7】
[式中、
A
1b、A
2b及びA
3bはそれぞれ独立して
(a)1,4-シクロへキシレン基(この基中に存在する1個の-CH
2-又は隣接していない2個以上の-CH
2-はそれぞれ独立して-O-又は-S-に置き換えられてもよく、この基中に存在する-CH=は-N=に置き換えられてもよい。)、
(b)1,4-フェニレン基(この基中に存在する1個の-CH=又は隣接していない2個以上の-CH=は-N=に置き換えられてもよい。)、
(c)1,4-シクロヘキセニレン基、ビシクロ[2.2.2]オクタン-1,4-ジイル基、ナフタレン-2,6-ジイル基、ナフタレン-1,4-ジイル基、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-1,4-ジイル基、デカヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、アントラセン-2,6-ジイル基、アントラセン-1,4-ジイル基、アントラセン-9,10-ジイル基、フェナントレン-2,7-ジイル基(ナフタレン-2,6-ジイル基、ナフタレン-1,4-ジイル基、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-1,4-ジイル基、アントラセン-2,6-ジイル基、アントラセン-1,4-ジイル基、アントラセン-9,10-ジイル基及びフェナントレン-2,7-ジイル基中に存在する1個の-CH=又は隣接していない2個以上の-CH=は-N=に置き換えられてもよい。)及び
(d)チオフェン-2,5-ジイル基、チオフェン-2,4-ジイル基、ベンゾチオフェン-2,5-ジイル基、ベンゾチオフェン-2,6-ジイル基、ジベンゾチオフェン-3,7-ジイル基、ジベンゾチオフェン-2,6-ジイル基、又はチエノ[3,2-b]チオフェン-2,5-ジイル基(これらの基中に存在する1個の-CH=又は隣接していない2個以上の-CH=は-N=に置き換えられてもよい。)
からなる群より選ばれる基、又は単結合を表し、前記の基(a)、基(b)、基(c)及び基(d)中に存在する水素原子はそれぞれ独立して、メチル基、エチル基、プロピル基、2-プロピル基、ブチル基、2-ブチル基、メトキシ基、エトキシ基、メチルチオ基、エチルチオ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、シアノ基、ニトロ基、フッ素原子又は塩素原子に置き換えられていてもよく、
Z
1b、Z
2b及びZ
3bはそれぞれ独立して、炭素原子数1~20の直鎖状若しくは分岐状アルキレン基、炭素原子数2~30の直鎖状若しくは分岐状アルケニレン基、-CH
2O-、-OCH
2-、-CF
2O-、-OCF
2-、-COO-、-OCO-、-N=CH-、-CH=N-、-N=N-、-C≡C-又は単結合を表し、当該アルキレン基及びアルケニレン基中に存在する水素原子はフッ素原子に置換されてもよく、
R
1b、R
2b及びR
3bはそれぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1~30の非重合性基又は炭素原子数0~20の重合性基を表すが、R
1b、R
2b及びR
3bのうちの少なくとも一つは前記重合性基であり、
X
1bは-O-又は-S-を表し、
n
1b、n
2b及びn
3bはそれぞれ独立して0~3の整数を表し、
A
1b、A
2b、A
3b、Z
1b、Z
2b及びZ
3bが複数存在する場合、複数のA
1b、A
2b、A
3b、Z
1b、Z
2b及びZ
3bは、それぞれ、互いに同一であっても異なっていてもよい。
ただし、式中で酸素原子と酸素原子が直接結合することはない。]
で表される色素化合物。
【0017】
[10]
[1]~[8]のいずれかに記載の液晶組成物から形成される液晶層であって、
前記重合性化合物由来のポリマーネットワークと、前記非重合性液晶化合物とを含む、液晶層。
【0018】
[11]
一対の透明電極基板と、
前記一対の透明電極基板の間に配された[10]に記載の液晶層と、を有する調光素子。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、電圧無印加時に十分な遮光性を有し、熱による遮光性の低下を起こし難い液晶層を提供することができる。また、本発明によれば、上記液晶層を形成するための液晶組成物を提供することができる。また、本発明によれば、上記液晶組成物を用いた調光素子を提供することができる。また、本発明によれば、上記液晶組成物に用いられる新規な色素化合物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】一実施形態に係る液晶素子を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。ただし、本発明は下記実施形態に何ら限定されるものではない。
【0022】
<液晶組成物>
本発明の一実施形態は、重合性化合物と、重合開始剤と、非重合性液晶化合物と、を含有し、該重合性化合物が、370~780nmの範囲に極大吸収波長を有する第1の重合性化合物と、370~780nmの範囲に極大吸収波長を有しない第2の重合性化合物と、を含む、液晶組成物である。ここで、第1の重合性化合物は370~780nmの範囲に極大吸収波長を有することから色素化合物ということができる。
【0023】
上記液晶組成物中の重合性化合物は、重合して液晶成分を分散するポリマーネットワークを構成する。上記液晶組成物によれば、重合性化合物を重合させることにより、高分子分散型(ポリマーネットワーク型)液晶を形成することができる。したがって、上記液晶組成物は、高分子分散型(ポリマーネットワーク型)液晶形成性組成物ということができる。また、上記液晶組成物は、ホストとなる非重合性液晶化合物とゲストとなる色素化合物(370~780nmの範囲に極大吸収波長を有する化合物)とを含有することから、ゲスト-ホスト(GH)型液晶材料ということもできる。
【0024】
上記液晶組成物によれば、電圧無印加時に十分な遮光性を有し、熱による遮光性の低下を起こし難い液晶層を形成することができる。したがって、上記液晶組成物は、スマートウィンドウ等の調光素子用途に好適に用いられる。また、上記液晶組成物により形成される液晶層は、透過率のコントラストにも優れる傾向がある。
【0025】
以下、液晶組成物に含有される成分について説明する。以下では、液晶組成物に含有される成分のうち、重合性化合物からなる成分を「重合性成分」といい、液晶化合物からなる成分を「液晶成分」という。
【0026】
(重合性成分)
重合性成分は、370~780nmの範囲に極大吸収波長を有する第1の重合性化合物と、370~780nmの範囲に極大吸収波長を有しない第2の重合性化合物とを含む。
【0027】
[第1の重合性化合物]
第1の重合性化合物は、重合性基を1又は2以上有する色素化合物(重合性色素)である。重合性基は、ラジカル重合性基であってよく、カチオン重合性基であってもよく、アニオン重合性基であってもよい。重合性基の炭素原子数は、例えば、0~20であってよい。重合性基の具体例としては、下記式(P-1)~(P-21)で表される基が挙げられる。
【化8】
【0028】
式(P-1)~(P-21)中の*は、炭素原子又は他の原子との結合手を示す。式中、ビニル基に結合しているメチル基中の水素原子は1個又は2個以上のフッ素原子により置換されていてもよい。
【0029】
第1の重合性化合物が有する重合性基は1種であっても2種以上であってもよい。
【0030】
第1の重合性化合物は、重合性及び保存安定性を高める観点では、式(P-1)、(P-2)、(P-3)、(P-18)、及び式(P-21)で表わされる基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基を有することが好ましく、式(P-1)及び式(P-2)からなる群より選ばれる少なくとも1種の基を有することがより好ましい。
【0031】
第1の重合性化合物は、370~780nmの範囲に極大吸収波長を有する。第1の重合性化合物は、370nm超、かつ、750nm以下、600nm以下又は500nm以下の範囲に極大吸収波長を有する化合物であってもよい。黒色など所望の色に調整する観点では、第1の重合性化合物として、極大吸収波長の異なる2種以上の化合物を用いることが好ましい。中でも、370nm超500nm以下の範囲に極大吸収波長を有する化合物(黄色色素)、500nm超600nm以下の範囲に極大吸収波長を有する化合物(赤色色素)及び600nm超750nm以下の範囲に極大吸収波長を有する化合物(青色色素)からなる群より選ばれる2種以上の化合物を用いることがより好ましく、これらの3種の化合物全てを用いることがさらに好ましい。液晶組成物に含まれる第1の重合性化合物の種類は、6種以下(例えば1~6種又は2~6種)であってよく、5種以下又は4種以下であってもよい。
【0032】
極大吸収波長の測定方法は、次の通りである。
まず、第1の重合性化合物を溶解することができる任意の液晶組成物100質量部に対して、第1の重合性化合物を1.0質量部添加して溶解させて試料を調製する。
次に、ITO電極を有し、当該ITO電極上に水平配向用配向膜を備えた2cm×2cmのガラス基板を2枚用いて、ITO電極層をセルの内側として、プラスチック粒子によりセル厚10μmに調整した注入口を備えたセルを作製する。
当該セルに、試料を注入し、注入口を封止材で塞ぐことにより、素子を作製する。
次に、スペクトルメーター(大塚電子社製「LCD-5200」や日立ハイテクサイエンス社製「U-4100」)を用いて、25℃、電圧無印加の条件下、作製した素子を用いて、370~750nmの間の吸収スペクトルを測定することにより、第1の重合性化合物の極大吸収波長を求めることができる。
【0033】
第1の重合性化合物は、例えば、アントラキノン骨格、アゾ骨格、キノフタロン骨格、ジケトピロロピロール骨格、ベンゾチアジアゾール骨格、ペリレン骨格、クマリン骨格、キナクリドン骨格、ポルフィリン骨格等の骨格を有する化合物であってよい。これらの中でも、アントラキノン骨格を有する化合物はラジカル耐性に優れる。そのため、液晶組成物が第1の重合性化合物としてアントラキノン骨格を有する化合物を含む場合、液晶層の耐光性が向上する傾向がある。
【0034】
第1の重合性化合物としては、遮光性及び耐熱性をより高める観点から、下記式(1)で表される化合物(以下、「化合物(1)」ともいう。)を用いることが好ましい。なお、下記式(1)中のA
1、A
2、Z
1、Z
2、X
1、X
2、R
1、R
2、n
1及びn
2が複数存在する場合、複数のA
1、A
2、Z
1、Z
2、X
1、X
2、R
1、R
2、n
1及びn
2は、それぞれ、互いに同一であっても異なっていてもよい。また、式(1)中で酸素原子と酸素原子が直接結合することはない。
【化9】
【0035】
式(1)中、A1及びA2はそれぞれ独立して下記の基(a)、基(b)、基(c)及び基(d)からなる群より選ばれる基又は単結合を表す。
【0036】
(a)1,4-シクロへキシレン基(この基中に存在する1個の-CH2-又は隣接していない2個以上の-CH2-はそれぞれ独立して-O-又は-S-に置き換えられてもよく、この基中に存在する-CH=は-N=に置き換えられてもよい。)
【0037】
(b)1,4-フェニレン基(この基中に存在する1個の-CH=又は隣接していない2個以上の-CH=は-N=に置き換えられてもよい。)
【0038】
(c)1,4-シクロヘキセニレン基、ビシクロ[2.2.2]オクタン-1,4-ジイル基、ナフタレン-2,6-ジイル基、ナフタレン-1,4-ジイル基、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-1,4-ジイル基、デカヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、アントラセン-2,6-ジイル基、アントラセン-1,4-ジイル基、アントラセン-9,10-ジイル基、フェナントレン-2,7-ジイル基(ナフタレン-2,6-ジイル基、ナフタレン-1,4-ジイル基、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-1,4-ジイル基、アントラセン-2,6-ジイル基、アントラセン-1,4-ジイル基、アントラセン-9,10-ジイル基及びフェナントレン-2,7-ジイル基中に存在する1個の-CH=又は隣接していない2個以上の-CH=は-N=に置き換えられてもよい。)
【0039】
(d)チオフェン-2,5-ジイル基、チオフェン-2,4-ジイル基、ベンゾチオフェン-2,5-ジイル基、ベンゾチオフェン-2,6-ジイル基、ジベンゾチオフェン-3,7-ジイル基、ジベンゾチオフェン-2,6-ジイル基、又はチエノ[3,2-b]チオフェン-2,5-ジイル基(これらの基中に存在する1個の-CH=又は隣接していない2個以上の-CH=は-N=に置き換えられてもよい。)
【0040】
基(a)、基(b)、基(c)及び基(d)中に存在する水素原子はそれぞれ独立して、メチル基、エチル基、プロピル基、2-プロピル基、ブチル基、2-ブチル基、メトキシ基、エトキシ基、メチルチオ基、エチルチオ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、シアノ基、ニトロ基、フッ素原子又は塩素原子に置き換えられていてもよい。
【0041】
基(a)は例えば下記式(a1)~(a5)で表される基からなる群より選ばれる基であってよい。波線はX側の結合手を示し、*はR側の結合手を示す。なお、X側とは、A
1の場合はX
1側を意味し、A
2の場合はX
2側を意味する。また、R側とは、A
1の場合はR
1側を意味し、A
2の場合はR
2側を意味する。
【化10】
【0042】
基(b)は例えば下記式(b1)~(b11)で表される基からなる群より選ばれる基であってよい。波線はX側の結合手を示し、*はR側の結合手を示す。
【化11】
【0043】
式(b2)~(b6)中のReはメチル基、エチル基、プロピル基(1-プロピル基)、2-プロピル基、ブチル基、2-ブチル基、メトキシ基、エトキシ基、メチルチオ基、エチルチオ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、シアノ基、ニトロ基、フッ素原子又は塩素原子を表す。Reが複数存在する場合、複数のReは互いに同一の基であってもよく、異なる基であってもよい。
【0044】
基(c)は例えば下記式(c1)~(c14)で表される基からなる群より選ばれる基であってよい。波線はX側の結合手を示し、*はR側の結合手を示す。
【化12】
【0045】
基(d)は例えば下記式(d1)~(d10)で表される基からなる群より選ばれる基であってよい。式(d8)~(d10)中のR
eは上記と同義である。波線はX側の結合手を示し、*はR側の結合手を示す。
【化13】
【0046】
溶解性を高める観点では、A
1及びA
2が、基(a)及び基(b)からなる群より選ばれる基であることが好ましく、基(b)であることがより好ましい。中でも、A
1及びA
2がそれぞれ独立して、下記式(b-1)で表される構造の基であることが好ましく、下記式(b-2)又は下記式(b-3)で表される構造の基であることがより好ましく、A
1及びA
2の両方が下記式(b-2)で表される構造の基であることが特に好ましい。波線はX側の結合手を示し、*はR側の結合手を示す。
【化14】
【0047】
式(b-1)中、Ri1及びRi2はそれぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表す。
【0048】
Z1及びZ2はそれぞれ独立して、単結合、-N=CH-、-CH=N-、-N=N-、-C≡C-、炭素原子数1~20の直鎖状若しくは分岐状アルキレン基、又は炭素原子数2~30の直鎖状若しくは分岐状アルケニレン基を表す。アルキレン基及びアルケニレン基中の1個又は2個以上の-CH2-は-O-、-COO-又は-OCO-に置換されてもよく、アルキレン基及びアルケニレン基中に存在する水素原子はフッ素原子に置換されてもよい。
【0049】
Z1及びZ2は、合成難易度及び溶解性の観点から、炭素原子数1~20の直鎖状若しくは分岐状アルキレン基、又は、単結合であることが好ましい。アルキレン基は、合成難易度の観点から、直鎖状であることが好ましい。アルキレン基の炭素原子数は、溶解性の観点から、好ましくは2~12であり、より好ましくは2~8である。アルキレン基は、無置換であるか、1個の-CH2-が-O-に置換されていることが好ましい。アルキレン基としては、例えば、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基及びオクチレン基等が挙げられる。これらの中でも、ブチレン基、ペンチレン基及びヘキシレン基からなる群より選ばれる基が好ましい。
【0050】
R1及びR2はそれぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1~30の非重合性基又は炭素原子数0~20の重合性基を表す。ただし、R1及びR2のうちの少なくとも一つは炭素原子数0~20の重合性基である。なお、R1及びR2が複数存在する場合、複数のR1のうちの一つ、又は、複数のR2のうちの一つが炭素原子数0~20の重合性基であればよい。
【0051】
非重合性基は、例えば、炭素原子数1~20の直鎖状若しくは分岐状アルキル基、又は炭素原子数2~30の直鎖状若しくは分岐状アルケニル基であってよい。これらの基(アルキル基及びアルケニル基)中に存在する1個の-CH2-又は隣接していない2個以上の-CH2-はそれぞれ独立して-NR4-、-O-、-S-、-CH=CH-、-CF=CF-又は-C≡C-により置き換えられてもよい。また、これらの基中に存在する水素原子はフッ素原子に置換されてもよい。
【0052】
上記R4は水素原子、炭素原子数1~20のアルキル基又は炭素原子数2~30のアルケニル基を表す。これらの基(アルキル基及びアルケニル基)中に存在する1個の-CH2-又は隣接していない2個以上の-CH2-はそれぞれ独立して-O-、-S-、-COO-、-OCO-又は-CO-により置き換えられてもよい。また、これらの基中に存在する水素原子はフッ素原子に置換されてもよい。R4が複数存在する場合、複数のR4は、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0053】
非重合性基は、溶解性を高める観点から、炭素原子数1~20の直鎖状若しくは分岐状アルキル基であることが好ましく、炭素原子数1~20の無置換の直鎖状若しくは分岐状アルキル基であることがより好ましい。アルキル基は、直鎖状であることが好ましい。アルキル基の炭素原子数は、好ましくは2~16であり、より好ましくは4~12である。なお、上記炭素数は、アルキル基中の一部が上述したいずれかの基に置き換えられている場合には、置換基中の炭素原子数を含めた総炭素原子数を意味する。
【0054】
炭素原子数1~20の無置換のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基等が挙げられる。
【0055】
R1が水素原子又は重合性基である場合、R1に直接結合するZ1は、炭素原子数1~20の直鎖状若しくは分岐状アルキレン基であってよく、R1が非重合性基である場合、R1に直接結合するZ1は、単結合であってよい。同様に、R2が水素原子又は重合性基である場合、R2に直接結合するZ2は、炭素原子数1~20の直鎖状若しくは分岐状アルキレン基であってよく、R2が非重合性基である場合、R2に直接結合するZ2は、単結合であってよい。
【0056】
X1及びX2はそれぞれ独立して、-O-、-S-又は-NY-を表す。
【0057】
【0058】
式(2)中、A3及びZ3は、それぞれ上記A1及び上記Z1と同義であり、R3は水素原子又は炭素原子数1~30の非重合性基を表し、*は窒素原子との結合手を示す。非重合性基の例は、上記R1で表される非重合性基の例と同じである。式(2)中のA3、Z3R3及びn3が複数存在する場合、複数のA3、Z3R3及びn3は、それぞれ、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0059】
n1、n2及びn3はそれぞれ独立して0~3の整数を表す。溶解性の観点では、n1、n2及びn3はそれぞれ独立して0又は1であることが好ましい。
【0060】
m1及びm2はそれぞれ独立して0~4の整数を表す。ただし、m1+m2は1以上である。溶解性の観点では、m1及びm2はそれぞれ独立して0~2であることが好ましく、m1+m2は2~3であることが好ましい。
【0061】
遮光性を高める観点では、化合物(1)として、下記式(1-1)~(1-3)で表される化合物(以下、「化合物(1-1)」、「化合物(1-2)」及び「化合物(1-3)」ともいう。)からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を用いることが好ましく、遮光性をより高める観点では、化合物(1-1)、化合物(1-2)及び化合物(1-3)からなる群より選ばれる少なくとも2種以上の化合物を用いることがより好ましい。
【化16】
【化17】
【化18】
【0062】
式中、A1a、A2a、A1b、A2b、A3b、A1c及びA2cはそれぞれ独立して上記式(1)中のA1と同義であり、Z1a、Z2a、Z1b、Z2b、Z3b、Z1c及びZ2cはそれぞれ独立して上記式(1)中のZ1と同義であり、R1a、R2a、R1b、R2b、R3b、R1c及びR2cはそれぞれ独立して上記式(1)中のR1と同義であるが、R1a及びR2bのうちの少なくとも一つ、R1b、R2b及びR3bのうちの少なくとも一つ、並びに、R1c及びR2cのうちの少なくとも一つは炭素原子数0~20の重合性基であり、X1a、X2a及びX1bはそれぞれ独立して-O-又は-S-を表し、n1a、n2a、n1b、n2b、n3b、n1c及びn2cはそれぞれ独立して0~3の整数を表し、A1a、A2a、A1b、A2b、A3b、A1c、A2c、Z1a、Z2a、Z1b、Z2b、Z3b、Z1c及びZ2cが複数存在する場合、複数のA1a、A2a、A1b、A2b、A3b、A1c、A2c、Z1a、Z2a、Z1b、Z2b、Z3b、Z1c及びZ2cは、それぞれ、互いに同一であっても異なっていてもよい。ただし、式中で酸素原子と酸素原子が直接結合することはない。
【0063】
〔化合物(1-1)〕
化合物(1-1)は、370nm超500nm以下の範囲に極大吸収波長を有する傾向がある。そのため、化合物(1-1)は、黄色色素として用いられ得る。
【0064】
化合物(1-1)は、極大吸収波長の観点から、下記式(1-1-1)で表される化合物であることが好ましく、下記式(1-1-1a)で表される化合物であることがより好ましい。
【化19】
【化20】
【0065】
式(1-1-1)中のZ1a、Z2a、R1a、R2a、X1a及びX2aは、それぞれ、上記式(1-1)中のZ1a、Z2a、R1a、R2a、X1a及びX2aと同義である。
【0066】
化合物(1-1)は、1種を単独で用いてよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0067】
化合物(1-1)の含有量は、例えば、第1の重合性化合物の総量100質量部に対して、5~90質量部、10~60質量部又は15~45質量部であってよい。
【0068】
化合物(1-1)は、公知化合物であるか、又は公知化合物から公知の製法に準じて製造することができる。化合物(1-1)は、例えば、原料化合物として、下記式(x1-1)で表される化合物(1,5-ジヒドロキシアントラセン-9,10-ジオン)と、下記式(y1-1)及び式(y1-2)で表される化合物(以下、「化合物(y1-1)」及び「化合物(y1-2)」ともいう。)とを用い、これらの原料化合物を反応させて化合物(1-1)を得る工程(1a)を含む方法により得ることができる。
【化21】
【化22】
【0069】
ここで、式中のA1a、A2a、Z1a、Z2a、R1a、R2a、X1a、X2a、n1a及びn2aは式(1-1)中のA1a、A2a、Z1a、Z2a、R1a、R2a、X1a、X2a、n1a及びn2aと同義である。なお、化合物(y1-1)と化合物(y1-2)とは互いに同一であってもよい。
【0070】
工程(1a)で行われる反応及び後処理の条件は、原料化合物の構造等に応じて適宜設定することができる。工程(1a)では、例えば、1,5-ジヒドロキシアントラセン-9,10-ジオンと化合物(y1-1)と化合物(y1-2)とトリフェニルホスフィンとを含む混合物中にアゾジカルボン酸ジイソプロピルを滴下し攪拌することで原料化合物を反応させ、化合物(1-1)を得ることができる。混合物中には必要に応じて、溶媒を含めることができる。溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、トルエン、ベンゼン、クロロホルム、ジクロロメタン、アセトニトリル等が挙げられる。これらの溶媒は2種以上を併用してもよい。アゾジカルボン酸ジイソプロピルの滴下は氷冷下で行ってよい。アゾジカルボン酸ジイソプロピルを滴下した後の攪拌は室温(例えば0~40℃)で行ってよい。攪拌時間は、例えば、1~48時間であってよい。後処理は、例えば、反応後の混合物から化合物(1-1)を含む有機層を分液操作により抽出すること、抽出した有機層を洗浄すること、洗浄後の有機層を乾燥させること等を含む方法によって行うことができる。分液操作は、例えば、水、ジクロロメタン等、及びこれらの混合溶媒を反応後の混合物に添加することによって行うことができる。有機層の洗浄は、例えば、メタノール、エタノール、水等を用いて行うことができる。有機層の乾燥は、例えば、無水硫酸ナトリウム等の乾燥材を有機層に加えること、有機層から乾燥材をろ過した後、ろ液を減圧乾燥すること等により行うことができる。後処理は、精製処理を含んでいてもよい。精製処理は、例えば、シリカゲルカラムクロマトグラフィーを用いて行ってよい。ジクロロメタン、メタノール、及びこれらの混合溶媒等を用いた再沈殿による精製処理を行ってもよい。
【0071】
〔化合物(1-2)〕
化合物(1-2)は、500nm超600nm以下の範囲に極大吸収波長を有する傾向がある。そのため、化合物(1-2)は、赤色色素として用いられ得る。
【0072】
化合物(1-2)は、極大吸収波長の観点から、下記式(1-2-1)で表される化合物であることが好ましく、下記式(1-2-1a)で表される化合物であることがより好ましい。
【化23】
【化24】
【0073】
式(1-2-1)中のZ1b、R1b、R2b、R3b及びX1bは、それぞれ、上記式(1-2)中のZ1b、R1b、R2b、R3b及びX1bと同義である。
【0074】
化合物(1-2)は、1種を単独で用いてよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0075】
化合物(1-2)の含有量は、例えば、第1の重合性化合物の総量100質量部に対して、5~90質量部、10~60質量部又は15~45質量部であってよい。
【0076】
化合物(1-2)は、例えば、次に示す工程(1b)~(3b)を含む方法によって製造することができる。
【0077】
工程(1b)は、原料化合物として、下記式(x2-1)で表される化合物(以下、「化合物(x2-1)」ともいう。)と、下記式(y2-1)で表される化合物(以下、「化合物(y2-1)」ともいう。)とを用い、これらの原料化合物を反応させて、下記式(x2-2)で表される化合物(以下、「化合物(x2-2)」ともいう。)を得る工程である。
【化25】
【化26】
【化27】
【0078】
ここで、式中のA3b、Z3b、R3b及びn3bは式(1-2)中のA3b、Z3b、R3b及びn3bと同義であり、Q2b及びQ3bはそれぞれ独立してハロゲン原子を示す。ハロゲン原子は臭素原子であってよく、塩素原子であってもよい。
【0079】
工程(1b)で行われる反応及び後処理の条件は、原料化合物の構造等に応じて適宜設定することができる。工程(1b)では、例えば、化合物(x2-1)と化合物(y2-1)とを含む反応混合物中でこれらを反応させることによって化合物(x2-2)を得ることができる。反応混合物中には必要に応じて、溶媒、塩基、及び触媒のうちいずれか1種以上をさらに含めることができる。溶媒としては、例えば、エチレングリコール、ノルマルブタノール、イソブタノール、ノルマルペンタノール、ノルマルヘキサノール、N-メチル-ピロリドン(NMP)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、トルエン、1,4-ジオキサン、エチレングリコール、ジメチルスルホキシド、ジクロロメタン等が挙げられる。塩基としては、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ピリジン、トリエチルアミン、リン酸水素2ナトリウム等が挙げられる。触媒としては、例えば、塩化パラジウム、酢酸パラジウム、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、ビス(ジ-tert-ブチル(4-ジメチルアミノフェニル)ホスフィン)ジクロロパラジウム、銅粉、酢酸銅一水和物、塩化銅、臭化銅、ヨウ化銅、硫酸銅五水和物、塩化スズ等が挙げられる、これら溶媒、塩基及び触媒は2種以上を併用してもよい。反応混合物の温度(反応温度)は、例えば、100℃以上であってよく、100~180℃であってよい。当該反応温度に保持する時間(反応時間)は、例えば、10分以上、又は40分以上であってよく、120時間以下、又は80時間以下であってよい。後処理は、例えば、反応混合物から化合物(x2-2)を含む有機層を分液操作により抽出すること、抽出した有機層を洗浄すること、洗浄後の有機層を乾燥させること等を含む方法によって行うことができる。化合物(x2-2)を含む有機層を抽出するための分液操作は、例えば、水、HCl水溶液(例えば、10w/w%HCl水溶液)、トルエン、ジクロロメタン等、及びこれらの混合溶媒を反応混合物に添加することによって行うことができる。分液操作の後、有機層の洗浄の前に、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液等を用いて抽出した有機層を中和してもよい。有機層の洗浄は、例えば、飽和食塩水等を用いて行うことができる。有機層の乾燥は、例えば、無水硫酸ナトリウム等の乾燥材を有機層に加えること、有機層から乾燥材をろ過した後、ろ液を減圧乾燥すること等により行うことができる。後処理は、精製処理を含んでいてもよい。精製処理は、例えば、シリカゲルカラムクロマトグラフィーを用いて行ってよい。ジクロロメタン、ヘキサン、メタノール及びこれらの混合溶媒等を用いた再沈殿による精製処理を行ってもよい。
【0080】
工程(2b)は、原料化合物として、化合物(x2-2)と、下記式(y2-2)で表される化合物(以下、「化合物(y2-2)」ともいう。)とを用い、これらの原料化合物を反応させて、下記式(x2-3)で表される化合物(以下、「化合物(x2-3)」ともいう。)を得る工程である。
【化28】
【化29】
【0081】
ここで、式中のA2b、A3b、Z2b、Z3b、R2b、R3b、X1b、n2b及びn3bは式(1-2)中のA2b、A3b、Z2b、Z3b、R2b、R3b、X1b、n2b及びn3bと同義である。
【0082】
工程(2b)で行われる反応及び後処理の条件は、原料化合物の構造等に応じて適宜設定することができる。工程(2b)では、例えば、化合物(x2-2)と化合物(y2-2)とを含む反応混合物中でこれらを反応させることによって化合物(x2-3)を得ることができる。反応混合物中には必要に応じて溶媒、塩基及び触媒のうちいずれか1種以上をさらに含めることができる。溶媒、塩基、触媒としては上記工程(1b)で例示した各種の溶媒、塩基、及び触媒を用いることができる。反応は、窒素雰囲気下で行われてもよい。反応混合物の温度(反応温度)は、例えば、80℃以上であってよく、80~160℃であってよい。当該反応温度に保持する時間(反応時間)は、例えば、1時間以上、又は5時間以上であってよく、1~10時間、又は5~8時間であってよい。後処理は、工程(1b)と同様にして行ってよい。
【0083】
工程(3b)は、原料化合物として、化合物(x2-3)と、下記式(y2-3)で表される化合物(以下、「化合物(y2-3)」ともいう。)とを用い、これらの原料化合物を反応させて、化合物(1-2)を得る工程である。
【化30】
【0084】
ここで、式中のA1b、Z1b、R1b及びn1bは式(1-2)中のA1b、Z1b、R1b及びn1bと同義であり、Q1bはハロゲン原子を示す。ハロゲン原子は臭素原子であってよく、塩素原子であってもよい。
【0085】
工程(3b)で行われる反応及び後処理の条件は、原料化合物の構造等に応じて適宜設定することができる。工程(3b)では、例えば、化合物(x2-3)と化合物(y2-3)とを含む反応混合物中でこれらを反応させることによって化合物(1-2)を得ることができる。反応混合物中には必要に応じて、溶媒、塩基、及び触媒のうちいずれか1種以上をさらに含めることができる。溶媒、塩基、触媒としては上記工程(1b)で例示した各種の溶媒、塩基、及び触媒を用いることができる。これら溶媒、塩基及び触媒は2種以上を併用してもよい。反応混合物の温度(反応温度)は、例えば、100℃以上であってよく、100~180℃であってよい。当該反応温度に保持する時間(反応時間)は、例えば、10分以上、又は40分以上であってよく、120時間以下、又は80時間以下であってよい。後処理は、工程(1b)と同様にして行ってよい。
【0086】
〔化合物(1-3)〕
化合物(1-3)は、600nm超750nm以下の範囲に極大吸収波長を有する傾向がある。そのため、化合物(1-3)は、青色色素として用いられ得る。
【0087】
化合物(1-3)は、極大吸収波長の観点から、下記式(1-3-1)で表される化合物であることが好ましく、下記式(1-3-1a)で表される化合物であることがより好ましい。
【化31】
【化32】
【0088】
式(1-3-1)中のZ1c、Z2c、R1c及びR2cは、それぞれ、上記式(1-3)中のZ1c、Z2c、R1c及びR2cと同義である。
【0089】
化合物(1-3)は、1種を単独で用いてよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0090】
化合物(1-3)の含有量は、例えば、第1の重合性化合物の総量100質量部に対して、5~90質量部、10~60質量部又は15~45質量部であってよい。
【0091】
化合物(1-3)は、公知化合物であるか、又は公知化合物から公知の製法に準じて製造することができる。化合物(1-3)は、例えば、原料化合物として、下記式(x3-1)で表される化合物(以下、「化合物(x3-1)」ともいう。)と、下記式(y3-1)及び式(y3-2)で表される化合物(以下、「化合物(y3-1)」及び「化合物(y3-2)」ともいう。)とを用い、これらの原料化合物を反応させて、化合物(1-3)を得る工程(1c)を含む方法により得ることができる。
【化33】
【化34】
【0092】
ここで、式中のA1c、A2c、Z1c、Z2c、R1c、R2c、n1c及びn2cは式(1-3)中のA1c、A2c、Z1c、Z2c、R1c、R2c、n1c及びn2cと同義であり、Q1c及びQ2cはそれぞれ独立してハロゲン原子を示す。ハロゲン原子は臭素原子であってよく、塩素原子であってもよい。なお、化合物(y3-1)と化合物(y3-2)とは互いに同一であってもよい。
【0093】
工程(1c)で行われる反応及び後処理の条件は、原料化合物の構造等に応じて適宜設定することができる。工程(1c)では、例えば、化合物(x3-1)と化合物(y3-1)と化合物(y3-2)とを含む反応混合物中でこれらを反応させることによって化合物(1-3)を得ることができる。反応混合物中には必要に応じて、溶媒、塩基、及び触媒のうちいずれか1種以上をさらに含めることができる。溶媒、塩基、触媒としては上記工程(1b)で例示した各種の溶媒、塩基、及び触媒を用いることができる。これら溶媒、塩基及び触媒は2種以上を併用してもよい。反応混合物の温度(反応温度)は、例えば、100℃以上であってよく、100~180℃であってよい。当該反応温度に保持する時間(反応時間)は、例えば、10分以上、又は40分以上であってよく、120時間以下、又は80時間以下であってよい。後処理は、例えば、化合物(1-3)を析出させること、析出した化合物(1-3)を洗浄すること、洗浄後の化合物(1-3)を乾燥(例えば、減圧乾燥)させること等を含む方法によって行うことができる。化合物(1-3)の析出は、例えば、メタノール、エタノール、水等、及びこれらの混合溶媒を反応混合物に添加することによって行うことができる。化合物(1-3)の洗浄は、例えば、メタノール、エタノール、HCl水溶液(例えば、5w/w%HCl水溶液)等を用いて行うことができる。後処理は、精製処理を含んでいてもよい。精製処理は、例えば、シリカゲルカラムクロマトグラフィーを用いて行ってよい。ジクロロメタン、ヘキサン、メタノール及びこれらの混合溶媒等を用いた再沈殿による精製処理を行ってもよい。
【0094】
化合物(1-3)が下記式(1-3’)で表される化合物(以下、「化合物(1-3’)」ともいう。)である場合、化合物(1-3’)は、下記に示す工程(2c)及び工程(3c)を含む方法によっても製造することができる。
【化35】
【0095】
式中のA1c、A2c、Z1c、Z2c、R1c、R2c、n1c及びn2cは式(1-3)中のA1c、A2c、Z1c、Z2c、R1c、R2c、n1c及びn2cと同義であり、Z3c及びZ4cは、炭素原子数1~20の直鎖状若しくは分岐状アルキレン基、又は炭素原子数2~30の直鎖状若しくは分岐状アルケニレン基を表す。
【0096】
工程(2c)は、原料化合物として、化合物(x3-1)と、下記式(y3-3)及び式(y3-4)で表される化合物(以下、「化合物(y3-3)」及び「化合物(y3-4)」ともいう。)とを用い、これらの原料化合物を反応させて、下記式(x3-2)で表される化合物(以下、「化合物(x3-2)」ともいう。)を得る工程である。
【化36】
【化37】
【0097】
ここで、式中のA1c及びA2cは式(1-3)中のA1c及びA2cと同義である。なお、化合物(y3-3)と化合物(y3-4)とは互いに同一であってもよい。
【0098】
工程(2c)で行われる反応及び後処理の条件は、原料化合物の構造等に応じて適宜設定することができる。工程(2c)では、例えば、化合物(x3-1)と化合物(y3-3)と化合物(y3-4)とを含む反応混合物中でこれらを反応させることによって化合物(x3-2)を得ることができる。反応混合物中には必要に応じて、溶媒、塩基、及び触媒のうちいずれか1種以上をさらに含めることができる。溶媒、塩基、触媒としては上記工程(1b)で例示した各種の溶媒、塩基、及び触媒を用いることができる。これら溶媒、塩基及び触媒は2種以上を併用してもよい。反応混合物の温度(反応温度)は、例えば、100℃以上であってよく、100~180℃であってよい。当該反応温度に保持する時間(反応時間)は、例えば、10分以上、又は40分以上であってよく、120時間以下、又は80時間以下であってよい。後処理は、工程(1c)と同様にして行ってよい。
【0099】
工程(3c)は、原料化合物として、化合物(x3-2)と、下記式(y3-5)及び式(y3-6)で表される化合物(以下、「化合物(y3-5)」及び「化合物(y3-6)」ともいう。)とを用い、これらの原料化合物を反応させて、化合物(1-3’)を得る工程である。
【化38】
【0100】
ここで、式中のA1c、A2c、Z1c、Z2c、Z3c、Z4c、R1c、R2c、n1c及びn2cは式(1-3’)中のA1c、A2c、Z1c、Z2c、Z3c、Z4c、R1c、R2c、n1c及びn2cと同義であり、Q3c及びQ4cはハロゲン原子を示す。ハロゲン原子は臭素原子であってよく、塩素原子であってもよい。なお、化合物(y3-5)と化合物(y3-6)とは互いに同一であってもよい。
【0101】
工程(3c)で行われる反応及び後処理の条件は、原料化合物の構造等に応じて適宜設定することができる。工程(3c)では、例えば、化合物(x3-2)と化合物(y3-5)と化合物(y3-6)とを含む反応混合物中でこれらを反応させることによって化合物(1-3’)を得ることができる。反応混合物中には必要に応じて、溶媒、塩基、及び触媒のうちいずれか1種以上をさらに含めることができる。溶媒、塩基、触媒としては上記工程(1b)で例示した各種の溶媒、塩基、及び触媒を用いることができる。これら溶媒、塩基及び触媒は2種以上を併用してもよい。反応混合物の温度(反応温度)は、例えば、100℃以上であってよく、100~180℃であってよい。当該反応温度に保持する時間(反応時間)は、例えば、10分以上、又は40分以上であってよく、120時間以下、又は80時間以下であってよい。後処理は、工程(1c)と同様にして行ってよい。
【0102】
化合物(1)の含有量(総量)は、例えば、第1の重合性化合物の総量100質量部に対して、5~90質量部、10~60質量部又は15~45質量部であってよい。
【0103】
第1の重合性化合物の含有量(総量)の範囲は、電圧OFF時の遮光性、耐熱性の観点から、液晶組成物中の液晶成分の総量100質量部に対して、0.2質量部以上、0.5質量部以上又は1質量部以上であってよい。第1の重合性化合物の含有量(総量)は、組成物中での溶解性、電圧OFF時の透明性の観点から、液晶組成物中の液晶成分の総量100質量部に対して、15質量部以下、13質量部以下又は10質量部以下であってよい。これらの観点から、第1の重合性化合物の含有量(総量)は、液晶組成物中の液晶成分の総量100質量部に対して、0.2~15質量部、0.5~13質量部又は1~10質量部であってよい。
【0104】
[第2の重合性化合物]
第2の重合性化合物は、重合性基を1又は2以上有する。第2の重合性化合物が有する重合性基の例は、上述した第1の重合性化合物が有する重合性基の例と同じである。第2の重合性化合物が有する重合性基は、1種であっても2種以上であってもよい。
【0105】
第2の重合性化合物は、好ましくは(メタ)アクリレートである。ここで、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート、及び、それに対応するメタクリレートの少なくとも一方を意味する。
【0106】
第2の重合性化合物としては、後述する第1~第4成分のうちの少なくとも1種を用いることが好ましい。中でも、第1成分を用いることが好ましく、第1成分と、第2成分及び第3成分のうちの少なくとも1種とを組み合わせて用いることがより好ましい。より密着性を重視する場合には、第4成分を用いることが好ましい。
【0107】
-第1成分-
第1成分は、例えば、下記式(v)で表される鎖状単官能重合性化合物である。
【0108】
【0109】
式(v)中、Piia1は重合性基を表し、
Riia2は炭素原子数1~22の直鎖又は分岐のアルキル基を表すが、該アルキル基中の1つ又は2つ以上の-CH2-は、酸素原子が直接隣接しないようにそれぞれ独立して、-O-、-CO-、-COO-又は、-OCO-で置換されていてもよく、該アルキル基中に存在する1又は2以上の水素原子は、それぞれ独立して、フッ素原子又は-OHで置換されていてもよい。
【0110】
式(v)で表される化合物において、Piia1は重合性基を表すが、好ましくは、上記式(P-1)~(P-21)のいずれかで表される基である。
【0111】
重合性及び保存安定性を高める観点では、上記式(P-1)~(P-21)で表わされる重合性基のうち、式(P-1)、式(P-2)、式(P-7)、式(P-12)、式(P-13)又は式(P-21)で表わされる重合性基が好ましく、式(P-1)、式(P-2)、式(P-7)又は式(P-21)で表わされる重合性基がより好ましく、特に式(P-1)、式(P-2)又は式(P-21)で表わされる重合性基が好ましい。
【0112】
式(v)で表される化合物において、Riia2は炭素原子数3~30の直鎖又は分岐のアルキル基を表すことがより好ましく、炭素原子数6~28の直鎖又は分岐のアルキル基を表すことが特に結晶性を抑制できる点から好ましく、分岐のアルキル基を表すことがさらにより好ましく、炭素原子数9~24の分岐のアルキル基を表すことがさらにより好ましく、炭素原子数9~24の分岐のアルキル基を表すことが最も好ましい。なお、上記「直鎖又は分岐のアルキル基」には、該アルキル基中の1つ又は2つ以上の-CH2-が、酸素原子が直接隣接しないように-O-で置換されたものも包含される。
【0113】
R
iia2が分岐のアルキル基を表す場合、式(v)で表される化合物としては、下記の構造で表される分岐状アルキル鎖を有するモノ(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレートが好ましい。
【化40】
【0114】
特に電圧無印加時の透明性を良好に維持しつつ、駆動電圧を低減効果が顕著なものとなる観点では、式(v)で表される化合物のなかでも分岐状アルキル鎖を有するモノ(メタ)アクリレートを用いることが好ましい。
【0115】
式(v)で表される化合物は、1種を単独で用いてよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0116】
式(v)で表される化合物の含有量は、低電圧駆動化の観点から、また、液晶組成物中の各成分の相溶性を高める観点から、重合性成分の総量を基準として、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、15質量%以上であることが特に好ましい。式(v)で表される化合物の含有量は、密着性の観点から、重合性成分の総量を基準として、60質量%以下であることが好ましく、50質量%以下であることがより好ましく、40質量%以下であることが特に好ましい。
【0117】
第1成分は、下記式(ii)で表される環状単官能重合性化合物であってもよい。
【化41】
【0118】
式(ii)中、
P
iii1は重合性基を表し、
Z
iii1は単結合、又は炭素原子数1~7のアルキレン基を表し、該アルキレン基中の1つ又は2つ以上の隣接しない-CH
2-は酸素原子が直接隣接しないようにそれぞれ独立して-O-、-CO-、-COO-又は-OCO-で置換されていてもよく、
A
iii1は下記式(ii-1)~(ii-20)で表される基を表す。
【化42】
【0119】
式(ii-1)~(ii-20)中、1つ以上の-CH2-はそれぞれ独立して、-O-、-S-、-COO-、-OCO-、-NH-、-NCH3-、又は-CO-で置換されていてもよいが、式(ii-1)~(ii-20)中に酸素原子及び/又は硫黄原子が合計2個以上存在する場合には、これらは-O-O-、-O-S-又は-S-S-のようにお互い同士結合することはなく、また、一つ以上の-CH2-CH2-は、-CH=CH-基に置換されていてもよく、また、式(ii-1)~(ii-20)中の水素原子は炭素原子数1~8のアルキル基で置換されていてもよく、該アルキル基は直鎖であっても分岐鎖であってもよく、該アルキル基中の1つ又は2つ以上の隣接しない-CH2-は酸素原子が直接隣接しないようにそれぞれ独立して-O-、-CO-、-COO-又は-OCO-で置換されていてもよい。また、式中の黒点はZiii1への結合手を表す。
【0120】
式(ii)で表される化合物は、可撓性に優れる材料であり、この化合物を用いると、曲げた状態でも白濁性を維持することができる。また、密着性を高めるとともに、液晶組成物中の各成分の相溶性を高めることができる。式(ii)で表される化合物は、非液晶性の化合物である。
【0121】
式(ii)で表される化合物において、Piii1の好ましい例は式(v)中のPiia1で表される重合性基の好ましい例と同じである。
【0122】
式(ii)で表される化合物において、Ziii1は単結合又は炭素原子数1~7のアルキレン基を表し、該アルキレン基中の1つ又は2つ以上の-CH2-は、酸素原子が直接隣接しないようにそれぞれ独立して-O-、-CO-、-COO-又は-OCO-で置換されていてもよく、該アルキレン基中に存在する1つ又は2つ以上の水素原子は、それぞれ独立してフッ素原子で置換されていてもよい。Ziii1は、単結合又は炭素原子数1~6のアルキレン基であることが好ましく、単結合又は炭素原子数1~3のアルキレン基であることがより好ましく、単結合又は-CH2-基であるのが特に好ましい。
【0123】
式(ii)で表される化合物において、A
iii1は、密着性をより向上させる観点から、A
iii1中に窒素原子、酸素原子、硫黄原子を有する複素環構造を有することが好ましく、より具体的には、以下の式(ii-a1)~(ii-a11)で表される基であることが好ましい。特に、環状構造が窒素原子を有する場合には、環状構造が窒素原子の存在により、密着性をより向上させることができる。
【化43】
【0124】
式(ii-a1)~(ii-a11)中、1つ以上の-CH2-はそれぞれ独立して-CO-で置換されていてもよく、また、式(ii-a1)~(ii-a11)中の水素原子は炭素原子数1~8のアルキル基で置換されていてもよく、該アルキル基中の1つ又は2つ以上の隣接しない-CH2-は酸素原子が直接隣接しないようにそれぞれ独立して-O-、-CO-、-COO-又は-OCO-で置換されていてもよい。
【0125】
式(ii-a1)~(ii-a11)中の水素原子は炭素原子数1~8のアルキル基で置換されていてもよく、該アルキル基は直鎖であっても分岐鎖であってもよく、該アルキル基中の1つ又は2つ以上の隣接しない-CH2-は酸素原子が直接隣接しないようにそれぞれ独立して-O-、-CO-、-COO-又は-OCO-で置換されていてもよい。
【0126】
式(ii-a1)~(ii-a11)中の黒点はZiii1への結合手を表す。
【0127】
式(ii)で表される化合物としては、具体的には、下記の式(II-34)~(II-51)で表される化合物が好ましい。
【化44】
【0128】
式(II-34)~(II-51)中、X5は水素原子、又はメチル基を表す。
【0129】
式(II-34)~(II-51)で表される化合物の中でも、式(II-34)、(II-36)、式(II-38)、式(II-39)、式(II-40)、式(II-41)、式(II-43)、又は式(II-45)で表される化合物を用いることがより好ましい。
【0130】
式(ii)で表される化合物は、1種を単独で用いてよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0131】
式(ii)で表される化合物の含有量は、密着性を向上させる観点から、また、液晶組成物中の各成分の相溶性を高める観点から、重合性成分の総量を基準として、10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましく、30質量%以上であることが特に好ましい。式(ii)で表される化合物の含有量は、低電圧化の観点から、重合性成分の総量を基準として、80質量%以下であることが好ましく、70質量%以下であることがより好ましく、60質量%以下であることが特に好ましい。
【0132】
第1成分としては、低電圧を重視する場合は、式(v)で表される化合物を用いることが好ましく、密着性を重視する場合は式(ii)で表される化合物を用いることが好ましい。第1成分としては、式(v)で表される化合物と式(ii)で表される化合物とを併用することもできる。
【0133】
-第2成分-
第2成分は、重量平均分子量が2000以上の多官能(メタ)アクリレートオリゴマーである。多官能(メタ)アクリレートオリゴマーは、ポリマーのネットワーク構造中に架橋構造を導入するために、また、良好な密着性を得るために用いられてよい。
【0134】
多官能(メタ)アクリレートオリゴマーの重量平均分子量は、2000以上であり、2000~60000が好ましく、2500~40000がより好ましく、2800~35000がさらにより好ましく、3000~30000がさらにより好ましい。これは、分子量が小さすぎると、1分子中に含まれる(メタ)アクリル基の増加によって引き起こる架橋密度の増加により、硬化収縮の度合いが大きくなり、密着性が悪化してしまうこと、及び、分子量が大きいすぎると、架橋間距離が長くなるため、隙間が大きくなり、液晶を取り込みやすくなるために高分子分散型液晶としての散乱性が低下するからである。すなわち高温下での環境に放置すると、ポリマーが液晶を吸収してしまい、特性が大きく変化してしまうためである。また、分子量が大きすぎると重合性化合物添加による高分子分散型液晶の転移点Tnmの低下度合いが小さくなり、Tnmを室温以下にするには、液晶化合物自身のTniが低い材料を用いなければならなくなるため、結果的に動作温度範囲が狭くなってしまう問題も生じてしまう。
【0135】
多官能(メタ)アクリレートオリゴマーの中でも、2官能アクリレートオリゴマーが好ましい。さらに、基材との密着性を重視するには、ウレタン系又はポリエステル系の(メタ)アクリレートオリゴマーが好ましく、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーがより好ましい。ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーはポリエステル系のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーであってもよいが、ポリエーテル系のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーが好ましい。
【0136】
多官能のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、水酸基含有(メタ)アクリレートと、ポリオールと、ポリイソシアネートとを反応させて得られる。
【0137】
ポリオールとしては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリブタジエンポリオール等があげられ、ポリエーテルポリオールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等が挙げられる。
【0138】
ポリイソシアネートとしては、2、4-および2、6-トリレンジイソシアネート(TDI)、オルトトルイジンジイソシアネート(TODI)、ナフチレンジイソシアネート(NDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、4、4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、メチレンビス(4-シクロヘキシルイソシアネート)、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トランスシクロヘキサン1,4-ジイソシアネート、1,6,11-ウンデカントリイソシアネート、1,8-ジイソシアネート-4-イソシアネートメチルオクタン、1,3,6-ヘキサメチレントリイソシアネート、ビシクロヘプタントリイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ジシクロペンタジエンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、およびカルボジイミド変成MDI、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、ポリメリックポリイソシアネート等があげられる。
【0139】
水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、1,4-シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート、ε-カプロラクトンで変性されたモノ(メタ)アクリレート等があげられる。
【0140】
ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、具体的には、脂肪族ウレタン(メタ)アクリレート又は芳香族ウレタン(メタ)アクリレートを用いることが好ましく、脂肪族ウレタンアクリレートを用いることがより好ましい。また、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、ポリウレタンジ(メタ)アクリレートオリゴマーを用いることが好ましい。
【0141】
用いるポリオールとしては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカプロラクトンポリオールが好ましく、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオールが特に好ましい。
【0142】
用いるポリイソシアネートとしては、環状構造を有するポリイソシアネートが好ましく、脂環構造を有するポリイソシアネートが特に好ましい。より具体的には、オルトトルイジンジイソシアネート(TODI)、メチレンビス(4-シクロヘキシルイソシアネート)、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、トランスシクロヘキサン1,4-ジイソシアネート、1,6,11-ウンデカントリイソシアネート、ビシクロヘプタントリイソシアネート、ジシクロペンタジエンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、カルボジイミド変成MDIが好ましく、メチレンビス(4-シクロヘキシルイソシアネート)、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、トランスシクロヘキサン1,4-ジイソシアネート、1,6,11-ウンデカントリイソシアネート、ビシクロヘプタントリイソシアネート、ジシクロペンタジエンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートが特に好ましい。
【0143】
用いる水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,4-シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート、ε-カプロラクトンで変性されたモノ(メタ)アクリレートが好ましく、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0144】
ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、以下の一般式(i-1)の化合物も好ましい。
【化45】
【0145】
式(i-1)中、X
i1はそれぞれ独立して水素原子、又はメチル基を表し、B
1は各々独立して、炭素原子数1~4までのアルキル基を表し、該アルキル基中の一つ以上の-CH
2-は酸素原子、-CO-、-COO-、-OCO-で置換されていてもよく、bは1~20を表す。B
2は、下記式(i-2)~(i-6)で表される基の中から選ばれる基を表し、bが2以上である場合、複数のB
2は互いに同一であっても異なっていてもよい。
【化46】
【0146】
B
3は下記式(i-7)~(i-11)で表される基の中から選ばれる基を表し、bが2以上である場合、複数のB
3は互いに同一であっても異なっていてもよい。
【化47】
【0147】
式(i-7)~(i-11)中、Xi4、及びXi5はそれぞれ独立に水素原子、又はメチル基を表し、Xi2、及びXi3はそれぞれ独立に炭素原子数1~9のアルキル基を表し、Y3は分岐鎖を有していてもよい炭素原子数1~15のアルキレン基、2価の芳香族基又は2価の脂環式炭化水素基を表し、該アルキレン基中の一つ以上の-CH2-基は、酸素原子が互いに隣接しない条件で酸素原子、-COO-、-OCO-で置換されていてもよく、t1及びt2はそれぞれ独立して0、又は1を表し、t3は0~300の整数を表す。
【0148】
第2成分は、1種を単独で用いてよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0149】
第2成分の含有量は、密着性を高める観点から、重合性成分の総量を基準として、5質量%以上であることが好ましく、15質量%以上であることがより好ましく、25質量%以上であることが特に好ましい。第2成分の含有量は、低電圧化の観点から、重合性成分の総量を基準として、80質量%以下であることが好ましく、60質量%以下であることがより好ましく、50質量%以下であることが特に好ましい。
【0150】
-第3成分-
第3成分は、下記式(iv)で表される重量平均分子量2000未満の多官能重合性化合物である。
【化48】
【0151】
式(iv)中、
Y31は水素原子、又はメチル基を表し、
X31は炭素原子数130以下のアルキレン基を表し、該アルキレン基は環式炭化水素基や分岐鎖を有していてもよく、該アルキレン基、又は環式炭化水素基中の一つ以上の-CH2-基は、酸素原子が互いに直接隣接しないようにそれぞれ独立して-O-、-NH-、-CO-、-COO-、-OCO-、-CH=CH-、又は-C≡C-で置換されていてもよく、該アルキレン基又は環式炭化水素基中に存在する1つ又は2つ以上の水素原子は、それぞれ独立してフッ素原子又は-OHで置換されていてもよく、
n31は2~6の整数を表す。
【0152】
式(iv)で表される重合性化合物としては、好ましくは下記式(iv-1)で表される重合性化合物を用いることが好ましい。
【化49】
【0153】
式(iv-1)中、
Y1、及びY2は水素原子、又はメチル基を表し、
X1は直鎖又は分岐の炭素原子数2~80のアルキレンを表す。該アルキレンの任意の炭素原子は、酸素原子が直接隣接しないように、-O-、-CO-、-COO-、-OCO-、-CH=CH-、-C≡C-又は、OHで置換されてよい。該アルキレンの炭素原子数は6~70の範囲であることが好ましく、中でも8~60の範囲であることが好ましく、特に9~50の範囲であることが駆動電圧低下の点から好ましい。
【0154】
式(iv-1)で表される重合性化合物としては、例えば、下記式(iv-1-1)~(iv-1-10)で表される化合物が挙げられる。
【化50】
【0155】
式(iv-1-1)~(iv-1-10)中、n及びmはn+mが1~10となる整数、n2は1~18の整数、n3及びm2はn3+m2が1~18となる整数、n4は1~23の整数、n5は1~23の整数、n6は4~30の整数、n7は2~10の整数、n8及びn9は2~10の整数をそれぞれ表す。
【0156】
第3成分はオリゴマーであってもモノマーであってもよい。第3成分の分子量は、1500以下であることが好ましく、1000以下であることがより好ましい。
【0157】
第3成分は、1種を単独で用いてよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。例えば、オリゴマーとモノマーを組み合わせて用いてもよい。
【0158】
第3成分の含有量は、耐熱性向上の観点から、重合性成分の総量を基準として、2質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましく、10質量%以上であることがさらに好ましい。第3成分の含有量は、密着性を維持する観点から、重合性成分の総量を基準として、50質量%以下であること、40質量%以下であること、30質量%以下であること、25質量%以下であることが特に好ましい。
【0159】
-第4成分-
第4成分は、下記式(x)で表されるリン系(メタ)アクリレートである。
【化51】
【0160】
式(x)中、
Y
31は水素原子、又はメチル基を表し、
X
31は、下記式(x-1)で表される2価の基を有する、炭素原子数130以下のアルキレン基を表し、該アルキレン基は環式炭化水素基や分岐鎖を有していてもよく、該アルキレン基、又は環式炭化水素基中の一つ以上の-CH
2-基は、酸素原子が互いに直接隣接しないようにそれぞれ独立して-O-、-NH-、-CO-、-COO-、-OCO-、-CH=CH-、又は-C≡C-で置換されていてもよく、該アルキレン基又は環式炭化水素基中に存在する1つ又は2つ以上の水素原子は、それぞれ独立してフッ素原子又は-OHで置換されていてもよく、
n
31は1~6の整数を表す。
【化52】
【0161】
第4成分としては、具体的には、下記式(x-2)及び(x-3)で表される化合物を用いることが好ましい。
【化53】
【0162】
式(x-2)及び(x-3)中、X6、X7、及びX8はそれぞれ独立して水素原子、又はメチル基を表し、q、r、及びsは1~4の整数を表す。
【0163】
第4成分は、1種を単独で用いてよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0164】
第4成分の含有量は、重合性成分の総量を基準として、0.005質量%以上2質量%以下であることが好ましく、0.01質量%以上0.5質量%以下であることがより好ましく、0.01質量%以上0.2質量%以下であることがさらに好ましい。
【0165】
-その他の重合性化合物-
第2の重合性化合物としては、上記第1~第4成分以外の重合性化合物(例えば、メソゲン性骨格を有する重合性化合物等)を用いてもよい。上記第1~第4成分以外の第2の重合性化合物の含有量は、液晶組成物中の重合性成分の総量を基準として、5質量%以下であってよく、0質量%であってもよい。
【0166】
第2の重合性化合物の含有量(総量)は、高散乱性、高密着性の観点から、液晶組成物の総量を基準として、20質量%以上、30質量%以上又は40質量%以上であってよい。第2の重合性化合物の含有量(総量)は、高散乱性、低電圧性の観点から、液晶組成物の総量を基準として、70質量%以下、60質量%以下又は50質量%以下であってよい。これらの観点から、第2の重合性化合物の含有量(総量)は、高散乱性の観点から、液晶組成物の総を基準として、20~70質量%、30~60質量%又は40~50質量%であってよい。ここで、上記液晶組成物の総量とは、例えば、液晶組成物中の液晶成分、重合性成分及び重合開始剤の総量である。
【0167】
重合性成分の含有量(総量)は、高散乱性、高密着性の観点から、液晶組成物の総量を基準として、20質量%以上、30質量%以上又は40質量%以上であってよい。重合性成分の含有量の含有量(総量)は、高散乱性、低電圧性の観点から、液晶組成物の総量を基準として、70質量%以下、60質量%以下又は50質量%以下であってよい。これらの観点から、重合性成分の含有量の含有量(総量)は、高散乱性の観点から、液晶組成物の総量を基準として、20~70質量%、30~60質量%又は40~50質量%であってよい。
【0168】
(重合開始剤)
重合開始剤は、重合性化合物を重合させるために用いる。重合開始剤は、重合を光照射によって行う場合に使用される、光重合開始剤であることが好ましい。光重合開始剤としては、重合性化合物の重合性に対応した活性種を発生するものを使用すればよく、例えば、光ラジカル重合開始剤又は光カチオン重合開始剤を用いることができる。光重合開始剤としては、公知慣用のものを使用できる。
【0169】
光ラジカル重合開始剤としては、例えば1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン「オムニラッド184」、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン「オムニラッド1173」、2-メチル-1-[(メチルチオ)フェニル]-2-モリホリノプロパン-1「オムニラッド907」、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン「オムニラッドBDK」、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン「オムニラッド369」)、2-ジメチルアミノ-2-(4-メチルベンジル)-1-(4-モルフォリノ-フェニル)ブタン-1-オン「オムニラッド379」、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン「オムニラッド651」等のアルキルフェノン系光ラジカル重合開始剤;2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-ジフェニルフォスフィンオキサイド「オムニラッドTPO」、2,4,6-トリメチルベンゾイル-フェニル-フォスフィンオキサイド「オムニラッド819」(IGM Resins株式会社製)等のアシルホスフィンオキサイド系光ラジカル重合開始剤;1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-,2-(O-ベンゾイルオキシム)],エタノン「イルガキュアOXE01」)、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)「イルガキュアOXE02」、「イルガキュアOXE04」(BASF株式会社製)、「アデカアークルズNCI-831」、「アデカアークルズNCI-930」、「アデカアークルズN-1919」(ADEKA社製)等のオキシムエステル系光ラジカル重合開始剤などが挙げられる。光ラジカル重合開始剤としては、2,4-ジエチルチオキサントン(日本化薬社製「カヤキュアDETX」)とp-ジメチルアミノ安息香酸エチル(日本化薬社製「カヤキュアEPA」)との混合物、イソプロピルチオキサントン(ワ-ドプレキンソップ社製「カンタキュア-ITX」)とp-ジメチルアミノ安息香酸エチルとの混合物、「エサキュア ONE」、「エサキュアKIP150」、「エサキュアKIP160」、「エサキュア1001M」、「エサキュアA198」、「エサキュアKIP IT」、「エサキュアKTO46」、「エサキュアTZT」(lamberti株式会社製)、「スピードキュアBMS」、「スピードキュアPBZ」、「ベンゾフェノン」(LAMBSON社製)等を用いることもできる。これらは、1種を単独で用いてよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0170】
上記の中でも、電圧OFF時の遮光性やコントラストがより優れる観点から、オキシムエステル系光ラジカル重合開始剤又はアシルホスフィンオキサイド系光ラジカル重合開始剤を用いることが好ましく、アシルホスフィンオキサイド系光ラジカル重合開始剤を用いることがより好ましい。
【0171】
光カチオン重合開始剤としては、光酸発生剤を用いることができる。光酸発生剤としてはジアゾジスルホン系化合物、トリフェニルスルホニウム系化合物、フェニルスルホン系化合物、スルフォニルピリジン系化合物、トリアジン系化合物及びジフェニルヨードニウム化合物などが挙げられる。
【0172】
光重合開始剤の含有量は、液晶組成物中の重合性成分の総量100質量部に対し、0.1質量部以上10質量部以下が好ましく、0.2質量部以上6質量部以下がより好ましい。
【0173】
重合開始剤としては、熱重合開始剤を用いることもできる。熱重合の際に使用する熱重合開始剤としては、公知慣用のものが使用でき、例えば、メチルアセトアセテイトパーオキサイド、キュメンハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ビス(4-t-ブチルシクロヘキシル)パ-オキシジカーボネイト、t-ブチルパーオキシベンゾエイト、メチルエチルケトンパーオキサイド、1,1-ビス(t-ヘキシルパ-オキシ)3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、p-ペンタハイドロパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、イソブチルパーオキサイド、ジ(3-メチル-3-メトキシブチル)パーオキシジカーボネイト、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン等の有機過酸化物、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)等のアゾニトリル化合物、2,2’-アゾビス(2-メチル-N-フェニルプロピオン-アミヂン)ジハイドロクロライド等のアゾアミヂン化合物、2,2’アゾビス{2-メチル-N-[1,1-ビス(ヒドロキシメチル)-2-ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}等のアゾアミド化合物、2,2’アゾビス(2,4,4-トリメチルペンタン)等のアルキルアゾ化合物等を使用することができる。これらは、1種を単独で用いてよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0174】
熱重合開始剤の含有量は、液晶組成物中の重合性成分の総量100質量部に対し、0.1質量部以上10質量部以下が好ましく、1質量部以上6質量部以下がより好ましい。
【0175】
(液晶成分)
液晶成分は、少なくとも非重合性液晶化合物を含む。非重合性液晶化合物としては、動作温度範囲、動作電圧、光散乱性、溶解性等の観点から、下記式(3)で表される化合物(以下、「化合物(3)」ともいう。)が好ましく用いられる。
【化54】
【0176】
式(3)中、
R11は炭素原子数1~10のアルキル基(この基中に存在する水素原子はフッ素原子に置き換えられてもよく、この基中に存在する1個の-CH2-又は隣接していない2個以上の-CH2-はそれぞれ独立して、-CH=CH-、-C≡C-、-O-、-CO-、-COO-又は-OCO-に置き換えられてもよい。)を表し、
R12はハロゲン原子、シアノ基、イソチオシアネート基又は炭素原子数1~10のアルキル基(該アルキル基中に存在する水素原子はフッ素原子に置き換えられてもよく、該アルキル基中に存在する1個の-CH2-又は隣接していない2個以上の-CH2-はそれぞれ独立して、-CH=CH-、-C≡C-、-O-、-CO-、-COO-又は-OCO-に置き換えられてもよい。)を表し、
A11、A12及びA13はそれぞれ独立して
(a3)1,4-シクロヘキシレン基(この基中に存在する1個の-CH2-又は隣接していない2個以上の-CH2-は-O-に置き換えられてもよい。)、
(b3)1,4-フェニレン基(この基中に存在する1個の-CH=又は隣接していない2個以上の-CH=は-N=に置き換えられてもよい。)及び
(c3)1,4-シクロヘキセニル基、テトラヒドロピラン-2,5-ジイル基、1,3-ジオキサン-2,5-ジイル基、デカヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、ピリジン-2,5-ジイル基、ピリミジン-2,5-ジイル基、ピラジン-2,5-ジイル基、ナフタレン-2,6-ジイル基、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基(ナフタレン-2,6-ジイル基及び1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基中に存在する1個の-CH=又は隣接していない2個以上の-CH=は-N=に置き換えられてもよい。)
からなる群より選ばれる基を表し、前記の基(a3)、基(b3)及び基(c3)中に存在する水素原子はそれぞれ独立して、シアノ基、メチル基、トリフルオロメチル基、トリフルオロメチルオキシ基、フッ素原子又は塩素原子に置き換えられてもよく、
Z11及びZ12はそれぞれ独立して、単結合、-CH2CH2-、-(CH2)4-、-OCH2-、-CH2O-、-COO-、-OCO-、-OCF2-、-CF2O-、-CH=N-N=CH-、-CH=CH-、-CF=CF-又は-C≡C-を表し、
n11は0~3の整数を表し、
A11及びZ11が複数存在する場合、複数のA11は互いに同一であっても異なっていてもよく、複数のZ11は互いに同一であっても異なっていてもよい。ただし、式中で酸素原子と酸素原子が直接結合することはない。なお、上記のとおり、化合物(3)は、分子中に-CH=CH-、-C≡C-等の不飽和結合を含み得るが、化合物(3)の構造上、これらの不飽和結合を有する基(例えばアルケニル基)は重合性基として機能しない基であり、実質的に、重合性基ではない。
【0177】
R11は、炭素原子数1~8のアルキル基、炭素原子数1~8のアルコキシ基、炭素原子数2~8のアルケニル基又は炭素原子数2~8のアルケニルオキシ基が好ましく、炭素原子数1~5のアルキル基、炭素原子数1~5のアルコキシ基、炭素原子数2~5のアルケニル基又は炭素原子数2~5のアルケニルオキシ基が好ましく、炭素原子数1~5のアルキル基又は炭素原子数2~5のアルケニル基がさらに好ましく、炭素原子数2~5のアルキル基又は炭素原子数2~3のアルケニル基がさらに好ましく、炭素原子数2~5のアルキル基が特に好ましい。
【0178】
R11は、信頼性を重視する場合にはアルキル基であることが好ましい。R11は、ネマチック相を安定化させるためには、炭素原子及び酸素原子の合計が5以下であることが好ましく、直鎖状であることが好ましい。
【0179】
R12は、好ましくはフッ素原子、シアノ基又は炭素原子数1~5のアルキル基(該アルキル基中の1個の-CH2-又は隣接していない2個以上の-CH2-は-O-に置き換えられてもよい。)である。
【0180】
A
11、A
12及びA
13はそれぞれ独立して、上記の基(a3)及び基(b3)からなる群より選ばれる基を表すことが好ましい。中でも、A
13は基(b3)であることが好ましく、下記式(b3-1)で表される構造の基であることがより好ましい。
【化55】
【0181】
Ri3、Ri4及びRi5はそれぞれ独立して、水素原子又はフッ素原子を表す。式(b3-1)中の*がR12への結合手を表し、波線がZ12への結合手を表す。
【0182】
A13が基(b3)であるとき、屈折率異方性(Δn)を大きくすることが求められる場合には、A11及びA12は芳香族であることが好ましい。また、応答速度を改善するためには、A11及びA12は脂肪族であることが好ましい。これらの観点から、A11及びA12はそれぞれ独立して、トランス-1,4-シクロへキシレン基(この基中に存在する1個の-CH2-又は隣接していない2個以上の-CH2-は-O-に置き換えられてもよく、この基中に存在する-CH=は-N=に置き換えられてもよい。)、又は、1,4-フェニレン基、2-フルオロ-1,4-フェニレン基、3-フルオロ-1,4-フェニレン基、3,5-ジフルオロ-1,4-フェニレン基若しくは2,3-ジフルオロ-1,4-フェニレン基(これらの基中に存在する1個の-CH=又は隣接していない2個以上の-CH=は-N=に置き換えられてもよい。)を表すことが好ましい。
【0183】
中でもA
11及びA
12は、それぞれ独立して下記の構造のいずれかを表すことがより好ましい。
【化56】
【0184】
上記構造中の波線で表される結合手がR11側の結合手であり、*で表される結合手がR12側の結合手である。
【0185】
A
11及びA
12は、それぞれ独立して下記の構造のいずれかを表すことがさらに好ましい。なお、下記構造中の波線及び*は上記と同義である。
【化57】
【0186】
n11は、0、1又は2であることが好ましい。Δεの改善に重点を置く場合、n11は0又は1であることが好ましい。転移温度(Tni)を重視する場合には、n11は1又は2であることが好ましい。
【0187】
上記化合物(3)は、1種を単独で用いてよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。例えば、化合物(3)を、2種、3種、4種、5種、6種、7種、8種又は9種組み合わせて用いてよく、10種以上組み合わせて用いてもよい。組み合わせることができる化合物の種類に特に制限は無いが、低温での溶解性、転移温度、電気的な信頼性、複屈折率などの所望の性能に応じて組み合わせて使用する。
【0188】
化合物(3)の含有量は、散乱性、低電圧駆動の観点から、液晶組成物中の液晶成分、重合性化合物及び重合開始剤の総量を基準として、25質量%以上、35質量%以上又は45質量%以上であってよい。化合物(3)の含有量は、散乱性、信頼性の観点から、液晶組成物中の液晶成分、重合性化合物及び重合開始剤の総量を基準として、80質量%以下、70質量%以下又は60質量%以下であってよい。これらの観点から、化合物(3)の含有量は、液晶組成物中の液晶成分、重合性化合物及び重合開始剤の総量を基準として、25~80質量%、35~70質量%又は45~60質量%であってよい。
【0189】
上記化合物(3)は、25℃における誘電率異方性(Δε)が正の液晶化合物(いわゆるp型液晶化合物)又は誘電率異方性(Δε)がほぼ0の液晶化合物(いわゆるノンポーラ型液晶化合物)である。
【0190】
一実施形態では、化合物(3)として、トラン骨格を有する化合物(以下、「トラン系液晶化合物」という。)を用いることが好ましい。具体的には、化合物(3)として、式(3)中のZ12が-C≡C-である化合物を用いることがより好ましい。液晶成分が該トラン系液晶化合物を含む場合、液晶素子において、密着性、光散乱性が良好になりやすく、室温時及び低温時の低電圧駆動を実現しやすい。
【0191】
トラン系液晶化合物において、式(3)中のR12は、炭素原子数1~10のアルキル基(置換されたものも含む)であることが好ましい。
【0192】
トラン系液晶化合物において、式(3)中のA
11は、1,4-シクロへキシレン基であるか、又は、下記式(A1)~(A12)で表されるいずれかの構造であることが好ましく、A
12及びA
13はそれぞれ独立して、下記式(A1)~(A12)で表されるいずれかの構造であることが好ましい。
【化58】
【化59】
【0193】
上記構造中の波線で表される結合手がR11側の結合手であり、*で表される結合手がR12側の結合手である。
【0194】
A11は、高散乱の点から、1,4-フェニレン基であることがより好ましく、A12及びA13は、高速応答の点から、上記式(A5)~(A8)、式(A11)及び式(A12)で表されるいずれかの構造となるように選択されることが好ましい。
【0195】
トラン系液晶化合物において、式(3)中のZ11は、-C≡C-、-CF2O-、-OCF2-、トランス--CH=CH-、トランス--CF=CF-、-COO-、-CH2-CH2-、-CF2-CF2-又は単結合であることが好ましく、単結合であることがより好ましい。
【0196】
トラン系液晶化合物において、式(3)中のn11は0又は1であることが好ましい。
【0197】
トラン系液晶化合物の好適な具体例としては、下記式(3T)で表される化合物が挙げられる。
【化60】
【0198】
式(3T)中、
RT1及びRT2はそれぞれ独立して、炭素原子数1~10のアルキル基(この基中に存在する1個の-CH2-又は隣接していない2個以上の-CH2-は-CH=CH-、-C≡C-、-O-、-CO-、-COO-又は-OCO-に置き換えられてもよい。)を表し、
AT1、AT2及びAT3はそれぞれ独立して、1,4-フェニレン基(この基中に存在する1個の-CH=又は隣接していない2個以上の-CH=は-N=に置き換えられてもよく、この基中の水素原子はメチル基、シアノ基、フッ素原子又は塩素原子に置き換えられてもよい。)を表し、
nT1は0又は1を表す。
【0199】
RT1及びRT2で表されるアルキル基の詳細(好ましい態様を含む)は、式(3)中のR11で表されるアルキル基の詳細と同じである。
【0200】
AT1及びAT2はそれぞれ独立して、1,4-フェニレン基、2-フルオロ-1,4-フェニレン基、3-フルオロ-1,4-フェニレン基、3,5-ジフルオロ-1,4-フェニレン基又は2,3-ジフルオロ-1,4-フェニレン基を表すことが好ましく、1,4-フェニレン基、3-フルオロ-1,4-フェニレン基又は3,5-ジフルオロ-1,4-フェニレン基を表すことがより好ましい。なお、1位がRT1側であり、4位がRT2側である。
【0201】
AT3は、1,4-フェニレン基、2-フルオロ-1,4-フェニレン基、2,6-ジフルオロ-1,4-フェニレン基、3-フルオロ-1,4-フェニレン基、3,5-ジフルオロ-1,4-フェニレン基又は5-フルオロ-1,4-フェニレン基を表すことが好ましく、1,4-フェニレン基又は2,6-ジフルオロ-1,4-フェニレン基を表すことがより好ましい。なお、1位がRT1側であり、4位がRT2側である。
【0202】
トラン系液晶化合物の好適な具体例としては、下記式(3T-1)及び下記式(3T-2)で表される化合物が挙げられる。
【化61】
【0203】
上記式中のRT1及びRT2は、前述の式(3T)におけるRT1及びRT2と同義であり、XT1、XT2、XT3及びXT4は、それぞれ独立して、水素原子又はフッ素原子を表す。XT1、XT2、XT3及びXT4のいずれか一つはフッ素原子であることが好ましい。ただし、XT1及びXT2のいずれか一方がフッ素原子であるとき、XT3及びXT4は水素原子であることが好ましい。
【0204】
式(3T-1)及び式(3T-2)で表される化合物としては、例えば、下記式(3T-A)~(3T-D)で表される化合物が挙げられる。
【化62】
【0205】
上記トラン系液晶化合物は、1種を単独で用いてよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0206】
トラン系液晶化合物の含有量は、散乱性の観点から、液晶組成物中の液晶成分の総量を基準として、0質量%以上、20質量%以上又は40質量%以上であってよい。トラン系液晶化合物の含有量は、液晶組成物中の液晶成分の総量を基準として、80質量%以下、70質量%以下又は60質量%以下であってよい。これらの観点から、トラン系液晶化合物の含有量は、液晶組成物中の液晶成分の総量を基準として、0~70質量%、20~65質量%又は40~60質量%であってよい。同様の観点から、式(3T)で表される化合物の含有量は上記範囲であってよい。
【0207】
一実施形態では、化合物(3)として、式(3)中のR12がシアノ基である化合物(以下、「シアン系液晶化合物」という。)を用いることが好ましい。
【0208】
シアン系液晶化合物において、式(3)中のZ11及びZ12は、それぞれ独立して、単結合、-COO-、-OCO-、-CH2-CH2-であることが好ましく、単結合又は-COO-であることがより好ましい。
【0209】
シアン系液晶化合物において、式(3)中のR11の炭素原子数は、好ましくは2~7であり、より好ましくは2~5である。
【0210】
シアン系液晶化合物において、式(3)中のn11は0又は1であることが好ましい。
【0211】
シアン系液晶化合物の好適な具体例としては、下記式(vi-1)~(vi-11)で表される化合物が挙げられる。
【化63】
【0212】
上記式(vi-1)~(vi-11)中、R51は炭素原子数1~10のアルキル基、又は炭素原子数1~10のアルコキシ基を表し、Y11~Y64は、それぞれ独立して水素原子、又はフッ素原子を表す。Y11~Y64は、全て水素原子を表してもよく、その中の1つ以上がフッ素原子を表してもよい。
【0213】
シアン系液晶化合物のより具体的な例としては、下記式(vi-A)~(vi-G)で表される化合物が挙げられる。
【0214】
【0215】
上記式(vi-A)~(vi-G)中、R511は炭素原子数2~7のアルキル基、又は炭素原子数2~7のアルコキシ基を表し、好ましくは2~5のアルキル基、又は炭素原子数2~5のアルコキシ基を表す。
【0216】
シアン系液晶化合物のさらに具体的な例としては、下記式(3C-1)~(3C-16)で表される化合物が挙げられる。
【化65】
【化66】
【化67】
【化68】
【0217】
上記シアン系液晶化合物は、1種を単独で用いてよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0218】
シアン系液晶化合物の含有量は、低駆動電圧の観点から液晶組成物中の液晶成分の総量を基準として、5質量%以上、10質量%以上又は15質量%以上であってよい。シアン系液晶化合物の含有量は、信頼性・低粘度化による高速応答性の観点から、液晶組成物中の液晶成分の総量を基準として、100質量%以下、97質量%以下又は95質量%以下であってよい。これらの観点から、シアン系液晶化合物の含有量は、液晶組成物中の液晶成分の総量を基準として、5~100質量%、10~97質量%又は15~95質量%であってよい。
【0219】
一実施形態では、上記トラン系液晶化合物及び上記シアン系液晶化合物の少なくとも一方と、トラン系液晶化合物及びシアン系液晶化合物のいずれにも該当しない化合物とを組み合わせて用いてもよい。これらの化合物は、1種を単独で用いてよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0220】
トラン系液晶化合物及びシアン系液晶化合物のいずれにも該当しない化合物としては、例えば、化合物(3)のうち、式(3)中のR
12が炭素原子数1~10のアルキル基(置換されたものも含む)であり、式(3)中のZ
11及びZ
12が単結合である化合物が挙げられる。このような化合物の具体例としては、下記式(3M-1)~(3M-6)で表される化合物のうちの1種以上を用いることが好ましい。
【化69】
【化70】
【0221】
液晶成分は、化合物(3)以外の液晶化合物を含有してもよい。化合物(3)以外の液晶化合物の含有量は、液晶組成物中の液晶成分の総量を基準として、10質量%以下であることが好ましい。
【0222】
液晶成分(液晶化合物全体)の転移温度(Tni)は、95℃以上であることが好ましく、100~150℃であることがより好ましく、130~140℃であることがさらに好ましい。ここで、転移温度(Tni)は、液晶成分(液晶相)がネマチック相から等方相へ相転移する温度(上限温度)を意味する。転移温度(Tni)が高いほど高温でもネマチック相を維持することができ、駆動温度範囲を広く取ることができる。
【0223】
液晶成分の25℃、589nmにおける屈折率異方性(Δn)は、0.15~0.35であることが好ましく、0.18~0.32であることがより好ましく、0.20~0.30であることがさらに好ましい。
【0224】
(添加剤成分)
液晶組成物には、実用的な電気光学特性、及び、液晶素子を作製した際に密着性が損なわれない範囲で、重合禁止剤、酸化防止剤、光安定剤、連鎖移動剤、顔料、粒子径が1μm未満の粒子、キラル化合物、あるいは、配向材料を添加することができる。これらの中でも、重合禁止剤、酸化防止剤、光安定剤、粒子径が1μm未満の粒子及び顔料からなる群より選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。これらの添加剤としては、公知慣用のものを使用でき、例えば、国際公開第2022/138418号に記載されている化合物を同様の添加量で用いることができる。
【0225】
<液晶層>
本発明の他の一実施形態は、上記実施形態の液晶組成物から形成される液晶層である。この液晶層は、上記重合性化合物(重合性成分)由来のポリマーネットワークと、非重合性液晶化合物(液晶成分)と、を含む。ポリマーネットワークは、上記重合性成分の重合体(重合性成分として例示した各重合性化合物をモノマー単位として含む重合体)で構成される。液晶組成物中の重合性成分の総量に対する上記第1~第4成分の含有量は、液晶層中の重合体の総量(全質量)に対する各成分に由来するモノマー単位の含有量として読み替えることができる。また、液晶組成物の総量に対する上記重合性成分の含有量は、液晶層の総量に対する重合体の含有量として読み替えることができる。
【0226】
上記液晶層は、ポリマーネットワークと液晶成分とを含むことから、高分子分散型(ポリマーネットワーク型)液晶からなる層、すなわち、高分子分散型液晶層(ポリマーネットワーク型液晶層)ということができる。高分子分散型液晶層は、例えば、ポリマーの3次元ネットワーク構造中に液晶成分が連続層をなす構造、液晶成分のドロップレットがポリマー中に分散している構造、又は両者が混在する構造を有する。高分子分散型液晶層は、液晶成分がポリマー成分内にカプセル状に閉じ込められた構造、液晶成分の連続相中にポリマー成分の3次元ネットワーク構造が形成された構造、又は両者が混在した構造等を有しているが、液晶成分の連続相中にポリマー成分の3次元ネットワーク構造が形成された構造を有することが好ましい。カプセル状の液晶成分の平均粒径、及び、ポリマー成分の3次元ネットワーク構造の平均空隙間隔は、それぞれ、0.1μm以上が好ましく、0.2μm以上がより好ましく、0.3μm以上が最も好ましく、3μm以下が好ましく、2μm以下がより好ましく、1μm以下が最も好ましい。上記液晶層において、液晶成分とポリマーネットワークとは互いに相分離するため、液晶層は相分離液晶層ということもできる。
【0227】
液晶層は、例えば、基材上に液晶組成物を塗布し、該液晶組成物中の重合性成分を重合させることにより得られる。
【0228】
液晶組成物の塗布方法は、アプリケーター法、バーコーティング法、ロールコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、インクジェット法、ダイコーティング法、キャップコーティング法等の公知慣用の方法であってよい。
【0229】
液晶組成物中の重合性成分を重合させる方法は、重合性成分の種類(重合開始剤の種類)に応じた方法であればよいが、光重合開始剤を含有する液晶組成物に対して紫外線照射を行うことで、該重合性成分を重合させることが好ましい。
【0230】
紫外線を発生させるランプとしては、メタルハライドランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ等を用いることができる。また、照射する紫外線の波長としては、液晶組成物に含有されている光重合開始剤の吸収波長領域であり、且つ含有されている液晶化合物の吸収波長域でない波長領域の紫外線を照射することが好ましい。具体的には、メタルハライドランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプを使用して330nm以下の紫外線をカットして使用することが好ましい。また、単一波長を照射できるUV-LEDランプを用いることも好ましい。
【0231】
照射する紫外線の強度は、目的とする液晶層を得る観点から適宜調整することができるが、1~200mw/cm2が好ましく、5~50mw/cm2がより好ましい。紫外線を照射する時間は照射する紫外線強度により適宜選ばれるが、10~300秒が好ましい。紫外線照射時の温度は、液晶層の特性を決める重要な要素となるが、液晶組成物のアイソトロピック-ネマチック転移点(Tnm)より高い温度が好ましい。
【0232】
<液晶素子及び調光素子>
本発明の他の一実施形態は、液晶層と、電極と、該液晶層及び該電極を支持する基材と、を少なくとも備える液晶素子である。この液晶素子は、液晶層が上記実施形態の液晶層(高分子分散型(ポリマーネットワーク型)液晶層)であることから、いわゆる高分子分散型(ポリマーネットワーク型)液晶素子である。
【0233】
図1は、一実施形態に係る液晶素子を示す模式断面図である。
図1に示すように、一実施形態に係る液晶素子1は、第1の電極基板2及び第2の電極基板3からなる一対の電極基板と、一対の電極基板(第1の電極基板2及び第2の電極基板3)間に配置された液晶層4と、第1の電極基板2の液晶層4とは反対側に設けられた紫外線遮断層5と、を備える。すなわち、一実施形態に係る液晶素子1は、厚さ方向(積層方向)に、第2の電極基板3、液晶層4、第1の電極基板2及び紫外線遮断層5をこの順に備える。
【0234】
上記液晶素子は、例えば、電圧無印加時には、重合性化合物由来のポリマーネットワークとその空隙に存在する液晶分子(液晶成分)によって光散乱状態とすることができる。一方、電圧印加時には、基材に対して液晶分子が垂直に配向することによって、光透過状態とすることができる。このように、上記液晶素子は電圧印加の有無により光の透過状態を変化させられる。特に、上記液晶層は、ポリマーネットワークが色素化合物である第1の重合性化合物由来の構造を有することから、無着色のポリマーネットワークと比べて、ポリマーネットワーク部を導波路として伝送される光についても、着色や遮光をすることができるため、電圧無印加時に該第1の重合性化合物の吸収波長に応じた色を発現でき、十分な遮光性を発現できる。このため、上記液晶素子は、調光機能が求められる装置に組み込んで用いる液晶調光素子や、映像表示用ディスプレイに用いられる液晶表示素子として利用することができる。
【0235】
液晶素子は、例えば、建材、調光ガラス、車載向けのスマートウィンドウ又はOLEDディスプレイにおける調光ユニット等に用いることが好ましい。液晶素子は、従来の高分子分散型液晶表示素子と同様な用途に用いることができるほか、特に透過型ディスプレイ、フレキシブルディスプレイ等にも好ましく用いることができる。より具体的には、窓、天窓、屋根、壁、仕切り、間仕切り、扉等の建築用調光素子、扉、窓、ドア、ヘルメット、サンルーフ等の輸送用調光素子、サングラス、眼鏡、サンバイザー、時計、鏡、反射板等の装飾用調光素子、フレキシブル液晶表示素子、反射型液晶表示素子、透明液晶表示素子、可変式拡散フィルム等のディスプレイ用部材等の物品に用いることができる。
【0236】
(電極基板)
第1の電極基板2は、第1の基材2aと該第1の基材2a上に設けられた第1の電極2bとを備える。同様に、第2の電極基板3は、第2の基材3aと該第2の基材3a上に設けられた第2の電極3bとを備える。これらの電極基板において、電極(第1の電極2b及び第2の電極3b)は、液晶層中の液晶分子を配向制御可能な電界を生じるように設けられている。
【0237】
第1の電極基板2は透明な電極基板(透明電極基板)であり、第1の基材2a及び第1の電極2bは透明な材料で構成されている。すなわち、第1の基材2aは透明基材であり、第1の電極2bは透明電極である。ここで、「透明」とは、400~780nmの波長域の光透過率が80%以上であることを意味する。なお、特に断りのない場合、本明細書中、光透過率は、分光光度計(V-660)を用いて測定される透過率を意味する。
【0238】
第1の基材2a(透明基材)は、例えば、平板状又は非平板状(例えば曲面を有する形状)である。第1の基材2a(透明基材)を構成する材料は、ガラスであってもプラスチックであってもよい。すなわち、第1の基材2a(透明基材)はガラス基材であってもプラスチック基材であってもよい。軽量化や後工程の作業性の観点では、第1の基材2a(透明基材)はプラスチック基材であることが好ましい。プラスチック基材の材料としては、セルロース誘導体、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリアリレート、ポリエーテルサルホン、ポリイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンエーテル、ナイロン又はポリスチレン等が挙げられる。中でもポリエステル(例えばPET)、ポリスチレン、ポリオレフィン、セルロース誘導体、ポリアリレート、ポリカーボネート、ポリイミド等が好ましく用いられる。
【0239】
第1の基材2a(透明基材)の厚さは、例えば5~500μmであってよい。
【0240】
第1の電極2b(透明電極)は、例えば、膜状である。第1の電極2b(透明電極)の形状は特に限定されず、例えば、電極の導電部が、ストライプ状、メッシュ状、ランダムな網目状等に形成されていてもよい。第1の電極2b(透明電極)を構成する材料としては、例えばITO(Indium Tin Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)、IZTO(Indium Zinc Tin Oxide)のような公知の透明導電性材料が挙げられる。
【0241】
第1の電極2b(透明電極)の厚さは、例えば5~500nmであってよい。
【0242】
第2の電極基板3は、第1の電極基板2と同じく透明電極基板であってもよいが、場合によっては非透明の電極基板(例えば、色付きの電極基板、遮光性を有する電極基板等)であってもよい。
【0243】
第2の基材3aは、例えば、平板状又は非平板状(例えば曲面を有する形状)である。第2の基材3aとしては、液晶表示素子、有機発光表示素子、その他表示素子、光学部品、調光素子、着色剤、マーキング、印刷物や光学フィルムに通常使用する基材を用いることができる。第2の基材3aの材料に特に制限はなく、例えば、上記第1の基材2aに用いられるガラス基材及びプラスチック基材の他、金属基材、セラミックス基材、紙基材等を用いることができる。第2の基材3aは、透明であってよく、色付きの基材であってもよい。第2の基材3aとしては、第2の電極基板3に遮光性を付与するために、可視光の透過率が低い基材(例えば、グレー色等の基材)を用いることもできる。
【0244】
第2の電極3bは、例えば、膜状である。第2の電極3bの形状は特に限定されず、例えば、電極の導電部が、ストライプ状、メッシュ状、ランダムな網目状等に形成されていてもよい。第2の電極3bの材料に特に制限はなく、公知の金属材料であってよい。このような金属材料としては、上記第1の電極2bに用いられる透明導電性材料の他、例えば、Al、Cu、Au、Ag、Cr、Ta、Ti、Mo、W、Ni又はこれらのうちの少なくとも1種を含む合金を用いることができる。
【0245】
第2の基材3aの厚さ及び第2の電極3bの厚さの範囲は、それぞれ、第1の基材2aの厚さ及び第1の電極2bの厚さとして例示した上記範囲と同じであってよい。
【0246】
第1の電極基板2及び第2の電極基板3の基材(第1の基材2a及び第2の基材3a)は、液晶素子の密着性向上のために表面処理されていてもよい。表面処理としては、オゾン処理、プラズマ処理、コロナ処理、シランカップリング処理などが挙げられる。また、光の透過率や反射率を調節するために、基材表面に、有機薄膜、無機酸化物薄膜、金属薄膜等が、蒸着等の方法によって設けられていてよい。また、光学的な付加価値をつけるために、基材がピックアップレンズ、ロッドレンズ、光ディスク、位相差フィルム、光拡散フィルム、マイクロレンズシート、カラーフィルター、等であってもよい。また、必要に応じて、基材に反射防止機能、反射機能等が付与されていてもよい。
【0247】
図示しないが、第1の電極基板2及び第2の電極基板3は、周縁領域に配置されたエポキシ系熱硬化性組成物等のシール材及び封止材によって互いに貼り合わされていてよい。第1の電極基板2及び第2の電極基板3の間には、基板間距離を保持するために、例えば、ガラス粒子、プラスチック粒子、アルミナ粒子等の粒状スペーサー、又はフォトリソグラフィー法により形成された樹脂からなるスペーサー柱が配置されていてもよい。
【0248】
(紫外線遮断層)
紫外線遮断層5は、378nm以下の波長域における光透過率が0.1%以下である層である。紫外線遮断層5の412nm以下の波長域における光透過率は、好ましくは30%以上であり、50%以上であってもよい。紫外線遮断層5の400nm以下の波長域における光透過率は0.1%超(例えば0.1%超90%以下)であってもよいが、0.1%以下であってもよい。紫外線遮断層5の394nm以下の波長域における光透過率は0.1%以下であってよい。紫外線遮断層5の394nm以下の波長域における光透過率が0.1%以下である場合、紫外線遮断層5の412nm以下の波長域における光透過率は、好ましくは50%以上である。
【0249】
紫外線遮断層5は、長波長域の光に対しては光透過性を有する。紫外線遮断層5の420nm以上の波長域における光透過率は、例えば、80%以上である。
【0250】
紫外線遮断層5は、例えば、膜状である。紫外線遮断層5を構成する材料としては、紫外線吸収剤を混入、又はコーティングした各種プラスチックフィルム、光干渉型の基材等が挙げられる。紫外線吸収剤入り樹脂を電極基板2に直接コーティングして形成されたコーティング層であってもよい。
【0251】
紫外線遮断層5の厚さは、例えば10μm~5mmであってよい。
【0252】
紫外線遮断層5としては、例えば、富士フィルム社製のTAC基材の紫外線吸収フィルターSCシリーズ、日東樹脂工業社製のアクリル基材の紫外線カットフィルター、HOYA社の色ガラスフィルター、3M社製のUVカットフィルター等として入手可能な紫外線遮断フィルムを使用可能である。
【0253】
紫外線遮断層5を配置する方法は、紫外線遮断層であるフィルム・基材を第1の電極基板2に貼り合わせる方法、第1の電極基板2に紫外線遮断層をコーティング等の手法により、直接成形させる方法等が挙げられる。
【0254】
本発明の液晶素子は上記実施形態の液晶素子に限定されない。例えば、紫外線遮断層が第2の電極基板3の液晶層4とは反対側にさらに設けられていてもよい。すなわち、液晶素子は、一対の電極基板(第1の電極基板2及び第2の電極基板3)と液晶層4とを挟むように、一対の紫外線遮断層を備えていてもよい。この場合、第2の電極基板3は透明電極基板であってよい。透明電極基板の詳細は、第1の電極基板2場合と同じである。また、本発明の液晶素子が、一対の電極基板と該一対の電極基板間に配置された液晶層とを備える素子を他の基材に貼り合わせて得られたものである場合、該基材、貼り合わせに使用された感圧接着剤(PSA)、PVB、EVA等の中間膜などが紫外線遮断層5であってもよい。すなわち、これらの基材等に紫外性遮断機能を持たせることで、紫外線遮断層5としてもよい。PSAや、PVB、EVA等の中間膜に紫外線遮断機能を持たせる方法としては、例えば、これらの材料に紫外線吸収剤等を含有させる方法が挙げられる。本発明の液晶素子は、紫外線遮断層を備えていなくてもよいが、紫外線遮断層を使用することで、液晶素子の耐光性を向上させることができる。
【0255】
上記液晶素子は、液晶素子中の液晶分子が水平配向、あるいは、垂直配向するように、配向膜をさらに備えていてもよく、基材に配向処理が施されていてもよい。配向膜としては、ポリイミド、ポリシロキサン、ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリフェニレンエーテル、ポリアリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルサルホン、エポキシ樹脂、エポキシアクリレート樹脂、アクリル樹脂、アゾ化合物、クマリン化合物、カルコン化合物、シンナメート化合物、フルギド化合物、アントラキノン化合物、アゾ化合物、アリールエテン化合物等の化合物、又は、前記化合物の重合体や共重合体などで構成される膜が挙げられる。配向処理としては、延伸処理、ラビング処理、偏光紫外可視光照射処理、イオンビーム処理、基材へのSiO2の斜方蒸着処理、等が挙げられる。液晶分子にチルト角を付与するために、ラビング処理を行う場合、ラビングにより配向処理する化合物は、配向処理、もしくは配向処理の後に加熱工程を入れることで材料の結晶化が促進されるものが好ましい。ラビング以外の配向処理を行う化合物の中では光配向材料を用いることが好ましい。一般に、配向機能を有する基材に液晶組成物を接触させた場合、液晶分子は基板付近で基板を配向処理した方向に沿って配向する。液晶分子が基板と水平に配向するか、傾斜あるいは垂直して配向するかは、基板への配向処理方法による影響が大きい。
【0256】
上記液晶素子は、そのまま使用できるが、他の基材に貼り合せて使用することもできる。また、液晶素子には、接着剤や接着層、粘着剤や粘着層、保護フィルムや偏光フィルム等が積層されていてもよい。
【0257】
液晶素子は、電圧印加により液晶分子の配向を制御できるよう構成されればよく、垂直電界型液晶素子、横電界型液晶素子、その他の電界型(例えば、FFS駆動モードに採用されるフリンジ電界型)の液晶素子であってよい。これらの中でも、液晶素子が垂直電界型液晶素子として構成されることが好ましい。
【0258】
垂直電界型液晶素子は、配向膜に対して垂直に電界が生じるように電極が配置された液晶素子である。垂直電界型液晶素子においては、通常、液晶層を狭持する一対の透明基材の両方に電極が設けられる。すなわち、透明基材と電極とを備える透明電極基板が用いられる。
【0259】
垂直電界型の液晶素子は、例えば、一対の透明電極基板(第一の透明電極基板及び第二の透明電極基板)と、前記一対の透明電極基板の間に配された液晶層と、を有する。このような構造の液晶素子は、調光素子として好適に用いられる。すなわち、本発明の他の一実施形態は、一対の透明電極基板と、前記一対の透明電極基板の間に配された、上記実施形態の液晶層と、を有する調光素子である。
【0260】
調光素子は、例えば、光の透過率を電気的に制御する素子であってよい。調光素子は電圧印加装置を備えていてもよい。調光素子は、上記液晶層及び透明電極基板の積層体を、PVB(ポリビニルブチラール)、EVA(エチレン酢酸ビニル共重合樹脂)、TPU(ポリウレタン系)、SGP等の中間膜を介して2枚のガラスで挟み、合わせガラスとした構造を有していてもよい。また、本調光素子には、紫外線カット、熱線カット等の機能性フィルムが付加されていてもよい。
【0261】
垂直電界型液晶素子は、生産性の観点から、例えばロールtoロール法を用いて、基材の上に上記実施形態の液晶組成物をODF法等により滴下又は塗布し、対向基板をラミネートした後に液晶組成物中の重合性成分を重合させることで、液晶素子を作製することが好ましい。
【0262】
ロールtoロール法による液晶素子の製造工程においては、第一の電極、又は、配向膜と第一の電極を有するガラス基材、あるいは、プラスチック基材上に液晶組成物を塗布し、第二の電極、又は、配向膜と第二の電極を有するガラス基材、あるいは、プラスチック基材の前記電極側、又は前記配向膜側と前記液晶組成物が接するように貼り合せ、厚みを略均一にした後に液晶組成物中の重合性成分を重合させることで、前記液晶素子を製造することもできる。
【0263】
液晶組成物の塗布方法及び重合性成分の重合方法は、上記液晶層の作製方法で説明したとおりである。
【0264】
ODF法の前記液晶素子製造工程においては、中空素子のバックプレーン又はフロントプレーンのどちらか一方の基板にエポキシ系光熱併用硬化性などのシール剤を、ディスペンサーを用いて閉ループ土手状に描画し、その中に脱気下で所定量の前記液晶組成物を滴下後、フロントプレーンとバックプレーンを接合することによって前記液晶素子を製造することができる。
【0265】
液晶素子を作製する際には、周知の液晶素子の作製方法と同様に、間隔保持用のスペーサー(粒子等)を2枚の基材間に介在させることより、基材間の厚み(基材間隔)を調整してよい。基板間の厚み、すなわち相分離層の厚みは、2~50μmが好ましく、10~30μmがより好ましい。スペーサーは事前に基板上に散布してもよいが、液晶組成物中にあらかじめ混入しておき、液晶組成物と同時に基板上に塗布してもよい。
【0266】
2枚の基板間に液晶組成物を狭持させる方法は、通常の真空注入法でもよいが、ODF法等滴下又は塗布で行うことが好ましい。この滴下又は塗布から重合性成分が重合するまでの間、液晶組成物は略均一なアイソトロピック状態であることが好ましい。
【0267】
滴下又は塗布を行う場合、2枚の基板で液晶組成物を挟みこむ方法としては、2枚の基板をラミネーター等で挟み込む方法が挙げられる。
【実施例0268】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳述するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、以下の実施例及び比較例の組成物における「部」は「質量部」を意味する。
【0269】
<第1の重合性化合物(重合性色素)の準備>
(合成例1:重合性色素1の合成)
乾燥窒素雰囲気下、1,5-ジヒドロキシアントラセン-9,10-ジオン(3.0g)、4-ヒドロキシブチルアクリレート(3.6g)、トリフェニルホスフィン(7.21g)、テトラヒドロフラン(60mL)を混合し、氷冷した。氷冷下アゾジカルボン酸ジイソプロピル(5.32g)を滴下し、室温にて6時間撹拌した。反応液に水(200mL)を加えた後、ジクロロメタン(200mL)を加えて分液した。有機層を水(100mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムを加えて乾燥した。乾燥材をろ過した後、濃縮し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製した。得られた粗製物をジクロロメタン及びメタノールから再沈殿することで、重合性色素1として、下記式(1-1-1a)で表される化合物(1,5-ビス(4-アクリルオキシブタン-1-オキシ)アントラセン-9,19-ジオン)を1.58g得た。重合性色素1の
1H-NMRの帰属を以下に示す。
1H-NMR(400MHz、CDCl
3、TMS内部標準)δ(ppm)=7.89(dd,J=7.8,0.9Hz,2H),7.66(t,J=8.0Hz,2H),7.24(d,J=7.8Hz,2H),6.40(dd,J=17.2,1.6Hz,2H),6.12(dd,J=17.4,10.5Hz,2H),5.81(dd,J=10.3,1.6Hz,2H),4.30(t,J=5.9Hz,4H),4.19(t,J=5.7Hz,4H),2.02-2.07(m,8H)
【化71】
【0270】
(合成例2:重合性色素2の合成)
乾燥窒素雰囲気下、1-アミノ-2,4-ジブロモアントラセン-9,10-ジオン(110g)、4-ブチルアニリン(108g)、酢酸銅(II)(10.5g)、酢酸カリウム(71.0g)及びトルエン(1000mL)を混合し、120℃にて72時間攪拌した。室温まで冷却した後、10%塩酸(900mL)及びトルエン(500mL)を加え分液した。有機層に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(600mL)を加えて中和し分液した。有機層を飽和食塩水(600mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムを加えて乾燥した。ろ過により硫酸ナトリウムを除去し、有機溶媒を減圧留去することで、1-アミノ-2-ブロモ-4-((4-ブチルフェニル)アミノ)アントラセン-9,10-ジオン(102g)を得た。1-アミノ-2-ブロモ-4-((4-ブチルフェニル)アミノ)アントラセン-9,10-ジオンの1H-NMRの帰属を以下に示す。
1H-NMR(400MHz、CD3COCD3):δ(ppm)=11.94(1H,s)、8.37-8.32(2H,m)、7.88-7.85(3H,m)、7.34-7.28(4H,m)、2.67(2H,t)、1.69-1.61(2H,m)、1.45-1.35(2H,m)、0.95(3H,t)
【0271】
次に、乾燥窒素雰囲気下、1-アミノ-2-ブロモ-4-((4-ブチルフェニル)アミノ)アントラセン-9,10-ジオン(90.0g)、4-ブチルフェノール(90.1g)、水酸化カリウム(33.7g)及びピリジン(800mL)を混合し、110℃にて22時間攪拌した。室温まで冷却した後、トルエン(3000mL)及び水(1000mL)を加え分液した。有機層に10%塩酸(900mL)を加え分液した後、有機層に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(600mL)を加えて中和し分液した。有機層を飽和食塩水(1000mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムを加えて乾燥した。ろ過により硫酸ナトリウムを除去し、有機溶媒を減圧留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製した後、ジクロロメタン及びヘキサン溶媒で再沈殿することで、1-アミノ-2-(4-ブチルフェノキシ)-4-((4-ブチルフェニル)アミノ)アントラセン-9,10-ジオン(66.9g、収率64%)を得た。1-アミノ-2-(4-ブチルフェノキシ)-4-((4-ブチルフェニル)アミノ)アントラセン-9,10-ジオンの1H-NMRの帰属を以下に示す。
1H-NMR(400MHz、CDCl3、TMS内部標準)δ(ppm)=12.33(s,1H),8.36(dt,J=7.0,1.6Hz,2H),7.68-7.75(m,2H),7.16-7.19(m,2H),6.95-7.03(m,6H),6.79(s,1H),2.59(t,J=7.8Hz,2H),2.53(t,J=7.8Hz,2H),1.50-1.62(m,4H),1.29-1.40(m,4H),0.91-0.97(m,6H)
【0272】
次に、乾燥窒素雰囲気下、1-アミノ-2-(4-ブチルフェノキシ)-4-((4-ブチルフェニル)アミノ)アントラセン-9,10-ジオン(1.4g)、塩化アクリロイル(0.3g)、トリエチルアミン(0.4g)及びジクロロメタン(24mL)を混合し、室温にて26時間攪拌した。水(100mL)及びジクロロメタン(100mL)を加え分液した。有機層に無水硫酸ナトリウムを加えて乾燥した。ろ過により硫酸ナトリウムを除去し、得られたろ液をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製した。ジクロロメタン及びメタノールで再沈殿することで、重合性色素2として、下記式(1-2-1a)で表される化合物(N-(2-(4-ブチルフェノキシ)-4-((4-ブチルフェニル)アミノ)-9,10-ジオキソ-9,10-ジヒドロアントラセン-1-イル)アクリルアミド)を0.2g(収率16%)得た。重合性色素2のマススペクトル及び
1H-NMRの帰属、並びに、相転移温度を以下に示す。
MSm/z:572[M
+]
相転移温度:Cr150Iso
1H-NMR(400MHz、CDCl
3、TMS内部標準)δ(ppm)=11.76(s,1H),10.23(s,1H),8.28(dd,J=7.8,0.9Hz,1H),8.19(dd,J=7.5,1.1Hz,1H),7.77(td,J=7.5,1.4Hz,1H),7.71(td,J=7.5,1.5Hz,1H),7.12(dt,J=8.8,2.3Hz,2H),7.02(dq,J=14.2,2.9Hz,6H),6.86(s,1H),6.34-6.44(m,2H),5.77(q,J=4.0Hz,1H),2.52-2.58(m,4H),1.51-1.60(m,4H),1.34(tdd,J=14.8,7.4,4.7Hz,4H),0.93(td,J=7.3,4.6Hz,6H)
【化72】
【0273】
(合成例3:重合性色素3の合成)
乾燥窒素下、1,4-ジクロロアントラセン-9,10-ジオン(1.50g)、4-アミノフェノール(1.77g)、リン酸水素2ナトリウム(1.54g)及びN-メチルピロリドン(10mL)を混合し、160℃に加熱し16時間撹拌した。室温まで冷却した後、メタノール(70mL)を加え、生じた沈殿をろ過した。沈殿を水(50mL)で洗浄した後、乾燥させることで1,4-ビス(4-ヒドロキシフェニルアミノ)アントラセン-9,10-ジオン(1.90g)を得た。
【0274】
次いで、1,4-ビス(4-ヒドロキシフェニルアミノ)アントラセン-9,10-ジオン(1.90g)、炭酸カリウム(1.87g)、アクリル酸6-クロロ-1-ヘキシル(2.57g)及びジメチルスルホキシド(40mL)を混合し、80℃に加熱した。15時間撹拌した後、氷冷し、水(100mL)を加えた。生じた沈殿をろ過し、水(50mL)及びメタノール(50mL)で洗浄した。得られた固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製した後、ジクロロメタン及びメタノールから再沈殿することで、重合性色素3として、下記式(1-3-1a)で表される化合物(1,4-ビス(4-(6-アクリルオキシヘキサン-1-オキシ)フェニルアミノ)アントラセン-9,10-ジオン)を1.21g得た。重合性色素3の
1H-NMRの帰属を以下に示す。
1H-NMR(400MHz、CDCl
3、TMS内部標準)δ(ppm)=12.19(s,2H),8.39(td,J=6.3,3.0Hz,2H),7.74(td,J=6.3,3.2Hz,2H),7.30(s,2H),7.17(td,J=6.2,3.7Hz,4H),6.90(td,J=6.1,3.8Hz,4H),6.40(dd,J=17.4,1.8Hz,2H),6.12(dd,J=17.2,10.3Hz,2H),5.81(dd,J=10.5,1.4Hz,2H),4.18(t,J=6.6Hz,4H),3.97(t,J=6.4Hz,4H),1.78-1.85(m,4H),1.69-1.76(m,4H),1.42-1.55(m,8H)
【化73】
【0275】
(極大吸収波長の測定)
得られた重合性色素1~3の極大吸収波長を以下の方法で測定した。まず、測定対象化合物(重合性色素1~3)を溶解することができる任意の液晶組成物100質量部に対して、測定対象化合物を1.0質量部添加して溶解させ、測定試料を調製した。次に、ITO電極を有し、当該ITO電極上に水平配向用配向膜を備えた2cm×2cmのガラス基板を2枚用いて、ITO電極層をセルの内側として、プラスチック粒子によりセル厚10μmに調整した注入口を備えたセルを作製した。当該セルに、試料を注入し、注入口を封止材で塞ぐことにより、素子を作製した。次に、スペクトルメーター(大塚電子社製、「LCD-5200」、又は日立ハイテクサイエンス社製「U-4100」)を用いて、25℃、電圧無印加の条件下、作製した素子を用いて、370~780nmの間の吸収スペクトルを測定することにより、重合性色素1~3の極大吸収波長を求めた。結果を以下に示す。
[370~780nmの範囲の極大吸収波長]
重合性色素1:377nm
重合性色素2:535nm
重合性色素3:641nm
【0276】
<重合性混合物(MA)の調製>
下記表1に示す重合性化合物(第2の重合性化合物)及び重合開始剤を表1に示す配合比で混合し、50℃で攪拌しながら重合開始剤を重合性化合物に溶解させることで、重合性混合物(PL1)を得た。得られた重合性混合物(PL1)を後述の実施例及び比較例で用いた。
【0277】
【0278】
(合成例4:ウレタンアクリレートの合成)
攪拌羽根のついたフラスコにIPDI(イソホロンジイソシアネート)44.4部(0.2モル)を仕込み、攪拌を行いながらポリプロピレングリコール(平均分子量Mw:8100)810部(0.1モル)を発熱に注意しながら仕込み、70℃まで昇温した。この温度で反応を7時間行い、末端にイソシアネート基を有するウレタンポリマーを得た。次いで2-ヒドロキシエチルアクリレート(分子量116)23.2部(0.2モル)を仕込み、この温度でさらに7時間反応を行った。赤外吸収スペクトルでNCOの吸収が消失したことを確認して取り出し、ウレタンアクリレートである重合性化合物(2-1)(平均分子量Mw:29800)を得た。重量平均分子量(Mw)はGPC測定に基づきポリスチレン換算した値である。なお、GPCの測定条件は以下の通りである。
【0279】
[GPCの測定条件]
測定装置:東ソー株式会社製「HLC-8320 GPC」
カラム:東ソー株式会社製ガードカラム「SuperHZ-L」+東ソー株式会社製「SuperHZ2000」×3本+東ソー株式会社製「TSuperHZM-M」
検出器:内蔵RI検出器
データ処理:東ソー株式会社製「EcoSEC-WorkStation Ver2.01」
測定条件:カラム温度40℃、展開溶媒テトラヒドロフラン、流速1.0ml/分
標準:装置測定マニュアルに準拠して、分子量が既知の単分散ポリスチレンを用いた。
【0280】
<液晶混合物(LC)の調製>
複数種の液晶化合物を混ぜ合わせ、下記表2に示す組成の液晶混合物(LC1及びLC2)を調製した。これらの液晶混合物(LC1及びLC2)を後述の実施例及び比較例で用いた。
【0281】
【0282】
表2では液晶化合物の構造を符号及び数字で示している。各符号は、以下に示す構造の基を表し、末端の数字(1~5)は、該数字と同一の炭素原子数の直鎖状アルキル基を表す。例えば、2-Ph-E-Ph3-CNで表される化合物は、上記式(3C-1)で表される化合物を意味する。
【化74】
【0283】
表2中、物性値「Tni」は、上記液晶混合物からなる液晶成分(液晶相)がネマチック相から等方相へ転移する温度(上限温度)を意味し、偏光顕微鏡により測定した値である。
【0284】
表2中、物性値「Δn」は、液晶混合物からなる液晶成分の25℃、589nmにおける屈折率異方性を意味し、アッベ屈折計を用いて、25℃、589nmにおける液晶分子(液晶成分)の長軸方向の屈折率(ne)及び液晶分子(液晶成分)の短軸方向の屈折率(no)を測定し算出した値である。
【0285】
<実施例1~3及び比較例1~2>
(液晶組成物の調製)
下記表3に示す組み合わせ及び配合比(単位:質量部)で、重合性色素と、液晶混合物(LC1又はLC2)と、重合性混合物(PL1)とを混合し、50℃で攪拌しながら重合性色素及び液晶混合物を重合性混合物に溶解させた後、ここに平均粒子径15μmのビーズスペーサーを含有させることで、実施例1~3及び比較例1~2の液晶組成物(高分子分散型液晶形成性組成物)を得た。ビーズスペーサーの配合量は液晶組成物の全質量基準で1質量%となるようにした。なお、表3中の「S-428」は三井化学社製の非重合性色素である。
【0286】
【0287】
(液晶素子の作製)
上記で得られた液晶組成物を用いて、実施例1~3及び比較例1~2の液晶素子(高分子分散型液晶素子)をそれぞれ作製した。具体的には、まず、電極基板としてITO電極付PETフィルムを2枚用意し、一方の電極基板のITO電極側に上記組成物を塗布して塗膜を形成し、他方の電極基板を、ITO電極側の面が塗膜に接するように塗膜上に配置した。次いで、得られた積層体に、ラミネーター(ヒサゴ社製FUJIPLA LPD2313)を用いて均一な圧をかけた後、UV-LEDランプで15mw/cm2の波長365nmのUV光を60sec間照射して、液晶素子(高分子分散型液晶表示素子)を得た。
【0288】
(全光線透過率の測定)
上記で得られた液晶素子に電極配線を取り付け、ヘイズメーター(日本電色工業社製NDH-7000)を用いて、耐熱試験前後の電圧印加時及び電圧無印加時の全光線透過率を測定した。耐熱試験は、液晶素子を100℃の恒温槽に投入し、100時間加熱することにより行った。全光線透過率の測定は、JIS K 7361-1及びJIS K 7136に準拠し、25℃で矩形波60Hz、0~100Vの電圧を印加することにより行った。電圧無印加時の全光線透過率(T0及びT0’)、AC100V印加時の全光線透過率(T100及びT100’)、及び、全光線透過率の変化率(R0及びR100)を表4に示す。電圧無印加時の初期の全光線透過率T0が50%以下である場合に遮光性が十分であると評価し、電圧無印加時の全光線透過率の変化率R0が15%以下である場合に耐熱性に優れると評価した。なお、全光線透過率の変化率は、下記式により求めた。
変化率(単位:%)=[(耐熱試験後の全光線透過率)/(初期の全光線透過率)-1]×100
【0289】
1…液晶素子、2…第1の電極基板、3…第2の電極基板、4…液晶層、5…紫外線遮断層、2a…第1の基材、2b…第1の電極、3a…第2の基材、3b…第2の電極。