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特開2024-170032端子付電線及び端子付電線の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170032
(43)【公開日】2024-12-06
(54)【発明の名称】端子付電線及び端子付電線の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/03 20060101AFI20241129BHJP
   H01R 4/62 20060101ALI20241129BHJP
   H01R 43/18 20060101ALI20241129BHJP
   H01B 7/00 20060101ALI20241129BHJP
【FI】
H01R13/03 D
H01R4/62 A
H01R43/18
H01B7/00 306
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023086951
(22)【出願日】2023-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】株式会社プロテリアル
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】慶留間 鴻
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 哲朗
【テーマコード(参考)】
5E063
5G309
【Fターム(参考)】
5E063XA01
5G309FA04
5G309FA06
(57)【要約】
【課題】導体と端子との初期抵抗を抑制できる端子付電線及び端子付電線の製造方法を提供すること。
【解決手段】端子付電線は、アルミニウムを含む導体と、前記導体の端部にかしめて取り付けられた銅を含む端子と、前記端子の表面に形成されためっき層と、を備える。前記めっき層のうち、前記導体と接する特定部は、錫又は錫銅合金から成り、前記特定部の表面の少なくとも一部は錫銅合金から成る。前記端子がかしめられた部分において、前記導体は、前記特定部の方向に突出した凸部を備え、前記特定部は、前記凸部が食い込んでいる凹部を備えることが好ましい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウムを含む導体と、
前記導体の端部にかしめて取り付けられた銅を含む端子と、
前記端子の表面に形成されためっき層と、
を備え、
前記めっき層のうち、前記導体と接する特定部は、錫又は錫銅合金から成り、
前記特定部の表面の少なくとも一部は錫銅合金から成る、
端子付電線。
【請求項2】
請求項1に記載の端子付電線であって、
前記端子がかしめられた部分において、前記導体は、前記特定部の方向に突出した凸部を備え、前記特定部は、前記凸部が食い込んでいる凹部を備える、
端子付電線。
【請求項3】
アルミニウムを含む導体と、
前記導体の端部にかしめて取り付けられた銅を含む端子と、
前記端子の表面に形成されためっき層と、
を備える端子付電線の製造方法であって、
前記めっき層を形成するとき、
前記端子のうち、前記導体と接する第1部に錫めっき層を形成し、
前記第1部の前記錫めっき層に対し熱処理を行い、
前記第1部をマスクした状態で、前記端子の表面のうち、前記第1部とは異なる第2部に錫めっき層を形成する、
端子付電線の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は端子付電線及び端子付電線の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、端子の構造が開示されている。電線の端部において端子を導体に圧着することで、端子付電線が製造される。端子が銅を含み、導体がアルミニウムを含む。銅端子の表面に錫めっき層が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8-195266号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の端子付電線では、導体と端子との初期抵抗比が高かった。本開示の1つの局面では、導体と端子との初期抵抗比を抑制できる端子付電線及び端子付電線の製造方法を提供することが好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の1つの局面は、アルミニウムを含む導体と、前記導体の端部にかしめて取り付けられた銅を含む端子と、前記端子の表面に形成されためっき層と、を備える端子付電線である。前記めっき層のうち、前記導体と接する特定部は、錫又は錫銅合金から成り、前記特定部の表面の少なくとも一部は錫銅合金から成る。本開示の1つの局面である端子付電線は、導体と端子との初期抵抗比を抑制できる。
【0006】
本開示の別の局面は、アルミニウムを含む導体と、前記導体の端部にかしめて取り付けられた銅を含む端子と、前記端子の表面に形成されためっき層と、を備える端子付電線の製造方法である。前記めっき層を形成するとき、前記端子のうち、前記導体と接する第1部に錫めっき層を形成し、前記第1部の前記錫めっき層に対し熱処理を行い、 前記第1部をマスクした状態で、前記端子の表面のうち、前記第1部とは異なる第2部に錫めっき層を形成する。
【0007】
本開示の別の局面である端子付電線の製造方法によれば、導体と接する第1部に形成しためっき層に熱処理を行う。そのことにより、導体と端子との初期抵抗比を抑制できる。また、第2部に形成しためっき層は、熱処理を受けていないので、第1部に形成しためっき層より、銅の含有量が少ない。そのため、第2部を他の部材と接触させとき、端子と他の部材との間の接触抵抗を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】端子付電線の構成を表す平面図である。
図2】端子付電線の構成を表す側面図である。
図3】端子と導体との構成を表す側断面図である。
図4図1におけるIV-IV断面での断面図である。
図5図5Aは、端子付電線1_1のかしめ界面部における断面を表す電子顕微鏡写真である。図5Bは、端子付電線1_2のかしめ界面部における断面を表す電子顕微鏡写真である。図5Cは、端子付電線1_3のかしめ界面部における断面を表す電子顕微鏡写真である。
図6】端子付電線1_1~1_3の初期抵抗比の測定結果を表すグラフである。
図7】端子付電線1_1~1_3から得られた、めっき層におけるCu原子数濃度と、初期抵抗比との関係を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示の例示的な実施形態について図面を参照しながら説明する。
<第1実施形態>
1.端子付電線1の構成
端子付電線1の構成を、図1図4に基づき説明する。図1及び図2に示すように、端子付電線1は、電線3と、端子5とを備える。なお、図1及び図2では、電線3の両方の端部3Aに端子5を取り付けているが、電線3の一方の端部3Aのみに端子5を取り付けてもよい。
【0010】
電線3は、導体7と、絶縁体層9とを備える。導体7の直径は、例えば、7mm以上25mm以下であることが好ましい。導体7の断面形状は、例えば、円形である。ただし、図4に示すように、後述するかしめ部31Aでは、かしめられることにより、導体7は変形している。
【0011】
導体7は、例えば、撚られている複数の導体から成る。導体7は、アルミニウムを含む。導体7は、例えば、アルミニウムから成る導体7、アルミニウム合金から成る導体7、又は、銅被アルミニウムから成る導体7である。銅被アルミニウムとは、アルミニウム又はアルミニウム合金の周囲に銅層を一体化被覆したものである。
【0012】
絶縁体層9は、導体7を被覆している。ただし、図1図2に示すように、端部3Aでは、導体7は絶縁体層9で被覆されず、露出している。よって、端部3Aは導体7から成る。絶縁体層9の材質として、例えば、樹脂、ゴム等が挙げられる。電線3は、さらにシールド層等を備えていてもよい。
【0013】
図1図2に示すように、端子5は、端部3Aにおいて、電線3に電気的に接続している。端子5は銅を含む。
図3に示すように、端子5は、本体部11と、めっき層13とを備える。本体部11は、例えば、銅又は銅合金から成る。めっき層13は、本体部11の表面に形成されている。めっき層13は、例えば、腐食を抑制する機能を奏する。めっき層13は、錫又は錫銅合金から成る。
【0014】
端子5は、電線接続部31と、相手側接続部33とを備える。端子5は、例えば、丸型圧着端子である。端子5が丸型圧着端子である場合、電線接続部31は、中空の円筒形の部分である。相手側接続部33は、例えば、平坦な板状の部分である。JIS C2805:2010(銅線用圧着端子)に準拠して、導体7の断面積に適した電線接続部31の内径を有する端子5を選択することができる。
【0015】
端部3Aは、電線接続部31の内部に差し込まれている。端部3Aが電線接続部31の内部に差し込まれた状態で、電線接続部31のうち、図1図2に示すかしめ部31Aがかしめられている。その結果、電線3に対し端子5が固定されている。かしめには、市販の圧着治具や圧縮治具を用いることができる。
【0016】
かしめの態様は、例えば、図4に示す態様である。電線接続部31の外周面の一部である固定部31Bを、図示しない圧着端子用受ダイスに接触させて固定する。次に、電線接続部31の外周面のうち、固定部31Bとは反対側にあるかしめ部31Aを圧着端子用押ダイスで押圧する。押圧の方向は、かしめ部31Aから固定部31Bに向かう方向である。その結果、電線接続部31及び端部3Aのうち、かしめ部31Aの側の部分が陥没した形状となる。
【0017】
めっき層13のうち、電線接続部31の内部にある部分を第1めっき層13Aとする。第1めっき層13Aは特定部に対応する。端子5のうち、第1めっき層13Aが形成されている部分(すなわち、電線接続部31の内部)は、導体7と接する第1部に対応する。めっき層13のうち、第1めっき層13Aを除く部分を、第2めっき層13Bとする。第2めっき層13Bは、電線接続部31の外周面、及び、相手側接続部33の表面に形成されている。
【0018】
第1めっき層13Aは、錫又は錫銅合金から成る。第1めっき層13Aの表面の少なくとも一部は錫銅合金から成る。例えば、第1めっき層13Aの表面の全体が錫銅合金から成る。例えば、第1めっき層13Aの全体が錫銅合金から成る。
【0019】
第2めっき層13Bは、錫又は錫銅合金から成る。第2めっき層13Bは、錫のみから成っていてもよいし、錫銅合金のみから成っていてもよい。第2めっき層13Bの表面は、少なくとも一部が錫銅合金から成っていてもよいし、全体が錫銅合金から成っていてもよいし、全体が錫から成っていてもよい。
【0020】
第2めっき層13Bにおける銅の含有量は、第1めっき層13Aにおける銅の含有量と同じであってもよいし、第1めっき層13Aにおける銅の含有量より少なくてもよい。
第2めっき層13Bの表面における銅の含有量は、第1めっき層13Aの表面における銅の含有量と同じであってもよいし、第1めっき層13Aの表面における銅の含有量より少なくてもよい。
【0021】
電線接続部31の内部に第1めっき層13Aが形成されているので、図4に示すように、かしめ部31Aにおいて、第1めっき層13Aが端部3Aと接している。かしめ部31Aにおいて、端部3Aの表面は、例えば、第1めっき層13Aの方向に突出した微細な凸部を複数備える。個々の凸部の大きさは、例えば、数μmである。
【0022】
第1めっき層13Aは、例えば、端部3Aの凸部が食い込んでいる微細な凹部を複数備える。個々の凹部の大きさは、例えば、数μmである。かしめ部31Aをかしめたとき、第1めっき層13Aがひび割れて凹部が生じ、その凹部に端部3Aの凸部が食い込んだことで、前記の凸部と凹部とが生じたと推測される。
【0023】
2.端子付電線1の第1の製造方法
端子付電線1は、例えば、以下の第1の製造方法で製造することができる。
(1)めっき層13を形成していない状態の端子5(すなわち本体部11)を用意する。端子5のうち、電線接続部31の内部に錫めっき層を形成する。電線接続部31の内部は第1部に対応する。錫めっき層を形成する部分は、後に第1めっき層13Aが形成される部分である。端子5のうち、電線接続部31の内部を除く部分にはマスクをしておき、錫めっき層を形成しない。電線接続部31の内部に形成される錫めっき層の厚さは、2μm以上8μm以下であることが好ましい。
【0024】
(2)端子5に対し熱処理を行う。熱処理は、例えば、大気中で行う。熱処理の温度は、200℃以上220℃以下であることが好ましい。220℃以下の温度が好ましい理由は、錫の融点が230℃であるためである。熱処理の時間は、10時間以上50時間以下が好ましい。熱処理により本体部11の銅が錫めっき層の中に拡散する。その結果、錫めっき層は、第1めっき層13Aとなる。
【0025】
(3)第1めっき層13Aが形成された部分をマスクする。マスクする方法として、電線接続部31の開口部をキャップで塞ぐ方法、電線接続部31の内部にマスキングテープを貼る方法等が挙げられる。
【0026】
(4)端子5のうち、電線接続部31の内部を除く部分に錫めっき層を形成する。電線接続部31の内部を除く部分に形成された錫めっき層は、第2めっき層13Bである。電線接続部31の内部を除く部分は第2部に対応する。以上の工程により、端子5が完成する。電線接続部31の内部を除く部分に形成された錫めっき層、及び第2めっき層13Bの厚さは、2μm以上8μm以下であることが好ましい。
【0027】
(5)端部3Aを電線接続部31の内部に差し込み、かしめ部31Aをかしめる。圧縮比は、0.6~0.9であることが好ましい。圧縮比とは、かしめ後の導体7の断面積を、かしめ前の導体7の断面積で除した値である。
【0028】
4.端子付電線1の第2の製造方法
端子付電線1は、例えば、以下の第2の製造方法で製造することができる。
(1)めっき層13を形成していない状態の端子5(すなわち本体部11)を用意する。端子5の全表面に、錫めっき層を形成する。錫めっき層を形成する範囲には、電線接続部31の内部も含まれる。電線接続部31の内部は第1部に対応する。
【0029】
(2)端子5に対し熱処理を行う。熱処理の条件は、第1の製造方法における熱処理の条件と同じである。熱処理により本体部11の銅が錫めっき層の中に拡散する。その結果、端子5の全表面において、錫めっき層は、第1めっき層13Aとなる。以上の工程により、端子5が完成する。
【0030】
(3)端部3Aを電線接続部31の内部に差し込み、かしめ部31Aをかしめる。
なお、錫めっき層が形成済の市販の端子5を用意し、前記(2)~(3)の工程を行ってもよい。
【0031】
4.端子付電線1が奏する効果
(1A)端子付電線1では、導体7と端子5との初期抵抗比が低い。初期抵抗比が低い理由は、以下のように推測される。
【0032】
端子5は、導体7と接触する部分に第1めっき層13Aを備える。第1めっき層13Aは、錫又は錫銅合金から成り、第1めっき層13Aの表面の少なくとも一部は錫銅合金から成る。この組成を有する第1めっき層13Aは、かしめたときにひび割れ、凹部が生じる。その凹部に導体7の凸部が食い込む。そのため、導体7と端子5との密着性が向上する。その結果、導体7と端子5との初期抵抗比が低くなる。
【0033】
(1B)第1の製造方法又は第2の製造方法で端子付電線1を製造した場合、電線接続部31の内部に第1めっき層13Aを形成することができる。そのため、製造された端子付電線1は、前記(1A)の効果を奏することができる。
【0034】
(1C)第1の製造方法で端子付電線1を製造した場合、電線接続部31の内部以外の部分に、錫から成る第2めっき層13Bを形成する。相手側接続部33の表面には、第2めっき層13Bが形成される。第2めっき層13Bは、第1めっき層13Aに比べて、銅の含有量が少ない。そのため、例えば、相手側接続部33を他の部材と接触させたとき、相手側接続部33と他の部材との間の接触抵抗を抑制できる。
【0035】
4.実施例
(4-1)端子5_1~5_3の製造
圧着端子を9個用意した。圧着端子は、本体部11と、本体部11の全表面に形成された錫めっき層とを備えていた。圧着端子は、電線接続部31と、相手側接続部33とを備えていた。電線接続部31の内部に形成された錫めっき層の厚さは4μmであった。電線接続部31の内部を除く部分に形成された錫めっき層は第2めっき層13Bである。第2めっき層13Bの厚さは4μmであった。
【0036】
3個の熱処理をしていない圧着端子を、端子5_1とした。他の3個の圧着端子に200℃で10時間の熱処理を行った。それらの熱処理後の圧着端子を端子5_2とした。他の3個の圧着端子に200℃で50時間の熱処理を行った。それらの熱処理後の圧着端子を端子5_3とした。なお、いずれの熱処理も、大気中で行った。
【0037】
端子5_1~5_3のそれぞれについて、第1めっき層13Aの表面(導体7との接続部)の組成を、SEM/エネルギー分散型X線分光法(EDX)により分析した。分析には、3個の圧着端子のうちの1個を使用した。分析結果を表1に示す。
【0038】
【表1】
【0039】
(4-2)端子付電線1_1~1_3の製造
端子5_1~5_3のそれぞれについて、以下の方法で端子付電線1_1~1_3を製造した。端子付電線の製造には、3個の圧着端子のうち、残りの2個を使用した。
【0040】
まず、電線3を用意した。電線3が備える導体7の太さは、200SQであった。導体7は、直径0.45mmのアルミニウム素線を34本子撚りしたものを、37本親撚りしたものであった。
【0041】
端子5_1が備える電線接続部31の内部に端部3Aを差し込み、かしめ部31Aをかしめることで、端子付電線1_1を製造した。かしめの態様は、図4に示す態様であった。かしめ部31Aにおける圧縮比は、0.81であった。同様に、端子5_2、5_3を用いて、端子付電線1_2、1_3を製造した。
【0042】
(4-3)端子付電線1_1~1_3のめっき層の評価
端子付電線1_1~1_3のそれぞれについて、図4に示すかしめ界面部101における断面を電子顕微鏡(SEM)により倍率1000倍で観察した。観察した断面は、導体7の軸方向に直交する断面である。かしめ界面部101は、かしめ部31Aの側にある、導体7と電線接続部31との界面である。かしめ界面部101は、かしめるときに最も大きい力が作用する場所である。
【0043】
端子付電線1_1のかしめ界面部101における断面を図5Aに示す。端子付電線1_2のかしめ界面部101における断面を図5Bに示す。端子付電線1_3のかしめ界面部101における断面を図5Cに示す。
【0044】
端子付電線1_1では、図5Aに示すように、めっき層と導体7との間に隙間が生じていた。また、端子付電線1_1では、めっき層は、主として錫により構成されていた。
端子付電線1_2、1-3では、図5B図5Cに示すように、めっき層と導体7との間に隙間が生じていなかった。また、導体7は、めっき層の方向に突出した微細な凸部を複数備え、めっき層は、それらの凸部が食い込んでいる微細な凹部を複数備えていた。
【0045】
また、端子付電線1_2、1_3では、めっき層は、主として、錫銅合金により構成されており、めっき層の表面も、主として、錫銅合金により構成されていた。この分析結果から、端子付電線1_2、1_3では、熱処理により、当初の錫めっき層は、第1めっき層13Aとなっていたことが確認できた。
【0046】
(4-4)端子付電線1_1~1_3の初期抵抗比の測定
端子付電線1_1~1_3のそれぞれについて、導体7と端子5との初期抵抗比を測定した。初期抵抗比の測定方法は以下のとおりであった。まず、Rt、Rcを測定した。Rtは、図1に示す点P1と、相手側接続部33上の点P2との間の電気抵抗である。点P1は、電線3上の点であって、導体7上の点である。点P1と点P2との電気的な接続の経路は、電線3と端子5との接続部を含む。Rcは、点P1と、電線3上の点P3との間の電気抵抗である。点P1と点P2との間の距離は、点P1と点P3との間の距離と等しい。
【0047】
次に、以下の式(1)にRt、Rcを代入し、初期抵抗比Y(%)を算出した。
式(1) Y=(Rt/Rc)×100
測定した初期抵抗比を図6に示す。端子付電線1_2の初期抵抗比は、端子付電線1_1の初期抵抗比より顕著に小さかった。端子付電線1_3の初期抵抗比は、端子付電線1_2の初期抵抗比よりさらに小さかった。
【0048】
表1に記載のめっき層におけるCu原子数濃度と、初期抵抗比との関係を図7に示す。Cu原子数濃度が高いほど、初期抵抗比が低かった。
<他の実施形態>
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上述の実施形態に限定されることなく、種々変形して実施することができる。
【0049】
(1)かしめ部31Aにおけるかしめの態様は、図4に示す態様以外のものであってもよい。
(2)第1実施形態のように、電線接続部31の内部の全てに第1めっき層13Aが形成されていてもよいし、電線接続部31の内部の一部のみに第1めっき層13Aが形成されていてもよい。
【0050】
(3)上記各実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素に分担させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に発揮させたりしてもよい。また、上記各実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記各実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。
【0051】
(4)上述した端子付電線1の他、当該端子付電線1を構成要素とするシステム、端子5の製造方法、端子5に形成されためっき膜の変性方法等、種々の形態で本開示を実現することもできる。
【符号の説明】
【0052】
1…端子付電線、3…電線、3A…端部、5…端子、7…導体、9…絶縁体層、11…本体部、13…めっき層、13A…第1めっき層、13B…第2めっき層、31…電線接続部、31A…かしめ部、31B…固定部、33…相手側接続部、101…界面部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7