(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024169984
(43)【公開日】2024-12-06
(54)【発明の名称】研削装置
(51)【国際特許分類】
B24B 7/04 20060101AFI20241129BHJP
B24B 41/06 20120101ALI20241129BHJP
B24B 49/16 20060101ALI20241129BHJP
B24B 49/00 20120101ALI20241129BHJP
B24B 47/22 20060101ALI20241129BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20241129BHJP
【FI】
B24B7/04 A
B24B41/06 L
B24B49/16
B24B49/00
B24B47/22
H01L21/304 622R
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023086888
(22)【出願日】2023-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】弁理士法人東京アルパ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久保 徹雄
(72)【発明者】
【氏名】江藤 敬明
【テーマコード(参考)】
3C034
3C043
5F057
【Fターム(参考)】
3C034AA08
3C034BB73
3C034BB92
3C034CA02
3C034CA13
3C034CA16
3C034CB01
3C034CB14
3C034DD10
3C043BA03
3C043BA09
3C043BA12
3C043BA15
3C043BA16
3C043CC04
3C043CC13
3C043DD02
3C043DD03
3C043DD04
3C043DD05
3C043DD06
5F057AA12
5F057BA15
5F057CA14
5F057DA05
5F057FA13
5F057GA01
5F057GA16
(57)【要約】
【課題】エアカット時間を短縮して生産性を高めることができる研削装置を提供すること。
【解決手段】ウェーハWを保持するチャックテーブル10と、環状に配置された研削砥石25bの下面でウェーハWを研削する研削ユニット20と、研削砥石25bを昇降させる昇降機構40と、制御部60と、を備える研削装置1の前記制御部60は、研削加工する際に研削砥石25bを下降させる下降速度を少なくとも設定する加工条件設定部61と、研削砥石25bを下降させる下降速度と、研削加工時のチャックテーブル10の沈み込み量と研削砥石25bの浮き上がり量とを含む昇降方向における変形量との相関関係を示す下降速度データテーブル62と、該加工条件設定部61に設定した下降速度に対応する変形量を下降速度データテーブル62から取り出し、取り出した変形量をエアカット量として設定する設定部63を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
保持面によってウェーハを保持するチャックテーブルと、
環状に配置された研削砥石の中心を軸に回転させ該研削砥石の下面でウェーハを研削する研削ユニットと、
該研削砥石を昇降させる昇降機構と、
制御部と、
を備える研削装置であって、
該制御部は、
研削加工する際に該研削砥石を下降させる下降速度を少なくとも設定する加工条件設定部と、
該研削砥石を下降させる下降速度と、研削加工時の該チャックテーブルの沈み込み量と該研削砥石の浮き上がり量とを含む昇降方向における変形量との相関関係を示す下降速度データテーブルと、
該加工条件設定部に設定した下降速度に対応する該変形量を該下降速度データテーブルから取り出し、取り出した該変形量をエアカット量として設定する設定部と、
を備えることを特徴とする研削装置。
【請求項2】
保持面によってウェーハを保持するチャックテーブルと、
環状に配置された研削砥石の中心を軸に回転させ該研削砥石の下面でウェーハを研削する研削ユニットと、
該研削砥石を昇降させる昇降機構と、
制御部と、
を備える研削装置であって、
該制御部は、
研削加工する際に該研削砥石に作用する荷重を少なくとも設定する加工条件設定部と、
該研削砥石に作用する荷重と、研削加工時の該チャックテーブルの沈み込み量と該研削砥石の浮き上がり量とを含む昇降方向における変形量との相関関係を示す荷重データテーブルと、
該加工条件設定部に設定した荷重に対応する該変形量を該荷重データテーブルから取り出し、取り出した該変形量をエアカット量として設定する設定部と、
を備えることを特徴とする研削装置。
【請求項3】
保持面によってウェーハを保持するチャックテーブルと、環状に配置された研削砥石の中心を軸に回転させ該研削砥石の下面でウェーハを研削する研削ユニットと、該研削砥石を昇降させる昇降機構と、制御部とを備える研削装置であって、
該制御部は、研削加工する際に研削砥石を下降させる下降速度と、該保持面に保持されたウェーハの上面より上に該研削砥石が接触しない範囲のエアカット量と、を少なくとも設定する加工条件設定部と、
該研削砥石が該エアカット量を下降する際の下降速度を、該エアカットの開始位置に該研削砥石を下降させる予め設定された位置づけ速度から該加工条件設定部に設定した該下降速度に加速度的に減速させる減速制御部と、
を備えることを特徴とする研削装置。
【請求項4】
保持面によってウェーハを保持するチャックテーブルと、
環状に配置された研削砥石の中心を軸に回転させ該研削砥石の下面でウェーハを研削する研削ユニットと、
該研削砥石を昇降させる昇降機構と、
制御部と、
を備える研削装置であって、
該制御部は、
研削加工する際に該研削砥石を下降させる下降速度を少なくとも設定する加工条件設定部と、
該研削砥石を下降させる下降速度と、研削加工時の該チャックテーブルの沈み込み量と該研削砥石の浮き上がり量とを含む昇降方向における変形量との相関関係を示す下降速度データテーブルと、
該加工条件設定部に設定した下降速度に対応する該変形量の上に所定のバッファ量を設定するバッファ量設定部と、
該変形量に該バッファ量を加えた値をエアカット量として設定する設定部と、
該研削砥石が該エアカット量を下降する際の下降速度を加速度的に減速させる減速制御部と、
を備えることを特徴とする研削装置。
【請求項5】
保持面によってウェーハを保持するチャックテーブルと、
環状に配置された研削砥石の中心を軸に回転させ該研削砥石の下面でウェーハを研削する研削ユニットと、
該研削砥石を昇降させる昇降機構と、
制御部と、
を備える研削装置であって、
該制御部は、研削加工する際に該研削砥石に作用する荷重を少なくとも設定する加工条件設定部と、
該研削砥石に作用する荷重と、研削加工時の該チャックテーブルの沈み込み量と該研削砥石の浮き上がり量とを含む昇降方向における変形量との相関関係を示す荷重データテーブルと、
該加工条件設定部に設定した荷重に対応する該変形量の上に所定のバッファ量を設定するバッファ量設定部と、
該変形量に該バッファ量を加えた値をエアカット量として設定する設定部と、
該研削砥石が該エアカット量を下降する際の下降速度を加速度的に減速させる減速制御部と、
を備えることを特徴とする研削装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チャックテーブルの保持面に保持されたウェーハを研削砥石によって研削する研削装置に関する。
【背景技術】
【0002】
各種電子機器に用いられるICやLSIなどの半導体デバイスの製造工程においては、半導体デバイスの小型化と軽量化のために、ウェーハの裏面が研削装置によって研削されて該ウェーハが所定の厚みまで薄肉化されている。すなわち、研削装置においては、研削砥石を所定の下降速度で下降させながらウェーハを研削しているが、研削砥石をウェーハに接触させる際にウェーハと研削砥石とに大きな衝撃が加わらないように、研削砥石がウェーハに接触する直前においては、研削砥石を研削加工時の遅い下降速度で下降させるエアカットが実施されている(例えば、特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-322247号公報
【特許文献2】特開2020-131368号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ウェーハの研削加工時には、チャックテーブルと研削砥石には所定の荷重が掛かっているため、研削砥石をウェーハから離間させて両者が除荷されると、スプリングバックによってチャックテーブルと研削砥石が元の無負荷のときの高さ位置に戻る。ここで、研削装置においては、ウェーハを所定の厚みに研削した際の研削砥石の下面(研削面)の高さを記憶するようにしている。つまり、研削荷重(負荷)が掛かった状態における研削砥石の下面は、記憶された高さよりも低くなる。
【0005】
したがって、エアカットに際して、研削砥石の高さとして、記憶された高さをそのまま使用すると、研削砥石の下面がウェーハの上面に接触し、ウェーハと研削砥石に大きな衝撃が加わるという問題がある。
【0006】
また、研削荷重によって変化した装置ひずみが経時的に変化するため、研削荷重が掛かっているときと研削荷重が掛かっていないときとの研削砥石の高さの変化量を正確に把握することができず、実際には、大きなエアカット量を設定するようにしている。このため、エアカット時間が長くなって生産性が低下するという問題がある。
【0007】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたもので、その目的は、エアカット時間を短縮して生産性を高めることができる研削装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための第1発明は、保持面によってウェーハを保持するチャックテーブルと、環状に配置された研削砥石の中心を軸に回転させ該研削砥石の下面でウェーハを研削する研削ユニットと、該研削砥石を昇降させる昇降機構と、制御部と、を備える研削装置であって、該制御部は、研削加工する際に該研削砥石を下降させる下降速度を少なくとも設定する加工条件設定部と、該研削砥石を下降させる下降速度と、研削加工時の該チャックテーブルの沈み込み量と該研削砥石の浮き上がり量とを含む昇降方向における変形量との相関関係を示す下降速度データテーブルと、該加工条件設定部に設定した下降速度に対応する該変形量を該下降速度データテーブルから取り出し、取り出した該変形量をエアカット量として設定する設定部と、を備えることを特徴とする。
【0009】
第2発明は、保持面によってウェーハを保持するチャックテーブルと、環状に配置された研削砥石の中心を軸に回転させ該研削砥石の下面でウェーハを研削する研削ユニットと、該研削砥石を昇降させる昇降機構と、制御部と、を備える研削装置であって、該制御部は、研削加工する際に該研削砥石に作用する荷重を少なくとも設定する加工条件設定部と、該研削砥石に作用する荷重と、研削加工時の該チャックテーブルの沈み込み量と該研削砥石の浮き上がり量とを含む昇降方向における変形量との相関関係を示す荷重データテーブルと、該加工条件設定部に設定した荷重に対応する該変形量を該荷重データテーブルから取り出し、取り出した該変形量をエアカット量として設定する設定部と、を備えることを特徴とする。
【0010】
第3発明は、保持面によってウェーハを保持するチャックテーブルと、環状に配置された研削砥石の中心を軸に回転させ該研削砥石の下面でウェーハを研削する研削ユニットと、該研削砥石を昇降させる昇降機構と、制御部とを備える研削装置であって、 該制御部は、研削加工する際に研削砥石を下降させる下降速度と、該保持面に保持されたウェーハの上面より上に該研削砥石が接触しない範囲のエアカット量と、を少なくとも設定する加工条件設定部と、該研削砥石が該エアカット量を下降する際の下降速度を、該エアカットの開始位置に該研削砥石を下降させる予め設定された位置づけ速度から該加工条件設定部に設定した該下降速度に加速度的に減速させる減速制御部と、を備えることを特徴とする。
【0011】
第4発明は、保持面によってウェーハを保持するチャックテーブルと、環状に配置された研削砥石の中心を軸に回転させ該研削砥石の下面でウェーハを研削する研削ユニットと、該研削砥石を昇降させる昇降機構と、制御部と、を備える研削装置であって、該制御部は、研削加工する際に該研削砥石を下降させる下降速度を少なくとも設定する加工条件設定部と、該研削砥石を下降させる下降速度と、研削加工時の該チャックテーブルの沈み込み量と該研削砥石の浮き上がり量とを含む昇降方向における変形量との相関関係を示す下降速度データテーブルと、該加工条件設定部に設定した下降速度に対応する該変形量の上に所定のバッファ量を設定するバッファ量設定部と、該変形量に該バッファ量を加えた値をエアカット量として設定する設定部と、該研削砥石が該エアカット量を下降する際の下降速度を加速度的に減速させる減速制御部と、を備えることを特徴とする。
【0012】
第5発明は、保持面によってウェーハを保持するチャックテーブルと、環状に配置された研削砥石の中心を軸に回転させ該研削砥石の下面でウェーハを研削する研削ユニットと、該研削砥石を昇降させる昇降機構と、制御部と、を備える研削装置であって、該制御部は、研削加工する際に該研削砥石に作用する荷重を少なくとも設定する加工条件設定部と、該研削砥石に作用する荷重と、研削加工時の該チャックテーブルの沈み込み量と該研削砥石の浮き上がり量とを含む昇降方向における変形量との相関関係を示す荷重データテーブルと、該加工条件設定部に設定した荷重に対応する該変形量の上に所定のバッファ量を設定するバッファ量設定部と、該変形量に該バッファ量を加えた値をエアカット量として設定する設定部と、該研削砥石が該エアカット量を下降する際の下降速度を加速度的に減速させる減速制御部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
第1及び第2発明によれば、研削加工時のチャックテーブルの沈み込み量と研削砥石の浮き上がり量とを含む昇降方向における変形量をエアカット量として設定するため、エアカット量を研削砥石がウェーハに接触しない極限まで小さく抑えることができ、エアカット時間を短縮して生産性を高めることができる。
【0014】
第4及び第5発明によれば、研削加工時のチャックテーブルの沈み込み量と研削砥石の浮き上がり量とを含む昇降方向における変形量にバッファ量を加えた値をエアカット量として設定するため、エアカット時の研削砥石のウェーハへの接触を確実に防ぐことができる。そして、エアカット時には研削砥石の下降速度を加速度的に減速させるようにしたため、エアカット量にバッファ量を加えたことによるエアカット時間の増加を抑えることができる。したがって、エアカット時の研削砥石のウェーハへの接触を確実に防ぎつつ、エアカット時間を短縮して生産性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】第1~第5発明に係る研削装置の一部を破断して示す斜視図である。
【
図2】研削砥石によるウェーハの研削加工を示す部分破断側面図である。
【
図3】エアカット時(無負荷時)の研削砥石とチャックテーブルの状態を示す部分破断側面図である。
【
図4】第1発明に係る研削装置に設けられた制御部の構成図である。
【
図6】研削加工時の研削砥石の高さの時間変化を従来の時間変化と比較して示す図である。
【
図8】第2発明に係る研削装置に設けられた制御部の構成図である。
【
図10】第3発明に係る研削装置に設けられた制御部の構成図である。
【
図11】第4発明に係る研削装置に設けられた制御部の構成図である。
【
図12】第5発明に係る研削装置に設けられた制御部の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0017】
第1~第5発明に係る研削装置の制御部を除く構成は基本的に同じであるため、以下、この研削装置の基本構成を
図1~
図3に基づいて説明する。なお、以下の説明においては、
図1に示す矢印方向をそれぞれX軸方向(左右方向)、Y軸方向(前後方向)、Z軸方向(上下方向)とする。
【0018】
[研削装置の基本構成]
図1に示す研削装置1は、被加工物である円板状のウェーハWを研削加工するものであって、次の構成要素を備えている。すなわち、研削装置1は、ウェーハWを保持して軸心回りに回転するチャックテーブル10と、該チャックテーブル10に吸引保持されたウェーハWを研削加工する研削ユニット20と、研削加工中のウェーハWの厚みを測定する厚み測定器30と、研削ユニット20をチャックテーブル10の保持面10aに対して垂直方向(Z軸方向)に昇降させる昇降機構40と、チャックテーブル10を保持面10aに対して水平方向(Y軸方向)に移動させる水平移動機構50と、制御部60を主要な構成要素として備えている。
【0019】
ここで、ウェーハWは、単結晶のシリコン母材で構成されており、
図1に示す状態において下方を向いている表面には、複数の不図示のデバイスが形成されており、これらのデバイスは、ウェーハWの表面に貼着された保護テープTによって保護されている。そして、ウェーハWは、その表面(
図1においては下面)が保護テープTを介してチャックテーブル10の保持面10aに吸引保持され、裏面(
図1においては上面)が研削ユニット20によって研削される。なお、ウェーハWの表面にデバイスが形成されていない場合は、ウェーハWの表面に保護テープTを貼着しないで保持面10aにウェーハWの表面を接触させ、保持面10aがウェーハWを吸引保持して研削ユニット20によってウェーハWを研削してもよい。
【0020】
次に、研削装置1の主要な構成要素であるチャックテーブル10、研削ユニット20、厚み測定器30、昇降機構40、水平移動機構50及び制御部60の構成についてそれぞれ説明する。
【0021】
(チャックテーブル)
チャックテーブル10は、円板状の部材であって、その上部中央部には、円板状のポーラス部材10Aが組み込まれている。ここで、ポーラス部材10Aは、多孔質のセラミックなどで構成されており、その上面が円板状のウェーハWを吸引保持する保持面10aを構成している。なお、チャックテーブル10のポーラス部材10Aは、真空ポンプなどの不図示の吸引源に選択的に接続される。
【0022】
そして、チャックテーブル10は、
図2に示す回転機構11によって軸心回りに所定の速度で回転駆動される。すなわち、チャックテーブル10においては、
図2に示すように、その中心から下方に向かって垂直に一体に延びる回転軸12を備えており、この回転軸12が回転機構11によって所定の速度で回転駆動される。
【0023】
ここで、回転機構11は、駆動源としてサーボモータ13を備えており、このサーボモータ13から上方に延びる出力軸(モータ軸)13aの上端には、小径の駆動プーリ14が結着されている。また、チャックテーブル10の回転軸12の下部外周には、大径の従動プーリ15が結着されており、この従動プーリ15と駆動プーリ14には、無端状のタイミングベルト16が巻き掛けられている。したがって、サーボモータ13を起動して駆動プーリ14を回転駆動すれば、該駆動プーリ14の回転がタイミングベルト16を経て減速されて従動プーリ15へと伝達され、該従動プーリ15と回転軸12及びチャックテーブル10が図示矢印方向に所定の速度で回転駆動される。
【0024】
また、本発明に係る研削装置1は、Y軸方向(前後方向)に長い矩形ボックス状のベース2を備えており、このベース2に開口するY軸方向に長い矩形の開口部3にはチャックテーブル10が臨んでいる。そして、開口部3のチャックテーブル10の周囲は、矩形プレート状のカバー4によって覆われており、開口部3のカバー4の前後(-Y方向と+Y方向)の部分は、カバー4と共に移動して伸縮する蛇腹状の伸縮カバー5,6によってそれぞれ覆われている。
【0025】
さらに、チャックテーブル10には、ウェーハWの研削加工中に該チャックテーブル10が研削ユニット20の後述の研削砥石25bから受ける垂直荷重を測定するためのロードセルなどの荷重センサ18が設けられている。ここで、本実施の形態では、3つの荷重センサ18(
図1には、2つのみ図示)がチャックテーブル10のフランジ19と後述のスライダ51との間に周方向に等角度ピッチ(120°ピッチ)で配置されている。なお、各荷重センサ18は、制御部60に電気的に接続されている。
【0026】
(研削ユニット)
研削ユニット20は、ホルダ21に収容されたスピンドルモータ22と、該スピンドルモータ22によって軸心回りに回転駆動される垂直なスピンドル23と、該スピンドル23の下端に取り付けられた円板状のマウント24と、該マウント24の下面に着脱可能に装着された研削ホイール25とを備えている。ここで、研削ホイール25は、円板状の基台25aと、該基台25aの下面に円環状に配列されて取り付けられた加工具である複数の研削砥石25bによって構成されている。なお、研削砥石25bは、ウェーハWを研削するための矩形ブロック状の加工具であって、その下面は、ウェーハWの上面(被研削面)に接触する研削面を構成している。
【0027】
なお、スピンドルモータ22とスピンドル23、マウント24及び研削ホイール25の基台25aの軸中心には、不図示の供給路が形成されており、この供給路の上端は、配管を経て不図示の研削水供給源に接続され、供給路の下端は研削砥石25bの中心部に開口している。また、スピンドルモータ22は、制御部60に電気的に接続されており、その駆動が制御部60によって制御される。
【0028】
(厚み測定器)
厚み測定器30は、チャックテーブル10に保持された研削加工中のウェーハWの厚みを測定するハイトゲージであって、ウェーハWの上面に接触する第1プローブ31とチャックテーブル10の上面に接触する第2プローブ32を備えている。ここで、厚み測定器30においては、第1プローブ31によって研削加工中のウェーハWの上面高さが測定されるが、この第1プローブ31によって測定されるウェーハWの上面高さと第2プローブ32によって測定されるチャックテーブル10の上面高さとの差によってウェーハWの厚みが求められる。なお、厚み測定器30は、制御部60に電気的に接続されており、該厚み測定器30によって測定されるウェーハWの厚みが制御部60へと送信される。
【0029】
(昇降機構)
昇降機構40は、研削ユニット20をチャックテーブル10の保持面10aに対して垂直な方向(Z軸方向)に沿って昇降させるものであって、ベース2の上面の+Y軸方向端部(後端部)上に垂直に立設された矩形ボックス状のコラム7の-Y軸方向端面(前面)に配置されている。この昇降機構40は、研削ユニット20のホルダ21の背面に取り付けられた矩形プレート状の昇降板41を、ホルダ21及び該ホルダ21に保持されたスピンドル23と研削ホイール25と共に左右一対のガイドレール42に沿ってZ軸方向に昇降させるものである。ここで、左右一対のガイドレール42は、コラム7の前面に垂直且つ互いに平行に配設されている。
【0030】
また、左右一対のガイドレール42の間には、回転可能なボールネジ43がZ軸方向(上下方向)に沿って垂直に立設されており、該ボールネジ43の上端は、駆動源である正逆転可能なサーボモータ44に連結されている。ここで、サーボモータ44には、該サーボモータ44の回転方向と回転数を検出するエンコーダ45が取り付けられており、サーボモータ44は、コラム7の上面に取り付けられた矩形プレート状のブラケット46を介してコラム7に縦置き状態で取り付けられている。また、ボールネジ43の下端は、コラム7に回転可能に支持されており、このボールネジ43には、昇降板41の背面に後方(+Y軸方向)に向かって水平に突設された不図示のナット部材が螺合している。なお、サーボモータ44とエンコーダ45は、制御部60に電気的に接続されている。
【0031】
したがって、サーボモータ44を起動してボールネジ43を正逆転させれば、このボールネジ43に螺合する不図示のナット部材が取り付けられた昇降板41が一対のガイドレール42に沿って研削ユニット20と共に上下動するため、研削ユニット20が昇降して研削砥石25bのウェーハWに対する研削量(研削代)が設定される。なお、サーボモータ44は、その駆動が制御部60によって制御されることによって、研削ホイール25(研削砥石25b)の昇降速度と昇降量(研削砥石25bの高さ)が制御されるが、該研削ホイール25(研削砥石25b)の昇降速度や昇降量は、エンコーダ45によって検出され、その検出結果が制御部60へと送信される。
【0032】
(水平移動機構)
水平移動機構50は、チャックテーブル10を保持面10aに対して水平方向(Y軸方向)に移動させる機構であって、
図1に示すように、ベース2の内部に収容された矩形ブロック状の内部ベース8の上に配設されている。この水平移動機構50は、ブロック状のスライダ51を備えており、このスライダ51は、Y軸方向(前後方向)に沿って互いに平行に配設された左右一対のガイドレール52に沿ってY軸方向に摺動可能である。したがって、このスライダ51に支持されたチャックテーブル10と
図2に示す回転機構11は、スライダ51と共にY軸方向に沿って摺動可能である。
【0033】
そして、内部ベース8上の左右一対のガイドレール52の間には、Y軸方向(前後方向)に延びる回転可能なボールネジ53が配設されており、該ボールネジ53のY軸方向一端(
図1の左端)は、駆動源である正逆転可能なサーボモータ54に連結されている。また、ボールネジ53のY軸方向他端(
図1の右端)は、内部ベース8上に立設された軸受55によって内部ベース8に回転可能に支持されている。そして、このボールネジ53には、スライダ51から下方に向かって突設された不図示のナット部材が螺合している。なお、サーボモータ54は、制御部60に電気的に接続されており、その駆動が制御部60によって制御される。
【0034】
したがって、サーボモータ54を起動してボールネジ53を正逆転させると、このボールネジ53に螺合する不図示のナット部材がスライダ51と共にボールネジ53に沿ってY軸方向(前後方向)に摺動するため、スライダ51と共にチャックテーブル10もY軸方向に沿って一体的に移動する。この結果、チャックテーブル10の保持面10aに吸引保持されたウェーハWもY軸方向に沿って移動する。
【0035】
(制御部)
制御部60は、制御プログラムにしたがって演算処理を行うCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)などの記憶部などを備えているが、第1~第5発明における制御部60の具体的な構成については後述する。
【0036】
[研削装置の作用]
次に、以上のように構成された研削装置1の作用、つまり、ウェーハWの研削方法について説明する。なお、ウェーハWの研削方法においては、エアカットを開始するタイミングの設定方法と研削砥石25bの下降速度の制御が第1~第5発明においてそれぞれ異なっているため、先ず、第1発明におけるウェーハWの研削方法について説明する。
【0037】
(第1発明)
第1発明において、ウェーハWを研削加工する際には、該ウェーハWをチャックテーブル10の保持面10a上に保護テープTを下にして載置する。そして、チャックテーブル10のポーラス部材10Aに接続されている不図示の吸引源を駆動してポーラス部材10Aを真空引きする。すると、ポーラス部材10Aに負圧が発生し、ポーラス部材10Aの保持面10a上に保護テープT(
図1参照)を介して載置されているウェーハWが負圧によって保持面10a上に吸引保持される。
【0038】
上記状態から
図1に示す水平移動機構50を駆動してチャックテーブル10を+Y軸方向(後方)に移動させ、該チャックテーブル10に吸引保持されているウェーハWを研削ユニット20の研削ホイール25の下方に位置決めする。すなわち、サーボモータ54を起動してボールネジ53を回転させると、このボールネジ53に螺合する不図示のナット部材が取り付けられたスライダ51がチャックテーブル10などと共に左右一対のガイドレール52に沿って+Y軸方向に摺動するため、チャックテーブル10の保持面10aに保持されているウェーハWが研削ユニット20の研削ホイール25の下方に位置決めされる。なお、このとき、研削砥石25bの下面(加工面)がウェーハWの中心を通るように両者の水平位置関係が調整される。
【0039】
また、
図2に示す回転機構11を駆動してチャックテーブル10を回転させ、該チャックテーブル10の保持面10aに保持されているウェーハWを所定の回転速度(例えば、300rpm)で回転させるとともに、研削ユニット20のスピンドルモータ22を駆動して研削ホイール25を所定の回転速度(例えば、2000rpm)で回転させておく。
【0040】
上述のように、ウェーハWと研削ホイール25が回転している状態で、昇降機構40を駆動して研削ホイール25を-Z軸方向に下降させる。すなわち、
図6に示すように、研削ホイール25の研削砥石25bがその下面(研削面)の高さが待機位置(原点位置)h0から空転しながら一定速度V1でエアカットが開始される高さh1まで時間間隔T1の間だけ下降する。そして、研削砥石25bがその研削面の高さが時間t1において高さ(エアカットが開始される高さ)h1となるまで下降すると、研削砥石26bの研削面の高さが
図6に示すh2(研削砥石25bがウェーハWに接触する高さ)になるまで速度V1よりも遅い一定速度V2(<V1)で研削砥石25bが下降しながらエアカットが時間間隔T2(=t2-t1)の間だけ行われる。なお、速度V1は、固定値として予め設定されている。
【0041】
上記エアカットが行われて研削砥石25bがその研削面の高さが
図6に示すh2となるまで下降した時点(時間t2)で、該研削砥石25bの研削面がウェーハWの上面(被研削面)に接触したことは、
図1に示す3つの荷重センサ18によって測定される垂直荷重(チャックテーブル10が研削砥石25bから受ける荷重)の急増によって検知することができる。このように研削砥石25bの研削面がウェーハWの上面に接触すると、該研削砥石25bが一定の第1送り速度V3で下降してウェーハWの上面の全面が時間t3まで第1研削される。このウェーハWの第1研削は、研削砥石25bの研削面の高さが
図6に示すh3となる時間間隔T3(=t3-t2)の間だけ行われる。この第1研削におけるウェーハWの研削代は、(h2-h3)となる。なお、第1送り速度V3は、エアカット時の研削砥石25bの下降速度V2と同程度に設定される(V3≒V2)。
【0042】
そして、研削砥石25bが時間t3において
図6に示す高さh3まで下降してウェーハWが研削砥石26bによって時間間隔T3だけ第1研削されると、研削砥石25bは、その研削面の高さが
図6に示すh4となるまで(つまり、ウェーハWの厚みが所定の仕上げ厚みになるまで)第1送り速度V3よりも遅い一定の第2送り速度V4(<V3)で時間間隔T4(=t4-t3)の間だけ下降してウェーハWの上面の全面を第2研削する。このときのウェーハWの研削代は、(h4-h3)となり、結局、第1研削と第2研削の2段階の研削加工によってウェーハWは、所定の仕上げ厚みとなるまで(h2-h4)の研削代分だけ研削される。
【0043】
ここで、ウェーハWの研削加工中においては、該ウェーハWの厚みが
図1に示す厚み測定器30によって測定される。すなわち、厚み測定器30によるウェーハWの厚みの測定においては、一方の第1プローブ31によって測定されるウェーハWの上面高さから他方の第2プローブ32によって測定されるチャックテーブル10の上面高さを差し引いた値として算出される。
【0044】
上述のように、
図6に示す時間t4においてウェーハWが所定の仕上げ厚みまで研削されると、研削砥石25bの下降を停止し、研削砥石25bを高さh4に保持したまま該研削砥石25bを回転させるスパークアウトカットが時間t5まで時間間隔T5(=t5-t4)の間だけ行われる。その後、時間t5において、研削砥石25bが昇降機構40によって一定速度V5で上昇してウェーハWからの離間を開始するが、時間t5から研削砥石25bを回転させながら上昇させるエスケープカットが行われる。ここで、エスケープカットは、研削加工時に厚み測定器30の第1プローブ31の接触によってウェーハWの表面に生じた接触痕を除去するために行われるものであって、このエスケープカットによってウェーハWの表面が平坦化される。
【0045】
上記エスケープカットは、
図6に示すように、研削砥石25bがウェーハWから離間する高さh5まで上昇する時間t6までの時間間隔T6(=t6-t5)の間だけ行われる。なお、研削砥石25bがウェーハWから離間したことは、
図1に示す荷重センサ18によって検出される垂直荷重(チャックテーブル10がウェーハWを介して研削砥石25bから受ける荷重)が減少することによって検知することができる。
【0046】
そして、上述のように荷重センサ18によって測定される垂直荷重の減少によって研削砥石25bがウェーハWから離間したことが
図6に示す時間t6において検知されると、直ちに次の砥石退避工程が実施される。この砥石退避工程においては、
図6に示すように、研削砥石25bを比較的高速の退避速度V6で待機位置(原点位置)h0までの時間間隔T7の間(=t7-t6)だけ退避させ、これによってウェーハWに対する一連の研削加工が終了する。
【0047】
ここで、第1発明におけるエアカットを開始するタイミングとエアカット量の設定について説明する。
【0048】
ウェーハWの研削砥石25bによる研削(第1研削と第2研削)においては、
図2に示すように、研削砥石25bがウェーハWに所定の荷重で押圧されているため、ウェーハWは、無負荷時に鎖線位置にあった状態から、研削砥石25bから受ける荷重によって圧縮されて実線位置まで沈み込む。このときのウェーハWの沈み込み量(圧縮変形量)を図示のようにδ1とする。
【0049】
これに対して、ウェーハWを押圧する研削砥石25bは、ウェーハWを介してチャックテーブル10から受ける反力によって圧縮されて
図2の鎖線位置から実線位置へと浮き上がる。このときの研削砥石25bの浮き上がり量(圧縮変形量)を図示のようにδ2とする。
【0050】
そして、
図2に示すように、ウェーハWが研削砥石25bによって所定の荷重で押圧され研削されている状態から研削砥石25bがウェーハから離間することによって、チャックテーブル10と研削砥石25bが除荷される無負荷状態においては、
図3に示すように、チャックテーブル10と研削砥石25bがスプリングバック(弾性復元力)によって鎖線位置から実線位置へと移動し、その移動量は、それぞれ図示のδ1,δ2となる。
【0051】
而して、第1発明においては、研削加工時のウェーハWの沈み込み量δ1と研削砥石25bの浮き上がり量δ2の和(δ1+δ2)を研削砥石25bの昇降方向(上下方向)における変形量δとし、
図4に示す制御部60の設定部63は、変形量δ(=δ1+δ2)を
図7に示すようにエアカット量Δh(=δ1+δ2)として設定するようにしている。具体的には、制御部60は、
図4に示すように、研削加工時の研削砥石25bの下降速度などを設定する加工条件設定部61と、該加工条件設定部61によって設定された研削砥石25bのエアカット時の下降速度V2に基づいてエアカット量Δhを設定する設定部63を備えている。ここで、制御部60の記憶部には、研削砥石25bの下降速度と変形量δ(=δ1+δ2)との相関関係を示す下降速度データテーブル62(
図5参照)が記憶されており、設定部63は、加工条件設定部61に設定したエアカット時の下降速度V2に対応する変形量δを取り出し、この取り出した変形量δ(=δ1+δ2)を
図7に示すエアカット量Δhとして設定する。
【0052】
ここで、
図5に示す下降速度データテーブル62には、エアカット時の研削砥石25bの下降速度0.05、0.1、0.15,0.2μm/secに対して、エアカット量Δh(=δ1+δ2)は、それぞれ2、2.2、2.5、3μmに設定されている。本実施形態では、エアカット時の研削砥石25bの下降速度V2は、0.1μm/secに設定されているため、エアカット量Δhは、2.2μmに設定される。なお、チャックテーブル10の沈み込み量δ1は、厚み測定器30の第1プローブ31または第2プローブ32によって測定される。
【0053】
これに対して、従来は、
図7に破線にて示すように、本発明(第1発明)においてエアカットが開始されるタイミング(研削砥石25bの高さh1、時間t1)よりも前(研削砥石25bの高さh1’、時間t1’)においてエアカットが開始されていたため、エアカット量Δh’が本発明におけるエアカット量Δhよりも大きくなり(Δh’>Δh)、エアカット時間T2’が本発明におけるエアカット時間T2よりも長い(T2’>T2)。つまり、本発明によれば、エアカット時間を従来のT2’からT2へと短縮することができ、それだけ生産性を高めることができる。なお、従来は、
図6に破線にて示すように、エアカットが時間t2’まで行われた後、時間t2’~t3’の間に第1研削が行われ、時間t3’~t4’の間に第2研削が行われる。そして、その後、時間t4’~t5’の間にスパークアウトカットが行われ、時間t5’~t6’の間にエスケープカットが行われ、時間t6’~t7’の間に研削砥石25bが待機位置h0まで上昇し、ウェーハWに対する一連の研削加工が終了する。
【0054】
ところで、本発明では、エアカット量Δhを、研削加工時のチャックテーブル10の沈み込み量δ1と研削砥石25bの浮き上がり量δ2との和である変形量δに設定した。つまり、エアカット量Δhを、エアカット時に研削砥石25bがウェーハWに接触しない最小限度の値(極限値)に設定した。
【0055】
(第2発明)
第2発明におけるウェーハWの研削方法は、基本的には前記第1発明のそれと同じであり、エアカットのタイミングの設定方法のみが異なるため、以下、本発明におけるエアカットのタイミングの設定について説明し、その他についての説明は省略する。
【0056】
第2発明においても、第1発明と同様に、エアカット量Δhが研削加工時のチャックテーブル10の沈み込み量δ1と研削砥石25bの浮き上がり量δ2との和である変形量δに設定されるが、本発明では、研削加工時にチャックテーブル10に作用する荷重の設定値に基づいてエアカット量Δhが設定される。
【0057】
具体的には、制御部60は、
図8に示すように、研削加工時の研削砥石25bに作用する荷重などを設定する加工条件設定部61と、該加工条件設定部61によって設定された研削砥石25bの設定荷重に基づいてエアカット量Δhを設定する設定部63を備えている。ここで、制御部60の記憶部には、研削砥石25bの設定荷重と変形量δ(=δ1+δ2)との相関関係を示す荷重データテーブル64(
図9参照)が記憶されており、設定部63は、加工条件設定部61に設定した荷重に対応する変形量δを取り出し、取り出した変形量δ(=δ1+δ2)を
図7に示すエアカット量Δhとして設定する。
【0058】
ここで、
図9に示す荷重データテーブル64には、設定荷重2000、2200、2500、3000Nに対して、エアカット量Δh(=δ1+δ2)は、それぞれ2、2.2、2.5、3μmに設定されている。例えば、設定荷重が2500Nに設定されている場合には、エアカット量Δhは、2.5μmに設定される。
【0059】
これに対して、従来は、
図7に破線にて示すように、本発明(第2発明)においてエアカットが開始されるタイミング(研削砥石25bの高さh1、時間t1)よりも前(研削砥石25bの高さh1’、時間t1’)においてエアカットが開始されていたため、エアカット量Δh’が本発明におけるエアカット量Δhよりも大きく(Δh’>Δh)、エアカット時間T2’が本発明におけるエアカット時間T2よりも長い(T2’>T2)。つまり、本発明によれば、エアカット時間を従来のT2’からT2へと短縮することができ、それだけ生産性を高めることができるという前記第1発明と同様の効果が得られる。
【0060】
(第3発明)
第3発明においては、制御部60は、
図10に示すように、研削加工する際に研削砥石25bを下降させる下降速度と、エアカット量ΔHを少なくとも設定する加工条件設定部61と、研削砥石25bがエアカット量ΔHを下降する際の下降速度を
図7の破線にて示すように加速度的(二次曲線的、または3次曲線的)に減速させる減速制御部66を備えている。なお、本実施の形態では、説明の便宜上、エアカットが開始されるタイミング(研削砥石の高さh1’と時間t1’)と従来のタイミングと同じものとしたが、従来よりも遅く、言い換えるなら、従来よりも研削砥石25bが低い位置からエアカットを開始するというように、従来のタイミングと異なっていてもよい。
【0061】
而して、本発明においては、
図7に鎖線にて示すように、加工条件設定部61にエアカット量ΔHを設定しているため、エアカット時の研削砥石25bのウェーハWへの接触を確実に防ぐことができる。そして、エアカット時には、減速制御部66による制御によって研削砥石25bの下降速度V2”を加速度的(2次曲線的、または3次曲線的)に減速させるようにしたため、エアカット量ΔHによるエアカット時間T2”の増加を抑えることができる。つまり、エアカット時間T2”が従来のエアカット時間T2’よりも短くなり(T2”<T2’)、エアカット時の研削砥石25bのウェーハWへの接触を確実に防ぎつつ、エアカット時間をT2”に短縮して生産性を高めることができる。また、エアカット量ΔHは、エアカット量Δhより大きい値を設定することによって、チャックテーブル10の沈み込み量δ1と研削砥石25bの浮き上がり量δ2の測定に生じる誤差に対応することができる。つまり、測定誤差によって、エアカット開始時に研削砥石25bがウェーハWに接触する場合であっても、研削砥石25bとウェーハWとにダメージを与えないようにすることができている。
【0062】
(第4発明)
第4発明においては、制御部60は、
図11に示すように、研削加工する際に研削砥石25bを下降させる下降速度を少なくとも設定する加工条件設定部61と、
図5に示す下降速度データテーブル62と、加工条件設定部61に設定した下降速度に対応する変形量(
図5に示す下降速度データテーブル62から引き出した変形量)δ(
図7においてはΔh)の上にマージンとして所定のバッファ量δh(
図7参照)を設定するバッファ量設定部65と、変形量δ(=Δh)に該バッファ量δhを加えた値をエアカット量Δh’(
図7参照)として設定する設定部63と、研削砥石25bがエアカット量Δh’を下降する際の下降速度V2”を
図7に鎖線にて示すように加速度的(2次曲線的、または3次曲線的)に減速させる減速制御部66を備えている。なお、本実施の形態では、説明の便宜上、エアカットが開始されるタイミング(研削砥石の高さh1’と時間t1’)を従来のタイミングと同じものとしたが、両者のタイミングは異なっていてもよい。
【0063】
而して、本発明においては、
図7に鎖線にて示すように、研削加工時のチャックテーブル10の沈み込み量δ1と研削砥石25bの浮き上がり量δ2(
図3参照)とを含む昇降方向における変形量δ(=Δh)にバッファ量δhを加えた値をエアカット量Δh’として設定するため、エアカット時の研削砥石25bのウェーハWへの接触を確実に防ぐことができる。そして、エアカット時には、減速制御部66による制御によって研削砥石25bの下降速度V2”を加速度的(2次曲線的、または3次曲線的)に減速させるようにしたため、エアカット量Δh’にバッファ量δhを加えたことによるエアカット時間T2”の増加を抑えることができる。つまり、エアカット時間T2”が従来のエアカット時間T2’よりも短くなり(T2”<T2’)、エアカット時の研削砥石25bのウェーハWへの接触を確実に防ぎつつ、エアカット時間をT2”に短縮して生産性を高めることができる。
【0064】
(第5発明)
第5発明は、
図12に示すように、制御部60は、第4発明と同様の加工条件設定部61と、設定部63と、バッファ量設定部65及び減速制御部66を備えているが、第4発明の下降速度データテーブル62(
図5参照)に替えて
図9に示す荷重データテーブル64を備えている点が第4発明と異なっている。
【0065】
したがって、本発明においても、
図7に鎖線にて示すように、研削加工時のチャックテーブル10の沈み込み量δ1と研削砥石25bの浮き上がり量δ2(
図3参照)とを含む昇降方向における変形量δ(=Δh)にバッファ量δhを加えた値をエアカット量Δh’として設定するため、エアカット時の研削砥石25bのウェーハWへの接触を確実に防ぐことができる。そして、エアカット時には、減速制御部66による制御によって研削砥石25bの下降速度V2”を加速度的(2次曲線的、または3次曲線的)に減速させるようにしたため、エアカット量Δh’にバッファ量δhを加えたことによるエアカットT2”の増加を抑えることができる。つまり、エアカット時間T2”が従来のエアカット時間T2’よりも短くなり(T2”<T2’)、エアカット時の研削砥石25bのウェーハWへの接触を確実に防ぎつつ、エアカット時間をT2”に短縮して生産性を高めることができるという第4発明と同様の効果が得られる。
【0066】
なお、以上の実施形態では、研削砥石25bからチャックテーブル10に作用する垂直荷重を荷重センサ18によって測定するようにしたが、研削砥石25bがチャックテーブル10から受ける荷重(反力)を測定するようにしてもよい。
【0067】
その他、本発明は、以上説明した実施の形態に適用が限定されるものではなく、特許請求の範囲及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内で種々の変形が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0068】
1:研削装置、2:ベース、3:開口部、4:カバー、5,6:伸縮カバー、
7:コラム、8:内部ベース、10:チャックテーブル、10A:ポーラス部材、
10a:保持面、11:回転機構、12:回転軸、13:サーボモータ、
13a:出力軸(モータ軸)、14:駆動プーリ、15:従動プーリ、
16:タイミングベルト、18:荷重センサ、19:フランジ、20:研削ユニット、
21:ホルダ、22:スピンドルモータ、23:スピンドル、24:マウント、
25:研削ホイール、25a:基台、25b:研削砥石、30:厚み測定器、
31:第1プローブ、32:第2プローブ、40:昇降機構、41:昇降板、
42:ガイドレール、43:ボールネジ、44:サーボモータ、45:エンコーダ、
46:ブラケット、50:水平移動機構、51:スライダ、52:ガイドレール、
53:ボールネジ、54:サーボモータ、55:軸受、60:制御部、
61:加工条件設定部、62:加工速度データテーブル、63:設定部、
64:荷重データテーブル、65:バッファ量設定部、66:減速制御部、
ΔH、Δh、Δh’:エアカット量、δh:バッファ量、T:保護テープ、
T2,T2’,T2”:エアカット時間、V2,V2’,V2”:エアカット時間、
W:ウェーハ